説明

リファキサミンの安定多形型を得るためのポリオールの使用

ポリオールはリファキシミンの多形型、特にβ型を安定化する。少なくとも2個の水酸基を有するポリオールをリファキシミン粉末に添加すると、多形βは安定で、周囲湿度にかかわらず経時的に安定性を保つ。本発明においては、医薬製品を与えることができる純粋で安定な多形型からなる製剤を調製する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医薬製品に含まれる活性成分の安定多形型に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
医薬製品に含まれる活性成分は、例えば溶解性および化学的安定性などの化学的・物理的性質の異なる多形型として得られることがある。
【0003】
医薬製品に関しては、これらの性質は両方ともヒトまたは動物に投与した後の活性成分のin vivo(生体内)吸収のために、したがって医薬製品の有効性および安全性のために重要である。
【0004】
この問題に関しては、例えば下記の論文などの多くの科学論文が入手可能である。ドキサゾシン(Sohn Y.T.ら、Arch. Pharm. Res.、2005; 28、730-735);トラニラスト(Vogt F.G.ら、J. Pharm. Sci.、2005、94、651-65);クロピドグレル(Koradia V.ら、Acta. Pharm.、2004、54(3)、193-204);セレコキシブ(Chawla G.ら、Pharm. Dev. Technol.、2004、9(4)、419-33);ケトロラック(Sohn Y.T.ら、Arch. Pharm. Res. 2004、27(3)、357-60);フルコナゾール(Caira M.R.ら、J. Pharm.Sci.、2004、93(3)、601-11);ピロキシカム(Vrecer F.ら、Int. J. Pharm.、2003、256(1-2)、3-15);テオフィリン(Airaksinen S.ら、Int. J. Pharm.、2004、276(1-2)、129-41)。
【0005】
上述の理由により、医薬製品の販売承認に責任のある薬事当局は、固体状態での多形活性成分の性質および製造の一貫性に関する情報を要求しており、医薬製剤の製造段階および保存期間中の多形型の変化を避けることが重要である。この目的のため、Rodriguez-Spong B.らがAdv. Drug Deliv. Rev.、2004、56(3)、241-74で述べているように、すべての可能な多形型の中から最も高い経時的安定性を示す多形型を選択することが重要である。
【0006】
より安定な多形型を得るためには、Adv. Drug Del. Rev.、2006、56、231-334に記載されているような、塩の形の活性成分がしばしば用いられる。
【0007】
リファキシミンはリファンピシンファミリーに属する抗生物質で、錠剤、経口懸濁液用顆粒、および軟膏として、欧州、米国、および多くの他の国で入手可能である。
【0008】
リファキシミンは、Viscomi G. C.らによりIT MI2003 A 002144 (2003)およびUS7045620 B1 (2003)に記載された多形型α、β、およびγとして、ならびにViscomi G. C.らによりEP 1698630 (2005)に記載された多形型δおよびεとして存在し得る。これらの多形型はViscomiらによりWO 2005/044823 (2004)に述べられているように、固有溶解度を約10倍に、またリファキシミンの生体利用効率(バイオアベイラビリティ)を約600倍に変化させ得るので、極めて重要である。これらの変化は、製品の有効性および安全性に大きな影響を及ぼし得る。
【0009】
さらに、US7045620 B1 (2003)およびEP 1698630 (2005)から、リファキシミンの多形型は水を取り込むまたは失う可能性に応じて容易に他の型に転移し得ることが知られている。これらの転移は湿度および温度条件の変化により、固相でも起こり得る。例えば、相対湿度約50%またはそれ以上の環境で、多形αは多形βに転移する。別の代表的な例としては多形εがあり、これはEP 1698630 (2005)に記載されたように、多形δを乾燥することによって得られ、δ型に比べて20分の1に低下した生体利用効率を示す。
【0010】
リファキシミンの異なった多形型は、リファキシミン含有医薬製品の製造において均一で高純度の製品として有利に用いることができる。なぜならば、適切な多形型を用いることによって製品の有効性および安全性を調節することができるからである。
【0011】
従来技術によりリファキシミン含有医薬製品の製造条件の重要性を理解することができる。製造条件が適切に制御されなかった場合には、リファキシミンの多形型の望ましくない転移が起こり得るからである。
【0012】
さらに、例えば湿潤条件での粉末の顆粒化、水を溶媒としたフィルムコーティング工程、および乾燥などの、医薬製品製造において用いられる、水の使用を含む作業段階も、選択したリファキシミンの多形型を変化させることがある。また、湿度が経時的に多形型を変化させることがあるので、リファキシミンおよびリファキシミン含有医薬製品の保存が問題を引き起こすこともある。したがって、製造には特別の注意を払わなくてはならない。
【0013】
上述のように、多形の変化なしに水分除去を伴う製造を可能にするため、リファキシミンの多形型を周囲湿度の影響を受けない条件下に置くことが、工業的な観点から好都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】IT MI2003 A 002144 (2003)
【特許文献2】US7045620 B1 (2003)
【特許文献3】EP 1698630 (2005)
【特許文献4】WO 2005/044823 (2004)
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Arch. Pharm. Res.、2005; 28、730-735
【非特許文献2】J. Pharm. Sci.、2005、94、651-65
【非特許文献3】Acta. Pharm.、2004、54(3)、193-204
【非特許文献4】Pharm. Dev. Technol.、2004、9(4)、419-33
【非特許文献5】Arch. Pharm. Res. 2004、27(3)、357-60
【非特許文献6】J. Pharm.Sci.、2004、93(3)、601-11
【非特許文献7】Int. J. Pharm.、2003、256(1-2)、3-15
【非特許文献8】Int. J. Pharm.、2004、276(1-2)、129-41
【非特許文献9】Adv. Drug Deliv. Rev.、2004、56(3)、241-74
【非特許文献10】Adv. Drug Del. Rev.、2006、56、231-334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは驚くべきことに、これが本発明の真の目的であるが、以下ポリオールと称する、少なくとも2個の水酸基を有する化合物を添加することにより、リファキシミンの多形型が安定化されることを見出した。
【0017】
本発明によれば「ポリオール」は、ポリアルコール(エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール等);フルクトース、デキストロース、スクロース、デンプン、セルロースおよびその誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等の単糖類および多糖類;マルトデキストリン、デキストリン、キサンタンガム等;ジヒドロキシ酸およびポリヒドロキシ酸(リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等)を意味する。
【0018】
式Iで示される化合物:
H−[O−CH−(X)−CH2n−OH
(I)
(ここでXは水素または低級アルキルで、nは1から20の範囲を取り得る)
または1,2,3−プロパントリオールおよび1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0019】
特に、ポリオールをリファキシミン(rifaximin)の多形の1つ、厳密には多形βに添加すると、この多形型は、これらの変化が観察された既知の条件下においてもその結晶形を変化させない。US 7045620 B1に開示されているリファキシミンの多形βの含水率は乾燥後に4.5重量%未満に低下し、該多形は多形αに転移する。リファキシミンβにポリオールを添加すると、固相の残存水分率が4.5%未満であってもリファキシミンβは安定であり、さらにこの多形の保存性は相対周囲湿度に依存しない。
【0020】
リファキシミンの多形の中ではβ型が極めて重要である。なぜなら、Viscomi G. C.らがWO 2005/044823(2004)およびEP 1698630(2005)で開示しているように、リファキシミンのすべての多形型の中でβ型がより吸収されにくいからである。リファキシミンに関しては低吸収性が極めて重要である。なぜなら、Dascombe J. J.らがInt. J. Clin. Pharmacol. Res.、1994、14(2)、51-56で開示したように、低吸収性リファキシミンはヒトに吸収されないため、感染性下痢症に関与する広範囲の微生物に対して胃腸管内において効果的な抗菌活性を発揮し、優れた安全性プロファイルを示すからである。WO 2005/044823およびEP 1698630 (2005)には、リファキシミンの吸収はその多形にのみ依存すること、および多形の相違によって約600倍の吸収性の差を生じさせ得ることが示されている。したがって、より吸収性が低い多形βの使用は極めて有利である。実際上、抗生物質に耐性を示す細菌株の誘導は、抗生物質の使用に関連する、起こり得る副作用である。これはリファキシミンの場合に特に重要である。なぜなら、リファキシミンはリファンピシンファミリーに属しており、これはKremer L.らがExpert Opin. lnvestig. Drugs、2002、11(2)、153-157で述べているように、再発する病態である結核の治療に主として用いられるからである。
【0021】
本発明によれば、すべての使用可能なポリオールの中で、式H−[O−CH2−CH2n−OHのポリオールおよびその混合物(ここでnは2から16の範囲を取り得る)ならびに化合物1,2,3−プロパントリオールおよび1,2−プロパンジオールが極めて重要である。なぜならこれらはすべてヒトおよび動物用の製剤処方の調製に用いられ、さらにこれらを顆粒および錠剤等のコーティングを含む医薬製剤の添加物として有用にし得る可塑化性を有するからである。
【0022】
これが本発明の真の目的であるが、式H−[O−CH2−CH2n−OHの化合物およびその混合物(ここでnは2から16の範囲を取り得る)ならびに化合物1,2,3−プロパントリオールおよび1,2−プロパンジオールが、多形型βの安定剤として、また胃抵抗性(セルロースまたはアクリル酸およびメタクリル酸誘導体の使用による)で、ポリオールの5%(w/w)から50%(w/w)、好ましくは10%(w/w)から30%(w/w)の水溶液を用いてリファキシミン顆粒および錠剤をコーティングすることができ、続いて過剰の水を除去して多形型βを得て保存することができるコーティング剤を調製するための可塑剤として、使用し得るということが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1にかかるリファキシミン多型のX線回折図である。
【図2】比較例2にかかるリファキシミン多型のX線回折図である。
【図3】比較例3にかかるリファキシミン多型のX線回折図である。
【図4】実施例4にかかるリファキシミン多型のX線回折図である。
【図5】実施例5にかかるリファキシミン多型のX線回折図である。
【0024】
発明の説明
上述のように、本発明の目的は、上述のポリオールを用いてリファキシミンの多形型、特にViscomi G. C.らによってUS7045620B1 (2003)で開示されたβ型を安定化することにより、活性成分リファキシミンの残存水分率が4.5%(w/w)未満であるβ型のリファキシミンを含む医薬製剤を得て、直接的または間接的にリファキシミンの乾燥につながり得る製造工程の間に多形βを変化させずに維持することである。この製造工程は、ポリオールを用いなければβ型を保持することができず、適用される乾燥条件の厳しさによってはβ型がまさにリファキシミンの他の多形型に転移すると思われる条件下にある。
【0025】
本発明者らは、リファキシミンβを5%(w/w)から50%(w/w)、好ましくは10%(w/w)から30%(w/w)のポリオール水溶液に、一般的には1から24時間、接触させることにより、リファキシミンβ型が得られ、その結果、固相の残存水分率を4.5%(w/w)未満の値にしても安定であることを見出した。
【0026】
上述のポリオールまたはその混合物は、これらが本発明の目的であるが、純粋なものとして、または平滑性向上のため、及びポリオールまたはその混合物との相互作用を有利にするための製薬技術で既知の若干量の賦形剤との混合物として、リファキシミンβに添加することができる。この目的のため、コロイダルシリカ(例えばAerosil(登録商標)として知られているコロイダルシリカ)等の物質を用い、1%(w/w)から20%(w/w)、好ましくは0.2%(w/w)から5%(w/w)の範囲で、活性成分に添加することができる。
【0027】
上述のポリオールの1種またはその混合物とリファキシミンとの相互作用プロセスは、成分を密接に混合することができる製薬技術分野で知られている任意の方法により得られる。
【0028】
これらのポリオールの1種またはその混合物は、顆粒化工程における適切な水希釈の後に、活性成分を含む、または活性成分のみからなる粉末に、適切な混合下に、溶液を適切に添加することにより適用できる。この操作は、従来の造粒機または成分の混合を有利にするための回転刃および破砕機を備えた高速造粒機中で実施することができる。
【0029】
1種または複数のポリオールの溶液の粉末混合物への添加は、成分の相互作用を有利にするために粉末または粉末混合物に溶液をゆっくりと添加することに注意しながら、人手によって行うことができるが、より適切には、例えばロブポンプ、ピストンポンプ、または蠕動ポンプ等の適切なポンプシステムにより、また溶液の噴霧を可能にするアトマイザーを用いることにより、よりよい成分の相互作用を有利にしながら実施することができる。
【0030】
顆粒化を達成する際には、過剰の水分は、製薬技術分野で知られている従来の乾燥システムを用いて、静止炉中での乾燥または流動床装置中での乾燥により除去できる。乾燥温度は30℃から90℃、好ましくは40℃から80℃の範囲でよい。乾燥時間は用いる装置、乾燥すべき粉末の量、および望ましい残存湿度によって異なる。
【0031】
上述のポリオールの1種またはその混合物を含む溶液の適用は、流動床装置によって実施することもできる。この場合には、活性成分を含む、または活性成分のみからなる粉末を、加温した気流によって浮遊させた状態に保ち、同時に上記のポリオールの1種またはその混合物を含む溶液を粉末上に微細に噴霧する。この場合には、ポリオールまたはその混合物を含む溶液と固体状のリファキシミンとの密接な混合が、乾燥工程と同時に起こる。
【0032】
製薬技術に熟達した者であれば、空気入口温度、空気入口容量、および溶液適用速度等の重要なパラメーターを変化させることにより、望ましい残存水分率を有する製品を得ることができる。空気入口温度は一般に、20℃から90℃、好ましくは30℃から80℃に設定される。
【0033】
溶液適用速度は粉末を浮遊状態に保つ空気の温度と密接に関係している。当業者によく知られている目標は、混合物の温度をすべての工程中で一定に保つことである。実際、適用速度が速すぎると湿潤化が過剰となり、粉末が凝集し、粉末上で有効な作用を得るために必要な混合を阻害する。一方、適用速度が遅すぎると混合物の温度が上昇し、活性成分が分解する可能性が生じる。
【0034】
本発明は、上述のポリオールまたはその混合物を含む溶液との密接な混合をもたらし、それに続いて乾燥する任意の他の製薬プロセスによっても得られる。
【0035】
式H−[O−CH2−CH2n−OH(ここでnは2から10の範囲を取り得る)を有する好ましい化合物およびその混合物、ならびに化合物1,2,3−プロパントリオールおよび1,2−プロパンジオールは、5%(w/w)から50%(w/w)、好ましくは10%(w/w)から30%(w/w)の濃度で、制御放出または胃抵抗性を与えることができる固形経口医薬製剤のフィルムコーティングに適した水性混合物の成分として、添加することができる。
【0036】
本発明を以下の非制限的実施例により説明する。
【0037】
実施例1
残存水分率4.5%未満のリファキシミンβ型の調製
リファキシミンβ型199gとAerosil(登録商標)1gとを、入口温度80℃の流動床装置中で5分間、混合する。
【0038】
水390gと1,2−プロパンジオール13gとからなる懸濁液を、流動床装置中で、蠕動ポンプを用いて11g/分の処理量で、全プロセスにおいて温度を80℃の一定温度に保ちながら、リファキシミンβ型の混合物に噴霧する。混合物を80℃で乾燥し、重量減少が一定になるまで乾燥を継続する。カールフィッシャー法で測定した細粒中の残存水分率は2.2%である。このようにして得られた細粒をX線分光分析に供する。図1に示すX線回折図はリファキシミンの多形βに対応している。
【0039】
1,2−プロパンジオールをエリスリトールまたはマンニトールに置き換えて、同様の結果が得られる。
【0040】
比較例2
本比較例は、ポリオールの非存在下においては、残存水分率が4.5%未満のリファキシミンが多形β型を取らないこと、およびポリオールの添加により残存水分率が4.5%未満でも固相でβ型のリファキシミンが得られることを示す(操作は実施例1に記載したものと同じであるが、噴霧溶液は1,2−プロパンジオールを含まない)。
【0041】
リファキシミンβ型199gと、Aerosil(登録商標)1gとを、入口温度80℃の流動床装置中で5分間混合する。
【0042】
水400gを、流動床装置中で、蠕動ポンプを用いて11g/分の処理量で、全プロセスにおいて温度を80℃の一定温度に保ちながら、リファキシミンβ型の混合物に噴霧する。混合物を80℃で乾燥し、重量減少が一定になるまで乾燥を継続する。カールフィッシャー法で測定した細粒中の残存水分率は1.1%である。このようにして得られた細粒をX線分光分析に供する。図2に示すX線回折図はリファキシミンの多形αに対応している。
【0043】
比較例3
本比較例は、残存水分率4.5%未満のリファキシミン多形β型を得るためにポリオール中の水酸基の存在が重要であることを示す。操作は実施例1記載のものと同じであるが、1,2−プロパンジオールをエステル化水酸基を有するポリオール、例えば1,2,3−プロパントリオールトリアセテートに置き換えたものである。
【0044】
リファキシミン199gと、Aerosil(登録商標)1gとを、入口温度80℃の流動床装置中で5分間混合する。
【0045】
水382.75gと1,2,3−プロパントリオールトリアセテート12.75gとからなる懸濁液を、流動床装置中で、蠕動ポンプを用いて11g/分の処理量で、全プロセスにおいて温度を80℃の一定温度に保ちながら、リファキシミンの混合物に噴霧する。混合物を80℃で乾燥し、重量減少が一定になるまで乾燥を継続する。カールフィッシャー法で測定した細粒中の残存水分率は0.5%である。このようにして得られた細粒をX線分光分析に供する。図3に示すX線回折図はリファキシミンの多形αに対応している。
【0046】
実施例4
PEG400の存在下における、残存水分率4.5%未満のリファキシミンβの調製
リファキシミン199gと、Aerosil(登録商標)1gとを、入口温度80℃の流動床装置中で5分間混合する。
【0047】
水360gとPEG400(式H−[O−CH2−CH2n−OHで表されるポリエチレングリコール)40gとからなる懸濁液を、流動床装置中で、蠕動ポンプを用いて6g/分の処理量で、全プロセスにおいて温度を80℃の一定温度に保ちながら、リファキシミンの混合物に噴霧する。混合物を80℃で乾燥し、重量減少が一定になるまで乾燥を継続する。カールフィッシャー法で測定した細粒中の残存水分率は0.8%である。
【0048】
このようにして得られた細粒をX線分光分析に供する。図4に示すX線回折図はリファキシミンの多形βに対応している。PEG400の代わりにヒドロキシエチルセルロースまたは酒石酸を用いても同様の結果が得られる。
【0049】
実施例5
1,2−プロパンジオールの存在下における、残存水分率4.5%未満の胃抵抗性リファキシミンβ細粒の調製
本実施例は、残存水分率4.5%未満のリファキシミンβを得るためにリファキシミンに添加したポリオール1,2−プロパンジオールが同時に、顆粒をカバーするためのフィルムの調製において、可塑化機能を有する他の化合物の添加なしに可塑剤としても作用することを示す。
【0050】
リファキシミン粉末25000gと、流動化剤として働くAerosil(登録商標)125gとを、活性成分にGlatt GPC 30型コートフィルムを適用するための、18インチWursterシステムを備えた流動床装置に装入する。
【0051】
同時に、表1に記載した懸濁液を攪拌下にミキサー中で調製する。
【0052】
【表1】

【0053】
高速Ultra Turraxホモジナイザーを用いて固形成分を脱ミネラル水中に均一に分散し、均質化した懸濁液を蠕動ポンプを用いてWurster型装置に装入し、1.0から1.5バールの圧力で、1.8mmのノズルを通して、リファキシミン粉末混合物およびAerosil(登録商標)200とに噴霧する。
【0054】
フィルムコーティング処理は表2記載と同じ条件で行う。
【0055】
【表2】

【0056】
このようにして得られた細粒の残存水分率をカールフィッシャー法で測定したところ、1.2%であった。
【0057】
得られた細粒のX線回折図を図5に示す。これは多形βに対応している。
【0058】
実施例6
熱シールバッグ中で調製したリファキシミンβの医薬製剤
実施例5に従って調製した胃抵抗性リファキシミン細粒9.12kg、ソルビトール19.58kg、アスパルテーム0.49kg、無水クエン酸0.21kg、ペクチン2.10kg、マンニトール2.10kg、ネオヘスペリジンDC0.21kg、チェリー香料1.12kg、およびシリカゲル0.07kgを0.5mmメッシュの篩で篩い、次いでVミキサー中で20分間混合する。得られた混合物を、リファキシミン800mgに対応する製品5gを含む熱シールバッグに分配して入れる。熱シールバッグに含まれる特製医薬の組成を下記の表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
熱シールバッグ中に含まれる細粒の胃抵抗性を25℃で12カ月保存した後にUSP第28版、2417ページに開示された方法で評価すると、実施例1で調製した細粒について得られたものと同じ結果が得られる。即ち、0.1N塩酸中の溶解度が2.2%、pH6.8の緩衝液中の溶解度が91.1%である。
【0061】
実施例7
実施例5に従って調製したリファキシミンβを含有する錠剤形の医薬製剤
実施例1に従って調製した胃抵抗性リファキシミン細粒9.3kg、デンプングリコール酸ナトリウム(Sodium Starch Glicolate)593g、およびステアリン酸マグネシウム100gを0.5mmメッシュの篩で篩い、次いでVミキサー中で20分間混合する。得られた混合物を、刻み目を有する楕円形の19×9mmのパンチを備えた回転式打錠機(Fette 1200)を用いて打錠し、リファキシミン400mgに対応する最終重量718mgを得る。
【0062】
錠剤の組成を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
次いで外観の改良のためおよび味覚遮蔽性を与えるために、従来のパン装置を用いて、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフィルムで錠剤を被覆する。単一のフィルム組成を表5に示す。
【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファキシミンの多形型を安定化するための、少なくとも2個の水酸基を有する1種または複数の化合物(以下、「ポリオール」と定義する)の使用。
【請求項2】
2個から7個の炭素原子および2個から7個の水酸基を含むポリオール、単糖類、二糖類、デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体等の多糖類、デキストリンおよびマルトデキストリン、キサンタンガム、ジヒドロキシ酸、およびポリヒドロキシ酸からなる群から選択される1種または複数のポリオールの請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式I:
H−[O−CH−(X)−CH2n−OH
(I)
(ここで、Xは水素または低級アルキルを表し、nは1から20の範囲を取り得る)
で表される1種または複数のポリオールの請求項1に記載の使用。
【請求項4】
1,2,3−プロパントリオールの請求項1に記載の使用。
【請求項5】
一般式H−[O−CH2−CH2n−OH(ここで、nは2から14の範囲を取り得る)を有するポリオールの請求項2に記載の使用。
【請求項6】
1,2−プロパンジオールの請求項2に記載の使用。
【請求項7】
残存水分率が4.5%未満である多形型βのリファキシミンを固体状態で得るためのポリオールの請求項1に記載の使用。
【請求項8】
残存水分率にかかわらず、請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの使用によって安定化された固体状態のリファキシミンの多形型。
【請求項9】
残存水分率にかかわらず、請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの使用によって安定化された固体状態のリファキシミン多形型β。
【請求項10】
残存水分率にかかわらず、請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールによって安定化されたリファキシミン多形型βを希釈剤、リガンド、滑剤、崩壊剤、染料、香味料、および甘味料等の当業界でよく知られた賦形剤とともに含む、抗生物質治療を必要とする病態の治療のための経口用および局所用医薬製剤。
【請求項11】
残存水分率にかかわらず、多形βが請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールによって安定化された、胃抵抗性リファキシミンβの細粒。
【請求項12】
残存水分率にかかわらず、多形βが請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの使用によって安定化された、熱シールされたバッグに入れられたリファキシミンβ。
【請求項13】
残存水分率にかかわらず、多形βが請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの使用によって安定化された、錠剤の形態のリファキシミンβ。
【請求項14】
固体状態のリファキシミンを、請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの濃度5%から59%(w/w)の水溶液と、30℃から90℃の温度で、1から24時間、接触させ、固体残留物を分離した後に、該固体残留物を30℃から80℃の温度で周囲圧力または真空下で2から72時間、乾燥させることを特徴とする、請求項9に記載の多形型βのリファキシミンの調製方法。
【請求項15】
請求項1から6に記載の1種または複数のポリオールの濃度5から50%(w/w)の水溶液を入口温度40℃から90℃で流動床装置中で固体状態のリファキシミンβに噴霧し、このようにして得られた混合物を40℃から90℃の温度の気流下で乾燥させることを特徴とする、請求項9に記載の多形型βのリファキシミンの調製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−502584(P2010−502584A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526185(P2009−526185)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002199
【国際公開番号】WO2008/029208
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(304044793)アルファ ワッセルマン ソシエタ ペル アチオニ (8)
【氏名又は名称原語表記】ALFA WASSERMANN S.P.A.
【Fターム(参考)】