説明

リファキシミンの多形体、それらの製造方法および医薬製剤におけるそれらの使用

【課題】リファキシミン(INN)の結晶性多形体を提供する。
【解決手段】原料リファキシミンをエタノールに熱溶解し、一定の温度での水添加による生成物の結晶化をさせ、最後に最終生成物中の正確な水分含量になるまでコントロールされた条件で乾燥されることで実施される結晶化方法で得られる、リファキシミン(INN)の貧結晶性多形体(リファキシミンγ)。経口使用および局所使用のリファキシミンを含む医薬の製造に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファキシミン(rifaximin)の結晶多形体α、βおよびγ、それらの製造方法および医薬におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リファキシミン(INN、非特許文献1参照)はリファマイシン(rifamycin)系に属する抗生物質、すなわち、特許文献1に記載され、特許請求されたピリド−イミダゾ リファマイシンである。また、特許文献2はリファマイシンO(非特許文献2参照)を原料とする製造方法を開示し、特許請求している。
【0003】
両特許は、適当な溶媒または溶媒系中での結晶化によるリファキシミンの精製が包括的に記載し、得られる生成物が7:3のエチルアルコール/水の混合液から結晶化でき、大気圧下および真空下で乾燥されることができるいくつかの実施例を要約的に示している。結晶化および乾燥の実験条件に関する情報も、また、得られた生成物を区別する特有の結晶学的特徴についてもまったく開示されていない。
【0004】
様々な多形型の存在について以前は知られていなかったし、従って両特許に記載された実験条件は、生成物自体の結晶学的側面は別にして、化学的観点から見て適当な純度を有する均質な生成物を製造する目的で実施されている。
【0005】
今回予想外にも、その形成が溶媒並びに、結晶化および乾燥が実施される時間と温度の条件に応じて、いくつかのリファキシミンの多形体が存在することがわかった。
【0006】
本出願において、これらの多形体は、それぞれ特徴的な回折図に基づいてリファキシミンα(図1)およびリファキシミンβ(図2)と称され、一方、非晶質成分を多く含む貧結晶性多形体はリファキシミンγ(図3)と同定される。
【0007】
リファキシミンの多形体は、粉末X線回折法にて特定される。
【0008】
これら多形体の同定とキャラクタリゼーション、および同時にこれらを得るための実験条件の限定は、リファキシミンのようにヒトおよび動物に使用する医薬製剤として市販され、薬理活性を有する化合物にとって非常に重要である。医薬製剤中で有効成分として使用される化合物の多形性が薬物の薬理学的−毒物学的特性(pharmaco-toxicologic property)に影響を与えることは良く知られている。経口あるいは局所形態で薬物として投与された異なる多形体を有する有効成分は、生物学的利用度、溶解度、安定性、色、圧縮性、流動性および作業性のような多くの性質が変化し、毒物学的安全性、臨床上の有効性および生産効率の側面を当然に変わる。
【0009】
上述のことは、薬物の上市認可書の交付を統制している当局が、有効成分の製造方法が標準化され、製造バッチ毎の多形性に関して均質で信頼できる結果が得られるような方法で制御されていることを要求していることから確認される(非特許文献3)。
【0010】
上述の標準化の必要性は、Henwood S.Q.らにより、リファマイシン抗生物質の分野においてもさらに強まった(非特許文献4)。Henwood S.Q.らは、異なる製造者により製造された異なる製造バッチのリファンピシン(rifampicin)(INN)が、それらが異なる多形特性を示し、その結果として、それぞれ薬理特性が変化し、異なる溶出プロファイルを示すので、それらが異なっていることを確かめた。
【0011】
特許文献1および特許文献2に一般的に開示されている結晶化および乾燥の方法に従うと、ある実験条件下ではリファキシミンの貧結晶体が得られ、他の実験条件下ではリファキシミンの他の結晶多形体が得られることが解かった。さらに、上記特許には全く開示されていないいくつかのパラメーター、例えば、保存条件や周囲の相対湿度が、多形体の形態を決定するのに驚くべき影響を有していることが解かった。
【0012】
本出願の目的であるリファキシミンの多形体は、決して見出されてもいないし、また、結晶化、乾燥および保存に用いる条件とは無関係に、記載された条件の範囲内で選択された方法がどれであるかにかかわらずただ1つの均質な生成物が必ず得られると一般的に考えられているので、予想もされていない。
【0013】
今回、α型、β型およびγ型の形成は、結晶化溶媒中の水の存在、生成物を結晶化する温度、および乾燥段階の終わりに生成物中に存する水の量に依存することが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】イタリア特許第1154655号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許第0161534号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】メルクインデックス第13版、8304
【非特許文献2】メルクインデックス第13版、8301
【非特許文献3】CPMP/QWP/96、2003−新活性物質の化学に関する指針の通達;CPMP/ICH/367/96−指針明細の通達:新医薬品の規格及び試験方法の設定:化学物質;施行日:2000年5月
【非特許文献4】Henwood S.Q.、 deVilliers M.M.、 Liebenberg W.およびLoetter A.P.、 Drug Development and Industrial Pharmacy、26(4)、 403-408、2000年
【非特許文献5】Descombe J.J.ら、健常志願者における経口投与後のリファキシミンの薬物動態研究(pharmacokinetic study)、Int J Clin Pharmacol Res, 14(2)、51-56、1994年
【非特許文献6】Kremer L.ら、「結核の再発生:戦略と治療」、Expert Opin. Investig. Drugs、 11(2)、 153-157、 2002年
【非特許文献7】Marchese A.ら、リファキシミン、メトロニダゾール(metronidazole)およびバンコマイシン(vancomycin)のディフィシル菌(Clostridium difficile)に対する試験管中活性およびアンモニア生成菌を含む代表的な嫌気性および好気性バクテリアに対する自然抵抗変種の選択速度、Chemotherapy, 46(4)、253-266、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
リファキシミンのα型、β型およびγ型が合成され、これらが本発明の目的である。
【0017】
さらに、固体状態でリファキシミン中の水の存在は可逆的であること、従って適当な環境下において水の吸収および/または放出はやがて起こることが判明した。その結果として、固体状態のままで、再溶解再結晶化する必要もなく、リファキシミンは1つの型から他の型へ転換できる。例えば、多形体αは4.5%超の水分含量となるまで水和されると多形体βに変換し、逆にこの多形体βは4.5%未満の水分含量となるまで乾燥されると多形体αに変化する。
【0018】
これらの結果は、生成物の多形性の決定に重要であるとはみなされていなかったいくつかの作業工程、例えば、結晶化した生成物の洗浄、最終生成物の保存条件、生成物保存容器の特性等、の工業的製造における条件を決めるので、大変に重要である。
【0019】
リファキシミンは、嫌気性菌株を含む、感染性下痢を引き起こす局在胃腸細菌に対して胃腸管(gastrointestinal tract)内で広範な抗菌活性を有する。リファキシミンは、その化学的物理的特性から、殆ど組織吸収(systemic absorption)がないことに特徴があると報告されている(非特許文献5)。
【0020】
今回、リファキシミンの組織吸収水準が、異なるリファキシミンの多形体、すなわちリファキシミンα、リファキシミンβおよびリファキシミンγの投与により変えうること(これが本発明の一部である)を、本発明者らは見出した。血液中で0.001〜1μg/mlの範囲にあって約600倍の吸収に差を有することができる。
【0021】
リファキシミンα、βおよびγの3つの多形体の薬学的毒物学的挙動を判定しうるので、バイオアベイラビリティーにおいて存在する差は重要である。
【0022】
実際のところ、リファキシミンαおよびリファキシミンβは経口では殆ど吸収されないが、一方、リファキシミンγは温和な吸収を示す。
【0023】
実質的に吸収されないリファキシミンαおよびβは、胃腸管の場合を含み、非常に低い毒性を達成し、局所作用を通してのみ効くであろう。
【0024】
他方、温和に吸収されるリファキシミンγは、自身は隠れることができ、局所抗生物質の作用を部分的に避けることのできる組織内微生物に対して好都合な用途が見出される。
【0025】
リファキシミンを治療に用いることに結びついた見込まれる不都合な事態に関係して特に関係するのは、抗生物質に対する細菌耐性の誘起である。
【0026】
一般に言うと、抗生物質を用いる治療実務において、耐性菌が生じた時に同種あるいは他種の抗生物質に対しても細菌耐性が起きる。リファキシミンの場合には、リファキシミンは、その一員として結核治療に広く使用されているリファンピシリンを含むリファマイシン族に属するので、この事態は特に関係する。結核の集中的短期治療は4つの活性医薬成分、リファンピシン、イソニアジド(isoniazid)、エタンブトール(ethambutol)およびピラジンアミド(pyrazinamide)を含む組合せ療法であり、リファンピシンは重要な役割をしている。それ故、リファンピシンに対する耐性を選択することで治療効果が危うくなるどんな薬剤も害になる(非特許文献6)。
【0027】
原則として、リファキシミンとリファンピシリンの構造類似性を考慮すると、リファキシミンの使用が結核菌(M.tuberculosis)の選択抵抗菌株およびリファンピシリンへの交差耐性を誘起するであろう。この負の事態を防ぐためには、組織内へ吸収されるリファキシミンの量をコントロールすることが重要である。
【0028】
この観点から、リファキシミンの準抑止濃度(sub-inhibitory concentration)でも、例えば、0.1〜1μg/mlの範囲内で、抵抗変種の選択が可能であることが示されたので、リファキシミンのα型、β型およびγ型の組織吸収にある差は重要である(非特許文献7)。
【0029】
上で述べたことは、本発明のリファキシミンの多形体、および、本発明の異なる薬学的性状を有する純粋に単一の多形体を製造する種々の工業的方法の重要性を示している。
【0030】
上に述べたことによると、上述のリファキシミンの多形体の存在の認識および異なる薬学的性状を有する純粋に単一の多形体を製造するための種々の工業的工程に通じた本発明の重要性は明らかに強められる。
【0031】
上述のα型、β型およびγ型は、リファキシミンを含む医薬製剤の製造に純粋で均質な生成物として有利に使用することができる。
【0032】
既に述べたように、特許文献2に開示され特許請求されている、リファマイシンOからリファキシミンを製造する方法は、得られた生成物の精製および同定の点を欠く。これはまた、例えば、工業的利用には適当でない、16〜72時間のような非常に長い反応時間、さらに、反応混合液中に形成される酸化されたリファキシミンをそのままで還元を実施できない理由で、合成の観点からも、いくらかの限界がある。
【0033】
従って、本発明の別の目的は、本発明中で生成物として特許請求され、かつ有効成分を含む医薬製剤の製造において確定した、均質な有効成分として使用できる、リファキシミンのα型、β型およびγ型を工業的に製造するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、リファキシミン(INN)として知られる抗生物質のα型、β型およびγ型、それらの製造方法、ならびに経口または局所投与ための医薬製剤の製造におけるそれらの使用に関する。
【0035】
リファキシミンの多形体αは、4.5%以下、好ましくは2.0%〜3.0%である水分含量、および回折角2θの値6.6°;7.4°;7.9°;8.8°;10.5°;11.1°;11.8°;12.9°;17.6°;18.5°;19.7°;21.0°;21.4°;22.1°にピークを示す粉末X線回折図を特徴とする。
【0036】
リファキシミンの多形体βは、4.5%以上、好ましくは5.0%〜6.0%である水分含量、および回折角2θの値5.4°;6.4°;7.0°;7.8°;9.0°;10.4°;13.1°;14.4°;17.1°;17.9°;18.3°;20.9°でピークを示す粉末X線回折図を特徴とする。
【0037】
リファキシミンの多形体γは、1.0%〜2.0%の水分含量、および主に非晶質のプロファイルを示し、回折角2θの値5.0°;7.1°;8.4°にいくつかの特徴的なピークを示す粉末X線回折図を特徴とする。
【0038】
本発明は、モル当量のリファマイシンOが2−アミノ−4−メチルピリジンの過剰量、好ましくは、2.0〜3.5モル当量と、体積比1:1〜2:1の水とエチルアルコールの混合溶媒中で、2〜8時間、40℃〜60℃で反応され、
室温で、アスコルビン酸を含む水、エチルアルコールおよび濃塩酸の混合溶液で反応混合物が処理され、次いで、濃塩酸水溶液で反応混合物がpH2.0にされ、懸濁液がろ過され、得られた固体が上記反応で使用されたと同様の水/エチルアルコール混合溶媒で洗浄され、得られた粗リファキシミンがエチルアルコールに45℃〜65℃で溶解することによって精製され、
水を、好ましくは溶解に使用したエチルアルコールの15質量%〜70質量%、加えて沈殿が形成され、
懸濁液の温度が、4〜36時間撹拌しながら、50℃〜0℃にさげられ、最後に懸濁液がろ過され、得られた固体が水で洗浄され、真空下または常圧下に、必要により乾燥剤を用いて、室温〜105℃の温度で2〜72時間乾燥されることを特徴とするリファキシミンα、βおよびγの製造方法も開示する。
【0039】
リファキシミンαの製造方法は、粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が6〜24時間撹拌しながら40℃〜50℃に保たれ、懸濁液が15分〜1時間で0℃に冷却され、次いで、懸濁液がろ過され、得られた固体が水分含量4.5%以下、好ましくは2.0%〜3.0%になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0040】
リファキシミンβの製造方法は、粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が6〜24時間撹拌しながら40℃〜50℃に保たれ、懸濁液が15分〜1時間で0℃に冷却され、次いで、懸濁液がろ過され、得られた固体が水分含量4.5%以上、好ましくは5.0%〜6.0%になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0041】
リファキシミンγの製造方法は、粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が0℃に冷やされ、この温度で6〜24時間撹拌しながら保たれ、次いで、ろ過され、得られた固体が水分含量1.0%〜2.0%になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0042】
リファキシミンαの製造方法は、リファキシミンγが体積比7:3のエチルアルコール/水の混合溶媒に懸濁され、懸濁液が38℃〜50℃に加熱され、その温度で撹拌下に6〜36時間保たれ、懸濁液がろ過され、得られた固体が水で洗浄され、水分含量が4.5%以下、好ましくは2.0%〜3.0%になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0043】
リファキシミンβの製造方法は、リファキシミンγが体積比7:3のエチルアルコール/水の混合溶媒に懸濁され、懸濁液が38℃〜50℃に加熱され、その温度で撹拌下に6〜36時間保たれ、懸濁液がろ過され、得られた固体が水で洗浄され、水分含量が4.5%以上、好ましくは5.0%〜6.0%になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0044】
リファキシミンγの製造方法は、リファキシミンαまたはリファキシミンβがエチルアルコールに50℃〜60℃で溶解され、脱イオン水がエチルアルコール/水の体積比が7:3になるまで加えられ、溶液が強撹拌下に30℃まで冷却され、さらに得られた懸濁液が0℃に冷却され、その温度で6〜24時間保たれ、次いでそれがろ過され、得られた固体が水で洗浄され、水分含量が2.0%以下になるまで乾燥されることを特徴とする。
【0045】
さらに、リファキシミンαが、50%超の相対湿度の環境内で、12〜48時間保たれることを特徴とするリファキシミンβの製造方法;リファキシミンβが、大気圧下または真空下、あるいは乾燥剤の存在下、室温〜105℃の温度で、2〜72時間乾燥されることを特徴とするリファキシミンαの製造方法も開示する。
【0046】
さらには、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香料および甘味料のような通常の賦形剤と共に、抗生活性を有する経口使用のための医薬製剤におけるリファキシミンαの使用;通常の賦形剤と共に、抗生活性を有する経口使用のための医薬製剤におけるリファキシミンβの使用;通常の賦形剤と共に、抗生活性を有する経口使用のための医薬製剤におけるリファキシミンγの使用;経口使用の製剤が、被覆および非被覆錠剤、硬質および軟質ゼラチンカプセル剤、糖衣錠剤、トローチ剤、カシェ剤、丸薬および密封小分け散剤から選択されることを特徴とする上記いずれかに記載の使用も開示する。
【0047】
本発明は、抗生活性を有する局所使用のための医薬製剤におけるリファキシミンαの使用;
抗生活性を有する局所使用のための医薬製剤におけるリファキシミンβの使用;抗生活性を有する局所使用のための医薬製剤におけるリファキシミンγの使用;局所使用の製剤が、軟膏、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤およびローション剤から選択されることを特徴とする上記いずれかに記載の使用も包含する。
【発明の効果】
【0048】
実際のところ、リファキシミンαおよびリファキシミンβは経口では殆ど吸収されないが、一方、リファキシミンγは温和な吸収を示す。実質的に吸収されないリファキシミンαおよびβは、胃腸管の場合を含み、非常に低い毒性を達成し、局所作用を通してのみ効くであろう。他方、温和に吸収されるリファキシミンγは、自身は隠れることができ、局所抗生物質の作用を部分的に避けることのできる組織内微生物に対して好都合な用途が見出される。リファキシミンを治療に用いることに結びついた見込まれる不都合な事態に関係して特に関係するのは、抗生物質に対する細菌耐性の誘起である。この観点から、リファキシミンの準抑止濃度(sub-inhibitory concentration)でも、例えば、0.1〜1μg/mlの範囲内で、抵抗変種の選択が可能であることが示されたので、リファキシミンのα型、β型およびγ型の組織吸収にある差は重要である。
【0049】
上述のα型、β型およびγ型は、リファキシミンを含む医薬製剤の製造に純粋で均質な生成物として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】リファキシミンαの粉末X線回折図である。
【図2】リファキシミンβの粉末X線回折図である。
【図3】リファキシミンγの粉末X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の製造方法は、1モル当量のリファマイシンOを、2−アミノ−4−メチルピリジンの過剰量、好ましくは2.0〜3.5モル当量と、体積比1:1〜2:1の水とエチルアルコールからなる混合溶媒中で、2〜8時間、40℃〜60℃の温度で反応させることである。
【0052】
反応の終了後、反応マスは室温まで冷却され、反応中に形成される少量の酸化されたリファキシミンを還元するために、強攪拌下に、アスコルビン酸を水、エチルアルコールおよび濃塩酸水溶液の混合液に溶かした液が加えられる。最後に、反応で使用した2−アミノ−4−メチルピリジンの過剰分を良く除去するために、濃塩酸水溶液をさらに加えてpHは約2.0に調整される。この懸濁液はろ過され、得られた固体は反応で使用したと同じ水/エチルアルコール混合溶媒で洗浄される。この中間生成物は“粗リファキシミン”と呼ばれる。
【0053】
粗リファキシミンは、続く精製ステップに直接供されてもよい。代わりに、中間生成物を長期間保存する場合は、粗リファキシミンは真空下、65℃以下の温度で6〜24時間乾燥される。この中間生成物は“乾燥粗リファキシミン”と呼ばれる。
【0054】
得られた粗リファキシミンおよび/または乾燥粗リファキシミンは、45℃〜65℃の温度でエチルアルコールに溶解され、水を、好ましくは溶解に使用したエチルアルコールの質量に対して15質量%〜70質量%、加えることによって再結晶化され、得られた懸濁液は攪拌下に、50℃〜0℃で、4〜36時間維持して精製される。
【0055】
懸濁液はろ過され、得られた固体は水で洗浄し、真空下または常圧下、必要により乾燥剤を用いて、室温〜105℃の温度で2〜72時間乾燥される。
【0056】
α型、β型およびγ型の実現は、結晶化のために選択された条件に依存する。特に、結晶化に用いられる混合溶媒の組成、反応混合液が結晶化後に維持される温度およびその温度が維持される時間が重要であることが証明されている。
【0057】
より正確には、リファキシミンγは、析出を開始するために溶液の温度がまず28℃〜32℃にされ、得られた懸濁液はさらに0℃まで冷却され、この温度で6〜24時間維持された場合に、得られる。
【0058】
懸濁液はろ過され、固体は脱イオン水で洗浄され、水分含量が1.0%〜2.0%になるまで乾燥される。
【0059】
リファキシミンαおよびβは、析出を開始させるために温度がまず28℃〜32℃にされ、その後懸濁液は40℃〜50℃にされ、この温度で6〜24時間維持され、次いで懸濁液は0℃まで急速に冷却され15分間〜1時間冷却され、次いでろ過され、固体は水で洗浄された後乾燥された場合に、得られる。
【0060】
この乾燥工程は、リファキシミンのαおよびβの多形体を得るのに重要な役割を演じ、乾燥下の生成物中に存する残留水の量を調べるために、含水量測定に適当である方法、例えばカールフィッシャー法で監視されなければならない。
【0061】
リファキシミンαまたはリファキシミンβは、異なる最終残留水量まで、すなわち4.5%超か未満かに、乾燥されることにより得られ、かかる臨界的水含量が達成される圧力および温度の実験条件にはよらない。実際に、高含水あるいは低含水による2つの多形体は、各多形体に特徴的な水含量に達するのに必要な時間だけ乾燥が実施されれば、真空下または大気圧下、室温でまたは高温で、必要により乾燥剤の存在下に、得られる。
【0062】
多形体βは、結晶化され、水で洗浄された生成物の乾燥が、カールフィッシャー法での測定によって4.5%超、好ましくは5.0%〜6.0%の水分含量で停止された場合に得られる。一方、多形体αは、4.5%未満、好ましくは2.0%〜3.0%の値になるまで乾燥を続けることによって得られる。
【0063】
リファキシミンのγ型並びにα型およびβ型のいずれもが吸湿性であり、それらは圧力および湿度の適切な環境条件下でやがて可逆的に水を吸収し、ある型から他の型へ変化しやすい。
【0064】
多形体αが50%より高い相対湿度の環境中に12〜48時間維持されると多形体βに変わり、逆に多形体βは4.5%より低い水含量に達するまで、好ましくは2.0%〜3.0%含むまで、乾燥されると多形体αに転換する。
【0065】
γ型とα型およびβ型との間では、これは、リファキシミンの析出の間に保たれる温度に依存して起きる別の種類の変化がある。
【0066】
特に、リファキシミンのγ型の懸濁液をエチルアルコール/水の7:3(V/V)の混合溶媒中、38℃〜50℃の温度で強く攪拌しながら長時間、好ましくは6〜36時間維持することによって、γ型がα型またはβ型になる。
【0067】
ろ過、脱イオン水での洗浄後、4.5%超、好ましくは5.0%〜6.0%の水含量に乾燥すると多形体βを与え、一方、4.5%未満、好ましくは2.0%〜3.0%の水含量に達するまで乾燥を続けた時には多形体αを与える。
【0068】
リファキシミンαおよびリファキシミンβは、逆に、エチルアルコールに溶かし、その後生じた溶液をγ型の調製について既に延べたと同様に処理することによってリファキシミンγに変わる。
【0069】
このようなある型から他の型への変化は、医薬製剤の製造に必要とされる型の製造のための別の製造方法が提供されるので、本発明にとり、非常に重要である。したがって、リファキシミンγのリファキシミンαまたはβへの変換を有効な工業的様式で可能にする方法、リファキシミンαまたはβのリファキシミンγへの変換を有効な工業的様式で可能にする方法、リファキシミンαのリファキシミンβへの変換あるいはリファキシミンβのリファキシミンαへの変換を有効な工業的様式で可能にする方法は、本発明の重要な部分である。
【0070】
リファキシミンγのリファキシミンαまたはリファキシミンβへの変換に関する方法は、リファキシミンγを体積比7:3のエチルアルコール/水からなる混合溶媒に懸濁させること、38℃〜50℃の温度に懸濁液を加温すること、および、強攪拌下にこの温度で6〜36時間維持することからなっている。その後、懸濁液はろ過され、固体は水で洗浄され、乾燥される。カールフィッシャー法で測定して5.0%〜6.0%の水分含量になるまで乾燥されると多形体βが生じ、2.0%〜3.0%の水分含量になるまで乾燥が続けられると多形体αが生じる。
【0071】
リファキシミンαまたはリファキシミンβを原料にするγ型の製造方法は、50℃〜60℃の温度で攪拌しながらα型またはβ型をエチルアルコールに溶解すること、エチルアルコール/水の体積比が7:3に達するまで脱イオン水を加えること、強攪拌下で溶液を30℃まで冷却すること、析出物を0℃まで冷却すること、および懸濁液を攪拌下に、0℃で6〜24時間維持することからなっている。その後、懸濁液はろ過され、固体は水で洗浄され、水分含量が2.0%以下になるまで乾燥され、これによってリファキシミンγが得られる。
【0072】
α型をβ型に変換する方法は、粉末状のリファキシミンαを、50%より高い相対湿度の環境中に、粉末状で4.5%より高い水分含量を得るに必要な時間、一般には12〜48時間保つことからなっている。
【0073】
β型をα型に変換する方法は、リファキシミンβの粉末を、粉末状で4.5%未満、好ましくは2.0%〜3.0%の水分含量を得るため、真空下または常圧条件下で、必要により乾燥剤を用いて、室温〜105℃の温度で、2〜72時間乾燥することからなっている。
【0074】
上述したことから、湿度が制御された環境中または外部の周囲環境と顕著な水分交換が起きない密閉容器中に生成物を保存することによって、周囲条件が生成物の水分含量を変化させないように、保存中特に注意されなければならないことが明らかである。
【0075】
リファキシミンα多形体は、4.5%未満、好ましくは2.0%〜3.0%の水分含量、および、回折角2θの値6.6°;7.4°;7.9°;8.8°;10.5°;11.1°;11.8°;12.9°;17.6°;18.5°;19.7°;21.0°;21.4°;22.1°でピークを示す粉末X線回折図(図1に示している)により特定される。リファキシミンβ多形体は、4.5%超、好ましくは5.0%〜6.0%の水分含量、および、回折角2θの値5.4°;6.4°;7.0°;7.8°;9.0°;10.4°;13.1°;14.4°;17.1°;17.9°;18.3°;20.9°でピークを示す粉末X線回折図(図2に示している)により特定される。
【0076】
リファキシミンγ多形体は、貧結晶性故のはるかに貧弱な粉末X線回折図によって特定されている。図3に報告するように、特徴的ピークは、回折角2θの値5.0°;7.1°;8.4°にある。
【0077】
回折図は、ブラッグ−ブレンターノ配置(Bragg-Brentano geometry)を備えたPhilips社製のX’pert装置によって、以下の操作条件下で測定された。
X線管:銅
使用した放射線:K(α1)、K(α2)
発生装置の電圧および電流:KV40、mA40
モノクロメーター:グラファイト
ステップサイズ:0.02
ステップ当たりの測定時間:1.25秒
開始および最終角2θ値:3.0°〜30.0°
分析試料中の水含量の定量は、常にカールフィッシャー法によった。
【0078】
リファキシミンα、リファキシミンβおよびリファキシミンγはバイオアベイラビリティーおよび固有溶出(intrinsic dissolution)においても互いに明確に区別される。
【0079】
3つの多形体のバイオアベイラビリティー研究が、メスのビーグル犬で、それらに多形体の一種を100μg/kgの投与量で経口的に給仕し、それぞれの個体の頸静脈(jugular vein)から投与前および投与1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後および24時間後に血液試料を採取し、ヘパリンを含む試験管に試料を移し、遠心により血漿を分離することで行われた。
【0080】
血漿は、検証されているLC−MS/MS(液体クロマトグラフィ−質量分析/質量分析)法でリファキシミンが分析され、観察された最高血漿濃度(maximum plasma concentration)(Cmax)、Cmaxに到達する時間(tmax)および血漿濃度−時間曲線下面積(area under the concentration - time curve)(AUC)が算定された。
【0081】
下記の表1に報告されている実験データは、明らかに、リファキシミンαおよびリファキシミンβは殆ど吸収されていないが、リファキシミンγは0.1〜1.0μg/mlの範囲に含まれる値(Cmax=0.668μg/ml)で吸収されることを示す。
【0082】
【表1】

【0083】
固有溶出試験はUSP(米国薬局方)27の頁2512〜2513にあるモノグラフ1087に記載された方法で3つの多形体それぞれについて実施され、リファキシミンα、リファキシミンβおよびリファキシミンγ間に顕著な差があった。
【0084】
各リファキシミン多形体試料は成形型に入れられ、水圧パンチを用いて5トンで固められ、圧縮ペレットとされた。
【0085】
次いで、圧縮ペレットが入った成形型ホルダーが実験室撹拌装置に取り付けられ、溶出媒体に漬けられ、撹拌装置により回転された。
【0086】
試験は、pH7の水系燐酸バッファーとラウリル硫酸ナトリウムからなる溶出媒体中37±0.5℃の温度で実施され、3つの多形体により示される固有溶出速度間に顕著な差を示した。
【0087】
リファキシミンαは、10分以内に圧縮ペレットの崩壊が見られ、固有溶出値を計算することができなかった。一方、リファキシミンγの固有溶出値は、リファキシミンβの100倍以上であるバイオアベイラビリティーと同様に、リファキシミンβの値の約10倍であった。
【0088】
上の実験結果は、3つリファキシミン多形体間にある差をさらに指摘している。
【0089】
α型、β型およびγ型は、経口および局所のどちらにも使用するために、リファキシミンを含む、抗生物質活性を有する医薬製剤の製造に有利に用いうる。経口使用の医薬製剤は、通常の賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、ソルビトールなどの希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ゴム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;タルク、ステアレート、水添植物油、ポリエチレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素などの潤滑剤;デンプン、セルロース、アルギネート、ゴム、網状ポリマーなどの崩壊剤;着色料、香料および甘味料と共にリファキシミンαまたはリファキシミンβあるいはリファキシミンγを含んでいる。
【0090】
本発明は、経口経路によって投与可能なすべての固体製剤、例えば、被覆および非被覆錠剤、軟質および硬質ゼラチンから作製されるカプセル剤、糖衣錠剤、トローチ剤、カシェ剤、丸薬および密封小分け散剤に関している。
【0091】
局所使用のための医薬製剤は、通常の賦形剤、例えば、白色ワセリン、白ろう、ラノリンおよびその誘導体、ステアリルアルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪族ポリオキシエチレンアルコールのエーテル、脂肪族ポリオキシエチレン酸のエステル、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびマグネシウム、アルギン酸ナトリウムと共にリファキシミンαまたはリファキシミンβあるいはリファキシミンγを含んでいる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例により本発明を説明する。これら実施例により本発明を制限するものではない。α型、β型およびγ型が結晶化および乾燥の上述の条件を適切に組み合わせることにより得られることが実際に明らかである。
【0093】
実施例1
粗リファキシミンおよび乾燥粗リファキシミンの製造
機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの三口フラスコに、脱イオン水120ml、エチルアルコール96ml、リファマイシンO 63.5gおよびの2−アミノ−4−メチルピリジン27.2g室温で連続的に入れられる。入れた後、反応マスは47±3℃に加熱され、この温度で5時間撹拌下に保たれ、次いで、20±3℃に冷却され、そして、脱イオン水9ml、エチルアルコール12.6ml、アスコルビン酸1.68gおよび濃塩酸水溶液9.28gからなる、別途作成された、混合液を30分間で添加される。添加完了後、反応マスは撹拌下に30分間内温20±3℃で保たれ、次いで、同温に保ちながら、濃塩酸7.72gがpH2.0になるまで滴下される。
【0094】
添加完了後、反応マスは、内温20℃に保たれながら、30分間撹拌下に置かれ、次いで、析出物はろ過され、脱イオン水32mlとエチルアルコール25mlからなる混合溶媒により洗浄される。得られた“粗リファキシミン”(89.2g)は真空下に室温で12時間乾燥され、“乾燥粗リファキシミン” 64.4gが得られる。これは水分含量が5.6%であり、多形体βに対応する回折図を示す。真空下にさらに恒量になるまで乾燥することにより生成物は水分含量2.2%である乾燥粗リファキシミン62.2gを与え、その回折図は多形体αに対応する。
【0095】
この生成物は吸湿性であり、得られた多形体は可逆性である。すなわち、多形体αは、相対湿度および暴露時間に応じて、大気湿分から水を吸収する。多形体αによって吸収された水分含量が4.5%以上になると、多形体αは多形型βに変わる。逆に、これが乾燥によって水の一部を失って、水分含量が2.0〜3.0%になったときに多形型αに変わる。
【0096】
実施例2
リファキシミンγの製造
エチルアルコール163mlおよび乾燥粗リファキシミン62.2gが機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの三口フラスコに室温で入れられる。懸濁液は固体が完全に溶解するまで撹拌下に57±3℃に加熱され、この温度で脱イオン水70mlが30分間で加えられる。添加完了後、温度は40分かけて30℃にされ、この温度で多くの結晶が得られるまで保たれ、次いで温度はさらに2時間かけて0℃へ下げられ、この温度で6時間保たれる。次いで、懸濁液はろ過され、固体は脱イオン水180gで洗浄され、真空下に室温で恒量になるまで乾燥され、水分含量1.5%であるリファキシミンγ52.7gが得られる。
【0097】
γ型は、回折角2θ5.0°;7.1°;8.4°に特徴的なピークを示す粉末X線回折図から特定される。
【0098】
実施例3
リファキシミンαの製造
乾燥粗リファキシミン62.2gおよびエチルアルコール163.3mlが機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの三口フラスコに室温で入れられる。懸濁液は固体が完全に溶解するまで撹拌下に57±3℃に加熱され、この温度で脱イオン水70mlが30分内に添加される。添加完了後温度は40分間で30℃にされ、この温度で十分に結晶化するまで保たれる。次いで懸濁液の温度は約40℃にされ、この温度で20時間撹拌下に保たれる。次いで温度はさらに30分かけて0℃へ下げられ、すぐに懸濁液はろ過される。固体は脱イオン水180mlで洗浄され、真空下に室温で恒量になるまで乾燥され、それによって水分含量2.5%であり、角2θの値6.6°;7.4°;7.9°;8.8°;10.5°;11.1°;11.8°;12.9°;17.6°;18.5°;19.7°;21.0°;21.4°;22.1°のピークを示す粉末X線回折図を有するリファキシミンα51.9gが得られる。
【0099】
実施例4
リファキシミンαの製造
粗リファキシミン89.2gおよびエチルアルコール170mlが機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの三口フラスコに室温で入れられ、次いで、懸濁液は固体が完全に溶解するまで撹拌下に57±3℃に加熱される。温度は50℃にされ、次いでこの温度で30分かけて脱イオン水51.7mlが添加される。添加完了後温度は1時間で30℃にされ、十分に結晶化するまでこの温度で30分間保たれる。懸濁液の温度は40℃にされ、この温度で20時間撹拌下に保たれ、次いで温度はさらに30分かけて0℃へ下げられ、すぐに懸濁液はろ過される。固体は脱イオン水240mlで洗浄され、真空下に65℃で恒量になるまで乾燥され、それによって水分含量2.5%であるリファキシミンα46.7gが得られる。
【0100】
実施例5
リファキシミンαの製造
懸濁液を保持する温度を50℃に上げ、この温度で懸濁液を保持する時間を7時間に短縮して、実施例3が繰り返される。得られた生成物は実施例3と同じものである。
【0101】
実施例6
リファキシミンβの製造
実施例3の方法に従って、乾燥粗リファキシミンの再結晶化が行なわれる。減圧下、室温での乾燥は、カールフィッシャー法で調べられ、水分含量が5.0%になると停止される。角2θの値5.4°;6.4°;7.0°;7.8°;9.0°;10.4°;13.1°;14.4°;17.1°;17.9°;18.3°;20.9°のピークを示す粉末X線回折図で特定されるリファキシミンβ52.6gが得られる。
【0102】
実施例7
リファキシミンγを原料とするリファキシミンαの製造
リファキシミンγ5gが機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの50ml容フラスコ中で、エチルアルコール13mlと脱イオン水5.6mlからなる混合溶媒に懸濁され、懸濁液は撹拌下に24時間40℃加熱される。次いで懸濁液はろ過され、固体は水で洗浄され、次いで室温で恒量になるまで真空下に乾燥される。多形体αに対応する粉末X線回折図を示し、水分含量が2.6%であるリファキシミン4gが得られる。
【0103】
実施例8
リファキシミンαを原料とするリファキシミンγの製造
リファキシミンα15gおよびエチルアルコール52.4mlが機械式撹拌機、温度計および還流コンデンサー付きの250ml容三口フラスコに室温で入れられる。懸濁液は固体が完全に溶解するまで撹拌下に50℃に加熱される。
【0104】
透明な溶液は撹拌下に脱イオン水22.5mlが30分かけて加えられ、30℃に冷され、この温度で30分間保たれる。形成された懸濁液は強撹拌下に0℃まで冷却され、この温度で6時間保たれる。この時間終了後に、懸濁液の一部が採取され、ろ過され、脱イオン水で洗浄され、減圧下に30℃で恒量になるまで乾燥される。
【0105】
こうして得られた生成物、3.7g、はγ型に一致した回折図および水分含量1.7%を示す。
【0106】
残りの懸濁液が強撹拌下に0℃でさらに18時間保たれ、次いでろ過され、脱イオン水で洗浄され、減圧下に30℃で恒量になるまで乾燥される。γ型に一致した回折図を示し、水分含量1.6%である生成物9gが得られる。
【0107】
実施例9
リファキシミンβを原料とするリファキシミンαの製造
水分含量5.0%であるリファキシミンβ5gが真空下に30℃で8時間乾燥され、水分含量2.3%であるリファキシミンα4.85gが得られる。
【0108】
実施例10
リファキシミンαを原料とするリファキシミンβの製造
水分含量2.5%であるリファキシミンα5gが硝酸カルシウム四水塩の飽和水溶液によって作られる相対湿度56%である雰囲気内に40時間保たれる。この後に水分含量5.9%であるリファキシミンβ5.17gが得られる。
【0109】
実施例11
経口による犬でのバイオアベイラビリティー
20周令純粋種メスビーグル犬12頭(体重5.0〜7.5kg)が、各4頭の3グループに分けられた。
【0110】
第一のグループはリファキシミンαで、第二のグループはリファキシミンβで、第三のグループはリファキシミンγで、下記の手順に従って処置された。
【0111】
それぞれの犬は、ゼラチンカプセルにてリファキシミン多形体の一種100mg/kgが経口的に与えられ、血液試料各2mlがそれぞれの動物の頸静脈から投与前および投与1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後および24時間後に採取された。各試料はヘパリン含有試験管に入れられ、遠心された。血漿は500μlの分注2つが採られ、−20℃で凍結された。
【0112】
血漿中のリファキシミンは、検証されているLC−MS/MS法で分析され、下記のパラメーターが標準ノン−コンパーメンタル解析に従って計算された。
max=血漿中で観察された最高血漿濃度
max=Cmaxに到達する時間
AUC=直線台形規則で計算された血漿濃度−時間曲線下面積
下記の表2に報告されている実験データは、実質的に吸収されないリファキシミンαおよびリファキシミンβに較べ、リファキシミンγがどんなに多く、102倍より大きい、吸収されるかを示している。
【0113】
【表2】

【0114】
実施例12
固有溶出試験
各リファキシミン多形体100mgの試料は、USP(米国薬局方)27の頁2512〜2513にあるモノグラフ1087に記載されていると同様に実施された固有溶出試験がされた。
【0115】
リファキシミン多形体100mgは成形型に入れられ、水圧パンチを用いて一分間5トン圧で固められた。
【0116】
圧縮ペレットの50%〜75%が適切な溶出媒体に溶出することができるように成形型の底部に露出した限定された面積の単純面を有する成形型中に圧縮ペレットが形成された。
【0117】
次いで、成形型を収容しているホルダーが実験室撹拌装置に取り付けられ、溶出媒体が入ったガラス容器に漬けられ、溶出媒体の温度を37±0.5℃に保ちながら、撹拌装置により100rpmの回転速度で回転された。
【0118】
容器に入れられた溶出媒体は、ラウリル硫酸ナトリウム4.5gを含むpH7.4の0.1M水系燐酸バッファー1000mlからなり、全試験期間中37±0.5℃に保たれた。
【0119】
リファキシミンαを含む試料は10分以内に圧縮ペレットの崩壊を常習的に示し、この現象はラウリル硫酸ナトリウムの低濃度(0.1%および0.3%)および全くこの界面活性剤を含まないときでも生じ、固有溶出値が計算できなった。
【0120】
下記の表3に示される実験結果によって推論されるように、リファキシミンγの固有溶出値は、いつでも、リファキシミンβの値の約10倍であった。
【0121】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、すべての局所製剤、例えば、軟膏、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤およびローション剤に関している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0%〜2.0%の水分含量、および主に非晶質のプロファイルを示し、回折角2θの値5.0°;7.1°;8.4°にいくつかの特徴的なピークを示す粉末X線回折図を特徴とするリファキシミンの多形体γ。
【請求項2】
モル当量のリファマイシンOが2−アミノ−4−メチルピリジンの過剰量、好ましくは、2.0〜3.5モル当量と、体積比1:1〜2:1の水とエチルアルコールの混合溶媒中で、2〜8時間、40℃〜60℃で反応され、
室温で、アスコルビン酸を含む水、エチルアルコールおよび濃塩酸の混合溶液で反応混合物が処理され、次いで、濃塩酸水溶液で反応混合物がpH2.0にされ、懸濁液がろ過され、得られた固体が上記反応で使用されたと同様の水/エチルアルコール混合溶媒で洗浄され、得られた粗リファキシミンがエチルアルコールに45℃〜65℃で溶解することによって精製され、
水を、好ましくは溶解に使用したエチルアルコールの15質量%〜70質量%、加えて沈殿が形成され、
懸濁液の温度が、4〜36時間撹拌しながら、50℃〜0℃にさげられ、最後に懸濁液がろ過され、得られた固体が水で洗浄され、真空下または常圧下に、必要により乾燥剤を用いて、室温〜105℃の温度で2〜72時間乾燥されることを特徴とするリファキシミンγの製造方法。
【請求項3】
粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が0℃に冷やされ、この温度で6〜24時間撹拌しながら保たれ、次いで、ろ過され、得られた固体が水分含量1.0%〜2.0%になるまで乾燥されることを特徴とする、請求項2に記載のリファキシミンγの製造方法。
【請求項4】
リファキシミンαまたはリファキシミンβがエチルアルコールに50℃〜60℃で溶解され、脱イオン水がエチルアルコール/水の体積比が7:3になるまで加えられ、溶液が強撹拌下に30℃まで冷却され、さらに得られた懸濁液が0℃に冷却され、その温度で6〜24時間保たれ、次いでそれがろ過され、得られた固体が水で洗浄され、水分含量が2.0%以下になるまで乾燥されることを特徴とするリファキシミンγの製造方法であって、
リファキシミンαが、粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が6〜24時間撹拌しながら40℃〜50℃に保たれ、懸濁液が15分〜1時間で0℃に冷却され、次いで、懸濁液がろ過され、得られた固体が水分含量4.5%以下、好ましくは2.0%〜3.0%になるまで乾燥することにより製造され、
リファキシミンβが、粗リファキシミンエタノール溶液に水を加えた後、結晶化を開始させるため温度が28℃〜32℃まで下げられ、得られた懸濁液が6〜24時間撹拌しながら40℃〜50℃に保たれ、懸濁液が15分〜1時間で0℃に冷却され、次いで、懸濁液がろ過され、得られた固体が水分含量4.5%以上、好ましくは5.0%〜6.0%になるまで乾燥することにより製造される、リファキシミンγの製造方法。
【請求項5】
通常の賦形剤と共に、抗生活性を有する経口使用のための医薬製剤におけるリファキシミンγの使用。
【請求項6】
経口使用の製剤が、被覆および非被覆錠剤、硬質および軟質ゼラチンカプセル剤、糖衣錠剤、トローチ剤、カシェ剤、丸薬および密封小分け散剤から選択されることを特徴とする請求項5記載の使用。
【請求項7】
抗生活性を有する局所使用のための医薬製剤におけるリファキシミンγの使用。
【請求項8】
局所使用の製剤が、軟膏、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤およびローション剤から選択されることを特徴とする請求項7記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46738(P2011−46738A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259453(P2010−259453)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2006−537252(P2006−537252)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(304044793)アルファ ワッセルマン ソシエタ ペル アチオニ (8)
【氏名又は名称原語表記】ALFA WASSERMANN S.P.A.
【Fターム(参考)】