説明

リポソームの製造装置およびリポソームの製造方法

【課題】インラインでリポソームを製造工程中にリポソームの粒子径を監視しながら無菌状態でリポソームを製造することを可能とするリポソームの製造装置およびリポソームの製造方法の提供。
【解決手段】整粒手段と、該整粒手段にリポソーム形成脂質を含有する被処理液を供給する供給流路と、該整粒手段からリポソームを含有する被処理液を排出する排出流路とを有し、前記供給流路が、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液を前記供給流路に投入する投入口を有するリポソームの製造装置において、前記排出流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部を有し、前記第1の光透過部の外部から前記第1の光透過部に光を照射して前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を測定する第1の光透過率測定手段を少なくとも有するリポソームの製造装置、およびこれを用いるリポソームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラッグデリバリーシステムに有用な、リポソーム粒径の測定方法、ならびにこれを用いるリポソームの製造装置およびリポソームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Drug delivery system(DDS)は、薬物治療の分野において近年に治療効果を高めている手法の一つであり、その一つとしてリン脂質二重膜構造からなる球状の中空体である薬剤を担持させたリポソーム製剤に大きな注目が集まっている。このリポソーム製剤の特徴は、薬剤をリポソーム膜あるいはリポソームの内水相に担持させることができることである。一方、薬剤の血中動態は、薬剤固有のものであり、血中での薬剤の安定性の向上あるいは半減期の延長のために、リポソームに対して、官能基を化学的に修飾したprodrug化が行われることがある。この方法により、半減期の延長を含めて血液中での薬剤の安定性の向上が可能となる一方で、毒性の発生や薬効の減少が認められる例も少なくない。
しかし、薬剤をリポソームに担持させることにより、薬物自身の薬効を維持し、半減期の延長および血液中での薬剤の安定性の向上が期待できるだけでなく、副作用の軽減が期待できる。また、リポソーム製剤はリポソームの粒子サイズの制御と親水性高分子によるリポソーム表面の被覆により、リポソームの主な排泄経路である肝臓、脾臓、リンパ節および肺に存在する細網内皮系(RES;Reticulo-Endotherial System)への取り込みを阻害できることから、リポソームでの血中滞留性の増加にともなう病巣部位への蓄積(受動的targeting)の増加による治療効果の向上が期待できる。
【0003】
リポソーム内に封入した薬剤の血中薬物動態は、リポソームの血中動態によるところが大きい。このとき、リポソームの体内動態および組織分布は、その粒子径および粒度分布により影響を受けることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。従って、これらのパラメータがリポソーム製剤において重要であり、製造工程においてこれらのパラメータは主に整粒化工程において制御されている。このように、整粒化工程は、リポソームの製剤特性を決定づける工程であり、リポソーム製剤製造工程において最重要工程の一つである。
【0004】
リポソーム製剤の粒子径は、その治療目的あるいは対象疾患に応じて目的粒子径が設定されるが、設定された粒子径を得るために、リポソーム形成時あるいはそれに引き続き整粒化工程が行われる。整粒化工程はextruderを用いて行われることが多く、この場合、目的とする粒子径に到達するために数回の整粒化工程が行われる。整粒化回数は製造に先立ち予め各整粒化毎での粒子径を測定し、その結果に基づき最終的に整粒化工程の回数が決定される。その一方で、整粒化時にかかる圧力により形成するリポソームの粒子径が異なることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。従って、製造工程中において何らかの影響で過度の圧力変動が生じた場合、設定した目的粒子径とは異なる粒子が生成される。そのため、このような圧力変動が生じた場合であっても目的とする粒子径に到達しているか否かについて現在知られているリポソーム製造方法では、整粒化時に判断することはできない。
【0005】
また、リポソーム製剤の多くは直接静脈内より投与されるケースが多いため、製剤の無菌性および無菌リスクの低減が求められる。従って、できる限りの無菌管理が必要であり、製造工程において細菌介在リスクを最大限に抑止しなければならない。ここで、最終滅菌を行なうことのできないリポソーム製剤では、細菌介在リスクの最も低減できる方法は、密閉された状態で工程操作を行うことである。しかし、リポソームの製造工程は多岐にわたり、かつリポソーム製剤には規格あるいは製造工程中間体のcriteriaとして粒子径が設けられている。このサンプリング時において、密閉環境が損なわれ、このことによる細菌介在リスクが増大する。
【0006】
従って、良質な品質を持つリポソーム製剤を提供するために無菌管理と製造時における粒子径管理が非接触、かつ正確にリアルタイムで監視できる粒子径測定システム構築が望まれる。
近年、Process Analytical Technology(PAT)という概念が注目されている。この背景には、生産技術が研究開発における技術の向上よりも遅れがちであり、この生産技術の遅れが、結果として品質に与えることや、品質管理システムが不十分な結果、最終製品が規格適合外となるケースも見られることが問題視されている。こうした背景の中で、最新の技術を製造工程、特に製品の製造にあたり、品質に影響を与える重要工程に取り入れ、連続的な品質保証すなわちリアルタイムに製品品質を監視することにより品質不良の発生を防止することが求められている。また、このような技術を入れることにより、オフラインによる製造工程検査などを簡略化することが可能である。
現在、PATの対象となる測定技術として、近赤外吸収やラマン分析による分光分析、音響および電子音響分光分析、X線分光分析、pH、伝導率、電位差測定、誘電測定など様々な技術がある。この中でも、近赤外吸収による分析は、混合均一性、水分測定、成分含量の測定など幅広い分野で用いられている手法である。
【0007】
【非特許文献1】Biochim. Biophys. Acta. 1190, 99-107, 1994.
【非特許文献2】Biophys. J. 74, 2996-3002, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リポソーム製剤製造において、製剤の均質化を達成するためには粒子径の制御は重要工程である。
しかしながら、現状としては整粒化処理完了後にその工程試験として粒子径測定を行っているに過ぎず、工程試験としてリポソームの粒子径測定は整粒化工程をリアルタイム下で監視するものではない。
したがって、本発明は、インラインでリポソームを製造工程中にリポソームの粒子径を監視しながら無菌状態でリポソームを製造することを可能とするリポソームの製造装置およびリポソームの製造方法の提供を目的とする。
また、本発明はさらに、リポソームの粒度分布を簡易的に評価するシステムを構築することを目的としている。その結果として、良質な品質をもつリポソーム製剤の製造を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、以上の点を鑑みて、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、リポソーム製造工程において、レーザーを用いてリポソームを含む試料溶液の透過度をmonitoringすることにより、粒子径制御の段階で非接触且つリアルタイムにリポソーム粒子の形成挙動を監視するシステムを構築できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)を提供する。
(1) 入口と出口を有するリポソームの整粒手段と、
該整粒手段と前記入口を介して一体に形成され、該整粒手段にリポソーム形成脂質を含有する被処理液を供給する供給流路と、
該整粒手段と前記出口を介して一体に形成され、該整粒手段からリポソームを含有する被処理液を排出する排出流路とを有し、
前記供給流路が、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液を前記供給流路に投入する投入口を有するリポソームの製造装置において、
前記排出流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部を有し、
前記第1の光透過部の外部から前記第1の光透過部に光を照射して前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を測定する第1の光透過率測定手段を少なくとも有するリポソームの製造装置。
上記(1)に記載のリポソームの製造装置において、前記第1の光透過率測定手段は、前記光透過率を表示することができる。
(2) 前記供給流路の基端と前記排出流路の末端とが結合し、流体循環回路を形成している上記(1)に記載のリポソームの製造装置。
(3) 前記供給流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第2の光透過部を有し、
前記第2の光透過部の外部から前記第2の光透過部に光を照射して、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液の光透過率を測定する前記第2の光透過率測定手段をさらに有する上記(1)または(2)に記載のリポソームの製造装置。
上記(3)に記載のリポソームの製造装置において、前記第2の光透過率測定手段は、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液の光透過率を表示することができる。
(4) 前記第1の光透過率測定手段が、第1のレーザー光照射部、第1のレーザー光受光部およびこれらと接続された第1の光透過率算出部とを有し、
前記第2の光透過率測定手段が、第2のレーザー光照射部、第2のレーザー光受光部およびこれらと接続された第2の光透過率算出部とを有する上記(3)に記載のリポソームの製造装置。
(5) さらに、前記光透過率から前記リポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段を有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリポソームの製造装置。
(6)前記第1の光透過率測定手段が前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を表示し、前記第2の光透過率測定手段が前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液の光透過率を表示する上記(3)〜(5)のいずれかに記載のリポソームの製造装置。
(7) 前記レーザー光照射部が照射するレーザー光の波長が670nmである上記(4)〜(6)のいずれかに記載のリポソームの製造装置。
(8) リポソーム形成脂質含有液を予め整粒手段に複数回通過させる整粒化処理を行ってリポソーム含有液とし、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について所定波長における前記リポソーム含有液の光透過率を測定し、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について粒度計にて前記リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定し、前記光透過率と前記粒径との相関関係を予め求めておく予備工程と、
リポソーム形成脂質を含有する被処理液を上記(1)〜(7)のいずれかに記載のリポソームの製造装置にて整粒化処理を行ってリポソームを含有する被処理液とし、前記所定波長における、前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を測定しつつリポソームを製造する本工程とを有するリポソームの製造方法。
【0011】
本発明のリポソームの製造方法は、前記リポソーム粒径演算手段において前記相関関係と前記リポソームを含有する被処理液の光透過率とを用いて前記リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径を求めることができる。
【0012】
また、本発明のリポソームの製造装置または本発明のリポソームの製造方法に使用することができるリポソーム粒径の測定方法として、以下の(9)、(10)を提供する。
(9) リポソームを含有する被処理液が内部を通過し、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する流路において、前記光透過部の外部から、前記光透過部に光を照射し前記被処理液の光透過率を測定する光透過率測定手段と、前記光透過率から前記リポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段とを有するリポソーム粒径測定装置を使用することによってリポソームの粒径を測定するリポソーム粒径の測定方法。
(10) 前記リポソーム粒径演算手段が、
リポソーム形成脂質含有液を予め整粒手段に複数回通過させる整粒化処理を行ってリポソーム含有液とし、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について所定波長における前記リポソーム含有液の光透過率を測定し、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について粒度計にて前記リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定することによって得られる、前記光透過率と前記粒径との相関関係と、
前記リポソームを含有する被処理液の光透過率とを用いて、
前記リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径を求めるものである上記(9)に記載のリポソーム粒径の測定方法。
【0013】
本発明のリポソームの製造装置および本発明のリポソームの製造方法によるリポソームの粒子径の測定精度は極めて高く、この技術は工業スケールにも十分対応できるものであった。
また、粒子径制御段階で生じる整粒化前と整粒化後の粒子径の差よりリポソームの粒度分布に関する情報を得ることが可能である。
さらに、本発明に至る過程において、閉鎖型還流システムを用いてリポソームを連続的に処理することにより完全な密閉ラインでリポソームを調製することができた。
副次的な効果であるが、本システムを用いることにより整粒化工程をリアルタイムに確認することができるため、製造におけるリードタイムを短縮する効果なども期待できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリポソームの製造装置は、インラインでリポソームを製造工程中に粒子径を監視しながら無菌状態でリポソームを製造することができる。
本発明のリポソームの製造方法によれば、インラインでリポソームを製造工程中に粒子径を監視しながら無菌状態でリポソームを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について以下詳細に説明する。
まず初めに本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法について以下に説明する。
本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法としては、例えば、
(1)リポソームを含有する被処理液が内部を通過し、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する流路において、前記光透過部の外部から、前記光透過部に光を照射し前記被処理液の光透過率を測定する光透過率測定手段を有するリポソーム粒径測定装置を使用することによってリポソームの粒径を測定するリポソーム粒径の測定方法、
(2)さらに、前記光透過率から前記リポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段を有するリポソーム粒径測定装置を使用することによってリポソームの粒径を測定するリポソーム粒径の測定方法が挙げられる。
【0016】
光透過率測定手段について以下に説明する。
リポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段は、リポソームを含有する被処理液が内部を通過し、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する流路において、前記光透過部の外部から、前記光透過部に光を照射し前記被処理液の光透過率を測定する手段である。
【0017】
光透過率測定手段は、光透過部の外部(つまり流路の外部)に配置して、光透過部の外部から、光透過部に光を照射し被処理液の光透過率を測定することができる装置であれば特に制限されない。また、光透過率測定手段は光透過率を表示することができる。
例えば、光を光透過部の外部から光透過部へ照射する光照射部、光透過部を通過した光を受光する光受光部、およびこれらと接続され、光照射部から照射された光の強さと光受光部で受光した光の強さから光透過率を算出する光透過率算出部と光透過率を表示する表示部とを有する光透過率測定装置が挙げられる。
表示部は光透過率算出部と一体となっていてもよい。
表示部における光透過率の表示方法は特に制限されない。
なお、光透過率算出部が外部ユニットであるデータ収集装置に収納されていてもよい。
光照射部から照射される光は特に制限されない。例えば、レーザー光、赤外線、X線が挙げられる。
光の波長については、用途に応じて選択することが可能であるが対象物の吸収スペクトルにより決定することが望ましい。
本発明は透過率測定を基本としているため、この場合は可視光(約380nm〜780nm)の範囲内を選択することが一般的である。
【0018】
光透過率測定手段において使用される光は、レーザー光が好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明において用いることができるレーザー光とは、「単一の波長による単色性」、「同位相による干渉性」、「光が集中して拡散しない指向性」の3つを有する自然には存在しない人工的な光を意味する。
一般的に光透過率測定手段に用いられるレーザー光は赤色LEDが多く、その中心波長が630〜680nmであることから本発明におけるレーザー光の波長は630〜680nmであることが好ましい。しかし、試料溶液に応じこの波長を変更せざるを得ない状況の場合はその好適値とすることが好ましい。
光透過率測定手段において使用される光がレーザー光である場合、光透過率測定手段は、レーザー光照射部、レーザー光受光部およびこれらと接続された光透過率算出部とを有する光透過率測定装置が挙げられる。
【0019】
光透過率測定手段が配置される箇所は、リポソームを含有する被処理液が内部を通過し、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する流路における、光透過部の外部である。
【0020】
流路について以下に説明する。
流路は、リポソームを製造する製造ラインにおいて、リポソームを含有する被処理液が通過する部分であれば特に制限されない。
流路は、流速調整手段として、例えば、拡径手段、一時滞留手段、サンプリング手段を有することができる。
リポソームの製造ラインについては後述する。
リポソームを含有する被処理液は、リポソームを含有する液であれば特に制限されない。液は、水溶液、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液であってよい。
【0021】
流路は、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する。
流路が少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される光透過部を有する場合、光透過部以外の部分は、光透過性を有さないか、光透過部と光透過性が異なることが好ましい。
また、流路はその全体が光を透過させることができる材料で形成されていてもよい。
流路における光透過部は、光透過率測定の観点から光を透過させることができる材料で形成されるものである。
光を透過させることができる材料としては、透明度の高い素材や透明な素材であれば特に制限されない。例えば、石英ガラス;水晶;ガラス;フッ素系樹脂(例えばPFA);ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエステル(例えば、PET)のようなプラスチックが挙げられる。
【0022】
流路は、その形状について特に制限されない。例えば、断面が、円形、楕円形、四角形のものが挙げられる。
流路の少なくとも一部が光透過部である場合、光透過部の形態は光透過率測定手段における光照射や光受光を阻害しないものであれば特に制限されない。例えば、光が照射される部分を含む、流路の周全体;円形、楕円形または四角形の窓を光被照射部および光通過部として2箇所有するものが挙げられる。
流路の少なくとも一部が光透過部である場合、光透過部以外の部分は特に制限されない。例えば、金属のように、光を透過させないまたは透過させにくい材料から形成させるものであってもよい。
【0023】
流路の少なくとも一部が光透過部である場合、光透過部は光透過部以外の部分より光透過性が高いことが好ましい。
光透過部と光透過部以外の部分の組合せとしては、光透過部が透明度の高い素材として知られ、光ファイバーなどに用いられている石英ガラスや薬剤吸着性の低く、透明度も高いフッ素樹脂のPFAである場合が好ましく、光透過部以外の部分としては、製造ラインの観点からステンレスであることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0024】
光透過率測定手段は、光透過部の外部に配置されていれば特に制限されない。また、流路全体が光を透過することができる材料で形成されている場合、光透過率測定手段の配置位置は特に制限されない。
また、光透過率測定手段と光透過部との間隔は特に制限されない。光透過率測定手段を光透過部に接するように配置することができる。または、光透過率測定手段を光透過部から離して配置することができる。
光透過率測定手段と流路との間に間隔を持たせる場合、光照射部と流路との間隔は0.1〜100cmとすることができ、光受光部と流路との間隔は0.1〜100cmとすることができる。実用面の観点からこの距離は短ければ短いほど精度が上がるため好ましい。
【0025】
本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路について添付の図面を使用して以下に説明する。なお、本発明は添付の図面に制限されない。
図3は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例との概略を示す模式的な斜視図である。
図3において、流路301は、リポソームを含有する被処理液330が内部303を矢印307の方向に通過し、光を透過させることができる材料で形成される光透過部305を有し、流路301の断面(図示せず。)は円形である。光透過部305は、光321が照射される部分325を少なくとも含む流路の外周面となる。
リポソーム粒径測定装置300は、光透過率測定手段310とデータ収集装置320とを有する。
光透過率測定手段310は、光透過部305の外部から光透過部305に光321を照射する光照射部311と、光透過部305を通過した光323を受光する光受光部313と、被処理液330の光透過率を測定する光透過率算出部318とを有する。光透過率算出部318は、光照射部311とコード315で接続され、光受光部313とコード317で接続され、データ収集装置320とコード319で接続されている。
光透過率は、光透過率測定手段310において測定される。
測定された光透過率を、光透過率算出部318またはデータ収集装置320において表示することができる。
【0026】
なお、光透過率測定手段310が第1の光透過率測定手段である場合、第1の光透過率測定手段310は第1の光照射部311と、第1の光受光部313と、第1の光透過率算出部318とを有する。
光透過率測定手段310が第2の光透過率測定手段である場合、第2の光透過率測定手段310は第2の光照射部311と、第2の光受光部313と、第2の光透過率算出部318とを有する。
第1の光透過率算出部と第2の光透過率算出部とは一体とすることができる(図示せず。)。
【0027】
図4は、図3に示す、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例とを、矢印Aの方向からの側面として示す模式的な側面図である。
図4において、流路401は、その断面(図示せず。)が円形であり、その外径L3は0.5〜100cmであるのが好ましい。光照射部411はコード415で光透過率算出部(図示せず。)と接続され、光受光部413とコード417で光透過率算出部(図示せず。)と接続されている。光照射部411と流路401との間隔L1は0.1〜100cmとすることができ、光受光部413と流路401との間隔L2は0.1〜100cmとすることができる。
【0028】
図5は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例との概略を示す模式的な斜視図である。
図5において、流路501は、リポソームを含有する被処理液530が内部503を矢印509の方向に通過し、光を透過させることができる材料で形成される光透過部505を有し、光透過部505は四角形の光被照射部506と四角形の光通過部507とを有し、流路501の断面(図示せず。)は四角形である。
リポソーム粒径測定装置500は、光透過率測定手段510とデータ収集装置520とを有する。
光透過率測定手段510は、光被照射部506の外部から光被照射部506に光521を照射する光照射部511と、光通過部507を通過した光523を受光する光受光部513と、被処理液530の光透過率を測定する光透過率算出部518とを有する。光透過率算出部518は、光照射部511とコード515で接続され、光受光部513とコード517で接続され、データ収集装置520とコード519で接続されている。
光透過率は光透過率測定手段510において測定される。
測定された光透過率を、光透過率算出部518またはデータ収集装置520において表示することができる。
【0029】
光透過率測定手段は、光透過率算出部において、光照射部から照射された光の強さと光受光部で受光した光の強さから光透過率(光照射部から照射された光の強さに対する、光受光部で受光した光の強さの百分率)を算出する。
なお、本発明において、光透過率を透過度と表示することがある。
光透過率算出部は、光照射部および光受光部とそれぞれ接続されている。光透過率算出部と、光照射部または光受光部との接続は、有線、無線のどちらでも良く、設置環境、状況に応じて使い分けることができる。
光透過率測定手段に使用される光透過率測定装置と、リポソーム粒径演算手段を格納するデータ収集装置に搭載される通信インターフェイスとしては有線、無線のどちらでも良く、設置環境、状況に応じて使い分けることができる。
【0030】
リポソーム粒径演算手段について以下に説明する。
本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有するリポソーム粒径演算手段は、前記光透過率から前記リポソームの粒径を求める。
【0031】
本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において、光透過率測定手段によって収集された光透過率のデータは、例えば、外部ユニットであるデータ収集装置によって処理され、粒子径数値として換算される。
【0032】
リポソーム粒径演算手段は、
リポソーム形成脂質含有液を予め整粒手段に複数回通過させる整粒化処理を行ってリポソーム含有液とし、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について所定波長における前記リポソーム含有液の光透過率を測定し、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について粒度計にて前記リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定することによって得られる、前記光透過率と前記粒径との相関関係と、
前記リポソームを含有する被処理液の光透過率とを用いて、
前記リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径を求めるものであるのが好ましい。
【0033】
相関関係は、リポソーム形成脂質含有液を予め整粒手段に複数回通過させる整粒化処理を行ってリポソーム含有液とし、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について所定波長における前記リポソーム含有液の光透過率を測定し、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について粒度計にて前記リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定する予備工程において得られる、リポソーム含有液の光透過率のデータと、リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径のデータとから決定される。
【0034】
予備工程において使用される整粒手段は、batch式整粒化法、連続整粒化法のいずれであってもよい。
予備工程において使用されるリポソーム形成脂質含有液は、リポソームを形成することができるリン脂質等の成分を含有する液であれば特に制限されない。
整粒手段を通過する回数は、2〜9回であるのが好ましい。
本発明において、リポソーム含有液の光透過率を測定するために使用された光透過率測定装置はキーエンス社製透過度装置(型式;LX2-V10)であり、データ収集装置はキーエンス社製データ収集機器(型式;NR-HA08、NR-500)であり、波長670nmで光透過率が測定された。
本発明において、リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定するために使用された粒度計はZetasizer 3000(MALVERN Instruments社製)であり、リポソームの粒径を動的光散乱粒子測定によって測定し、得られた値を平均粒子径とした。
また、リポソームの粒度分布は、Zetasizer 3000(MALVERN Instruments社製)を用いて動的光散乱粒子測定で得られる多分散指数、およびField Flow Fractionation-Maltiangle Scattering(FFF-MALS, Whyatt社製)を用いて測定され、その結果得られる数平均粒子径および重量平均粒子径の比(n/w)として表される。
【0035】
相関関係としての粒子径換算アルゴリズムは特に限定されないが、本発明に至る過程で収集された結果より考えると直線近似式を用いることが最も好ましい。
【0036】
光透過率と粒径との相関関係としては、例えば、下記数式(I)で表されるものが挙げられる。
【0037】
【数1】

式中、y(n)は光透過部におけるリポソーム粒径、aは比例定数、x(n)は一定時間ごとに測定された受光光量から算出された光透過部における光透過率、bは定数、n=0、1、2・・・である。
【0038】
数式(I)は、リポソーム形成脂質含有液に含有されるリポソーム形成脂質の濃度によって、aおよびbが変わる。
例えば、リポソーム形成脂質含有被処理液に含有されるリポソーム形成脂質の濃度が82.5mmol/Lの場合、数式(I)は、
(n)=−1.0861x(n)+173.89となる(実施例1、図10参照)。
【0039】
相関関係である数式(I)の選択は、本工程で使用されるリポソーム形成脂質を含有する被処理液のリポソーム形成脂質の濃度が、予備工程で使用されたリポソーム形成脂質含有液のリポソーム形成脂質の濃度と一致している場合、当該予備工程において求められた相関関係を表す数式を選択する。そして当該数式に光透過率をあてはめてリポソームの粒径を予測する。
【0040】
本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図2は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法の一例の概略を模式的に示す概略図である。
図2において、リポソームの製造装置200は、入口221と出口223とを有する整粒手段220と、
整粒手段220と入口221を介して一体に形成され、整粒手段220にリポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給する供給流路201と、
整粒手段220と出口223を介して一体に形成され、整粒手段220からリポソームを含有する被処理液(図示せず。)を排出する排出流路202とを有し、
供給流路201が、リポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給流路201に投入する投入口205を有し、
排出流路202が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部204を有し、
供給流路201が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第2の光透過部203を有し、
投入口205はバルブ206を有し、バルブ206によって投入口205は開閉される。
リポソームの製造装置200には、リポソーム粒径測定装置230が設置されている。
リポソーム粒径測定装置230は、第1の光透過部204の外部から第1の光透過部204に光を照射してリポソームを含有する被処理液(図示せず。)の光透過率を測定する第1の光透過率測定手段213と、
第2の光透過部203の外部から第2の光透過部203に光を照射してリポソームを含有する被処理液(図示せず。)の光透過率を測定する第2の光透過率測定手段211と、
光透過率からリポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段が格納された制御部215とデータ記憶部217とを有するデータ収集装置219とを有する。
光透過率は、第1の光透過率測定手段213および第2の光透過率測定手段211で測定される。
測定された光透過率を、第1の光透過率測定手段213、第2の光透過率測定手段211またはデータ収集装置219において表示することができる。
【0041】
第1の光透過率測定手段213と第2の光透過率測定手段211とは、データ収集装置219とコード231、233で接続されている。
第1の光透過率測定手段213と第2の光透過率測定手段211とは、それぞれが光照射部、光受光部および光透過率算出部とを有する(図示せず。)。光照射部(図示せず。)は制御部215からの信号によって作動し、所定の時間間隔で光(例えば、パルス光)を発する。
整粒手段220から排出流路202へリポソームを含有する被処理液(図示せず。)が排出されている間に、第1の光透過率測定手段213において、光照射部(図示せず。)から光を照射すると、光は第1の光透過部204を透過し、第1の光透過部204を透過後の光は、光受光部(図示せず。)に受光され、光受光部(図示せず。)から受光光量に応じた信号が光透過率算出部に出力され、光透過率算出部において光照射部から照射される光の発光光量に対する、光受光部における受光光量の比の値から光透過率が随時算出され、得られた光透過率はデータ収集装置219に入力され、データ記憶部217に記憶される。
【0042】
制御部215は、整粒手段220におけるリポソームの製造開始後、下記式(1)に示すリポソーム粒径予測式に、第1の光透過率測定手段213から送られてきた光透過率をあてはめて計算を随時行っていき、その結果得られたリポソームの粒径のデータをデータ記憶部217に記憶させる。
【0043】
【数2】

式中、y1(n)は第1の光透過部におけるリポソーム粒径、a1は比例定数、x1(n)は一定時間ごとに測定された受光光量から算出された第1の光透過部における光透過率、b1は定数、n=0、1、2・・・である。
【0044】
リポソーム粒径y1(n)と時間との関係をグラフに示すことによって、得られたリポソームが所望の粒径を有するものとなったかどうかを確認することができる。
【0045】
また、制御部215は、整粒手段220におけるリポソームの製造開始後、下記式(2)に示すリポソーム粒径予測式に、第2の光透過率測定手段211から送られてきた光透過率をあてはめて計算を随時行っていき、その結果得られたリポソームの粒径のデータをデータ記憶部217に記憶させる。
【0046】
【数3】

式中、y2(n)は第2の光透過部におけるリポソーム粒径、a1は比例定数、x2(n)は一定時間ごとに測定された受光光量から算出された第2の光透過部における光透過率、b1は定数、n=0、1、2・・・である。
【0047】
制御部215は、下記式(3)に示すリポソーム粒度分布予測式の計算を随時行っていき、その結果をデータ記憶部217に記憶させる。
【0048】
【数4】

【0049】
時間に対する、光透過率差と別途測定した粒度分布の実測値データとの関係をグラフに示すことによって、得られたリポソームの粒度分布を予測することができる。
【0050】
リポソームの製造ラインについて以下に説明する。
リポソームの製造ラインとしては、例えば、一般的なリポソームの製造工程として、均一化工程、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程および無菌化工程をこの順序で有するものが挙げられる。
本発明において、流路はリポソームを製造する製造ライン中、リポソームを含有する被処理液が通過する部分であれば特に制限されない。
したがって、本発明において、リポソームを含有する被処理液は、リポソーム形成工程以降に得られるものをいう。なお、リポソーム形成工程が必要に応じて粗リポソーム形成工程のあと、整粒化工程、親水性高分子修飾工程を含む場合は、粗リポソーム形成工程以降に得られる液がリポソームを含有する被処理液に含まれる。
【0051】
光透過率測定手段が設置される箇所は、リポソームの製造において、リポソーム形成工程以降における、リポソームを含有する被処理液が通過する流路であれば特に制限されない。
整粒化工程におけるリポソームの粒子の変化を観察することを考えると、整粒化工程の後に設置されるのが好ましく、整粒化工程において使用される整粒化装置の前後に設置されることが最も好ましい。
光透過率測定手段の設置数は少なくとも1個以上であり、2個以上であるのが好ましい。
【0052】
光透過率測定手段が設置される箇所について添付の図面を用いて以下に説明する。なお、本発明は添付の図面に制限されない。
図6は、リポソームの製造ラインの一例を示す概略図である。
図6において、リポソームの製造ライン601は、均一化工程、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程および無菌化工程を有する。それぞれの工程において使用される装置(図示せず。)は流路g、a〜cで接続されている。これらのなかで、リポソームを含有する被処理液は、リポソーム形成工程以降において各工程において使用される装置(図示せず。)を結合する流路a〜cを通過する。
【0053】
本発明において、予備工程で行われる均一化工程で得られる液は、リポソーム形成脂質含有液に該当する。
また、本工程で行われる均一化工程で得られる液は、リポソーム形成脂質を含有する被処理液に該当する。
本発明において、本工程で行われるリポソーム形成工程で得られる液は、リポソーム含有液に該当する。
また、本工程で行われるリポソーム形成工程で得られる液は、リポソームを含有する被処理液に該当する。
【0054】
また、図6において、リポソームの製造ライン602は、均一化工程、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程および無菌化工程を有し、リポソーム形成工程が、粗リポソーム形成工程のあと、整粒化工程、親水性高分子修飾工程を有するものである。
リポソーム形成工程が、粗リポソーム形成工程のあと、整粒化工程、親水性高分子修飾工程を有する場合、リポソームを含有する被処理液は、流路d〜f、b、cを通過する。
【0055】
なお、本発明において、薬剤封入は、リポソーム形成工程時のリポソーム形成脂質を含有する被処理液に封入薬剤を添加し、リポソーム形成と同時に薬剤を封入する方法やリポソーム形成工程後、リポソーム膜内外にイオン濃度勾配などの勾配を生じさせ、この勾配に従って膜外に添加した薬剤をリポソーム膜内の内液に移送させリポソーム内に薬剤を封入する方法などによって実施することができる。本発明においてこれらの工程の順序は特に限定されない。
また、イオン勾配を用いる方法などにおいては未封入薬物除去工程を含む外液置換工程が2回入る場合、凍結乾燥工程が入る場合もあるが、本発明がこれらの工程の重複及び追加に影響を受けるものではない。
【0056】
リポソームの製造方法に含まれる各工程について以下に説明する。
均一化工程は、リポソーム膜を構成することができるリポソーム形成脂質を有機溶媒などを用いて溶解し、各成分の分散状態を均一化する工程のことを示す。
【0057】
一般的にリポソーム形成脂質としては、リン脂質とコレステロールなど、複数の脂質によって構成されることが多い。複数のリポソーム形成脂質が存在する場合、リポソーム形成時のリポソーム形成脂質の不均一化を避けるため、均一化工程をとるのが好ましい。単一のリポソーム形成脂質を用いる場合、均一化工程は必ずしも必須というわけではないが、以下に示す均一化工程をとることが望ましい。均一化する方法としては、クロロホルムなどを用いて完全溶解させ、真空乾燥することにより均一化する薄膜法がよく知られている。製造スケールが大きいときの製造方法としては、エタノールなどのアルコールのような有機溶媒にリポソーム形成脂質を完全溶解させることで均一化し、リポソーム形成脂質−有機溶媒溶液を次工程のリポソーム形成工程に用い、リポソーム形成工程時に発生する熱を利用して、あるいは外液置換工程時に有機溶媒を除去するという方法が広く用いられている。
【0058】
リポソーム形成工程とは、均一化された脂質を用いて粒子径の整っていない粗リポソームを形成する(粗リポソーム形成工程)とともに、引き続いて行なわれる粗リポソームを所望の粒子径に制御する工程(整粒化工程)を示す。整粒化工程の後にさらにリポソームを親水性高分子で修飾する親水性高分子修飾工程を有することができる。
なお本発明において、リポソームの製造方法におけるリポソーム形成工程を「本工程」という。
【0059】
粗リポソームの一般的な製造方法としては水和法(Bangham法)、超音波処理法、逆相蒸発法などを用いた方法が既に報告されている。また、工業レベルでの実用化を指向したスケールでの製造方法としては、加温法、脂質溶解法などがある。また、内水相に保持する薬物量を多くするための方法として、DRV法(Dehydrated/Rehydrated Vesicles)や凍結融解法なども報告されている。
【0060】
リポソーム形成工程が含むことができる整粒化工程(粒子径制御の工程)においては、膜乳化及び剪断力の持続を含む様々な公知の技術をリポソームの整粒手段として用いてリポソームの粒径を制御することができる。より具体的には、フィルターを複数回強制通過させる膜乳化法、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させる高圧乳化法などがある。何れの製造法もG. Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2nd edition, Vol.I-III、CRC Pressにおいて公知であり、この記載を引用して本明細書に記載されているものとする。
近年、新しい製造法としては、超高圧による圧縮からの速度変換を利用し、液相下でのジェット流により剪断乳化を行う方法(ジェット流乳化)や超臨界二酸化炭素を利用したリポソーム調製技術がある。また、近年においては整粒化工程を簡便化する改良型エタノール注入法などが登場している。
本発明においてこれらの方法をリポソーム形成工程においてリポソームの整粒手段として使用することができる。
【0061】
整粒化工程において使用されるリポソームの製造装置として、例えば、
入口と出口を有するリポソームの整粒手段と、
該整粒手段と前記入口を介して一体に形成され、該整粒手段にリポソーム形成脂質を含有する被処理液を供給する供給流路と、
該整粒手段と前記出口を介して一体に形成され、該整粒手段からリポソームを含有する被処理液を排出する排出流路とを有し、
前記供給流路が、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液を前記供給流路に投入する投入口を有するリポソームの製造装置であって、
前記排出流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部を有するものが挙げられる。
【0062】
整粒化工程において、リポソームの整粒手段としてextruderを用いた方法が最も一般的であり、以下リポソームの整粒手段としてextruderを用いた方法の詳細を説明する。
extruderを用いた方法は、リポソーム形成脂質を含有する被処理液(リポソーム膜を形成しうる脂質を含有する分散液)を撹拌するなどして得られた粗リポソームを含有する液を所望の粒径が得られるよう調整されたフィルターを通すことにより粒子径が所望の値に制御されたリポソームを得る手法である。この方法は他の製造法に比べて簡便であり、実験室レベルから工業化レベルまで幅広く用いられている方法である。
整粒化工程においてリポソームの整粒手段として使用されるextruderは内部にフィルターを有するものであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
extruderの内部のあるフィルターはそのフィルターメッシュ、配列、材料について特に制限されない。
【0063】
extruderを用いた粒子径制御の方法は多岐にわたる。
例えば、連続整粒化法、Batch式整粒化法、複数のextruderを並列させる方法が挙げられる。
【0064】
Batch式整粒化法について以下に説明する。
Batch式整粒化法は、一方のタンクからもう一つのタンクへ輸送する際にフィルターを通して多段階的に粒子径を制御する方法である。
Batch式整粒化法において使用されるextruderの内部のあるフィルターはそのフィルターメッシュ、配列、材料について特に制限されない。
Batch式整粒化法に使用されるリポソームの製造装置について、以下添付の図面を用いて説明する。なお、本発明は添付の図面に限定されない。
【0065】
図7は、Batch式整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。
図7において、Batch式整粒化法に使用されるリポソームの製造装置701は、入口711、713と出口715、717を有するリポソームの整粒手段720と、
整粒手段720と入口711を介して一体に形成され、整粒手段720にリポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給する供給流路731と、
整粒手段720と出口715を介して一体に形成され、整粒手段720からリポソームを含有する被処理液(図示せず。)を排出する排出流路733とを有し、
供給流路731が、リポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給流路731に投入する投入口739を有するリポソームの製造装置であって、
排出流路733が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部741を有し、
排出流路733はタンク743に接続され、タンク743にはリポソームを含有する被処理液(図示せず。)が貯蔵される。
タンク743には、タンク743からリポソームを含有する被処理液(図示せず。)を整粒手段720に供給する供給流路751が接続され、供給流路751は整粒手段720と入口713を介して一体に形成され、整粒手段720は出口717を介して排出流路753と一体に形成され、排出流路753はタンク755と接続され、タンク755にはリポソームを含有する被処理液(図示せず。)が貯蔵される。
タンク743は、リポソームを含有する被処理液(図示せず。)をリポソームの製造装置から排出するための排出口745を有し、排出口745はバルブ746で開閉することができる。
投入口739はバルブ740を有し、投入口739はバルブ740で開閉することができる。
供給流路731はポンプ735を有し、ポンプ735はリポソーム形成脂質を含有する被処理液を矢印737の方向へ供給し、またはリポソームを含有する被処理液を矢印737の方向へ循環させる。
リポソームの製造装置701は、第2〜第4の光透過部761、763、765を有することができる。
【0066】
リポソームの整粒手段としての連続整粒化法について以下に説明する。
連続整粒化法は、一つのタンクから送られたリポソームを含有する被処理液(リポソーム分散液)がextruderを通過後に同一タンクに戻り、再びextruderへ送液されることによって粒子径を制御する方法である。
連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置について、以下添付の図面を用いて説明する。なお、本発明は添付の図面に限定されない。
【0067】
図8は、連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。
図8において、連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置801は、
入口811と出口813を有するリポソームの整粒手段820と、
整粒手段820と入口811を介して末端883において一体に形成され、整粒手段820にリポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給する供給流路831と、
整粒手段820と出口813を介して基端885において一体に形成され、整粒手段820からリポソームを含有する被処理液(図示せず。)を排出する排出流路833とを有し、
供給流路831が、リポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給流路831に投入する投入口841を有し、
排出流路833が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部851を有し、
供給流路831の基端881と排出流路833の末端887とはタンク861を介して結合し、流体循環回路889を形成している。
投入口841はバルブ843を有し、バルブ843によって投入口841を開閉することができる。
流体循環回路889はポンプ871を有し、ポンプ871はリポソーム形成脂質を含有する被処理液を矢印873の方向へ供給し、またはリポソームを含有する被処理液を矢印873の方向へ循環させる。
リポソームの製造装置801は、第2の光透過部853を有することができる。
【0068】
連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置によって閉鎖型還流システムを構成することができる。
extruderを用いた粒子径制御の方法は、粒度分布の観点から後述する閉鎖型還流システムが好適である。
なお、本発明で用いる閉鎖型還流システムとは、一つのタンクから送液されたリポソームを含有する被処理液(リポソーム分散液)がextruderを通過後に同一タンクに戻る還流型のシステムを示す。
【0069】
親水性高分子修飾工程は粒径制御工程の後に実施することができる。
親水性高分子修飾工程において親水性高分子をリポソーム外表面に修飾することができる。リポソーム外表面への親水性高分子の修飾は、リポソームと親水性高分子とを接触させ、リポソーム外表面に親水性高分子を固定化することにより実施されるが、固定化にあたっては、リポソーム外表面に親水性高分子を固定化しうる部分を設けても良いし、反対に親水性高分子にリポソーム外表面を固定化しうる部分を設けても良い。本発明においては、親水性高分子そのものだけでなく、リポソーム外表面に固定化しうる部分を有するものを含めて親水性高分子と総称する。
親水性高分子修飾工程において親水性高分子を溶液として用いることが好ましい。親水性高分子を溶解させる溶媒は特に限定されない。水と混和する必要性を考えると、水、アルコール類、DMF、THF、DMSOなどが望ましく、水であることが最も好ましい。
【0070】
親水性高分子修飾工程における親水性高分子の添加の温度条件は、主膜材の相転移温度以上で行うことが好ましい。リポソームの主膜材の相転移温度は、脂質の構造に依存し、生体内温度(35〜37℃)より高いリン脂質を用いることが一般的である。具体的には、主膜材の相転移温度は50℃以上であるのが好ましく、この場合、親水性高分子の添加は50℃以上であるのが好ましい。
親水性高分子修飾工程における親水性高分子添加後は、相転移温度以上に加温し、撹拌するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。撹拌する時間は通常0〜120分であり、好ましくは0〜60分であり、より好ましくは0〜45分である。
【0071】
親水性高分子修飾工程後のリポソームは、脂質の安定性の観点から、速やかに冷却することが望ましい。より簡便に冷却する方法としては氷冷が好ましい。親水性高分子修飾工程において結合されなかった親水性高分子は、次工程の未封入薬物除去工程において除去することができる。そのため、親水性高分子修飾工程以降に未封入薬物除去工程があることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0072】
未封入薬物除去工程は、薬物溶液にてリポソーム形成工程を行った場合の、未封入薬物の除去を目的とした工程のことを示す。また、リポソーム外液置換工程は、薬物を含まない溶液にてリポソーム形成工程を行った場合の、外液置換を目的とした工程のことを示す。外液置換の目的は、均一化工程を経てリポソーム形成工程に持ち込まれた有機溶媒の除去、及びリポソーム内外のイオン勾配形成などである。未封入薬物除去工程及び外液置換工程は、結合されなかった親水性高分子を除去する工程としても有用である。本工程では、親水性高分子修飾工程で添加された親水性高分子のうち、リポソームに結合されなかったものを除去することができる。その方法としては、透析法、超遠心分離法及びゲルろ過法などが知られている。実用化を目的とした製造方法としては、例えば、ダイアライザーなどの中空糸を用いた方法や、限外ろ過膜を用いたタンジェンシャルフロー及びダイアフィルトレーションなどが挙げられる。
【0073】
無菌化工程は、リポソーム形成工程後に滅菌する工程を示す。滅菌の方法は特に限定されず、例えば、ろ過滅菌、高圧蒸気滅菌法、乾式加熱滅菌法、放射線(例えば、電子線、X線、γ線など)滅菌法、オゾン水による滅菌法、過酸化水素水を用いる滅菌法を用いることができる。また、製造方法によってはこの無菌化工程を設定しなくてもよい。無菌化工程としてろ過滅菌が好ましい態様の1つとして挙げられる。
ろ過滅菌法においては、リポソームは透過するが、指標菌として用いられるBrevundimonas diminuta(サイズ、約0.3×0.8μm)はろ過されないことが要求されるため、Brevundimonas diminutaに較べ十分に小さい粒子であることが必要である。リポソームの粒径が100nm付近であることは、このろ過滅菌工程をより確実にする上でも重要である。ろ過滅菌に用いるフィルターは、孔径0.45μm以下であることが好ましく、例えば孔径0.2μmのろ過滅菌フィルターを用いることができる。
【0074】
リポソーム形成工程において、整粒化工程(粒子径制御の工程)を設けることが好ましい。リポソームが球状またはそれに近い形態をとる場合には、特に限定されないが、リポソームの直径は、通常20nm〜2000nmであり、好ましくは30nm〜400nmであり、より好ましくは50nm〜250nmである。
【0075】
リポソームの製造において使用される成分について以下に説明する。
リポソームは、リン脂質二重膜からなる閉鎖小胞であり、その小胞空間内に水相(内水相)を含む。
リポソームは、リポソームを担体としこれに薬物を担持させたリポソーム製剤であってもよい。
なお、本明細書において「リポソーム」はリポソーム粒子そのものだけでなく、リポソーム粒子の懸濁液を示す用語としても使われる。
【0076】
ここでいう「担持」とは、担体に薬物が含有された状態を意味する。より具体的には、薬物がリポソームの内水相に存在するのでもよく、担体の構成成分である脂質層表層に静電的相互作用などで固定化された状態で存在するのでもよく、脂質層内に一部または全ての部分が含まれている状態であってもよい。また、薬物が担持される場所としては、リポソーム表面、脂質膜及び内水相が挙げられるが、中でもリポソームの内水相は体積が大きく、薬物担持量が多いため好ましい。リポソーム製剤は、リポソームに薬物が担持された状態であれば特に限定されず、リポソーム製剤が被処理液に分散あるいは懸濁されてなる状態であってもよい。
【0077】
リポソームは、脂質二重膜層の1枚膜からなるユニラメラ小胞(Small Unilamellar Vesicle,SUV、Large Unilamellar Vesicle,LUV)および複数枚からなる多重ラメラ小胞(Multilamellar Vesicle,MLV)などの膜構造が知られている。MLVは、リポソームに内包された薬物の漏出を抑制するのに適したリポソームの膜構造である。
【0078】
リポソーム形成脂質は、リポソームを形成することができる脂質であれば特に制限されない。例えば、リン脂質、リン脂質以外の他の脂質類、その誘導体、親水性高分子の脂質誘導体が挙げられる。
リポソームを形成する際に使用されるリン脂質は、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水性基とリン酸基より構成される親水性基とを持つ両親媒性物質である。
リン脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン(=レシチン)、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジン酸、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトールのようなグリセロリン脂質;スフィンゴミエリン(Sphingomyelin,SM)のようなスフィンゴリン脂質;カルジオリピンのような天然または合成のジフォスファチジル系リン脂質およびこれらの誘導体;これらを常法に従って水素添加したもの(例えば、水素添加大豆フォスファチジルコリン(HSPC))等を挙げることができる。以下、これらのリン脂質を「リン脂質類」と称することもある。これらのうちでも、水素添加大豆フォスファチジルコリン等の水素添加されたリン脂質、スフィンゴミエリン等が好ましい。
【0079】
また、リポソームは、このようなリン脂質を用いることにより、保存時に、または、血液などの生体中で、リポソーム内に封入された薬物がリポソームから外部へ容易に漏出しないように主膜材として相転移温度が生体内温度(35〜37℃)より高いリン脂質を用いることが好適である。これらのリポソームは、主膜材の相転移温度以下の温度では、粒子径制御が困難になるため、主膜材の相転移温度以上で製造することが好ましい。例えば、主膜材の相転移温度が50℃付近である場合、50〜80℃程度が好ましく、より具体的には60〜70℃程度で製造されることが好ましい。
リポソームは、主膜材として単一種のリン脂質を、または、複数種のリン脂質を含むことができる。
【0080】
主要構成成分であるリン脂質の量は、膜脂質全体中、通常、20〜100mol%であり、好ましくは40〜100mol%である。
またリン脂質以外の他の脂質類の量は、膜脂質全体中、通常、0〜80mol%であり、好ましくは0〜60mol%である。
【0081】
本発明において、脂質二重膜は、脂質二重膜の表面、特に外側のみに選択的に親水性高分子を修飾させることができる。
修飾に使用される親水性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。
【0082】
これらの中でも、リポソーム製剤の血中滞留性を優れたものにする効果があることから、本発明の主旨にかなったものとしてポリエチレングリコール類、ポリグリセリン類、ポリプロピレングリコール類が好ましく、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリセリン(PG)、ポリプロピレングリコール(PPG)がより好ましい。なお、このような親水性高分子は、保存安定性に優れるからであるので片末端がアルコキシ化(例えば、メトキシ化、エトキシ化、プロポキシ化)されているものが好ましい。これらの中でも、ポリエチレングリコール(PEG)は最も汎用であり、血中滞留性を向上させる効果があり、好ましい。
【0083】
リポソームは、リン脂質、親水性高分子の脂質誘導体の他に、他の膜構成成分を含むことができる。他の膜構成成分としては、例えば、コレステロールや飽和・不飽和脂肪酸などのリン脂質以外の脂質およびその誘導体(以下、これらを「他の脂質類」と称することもある。)が挙げられる。リポソームは、主膜材として上記のリン脂質および親水性高分子の脂質誘導体とともに、他の脂質類を含む混合脂質による膜で形成されるのが好ましい。このように本発明に係るリポソームは、上記脂質および親水性高分子とともに、上記膜構造を保持しうるものであって、リポソームに含むことができる他の膜成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含むことができる。
【0084】
リポソームには、種々の薬物を担持させることができる。
例えば、治療のための薬物としては、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体、抗ガン剤、抗生物質、酵素剤、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、ケミカルメディエーターの遊離阻害剤、血管内皮細胞の増殖促進または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、メイラード反応抑制剤、アミロイドーシス阻害剤、一酸化窒素合成阻害剤、AGFs(Advanced glycation endproducts)阻害剤、ラジカルスカベンジャー、タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、オリゴ糖および多糖などが挙げられる。
【0085】
具体的には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンなどのアントラサイクリン系、シスプラチン、オキサリプラチンなどのシスプラチン系、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン系、ビンクリスチン、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイド系、ブレオマイシンなどのブレオマイシン系、シロリムスなどのシロリムス系の抗がん剤、メトトレキセート、フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビンなどの代謝拮抗剤、ヘモグロンビン、インターフェロン、インスリンなどのペプチド系薬剤、スピカマインシン誘導体、ポルフィリン系化合物、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイドやその誘導体、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、フェニルブタゾンなどの非ステロイド抗炎症剤、ヘパリン、低分子ヘパリンなどのメザンギウム細胞増殖阻害剤、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、カプトプリルなどのACE(angiotensin converting enzyme)阻害剤、メチルグアニジンなどのAGE(advanced glycation endoproduct)阻害剤、バイグリカン、デコリンなどのTGF−β拮抗薬、PKC(protein kinase C)阻害剤、PGE1やPGI2などプロスタグランジン製剤、パパベリン系薬、ニコチン酸系薬、トコフェロ−ル系薬、およびCa拮抗薬などの末梢血管拡張薬、フォスホジエステラ−ゼ阻害剤、チクロピジン、アスピリンなどの抗血栓薬、ワ−ファリン、ヘパリン、抗トロンビン剤などの抗凝固剤、ウロキナ−ゼなどの血栓溶解薬、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、抗生物質、抗酸化剤、酵素剤、脂質取込抑制剤、ホルモン剤、ビタミンC、ビタミンE、SODなどのラジカルスキャベンジャ−、メサンギウム細胞の増殖抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイあるいは遺伝子などが挙げられる。
【0086】
診断のための薬物としては、X線造影剤、超音波診断薬、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬などの体内診断薬が挙げられる。
リポソームは、薬物のほかに、例えば、投与経路次第で医薬的に許容される、安定化剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、pH調整剤をさらに含むことができる。
【0087】
本発明のリポソームの製造装置について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のリポソームの製造装置の一例の概要を模式的に示す概略図である。
図1において、リポソームの製造装置100は、入口112と出口114を有するリポソームの整粒手段110と、
整粒手段110と入口112を介して末端164において一体に形成され、整粒手段110にリポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給する供給流路122と、
整粒手段110と出口114を介して基端166において一体に形成され、整粒手段110からリポソームを含有する被処理液(図示せず。)を排出する排出流路124とを有し、
供給流路122が、リポソーム形成脂質を含有する被処理液(図示せず。)を供給流路122に投入する投入口127を有し、投入口127はバルブ129で開閉され、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第2の光透過部126を有し、
排出流路124が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部128を有し、
供給流路122の基端162と排出流路124の末端168とは、タンク152およびポンプ154を介して結合され、流体循環回路169となり、
タンク152は、リポソームを含有する被処理液をリポソームの製造装置100から排出する排出口156を有し、排出口156はバルブ157で開閉される。
【0088】
リポソームの製造装置100にはリポソーム粒径測定装置140が設置され、リポソーム粒径測定装置140は、第1の光透過部128の外部から第1の光透過部128に光を照射してリポソームを含有する被処理液(図示せず。)の光透過率を測定する第1の光透過率測定手段132と、
第2の光透過部126の外部から第2の光透過部126に光を照射してリポソームを含有する被処理液(図示せず。)の光透過率を測定する第2の光透過率測定手段134と、
光透過率からリポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段が格納されているデータ収集装置146とを有し、データ収集装置146は制御部142とデータ記憶部144とを有する。
【0089】
第1の光透過率測定手段132と第2の光透過率測定手段134とは、データ収集装置146とコード147、148で接続されている。
第1の光透過率測定手段132は、第1の光照射部、第1の光受光部および光第1の透過率算出部とを有する(図示せず。)。
第2の光透過率測定手段134は、第2の光照射部、第2の光受光部および第2の光透過率算出部とを有する(図示せず。)。
光照射部(図示せず。)は制御部142からの信号によって作動し、所定の時間間隔で光(例えば、パルス光)を発する。
整粒手段110から排出流路124へリポソームを含有する被処理液(図示せず。)排出されている間に、第1の光透過率測定手段132において、光照射部(図示せず。)から光を照射すると、光は第1の光透過部128を透過し、第1の光透過部128を透過した光は、光受光部(図示せず。)に受光され、光受光部(図示せず。)から受光光量に応じた信号が光透過率算出部(図示せず。)に出力され、光透過率算出部において光照射部から照射される光の発光光量に対する、光受光部における受光光量の比の値から光透過率が随時算出され、得られた光透過率はデータ収集装置146に入力され、データ記憶部144に記憶される。
第1の光透過率測定手段132、第2の光透過率測定手段134またはデータ収集装置146において、光透過率を表示することができる。
【0090】
制御部142は、整粒手段110におけるリポソームの製造開始後、式(1)に示すリポソーム粒径予測式に、第1の光透過率測定手段132から送られてきた光透過率をあてはめて計算を随時行っていき、その結果得られたリポソームの粒径のデータをデータ記憶部144に記憶させる。
データ収集装置146は得られたリポソームの粒径のデータを表示することができる。
【0091】
また、制御部142は、整粒手段110におけるリポソームの製造開始後、式(2)に示すリポソーム粒径予測式に、第2の光透過率測定手段134から送られてきた光透過率をあてはめて計算を随時行っていき、その結果得られたリポソームの粒径のデータをデータ記憶部144に記憶させる。
データ収集装置146は得られたリポソームの粒径のデータを表示することができる。
【0092】
制御部142は、第1の光透過部128および第2の光透過部126における光透過率から、式(3)に示すリポソーム粒度分布予測式の計算を随時行っていき、その結果をデータ記憶部144に記憶させる。
データ収集装置146は得られたデータを表示することができる。
【0093】
本発明のリポソームの製造装置において、光透過率測定手段(例えば、レーザー光照射部、レーザー光受光部および光透過率算出部とを有するもの)は、リポソームの製造装置に込みこまれて設置されるのが好ましい。当該装置は、無菌環境が維持された室内に存在していることが好ましい。
また、本発明において、データ収集装置は、単にデータ収集及びモニターを目的とするだけではなく、整粒化装置と連動して一つの制御システムとすることもできる。例えば、データ収集装置により目的の粒子径に近づいていることが明らかになった場合、その情報が整粒装置へと送信され自動的に送液速度を調整あるいは停止することができる。
なお、本発明において、粒径監視システム(または粒子径監視システム)とは、本発明のリポソームの製造装置または本発明のリポソームの製造方法を用いて、リポソームを含有する被処理液の光透過率をインラインで測定しモニタリングことによって、リポソームを含有する被処理液中に含有されるリポソームの粒径をモニタリングすることができるシステムをいう。
【0094】
通常、粒子径測定は、レーザー回折・散乱法、動的あるいは静的光散乱法を利用して行われている。これらすべての粒子径測定装置は、レーザーを利用したものであり、一般的に粒子径測定には汎用されている。
しかし、その原理は非常に複雑なものであり、解析方法により得られる粒子径は異なる。従って、定められた解析方法により粒子径を測定する必要がある。その測定は、ときには数分を必要とすることがある。
従って、このような粒子測定装置を用いることにより、粒子径をリアルタイムに測定することは実質的には困難であるといえる。
一方、これに対して、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法は、予め選定した粒子径測定装置より得られる粒子径データと連続的に得られるレーザー光の透過性(透過度)の関係式から粒子径を換算するものであり、複雑な計算式を必要せず、関係式は良好な直線性を示し、その精度は高い。
さらには、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法では、粒子径測定間隔を任意に設定することができ、数マイクロ秒からの測定が可能である。
このような観点から本発明のリポソームの製造方法は、整粒化時における粒子径をリアルタイムに監視するのに優れている方法である。
【0095】
本発明のリポソームの製造装置は、リポソームを含有する被処理液の光透過率をモニタリングすることによって、リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径を監視することができ、インラインで、無菌状態を維持してリポソームを製造することができる。
本発明のリポソームの製造方法によれば、リポソームを含有する被処理液の光透過率をモニタリングすることによって、リポソームを含有する被処理液に含有される薬物担持リポソームの粒径を監視することができ、インラインで、無菌状態を維持してリポソームを製造することができる。
【実施例】
【0096】
次に実施例、試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例、試験例に限定されるべきものではない。
各例で調製され、あるいは整粒途中でサンプリングされたリポソーム製剤の粒子径(平均粒子径)は、動的光散乱粒子測定(Zetasizer 3000、MALVERN Instruments社製)で測定し、平均粒子径とした。
また、粒度分布に関しては、動的光散乱測定で得られる多分散指数およびField Flow Fractionation-Maltiangle Scattering(FFF-MALS, Whyatt社製)により得られる数および重量平均粒子径比として粒度分布を表した。
【0097】
実施例において、整粒手段としてEmulsiflex C50(AVESTIN社製)を用いた。
実施例において、供給流路および排出流路として、流路の一部が光透過部を有し、光透過部がポリプロピレンチューブで形成され、光透過部の長さが100cmであり、光透過部以外の部分が金属で形成され、断面が円形で、断面の内部直径2cm、断面の外部直径3cmの流路を使用した。
実施例において、供給流路または排出流路と光透過率測定装置が有する光照射部との間隔は1cmとし、供給流路または排出流路と光透過率測定装置が有する光受光部との間隔は1cmとした。
【0098】
実施例において、光透過率測定装置およびデータ収集装置として以下の装置を使用した。
・光透過率測定装置;キーエンス社製透過度装置(型式;LX2-V10、レーザー光使用)
・データ収集装置;キーエンス社製データ収集機器(型式;NR-HA08、NR-500)
・実施例で用いたレーザーの波長;670nm
【0099】
以下に、使用した各成分の略称および分子量を示す。
・水素添加大豆レシチン(HSPC、分子量790)
・コレステロール(分子量386.66)
・ポリエチレングリコール5000−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE、分子量6031)
【0100】
<整粒手段として連続整粒化法を用いた場合のリポソームの製造における、リポソーム粒径のばらつき>
(1)均一化工程
水素添加大豆レシチン(HSPC)35.0g及びコレステロール15.0gを秤量し、これらを混合したものに無水エタノール(50mL)を添加し、加温溶解した。この操作を2回実施し、それぞれロット1、ロット2とした。
【0101】
(2)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム水溶液450mLを65℃〜75℃に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液に添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。
【0102】
(3)整粒化工程
整粒化工程は、整粒手段としてEmulsiflex C50(AVESTIN社製)を用いて、図8に示した連続整粒化ラインを組み立て、粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを連続整粒化ラインに組み入れた。図8は、連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルター(Whatman社製)を上流から下流に向けてそれぞれ二枚重ねし、各ロットについてそれぞれ整粒化工程を行った。整粒化工程開始後、経時的(2.5、5,7.5,10,20,30分経過時)に試料溶液を10mlサンプリングした。また、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。結果を図9に示す。
【0103】
(4)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200ml(RO−水:逆浸透膜浄水)を調製した液を65℃に加温した。整粒化工程で得られたリポソームに対して2mlのPEG5000−DSPE溶液を添加し、加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0104】
上記に示した処方に従い連続整粒化法により整粒化工程を行ったときの粒子径の低下曲線を図9に示した。
図9は、連続整粒化法により整粒化工程を行ったときのリポソームの粒子径と時間との関係を示すグラフである。
図9に示す結果から明らかなように、グラフ中のリポソーム粒径の低下曲線において、同じ処方および操作条件に従い実施したにも関わらず得られるリポソームの粒径は異なっていることが明らかである。
なお、本実施例には示していないが、整粒化手段としてbatch式整粒化法を用いた場合において形成するリポソームの粒子径についても、連続整粒によるものと同様に、同じ処方および操作条件に従いリポソームを製造したにもかかわらず、得られるリポソームの粒径が異なっていることが確認されている。
【0105】
(実施例1)本発明を利用した粒子径監視システムにおける透過度測定と粒子径の関係
実施例において以下の装置を使用した(以下同様)。
・光透過率測定装置;キーエンス社製透過度装置(型式;LX2-V10、レーザー光使用)
・データ収集装置;キーエンス社製データ収集機器(型式;NR-HA08、NR-500)
・実施例で用いたレーザーの波長;670nm
【0106】
(1)粒子径監視システムの設置
図7に示したBatch式整粒化ラインを組み立てた後、整粒化ラインに粒子監視システムを図2に示すように装着した。
図2は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法の一例の概略を模式的に示す概略図である。
図7は、Batch式整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。
すなわち、エクストルーダーをフィルターホルダー内(図示せず。)に設置し、光透過率測定装置を図2に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ整粒化ラインを流れるリポソーム懸濁液に対してレーザー光を送受できるように取り付けた。
【0107】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際に透過率を測定し、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0108】
(3)均一化工程
HSPC及びコレステロールを秤量し(モル比 HSPC:コレステロール=54:46、総脂質量として82.5mmol)、秤量した全重量に対して約1g/mLとなるように無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0109】
(4)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を65℃〜75℃に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を加えた。
【0110】
(5)整粒化工程
粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを整粒化ラインに組み入れた。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。整粒化は最大9回まで行い、各整粒化処理で10mlサンプリングを行った。なお、整粒化途中でデータ-収集装置に表示される値(レーザー透過度)を読み取る。また、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。結果を図10に示す。
【0111】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温した。整粒化工程で得られたリポソームに対して2mLのPEG5000−DSPE溶液を添加し、60〜70℃に加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0112】
図10は、各整粒化毎に得られた粒子径とレーザー透過度の関係を表すグラフである。
図10に示す結果から明らかなように、リポソームの粒子径とレーザーの透過度の関係は直線性を示し、その相関係数(r2)=0.9602は高い値を示した。
従って、レーザー透過度とリポソームの粒子径とは高い相関性を有する。
また、リポソーム粒子径は図10に示した相関式を用いることにより精度よく予測可能であることが明らかとなった。
【0113】
(実施例2)脂質濃度によるレーザー透過度と粒径相関式への影響
(1)粒子径監視システムの設置
図8に示した連続整粒化ラインを組み立てた後、整粒化ラインに粒子監視システムを図2に示すように装着した。すなわち、エクストルーダーをフィルターホルダー内(図示せず。)に設置し、光透過率測定装置を図2に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ整粒化ラインを流れるリポソーム懸濁液に対してレーザー光を送受できるように取り付けた。
【0114】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際に透過率を測定し、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0115】
(3)均一化工程
HSPCとコレステロールのモル比として54:46、総脂質量として82.5mmol、62.8mmol、41.2mmol、20.7mmolとなるように、HSPC及びコレステロールを秤量し、約50mLの無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0116】
(4)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を65℃〜70℃に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を加えた。
【0117】
(5)整粒化工程
粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを整粒化ラインに組み入れた。なお、この工程において、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。経時的に10mlサンプリングした。また、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。結果を図11に示す。
【0118】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温する。整粒化工程で得られたリポソームに対してPEG5000−DSPEの導入率(mol%)が0.75%となるように、PEG5000−DSPE溶液を添加し、60〜70℃に加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0119】
図11は、レーザー透過度と粒子径相関式に関する脂質濃度の影響を示したグラフである。
図11に示す結果から明らかであるように、脂質濃度の低下とともに相関式の傾きは、小さくなるものの、その相関性はいずれの脂質濃度においても高い(相関係数が0.9以上)ことが明らかとなった。
従って、いかなる脂質濃度であっても粒子径とレーザーの透過度に良好な直線関係を示すことから、レーザー透過度から粒子径の予測が可能であることが明らかとなった。
【0120】
(実施例3)本発明のリポソームの製造装置を利用した粒子径監視システムの粒子径予測精度
(1)粒子径監視システムの設置
図8に示すように、連続整粒化ラインを組み立てた後、連続整粒化ラインに粒子監視システムを図2に示すように装着し、リポソームの製造装置とした。すなわち、エクストルーダーをフィルターホルダー内(図示せず。)に設置し、レーザーを図2に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ整粒化ラインを流れるリポソーム懸濁液に対してレーザー光を送受できるように取り付けた。
【0121】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際に透過率を測定し、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0122】
(3)均一化工程
HSPC及びコレステロールを秤量し(モル比 HSPC:コレステロール=54:46、総脂質量として82.5mmol)、秤量した全重量に対して約1g/mLとなるように無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0123】
(4)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を65〜75℃に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を加えた。
【0124】
(5)整粒化工程
図8に示した連続整粒化ラインを組み立て、粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを連続整粒化ラインに組み入れた。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。レーザー透過度が65、70、75、80%となったとき10mlサンプリングした。なお、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。結果を図12に示す。
【0125】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温した。整粒化工程で得られたリポソームに対して2mLのPEG5000−DSPE溶液を添加し、60〜70℃に加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0126】
本実施例においては、実施例1のbatch式の製造例における整粒化ラインを、連続整粒化ラインに変更した以外は実施例1と同じ条件としたものである。
本実施例では、実施例1を予備工程とし、実施例1の結果から図10で得られた粒子径予測式を相関関係の指標とし、粒子径監視システムを図2のように整粒化装置に設置して本工程を行い、透過度が65、70、75、80%となったときにサンプリングした値が図10で得られた直線式に対してどの程度のバラツキを生じたかについて検討した。
図12は、粒子径監視システムの精度を示すグラフである。図12において直線は図10で得られる直線であり、4つのプロットは透過度が65、70、75、80%となったときにサンプリングの粒子径の実測値である。
図12に示す結果から明らかなように、いずれのレーザー透過度においても、粒子径予測式線上に実測値がのっている。
このことから、レーザー透過度から粒子径予測精度は良好であることが明らかとなった。
【0127】
(実施例4)本発明のリポソームの製造装置
(1)粒子径監視システムの設置
図1に示すように、連続整粒化装置を組み立て、フィルターホルダー内(図示せず。)に整粒化装置を設置し、連続整粒化装置に光透過率測定装置を図1に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ取り付け、本発明のリポソームの製造装置とした。
【0128】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0129】
(3)均一化工程
HSPC及びコレステロール(モル比としてHSPC:コレステロール=54:46、総脂質量として82.5mmol)を秤量し、秤量した全重量に対して約1g/mLとなるように無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0130】
(4)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を65℃〜75℃に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を加えた。
【0131】
(5)整粒化工程
粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームをリポソームの製造装置(整粒化ライン)にいれる。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。なお、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。また、整粒化開始後、経時的に試料10mlをサンプリングした。結果を図13、図14に示す。
【0132】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温した。整粒化工程で得られたリポソームに対してPEG5000−DSPEの導入率(mol%)が0.75%となるように、PEG5000−DSPE溶液を添加し、加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0133】
本実施例では、粒子径監視システムを図1のように設置したリポソームの製造装置においてレーザー光の透過度を測定し、リポソームを連続的に処理する方法である、連続整粒化法を用いてリポソームの粒子径制御を行った。
このとき、整粒手段(エクストルーダー)の出口および入口でのレーザー透過度の経時的な推移を示すグラフを図13に示した。
さらに、図13のレーザー透過度を図10で得られた粒子径予測式より粒子径(粒子径予測値)に変換し、経時的な粒子径変化を示すと共に、経時的にサンプリングした試料の粒子径(実測値)に対する粒子径予測値との精度についても検討を行った。その結果を図14に示した。図14は、連続整粒化法による予測粒子曲線と実測値を示すグラフである。
連続整粒化法におけるリポソーム形成工程において、これまでにリポソームの形成が経時的にどのようになっているかについては明らかとなっておらず、図9に示しているように、同条件で連続整粒を行っても経時的な粒子径推移は、全く異なるものであり、時間だけで連続整粒化法における工程時間を設定することは非常に困難である。
しかし、図13に示すように、本発明を用いることにより、工程中の試料状態がレーザー透過度として示され、その透過度が経時的に変化していることが非接触で監視することが可能である。
また、入口と出口部に粒子径監視システムを導入することにより整粒手段(本実施例においては、Extruderとして示される部分)を通過する前後のリポソームのレーザー透過度の違いを監視することができる。
さらに、このレーザー透過度は、粒子径予測式を用いることにより粒子径に変換できるパラメータであるため、整粒化前後での粒子径の差についても製造工程中で判定できるものである。つまり、この粒子径の差を整粒化工程における収束点として、整粒化工程の設定および終点としても活用できる。
図14は、レーザー透過度より図10で得られた予測式により連続整粒化工程における予測粒子低下曲線と5、7.5、10、15、20、30分におけるリポソームの粒子径の関係を示すグラフである。その結果、粒子径監視システムによる粒子径予測は、粒子径予測値に対して、実測値がほぼ一致していることより非常に良好であることが明らかとなった。
【0134】
(実施例5)本発明のリポソームの製造装置において整粒化流速が及ぼす予測性への影響
(1)粒子径監視システムの設置
図1に示すように整粒化ラインを組み立てた後、フィルターホルダー内(図示せず。)に整粒化装置を設置し、整粒化ラインに光透過率測定装置を図1に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ取り付け、本発明のリポソームの製造装置とした。
【0135】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0136】
(3)均一化工程
HSPC及びコレステロール(モル比としてHSPC:コレステロール=54:46、総脂質量として41.2mmol)を秤量し、50mlの無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0137】
(4)粗リポソーム形成工程
250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を65℃以上に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液を加える。
【0138】
(5)整粒化工程
図1に示した連続整粒化を組み立て、粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを整粒化ラインにいれる。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。また、このときの水の透過流速を620ml/min、700ml/min、750ml/minに調整した。さらに、整粒化開始後、経時的に試料10mlをサンプリングした。結果を図15に示す。
【0139】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温した。整粒化工程で得られたリポソームに対してPEG5000−DSPEの導入率(mol%)が0.75%となるように、PEG5000−DSPE溶液を添加し、加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0140】
整粒化工程において、設定条件は一定とすることができても、リポソームの処方や粗リポソーム形成工程おけるリポソームの形成状態により実際の整粒化速度は異なってくる。そこで、本実施例において、整粒化の速度を変えて、整粒化を行ったときの粒子径変化を本発明であるレーザー透過度を予測粒子径曲線と示し、この曲線に対する実測値との差を図15に示した。図15は連続整粒化法による予測粒子曲線(実線)と実測値とを示すグラフである。
本実施例においては、いずれの条件においても、連続整粒開始後、5、7.5、10、15、20、30分でサンプリングを行い、リポソームの粒子径(実測値)を測定したが、いずれの時間における実測値と予測値には、大きな差は認められないことが明らかとなった。本発明においてレーザー透過度とリポソームの粒子径には高い相関性があることは前述しているが、この予測性は、装置の流速に影響しないこととも同時に明らかとなった(図15)。
本発明はBatch式整粒化での粒子径測定だけでなく、連続整粒化での粒子測定を可能とし、かつ粒子監視システムを用いることによりいかなる条件においても所望の粒子径を得ることができるシステムを構築できることが明らかとなった。
【0141】
(実施例6)本発明のリポソームの製造装置を用いた粒子径予測とその応用
本発明は、図1に示すように、光透過率測定装置をextruder前後に配置することにより、図13に示すように、extruder前後でのリポソームの粒子径挙動を監視することが可能である。そこで、extruder前後における粒子径変化よりリポソーム粒度分布を推定できるかどうかについて本実施例において検証を行った。
実施例6は実施例4と同様にして実験を行った。結果を図16、図17に示す。
【0142】
図16および図17は整粒装置の入口側と出口側の透過度の差とリポソーム粒度分布の関係を示すグラフである。本発明においては、粒度分布を示す指標として、動的光散乱測定により得られる多分散指数(図16)およびFFF-MALSにより得られるn/w比(図17)として示した。なお、多分散指数では、数値が低下することにより、n/w比ではその数値が1に近づくほど粒度分布が狭いことを意味する。
図16および図17に示したように、整粒化直後より透過度差は大きくなっていき、やがて透過度差は、最大を示し、さらに整粒化を行うことにより透過度差は小さくなっていき、やがて透過度差は0に近づいていくことが明らかとなった。この透過度差の傾向を粒度分布指標と照らし合わせると、透過度差と粒度分布指標の値は相関性があり、透過度差の減少と共にリポソームの粒度分布は小さくなることが明らかとなった。
前述しているように、リポソームの粒子径制御は、リポソーム製造工程において重要な工程であり、リポソーム粒子径により血中での体内動態のみならず、病巣部での蓄積性にも影響する因子である。リポソームの粒子は平均粒子径として示されることが大きいが、平均粒子径が同じでも、その粒度分布が異なることにより、リポソーム製剤特性が異なってくることが予想される。従って、リポソーム製剤の品質において粒子の分布は重要なパラメータの一つであり、リポソーム製剤として常に一定の品質を提供するためには粒度分布をも考慮する必要がある。整粒化工程中において、この粒度分布を評価する有用な方法はない。これは、整粒化工程中にリアルタイムに粒子径測定ができないことがその一因である。しかし、本発明は、リアルタイムにかつ簡便に試料がextruderを通過する前と後で粒子径が測定でき、さらに、このextruder前後の粒子径より簡便にその粒子状態の評価を可能とするものである。従って、連続整粒化工程おいて、粒子径はもとより粒度分布を予測することは非常に難しいものであるが、本発明はこの粒度分布までも予測できるものであることが明らかとなった。
【0143】
商業的にはリポソームのbatch処理を行い、粒子径の制御を行ってきたが、本発明を整粒化装置に組み入れることにより、作業時間と粒子径に相関性がなく、粒子径制御のvalidationをとることが困難なリポソーム製剤の製造において一定の粒子径を持つリポソームの製造が可能である。さらに、リアルタイムかつタンク等からの試料採取を必要とせず非接触で粒子径を測定できることから、工程中での品質不良および工程異常を発見でき、さらに菌の介在リスクを最大限抑えられることができると考える。
【0144】
(実施例7)薬物を担持するリポソームの製造
以下に、使用した各成分の略称および分子量を示す。
・水素添加大豆レシチン(HSPC、分子量790)
・コレステロール(分子量386.66)
・ポリエチレングリコール5000−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE、分子量6031)
・3,5-ジペンタデシルオキシベンズアミジン塩酸塩(TRX-20、分子量609.41)
・薬物:リン酸プレドニゾロン(分子量440)
【0145】
実施例において以下の装置を使用した。
・光透過率測定装置;キーエンス社製透過度装置(型式;LX2-V10、レーザー光使用)
・データ収集装置;キーエンス社製データ収集機器(型式;NR-HA08、NR-500)
・実施例で用いたレーザーの波長;670nm
【0146】
(1)粒子径監視システムの設置
図8に示した連続整粒化ラインを組み立てた後、整粒化ラインに粒子監視システムを図2に示すように装着した。すなわち、エクストルーダーをフィルターホルダー内(図示せず。)に設置し、光透過率測定装置を図2に示すように整粒化ラインのフィルターホルダーの入口と出口にそれぞれ整粒化ラインを流れるリポソーム懸濁液に対してレーザー光を送受できるように取り付けた。
【0147】
(2)粒子径監視システムの補正
整粒化ラインに約5Lの水で洗浄する際に透過率を測定し、粒子径監視システムの補正のためにレーザーの透過度を100%とした。
【0148】
(3)均一化工程
HSPC、コレステロールおよびTRX-20のモル比として50:42:8、総脂質量として84.8mmolとなるように、HSPC、コレステロールおよびTRX-20を秤量し、約50mLの無水エタノールを添加し、加温溶解した。
【0149】
(4)粗リポソーム形成工程
68.0mg/mLのリン酸プレドニゾロン水溶液を65℃〜70℃に加温し、均一化工程により調製されたエタノール濃度が10%となるように、加温したリン酸プレドニゾロン水溶液を均一化工程で得られた溶液に加えた。
【0150】
(5)整粒化工程
粗リポソーム形成工程を経て得られた粗リポソームを整粒化ラインに組み入れた。なお、この工程において、0.4、0.2、0.1μmのポリカーボネイト製のフィルターを組み合わせ、整粒化工程を行った。経時的に光透過率測定装置によって光透過率を測定し、データ収集装置において上記の相関関係を用いてリポソーム粒径を算出し表示した。
また、整粒化工程の開始から2.5,5,7.5,10,15,20,30分において、リポソームを含有する被処理液を10mlずつサンプリングし、リポソームを含有する被処理液中のリポソームの粒径を測定し、リポソーム粒径の実測値を得た。
なお、整粒化工程における試料供給圧力は10MPaに設定した。結果を図19に示す。
【0151】
(6)親水性高分子修飾工程
予めPEG5000−DSPE溶液(3.85g/100mL、RO−水)を調製した液を65℃に加温する。整粒化工程で得られたリポソームに対してPEG5000−DSPEの導入率(mol%)が0.75%となるように、PEG5000−DSPE溶液を添加し、60〜70℃に加温することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。
【0152】
図18は上記に示した処方に従い連続整粒化法により整粒化工程を行ったときのリポソームの粒子径と時間との関係を示すグラフである。
図18に示す結果から明らかなように、薬物を担持したリポソームの製造において、薬物を担持していないリポソームの製造と同様に処理時間とともに粒子径が低下することが明らかとなった。
【0153】
リポソーム形成脂質含有被処理液中に含有されるリポソーム形成脂質の濃度が171.6mmol/Lであり、リポソーム形成脂質含有被処理液中に含有される薬物の濃度が15.5mmol/Lである場合、リポソーム含有液の光透過率と、リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径との相関関係は、式:粒子径=-1.4647×レーザー透過度+200.31、相関係数(r2)=0.9969として示すことができる。(図19)
【0154】
図20は、薬物を担持するリポソームを本発明のリポソームの製造装置を用いて製造する際に測定された、リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径の予測曲線と、リポソームを含有する被処理液に含有されるリポソームの粒径の実測値とを経時的に示すグラフである。なお、本実施例において、粒子径予測式:粒子径=-1.4647×レーザー透過度+200.31を用いた。
図20に示す結果から明らかなように、本発明のリポソームの製造装置を使用して薬物を担持するリポソームを製造する際、リポソームを含有する被処理液における粒子径の実測値は予測曲線とほぼ一致していた。
したがって、本発明のリポソームの製造装置は、薬物を担持するリポソームを含有する被処理液の光透過率をモニタリングすることによって、薬物担持リポソームを含有する被処理液に含有される薬物担持リポソームの粒径を監視することができ、インラインで、無菌状態を維持して薬物担持リポソームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、本発明のリポソームの製造装置の一例の概要を模式的に示す概略図である。
【図2】図2は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法の一例の概略を模式的に示す概略図である。
【図3】図3は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例との概略を示す模式的な斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例とを、矢印Aの方向からの側面として示す模式的な側面図である。
【図5】図5は、本発明において使用することができるリポソーム粒径の測定方法において用いられるリポソーム粒径測定装置が有する光透過率測定手段の一例と、リポソーム粒径測定装置が設置される流路の一例との概略を示す模式的な斜視図である。
【図6】図6は、リポソームの製造ラインの一例を示す概略図である。
【図7】図7は、Batch式整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。
【図8】図8は、連続整粒化法に使用されるリポソームの製造装置の一例の概略を模式的に示す概略図である。
【図9】図9は、連続整粒化法により整粒化工程を行ったときのリポソームの粒子径と時間との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、予備工程において、各整粒化毎に得られた粒子径とレーザー透過度の関係を表すグラフである。
【図11】図11は、レーザー透過度と粒子径相関式に関する脂質濃度の影響を示したグラフである。
【図12】図12は、粒子径監視システムの精度を示すグラフである。
【図13】図13は、粒子径監視システムを図1のように設置し、リポソームを連続的に処理する方法である、連続整粒化法を用いてリポソームの粒子径制御を行ったときのレーザー透過度の経時的な推移を示すグラフである。
【図14】図14は、連続整粒化法による予測粒子曲線と実測値を示すグラフである。
【図15】図15は、連続整粒化法による予測粒子曲線(実線)と実測値とを示すグラフである。
【図16】図16は、透過度とリポソーム粒度分布(動的光散乱測定)の関係を示すグラフである。
【図17】図17は、透過度とリポソーム粒度分布(FFF−MALS)の関係を示すグラフである。
【図18】図18は、連続整粒化法により整粒化工程を行ったときの薬物含有リポソームの粒子径と時間との関係を示すグラフである。
【図19】図19は、レーザー透過度と粒子径の関係を示すグラフである。
【図20】図20は、連続整粒化法による予測粒子曲線(実線)と実測値とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0156】
100、200 リポソームの製造装置
110、220 整粒手段
112、221 入口
114、223 出口
122、201 供給流路
124、202 排出流路
127、205 投入口
128、204 第1の光透過部
126、203 第2の光透過部
129、157、206 バルブ
152 タンク
154 ポンプ
156 排出口
132、213 第1の光透過率測定手段
134、211 第2の光透過率測定手段
140、230 リポソーム粒径測定装置
142、215 制御部
144、217 データ記憶部
146、219 データ収集装置
147、148、231、233 コード
301、401、501 流路
303、503 内部
307、509 矢印
305、505 光透過部
321、521、523 光
325 光321が照射される部分
310 光透過率測定手段
311、411 光照射部
313、413 光受光部
323 光透過部305を通過した光
330、530 リポソームを含有する被処理液
315、317、415、417、515、517 コード
L3 流路401の外径
L1 光照射部411と流路401との間隔
L2 光受光部413と流路401との間隔
506 光被照射部
507 光通過部
511 光521を照射する光照射部
513 光523を受光する光受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口を有するリポソームの整粒手段と、
該整粒手段と前記入口を介して一体に形成され、該整粒手段にリポソーム形成脂質を含有する被処理液を供給する供給流路と、
該整粒手段と前記出口を介して一体に形成され、該整粒手段からリポソームを含有する被処理液を排出する排出流路とを有し、
前記供給流路が、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液を前記供給流路に投入する投入口を有するリポソームの製造装置において、
前記排出流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第1の光透過部を有し、
前記第1の光透過部の外部から前記第1の光透過部に光を照射して前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を測定する第1の光透過率測定手段を少なくとも有するリポソームの製造装置。
【請求項2】
前記供給流路の基端と前記排出流路の末端とが結合し、流体循環回路を形成している請求項1に記載のリポソームの製造装置。
【請求項3】
前記供給流路が、少なくとも一部に光を透過させることができる材料で形成される第2の光透過部を有し、
前記第2の光透過部の外部から前記第2の光透過部に光を照射して、前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液の光透過率を測定する前記第2の光透過率測定手段をさらに有する請求項1または2に記載のリポソームの製造装置。
【請求項4】
前記第1の光透過率測定手段が、第1のレーザー光照射部、第1のレーザー光受光部およびこれらと接続された第1の光透過率算出部とを有し、
前記第2の光透過率測定手段が、第2のレーザー光照射部、第2のレーザー光受光部およびこれらと接続された第2の光透過率算出部とを有する請求項3に記載のリポソームの製造装置。
【請求項5】
さらに、前記光透過率から前記リポソームの粒径を求めるリポソーム粒径演算手段を有する請求項1〜4のいずれかに記載のリポソームの製造装置。
【請求項6】
前記第1の光透過率測定手段が前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を表示し、前記第2の光透過率測定手段が前記リポソーム形成脂質を含有する被処理液の光透過率を表示する請求項3〜5のいずれかに記載のリポソームの製造装置。
【請求項7】
リポソーム形成脂質含有液を予め整粒手段に複数回通過させる整粒化処理を行ってリポソーム含有液とし、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について所定波長における前記リポソーム含有液の光透過率を測定し、前記整粒手段を通過する毎に得られたリポソーム含有液について粒度計にて前記リポソーム含有液に含有されるリポソームの粒径を測定し、前記光透過率と前記粒径との相関関係を予め求めておく予備工程と、
リポソーム形成脂質を含有する被処理液を請求項1〜6のいずれかに記載のリポソームの製造装置にて整粒化処理を行ってリポソームを含有する被処理液とし、前記所定波長における、前記リポソームを含有する被処理液の光透過率を測定しつつリポソームを製造する本工程とを有するリポソームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−240954(P2009−240954A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91760(P2008−91760)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】