説明

リポタンパク質界面活性剤

試料中のトリグリセリド及び/又はコレステロール量の決定用センサーであって、(a)式(1)


の界面活性剤[式中、R、R、R、R及びRのそれぞれは独立に、−OH、C−Cアルコキシ又は、式−OCONH(CH −CH、−OCO(CH CH、O(CH−CH、−S(CH−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH若しくは−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m’は4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である。但し、R、R、R、R及びR基の少なくとも1つは−OH又はC−Cアルコキシでない。];及び、(b)トリグリセリド測定用酵素試薬及び/又はコレステロール測定用酵素試薬、を含むセンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、試料中のトリグリセリド又はコレステロール量の決定用センサー及び、このような決定の実施方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
トリグリセリド及びコレステロールは、血中に見出されるリポタンパク質の主要な構成成分である。トリグリセリドは主として、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びカイロミクロン(CM)内に見出され、一方コレステロールは主として、高密度リポタンパク質(HDL)及び低密度リポタンパク質(LDL)内に見出される。コレステロール及びトリグリセリドは、血中の全てのリポタンパク質画分中に、ある程度存在する。
【0003】
したがって、血液又は血漿試料について効果的な試験を実施するためには、リポタンパク質がまず分解され、トリグリセリド及びコレステロール(遊離コレステロール及びコレステロールエステルを含む)を遊離させなければならない。一般的にはこれは界面活性剤を使用して達成される。しかし、多くの界面活性剤は、異なるリポタンパク質画分に関して異なる速度で働く。したがって、トリグリセリド又はコレステロール試験が試料中に存在する全ての検体を検出することを保証するためには、全ての反応可能なトリグリセリド又はコレステロールを遊離させることを可能とするのに十分な時間、界面活性剤を試料と反応させることが必要である。
【0004】
コレステロール及びトリグリセリド検査が家庭において、又は診療所の医師によって、実施されることを可能にする試験キットが入手可能になると、これらの試験における迅速な結果についての需要が著しく増加する。理想的には、試験キットが正確な結果をほんの数秒、又は数分で提供することだろう。この目的を達するためには、血中の全てのリポタンパク質画分を迅速に分解することのできる即効性の界面活性剤が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、コレステロール及びトリグリセリド試験を実施するために特に有用な界面活性剤群を見出した。これらの界面活性剤は、全てのリポタンパク質粒子中のコレステロール、コレステロールエステル及びトリグリセリドに対して、特に速い反応キネティクスを有する。したがってこれらの界面活性剤を包含するコレステロール又はトリグリセリドセンサーは、試料の総コレステロール又はトリグリセリド含量の短時間での信頼性のある測定を提供する。
【0006】
したがって本発明は、試料中のトリグリセリド及び/又はコレステロール量の決定用センサーであって、
(a)式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
、R、R、R及びRのそれぞれは独立に、−OH、C−Cアルコキシ又は、式−OCONH(CHm’−CH、−OCO(CHm’−CH、O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH若しくは−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m’は4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である。但し、R、R、R、R及びR基の少なくとも1つは−OH又はC−Cアルコキシでない]の界面活性剤;及び、
(b)トリグリセリド測定用酵素試薬及び/又はコレステロール測定用酵素試薬
を含むセンサーを提供する。
【0009】
また、試料中のコレステロール及び/又はトリグリセリドの量の決定方法であって、
− 上記で定義されるような界面活性剤と試料を接触させる工程;及び、
− 存在するコレステロール及び/又はトリグリセリドの量を決定する工程
を含む方法も提供する。
【0010】
本発明のセンサーは、試料中のトリグリセリド及び/又はコレステロールの量の決定用である。誤解を避けるために、これは、センサーが試料中のトリグリセリドの総量及び/又はコレステロールの総量の決定用であることを意味する。総コレステロールは、試料中のHDL及びLDL画分の両方に存在するコレステロールを含み得る(当然、遊離コレステロール及び、試料中の任意の他の形態で存在するコレステロール、例えばコレステロールエステルなども、同様に含み得る)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1(a)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【図1(b)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【図1(c)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【図1(d)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【図1(e)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【図1(f)】図1(a)から(f)は、本発明の種々のセンサーを使用して、多数の血漿試料について、総コレステロール濃度([TC](mM))に対して、センサー出力(測定される電流、Iox(nA))をプロットしたグラフである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明のセンサーは、リポタンパク質を含む任意の試料のコレステロール又はトリグリセリドレベルを測定するために使用され得る。典型的には、分析は、ヒト又は動物の任意の体液について実施され得、典型的には例えば、全血、血清又は血漿試料について実施され得る。本発明において用いられる好適な試料としては、血清及び血漿である。測定が全血について実施される場合、本方法は、赤血球を除去するために血液をろ過する追加の工程を含み得る。
【0013】
界面活性剤はサッカリドであり、それはD−サッカリド又はL−サッカリドであり得、D−サッカリドが好ましい。α及びβアイソフォームの両方が使用され得る。一実施形態においては、βアイソフォームが好ましい。
【0014】
界面活性剤は一般式(1)を有する:
【0015】
【化2】

【0016】
式1において、R、R、R、R及びRのそれぞれは独立に、−OH、C−Cアルコキシ又は、式−OCONH(CHm’−CH、−OCO(CHm’−CH、O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH若しくは−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m’は4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である。R、R、R、R及びR基の少なくとも1つは−OH又はC−Cアルコキシではない。
【0017】
好ましくは、R、R、R、R及びR基の1又は2(最も好ましくは1)は、式−OCONH(CHm’−CH、−OCO(CHm’−CH、−SCONH(CHm’−CH、−SCO(CHm’−CH、O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基であり、残りの基は−OH又はC−Cアルコキシであり、好ましくは−OHである。
【0018】
一般式(1)の界面活性剤は一般式(I)を有することが好ましい:
【0019】
【化3】

【0020】
[式中:
i)Rは、式−CONH(CHm’−CH又は−CO(CHm’−CHの基であり、ここでm’は4から20であり;Xは−OH又はC−Cアルコキシである;又は、
ii)Rは、水素又はC−Cアルキルであり;Xは式−O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である]。
【0021】
本発明の第一の実施形態において、界面活性剤は一般式(I)を有し、Rは式−CONH(CHm’−CH又は−CO(CHm’−CHの基であり、ここでm’は4から20であり、Xは−OH又はC−Cアルコキシである。この実施形態において、m’は好ましくは3から10であり、例えば4から9である。特に好ましくは、m’は6又は7であり、最も好ましくは6である。さらに、この実施形態において、Xは好ましくは−OH又はメトキシであり、最も好ましくはメトキシである。この実施形態中、Rは式−CONH(CHm’−CHを有することが好ましい。この実施形態における具体的な好ましい界面活性剤はメチル−6−O−(N−アルキルカルバモイル)−α−D−グルコピラノシドであり、ここで該アルキル基は5から10の炭素原子を含む。これらの界面活性剤は、Anatraceから、Anameg−5、Anameg−6、Anameg−7、Anameg−8、Anameg−9及びAnameg−10として入手可能である(インデックスはアルキル鎖(すなわち、(CHm’−CH基)の全長を示す)。特に好ましい界面活性剤はO−(N−ヘプチルカルバモイル)−α−D−グルコピラノシドであり、これはAnameg−7である。
【0022】
本発明の第二の実施形態において、界面活性剤は一般式(I)を有し、Rは水素又はC−Cアルキルであり、Xは式−O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である。この第二の実施形態において、Rは好ましくは水素又はメチルであり、最も好ましくは水素である。mは好ましくは5から9であり、例えば6から8である。さらに、m”は好ましくは4から6である。なおさらに、nは好ましくは0から5であり、例えば0から3である。C−Cシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基であり得、シクロペンチル及びシクロヘキシル、特にシクロヘキシルが好ましい。A基は好ましくはC−Cシクロアルキル基であり、最も好ましくはシクロヘキシルである。Aがシクロアルキル基であるとき、nは好ましくは少なくとも1、例えば1から5である。Aがフェニル基であるとき、nは好ましくは0から3である。
【0023】
本発明の第二の実施形態において、界面活性剤の一つの好ましい群としては、Xが式−O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基である場合である。具体的な好ましい界面活性剤は、n−アルキル−β−D−グルコピラノシドであり、ここで該アルキル基は6から10の炭素原子を含み、例えばn−オクチル−β−D−グルコピラノシド(OGPとして知られ、Anatraceから入手可能)及びn−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGPとして知られ、同様にAnatraceから入手可能)などである。他の具体的な好ましい界面活性剤は、n−アルキル−α−D−グルコピラノシド、n−アルキル−β−D−チオグルコピラノシド、n−アルキル−β−D−ガラクトピラノシド及びn−アルキル−β−D−マンノピラノシドであり、ここで該アルキル基は6から10の炭素原子を含み:例えば、n−オクチル−α−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド、n−オクチル−β−D−ガラクトピラノシド及びn−オクチル−β−D−マンノピラノシドである。
【0024】
本発明の第二の実施形態における界面活性剤の別の好ましい群は、Xが式−O(CH−A又は−S(CH−Aの基である場合である。具体的な好ましい界面活性剤は、3−シクロヘキシル−1−メチル−β−D−グルコシド(Cyglu−1として知られる)、3−シクロヘキシル−1−エチル−β−D−グルコシド(Cyglu−2として知られる)及び特に3−シクロヘキシル−1−プロピル−β−D−グルコシド(Cyglu−3として知られる)であり、全てAnatraceから入手可能である。Aがフェニル基のとき、nは好ましくは0から8であり、例えば0から4である。さらに具体的な好ましい界面活性剤は、フェニルβ−D−グルコピラノシド、フェニルβ−D−ガラクトピラノシド及びフェニルエチルβ−D−ガラクトピラノシドである。
【0025】
本発明における特に好ましい界面活性剤は、メチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−D−グルコピラノシド及び3−シクロヘキシル−1−プロピル−D−グルコシドである。
【0026】
界面活性剤は、好ましくは式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の界面活性剤である:
【0027】
【化4】

【0028】
したがって、式(Ia)の界面活性剤は、好ましくはグルコピラノース(式(Ia))、ガラクトピラノース(式(Ib))又はマンノピラノース(式(Ic))であり得る。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、界面活性剤は化学式(Ix)又は(II)の界面活性剤である
【0030】
【化5】

【0031】
サッカリド−O(CHA (II)
【0032】
[式中、R’は式−CONH(CH−CHの基であり、ここでMは6から20であり、Rは水素又はメチルであり、AはC−Cシクロアルキル基であり、Nは1から10である]。
【0033】
この更なる実施形態において、界面活性剤は、式(Ix)の6−O−カルバモイルサッカリドであり得る。好ましくは、式(Ix)の界面活性剤はグルコシドである。Mは典型的には6から10であり、例えば6又は7である。好ましい界面活性剤としては、メチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−α−D−グルコピラノシド(Anameg−7、Anatraceから入手可能)が挙げられる。
【0034】
また、この更なる実施形態において、界面活性剤は式(II)の界面活性剤であり得、したがって式A−(CH−OHのアルコールとサッカリドの反応に由来し得る。したがって、式(II)の化合物はサッカリド分子からなり、ここで少なくとも1の(例えば1の)−OH基は、−O(CH−A基で置換されている。サッカリドは、モノ、ジ又はトリサッカリドであり得、例えばグルコース、マルトース、マルトトリオース又はスクロースである。モノサッカリド(特にグルコース)が好ましい。界面活性剤は好ましくは1−グルコシドである。シクロアルキル基Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基であり得、シクロペンチル及びシクロヘキシル(特にシクロヘキシル)が好ましい。Nは好ましくは1から8であり、典型的には2から6である。好ましい界面活性剤としては、3−シクロヘキシル−1−プロピル−β−D−グルコシド(Cyglu−3、Anatraceから入手可能)が挙げられる。
【0035】
また、この更なる実施形態において、本発明において使用される界面活性剤は、式(Ixx)の界面活性剤であり得る:
【0036】
【化6】

【0037】
[式中、R11は式−CONH(CH−CHの基であり且つR12は水素若しくはメチルである;又はR11は水素であり且つR12は−(CH−Aである、のいずれかであり、ここでA、N及びMは上記定義される通りである。]
【0038】
本発明において、界面活性剤は特定のHLB値を有することが好ましい。HLB値は、界面活性剤との関連で周知のパラメーターであり、界面活性剤の親水性を表すものである。特定の界面活性剤のHLB値は、Raboron et al., International Journal of Pharmaceutics, Vol 99, 1993, p23-36に記載されるような、NMR法を使用して、容易に得られ得る。この参照文献は、HLB値が、
【0039】
【数1】

【0040】
[式中、
【0041】
【数2】

【0042】
であり、ここでA親水性は親水基についての化学シフトのNMR積分値であり、A全体は界面活性剤における全ての化学シフトのNMR積分値である]として計算され得ることを示す。
【0043】
上記方法を使用して得られる本発明の特定の具体的な界面活性剤についてのHLB値は以下の通りである:
【0044】
【表1】

【0045】
本発明において、界面活性剤は、5から16、例えば7から14のHLB値を有することが好ましい。
【0046】
本発明の界面活性剤は、商業的に入手可能な製品であり、又は当業者によって標準的な合成技術を使用して製造され得る。本発明において用いられ得る界面活性剤の更なる例、及びこれらの界面活性剤の合成に関する詳細は、US 5,223,411及びUS 5,763,586において見出され得る。
【0047】
界面活性剤は、典型的には、試験されるべき試料と混合される場合、界面活性剤及び任意の他の使用される試薬と試料の混合物中の界面活性剤の濃度が、少なくとも10mM、好ましくは少なくとも20mM、例えば少なくとも25mMであるような量で提供される。
【0048】
本明細書中に記載される界面活性剤は、単独で又は組み合わせて使用され得る。したがって、本発明のセンサーは、式(1)の一界面活性剤、例えば化学式(I)の界面活性剤を唯一の界面活性剤として、又は式(1)の界面活性剤を1以上の更なる界面活性剤と共に、含んでいてもよい。1以上の更なる界面活性剤も、一般式(1)に含まれ得る。一実施形態において、センサーは、2以上、例えば5までの界面活性剤を含み、それらは異なるが、それぞれ一般式(1)及び好ましくは一般式(I)を有する。例えば、センサーは、2つのこのような界面活性剤を含み得る。好ましい組み合わせは、
−Anameg−7及びn−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)
−Cyglu−3及びn−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)
−Anameg−7及びCyglu−3
である。また、好ましくは、Anameg−7、Cyglu−3及びOGPのうち少なくとも2つを含む組み合わせである。
【0049】
本発明の界面活性剤により遊離されるトリグリセリド又はコレステロールは酵素試薬と反応し、試料中に存在するトリグリセリド又はコレステロール量の定量測定を提供する。使用される酵素試薬は特に限定されず、トリグリセリド又はコレステロール試験の実施に適した任意の酵素が使用され得る。例えば、コレステロールの場合、酵素試薬は、コレステロールデヒドロゲナーゼ又はコレステロールオキシダーゼを含み得る。トリグリセリド試験においては、使用され得る酵素試薬の例は、グリセロールリン酸オキシダーゼと組み合わせた、グリセロールデヒドロゲナーゼ及びグリセロールキナーゼである。
【0050】
任意の商業的に入手可能な形態のコレステロールデヒドロゲナーゼ又はグリセロールデヒドロゲナーゼが利用され得る。例としては、コレステロールデヒドロゲナーゼは、例えば、ノカルジア属(Nocardia species)由来であり、グリセロールデヒドロゲナーゼは、例えば、セルロモナス属(Cellulomonas species)由来である。デヒドロゲナーゼは、0.1から100mg/mlの試料、好ましくは0.5から45mg/mlの試料の量で使用され得る。
【0051】
リポタンパク質の界面活性剤との反応は、典型的には、遊離の形態及びコレステロールエステルの形態の両方で、コレステロールを遊離させる。したがってコレステロール試験においては、酵素試薬は、典型的には、エステルを遊離コレステロールへと分解するために、コレステロールエステル加水分解試薬を含む。コレステロールエステル加水分解試薬は、コレステロールエステルをコレステロールに加水分解することのできる任意の試薬であり得る。試薬は、コレステロールのコレステロールデヒドロゲナーゼとの反応及び、アッセイにおけるその後の任意の工程を妨げない試薬でなければならない。好ましいコレステロールエステル加水分解試薬は、酵素、例えばコレステロールエステラーゼ及びリパーゼである。適切なリパーゼは、例えば、シュードモナス(pseudomonas)属又はクロモバクテリウム ビスコサム(Chromobacterium viscosum)種由来のリパーゼである。コレステロールエステル加水分解試薬は、0.1から25mg/mlの試料、例えば0.1から20mg/mlの試料、好ましくは0.5から25mg/ml(例えば0.5から15mg/mlなど)の試料の量で使用され得る。
【0052】
トリグリセリド試験においては、トリグリセリド含量を決定するために、典型的にはグリセロール酵素が使用される。したがってリポタンパク質から遊離されるトリグリセリドは、グリセロールデヒドロゲナーゼとの反応の前に、まずグリセロールへと分解されなければならない。典型的にはこれは、酵素試薬中にトリグリセリド加水分解試薬を含めることにより達成される。デヒドロゲナーゼ酵素の活性を阻害しない限り、トリグリセリドをグリセロールへと加水分解する任意の試薬が使用され得る。リパーゼ及びエステラーゼは、トリグリセリド加水分解試薬の適切な例である。コレステロールエステル加水分解試薬として上記したリパーゼは、トリグリセリドの加水分解における使用にも適している。トリグリセリド加水分解試薬は、0.1から100mg/mlの試料、例えば0.1から70mg/mlの試料、好ましくは0.5から25mg/ml(例えば0.5から15mg/mlなど)の試料の量で使用され得る。一実施形態において、トリグリセリド加水分解試薬は、0.1から25mg/mlの試料、例えば0.1から20mg/mlの試料の量で使用される。
【0053】
各酵素は、安定剤又は保存剤などの添加剤を含み得る。さらに、各酵素は化学的に修飾され得る。
【0054】
酵素試薬と反応するコレステロール又はトリグリセリドの量の決定を実施するために、必要に応じて、更なる試薬が本発明のセンサー中に存在し得る。安定剤、緩衝剤及び賦形剤などの添加剤も使用され得る。酵素を活性化するための試薬も添加され得る。例えば塩化アンモニウムが、グリセロールデヒドロゲナーゼを活性化するために使用され得る。
【0055】
界面活性剤は、他の試薬の添加の前に、又は他の試薬の添加と同時に、試料へと添加され得る。好ましい実施形態において、酵素試薬及び界面活性剤は、単一の試薬混合物(単一工程において試料と合わせられる)中に存在する。特に好ましい実施形態において、本方法は、試料を試薬と接触させる単一工程を含み、それゆえ単一の試薬混合物のみが提供される必要がある。
【0056】
本発明のセンサーは、試料のコレステロール又はトリグリセリド含量を、任意の適切な技術により決定し得る。例えば、ペルオキシダーゼ及び発色剤(colour forming agent)が使用され得、検体のオキシダーゼ酵素との反応により生成される過酸化水素を決定し得る。当業者はこのような方法に精通しているであろう。オキシダーゼシステムを利用するトリグリセリド検出用センサーにおいて、例えば以下の試薬が使用され得る:リパーゼ又はコレステロールエステラーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びメディエーター。オキシダーゼシステムを利用するコレステロール検出用センサーにおいて、例えば以下の試薬が使用され得る:リパーゼ又はコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びメディエーター。このようなセンサーにおける使用に適したこれらの試薬の特定の例が、以下、より詳細に説明される。
【0057】
好ましい実施形態においては電気化学分析が使用され、この実施形態は以下にさらに詳細に記載される。しかし当然のことながら、本発明が電気化学分析に限定されることを意図するものではない。
【0058】
電気化学分析において、酵素試薬と反応したコレステロール又はトリグリセリド量は、電極において起こる電気化学応答を測定することにより決定される。この実施形態において、試料は、典型的には、界面活性剤、酵素試薬、酵素試薬と相互作用することのできる補酵素、及び酸化還元剤(酸化又は還元されることができ、電極において電気化学的に検出され得る生成物を形成する)と反応する。試料及び試薬の混合物は、引き起こされる酸化還元反応が検出され得るように、電気化学セルの作用電極と接触させられる。電位がセルに印加され、結果として起こる電気化学応答(典型的には電流)が測定される。
【0059】
この好ましい実施形態において、コレステロール量は以下のアッセイに従って測定される:
【0060】
【化7】

【0061】
ここでChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである。
【0062】
同様に、トリグリセリドセンサーについて、存在するトリグリセリド量は以下のアッセイに従って決定され得る:
【0063】
【化8】

【0064】
ここでGlyDはグリセロールデヒドロゲナーゼである。いずれのアッセイにおいても、アッセイによって生成された還元型酸化還元剤の量は、電気化学的に検出される。適切な場合、追加の試薬もこのアッセイに含まれ得る。
【0065】
典型的には、試料は全ての試薬と単一の工程において接触する。したがって、センサーは典型的には、全ての必要な試薬を含み、且つアッセイを実施するために試料と容易に接触させられ得る、試薬混合物を含む。該試薬混合物は典型的には、界面活性剤を10から500mM、好ましくは25から200mM、特に、少なくとも50mM、又は少なくとも75mMの濃度で含む。加水分解試薬は典型的には、0.1から25mg、好ましくは約0.5から20mg/mlの試料の量で存在し、デヒドロゲナーゼは、0.1から100mg、好ましくは0.5から45mg/mlの試料の量で存在する。
【0066】
各試薬の量は、試薬混合物中の濃度の表現で、又は質量/ml試薬混合物の表現で、本明細書中に明記される。しかし試薬混合物が溶液の形態で提供されることは必須ではない。あるいはそれは乾燥された形態で提供され得、例えばそれは凍結乾燥され得る。これらの実施形態において、本明細書中に記載される試薬の量とは、乾燥前の試薬混合物の溶液又は懸濁液中の濃度又は質量をいう。
【0067】
典型的には補酵素は、NAD又はそのアナログである。NADのアナログは、NADと共通の構造特性を有する化合物であり、同様にコレステロールデヒドロゲナーゼ又はグリセロールデヒドロゲナーゼについての補酵素として働く。
【0068】
NADアナログの例としては、APAD(アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド);TNAD(チオ−NAD);AHD(アセチルピリジンヒポキサンチンジヌクレオチド);NaAD(ニコチン酸アデニンジヌクレオチド);NHD(ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド);及びNGD(ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド)が挙げられる。補酵素は典型的には、試薬混合物中に、1から20mM、例えば3から15mM、好ましくは5から10mMの量で存在する。
【0069】
典型的には、酸化還元剤は、上記に示されるアッセイに従って還元され得るものであるべきである。この場合、酸化還元剤は、補酵素からの(又は下記のようにレダクターゼからの)電子を受容でき、且つ電子を電極に移動できるものであるべきである。酸化還元剤は分子又はイオン結合型錯体であり得る。それは、タンパク質などの天然に存在する電子受容体であり得、又は合成分子であり得る。酸化還元剤は典型的には、少なくとも2つの酸化状態を有する。
【0070】
好ましくは、酸化還元剤は、無機錯体である。この剤は金属イオンを含み得、好ましくは少なくとも二価を有する。特に、この剤は遷移金属イオンを含み得、好ましい遷移金属イオンとしては、コバルト、銅、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、オスミウム又はルテニウムが挙げられる。酸化還元剤は荷電していてもよく、例えばそれは陽イオン性又はあるいは陰イオン性であり得る。適切な陽イオン性剤の例は、Ru(NH3+などのルテニウム錯体である。適切な陰イオン性剤の例は、Fe(CN)3−などのフェリシアン化物錯体である。
【0071】
使用され得る錯体の例としては、Cu(EDTA)2−、Fe(CN)3−、Fe(CN)(OCR)3−、Fe(CN)(シュウ酸)3−、Ru(NH3+、Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)(本明細書中、以後RuAcacと言う)及びそのキレート性アミン配位子誘導体(例えばエチレンジアミンなど)、Ru(NH(py)3+、フェロセニウム及びその誘導体であって、1以上の−NH、−NHR、−NHC(O)R、及び−COHなどの基が、2つのシクロペンタジエニル環のうちの一方又は両方へと置換されているものが挙げられる。好ましくは、無機錯体は、Fe(CN)3−、Ru(NH3+、Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)又はフェロセニウムモノカルボン酸(FMCA)である。Ru(NH3+及びRu(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)が好ましい。
【0072】
酸化還元剤は典型的には、試薬混合物中に、10から200mM、例えば20から150mM、好ましくは30から100mM、又は80mMまでの量で存在する。
【0073】
好ましい実施形態において、電気化学アッセイにおいて使用される試薬混合物は、さらにレダクターゼを含む。該レダクターゼは典型的には、還元型NAD又はそのアナログから2電子を移動させ、2電子を酸化還元剤へと移動させる。したがってレダクターゼの使用は、速い電子の移動を提供する。
【0074】
使用され得るレダクターゼの例としては、ジアホラーゼ及びチトクロムP450レダクターゼ、特に、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)由来のチトクロムP450cam酵素システムのプチダレドキシン(putidaredoxin)レダクターゼ、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のP450BM−3酵素のフラビン(FAD/FMN)ドメイン、ホウレン草フェロドキシン(ferrodoxin)レダクターゼ、ルブレドキシンレダクターゼ、アドレノドキシンレダクターゼ、硝酸レダクターゼ、チトクロムbレダクターゼ、トウモロコシ硝酸レダクターゼ、テルプレドキシン(terpredoxin)レダクターゼ並びに酵母、ラット、ウサギ及びヒトNADPHチトクロムP450レダクターゼが挙げられる。本発明における使用のための好ましいレダクターゼとしては、ジアホラーゼ及びプチダレドキシンレダクターゼが挙げられる。
【0075】
レダクターゼは、精製又は単離されている組換えタンパク質又は天然に存在するタンパク質であり得る。レダクターゼは、それが電子移動を行なう速度を最適化するためなどのその性能、又はその基質特異性を向上させるために、変異導入されていてもよい。
【0076】
レダクターゼは典型的には、試薬混合物中に、0.5から100mg/ml、例えば1から50mg/ml、1から30mg/ml又は2から20mg/mlの量で存在する。
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、コレステロールアッセイの一般的なスキームは以下の通りであり:
【0078】
【化9】

【0079】
そして、トリグリセリドアッセイの一般的なスキームは以下の通りであり:
【0080】
【化10】

【0081】
ここで
PdR − はプチダレドキシンレダクターゼであり、
Dia − はジアホラーゼであり、
ChD − はコレステロールデヒドロゲナーゼであり、
GlyD − はグリセロールデヒドロゲナーゼである。
【0082】
デヒドロゲナーゼがオキシダーゼにより置換され得、結果としてカスケードへの変化を生じ、電気化学を介した過酸化物又は酵素の測定を可能にし得ることは、当業者に周知であろう。
【0083】
試薬混合物は、1以上の追加の構成成分(例えば、賦形剤及び/又は緩衝剤及び/又は安定剤)を随意に含む。該賦形剤は試薬混合物中に含まれることが好ましく、それにより、当分野で周知のように、混合物を安定化することができ、及び随意に、試薬混合物が本発明の装置上で乾燥される場合には、乾燥混合物に多孔性を提供することができる。適切な賦形剤の例としては、マンニトール、イノシトール及びラクトースなどの糖、グリシン及びPEGが挙げられる。該緩衝剤も、最適な酵素活性のために必要なpHを提供するために含まれ得る。例えば、トリス緩衝剤(pH9)が使用され得る。該安定剤は、例えば酵素の安定性を高めるために添加され得る。適切な安定剤の例としては、アミノ酸(例えばグリシン)及びエクトイン(ectoine)である。
【0084】
本発明のセンサーは典型的には、オキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼと反応するコレステロール又はトリグリセリドの量の測定用検出装置を含む。好ましい実施形態において、センサーはコレステロール又はトリグリセリド含量の電気化学的測定用である。この実施形態において、センサーとしては少なくとも2つの電極を有する電気化学セルが挙げられる。該セルは、作用電極及び、擬似基準電極としても働く対電極を有する二電極システムであり得る。あるいは、セルは、作用電極、基準電極及び対電極を有する三電極システムであり得る。好ましい実施形態において、セルの作用電極は、微小電極、例えば、50μm以下の幅を有するマイクロバンド(microband)電極である。典型的には、電極は、水溶性セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)又は非置換(non-substituted)水溶性サッカリド(例えば、グルコース、フルクトース、トレハロース、スクロース、ラクトース又はマルトース)を含む被覆層を備えていない。
【0085】
センサーは典型的には、測定ユニット(セルに電位を供給するための電力供給装置及び結果として生じる電気化学応答(典型的にはセルを横切る電流)の測定のための測定器を含む)も含む。
【0086】
典型的には、界面活性剤及び酵素試薬、及び必要な任意の更なる試薬は、適切な液体(例えば水又は緩衝液)中に懸濁/溶解され、センサーへ供給される単一の試薬混合物として、一緒に混合される。次いで試薬混合物は、典型的には、適切な位置において乾燥される。センサー内/上で物質を乾燥するこの工程は、所望の位置に物質を保持するのに役立つ。乾燥は、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥又はオーブン乾燥(加熱)により、好ましくは凍結乾燥により実施され得る。試薬混合物は典型的には、電極の近くに配置され、それゆえ試料が試薬混合物に接触するとき、電極との接触も起こる。
【0087】
センサーは、試験されるべき試料が試薬混合物との接触前に通過する膜を随意に含み得る。該膜は、例えば、赤血球(red blood cells)、赤血球(erythrocytes)及び/又はリンパ球などの構成成分をろ過して除くために使用され得る。適切なろ過膜(血液ろ過膜を含む)は当分野において公知である。血液ろ過膜の例は、Pall filtrationのPresence 200及びPALL BTS SP300、Whatman VF2、Whatman Cyclopore、Spectral NX及びSpectral Xである。ガラス繊維(Fibreglass)フィルター(例えばWhatman VF2)は、全血から血漿を分離することができ、全血検体が装置に供給され、試験されるべき試料が血漿である場合の使用に適している。
【0088】
別の又は追加の膜も使用され得、使用前に親水性又は疎水性処理が施されたものが含まれる。膜の他の表面特性も、所望の場合には改変され得る。例えば、水中での膜の接触角度を変更するための処理は、膜を通過する所望の試料の流れを促進するために使用され得る。膜は1、2又はそれ以上の物質の層を含み得、それぞれは同じでも異なってもよい。例えば、異なる膜物質の2層を含む常套的な二重層膜が使用され得る。
【0089】
本発明における使用のための適切な装置としては、WO2003/056319及びWO2006/000828に記載されているものが挙げられる。
【0090】
上記実施形態において、本発明のセンサーはトリグリセリド又はコレステロール検出用である。しかし、当業者は、単一のセンサーが試料のトリグリセリド及びコレステロール含量の両方の測定を提供するために使用され得ることを理解するであろう。一実施形態において、これは、センサー内に2つの電気化学セル(試料のコレステロール含量の測定のために採用されるもの、及び試料のトリグリセリド含量の測定のために採用されるもの)を含めることにより達成される。WO2003/056319及びWO2006/000828に記載されるセンサーにおいて、これは、レセプタクルの形態で1つの電気化学セルにコレステロール試験用の適切な試薬を提供し、レセプタクルの形態で第二の電気化学セルにトリグリセリド試験用の適切な試薬を提供することにより、達成され得る。次いでセンサーは、試薬混合物が適切な電気化学セル内の適切な位置で乾燥されるように、凍結乾燥工程に供され得る。この実施形態において、2つの試薬混合物は、2つのアッセイが互いを妨げることなく同時に実施され得るように、限定的な位置に固定される。
【0091】
本発明の方法において、試験されるべき試料は、コレステロール又はトリグリセリド含量が測定されることを可能にするために、本明細書に記載の界面活性剤と接触させられ、さらに1以上の他の試薬と接触させられる。典型的には、試料は、本明細書に記載の試薬混合物と接触させられ、コレステロール又はトリグリセリド含量は電気化学的に測定される。
【0092】
測定する前に、試薬混合物が試料と混合し、反応が起こるのに十分な時間(「ウェットアップ(wet-up)」期間)が許容されなければならない。凍結乾燥試薬を含むセンサーと血漿試料が使用される場合、界面活性剤及び酵素試薬との試料の接触と試験の開始の間に、およそ20から30秒の時間が経過する。このウェットアップ期間は、20秒の短さであり得、又は15秒でさえあり得るが、45秒又は2分まででもよい。この短いウェットアップ期間は、本発明の界面活性剤に、試料中に存在する全ての種類のリポタンパク質産物を分解させ、遊離したコレステロール又はトリグリセリドが酵素試薬と反応することを可能にするのに十分である。全血が使用される場合、血球の除去を許容するために追加の時間が必要とされ得る。例えば、全血試料はセンサーに提供され得、血球の除去及び取り込み/試薬混合物との反応のために、4又は5分の期間が提供され得る。
【0093】
電気化学的決定において、試薬混合物は典型的には、試料添加の前に電気化学セル内に存在する。セルへの試料の添加により上記ウェットアップ期間が開始され、ウェットアップ期間が経過した後に電位の印加が起こる。別の実施形態においては、試料は電極から離れて試薬と混合され、セルに添加されると直ぐに電位が印加される。
【0094】
電気化学応答は、試料の添加後10秒から5分の期間内に測定される。典型的には、電気化学応答は、試料の添加後少なくとも0.5分、例えば少なくとも1分で決定される。好ましい実施形態において、電気化学応答は、試料の添加後少なくとも1.5分、好ましくは少なくとも2分で決定される。
【0095】
典型的には、Ru(II)が作用電極において検出されるべき生成物である場合、セルに印加される電位は0.1Vから0.3Vである。好ましい印加電位は0.15Vである。(本明細書中で言及される全ての電圧は、0.1M塩化物で、Ag/AgCl基準電極に対して示される。)好ましい実施形態において、電位はまず、約1から4秒間、0.15Vの正印加電位にされ、次いで、還元電流の測定が望まれる場合には、負印加電位にされる。異なる酸化還元剤が使用される場合、印加電位は、酸化/還元ピークが生じる電位に従って変更され得る。電位が印加される時間の長さも変わり得る。
【0096】
したがって本発明の電気化学試験は、コレステロール及び/又はトリグリセリドの測定が非常に短い時間、典型的には装置への試料の添加から約5分以内に又は4分以内になされることを可能にする。
【0097】
本発明は、試料中のコレステロール及び/又はトリグリセリドの総量を決定するために、試料中の全てのリポタンパク質画分を分解するための式(1)の界面活性剤(好ましくは式(I)の界面活性剤)の使用も提供する。
【0098】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、試料中のトリグリセリド及び/又はコレステロール量の決定用センサーを提供し、該センサーは、
(a)式(Ix)又は(II)の界面活性剤
【0099】
【化11】

【0100】
サッカリド−O(CHA (II)
[式中、Rは式−CONH(CH−CHの基であり、ここでMは6から20であり、Rは水素又はメチルであり、AはC−Cシクロアルキル基であり、Nは1から10である];及び、
(b)トリグリセリド測定用酵素試薬及び/又はコレステロール測定用酵素試薬
を含む。
この実施形態において、界面活性剤は好ましくは式(Ixx)の界面活性剤である:
【0101】
【化12】

【0102】
[式中、R11は式−CONH(CH−CHの基であり且つR12は水素若しくはメチルである;又はR11は水素であり且つR12は−(CH−Aである、のいずれかである。Mは6から10であり、Nは2から6であり、Aはシクロヘキシルであることが好ましい。]。具体的な好ましい界面活性剤は、メチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−D−グルコピラノシド又は3−シクロヘキシル−1−プロピル−D−グルコシドである。この実施形態において、センサーはさらに、少なくとも2つの電極を有する電気化学セル;補酵素及び、酸化され又は還元されて生成物を形成することのできる酸化還元剤;及び随意にさらにレダクターゼを含み得る。典型的には、界面活性剤、酵素試薬及び、使用する場合には補酵素、酸化還元剤及び/又はレダクターゼは、単一の試薬混合物として存在する。コレステロール測定用酵素試薬は、例えば、(i)コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ及び(ii)コレステロールデヒドロゲナーゼを含み得る。トリグリセリド測定用酵素試薬は、例えば、(i)コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ及び(ii)グリセロールデヒドロゲナーゼを含み得る。例えば、トリグリセリド測定用酵素試薬は、リパーゼ及びグリセロールデヒドロゲナーゼを含み得る。
【0103】
この具体的な実施形態において、試料中のコレステロール及び/又はトリグリセリド量の決定方法も提供され、本方法は、
−試料をこの実施形態の界面活性剤と接触させる工程;及び、
−存在するコレステロール及び/又はトリグリセリド量を決定する工程
を含む。
この方法において、コレステロール及び/又はトリグリセリド量の決定は、典型的には電気化学的決定である。例えば、本方法は、電気化学セル内において試料を界面活性剤、酵素試薬、補酵素、酸化還元剤及び随意にレダクターゼと接触させること、電気化学セルに電位を印加すること、及びセルの電気化学応答を決定することを含み得る。好ましくは、セルの電気化学応答は、試料を界面活性剤と接触させた後、少なくとも1.5分で決定される。好ましくは、試料と接触させられる界面活性剤の量は、試料と界面活性剤とを組み合わせたものの中で、少なくとも20mMの界面活性剤濃度を提供するのに十分な量である。
【実施例】
【0104】
実施例1:Anameg−7及びCyglu−3
本実験の目的は、血漿HDL又はLDLの測定における新規界面活性剤の効果について、その界面活性剤で調製したコレステロールセンサーを調べることであった。
【0105】
方法
30mM Ru(Acac)溶液
トリス緩衝液、KOH、β−ラクトース及びRu(Acac)を混合することにより、Ru(Acac)溶液を調製し、100mMトリス緩衝液pH9.0、30mM KOH、10%w/vβ−ラクトース及び30mMRu(Acac)を含む溶液を得た。この溶液を、Covarisアコースティックミキサー(acoustic mixer)を使用して混合した。Ru(Acac)=Ru(acac)(Py−3−CO2H)(Py−3−CO2)
【0106】
Anameg−7及びCyglu−3溶液
関連する界面活性剤をRu(Acac)溶液に添加することにより、二倍濃度のAnameg−7又はCyglu−3溶液を作製し、以下の終濃度とした:
Anameg−7(Anatrace、A340)
200mM(131μlRu(Acac)溶液中0.0088g)
100mM(200mM原液37.5μl+Ru(Acac)溶液37.5μl)
50mM(200mM原液25μl+Ru(Acac)溶液75μl)
Cyglu−3(Anatrace、C323G)
200mM(125μlRu(Acac)溶液中0.0077g)
100mM(200mM原液37.5μl+Ru(Acac)溶液37.5μl)
50mM(200mM原液25μl+Ru(Acac)溶液75μl)
【0107】
酵素混合物
酵素及び補酵素をRu(Acac)溶液に添加することにより、二倍濃度で酵素混合物を作製し、以下の終濃度とした:
17.7mMチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社(Oriental Yeast Co))
8.4mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(Biocatalysts)
6.7mg/mlリパーゼ(ジェンザイム(Genzyme))
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチン無添加(天野(Amano)、CHDH−6)
この溶液を、Covarisアコースティックミキサーを使用して混合した。
【0108】
分注及び凍結乾燥
各酵素溶液について、等容量(およそ50ul)の二倍濃度の酵素溶液及びAnameg−7又はCyglu−3溶液を1:1で混合し、最終酵素/界面活性剤混合物を得た。0.4μl/ウェルの各溶液を、電動ピペットを使用して、WO2006/000828に記載されるように、センサー上に分注した。次いで、分注されたセンサーシートを凍結乾燥した。
【0109】
血漿試料
血漿試料は、5分間2900RCFにて遠心する前に、30分間解凍した。脱脂した血清(Scipac、S139)も試料として使用した。試料は、総コレステロール、トリグリセリド(TG)、HDLコレステロール及びLDLコレステロール濃度について、Space clinical analyser(Schiappanelli Biosystems Inc)を使用して分析した。
【0110】
試験プロトコール1
電気化学セル当たり、15μlの血漿試料を使用した。15μlの血漿の添加と同時に、クロノアンペロメトリー試験を開始した。酸化電流を13時点(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)において0.15Vで測定し、還元電流を最終時点(416秒)において−0.45Vで測定した。電流は、明記した各時点において4秒間測定した。各試料は二連で試験した。
【0111】
試験プロトコール2
電気化学セル当たり、15μlの血漿試料を使用した。15μlの血漿の添加と同時に、クロノアンペロメトリー試験を開始した。酸化電流を13時点(0、34、68、102、136、170、204、238、272、306、340、374及び408秒)において0.15Vで測定し、還元電流を最終時点(442秒)において−0.45Vで測定した。電流は、明記した各時点において4秒間測定した。各試料は二連で試験した。
【0112】
分析
集めた電流測定値を、space analyserにより測定した血漿試料のHDL及びLDLコレステロール濃度に対してプロットした。各時点の勾配を使用して、LDL及びHDLの測定間で得られる%ディファレンシエーション(% differentiation)を計算した。各時点におけるHDL及びLDLへの較正プロットについての傾き及び切片を表1Aに示し、これらの界面活性剤が、特に32秒を超える時間において、HDL及びLDLの両方に働くことを示す。
【0113】
HDL及びLDLの間のディファレンシエーションは、方程式(i):
【0114】
【数3】

【0115】
に従ってHDLについて決定し得、ここでGは測定したXへの応答の勾配である(例えば、Xの既知の濃度に対して測定した電流)。測定した応答は、リポタンパク質濃度に関する(又は対応する)、例えば、リポタンパク質濃度に比例する、任意の測定値であり得る。
【0116】
Anameg−7で調製したセンサーについて、応答のHDL勾配は低く、界面活性剤濃度の上昇に伴い低下する。応答のLDL勾配は界面活性剤濃度に伴い増加し、比較的高い。これは、HDLが界面活性剤と急速に反応し、その後LDLへ強く応答したことを示し得る。Cyglu−3で調製したセンサーで、同様の効果が見られる。
【0117】
センサー応答を、Space analyserにより測定した総コレステロール濃度に対してもプロットした。各時点における総コレステロールに対する較正プロットについての傾き及び切片を表1Bに示す。長時間における総コレステロールへの応答の勾配は、100mM Anameg−7又はCyglu−3について高く、切片は低いことから、センサーはHDL又はLDLコレステロールよりはむしろ総コレステロールに応答することを示す。
【0118】
総コレステロールへの応答についての較正プロットを図1に示す。図1(a)から(c)は、界面活性剤としてAnameg−7((a)25mM Anameg−7;(b)50mM Anameg−7;(c)100mM Anameg−7)を使用して288秒において取得した電流測定値に関し、図1(d)から(f)は、界面活性剤としてCyglu−3((d)25mM Cyglu−3;(e)50mM Cyglu−3;(f)100mM Cyglu−3)を使用して320秒において取得した電流測定値に関する。
【0119】
図1は、100mM Anameg−7又はCyglu−3を含むセンサーが優れた直線性及び総コレステロールへの高い応答の勾配を与えることを示す。
【0120】
実施例2から14
一般的な製剤及び/又は試験手順における小さな変更を伴いながら、同じ基本の酵素混合物を使用して、いくつかの実験を実施した。これらの各実施例において記載する改変は、以下に説明する一般的なディテールについて行なう変更に関するものである。
【0121】
酵素混合物
一般的な酵素混合物には、以下の構成成分を含めた:
0.1Mトリス緩衝液(pH9.0)
40mM KOH
40mM Ru(Acac)
10%ラクトース
100mM Anameg 7
500mM NaCl
8.9mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(TNAD)
4.2mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(PdR)
3.3mg/mlリパーゼ
22mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチン無添加(ChDH)。
【0122】
分注及び凍結乾燥
0.4μl/ウェルの各溶液を、電動ピペットを使用して、WO2006/000828に記載されるように、センサー上に分注した。次いで、分注されたセンサーシートを凍結乾燥した。
【0123】
血漿試料
血漿又は脱脂した血清(Scipac、S139)でセンサーを試験した。試料は、総コレステロール及びトリグリセリド濃度の両方について、Space clinical analyser(Schiappanelli Biosystems Inc.)を使用して分析した。
【0124】
試験プロトコール
各電気化学セルに、12μlの血漿試料を添加した。試料の添加と同時に、クロノアンペロメトリー試験を開始し、実施例1のプロトコール1におけるのと同じ一連の電流測定値を得た。
【0125】
センサー応答を、Space analyserにより測定した総コレステロール濃度に対してプロットした。次いで、選択した時点における総コレステロールに対する較正プロットについての傾き及び切片を計算した。
【0126】
実施例2:異なるアルキル鎖長
製剤及び試験手順は上記説明した通りであり、以下の改変を伴った:
40mM KOHではなく、30mM KOHを使用し、
40mM Ru(Acac)ではなく、30mM Ru(Acac)を使用し、
混合物中にNaClは含めなかった。
【0127】
Anameg−7界面活性剤を以下の界面活性剤により置き換え、0、25、50及び100mMの濃度で使用した:
−n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド(HexGP、Anatraceから入手可能)
−n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド(HepGP、Anatraceから入手可能)
−n−オクチル−β−D−グルコピラノシド(OGP、Anatraceから入手可能)
−n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP、Anatraceから入手可能)。
【0128】
結果を表2に示す。
【0129】
実施例3:異なるイオン強度
製剤及び試験手順は上記説明した通りであり、以下の改変を伴った:
【0130】
塩を、一般的な酵素混合物から以下のように添加又は排除した:
−混合物中に塩を含めない
−混合物中に250mM KCl又はNaClを含める
−混合物中に500mM KClを含める。
【0131】
結果を表3に示す。
【0132】
実施例4:ラクトースのBSAへの置き換え
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、ラクトースを1%、2%及び3%の濃度のBSAにより置き換えた。
【0133】
結果を表4に示す。
【0134】
実施例5:コレステロールデヒドロゲナーゼ濃度のバリエーション
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、コレステロールデヒドロゲナーゼ濃度を、22、44、及び66mg/mlで試験した。
試験を、実施例1のプロトコール2に従って完了した。
【0135】
結果を表5に示す。
【0136】
実施例6:トリス緩衝液のジエタノールアミン緩衝液への置き換え
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、緩衝液をトリスから0.1Mジエタノールアミン(pH8.6)へと変更した。
以下の追加の改変も行なった:
10%ラクトースを、1%w/vミオイノシトール及び1%w/vエクトインの組み合わせにより置き換えた。
500mM NaClを400mM KClにより置き換え、
40mM Ru(Acac)を80mMルテニウムヘキサミン(Ru(NHCl)に置き換えた。
【0137】
さらに、一般的な酵素混合物の100mM Anameg 7を以下の界面活性剤に置き換えた:
−200mM Anameg−7
−100又は200mM Cyglu−3
−100又は200mM オクチルグルコピラノシド(OGP)
−100又は200mM n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)
−5%w/vCHAPS:5%w/v DeoxyBigCHAPS(参考例)。
【0138】
この実施例において、試験プロトコールを、以下のようにわずかに改変した。196秒の間、15の連続する時間間隔で、+0.15Vで1.0秒間酸化電流を測定し、その後−0.45Vで1.0秒間還元電流を測定した。酸化電流はおよそ0、14、28、42、56、70、84、98、112、126、140、154、168、182、196秒において、還元電流は210秒において−0.45Vで測定した。
【0139】
結果を表6に示す。
【0140】
実施例7:広い範囲にわたる様々な界面活性剤濃度
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、使用した界面活性剤及びその濃度は以下のように変化させた(一般的な混合物中の100mM Anameg 7の代わりに):
−界面活性剤なし
−10、25、50、200又は300mM Anameg−7
−10、25、50、100、200又は300mM Cyglu−3
−10、25、50、100、200又は300mM n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)。
【0141】
試験プロトコールは、実施例1のプロトコール2におけるものと同様であった。
【0142】
結果を表7A及び7Bに示す。
【0143】
実施例8:コール酸塩を含まないコレステロールデヒドロゲナーゼ
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、標準コレステロールデヒドロゲナーゼを、コール酸を含まないデヒドロゲナーゼに置き換えた。
【0144】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0145】
結果を表8に示す。
【0146】
実施例9:二重界面活性剤システム
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、一般的な酵素混合物の100mM Anamegを、以下の界面活性剤の組み合わせに置き換えた:
−50mM Anameg−7及び50mM n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)
−50mM Cyglu−3及び50mM n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)。
【0147】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0148】
結果を表9に示す。
【0149】
実施例10:異なる、新規の、メディエーターの使用
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、一般的な酵素混合物中に存在する40mM Ru(Acac)を、異なるルテニウムメディエーターに置き換えた。
【0150】
実験は、一般的な酵素混合物中に存在する100mM Anameg−7界面活性剤構成成分を使用して実施した。次いで、以下の別の界面活性剤を使用して、更なる実験を行なった:
−界面活性剤なし
−100mM Cyglu−3
−100mM n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)。
【0151】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0152】
結果を表10に示す。
【0153】
実施例11:異なる糖界面活性剤
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、一般的な酵素混合物の100mM Anameg−7を以下のように置き換えた:
−界面活性剤なし
−50mM n−オクチルβ−D−ガラクトピラノシド
−50mM n−ヘプチルβ−D−チオグルコピラノシド
−50mM N−オクタノイルβ−D−グルコシルアミン(NOGA)
−50mM Anameg−7
−50mM n−オクチルβ−D−グルコピラノシド(OGP)
−50mM n−ヘプチルβ−D−グルコピラノシド(HeptGP)
−100mM NOGA
−50、100又は200mM n−オクチルβ−D−グルコピラノシド(OGP)
−50又は100mM n−オクチルβ−D−マンノピラノシド(OMP)
−200mM n−オクチルβ−D−マンノピラノシド(OMP)
−50、100又は200mM n−オクタノイルD−グルコピラノシド(OYGP)。
【0154】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0155】
結果を表11に示す。
【0156】
実施例12:Anameg界面活性剤の範囲
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、Anameg界面活性剤の範囲は以下のように設定した:
−界面活性剤なし
−50mM、100mM又は200mM Anameg−5
−50mM、100mM又は200mM Anameg−6
−50mM、100mM又は200mM Anameg−7
−50mM、100mM又は200mM Anameg−8
−50mM、100mM又は200mM Anameg−9。
【0157】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0158】
結果を表12に示す。
【0159】
実施例13:Cyglu界面活性剤の範囲
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、Cyglu界面活性剤の範囲は、Anameg−7を以下のように置き換えた:
−界面活性剤なし
−0、50、100又は200mM β−cyglu−1
−50、100又は200mM β−cyglu−2
−50、100又は200mM β−cyglu−3
−50、100又は200mM α−cyglu−3。
【0160】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0161】
結果を表13に示す。
【0162】
実施例14:酵素の同等のものへの置き換え
製剤及び試験手順は上記説明した通りであったが、異なるNADHオキシダーゼ又は異なるエステル切断酵素のいずれかを以下のように使用した:
−4.2mg/mlプチダレドキシンレダクターゼを、4.2mg/mLジアホラーゼにより置き換え、
−3.3mg/mlリパーゼ(ジェンザイム)を、3.3mg/mL東洋紡ChEにより置き換えた。
【0163】
また、10%ラクトースを2%w/v BSAに置き換えた。
【0164】
試験プロトコールは、実施例7において説明したものと同様であった。
【0165】
結果を表14に示す。
【0166】
実施例15:凍結乾燥トリグリセリドセンサー
この実施例において、トリグリセリドセンサー用最終酵素混合物は以下を含んだ:
0.1M HEPBS(pH9.0)
30mM KOH
30mM Ru(Acac)
10%w/vラクトース
17.6mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(TNAD)
6.7mg/mlジアホラーゼ
5mg/ml東洋紡ChE
45mg/mlグリセロールデヒドロゲナーゼ。
【0167】
界面活性剤なしで、及び以下の界面活性剤を以下の濃度で含んで、の両方で、この製剤を使用した:
−1%及び5%w/v Anameg−7
−1%及び5%w/v cyglu−3
−1%及び5%w/v n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(NGP)。
【0168】
分注及び凍結乾燥
0.3μl/ウェルの各溶液を、電動ピペットを使用して、WO2006/000828に記載されるように、センサー上に分注した。次いで、分注されたセンサーシートを凍結乾燥した。
【0169】
血漿試料
血漿又は脱脂した血清(Scipac、S139)でセンサーを試験した。試料は、総コレステロール及びトリグリセリド濃度の両方について、Space clinical analyser(Schiappanelli Biosystems Inc.)を使用して分析した。
【0170】
試験プロトコール
各電気化学セルに、12μlの血漿試料を添加し、残りの試験プロトコールは実施例7において説明したものと同様であった。
【0171】
センサー応答を、Space analyserにより測定した総トリグリセリド濃度に対してプロットした。次いで、選択した時点におけるトリグリセリドに対する較正プロットについての傾き及び切片を計算した。
【0172】
結果を表15に示す。
【0173】
【表2−1】

【0174】
【表2−2】

【0175】
【表3−1】

【0176】
【表3−2】

【0177】
【表4】



【0178】
【表5】

【0179】
【表6】

【0180】
【表7】



【0181】
【表8−1】

【0182】
【表8−2】

【0183】
【表9】

【0184】
【表10】

【0185】
【表11】

【0186】
【表12−1】

【0187】
【表12−2】

【0188】
【表13−1】

【0189】
【表13−2】

【0190】
【表14】



【0191】
【表15−1】

【0192】
【表15−2】

【0193】
【表16】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のトリグリセリド及び/又はコレステロール量の決定用センサーであって、
(a)式(1)の界面活性剤
【化1】


[式中、
、R、R、R及びRのそれぞれは独立に、−OH、C−Cアルコキシ又は、式−OCONH(CHm’−CH、−OCO(CHm’−CH、O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH若しくは−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m’は4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である。但し、R、R、R、R及びR基の少なくとも1つは−OH又はC−Cアルコキシでない。];及び、
(b)トリグリセリド測定用酵素試薬及び/又はコレステロール測定用酵素試薬
を含むセンサー。
【請求項2】
前記界面活性剤が、式(I)
【化2】


[式中:
i)Rは、式−CONH(CHm’−CH又は−CO(CHm’−CHの基であり、ここでm’は4から20であり;Xは−OH又はC−Cアルコキシである;又は、
ii)Rは、水素又はC−Cアルキルであり;Xは式−O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−O(CH−A、−S(CH−A、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基であり、ここでmは4から20であり、m”は4から6又は8から20であり、nは0から10であり、AはC−Cシクロアルキル基又はフェニル基である]の界面活性剤である、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
m’が3から10である、請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
mが5から9である、請求項2に記載のセンサー。
【請求項5】
m”が4から6である、請求項2に記載のセンサー。
【請求項6】
nが0から5である、請求項2に記載のセンサー。
【請求項7】
AがC−Cシクロアルキル基である、請求項2又は6に記載のセンサー。
【請求項8】
Aがシクロヘキシルである、請求項2、6又は7に記載のセンサー。
【請求項9】
が式−CONH(CHm’−CH又は−CO(CHm’−CHの基であり、且つXが−OH又はC−Cアルコキシである、請求項2又は3に記載のセンサー。
【請求項10】
が水素又はC−Cアルキルであり、且つXが式−O(CH−CH、−S(CHm”−CH、−OCO(CH−CH又は−NHCO(CH−CHの基である、請求項2、4又は5に記載のセンサー。
【請求項11】
が水素又はC−Cアルキルであり、且つXが式−O(CH−A、又は−S(CH−Aの基である、請求項2、6、7又は8に記載のセンサー。
【請求項12】
界面活性剤がメチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−D−グルコピラノシド又は3−シクロヘキシル−1−プロピル−D−グルコシドである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項13】
界面活性剤が式(Ia)、(Ib)又は(Ic):
【化3】


[式中、R及びXは前記請求項のいずれか1項と同義である]の界面活性剤である、請求項2から12のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項14】
前記請求項のいずれか1項に記載のセンサーであって、さらに、少なくとも2つの電極を有する電気化学セル;補酵素、酸化され又は還元されて生成物を形成することのできる酸化還元剤及び随意にレダクターゼを含むセンサー。
【請求項15】
界面活性剤、酵素試薬及び、使用する場合には補酵素、酸化還元剤及び/又はレダクターゼが、単一の試薬混合物として存在する、前記請求項のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項16】
コレステロール測定用酵素試薬が(i)コレステロールエステラーゼ若しくはリパーゼ;及び(ii)コレステロールデヒドロゲナーゼを含み;及び/又はトリグリセリド測定用酵素試薬が(i)コレステロールエステラーゼ若しくはリパーゼ;及び(ii)グリセロールデヒドロゲナーゼを含む、前記請求項のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項17】
試料中のコレステロール及び/又はトリグリセリド量の決定方法であって、
−試料を請求項1から13のいずれか1項において定義される界面活性剤と接触させる工程;及び、
−存在するコレステロール及び/又はトリグリセリド量を決定する工程
を含む方法。
【請求項18】
コレステロール及び/又はトリグリセリド量の決定が電気化学的決定であり、且つ方法が随意に、電気化学セル内において試料を界面活性剤、酵素試薬、補酵素、酸化還元剤及び随意にレダクターゼと接触させる工程、電気化学セルに電位を印加する工程、及びセルの電気化学応答を決定する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
セルの電気化学応答が、試料を界面活性剤と接触させた後、少なくとも1.5分で決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
試料と接触させられる界面活性剤の量が、試料と界面活性剤とを組み合わせたものの中で、少なくとも20mMの界面活性剤濃度を提供するのに十分な量である、請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図1(f)】
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【公表番号】特表2010−529473(P2010−529473A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511717(P2010−511717)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001996
【国際公開番号】WO2008/152380
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】