説明

リモートエアコンシステム

【課題】比較的簡単に後付けすることが可能なリモートエアコンシステムを提供すること。
【解決手段】正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70からエンジン始動要求信号が出力され、エンジン始動要求に関する情報がパワーマネジメントECU10によって取得されることにより、エアコン作動条件が満たされる。このとき、パワーマネジメントECU10及びパワーコントロールユニット60による車両制御の一つとして、エアコンを作動させることが可能となる。このため、リモートエアコンシステム1を元々有さない標準装備に対する後付け作業としては、後付けECU70の追加や、その後付けECU70からのエンジン始動要求信号の出力に必要な電気経路の確保に伴う簡単な配線等に留まる。従って、比較的簡単に後付けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン操作でエアコンを作動させるリモートエアコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを動力源とするいわゆるハイブリッド車において、電動コンプレッサを備えるものでは、ユーザによるリモコン操作がなされたとき、ハイブリッドバッテリの電力を利用して電動コンプレッサを駆動し、このことにより、エンジンを始動させることなくエアコンを作動させることが可能となっている(特許文献1参照)。
【0003】
また、この種のハイブリッド車において、ルーフ上に取り付けたソーラーパネルで発電し、その電力を利用して室内の換気を行い、このことにより、駐車中でもハイブリッドバッテリの電力を消費することなく室温の上昇を抑制できるようにすることが知られている(特許文献2〜3参照)。
【0004】
従って、これら2つのシステムを融合させ、まず後者のシステムを通じて、上記のように室内の換気を行い、次いで前者のシステムを通じて、上記のようにエアコンを作動させるようにすれば、冷房効率が著しく向上するものと考えられるので、これらをセットでメーカーオプションとすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−153231号公報(段落[0023]〜段落[0024])
【特許文献2】特開2004−338673号公報(段落[0072])
【特許文献3】特開2007−307957号公報(段落[0046])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記2つのシステムをセット化すると、それらを元々有さない標準装備に対する後付け作業が比較的大掛かりなものとなり、ユーザ一人の手では簡単に後付けできず、ディーラー等の専門機関に頼らざるを得ない。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、比較的簡単に後付けすることが可能なリモートエアコンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リモコン操作でエアコンを作動させるリモートエアコンシステムにおいて、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、車両制御を担う標準装備制御手段に対して、エアコン作動条件が満たされるのに必要な擬似信号を出力する後付け制御手段を備えることをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、リモコン操作が行われてエアコン作動要求用の遠隔操作信号が後付け制御手段によって取得されると、この後付け制御手段から標準装備制御手段に対して、エアコン作動条件が満たされるのに必要な擬似信号が出力され、このことにより、エアコン作動条件が満たされる。このとき、標準装備制御手段による車両制御の一つとして、エアコンを作動させることが可能となる。このため、リモートエアコンシステムを元々有さない標準装備に対する後付け作業としては、後付け制御手段の追加や、その後付け制御手段からの擬似信号の出力に必要な電気経路の確保に伴う簡単な配線等に留まる。従って、比較的簡単に後付けすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリモートエアコンシステムにおいて、エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車に適用され、前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへ当該ハイブリッド車を移行させるためのモードスイッチを擬似的にオンすることをその要旨としている。
【0011】
同構成によると、リモコン操作が行われてエアコン作動要求用の遠隔操作信号が後付け制御手段によって取得されると、この後付け制御手段によって、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへハイブリッド車を移行させるためのモードスイッチが擬似的にオンされ、当該モードに倣う形でエアコンが作動される。このため、標準装備制御手段は、既存の前記モードにおおよそ倣う形での車両制御の一つとして、エアコンを作動させればよく、当該リモートエアコンシステムをハイブリッド車に適用するに際し、大幅な変更を必要としない。従って、ハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、前記標準装備制御手段に対してエンジン始動要求信号を出力した後、前記モードスイッチを擬似的にオンすることをその要旨としている。
【0013】
同構成によると、リモコン操作が行われてエアコン作動要求用の遠隔操作信号が後付け制御手段によって取得されると、この後付け制御手段から標準装備制御手段に対してエンジン始動要求信号が出力された後、モードスイッチが擬似的にオンされ、当該モードに倣う形でエアコンが作動される。従って、エンジン始動要求信号が入力された後でなければ当該モードへ移行されない、そうしたシステムが既に構築されているハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、前記モードスイッチを擬似的にオンしながら、擬似的にエンジン始動操作を行うことをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、リモコン操作が行われてエアコン作動要求用の遠隔操作信号が後付け制御手段によって取得されると、この後付け制御手段によって、モードスイッチが擬似的にオンされながら、擬似的にエンジン始動操作が行われ、当該モードに倣う形でエアコンが作動される。従って、こうした一連の操作がなされた場合において、ハイブリッドバッテリの充電状態が十分であるときには、当該モードへ移行される結果、エアコンが作動され、一方、そうでないときには、当該モードへ移行されない結果、エアコンが作動されない、そうしたシステムが既に構築されているハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。尚、いずれにせよ、一瞬たりともエンジンが始動されることはなく、また、ハイブリッドバッテリの充電状態が十分であるときには、エアコンを作動させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステムにおいて、エアコンの作動を要求するリモコン操作が行われたことによる車両側の応答態様を示唆する内容の報知を行う報知手段をさらに備えることをその要旨としている。
【0017】
同構成によると、報知手段を通じて、エアコンの作動を要求するリモコン操作が行われたことによる車両側の応答態様を示唆する内容の報知が行われるので、リモコン操作を行ったユーザは、かかる報知内容から車両側の応答態様を知ることができる。尚、このことに関わる報知手段は、車両側に単独で設けられてもよく、また、リモコン操作に供されるリモコン機器が受信機能を有していることを前提として、このリモコン機器の側に単独で設けられてもよい。勿論、それら両者に報知手段が設けられてもよい。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記報知手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号が車両側で取得されたか否か、また、その遠隔操作信号が車両側で取得された場合にあって、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能か否か、を識別可能な態様での報知を行うことをその要旨としている。
【0019】
同構成によると、リモコン操作を行ったユーザが知りたいと願う様々な車両側の応答態様を示唆する内容の報知が、それらを識別可能な態様で行われる。従って、報知態様と車両側の応答態様とを関連付けして覚えておくことで、車両側の応答態様を即座に知ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記報知手段は、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示唆する内容の報知を行うことをその要旨としている。
【0021】
同構成によると、リモコン操作を行ったユーザが知りたいと願う車両側の応答態様を示唆する内容の一つとして、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間が挙げられる点に鑑み、その時間を示唆する内容の報知が行われる。従って、どれ位の時間に亘ってエンジンを始動させることなくエアコンを作動させることができるのか、言い換えると、ハイブリッドバッテリの充電状態が如何程であるのか、その見当を付けることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記後付け制御手段は、エンジンが始動されたことを示すエンジン始動信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力することをその要旨としている。
【0023】
同構成によると、ハイブリッドバッテリの充電状態が十分でなく、エンジンが始動された場合のように、エンジン始動信号が後付け制御手段によって取得されたとき、この後付け制御手段から標準装備制御手段に対して作動停止要求信号が出力され、エンジンやエアコンの作動が停止される。従って、ハイブリッドバッテリの充電状態が十分でないことに伴い、エンジンを始動させてまでエアコンが作動され続けられる、といったことを無くすることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜8のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記後付け制御手段は、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間に達したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力することをその要旨としている。
【0025】
同構成によると、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間に達したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号が後付け制御手段から標準装備制御手段に対して出力され、エンジンやエアコンの作動が停止される。従って、ハイブリッドバッテリの充電状態が十分でなくなる前、つまりエンジンが始動される前の段階で、エアコンの作動を確実に停止させることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステムにおいて、前記後付け制御手段は、エンジンの始動を予告する旨の始動予告信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力することをその要旨としている。
【0027】
同構成によると、車両を含む周辺環境の変化に伴い、エンジンを始動させる必要が生じた場合のように、始動予告信号が後付け制御手段によって取得されたとき、この後付け制御手段から標準装備制御手段に対して作動停止要求信号が出力され、エンジンやエアコンの作動が停止される。従って、エンジンが始動されてしまう前の段階で、エアコンの作動を確実に停止させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、比較的簡単に後付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るリモートエアコンシステムの第1実施形態による構成を示すブロック図。
【図2】電子キーでのリモコン操作によるエアコンの作動要求がなされるときの操作態様を示す説明図。
【図3】第1実施形態による構成のリモートエアコンシステムにおいて、後付けECUによる取得情報毎のハザードランプの点滅態様を示す説明図。
【図4】本発明に係るリモートエアコンシステムの第2実施形態による構成を示すブロック図。
【図5】第2実施形態による構成のリモートエアコンシステムにおいて、後付けECUによる取得情報毎のハザードランプの点滅態様を示す説明図。
【図6】電子キーでのリモコン操作によるエアコンの作動停止要求がなされるときの操作態様を示す説明図。
【図7】第2実施形態による構成の変更例である、別例による構成のリモートエアコンシステムにおいて、後付けECUによる取得情報毎のハザードランプの点滅態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を、ハイブリッド車に適用されるリモートエアコンシステムに具体化した第1実施形態について説明する。尚、本実施形態のリモートエアコンシステムは、エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車に適用されている。
【0031】
図1に示すように、リモートエアコンシステム1は、車両制御を担うパワーマネジメントECU10を備え、このパワーマネジメントECU10には、車内通信ネットワークの一つである、いわゆるCANを通じて、照合ECU20、ボデーECU30、エアコンECU40、エンジンECU50が電気的に接続されている。尚、ECUとは、「Electronic Control Unit」の略称であり、CANとは、「Controller Area Network」の略称である。
【0032】
前記照合ECU20には、送信ユニット21及びチューナ22が電気的に接続され、これらを通じて照合ECU20は、ユーザによって所持される電子キー23との間で双方向無線通信が可能であり、また、電子キー23を送信側とする単方向無線通信も可能となっている。ここに前記双方向無線通信に関し、電子キー23は、送信ユニット21から送信されるリクエスト信号に応答して、当該電子キー23毎に個別に設定されたIDコードを含む信号(IDコード信号)を自動的に送信する。また、前記単方向無線通信に関し、電子キー23は、ロックスイッチ24及びアンロックスイッチ25を備え、ロックスイッチ24が1回短押し操作されたとき、ドアロックの施錠を要求する遠隔操作信号を、一方、アンロックスイッチ25が1回短押し操作されたとき、ドアロックの解錠を要求する遠隔操作信号を送信する。さらに、図2に示すように、電子キー23は、ロックスイッチ24が短押し→短押し→長押しの順に合計3回操作されたとき、エアコンの作動を要求する遠隔操作信号を送信する。尚、これら各遠隔操作信号にも、当該電子キー23毎に個別に設定されたIDコードが含まれている。
【0033】
前記チューナ22は、電子キー23から送信されるいずれかの信号を受信したとき、その信号を復調して受信信号を生成し、その受信信号を照合ECU20に出力する。照合ECU20は、不揮発性のメモリを備え、このメモリには、当該照合ECU20が搭載されている車両に適合する電子キー23(=正規の電子キー23)のIDコードと同一のIDコード(=基準IDコード)が記憶されている。そして、照合ECU20は、チューナ22からいずれかの受信信号が入力されたとき、IDコード照合を実行し、前記受信信号の中に基準IDコードと一致するIDコードが含まれているか否かを判断する。
【0034】
照合ECU20は、IDコード信号に関する受信信号についてのIDコード照合を肯定判断したとき、リクエスト信号の送信エリアに正規の電子キー23が存在しているものと判断し、その旨を示す情報をCAN上に出力する。また、照合ECU20は、施錠要求に関する受信信号についてのIDコード照合を肯定判断したとき、正規の電子キー23でのリモコン操作による施錠要求があったものと判断し、その旨を示す情報をCAN上に出力する。また、照合ECU20は、解錠要求に関する受信信号についてのIDコード照合を肯定判断したとき、正規の電子キー23でのリモコン操作による解錠要求があったものと判断し、その旨を示す情報をCAN上に出力する。また、照合ECU20は、エアコンの作動要求に関する受信信号についてのIDコード照合を肯定判断したとき、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があったものと判断し、その旨を示す情報をCAN上に出力する。これらのことにより、CAN上に電気的に接続された各種ECU群は、それら各情報を共有できるようになる。
【0035】
前記パワーマネジメントECU10の入力側には、ブレーキスイッチ11、パワースイッチ12、モードスイッチ13が電気的に接続され、このパワーマネジメントECU10の出力側には、アクセサリリレー14、イグニッションリレー15、パワーコントロールユニット60が電気的に接続されている。ブレーキスイッチ11は、ブレーキ操作がなされたとき、スイッチ閉となり、このときHレベルのスイッチON信号をパワーマネジメントECU10に出力する。パワースイッチ12は、当該車両の電源ポジションをOFF(オフ)→ACC(アクセサリ)→IG ON(イグニッション オン)に切り替える場合に操作され、また、ハイブリッドシステムを起動させる場合にも操作される。このパワースイッチ12は、プッシュスイッチにて構成され、操作箇所が押圧操作されたとき、スイッチ閉となり、このときLレベルのスイッチON信号をパワーマネジメントECU10及び照合ECU20に出力する。モードスイッチ13は、当該ハイブリッド車を、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへ移行させる場合に操作される。このモードスイッチ13は、プッシュスイッチにて構成され、操作箇所が押圧操作されたとき、スイッチ閉となり、このときLレベルのスイッチON信号をパワーマネジメントECU10に出力する。
【0036】
パワーマネジメントECU10は、CANを通じて、リクエスト信号の送信エリア(この場合、車内)に正規の電子キー23が存在している旨を示す情報を取得したことを条件として、次のような制御を行う。即ち、パワーマネジメントECU10は、電源ポジションがOFFのときに、ブレーキスイッチ11からスイッチON信号が入力されていない状態で、パワースイッチ12からスイッチON信号が入力された場合、アクセサリリレー14をON作動させ、電源ポジションをOFF→ACCに切り替える。また、パワーマネジメントECU10は、電源ポジションがACCのときに、ブレーキスイッチ11からスイッチON信号が入力されていない状態で、パワースイッチ12からスイッチON信号が入力された場合、イグニッションリレー15をON作動させ、電源ポジションをACC→IG ONに切り替える。
【0037】
また、パワーマネジメントECU10は、ブレーキスイッチ11からスイッチON信号が入力されている状態で、パワースイッチ12からスイッチON信号が入力された場合、アクセサリリレー14及びイグニッションリレー15をON作動させる。そして、この場合、パワーマネジメントECU10は、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの起動信号を出力する。このことにより、当該車両においてハイブリッドシステムが起動され、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドシステムに関する制御を行い、その制御の一つとして、ハイブリッドバッテリ61の充電状態の監視を行い、充電状態が十分であるときには、エンジンを始動させず、一方、そうでないときには、エンジンを始動させる。また、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドバッテリ61の電力を利用して電動コンプレッサ62を駆動する。尚、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示すバッテリ監視信号をパワーマネジメントECU10に出力し、パワーマネジメントECU10は、そのバッテリ監視信号が入力されたとき、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示す情報をCAN上に出力する。従って、この情報も、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって共有される。
【0038】
尚、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって、正規の電子キー23でのリモコン操作による施錠要求(解錠要求)があった旨を示す情報が共有されているとき、ドアロックの施解錠制御を担うECUによる制御を通じて、ドアロックの施錠動作(解錠動作)が行われる。
【0039】
前記ボデーECU30には、リモートエアコン用の後付けECU70が電気的に接続され、この後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得したとき、ボデーECU30にエンジン始動要求信号を出力する。ボデーECU30は、後付けECU70からエンジン始動要求信号が入力されたとき、エンジン始動要求に関する情報をCAN上に出力する。従って、この情報も、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって共有される。前記パワーマネジメントECU10は、CANを通じて、エンジン始動要求に関する情報を取得したときにも、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの起動信号を出力する。
【0040】
前記後付けECU70は、前記モードスイッチ13の出力端に電気的に接続され、その接続配線を通じてLレベルの信号を出力することによって、モードスイッチ13のスイッチON信号を擬似的にパワーマネジメントECU10に対して出力する。従って、パワーマネジメントECU10は、こうした擬似的な信号が入力されたとき、モードスイッチ13からスイッチON信号が入力された場合と同様の制御を行う。即ち、パワーマネジメントECU10は、このとき、エンジン始動要求に関する情報を取得したことを条件として、当該ハイブリッド車を、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへ移行させる。尚、パワーマネジメントECU10に対して、たとえ擬似的なものであれ、モードスイッチ13のスイッチON信号が入力された段階において、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分であるときには、当該モードへ移行されるが、そうでないときには、当該モードへは移行されない。
【0041】
前記ボデーECU30には、フラッシャリレー31が電気的に接続され、その先には、ハザードランプ32が電気的に接続されている。後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示す情報を取得したとき、同じ経路を通じて正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得したか否かに応じて、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号をボデーECU30に対して出力する。即ち、後付けECU70は、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得していない場合には、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示す情報として如何なるものを取得しようとも、ハザードランプ32が点滅作動されないよう、消灯要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動は行われず、ハザードランプ32は消灯されたまま維持される。
【0042】
また、後付けECU70は、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得した場合にあって、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でない旨を示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が1回だけ点滅されるよう、1回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が1回だけ行われる。尚、この場合のように、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でない場合には、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動、言い換えると、エンジンを始動させることなくエアコンを作動させることは不可能である。
【0043】
また、後付けECU70は、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得した場合にあって、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分である旨を示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が2回に亘って点滅されるよう、2回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が2回に亘って行われる。尚、この場合のように、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分である場合には、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動、言い換えると、エンジンを始動させることなくエアコンを作動させることが可能となる。
【0044】
尚、図3に、後付けECU70による取得情報毎のハザードランプ32の点滅態様を示す。
ところで、エアコンECU40の入力側には、設定温度、車室内温度、外気温度、日射に関する物理量を検出するセンサ群が電気的に接続され、エアコンECU40は、各センサによる検出内容を、自身が行うエアコン制御に反映させるとともに、各センサによる検出内容に関する情報をCAN上に出力する。従って、これらの情報も、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって共有される。
【0045】
エンジンECU50の入力側には、エンジン回転数に関する物理量を検出するセンサが電気的に接続され、エンジンECU50は、そのセンサによる検出内容に関する情報をCAN上に出力する。従って、この情報も、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって共有される。前記後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて、エンジン回転数に関する情報を取得した場合にあって、それがエンジンが始動されたことを示すものであるとき、言い換えると、エンジン始動信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力する。ボデーECU30は、後付けECU70から作動停止要求信号が入力されたとき、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報をCAN上に出力する。従って、この情報も、CAN上に電気的に接続された各種ECU群によって共有される。パワーマネジメントECU10は、CANを通じて、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報を取得したとき、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの停止信号を出力する。このことにより、当該車両においてハイブリッドシステムが一旦断ち切られ、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドシステムに関する制御を一旦終了する。ここにエンジンが停止されるとともに、エアコン作動も停止される。
【0046】
前記後付けECU70は、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力したことに伴い、CANさらにはボデーECU30を通じて、エンジン回転数に関する情報を取得した場合にあって、それがエンジンが停止されたことを示すものであるとき、次のような制御を行う。即ち、後付けECU70は、このとき、言い換えると、エンジン停止信号を取得したとき、ハザードランプ32が3回に亘って点滅されるよう、3回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が3回に亘って行われる。
【0047】
次に、本実施形態のリモートエアコンシステム1の作用について説明する。
A:リモートエアコン作動要求(図1に破線で示すAの流れに相当)
この段階では、まず正規の電子キー23のロックスイッチ24が短押し→短押し→長押しの順に合計3回操作される(図2参照)。すると、ロックスイッチ短押し、空白、短押し、空白、長押しという信号が電子キー23から送信され、その遠隔操作信号がチューナ22で受信され、照合ECU20によるIDコード照合を経て、CANさらにはボデーECU30を通じて、後付けECU70に伝達され、後付けECU70で正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が取得される。
【0048】
B:パワーマネジメントECU10に対するエンジン始動要求(図1に破線で示すBの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、エンジン始動要求信号が出力され、ボデーECU30からCAN上に、エンジン始動要求に関する情報が出力され、この情報がパワーマネジメントECU10によって取得される。すると、パワーマネジメントECU10からパワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの起動信号が出力され、パワーコントロールユニット60による制御を通じて、ハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能となる。
【0049】
C:モードスイッチ13を擬似的にON(図1に破線で示すCの流れに相当)
この段階では、後付けECU70とモードスイッチ13の出力端とを電気的に接続するための接続配線を通じて、後付けECU70からLレベルの信号が出力され、このことにより、パワーマネジメントECU10に対して、モードスイッチ13のスイッチON信号が擬似的に入力される。
【0050】
D:状態に応じたハザード点滅(図1に破線で示すDの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号が出力される。すると、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32が「0回」、「1回」、「2回」のいずれかの回数に亘って点滅作動される(図3参照)。
【0051】
E:ハイブリッドバッテリ61の残量減少に伴うエンジンの始動(図1に破線で示すEの流れに相当)
この段階では、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でないとき、パワーコントロールユニット60による制御を通じて、エンジンが始動される。すると、エンジンが始動されたことを示すエンジン回転数に関する情報が、エンジンECU50からCAN上に出力され、この情報がボデーECU30を通じて後付けECU70によって取得される。
【0052】
F:パワーマネジメントECU10に対するエンジン停止要求(図1に破線で示すFの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、作動停止要求信号が出力され、ボデーECU30からCAN上に、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報が出力され、この情報がパワーマネジメントECU10によって取得される。すると、パワーマネジメントECU10からパワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの停止信号が出力され、パワーコントロールユニット60による制御を通じて、エンジンが停止されるとともに、エアコン作動も停止される。
【0053】
G:ハザード点滅によるエアコン停止の報知(図1に破線で示すGの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号が出力され、ここでは、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32が「3回」に亘って点滅作動される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70からエンジン始動要求信号が出力され、エンジン始動要求に関する情報がパワーマネジメントECU10によって取得されることにより、エアコン作動条件が満たされる。このとき、パワーマネジメントECU10及びパワーコントロールユニット60による車両制御の一つとして、エアコンを作動させることが可能となる。このため、リモートエアコンシステム1を元々有さない標準装備に対する後付け作業としては、後付けECU70の追加や、その後付けECU70からのエンジン始動要求信号の出力に必要な電気経路の確保に伴う簡単な配線等に留まる。従って、比較的簡単に後付けすることができる。
【0055】
(2)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70によって、モードスイッチ13が擬似的にオンされ、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードに倣う形でエアコンが作動される。このため、パワーマネジメントECU10及びパワーコントロールユニット60は、既存の前記モードにおおよそ倣う形での車両制御の一つとして、エアコンを作動させればよく、リモートエアコンシステム1をハイブリッド車に適用するに際し、大幅な変更を必要としない。従って、ハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。
【0056】
(3)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70からエンジン始動要求信号が出力された後、モードスイッチ13が擬似的にオンされ、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードに倣う形でエアコンが作動される。従って、パワーマネジメントECU10によってエンジン始動要求に関する情報が取得された後でなければ当該モードへ移行されない、そうしたシステムが既に構築されているハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。
【0057】
(4)ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示す情報が後付けECU70によって取得されたとき、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されたか否かに応じて、ハザードランプ32が点滅作動することによる報知が行われる。このようにハザードランプ32を通じて、エアコンの作動を要求するリモコン操作が行われたことによる車両側の応答態様を示唆する内容の報知が行われるので、リモコン操作を行ったユーザは、かかる報知内容から車両側の応答態様を知ることができる。
【0058】
(5)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されたか否か、また、その情報が後付けECU70によって取得された場合にあって、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能か否か、を識別可能な態様での報知が行われる。このようにリモコン操作を行ったユーザが知りたいと願う様々な車両側の応答態様を示唆する内容の報知が、それらを識別可能な態様で行われる。従って、報知態様と車両側の応答態様とを関連付けして覚えておくことで、車両側の応答態様を即座に知ることができる。
【0059】
(6)ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でなく、エンジンが始動された場合のように、エンジンが始動されたことを示すエンジン回転数に関する情報が後付けECU70によって取得されたとき、この後付けECU70から作動停止要求信号が出力され、エンジンやエアコンの作動が停止される。従って、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でないことに伴い、エンジンを始動させてまでエアコンが作動され続けられる、といったことを無くすることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るリモートエアコンシステムの第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態による構成と異なる点を中心に説明する。尚、第1実施形態による構成と同一又はそれに相当する構成については、同一符号を付してある。
【0061】
図4に示すように、本実施形態の後付けECU70は、ブレーキスイッチ11の出力端に電気的に接続され、その接続配線を通じてHレベルの信号を出力することによって、ブレーキスイッチ11のスイッチON信号を擬似的にパワーマネジメントECU10に対して出力する。従って、パワーマネジメントECU10は、こうした擬似的な信号が入力されたとき、ブレーキスイッチ11からスイッチON信号が入力された場合と同様の制御を行い、このとき、ブレーキ操作がなされたものと判断し、そのことを前提とする制御を行う。
【0062】
また、本実施形態の後付けECU70は、パワースイッチ12の出力端に電気的に接続され、その接続配線を通じてLレベルの信号を出力することによって、パワースイッチ12のスイッチON信号を擬似的にパワーマネジメントECU10及び照合ECU20に対して出力する。従って、パワーマネジメントECU10は、こうした擬似的な信号が入力されたとき、パワースイッチ12からスイッチON信号が入力された場合と同様の制御を行い、このとき、パワースイッチ12の操作がなされたものと判断し、そのことを前提とする制御を行う。
【0063】
そして、後付けECU70は、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得したとき、前記第1実施形態による構成とは異なり、ボデーECU30にエンジン始動要求信号を出力する代わりに、次のような制御を行う。即ち、後付けECU70は、このとき、モードスイッチ13のスイッチON信号を擬似的に出力しながら、ブレーキスイッチ11のスイッチON信号を擬似的に出力し、さらに、それらと同時に、パワースイッチ12のスイッチON信号を擬似的に出力する。パワーマネジメントECU10は、これら3つの擬似信号が同時に入力されたとき、パワーコントロールユニット60からのバッテリ監視信号に基づいて、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を解析する。そして、パワーマネジメントECU10は、その解析結果に基づいて、当該ハイブリッド車を、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへ移行させることが可能であるか否かを判断し、それが可能であると判断したとき、当該モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を算出する。尚、当該時間を算出するに際し、パワーマネジメントECU10は、その算出時にCANを通じて取得した、設定温度、車室内温度、外気温度、日射等に関する情報を考慮する。
【0064】
パワーマネジメントECU10は、前記モードへの移行が不可能であると判断したとき、その旨を示す情報をCAN上に出力する。尚、前記モードへの移行が不可能である旨を示す情報は、当該モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間が「0」であることを示す情報に等しい。
【0065】
また、パワーマネジメントECU10は、前記モードへの移行が可能であると判断したとき、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの起動信号を出力するとともに、当該モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示す情報をCAN上に出力する。
【0066】
後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示す情報を取得したとき、その情報を取得してからの経過時間をカウントするとともに、当該時間に応じて、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号をボデーECU30に対して出力する。ここに後付けECU70は、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間(これをTと規定する)が「0」であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が点滅作動されないよう、消灯要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動は行われず、ハザードランプ32は消灯されたまま維持される。
【0067】
また、後付けECU70は、当該時間Tが0<T≦T1(例えば10分間)の範囲内であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が1回だけ点滅されるよう、1回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が1回だけ行われる。
【0068】
また、後付けECU70は、当該時間TがT1<T≦T2(例えば20分間)の範囲内であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が2回に亘って点滅されるよう、2回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が2回に亘って行われる。
【0069】
また、後付けECU70は、当該時間TがT2<Tであることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32が3回に亘って点滅されるよう、3回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が3回に亘って行われる。
【0070】
尚、図5に、後付けECU70による取得情報毎のハザードランプ32の点滅態様を示す。
ところで、後付けECU70は、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示す情報を取得してからの経過時間をカウントした結果、その経過時間が上記Tで規定される時間に達したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力する。ボデーECU30は、後付けECU70から作動停止要求信号が入力されたとき、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報をCAN上に出力する。パワーマネジメントECU10は、CANを通じて、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報を取得したとき、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの停止信号を出力する。このことにより、当該車両においてハイブリッドシステムが一旦断ち切られ、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドシステムに関する制御を一旦終了する。ここにエアコン作動が停止されるが、この第2実施形態による構成では、前記第1実施形態による構成とは異なり、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分であることを条件として、ハイブリッドシステムが起動されるので、エアコンの作動中に一瞬たりともエンジンが始動されることはない。
【0071】
前記後付けECU70は、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力した後、ハザードランプ32が4回に亘って点滅されるよう、4回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力する。従って、この場合、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32の点滅作動が4回に亘って行われる。
【0072】
尚、パワーマネジメントECU10は、ハイブリッドシステムの起動信号をパワーコントロールユニット60に対して出力した後も継続して、設定温度、車室内温度、外気温度、日射等に関する最新の情報を考慮して、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を算出する。そして、パワーマネジメントECU10は、このように算出した「最新の時間」と、ハイブリッドシステムの起動信号をパワーコントロールユニット60に対して出力したときに併せてCAN上に出力した情報に関する「過去の時間」とを考慮して、エンジンの始動が必要となる時期が早まる可能性があるか否かについて解析を行う。そして、パワーマネジメントECU10は、その解析結果に基づいて、エンジンの始動が必要となる時期が早まる可能性があると判断したとき、エンジンの始動を予告する旨の情報をCAN上に出力する。
【0073】
後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて、エンジンの始動を予告する旨の情報を取得したとき、言い換えると、始動予告信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力する。ボデーECU30は、後付けECU70から作動停止要求信号が入力されたとき、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報をCAN上に出力する。パワーマネジメントECU10は、CANを通じて、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報を取得したとき、パワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの停止信号を出力する。このことにより、当該車両においてハイブリッドシステムが一旦断ち切られ、パワーコントロールユニット60は、ハイブリッドシステムに関する制御を一旦終了する。ここにエアコン作動が停止されるが、この構成によるところでも、エアコンの作動中に一瞬たりともエンジンが始動されることはない。
【0074】
次に、本実施形態のリモートエアコンシステム1の作用について説明する。
A:リモートエアコン作動要求(図4に破線で示すAの流れに相当)
この段階では、まず正規の電子キー23のロックスイッチ24が短押し→短押し→長押しの順に合計3回操作される(図2参照)。すると、ロックスイッチ短押し、空白、短押し、空白、長押しという信号が電子キー23から送信され、その遠隔操作信号がチューナ22で受信され、照合ECU20によるIDコード照合を経て、CANさらにはボデーECU30を通じて、後付けECU70に伝達され、後付けECU70で正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が取得される。
【0075】
B:スイッチ11〜13を擬似的にON(図4に破線で示すBの流れに相当)
この段階では、後付けECU70と各スイッチ11〜13の出力端とを電気的に接続するための3本の接続配線の各々を通じて、後付けECU70からHレベル又はLレベルの信号が出力され、このことにより、パワーマネジメントECU10に対して、各スイッチ11〜13のスイッチON信号が擬似的に入力される。すると、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分であることを条件として、パワーマネジメントECU10からパワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの起動信号が出力され、パワーコントロールユニット60による制御を通じて、ハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能となる。
【0076】
C:エアコン作動可能時間送信(図4に破線で示すCの流れに相当)
この段階では、パワーマネジメントECU10からCAN上に、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示す情報が出力され、この情報が後付けECU70によって取得される。
【0077】
D:状態に応じたハザード点滅(図4に破線で示すDの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号が出力される。すると、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32が「0回」、「1回」、「2回」、「3回」のいずれかの回数に亘って点滅作動される(図5参照)。
【0078】
E:後付けECU70によるエアコン作動時間のカウント及びエアコン作動可能な制限時間への到達(図4に示すEに相当)
この段階では、後付けECU70によってエアコン作動時間がカウントされ、やがて、エアコン作動可能な制限時間に達する。
【0079】
F:パワーマネジメントECU10に対するエンジン停止要求(図4に破線で示すFの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、作動停止要求信号が出力され、ボデーECU30からCAN上に、エンジン及びエアコンの作動停止要求に関する情報が出力され、この情報がパワーマネジメントECU10によって取得される。すると、パワーマネジメントECU10からパワーコントロールユニット60に対して、ハイブリッドシステムの停止信号が出力され、パワーコントロールユニット60による制御を通じて、エアコン作動が停止される。
【0080】
G:ハザード点滅によるエアコン停止の報知(図4に破線で示すGの流れに相当)
この段階では、後付けECU70からボデーECU30に対して、ハザードランプ32の点滅作動に関する要求信号が出力され、ここでは、ボデーECU30によるフラッシャリレー31の制御を通じて、ハザードランプ32が「4回」に亘って点滅作動される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70からスイッチ11〜13に関する擬似信号が出力され、これら3つの擬似信号がパワーマネジメントECU10によって同時に取得されることにより、エアコン作動条件が満たされる。このとき、パワーマネジメントECU10及びパワーコントロールユニット60による車両制御の一つとして、エアコンを作動させることが可能となる。このため、リモートエアコンシステム1を元々有さない標準装備に対する後付け作業としては、後付けECU70の追加や、その後付けECU70からの3つの擬似信号の出力に必要な電気経路の確保に伴う簡単な配線等に留まる。従って、比較的簡単に後付けすることができる。
【0082】
(2)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70によって、モードスイッチ13が擬似的にオンされ、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードに倣う形でエアコンが作動される。このため、パワーマネジメントECU10及びパワーコントロールユニット60は、既存の前記モードにおおよそ倣う形での車両制御の一つとして、エアコンを作動させればよく、リモートエアコンシステム1をハイブリッド車に適用するに際し、大幅な変更を必要としない。従って、ハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。
【0083】
(3)正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報が後付けECU70によって取得されると、この後付けECU70によって、スイッチ11〜13が擬似的に同時にオンされ、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードに倣う形でエアコンが作動される。従って、こうした一連の操作がなされた場合において、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分であるときには、当該モードへ移行される結果、エアコンが作動され、一方、そうでないときには、当該モードへ移行されない結果、エアコンが作動されない、そうしたシステムが既に構築されているハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。尚、いずれにせよ、一瞬たりともエンジンが始動されることはなく、また、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分であるときには、エアコンを作動させることができる。
【0084】
(4)前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示す情報が後付けECU70によって取得されたとき、ハザードランプ32が点滅作動することによる報知が行われる。このようにハザードランプ32を通じて、エアコンの作動を要求するリモコン操作が行われたことによる車両側の応答態様を示唆する内容の報知が行われるので、リモコン操作を行ったユーザは、かかる報知内容から車両側の応答態様を知ることができる。
【0085】
(5)リモコン操作を行ったユーザが知りたいと願う車両側の応答態様を示唆する内容の一つとして、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間が挙げられる点に鑑み、その時間を示唆する内容の報知が行われる。従って、どれ位の時間に亘ってエンジンを始動させることなくエアコンを作動させることができるのか、言い換えると、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が如何程であるのか、その見当を付けることができる。
【0086】
(6)エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間に達したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号が後付けECU70から出力され、エアコンの作動が停止される。従って、ハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でなくなる前、つまりエンジンが始動される前の段階で、エアコンの作動を確実に停止させることができる。
【0087】
(7)車両を含む周辺環境の変化に伴い、エンジンを始動させる必要が生じた場合のように、エンジンの始動を予告する旨の情報が後付けECU70によって取得されたとき、この後付けECU70から作動停止要求信号が出力され、エアコンの作動が停止される。従って、エンジンが始動されてしまう前の段階で、エアコンの作動を確実に停止させることができる。
【0088】
尚、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記各実施形態による構成に代えて又は加えて、図1及び図4に一点鎖線で示すように、リモートエアコンシステム1にいわば専用の携帯機26と、その携帯機26との間での無線通信が可能な専用の通信機27とを備えるようにしてもよい。尚、携帯機26は、ユーザによって所持され、通信機27に対する送信機能のみを備えるものであってもよいし、通信機27に対する送信機能及び受信機能を共に備えるものであってもよい。一方、通信機27は、後付けECU70に電気的に接続され、携帯機26に対する受信機能のみを備えるものであってもよいし、携帯機26に対する受信機能及び送信機能を共に備えるものであってもよい。
【0089】
ここに携帯機26は、リモートエアコンスイッチを備え、このリモートエアコンスイッチが操作されたとき、エアコンの作動を要求する遠隔操作信号を送信する。尚、この遠隔操作信号には、当該携帯機26毎に個別に設定されたIDコードが含まれる。そして、通信機27は、エアコンの作動を要求する遠隔操作信号を受信したとき、その遠隔操作信号を復調して受信信号を生成し、その受信信号を後付けECU70に出力する。そして、この構成による後付けECU70は、不揮発性のメモリを備え、このメモリには、当該後付けECU70が搭載される車両に適合する携帯機26(=正規の携帯機26)のIDコードと同一のIDコード(=基準IDコード)が記憶される。そして、後付けECU70は、通信機27から受信信号が入力されたとき、IDコード照合を実行し、前記受信信号の中に基準IDコードと一致するIDコードが含まれているか否かを判断する。
【0090】
後付けECU70は、IDコード照合について肯定判断したとき、正規の携帯機26でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があったものと判断し、前記第1実施形態による構成に倣った場合、ボデーECU30にエンジン始動要求信号を出力し、前記第2実施形態による構成に倣った場合、3つの擬似信号を同時に出力する。尚、これ以降の動作については、前記各実施形態による構成に倣うものであるため、説明を割愛する。
【0091】
・前記各実施形態による構成では、要するに、ロックスイッチ24といった既存操作手段が、本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたとき、エアコンの作動を要求する遠隔操作信号が電子キー23から送信されるものであったが、この既存操作手段がロックスイッチ24に限らないことは勿論である。ここに前記各実施形態による構成は、ドアロックの施錠を要求するために操作されるロックスイッチ24の特殊操作を、エアコン作動要求用の遠隔操作として用いることで、当該特殊操作に際して、車両のドアロックがむやみに解錠されないようにすることを狙ったものであるが、必ずしもこのようにセキュリティ性を考慮したものでなくてよい。
【0092】
即ち、アンロックスイッチ25の特殊操作を、エアコン作動要求用の遠隔操作として用いてもよい。或いは、これらの既存操作手段に代えて又は加えて、例えば、暖機運転等の目的で遠隔操作によりエンジンを始動させるためのリモートエンジンスタートスイッチや、遠隔操作によりトランクを開けるためのトランクスイッチ等といった既存操作手段の特殊操作を、エアコン作動要求用の遠隔操作として用いてもよい。
【0093】
ここに単一の既存操作手段の特殊操作として、長押し操作や複数回に亘る操作、つまり操作時間や操作回数等が通常操作時のそれよりも長い或いは多い態様の操作を用いてもよい。尚、操作時間や操作回数が長い或いは多い程、ユーザの意志なくして、いわば無意識のうちにエアコン作動要求が行われてしまう可能性を低減できる。従って、ユーザの意志の下でエアコン作動要求を行うことができ、いわゆる誤操作によるエアコン作動が排除される結果、信頼性を向上できる。
【0094】
また、2つ以上の既存操作手段の同時操作を、エアコン作動要求用の遠隔操作として用いてもよい。即ち、既存操作手段の特殊操作は、単一の既存操作手段の特殊操作に限らず、複数の既存操作手段の同時操作であってもよい。尚、同時操作される既存操作手段の数や種類が多い程、ユーザの意志なくして、いわば無意識のうちにエアコン作動要求が行われてしまう可能性を低減できる。従って、ユーザの意志の下でエアコン作動要求を行うことができ、いわゆる誤操作によるエアコン作動が排除される結果、信頼性を向上できる。
【0095】
・前記各実施形態による構成では、エンジンが始動されたとき、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間に達したとき、エンジンの始動が予告されたとき、これらいずれかを契機として、エアコン作動が停止されるものであったが、次のようにしてもよい。即ち、前記各実施形態による構成に代えて又は加えて、図6に示すように、ロックスイッチ24が1回長押しされたとき、エアコンの作動停止を要求する遠隔操作信号が電子キー23から送信されるようにしてもよい。尚、こうしたロックスイッチ24の操作に代えて、本別例よりも一つ上の別例で記載した各操作のいずれかを、エアコン作動停止要求用の遠隔操作として用いてもよい。この場合、エアコンの「作動」は、エアコンの「作動停止」に読み替える。
【0096】
ここにエアコン作動要求用の遠隔操作と、エアコン作動停止要求用の遠隔操作とは、図2と図6の関係にあるように、互いに異なるものであってもよいし、或いは、互いに同一のものであってもよい。尚、前者の構成によると、ユーザによる確固たる意志の下でエアコン作動要求及びエアコン作動停止要求を行うことができ、いわゆる誤操作によるエアコン作動及びエアコン作動停止が確実に排除される結果、より一層信頼性を向上できる。
【0097】
・既存操作手段とは別に、エアコンの作動を要求するために操作されるエアコン作動要求用操作手段、及び、エアコンの作動停止を要求するために操作されるエアコン作動停止要求用操作手段を電子キー23に新たに追加して設け、これらが操作されたとき、エアコンの作動(作動停止)を要求する遠隔操作信号が電子キー23から送信されてもよい。このような構成によると、電子キー23に、いわば専用の操作手段が設けられることで、ユーザがエアコンの作動(作動停止)を要求しようとする際に、操作に迷いが生じ難く、操作性、ひいては利便性を向上できる。
【0098】
尚、上記2つの操作手段を互いに独立して電子キー23に設ける代わりに、単一のリモートエアコンスイッチを電子キー23に設け、エアコン作動停止時にこれが操作されたとき、エアコン作動要求用の遠隔操作信号が、エアコン作動時にこれが操作されたとき、エアコン作動停止要求用の遠隔操作信号が、電子キー23から送信されてもよい。或いは、単一のリモートエアコンスイッチを電子キー23に設ける場合、エアコン作動要求に必要な遠隔操作と、エアコン作動停止要求に必要な遠隔操作とを異ならせ、それぞれの態様での遠隔操作が行われたとき、エアコンの作動(作動停止)を要求する遠隔操作信号が電子キー23から送信されてもよい。
【0099】
・前記各実施形態による構成では、図3や図5に示す態様でのハザードランプ32の点滅作動がなされるものであったが、前記各実施形態による構成に代えて又は加えて、ブザーの鳴動が行われるようにしてもよい。尚、ハザードランプ32による視覚的な報知と、ブザーによる聴覚的な報知とを併用する場合、それらによる報知回数を互いに異なるものとしてもよいが、それらを互いに同一のものとし、しかもそれらを同期させるようにすれば、ユーザが違和感を憶えるようなことはなく親切である。ここに視覚的な報知を行う報知手段がハザードランプ32に限らず、また、聴覚的な報知を行う報知手段がブザーに限らないことは勿論である。
【0100】
特に、視覚的な報知を行う報知手段が、文字を表示可能なモニタを備える場合、その大きさにもよるが、ランプ等に比較して多くの情報による報知が可能となるので、車両側の応答態様を示唆する内容を細部に亘って報知することが可能となる。また、聴覚的な報知を行う報知手段が、音声メッセージを発することが可能なスピーカを備える場合、ブザー等に比較して多くの情報による報知が可能となるので、車両側の応答態様を示唆する内容を細部に亘って報知することが可能となる。
【0101】
・前記各実施形態による構成に代えて又は加えて、電子キー23のようにリモコン機器が受信機能を有していることを前提として、リモコン機器の側に報知手段が設けられてもよい。ここにリモコン機器の側において、点滅作動可能なランプや文字を表示可能なモニタのような視覚的な報知手段、鳴動可能なブザーや音声メッセージを発することが可能なスピーカのような聴覚的な報知手段、点滅作動に同期するなどの態様での振動が可能なバイブレーションのような振動系の報知手段等が一つ又は複数設けられてもよい。
【0102】
・前記第1実施形態による構成において後付けECU70は、エンジンが停止されたことを示すエンジン回転数に関する情報を取得したとき、言い換えると、エンジン停止信号を取得したとき、3回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力するものであったが、次のようにしてもよい。即ち、前記第1実施形態による構成に代えて、後付けECU70は、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力したとき、エンジン回転数に関する情報の取得を待たずに、3回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力するものであってもよい。
【0103】
・前記第2実施形態による構成において後付けECU70は、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力した後、エンジン回転数に関する情報の取得を待たずに、4回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力するものであったが、次のようにしてもよい。即ち、前記第2実施形態による構成に代えて、後付けECU70は、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力した後、エンジンが停止されていることを示すエンジン回転数に関する情報を取得したとき、4回点滅要求信号をボデーECU30に対して出力するものであってもよい。尚、第2実施形態による構成では、エアコンの作動中に一瞬たりともエンジンが始動されることがない筈なので、本別例による後付けECU70の構成は、エンジンが停止されているか否かを念のため確認するものであると言える。
【0104】
・前記第2実施形態による構成では、図5に示す態様でハザードランプ32の点滅作動がなされるものであったが、前記第2実施形態による構成に代えて、図7に示す態様でハザードランプ32の点滅作動がなされるようにしてもよい。即ち、後付けECU70が、正規の電子キー23でのリモコン操作によるエアコンの作動要求があった旨を示す情報を取得していないとき、ハザードランプ32の点滅作動は行われない。尚、このとき、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間は、このときのハイブリッドバッテリ61の充電状態によるところ、実際には「0」でないかも知れないが、当該リモコン操作が受け付けられていない以上、車両側の応答態様としては「0」となる。
【0105】
また、後付けECU70が、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間Tが「0」であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32の点滅作動が1回だけ行われる。尚、当該情報は、リモコン操作が後付けECU70で受け付けられたことを条件として、パワーマネジメントECU10からCAN上に出力されるものであるので、時間Tが「0」である点において上記と一致するにせよ、ここでそのことはハイブリッドバッテリ61の充電状態が十分でないことに起因しており、この点において上記とは相違する。
【0106】
また、後付けECU70が、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間Tが0<T≦T1の範囲内であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32の点滅作動が2回に亘って行われる。また、後付けECU70が、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間TがT1<T≦T2の範囲内であることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32の点滅作動が3回に亘って行われる。また、後付けECU70が、前記モードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間TがT2<Tであることを示す情報を取得したとき、ハザードランプ32の点滅作動が4回に亘って行われる。
【0107】
尚、この構成によると、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間に関して、車両側の応答態様として「0」となる状況を2つに細分化することによって、リモコン操作を行ったユーザの理解を助けることができる。言い換えると、リモコン操作を行ったユーザは、ハザードランプ32の点滅作動が「0回」か「1回」かの違いに基づいて、自身が行ったリモコン操作が車両側で受け付けられたか否かを知ることができる。
【0108】
ちなみに本別例による構成では、後付けECU70が、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号をボデーECU30に対して出力した後、ハザードランプ32の点滅作動が5回に亘って行われる。
【0109】
・前記第2実施形態による構成では、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリ61の電力を用いたエアコン作動が可能な時間をパワーマネジメントECU10が算出するものであったが、前記第2実施形態による構成に代えて、当該時間を後付けECU70が算出するようにしてもよい。尚、この場合、ハイブリッドバッテリ61の充電状態を示す情報がパワーマネジメントECU10からCAN上に、設定温度、車室内温度、外気温度、日射等に関する情報がエアコンECU40からCAN上に出力され、後付けECU70は、CANさらにはボデーECU30を通じて取得した、これら各情報を考慮して、当該時間を算出すればよい。このような構成によると、パワーマネジメントECU10は、標準装備に関する車両制御におおよそ専念でき、言い換えると、リモートエアコンシステム1に関する車両制御については後付けECU70がこれを行うようにすることで、パワーマネジメントECU10の制御負担が軽減されるとともに、これに大幅な変更を必要としない。従って、ハイブリッド車に汎用性を持たせることができる。また、後付けECU70に付加価値を与えることもできる。
【0110】
尚、前記第2実施形態による構成では、エンジンの始動を予告する旨の情報がパワーマネジメントECU10からCAN上に出力されるところ、本別例による構成では、エンジンの始動が必要となる時期について、これを後付けECU70自身が解析できるので、上述の効果が高められる。
【符号の説明】
【0111】
1…リモートエアコンシステム、10…パワーマネジメントECU(標準装備制御手段)、11…ブレーキスイッチ、12…パワースイッチ、13…モードスイッチ、20…照合ECU(標準装備制御手段)、21…送信ユニット、22…チューナ、23…電子キー(リモコン機器)、24…ロックスイッチ、25…アンロックスイッチ、26…携帯機(リモコン機器)、27…通信機、30…ボデーECU(標準装備制御手段)、31…フラッシャリレー、32…ハザードランプ(報知手段)、40…エアコンECU(標準装備制御手段)、50…エンジンECU(標準装備制御手段)、60…パワーコントロールユニット(標準装備制御手段)、61…ハイブリッドバッテリ、62…電動コンプレッサ、70…後付けECU(後付け制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモコン操作でエアコンを作動させるリモートエアコンシステムにおいて、
リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、車両制御を担う標準装備制御手段に対して、エアコン作動条件が満たされるのに必要な擬似信号を出力する後付け制御手段を備える
ことを特徴とするリモートエアコンシステム。
【請求項2】
エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車に適用され、
前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードへ当該ハイブリッド車を移行させるためのモードスイッチを擬似的にオンする
請求項1に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項3】
前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、前記標準装備制御手段に対してエンジン始動要求信号を出力した後、前記モードスイッチを擬似的にオンする
請求項2に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項4】
前記後付け制御手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号を取得したとき、前記モードスイッチを擬似的にオンしながら、擬似的にエンジン始動操作を行う
請求項2に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステムにおいて、
エアコンの作動を要求するリモコン操作が行われたことによる車両側の応答態様を示唆する内容の報知を行う報知手段をさらに備える
ことを特徴とするリモートエアコンシステム。
【請求項6】
前記報知手段は、リモコン操作によるエアコン作動要求用の遠隔操作信号が車両側で取得されたか否か、また、その遠隔操作信号が車両側で取得された場合にあって、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能か否か、を識別可能な態様での報知を行う
請求項5に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項7】
前記報知手段は、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間を示唆する内容の報知を行う
請求項5又は6に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項8】
前記後付け制御手段は、エンジンが始動されたことを示すエンジン始動信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力する
請求項2〜7のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項9】
前記後付け制御手段は、エンジンの始動が制限されてモータのみを動力源とするモードでのハイブリッドバッテリの電力を用いたエアコン作動が可能な時間に達したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力する
請求項2〜8のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステム。
【請求項10】
前記後付け制御手段は、エンジンの始動を予告する旨の始動予告信号を取得したとき、エンジンの停止及びエアコン作動の停止を要求する作動停止要求信号を前記標準装備制御手段に対して出力する
請求項2〜9のいずれか一項に記載のリモートエアコンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−98599(P2011−98599A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253141(P2009−253141)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】