説明

リモートコントローラおよびリモコンシステム

【課題】制御データ量が多い場合でもリモコン信号の受信性能を向上させるができるリモートコントローラおよびリモコンシステムを得る。
【解決手段】信号伝送部10は、トレーラ部の時間を所定の長さに設定し、設定されたトレーラ部を含むリモコン信号1を信号伝送部20へ送信する送信部3を有し、信号伝送部20は、リーダ部およびデータ部を受信しているときには信号増幅の利得を減少させてリモコン信号1を受信し、トレーラ部を受信しているときには信号増幅の利得を増加させてリモコン信号1を受信する受信部6と、リモコン信号1が受信された場合、トレーラ部の時間をリモコン信号1の受信可能な利得の下限値に対応した時間へ近づける要求信号7aを生成し、リモコン信号1が受信されていない場合、トレーラ部の時間をリモコン信号1の受信可能な利得の上限値に対応した時間へ近づける要求信号7aを生成する制御部7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートコントローラおよびリモコンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリモートコントローラの送信部(以下「リモコン」)は、スタート信号や制御データ等から成るリモコン信号を生成し、制御データで制御される制御対象機器本体(以下「本体」)の受信部へ伝送するように構成されている。リモコン信号のフォーマットは、リモコン信号のスタートを表すリーダ部、負荷を制御するための制御データ、リモコン信号の終了を表すトレーラ部等から成る。本体の受信部は、送信部からのリモコン信号を受信していないときには増幅利得(ゲイン)を自動的に大きくして受信待機状態となっているが、リモコン信号を受信しているときにはゲインを自動的に減少させるオートゲインコントロール機能を有している。そして本体の受信部から出力された信号は本体のCPUに送信され、CPUはこの信号に含まれる制御データに基づいて負荷を制御する。
【0003】
ただし、このように構成された従来技術は、リモコン信号を受信してゲインが減少している過渡期において外乱光が入力した場合、ゲインが充分に下がっていない(ゲインが安定していない)ため、外乱光の影響によって制御データを正確に再現することができない場合があるという課題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、下記特許文献1に示される従来技術は、制御データの先頭にダミーデータを付与したリモコン信号受信部に送信することによって、制御データを受信する前に受信部のゲインを安定させて、外乱光の影響を受けないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−227580号公報(段落「0019」、図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示される従来技術は、以下のような課題があった。制御データ量が多いリモコン信号を受信する場合、ダミーデータを受信してから制御データを受信し終わるまでの時間が長くなる。このようなデータ長が長いリモコン信号が受信部に送信された際、例えば送信部と受信部との間の距離が遠い場合には受信部へ到達するリモコン信号が減衰する。そのため、オートゲインコントロール機能のゲインが減少し過ぎたことによって受信部で受信された制御データの後半部が欠けてしまい、制御データを正常に受信することができない場合があるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、制御データ量が多い場合でもリモコン信号の受信性能を向上させるができるリモートコントローラおよびリモコンシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、リーダ部、データ部、およびトレーラ部を有して構成される所定方式の信号をリモコン信号として出力する第1の信号伝送部を備えたリモートコントローラと、前記リモコン信号を受信する第2の信号伝送部を備えた制御対象機器とに適用されるリモコンシステムであって、前記第1の信号伝送部は、前記トレーラ部の時間を所定の長さに設定し、設定されたトレーラ部を含むリモコン信号を前記第2の信号伝送部へ送信する送信部を有し、前記第2の信号伝送部は、前記リーダ部およびデータ部を受信しているときには信号増幅の利得を減少させて前記リモコン信号を受信し、前記トレーラ部を受信しているときには信号増幅の利得を増加させて前記リモコン信号を受信する受信部と、受信部におけるリモコン信号の受信状態が悪い場合、前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くしまたは維持するように要求する要求信号を生成し、受信部におけるリモコン信号の受信状態が良い場合、前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くしまたは維持するように要求する要求信号を生成する信号生成部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、制御データ量が多い場合でもリモコン信号の受信性能を向上させるができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるリモコンと本体の構成図である。
【図2】図2は、本体内の受信部におけるゲインの変化を説明するための図である。
【図3】図3は、ゲインが減少し過ぎたことによる問題点を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる送信部によって変更されたトレーラ部とゲインとの関係を説明するための図である。
【図5】図5は、トレーラ部の時間を長くしたことによって外乱光の影響を受けた受信部出力信号を説明するための図である。
【図6】図6は、トレーラ部の時間を制御するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるリモートコントローラおよびリモコンシステムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかるリモコンと本体の構成図である。図2は、本体内の受信部におけるゲインの変化を説明するための図である。図3は、ゲインが減少し過ぎたことによる問題点を説明するための図である。図4は、本発明の実施の形態にかかる送信部3によって変更されたトレーラ部とゲインとの関係を説明するための図である。図5は、トレーラ部bの時間T2を長くしたことによって外乱光の影響を受けた受信部出力信号6aを説明するための図である。
【0013】
図1において、本発明の実施の形態にかかるリモコンシステムは、空気調和機やテレビなどのリモコンに内蔵される信号伝送部10と、これらの機器本体に内蔵される信号伝送部20とからなる。信号伝送部10は、リモコン信号1の送信部3と、本体からの本体信号2を受信する受信部4と、送信部3および受信部4の動作を制御する制御部5とを有して構成されている。信号伝送部20は、送信部3からのリモコン信号1を受信する受信部6と、受信部4へ本体信号2を送信する送信部8と、受信部6および送信部8の動作を制御する制御部7とを有して構成されている。
【0014】
受信部6は、送信部3からのリモコン信号1を受信していないときにはゲインを自動的に大きくし、リモコン信号1を受信しているときにはゲインを自動的に減少させるオートゲインコントロール機能を有している。
【0015】
図2(a)にはリモコン信号1のフォーマットの一例が示され、このフォーマットは、例えばリモコン信号のスタートを表すリーダ部、データ部、およびリモコン信号の終了を表すトレーラ部から成る。例えば、リーダ部にはLからHへ1回切り替わる信号が設定され、トレーラ部にはHを維持する信号が設定される。また、データ部には、受信部6のゲインを減少させて外乱光の影響を軽減するためのダミーデータや、本体内の負荷を制御するための制御データが設定される。以下の説明では、リーダ部aからトレーラ部cまでのひとまとまりのデータ群をリモコン信号1と称する。
【0016】
例えば操作者によってリモコンの特定のボタン(図示せず)が操作された場合、信号伝送部10では、その操作情報が制御対象機器の特定の機能を制御するための制御データが生成される。例えば制御対象機器がエアコンの室内機である場合において、風の強さを1段階上昇させるような操作が行われたとき、室内機のファンモータ等を駆動する駆動回路を対する制御データが生成される。そして、この制御データはデータ部に設定され、制御データが設定されたリモコン信号1は、一時的に信号伝送部10の記憶部(図示せず)に記憶され、本体に複数回連続的に伝送される。これは、例えば外乱光の影響によってリモコン信号1が本体に受信され難い状況下においても本体を正しく制御するためである。
【0017】
図2(b)には、リモコン信号1を受信した受信部6で生成される受信部出力信号6aが示されている。図2(b)に示される受信部出力信号6aは、リモコン信号1と相似形の波形の信号であり、例えば外乱光の影響がないようなときに受信部6で生成された正常な信号である。受信部出力信号6aは、制御部7に取り込まれた後、本体の制御に用いられる。
【0018】
図2(c)には、リモコン信号1を受信した受信部6におけるゲインの一例が示されている。このゲインの変化に関して説明すると、リモコン信号1に含まれるリーダ部(a、b、c)およびデータ部を受信しているときのゲインは、受信部6のオートゲインコントロールにより減少する。すなわち、図2(c)に示されるようにリーダ部a〜cおよびデータ部が受信されている間において、ゲインは安定するレベルまで徐々に減少する。
【0019】
一方、リーダ部a〜cおよびデータ部を受信していないとき、あるいはトレーラ部a〜cを受信しているときのゲインは、受信部6のオートゲインコントロールにより増加する。すなわち、図2(c)に示されるようにリーダ部a〜cおよびデータ部が受信されていない間、あるいはトレーラ部a〜cを受信している間におけるゲインは、徐々に増加して最終的にはリモコン信号1を受信していないときのレベル(リモコン信号1を待機する状態)まで回復する。
【0020】
図2に示される時刻と対応づけて説明すると、ゲインは、リーダ部aが受信される前の時刻tから時刻tの間では高い状態で安定し、リーダ部aが受信されている時刻tから時刻tの間では減少方向に変化し、ダミーデータが受信されている時刻tから時刻tの間では低い状態で安定し、トレーラ部aが受信されている時刻tから時刻tの間では増加方向に変化する。このようにリモコン信号1の先頭にはダミーデータが付与されているため、受信部6は、このダミーデータによってゲインを安定するところまで減少させて、外乱光の影響を軽減している。
【0021】
また、ゲインは、2つ目のリーダ部bが受信されている時刻tから時刻tの間では時刻tのときにおけるレベルを基点として減少方向に変化し、1つ目の制御データが受信される時刻tから時刻tの間では時刻tから時刻tまでにおけるレベルよりも低い状態で安定し、2つ目のトレーラ部bが受信される時刻tから時刻tの間では増加方向に変化する。また、ゲインは、3つ目のリーダ部cが受信されている時刻tから時刻tの間では時刻tのときにおけるレベルを基点として減少方向に変化し、2つ目の制御データが受信される時刻tから時刻tの間では時刻tから時刻tまでにおけるレベルよりも低い状態で安定し、3つ目のトレーラ部cが受信される時刻tから時刻t10の間ではゲインが増加方向に変化する。
【0022】
ただし、例えば1つ目の制御データが、図2(c)に示した時刻tから時刻tまでの時間長よりも長いデータであるような場合、すなわち制御データのデータ量が多いような場合には、図2(c)の時刻tから時刻tに示されるゲインが減少し過ぎた状態となることがある。このようにゲインが減少し過ぎた状態において、例えばリモコンと本体間の距離が長くなり受信部6へ到達するリモコン信号1の受信レベルが低いとき、受信部6において制御データと相似形の受信部出力信号6aを再現することができない場合がある。
【0023】
図3を用いて具体的に説明する。図3(a)には、図2(a)と同様にリモコン信号1のフォーマットの一例が示され、図3(b)には、図2(b)と同様の受信部出力信号6aの波形が示され、図3(c)には、ゲインが減少し過ぎた状態においてリモコンと本体間の距離が長くなったときに生成される受信部出力信号6aの波形が示されている。
【0024】
例えば、ゲインが減少し過ぎた状態(図2(c)参照)において、リモコンと本体間の距離が近い場合、受信部出力信号6aは、図3(b)のBに示されるような波形となる。しかしながら、ゲインが減少し過ぎた状態において、リモコンと本体間の距離が長くなった場合、リモコン信号1の受信レベルが低下することによって、受信部出力信号6aは、図3(c)のB1に示されるように後半部分が欠けてしまう。
【0025】
図4(a)には、従来技術に用いられるリモコン信号1のフォーマットが模式的に示されており、図4(b)には、本発明の実施の形態にかかる信号伝送部10によってトレーラ部bの長さが変更されたリモコン信号1のフォーマットが模式的に示されている。
【0026】
図4(b)に示されるリモコン信号1において、例えば1つ目の制御データと2つ目の制御データとの間に設定されるトレーラ部bの長さは、図4(a)に示されるリモコン信号1のトレーラ部bの時間T1よりも長い時間T2(例えば数ミリ秒〜数十ミリ秒)に設定されている。このように、時間T2>時間T1とすることによって、例えば図4(c)の時刻tから時刻tまでのゲインが、図2(c)の同時刻におけるゲインよりも高い値となる。従って、図4(c)の時刻tから時刻tにおけるゲインの値も、図2(c)の同時刻におけるゲインよりも高い値となる。すなわち、ゲインが減少し過ぎることを抑制可能である。このようにゲインの過剰な低下が抑制された結果、リモコンと本体間の距離が遠い場合でも、受信部6はリモコン信号1を正確に受信することができ、図3(c)のB1に示されるような受信部出力信号6aの欠けが抑制される。
【0027】
ただし、トレーラ部bの時間T2が長くなるに従って、リモコンの操作が行われた時から本体の制御が完了する時までの時間が長くなるため、リモコン操作性が低下すると共に、ゲインが高い値となるため外乱光の影響を受けやすくなりリモコン信号1を受信しにくくなる。
【0028】
図5(a)には、図2に示されるリモコン信号1の一部が示され、図5(c)には、このリモコン信号1に含まれるトレーラ部bが長い場合において図5(b)に示される外乱光(N)の影響を受けた受信部出力信号6aの状態が示されている。なお、図5(c)の下側に示される各時刻は、図2〜4に示される各時刻に対応している。
【0029】
上述したように、外乱光の影響を抑制することを目的としてトレーラ部bを長くした場合、受信部6のゲインが高くなることによって、受信部出力信号6aは、図5(a)のB2に示される制御データの後半部分に対応する箇所が欠けてしまう(図5(c)のB3参照)。一方、リモコン操作性を改善するためトレーラ部bを短くし過ぎた場合、図3で説明したように、従来技術と同様に制御データの後半部分が受信しにくくなると共に、1つ目の制御データと2つ目の制御データとの間隔が狭くなるためこれらの制御データの区別が困難となる可能性がある。
【0030】
このようにリモコン操作性と信号受信性とはトレードオフの関係にあり、単にトレーラ部bの長さを長くするあるいは短くするだけでは、リモコン操作性と信号受信性とを両立させることが困難である。そこで、本実施の形態にかかる信号伝送部10および信号伝送部20は、外乱光の影響を受けないトレーラ部の限界時間であってリモコン信号1の受信可能な利得の上限値に対応した時間Xmaxと、本体がリモコン信号1を識別可能なトレーラ部の限界時間であってリモコン信号1の受信可能な利得の下限値に対応した時間Xminとを用いて、トレーラ部bの時間T2を制御するように構成されている。
【0031】
以下、図6を用いて動作を説明する。図6は、トレーラ部bの時間T2を制御するためのフローチャートである。
【0032】
リモコンが操作されたことによって受信部6にリモコン信号1が送信されたとき(ステップS1)、受信部6では、リモコン信号1を受信したか否かが判断される(ステップS2)。
【0033】
リモコン信号1を受信した状態は、リモコン信号1に含まれる全ての制御データが正常に受信されたことを表する。例えば、リモコンと本体間の距離が近いため受信部6へ到達するリモコン信号1の受信レベルが適切な値であり、あるいは受信部6におけるゲインが適切な値のとき、受信部6ではリモコン信号1を受信したと判断される。
【0034】
換言すると、リモコン信号1に含まれる制御データが少なくとも1つ受信されなかったとき、リモコン信号1を受信していない状態といえる。例えば、リモコンと本体間の距離が遠いため受信部6へ到達するリモコン信号1の受信レベルが低い値であり、あるいは受信部6におけるゲインが適切な値ではないとき、受信部6ではリモコン信号1を受信していないと判断される。
【0035】
ステップS2において、リモコン信号1を受信した場合(ステップS2,Yes)、受信部6では、リモコンから複数回送信されるリモコン信号1(全ての制御データ)を連続してn回正常に受信したか否かが判断される(ステップS3)。nの値は、任意の数であり、例えばリモコンの使用環境下における外乱光の強さを考慮し設定され、nを3と仮定した場合、送信部3から送信されるリモコン信号1の送信回数が3回という意味である。
【0036】
ステップS3の判断は、ステップS2において受信されたリモコン信号1が、例えば一時的に外乱光の影響が受けずに受信されたものではなく、ゲイン等の値が適切な値であることによって正しく受信されたことを確認するためである。
【0037】
ステップS3において、受信部6がリモコン信号1を連続してn回正常に受信した場合(ステップS3,Yes)、制御部7によってステップS4の判断が行われる。
【0038】
ステップS4において、制御部7は、時間T2が時間Xminと等しいか否か判断する。時間T2が時間Xminと等しくない場合、すなわち時間T2(例えば15ms)が時間Xmin(例えば10ms)を超えている場合(ステップS4,No)、制御部7は、次回生成されるリモコン信号1のトレーラ部bの時間T2を短くするための要求信号7aを生成し、送信部8へ出力する(ステップS6)。
【0039】
このようにステップS2〜S4、S6の判断を行う理由は、ステップS2、S3においてリモコン信号1が正常に受信された場合、リモコンと本体間の距離が比較的短く、かつ、ゲインが高い状態である可能性が高く、ゲインが低下し過ぎない範囲で時間T2を短くしてリモコン操作性を改善させるためである。
【0040】
なお、この要求信号7aを受信した送信部8は、要求信号7aを本体信号2に設定して受信部4へ送信する。そして、受信部4を介して本体信号2を受信した制御部5は、本体信号2に含まれる要求信号7aに基づいて時間T2を例えば数ミリ秒減らすように送信部3を制御する。例えば現在の時間T2を15ms、時間Xminを10msと仮定した場合、制御部5は、時間T2を15msから14msに変更する要求指令を送信部3へ出力する。送信部3は、現在のトレーラ部bの時間T2(例えば15ms)よりも短い時間(例えば14ms)を次回のトレーラ部bに設定し、このトレーラ部bが設定されたリモコン信号1を受信部6へ送信する。
【0041】
ステップS4において、時間T2が時間Xminと等しい場合(ステップS4,Yes)、制御部7は、次回のトレーラ部bの時間T2を現在のトレーラ部bの時間T2と同じ時間に維持するように要求する要求信号7aを生成し、送信部8へ出力する(ステップS5)。
【0042】
ステップS3において、受信部6がリモコン信号1を連続してn回正常に受信しなかった場合(ステップS3,No)、ゲインが比較的低いため一時的にリモコン信号1が受信されなかったことが想定される。そのため、制御部7では、ゲインを低下させるステップS6の処理の代わりにステップS5の処理を行うことで、トレーラ部bの時間T2を現在の時間T2と同じ時間に維持させる。すなわち、現在の時間T2でもリモコン信号1の受信性能およびリモコン操作性には問題がないため、時間T2の可変制御は実施されない。
【0043】
次に、ステップS2において、リモコン信号1を受信しなかった場合(ステップS2,No)、リモコンと本体間の距離が比較的遠いため受信部6へ到達するリモコン信号1の受信レベルが低い、あるいはゲインが適切な値ではない蓋然性がある。
【0044】
この場合、受信部6では、リモコン信号1を連続してm回受信できなかったか否かが判断される(ステップS7)。mの値は、nと同様に任意の数であり、例えばリモコンの使用環境下における外乱光の強さを考慮し設定される。
【0045】
ステップS7において、リモコン信号1を連続してm回受信できなかった場合(ステップS7,Yes)、ゲインが高すぎる可能性があるため、制御部7によってステップS8の判断が行われる。
【0046】
ステップS8において、制御部7は、時間T2が時間Xmaxと等しいか否か判断する。時間T2が時間Xmaxと等しくない場合、すなわち時間T2(例えば15ms)が時間Xmax(例えば20ms)を超えている場合(ステップS8,No)、制御部7は、次回生成されるリモコン信号1のトレーラ部bの時間T2を長くするための要求信号7aを生成し、送信部8へ出力する(ステップS9)。
【0047】
このようにステップS2、S7、S8の判断を行う理由は、ステップS2、S7においてリモコン信号1が正常に受信されなかった場合、リモコンと本体間の距離が比較的遠く、かつ、ゲインが低すぎる可能性があるため、ゲインが高くなり過ぎない範囲で時間T2を長くしてリモコン信号1の受信性を改善させるためである。
【0048】
なお、この要求信号7aを受信した送信部8は、要求信号7aを本体信号2に設定して受信部4へ送信する。そして、受信部4を介して本体信号2を受信した制御部5は、本体信号2に含まれる要求信号7aに基づいて時間T2を例えば数ミリ秒増やすように送信部3を制御する。例えば現在の時間T2を15ms、時間Xmaxを20msと仮定した場合、制御部5は、時間T2を15msから16msに変更する要求指令を送信部3へ出力する。送信部3は、現在のトレーラ部bの時間T2(例えば15ms)よりも短い時間(例えば16ms)を次回のトレーラ部bに設定し、このトレーラ部bが設定されたリモコン信号1を受信部6へ送信する。
【0049】
ステップS8において、時間T2が時間Xmaxと等しい場合(ステップS8,Yes)、制御部7は、ステップS5の処理を行う。同様に、ステップS7において、リモコン信号1を連続してm回受信できた場合(ステップS7,No)、ゲインがやや低いものの一時的にリモコン信号1を受信することができなかった可能性があるため、制御部7によってステップS5の処理が行われる。すなわち、現在の時間T2でもリモコン信号1の受信性能およびリモコン操作性には問題がないため、時間T2の可変制御は実施されない。
【0050】
以上の動作より、トレーラ部bの時間T2が、リモコン操作性と信号受信性とを両立可能な値に制御される。
【0051】
なお、本実施の形態は、リモコン信号1に2つの制御データを用いた構成例を説明しているが、リモコン信号1に含まれる制御データは2つに限定されるものではない。また、本実施の形態では、説明の便宜上、2つ目のトレーラ部bの時間T2の長さを制御する構成例を説明したが、制御対象となるトレーラ部は、2つ目のトレーラ部bに限定されるものではなく、他のトレーラ部(例えばトレーラ部c)の時間を制御するように構成してもよい。
【0052】
以上に説明したように、本実施の形態にかかるリモコンシステムは、リーダ部、データ部、およびトレーラ部を有して構成される所定方式の信号をリモコン信号1として出力する第1の信号伝送部(信号伝送部10)を備えたリモートコントローラと、リモコン信号1を受信する第2の信号伝送部(信号伝送部20)を備えた制御対象機器(本体)とに適用されるリモコンシステムであって、信号伝送部10は、トレーラ部の時間を所定の長さに設定し、設定されたトレーラ部を含むリモコン信号1を信号伝送部20へ送信する送信部3を有し、信号伝送部20は、リーダ部およびデータ部を受信しているときには信号増幅の利得を減少させてリモコン信号1を受信し、トレーラ部を受信しているときには信号増幅の利得を増加させてリモコン信号1を受信する受信部6と、この受信部6におけるリモコン信号1の受信状態が悪い場合(例えばステップS2No)、トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くしまたは維持するように要求する要求信号7aを生成し、この受信部6におけるリモコン信号1の受信状態が良い場合(例えばステップS2Yes)、トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くしまたは維持するように要求する要求信号7aを生成する信号生成部(制御部7)と、を有するようにしたので、トレーラ部の時間T2は、リモコン操作性と信号受信性とを両立可能な値に制御される。従って、リモコンと本体間の距離が比較的短く、かつ、ゲインが高い状態の場合には、利得が低下し過ぎない範囲で時間T2が短くなる方向に制御され、その結果、リモコン操作性が改善される。また、リモコンと本体間の距離が比較的遠く、かつ、ゲインが低すぎる可能性がある場合には、利得が高くなり過ぎない範囲で時間T2が長くなる方向に制御され、その結果、リモコン信号1の受信性が改善される。
【0053】
また、本実施の形態にかかる制御部7は、トレーラ部の時間T2を現在の時間よりも短くするときには、トレーラ部の時間T2をリモコン信号1の受信可能な利得の下限値に対応した第1の時間(時間Xmin)へ近づける要求信号7aを生成し、トレーラ部の時間T2を現在の時間よりも長くするときには、トレーラ部の時間T2をリモコン信号1の受信可能な利得の上限値に対応した第2の時間(時間Xmax)へ近づける要求信号7aを生成するようにしたので、リモコンの送信部3では最新の要求信号7aに基づいてトレーラ部の時間T2が速やかに変更され、このトレーラ部を含むリモコン信号1が信号伝送部20に伝送される。その結果、リアルタイムにゲインが制御されリモコン操作性と信号受信性とを両立させることが可能である。
【0054】
また、本実施の形態にかかる信号伝送部10は、信号伝送部20からの要求信号7aを受信する受信部4を備え、送信部3は、受信部4において第1の時間Xminに関する要求信号7aが受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して信号伝送部20へ送信し、受信部4において第2の時間Xmaxに関する要求信号7aが受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して信号伝送部20へ送信するようにしたので、例えばトレーラ部bの時間が従来の時間T1よりも長い時間T2に設定される(図4参照)。従って、1つ目のデータ部が長い場合であっても、2つ目のデータ部を受信する際における利得が確保され受信部出力信号6aの欠けが抑制される(図3(c)のB1参照)。
【0055】
また、本実施の形態にかかるリモートコントローラは、リーダ部、データ部、およびトレーラ部を有して構成される所定方式の信号をリモコン信号1として出力する信号伝送部10を備えたリモートコントローラであって、信号伝送部10は、制御対象機器から送信される要求信号7aであって、制御対象機器においてリモコン信号1の受信状態が悪い場合にはトレーラ部の時間T2を現在の時間よりも長くしまたは維持するように要求する要求信号7aと、制御対象機器においてリモコン信号1の受信状態が良い場合にはトレーラ部の時間T2を現在の時間よりも短くしまたは維持するように要求する要求信号7aと、を受信する受信部4と、受信部4においてトレーラ部の時間T2を現在の時間よりも長くするように要求する要求信号7aが受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して制御対象機器へ送信し、受信部4においてトレーラ部の時間T2を現在の時間よりも短くするように要求する要求信号7aが受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して制御対象機器へ送信する送信部3と、を有するようにしたので、トレーラ部の時間T2は、リモコン操作性と信号受信性とを両立可能な値に制御される。従って、リモコンと本体間の距離が比較的短く、かつ、ゲインが高い状態の場合には、利得が低下し過ぎない範囲で時間T2が短くなる方向に制御され、その結果、リモコン操作性が改善される。また、リモコンと本体間の距離が比較的遠く、かつ、ゲインが低すぎる可能性がある場合には、利得が高くなり過ぎない範囲で時間T2が長くなる方向に制御され、その結果、リモコン信号1の受信性が改善される。
【0056】
また、本実施の形態にかかる制御対象機器では、トレーラ部の時間T2を現在の時間よりも短くするときには、トレーラ部の時間T2をリモコン信号1の受信可能な利得の下限値に対応した第1の時間Xminへ近づける要求信号7aが生成され、トレーラ部の時間T2を現在の時間よりも長くするときには、トレーラ部の時間T2をリモコン信号の受信可能な利得の上限値に対応した第2の時間Xmaxへ近づける要求信号7aが生成され、送信部3は、受信部4において第1の時間Xminに関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して制御対象機器へ送信し、受信部4において第2の時間Xmaxに関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号1に設定して制御対象機器へ送信するようにしたので、リモコンの送信部3では最新の要求信号7aに基づいてトレーラ部の時間T2が速やかに変更され、このトレーラ部を含むリモコン信号1が信号伝送部20に伝送される。その結果、リアルタイムにゲインが制御されリモコン操作性と信号受信性とを両立させることが可能である。
【0057】
なお、実施の形態に示したリモートコントローラおよびリモコンシステムは、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明は、リモートコントローラおよびリモコンシステムに適用可能であり、特に、制御データ量が多い場合でもリモコン信号の受信性能を向上させるができる発明として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 リモコン信号
2 本体信号
3、8 送信部
4、6 受信部
5 制御部
7 制御部(信号生成部)
6a 受信部出力信号
7a 要求信号
10 信号伝送部(第1の信号伝送部)
20 信号伝送部(第2の信号伝送部)
Xmin 第1の時間
Xmax 第2の時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ部、データ部、およびトレーラ部を有して構成される所定方式の信号をリモコン信号として出力する第1の信号伝送部を備えたリモートコントローラと、前記リモコン信号を受信する第2の信号伝送部を備えた制御対象機器とに適用されるリモコンシステムであって、
前記第1の信号伝送部は、
前記トレーラ部の時間を所定の長さに設定し、設定されたトレーラ部を含むリモコン信号を前記第2の信号伝送部へ送信する送信部を有し、
前記第2の信号伝送部は、
前記リーダ部およびデータ部を受信しているときには信号増幅の利得を減少させて前記リモコン信号を受信し、前記トレーラ部を受信しているときには信号増幅の利得を増加させて前記リモコン信号を受信する受信部と、
この受信部におけるリモコン信号の受信状態が悪い場合、前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くしまたは維持するように要求する要求信号を生成し、この受信部におけるリモコン信号の受信状態が良い場合、前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くしまたは維持するように要求する要求信号を生成する信号生成部と、を有することを特徴とするリモコンシステム。
【請求項2】
前記信号生成部は、
前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くするときには、前記トレーラ部の時間を前記リモコン信号の受信可能な利得の下限値に対応した第1の時間へ近づける要求信号を生成し、
前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くするときには、前記トレーラ部の時間を前記リモコン信号の受信可能な利得の上限値に対応した第2の時間へ近づける要求信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のリモコンシステム。
【請求項3】
前記第1の信号伝送部は、
前記第2の信号伝送部からの要求信号を受信する受信部を備え、
前記第1の信号伝送部の送信部は、
この受信部において前記第1の時間に関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記第2の信号伝送部へ送信し、
この受信部において前記第2の時間に関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記第2の信号伝送部へ送信することを特徴とする請求項1または2に記載のリモコンシステム。
【請求項4】
リーダ部、データ部、およびトレーラ部を有して構成される所定方式の信号をリモコン信号として出力する信号伝送部を備えたリモートコントローラであって、
前記信号伝送部は、
前記制御対象機器から送信される要求信号であって、前記制御対象機器においてリモコン信号の受信状態が悪い場合には前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くしまたは維持するように要求する要求信号と、前記制御対象機器においてリモコン信号の受信状態が良い場合には前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くしまたは維持するように要求する要求信号と、を受信する受信部と、
前記受信部において前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くするように要求する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記制御対象機器へ送信し、前記受信部において前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くするように要求する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記制御対象機器へ送信する送信部と、
を有することを特徴とするリモートコントローラ。
【請求項5】
前記制御対象機器では、
前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも短くするときには、前記トレーラ部の時間を前記リモコン信号の受信可能な利得の下限値に対応した第1の時間へ近づける要求信号が生成され、
前記トレーラ部の時間を現在の時間よりも長くするときには、前記トレーラ部の時間を前記リモコン信号の受信可能な利得の上限値に対応した第2の時間へ近づける要求信号が生成され、
前記送信部は、
前記受信部において前記第1の時間に関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも短い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記制御対象機器へ送信し、
前記受信部において前記第2の時間に関する要求信号が受信されたときには、現在のトレーラ部の時間よりも長い時間に変更されたトレーラ部をリモコン信号に設定して前記制御対象機器へ送信することを特徴とする請求項4に記載のリモートコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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