リヨセル短繊維
本発明は、複数の切断された長繊維からなるリヨセル短繊維に関するものであって、少なくとも一部の上記切断された長繊維は、2つ以上の繊維断面形状を概念上部分的に重ねることによって生じる2重またはマルチフィラメント糸の断面形状である、全体的な断面形状を示すことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はリヨセル短繊維に関するものである。
【0002】
リヨセル繊維は、有機溶媒中、特には、水溶性第三アミンオキシド中で、セルロース溶液から紡がれるセルロース繊維である。現在、N−メチル−モルホリン−N−オキシド(NMMO)は、リヨセル繊維を生産するための溶媒として一般に用いられている。
【0003】
標準的なリヨセル繊維を生産するための製法は、とりわけ、US 4,246,221またはWO 93/19230によく知られている。この製法は、「アミン・オキシド法」または「リヨセル法」とも呼ばれている。
【0004】
リヨセル短繊維は、紡糸口金を通じてセルロース溶液を紡ぎ、さらに紡いだ長繊維を沈殿させることによって得られる複数の(無限の)長繊維を、切断することによって得られる製品である。
【0005】
典型的に、リヨセル繊維の断面形状は、本質的に円形形状である。これは、むしろ鋸歯状の断面形状を示す標準的なビスコース繊維とは対照的である。
【0006】
明確に非円形の断面形状を有するセルロース系繊維を製造するための方法は、様々提案されている。例えば、EP 0 301 874 Aには、いわゆる多葉性セルロース短繊維の製造方法が開示されている。さらには、セルロース短繊維の製造方法として、多葉性紡糸口金穴部を有する紡糸口金を通じて紡糸液を紡ぐ方法が、WO 04/85720に開示されている。また、「Y」型の断面のセルロース繊維が、GB-A-2 085 304において言及されている。
【0007】
JP-A 61-113812および「Verzug, Verstreckung und Querschnittsmodifizierung bein Viskosespinnen」Treiver E., Chemiefasern 5(1967)344-348には、多葉性紡糸口金穴部を有する紡糸口金を通じて紡糸液を押し出すことによる(無限の)セルロース系長繊維の製造が開示されている。
【0008】
上記参考文献の全ては、ビスコース製法によるセルロース系繊維の製造に限られている。ビスコース繊維は、その物理的な性質および布地の性質の点で、リヨセル繊維とは異なる。
【0009】
「Y」型のリヨセル繊維の製造についてはEP 0 574 870 Aにおいて言及されている。
【0010】
JP 10-140429 Aは、繊維形成穴部が隣接して配置された紡糸口金を通じてビスコース溶液を紡ぐことによって生産されるセルロース繊維を開示している。紡糸口金を通じて溶液を紡ぐと、これらの繊維形成穴部を介して押し出された長繊維が溶融し、変則的な断面形状を示す一つの繊維が形成される。
【0011】
本発明の課題は明確な非円形の断面形状を有するリヨセル短繊維を提供することにある。
【0012】
この課題は、複数の切断された長繊維からなるリヨセル短繊維であって、少なくとも一部の上記切断された長繊維は、2つ以上の繊維の断面形状が、概念上、部分的に重ねられた2重またはマルチフィラメント糸の断面形状である、全体的な断面形状を示すことを特徴とするリヨセル短繊維によって解決する。
【0013】
本発明の目的のために、「2重またはマルチフィラメント糸」の断面形状という用語は、2つ以上の繊維断面形状を、概念上、部分的に重ねることによって生じる断面形状を意味する。
【0014】
すなわち、2重フィラメント糸の断面形状は、2つの繊維断面形状を部分的に重ねることによって生じる形状であり、3重フィラメント糸断面形状は、3つの繊維断面形状を部分的に重ねることによって生じる形状である等々と言える。また、この結果として生じる断面形状は、後述において、部分的に重ねられた単一の断面形状と対照をなす「全体的な断面形状」として言及されるだろう。
【0015】
後述において「短繊維の断面形状」等の用語が用いられる場合、これは、本発明に係る短繊維の構成要素となる長繊維の全体的な断面形状に言及するものとして理解されるべきである。
【0016】
好ましい実施形態では、少なくとも一部の、好ましくは全部の上記部分的に重ねられた断面形状が本質的に円形形状である。
【0017】
したがって、この好ましい実施形態に係る2重またはマルチフィラメント糸の断面形状では、いくつかの部位が、円弧、すなわち重ねられていない円形形状の円弧の形を示す。さらに、2重またはマルチフィラメント糸の断面形状は、円形形状が概念上重ねられた部分において、V字型の刻み目または窪みを示す。
【0018】
上記2つ以上の部分的に重ねられた円形形状は、本質的に同じ直径を有してもよい。あるいは、1つ以上の上記部分的に重ねられた円形形状は、他の上記重なった円形形状よりも大きな直径を有してもよい。これは、結果として生じる全体的な断面形状が、部分的に重ねられた、より小さい円形形状とより大きい円形形状との混合からなることを意味する。
【0019】
以下により詳細に記載されるように、本発明に係るリヨセル短繊維は、紡糸口金を通じてセルロース溶液を紡ぐことによって生産され、ここで、少なくとも一部の紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるときに、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されてもよい。
【0020】
これは、上述のような、部分的に重ねられた、より小さな円形形状とより大きな円形形状との混合からなる2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を有するリヨセル短繊維を生産するために、セルロース溶液が、特定の幾何学的図形に配置された、異なる直径を有する隣接した円形の穴部を介して押し出されてもよいことを意味する。
【0021】
これは、既に定義したような特有の全体的な断面形状をもたらすだけでなく、さらに、この種の独創的な短繊維が著しく強い縮れ値を示すことをもたらす。
【0022】
任意の理論に結び付けようとせずとも、この実施形態における独創的な短繊維についての強い縮れは事実に起因する。すなわち、エアギャップにおける特定の全体的な押出し速度および特定の全体的な延伸比を所与として、仮に長繊維が異なる直径を有する紡糸口金穴部から押出されるとき、結果として生じる複数の単一長繊維は、溶融長繊維を共に形成するよう溶融される。このとき、上記結果として生じる単一長繊維は、それぞれ異なる引張特性を有しているため、上記溶融された繊維には、特定の値の自然な伸張および自然な縮れがもたらされる。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明に係る繊維の全体的な断面形状は、2つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた2重フィラメント糸の断面形状である。
【0024】
他の好ましい実施形態において、上記全体的な断面形状は、3つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた3重フィラメント糸の断面形状である。
【0025】
上記3つの重ねられた円形形状は、一列に並んで、または三角形の形に配置されていてもよい。上記三角形は、好ましくは二等辺三角形であってもよい。
【0026】
他の好ましい実施形態では、上記全体的な断面形状は、4つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた4重フィラメント糸の断面形状である。
【0027】
上記4つの重ねられた円形形状は、一列に並んで、または、正方形、平行四辺形、もしくはひし形の形に配置されていてもよく、あるいは、当該円形形状の1つを三角形の中心とした当該三角形の形に配置されていてもよい。
【0028】
上述のような2重、3重、または4重のフィラメント糸の断面形状を有する長繊維より成るリヨセル短繊維は、0.5〜8dtexのデシテックスを示してもよい。このデシテックスの短繊維は、布地として適用するのに特に有益である。吸水性製品の分野において、または繊維の詰め物もしくはカーペットの分野において、本発明に係る短繊維は、40texまたはそれ以上までのデシテックスとして用いられるだろう。
【0029】
本発明に係る短繊維の全体的な断面形状は、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの本質的な円形形状が概念的に重ねられたマルチフィラメント糸の断面形状であってもよい。この実施形態では、繊維は、概して6dtexよりも高いデシテックスを示す。
【0030】
本発明に係る短繊維において、少なくとも1つの上記部分的に重ねられた断面形状は、非円形の断面形状であってもよい。
【0031】
すなわち、本発明に係る短繊維の構成要素である長繊維の全体的な断面図は、部分的に重ねられた、円形の断面形状と非円形の断面形状との混合であってもよいし、または、部分的に重ねられた非円形の断面形状のみから成ってさえもよい。
【0032】
上記非円形の断面形状は、好ましくは三葉である多葉性、または、三角形であってもよい。
【0033】
本発明に係る短繊維における特に好ましい実施形態は、本質的に全ての上記切断された長繊維が、本質的に、同一の全体的な断面形状を示すことを特徴とする。
【0034】
この好ましい実施形態に係る短繊維は、その断面形状、ならびに、それによって実現された様々な物理的特性および布地特性の点において、完全に同一の特性を有する。
【0035】
さらに他の実施形態では、本実施形態に係るリヨセル短繊維を構成する長繊維は、少なくとも部分的に、中空である2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示す。中空構造は、押出された単一長繊維が完全に溶融せず、むしろ、形成された溶融繊維の中心に隙間が残されるように、紡糸口金穴部の寸法および間隔に関する紡績パラメータを選択することによって得ることができる。
【0036】
本発明に係るリヨセル短繊維は、同じデシテックスである比較対象の標準リヨセル短繊維よりも顕著に高い引張強さを有することが顕著に見出される。特に、本発明に係るリヨセル短繊維は、比較リヨセル短繊維における全ての切断された長繊維が本質的に円形の断面を示すとき、同じデシテックスの上記比較リヨセル短繊維の繊維引張強さよりも、条件状態において、少なくとも15%高く、好ましくは20%高い繊維引張強さを示す。
【0037】
さらに、本発明に係るリヨセル短繊維は、驚くほどに高い曲げ剛性を有する。
【0038】
特には、本発明に係るリヨセル短繊維は、少なくとも0.5mN.mm2/tex2であって、好ましくは0.6mN.mm2/tex2より大きい、デシテックス関連曲げ剛性を示す。
【0039】
上記曲げ剛性は、出願者により開発された方法によって測定される。測定値は、デシテックスに基づいて、直線的測定範囲上の経路に対する力の変化度の関係で表わされる。
【0040】
測定を実施するために調整された繊維は、締め付け棒に固定され、かつ、切断装置を用いて正確に5mmの長さに切断される。締め付け棒は電動ギアによって一定の速度で上方に移動する。この後、繊維は力センサに適合する小さなセンサで圧迫される。繊維がより堅ければ、測定される力はより高くなる。
【0041】
較正不能なため、曲げ剛性の較正のために効果的な力はない。しかしながら、特定の測定範囲において、繊維の相対比較を行うことは可能である。そのため、上記経路で測定された力について、直線的測定範囲における変化度が測定される。また、上記変化度は、繊維のデシテックスに関連している。
【0042】
本発明に係るリヨセル短繊維の製造方法は、
複数の紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を通じて水性の第3アミンオキシド中に溶解しているセルロース溶液を押し出し、それによって長繊維を形成する工程と、
エアギャップを経て沈殿槽中に上記長繊維を誘導する工程と、
上記長繊維を上記エアギャップに引き込む工程と、
上記エアギャップ中で上記長繊維に空気を吹き付ける工程と、
上記沈殿槽中に上記長繊維を沈殿させる工程と、
切断された長繊維を形成するために、上記沈殿した長繊維を切断する工程とを備えており、
少なくとも一部の上記紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるとき、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されていることを特徴としている。
【0043】
仮に、NMMOにおけるセルロース溶液が、上記に特定するように紡糸口金を通じて押出されるとき、溶融長繊維は、極めて均一かつ再現性のある2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示すという結果になる。
【0044】
本発明に係る方法において、少なくとも一部の、より好ましくは全ての紡糸口金穴部は、円形である。全ての上記穴部は同じ直径を有してもよい。
【0045】
あるいは、少なくとも1つ以上の上記穴部は、他の上記穴部のものよりも大きな直径を有してもよい。この場合、断面形状は、上述のような、部分的に重ねられた、より小さい円形形状とより大きい円形形状との混合になるという結果になる。より小さい直径を有する上記穴部の断面積に対する、より大きい直径を有する上記穴部の断面積の比率は、好ましくは1:1より大きく、16:1までであり、好ましくは、1.6:1から2.7:1までである。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である2つの穴部からなる。
【0047】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である3つの穴部からなってもよい。上記3つの穴部は一列に並んで配置されていてもよく、その結果、溶融繊維の断面形状は、全体的に平らな長方形の形状となってもよい。
【0048】
さらに上記3つの穴部は、三角形、好ましくは二等辺三角形の形に配置されていてもよい。全ての紡糸口金穴部の直径が同一である場合、または、特に二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部の直径が、他の2つの穴部の直径よりも大きい場合、溶融繊維の結果的に生じる全体的な断面形状は、「テディベア」のような形状となるだろう。すなわち、2つの部分的に重ねられた円形形状がテディベアの「耳」を形成し、また、二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部から紡がれる長繊維の円形形状が「顔」を形成する。
【0049】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である4つの穴部から成ってもよい。
【0050】
上記4つの穴部は、一列に並んで列を成して配置されてもよく、結果的に、溶融長繊維の全体的な断面形状が平坦な長方形の形状となってもよい。
【0051】
あるいは、上記4つの穴部は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形で配置されてもよい。全ての紡糸口金穴部の直径が同一である場合、結果的に生じる溶融長繊維の全体的な断面形状は、それぞれ、正方形、平行四辺形、または、ひし形のようになるであろう。
【0052】
上記4つの穴部は、当該穴部の1つを三角形の中心とした当該三角形の形に配置されてもよい。さらに、使用される紡糸口金穴部の直径次第で、結果的に、三角形または「テディベア」のような形となってもよい。
【0053】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの穴部からなってもよい。もちろん、多くの様々な穴部の幾何学的配置が可能であり、結果的に、溶融長繊維の様々な断面形状のバリエーションがもたらされる。これは、図を参照して以下により詳細に示される。
【0054】
上述から分かるように、溶融長繊維の全体的な断面形状は、上記紡糸口金オリフィスに用いられた紡糸口金穴部についの数および幾何学的配置のみによって決まるわけではなく、穴部直径の寸法とも強い相関関係を有する。すなわち、穴直径を変更することに、または、様々な直径を有する幾何学的配置を提供することに、結果的に生じる溶融長繊維の断面形状は強く影響を受けるだろう。
【0055】
本発明の他の実施形態では、上記穴部の少なくとも1つは非円形である。上記非円形は、好ましくは三葉の多葉性、または、三角形であってもよい。
【0056】
全ての上記紡糸口金オリフィスは、幾何学的配置、形状、および上記穴部の寸法に関して同一の穴部集合体からなることが好ましい。すなわち、この実施形態における全ての穴部集合体は同一の幾何学的配置を有し、さらに、当該配置における穴部の各々の寸法および形状は、全ての集合体において同一である。この実施形態によって、本質的に同一な二重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示す複数の溶融長繊維を得ることが可能であると分かる。非常に驚くべきことに、このような均一でありかつ再現性のある長繊維(および短繊維)の断面は、アミン・オキシドまたはリヨセル方法によって得ることができる。
【0057】
均一な紡糸口金オリフィスを通じて紡績を行う場合、これらの紡糸口金オリフィスは、複数の平行な列に位置付けられていることが好ましい。上記列のそれぞれにおいて、全ての穴部集合体は本質的に互いに平行に方向付けられていてもよい。
【0058】
さらに、エアギャップ中の上記長繊維に吹き付けられる空気が、上記長繊維に向けて特定の方向に方向付けられる場合、紡糸口金穴部の幾何学的配置、ならびに、それら穴部の各々の寸法および形状は、溶融長繊維において最適に再現され得ることが発見される:
−上記穴部が一列に並んで配置されている場合、吹き付け方向は、上記列の方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が三角形に配置されている場合、吹き付け方向は、上記三角形の基線の1つの方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が正方形に配置されている場合、吹き付け方向は、上記正方形の基線の1つの方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が他の幾何学的図形に配置されている場合、吹き付け方向は、当該配置の主な配向軸の方向に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0059】
いくつかの幾何学的配置の主な配向軸の例は、図において以下に与えられる。
【0060】
上記穴部集合体における上記穴部の直径は、35μmから250μmであってもよい。非円形の穴部である場合、「直径」という用語は、非円形形状の周囲を囲むことのできる円の直径を意味する。上述したように、1つの穴部集合体において、異なる直径の穴部を用いてもよい。
【0061】
上記穴部の集合体において、1つの穴部の中心から、次の隣接する穴部の中心までの距離は、100μmから500μmであることが好ましく、150μmから250μmであることがより好ましい。この距離は、所望の溶融長繊維の全体的な断面形状に従い、当業者によって調節されてもよい。穴部と穴部との間の各距離および各穴部の直径を適宜調節することによって、中空の断面形状を有する短繊維が製造されてもよい。
【0062】
本発明に係るリヨセル短繊維は、医療用布地、衛生用布地、家庭用布地、技術的用途品、および衣料的用途品などの様々な末端利用において用いられても良く、特には、創傷包帯、開腹パッド、ベッドパッド、止血栓、生理用ナプキン、雑巾、尿漏れ防止製品、枕、布団、タオル、カーペット、パイル織、ダマスク織、サテン、絶縁材、ポリマーのための強化繊維、紙または凝結物、編布または織布などの布地、シャツ地、ベロア、チノクロス、コットンのような手触りの布地、および、それらから作った衣類などに用いられてもよい。
【0063】
特に、本発明に係るリヨセル短繊維は、より堅く、より縮れ、より「コットンのような」手触りである、または、熱および湿度変化管理性質もしくは様々な視覚性が望まれる、任意の用途において有用である。
【0064】
本発明の好ましい実施形態は、ここで図面および実施例によって説明されるだろう。
【0065】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、2重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0066】
図2A)および2B)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0067】
図3A)から3C)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している3つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0068】
図4A)および4B)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0069】
図5A)および5B)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0070】
図6A)および6B)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0071】
図7A)および7B)は、7重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0072】
図8A)から8D)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についての2つの実施例を示す図である。
【0073】
図9A)および9B)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についてのさらなる実施例を示す図である。
【0074】
図10は、本発明に係るリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0075】
図11は、本発明に係るさらなるリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0076】
図12は、中空構造を有する、本発明に係るリヨセル短繊維の4重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0077】
図1に示すように、2重フィラメント糸の断面形状を有するリヨセル短繊維の製造のための紡糸口金オリフィスは、2つの紡糸口金穴部(左側)からなる。上記穴部は、同一の直径または異なる直径であってもよい。任意のより小さい穴部の直径は、より小さい円で示され、その逆もまた同様である(これは図1から図7の全てに対して適用される)。
【0078】
図1の右側に示される陰影構造は、左側にある紡糸口金オリフィスを通じて紡がれる溶融長繊維において見込まれる2つの全体的な断面形状を示している。2つの穴部が同じ大きさの直径を有する場合、2つの部分的に重なった比較的大きな円からなる2重フィラメント糸の断面形状がもたらされる。2つの穴部のうちの1つがより小さい直径を有する場合、図1の右端に示される陰影構造のような断面形状がもたらされる。ここで、1つのより大きな円は、より小さな円と部分的に重なっている。
【0079】
図1における矢印は、例えば溶融長繊維の断面形状における再現性および均一性の点で最も良好な結果が実現されるように、押出された長繊維に対して吹き付け空気が向けられるべき好ましい方向を示している。
【0080】
図2から図7は、図1と同様の主な構造に基づいている。すなわち、左側では、紡糸口金構造の幾何学的配置が示されている。右側では、各穴部の直径(小または大)に従っていくつかの見込まれるフィラメント糸の断面形状が示されている(陰影構造)。さらに、これら図面の各々において、吹き付け空気の好ましい方向が示されている。
【0081】
したがって、以下では、図2から図7に関して、ほんのわずかな注釈が付されるのみである。
【0082】
図2A)は、同じ直径の穴部が用いられた場合において、一列に並べられた3重フィラメント糸の断面形状を示している。吹き付け方向は、上記列に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0083】
図2B)は、三角配置において見込まれる3重フィラメント糸の断面形状を示している。特に、本質的に、二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部が最も大きい場合、「テディベア」のような形状(真ん中における陰影構造)がもたらされる。吹き付け方向は、紡糸口金穴部の三角形の基線に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0084】
図3Aから図3C)は、全体的な4重フィラメント糸の断面形状の様々な実施例を示している。矢印によって示される好ましい吹き付け方向は、図3A)から図3C)に示される全ての実施例において同様であることが好ましい。図3A)の場合(穴部が一列に配置された場合)、吹き付け方向は上記列に対して本質的に平行であることが好ましい。図3B)の場合(穴部が正方形に配置された場合)、吹き付け方向は上記正方形の基線の1つに対して本質的に平行であることが好ましい。図3C)の場合、好ましい吹き付け方向は、上記紡糸口金穴部の幾何学的配置における主要な配向軸に対して本質的に平行である。あるいは、好ましい吹き付け方向は、図3B)の正方形の主要な対角線と本質的に平行であってもよく、または、図3C)の場合、最も上側の穴部と最も下側の穴部とを結ぶことによって定義される軸に対して本質的に平行であってもよい。
【0085】
図4A)および図4B)において示されるそれぞれの幾何学的配置の主な配向軸は、点線で表される。各穴部の直径に応じて示される穴部の配置から得ることのできる断面形状は、一目瞭然である。図Aに係る陰影構造は、4つの紡糸口金穴部の各々の距離を適切に選択することによって得ることのできる穴部の断面形状を示している。
【0086】
図4A)および図4B)の両方に関する好ましい吹き付け方向は、ここで示されるように、主な配向軸に対して本質的に平行である。
【0087】
同様なことは、5つの隣接した紡糸口金穴部を有する紡糸口金オリフィスを通じて紡糸溶液から生じる断面形状を示している図5A)および図5B)において適用される。
【0088】
図6および図7は、7つの隣接した紡糸口金穴部(図7)を有する紡糸口金オリフィスを介して、紡糸溶液から生じる断面形状を示すさらなる実施例を示しており、当該実施例は、中空の断面形状を有している。
【0089】
〔実施例〕
(実施例1)
図8および図9は、本発明の短繊維について得られる断面形状における、吹き付け空気の方向による影響を示している。
【0090】
各場合において、三角形の形に配置された3つの穴部からなる様々な紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を用いた。各オリフィスにおいて、2つの穴部は80μmの直径を有しており、また、1つの穴部は120μmの直径を有していた。大きい穴部の中心から、その隣接する穴部の中心までの距離は、それぞれ250μmであった。
【0091】
図8A、図8b、および図8Cは、それぞれ、各紡糸口金配置および用いられる吹き付け空気の方向を示している。
【0092】
他の全ての紡績パラメーターは一定であり、吹き付け空気の方向のみを変化させた(図8A)、図8B)、および図9A)における矢印によってそれぞれ示される)。
【0093】
図8C)から明らかなように(図8Aおよび図8Dに係る実験結果が示すように)(図8Bに係る実験結果が示すように)(図9Aに係る実験結果が示すように)、繊維断面形状における最も良好な均一性、および元の紡糸口金穴部配置の再現性は、図9A)に係るテスト配置を用いて達成される。すなわち、ここで、空気は、2つのより小さい穴部によってそれぞれ規定される三角形の基線に本質的に平行な方向において、長繊維に吹き付けられる。
【0094】
(実施例2)
図10および図11は、図8および図9に関して上述したような紡糸口金配置から生産された、本発明に係るリヨセル短繊維の断面形状を示している。
【0095】
HMMOにおける13%セルロースの標準紡糸溶液は、記載されたような紡糸口金配置を介して110℃で紡がれ、さらに、約20mmの長さのエアギャップを経て誘導された。
【0096】
吹き付け空気は、押出された長繊維に向けられた。吹き付け方向は、2つのより小さな紡糸口金穴部(図9A参照)によって規定された三角形の基線に対して本質的に平行であった。
【0097】
図10および図11の両方は、極めて均一に得られ、かつ、紡糸口金穴部の「テディベア」のような構造が良好に再現された、長繊維の断面形状を示している。
【0098】
(実施例3)
図12に描かれた短繊維の製造のために、それぞれ4つの穴部を有する紡糸口金オリフィスを用いた。各穴部は、100μmの直径を有していた。1つの穴部の中心からその隣接する穴部の中心までの距離は500μmであった。穴部は、ひし形の形に配置された。吹き付け空気は、紡がれた長繊維に対して、ひし形(図4A参照)の主な配向軸に対して本質的に平行に向けられた。NMMOにおける12,3%のセルロースの標準紡糸用液は、記載されたような紡糸口金配置を介して、120℃で紡がれ、さらに、約20mmの長さのエアギャップを経て誘導された。
【0099】
図12から明らかなように、結果として生じる短繊維は、著しく均一な断面形状を示し、かつ、際立って再現性のある中空構造を有する。
【0100】
(実施例4)
紡績パラメータの一定なセットを適用して、本質的に円形の断面を有する標準リヨセル短繊維、および、様々なデシテックスを有する(実施例1および図8および図9のそれぞれに関して描かれたようなオリフィスを有するような紡糸口金から紡がれた)3重フィラメント糸断面形状を有するリヨセル短繊維を生産した。以下の表は、得られた繊維の繊維引張強さを比較している。
【0101】
【表1】
*Bacellは、Bahia Brasil社によって生産されたTCF漂白されたユーカリの硫酸塩パルプである。
**KZO3はLenzing AG社によって生産されたTCF漂白されたブナノキの亜硫酸パルプである。
【0102】
本発明に係るリヨセル短繊維が、同じデシテックスを有する標準リヨセル短繊維よりも著しく高い繊維引張強さを有することは、明白に分かる。
【0103】
(実施例5)
実施例1および図8、9のそれぞれに描かれたような紡糸口金配置を用いて生産された本発明に係るリヨセル短繊維を、デシテックス関連曲げ剛性について、様々なタイプのセルロース繊維と比較した。その結果は表2に示されている。
【0104】
【表2】
*Saiccorは、Saiccor South Africa社によって生産されたTCF漂白されたユーカリの亜硫酸パルプである。
【0105】
上記実施例におけるモダール繊維は、PCT/AT/000493(予備公開されていない)の教示に従って生産された。
【0106】
表2から、「テディベア」のような断面形状である3重フィラメント糸を有するリヨセル短繊維は、実際の他のセルロース繊維よりも、顕著に高いデシテックス関連曲げ剛性を有することが明らかである。特に、本発明に係る短繊維のデシテックス関連曲げ剛性は、あらゆる実施例において、0.5mN mm2/tex2よりも高かった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】2重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図2】A)およびB)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図3】A)からC)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している3つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図4】A)およびB)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図5】A)およびB)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図6】A)およびB)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図7】A)およびB)は、7重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図8】A)からD)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についての2つの実施例を示す図である。
【図9】A)およびB)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についてのさらなる実施例を示す図である。
【図10】本発明に係るリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【図11】本発明に係るさらなるリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【図12】本発明に係るリヨセル短繊維の4重フィラメント糸の、中空構造を有する断面形状を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はリヨセル短繊維に関するものである。
【0002】
リヨセル繊維は、有機溶媒中、特には、水溶性第三アミンオキシド中で、セルロース溶液から紡がれるセルロース繊維である。現在、N−メチル−モルホリン−N−オキシド(NMMO)は、リヨセル繊維を生産するための溶媒として一般に用いられている。
【0003】
標準的なリヨセル繊維を生産するための製法は、とりわけ、US 4,246,221またはWO 93/19230によく知られている。この製法は、「アミン・オキシド法」または「リヨセル法」とも呼ばれている。
【0004】
リヨセル短繊維は、紡糸口金を通じてセルロース溶液を紡ぎ、さらに紡いだ長繊維を沈殿させることによって得られる複数の(無限の)長繊維を、切断することによって得られる製品である。
【0005】
典型的に、リヨセル繊維の断面形状は、本質的に円形形状である。これは、むしろ鋸歯状の断面形状を示す標準的なビスコース繊維とは対照的である。
【0006】
明確に非円形の断面形状を有するセルロース系繊維を製造するための方法は、様々提案されている。例えば、EP 0 301 874 Aには、いわゆる多葉性セルロース短繊維の製造方法が開示されている。さらには、セルロース短繊維の製造方法として、多葉性紡糸口金穴部を有する紡糸口金を通じて紡糸液を紡ぐ方法が、WO 04/85720に開示されている。また、「Y」型の断面のセルロース繊維が、GB-A-2 085 304において言及されている。
【0007】
JP-A 61-113812および「Verzug, Verstreckung und Querschnittsmodifizierung bein Viskosespinnen」Treiver E., Chemiefasern 5(1967)344-348には、多葉性紡糸口金穴部を有する紡糸口金を通じて紡糸液を押し出すことによる(無限の)セルロース系長繊維の製造が開示されている。
【0008】
上記参考文献の全ては、ビスコース製法によるセルロース系繊維の製造に限られている。ビスコース繊維は、その物理的な性質および布地の性質の点で、リヨセル繊維とは異なる。
【0009】
「Y」型のリヨセル繊維の製造についてはEP 0 574 870 Aにおいて言及されている。
【0010】
JP 10-140429 Aは、繊維形成穴部が隣接して配置された紡糸口金を通じてビスコース溶液を紡ぐことによって生産されるセルロース繊維を開示している。紡糸口金を通じて溶液を紡ぐと、これらの繊維形成穴部を介して押し出された長繊維が溶融し、変則的な断面形状を示す一つの繊維が形成される。
【0011】
本発明の課題は明確な非円形の断面形状を有するリヨセル短繊維を提供することにある。
【0012】
この課題は、複数の切断された長繊維からなるリヨセル短繊維であって、少なくとも一部の上記切断された長繊維は、2つ以上の繊維の断面形状が、概念上、部分的に重ねられた2重またはマルチフィラメント糸の断面形状である、全体的な断面形状を示すことを特徴とするリヨセル短繊維によって解決する。
【0013】
本発明の目的のために、「2重またはマルチフィラメント糸」の断面形状という用語は、2つ以上の繊維断面形状を、概念上、部分的に重ねることによって生じる断面形状を意味する。
【0014】
すなわち、2重フィラメント糸の断面形状は、2つの繊維断面形状を部分的に重ねることによって生じる形状であり、3重フィラメント糸断面形状は、3つの繊維断面形状を部分的に重ねることによって生じる形状である等々と言える。また、この結果として生じる断面形状は、後述において、部分的に重ねられた単一の断面形状と対照をなす「全体的な断面形状」として言及されるだろう。
【0015】
後述において「短繊維の断面形状」等の用語が用いられる場合、これは、本発明に係る短繊維の構成要素となる長繊維の全体的な断面形状に言及するものとして理解されるべきである。
【0016】
好ましい実施形態では、少なくとも一部の、好ましくは全部の上記部分的に重ねられた断面形状が本質的に円形形状である。
【0017】
したがって、この好ましい実施形態に係る2重またはマルチフィラメント糸の断面形状では、いくつかの部位が、円弧、すなわち重ねられていない円形形状の円弧の形を示す。さらに、2重またはマルチフィラメント糸の断面形状は、円形形状が概念上重ねられた部分において、V字型の刻み目または窪みを示す。
【0018】
上記2つ以上の部分的に重ねられた円形形状は、本質的に同じ直径を有してもよい。あるいは、1つ以上の上記部分的に重ねられた円形形状は、他の上記重なった円形形状よりも大きな直径を有してもよい。これは、結果として生じる全体的な断面形状が、部分的に重ねられた、より小さい円形形状とより大きい円形形状との混合からなることを意味する。
【0019】
以下により詳細に記載されるように、本発明に係るリヨセル短繊維は、紡糸口金を通じてセルロース溶液を紡ぐことによって生産され、ここで、少なくとも一部の紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるときに、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されてもよい。
【0020】
これは、上述のような、部分的に重ねられた、より小さな円形形状とより大きな円形形状との混合からなる2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を有するリヨセル短繊維を生産するために、セルロース溶液が、特定の幾何学的図形に配置された、異なる直径を有する隣接した円形の穴部を介して押し出されてもよいことを意味する。
【0021】
これは、既に定義したような特有の全体的な断面形状をもたらすだけでなく、さらに、この種の独創的な短繊維が著しく強い縮れ値を示すことをもたらす。
【0022】
任意の理論に結び付けようとせずとも、この実施形態における独創的な短繊維についての強い縮れは事実に起因する。すなわち、エアギャップにおける特定の全体的な押出し速度および特定の全体的な延伸比を所与として、仮に長繊維が異なる直径を有する紡糸口金穴部から押出されるとき、結果として生じる複数の単一長繊維は、溶融長繊維を共に形成するよう溶融される。このとき、上記結果として生じる単一長繊維は、それぞれ異なる引張特性を有しているため、上記溶融された繊維には、特定の値の自然な伸張および自然な縮れがもたらされる。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明に係る繊維の全体的な断面形状は、2つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた2重フィラメント糸の断面形状である。
【0024】
他の好ましい実施形態において、上記全体的な断面形状は、3つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた3重フィラメント糸の断面形状である。
【0025】
上記3つの重ねられた円形形状は、一列に並んで、または三角形の形に配置されていてもよい。上記三角形は、好ましくは二等辺三角形であってもよい。
【0026】
他の好ましい実施形態では、上記全体的な断面形状は、4つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた4重フィラメント糸の断面形状である。
【0027】
上記4つの重ねられた円形形状は、一列に並んで、または、正方形、平行四辺形、もしくはひし形の形に配置されていてもよく、あるいは、当該円形形状の1つを三角形の中心とした当該三角形の形に配置されていてもよい。
【0028】
上述のような2重、3重、または4重のフィラメント糸の断面形状を有する長繊維より成るリヨセル短繊維は、0.5〜8dtexのデシテックスを示してもよい。このデシテックスの短繊維は、布地として適用するのに特に有益である。吸水性製品の分野において、または繊維の詰め物もしくはカーペットの分野において、本発明に係る短繊維は、40texまたはそれ以上までのデシテックスとして用いられるだろう。
【0029】
本発明に係る短繊維の全体的な断面形状は、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの本質的な円形形状が概念的に重ねられたマルチフィラメント糸の断面形状であってもよい。この実施形態では、繊維は、概して6dtexよりも高いデシテックスを示す。
【0030】
本発明に係る短繊維において、少なくとも1つの上記部分的に重ねられた断面形状は、非円形の断面形状であってもよい。
【0031】
すなわち、本発明に係る短繊維の構成要素である長繊維の全体的な断面図は、部分的に重ねられた、円形の断面形状と非円形の断面形状との混合であってもよいし、または、部分的に重ねられた非円形の断面形状のみから成ってさえもよい。
【0032】
上記非円形の断面形状は、好ましくは三葉である多葉性、または、三角形であってもよい。
【0033】
本発明に係る短繊維における特に好ましい実施形態は、本質的に全ての上記切断された長繊維が、本質的に、同一の全体的な断面形状を示すことを特徴とする。
【0034】
この好ましい実施形態に係る短繊維は、その断面形状、ならびに、それによって実現された様々な物理的特性および布地特性の点において、完全に同一の特性を有する。
【0035】
さらに他の実施形態では、本実施形態に係るリヨセル短繊維を構成する長繊維は、少なくとも部分的に、中空である2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示す。中空構造は、押出された単一長繊維が完全に溶融せず、むしろ、形成された溶融繊維の中心に隙間が残されるように、紡糸口金穴部の寸法および間隔に関する紡績パラメータを選択することによって得ることができる。
【0036】
本発明に係るリヨセル短繊維は、同じデシテックスである比較対象の標準リヨセル短繊維よりも顕著に高い引張強さを有することが顕著に見出される。特に、本発明に係るリヨセル短繊維は、比較リヨセル短繊維における全ての切断された長繊維が本質的に円形の断面を示すとき、同じデシテックスの上記比較リヨセル短繊維の繊維引張強さよりも、条件状態において、少なくとも15%高く、好ましくは20%高い繊維引張強さを示す。
【0037】
さらに、本発明に係るリヨセル短繊維は、驚くほどに高い曲げ剛性を有する。
【0038】
特には、本発明に係るリヨセル短繊維は、少なくとも0.5mN.mm2/tex2であって、好ましくは0.6mN.mm2/tex2より大きい、デシテックス関連曲げ剛性を示す。
【0039】
上記曲げ剛性は、出願者により開発された方法によって測定される。測定値は、デシテックスに基づいて、直線的測定範囲上の経路に対する力の変化度の関係で表わされる。
【0040】
測定を実施するために調整された繊維は、締め付け棒に固定され、かつ、切断装置を用いて正確に5mmの長さに切断される。締め付け棒は電動ギアによって一定の速度で上方に移動する。この後、繊維は力センサに適合する小さなセンサで圧迫される。繊維がより堅ければ、測定される力はより高くなる。
【0041】
較正不能なため、曲げ剛性の較正のために効果的な力はない。しかしながら、特定の測定範囲において、繊維の相対比較を行うことは可能である。そのため、上記経路で測定された力について、直線的測定範囲における変化度が測定される。また、上記変化度は、繊維のデシテックスに関連している。
【0042】
本発明に係るリヨセル短繊維の製造方法は、
複数の紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を通じて水性の第3アミンオキシド中に溶解しているセルロース溶液を押し出し、それによって長繊維を形成する工程と、
エアギャップを経て沈殿槽中に上記長繊維を誘導する工程と、
上記長繊維を上記エアギャップに引き込む工程と、
上記エアギャップ中で上記長繊維に空気を吹き付ける工程と、
上記沈殿槽中に上記長繊維を沈殿させる工程と、
切断された長繊維を形成するために、上記沈殿した長繊維を切断する工程とを備えており、
少なくとも一部の上記紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるとき、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されていることを特徴としている。
【0043】
仮に、NMMOにおけるセルロース溶液が、上記に特定するように紡糸口金を通じて押出されるとき、溶融長繊維は、極めて均一かつ再現性のある2重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示すという結果になる。
【0044】
本発明に係る方法において、少なくとも一部の、より好ましくは全ての紡糸口金穴部は、円形である。全ての上記穴部は同じ直径を有してもよい。
【0045】
あるいは、少なくとも1つ以上の上記穴部は、他の上記穴部のものよりも大きな直径を有してもよい。この場合、断面形状は、上述のような、部分的に重ねられた、より小さい円形形状とより大きい円形形状との混合になるという結果になる。より小さい直径を有する上記穴部の断面積に対する、より大きい直径を有する上記穴部の断面積の比率は、好ましくは1:1より大きく、16:1までであり、好ましくは、1.6:1から2.7:1までである。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である2つの穴部からなる。
【0047】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である3つの穴部からなってもよい。上記3つの穴部は一列に並んで配置されていてもよく、その結果、溶融繊維の断面形状は、全体的に平らな長方形の形状となってもよい。
【0048】
さらに上記3つの穴部は、三角形、好ましくは二等辺三角形の形に配置されていてもよい。全ての紡糸口金穴部の直径が同一である場合、または、特に二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部の直径が、他の2つの穴部の直径よりも大きい場合、溶融繊維の結果的に生じる全体的な断面形状は、「テディベア」のような形状となるだろう。すなわち、2つの部分的に重ねられた円形形状がテディベアの「耳」を形成し、また、二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部から紡がれる長繊維の円形形状が「顔」を形成する。
【0049】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である4つの穴部から成ってもよい。
【0050】
上記4つの穴部は、一列に並んで列を成して配置されてもよく、結果的に、溶融長繊維の全体的な断面形状が平坦な長方形の形状となってもよい。
【0051】
あるいは、上記4つの穴部は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形で配置されてもよい。全ての紡糸口金穴部の直径が同一である場合、結果的に生じる溶融長繊維の全体的な断面形状は、それぞれ、正方形、平行四辺形、または、ひし形のようになるであろう。
【0052】
上記4つの穴部は、当該穴部の1つを三角形の中心とした当該三角形の形に配置されてもよい。さらに、使用される紡糸口金穴部の直径次第で、結果的に、三角形または「テディベア」のような形となってもよい。
【0053】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの穴部からなってもよい。もちろん、多くの様々な穴部の幾何学的配置が可能であり、結果的に、溶融長繊維の様々な断面形状のバリエーションがもたらされる。これは、図を参照して以下により詳細に示される。
【0054】
上述から分かるように、溶融長繊維の全体的な断面形状は、上記紡糸口金オリフィスに用いられた紡糸口金穴部についの数および幾何学的配置のみによって決まるわけではなく、穴部直径の寸法とも強い相関関係を有する。すなわち、穴直径を変更することに、または、様々な直径を有する幾何学的配置を提供することに、結果的に生じる溶融長繊維の断面形状は強く影響を受けるだろう。
【0055】
本発明の他の実施形態では、上記穴部の少なくとも1つは非円形である。上記非円形は、好ましくは三葉の多葉性、または、三角形であってもよい。
【0056】
全ての上記紡糸口金オリフィスは、幾何学的配置、形状、および上記穴部の寸法に関して同一の穴部集合体からなることが好ましい。すなわち、この実施形態における全ての穴部集合体は同一の幾何学的配置を有し、さらに、当該配置における穴部の各々の寸法および形状は、全ての集合体において同一である。この実施形態によって、本質的に同一な二重またはマルチフィラメント糸の断面形状を示す複数の溶融長繊維を得ることが可能であると分かる。非常に驚くべきことに、このような均一でありかつ再現性のある長繊維(および短繊維)の断面は、アミン・オキシドまたはリヨセル方法によって得ることができる。
【0057】
均一な紡糸口金オリフィスを通じて紡績を行う場合、これらの紡糸口金オリフィスは、複数の平行な列に位置付けられていることが好ましい。上記列のそれぞれにおいて、全ての穴部集合体は本質的に互いに平行に方向付けられていてもよい。
【0058】
さらに、エアギャップ中の上記長繊維に吹き付けられる空気が、上記長繊維に向けて特定の方向に方向付けられる場合、紡糸口金穴部の幾何学的配置、ならびに、それら穴部の各々の寸法および形状は、溶融長繊維において最適に再現され得ることが発見される:
−上記穴部が一列に並んで配置されている場合、吹き付け方向は、上記列の方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が三角形に配置されている場合、吹き付け方向は、上記三角形の基線の1つの方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が正方形に配置されている場合、吹き付け方向は、上記正方形の基線の1つの方向に対して本質的に平行であることが好ましく、
−上記穴部が他の幾何学的図形に配置されている場合、吹き付け方向は、当該配置の主な配向軸の方向に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0059】
いくつかの幾何学的配置の主な配向軸の例は、図において以下に与えられる。
【0060】
上記穴部集合体における上記穴部の直径は、35μmから250μmであってもよい。非円形の穴部である場合、「直径」という用語は、非円形形状の周囲を囲むことのできる円の直径を意味する。上述したように、1つの穴部集合体において、異なる直径の穴部を用いてもよい。
【0061】
上記穴部の集合体において、1つの穴部の中心から、次の隣接する穴部の中心までの距離は、100μmから500μmであることが好ましく、150μmから250μmであることがより好ましい。この距離は、所望の溶融長繊維の全体的な断面形状に従い、当業者によって調節されてもよい。穴部と穴部との間の各距離および各穴部の直径を適宜調節することによって、中空の断面形状を有する短繊維が製造されてもよい。
【0062】
本発明に係るリヨセル短繊維は、医療用布地、衛生用布地、家庭用布地、技術的用途品、および衣料的用途品などの様々な末端利用において用いられても良く、特には、創傷包帯、開腹パッド、ベッドパッド、止血栓、生理用ナプキン、雑巾、尿漏れ防止製品、枕、布団、タオル、カーペット、パイル織、ダマスク織、サテン、絶縁材、ポリマーのための強化繊維、紙または凝結物、編布または織布などの布地、シャツ地、ベロア、チノクロス、コットンのような手触りの布地、および、それらから作った衣類などに用いられてもよい。
【0063】
特に、本発明に係るリヨセル短繊維は、より堅く、より縮れ、より「コットンのような」手触りである、または、熱および湿度変化管理性質もしくは様々な視覚性が望まれる、任意の用途において有用である。
【0064】
本発明の好ましい実施形態は、ここで図面および実施例によって説明されるだろう。
【0065】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、2重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0066】
図2A)および2B)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0067】
図3A)から3C)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している3つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0068】
図4A)および4B)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0069】
図5A)および5B)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0070】
図6A)および6B)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0071】
図7A)および7B)は、7重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【0072】
図8A)から8D)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についての2つの実施例を示す図である。
【0073】
図9A)および9B)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についてのさらなる実施例を示す図である。
【0074】
図10は、本発明に係るリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0075】
図11は、本発明に係るさらなるリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0076】
図12は、中空構造を有する、本発明に係るリヨセル短繊維の4重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【0077】
図1に示すように、2重フィラメント糸の断面形状を有するリヨセル短繊維の製造のための紡糸口金オリフィスは、2つの紡糸口金穴部(左側)からなる。上記穴部は、同一の直径または異なる直径であってもよい。任意のより小さい穴部の直径は、より小さい円で示され、その逆もまた同様である(これは図1から図7の全てに対して適用される)。
【0078】
図1の右側に示される陰影構造は、左側にある紡糸口金オリフィスを通じて紡がれる溶融長繊維において見込まれる2つの全体的な断面形状を示している。2つの穴部が同じ大きさの直径を有する場合、2つの部分的に重なった比較的大きな円からなる2重フィラメント糸の断面形状がもたらされる。2つの穴部のうちの1つがより小さい直径を有する場合、図1の右端に示される陰影構造のような断面形状がもたらされる。ここで、1つのより大きな円は、より小さな円と部分的に重なっている。
【0079】
図1における矢印は、例えば溶融長繊維の断面形状における再現性および均一性の点で最も良好な結果が実現されるように、押出された長繊維に対して吹き付け空気が向けられるべき好ましい方向を示している。
【0080】
図2から図7は、図1と同様の主な構造に基づいている。すなわち、左側では、紡糸口金構造の幾何学的配置が示されている。右側では、各穴部の直径(小または大)に従っていくつかの見込まれるフィラメント糸の断面形状が示されている(陰影構造)。さらに、これら図面の各々において、吹き付け空気の好ましい方向が示されている。
【0081】
したがって、以下では、図2から図7に関して、ほんのわずかな注釈が付されるのみである。
【0082】
図2A)は、同じ直径の穴部が用いられた場合において、一列に並べられた3重フィラメント糸の断面形状を示している。吹き付け方向は、上記列に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0083】
図2B)は、三角配置において見込まれる3重フィラメント糸の断面形状を示している。特に、本質的に、二等辺三角形の2つの等辺の交点における穴部が最も大きい場合、「テディベア」のような形状(真ん中における陰影構造)がもたらされる。吹き付け方向は、紡糸口金穴部の三角形の基線に対して本質的に平行であることが好ましい。
【0084】
図3Aから図3C)は、全体的な4重フィラメント糸の断面形状の様々な実施例を示している。矢印によって示される好ましい吹き付け方向は、図3A)から図3C)に示される全ての実施例において同様であることが好ましい。図3A)の場合(穴部が一列に配置された場合)、吹き付け方向は上記列に対して本質的に平行であることが好ましい。図3B)の場合(穴部が正方形に配置された場合)、吹き付け方向は上記正方形の基線の1つに対して本質的に平行であることが好ましい。図3C)の場合、好ましい吹き付け方向は、上記紡糸口金穴部の幾何学的配置における主要な配向軸に対して本質的に平行である。あるいは、好ましい吹き付け方向は、図3B)の正方形の主要な対角線と本質的に平行であってもよく、または、図3C)の場合、最も上側の穴部と最も下側の穴部とを結ぶことによって定義される軸に対して本質的に平行であってもよい。
【0085】
図4A)および図4B)において示されるそれぞれの幾何学的配置の主な配向軸は、点線で表される。各穴部の直径に応じて示される穴部の配置から得ることのできる断面形状は、一目瞭然である。図Aに係る陰影構造は、4つの紡糸口金穴部の各々の距離を適切に選択することによって得ることのできる穴部の断面形状を示している。
【0086】
図4A)および図4B)の両方に関する好ましい吹き付け方向は、ここで示されるように、主な配向軸に対して本質的に平行である。
【0087】
同様なことは、5つの隣接した紡糸口金穴部を有する紡糸口金オリフィスを通じて紡糸溶液から生じる断面形状を示している図5A)および図5B)において適用される。
【0088】
図6および図7は、7つの隣接した紡糸口金穴部(図7)を有する紡糸口金オリフィスを介して、紡糸溶液から生じる断面形状を示すさらなる実施例を示しており、当該実施例は、中空の断面形状を有している。
【0089】
〔実施例〕
(実施例1)
図8および図9は、本発明の短繊維について得られる断面形状における、吹き付け空気の方向による影響を示している。
【0090】
各場合において、三角形の形に配置された3つの穴部からなる様々な紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を用いた。各オリフィスにおいて、2つの穴部は80μmの直径を有しており、また、1つの穴部は120μmの直径を有していた。大きい穴部の中心から、その隣接する穴部の中心までの距離は、それぞれ250μmであった。
【0091】
図8A、図8b、および図8Cは、それぞれ、各紡糸口金配置および用いられる吹き付け空気の方向を示している。
【0092】
他の全ての紡績パラメーターは一定であり、吹き付け空気の方向のみを変化させた(図8A)、図8B)、および図9A)における矢印によってそれぞれ示される)。
【0093】
図8C)から明らかなように(図8Aおよび図8Dに係る実験結果が示すように)(図8Bに係る実験結果が示すように)(図9Aに係る実験結果が示すように)、繊維断面形状における最も良好な均一性、および元の紡糸口金穴部配置の再現性は、図9A)に係るテスト配置を用いて達成される。すなわち、ここで、空気は、2つのより小さい穴部によってそれぞれ規定される三角形の基線に本質的に平行な方向において、長繊維に吹き付けられる。
【0094】
(実施例2)
図10および図11は、図8および図9に関して上述したような紡糸口金配置から生産された、本発明に係るリヨセル短繊維の断面形状を示している。
【0095】
HMMOにおける13%セルロースの標準紡糸溶液は、記載されたような紡糸口金配置を介して110℃で紡がれ、さらに、約20mmの長さのエアギャップを経て誘導された。
【0096】
吹き付け空気は、押出された長繊維に向けられた。吹き付け方向は、2つのより小さな紡糸口金穴部(図9A参照)によって規定された三角形の基線に対して本質的に平行であった。
【0097】
図10および図11の両方は、極めて均一に得られ、かつ、紡糸口金穴部の「テディベア」のような構造が良好に再現された、長繊維の断面形状を示している。
【0098】
(実施例3)
図12に描かれた短繊維の製造のために、それぞれ4つの穴部を有する紡糸口金オリフィスを用いた。各穴部は、100μmの直径を有していた。1つの穴部の中心からその隣接する穴部の中心までの距離は500μmであった。穴部は、ひし形の形に配置された。吹き付け空気は、紡がれた長繊維に対して、ひし形(図4A参照)の主な配向軸に対して本質的に平行に向けられた。NMMOにおける12,3%のセルロースの標準紡糸用液は、記載されたような紡糸口金配置を介して、120℃で紡がれ、さらに、約20mmの長さのエアギャップを経て誘導された。
【0099】
図12から明らかなように、結果として生じる短繊維は、著しく均一な断面形状を示し、かつ、際立って再現性のある中空構造を有する。
【0100】
(実施例4)
紡績パラメータの一定なセットを適用して、本質的に円形の断面を有する標準リヨセル短繊維、および、様々なデシテックスを有する(実施例1および図8および図9のそれぞれに関して描かれたようなオリフィスを有するような紡糸口金から紡がれた)3重フィラメント糸断面形状を有するリヨセル短繊維を生産した。以下の表は、得られた繊維の繊維引張強さを比較している。
【0101】
【表1】
*Bacellは、Bahia Brasil社によって生産されたTCF漂白されたユーカリの硫酸塩パルプである。
**KZO3はLenzing AG社によって生産されたTCF漂白されたブナノキの亜硫酸パルプである。
【0102】
本発明に係るリヨセル短繊維が、同じデシテックスを有する標準リヨセル短繊維よりも著しく高い繊維引張強さを有することは、明白に分かる。
【0103】
(実施例5)
実施例1および図8、9のそれぞれに描かれたような紡糸口金配置を用いて生産された本発明に係るリヨセル短繊維を、デシテックス関連曲げ剛性について、様々なタイプのセルロース繊維と比較した。その結果は表2に示されている。
【0104】
【表2】
*Saiccorは、Saiccor South Africa社によって生産されたTCF漂白されたユーカリの亜硫酸パルプである。
【0105】
上記実施例におけるモダール繊維は、PCT/AT/000493(予備公開されていない)の教示に従って生産された。
【0106】
表2から、「テディベア」のような断面形状である3重フィラメント糸を有するリヨセル短繊維は、実際の他のセルロース繊維よりも、顕著に高いデシテックス関連曲げ剛性を有することが明らかである。特に、本発明に係る短繊維のデシテックス関連曲げ剛性は、あらゆる実施例において、0.5mN mm2/tex2よりも高かった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】2重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図2】A)およびB)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図3】A)からC)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している3つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図4】A)およびB)は、4重フィラメント糸の断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図5】A)およびB)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図6】A)およびB)は、5重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つのさらなる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図7】A)およびB)は、7重フィラメント糸の断面形状からなる断面形状を有する長繊維の製造に適している2つの異なる紡糸口金オリフィス、好ましい空気の吹き付け方向、および、上記紡糸口金オリフィスから紡がれる長繊維において見込まれる全体的な断面形状を概略的に示す図である。
【図8】A)からD)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についての2つの実施例を示す図である。
【図9】A)およびB)は、3重フィラメント糸の断面形状を有する、本発明に係る短繊維の生産についてのさらなる実施例を示す図である。
【図10】本発明に係るリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【図11】本発明に係るさらなるリヨセル短繊維の3重フィラメント糸の断面形状を示す図である。
【図12】本発明に係るリヨセル短繊維の4重フィラメント糸の、中空構造を有する断面形状を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の切断された長繊維からなるリヨセル短繊維であって、
少なくとも一部の上記切断された長繊維は、2つ以上の繊維の断面形状が概念上、部分的に重ねられた2重またはマルチフィラメント糸の断面形状である、全体的な断面形状を示すことを特徴とするリヨセル短繊維。
【請求項2】
少なくとも一部の、好ましくは全ての上記部分的に重ねられた断面形状は、本質的に円形形状であることを特徴とする請求項1に記載のリヨセル短繊維。
【請求項3】
上記2つ以上の部分的に重ねられた円形形状は、本質的に同じ直径を有することを特徴とする請求項2に記載のリヨセル短繊維。
【請求項4】
1つ以上の上記部分的に重ねられた円形形状は、他の上記重ねられた円形形状よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項2に記載のリヨセル短繊維。
【請求項5】
上記全体的な断面形状は、2つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた2重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項6】
上記全体的な断面形状は、3つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた3重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項7】
上記3つの重ねられた円形形状は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項6に記載のリヨセル短繊維。
【請求項8】
上記3つの重ねられた円形形状は、三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のリヨセル短繊維。
【請求項9】
上記三角形は、本質的に二等辺三角形であることを特徴とする請求項8に記載のリヨセル短繊維。
【請求項10】
上記全体的な断面形状は、4つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた4重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項11】
上記4つの重ねられた円形形状は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項12】
上記4つの重ねられた円形形状は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項13】
上記4つの重ねられた円形形状は、当該円形形状の1つを三角形の中心として、当該三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項14】
上記長繊維は、0.5〜8dtexの、好ましくは0.5〜4dtexのデシテックスを示すことを特徴とする、請求項5から13までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項15】
上記全体的な断面形状は、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの本質的な円形形状が概念的に重ねられたマルチフィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項16】
少なくとも1つの上記部分的に重ねられた断面形状は、非円形の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項17】
上記非円形の断面形状は、好ましくは三葉である多葉性、または、三角形であることを特徴とする請求項16に記載のリヨセル短繊維。
【請求項18】
本質的に全ての上記切断された長繊維は、本質的に同一の上記全体的な断面形状を示すことを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項19】
上記全体的な断面形状は中空であることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項20】
比較リヨセル短繊維についての全ての切断された長繊維が本質的に円形断面を示すとき、
同じデシテックスの上記比較リヨセル短繊維の繊維引張強さよりも、少なくとも15%高く、好ましくは20%高い、条件状態における繊維引張強さを示すことを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項21】
少なくとも0.5mN.mm2/tex2であって、好ましくは0.6mN.mm2/tex2よりも大きいデシテックス関連曲げ剛性を示すことを特徴とする請求項1から20までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維の製造方法であって、
複数の紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を通じて、水性の第3アミンオキシド中に溶解しているセルロース溶液を押し出し、それによって長繊維を形成する工程と、
エアギャップを経て沈殿槽中に上記長繊維を誘導する工程と、
上記長繊維を上記エアギャップに引き込む工程と、
上記エアギャップ中で上記長繊維に空気を吹き付ける工程と、
上記沈殿槽中で上記長繊維を沈殿させる工程と、
切断された長繊維を形成するために上記沈殿した長繊維を切断する工程とを備えており、
少なくとも一部の上記紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、
上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるとき、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
少なくとも一部の、好ましくは、上記穴部は、円形形状であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
全ての上記穴部は同一の直径を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つ以上の上記穴部は、他の上記穴部よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
より小さい直径を有する上記穴部の断面積に対する、より大きい直径を有する上記穴部の断面積の比率は、1:1より大きく、16:1までであり、好ましくは、1.6:1から2.7:1であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である2つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である3つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記3つの穴部は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記3つの穴部は、三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
上記3つの穴部は、二等辺三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である4つの穴部から成ることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
上記4つの穴部は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記4つの穴部は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形に配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
上記4つの穴部は、当該穴部の1つが三角形を中心として、当該三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形形状である、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの上記穴部は非円形であることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
上記非円形は、好ましくは三葉の多葉性、または、三角形であることを特徴とする、請求項37に記載のリヨセル短繊維。
【請求項39】
全ての上記紡糸口金オリフィスは、幾何学的配置、形状、および上記穴部の寸法に関して同一の穴部集合体からなることを特徴とする、請求項22から38までのいずれか1項に記載の方法
【請求項40】
上記紡糸口金オリフィスは複数の平行な列に位置付けられており、上記列のそれぞれにおいて、全ての穴部集合体は本質的に互いに平行に方向付けられていることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記エアギャップ中で上記長繊維に吹き付けられる上記空気は、
上記穴部が一列に並んで配置されている場合では、上記列の方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が三角形に配置されている場合では、上記三角形の基線の1つの方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が正方形に配置されている場合では、上記正方形の基線の1つの方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が他の幾何学的図形に配置されている場合では、当該配置の主な配向軸の方向に対して本質的に平行に、
上記長繊維に誘導されることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記穴部集合体における上記穴部の直径は、35μmから200μmであることを特徴とする、請求項22から41までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
上記穴部集合体において、1つの穴部の中心から、次の隣接する穴部の中心までの距離は、100μmから500μmであり、好ましくは150μmから250μmであることを特徴とする、請求項22から42までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から21のいずれか1項に記載のリヨセル短繊維の使用であって、
創傷包帯、開腹パッド、ベッドパッド、止血栓、生理用ナプキン、雑巾、尿漏れ防止製品、枕、布団、タオル、カーペット、パイル織、ダマスク織、サテン、絶縁材、ポリマーのための強化繊維、紙または凝結物、編布または織布などの布地、シャツ地、ベロア、チノクロス、コットンのような手触りの布地、および、それらから作った衣類などの、医療用布地、衛生用布地、家庭用布地、技術的用途品、および衣料的用途品からなる群から選ばれる製品のための使用。
【請求項1】
複数の切断された長繊維からなるリヨセル短繊維であって、
少なくとも一部の上記切断された長繊維は、2つ以上の繊維の断面形状が概念上、部分的に重ねられた2重またはマルチフィラメント糸の断面形状である、全体的な断面形状を示すことを特徴とするリヨセル短繊維。
【請求項2】
少なくとも一部の、好ましくは全ての上記部分的に重ねられた断面形状は、本質的に円形形状であることを特徴とする請求項1に記載のリヨセル短繊維。
【請求項3】
上記2つ以上の部分的に重ねられた円形形状は、本質的に同じ直径を有することを特徴とする請求項2に記載のリヨセル短繊維。
【請求項4】
1つ以上の上記部分的に重ねられた円形形状は、他の上記重ねられた円形形状よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項2に記載のリヨセル短繊維。
【請求項5】
上記全体的な断面形状は、2つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた2重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項6】
上記全体的な断面形状は、3つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた3重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項7】
上記3つの重ねられた円形形状は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項6に記載のリヨセル短繊維。
【請求項8】
上記3つの重ねられた円形形状は、三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のリヨセル短繊維。
【請求項9】
上記三角形は、本質的に二等辺三角形であることを特徴とする請求項8に記載のリヨセル短繊維。
【請求項10】
上記全体的な断面形状は、4つの本質的な円形形状が概念的に重ねられた4重フィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項11】
上記4つの重ねられた円形形状は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項12】
上記4つの重ねられた円形形状は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項13】
上記4つの重ねられた円形形状は、当該円形形状の1つを三角形の中心として、当該三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリヨセル短繊維。
【請求項14】
上記長繊維は、0.5〜8dtexの、好ましくは0.5〜4dtexのデシテックスを示すことを特徴とする、請求項5から13までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項15】
上記全体的な断面形状は、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの本質的な円形形状が概念的に重ねられたマルチフィラメント糸の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項16】
少なくとも1つの上記部分的に重ねられた断面形状は、非円形の断面形状であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項17】
上記非円形の断面形状は、好ましくは三葉である多葉性、または、三角形であることを特徴とする請求項16に記載のリヨセル短繊維。
【請求項18】
本質的に全ての上記切断された長繊維は、本質的に同一の上記全体的な断面形状を示すことを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項19】
上記全体的な断面形状は中空であることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項20】
比較リヨセル短繊維についての全ての切断された長繊維が本質的に円形断面を示すとき、
同じデシテックスの上記比較リヨセル短繊維の繊維引張強さよりも、少なくとも15%高く、好ましくは20%高い、条件状態における繊維引張強さを示すことを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項21】
少なくとも0.5mN.mm2/tex2であって、好ましくは0.6mN.mm2/tex2よりも大きいデシテックス関連曲げ剛性を示すことを特徴とする請求項1から20までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項に記載のリヨセル短繊維の製造方法であって、
複数の紡糸口金オリフィスを有する紡糸口金を通じて、水性の第3アミンオキシド中に溶解しているセルロース溶液を押し出し、それによって長繊維を形成する工程と、
エアギャップを経て沈殿槽中に上記長繊維を誘導する工程と、
上記長繊維を上記エアギャップに引き込む工程と、
上記エアギャップ中で上記長繊維に空気を吹き付ける工程と、
上記沈殿槽中で上記長繊維を沈殿させる工程と、
切断された長繊維を形成するために上記沈殿した長繊維を切断する工程とを備えており、
少なくとも一部の上記紡糸口金オリフィスは2つ以上の穴部の集合体からなり、
上記穴部は、上記溶液が上記穴部を介して押し出されるとき、複数の上記穴部から押し出された長繊維が部分的に溶融して1つの溶融長繊維を形成するように、隣接して配置されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
少なくとも一部の、好ましくは、上記穴部は、円形形状であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
全ての上記穴部は同一の直径を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つ以上の上記穴部は、他の上記穴部よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
より小さい直径を有する上記穴部の断面積に対する、より大きい直径を有する上記穴部の断面積の比率は、1:1より大きく、16:1までであり、好ましくは、1.6:1から2.7:1であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である2つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれ円形形状である3つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記3つの穴部は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記3つの穴部は、三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
上記3つの穴部は、二等辺三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形である4つの穴部から成ることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
上記4つの穴部は、一列に並んで配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記4つの穴部は、正方形、平行四辺形、または、ひし形の形に配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
上記4つの穴部は、当該穴部の1つが三角形を中心として、当該三角形の形に配置されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
上記紡糸口金オリフィスは、それぞれが円形形状である、5つ以上の、好ましくは5つまたは7つの穴部からなることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの上記穴部は非円形であることを特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
上記非円形は、好ましくは三葉の多葉性、または、三角形であることを特徴とする、請求項37に記載のリヨセル短繊維。
【請求項39】
全ての上記紡糸口金オリフィスは、幾何学的配置、形状、および上記穴部の寸法に関して同一の穴部集合体からなることを特徴とする、請求項22から38までのいずれか1項に記載の方法
【請求項40】
上記紡糸口金オリフィスは複数の平行な列に位置付けられており、上記列のそれぞれにおいて、全ての穴部集合体は本質的に互いに平行に方向付けられていることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記エアギャップ中で上記長繊維に吹き付けられる上記空気は、
上記穴部が一列に並んで配置されている場合では、上記列の方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が三角形に配置されている場合では、上記三角形の基線の1つの方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が正方形に配置されている場合では、上記正方形の基線の1つの方向に対して本質的に平行に、
上記穴部が他の幾何学的図形に配置されている場合では、当該配置の主な配向軸の方向に対して本質的に平行に、
上記長繊維に誘導されることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記穴部集合体における上記穴部の直径は、35μmから200μmであることを特徴とする、請求項22から41までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
上記穴部集合体において、1つの穴部の中心から、次の隣接する穴部の中心までの距離は、100μmから500μmであり、好ましくは150μmから250μmであることを特徴とする、請求項22から42までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から21のいずれか1項に記載のリヨセル短繊維の使用であって、
創傷包帯、開腹パッド、ベッドパッド、止血栓、生理用ナプキン、雑巾、尿漏れ防止製品、枕、布団、タオル、カーペット、パイル織、ダマスク織、サテン、絶縁材、ポリマーのための強化繊維、紙または凝結物、編布または織布などの布地、シャツ地、ベロア、チノクロス、コットンのような手触りの布地、および、それらから作った衣類などの、医療用布地、衛生用布地、家庭用布地、技術的用途品、および衣料的用途品からなる群から選ばれる製品のための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A)】
【図8B)】
【図8C)】
【図8D)】
【図9A)】
【図9B)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A)】
【図8B)】
【図8C)】
【図8D)】
【図9A)】
【図9B)】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−540139(P2009−540139A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514588(P2009−514588)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000256
【国際公開番号】WO2007/143761
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507127314)レンチング アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000256
【国際公開番号】WO2007/143761
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507127314)レンチング アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]