説明

リリースライナー

【課題】 基材を構成する材料としてバイオマスプラスチックであるポリ乳酸を使用し、且つ、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いた場合であってもシリコーン硬化性に優れ、基材密着性の高い剥離性硬化皮膜が形成されているリリースライナーを得る。
【解決手段】 本発明のリリースライナーは、ポリ乳酸基材の少なくとも一方の面にアンダーコート層を介して剥離処理層が設けられていることを特徴とする。アンダーコート層の塗布量は、固形分換算で、例えば、0.1〜5g/m2である。ポリ乳酸基材は改質剤を含有していてもよい。剥離処理層を形成する剥離剤は紫外線硬化型シリコーン系剥離剤であってもよい。紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリースライナー、より詳しくは、ポリ乳酸系フィルム又はシートを基材とするリリースライナー(セパレータ)に関する。このリリースライナーは、粘着テープ、粘着シート、ラベルなどの粘着面を保護するための剥離フィルム、離型フィルム等として用いられる。
【背景技術】
【0002】
リリースライナーは基材上に剥離層を形成したシートであり、その基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどを原料とした樹脂フィルムが一般的に幅広く使用されている。
【0003】
近年、地球環境の保護の目的で、バイオマスプラスチックが注目を集めている。バイオマスプラスチックとは、植物由来の材料から製造されたプラスチックであり、石油由来の材料から製造されたプラスチックとは異なり、二酸化炭素のカーボンニュートラルの実現が可能な、環境にやさしいプラスチックである。現在、バイオマスプラスチックとして多く流通しているのがポリ乳酸である。しかしながら、ポリ乳酸は一般に耐熱性が低いため、ポリ乳酸基材上に剥離性硬化皮膜シリコーンとして従来の熱硬化型シリコーン系剥離剤を用いて処理した場合には、熱収縮による変形が起こりやすい。そのため、ポリ乳酸はリリースライナーの基材として用いられていないのが現状である。
【0004】
一方、バイオマスとして紙が挙げられる。この紙を用いたリリースライナーとして、紙基材の表面にクレーコート層を介してシリコーン層(剥離剤層)を設けたリリースライナーが知られている(特許文献1)。しかし、このリリースライナーは、透明性に欠ける紙を基材とするため、使用用途が限定される。また、紙基材を製造する際やこれを用いてリリースライナーを製造する際には埃(紙粉)が飛散するため、クリーン環境での使用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−40301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、ポリ乳酸は耐熱性が低いため、従来の熱硬化型シリコーン系剥離剤により剥離剤層を形成すると、熱により変形するという問題がある。そこで、剥離性硬化皮膜シリコーンとして紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いることが考えられる。しかし、この場合には、ポリ乳酸基材の樹脂中に含まれる硬化阻害成分(界面活性剤等)により、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤が十分に硬化せず、ポリ乳酸基材上に密着性のよい剥離性硬化皮膜を形成することが困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、基材を構成する材料としてバイオマスプラスチックであるポリ乳酸を使用し、且つ、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いた場合であってもシリコーン硬化性に優れ、基材密着性の高い剥離性硬化皮膜が形成されているリリースライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、ポリ乳酸基材と剥離処理層との間にアンダーコート層を設けると、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いても、シリコーン硬化性に優れ、基材密着性の高い剥離性硬化皮膜を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸基材の少なくとも一方の面にアンダーコート層を介して剥離処理層が設けられていることを特徴とするリリースライナーを提供する。
【0010】
前記アンダーコート層の塗布量は、固形分換算で、例えば、0.1〜5g/m2である。
【0011】
また、前記ポリ乳酸基材は改質剤を含有していてもよい。
【0012】
前記剥離処理層を形成する剥離剤は紫外線硬化型シリコーン系剥離剤であってもよい。また、前記紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤であるのが好ましい。
【0013】
前記アンダーコート層はポリエステル樹脂層であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリリースライナーによれば、ポリ乳酸基材の少なくとも一方の面にアンダーコート層を介して剥離処理層が設けられているので、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いても、ポリ乳酸基材中に含まれる成分による硬化阻害が防止され、基材密着性に優れた剥離処理層が形成される。また、ポリ乳酸基材中に改質剤を含有させることにより、ポリ乳酸基材本来の剛性を保持しつつ、例えば、耐引裂性、耐熱性、滑り性等の特性を向上でき、汎用性に優れ、利用価値の高いリリースライナーとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリ乳酸基材]
本発明のリリースライナーでは、基材を構成する樹脂として、バイオマスプラスチックであるポリ乳酸を用いる。ポリ乳酸の原料モノマーである乳酸は、不斉炭素原子を有するため、光学異性体のL体とD体が存在する。本発明で使用するポリ乳酸は、L体の乳酸を主成分とした重合体である。製造時に不純物として混入するD体の乳酸の含有量が少ないものほど、高結晶性で高融点の重合体となるため、できるだけL体純度の高いものを用いるのが好ましく、L体純度が95%以上のものを用いるのがより好ましい。また、ポリ乳酸は、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0016】
前記他の共重合成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAなどのポリオール化合物;シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などの多価カルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトンが挙げられる。これらの共重合成分は、ポリ乳酸(A)を構成する全モノマー成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10モル%である。
【0017】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、例えば、1万〜40万、好ましくは5万〜30万、さらに好ましくは8万〜15万である。また、ポリ乳酸の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート[JIS K−7210(試験条件4)]は、例えば、0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、さらに好ましくは0.5〜10g/10分、特に好ましくは1〜7g/10分である。前記メルトフローレートの値が高すぎると、成膜して得られるフィルム又はシートの機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、前記メルトフローレートの値が低すぎると、成膜時の負荷が高くなりすぎる場合がある。
【0018】
なお、本発明において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるもの(ポリスチレン換算)をいう。GPCの測定条件は下記の通りである。
カラム:TSKgel SuperHZM−H/HZ2000/HZ1000
カラムサイズ:4.6mmI.D.×150mm
溶離液:クロロホルム
流量:0.3ml/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:10μl
【0019】
ポリ乳酸の製造方法としては特に制限はないが、代表的な製造方法として、ラクチド法、直接重合法などが挙げられる。ラクチド法は、乳酸を加熱脱水縮合して低分子量のポリ乳酸とし、これを減圧下加熱分解することにより乳酸の環状二量体であるラクチドを得、このラクチドをオクタン酸スズ(II)等の金属塩触媒存在下で開環重合することにより、高分子量のポリ乳酸を得る方法である。また、直接重合法は、乳酸をジフェニルエーテル等の溶媒中で減圧下に加熱し、加水分解を抑制するため水分を除去しながら重合させることにより直接的にポリ乳酸を得る方法である。
【0020】
ポリ乳酸としては、市販品を使用できる。市販品として、例えば、商品名「レイシアH−400」、「レイシアH−100」(以上、三井化学社製)、商品名「テラマックTP−4000」、「テラマックTE−4000」(以上、ユニチカ社製)等が挙げられる。もちろん、ポリ乳酸としては、公知乃至慣用の重合方法(例えば、乳化重合法、溶液重合法等)により製造したものを用いてもよい。
【0021】
ポリ乳酸基材におけるポリ乳酸の含有量は、バイオマス度を高める観点から、通常、60重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。また、前記ポリ乳酸の含有量の上限は、例えば、97重量%、好ましくは95重量%、さらに好ましくは93重量%である。ここでバイオマス度とは、フィルムまたはシートの乾燥重量に対する使用したバイオマスの乾燥重量の割合のことである。また、バイオマスとは再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものである。
【0022】
本発明において、ポリ乳酸基材は、ベースポリマーであるポリ乳酸のほか、基材の諸物性を高めるため、改質剤、添加剤を含有させてもよい。
【0023】
改質剤としては、例えば、耐引裂性改質剤、結晶化促進剤、ロール滑性付与剤などが挙げられる。ポリ乳酸基材に耐引裂性改質剤を含有させることにより、基材(及びリリースライナー)の引裂き強度を高めることができる。ポリ乳酸基材に結晶化促進剤を含有させることにより基材(及びリリースライナー)の耐熱性を向上させることができる。また、ポリ乳酸基材にロール滑性付与剤を含有させると、例えば、ポリ乳酸基材をカレンダー成膜法により製造する場合、溶融状態のポリ乳酸含有組成物を金属ロール間の空隙を通過させて成膜する際にフィルム又はシートが金属ロールの表面から容易に剥離するので、円滑な成膜が可能となる。
【0024】
前記耐引裂性改質剤としては、例えば、(a)ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、(b)粒子状のゴムの外部にグラフト層を持つコアシェル構造重合体、(c)軟質脂肪族系ポリエステル等が挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
前記(a)ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルにおいて、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とを反応して得られるエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ドデカグリセリン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上の混合物として使用される。ポリグリセリンの平均重合度は、2〜10が好ましい。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一方の構成成分である脂肪酸としては、例えば、炭素数12以上の脂肪酸が用いられる。脂肪酸の具体例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、水添ヒマシ油脂肪酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上の混合物として使用される。
【0027】
ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと縮合ヒドロキシ脂肪酸とを反応して得られるエステルである。ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンとしては、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分として例示したものが挙げられる。
【0028】
ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルのもう一方の構成成分である縮合ヒドロキシ脂肪酸はヒドロキシ脂肪酸の縮合体である。前記ヒドロキシ脂肪酸としては、分子内に1以上の水酸基を有する脂肪酸であればよく、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、水添ヒマシ油脂肪酸等が挙げられる。縮合ヒドロキシ酸の縮合度は、例えば、3以上、好ましくは3〜8である。縮合ヒドロキシ脂肪酸は1種単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0029】
ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルとしては市販品を使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品として、例えば、太陽化学社製の商品名「チラバゾールVR−10」、「チラバゾールVR−2」等のチラバゾールシリーズなどが挙げられる。
【0030】
前記(b)粒子状のゴムの外部にグラフト層を持つコアシェル構造重合体において、コアを構成する粒子状のゴムとしては、例えば、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、シリコーン・アクリル系複合ゴムなどが挙げられる。また、シェルを構成するポリマーとしては、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0031】
前記コアシェル構造重合体の平均粒子径(一次粒子の集合体)は、例えば、50〜500μm、好ましくは100〜250μmである。これをポリ乳酸(A)に配合して溶融混練すると、一次粒子となって分散する。一次粒子の平均粒子径は、例えば、0.1〜0.6μmである。
【0032】
前記コアシェル構造重合体としては市販品を使用できる。前記コアシェル構造重合体の市販品として、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の商品名「パラロイドEXL2315」等のパラロイドシリーズ(特に、パラロイドEXLシリーズ)、三菱レイヨン社製の商品名「メタブレンS−2001」等のメタブレンSタイプ、「メタブレンW−450A」等のメタブレンWタイプ、「メタブレンC−223A」等のメタブレンCタイプ、「メタブレンE−901」等のメタブレンEタイプなどが挙げられる。
【0033】
前記(c)軟質脂肪族系ポリエステルには、脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが含まれる。(c)軟質脂肪族系ポリエステル(脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)としては、ジオール等の多価アルコールとジカルボン酸等の多価カルボン酸とから得られるポリエステルであって、ジオールとして少なくとも脂肪族ジオールが用いられ、ジカルボン酸として少なくとも脂肪族ジカルボン酸が用いられているポリエステル;炭素数4以上の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の重合体などが挙げられる。前記脂肪族ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の炭素数2〜12の脂肪族ジール(脂環式ジオールを含む)などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸として、例えば、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数2〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸を含む)などが挙げられる。前記ジオール成分として少なくとも脂肪族ジオールが用いられ、ジカルボン酸成分として少なくとも脂肪族ジカルボン酸が用いられているポリエステルにおいて、ジオール成分全体に占める脂肪族ジオールの割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、残余は芳香族ジオール等であってもよい。また、前記ジオール成分として少なくとも脂肪族ジオールが用いられ、ジカルボン酸成分として少なくとも脂肪族ジカルボン酸が用いられているポリエステルにおいて、ジカルボン酸成分全体に占める脂肪族ジカルボン酸の占める割合は、例えば20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、残余は芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸など)等であってもよい。前記炭素数4以上の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシドデカン酸等の炭素数4〜12のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。(c)軟質脂肪族系ポリエステル(脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)の重量平均分子量は、例えば、5万〜40万、好ましくは8万〜25万である。
【0034】
(c)軟質脂肪族系ポリエステルの代表的な例として、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリヒドロキシルアルカノエート等が挙げられる。
【0035】
(c)軟質脂肪族系ポリエステルとしては市販品を使用できる。例えば、ポリブチレンサクシネートとしては、三菱化学社製の商品名「GS Pla AZ91T」、ポリブチレンサクシネートアジペートとしては、三菱化学社製の商品名「GS Pla AD92W」、ポリブチレンアジペートテレフタレートとしては、BASFジャパン社製の商品名「エコフレックス」が挙げられる。
【0036】
ポリ乳酸基材における前記耐引裂性改質剤の含有量(総量)は、ポリ乳酸100重量部に対して、耐引裂性改質効果の観点から、通常、1重量部以上、好ましくは1.5重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上である。なお、耐引裂性改質剤の量が多すぎると、結晶化度、結晶化速度が低下しやすくなり、耐熱性も低下しやすくなるとともに、耐引裂性改質剤がブリードアウトする場合がある。このような観点から、ポリ乳酸系フィルム又はシートにおける前記耐引裂性改質剤の含有量(総量)は、ポリ乳酸100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下であり、特に好ましくは15重量部以下である。
【0037】
なお、耐引裂性改質剤として、(a)ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、又は(b)粒子状のゴムの外部にグラフト層を持つコアシェル構造重合体を用いる場合には、その含有量は、それぞれ、ポリ乳酸100重量部に対して、通常、1重量部以上、好ましくは1.5重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上である。また、上記の観点から、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは12重量部以下であり、特に好ましくは10重量部以下である。また、耐引裂性改質剤として、(c)軟質脂肪族系ポリエステルを用いる場合には、その含有量は、それぞれ、ポリ乳酸100重量部に対して、通常、5重量部以上、好ましくは10重量部以上である。また、上記の観点から、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
【0038】
ポリ乳酸基材に上記耐引裂性改質剤を含有させることにより、ポリ乳酸基材(及びリリースライナー)の引裂き強度を向上させることができる。例えば、ポリ乳酸基材(及び、これを用いたリリースライナー)の引裂き強度を、流れ方向(MD方向)、幅方向(TD方向)ともに、2.5N/mm以上とすることができる。このような引裂き強度を有するポリ乳酸基材をリリースライナーの基材として用いると、該ポリ乳酸基材やリリースライナーを製造する際や、該ポリ乳酸基材やリリースライナーを加工する際に、張力がかかる工程があっても、破断や裂けが生じない。また、ロール状に巻回したり、打ち抜き加工等の加工を施す際にも、破断や裂けが生じない。
【0039】
前記引裂き強度は、引裂き強度試験機を用い、JIS P 8116の紙−引裂強さ試験法−エルメンドルフ形引裂試験機法に準拠して測定できる。引裂き強度が、流れ方向(MD方向)、幅方向(TD方向)ともに、2.5N/mm以上であるポリ乳酸基材は、前記のように、該ポリ乳酸基材やリリースライナーの製造時だけでなく、ロール状巻回時、加工時等においても破断や裂けが生じないので、種々の加工が可能となり、利用範囲が飛躍的に拡大する。
【0040】
引裂き強度は、流れ方向(MD方向)、幅方向(TD方向)ともに、好ましくは2.8N/mm以上、より好ましくは3.2N/mm以上である。引裂き強度は高いほど好ましい。引裂き強度の上限としては、特に限定されないが、例えば、30N/mm以下であってもよく、また、20N/mm以下であってもよく、通常、15N/mm以下である。
【0041】
前記結晶化促進剤としては、例えば、フッ素系ポリマー、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸マグネシウム、タルク、クレー等が挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、フッ素系ポリマー及び/又はフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
【0042】
フッ素系ポリマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン系ポリマー[例えば、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等]、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレン系ポリマーが好ましい。フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、通常100万〜1000万、好ましくは200万〜800万である。
【0043】
ポリ乳酸基材における結晶化促進剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.3〜20重量部である。結晶化促進剤としてフッ素系ポリマーを用いる場合、その含有量は、ポリ乳酸100重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部、好ましくは0.7〜10重量部である。結晶化促進剤としてフェニルホスホン酸亜鉛を用いる場合、その含有量は、ポリ乳酸100重量部に対して、例えば、0.1〜15重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0044】
前記ロール滑性付与剤としては、例えば、酸性官能基変性オレフィン系ポリマーが挙げられる。酸性官能基変性オレフィン系ポリマーの酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基又はその誘導体基等が挙げられる。カルボキシル基の誘導体基とは、カルボキシル基から化学的に誘導されるものであって、例えば、カルボン酸の酸無水物基、エステル基、アミド基、イミド基、シアノ基等が挙げられる。これらのなかでも、カルボン酸無水物基が好ましい。
【0045】
酸性官能基変性オレフィン系ポリマーは、例えば、未変性ポリオレフィン系重合体に、上記の「酸性官能基」を含有する不飽和化合物(以下、「酸性官能基含有不飽和化合物」と略記する場合がある)をグラフトして得られる。
【0046】
未変性ポリオレフィン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、低密度ポリエチレン及びそれらのオリゴマー類であり、好ましくはポリプロピレン、プロピレンとα−オレフィンの共重合体及びそれらのオリゴマー類である。上記「オリゴマー類」としては、対応するポリマーから、熱分解による分子量減成法によって得られるもの等が挙げられる。オリゴマー類は、重合法によっても得ることができる。
【0047】
酸性官能基含有不飽和化合物としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基の誘導体基含有不飽和化合物等が挙げられる。カルボキシル基含有不飽和化合物としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、クロロイタコン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、カルボキシル基の誘導体基含有不飽和化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロロ無水イタコン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物基含有不飽和化合物;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、マレイミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのなかでも、カルボキシル基含有不飽和化合物、カルボン酸無水物基含有不飽和化合物が好ましく、さらに好ましくは酸無水物基含有不飽和化合物であり、特に好ましくは無水マレイン酸である。
【0048】
酸性官能基変性オレフィン系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、10000〜80000、好ましくは15000〜70000、より好ましくは20000〜60000である。酸性官能基変性オレフィン系ポリマーの酸価は、通常10〜70mgKOH/gであり、好ましくは20〜60mgKOH/gである。
【0049】
酸性官能基変性オレフィン系ポリマーは、未変性ポリオレフィン系重合体と酸性官能基含有不飽和化合物とを有機過酸化物の存在下で反応させることによって得られる。有機過酸化物としては、一般にラジカル重合において開始剤として用いられているものが使用できる。かかる反応は、溶液法、溶融法のいずれの方法によっても行うことができる。
【0050】
酸性官能基変性オレフィン系ポリマーとしては、特に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0051】
ポリ乳酸基材における酸性官能基変性オレフィン系ポリマーの含有量は、ポリ乳酸100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.3〜3重量部である。
【0052】
本発明において、ポリ乳酸基材が含有してもよい添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、安定剤、離型剤、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤(白色顔料等の顔料など)、ドリップ防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、発泡剤、充填剤などが挙げられる。
【0053】
これらの添加剤のポリ乳酸基材における総含有量は、例えば、0〜30重量%(例えば0.01〜30重量%)、好ましくは0〜15重量%(例えば0.01〜15重量%)、さらに好ましくは0〜10重量%(例えば0.01〜10重量%)である。
【0054】
ポリ乳酸基材は、例えば、ポリ乳酸、及び必要に応じて所望する特性に応じた適宜な改質剤、添加剤を用い、二軸押出機などによる連続溶融混練機、又は加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ロール混練機などのバッチ式溶融混練機により、各成分を均一分散させて、ポリ乳酸含有樹脂組成物を調製し、これを、Tダイ法、インフレーション法などの押出法、又はカレンダー法、ポリッシング法などを用いて成膜、冷却固化することにより製造することができる。このような溶融成膜法の中でも、溶融状態の樹脂組成物が2本の金属ロール間の空隙を通過することで所望の厚さに成形できる点で、カレンダー法、ポリッシング法が好ましい。ポリ乳酸基材は、上記方法のほか、射出成形法、圧縮成形法などにより製造することもできる。さらに、一軸延伸あるいは二軸延伸を行っても良い。
【0055】
ポリ乳酸基材には、必要に応じて、その表面に、コロナ放電処理等の各種表面処理を施したり、エンボス加工等の各種表面加工を施したりすることができる。
【0056】
ポリ乳酸基材の厚みとしては、特に制限されず、用途等に応じて適宜選択することができ、一般には、6〜250μm(好ましくは25〜150μm)の範囲から選択することができる。
【0057】
[アンダーコート層]
アンダーコート層としては、ポリ乳酸基材中に含まれる界面活性剤等の剥離剤硬化阻害成分が剥離処理層に移行するのを防止できる層であればよく、種々の樹脂層が挙げられる。樹脂層を構成する樹脂としては、中でも、ポリ乳酸基材に対する密着性、硬化阻害成分の移行防止性等の点で、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0058】
ポリエステル樹脂としては、ポリオール成分とポリカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル樹脂、ラクトンを開環重合して得られるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0059】
前記ポリオール成分としては、2価のアルコール又はフェノール、3価以上のアルコール又はフェノールを使用できる。前記ポリオール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、シクロヘキサンジメタノール類(1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、樹脂の柔軟性等の点から、ジオール成分(特に2価のアルコール)をポリオール成分全体の70モル%以上使用するのが好ましい。
【0060】
前記ポリカルボン酸成分としては、2価又は3価以上のカルボン酸又はその反応性誘導体を使用できる。カルボン酸の反応性誘導体としては、ポリエステルを製造する際に通常用いられる誘導体、例えば、カルボン酸エステル(メチルエステル、エチルエステル等のC1-4アルキルエステル等)、酸無水物などが挙げられる。前記ポリカルボン酸成分として、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸等の脂肪族ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(酸無水物、C1-4アルキルエステル等);1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環式ジカルボン酸又はその反応性誘導体(酸無水物、C1-4アルキルエステル等);テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(酸無水物、C1-4アルキルエステル等)などが挙げられる。これらのポリカルボン酸成分は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、樹脂の耐熱性等の点から、芳香族ポリカルボン酸(特に、芳香族ジカルボン酸)又はその反応性誘導体を、ポリカルボン酸成分全体の50モル%以上用いるのが好ましい。
【0061】
前記ラクトンとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0062】
アンダーコート層は、通常、前記ポリエステル樹脂等の樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液(アンダーコート剤溶液)をポリ乳酸基材表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。
【0063】
前記溶剤としては、樹脂を溶解し、且つポリ乳酸基材に悪影響を与えないものであればよく、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ等の芳香族炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸2−エトキシエチル等のエステル;メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。これらの溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0064】
前記アンダーコート剤溶液中の樹脂(ポリエステル樹脂等)の濃度は、例えば2〜70重量%、好ましくは5〜30重量%である。アンダーコート剤溶液中の樹脂濃度が2重量%より低い場合には、樹脂の塗布量が少なくなり、ポリ乳酸基材と剥離処理層の密着性が悪く、密着不良が発生する場合がある。また、アンダーコート剤溶液中の樹脂濃度が70重量%を超える場合には、アンダーコート剤溶液の粘度が高くなり、取扱性、塗工作業性が低下しやすくなる。
【0065】
アンダーコート剤溶液をポリ乳酸基材表面に塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、マイヤーバー、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等のコーター、押出機、印刷機などを使用できる。
【0066】
前記アンダーコート層の塗布量は、固形分換算(樹脂分)で、例えば、0.1〜5g/m2、好ましくは0.3〜3g/m2である。この塗布量が少なすぎると、ポリ乳酸基材と剥離剤処理層との密着性が低下しやすくなり、逆に多すぎると、厚みのバラツキが発生したり、コスト高となる。アンダーコート層の厚みとしては、例えば、0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μmである。
【0067】
アンダーコート剤としては、市販品を用いることもできる。市販品として、例えば、荒川化学工業社製の商品名「KF−AC350」などが挙げられる。
【0068】
[剥離処理層]
本発明において、剥離処理層を形成する剥離剤としては特に限定されず、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、ポリオレフィン系剥離剤などを用いることができる。これらの中でも、剥離性能、塗工作業性等の点からシリコーン系剥離剤、特に硬化型シリコーン系剥離剤が好ましい。硬化型シリコーン系剥離剤としては、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤、熱硬化型シリコーン系剥離剤等の何れであってもよいが、ポリ乳酸基材は一般に耐熱性が低いので、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いるのが好ましい。前記のように、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤は、基材中に含まれる界面活性剤等の添加剤により硬化が阻害されるが、本発明においては、基材と剥離処理層との間にアンダーコート層を設けるので、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いても硬化反応が円滑に進行し、剥離処理層と基材間の密着性に優れたリリースライナーが得られる。
【0069】
前記紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、紫外線照射により硬化することが可能なシリコーン系剥離剤であれば特に制限されず、各種の硬化タイプ(硬化メカニズム)のものを用いることができる。シリコーン系剥離剤の硬化タイプとしては、例えば、カチオン重合により硬化するカチオン重合型、ラジカル重合により硬化するラジカル重合型、ラジカル付加重合により硬化するラジカル付加型、ヒドロシリル化反応により硬化するヒドロシリル化反応型などがある。紫外線硬化型シリコーン系剥離剤の硬化タイプとしては、特に、カチオン重合型が好適である。すなわち、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を好適に使用できる。
【0070】
なお、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤では、通常、主鎖のポリシロキサン成分中にエポキシ官能性有機基(カチオン重合性基)が1種又は2種以上導入されたエポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分が、1種又は2種以上組み合わせられて用いられている。エポキシ官能性有機基は、ポリシロキサン成分中の主鎖又は側鎖の珪素原子に、直接結合していてもよく、2価の基(例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基等の2価の有機基など)を介して結合していてもよい。エポキシ官能性有機基は、主鎖のポリシロキサン成分中に少なくとも2つ導入されている。
【0071】
具体的には、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤において、エポキシ官能性有機基としては、グリシジル基、グリシドキシ基(グリシジルオキシ基)、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロペンチル基などが挙げられる。
【0072】
エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分は、例えば、ベースポリマーであるポリメチルハイドロジェンシロキサンに、4−ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、7−エポキシ−1−オクテン等のオレフィン性エポキシ単量体を、白金化合物等の触媒を用いて付加反応させることにより得ることができる。なお、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分は、直鎖状、分岐鎖状のいずれの鎖状形態を有していてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0073】
また、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤では、紫外線開裂型開始剤(光重合開始剤)として、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤(オニウム塩系光重合開始剤)を好適に用いることができる。オニウム塩系紫外線開裂型開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩などが挙げられる。オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩が好適である。また、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、アンチモン原子を含有する紫外線開裂型開始剤(アンチモン系紫外線開裂型開始剤)、ホウ素原子を含有する紫外線開裂型開始剤(ホウ素系紫外線開裂型開始剤)を好適に用いることができ、特に、アンチモン原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤や、ホウ素原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤が好適である。
【0075】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いる場合、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤の割合としては、触媒量であれば特に制限されないが、例えば、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分100重量部に対して0.1〜8重量部(好ましくは0.3〜5重量部)の範囲から選択することができる。
【0076】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、無溶剤で用いることもできるが、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分等のポリマー成分が有機溶剤に溶解された状態で用いることもできる。また、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤には、公知乃至慣用の添加剤[例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)など]が適宜配合されていてもよい。また、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤には、剥離力の調整などのために、シリコーンレジン成分が配合されていてもよい。
【0077】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤として市販品を用いることができる。カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤の市販品として、例えば、東芝シリコーン社製の商品名「UV9315」、「UV9430」、「UV9300」、「TPR6500」、「TPR6501」等、信越化学工業社製の商品名「X−62−7622」、「X−62−7629」、「X−62−7655」、「X−62−7600」、「X−62−7660」、「X−62−7634A」等、荒川化学工業社製の商品名「Poly200」、「Poly201」、「RCA200」、「RCA250」、「RCA251」などが挙げられる。
【0078】
剥離剤は、アンダーコート層上に良好な状態で塗工させるため、常温(例えば、20〜25℃、特に23℃)において、10〜2000mPa・s程度の適切な溶液粘度を有していることが好ましい。
【0079】
剥離剤をアンダーコート層上に塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、マイヤーバー、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等のコーター、押出機、印刷機などを使用することができる。剥離剤の塗布後、剥離剤の種類に応じて、加熱、紫外線照射等により硬化させることで、剥離処理層を形成することができる。
【0080】
剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いた場合には、有電極の高圧水銀ランプ、オゾンレスランプ、メタルハライドランプ、無電極マイクロウェーブランプ等の公知の紫外線ランプを用いて紫外線を照射することにより硬化させることができる。
【0081】
剥離剤の塗布量(硬化後)としては、例えば、0.01〜10g/m2程度、好ましくは0.05〜5g/m2、さらに好ましくは0.1〜1g/m2である。剥離剤の塗布量が少なすぎると、剥離力の変動が大きくなりやすく、実用上、問題が生じる場合があり、一方、多すぎると、コストが高くなって経済的に不利である。剥離処理層の厚みとしては、例えば、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μm程度である。
【実施例】
【0082】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0083】
実施例1
リリースライナーの基材(ポリ乳酸基材)として、ユニチカ社製、商品名「テラマック」(二軸延伸ポリ乳酸フィルム、厚み35μm)を用いた。
【0084】
荒川化学工業社製の商品名「KF−AC350」(ポリエステル樹脂系アンダーコート剤)をトルエンで希釈し、固形分濃度5重量%のアンダーコート剤溶液を調製した。上記のポリ乳酸基材の片面に、このアンダーコート剤溶液をマイヤーバー(No.4)にて塗布し、40℃で1分間乾燥して、アンダーコート層[塗布量(固形分)0.4g/m2](厚み0.4μm)を形成した。
次いで、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(信越化学工業社製、商品名「X−62−7600」)100重量部と、カチオン硬化触媒(信越化学工業社製、商品名「CAT−7605」)3重量部とを混合して剥離剤組成物を調製し、これを上記のアンダーコート層の上に、印刷適正試験機(テスター産業社製、商品名「RIテスター」)にて塗工した後、紫外線ランプ(フュージョン社製)にて照度500mW/cm2の紫外線(光量:100mJ/cm2)を照射して硬化させ、剥離処理層(厚み0.1μm)を形成してリリースライナーを得た。
得られたリリースライナーの剥離処理層の表面を人差し指で強くこすって摩擦を与え、ポリ乳酸基材と剥離処理層との密着性を調べた。その結果、剥離処理層のハガレは全く生じなかった。
【0085】
実施例2
荒川化学工業社製の商品名「KF−AC350」(ポリエステル樹脂系アンダーコート剤)をトルエンで希釈し、固形分濃度30重量%のアンダーコート剤溶液を調製し、これを用いてアンダーコート層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、リリースライナーを製造した。なお、アンダーコート層において、塗布量(固形分)は2.4g/m2、厚みは2.5μmであった。
得られたリリースライナーの剥離処理層の表面を人差し指で強くこすって摩擦を与え、ポリ乳酸基材と剥離処理層との密着性を調べた。その結果、剥離処理層のハガレは全く生じなかった。
【0086】
実施例3
荒川化学工業社製の商品名「KF−AC350」(ポリエステル樹脂系アンダーコート剤)をトルエンで希釈し、固形分濃度50重量%のアンダーコート剤溶液を調製し、これを用いてアンダーコート層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、リリースライナーを製造した。なお、アンダーコート層において、塗布量(固形分)は0.4g/m2、厚みは0.4μmであった。
得られたリリースライナーの剥離処理層の表面を人差し指で強くこすって摩擦を与え、ポリ乳酸基材と剥離処理層との密着性を調べた。その結果、剥離処理層のハガレは全く生じなかった。
【0087】
実施例4
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(東芝シリコーン社製、商品名「UV−9300」)100重量部と、カチオン硬化触媒(東芝シリコーン社製、商品名「UV−9310C」)3重量部とを混合して剥離剤組成物を調製し、これを用いて剥離処理層(厚み0.1μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、リリースライナーを製造した。
得られたリリースライナーの剥離処理層の表面を人差し指で強くこすって摩擦を与え、ポリ乳酸基材と剥離処理層との密着性を調べた。その結果、剥離処理層のハガレは全く生じなかった。
【0088】
比較例1
ポリ乳酸基材の表面にアンダーコート層を形成することなく、直接剥離処理層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、リリースライナーを製造した。
得られたリリースライナーの剥離処理層の表面を人差し指で強くこすって摩擦を与え、ポリ乳酸基材と剥離処理層との密着性を調べた。その結果、剥離処理層にハガレが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のリリースライナーによれば、剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いても、ポリ乳酸基材中に含まれる成分による硬化阻害が防止され、基材密着性に優れた剥離処理層が形成され、また、ポリ乳酸基材中に改質剤を含有させることにより、ポリ乳酸基材本来の剛性を保持しつつ、例えば、耐引裂性、耐熱性、滑り性等の特性を向上でき、汎用性に優れ、利用価値の高いリリースライナーとすることができる。したがって、本発明のリリースライナーは、粘着テープ、粘着シート、ラベルなどの粘着面を保護するための剥離フィルム、離型フィルム等として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸基材の少なくとも一方の面にアンダーコート層を介して剥離処理層が設けられていることを特徴とするリリースライナー。
【請求項2】
アンダーコート層の塗布量が、固形分換算で、0.1〜5g/m2である請求項1記載のリリースライナー。
【請求項3】
ポリ乳酸基材が改質剤を含有している請求項1又は2記載のリリースライナー。
【請求項4】
剥離処理層を形成する剥離剤が紫外線硬化型シリコーン系剥離剤である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリリースライナー。
【請求項5】
紫外線硬化型シリコーン系剥離剤がカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤である請求項4記載のリリースライナー。
【請求項6】
アンダーコート層がポリエステル樹脂層である請求項1〜5のいずれか一項に記載のリリースライナー。

【公開番号】特開2012−206509(P2012−206509A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50846(P2012−50846)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】