説明

リリース状態からの自動復帰機構を備えた発進制御機

【課題】複数の駆動源を必要とせず、リリース状態にある開閉バーの復帰動作を自動で行える自動復帰機構を備えた発進制御機の提供。
【解決手段】本体6の上部には、復帰動作中は常時、開閉バー12又はバーホルダ14に当接して開閉バー12をリリース位置から徐々に通常の位置に戻すように案内するガイド部材42が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路の出入口付近に設置されるETC(登録商標)等の交通管制機器において、リリース状態からの復帰を自動で行う自動復帰機構を備えた発進制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の有料道路の出入口におけるETC(登録商標)レーンには、棒状の開閉バーの開閉動作によって車両通行の許可・不許可を運転者に知らせる発進制御機が設置されている。多くの発進制御機では、閉位置(車両通行が不許可の状態)にある開閉バーに車両が接触・衝突した場合に、該車両や発進制御機の深刻な損傷を防止すべく、該開閉バーが略水平方向に回動していわゆるリリース位置(退避位置)に移動できるようになっている。
【0003】
例えば特許文献1には、阻止棒34を支持部材30に回動可能に取り付けるヒンジピン36を、車両の通過方向又は車両の走行路と反対側へ傾斜させ、退避位置へ回動した阻止棒の戻り回動を、重力によるモーメントを利用して防止することを企図した車両用ゲート開閉装置が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、遮断竿6が水平方向に回動して退避位置に移動したときに、スイッチ操作で遮断竿6を垂直方向回動状態に戻すことができる遮断竿復帰装置を備えた通行遮断機が開示されている。
【0005】
一方特許文献3には、車両の通行を規制する開閉バー12が、車両通過方向の前方斜め上方に回動して跳ね上がるように構成された車両通行制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−68886号公報
【特許文献2】特開2011−58331号公報
【特許文献3】特表2010−196367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載のような装置の通常の動作では、阻止棒(遮断竿)は、閉位置では概ね水平状態に片持ちされ、開位置ではその一端が跳ね上がるように動作して概ね垂直状態になる。一方、閉位置にある阻止棒(遮断竿)に車両が衝突した場合、その衝撃を緩和するために、該阻止棒(遮断竿)は概ね水平方向に回動して退避位置に移動する。しかし特許文献1に記載のゲート開閉装置では、退避位置に移動した阻止棒を元の状態に復帰させる操作は手動で行う必要があると解され、作業者の負担が大きい上に復帰に時間がかる。
【0008】
また特許文献2に記載の発明では、退避位置に移動した遮断竿を自動で復帰させることができるが、通常の(垂直方向の)開閉動作を行うための駆動装置3に加え、退避位置にある遮断竿6を垂直方向回動状態に押し戻すための復帰装置5が設けられており、要するに実質2つの駆動源が必要となり、装置のコストアップ及び複雑化につながる。
【0009】
一方、特許文献3に記載の車両通行制御装置は、1つの開閉バー12に対して1つのサーボモータ20のみを使用しているが、開閉バー12の通常の開閉動作と、車両が衝突したときの動作は同一である(いずれの場合も前方斜め上方に跳ね上がる)と解される。従って車両の衝突時に開閉バーが退避位置(リリース状態)に移動することはないので、そもそも復帰機構を設ける必要がないが、復帰動作中は開閉バーが車両通行空間と干渉することになる。さらに特許文献3の装置では、開閉バーの軌道が車両運転者の進行方向成分も含むため、開閉動作中の開閉バーの軌道範囲内には通行車両の存在が許容されないという課題がある。
【0010】
そこで本発明は、複数の駆動源を必要とせず、リリース位置(退避位置)にある開閉バーの復帰動作を自動で行える自動復帰機構を備えた発進制御機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、本体と、該本体に対して駆動軸回りに回転可能に取り付けられたアームと、該アームに対して、前記駆動軸に垂直な回動軸回りに回動可能に取り付けられた開閉バーと、を有し、該開閉バーが、前記駆動軸の駆動によって、略水平に延びて車両の通行を阻止する閉位置と、該閉位置から垂直方向に回転して車両の通行を許可する開位置との間を移動可能に構成されており、かつ、前記閉位置にあるときに前記アームに対して前記回動軸回りに略水平方向に回動してリリース位置に移動可能に構成されている、発進制御機において、鉛直方向よりも前記閉位置にある開閉バーと反対側に傾斜したガイド部分を有するガイド部材が設けられ、該ガイド部材は、前記開閉バーが前記リリース位置にある状態で前記アームが前記駆動軸回りに回転したときに、予め定めた前記アームの復帰動作回転角度範囲内において前記ガイド部分が常時前記開閉バーに当接して、該当接によって前記開閉バーが前記ガイド部材から受ける力によって、前記開閉バーが前記アームに対して前記回動軸回りに回動して前記リリース位置から復帰するように構成されている、発進制御機を提供する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記アームの復帰動作回転角度範囲は、前記開閉バーが前記閉位置にあるときの前記駆動軸の回転角度位置をゼロ度としたときに、75°〜125°の回転角度範囲内に限定される、発進制御機を提供する。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記開閉バーを前記リリース位置に保持するロック機構が前記アーム内に設けられ、前記ロック機構に関連付けられるとともに、前記アームの前記本体に面する面から、該面に対して変位可能に突出する突出部材が設けられ、前記本体の前記アームに面する面には、前記アームが復帰動作回転角度範囲内にあるときに前記突出部材に当接して前記突出部材を変位させる凸部が設けられ、前記突出部材は、前記凸部に当接して変位している間は前記ロック機構を解除するように構成されている、発進制御機を提供する。
【0014】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、前記ガイド部材に当接する前記開閉バーの部位に、自由回転可能なローラが設けられ、前記ガイド部材は、前記アームの復帰動作回転角度範囲内では常時前記ローラに当接するように構成される、発進制御機を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リリース位置からの開閉バーの自動復帰動作を、アームの回転に伴う開閉バーとガイド部材との当接によって行うことができる。従って、自動復帰動作のための駆動源を別途必要とせず、コンパクトかつ低コストの発進制御機が提供される。
【0016】
アームの復帰動作回転角度範囲を75°〜125°の回転角度範囲内とすることにより、開閉バーの復帰動作を車両通行空間外で行うことができ、復帰動作時に開閉バーが車両通行空間内に進入することを防止できる。
【0017】
開閉バーをリリース位置に保持するロック機構に関連付けた突出部材と、本体側に設けた凸部との組み合わせにより、アームの回転動作中に自動的にロック機構を解除することができる。
【0018】
開閉バーに自由回転可能なローラを設け、該ローラに常に当接するようにガイド部材を構成することにより、開閉バーとガイド部材との摩擦を転がり摩擦にして円滑な動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る発進制御機を示す外観斜視図であって、(a)は開閉バーが閉位置にある状態を示し、(b)は開閉バーが開位置にある状態を示し、(c)は開閉バーがリリース位置にある状態を示している。
【図2】開閉バーを保持するバーホルダ及びアームの外観斜視図である。
【図3】(a)開閉バーがリリース位置にある状態の発進制御機の側面図であり、(b)(a)のA−A断面を示す図である。
【図4】(a)復帰動作開始時の発進制御機の側面図であり、(b)(a)のB−B断面を示す図である。
【図5】(a)復帰動作完了時の発進制御機の側面図であり、(b)(a)のC−C断面を示す図である。
【図6】発進制御機の動作を概略的に示す図であって、(a)開閉バーが閉位置にある状態を示し、(b)開閉バーがリリース位置にある状態を示し、(c)復帰動作開始時の状態を示し、(d)復帰動作中の状態を示し、(e)復帰動作完了時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る発進制御機2を示す外観斜視図である。発進制御機2は、地面等の設置面4に固定配置された略直方体形状の本体6と、本体6の車両進入側の側面に、設置面4に略平行(一般に略水平)な回転軸8について回転可能に取り付けられたアーム10と、アーム10に対して所定の角度範囲内で回動可能に設けられた開閉バー12とを有する。図示例では、開閉バー12はその一端がバーホルダ14に固定されていわゆる片持ち式に支持されており、バーホルダ14がアーム10に対して、アーム10の回転軸8に垂直な回動軸16について、少なくとも90°の回動角度範囲内で回動可能に取り付けられている。なお本実施形態では、矢印18で示す方向に車両が通行するものとし、アーム10の回転軸8は車両通行方向18に概ね平行であるとする。
【0021】
アーム10は、図示しない駆動源によって本体6に対して回転駆動される。アーム10の駆動源としては例えば種々の電動機(図示せず)等が使用可能であるが、アーム10の回転角度位置を正確に制御できるサーボモータが好ましい。
【0022】
通常の開閉動作では、開閉バー12は、図1(a)に示すように略水平に延びて車両の通行を阻止する閉位置と、図1(b)に示すように略垂直に延びて車両の通行を許可する開位置との間を、アーム10の回転動作によって垂直方向に移動する。より詳細には、図1(a)の閉位置での本体6に対するアーム10の回転角度位置をゼロ度とすると、図1(b)に示す開位置ではアーム10は、開閉バー12が車両通行の妨げとならない位置に移動するまで回転する。通常、開位置でのアームの回転角度位置は90度に近い角度であり、図示例では85.5度である。この通常の開閉動作では、アーム10に対するバーホルダ14(開閉バー12)の回動角度位置は変化しない。
【0023】
ここで本来であれば、矢印18の方向に進行する車両(図示せず)は、開閉バー12が閉位置(図1(a))にあるときは発進制御機2の側方を通過してはならないのであるが、速度超過や運転者の不注意等の原因により開閉バー12に接触してしまうことがある。このような場合、車両又は発進制御機の深刻な損傷を防止するために、図1(c)に示すように、開閉バー12がアーム10に対して略水平方向に約90度回動して、いわゆるリリース位置(退避位置)に移動する。つまりバーホルダ14は、開閉バー12に所定値以上の力が略水平方向に作用したときは、アーム10に対して略90度水平方向に回動して開閉バー12を車両から退避させるとともに、該リリース位置から開閉バー12が走行路側に回転して(跳ね戻って)車両と再接触しないように、後述するロック機構によって上記リリース位置に保持される。
【0024】
次に、図1(c)に示すリリース位置から、開閉バー12を復帰させるための復帰機構について説明する。図2に示すように、アーム10の本体6に面する面20には、本体6の回転軸8(図3(b)参照)に係合する取り付け孔22を有し、これによりアーム10は回転軸8の回転に伴って本体6に対して回転する。一方、開閉バー12を固定保持するバーホルダ14は、回動軸16回りに回動可能となるようにアーム8に枢着されており、少なくとも、開閉バー12が回転軸8の方向に略垂直に延びる通常角度位置(図2の状態)と、開閉バー12が回転軸8の方向に略平行に延びるリリース位置(図1(c)の状態)との間を(すなわち少なくとも約90度)回動可能である。またアーム10は、面20から本体6側に突出する突出部材24を有する。
【0025】
次に、開閉バー12をリリース状態から復帰させるまでの動作を、図3〜図5を参照して説明する。図3(a)は、開閉バー12がリリース位置にあるとき(図1(c))の発進制御機2を、車両進行方向(矢印18)にみた外観側面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面を示す図である。図2に示した突出部材24は、図3(b)に示すように本体6に接離する方向(図3(b)では上下方向)に可動に構成されている。突出部材24は、後述する本体6上の凸部40に乗り上げて変位する関係上、曲面を有することが好ましく、図示例では円板状部材として形成されているが、球状又は半球状の部材としてもよい。
【0026】
突出部材24は、図3(b)の破線内に示すようなカム及びラッチを利用したロック機構に関連付けられており、具体的には、アーム10の内部にて第1枢軸26回りに回転可能に設けられた第1ラッチ28の一端に接続されている。第1枢軸26に関して第1ラッチ28の一端と反対側の他端は、アーム10内部をその長手方向に延びるように配置されたリンク部材30を係止するようになっており、具体的にはリンク部材30に設けたピン状部材32を係止する。リンク部材30は、第1枢軸26に係合する長孔34を有しており、これによりアーム10内部をその長手方向に変位可能である。さらにリンク部材30は、その変位によってバーホルダ14がアーム10に対して回動軸16回りに回動できるようになっている。詳細には、リンク部材30の一端はバーホルダ14と実質一体のタブ状部材36に、第2枢軸38を介して枢着されている。但し、図3(b)に示すように第1ラッチ28がピン状部材32を係止している間は、リンク部材30はバーホルダ14をアーム10に対して回動させるように変位(図3(b)では右側に変位)できないので、開閉バー12はリリース位置に保持されている。
【0027】
図4(a)は、復帰動作を開始したとき(後述する図6(c)参照)の発進制御機2を、車両進行方向(矢印18)にみた外観側面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B断面を示す図である。図4(a)に示すように、開閉バー12がリリース位置にある状態のまま、アーム10が本体6に対して(例えば図3の状態から80度)回転していくと、図4(b)の破線内に示すように、アーム10に設けた突出部材24が、本体6の側面に設けた凸部40に乗り上げるように係合する。なお凸部40は、復帰動作中に突出部材24をアーム10に対して変位させることができるものであればどのような形状でもよいが、より円滑な動作のためにスロープ状とすることが好ましい。突出部材24の変位により、突出部材24に接続された第1ラッチ28が第1枢軸26について(図示例では反時計回りに)回転し、第1ラッチ28がリンク部材30のピン状部材32から離隔し、開閉バー12をリリース位置に保持するロック機構は解除された状態となる。但しこの状態では、バーホルダ14(開閉バー12)はアーム10に対して回動可能な状態ではあるが、開閉バー12はその自重等によってリリース位置に維持されている。
【0028】
図5(a)は、復帰動作が完了したとき(後述する図6(e)参照)の発進制御機2を、車両進行方向(矢印18)にみた外観側面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C断面を示す図である。図5(a)等に示すように、本体6の上部には、復帰動作中は常時、開閉バー12又はバーホルダ14に当接して開閉バー12をリリース位置から徐々に通常の位置(開位置)に戻すように案内するガイド部材42が設けられている。すなわちガイド部材42は、予め定めたアーム10の復帰動作角度範囲内(例えば85度〜95度)において、復帰動作開始時(アーム回転角85度)から復帰動作完了時(アーム回転角95度)まで開閉バー12又はバーホルダ14に当接して、復帰動作完了時には開閉バー12がバーホルダ14に対して略90度回動(図5(b))の状態となるように開閉バー12を案内するように設計されている。
【0029】
ガイド部材42の形状は、復帰動作中に常時開閉バー12又はバーホルダ14に当接し、駆動軸8の回転に従って、バーホルダ14に対する開閉バー12の姿勢をリリース位置から開位置に変更できる限りにおいてどのような形状でもよいが、通常は、図5(a)等に示すように、鉛直方向について、閉位置にある開閉バー12と反対側に傾斜している直線状又は曲線状のガイド部分を有する部材である。ガイド部材がこのような形状であると、ガイド部材42のガイド部分に当接している開閉バー12を保持するバーホルダ14には、アーム10に対する回動角を90度(リリース位置)からゼロ度(通常位置)に変化させるような力(少なくとも分力)が作用するので、復帰動作のための駆動源を別途用意せずとも、開閉バーの姿勢をリリース位置から開位置に変更できる。
【0030】
またガイド部材42は、開閉バー12と当接・摺動する関係上、開閉バー12との接触面積を低減すべく、円柱・円筒等の、曲面の外表面を有することが好ましく、例えばパイプ部材により作製可能である。またガイド部材42と当接する開閉バー12の部位には、ガイド部材42との摩擦をより低減すべく、自由回転可能なローラ等を設け、ガイド部材42と開閉バー12との接触面積を減らすとともに、ガイド部材42と開閉バー12との摩擦を摺動摩擦ではなく転がり摩擦となるようにしてもよい。さらに、ローラ等を用いた場合にその効果を十分に生かすべく、ガイド部材42は復帰動作中は常に該ローラに当接するような形状に構成される。このようなガイド部材42の形状は、開閉バー12やバーホルダ14の各部の寸法から幾何学的に計算して求めることができる。
【0031】
図5の例では、復帰開始時(図4(a))のアーム10(回転軸8)の回転角度を85度とし、復帰完了時(図5(a))の回転角度を95度としているが、これは一例である。例えば、復帰動作開始時の角度をより小さくしてもよいが、安全上、開閉バー12が復帰動作中に車両通行空間内に進入しないようにすることが望まれ、その意味では復帰動作開始時のアーム回転角は好ましくは75度以上、より好ましくは80度以上、さらに好ましくは85度以上である。なお復帰動作開始時のアーム回転角度最適値は、車両通行空間の形状に応じて決定できる。また復帰動作完了時のアーム10の回転角は、通常の開位置となる角度(例えば85.5度)よりもいくらか大きくすることが好ましく、例えば90度〜125度の範囲から選定することが好ましい。このような復帰動作開始時や復帰動作完了時の角度位置の変更は、ガイド部材42の形状変更により容易に行うことができる。
【0032】
上述のように図5は、復帰動作完了時を示しているが、バーホルダ14とアーム10との位置関係は通常の開閉動作時のものと等しい。ここで通常動作時は、開閉バー12に車両が接触する等の衝撃が加わらない限り、開閉バー12が容易にリリース位置に移動しないようにする必要がある。そこで本実施形態では、図5(b)の破線内に示すように、バーホルダ14を通常位置に保持する掛止機構が設けられる。詳細には、リンク部材30が連結されるタブ状部材36に第2ラッチ44を設け、開閉バー12(バーホルダ14)が通常位置にあるときは第2ラッチ44がストッパ部材46に掛止される。ストッパ部材46は図示例では、平行配置された略同一形状の2つの板状部材48の間を延びるピン状部材であり、板状部材48及びピン状部材46は一体的に、アーム10内に設けた第3枢軸50回りに回転可能になっている。板状部材48は、スプリング52によってバーホルダ14の回動方向(時計回り方向)に付勢されており、さらに板状部材48に設けた切り欠き54とアーム10内部に固定した突出部(図示例ではピン状部材)56とが係合することにより、通常は図5(b)に示す位置に保持されている。
【0033】
ここで、開閉バー12が閉位置にあるとき(従ってアーム10とバーホルダ14との位置関係は図5(b)と同等)に、車両等が接触して一定以上の負荷が開閉バー12に作用すると、バーホルダ14のタブ状部材36には回動軸16回りにリリース位置に向けて(反時計回りに)回転しようとする力が作用し、該力がスプリング52の付勢力に逆らって板状部材48を第3枢軸50回りに回転させ、これによりピン状部材46と第2ラッチ44とが掛止しなくなり、バーホルダ14及び開閉バー12が図4(b)に示すようなリリース位置に移動する。スプリング52のバネ定数を適宜設定することにより、どの程度以上の力が開閉バー12に作用したときに開閉バー12がリリース位置に移動するかを設定できる。
【0034】
図6は、上述の復帰機構を有する発進制御機2の復帰動作を、模式的に説明する図である。先ず図6(a)は、図1(a)同様、開閉バー12が閉位置にある状態を示している。次に図6(b)は、図1(c)同様、開閉バー12が車両接触等の理由により、リリース位置に移動した状態を示している。
【0035】
次の図6(c)は、図4に相当し、開閉バー12の復帰動作開始時、すなわちアーム10が所定角度(例えば80度)回転し、開閉バー12がガイド部材42に当接した状態を示している。この状態では、開閉バー12がガイド部材42に当接すると略同時に、図4(b)に示したように、ロック機構が解除されてバーホルダ14がリリース位置から通常の位置に回動可能な状態となる。
【0036】
図6(d)は、復帰動作中の状態(例えばアーム10が90度回転した状態)、換言すれば図4と図5の間の状態に相当する状態を示している。上述のように復帰動作中はガイド部材42と開閉バー12又はバーホルダ14とは常時当接しており、アーム10の回転に伴って、ガイド部材42から受ける力によって開閉バー12がリリース位置から開位置へ徐々に移動し(案内され)ていく。
【0037】
最後に、図5に概ね相当する図6(e)に示すように、アーム10が所定角度(例えば125度)回転すると、開閉バー12が通常の状態、すなわちアーム10の長手方向と略同一方向に延びる状態に保持され、復帰動作が完了する。
【0038】
図示していないが、本発明に係る発進制御機2には、開閉バー12がリリース位置に移動したことを検知する検知手段や、開閉バー12がリリース位置に移動したことを該検知手段が検知したときに、発進制御機2から離れたブース内等に居る作業者にアラームを発するアラーム手段を設けることができる。また上述の復帰動作は、アラームを受けた作業者がブース内等から遠隔操作にて発進制御機2に指示して行ってもよいし、上記検知手段の検知結果に基づいて発進制御機2が、作業者の指示を待たずに自動で行ってもよい。
【0039】
上述の実施形態では、開閉バー12はバーホルダ14を介してアーム10に接続されているが、バーホルダ14を省略して直接、アーム10に対して回動可能に取り付けることも可能である。またガイド部材42は本体6の上部に設けられているが、本体6に直接設けられる必要はなく、例えば本体6の近傍に別途自立するように設けてもよい。
【0040】
本発明では、リリース位置からの開閉バー12の復帰動作を行う際、アーム10の回転動作のための(サーボモータ等の)駆動源以外の駆動源や駆動機構を必要としない。換言すれば、発進制御機2に設ける駆動源はアーム10を回転させるためのもののみとすることができる。従って本発明によれば、開閉バーの復帰動作を自動で行える構成でありながら、構成要素の少ないコンパクトで低コストの発進制御機が提供される。
【符号の説明】
【0041】
2 発進制御機
6 本体
10 アーム
12 開閉バー
14 バーホルダ
24 突出部材
30 リンク部材
36 タブ状部材
40 凸部
42 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体に対して駆動軸回りに回転可能に取り付けられたアームと、該アームに対して、前記駆動軸に垂直な回動軸回りに回動可能に取り付けられた開閉バーと、を有し、該開閉バーが、前記駆動軸の駆動によって、略水平に延びて車両の通行を阻止する閉位置と、該閉位置から垂直方向に回転して車両の通行を許可する開位置との間を移動可能に構成されており、かつ、前記閉位置にあるときに前記アームに対して前記回動軸回りに略水平方向に回動してリリース位置に移動可能に構成されている、発進制御機において、
鉛直方向よりも前記閉位置にある開閉バーと反対側に傾斜したガイド部分を有するガイド部材が設けられ、
該ガイド部材は、前記開閉バーが前記リリース位置にある状態で前記アームが前記駆動軸回りに回転したときに、予め定めた前記アームの復帰動作回転角度範囲内において前記ガイド部分が常時前記開閉バーに当接して、該当接によって前記開閉バーが前記ガイド部材から受ける力によって、前記開閉バーが前記アームに対して前記回動軸回りに回動して前記リリース位置から復帰するように構成されている、発進制御機。
【請求項2】
前記アームの復帰動作回転角度範囲は、前記開閉バーが前記閉位置にあるときの前記駆動軸の回転角度位置をゼロ度としたときに、75°〜125°の回転角度範囲内に限定される、請求項1に記載の発進制御機。
【請求項3】
前記開閉バーを前記リリース位置に保持するロック機構が前記アーム内に設けられ、前記ロック機構に関連付けられるとともに、前記アームの前記本体に面する面から、該面に対して変位可能に突出する突出部材が設けられ、前記本体の前記アームに面する面には、前記アームが復帰動作回転角度範囲内にあるときに前記突出部材に当接して前記突出部材を変位させる凸部が設けられ、前記突出部材は、前記凸部に当接して変位している間は前記ロック機構を解除するように構成されている、請求項1又は2に記載の発進制御機。
【請求項4】
前記ガイド部材に当接する前記開閉バーの部位に、自由回転可能なローラが設けられ、前記ガイド部材は、前記アームの復帰動作回転角度範囲内では常時前記ローラに当接するように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発進制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49985(P2013−49985A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188731(P2011−188731)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5130390号(P5130390)
【特許公報発行日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【出願人】(000176730)三菱プレシジョン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】