説明

リング網における通信装置および通信制御方法

【課題】複数のリングを接続する通信装置において実施されるべき、複数のリングを備えたリング型ネットワークの事情を考慮した帯域制御の方法は十分提案されてこなかった。
【解決手段】本発明の実施の1形態であるリング接続装置12は、複数のリング網のうち一のリング網へ伝送されるべきフレームを複数のリング網のそれぞれから受信するフレーム受信部24と、上記一のリング網内においてある機器から別の機器へ伝送されるべきフレームである通過フレームと、上記一のリング網とは異なる別のリング網の機器から上記一のリング網の機器へ伝送されるべきフレームである跨ぎフレームとのそれぞれを、予め個別に定められた帯域の範囲内で上記一のリング網へ送出するフレーム送信部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ通信技術に関し、特に、リング型ネットワークにおいてデータを伝送する通信装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レイヤ2スイッチ等の通信装置では、入力ポートもしくは出力ポートを単位として、伝送すべきデータに対する帯域制御が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/082652号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のリングを備えたリング型ネットワークでは、それら複数のリングを接続する通信装置が設置されることがある。このような通信装置において実施されるべき、複数のリングを備えたリング型ネットワークの事情を考慮した帯域制御の方法はこれまで十分提案されてこなかった。
【0005】
本発明は、本発明者の上記課題認識に基づいてなされたものであり、その主たる目的は、複数のリング網を相互接続する装置において好適な帯域制御を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のリング網における通信装置は、複数のリング網を相互接続する装置であって、複数のリング網のうち一のリング網へ伝送されるべきフレームを複数のリング網のそれぞれから受信するフレーム受信部と、一のリング網内においてある機器から別の機器へ伝送されるべきフレームである通過フレームと、一のリング網とは異なる別のリング網の機器から一のリング網の機器へ伝送されるべきフレームである跨ぎフレームとのそれぞれを、予め個別に定められた帯域の範囲内で一のリング網へ送出するフレーム送信部とを備える。
【0007】
「複数のリング網を相互接続する装置」は、OSI参照モデルのデータリンク層で経路を選択するレイヤ2スイッチやブリッジであってもよく、ネットワーク層で経路を選択するレイヤ3スイッチやルータであってもよい。「リング網」は、トークンバケットやトークンリングをアクセス制御方式とするリング型ネットワークでもよい。「フレーム」は、リングネットワークにおける伝送単位となるデータフレームであってもよく、例えば、MACフレーム(Media Access Control frame)であってもよい。「帯域」は、フレーム送出のための伝送路容量、言い換えればビットレートであってもよい。なお、通過フレームに割り当てられる帯域と、跨ぎフレームに割り当てられる帯域とは、同じ広さの帯域であってもよく、互いに異なる広さの帯域であってもよい。
【0008】
この態様によると、通過フレームと跨ぎフレームとを個別に帯域制御できる。すなわちリング内通信のトラヒックと、リング間通信のトラヒックとを別のポリシーに基づき帯域制御できる。したがって、通過フレームおよび跨ぎフレームの送出のために確保すべき帯域リソース量が低減され、網リソースの効率的な使用を実現できる。例えば、通過フレームと跨ぎフレームとのそれぞれに対して異なる広さの帯域を割り当てることにより、フレームの種別に応じた優先制御を行うことができる。
【0009】
フレーム受信部は、フレームの送出元であるリング網の識別情報を当該フレームに対応づけ、フレーム送信部は、識別情報により特定されるフレームの送出元であるリング網と、一のリング網との異同に応じて、フレームが通過フレームか跨ぎフレームかを識別してもよい。
【0010】
フレーム受信部およびフレーム送信部には、接続するリング網があらかじめ設定されている。したがってこの態様によれば、送出すべきフレームが、通過フレームか跨ぎフレームかを通信装置内部で容易に識別可能となる。
【0011】
フレーム受信部は、フレームの送出元であるリング網の識別情報を当該フレームのデータとして付加し、フレーム送信部は、フレームを一のリング網へ送出する前に、フレームのデータから識別情報を除外してもよい。
【0012】
この態様によれば、リング網の識別情報がフレームのデータに付加されるため、フレームに対応づけられたリング網の識別情報をフレーム送信部へ容易に通知できる。また、フレーム種別ごとの帯域制御に必要なリングIDに関する処理は、通信装置内部で完結する。言い換えれば、通信装置における帯域制御のために、通信装置の外部の装置が新たな機能を備える必要がない。
【0013】
フレーム送信部は、一のリング網における第1の方向へフレームを送出する第1の送信部と、一のリング網における第1の方向とは異なる第2の方向へフレームを送出する第2の送信部と、を有してもよい。第1および第2の送信部のそれぞれは、第1の方向へ送出された跨ぎフレームと、第2の方向へ送出された跨ぎフレームとの合計が、跨ぎフレームに対して設定された帯域の範囲内となるように、跨ぎフレームを一のリング網へ送出してもよい。
【0014】
第1の方向と第2の方向は、同一のリング網における反対方向であってもよい。「第1の方向へ送出された跨ぎフレームと、第2の方向へ送出された跨ぎフレームとの合計」は、その合計に基づき決定される帯域、例えば両方向へ送出された跨ぎフレーム全体でのビットレートであってもよい。この態様によれば、通信装置から1つのリング網に対してデータを送出するインタフェースが複数存在する場合、各インタフェースでのデータ送出量の合計に対する帯域制御を実現できる。
【0015】
第1および第2の送信部のそれぞれは、一のリング網へ送出すべき跨ぎフレームがユニキャストフレームである場合に、当該フレームのデータ量を相互に通知してもよい。言い換えれば、送出すべき跨ぎフレームがマルチキャストフレームやブロードキャストフレームである場合は、そのフレームのデータ量を相互に非通知としてもよい。
【0016】
データリンク層以上の階層にて経路を選択する通信装置において、ユニキャストフレームは、同一のリング網に対する複数のインタフェースのうち一方からのみ出力される。したがって、ユニキャストフレームは、送出データ量を相互に通知する対象として好適である。この態様によれば、第1および第2の送信部のそれぞれは、ユニキャストフレームのデータ量を相互に通知し合うことで、第1の方向へ送出された跨ぎフレームと、第2の方向へ送出された跨ぎフレームとの合計を導出できる。
【0017】
第1および第2の送信部のそれぞれは、一のリング網へ送出すべき跨ぎフレームがユニキャストフレームである場合に当該ユニキャストフレームをともに受け付け、当該ユニキャストフレームの宛先に応じて、いずれかの送信部が当該ユニキャストフレームを一のリング網へ送出してもよい。この態様によれば、跨ぎフレームがユニキャストフレームであっても、第1および第2の送信部の双方がそのユニキャストフレームを受け付けるため、第1の送信部と第2の送信部との間でデータ量を通知することが不要となる。これにより、通信装置の実装が容易化される。
【0018】
本発明の別の態様は、リング網における通信制御方法である。この方法は、複数のリング網を相互接続する方法であって、複数のリング網のうち一のリング網へ伝送されるべきフレームを複数のリング網のそれぞれから受信する受信ステップと、一のリング網内においてある機器から別の機器へ伝送されるべきフレームである通過フレームと、一のリング網とは異なる別のリング網の機器から一のリング網の機器へ伝送されるべきフレームである跨ぎフレームとのそれぞれを、予め個別に定められた帯域の範囲内で一のリング網へ送出する送信ステップとを備える。この態様においても上述の効果と同様の効果を奏する。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のリング網を相互接続する装置において好適な帯域制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態である通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1のリング接続装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2の第1の接続部の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】ID付与部から送出されるMACフレームの模式図である。
【図5】フレーム受信部およびスイッチ部の動作を示すフローチャートである。
【図6】フレーム送信部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、その構成を説明する前に、まず概要を説明する。
従来の通信装置においては、入力ポートもしくは出力ポートを単位として帯域制御が実行され、入力されたデータフレームに付与されたVLAN(Virtual LAN)タグやIPヘッダのToS情報等をもとにクラス分けを実施し、入力パケットのクラスに応じた帯域制御を実施していた。
【0023】
複数のリング網を相互接続する通信装置において、入力ポートもしくは出力ポートを単位として帯域制御が実行される場合、第1のリング網内において伝送すべきデータフレーム(以下、「通過フレーム」とも呼ぶ。)と、第1のリング網とは異なる第2のリング網から第1のリング網へ伝送すべきデータフレーム(以下、「跨ぎフレーム」とも呼ぶ。)とを区別した帯域制御の実現は困難である。第1および第2のリング網のそれぞれから入力されたデータフレームには通過フレームと跨ぎフレームとが混在しており、また出力ポートは同一であるため、通過フレームと跨ぎフレームとの区別が困難だからである。
【0024】
したがって、これまでの通信装置では、通過フレームも跨ぎフレームも同じフレームとして、同一の帯域制御ポリシーに基づいて帯域制御が実行された。その結果、本来は不要な帯域が確保される必要が生じていた。なお、本明細書における「帯域」もしくは「帯域幅」とは伝送路容量を意味し、例えば、通信装置からフレームを送出する際のビットレートを意味している。
【0025】
上記の問題を具体的に説明する。第1のリング、第2のリング、第3のリングからなるリング型ネットワークにおいて、第1〜第3のリングを相互接続する通信装置を考える。このとき、第1のリング内においてある機器から別の機器へのデータ伝送に確保すべき伝送路容量、すなわち通過フレームに対する伝送路容量を100Mbpsとする。また、第2のリングから第1のリング、および、第3のリングから第1のリングへのデータ伝送に確保すべき伝送路容量、すなわち跨ぎフレームに対する伝送路容量を10Mbpsとする。
【0026】
この場合、確保すべき伝送路容量は、単純に110Mbpsとはならない。通過フレームと跨ぎフレームとの区別がなされないため、跨ぎフレームで110Mbpsを占有してしまう場合があるからである。したがって、通過フレームに対する伝送路容量を確保するために、さらに大きな伝送路容量が確保される必要が生じる。例えば、跨ぎフレームについて想定される最大の伝送路容量を確保した上で、さらに通過フレームのための伝送路容量を確保する必要がある。結果、ネットワークのコストが増大することとなる。
【0027】
以下、複数のリングを相互接続する通信装置であるリング接続装置を提案する。このリング接続装置は、複数のリングのそれぞれから受信したフレームについて、各フレームが通過フレームか跨ぎフレームかを識別する。そして、通過フレームと跨ぎフレームとのそれぞれに対して、互いに異なる帯域制御ポリシーに基づいて個別に帯域制御することで上記問題を解決する。なお、具体的な帯域制御手法は、公知の手法が採用されればよく、例えばポリシングやシェーピングが採用されてもよい。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態である通信システムの構成を示す。通信システム100は、第1のリング10aと第2のリング10bとが接続されたリング型ネットワークである。第1のリング10aと第2のリング10bとは、地理的に異なるエリアに存在する各種機器と接続される。
【0029】
図1の第1のリング10aには、レイヤ2スイッチ(以下、「L2SW」とも呼ぶ。)14a、L2SW14b、リング接続装置12が接続され、L2SW14aおよびL2SW14bにはユーザ端末が接続される。また、第2のリング10bには、L2SW14c、L2SW14d、リング接続装置12が接続され、L2SW14cおよびL2SW14dにはユーザ端末が接続される。リング接続装置12は、第1のリング10aと第2のリング10bとを相互接続するレイヤ2スイッチであり、通過フレームおよび跨ぎフレームを中継する。
【0030】
通信システム100における通過フレームには、L2SW14aに接続されたユーザ端末と、L2SW14bに接続されたユーザ端末との間で送受されるMACフレームが該当する。また、L2SW14cに接続されたユーザ端末と、L2SW14dに接続されたユーザ端末との間で送受されるMACフレームも該当する。また、通信システム100における跨ぎフレームには、L2SW14aまたはL2SW14bに接続されたユーザ端末と、L2SW14cまたはL2SW14dに接続されたユーザ端末との間で送受されるMACフレームが該当する。
【0031】
図2は、図1のリング接続装置12の機能構成を示すブロック図である。本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0032】
リング接続装置12は、第1の接続部20aと、第2の接続部20bと、第3の接続部20cと、第4の接続部20dと、スイッチ部22とを備える。第1の接続部20aおよび第2の接続部20bは第1のリング10aとのインタフェース機能を提供し、第3の接続部20cおよび第4の接続部20dは第2のリング10bとのインタフェース機能を提供する。第1の接続部20a〜第4の接続部20dのそれぞれは、通過フレームおよび跨ぎフレームを受信するフレーム受信部24と、通過フレームおよび跨ぎフレームを送出するフレーム送信部26とを有する。第1の接続部20a〜第4の接続部20dのそれぞれは、ラインカードとして実装されてもよい。
【0033】
なお、第1の接続部20aのフレーム受信部24は、第1のリング10aにおいて第1の方向、例えば図1における時計回りの方向で伝送されるMACフレームを受信する。第1の接続部20aのフレーム送信部26は、第1のリング10aにおいて第2の方向、例えば図1における反時計回りの方向で伝送されるMACフレームを送出する。これに対し、第2の接続部20bのフレーム受信部24は、第1のリング10aにおいて第2の方向で伝送されるMACフレームを受信する。第2の接続部20bのフレーム送信部26は、第1のリング10aにおいて第1の方向で伝送されるMACフレームを送出する。同様に、第3の接続部20cと第4の接続部20dとのそれぞれもまた、第2のリング10bにおいて互いに異なる方向でMACフレームを送受信する。
【0034】
また、第1のリングに対して送出されるMACフレームのうちユニキャストフレームは、第1の接続部20aのフレーム送信部26、または、第2の接続部20bのフレーム送信部26のいずれかから送出される。これに対して、マルチキャストフレームおよびブロードキャストフレームの場合は、双方のフレーム送信部26から送出される。すなわち、第1のリング10aにおける時計回り方向および反時計回り方向の両方に送出される。第2のリングに対して送出されるMACフレームについても同様である。
【0035】
スイッチ部22は、図示しないMACアドレステーブルを保持し、MACフレームに対する経路制御を実行する。具体的には、MACアドレステーブルを参照し、第1の接続部20a〜第4の接続部20dにて受信されたMACフレームについて、その宛先MACアドレスにしたがって送出先となる接続部を決定する。そして、送出先となる接続部に該当する第1の接続部20a〜第4の接続部20dの少なくとも1つに対して、そのMACフレームを送出する。
【0036】
図3は、図2の第1の接続部20aの詳細構成を示すブロック図である。フレーム受信部24は、フレーム検出部28と、ID付与部30とを含む。フレーム送信部26は、送信実行部32と、帯域制御部34とを含む。
【0037】
フレーム検出部28は、第1のリング10aを流れるビット列からMACフレームを検出して取得する。ID付与部30は、MACフレームを受信したリング、すなわち第1のリング10aに対してあらかじめ定められた所定のIDを、そのMACフレームのヘッダ部に付加してスイッチ部22に送出する。
【0038】
図4は、ID付与部30から送出されるMACフレームの模式図である。同図の「MAC−DA」は宛先MACアドレス、「MAC−SA」は送信元MACアドレスである。これらは、例えば、L2SW14aやL2SW14bと接続されたユーザ端末において設定される。「VLAN−ID」はユーザ端末を仮想的にグループ化するためのVLANのIDである。これらは、例えば、L2SW14aやL2SW14bにおいて設定される。「リングID」は、ID付与部30において付加された、MACフレームの伝送元のリングを示す識別情報である。「ペイロード」はMACフレームのデータ本体であり、例えばIPパケットである。なお、同図において、TPIDや他のVLANタグ等についてはその記載を省略しているが、適宜MACフレームに含まれてもよい。図3に戻る。
【0039】
送信実行部32は、後述する帯域制御部から送出されたMACフレーム(通過フレームおよび跨ぎフレーム)のビット列を第1のリング10aに送出する。帯域制御部34は、スイッチ部22から受け付けたMACフレームに対して、所定の帯域制御ポリシーに基づいて帯域制御処理を実行する。帯域制御部34は、フレームバッファ部36と、フレーム振分部38と、フレーム読出し部40と、帯域設定同期部42とを含む。
【0040】
フレームバッファ部36は、通過フレームを一時的に保持するためのキューである通過フレームキューと、跨ぎフレームを一時的に保持するためのキューである跨ぎフレームキューとを備える記憶領域である。
【0041】
フレーム振分部38は、スイッチ部22からMACフレームを受け付ける。そのMACフレームのリングIDと、送信実行部32においてフレーム送出先となるリングのID、ここでは第1のリング10aのIDとが一致する場合、フレーム振分部38は、そのMACフレームを通過フレームとして識別する。そして、そのMACフレームを通過フレームキューに記憶させる。受け付けたMACフレームのリングIDと第1のリング10aのIDとが異なる場合、フレーム振分部38は、そのMACフレームを跨ぎフレームとして識別する。そして、そのMACフレームを跨ぎフレームキューに記憶させる。
【0042】
フレーム読出し部40は、通過フレームに対してあらかじめ定められた上限ビットレートの範囲内となるように、通過フレームキューから通過フレームを読み出して送信実行部32に送出する。また、跨ぎフレームに対してあらかじめ定められた上限ビットレートの範囲内となるように、跨ぎフレームキューから跨ぎフレームを読み出して送信実行部32に送出する。典型的には、通過フレームに対する上限ビットレートは、跨ぎフレームに対する上限ビットレートより大きく設定される。ただし、それぞれの上限ビットレートは、通信システム100に対するユーザの要求条件に応じて適宜決定されてよい。
【0043】
なお、フレーム振分部38は、スイッチ部22から受け付けたMACフレームの種別、すなわち通過フレームか跨ぎフレームかを識別後、そのMACフレームをキューに記憶させる前に、そのMACフレームからリングIDを削除することが望ましい。またはこれに代えて、フレーム読出し部40もしくは送信実行部32は、MACフレームからリングIDを削除することが望ましい。これにより、リングに送出されるMACフレームは、リングIDが除外された通常のMACフレームとなる。その結果、通信システム100における他の装置では、このリングIDに対応するための特別の手段が不要となる。
【0044】
帯域設定同期部42は、フレーム読出し部40においてフレームバッファ部36から読み出されたMACフレーム(通過フレームおよび跨ぎフレーム)がユニキャストフレームであるか否かを、その宛先MACアドレスに基づき判定する。読み出されたMACフレームがユニキャストフレームである場合、帯域設定同期部42は、同一のリングにMACフレームを送出する他の接続部、すなわち第2の接続部20bの帯域設定同期部42に対して、読み出されたMACフレームのデータ量を通知する。なお、通過フレームのデータ量と跨ぎフレームのデータ量とはそれぞれ別個に通知される。
【0045】
また、帯域設定同期部42は、第2の接続部20bの帯域設定同期部42から、第2の接続部20bにおいて第1のリング10aに送出するMACフレーム(通過フレームおよび跨ぎフレーム)のデータ量の通知を受け付ける。帯域設定同期部42はそのデータ量の情報をフレーム読出し部40に通知し、フレーム読出し部40はフレームバッファ部36からの読出しの上限ビットレートを調整する。
【0046】
第2の接続部20bにおいて送出される跨ぎフレームのデータ量の通知を、第1のリング10aのフレーム読出し部40が受け付けた場合を説明する。この場合、フレーム読出し部40は、通知された跨ぎフレームのデータ量と、自身が読み出した跨ぎフレームのデータ量との合計により定まるビットレートが、跨ぎフレームに対してあらかじめ定められた上限ビットレートの範囲内となるように、跨ぎフレームキューから跨ぎフレームを読み出すことになる。通過フレームについても同様の処理が別個に実行される。
【0047】
例えば、第1のリング10aへ送出する跨ぎフレームに対する上限ビットレートが10Mbpsである場合を考える。第2の接続部20bからの通知がないとき、フレーム読出し部40において、単位時間(例えば100μs)当たりの跨ぎフレームの読出し上限量は1000byteである。ここで、第2の接続部20bから跨ぎフレームの読出し量として400byteが通知されると、フレーム読出し部40は、単位時間当たりの読出し上限量を600byteに調整する。跨ぎフレームを次に読み出す際には、そのときに通知されたデータ量に応じて、単位時間当たりの読出し量を再調整する。
【0048】
このように、同一のリングに対して通過フレームおよび跨ぎフレームを送出する複数の接続部それぞれの帯域設定同期部42は、通過フレームの送出データ量および跨ぎフレームの送出データ量を相互に通知し合う。これにより、複数の接続部のそれぞれから送出される通過フレームの合計量に対する帯域制御、および、跨ぎフレームの合計量に対する帯域制御が実現される。
【0049】
なお図3では第1の接続部20aの機能構成を示したが、第2の接続部20b、第3の接続部20c、第4の接続部20dの機能構成も同様である。ただし、第3の接続部20cおよび第4の接続部20dのフレーム検出部28は第2のリング10bからMACフレームを取得し、送信実行部32は第2のリング10bに対してMACフレームを送出する。また、第3の接続部20cおよび第4の接続部20dの帯域設定同期部42は、第2のリング10bに送出するMACフレームのデータ量を相互に通知する。
【0050】
以上の構成によるリング接続装置12の動作を以下説明する。
図5は、フレーム受信部24およびスイッチ部22の動作を示すフローチャートである。フレーム検出部28は、接続されたリングからMACフレームを取得する(S10)。ID付与部30は、取得されたMACフレームのヘッダ領域に、そのMACフレームの伝送元であるリングのIDを付加して、そのMACフレームをスイッチ部22へ送出する(S12)。スイッチ部22は、MACフレームの宛先MACアドレスにしたがって、そのMACフレームに対する経路制御を実行し、MACアドレステーブルに基づき定まる接続部へ送出する(S14)。
【0051】
図6は、フレーム送信部26の動作を示すフローチャートである。フレーム振分部38は、スイッチ部22から受け付けられたMACフレームのリングIDに応じて、そのMACフレームが通過フレームか跨ぎフレームかを識別する。フレーム振分部38は、通過フレームをフレームバッファ部36における通過フレームキューに記憶させ、跨ぎフレームをフレームバッファ部36におけるまたは跨ぎフレームキューに記憶させる(S20)。同一のリングに対して反対方向にデータを送出する他のフレーム送信部26から、他のフレーム送信部26において読み出された通過フレームのデータ量、跨ぎフレームのデータ量が通知された場合(S22のY)、フレーム読出し部40は、帯域設定同期部42を介してその通知を取得する。そして、フレーム読出し部40は、通知内容にしたがって、通過フレームの読出し上限量、跨ぎフレームの読出し上限量を調整する(S24)。この通知がなければ(S22のN)、S24はスキップされる。
【0052】
フレーム読出し部40は、通知フレームの読出し上限値の範囲内で、通過フレームキューから通過フレームを読み出す。また、跨ぎフレームの読出し上限量の範囲内で、跨ぎフレームキューから跨ぎフレームを読み出す(S26)。送信実行部32は、フレーム読出し部40において読み出された通過フレームおよび跨ぎフレームを、接続されたリングに対して送出する(S28)。フレーム読出し部40において読み出された跨ぎフレームがユニキャストフレームであるとき(S30のY)、帯域設定同期部42は、その跨ぎフレームのデータ量を、同一のリングに対して反対方向にデータを送出する他のフレーム送信部26へ通知する(S32)。読み出された跨ぎフレームがユニキャストフレームでなければ(S30のN)、S32はスキップされる。S30およびS32の処理は、通過フレームに対しても同様に実行される。
【0053】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0054】
第1の変形例を説明する。上記実施の形態では、スイッチ部22は、跨ぎフレームであるユニキャストフレームを、宛先のリング網と接続された2つのフレーム送信部26のうち、その宛先に応じて1つのフレーム送信部26へ送出した。変形例では、スイッチ部22は、跨ぎフレームであるユニキャストフレームを、宛先のリング網と接続された2つのフレーム送信部26の両方へ送出する。すなわち、ユニキャストフレームでありながらマルチキャストフレームと同様の経路制御を行う。ただし、スイッチ部22は、実際にリング網へそのユニキャストフレームを送出すべきフレーム送信部26を一意に特定可能な識別情報を、そのユニキャストフレームに対応づけて送出する。この識別情報は、接続部に対して予め設定されたラインカードの識別番号であってもよい。
【0055】
ユニキャストフレームを受け付けた2つのフレーム送信部26のそれぞれは、そのユニキャストフレームのデータ量に応じて跨ぎフレームの読出し上限量を調整する。また、識別情報で指定された一方のフレーム送信部26は、そのユニキャストフレームをリング網へ送出する。他方のフレーム送信部26は、そのユニキャストフレームを廃棄する。この変形例によれば、リング網へ送出すべきユニキャストフレームそのものが帯域制御のための情報となり、フレーム送信部26間でユニキャストフレームのデータ量を相互に通知することが不要となるため、リング接続装置12の実装が容易化される。
【0056】
第2の変形例を説明する。上記実施の形態では、通過フレームと跨ぎフレームとによる分類での帯域制御の例を示した。変形例においては、リングから受信されたフレームの設定情報に基づいて、通過フレームがさらに細かく分類されてもよく、同様に、跨ぎフレームがさらに細かく分類されてもよい。例えば、VLAN−IDやIPヘッダのToS情報をパラメータとして分類されてもよい。VLAN−IDをパラメータとする場合、「VLAN−ID『1』の通過フレーム」、「VLAN−ID『2』の通過フレーム」、「VLAN−ID『1』の跨ぎフレーム」、「VLAN−ID『2』の跨ぎフレーム」と分類されてもよい。
【0057】
第3の変形例を説明する。上記実施の形態では、受信元と送出先とが異なるリングのフレームは跨ぎフレームとして、その送信元リングによらず、同じ帯域制御が実行された。変形例においては、送信元リングごとに跨ぎフレームが細かく分類され、送信元リングが異なる跨ぎフレームに対して異なる帯域制御が実行されてもよい。
【0058】
第4の変形例を説明する。上記実施の形態では、帯域制御方法としてシェーピングが実行された。変形例においては、帯域制御方法としてポリシングが実行されてもよい。この場合、フレームバッファ部36を必ずしも設ける必要はなく、フレーム読出し部40は、通過フレームおよび跨ぎフレームを、それぞれの読出しの上限量にしたがってフレーム振分部38から直接取得してもよい。また、読出しの上限量を超えた通過フレームおよび跨ぎフレームは廃棄されてもよい。
【0059】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0060】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
10a 第1のリング、 10b 第2のリング、 12 リング接続装置、 22 スイッチ部、 24 フレーム受信部、 26 フレーム送信部、 28 フレーム検出部、 30 ID付与部、 32 送信実行部、 34 帯域制御部、 36 フレームバッファ部、 38 フレーム振分部、 40 フレーム読出し部、 42 帯域設定同期部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリング網を相互接続する装置であって、
前記複数のリング網のうち一のリング網へ伝送されるべきフレームを前記複数のリング網のそれぞれから受信するフレーム受信部と、
前記一のリング網内においてある機器から別の機器へ伝送されるべきフレームである通過フレームと、前記一のリング網とは異なる別のリング網の機器から前記一のリング網の機器へ伝送されるべきフレームである跨ぎフレームとのそれぞれを、予め個別に定められた帯域の範囲内で前記一のリング網へ送出するフレーム送信部と、
を備えることを特徴とするリング網における通信装置。
【請求項2】
前記フレーム受信部は、フレームの送出元であるリング網の識別情報を当該フレームに対応づけ、
前記フレーム送信部は、前記識別情報により特定される前記フレームの送出元であるリング網と、前記一のリング網との異同に応じて、前記フレームが通過フレームか跨ぎフレームかを識別することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記フレーム受信部は、フレームの送出元であるリング網の識別情報を当該フレームのデータとして付加し、
前記フレーム送信部は、前記フレームを前記一のリング網へ送出する前に、前記フレームのデータから前記識別情報を除外することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記フレーム送信部は、
前記一のリング網における第1の方向へフレームを送出する第1の送信部と、
前記一のリング網における前記第1の方向とは異なる第2の方向へフレームを送出する第2の送信部と、を有し、
前記第1および第2の送信部のそれぞれは、前記第1の方向へ送出された跨ぎフレームと、前記第2の方向へ送出された跨ぎフレームとの合計が、前記跨ぎフレームに対して設定された帯域の範囲内となるように、前記跨ぎフレームを前記一のリング網へ送出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1および第2の送信部のそれぞれは、前記一のリング網へ送出すべき跨ぎフレームがユニキャストフレームである場合に、当該フレームのデータ量を相互に通知することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1および第2の送信部のそれぞれは、前記一のリング網へ送出すべき跨ぎフレームがユニキャストフレームである場合に当該ユニキャストフレームをともに受け付け、当該ユニキャストフレームの宛先に応じて、いずれかの送信部が当該ユニキャストフレームを前記一のリング網へ送出することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
複数のリング網を相互接続する方法であって、
前記複数のリング網のうち一のリング網へ伝送されるべきフレームを前記複数のリング網のそれぞれから受信する受信ステップと、
前記一のリング網内においてある機器から別の機器へ伝送されるべきフレームである通過フレームと、前記一のリング網とは異なる別のリング網の機器から前記一のリング網の機器へ伝送されるべきフレームである跨ぎフレームとのそれぞれを、予め個別に定められた帯域の範囲内で前記一のリング網へ送出する送信ステップと、
を備えることを特徴とするリング網における通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61652(P2011−61652A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211322(P2009−211322)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】