説明

リン脂質を含む免疫原性組成物

本発明は微粒子およびエマルジョン組成物を含むリン脂質アジュバントを含有する免疫原性組成物である。本発明の1つの特徴によれば、水;生体分解性重合体、例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリシアノアクリレートから選択される重合体を含む重合体微粒子;微粒子に吸着させた抗原;およびリン脂質化合物、例えば(i)独立してホスフェート基およびホスホジエステル基から選択されるホスホリル基1つ以上;(ii)直鎖アルカン基複数、を含む合成リン脂質化合物、を含む免疫原性組成物が提供される。本発明の別の特徴によれば、水;代謝可能な油;乳化剤;抗原;およびリン脂質化合物、例えば上記したもののようなリン脂質化合物を含む免疫原性エマルジョン組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の言及)
本出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2002年12月27日出願の米国出願60/436,919の優先権を主張する。本出願はまた参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2003年10月21日出願の米国出願60/513,075の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に医薬組成物に関する。特に本発明はリン脂質アジュバントを含む免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
組み換えDNA技術により創生されたサブユニットワクチンの出現は安全で効果的なアジュバント含有組成物の必要性を高めている。サブユニットは安全性および製造費用の点で伝統的な生ワクチンおよび非生ワクチンよりも顕著に優れた利点を与える一方で、一般的には免疫家員意対して単離されたポリペプチドまたは単離されたポリペプチドの混合物を与えるものであり、これは例えば全ウィルス、細菌等と比較して限定された免疫原性を有するものである。その結果、これらのワクチンは一般的には顕著な免疫刺激能力を有するアジュバントから利益を被っており、これにより疾患治療における十分な能力に達することができる。
【0004】
一方で伝統的な生ワクチンは通常はアジュバントを必要としない。さらにまた、非生ワクチンは一般的にはサブユニットワクチンより免疫原性が高く、通常はアジュバントを必要としない。しかしなお、これらのワクチンはサブユニットワクチンと同様、顕著な免疫刺激能力を有するアジュバントから利益を被ることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は顕著な免疫刺激能力を有するアジュバントを含む免疫原性組成物、そして特にリン脂質アジュバントを含む組成物に関する。
【0006】
本発明の第1の特徴によれば、(a)薬学的に受容可能な賦形剤;(b)生体分解性重合体、例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリシアノアクリレートから選択される重合体を含む重合体微粒子;(c)微粒子に吸着させた抗原;および(d)リン脂質化合物、例えば(i)典型的には独立して下記ホスフェート基:
【0007】
【化23】

および下記ホスホジエステル基:
【0008】
【化24】

から選択されるホスホリル基1つ以上(ここでホスホリル基は基P=Oにより表される);および(ii)下記直鎖アルカン基:
【0009】
【化25】

[式中、nは独立して6〜20の範囲の整数、即ち6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である]複数(典型的には3〜10、より典型的には4〜8、さらに典型的には6つ)を含む合成リン脂質化合物、および適宜、その薬学的に受容可能な塩、を含む免疫原性組成物が提供される。
【0010】
多くの実施形態において、微粒子はポリ(α−ヒドロキシ酸)、例えばポリ(ラクチド)(「PLA」)、ラクチドトグリコリドの共重合体、例えばポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(「PLG」)またはD,L−ラクチドとカプロラクトンの共重合体から形成される。ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)重合体は/グリコリドのモル比が例えば20:80〜80:20、25:75〜75:25、40:60〜60:40、または55:45〜45:55のラクチド/グリコリドのモル比を有し、そして、例えば5,000〜200,000ダルトン、10,000〜100,000ダルトン、20,000〜70,000ダルトンまたは40,000〜50,000ダルトンの分子量を有するものが包含される。
【0011】
抗原、リン脂質および種々の任意の補充的成分は独立して、例えば、(a)微粒子の表面に吸着、(b)微粒子内部に捕獲、(c)溶液中、(d)微粒子の別の集団に吸着、および/または(e)微粒子の別の集団内に捕獲してよい。
【0012】
本発明の第2の特徴によれば、(a)水;(b)代謝可能な油;(c)乳化剤;(d)抗原;および(e)上記したもののようなリン脂質化合物を含み、ここで組成物は油相および水相を有する水中油のエマルジョンであり、そして、ここで油相は実質的に全てが直径1ミクロン未満である油滴の形態である免疫原性組成物が提供される。
【0013】
抗原、リン脂質分子および種々の補充的成分は独立して、エマルジョンの油相(油滴の別の集団も含む)内に溶解または分散、エマルジョンの水相内に溶解または分散、および/またはエマルジョンの水相および油相の間の界面に配置してよい。
【0014】
代謝可能な油は典型的には動物油(魚油を含む)および植物油、より典型的には炭素原子20〜40個を有する不飽和の炭化水素、より典型低的には炭素原子20〜40個を有する分枝鎖の多不飽和の炭化水素、例えばテルペノイド、例えばスクワランから選択される。
【0015】
乳化剤は典型的にはノニオン系界面活性剤少なくとも1つ、より典型的には脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレン部分を含む脂肪酸エステル、例えばソルビタン誘導体、例えば、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸セスキエステル、ソルビタン脂肪酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸トリエステルを含む。より典型的な例においては、乳化剤はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートを含む。乳化剤が2種以上の界面活性剤を含む場合は、1つの界面活性剤は例えば1〜9のHLB価を有することができ、他方の界面活性剤は10〜20のHLB価を有することができる。
【0016】
医薬品類、ホルモン、酵素、転写または翻訳のメディエーター、代謝経路中間体、免疫モジュレーター、付加的な免疫アジュバントおよびこれらの組み合わせを含む補充的成分は本発明の種々の組成物に含有させることができる。
【0017】
抗原は例えばポリペプチド含有抗原またはポリヌクレオチド含有抗原であることができる。ポリヌクレオチド含有抗原の例は、(a)ポリペプチド含有抗原を直接コードする核酸配列(例えばmRNA分子)および(b)ポリペプチド含有抗原を間接的にコードするベクターコンストラクト、例えばポリペプチド含有抗原をコードする異種核酸配列を発現するコンストラクト(DNAベクターコンストラクトおよびRNAベクターコンストラクト)を包含する。
【0018】
ポリペプチド含有抗原は例えば腫瘍抗原および病原性生物、例えばウィルス、真菌および寄生生物に由来する抗原であることができる。即ち、一部の実施形態においては、ポリペプチド含有抗原は例えばA型肝炎ウィルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウィルス(HCV)、単純疱疹ウィルス(HSV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、サイトメガロウィルス(CMV)、インフルエンザウィルス(例えばA型インフルエンザウィルス)および狂犬病ウィルス由来である。別の実施形態においては、ポリペプチド含有抗原は細菌、例えばコレラ、ジフテリア、破傷風、ストレプトコッカス(例えばストレプトコッカスAおよびB)、百日咳、髄膜炎菌(例えばA、B、C、W、Y型髄膜炎)、淋菌、ヘリコバクター・ピロリおよびインフルエンザ菌(例えばヘモフィルスインフルエンザタイプB菌)由来である。さらに別の実施形態においては、ポリペプチド含有抗原は寄生生物、例えばマラリア寄生生物由来である。
【0019】
本発明の他の実施形態は本明細書に記載した免疫原性組成物のいずれかを宿主動物に投与することを含む宿主動物への抗原の送達方法に関する。宿主動物は好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。
【0020】
本発明はさらに体液性および/または細胞性免疫応答を誘導するために効果的な量の本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかを動物に投与することを含む、宿主動物における宿主動物内部の体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答、例えばTh1免疫応答またはCTL応答、またはリンパ増殖またはサイトカイン生産を刺激する方法に関する。
【0021】
別の実施形態においては、本発明は本明細書に記載した免疫原性組成物の何れかの治療有効量を宿主動物に投与することを含む免疫化の方法に関する。
【0022】
本発明はさらに保護応答を誘導するのに有効な量の本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかを宿主動物に投与することを含む、例えば腫瘍またはウィルス、細菌または寄生生物の感染に対して動物を免疫化する方法に関する。
【0023】
本発明の免疫原性組成物の送達は何れかの知られた方法、例えば直接の注射、例えば皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内)により実施してよい。
【0024】
従って、本発明の一部の実施形態によれば、例えば、ウィルス、真菌、マイコプラズマ、細菌または原虫の感染に対して、並びに、腫瘍に対して、宿主動物を予防的および/または治療的に免疫化することを含む治療のための組成物および方法が提供される。本発明の方法は宿主、好ましくはヒトに対し、予防的および/または治療的な免疫化をもたらすために有用である。本発明の方法はまた生物医学的な研究用とを含むヒト以外の動物に対しても実施できる。
【0025】
本発明の他の実施形態は上記組成物を製造するための方法に関する。例えば、上記した重合体微粒子は下記工程、即ち(a)水、有機溶媒、生体分解性重合体およびアニオン、カチオン、ノニオンまたは両性イオン系の界面活性剤を含む水中油中水エマルジョンを形成すること;および(b)エマルジョンから有機溶媒を除去して重合体微粒子を形成することを含む方法により製造できる。
【0026】
別の実施例として、上記エマルジョンは下記工程、即ち(a)有機溶媒、水、代謝可能な油および乳化剤を含む混合物を準備すること;および(b)この混合物を、油相が実質的に全てが直径1ミクロン未満である液滴の形態である油中水エマルジョンを生成するために十分な剪断応力に付すこと、を含む方法により製造できる。
【0027】
本発明の免疫原性組成物の1つの特定の利点は脊椎動物対象における免疫応答を発生させる能力である。従来の抗体応答に加えて、本明細書に記載した組成物は例えば、抗原をさらに認識できるようにする細胞溶解性T細胞(「CTL」)の生産を刺激する目的の抗原へのインビボの細胞性免疫応答が確立できるようにクラスIMHC分子との発現抗原の会合をもたらすことができる。さらにまた、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答も起こる場合がある、従って本発明の方法は種々の抗原に対する細胞および/または体液性の免疫応答を起こすために使用できる。特定の試料として、ウィルス病原体から誘導した抗原は抗体、T細胞ヘルパーエピトープおよびT細胞毒性エピトープを誘導できる。このような抗原にはヒトおよび動物のウィルスによりコードされるものが包含され、そして構造または非構造の蛋白のいずれかに相当することができる。
【0028】
本発明の上記および他の実施形態、特徴および利点は本明細書の開示を参照すれば当業者が容易に知りえるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、特段の記載が無い限り、当業者が知る従来の化学、重合体化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬学を使用する。このような技術は文献に詳細に説明されている。例えばRemingtons’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.,ed,CRC Press,1997)and Seymour/Carraher’s Polymer Chemistry(4th edition, Marcel Dekker Inc.,1996)を参照できる。
【0030】
上記または後述の部分を含めて本明細書および請求項において使用する限り、内容を特に明示しない限り呼称には複数のものが意図される。即ち、「微粒子」という用語は微粒子1個以上を指す。
【0031】
特段の記載が無い限り、本明細書に記載する全てのパーセントおよび比は重量に基づくものとする。
【0032】
(A.定義)
本発明を説明するに際し、以下の用語を用い、そして以下に記載するとおり定義づけられるものとする。
【0033】
本明細書においては、「微粒子」という用語は直径約10nm〜約150μm、より典型的には直径約200nm〜約30μm、そして、より典型的には直径約500nm〜約10〜20μmの粒子を指す。本発明の微粒子はある状況下においては凝集してより大きい塊となる場合がある。特定の例として、吸着されたDNAを有する本発明の微粒子は、例えば凍結乾燥前は直径約0.5〜2μmであるが、同じ粒子が、例えば凍結乾燥後には直径約5〜15μmを有する凝集塊となる。微粒子は一般的に針および毛管を閉塞させること無く非経腸または粘膜への投与を可能とする直径のものである。微粒子の大きさは当該分野でよく知られた方法、例えば光量子相関スペクトル分析、レーザー回折計および/または走査電子顕微鏡観察により容易に測定される。「粒子」という用語もまた、本明細書においては、微粒子を指すために使用される場合がある。
【0034】
本明細書において使用するための重合体微粒子は典型的には滅菌可能であり、実質的に非毒性で生体分解性の物質から形成される。このような物質は生体分解性重合体、例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリシアノアクリレート(例えばポリアルキルシアノアクリレート即ちPACA)を包含する。より典型的には、本発明において使用する微粒子はポリ(α−ヒドロキシ酸)、例えばポリ(ラクチド)(「PLA」)、またはラクチドトグリコリドの共重合体、例えばポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(「PLG」)またはD,L−ラクチドとカプロラクトンの共重合体から誘導される重合体微粒子である。重合体微粒子は、種々の分子量、そしてPLGのような共重合体の場合は、種々の単量体比(例えばラクチド:グリコリド)を有する種々の重合体原料の何れかから誘導してよく、その選択は部分的には同時投与される物質種に応じて広範に変動する。これらのパラメーターは後に詳述する。
【0035】
本明細書においては、「界面活性剤」という用語は洗剤、分散剤、懸濁剤およびエマルジョン安定化剤を包含するものとする。本発明の重合体微粒子組成物において使用するためのカチオン系界面活性剤は、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド即ち「CTAB」(例えばセトリミド)、塩化ベンザルコニウム、DDA(ジメチルジオクトデシルアンモニウムブロミド)、DOTAP(ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン)等を包含する。アニオン系界面活性剤は例えばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、DSS(ジスルホスクシネート)、硫酸化脂肪アルコール等を包含する。ノニオン系界面活性剤は例えばPVA、ポビドン(ポリビニルピロリドン即ちPVPとしても知られている)、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリオキシエチル化グリコールモノエーテル、ポリオキシエチル化アルキルフェノール、ポロキサマー等を包含する。
【0036】
「サブミクロンエマルジョン」という用語は、本明細書においては、実質的に全てが大きさ1000nmまで、例えば10nm〜1000nmである油滴を含む水中油エマルジョンを指すものとする。
【0037】
「医薬品」という用語は生物学的に活性な化合物、例えば抗体、抗ウィルス剤、成長因子、ホルモン、抗原等を指す。
【0038】
「アジュバント」という用語は医薬品の作用を支援または改変する何れかの物質、例えば抗原への免疫応答を増強または多様化させる免疫学的アジュバントを指す。従って、免疫学的アジュバントは抗原への免疫応答を強化することができる化合物である。免疫学的アジュバントは体液性および/または細胞性免疫を強化できる。
【0039】
「ポリヌクレオチド」とは核酸重合体である。ポリヌクレオチドは5、6、7または8ヌクレオチド程度の少量のみ含むことができる。ポリヌクレオチドは2本鎖および1本鎖の配列の両方を包含し、そして、例えばウィルス由来cDNA、原核生物または真核生物mRNA、ウィルス由来のゲノムRNAおよびDNA配列(例えばRNAおよびDNAウィルスおよびレトロウィルス)または原核生物DNAおよび合成DNA配列を指す。用語はまたDNAおよびRNAの既知の塩基類縁体のいずれかを含む配列も含む。用語はさらに、核酸分子が抗原蛋白をコードしているネイティブの配列への修飾、例えば欠失、付加および置換(一般的には保存的な性質)を包含する。これらの修飾は部位指向性突然変異誘発を介する場合のように意図的であってよく、または抗原を生産する宿主の突然変異を介する場合のように偶然であってよい。
【0040】
本明細書においては、「核酸」という表現はDNA、RNAまたはそれらから形成されたキメラを指す。
【0041】
「ポリヌクレオチド含有物質種」とは少なくともその一部がポリヌクレオチドである分子である。例としてはRNAベクターコンストラクト、DNAベクターコンストラクト等が包含される。
【0042】
「ポリペプチド」および「蛋白」という用語はアミノ酸残留物の重合体を指し、生成物の最小長さに限定されない。即ち、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体等は定義に包含される。完全長蛋白およびそのフラグメントが定義に包含される。用語はまた、例えば、蛋白が投与される対象に対して免疫応答を誘起するか、治療効果を有する能力を蛋白が温存しているようなネイティブの配列への修飾、例えば欠失、付加および置換(一般的には保存的な性質)を包含する。
【0043】
「ポリペプチド含有物質種」とは、その少なくとも一部がポリペプチドである分子である。例はポリペプチド、蛋白、例えば糖蛋白、担体蛋白にコンジュゲートした糖抗原等を包含する。
【0044】
「抗原」とは抗原が提示された場合に細胞抗原特異的免疫応答または体液性抗体応答を示すように宿主の免疫系を刺激することのできるエピトープ1つ以上を含有する分子を意味する。抗原はそれ自体で、または別の分子と組み合わせて提示された場合に、細胞および/または体液性免疫応答を誘起できてもよい。
【0045】
「エピトープ」とはその免疫学的特異性を決定する抗原分子または抗原複合体の部分である。エピトープは本発明における抗原の定義に包含される。通常はエピトープは天然の抗原内のポリペプチドまたは多糖類である。人工抗原においては、アルサニリン酸誘導体のような低分子量の物質である場合がある。エピトープは例えば相同の抗体またはTリンパ球とインビボまたはインビトロで特異的に反応する。代替記述法は抗原決定基、抗原構造基およびハプテン基である。
【0046】
典型的には、エピトープは約5〜15アミノ酸を含む。ある蛋白のエピトープは当該分野で知られた多くのエピトープマッピング技術のいずれかを用いて発見できる。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol.66(Glenn E.Morris,Ed.,1996) Human Press,Totowa,New Jerseyを参照できる。例えば、線状エピトープは例えば、蛋白分子の部分に相当するペプチドを固体支持体上で多数同時に合成し、そして、ペプチドがなお支持体に結合している間に抗体にペプチドを反応させることにより決定してよい。このような技術は当該分野で知られており、例えば米国特許4,708,871;Geysen et al.,(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:3998−4002;Geysen et al.(1986)Molec.Immunol.23:709−715を参照できる。同様に、コンホーメーションエピトープは例えばX線結晶分析および二次元核磁気共鳴によりアミノ酸の空間的コンホーメーションを測定することにより容易に発見される。上出のEpitope Mapping Protocolsを参照できる。
【0047】
本明細書においては、「抗原」という用語は、サブユニット抗原、即ち、天然において抗原が会合している全生物体とは分離され個別化されている抗原、並びに、非生存化、減衰または不活性化された細菌、ウィルス、寄生生物または他の病原体または腫瘍細胞を指す。抗体、例えば抗イディオタイプの抗体またはそのフラグメントおよび抗原または抗原決定基を模倣できる合成ペプチドミモトープもまた本明細書において使用する抗原の定義に含まれる。
【0048】
同様に、免疫蛋白または抗原決定基を、例えば核酸免疫化適用の場合のように、インビボで発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドもまた本明細書における抗原の定義に包含される。
【0049】
さらにまた、本発明の目的のためには「抗原」とは免疫学的応答を誘起する能力を蛋白が温存している限り、ネイティブの配列への修飾、例えば欠失、付加および置換(一般的には保存的な性質)のような修飾を含む蛋白を指す。これらの修飾は部位指向性突然変異誘発を介する場合のように意図的であってよく、または抗原を生産する宿主の突然変異を介する場合のように偶然であってよい。
【0050】
抗原組成物に対する「免疫学的応答」とは目的の組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞性免疫応答の対象内における発生を意味する。本発明の目的のためには「体液性免疫応答」とは抗体分子により媒介される免疫応答を指し、「細胞性免疫」とはTリンパ球および/または他の白血球により媒介されるものである。細胞性免疫の1つの重要な特徴には細胞溶解性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答が関連する。CTLは主要組織適合性複合体(MHC)によりコードされる蛋白に会合して存在し、細胞表面上で発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは細胞内微生物の細胞内破壊またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導し、促進する。細胞性免疫別の特徴にはヘルパーT細胞による抗原特異的応答が関連している。ヘルパーT細胞は機能の促進に寄与し、そしてその表面にMHC分子が会合しているペプチド抗原を示す細胞に対した非特異的エフェクター細胞の活性に着目している。「細胞性免疫応答」とはまた、サイトカイン、ケモカインおよび活性化T細胞および/または他の白血球により生産される他のこのような分子、例えばCD4+およびCD8+T細胞由来であるもの生産を指す。
【0051】
細胞性免疫応答を誘起する免疫原性組成物またはワクチンのような組成物は細胞表面におけるMHC分子に会合した抗原の提示により脊椎動物対象を感作する働きを有してよい。細胞媒介免疫応答は、その表面に抗原を提示する細胞を指向するかその近傍にある。さらに、抗原特異的Tリンパ球は免疫化された宿主の生来の保護を可能とするように作成することができる。
【0052】
細胞媒介免疫学的応答を刺激する特定の抗原または組成物の能力は、多くの試験法、例えばリンパ増殖(リンパ球活性化)試験、CTL細胞毒性細胞試験により、感作した対象における抗原に特異的なTリンパ球を試験することにより、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン生産の測定により調べてよい。このような試験法は当該分野で知られている。例えばErickson et al.,J.Immunol.(1993)151:4189−4199;Doe et al.,Eur.J.Immunol.(1994)24:2369−2376;および以下に記載する実施例を参照できる。
【0053】
目的とする抗原はまた抗体媒介免疫応答を誘起してもよい。従って、免疫学的応答は以下の作用、即ち:B細胞による抗体の生産;および/または目的の組成物中に存在する抗原に特異的に指向されたサプレッサーT細胞および/またはγδT細胞の活性化の1つ以上を含んでよい。これらの応答は感染性の中和のために寄与および/または抗体補完性または抗体依存性の細胞毒性(ADCC)を媒介し、これにより、免疫化された宿主を保護する。このような応答は当該分野でよく知られた標準的な免疫試験法および中和試験法、例えばラジオイムノアッセイおよびELISAを用いて測定できる。
【0054】
本発明の免疫原性組成物は、異なる組成物中の抗原の等しい量により誘起される免疫応答よりも免疫応答を誘起する大きい能力を保有する場合に「増強された免疫原性」を示す。即ち組成物は例えば、組成物がより大きい免疫応答を発生させるという理由のために、または投与相手の対象における免疫応答を達成するためにより小用量の抗原が必要であるという理由のために、「増強された免疫原性」を示すのである。このような増強された免疫原性は、例えば本発明の組成物および抗原対照を動物に投与し、二者の試験結果を比較することにより測定できる。
【0055】
本明細書においては、「治療」(その変形型、例えば「投与する」または「治療された」を含む)とは、(i)問題となる病原体または障害(例えば癌または伝統的なワクチンの場合のような病原性感染症)の予防、(ii)症状の減少または排除、および(iii)問題となる病原体または障害の実質的または完全な排除のいずれかを指す。治療は予防的(問題となる病原体または障害の到達より前)または治療的(到達後)に行ってよい。
【0056】
本発明の免疫原性組成物の「有効量」または「医薬品有効量」という用語は本明細書においては、目的の状態を治療または診断するための免疫原性組成物の十分な量を指す。必要となる厳密な量は例えば対象の種、齢および全身状態;治療すべき状態の重症度;目的となる特定の抗原;免疫学的応答の場合は抗体を合成する対象の免疫系の能力および所望の保護の程度;および投与様式などの要因に応じて対象ごとに異なっている。何れの個体の症例における適切な「有効」量も当業者が決定してよい。即ち「治療有効量」は典型的には日常的試行により決定できる比較的広範な範囲にある。
【0057】
「脊椎動物対象」または「脊椎動物」とは、脊椎動物亜門の何れかのメンバー、例えば哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマおよびヒト;家畜動物、例えばイヌおよびネコ;および鳥類、例えば家禽類、野生および狩猟用の鳥類、例えば雄鶏および雌鶏、例えばニワトリ、シチメンチョウおよび他のキジ科の鳥類を包含する。用語は特定の齢を示すものではない。即ち、成熟および新生仔の動物が包含される。
【0058】
「薬学的に受容可能な」または「薬理学的に許容される」とは、生物学的または他の面において望ましくないものではない物質を指し、即ち、物質は、個体において過剰に望ましくない生物学的作用を誘発したり、または含有される組成物の成分の何れとも過剰に不都合な態様で相互作用をすることなく、個体に投与してよい。
【0059】
「賦形剤」という用語は採集剤型中に存在してよい何れかの本質的に補助的な物質を指す。例えば、「賦形剤」という用語はベヒクル、バインダー、錠剤崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、滑剤(流動増強剤)、圧縮補助剤、着色料、甘味料、保存料、懸濁/分散剤、膜形成剤/コーティング、フレーバーおよび印刷用インクを包含する。
【0060】
「生理学的pH」または「生理学的範囲のpH」とは、約7.2〜8.0の範囲、より典型的に歯約7.2〜7.6の範囲のpHを意味する。
【0061】
本明細書においては「ベクターコンストラクト」という表現は一般的には目的の核酸配列または遺伝子の発現を検出できる何れかの組み立て物を指す。ベクターコンストラクトは典型的には転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座決定エレメント、または他の手段、例えばオルタナティブスプライシング、各RNA移出、メッセンジャーの転写後修飾または蛋白の転写後の修飾により遺伝子発現を制御する他のエレメントを包含する。さらにまた、ベクターコンストラクトは典型的には転写されると目的の配列または遺伝子に作動可能に連結して転写開始配列として作用する配列を包含する。ベクターコンストラクトはまた、必要に応じて、ポリアデニル化を試行するシグナル、選択マーカー、並びに1つ以上の制限部位および翻訳終止配列を含んでよい。さらにまた、ベクターコンストラクトがレトロウィルス内に入れられる場合は、ベクターコンストラクトはパッケージングシグナル、長末端リピート(LTR)および使用するレトロウィルスに対して適切なプラス鎖またはマイナス鎖のプライマーの結合部位(これらが既に存在していない場合)を含んでよい。
【0062】
「DNAベクターコンストラクト」とは、目的の核酸配列または遺伝子の発現を指向することができるDNA分子を指す。
【0063】
DNAベクターコンストラクトの1つの特定の型はプラスミドであり、これは宿主細胞内で自律複製可能な環状のエピソームDNA分子である。典型的にはプラスミドは別のDNAセグメントをライゲーションできる環状2本鎖DNAループである。pCMVが当該分野でよく知られた特定のプラスミドである。好ましいpCMVベクターはCMVの即時型エンハンサー/プロモーターおよびウシ成長ホルモンターミネーターを含有するものである。これはChapman,B.S.,et al.,1991,”Effect of intron A from human cytomegalovirus (Towne) immediate−early gene on heterologous expression in mammalian cells”, Nucleic Acids Res.19:3979−86に詳述されている。
【0064】
他のDNAベクターコンストラクトはRNAウィルスに基づくものが知られている。これらのDNAベクターコンストラクトは典型的には、真核細胞内で機能するプロモーター、それに対する転写産物がRNAベクターコンストラクト(例えばアルファウィルスRNAウィルスレプリコン)となるcDNA配列の5’、および3’終止領域を含む。RNAベクターコンストラクトは好ましくは、目的の生成物をコードする選択された非相同の核酸配列による構造蛋白遺伝子の1つ以上の置き換えにより修飾されている、ピコナウィルス、トガウィルス、フラビウィルス、コロナウィルス、パラミキソウィルス、黄熱病ウィルスまたはアルファウィルス(例えばシンドビスウィルス、セムリキフォレストウィルス、ベネズエラウマ脳脊髄膜炎ウィルス、またはロス川ウィルス)を包含する。RNAベクターコンストラクトはDNA鋳型からのインビトロの転写により得ることができる。特定の例はシンドビスウィルス系プラスミド(pSIN)、例えば米国特許5,814,482および6,015,686並びに国際特許出願WO97/38087、WO99/18226および共通保有しているWO02/26209記載のpSINCPを包含する。このようなベクターの構築は一般的に米国特許5,814,482および6,015,686に記載されている。
【0065】
ベクターコンストラクトの他の例はRNAベクターコンストラクト(例えばアルファウィルスベクターコンストラクト)等を包含する。本明細書においては、「RNAベクターコンストラクト」、「RNAベクターレプリコン」および「レプリコン」とは典型的には標的細胞内におけるインビボのそれ自体の増殖または自己複製を指向することができるRNA分子を指す。RNAベクターコンストラクトは細胞へのDNAの導入および転写が起こる核への輸送を必要とすることなく直接使用する。宿主細胞の原形質内への直接の送達のためにRNAベクターを使用することにより、自律複製および非相同核酸配列の翻訳が効率的に起こる。
【0066】
(B.一般的方法)
(1.リン脂質)
リン脂質化合物を本発明との関連において使用する。実施例には(a)1つ以上のホスホリル基(ホスホリル基はP=O基により示される)、典型的には下記ホスフェート基:
【0067】
【化26】

および下記ホスホジエステル基:
【0068】
【化27】

から選択されるホスホリル基1つ以上(ここでホスホリル基は基P=Oにより表される);および(b)下記直鎖アルカン基:
【0069】
【化28】

[式中、nは独立して6〜18の範囲の整数、即ち6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18である]複数(典型的には3〜10、より典型的には4〜8、さらに典型的には6つ)を含む合成リン脂質化合物ならびに薬学的に受容可能なその塩を包含する。特定の実施形態においては、少なくとも3つ、そして他の実施形態においては少なくとも4つのアルカン基が独立してアルカノイル基、即ち、下記基:
【0070】
【化29】

と会合する。特定の実施形態においては、複数、そして特定の実施形態においては少なくとも2つ、3つまたは4つのアルカン基がアルカノイルオキシ基、即ち、下記基:
【0071】
【化30】

に相当し、これがさらに例えば、アルカノイルオキシ−アルコキシ基、例えば下記基:
【0072】
【化31】

またはアルカノイルオキシ−アルカノイル基、例えば、下記基:
【0073】
【化32】

に相当する。
【0074】
特定の実施形態においては、リン脂質化合物は2つ、3つ、4つまたはそれ以上のジホスホリル基を含む。例えば、リン脂質化合物はジホスフェートリン脂質化合物、またはジホスホジエステルリン脂質化合物であることができる。
【0075】
多くの実施形態において、リン脂質化合物はグルコサミン2糖類基、例えば下記基:
【0076】
【化33】

または単一のグルコサミン糖類基、例えば下記基:
【0077】
【化34】

でさえも含まない。別の場合において、リン脂質は全く糖基を含まない。
【0078】
本発明において使用するためのリン脂質化合物のファミリーの1つの例は、下記式:
【0079】
【化35】

[式中、
は下記:
(a)C(O);
(b)C(O)C1−14アルキル−C(O)、ここでC1−14アルキルは、必要に応じてヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アルキレンジオキシ、C1−5アルキルアミノまたはC1−5アルキル−アリールで置換されており、ここでC1−5アルキル−アリールのアリール部分は、必要に応じてC1−5アルコキシ、C1−5アルキルアミノ、C1−5アルコキシ−アミノ、C1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキルC(O)OH、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキル−C(O)C1−5アルキルで置換されているもの;
(c)必要に応じてヒドロキシまたはアルコキシで置換されているC〜C15の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(d)C(O)C6−12アリーレン−C(O)、ただし、アリーレンは、必要に応じてヒドロキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノにより置換されているもの;
よりなる群から選択され;
aおよびbは独立して0、1、2、3または4であり;
d、d’、d’’、e、e’’は独立して1〜4の整数であり;
、X、YおよびYは独立して非存在、酸素、NHおよびN(C(O)C1−4アルキル)およびN(C1−4アルキル)よりなる群から選択され;
およびWは独立してカルボニル、メチレン、スルホンおよびスルホキシドよりなる群から選択され;
およびRは独立して下記:
(a)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;
(b)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはジアルケニル;
(c)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;
(d)アルキル基が、必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたNHC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(e)下記基:
【0080】
【化36】

{式中、ZはOおよびNHよりなる群から選択され、そしてMおよびNは独立してC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルアミノおよびアシルアミノよりなる群から選択される};
よりなる群から選択され;
およびRは独立して、必要に応じてフルオロまたはオキソで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニルよりなる群から選択され;
およびRは独立してC(O)C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルよりなる群から選択され、ここでアルキル、アルケニルまたはアルコキシ基は独立して、そして必要に応じて、ヒドロキシ、フルオロまたはC〜Cアルコキシで置換されており;
、G、GおよびGは独立して酸素、メチレン、アミノ、チオール、NHC(O)およびN(C(O)C1−4アルキル)よりなる群から選択されるか;またはGまたはGは一緒になって水素原子またはヒドロキシルとなる]を有するリン脂質化合物、
または薬学的に受容可能なその塩のファミリーである。
【0081】
1つの実施形態においては、RはC(O)であり;a、b、d、d’、d’’、e、e’およびe’’は独立して1または2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRはオキソで置換されたC10〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルであり;RおよびRはC〜C10の直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C−C11直鎖のアルキルまたはアルケニルであり;そして、G、G、GおよびGは酸素である。
【0082】
本発明との関連において使用するための特定の化合物の例は、下記化合物:
【0083】
【化37】

である。
【0084】
記載した化合物は(R,R,R,R)エナンチオマー型であるが、他のエナンチオマー型、例えば(R,S,S,R)型もまた望ましい。これらの化合物はEisai Co.Ltd.,Tokyo,Japanの合成化合物であり、そして、ER804057およびER804053と命名されている。それらは、RがC(O)であり;aおよびbが2であり;d、d’、eおよびe’が1であり;d’’およびe’’は2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRは2位においてオキソで置換されたC13の直鎖または分枝鎖のアルキルであり;RおよびRはCの直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C11の直鎖のアルキルであり;そしてG、G、GおよびGは酸素であるところのナトリウム塩型のリン脂質の上記ファミリーのメンバーである。本化合物は如何なる糖基も含まず;それは、それが2つのホスホジエステル基:
【0085】
【化38】

を有することから、2リン脂質化合物(ここではナトリウム塩型)である。この化合物はまた下記直鎖アルカン基:
【0086】
【化39】

[式中nは独立して6〜10の整数である]6つを含む。アルカン基の4つは下記アルカノイル基:
【0087】
【化40】

[式中nは10である]に相当する。これらのアルカノイル基の2つは下記アルカノイルオキシ基:
【0088】
【化41】

に相当し、これはさらに、下記アルカノイルオキシアルコキシ基:
【0089】
【化42】

に相当する。
【0090】
上記化合物に関するその他の情報およびその製造法は例えばEisai Co.,Ltdへの米国特許6,290,973に記載されている。
【0091】
(2.抗原)
本発明は病原体および腫瘍に関わる抗原を含む広範な種類の抗原に対する免疫応答を刺激するために使用できる。
【0092】
ヘルペスウィルスファミリー由来の抗原、例えば単純疱疹ウィルス(HSV)1型および2型から誘導された蛋白、例えばHSV−1およびHSV−2糖蛋白gB、gDおよびgH;水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)、エプスタイン−バーウィルス(EBV)およびサイトメガロウィルス(CMV)から誘導された抗原、例えばCMVgBおよびgH;および他のヒトヘルペスウィルス、例えばHHV6およびHHV7から誘導された抗原を本発明に関連して好都合に使用することができる。(例えばサイトメガロウィルスの蛋白コーディング含量の検討のためにはChee et al.,Cytomegaloviruses (J.K.McDougall,ed.,Springer−Verlag 1990)pp.125−169;種々のHSV−1コード蛋白の考察のためにはMcGeoch et al.,J.Gen.Virol.(1988)69:1531−1574;HSV−1およびHSV−2gBおよびgD蛋白およびこれらをコードする遺伝子の考察のためには米国特許5,171,568;EBVゲノムの蛋白コーディング配列の発見のためにはBaer et al.,Nature(1984)310:207−211;およびVZVの検討のためにはDavidson and Scott,J.Gen.Virol.(1986)67:1759−1816を参照できる)。
【0093】
ウィルスの肝炎ファミリー、例えばA型肝炎ウィルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウィルス(HCV)、デルタ肝炎ウィルス(HDV)、E型肝炎ウィルス(HEV)およびG型肝炎ウィルス(HGV)由来の抗原もまた本明細書に記載した技術において好都合に使用できる。例えばHCVのウイルスゲノム配列は配列を得るための方法と同様に知られている。例えば国際特許出願WO89/04669;WO90/11089;およびWO90/14436を参照できる。HCVゲノムは幾つかのウィルス蛋白、例えばE1(Eとしても知られている)およびE2(E2/NSIとしても知られている)およびN末端ヌクレオカプシド蛋白(「コア」と称される)をコードしている(HCV蛋白、例えばE1およびE2の考察のためにはHoughton et al.,Hepatology(1991)14:381−388を参照できる)。これらの蛋白の各々、並びにその抗原フラグメントは本発明の組成物および方法において使用できる。
【0094】
同様に、HDV由来のδ−抗原に対する配列も知られており(例えば米国特許5,378,814参照)、そして、この抗原もまた本発明の組成物および方法において好都合に用いることができる。さらにまた、HBVから誘導された抗原、例えばコア抗原、表面抗原、sAg並びにpre−表面配列、pre−S1およびpre−S2(以前はpre−Sと称されている)並びにこれらの組み合わせ、例えばsAg/pre−S1、sAg/pre−S2、sAg/pre−S1/pre−S2およびpre−S1/pre−S2も使用される。例えばHVBこうぞの考察のためには”HBV Vaccines−from the laboratory to license: a case study”, Mackett, M. and Williamson,J,D.,Human Vaccines and Vaccination,pp.159−176;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許4,722,840、5,098,704、5,324,513;Beames et al.,J.Virol.(1995)69:6833−6838,Birnbaum et al.,J.Virol.(1990)64:3319−3330;およびZhou et al.,J.Virol.(1991)65:5457−5464を参照できる。
【0095】
他のウィルスから誘導された抗原は本発明の組成物および方法において使用され、例えばピコナウィルス科(例えばポリオウィルス等);カルシウイルス科;トガウィルス科(例えば風疹ウィルス、デングウイルス等);フラビウィルス科;コロナウィルス科;レオウィルス科;ビルナウィルス科;ラボドウィルス科(例えば狂犬病ウィルス等);フィロウィルス科;パラミクソウィルス科(例えばおたふくかぜウィルス、はしかウィルス、呼吸器シンシチウムウィルス等);オルトミクソウィルス科(例えばA、BおよびC型インフルエンザウィルス等);ブンヤウィルス科;アレナウィルス科;レトロウィルス科(例えばHTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLR等としても知られている))、例えば単離株HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN);HIV−1CM235、HIV−1US4;HIV−2由来の抗原;サル免疫不全ウィルス(SIV)等が挙げられる。さらにまた、抗原はヒト乳頭腫ウィルス(HPV)およびダニ媒介脳炎ウィルスから誘導してもよい。例えばこれらおよび他のウィルスの説明についてはVirology,3rd Edition(W.K.Joklik ed.1988);Fundamental Virology,2nd Edition(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.1991)を参照できる。
【0096】
より詳しくは、上記HIV単離株、例えばHIVの種々の遺伝子サブタイプのメンバーの何れかに由来するgp120またはgp140エンベロープ蛋白が知られており、報告されており(例えばHIV単離株の種々のエンベロープ配列の比較についてはMyers et al.,Los Alamos Database,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico(1992);Myers et al.,Human Retroviruses and Aids,1990,Los Alamos,New Mexico:Los Alamos National Laboratory;Modrow et al.,J.Virol.(1987)61:570−578を参照できる)、そしてこれらの単離株の何れかから誘導した抗原を本発明の方法において使用する。さらにまた、本発明は種々のHIV単離株から誘導した他の免疫原性蛋白、例えば種々のエンベロープ蛋白の何れか、例えばgp160およびgp41、gag抗原、例えばp24gagおよびp55gag並びにpolおよびtat領域から誘導した蛋白にも等しく適用される。
【0097】
インフルエンザウィルスは本発明が特に有用となるウィルスの別の例である。特にA型インフルエンザのエンベロープ糖蛋白HAおよびNAが免疫応答を発生させる場合に特に有利である。A型インフルエンザの多くのHAサブタイプが発見されている(Kawaoka et al.,Virology(1990)179:759−767;Webster et al.,”Antigenic variation among type A influenza viruses”,p.127−168. P.Palese adn D.W.Kingsbury(ed),Genetics of influenza viruses. Springer−Verlag,New York)。即ち、上記単離株の何れかから誘導した蛋白もまた本明細書に記載した組成物および方法において使用できる。
【0098】
本明細書に記載した組成物および方法は多くの細菌性抗原、例えばジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎および他の病理学的状態を誘発する生物、例えばパラ百日咳菌、髄膜炎菌(A、B、C、Y)、淋菌、ヘリコバクター・ピロリおよびインフルエンザ菌、ヘモフィルスインフルエンザタイプB菌(HIB)、ヘリコバクター・ピロリおよびこれらの組み合わせから誘導されたものに対して使用される。B型髄膜炎菌由来の抗原の例は、出願人等の以下の特許出願、即ちPCT/US99/09346;PCTIB98/01665;およびPCTIB99/00103に開示されている。寄生生物抗原の例は、マラリヤおよびライム病を誘発する生物から誘導されたものを包含する。
【0099】
本発明と共に使用する別の抗原は本明細書に記載したものが全てではなく、例えば(a)髄膜炎菌の血清群Bに由来する蛋白抗原、例えば後に記載する参考文献1〜7に記載されているもの;(b)髄膜炎菌の血清群Bに由来する外膜小疱(OMV)調製物、例えば記載する参考文献8、9、10、11等に記載されているもの;(c)髄膜炎菌の血清群A、C、W135および/またはYに由来する糖抗原、例えば血清群Cに由来する後記参考文献12に開示されているオリゴ糖(参考文献13も参照);(d)ストレプトコッカス・ニューモニア由来の糖抗原(例えば参考文献14、15、16);(e)淋菌由来の抗原(例えば参考文献1、2、3);(e)クラミジア・ニューモニア由来の抗原(例えば参考文献17、18、19、20、21、22、23);(f)クラミジア・トラコーマチス由来の抗原(例えば参考文献24);(g)A型肝炎ウィルス由来の抗原、例えば不活性化ウィルス(例えば参考文献25、26);(h)B型肝炎ウィルス由来の抗原、例えば表面および/またはコア抗原(例えば参考文献26、27);(i)C型肝炎ウィルス由来の抗原(例えば参考文献28);(j)百日咳菌由来の抗原、例えば百日咳菌由来の百日咳ホロトキシン(PT)およびフィラメント様ヘマグルチニン(FHA)を、必要に応じてペルタクチンおよび/またはアグルチノゲン2および3と組み合わせたもの(例えば参考文献29および30);(k)ジフテリア抗原、例えばジフテリアトキソイド(例えば参考文献31の第3章)、例えばCRM197突然変異体(例えば参考文献32);(l)破傷風抗原、例えば破傷風トキソイド(例えば参考文献31の第4章);(m)ヘリコバクター・ピロリ由来の蛋白抗原、例えばCagA(例えば参考文献33)、VacA(例えば参考文献33)、NAP(例えば参考文献34)、HopX(例えば参考文献35)、HopY(例えば参考文献35)および/またはウレアーゼ;(n)ヘモフィルスインフルエンザタイプB菌由来の糖抗原(例えば参考文献13);(o)ポルフィラモナス・ギンギバリス由来の抗原(例えば参考文献36);(p)ポリオ抗原(例えば参考文献37、38)、例えばIPVまたはOPV;(q)狂犬病抗原(例えば参考文献39)、例えば凍結乾燥不活性化ウィルス(例えば参考文献40、RabavertTM);(r)はしか、おたふくかぜおよび/または風疹の抗原(例えば参考文献31の第9、10および11章);(s)インフルエンザ抗原(例えば参考文献31の第19章)、例えばヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ表面蛋白;(t)モラキセラ・カタラリス由来のアンフェ(例えば参考文献41参照);(u)ストレプトコッカス・アガラクチア(B群ストレプトコッカス)由来の抗原(例えば参考文献42、43);(v)ストレプトコッカス・パイオゲン(A群ストレプトコッカス)由来の抗原(例えば参考文献43、44、45);(w)スタフィロコッカス・アウレウス由来の抗原(例えば参考文献46);および(x)これらの抗原の1つ以上を含む複合物を包含する。糖類または炭水化物の抗原を使用する場合は、それは好ましくは免疫原性を増強するために担体蛋白にコンジュゲートする(例えば参考文献47〜56)。好ましい担体蛋白は細菌毒素またはトキソイド、例えばジフテリアまたは破傷風のトキソイドである。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい。他の適当な担体蛋白は脳髄膜炎外膜蛋白(例えば参考文献57)、合成ペプチド(例えば参考文献58、59)、熱ショック蛋白(例えば参考文献60)、百日咳蛋白(例えば参考文献61、62)、インフルエンザ菌由来蛋白D(例えば参考文献63)、C.difficile由来の毒素AまたはB(例えば参考文献64)等を包含する。混合物が血清群AおよびCの両方に由来する被膜糖を含む場合は、MenA糖:MenC糖の比(w/w)は1より大きい(例えば2:1、3:1、4:1、5:1、10:1以上)であることが好ましい。髄膜炎菌の異なる血清群に由来する糖を同じかまたは異なる担体蛋白にコンジュゲートしてよい。必要に応じて何れかの適当なリンカーを使用しながら、何れかの適当なコンジュゲートゲート形成反応を用いる。毒性蛋白抗原は必要に応じて無毒化してよい(例えば化学的手段による百日咳毒素の無毒化(参考文献30))。参考となるものは、国際特許出願99/24578(参考文献1);国際特許出願WO99/36544(参考文献2);国際特許出願WO99/57280(参考文献3);国際特許出願WO00/22430(参考文献4);Tettelin et al.,(2000)Science 287:1809−1815(参考文献5);国際特許出願WO96/29412(参考文献6);Pizza et al.,(2000)Science 287:1816−1820(参考文献7);国際特許出願PCT・IB01/00166(参考文献8);Bjune et al(1991)Lancet 338(8775):1093−1096(参考文献9);Fukasawa et al.,(1990)Vaccine 17:2951−2958(参考文献10);Rosenqvist et al.,(1998)Dev.Biol.Stand.92:323−333(参考文献11);Constantino et al.,(1992)Vaccine 10:691−698(参考文献12);Costantino et al.,(1999)Vaccine 17:1251−1263(参考文献13);Watson(2000)Padiatr Infect Dis J19:331−332(参考文献14);Rubin(2000)Pediatr Clin North Am 47:269−285,v(参考文献15);Jedrzejas(2001)Microbiol Mol Biol Rev65:187−207(参考文献16);GB−0016363.4の優先権を主張する2001年7月3日出願の国際特許出願(参考文献17);Kalman et al.(1999)Nature Genetics 21:385−389(参考文献18);Read et al(2000)Nucleic Acids Res 28:1397−406(参考文献19);Shirai et al.(2000),J.Infect.Dis.181(Suppl3):S524−S527(参考文献20);国際特許出願WO99/27105(参考文献21);国際特許出願WO00/27994(参考文献22);国際特許出願WO00/37494(参考文献23);国際特許出願WO99/28475(参考文献24);Bell(2000)Pediatr Infect Dis J19:1187−1188(参考文献25);Iwarson(1995)APMIS103:321−326(参考文献26);Gerlich et al.(1990)Vaccine 8 Supple:S63−68&79−80(参考文献27);Hsu et al.(1999)Clin Liver Dis 3:901−915(参考文献28);Gustafsson et al.,(1996)N.Engl.J.Med.334:349−355(参考文献29);Rappuoli et al.(1991)TIBTECH 9:232−238(参考文献30);Vaccines(1988)eds.Plotkin&Mortimer.ISBN 0−7216−1946−0(参考文献31);Del Guidice et al.(1998)Molecular Aspects of Medicine 19:1−70(参考文献32);国際特許出願WO93/18150(参考文献33);国際特許出願WO99/53310(参考文献34);国際特許出願WO98/04702(参考文献35);Ross et al.(2001)Vaccine 19:4135−4142(参考文献36);Sutter et al.(2000)Pediatr Clin North Am.47:287−308(参考文献37);Zimmerman&Spann(1999)Am Fam Physician 59:113−118,125−126(参考文献38);Dreesen(1997)Vaccine 15 Suppl:S2−6(参考文献39);MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1998 Jan 16;47(1):12.19(参考文献40);McMichael(2000)Vaccine 19 Suppl1:S101−107(参考文献41);Schuchat(1999)Lancet 353(9146):51−6(参考文献42);英国特許出願0026333.5、0027¥8727.6&0105640.7(参考文献43);Dale(1999)Infect Dis Clin North Am 13:227−43,viii(参考文献44);Ferretti et al.(2001)PNAS USA 98:4658−4663(参考文献45);Kuroda et al.(2001)Lancet 357(9264):1225−1240;p.1218−1219(参考文献46);Ramsay et al.(2001)Lancet 357(9251):195−196(参考文献47);Lindberg(1999)Vaccine 17 Suppl 2:S28−36(参考文献48);Buttery&Moxon(2000)J R Coll Physicians London 34:163−168(参考文献49);Ahmad&Chapnick(1999)Infect Dis Clin North Am 13:113−133,vii(参考文献50);Goldblatt(1998)J.Med.Microbiol.47:563−567(参考文献51);欧州特許0477508(参考文献52);米国特許5,306,492(参考文献53);国際特許出願WO98/42721(参考文献54);Conjugate Vaccines (eds.Cruse et al.)ISBN 3805549326,vol.10:48−114(参考文献55);Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques ISBN:0123423368&012342335X(参考文献56);欧州特許出願0372501(参考文献57);欧州特許出願03788818(参考文献58);欧州特許出願0427347(参考文献59);国際特許出願WO93/17712(参考文献60);国際特許出願WO98/58668(参考文献61);欧州特許出願0471177(参考文献62);国際特許出願WO00/56360(参考文献63);国際特許出願WO00/61761(参考文献64)である。
【0100】
ジフテリア抗原を組成物に含有させる場合は、破傷風抗原および百日咳抗原も含有させることが好ましい。同様に、破傷風抗原を含有させる場合は、ジフテリアおよび百日咳抗原を含有させることが好ましい。同様に百日咳抗原を含有させる場合は、ジフテリアおよび破傷風抗原を含有させることが好ましい。
【0101】
別の抗原にはペスト、ロッキー山紅斑熱、痘瘡、チフス様、チフス、ネコ白血病ウィルスおよび黄熱病を指向した抗原も包含される。
【0102】
(3.免疫原性エマルジョン組成物)
本発明の種々の実施形態は免疫原性エマルジョン組成物に関する。リン脂質および抗原物質種(上記)、並びに、任意の補充的成分(上記)に加えて、本発明の免疫原性エマルジョン組成物は(a)水、(b)代謝可能な油、および(c)乳化剤を好都合に含んでいる。典型的には、免疫学的エマルジョンは油滴の実質的に全てが直径1ミクロン未満、典型的には250nm未満である水中油エマルジョンである。特定の実施形態においては、組成物は何れかのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体の非存在下に存在する。
【0103】
これらの免疫原性エマルジョン組成物は典型的には油0.5〜20容量%、より典型的には油1〜10容量%、そしてさらに典型的には油2〜6容量%;および水80〜99.5容量%、より典型低には90〜99容量%を含む。組成物はやはり典型的には、乳化剤約0.001〜約5重量%、より典型的には乳化剤0.001〜1重量%、さらに典型的には乳化剤0.01〜0.1重量%;リン脂質約0.1〜5重量%、より典型的にはリン脂質0.5〜1重量%;ポリペプチド含有抗原を使用する場合は、ポリペプチド含有抗原約0.1〜5重量%、より典型的にはポリペプチド含有抗原0.5〜1重量%;そしてポリヌクレオチド含有抗原を使用する場合は、ポリヌクレオチド含有抗原約0.1〜20重量%、より典型的にはポリヌクレオチド含有抗原約1〜10重量%を含む。
【0104】
代謝可能な油は通常は炭素原子約6〜約30個を有するもの、例えばアルカン、アルケン、アルキンおよびこれらの相当する酸およびアルコール、そのエーテルおよびエステルおよびそれらの混合物である。油は本質的には何れかの植物性の油、魚油、動物性油または合成により製造された油であって、免疫原性エマルジョン組成物の投与対象である宿主動物の身体で代謝されることができ、そして、対象に対して実質的に毒性ではないものである。鉱物油および同様の毒性石油蒸留油は本発明から除外される。
【0105】
例えば本発明の油成分は何れかの長鎖アルカン、アルケンまたはアルキン、またはその酸またはアルコール誘導体、例えば遊離酸、その塩またはエステル、例えばモノ、またはジまたはトリエステル、例えばトリグリセリド、1,2−プロパンジオールのエステル、または同様の多価アルコールであることができる。アルコールは網のまたは多官能性の酸、例えば酢酸、プロパン酸、クエン酸等を用いてアシル化できる。油であり上記した基準に合致する長鎖アルコールから誘導されたエーテルも使用できる。
【0106】
個々のアルカン、アルケンまたはアルキン部分およびその酸またはアルコール誘導体は一般的に炭素原子約6〜約30個を有する。この部分は直鎖または分枝鎖の構造であることができる。完全飽和または1つ以上の二重または三重結合を有することができる。モノまたはポリエステルまたはエーテル系の油を使用する場合は、全炭素数ではなく個々の脂肪酸または脂肪アルコール部分について約6〜約30炭素原子の制限が適用される。
【0107】
特定の例として、多くの魚類は容易に回収できる代謝可能な油を含有している。例えばタラ肝油、サメ肝油および鯨油、例えば鯨蝋が魚油の数例として挙げることができ、これらを本発明において使用してよい。多くの分枝鎖の油は5炭素イソプレン単位において生化学的に合成でき、そして一般的にはテルペノイドと称される。サメ肝油はスクワレン、即ち2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−1,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサアエンとして知られている分枝鎖不飽和テルペノイドを含有する。魚油、例えばスクワレンおよびスクワラン、スクワレンの飽和類縁体は市販品を容易に入手でき、あるいは、当該分野で知られた方法により得てよい。
【0108】
多数の安定な乳化剤(本明細書においては界面活性剤、洗剤等とも称する)が医薬品科学において使用され、その多くが、十分非毒性であるかぎり、本発明の免疫原性エマルジョン組成物において有用である。これらには天然から誘導された物質、例えば樹木から誘導したが無類、植物性蛋白、糖系の重合体、例えばアルギネートおよびセルロース等が包含される。炭素骨格上にヒドロキシドまたは他の親水性置換基を有する特定のオキシ重合体または重合体は界面活性を有し、例えばポビドン、ポリビニルアルコールおよびグリコールエーテル系の1官能性または多官能性の化合物が挙げられる。長鎖脂肪酸誘導化合物が本発明において使用できる乳化剤の別の多く名グループを形成する。
【0109】
本発明において使用できる適当な乳化剤の特定の例は以下に示す通りである。(1)水溶性石鹸、例えば高級脂肪酸(C10−C22)のナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびアルカノールアンモニウム塩、および特にナトリウムおよびカリウムタローおよびココナツ石鹸。(2)アニオン系合成非石鹸洗剤であって、炭素原子約8〜22個およびスルホン酸および硫酸エステル基よりなる群から選択される基を含むアルキル基をその分子構造に有する有機の硫酸反応性生物の水溶性の塩として代表されるもの。
【0110】
(3)有機疎水性化合物とのアルキレンオキシド基の縮合により生成されるノニオン系合成洗剤。典型的な疎水性基はプロピレンオキシドのプロピレングリコールとの縮合生成物、アルキルフェノール、プロピレンオキシドとエチレンジアミンの縮合生成物、炭素原子8〜22個を有する脂肪族アルコール、および脂肪酸のアミドを包含する。
【0111】
(4)ノニオン系洗剤、例えばアミンオキシド、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドであって半極性の特性を有するもの。(5)長鎖スルホキシド、例えば式RSORに相当するもの、ただしここでRおよびRは置換または未置換のアルキル基であり、前者は炭素原子約10〜約28個を含み、Rは炭素原子1〜3個を含む。(6)両性合成洗剤、例えば3−ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウムおよび3−ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム。(7)両性イオン合成洗剤、例えば3−(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオ)プロパン−1−スルホネートおよび3−(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオ)−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート。
【0112】
上記段落に記載したものを除外する必然性は無いが、以下の型の乳化剤、即ち(a)脂肪酸、ロジン酸およびトール油の石鹸(即ちアルカリ塩);(b)アルキルアレンスルホネート;(c)アルキルスルフェート、例えば分枝鎖および直鎖の両方の疎水性の基、並びに、第1および第2スルフェート基を有する界面活性剤;(d)疎水性および親水性の基の間に中間的結合を含むスルフェートおよびスルホネート、例えば脂肪アシル化メチルタウリドおよび硫酸化脂肪モノグリセリド;(e)ポリエチレングリコールの長鎖酸エステル、特にトール油エステル;(f)アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテル;(g)長鎖アルコールおよびメルカプタンのポリエチレングリコールエーテル;および(h)脂肪アシルジエタノールアミドもまた本発明の免疫原性エマルジョン組成物中に使用できる。
【0113】
生物学的状況に対して特に設計され、そして一般的に使用されている多くの乳化剤がある。例えば、多くの生物学的洗剤(界面活性剤)が例えばSigma Chemical Company の1987 Catalog of Biochemical and Organic Compoundsの310〜316ページに列挙されている。このような界面活性剤は4種の基本的な型、即ち、アニオン系、カチオン系、両性イオン系およびノニオン系に分類される。アニオン系洗剤の例はアルギン酸、カプリル酸、コール酸、1−デカンスルホン酸、デオキシコール酸、1−ドデカンスルホン酸、N−ラウロイルサルコシンおよびタウロコール酸を包含する。カチオン系洗剤は臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化メチルベンゼトニウムおよび4−ピコリンドデシルスルフェートを包含する。両性イオン洗剤の例は3−[(3−クロロアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(一般的にはCHAPSと略記)、3−[(クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(一般的にはCHAPSOと略記)、N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートおよびリソ−アルファ−ホスファチジルコリンを包含する。ノニオン系洗剤の例はデカノイル−N−メチルグルカミド、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、n−ドデシルベータ−D−グルコピラノシド、脂肪アルコールのエチレンオキシド縮合物(例えばLubrolの商品名で販売されているもの)、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル(特にC12−C20脂肪酸)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばTween(登録商標)の商品名で販売)およびソルビオタン脂肪酸エステル(例えばSpan(登録商標)の商品名で販売)を包含する。
【0114】
界面活性剤の特に有用なグループはソルビタン系のノニオン系界面活性剤である。これらの界面活性剤は典型的にはソルビトールを脱水して1,4−ソルビタンとし、これを次に1等量以上の脂肪酸と反応させることにより製造する。脂肪酸置換部分はさらにエチレンオキシドと反応させて界面活性剤の第2のグループとしてよい。
【0115】
脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤は典型的には1,4−ソルビタンを脂肪酸、例えばラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸または同様の調査脂肪酸と反応させて1,4−ソルビタンモノエステル、1,4−ソルビタンセスキエステルまたは1,4−ソルビタントリエステルとすることにより製造する。これらの界面活性剤の一部に対する共通の名称は、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエートおよびソルビタントリオレエートを包含する。これらの界面活性剤はSPAN(登録商標)またはARLACEL(登録商標)の商品名で市販されている。
【0116】
SPAN(登録商標)およびARLACEL(登録商標)界面活性剤は親油性であり、一般的には油中に可溶または分散性である。それらはまた大部分の有機溶媒に可溶である。水中ではこれらは一般的には不溶であるが分散可能である。一般的にこれらの界面活性剤は1.8および8.6の間の親水性−親油性バランス(HLB)を有する。このような界面活性剤は当該分野で知られた手段により容易に製造できるか、または例えばICI America’s Inc.,Wilmington,DEから登録商標ATLAS(登録商標)の下に販売されている。
【0117】
界面活性剤の関連するグループはポリオキシエチレンソルビタンモノエステルおよびポリオキシエチレンソルビタントリエステルを含む。これらの物質は典型的にはエチレンオキシドを1,4−ソルビタンモノエステルまたはトリエステルに添加することにより製造する。ポリオキシエチレンの添加は親油性のソルビタンモノまたはトリエステル界面活性剤を一般的には水中に可溶または分散可能であり、そして様々な程度で有機性液体に可溶である親水性の界面活性剤に変換する。TWEEN(登録商標)界面活性剤は例えば関連するソルビタンモノエステルまたはトリエステル界面活性剤と組み合わせることによりエマルジョンの安定性を向上させる。TWEEN(登録商標)界面活性剤は一般的に9.6および16.7の間のHLB値を有する。TWEEN(登録商標)界面活性剤は多くの製造元、例えばICI America’s Inc.,Wilmington,Del.より、登録商標ATLAS(登録商標)界面活性剤の下で販売されている。
【0118】
単独またはSPAN(登録商標)、ARLACEL(登録商標)および/またはTWEEN(登録商標)界面活性剤と組み合わせて使用されるノニオン界面活性剤の別の群はエチレンオキシドと長鎖脂肪酸との反応により製造されるポリオキシエチレン脂肪酸である。この型の最も一般的な市販の界面活性剤はNYRJ(登録商標)の名称で販売されている固体であり、そしてステアリン酸のポリオキシエチレン誘導体である。MYRJ(登録商標)界面活性剤はTWEEN(登録商標)と同様、親水性であり、そして水中に可溶または分散可能である。MYRJ(登録商標)界面活性剤は、エマルジョンの形成において使用するためには、例えばTWEEN(登録商標)界面活性剤と、またはTWEEN(登録商標)/SPAN(登録商標)と、またはARLACEL(登録商標)界面活性剤混合物とブレンドしてよい。MYRJ(登録商標)界面活性剤は当該分野で知られた方法により製造するか、またはICI America’s Inc.から購入してよい。
【0119】
ポリオキシエチレン系のノニオン系界面活性剤の別のグループはラウリル、アセチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導したポリオキシエチレン脂肪酸エーテルである。これらの物質は典型的にはエチレンオキシドを脂肪アルコールに添加することにより上記したとおり製造する。これらの界面活性剤の市販品の名称はBRIJ(登録商標)である。BRIJ(登録商標)界面活性剤は界面活性剤中のポリオキシエチレン部分のサイズにより親水性または親油性となる。これらの化合物の製造は当該分野において可能であるが、ICI America’s Incのような販売元から容易に入手することもできる。
【0120】
本発明の実施において使用してよい他のノニオン系界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレン脂肪エーテル、ポリオキシエチレン含有蜜蝋誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪グリセリド、グリセロール脂肪酸エステルまたは他のポリオキシエチレン酸アルコールまたは炭素原子12〜22個の長鎖脂肪酸のエーテル誘導体である。
【0121】
上記したとおり、特定の実施形態においては、2種以上の界面活性剤を本発明の免疫原性エマルジョン組成物中で組み合わせる。例えば、免疫原性エマルジョン組成物は1〜9のHLB価を有する親水性乳化剤および10〜18のHLB価を有する親油性乳化剤を含むことができる。特定の例として、ソルビタン脂肪酸エステルはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと組み合わせることができる(これらの乳化剤の一部とそのHLB価を示した下記の表1参照)。
【0122】
【表1】

本発明の免疫原性エマルジョン組成物は一般的に非経腸投与を意図しているため、免疫原性組成物の張力、即ち浸透圧は、典型的には、例えば組成物と通常の生理学的液体との間の溶質の濃度の相違による組成物の投与後の膨潤または急速な吸収を防止するためには、生理学的液体と適合性を有するものである。本質的に何れかの生理学的に許容される溶質、例えば塩化ナトリウムを、浸透圧の調節のために使用することができる。
【0123】
エマルジョン組成物はまた典型的には正常な生理学的条件に適合するpHを維持するために緩衝性を付与される。さらにまた、特定の実施形態においては、グリコペプチドのような特定の組成物成分の安定性を確保するため特定の水準に維持することが必要である。何れかの生理学的に許容される緩衝物質、例えばリン酸塩緩衝物質を本明細書において使用できる。他の許容される緩衝物質、例えば酢酸塩、トリス、重炭酸塩、炭酸塩等もまた同様に使用できる。水性成分のpHは典型的には約6.0〜8.0である。
【0124】
サブミクロンのエマルジョンをまず調製する場合は、エマルジョンの水性成分としては典型的には純粋な水を使用するが、その理由は、例えば、漸増塩濃度は所望の小さい液滴サイズを達成することをより困難にするためである。
【0125】
しかしながらエマルジョンを形成した後には、張力およびpHを例えば溶質および/または適切な緩衝物質の添加により適宜調節できる。一部の実施形態においては、抗原は最終免疫原性組成物に所望の浸透圧とpHを付与するために適切な浸透圧およびpHを有する緩衝溶液中に添加することができる。同様に、一部の実施形態においては、リン脂質を適切な浸透圧およびpHを有する緩衝溶液中に溶解または分散してエマルジョンに添加することができる。
【0126】
本発明の免疫原性エマルジョン組成物は当該分野でよく知られた数種の方法の何れかを用いて調製する。好ましくは、本発明のエマルジョン組成物はサブミクロンの油滴の水注油エマルジョン、即ち、直径約1ミクロン未満でありナノメートルの粒径範囲である分散(油)層液滴を有するエマルジョンの形態である。例えば高圧下に小型の穿孔に液体を強制的に通過させることにより生じさせた高剪断力の原理により作動する市販の乳化装置を用いることができる。市販の乳化装置の例は、Model 110Yマイクロ流動化装置(Microfluidics, Newton, Mass.)、Gaulin Model30CD(Gaulin,Inc.,Everett,Mass.)およびRainnie Minilab Type8.30H(Miro Atomizer Food and Dairy,Inc.,Hudson,Wis.)である。個々のエマルジョンと共に使用する適切な圧力は当業者が容易に決定できる。代謝可能な油エマルジョンに関するその他の情報は例えば共通保有している国際特許出願WO00/50006記載および米国特許6,299,884号に記載されている。
【0127】
油滴の粒径は例えば乳化剤の油に対する比(比が増大すると液滴粒径は典型的には減少する)、操作圧力(作動圧力が増大すると液滴粒径は典型的には減少する)および操作温度(温度が上昇すると液滴粒径は典型的には減少する)を変化させることにより変動させることができる。液滴粒径はまた、使用する特定の乳化剤および油、並びに、乳化の際に存在する他の成分(例えばリン脂質、抗原および以下に記載する任意の補充的化合物)に応じて変化する。
【0128】
液滴の粒径はサイジング機器、例えば市販のCoulter Corporation製のSub−Micron Particle Analyzer(Model N4MD)およびを用いて評価でき、そして方法のパラメーターは例えば実質的に全ての液滴が直径1ミクロン未満、典型的には直径0.8ミクロン未満、より典型的には直径0.5ミクロン未満となるまで上記した指針を用いて変化させることができる。「実質的に全て」とは少なくとも約80%(数に基づく)、典型的には少なくとも約90%、より典型的には約95%またはさらには少なくとも98%を意味する。粒径分布は、平均直径が記載した限度より小さくなるためには、典型的にはガウス分布である。
【0129】
1つの特徴的な例によれば、リン脂質、代謝可能な油、1〜9のHLB値を有する乳化剤、そして必要に応じて有機溶媒を合わせることにより油相とする。同時に、10〜18の範囲のHLB値を有する乳化剤を水または別の水溶液と合わせることにより水相とする。油相および水相を合わせ、高剪断の装置に付し、所望の粒径を有する分散(油相)粒子を含有するエマルジョンを形成する。方法は好ましくは何れの残留有機溶媒も除去することにより完了する。
【0130】
目的の抗原は多くの手法により本発明の免疫原性エマルジョン組成物内に存在させることができる。典型的には、エマルジョンは水、代謝可能な油、乳化剤、および必要に応じてリン脂質から、上記したとおり調製し、その後、ワクチンにおいて用いられる抗原を添加する。記載した通り、エマルジョンはまず、純粋な水(例えば脱イオン水)を用いて調製し、次に適切な緩衝液中の抗原を添加することにより所望の浸透圧およびpHを有する最終組成物を形成する。エマルジョン組成物は典型的には安定であるため、抗原およびエマルジョンは単純な振とうにより混合できる。他の手法、例えば抗原およびエマルジョンを急速に小型開口部(例えば注射針)を通過させること等によっても、有用なワクチン組成物を容易に得ることができる。しかしながら、目的の抗原をエマルジョン組成物の形成後に添加することは必須ではない。むしろ、抗原は上記した通り乳化よりも前に添加できる。
【0131】
種々の成分、例えばリン脂質および/または以下に記載する任意の補充的成分は、例えば乳化の前後において、(a)油溶性または油分散性形態においては油相に付加的成分を添加することにより、または(b)水溶性または水分散性形態においては水相に付加的成分を添加することにより、本発明のエマルジョン組成物に導入できる。
【0132】
(4.免疫原性微粒子組成物)
本明細書に記載した免疫原性微粒子組成物を形成するための有用な生体分解性の重合体はポリヒドロキシ酪酸(ポリヒドロキシブチレートとも称する);ポリヒドロキシ吉草酸(ポリヒドロキシバレレートとも称する);ポリグリコール酸(PGA)(ポリグリコリドとも称する);ポリ乳酸(PLA)(ポリラクチドとも称する);ポリジオキサノン;ポリカプロラクトン;ポリオルトエステルおよびポリ無水物から誘導される単独重合体、共重合体およびポリマーブレンドである。より典型的なものは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)例えばポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)(共に本明細書においては「PLA」と称する)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ラクチドとグリコリドの共重合体、例えばポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(本明細書においては「PLG」と記載する)またはD,L−ラクチドおよびカプロラクトンの共重合体である。
【0133】
上記重合体は種々の分子量のものが入手可能であり、そして、所定の用途のための適切な分子量は当業者が容易に決定できる。即ち、例えば、PLAの適当な分子量は約2000〜5000のオーダーであってよい。PLGの適当な分子量は約10,000〜約200,000、典型的には約15,000〜約150,000の範囲である。
【0134】
共重合体を使用する場合は、種々のモノマー比率を有する共重合体を使用してよい。例えばPLGを使用して微粒子を形成する場合は、種々のラクチド:グリコリドモル比が使用でき、そして、比は、部分的には併用吸着および/または捕獲物質種および所望の分解速度に応じて、広範な範囲で選択できる。例えば50%D,L−ラクチドおよび50%グリコリドを含有する50:50PLG重合体は急速再吸収重合体を形成するが、ラクチド成分の増大により、75:25PLGはより緩徐に、そして85:15および90:10のものはさらに緩徐に分解する。種々のラクチド:グリコリド比の微粒子の混合物を本発明において使用することにより所望の放出動態を達成してよい。本発明の微粒子の分解速度はまた重合体の分子量および重合体の結晶性のような要因により制御できる。
【0135】
種々のラクチド:グリコリド比および分子量を有するPLG共重合体は多くの製造元、例えばBoehringer Ingelheim,GermanyおよびBirmingham Polymers,Inc.,Birmingham,ALより容易に購入できる。例示される一部のPLG共重合体は(a)RG502、即ち50:50のラクチド/グリコリドモル比および分子量12,000Daを有するPLG;(b)RG503、即ち50:50のラクチド/グリコリドモル比および分子量34,000Daを有するPLG;(c)RG504、即ち50:50のラクチド/グリコリドモル比および分子量48,000Daを有するPLG;(d)RG752、即ち75:25のラクチド/グリコリドモル比および分子量22,000Daを有するPLG;および(e)RG505、即ち75:25のラクチド/グリコリドモル比および分子量68,000Daを有するPLGを包含する。PLG重合体はまた当該分野でよく知られた手法、例えばTabata et al.,J.Biomed.Mater.Res.(1988)22:837−858に記載のものを用いて乳酸成分の単純な縮重合によっても合成できる。
【0136】
ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)重合体を使用する場合は、典型的にはラクチド/グリコリドのモル比20:80〜80:20、より典型的には40:60〜60:40を有志、そして、分子量10,000〜100,000ダルトン、より典型的には20,000〜70,000ダルトンを有するものとする。
【0137】
微粒子は当該分野でよく知られた数種の方法の何れかを用いて調製する。例えば、一部の実施形態においては二重エマルジョン/溶媒蒸発法、例えば米国特許3,523,907号およびOgawa et al.,Chem.Pharm.Bull.(1988)36:1095−1103に記載のものを本発明において使用することにより微粒子を形成する。これらの手法では、重合体溶液の液滴よりなる一次エマルジョンを形成し、これをその後、粒子安定化剤/界面活性剤を含有する連続水相と混合する。
【0138】
別の実施形態においては、微粒子はまた、例えばThomasin et al.,J.Controlled Release (1996)41:131;米国特許2,800,457;Masters,K.(1976)Spray Drying 2nd Ed. Wiley, New Yorkに記載の噴霧乾燥およびコアセルベーション、Hall et al.,(1980) The ”Wuster Process” in Controlled Release Technologies:Methods, Theory and Applications (A.F.Kydonieus,ed.),Vol.2,pp.133−154 CRC Press,Boca Raton, Florida and Deasy, P.B.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.(1988)S(2):99−139に記載のエアサスペンションコーティング法;および例えばLim et al.,Science(1980)210:908−910に記載のイオンゲル化を用いて形成することができる。
【0139】
好ましい実施形態においては、水中油中水(w/o/w)溶媒蒸発系を用いながら、O’Hagan et al.,Vaccine(1993)11:965−969, O’Hagen et alへのPCT/US99/17308(WO00/06123)およびJeffery et al.,Pharm.Res.(1993)10:362に記載の通り微粒子を形成することができる。
【0140】
一般的に、PLGのような目的の重合体を有機溶媒、例えば酢酸エチル、ジメチルクロリド(塩化メチレンおよびジクロロメタンとも称する)、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム等に溶解する。重合体は典型的には有機溶媒中約1〜30%、より典型的には約2〜15%、さらに典型的には約3〜10%、そして最も典型的には約4〜8%の溶液とする。次に重合体溶液を水溶液の第1の容量と合わせ、乳化してo/wエマルジョンを形成する。水溶液は例えば脱イオン水、生理食塩水、緩衝溶液、例えばリン酸塩緩衝食塩水(PBS)またはクエン酸ナトリウム/エチレンジアミン4酢酸(クエン酸ナトリウム/ETDA)緩衝液であることができる。後者の溶液は(a)正常な生理学的液体と本質的に同じ張力、即ち浸透圧を提供し、そして(b)正常な生理学的状態に適合するpHを維持することができる。或は、本発明の組成物の張力および/またはpH特性は、微粒子形成の後、投与前に調節できる。好ましくは重合体溶液の水溶液に対する容量比は、約5:1〜約20:1の範囲、より好ましくは約10:1である。乳化はこの作業のために適切な何れかの装置を用いて実施し、そして典型的には例えばホモゲナイザーのような高剪断装置である。
【0141】
一部の実施形態においては、1つ以上の付加的な成分を微粒子内に捕獲する。例えば、抗原、リン脂質および/または以下に記載するような任意の補充的成分は、これを(a)油溶性または油分散性形態である場合は重合体溶液に、または(b)水溶性または水分散性形態である場合は水溶液に添加することにより導入できる。
【0142】
次にo/wエマルジョンの容量を、典型的には界面活性剤を含有する水溶液のより多量の第2の容量に合わせる。水溶液のo/wエマルジョンに対する容量比は、典型的には約2:1〜10:1、より典型的には約4:1の範囲である。本発明の実施のために適切な界面活性剤の例は、上記に列挙した通りである。吸着すべき物質種の型に対して適切な界面活性剤の選択は当業者が容易に行える。例えば、荷電した界面活性剤、例えばアニオン系またはカチオン系の界面活性剤の存在下に製造された微粒子は広範な種類の分子を吸着できる実効負電荷または実効正電荷を有する表面を持った微粒子をもたらす。例えばアニオン系界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて製造した微粒子、例えばSDS−PLG微粒子は正荷電した物質種、例えばポリペプチド含有物質種、例えば蛋白を吸着する。同様に、カチオン系界面活性剤、例えばCTABを用いて製造した微粒子、例えばPLG/CTAB微粒子は負荷電の物質種、例えばポリヌクレオチド含有物質種、例えばDNAを吸着する。吸着すべき物質種が正および負の電荷の領域を有する場合は、カチオンまたはアニオンまたはノニオン系の界面活性剤のいずれかが適している。特定の物質種は界面活性剤の組み合わせを有する微粒子にさらに容易に吸着する。さらにまた、一部の例においては、上記有機溶液に界面活性剤を添加することが望ましい。
【0143】
CTABのようなカチオン系界面活性剤を使用する場合は、典型的には約0.00025〜1%溶液、より典型的には約0.0025〜0.1%溶液として提供される。DSSのようなアニオン系界面活性剤を使用する場合は、典型的には約0.00001〜0.25%溶液、より典型的には約0.0001〜0.0025%溶液として提供される。PVAのようなノニオン系界面活性剤を使用する場合は、典型的には約2〜15%溶液、より典型的には約4〜10%溶液として提供される。カチオン系界面活性剤の場合、界面活性剤の重合体に対する重量比は典型的には約0.00001:1〜約0.5:1;より典型的には約0.001:1〜約0.1:1、そしてさらに典型的には約0.0025:1〜約0.05:1であり;DSSのようなアニオン系界面活性剤の場合は、界面活性剤の重合体に対する重量比は典型的には約0.00001:1〜約0.025:1;より典型的には約0.0001:1〜約0.0025:1であり;PVAのようなノニオン系界面活性剤の場合は、界面活性剤の重合体に対する重量比は典型的には約0.001:1〜約0.1:1;より典型的には約0.0025:1〜約0.05:1である。
【0144】
次にこの混合物をホモゲナイズして安定なw/o/w二重エマルジョンを製造する。上記したホモゲナイズ工程の各々は典型的には室温(即ち25℃)以下、より典型的には、例えばアイスバス中で冷却しながら実施する。
【0145】
次に有機溶媒を蒸発させる。調製の後、微粒子はそのまま使用するか、後の使用のために凍結乾燥できる。
【0146】
処方パラメーターを操作することにより0.05μm(50nm)のオーダーの小型の微粒子からより大きい微粒子、50μm以上のものを製造できる。例えばJeffery et al.,Pharm.Res.(1993)10:362−368;McGee et al.,J.Microencap.(1996)を参照できる。例えば、低減した攪拌混合では典型的にはより大きい微粒子となり、内相の容量の増大および重合体濃度の上昇でも同様である。小型粒子は典型的には増強された攪拌混合並びに小さい水相容量、高濃度のエマルジョン安定化剤および重合体濃度の低下により生じる。
【0147】
粒径は例えばレーザ光散乱により、例えばヘリウムネオンレーザー搭載の分光光度計を用いて測定できる。一般的に、粒径は室温で測定し、対象となる試料の複数の分析を行い(例えば5〜10回)、粒径の平均値を求める。粒径はまた走査電子顕微鏡(SEM)を用いて容易に測定される。
【0148】
調製の際には、種々の成分、例えば抗原、リン脂質および任意の補充的成分、例えば後に記載するものを微粒子と混合し、得られた処方を所望により使用時まで凍結乾燥する。典型的には、これらの成分は水溶液または分散液として微粒子に添加する。一部の例においては、これらの物質種は微粒子の表面に吸着される(例えばポリペプチド抗原が微粒子表面に吸着される後述の実施例を参照)。吸着された物質種の含量は標準的手法を用いて測定できる。
【0149】
即ち、本発明の重合体粒子はその内部に捕獲またはカプセル化された種々の成分を有してよく、それと同時にその上に吸着された種々の成分を有する。例えば当業者は本発明に従って、吸着された抗原のほかに、吸着された微粒子を有する微粒子を製造してよい。当業者はまた、抗原、リン脂質および/または後に記載する補充的成分の何れかのようなカプセル化された成分を有する微粒子を製造してよい。
【0150】
(5.補充的成分)
本発明の免疫原性組成物は広範な種類の任意の補充的成分を包含できる。このような補充的成分には(a)医薬品、例えば抗体および抗ウィルス剤、非ステロイド抗炎症剤、鎮痛剤、血管拡張剤、心臓血管剤、向精神薬、神経弛緩剤、抗欝剤、抗パーキンソン剤、ベータブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、ブラジキニン阻害剤、ACE阻害剤、血管拡張剤、プロラクチン阻害剤、ステロイド、ホルモン拮抗剤、抗ヒスタミン剤、セロトニン拮抗剤、ヘパリン、化学療法剤、抗新生物剤および成長因子、例えばPDGF、EGF、KGF、IGF−1およびIGF−2、FGF、(b)ホルモン類、例えばペプチドホルモン、例えばインスリン、プロインスリン、成長因子、GHRH、LHRH、EGF、ソマトスタチン、SNX−111、BNP、インスリノトロピン、ANP、FSH、LH、PSHおよびhCH、ゴナダルステロイドホルモン(アンドロゲン、エストロゲンおよびプロゲステロン)、甲状腺刺激ホルモン、インヒビン、コレシストキニン、ACTH、CRF、ヂノルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、フィブロネクチンフラグメント、ガラニン、ガストリン、インスリノトロピン、グルカゴン、GTP結合蛋白フラグメント、グアニリン、ロイコキニン、マガイニン、マストパラン、デルマセプチン、システミン、ニューロメジン、ニューロテンシン、パンクレスタチン、パンクレアチンポリペプチド、物質P、セクレチン、チモシン等、(c)酵素、(d)転写または翻訳メディエーター、(e)代謝経路の中間体、(f)免疫モジュレーター、例えば種々のサイトカイン、例えばインターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4およびガンマ−インターフェロン、および(g)補充的な免疫学的アジュバント、例えば後に記載するものが包含される。
【0151】
免疫原性の微粒子組成物の場合は、このような補充的成分は例えば微粒子の表面に吸着、微粒子内部に捕獲、微粒子に未結合のまま溶液中に溶解または分散、微粒子の別のグループに吸着または捕獲させるなどすることができる。
【0152】
免疫原性エマルジョン組成物の場合、このような補充的成分は、例えば、エマルジョンの油相内に溶解または分散、エマルジョンの水相内に溶解または分散、エマルジョンの水相と油相の界面に配置するなどが可能である。
【0153】
補充的免疫学的アジュバントを用いることにより免疫原性組成物の有効性を増強してよい。例えば、このような免疫学的アジュバントは本発明の免疫原性組成物と同時に、例えば同じ組成物中で、または個別の組成物中で投与してよい。或はこのようなアジュバントは本発明の免疫原性組成物よりも前または後に投与してよい。
【0154】
補充的免疫学的アジュバントは例えば(1)アルミニウム塩(アルム)、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;(2)サポニンアジュバント、例えばQuilAまたはQS21(例えばStimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA))を使用するか、それから生成した粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)、このICOMSは例えばWO00/07621に記載の通りさらに洗剤を含有しなくて良い;(3)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(4)サイトカイン、例えばインターロイキン類(例えばIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(WO99/44636)等)、インターフェロン類(例えばガンマインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)等、(5)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(Roman et al.,Nat.Med.,1997,3.849−854;Weiner et al.,PNAS USA,1997,94,10833−10837;Davis et al.,J.Immunol.1988,160,870−876;Chu et al.,J.Exp.Med.,1997,186,1623−1631;Lipford et al.,Eur.J.Immunol.1997,27,2340−2344;Moldoveanu et al., Vaccine,1988,16,1216−1224,Krieg et al.,Nature,1995,374,546−549;Klinman et al.,PNAS USA,1996,93,2879−2883:Ballas et al.,J.Immunl.,1996,157,184901845;Cowdery et al.,J.Immunol.,1996,156,4570−4575;Halpern et al.,Cell.Immunol.,1996,167,72−78;Yamamoto et al.,Jpn.J.Cancer Res.,1988,79,866−873;Stacey et al.,J.Immunol.1996,157,2116−2122;Messina et al.,J.Immunol.,1991,147,1759−1764;Yi et al.,J.Immunol.,1996,157,4918−4925;Yi et al.,J.Immunol.,1996,157,5394−5402;Yi et al.,J.Immunol.,1998,160,4755−4761;およびYi et al.,J.Immunol.,1998,160,5898−5906;国際特許出願WO96/02555、WO98/16247、WO98/18810、WO98/40100、WO98/55495、WO98/37919およびWO98/52581)、即ち、少なくとも1つのCGジヌクレオチド(シトシンヌクレオチドとその後のグアニンヌクレオチド)を含むオリゴヌクレオチドであり、必要に応じてシトシンの代わりに5メチルシトシンを用いたもの;(6)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル、例えばWO99/52549;(7)ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤をオクトキシノールと組み合わせたもの(WO01/21207)またはポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤を少なくとも1つの別のノニオン系界面活性剤、例えばオクトキシノールと組み合わせたもの(WO01/21152);(8)サポニンおよび免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えばCpGオリゴヌクレオチド)(WO00/62800);(9)免疫刺激剤および金属塩粒子、例えばWO00/23105;(10)サポニンおよび水中油エマルジョン、例えばWO99/11241;(11)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)例えばWO98/57659;(12)細菌性ADPリボシル化毒素の無毒化突然変異体、例えばコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)またはE.coli熱不安定性毒素(LT)、特にLT−K63(野生型アミノ酸ではリジンが63位で置換)、LT−R72(野生型アミノ酸ではアルギニンが72位で置換)、CT−S109(野生型アミノ酸ではセリンが109位で置換え)およびPT−K9/G129(野生型アミノ酸ではリジンが9位で置換、グリシンが129位で置換)(例えば国際特許出願WO93/13202およびWO92/19265参照);(13)天然または合成の2本鎖RNA(「dsRNA」)を含むアジュバント、これは一般的には間歇的なリボグアニル酸−リボシチジル酸([rG−rC])およびリボアデニル酸−ポリリボウリジル酸([rA−rU])塩基対;詳細は共通保有しているPCT/US02/30423参照;および(14)免疫刺激剤として作用して組成物の有効性を増強する他の物質である。
【0155】
ムラミルペプチドは、例えばN−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタム(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等を包含する。
【0156】
アジュバントの別の例は、Vaccine Design,The Subunit and the Adjuvant Approach,Powell,M.F. and Newman,M.J.eds.,Plenum Press,1995を参照できる。
【0157】
(6.投与)
処方された後には、本発明の組成物は非経腸、例えば注射(針不使用であってもよい)により投与できる。組成物は例えば皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、皮内または筋肉内に注射できる。投与の他の方法は鼻、粘膜、眼内、直腸、膣、口腔および肺への投与、坐剤および経皮または皮内の適用を包含する。
【0158】
一部の実施形態において、本発明の組成物は部位特異的ターゲティング送達のために使用できる。例えば、組成物の静脈内投与は肺、肝、脾臓、血液循環系または骨髄をターゲティングするために使用できる。
【0159】
上記より明らかな通り、本発明の組成物は一般的に薬学的に受容可能な賦形剤1種以上を含有する。例えば水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノール等のようなベヒクルを使用してよい。他の賦形剤、例えば水和剤または乳化剤、生物学的緩衝物質等を存在させてよい。生物学的鑑賞物質は、薬学的に許容でき、そして所望のpH、即ち生理学的範囲のpHの処方を与えるような実質的には何れの溶液であることもできる。その例としては、食塩水、リン酸塩緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水、Hank緩衝食塩水等が包含される。最終剤型に応じて、当該分野で知られた他の賦形剤、例えばバインダー、錠剤崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、滑剤(流動性増強剤)、圧縮補助剤、着色料、甘味料、保存料、懸濁/分散剤、膜形成剤/コーティング、フレーバーおよび印刷インキも導入することができる。
【0160】
治療は単一用量日程または多用量日程に従って行ってよい。多用量日程は投与の初期過程を例えば1〜10個別用量で行い、その後、治療応答の維持および/または強化のために選択された他の用量を、例えば第2用量では1〜4ヶ月、そして必要に応じて数ヵ月後にその後の用量を与える。用量用法は少なくとも部分的には対象の必要性により決定され、そして医師の判断により異なる。
【0161】
さらにまた、疾患の予防が望まれる場合は、組成物は一般的には感染症または目的の障害の原発時よりも前に投与する。治療の別の形態、例えば症状または再発の低減または除去が望まれる場合は、組成物は一般的には感染症または目的の障害の原発時の後に投与する。
【0162】
(C.実験)
以下に示すものは、本発明の方法の実施に関する特定の実施形態の例である。実施例は説明を目的とするのみであり、如何なる点においても本発明の範囲を制限する意図はない。
【0163】
使用した数値(例えば量、温度等)は正確であるよう努めたが、一部の実験誤差および偏りは当然ながら妥協せざるを得ない。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
(ブランクPLG微粒子の製造および特性化)
微粒子は塩化メチレン中RG504重合体(50:50のラクチド/グリコリドモル比および分子量42〜45kDaを有するPLG、Boehringer Ingelheimより入手可能)の6%w/v溶液を用いて製造した。この溶液10mlを15000rpmで3分間、ホモゲナイザー(Ultra−TurraxT25IKA−Labortechnik,Germany)の10mmプローブを用いて2.5mlPBSとともにホモゲナイズすることにより、油中水エマルジョンを形成した。このエマルジョンを次に6μg/mlジオクチルナトリウムスルホスクシネート(DSS)(Sigma,USAより入手可能)を含有する蒸留水50mlに添加し、アイスバス中25分間20mmプローブ(ES−15 Omni International,GA,USA)を装着したホモゲナイザーを用いて極めて高速度でホモゲナイズした。これにより水注油中水エマルジョンが得られ、これを室温で12時間1000rpmで攪拌することにより、塩化メチレンを蒸発させた。得られた微粒子を凍結乾燥した。得られた微粒子は0.05%DSSwt/wtを含有していた。得られた微粒子の粒径分布は粒径分布分析器(Master Sizer,Malvern Instruments,UK)を用いて測定し、0.8〜1.2μmであることがわかった。
【0165】
(実施例2)
(捕獲されたEisai57またはEisai53を有するPLG微粒子の製造および特性化)
微粒子は(a)クロロホルム懸濁液中のEisai57(ER−804057,Eisai Co.,Ltd.,Tokyo,JP)リン脂質3mg、または(b)エタノール懸濁液中のEisai53(ER−804053,Eisai Co.,Ltd.,Tokyo,JP)リン脂質3mgを予め添加した塩化メチレン中RG504PLG重合体の6%w/v溶液10mlを、2.5mlPBSと共に、10mmプローブ(Ultra−Turrax T25 IKA−Labortechnik,Germany)を用いて、3分間、15000rpmでホモゲナイズして油中水エマルジョンを形成することにより製造した。エマルジョン3つの各々を、次に、6μg/mlDSSを含有する蒸留水50mlに添加し、アイスバス中25分間20mmプローブ(ES−15 Omni International,GA,USA)を装着したホモゲナイザーを用いて極めて高速度でホモゲナイズした。これにより水注油中水エマルジョンが得られ、これを室温で12時間1000rpmで攪拌することにより、塩化メチレンを蒸発させた。得られた微粒子を凍結乾燥した。得られた微粒子は0.05%DSSwt/wtを含有していた。得られた微粒子の粒径分布は粒径分布分析器(Master Sizer,Malvern Instruments,UK)を用いて測定し、0.8〜1.2μmであることがわかった。
【0166】
(実施例3)
(注射可能組成物の製造)
実施例1のDSS粒子10mg(即ち10mg/ml懸濁液10ml)をヒスチジン緩衝液(10ミリモル、pH5.0)1ml中のB型髄膜炎抗原(「MenB」)(例えばPCT/IB02/03904;WO01/52885;Vol/287 Science,1816(2000)参照)1mgと共に室温で一夜インキュベートした。懸濁液に賦形剤(マンニトール:スクロース、45:15mg/ml)を添加した後に凍結乾燥した。
【0167】
これらの組成物は(a)注射用水で希釈再調製した後にマウスに筋肉内注射(「PLG/MenB」)、(b)TE緩衝液中1.0mg/mlCpGオリゴヌクレオチド(Oligos Inc.,USAより入手可能)を含有する溶液0.1mlと合わせ(「PLG/MenB+solCPG」)てから注射、(c)エタノール中1.0mg/mlER−804053を含有する溶液0.1mlと合わせ(「PLG/MenB+solEisai53」)てから注射、(d)エタノール中1.0mg/mlER−804057を含有する溶液0.1mlと合わせ(「PLG/MenB+solEisai57」)てから注射、(e)実施例2の捕獲ER−804053を有する凍結乾燥DSS粒子10mgと合わせ(「PLG/MenB+PLG/Eisai53」)てから注射、または(f)実施例2の捕獲ER−804057を有する凍結乾燥DSS粒子10mgと合わせ(「PLG/MenB+PLG/Eisai57」)てから注射した。
【0168】
さらにまた、実施例2の捕獲リン脂質を有する凍結乾燥DSS粒子100mgをヒスチジン緩衝液(pH5.0)1ml中B型髄膜炎抗原1.0mgと共に室温で一夜インキュベートした。これらの組成物の各々(本明細書においては「PLG/Eisai53/MenB」または「PLG/Eisai57/MenB」と称する)を直接マウスに筋肉内注射した。
【0169】
上記した場合の各々において、マウスは21日および35日においてブースター投与した。
【0170】
(実施例4)
(MF59エマルジョンの製造および特性化)
クロロホルム500μlを50ml容ビーカーにいれ、100μlのSpan(登録商標)85(Sigma,USAより入手)およびスクワラン1ml(Sigma,USAより入手)を添加し、混合した。100μlのTween(登録商標)80(Sigma,USAより入手)を18.8mlのDI水に添加し、15分間攪拌することにより混合した。Tween(登録商標)溶液を油性混合物に添加し、1分間10mmプローブ(Ultra−Turnax T25 IKA−Labortechnik,Germany)を用いてホモゲナイズした。乳化した混合物をマイクロ流動化装置(M1105型、Microfluidics)に90psiで5回通した。残留クロロホルムを30分間蒸発させた。エマルジョンの粒径は動的光散乱により分析し、粒径分布は<200nmであった。
【0171】
(実施例5)
(Eisai57およびEisai53MF59エマルジョンの製造および特性化)
油相に取り込まれたEisai57およびEisai53を用いて水中油エマルジョンを製造した。慨すれば、800μlのクロロホルム中5mg/mlのEisai57および800μlのクロロホルム中5mg/mlのEisai53を個別の50ml容ビーカーに入れた。クロロホルムは各々約500μlの容量となるまで蒸発させた。100μlのSpan(登録商標)85およびスクワレン1mlを各々に添加し、混合した。100μlのTween(登録商標)を18.8mlのDI水に添加し、15分間攪拌することにより混合した。Tween(登録商標)溶液を各油性混合物に添加し、1分間10mmプローブ(Ultra−Turnax T25 IKA−Labortechnik,Germany)を用いてホモゲナイズした。各々の乳化した混合物をマイクロ流動化装置に90psiで5回通した。エマルジョンの粒径は動的光散乱により分析し、粒径分布は<200nmであった。
【0172】
(実施例6)
(注射可能組成物の製造)
実施例4および5において形成したエマルジョンの各々0.5mlにPBS中抗原0.2mg/mlを含有する溶液0.5mlを添加し、得られた組成物を5分間混合した。使用した抗原は、(a)B型髄膜炎抗原、得られる注射可能組成物は本明細書においては、「MF59+solMenB」、「MF59/Eisai53+solMenB」および「MF59/Eisai57+solMenB」;(b)HIVgp120エンベロープ蛋白(例えばWO00/06123;WO02/26209)、得られる注射可能組成物は本明細書においては、「MF59+solgp120」、「MF59/Eisai53+solgp120」および「MF59/Eisai57+solgp120」;(c)HCV E1E2ポリペプチド(例えばPCT/US02/20676参照)、得られる注射可能組成物は本明細書においては、「MF59+solE1E2」、「MF59/Eisai53+solE1E2」および「MF59/Eisai57+solE1E2」とした。
【0173】
実施例4で形成したエマルジョン0.5mlに(a)PBS中CpGオリゴヌクレオチド0.1mg/mlを含有する溶液0.5ml、および(b)PBS中抗原0.2mg/mlを含有する溶液0.5mlを添加した。得られた組成物を5分間混合した。使用した抗原は(a)B型髄膜炎蛋白(「MF59+solMenB+solCpG」);(b)HIVgp120エンベロープ蛋白(MF59+solgp120+solCpG);(c)HCV E1E2ポリペプチド(「MF59+solE1E2+solCpG」)とした。
【0174】
これらの組成物の各々を直接マウスに筋肉内注射した。各々の場合において、マウスには21日および35日においてブースター投与した。
【0175】
(実施例7)
(インビボ評価)
(抗体試験)
抗原特異的抗体IgGおよびIgG異性体タイプ(IgG1およびIgG2a)は3,3,5,5’−テトラメチルベンジジン系比色検出を用いてELISAにより測定した。ELISAプレート(Nucn Maxisorb U96)を4℃で一夜5μg/mlの精製抗原50μlでコーティングした。コーティングされたウェルをリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中5%ヤギ血清(Gibco BRL,Grand Island,NY)150μlで37℃で1時間ブロッキングした。プレートを洗浄緩衝液(PBS、0.3%Tween−20)で3回洗浄し、タッピングし、乾燥した。血清試料および血清標準物質は、まずブロッキング緩衝液中に稀釈し、次にコーティングされブロッキングされたプレートに移し、そこで同じ緩衝液を用いて試料を連続3倍希釈した。37℃1時間インキュベートした後にプレートを洗浄した。セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgGガンマ鎖特異的(Galtag Laboratories,Inc.)を用いて全IgGを測定し、そして抗マウスIgG1およびIgG2を用いてアイソタイプを測定した。37℃1時間インキュベートした後、プレートを洗浄して未結合の抗体を除去し、TMB基質を用いてプレートを展開し、そして呈色反応は15分後に2NのHCを添加することによりブロックした。抗体の力価は試料希釈度の逆数として表示し、その場合、希釈試料の光学密度は450nmで0.5とした。結果は表2および3A〜3Cに示す。
【0176】
【表2】

【0177】
【表3A】

【0178】
【表3B】

【0179】
【表3C】

要件となる発明の好ましい実施形態を幾分詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を外れることなく顕著な変更が可能であると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、即ち:(a)水;(b)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリシアノアクリレートから選択される重合体を含む重合体微粒子;(c)該微粒子に吸着させた抗原;ならびに(d)以下の成分、即ち:(i)独立して下記基:
【化1】

および下記基:
【化2】

から選択されるホスホリル基1つ以上;(ii)直鎖アルカン基:
【化3】

[式中nは独立して6〜20の整数である]複数、を含む合成リン脂質化合物、を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記リン脂質化合物が下記基:
【化4】

1つ以上を含み下記基:
【化5】

を全く含まない請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記リン脂質化合物が下記基:
【化6】

1つ以上を含み下記基:
【化7】

を全く含まない請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記リン脂質化合物が前記基:
【化8】

4〜8つを含む請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記リン脂質化合物が前記基:
【化9】

6つを含む請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記リン脂質化合物が糖基を含まない請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記リン脂質化合物が下記式:
【化10】

[式中、
は下記:
(a)C(O);
(b)C(O)C1−14アルキル−C(O)であって、ここで該C1−14アルキルは、必要に応じてヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アルキレンジオキシ、C1−5アルキルアミノまたはC1−5アルキル−アリールで置換されており、ここで該C1−5アルキル−アリールのアリール部分は、必要に応じてC1−5アルコキシ、C1−5アルキルアミノ、C1−5アルコキシ−アミノ、C1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキルC(O)OH、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキル−C(O)C1−5アルキルで置換されている、C(O)C1−14アルキル−C(O);
(c)必要に応じてヒドロキシまたはアルコキシで置換されているC〜C15の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(d)C(O)C6−12アリーレン−C(O)であって、ここで、該アリーレンは、必要に応じてヒドロキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノにより置換されている、C(O)C6−12アリーレン−C(O);
よりなる群から選択され;
aおよびbは独立して0、1、2、3または4であり;
d、d’、d’’、e、e’、e’’は独立して1〜4の整数であり;
、X、YおよびYは独立して非存在、酸素、NHおよびN(C(O)C1−4アルキル)およびN(C1−4アルキル)よりなる群から選択され;
およびWは独立してカルボニル、メチレン、スルホンおよびスルホキシドよりなる群から選択され;
およびRは独立して下記:
(a)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;
(b)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはジアルケニル;
(c)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;
(d)アルキル基が必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたNHC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(e)下記基:
【化11】

{式中、ZはOおよびNHよりなる群から選択され、そしてMおよびNは独立してC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルアミノおよびアシルアミノよりなる群から選択される};
よりなる群から選択され;
およびRは独立して、必要に応じてフルオロまたはオキソで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニルよりなる群から選択され;
およびRは独立してC(O)C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルよりなる群から選択され、ここで該アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基は独立して、そして必要に応じて、ヒドロキシ、フルオロまたはC〜Cアルコキシで置換されており;
、G、GおよびGは独立して酸素、メチレン、アミノ、チオール、NHC(O)およびN(C(O)C1−4アルキル)よりなる群から選択されるか;またはGまたはGは一緒になって水素原子またはヒドロキシルであり得る]を有する化合物あるいは薬学的に受容可能なその塩である請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
がC(O)であり;a、b、d、d’、d’’、e、e’およびe’’は独立して1または2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRはオキソで置換されたC10〜C20の直鎖のアルキルであり;RおよびRはC〜C10の直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C−C14の直鎖のアルキルまたはアルケニルであり;そしてG、G、GおよびGは酸素である請求項7記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
がC(O)であり;aおよびbが2であり;d、d’、eおよびe’が1であり;d’’およびe’’は2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRは2位においてオキソで置換されたC13の直鎖のアルキルであり;RおよびRはCの直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C11の直鎖のアルキルであり;そしてG、G、GおよびGは酸素である請求項7記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記リン脂質が前記微粒子内に捕獲されている請求項1〜9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記リン脂質が前記微粒子に吸着されている請求項1〜9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記リン脂質が水溶液中に分散されている請求項1〜9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
抗原2つ以上が前記微粒子に吸着されている請求項1〜12のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
別の抗原が前記微粒子内に捕獲されている請求項1〜12のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記抗原がポリペプチド含有抗原である請求項1〜14のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記抗原がポリヌクレオチド含有抗原である請求項1〜14のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記抗原が腫瘍細胞由来である請求項1〜16のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記抗原が病原性生物由来である請求項1〜16のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記病原性生物がウィルス、細菌、真菌および寄生生物から選択される請求項18記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記病原性生物がHIV、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、B型髄膜炎、ヘモフィルスインフルエンザタイプB、百日咳、ジフテリア、破傷風およびA型インフルエンザのウィルスから選択される請求項18記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記病原性生物がヒト免疫不全ウィルス、髄膜炎菌およびヘルペスウィルスから選択される請求項18記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記免疫原性組成物がさらに界面活性剤を含む請求項1〜21のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記微粒子が500ナノメートルと20ミクロンとの間の直径を有する請求項1〜22のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記ポリ(α−ヒドロキシ酸)がポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)から選択される請求項1〜23のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記ポリ(α−ヒドロキシ酸)がポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)である請求項1〜23のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)が40:60〜60:40の範囲のラクチド:グリコリドモル比を有する請求項25記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
補充的免疫学的アジュバントをさらに含む請求項1〜26のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記免疫原性組成物が注射可能組成物である請求項1〜27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
脊椎動物の宿主動物に抗原の治療量を送達する方法であって、請求項1〜28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該宿主動物に投与することを含む、方法。
【請求項30】
病原性生物感染または腫瘍を有する宿主動物の治療方法であって、請求項1〜28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
【請求項31】
腫瘍または病原性生物感染による感染に対して宿主動物を免疫化する方法であって、請求項1〜28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
【請求項32】
宿主動物における免疫応答を刺激する方法であって、請求項1〜28のいずれかに記載の免疫原性組成物を宿主動物に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記免疫応答が体液性免疫応答を含む請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記免疫応答が細胞性免疫応答を含む請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記免疫応答がウィルス、細菌または寄生生物の感染に対して誘起される請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記免疫応答が腫瘍に対して誘起される請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記宿主動物が脊椎動物である請求項32記載の方法。
【請求項38】
前記宿主動物が哺乳動物である請求項32記載の方法。
【請求項39】
前記宿主動物がヒトである請求項32記載の方法。
【請求項40】
以下の成分、即ち:(a)水;(b)代謝可能な油;(c)乳化剤;(d)抗原;および(e)(i)独立して下記基:
【化12】

および下記基:
【化13】

から選択されるホスホリル基1つ以上;(ii)直鎖アルカン基:
【化14】

[式中nは独立して6〜20の整数である]複数、を含むリン脂質化合物、
を含み、
ここで該組成物は油相および水相を有する水中油のエマルジョンであり、そして、
ここで油相は実質的に全てが直径1ミクロン未満である油滴の形態である免疫原性組成物。
【請求項41】
前記リン脂質化合物が下記基:
【化15】

1つ以上を含み下記基:
【化16】

を全く含まない請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
前記リン脂質化合物が下記基:
【化17】

1つ以上を含み下記基:
【化18】

を全く含まない請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
前記リン脂質化合物が前記基:
【化19】

4〜8つを含む請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
前記リン脂質化合物が前記基:
【化20】

6つを含む請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項45】
前記リン脂質化合物が糖基を含まない請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項46】
前記リン脂質化合物が下記式:
【化21】

[式中、
は下記:
(a)C(O);
(b)C(O)C1−14アルキル−C(O)であって、ここで該C1−14アルキルは、必要に応じてヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アルキレンジオキシ、C1−5アルキルアミノまたはC1−5アルキル−アリールで置換されており、ここで該C1−5アルキル−アリールのアリール部分は、必要に応じてC1−5アルコキシ、C1−5アルキルアミノ、C1−5アルコキシ−アミノ、C1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C1−5アルコキシ、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキルC(O)OH、OC1−5アルキルアミノ−C(O)C1−5アルキル−C(O)C1−5アルキルで置換されている、C(O)C1−14アルキル−C(O);
(c)必要に応じてヒドロキシまたはアルコキシで置換されているC〜C15の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(d)C(O)C6−12アリーレン−C(O)であって、ここで、該アリーレンは、必要に応じてヒドロキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノにより置換されている、C(O)C6−12アリーレン−C(O);
よりなる群から選択され;
aおよびbは独立して0、1、2、3または4であり;
d、d’、d’’、e、e’およびe’’は独立して1〜4の整数であり;
、X、YおよびYは独立して非存在、酸素、NHおよびN(C(O)C1−4アルキル)およびN(C1−4アルキル)よりなる群から選択され;
およびWは独立してカルボニル、メチレン、スルホンおよびスルホキシドよりなる群から選択され;
およびRは独立して下記:
(a)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;
(b)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはジアルケニル;
(c)必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;
(d)アルキル基が、必要に応じてオキソ、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されたNHC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;および
(e)下記基:
【化22】

{式中、ZはOおよびNHよりなる群から選択され、そしてMおよびNは独立してC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルアミノおよびアシルアミノよりなる群から選択される};
よりなる群から選択され;
およびRは独立して、必要に応じてフルオロまたはオキソで置換されたC〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニルよりなる群から選択され;
およびRは独立してC(O)C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルキル;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルコキシ;C〜C20の直鎖または分枝鎖のアルケニルよりなる群から選択され、ここでアルキル、アルケニルまたはアルコキシ基は独立して、そして必要に応じて、ヒドロキシ、フルオロまたはC〜Cアルコキシで置換されており;
、G、GおよびGは独立して酸素、メチレン、アミノ、チオール、NHC(O)およびN(C(O)C1−4アルキル)よりなる群から選択されるか;あるいはGまたはGは一緒になって水素原子またはヒドロキシルであり得る]を有する化合物または薬学的に受容可能なその塩である請求項40記載の免疫原性組成物。
【請求項47】
がC(O)であり;a、b、d、d’、d’’、e、e’およびe’’は独立して1または2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRはオキソで置換されたC10〜C20の直鎖のアルキルであり;RおよびRはC〜C10の直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C−C14直鎖のアルキルまたはアルケニルであり;そしてG、G、GおよびGは酸素である請求項46記載の免疫原性組成物。
【請求項48】
がC(O)であり;aおよびbが2であり;d、d’、eおよびe’が1であり;d’’およびe’’は2であり;X、X、YおよびYはNHであり;WおよびWはカルボニルであり;RおよびRは2位においてオキソで置換されたC13の直鎖のアルキルであり;RおよびRはCの直鎖のアルキルであり;RおよびRはC(O)C11の直鎖のアルキルであり;そしてG、G、GおよびGは酸素である請求項46記載の免疫原性組成物。
【請求項49】
前記油滴の実質的に全てが直径500nm未満である請求項40〜48のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項50】
前記油滴の実質的に全てが直径250nm未満である請求項40〜48のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項51】
前記代謝可能な油が動物性油および植物性油から選択される請求項40〜50のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項52】
前記代謝可能な油が魚油である請求項40〜50のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項53】
前記代謝可能な油が炭素原子20〜40個を有する分枝鎖多不飽和炭化水素である請求項40〜50のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項54】
前記代謝可能な油がテルペノイドである請求項40〜50のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項55】
前記代謝可能な油がスクワレンである請求項40〜50のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項56】
前記乳化剤がソルビタン誘導体を含む請求項40〜55のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項57】
前記ソルビタン誘導体がソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸セスキエステル、ソルビタン脂肪酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸トリエステルから選択される請求項56記載の免疫原性組成物。
【請求項58】
前記組成物が乳化剤複数を含む請求項40〜55のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項59】
前記組成物がソルビタンエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルを含む請求項58記載の免疫原性組成物。
【請求項60】
前記組成物がポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートを含む請求項59記載の免疫原性組成物。
【請求項61】
前記組成物が1〜9の範囲のHLB価を有する第1の乳化剤および10〜20の範囲のHLB価を有する第2の乳化剤を含む請求項58記載の免疫原性組成物。
【請求項62】
前記組成物が1〜4の範囲のHLB価を有する第1の乳化剤および12〜17の範囲のHLB価を有する第2の乳化剤を含む請求項58記載の免疫原性組成物。
【請求項63】
前記リン脂質が前記油相に溶解または分散されている請求項40〜62のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項64】
前記リン脂質が前記水相に分散されている請求項40〜62のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項65】
前記抗原が水相に溶解または分散されている請求項40〜64のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項66】
前記抗原がポリペプチド含有抗原である請求項40〜65のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項67】
前記抗原がポリヌクレオチド含有抗原である請求項40〜65のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項68】
前記抗原が腫瘍細胞由来である請求項40〜67のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項69】
前記抗原が病原性生物由来である請求項40〜67のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項70】
前記病原性生物がウィルス、細菌、真菌および寄生生物から選択される請求項69記載の免疫原性組成物。
【請求項71】
前記病原性生物がHIV、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、B型髄膜炎、ヘモフィルスインフルエンザタイプB、百日咳、ジフテリア、破傷風およびA型インフルエンザのウィルスから選択される請求項69記載の免疫原性組成物。
【請求項72】
前記病原性生物がヒト免疫不全ウィルス、髄膜炎菌およびヘルペスウィルスから選択される請求項69記載の免疫原性組成物。
【請求項73】
補充的免疫学的アジュバントをさらに含む請求項40〜72のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項74】
前記免疫原性組成物が注射可能組成物である請求項40〜73のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項75】
脊椎動物の宿主動物に抗原の治療量を送達する方法であって、請求項40〜74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該宿主動物に投与することを含む、方法。
【請求項76】
病原性生物感染または腫瘍を有する宿主動物の治療方法であって、請求項40〜74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
【請求項77】
腫瘍または病原性生物感染による感染に対して宿主動物を免疫化する方法であって、請求項40〜74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
【請求項78】
宿主動物における免疫応答を刺激する方法であって、請求項40〜74のいずれかに記載の免疫原性組成物を宿主動物に投与することを含む、方法。
【請求項79】
前記免疫応答が体液性免疫応答を含む請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記免疫応答が細胞性免疫応答を含む請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記免疫応答がウィルス、細菌または寄生生物の感染に対して誘起される請求項78記載の方法。
【請求項82】
前記免疫応答が腫瘍に対して誘起される請求項78記載の方法。
【請求項83】
前記宿主動物が脊椎動物である請求項78記載の方法。
【請求項84】
前記宿主動物が哺乳動物である請求項78記載の方法。
【請求項85】
前記宿主動物がヒトである請求項78記載の方法。

【公表番号】特表2006−520746(P2006−520746A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565756(P2004−565756)
【出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/041412
【国際公開番号】WO2004/060396
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】