説明

リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム及びメタリン酸アルミニウムの粒子、及び塗料中の顔料としてのそれらの使用、並びにそれらの製造方法

【課題】二酸化チタンの代替物として、中空粒子を含む燐酸アルミニウム粉末の提供。
【解決手段】リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物であって、粒子を含み、かつ、粉末形態の場合、少なくとも一部の該粒子が、1つの粒子につき平均で1以上の閉じた空隙を有し、(a)粉末形態の場合、示差走査熱量法において、約90℃と約250℃の間に2つの吸熱ピークを示すこと、及び(b)粉末形態の場合、水1.0gにつき少なくとも0.025gで水に対する分散性を有することをさらに特徴とする、前記リン酸アルミニウム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行関連出願)
本件出願は、2004年8月30日にブラジルで出願した特許文献2に基づく優先権を主張する2005年8月30日に米国で出願した特許文献1の一部継続出願である。特許文献1及び特許文献2の双方の記載は、引用によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム及びポリリン酸アルミニウムの粒子を製造する方法に関するものである。本発明は、さらに、このような粒子の、塗料及びその他の応用分野における顔料としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
二酸化チタンは、可視光を後方散乱させる強力な能力(その屈折率による)ゆえに、最も一般的な白色顔料であり、このためそれ自体の屈折率に依存する。二酸化チタンの代替物が求められてきたが、アナターゼ及びルチル型のこの酸化物の屈折率は、双方とも、構造的理由により他のいかなる白色粉末よりもはるかに大きい。
【0004】
二酸化チタン顔料は、該顔料を分散させる被覆用ビヒクルに不溶である。その物理的及び化学的特徴を含め、このような二酸化チタン顔料の性能特性は、顔料の粒子径及びその表面の化学組成によって決定される。二酸化チタンは、2種の結晶構造すなわちアナターゼ型及びルチル型で市販されている。ルチル型二酸化チタン顔料は、それらが、アナターゼ型顔料よりも光をより効率的に散乱し、より安定でかつ耐久性があるので好まれる。二酸化チタンは、その大きな屈折率ゆえに光を極めて効率的に散乱する。その散乱能力による二酸化チタンの装飾的及び機能的特質は、二酸化チタンを高度に望ましい顔料にしている。しかし、二酸化チタンは、製造業者にとって高価な顔料であることが知られている。従って、顔料としての二酸化チタンに対するより手頃な代替物が求められている。
【0005】
言及したように、二酸化チタンの所望される特色は、可視光を発散(散乱する)その大きな能力である。この特性は、その高い屈折率、及びスペクトルの可視部分における電子遷移の欠如の結果である。顔料としてのその応用において二酸化チタンを部分的に又は全体的に置き換えるために、多くの試みがなされてきた。しかし、その2種の形態、すなわちアナターゼ及びルチル型の屈折率を、その他の白色固体物質で得るのは困難である(非特許文献1)。従って、新規白色顔料の探索は、別の光発散機構を有する系の探索につながった。屈折率の大きな変化を示す多相媒体は、光発散剤として機能する可能性がある。
【0006】
粒子の内部に又は粒子と樹脂の間に「細孔」を含む皮膜を生じさせる顔料又は塗料の製造方法に関する現行の選択肢もかなり限られている。中空粒子を調製するためのいくつかの技術が文献に記載されているが、ほとんどの技術は、エマルジョン中の重合によるほぼ球状の中空高分子粒子の製造を必要とする。一例が、イットリウム化合物の中空粒子を製造する、塩基性炭酸イットリウムでのポリスチレンラテックスの被覆、及びそれに続く高温空気中での仮焼に関するN.Kawahashi及びE.Matijevicの研究(非特許文献2)である。
【0007】
メタリン酸ナトリウムと硫酸アルミニウムの間の化学反応、それに続く熱処理によるメタリン酸アルミニウムの中空粒子の調製が、Galembeckらによって特許文献3に記載されている。この研究は、リン酸ナトリウムと硝酸アルミニウムから合成されたリン酸アルミニウムの中空粒子の形成について言及している。言及したように、2種の顔料、すなわちリン酸アルミニウム及びメタリン酸アルミニウムを使用して、PVAラテックス又はアクリルエマルジョンをベースにした塗料中の大部分のTiOを置き換えることができる。
【0008】
Galembeckらの特許文献4には、高分子ラテックスエマルジョン型水性媒質中でのメタリン酸アルミニウムと炭酸カルシウム粒子の間の化学反応で直接的に得られるメタリン酸のアルミニウムカルシウム複塩から白色顔料を作る方法が記載されている。この特許は、先の結果を、それらの完全な無毒性ゆえに環境の観点から有利であるカルシウム塩に拡大適用している。
【0009】
いくつかの刊行物が、結晶性及び非晶質形態を含む触媒担体として主に使用するためのリン酸アルミニウム材料の合成について考察している。これらの方法の多くは、高度に多孔性の結晶性形態を産生し、熱的に安定な非晶質組成物をほとんど産生しない。このような材料の例は、特許文献5〜13及び特許文献14に記載されている。
【特許文献1】米国特許出願第11/215,312号
【特許文献2】ブラジル特許出願第PI0403723-8号
【特許文献3】ブラジル特許第9104581号
【特許文献4】ブラジル特許第9500522-6号
【特許文献5】米国特許第3,943,231号
【特許文献6】米国特許第4,289,863号
【特許文献7】米国特許第5,030,431号
【特許文献8】米国特許第5,292,701号
【特許文献9】米国特許第5,496,529号
【特許文献10】米国特許第5,552,361号
【特許文献11】米国特許第5,698,758号
【特許文献12】米国特許第5,707,442号
【特許文献13】米国特許第6,022,513号
【特許文献14】米国特許第6,461,415号
【特許文献15】米国特許第6,646,058号
【特許文献16】米国特許第6,881,782号
【特許文献17】米国特許第4,782,109号
【非特許文献1】「Handbook of Chemistry and Physics」CRC Press,57th ed.1983
【非特許文献2】N.Kawahashi and E.Matjevic「Preparation of Hollow Spherical Particle of Itrium Compounds」J.Colloid and Interface Science 143(1),103,1991
【非特許文献3】R.E.Kreiger Publishing Co.発行、C.R.Martens編、「TECHNOLOGY OF PAINTS、VARNISHES AND LACQUERS」p.515(1974)
【非特許文献4】K.A.Haagenson,「The effect of extender particle size on the hiding properties of an interior latex flat paint」American Paint&Coatings Journal,Apr.4,1988,pp.89-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、中空粒子を含むリン酸アルミニウム、特に、比較的容易に製造できる粉末が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(本発明の要旨)
本発明の主題は、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物である。該組成物は、粉末形態の場合、一部の粒子が、1つの粒子につき少なくとも1以上の空隙を有する粒子群を有することを特徴とすることができる。さらに、該組成物は、示差走査熱量法で約90℃と約250℃の間に2つの吸熱ピークを示すことを特徴とする。該組成物は、粉末形態の場合、1.0gの水につき少なくとも0.025gの分散性を有することも特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(本発明の実施態様の説明)
以下の説明において、本明細書で開示する全ての数字は、その数字と連結して単語「約」又は「ほぼ」のいずれが使用されようとも、近似値である。それらの数字は、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又は時には10〜20パーセントで変動する場合がある。下限R及び上限Rを伴う数値範囲が開示されている場合はいつでも、該範囲内に含まれるいずれの数字も具体的に開示される。詳細には、該範囲内の次の数字、すなわちR=R+k*(R−R)が具体的に開示され、ここで、kは1パーセントから1パーセントの増分で100パーセントまでの範囲の変数、すなわちkは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...、50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである。さらに、上で定義したような2つの数字Rで定義される任意の数値範囲も具体的に開示される。
【0013】
本特許中で説明する発明は、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物に関するものである。用語「リン酸アルミニウム」及び「リン酸アルミニウム組成物」は、本明細書中で使用する場合、両方とも、リン酸アルミニウムはもちろん、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及びそれらの混合物を含むことを意味する。リン酸アルミニウム組成物は、粉末形態の場合、1.0gの水につき少なくとも0.025gの分散性を有することを特徴とする。好ましくは、該組成物は、粉末形態の場合、1.0gの水につき少なくとも0.035gの分散性を有することを特徴とする。さらにより好ましくは、該組成物は、粉末形態の場合、1.0gの水につき少なくとも0.05gの分散性を有することを特徴とする。
【0014】
新規なリン酸アルミニウム中空粒子は、いくつかの異なる特徴で一般には特徴付けることができる。例えば、リン酸アルミニウムは、粉末形態で調製される場合、一部の粒子が平均で1つの粒子につき少なくとも1つの空隙を有する粒子群を含む。さらに、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム及び/又はメタリン酸アルミニウムが粉末形態である場合、示差走査熱量法の試験に供されたサンプルは、2つの明瞭な吸熱ピークを示し、該ピークは、一般に90℃と250℃の間に現れる。好ましくは、第一ピークは、ほぼ約96℃〜116℃の温度間に現れ、第二ピークは、ほぼ約149℃〜189℃の温度間に現れる。さらにより好ましくは、2つのピークはほぼ106℃及びほぼ164℃に現れる。さらに、リン酸アルミニウムは、本明細書中で説明するように、典型的には優れた分散性の特徴を示す。
【0015】
本発明の組成物は、結晶性のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムとして現在販売されている製品を含む大部分の無機工業化学薬品とは対照的に、非結晶性固体から構成される。リン酸アルミニウム製品に対して大抵付与されるCAS番号は7784−30−7であるが、これは、化学式通りの結晶性固体を指す。本特許で説明する発明は、さらに、新規なリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物に関するものである。
【0016】
非晶質(すなわち、非結晶性)固体は、同様の組成を有するそれらの結晶性相当物との相違を示し、このような相違は、有益な特性をもたらす可能性がある。例えば、このような相違としては、(i)非結晶性固体は、X線をはっきりと規定された角度では回析しないが、代わりに幅の広い散乱ハローを生成すること、(ii)非結晶性固体は、十分に規定された化学量論性を有せず、従って、それらは広範囲の化学組成を包含できること、(iii)化学組成の可変性は、アルミニウム及びリン酸イオン以外のイオン性構成成分を組み込む可能性を含むこと、(iv)非晶質固体は熱力学的に準安定であるので、それらは、自然な組織形態学的、化学的及び構造的変化を受ける傾向を示す可能性があること、及び(v)結晶性粒子の表面及び塊の化学組成は、高度に均質であるが、非晶質粒子の表面及び塊の化学組成は、急激に又は徐々に大きな又は小さな相違を示す可能性があること、を挙げることができる。さらに、結晶性固体の粒子は、周知のオストワルド熟成の機構で成長する傾向があるが、非結晶性粒子は、水の収着及び脱離によって膨張又は膨潤、及び収縮(萎縮)し、剪断、圧縮又は毛管力にさらされた場合に、容易に変形されるゲル様又は可塑性材料を形成できる。
【0017】
言及したように、本明細書中で説明する本発明の一態様は、独特の特性を有する非結晶性でナノサイズのリン酸アルミニウム粒子を生成する合成方法である。このような粒子の分散液が、室温又は120℃までの空気下で乾燥すると、乾燥粒子は、コア−シェル構造を有する粒子を形成する。このような粒子は、分析電子顕微鏡法で観察できる。さらに、これらの粒子は、それら粒子の内部に閉じた細孔として分散された多くの空隙を含んでいる。粒子のコアは、粒子のそれぞれのシェルよりもより可塑性がある。この現象は、加熱による空隙の成長によって証明され、一方、シェルの周長は本質的に変化しないままである。
【0018】
本発明の他の態様は、新規な製品、並びにリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム及びメタリン酸アルミニウム(及びそれらの混合物)の、顔料として使用する予定の中空粒子を形成するための製造方法の開発からなる。より具体的には、本発明のこの態様は、制御されたpH及び温度条件下での、リン酸、特に工業級リン酸と硫酸アルミニウムとの反応により得られる新規な顔料に関するものである。家庭用アクリル塗料を始めとする塗料の顔料として使用するために、反応物を、濾過、分散、乾燥、仮焼、及び微粉化することができる。このような顔料は、塗料、プラスチック、ワニス、印刷インクなどのその他の製品及び応用分野で使用できる。
【0019】
本明細書中で説明したように、多くの人々が粒子内空隙の形成を探求したが、大部分の固体は乾燥すると開いた細孔を形成し、このような開いた細孔は塗料の不透明度又は隠蔽力に寄与しないので、その達成は困難な目的である。リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウム内に形成される中空粒子は、多くの困難な応用分野で使用できる有益な物理的及び化学的の両方の特徴を付与する。本明細書中で説明する本発明の一態様は、このような有利な特徴を利用するために、このような中空粒子を含むリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウム(又はそれらの混合物)を製造することである。
【0020】
用語「空隙」は、本明細書中では一般に、用語「中空粒子」と同義語であり、本明細書中では「閉じた空隙」とも記載される。空隙(又は閉じた空隙又は中空粒子)は、リン酸アルミニウム混合物中のコア−シェル構造の一部である。透過型電子顕微鏡からのエネルギーフィルター像下で見た本発明組成物のサンプルを図1a及び2aに示す。明視野透過型電子顕微鏡下で見た場合の本発明組成物のサンプルを図1b及び2bに示す。該サンプルは、本発明組成物中に含まれる空隙を示している。これに対して、図3a及び3bは、空隙を含まないリン酸アルミニウムのサンプルの明視野透過型電子顕微鏡写真である。図1a、1b、2a及び2bのサンプルの光散乱能力は、図3a及び3bのサンプルの光散乱能力よりも優れている。
【0021】
空隙は、透過型又は走査型電子顕微鏡(「TEM」又は「SEM」)を使用して観察及び/又は特徴付けることができる。TEM又はSEMの使用は当業者にとって周知である。一般に、光学顕微鏡法は、光の波長により、百、及び通常は数百ナノメートルの範囲の分解能に制約される。TEM及びSEMは、この制約が無く、数ナノメートル領域の著しく高い分解能を得ることができる。光学顕微鏡は、光学レンズを使用して光波を曲げることによって光波を集束するが、一方、電子顕微鏡は、電磁レンズを使用して電子ビームを曲げることによって電子ビームを集束する。電子ビームは、倍率調節及び作り得る画像の鮮明度の双方において、光ビームに優る大きな利点を提供する。走査型電子顕微鏡は、それが、サンプル表面の三次元画像を得る手段を提供することにおいて透過型電子顕微鏡を補完している。
【0022】
一般に、電子ビームは、フィラメントを加熱することによって電子顕微鏡中で生み出される。フィラメントは、限定はしないが、タングステン又は六ホウ化ランタンを始めとする各種金属材料から構成できる。この金属フィラメントは、カソードとして機能し、電圧が印加されると、フィラメントの温度が上昇する。フィラメントに対して正であるアノードは、電子に対する強力な引力を形成する。電子はカソードからアノードへ引き寄せられ、若干の電子がアノードの側を通り過ぎ、サンプルを画像化するのに使用される電子ビームを形成する。
【0023】
この電子ビームは、次いで、電磁レンズを使用して集光され、サンプル上で集束する。SEMでは、走査コイルが、ビームを制御された方式でサンプルを横切って前後に向くように変更できる磁界を作り出す。サンプルの模様を作り出す同様に変化する電圧が、陰極線管に印加される。これによって、陰極線管の表面にサンプルの模様と類似の光パターンが作りだされる。
【0024】
言及したように、本発明の材料は、示差走査熱量計での分析試験に反映される新規な特徴を有する。簡潔には、示差走査熱量法(DSC)は、材料の化学的、物理的又は結晶学的変化に関連する熱流量を、温度と時間(及び可能なら圧力)の関数として測定する分析技術である。示差走査熱量計(DSC)は、サンプルの温度を制御された方式で変化させた場合の、サンプルへの熱流量を測定する。DSCには2種の基本的な型、すなわち熱流束型及び電力補償型がある。熱流束DSCは、分析予定サンプルへの熱流量を測定するためのセンサーが含まれる。該センサーは、サンプル部位及び対照部位を有する。センサーは、その温度を所望の温度プログラムに従って動的に変更できるオーブン中に取り付けられる。オーブンを加熱又は冷却しながら、センサーのサンプル部位と対照部位の間の温度差を測定する。この温度差は、サンプルへの熱流量に比例すると見なされる。
【0025】
電力補償DSCは、一定温度の囲いの中に取り付けたサンプル及び対照のホルダーを含む。各ホルダーは、ヒーター温度及びセンサーを有する。サンプルホルダーと対照ホルダーの温度の平均を使用して、所望の温度プログラムに追随する温度を調節する。さらに、ホルダー間の温度差に比例する示差電力を、サンプルホルダーに対しては平均電力まで追加し、対照ホルダーに対しては平均電力から控除して、サンプルホルダーと対照ホルダー間の温度差をゼロまで減らす。示差電力は、サンプルの熱流量に比例すると見なされ、サンプルホルダーと対照ホルダーの間の温度差を測定することによって得られる。市販の電力補償DSCでは、サンプルと対照の間の温度差は、比例制御器を使用して示差電力を調節するので、一般にゼロではない。
【0026】
分析予定サンプルをパンに詰め、DSCのサンプル部位に載せる。不活性対照材料は、パンに詰めDSCの対照部位に載せればよいが、通常、基準物質のパンは空である。従来のDSC用温度プログラムは、典型的には、線形温度傾斜と一定温度部分を含む。実験結果は、温度又は時間に対するサンプルの熱流量である。熱流量のシグナルは、その比熱による、及びサンプル中で発生している転移の結果としての、サンプルへの又はサンプルからの熱流量の結果である。
【0027】
DSC実験の動的部分の間、DSCのサンプル部位と対照部位の間に温度差が生まれる。熱流束DSCにおいて、温度差は、3つの示差熱流量、すなわち、サンプルと対照の間の熱流量差、サンプルセンサーと対照センサーの熱流量差、及びサンプルパンと対照パンの熱流量差、の組合せに由来する。電力補償DSCにおいて、温度差は、3つの示差熱流量とサンプルホルダーに供給される示差電力の組合せ、すなわち、サンプルと対照の間の熱流量差、サンプルホルダーと対照ホルダーの間の熱流量差、及びサンプルパンと対照パンの間の熱流量差、の組合せに由来する。サンプルと対照の間の熱流量差は、サンプルと対照の間の熱容量差による熱流量又は転移の熱流量からなる。DSCのサンプル部と対照部の間の熱流量差は、センサーの又はホルダー間の熱抵抗及び容量不均衡、及び転移中にDSCのサンプル部及び対照部の間に現れる加熱速度の差の結果である。同様に、サンプルパンと対照パンの間の熱流量差は、パンの質量差及びサンプルの転移中に発生する加熱速度差の結果である。
【0028】
通常の熱流速DSCでは、センサーの不均衡及びパンの不均衡は微々たるものであると見なされ、加熱速度の差は無視される。通常の電力補償DSCでは、ホルダーの不均衡及びパンの不均衡は微々たるものであると見なされ、加熱速度の差は無視される。均衡であるとの仮定が満足され、かつサンプルの加熱速度がプログラムされた加熱速度と同様である場合には、温度差は、サンプルの熱流量に比例し、示差温度は、サンプルの熱流量の正確な尺度を与える。サンプル及び対照の加熱速度が同一であり、センサーが完全に対称であり、かつパン質量が同一である場合、サンプルの熱流量は、サンプルと対照の間で測定された温度差にもっぱら比例する。均斉の取れたセンサー及びパンにおけるサンプル熱流量の温度差に対する比例は、装置が一定の加熱速度で稼動し、サンプルが装置と同じ速度で温度を変えており、かつサンプル中で転移が存在しない実験の部分中のみに起こる。
【0029】
転移中には、サンプルへの熱流量が、その転移が吸熱又は発熱のいずれであるか、及びDSCが加熱されているか又は冷却されているかに応じて、転移前の値から増加又は減少する。サンプル熱流量が変化すると、サンプルの加熱速度がDSCの加熱速度と異なることになり、結果として、サンプルパン及びセンサーの加熱速度がプログラムされた加熱速度と異なることになる。
【0030】
リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム及び/又はメタリン酸アルミニウム製品の種々のサンプルをDSCで試験した。得られた本明細書中のDSC結果は、RCSクーリング付属部品及びオートサンプラーを備えたTA Instruments社のQ Series 600型DSCを用いて測定した。50ml/分の窒素パージガス流を使用した。リン酸アルミニウムのケーキ又はスラリーサンプルを、110℃で加熱して一定重量まで乾燥した。別法として、ASTM D−280に示されている基準に従って同様の結果を達成できるであろう。得られた乾燥粉末サンプルを開放アルミニウムパン(モデルDSC Q10)中に秤量した(約4mg)。次いで、パンをDSC装置に載せ、室温から420℃まで1分間に10℃の加熱速度で加熱した。DSC曲線を調べ、室温から420℃の間に引かれたS字状ベースライン対して熱流量速度が最大(W/g)の温度を記録する。サンプルが吸収した熱は、使用した温度領域の曲線下面積として測定される。
【0031】
DSCの計算を平易にするため、S字状ベースラインを使用する。固相と液相の熱容量が劇的に変化しないなら、直線が適切である場合もあるが、典型的には、DSC曲線下面積の下限を画定するためにS字状ベースラインが作られる。このことは、熱容量を表すベースラインの勾配が、相転移に伴って変化し、従って、直線のベースラインを使用するとかなりの誤差につながる可能性があるという事実ゆえに必須である。S字状ベースラインは、ピークの前又は後ろで水準及び/又は勾配が変化するSの形をした曲線である。それは、相転移中に起こる可能性のあるベースラインのなんらかの変化に対する補償として使用される。ベースラインは、時間に反応した部分について調整される。S字状ベースラインは、最初に、ピーク開始点からピーク終点までを直線として計算される。次いで、ピーク限界間の各データ点に対して、ピーク開始点及びピーク終点での投影された水平又は正接ベースラインの加重平均として再計算される。
【0032】
表1は、DSCで試験したサンプルから得られたデータを含む、リン酸アルミニウムサンプルに関して実施した各種試験の結果を示す。表1の1列目は、サンプル番号である。表1の2列目は、得られた混合物のリン/アルミニウムのモル比を示している。表1の3列目は、混合物のリン/ナトリウムのモル比を示している。表1の4列目は、混合物のアルミニウム/ナトリウムのモル比を示している。リン、アルミニウム及びナトリウムの比率は、誘導結合プラズマ発光分光法(「ICP−OES」)、Perkin ElmerのOptima 3000DV型で測定した。約100mgの本発明スラリーを1.5gのHCl(3M)に溶解し、100gの水を添加した。最終溶液を濾過し、ICP測定を行った。ICPは、ラジオ周波数(RF)場及びイオン化アルゴンガスの相互作用で維持されるアルゴンプラズマである。ICP−OESでは、エネルギー源としてプラズマを使用し、ほとんどの分析対象原子をイオン化し励起するのに十分な5500°K〜8000°K、領域によっては10000°Kまでの熱を生成する。電子がその基底状態へ戻ると、光が放射され、検出される。励起イオンは、特定波長の光りを放射するだけなので、元素に応じたスペクトル線が生じる。次いで、これらの線を使用してサンプル中の成分を定性的に判定できる。スペクトル強度と濃度の較正曲線を使用してサンプル中の分析対象物の濃度を定量的に測定できる。
【0033】
表1の5列目及び6列目は、本明細書に記載したようなDSCで実施した試験に関して、ピークが位置する温度を示している。7列目は、DSCでの熱流量測定で生じた曲線の積分値を示している。残りの3つの列は、標準塗料において酸化チタンの50%をリン酸アルミニウムで代替して作製した塗料の不透明度、白色度及び黄色度指数間の比率を示している。
【0034】
不透明度指数は、ASTM基準D2805−96aに準拠して測定し、一方、白色度及び黄色度指数は、ASTM基準E313−00に準拠して測定した。光学的測定(不透明度、白色度及び黄色度)は、BYK−ガードナー測色計カラーガイド球d/8°スピン型で測定した。本明細書に記載の本発明組成物及びTiO2を用いて製造した塗料を使用し、ASTMD2805に従って調製したドローダウン(drawdown)を有するレネタ(leneta)チャートのカラーガイドは、現場の工程管理における入荷及び出荷の品質管理での一貫した品質を保証するのに使用できる携帯分光計である。それは、現場における測定の必要性に合致するように電池で駆動される。測定原理は、波長400〜700nmの可視スペクトル内のスペクトル反射を測定することに基づく。2種の測定幾何学的配列、すなわち45/0及びd/8(鏡面光沢度を含む又は含まない)が提供される。45/0の場合、照明は角度45°の環状パターンで発生し、一方観察角度は0°である。d/8の場合、光はサンプル上に拡散方式で照射され、一方観察角度は「垂直から」8°である。装置のカラーガイドは、(d/8)及び60°を同時に測定する。サンプルは、高寿命が期待される発光ダイオード(LED)で照明される。LEDは、サンプルを暖めないので照明により引き起こされる熱変色効果の危険がない。
【0035】
【表1】

【0036】
サンプル1〜12までは、一般に、本明細書の実施例1に示した方法に従って調製した。サンプル1〜4は、フィルターから集めたリン酸アルミニウム「ケーキ」に由来するものである。サンプル3は、一番目及び二番目のサンプルケーキの混合物である。サンプル5〜12は、リン酸アルミニウム混合物のスラリーに由来するものである。サンプル13〜26は、本明細書に記載の実施例1に従って調製したスラリーであるが、実施例1に示したリン酸量の1/20を使用して縮小した。使用したプロセス変数は、供給物のP/AI重量比、添加中のpH、使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム)、調製の最後でpH調整用に添加したアルカリ量である。サンプル25は、組成物中のカチオンとしてカリウムを使用したので、Al/Na又はP/Naに関する欄の記入はない。当業者は、利用できる状況及び材料に応じて、組成物中でいくらかのカチオンを互換的に使用できることを認めるであろう。同様に、サンプル26は、塩基材料として水酸化アンモニウムを利用し、従って、Al/Na又はP/Naに関する値も有さない。
【0037】
サンプルのDSC試験結果を図4〜7に示す。図4〜7から判るように、全体的プロフィールは、吸熱(例えば、サンプルに向かう熱流)であることを示している。さらに、約106℃及び約164℃に幅広の2つの負ピークを観察できる。もちろん、これら2つのピークは、粉末の組成及び構造に応じて、上方又は下方の温度に移動する場合もある。吸熱の積分値、又は脱水のエンタルピーは、グラム当たり約490ジュールであると計算される。また、このような脱水エンタルピーは、いくつかの要因に応じて変動する可能性がある。本明細書で言及するピークは、重なっている場合があり、DSCの結果に関して、ピーク群中の1つの頂点のみが「独立」ピークとして肉眼的に認めることができる。いくつかの実施態様では、より高温でのピーク(「第二ピーク」)が、より低温でのピーク(「第一ピーク」)より大きい。他の実施態様では、第一ピークが、明確なピークではなく、幅広で明確である第二ピークに重なっている場合がある。それらの場合、第一ピークは、第二ピーク上の小さな肩又は第二ピークの湾曲の変化によって示される。さらに、DSCの結果は、本明細書中に示す温度範囲の外側にさらなるピークを含む場合もある。しかし、好ましくは、約300℃〜400℃の間にピークが存在しない。より好ましくは、約310℃〜380℃の間にピークが存在しない。さらにより好ましくは、約320℃〜360℃の間にピークが存在しない、なおさらにより好ましくは、約335度〜345℃の間にピークが存在しない。
【0038】
図4は、DSCサーモグラム上に明瞭な2つのピーク、すなわち、約101℃に1つのピーク及び約172℃に1つのピークを示している。図4の結果を示すサンプル組成物は、本明細書に示す実施例1の手順に従って一般的に調製した。図5は互いに重なり合った2つのピークを示し、第二ピークは、第一ピークよりも目立つ。図5の結果を示すサンプル組成物は、本明細書に示す実施例1の手順に従って一般的に調製したが、実施例1に示したリン酸量の1/20を使用することにより規模を縮小した。図6も、わずかに重なった2つのピークを示す。図6は、塩基性出発材料としてカリウムを利用したサンプルを含む。図7も、わずかに重なった2つのピークを示す。図7に対応するサンプルは、出発原料として水酸化アンモニウムを使用して調製した。
【0039】
DSCの特徴に加え、リン酸アルミニウムの組成物は、水にも分散可能であり、このことは、その水分散性で特徴付けられる。分散性試験は、また、リン酸アルミニウム組成物の各種サンプルについて実施した。水への「分散性」とは、水に分散された又は溶解されたリン酸アルミニウムの量を指す。このことは、リン酸アルミニウムが、溶解されて真の溶液が形成される、あるいは水性媒質内に分散されて安定な生成物が得られる状態を含むと解釈される。リン酸アルミニウム組成物を水と混合する場合には、可溶性及び分散性画分を有することが可能であることが多い。さらに、水に添加剤を添加すること、又は溶液のpHを変えることによって分散性を増加又は低下させることも可能である。従って、特許請求の範囲で述べられる分散性とは、なんらかの他の添加剤又は試薬を添加しないで、水に分散したリン酸アルミニウム組成物の量を指す。
【0040】
本発明組成物の分散特性を測定するための試験は、次の通りとした。すなわち、まず、計量済みのリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウム(又はそれらの混合物)、典型的には約1gを、計量済みの分散剤に添加した。リン酸アルミニウムは「ケーキ」状であった。分散剤として、水(場合によってはいくつかの添加剤と共に)を使用した。得られた混合物を渦流撹拌機中で2分間激しく振とうした。懸濁液を、400メッシュのステンレススチール濾過板で重力により濾過した。残留物を2mLの脱イオン水で洗浄した。濾過板及び湿潤ケーキをオーブン中110℃で20分間乾燥した。次いで混合物の重量を測定した。分散試験サンプルに関する結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示したように、リン酸アルミニウム混合物は、前記の分散性試験に供された場合、96.3%程度の高い分散性(極めて分散性である)、及び65.7%程度の低い分散性(より低い分散性である)を示す。当業者が認めるように、任意の所定組成物に対する分散性は、リン酸アルミニウムが使用される最終用途に応じて調節できる。例えば、塗料の製造に使用するためにはより高い分散性を有するリン酸アルミニウムが所望される可能性がある。塗料の製造に使用される方法に応じて、より高い分散性又はより低い分散性を有することが求められる可能性がある。分散剤の種類も、分散性にいくらかの影響を与える。表2に示したように、H2Oが分散剤である場合に、最も分散性の低いサンプルは約81.2%の分散性を有し、一方、最も分散したサンプルは95.0%の分散性を有した。
【0043】
表2で、サンプルAは表1のサンプル12に相当する。サンプルCは表1のサンプル13に相当する。サンプルDは表1のサンプル18に相当する。サンプルEは表1のサンプル21に相当し、一方、サンプルFは表1のサンプル25に相当する。
本明細書に記載されるリン酸アルミニウム粒子は、独特の特性を示す。例えば、リン酸アルミニウムは、その粒子を、室温で又は130℃まで乾燥した場合でさえ、空隙を提供する。好ましくは、粒子は、40℃〜130℃の間で乾燥される。より好ましくは、粒子は、60℃〜130℃の間で乾燥される。さらにより好ましくは、粒子は、80℃〜120℃の間で乾燥される。さらに、リン酸アルミニウム粒子は、コア−シェル構造を有する。換言すれば、これらの粒子は、それらのコアとは化学的に異なるシェルを有する。この特性は、いくつかの異なる観察によって証明される。まず、透過型電子顕微鏡で測定した場合の、プラズモン領域(10〜40eV)における粒子のエネルギーフィルター型非弾性電子像は、ほとんどの粒子を取り囲む輝線を示す。プラズモン顕微鏡写真中に見られるコントラストは、局部の化学組成に左右され、この関係で、図1の顕微鏡写真を調べることからコア−シェルの粒子構造を観察できる。
【0044】
次に、図1に示したような、むしろ低温で乾燥した粒子内での空隙の存在は、粒子は脱膨潤により重量を減じ、一方、それらの皮は萎縮を受けないという事実による。このような空隙、又は中空粒子は、粒子コアの可塑性がシェルのそれよりも高い場合に可能になる。中空粒子形成に関するさらなる証拠は、電子ビームを粒子上に集中させることで粒子を加熱することによって観察される。次いで、粒子内に大きな空隙が作り出され、一方、それらの周長はほとんど変化を受けない。閉じた空隙、又は中空粒子の存在に関するよりさらなる証拠は、本明細書に記載の方法によって調製されるリン酸アルミニウムの骨格密度であり、該密度は、リン酸アルミニウムの高密度粒子について記録された2.5〜2.8g/cm3の値に対して、110℃で一定重量まで乾燥した後に(約15〜20%の水分含有量を有する)測定して1.73〜2.40g/cm3の範囲にある。好ましくは、骨格密度は2.40g/cm3未満である。より好ましくは、骨格密度は2.30g/cm3未満である。より好ましくは、骨格密度は2.10g/cm3未満である、さらにより好ましくは、骨格密度は1.99g/cm3未満である。
【0045】
本明細書に記載の方法に従って調製されるリン酸アルミニウム粒子は、結晶性粒子状固体の存在下でラテックスに分散させることができる。この分散液を使用してフィルムを流延すると、高度に不透明なフィルムが生じる。薄い単層粒子の場合でさえ、高度に不透明なフィルムが生じる。フィルムの不透明性に関する実験的証拠は、二酸化チタン(すなわち、TiO)の代替物として非晶質のリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウム(又はそれらの混合物)を使用して得られる。二酸化チタンは、ラテックス塗料製造に関わるほとんど全ての製造業者が使用している現在の標準的な白色顔料である。標準的なアクリル及びスチレン−ラテックス塗料は、通常添加量の二酸化チタンを使用して調製し、二酸化チタン添加量の50%を非晶質リン酸アルミニウムで代替した塗料と比較した。この比較は、2箇所の異なる塗料試験実験室で行った。2種の塗料を使用して塗り拡げた皮膜で行われた光学的測定は、リン酸アルミニウムが、皮膜の光学特性を保持しながら、皮膜を生じさせる二酸化チタンを代替できることを示している。
【0046】
本明細書で考察される新規リン酸アルミニウムの成果及び高い有効性は、その比較的小さな粒子径に部分的には関連している。このような小さな粒子径は、粒子が皮膜中に十分に分布し、樹脂及び無機塗料充填剤と完全に会合し、それによって、塗料が乾燥した場合に広範な空隙形成のための部位であるクラスターを作り出すことを可能にする。本発明のリン酸アルミニウムは、閉じた空隙、又は中空粒子を、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又は任意のその他粒子についてこれまで観察されていない程度まで形成する傾向を示す。いくつかの実施態様において、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムの粒子は、多くの閉じた細孔を含むが、開いた細孔を実質上含まない。結果として、このような実施態様において、マクロ細孔容積は、実質上0.1cc/gより大きい。
【0047】
本発明のいくつかの実施態様のリン酸アルミニウムを使用する、水をベースにした塗料皮膜の不透明化は、独特の特徴を含む。湿潤被膜は、ポリマー、リン酸アルミニウム、二酸化チタン及び充填剤粒子からなる粘性分散液である。この分散液を皮膜として流延し、乾燥すると、標準塗料と異なる挙動を示す(臨界顔料容積濃度、CPVC以下で)。標準塗料において、低いガラス転移温度(Tg)の樹脂は、室温で可塑性であり、その結果、樹脂の皮膜が細孔及び空隙を満たすように合着する。しかし、リン酸アルミニウムを用いて製造された塗料は、異なる挙動を示すことができる。本明細書に記載のように、閉じた細孔が形成され、皮膜の隠蔽力に寄与する。
【0048】
顔料中のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、少なくとも1種の次の形態で、すなわち、18%以上の固体を含むスラリーパルプ(重力又は低圧ポンプの作用下で流動する、高固体含有量の分散液)として、15〜20%の湿分を含む乾燥微粉化リン酸アルミニウムとして、及び仮焼微粉化リン酸アルミニウムとしての高分子形態で調製し、使用することができる。白色顔料として使用されるリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウム(又はそれらの混合物)は、高分子ラテックスエマルジョンなどの水性媒質分散液中の二酸化チタンを代替できる。リン酸アルミニウム中のリン:アルミニウムのモル比は、好ましくは0.6〜2.5の間である。より好ましくは、リン酸アルミニウム中のリン:アルミニウムのモル比は、0.8〜2.3の範囲にある。さらにより好ましくは、リン酸アルミニウム中のリン:アルミニウムのモル比は、1.1〜1.5の範囲にある。
【0049】
考察したように、本発明の一態様は、水性高分子ラテックスをベースにした塗料製造中の白色顔料を始めとする種々の応用分野で使用できるリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム(又はそれらの組合せ)の中空粒子の新規製造方法である。該方法は、次の一般的ステップで説明される。当業者は、特定のステップを、変更又は全て省略できることを理解するであろう。ステップには、工程で使用される主要試薬、例えば、希釈リン酸溶液、希釈硫酸アルミニウム溶液及び希釈水酸化ナトリウム炭酸ナトリウム溶液、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムなどの調製;工程中に混合物の均質性を保持するための揺動装置を具備した反応器中での同時的で調節された試薬添加;反応器中での試薬添加中における混合物の温度及びpH(酸性度)、及び主として反応時間の調節;約8.0%の固体を含む懸濁液の濾過及び適切な装置中での液相と固相の分離;微アルカリ性水性溶液を用いるフィルターケーキ中に存在する不純物の洗浄除去;約20〜30%の固体を含む洗浄済みケーキの適切な分散機中での分散;ターボ乾燥機中での分散パルプの乾燥、乾燥済み製品の5.0〜10ミクロンの平均粒度分析値への微粉化;及び乾燥済み製品の仮焼器中でのリン酸アルミニウムの熱処理による重合が含まれる。
【0050】
本方法の主要な試薬を調製するにはいくつかの方法がある。言及したように、リン酸アルミニウム及びポリリン酸アルミニウムを製造するための1つのリン供給源は、清澄化され脱色されたような任意の起源からの肥料級リン酸である。例えば、約54%のPを含む市販のリン酸を、化学的に処理し、かつ/又は処理水で希釈し、20%濃度のPを得ることができる。また、この工程に対する代替として(肥料級リン酸又は精製リン酸の代わりに)、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩又はメタリン酸塩としてのリンの塩を使用できる。
【0051】
該方法に適したもう1つ試薬は、市販の硫酸アルミニウムである。硫酸アルミニウムは、アルミナ(水和酸化アルミニウム)と濃硫酸(98%HSO)の間の反応から得ることができ、次いで、清澄化され、28%のAl濃度で貯蔵される。反応が好ましい反応速度を有するように、硫酸アルミニウムを水で希釈して5%のAlで扱われる。この方法に対する代替として、アルミニウム供給源は、水酸化アルミニウム又は金属形態のアルミニウムに加え、アルミニウムの任意のその他の塩である場合がある。
【0052】
反応物の中和は、商業的に種々の濃度で購入できる水酸化ナトリウム溶液を用いて実施される。50%濃度のNaOHを購入して希釈してもよい。例えば、最初の試薬を混合する反応の最初の段階で水酸化ナトリウムを20%濃度のNaOHの状態で使用できる。反応の第二段階では、生成物の酸性度を微調整する必要性ゆえに、5.0%のNaOHを含む水酸化ナトリウム溶液を使用できる。代わりの中和剤として、水酸化アンモニウム又は炭酸ナトリウム(ソーダ灰)も使用できる。
【0053】
本発明の一実施態様では、化学反応により、純粋の又は混合されたオルトリン酸ヒドロキソアルミニウム(例えば、Al(OH)(HPO)又はAl(OH)(HPO)が生成する。説明したような反応は、3つの試薬、すなわち、リン酸溶液、硫酸アルミニウム溶液、及び水酸化ナトリウムの混合により実施される。試薬類は、典型的には揺動装置を備えた反応器中で30分間の間に投与される。反応器に試薬を添加している間、混合物のpHを1.4〜4.5の範囲に、反応温度を35℃〜40℃の間に調節する。反応は、試薬混合の15分後に完了する。この間に、より希釈した水酸化ナトリウムを添加して、混合物のpHを3.0〜5.0に調整できる。この実施態様において、温度は、好ましくは約40℃未満である。反応の終点で、形成された懸濁液は、そのリン:アルミニウム元素のモル比が1.1〜1.5の範囲に入るべきである。
【0054】
オルトリン酸アルミニウムの形成後に、温度が最大で約45℃、密度が1.15〜1.25g/cm3の範囲であり、約6.0〜10.0%の固体を含む懸濁液を、通常のフィルタープレスにポンプ送入する。フィルタープレス中で、液相(時には濾液と呼ばれる)を固相から分離する(「ケーキ」と呼ばれることが多い)。約18%〜45%の固体を含み、硫酸ナトリウム溶液で汚染されている可能性のある湿潤ケーキを、濾過器内で洗浄サイクルに保つ。基本的に硫酸ナトリウムの濃厚溶液である濾過された濃厚液を濾過器から抜き取り、将来の使用のために貯蔵する。
【0055】
本発明の一実施態様において、湿潤ケーキの洗浄は、フィルター自体の中で及び3つの処理ステップで実施される。一次洗浄(置換洗浄)では、ケーキを汚染している被濾過物質の大部分を除去する。該洗浄ステップは、ケーキ上に(6.0mの水)/(トンの乾燥ケーキ)の流量比率で処理水を使用して実施される。汚染物が排除されていないなら、処理水を(8.0mの水)/(1トンの乾燥ケーキ)の流量で処理水を使用する二次洗浄ステップを実施して汚染物をさらに低減することができる。そして最後に、微アルカリ性溶液を使用する三次洗浄ステップを実施できる。ケーキを中和するために、このような三次洗浄を実施してそのpHを7.0の領域に保持することができる。最終的に、ある時間中に圧縮空気を用いてケーキを吹き飛ばすことができる。好ましくは、湿潤製品は35%〜45%の固体を提供すべきである。
【0056】
次に、本発明のこの特定実施態様において、ケーキの分散は、洗浄され約35%の固体を含む湿潤フィルターケーキをプレスフィルターからベルトコンベア−で取り出し、反応器/分散機に移動させるような方法で処理できる。ピロリン酸四ナトリウムの希薄溶液を添加して、ケーキの分散を助ける。
18%〜50%の範囲の固体比率を有するリン酸アルミニウムの「マッド(mud)」を乾燥装置にポンプ輸送する場合には、分散ステップの後に、製品を乾燥する。一実施態様では、材料からの水分除去を、「ターボ乾燥機」型などの乾燥装置を用い、サンプル中に135℃〜140℃で熱空気流を注入して実施できる。製品の最終湿分は、好ましくは10%〜20%の水分範囲に保つべきである。
【0057】
本発明の特定の実施態様において、次の処理ステップには、製品の仮焼が含まれる可能性もある。このステップでは、Al(HPOのような乾燥アルミニウムのオルトリン酸塩を熱処理で縮合させて、中空のポリリン酸アルミニウム、すなわち(Al)(n+2)/3(P(3n+1))(ここで、「n」は、1を超える任意の整数でよく、好ましくは、nが4以上である)を形成する。より好ましくは、nが10以上である。さらにより好ましくは、nが20以上である。好ましくはnが100未満である。さらにより好ましくは、nが50未満である。この処理ステップは、リン酸アルミニウムを、噴霧乾燥機型の仮焼器中、500℃〜600℃の温度範囲で加熱することによって実施される。重合後、製品を急速に冷却して微粉砕装置に送ることができる。この時点で、製品の微粉砕ステップを実施できる。最後に、乾燥機(又は仮焼器)を出た製品を粉砕及び仕上げ装置に移動し、微粉砕機/選別機中で粉砕し、粒度分析値を、400メッシュ未満を99.5%範囲に保つ。
【0058】
熱処理後のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ラテックス、PVAにおけるその自己不透明化特性ゆえに、水をベースにした家庭塗料の製造での、及び塗料乾燥処理中に高光発散能力をもつ中空構造を有する粒子の形成ゆえに、アクリル皮膜での白色顔料として応用できる。
本発明の種々の実施態様により製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを顔料として単独で又は二酸化チタンなどの他の顔料と組み合わせて使用して各種塗料を製造できる。塗料は、1種又は複数の顔料、及び結合剤としての1種又は複数のポリマー(時には「結合ポリマー」と呼ばれる)、及び場合によっては種々の添加剤を含む。水性塗料及び非水性塗料がある。一般に、水性塗料組成物は、4つの基本成分、すなわち、結合剤、水性担体、顔料(群)及び添加剤(群)からなる。結合剤は、水性担体中に分散されラテックスを形成する非揮発性の樹脂系材料である。水性担体が蒸発すると、結合剤は、水性塗料組成物の顔料粒子及びその他の非揮発性成分を一緒に結合する塗料皮膜を形成する。水性塗料組成物は、特許文献15に開示されている方法及び成分に従って、修正を伴って又は修正無しに製造化できる。このような特許の開示は、引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。本発明の種々の実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを顔料として単独で又は二酸化チタンと組み合わせて使用して水性塗料を製造することができる。
【0059】
一般的な塗料は、結合ポリマー、隠蔽顔料、及び場合によっては増粘剤及びその他の添加剤を含むラテックス塗料である。重ねて、本発明の種々の実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを顔料として単独で又は二酸化チタンと組み合わせて使用してラテックス塗料を製造することができる。ラテックス塗料を製造するためのその他の成分が、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献16及び特許文献17に開示されている。例示として、ラテックス塗料を製造するのに適した成分及び方法を以下で簡単に説明する。
【0060】
いくつかの実施態様において、適切な結合ポリマーには、0.8%〜6%の、メタクリル酸ラウリル及び/又はメタクリル酸ステアリルなどの脂肪酸アクリレート又はメタクリレートを含む乳化共重合エチレン系不飽和モノマーが含まれる。共重合エチレン系モノマーの重量を基準にして、高分子結合剤は、0.8%〜6%の脂肪酸メタクリレート又はアクリレートを含み、好ましい組成物は、10〜22個の炭素原子を含む脂肪族脂肪酸鎖を有する1%〜5%の共重合脂肪酸アクリレート又はメタクリレートを含む。好ましいコポリマー組成は、共重合脂肪酸メタクリレートをベースにしている。メタクリル酸ラウリル及び/又はメタクリル酸ステアリルが好ましく、メタクリル酸ラウリルが最も好ましいモノマーである。その他の有用な脂肪酸メタクリレートには、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸パルミチン、メタクリル酸オレイン、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸セチル及びメタクリル酸エイコシル、並びに類似の直鎖脂肪族メタクリレートが含まれる。脂肪酸メタクリレート又はアクリレートは、典型的には、少量のその他の脂肪酸アクリレート又はメタクリレートと共に主として圧倒的な脂肪酸メタクリレートを提供するための、メタクリル酸又はアクリル酸と共反応させた市販の脂肪油を含む。
【0061】
重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、炭素−炭素の不飽和を含み、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、並びに不飽和モノ−及びジカルボン酸が含まれる。ビニルエステルには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニルイソプロピルが含まれ、及び類似のビニルエステルが含まれ;ハロゲン化ビニルには、塩化ビニル、フッ化ビニル、及び塩化ビニリデンが含まれ;ビニル芳香族炭化水素には、スチレン、メチルスチレン及び類似の低級アルキルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、及びビニルベンゼンが含まれ;ビニル脂肪族炭化水素モノマーには、エチレン、プロピレン、イソプチレン、及びシクロヘキサンなどのα−オレフィン、並びに1,3−ブタジエン、メチル−2−ブタジエン、1,3−ピペリレン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、シクロへキサン、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンなどの共役ジエンが含まれる。ビニルアルキルエーテルには、メチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルが含まれる。アクリルモノマーには、1〜12個の炭素原子を含むアルキルエステル部分を有するアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル、並びにアクリル酸又はメタクリル酸の芳香族誘導体などのモノマーが含まれる。有用なアクリルモノマーには、例えば、アクリル又はメタクリル酸、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル及びメタクリル酸プロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸デシル及びメタクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル及びメタクリル酸イソデシル、アクリル酸ベンジル及びメタクリル酸ベンジル、並びにアクリル酸及びメタクリル酸と反応させたブチルフェニルエーテル、クレシルグリシジルエーテルなどの各種反応生成物、アクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピルエステルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキル、さらにはアミノアクリル酸エステル及びアミノメタクリル酸エステルが含まれる。アクリルモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、クロトン酸、β−アクリロキシプロピオン酸、及びβ−スチリルアクリル酸を含む極めて少量のアクリル酸類を含んでいてもよい。
【0062】
他の実施態様において、成分(a)、すなわちラテックス塗料の「結合ポリマー」として有用なポリマーは、スチレン、メチルスチレン、ビニル、又はそれらの組合せから選択されるモノマーを含むコモノマー混合物の共重合生成物である。好ましくは、コモノマーは、少なくとも40モル%の、スチレン、メチルスチレン、又はそれらの組合せから選択されるモノマー、及び少なくとも10モル%の、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルから選択される1種又は複数のモノマーを含んでいる(より好ましくは、本質的にそれらから構成される)。好ましくは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸メチルのように、4〜16個の炭素原子を含む。また、最終ポリマーが21℃を超えかつ95℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するような比率でモノマーを使用することが好ましい。ポリマーは、好ましくは、少なくとも100,000の重量平均分子量を有する。
【0063】
好ましくは、結合ポリマーは、アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する内部重合単位を含む。より好ましくは、結合ポリマーは、スチレン、メチルスチレン又はそれらの組合せに由来する50〜70モル%の単位、アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する10〜30モル%の単位、及びアクリル酸メチル、アクリロニトリル又はそれらの組合せに由来する10〜30モル%の単位を含む重合した単位を含む。
【0064】
適切な結合ポリマーの例示例には、その内部重合単位が、49モル%のスチレン、11モル%のα−メチルスチレン、22モル%のアクリル酸2−エチルヘキシル、及び18モル%のメタクリル酸メチルに由来し、約45℃のTgを有するコポリマー(ニュージャージー州、Bridgewater、ICI Americans Inc.からNeocryl XA−6037高分子エマルジョンとして入手可能)、その内部重合単位が、51モル%のスチレン、12モル%のα−メチルスチレン、17モル%のアクリル酸2−エチルヘキシル、及び19モル%のメタクリル酸メチルに由来し、約44℃のTgを有するコポリマー(ウィスコンシン州、Racine、S.C.Johnson&SonsからJoncryl 537高分子エマルジョンとして入手可能)、及びその内部重合単位が、約54モル%のスチレン、23モル%のアクリル酸2−エチルヘキシル、及び23モル%のアクリロニトリルに由来し、約44℃のTgを有するターポリマー(B.F.Goodrich Co.からCarboset.TM.XPD−1468高分子エマルジョンとして入手可能)が含まれる。
【0065】
前に述べたように、本発明の種々の実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムを顔料として単独で又は他の顔料と組み合わせて使用してラテックス塗料を製造できる。
さらなる適切な隠蔽顔料には、白色不透明化隠蔽顔料及び着色した有機及び無機顔料が含まれる。適切な白色不透明化隠蔽顔料の代表例には、ルチル型及びアナターゼ型の二酸化チタン、リトポン、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、硫化バリウム、鉛白、酸化亜鉛、加鉛酸化亜鉛など、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい白色隠蔽顔料は、ルチル型二酸化チタンである。より好ましいのは、約0.2〜0.4ミクロンの平均粒子径を有するルチル型二酸化チタンである。着色有機顔料の例が、フタロブルー及びハンザイエローである。着色無機顔料の例が、ベンガラ、ブラウンオキサイド、黄土、アンバーである。
【0066】
最も知られているラテックス塗料は、塗料のレオロジー特性を調節し、良好な、伸展、取扱い及び塗布特性を確実にするための増粘剤を含んでいる。適切な増粘剤には、非セルロース系増粘剤(好ましくは会合性増粘剤、より好ましくはウレタン会合性増粘剤)が含まれる。
例えば、疎水性に改質されたアルカリ膨潤性アクリルコポリマー及び疎水性に改質されたウレタンコポリマーなどの会合性増粘剤は、例えばセルロース系増粘剤などの従来型増粘剤と比較して、エマルジョン塗料に対してより大きなニュートン性レオロジーを一般には付与する。適切な会合性増粘剤の代表例には、ポリアクリル酸(例えば、ペンシルベニア州、フィラデルフィア、Rohm&Hass Co.からAcrysol RM−825及びQR−708 Rheology Modifierとして入手可能)及びアタパルジャイト(attapulgite)(ニュージャージー州、Iselin、EngelhardからAttagel 40として入手可能)が含まれる。
【0067】
ラテックス−塗料皮膜は、結合ポリマーの合着で形成され、周囲の塗料塗布温度で結合マトリックスを形成し、硬く不粘着性の皮膜を形成する。合着溶剤は、皮膜形成温度を低下させることによって皮膜形成結合剤の合着を助ける。ラテックス塗料は、好ましくは、合着溶剤を含む。適切な合着溶剤の代表例には、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル、フタル酸ジブチル、ジエチレングリコール、モノイソ酪酸2,2,4−トリメチル−1,1,3−ペンタンジオール、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、合着溶剤はジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール)(ウィスコンシン州、Milwaukee、Sigma-Aldrichから入手可能)又はモノイソ酪酸2,2,4−トリメチル−1,1,3−ペンタンジオール(テネシー州、Kingsport、Eastman Chemical Co.からTexanolとして入手可能)、又はそれらの組合せである。
【0068】
合着溶剤は、好ましくは、ラテックス塗料1リットルにつき合着溶剤が約12〜60g(好ましくは約40g)の濃度で、又は塗料中のポリマー固体の重量を基準にして約20wt%〜30wt%で使用される。
本発明の種々の実施態様に従って製造される塗料は、例えば可塑剤、消泡剤、顔料増量剤、pH調整剤、ティンティングカラー、及び殺生物剤など、塗料中で使用される従来からの材料をさらに含むことができる。これらの典型的な材料は、例えば、非特許文献3に列挙されている。
【0069】
一般に、塗料は、塗坪を拡大し、コストを低減し、耐久性を達成し、外観を変更し、レオロジーを調節し、かつ他の所望する特性に影響を与えるための「機能性増量剤」を用いて製造される。機能性増量剤の例には、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、石膏、シリカ、及びタルクが含まれる。
屋内床塗料用の最も一般的な機能性増量剤はクレーである。クレー類は、それらを望ましいものにするいくつかの特性を有する。割安な仮焼クレーは、例えば、低剪断粘度を調節するのに有用であり、「乾燥隠蔽(dry hide)」に寄与する大きな内部表面積を有する。しかし、この表面積は汚れを閉じ込めるのにも利用できる。
【0070】
汚れを吸収するそれらの傾向のため、仮焼クレーを、レオロジー調節に必要とされるほんの少量、例えば、典型的には全増量剤顔料の約半分未満で、本発明の塗料に使用するか、あるいは、まったく使用しないのが好ましい。本発明の塗料で使用するのに好ましい増量剤は炭酸カルシウムであり、最も好ましいのは、例えば、Opacimite(アラバマ州、Sylacauga、ECC Internationalから入手可能)、Supermite(ジョージア州、Roswell、Imerysから入手可能)、又は約1.0〜1.2ミクロンの粒子径を有するその他炭酸カルシウムなどの超微粉砕炭酸カルシウムである。超微細炭酸カルシウムは、二酸化チタンを隠蔽のために最適の間隔に配置するのに役立つ(例えば、非特許文献4参照)。
【0071】
本発明の種々の実施態様に従って製造されるラテックス塗料は、従来技術を利用して調製できる。例えば、いくつかの塗料材料を、一緒に高剪断下で通常的にブレンドし、塗料製造業者が通常「練合物(the grind)」と称する混合物を形成する。この混合物の粘稠度は、高剪断で材料を効率的に分散するのに望ましい、マッドのそれに匹敵する。練合物の調製中、高剪断エネルギーを使用して凝集した顔料粒子を砕いてばらばらにする。
【0072】
練合物中に含まれない材料は、通常「レットダウン(the letdown)」と称される。レットダウンは、通常、練合物よりも粘度が低く、練合物を希釈して適切な粘稠度を有する最終塗料を得るのに使用されるのが通常である。練合物とレットダウンの最終混合は、典型的には、低剪断混合で実施される。
ほとんどのポリマーラテックスは、剪断に対して安定ではなく、従って、練合物の成分としては使用されない。剪断に対して不安定なラテックスを練合物に組み込むと、ラテックスの凝集を引き起こし、皮膜形成能力のない、又はほとんどない塊状塗料をもたらす場合がある。従って、塗料は、一般に、ラテックスポリマーをレットダウン中に添加して調製される。しかし、本発明の種々の実施態様に従って製造される同様の塗料は、剪断に対して一般に安定であるラテックスポリマーを含む。従って、該ラテックス塗料は、ラテックスポリマーの一部又は全部を練合物中に組み込むことによって調製できる。好ましくは、ラテックスポリマーの少なくとも一部を練合物に入れる。
【0073】
本方法の可能な形態の2つの実施例を以下で説明する。この場合もやはり、当業者は、本明細書に記載の新規方法を実施するのに利用できる変形態様を理解するであろう。以下の実施例は、本発明の実施態様を例示するために提供される。数値は、全て近似的である。数値範囲が与えられた場合には、提示範囲外の実施態様が、本発明の範囲に含まれる場合もあると解されるべきである。各実施例中に記載される特定の詳細は、本発明の必須の特徴と解釈されるべきでない。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
この実施例では、535.0kgのリン酸アルミニウムを準備した。湿潤製品は、「ターボ乾燥機」中で乾燥され、15%の湿分、及び1:1.50のP:Al(リン:アルミニウム)比率を有する中空粒子の特徴を示した。
を55%含む940.0kgの肥料用リン酸を準備した。最初の調製段階で、85℃の温度で30分間継続する酸の脱色を実施した。この段階のために、Hを約50%含む過酸化水素溶液8.70kgを酸に添加した。次いで、酸を975.0kgのプロセス水で希釈し、40℃の温度まで冷却し、次いで27.0%のP濃度で貯蔵した。
【0075】
この出願で採用するアルミニウム供給源は、Alを28%含む市販の硫酸アルミニウム溶液とした。該溶液を、濾過し、プロセス水で希釈した。具体的には、884.30kgの硫酸アルミニウム溶液及び1,776.31kgのプロセス水を混合して、Alが約9.30%の溶液を作り出した。
この特定の実験では、中和剤としてNaOHを20.0%含む、市販の水酸化ナトリウム希釈溶液を使用した。具体的には、NaOHを50%含む974.0kgの水酸化ナトリウム溶液と1,461.0kgのプロセス水を混合した。最終混合物を40℃まで冷却した。
【0076】
3種の試薬を、7,500リットルの反応器中で約30分間、一斉に混合した。反応器に試薬を添加する間、混合物の温度を40℃〜45℃の範囲に保持し、pHを4.0〜4.5の範囲に留まるように調節した。試薬添加の終末点で、混合物を約15分間揺動したまま保った。この時点のpHを、NaOHを5.0%含む水酸化ナトリウム溶液を添加して約5.0に調節した。得られた懸濁液は、約7,000kgであり、密度は1.15g/cmであり、固体は6.5%であり、約455.0kgの沈殿物になった。
【0077】
次いで、懸濁液をプレスフィルターで濾過して、1,300kgの湿潤ケーキ及び5,700kgの濾液が生じた。濾液は、主として硫酸ナトリウム(NaSO)溶液であった。ケーキは、固体が約35%であった。ケーキを、プレスフィルター中で直接的に、室温で、3,860リットルのプロセス水を用い、乾燥ケーキ1トン当たり約8.5cmの洗浄溶液の洗浄比率を保持して洗浄した。ケーキの洗浄で生じた濾液を、場合によっては将来の使用のために、又は排出物処理のために貯蔵した。次いで、濾過器から取り出したケーキ、約1,300kgを、ベルトコンベア−を通して分散機(約1,000リットル)に移送した。固体を約35%含む分散液は、1.33g/cmの密度、17,400cPの粘度を有し、塗料を製造するためのスラリーとして使用できる。
【0078】
固体を約35%含むリン酸アルミニウム分散懸濁液を、次いで、ターボ乾燥機にポンプで送り込んだ。製品を135℃の温度の熱空気流で加熱した。湿分が15%のオルトリン酸アルミニウム約535.0kgを製造した。最終製品を微粉砕し、その粒度分析値を400メッシュ未満に保持した。乾燥製品の最終分析で次の結果が得られた。すなわち、製品中のリン含有量は約20.2%であり、アルミニウム含有量は約13.9%であり、ナトリウム含有量は約6.9%であり、水性分散液のpHは約7.0であり、水分含有量は約15%であり、骨格密度は2.20g/cmであり、粉末粒子の平均直径は5〜10μmであった。
【0079】
(実施例2)
実施例1の結果から得られた約200kgの乾燥微粉砕リン酸アルミニウムを使用した。このサンプルを使用して家庭用塗料サンプルを製造した。始めに、900リットルの不透明アクリル塗料を調製した。このような塗料を塗布し、市販の塗料の1つと比較して評価した。二酸化チタンを約18%含有する原型製造をベースにした基本塗料組成物は次の通りとした。すなわち、リン酸アルミニウムが約14.20%であり、酸化チタンが約8.34%であり、カオリンが約7.10%であり、アルガマトライト(algamatolite)が約10.36%であり、珪藻土が約0.84%であり、アクリル樹脂が約12.25%であり、PVCが約47.45%である。リン酸アルミニウムを用いて調製した塗料の、塗装において該塗料を塗布した後の特徴は、次の通りであった。すなわち、a)湿潤塗坪は対照塗料の塗坪に類似しており、b)乾燥塗坪は対照塗料を用いた塗坪より良好であり、c)家庭塗装6ヶ月後の耐久性試験は優れた結果を示した。結局、実施例2で調製されたリン酸アルミニウムを用いた水溶性不透明アクリル塗料は、市販塗料の全ての特徴を保持し、充填剤を用いて調製した表面上で50m/3.6リットルの歩留まりであった。
【0080】
X線回折及びTEM画像は、本明細書に記載の発明が、ゆるく凝集したナノサイズ粒子から構成される水和した非結晶性の中性リン酸アルミニウムであることを示している。さらに、平均凝集物の膨潤粒子径(スラリー中での)は、動的光散乱で測定すると200〜1500nmの範囲にある。より好ましくは、平均凝集物の膨潤粒子径(スラリー中での)は、400〜700nmの範囲である。しかし、個々の粒子径は、電子顕微鏡で測定して5〜80nm程度の小さな半径を有する場合がある。より好ましくは、個々の粒子径は、10〜40nm程度の小さな半径を有してもよい。
【0081】
言及したように、水をベースにした二酸化チタン基本塗料は、適切なラテックス分散液と顔料粒子から構成される。ラテックス粒子は、着色粒子で満たされた合着皮膜を作製する任務があり、かつ、皮膜の隠蔽力に責任を負っている。樹脂及び顔料の必要量を低減する無機充填剤、樹脂皮膜の形成を向上させる合着剤、顔料及び充填剤のケーキングを防止し、かくして塗料の在庫寿命及び塗料のレオロジー特性を向上させる分散剤及びレオロジー調節剤などの多くの添加剤も使用される。
【0082】
典型的な塗料乾燥皮膜において、顔料及び充填剤粒子は樹脂皮膜中に分散している。隠蔽力は、粒子の屈折率及び大きさに大部分依存している。言及したように、二酸化チタンは、その大きな屈折率及び可視光領域での光吸収の欠如ゆえに、現在のところ標準的な白色顔料である。いくつかの実施態様の新規硫酸アルミニウムを用いて製造した塗料の乾燥皮膜は、典型的な塗料の乾燥皮膜とはいくつかの相違を有している。第一に、リン酸アルミニウムを用いた皮膜は、単なる樹脂膜ではない。それは、むしろ網状化樹脂及びリン酸アルミニウムによって形成される。従って、それは、皮膜の機械的特性、並びに水及びその他の攻撃的薬剤に対する耐性に関する相乗的利益を達成するために、異なる特性を有する2つの相互侵入相を合わせたナノ複合物である。第二に、該皮膜が、光を散乱する多量の閉じた細孔を有するので、より低含有量の二酸化チタンで良好な皮膜隠蔽力が得られる。さらに、二酸化チタン粒子がこれらの空隙の1つに隣接していると、空隙は、空隙が樹脂で完全に包囲されている場合よりもより多く発散させる。このことが、隠蔽力に関する限り、新規硫酸アルミニウムと二酸化チタンの間に相乗作用を生み出す。
【0083】
標準塗料の乾燥皮膜を、リン酸アルミニウムを用いた皮膜と比較する試験では、半光沢アクリル塗料の標準的な上市製造を選択し、二酸化チタンを本明細書に記載の新規リン酸アルミニウム製品で漸進的に置き換えた。水含有量及びその他の塗料成分を要求に応じて調節した。この実施態様におけるいくつかの配合修正は、増粘剤/レオロジー調節剤、分散剤、アクリル樹脂及び合着剤の使用の低減に関するものである。表4に、この実験で使用する配合の一例を新規リン酸アルミニウムに対応する配合と共に記載する。
【0084】
【表3】

【0085】
上記配合では、乾燥皮膜の不透明度及び白色度の条件を保持して、TiOの50%(重量基準で)を代替することが達成された。さらに、レオロジー調節剤さらには皮膜構築剤としての、新規製品のその他の特性を調査した。上記の2種の配合を比較すると、本発明の実施態様に従って製造した顔料は、二酸化チタン顔料の代替で得られる低減を超えるコストの低減につながることが判る。さらに、このような利得が、塗布された塗料皮膜のより優れた性能を生みながら達成される可能性がある。本明細書に記載の発明は、TiOを、100%まで(を含むまで)、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム(又はそれらの混合物)で代替するのにも使用できる。
【0086】
本発明の種々の実施態様に関するこれまでの説明から、新規な製品及び方法は、いくつかの態様において、現存のリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムと異なることが観察できる。例えば、その化学量論が限定されていないので、本発明の種々の製造を、構成方法及び従って最終製品の組成を変えて調製できる。本発明は、調節されたpH水準で行われるので、pHは、ほぼ中性であり、従って、環境及び毒物学的問題が回避される。
【0087】
さらに、本発明は、市場に散見され、酸化鉄をリン酸鉄に変換するのに使用される若干のリン酸アルミニウムに関連する腐食の問題もない可能性がある。さらに、化学量論に無関係でかつ比較的結晶化度に無関係であること(スラリー及び粉末形態で)、及び乾燥粉末中の注意深く調節された水分含有量は、その性能にとって有益である膨潤の調節を容易にすることを可能にする。ナノサイズの粒子は、容易に分散し、沈降分離に対して安定であり、そのことが塗料の均一分散を可能にする。また、ナノ粒子は、毛細管付着の機構により(分散液の乾燥段階で)、それに続く、イオンクラスターの介在する静電付着(乾燥皮膜中で)−多くの場合、双連続性ネットワークを形成できる−により、ラテックスと強い親和性がある。結局、新規製品は、塗料の乾燥皮膜の密着及び強度に寄与できる、水をベースにした製造化分散液中に見出される各種のケイ酸塩、炭酸塩及び酸化物など、塗料充填剤として一般に使用されるその他の多くの粒子ともつよい親和性がある。
【0088】
従って、本明細書に記載の発明は、既存のものに代わる利益を提供し、方法をより経済的にし、かつ驚くべき結果を提供する特別な原料を使用する。本明細書では、肥料工業で広く利用可能なリン酸の精製、脱色、精製が開示される。リン酸は、一般に、これまで使用されているリン酸塩又はメタリン酸塩の価格の数分の1で入手できる。リンは、リン酸アルミニウム顔料の製造で使用される典型的に最も高価な価格である原料なので、酸の等級を使用すると、リン酸アルミニウムの製造コストを大きく低減することが可能になる。このような方法は、これらの顔料の広範な採用を実行可能なものにする。さらに、本明細書に記載する発明の特定の特徴は、分散液中又は湿潤粉末中などでリン酸アルミニウムを使用する新規な方法を提供する。これらの新規な方法は、重要な技術的利得を可能にする。例えば、新規な方法及び製品は、顔料の性能を損じ、その塗坪力を低下させる粒子凝集の問題を防止する。さらに、新規な方法及び製品は、水をベースにした塗料の製造に使用されるラテックス粒子の粒子分散の問題を排除し、家庭用塗料におけるリン酸アルミニウムの使用方法を容易にする。さらに、新規な方法及び製品は、製造の複雑性及びコストを増大させるリン酸塩の徹底的な乾燥ステップを必要としない。
【0089】
本明細書に記載の新規方法のもう1つの有益な態様は、該方法が「グリーンケミストリー」、すなわち、製作過程でいかなる環境問題をも生み出さない温和な温度及び圧力条件下でなされる廃棄物ゼロ製品であると考え得ることである。その化学的本性ゆえ、記載の新規方法により生み出される残留物は、肥料成分として環境中に安全に廃棄できる。それは、スラリー及び乾燥製品として製造される。双方の場合とも、水に容易に分散され、安定なレオロジー特性を有する安定な分散液を形成する。
【0090】
先に示したように、本発明の実施態様は、非晶質リン酸アルミニウムの新規製造方法を提供する。限られた実施態様で本発明を説明してきたが、ある実施態様の特定の特徴は、本発明の他の実施態様に帰せられるものではない。単一の実施態様は、本発明の全ての態様を代表するものではない。いくつかの実施態様において、その組成及び方法には、本明細書中で言及しない多数の化合物及びステップが含まれる。他の実施態様において、その組成物及び方法は、本明細書中に挙げられていない任意の化合物又はステップを含まないか、実質上含まない。記載の実施態様からの変形態様及び修正態様も存在する。樹脂の製造方法は、いくつかの行為又はステップを含むように記載できる。これらのステップ又は行為は、別途指示しない限り、任意の配列又は順序で実行できる。最後に、本明細書中に開示した数字は、数字を説明するのに単語「約」又は「ほぼ」のいずれを使用するかに関係なく、近似値を意味すると解釈されるべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲に含まれるようにそれらの修正態様及び変形態様の全てを包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1aは、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料のエネルギーフィルター像である。図1bは、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料の明視野像である。
【図2】図2aは、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料のエネルギーフィルター像である。図2bは、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料の明視野像である。
【図3】図3aは、リン酸アルミニウムをベースにした、空隙のない製品を示す、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料の明視野像である。図3bは、リン酸アルミニウムをベースにした、空隙のない製品を示す、透過型電子顕微鏡から得られる、本発明材料の明視野像である。
【図4】図4は、示差走査熱量計から得られる、本発明材料のサーモグラムである。
【図5】図5は、示差走査熱量計から得られる、本発明材料のサーモグラムである。
【図6】図6は、示差走査熱量計から得られる、本発明材料のサーモグラムである。
【図7】図7は、示差走査熱量計から得られる、本発明材料のサーモグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物であって、粒子を含み、かつ、粉末形態の場合、少なくとも一部の該粒子が、1つの粒子につき平均で1以上の閉じた空隙を有し、(a)粉末形態の場合、示差走査熱量法において、約90℃と約250℃の間に2つの吸熱ピークを示すこと、及び(b)粉末形態の場合、水1.0gにつき少なくとも0.025gで水に対する分散性を有することをさらに特徴とする、前記リン酸アルミニウム組成物。
【請求項2】
示差走査熱量法における第一吸熱ピークが90℃と120℃の間に現れ、かつ、第二吸熱ピークが150℃と180℃の間に現れる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
示差走査熱量法において、約335℃と345℃の間にピークを示さない、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
イオンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ナトリウムをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
カリウムをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アンモニウムをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
成分として請求項1記載の組成物を含む、塗料、ワニス、ラッカー、印刷インク又はプラスチック。
【請求項9】
スラリー形態の場合、約3.0〜約7.5の範囲にpHを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
リン酸、硫酸アルミニウム及びアルカリ溶液を含む材料の組合せを接触させることで得られる、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
1立方センチメートル当たり2.40グラム未満の骨格密度を特徴とし、かつ、乾燥粉末中の個別粒子の平均粒子半径が10〜100ナノメートルである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
溶剤、及びリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物を含有する塗料であって、該組成物が、粒子を含み、かつ、粉末形態の場合、少なくとも一部の該粒子が、1つの粒子につき平均で1以上の閉じた空隙を有し、かつ、該組成物が、(a)粉末形態の場合、示差走査熱量法において約90℃と約250℃の間に2つの吸熱ピークを示すこと、及び(b)粉末形態の場合、水1.0gにつき少なくとも0.025gで水に対する分散性を有することをさらに特徴とする、前記塗料。
【請求項13】
前記塗料が、低量の二酸化チタンも含有する、請求項12記載の塗料。
【請求項14】
前記組成物に関して、示差走査熱量法で約335℃と345℃の間にピークが示されない、請求項12記載の塗料。
【請求項15】
前記塗料が実質的に二酸化チタンを含まない、請求項12記載の塗料。
【請求項16】
前記溶剤が水を含む、請求項12記載の塗料。
【請求項17】
前記溶剤が極性溶剤を含む、請求項12記載の塗料。
【請求項18】
前記溶剤が非極性溶剤を含む、請求項12記載の塗料。
【請求項19】
前記溶剤が有機溶剤を含む、請求項12記載の塗料。
【請求項20】
溶剤、及びリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むリン酸アルミニウム組成物を組み合わせるステップを含む塗料の製造方法であって、前記組成物が、粒子を含み、かつ、粉末形態の場合、少なくとも一部の該粒子が1つの粒子につき平均で1以上の閉じた空隙を有し、かつ、該組成物が、(a)粉末形態の場合、示差走査熱量法において、約90℃と約250℃の間に2つの吸熱ピークを示すこと、及び(b)粉末形態の場合、水1.0gにつき少なくとも0.025gで水に対する分散性を有することをさらに特徴とする、前記塗料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−230861(P2007−230861A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45208(P2007−45208)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(507061982)ブンゲ フェルチリザンテス エス.エー. (3)
【出願人】(503215446)ユニバージデード エスタデュアル デ カンピナス (5)
【Fターム(参考)】