リン酸カルシウム材料、コラーゲンおよびグリコサミノグリカンを含む複合生体材料
【課題】ヒドロキシアパタイトよりも機械的に改良された靭性、並びにコラーゲンおよびコラーゲンとグリコサミノグリカンの共重合体よりも改良された剛性を有する合成骨代用材料の提供。
【解決手段】1つ以上のリン酸カルシウム材料、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含む生体材料であって、前記コラーゲンと前記1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、前記リン酸カルシウム材料が前記マトリクス中に分散されており、前記リン酸カルシウム材料がブルシャイト、ブルシャイトを加水分解して得られたリン酸八カルシウムおよびブルシャイトを加水分解して得られたアパタイトから1つ以上が選択されることを特徴とする生体材料。
【解決手段】1つ以上のリン酸カルシウム材料、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含む生体材料であって、前記コラーゲンと前記1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、前記リン酸カルシウム材料が前記マトリクス中に分散されており、前記リン酸カルシウム材料がブルシャイト、ブルシャイトを加水分解して得られたリン酸八カルシウムおよびブルシャイトを加水分解して得られたアパタイトから1つ以上が選択されることを特徴とする生体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用用途のための合成骨、歯科材料および再生足場、特にコラーゲン、リン酸カルシウム材料および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む合成骨、歯科材料および再生足場およびそれらの前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
自然骨はコラーゲン、グリコサミノグリカンを含む非コラーゲン状有機相およびリン酸カルシウムとの生体複合体である。その複雑な階層構造によって、高剛性、強度および破壊靭性などの優れた機械的性質を有し、それによって骨は日々受ける生理学的な応力に耐える。この分野の研究者が直面する難題は、人体や動物体内の合成材料の中や周辺に自然骨が成長する組成および構造を有する合成材料を作ることである。
【0003】
骨は、体環境の中で形成される骨類似アパタイト層によって(生体活性と称される性質)人体内のリン酸カルシウムに直接結合することが観察されている。一方、コラーゲンおよび、コラーゲンやグリコサミノグリカンのような他の生体有機物を含む共重合体は、人体の骨の生成および維持に欠かせないものを含む多数の細胞タイプの接合や増殖に最適な基材として知られている。
【0004】
ヒドロキシアパタイトはリン酸カルシウムであり、骨の代用材料の成分として最も一般的に使用されている。しかしながら、ブルシャイト、リン酸三カルシウムおよびリン酸八カルシウムなどの他のリン酸カルシウム形と比べたとき、それは、比較的に不溶性である。人体中の材料吸収速度は特に遅いので、アパタイトの比較的低い溶解性が、生体材料を製造する場合、不利に働くことがあり得る。
【0005】
ヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムは機械的に硬い材料である。しかしながら、それらは自然骨と比べると比較的脆い。コラーゲンは機械的に靭性のある材料であるが、自然骨と比べると比較的剛性が低い。コラーゲンとグリコサミノグリカンの共重合体を含む材料はコラーゲン単体に比較して靭性と剛性があるが、しかし、自然骨と比べるとまだ比較的に剛性が低い。
【0006】
従来技術で、ヒドロキシアパタイトよりも機械的に改良された靭性、並びにコラーゲンおよびコラーゲンとグリコサミノグリカンの共重合体よりも改良された剛性を有する合成骨代用材料を製造するこれまでの試みには、コラーゲンとアパタイトを機械的に混合する方法がある。そのような機械的方法は欧州特許公開EP‐A‐0164484(特許文献1)に記載されている。
【0007】
この技術のその後の開発には、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびコンドロイチン‐4‐硫酸を含みこれらの成分を機械的に混合して骨代替材料の製造を含む。これは、欧州特許公開EP‐A‐0214070(特許文献2)に記載されている。この文献はさらに、コンドロイチン‐4‐硫酸をコラーゲンに脱水素熱的に架橋させることが記載されている。アパタイト、コラーゲンおよびコンドロイチン‐4‐硫酸を含む材料は良好な生体適合性を有することが見出されている。アパタイトをコラーゲン、任意選択的にコンドロイチン‐4‐硫酸と機械的に混合することで、コラーゲン/コンドロイチン‐4‐硫酸でコートされたアパタイト粒子が実質的に形成される。そのような材料は、生体適合性はあるものの、人体または動物体内では自然骨の成長に限界があり、合成材料のリン酸カルシウム相の改造にならないことが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公開EP‐A‐0164484
【特許文献2】欧州特許公開EP‐A‐0214070
【発明の概要】
【0009】
本発明は従来技術に付随する少なくともいくつかの問題を解決しようとするものである。
【0010】
第一の態様において、本発明はコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、カルシウム源、リン源および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む酸性水溶液を供給する工程、およびコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを一緒に前記水溶液から3種共沈殿物を形成するように沈殿する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
3種共沈殿物なる用語は3種類の化合物がその溶液/分散液から実質的に同時に沈殿した3種類の化合物の沈殿を包含する。それは、特に成分を個別に、例えば異なる溶液から沈殿させ、それらの成分を機械的に混合して形成した材料と区別される。共沈殿物の微細構造は成分を機械的に混合して形成した材料と本質的に異なる。
【0012】
第一の態様において、溶液のpHは2.5から6.5、より好ましくは2.5から5.5である。さらに好ましくは溶液のpHが3.0から4.5である。さらにより好ましくは溶液のpHは3.8から4.2である。もっとも好ましくは溶液のpHが約4である。
【0013】
カルシウム源は好ましくは、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアルコキシド、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウムおよびヘパリンのカルシウム塩から1つ以上が選択される。ヘパリンのカルシウム塩は豚の腸粘膜から誘導することができる。適当なカルシウム塩はシグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc)から市販されている。
【0014】
リン源は好ましくは、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、オルトリン酸水素二ナトリウム2水和物(Na2HPO4.2H2O時折GPRセレンセ
ン塩と称される)およびリン酸トリメチル、リン酸のアルカリ金属塩(例、NaまたはK)およびリン酸のアルカリ土類塩(例、MgまたはCa)から1つ以上が選択される。
【0015】
グリコサミノグリカンはニ糖の繰り返し単位を含む長鎖の分岐のない多糖類を含む一群の高分子である。好ましくはコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸およびヒアルロン酸から1つ以上が選択される。コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン‐4‐硫酸またはコンドロイチン‐6‐硫酸でよいし、その両方ともシグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc)から入手できる。コンドロイチン‐6‐硫
酸は鮫の軟骨から誘導できる。ヒアルロン酸は人間の臍帯から誘導できる。ヘパリンは豚の腸粘膜から誘導できる。
【0016】
3種共沈殿物の沈殿において溶液の温度は、好ましくは4.0から50℃である。より好ましくは溶液の温度は15から40℃である。溶液は20から30℃の室温でもよく、20から27℃が好ましい。最も好ましくは約25℃である。
【0017】
水溶液のカルシウムイオン濃度は典型的には0.00025から1moldm‐3、好
ましくは0.001から1moldm‐3である。その方法がさらにろ過および/または
低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中のカルシウムイオン濃度はより好ましくは0.05から0.5moldm‐3(例、0.08から0.25moldm‐3)、最も好ましくは
0.1から0.5moldm‐3である。その方法がさらに、凍結乾燥および任意選択的
に射出成形工程を含む場合、水溶液中のカルシウムイオン濃度はより好ましくは0.01から0.3moldm‐3、最も好ましくは0.05から0.18moldm‐3である。
【0018】
好ましくは、溶液はリン酸塩イオンを含み、溶液中のリン酸塩イオン濃度は典型的には0.00025から1moldm‐3、好ましくは0.001から1Mである。その方法
がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中のリン酸塩イオン濃度はより好ましくは0.05から0.5moldm‐3、さらにより好ましくは0.1から
0.5M、例えば0.1から0.035moldm‐3である。その方法はさらに、凍結
乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、水溶液中のリン酸塩イオン濃度はより好ましくは0.01から0.3moldm‐3、さらにより好ましくは0.05から0.
18Mである。
【0019】
好ましくは、沈殿前の溶液中のコラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1である。より好ましくは、コラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が10:1から12:1、最も好ましくはその比率が11:1から23:2である。
【0020】
好ましくは、3種共沈殿物中のコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100、より好ましくは5:1から1:20、さらにより好ましくは3:2から1:10、最も好ましくは3:2から1:4である。
【0021】
沈殿前の溶液中のコラーゲン濃度は典型的には、1から20g/L、より好ましくは1から10g/Lである。その方法がろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、溶液中のコラーゲン濃度がより好ましくは1から10g/L、さらにより好ましくは1.5から2.5g/L、最も好ましくは1.5から2.0g/Lである。その方法が凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、沈殿前の溶液中のコラーゲン濃度が好ましくは5から20g/L、より好ましくは5から12g/L、最も好ましくは9から10.5g/Lである。
【0022】
沈殿前の溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカン全濃度は典型的には、0.01から1.5g/L、より好ましくは0.01から1g/Lである。その方法がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカンの濃度は好ましくは0.03から1.25g/L、さらにより好ましくは0.125から0.25g/L、最も好ましくは0.13から0.182g/Lである。その方法がさらに凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカンの濃度はより好ましくは0.15から1.5g/L、さらに好ましくは0.41から1.2g/L、最も好ましくは0.78から0.96g/Lである。
【0023】
好ましくはその溶液がカルシウムイオンを含み、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率が典型的には重量で1:40から500:1、その方法がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率は好ましくは1:40から250:1、さらにより好ましくは1:13から5:4であり、最も好ましくは1:13から1:2である。その方法がさらに凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率はより好ましくは1:8から500:1、さらにより好ましくは5:12から30:1、最も好ましくは5:5から5:1である。
【0024】
沈殿は、コラーゲン、カルシウム源、リン源、1つ以上のグリコサミノグリカンを酸性水溶液中で組み合わせて、沈殿が生じるまで放置するか、溶液を攪拌、アンモニアのよう
な塩基性の滴定剤を用いて滴定、予め作成したブルシャイトのような核剤の添加、カルシウム源の添加速度の変化、およびこれらの技術の組み合わせによって達成される。
【0025】
第二の態様において、本発明は、コラーゲン、リン酸八カルシウムおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を供給する工程、および前記複合材料中の少なくともブルシャイトの幾分かが加水分解によってリン酸八カルシウムに変換する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0026】
生体材料たる用語は人体または動物体と生体適合性がある材料を包含する。
【0027】
第二の態様において、複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は本発明の第一の態様に関連して本明細書で記述される方法によって形成することができる。
【0028】
好ましくは、ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解の工程が3種共沈殿物を水溶液と接触させることを含み、その水溶液はリン酸八カルシウムがブルシャイトよりも熱力学的に安定するpH以上である。好ましくは、この水溶液のpHは6から8である。より好ましくは、この水溶液のpHは6.3から7である。最も好ましくは、この水溶液のpHは約6.65である。水溶液は、例えば、pHが滴定剤でコントロールされた脱イオン水、緩衝溶液、他のカルシウム含有化合物および/またはリン含有化合物に関して飽和した溶液を含む。好ましい水溶液はアンモニアを用いて所望のpHに滴定した酢酸を含む。
【0029】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解工程は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらにより好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0030】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解工程は、好ましくは12から144時間、より好ましくは18から72時間、最も好ましくは24から48時間で実施される。
【0031】
第三の態様において、本発明は、コラーゲン、アパタイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を供給する工程、および前記複合材料中のブルシャイトの少なくとも幾分かが加水分解によってアパタイトに変換する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0032】
アパタイトはカルシウムとリン酸塩を含む一群の鉱物であり、一般式Ca5(PO4)3
(X)で表され、式中、Xは典型的にはOH‐、F‐、Cl‐のイオン、当業者に公知の他のイオンでもよい。アパタイトはシリコン置換アパタイトのような置換されたアパタイトも含む。アパタイトはヒドロキシアパタイトを含み、それはアパタイトの特定例である。ヒドロキシアパタイトはシリコンで置換されてもよい。
【0033】
第三の態様において、好ましくは複合材料が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は、発明の第一の態様に関連して本明細書で記述される方法によって形成することができる。
【0034】
好ましくは、ブルシャイトのアパタイトへの加水分解の工程が3種共沈殿物を水溶液と接触させることを含み、その水溶液はアパタイトがブルシャイトよりも熱力学的に安定す
るpH以上である。好ましくはブルシャイトのアパタイトへの変換は、水溶液のpHが6.65から9であり、より好ましくは7から8.5であり、さらにより好ましくは7.2から8.5である。水溶液は、例えば、pHが滴定剤でコントロールされた脱イオン水、緩衝溶液、他のカルシウム含有化合物および/またはリン含有化合物に関して飽和した溶液を含む。
【0035】
ブルシャイトのアパタイトへの加水分解工は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらに好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0036】
ブルシャイトのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは12から288時間、より好ましくは18時間から72時間、最も好ましくは24から48時間で実施される。
【0037】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換速度を増加させる方法は、(i)温度を上げること、(ii)溶液中のブルシャイトの濃度および/または(iii)攪拌速度である。
【0038】
本発明に従って、アパタイトとリン酸八カルシウムの両方を含む生体材料を製造することが望ましいであろう。本発明の第二および第三の態様の方法は、リン酸八カルシウムとアパタイトの両方を含む生体材料を製造するために組合すことができる。まず、3種共沈殿物中のブルシャイトをリン酸八カルシウムに変換し、それからリン酸八カルシウムを部分的にアパタイトに変換することができる。全体として、またはほぼ全体として(例、少なくとも98%)、ブルシャイトまたはリン酸八カルシウムのアパタイトへの変換は典型的にpHが8.0以上、約12時間で生じる。したがって、前記材料中のブルシャイトおよび/またはアパタイトの部分的変換は12時間以内で加水分解によって達成することができる。
【0039】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくはpHが6.65から10、より好ましくは7.2から10、さらにより好ましくは8から9である。
【0040】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらに好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0041】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは2から144時間、より好ましくは12から96時間、最も好ましくは24から72時間で実施される。
【0042】
本発明の第二および第三の態様において、ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換が、好ましくは30から40℃の温度で実施される。より好ましくはその変換は36から38℃の温度で実施される。最も好ましくは、その変換は約37℃で実施される。
【0043】
好ましくは、本発明の方法が、3種共沈殿物中の1つ以上のグリコサミノグリカンとコラーゲンとの架橋工程を含む。3種共沈殿物によって、これはコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物およびその誘導体を含む。誘導体は、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換された共沈殿物および、成形または鋳造された、またはいかなる化学的または機械的な加工にかけられた共沈殿物を含む。架橋はいかなる従来技術を用いても達成される。
【0044】
好ましくは、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換され、ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換前にグリコサミノグリカンとコラーゲンとが架橋される。この架橋は、3種共沈殿物を1つ以上のガンマ線照射、紫外線照射、脱水素熱的処理、ブドウ糖、マンノース、リボースまたは蔗糖のような単純な糖によって非酵素的な糖化、3種共沈殿物をグルタルアルデヒド、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよび/またはノルジヒドログアヤレト酸の1つ以上に接触およびこれらの方法のいかなる組み合わせによっても達成される。これらの方法は従来技術である。
【0045】
好ましくは、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換される場合、ブルシャイがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換後にグリコサミノグリカンとコラーゲンとが架橋される。ブルシャイトがアパタイト/リン酸八カルシウムへ変換後の架橋が上記に記載の1つ以上の方法、または脱水素熱的処理、またはこれらの方法のいかなる組み合わせによっても達成される。脱水素熱的処理は基材を昇温下、低圧で処理する。脱水素熱的処理の温度は95℃から135℃でよい。その温度は、脱水素熱的処理が典型的に18から36時間で完了が所望される場合、好ましくは100℃から110℃、最も好ましくは105℃から110℃である。その温度は、脱水素熱的処理が典型的に4から8時間で完了が所望される場合、好ましくは120℃から135℃、最も好ましくは125℃から135℃である。
【0046】
好ましくは、コラーゲンとグリコサミノグリカンとが、ブルシャイトがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換される前と後両方で架橋される。
【0047】
本発明の方法は、複合生体材料を骨または歯の代用として用いるため適当な構造に成形する工程を含む。そのような工程は3種共沈殿物の形成の後で、しかし、ブルシャイトのいかなる変換または生ずるかもしれないコラーゲンとグリコサミノグリカンとの架橋の前に起こるかもしれない。
【0048】
別の方法として、生体材料の成形工程はブルシャイトのアパタイトおよび/またはリン酸八カルシウムの変換後、またはコラーゲンとグリコサミノグリカンとの架橋後で起こるかもしれない。
【0049】
好ましくは、複合材料は、(i)ろ過および/または低温乾燥、(ii)凍結乾燥、(iii)射出成形および(iv)常温圧縮から選択される技術で成形される。ろ過および/または低温乾燥は、その温度が15℃から40℃、最も好ましくは35℃から40℃であり、典型的に材料の密度の高い粒状形になる。凍結乾燥は典型的には、開放多孔形状になる。射出成形は用いる金型の形に依存して材料の広範囲な形状/形態になる。常温圧縮は典型的には密度の高いペレット形状になる。
【0050】
さらに本発明は、前駆体材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を合成生体材料に変化させるのに適する前駆体材料を提供する。好ましくは、その複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は本発明の第一の態様の方法によって製造することができる。
【0051】
本発明はまた、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本明細書で記述される本発明の方法によって得ることができる。
【0052】
本発明はまた、コラーゲン、リン酸八カルシウムおよび1つ以上のグリコサミノグリカ
ンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本発明の第二の態様に従う方法によって得ることができる。
【0053】
本発明はまた、コラーゲン、アパタイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本発明の第三の態様に従う方法によって得ることができる。
【0054】
本発明はまた、コラーゲン、グリコサミノグリカンおよびブルシャイトの3種共沈殿物を含む複合生体材料を提供する。
【0055】
本発明はまた、一つ以上のリン酸カルシウム材料の粒子、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカン含む複合生体材料を提供し、コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、リン酸カルシウム材料の粒子がマトリクス中に分散し、およびそのリン酸カルシウム材料がブルシャイト、リン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトの1つ以上から選択される。
【0056】
以下の説明は、他に特に指定がない限り、本発明に従って複合生体材料のすべての態様に関する。
【0057】
コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカンは好ましくは架橋されている。
【0058】
コラーゲンは好ましくは材料中に5から90(乾燥)重量%、より好ましくは15から60(乾燥)重量%、より好ましくは20から40(乾燥)重量%の量で存在する。
【0059】
材料中に1つ以上のグリコサミノグリカンは、好ましくは0.01から12(乾燥)重量%、より好ましくは1から5.5(乾燥)重量%、最も好ましくは1.8から2.3(乾燥)重量%の量で存在する。
【0060】
材料がブルシャイトを含む場合、好ましくはコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量(乾燥)で10:1から1:100、より好ましくは重量(乾燥)5:1から1:20、最も好ましくは重量(乾燥)で3:2から1:10、例えば、重量(乾燥)で3:2から1:4である。
【0061】
材料がリン酸八カルシウムを含む場合、コラーゲンとリン酸八カルシウムとの比率は、好ましくは重量(乾燥)で10:1から1:100、より好ましくは重量(乾燥)で5:1から1:20、最も好ましくは3:2から1:10重量(乾燥)である。
【0062】
コラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が好ましくは重量(乾燥)で8:1から30:1であり、より好ましくは、重量(乾燥)で10:1から30:1、さらにより好ましくは重量(乾燥)で10:1から12:1、最も好ましくは重量(乾燥)で11:1から23:2である。
【0063】
本発明による複合生体材料は代用骨または歯科材料として使用することができる。
【0064】
本発明はまた、本発明の複合生体材料を含む合成骨材料、骨移植物、骨接ぎ片、骨代用品、骨足場、充填剤、コーティングまたは接着剤を提供する。コーティングなる用語は本発明の生体材料または前駆体を含むいかなるコーティングを含む。コーティングは補綴部材、骨または、人体または動物の体に使用する目的のいかなる基材の外面または内面に適用できるが、それは粒子状材料を含む。本発明の組成は、限定されないが骨および歯科材料を含む無機物化された生体材料で生体内および生体外修復用に用いることができる。本
発明の生体材料は同種移植および自家移植の成長に用いることができる。
【0065】
リン酸八カルシウムを含む本発明による生体材料は、前駆体ブルシャイト相が無い、または実質的に無くてよい。この生体材料は、ブルシャイトが生体材料中のリン酸カルシウムの全量に対して重量で2%以下でよい。
【0066】
リン酸カルシウム材料は、相が純粋なリン酸八カルシウムまたはアパタイトを含むまたは実質的に構成される。相が純粋とは、所望の相(X線解析で測定)が少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%を意味する。別の方法として、生体材料は、生体材料の所望の性質に依存するが、リン酸八カルシウムとアパタイトの混合物でもよい。
【0067】
ブルシャイトを含む本発明の材料は、生体材料を作成する前駆体材料として使用するかまたはそれ自体で生体材料として使用するのが適しているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】共沈殿後の複合体のXRDパターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図2】3種共沈殿物のSEM顕微鏡写真である。
【図3】3種共沈殿物のTEM顕微鏡写真である。
【図4】105℃、50ミリトール、48時間の脱水素熱的処理後の複合体のXRDパターンの図であり、ブルシャイト相が脱水素化された形のモネタイトに変換されたことを示す。
【図5】pH4.0に保つための、イオン濃度と、硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比との組み合わせ群を示すグラフである。
【図6】リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との質量比1:1を含む3種共沈殿物スラリーのpH4.0合成のための条件を求めるためのグラフである。
【図7】非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図8】CaP:コラーゲン+GAG=1:1の3種共沈殿物表面の二次(SE)および後方散乱電子(BSE)画像を示す写真である。
【図9】EDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図10】コラーゲン/GAG/OCP生体材料を形成するために、リン酸八カルシウム(OCP)に37℃、pH6.67で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図11】pH4.5に保つための、イオン濃度と、硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比との組み合わせ群を示すグラフである。
【図12】リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との3:1質量比を含む3種共沈殿物スラリーのpH4.5合成のための条件を求めるためのグラフである。
【図13】非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図14】EDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図15】コラーゲン/GAG/アパタイト生体材料を形成するために、アパタイトに37℃、pH8.50で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図16】ガンマ線照射による二次架橋後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図17】三種共沈及び乾燥処理(工程IおよびII)直後における複合材料のX線回折パターンを示す図である。
【図18】一次架橋(工程III)後の共沈殿物顆粒の構造を示すSEM顕微鏡写真である。
【図19】リン酸八カルシウムへの加水分解の進行(工程IV)の情況を示すXRDパターンの図である。
【図20】複合体のTEM画像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明による方法は以下の一連の方法を用いて実施されるが、その方法とは、コラーゲン、1つ以上のグリコサノグリカンまたは1つ以上のリン酸カルシウム成分の生体材料を製造するために全体としてまたは部分的に適用される。以下の説明は実施例の方法で提供され、本発明によるいかなる態様の方法にも適用が可能である。
【0070】
「I:コラーゲン、GAGおよびリン酸カルシウム・ブルシャイトの酸性pHでの3種共
沈殿」
この工程は複合体の3種(またはそれ以上)の成分からなる溶液から沈殿を経て同時形成を開始し、3種(またはそれ以上)それぞれの相の比率をコントロールするために実施される。複合体の組成上の性質のコントロール(特に、コラーゲン:GAG:CaP比率)は、pH、温度、熟成時間、カルシウムイオン濃度、リンイオン濃度、コラーゲン濃度およびGAG濃度の1つ以上を変化させることにより達成される。pHは一定に保っても(例えば、緩衝剤、pHスタット滴定または他の方法を用いて)または変化させてもよい。可能な2次(汚染物)相は、他の酸性リン酸カルシウム(例、モネタイト、リン酸水素カルシウム)および、滴定および反応剤付加の副産物を含む錯体(例、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム)を含む。架橋を助成する添加剤(例、グルコース、リボース)または生体内反応を高める添加剤(例、成長因子、遺伝子転写因子、シリコン、ナトリウム排泄増加ペプチド)もこの工程で添加することができる。
【0071】
「II:ネット・シェイプの形成」
この工程は最終複合体形状の所望の構造、特に気孔構造のコントロールに重点を置いて製造するために実施される。技術として、ろ過および低温乾燥(密度の高い粒状形となる)、凍結乾燥(開放気孔形状になる)、射出成形(金型のタイプに依存して広範囲な形状になる)および常温圧縮(密度の高いペレット形状になる)が挙げられる。
【0072】
「III:一次架橋」
この工程は好ましくは、高いpHの溶液に置かれる場合、複合体のGAG含量が急速に流出せず、さらに、複合体の機械的および分解上の性質を高めるために実施される。技術として、低温物理的技術(例、ガンマ線照射、紫外線照射、脱水素熱的処理)、化学的技術(例、単純な糖での非酵素的糖化、グルタルアルデヒド、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド、ノルジヒドログアヤレト酸)または組み合わせ方法(例、同時に非酵素的糖化とガンマ線照射)が挙げられる。リン酸八カルシウム(即ち、工程IVとして)に変換が望ましい場合、一次架橋は37℃未満で有利に実施され、ブルシャイト相がその脱水素化形であるモネタイト(容易にリン酸八カルシウムに加水分解されないリン酸カルシ
ウム)に変換されるのを防ぐ。
【0073】
「IV:加水分解」
この工程は、ブルシャイト(生理的pHにおいて高い溶解性の相)からのCaP相が加水分解され、リン酸八カルシウムおよび/またはアパタイト(生理的pHにおいて低い溶解性の相)になり、実質的に溶解性汚染物質(例、硝酸アンモニウム、リン酸水素カルシウム)を除去するために部分的にまたは全面的に実施される。OCPに加水分解の場合、選択したpHは約6.65の一定値に有利に保持され(緩衝液、pHスタットまたは他の方法を用いて)、約37℃で約24〜48時間である。工程Iの場合のように、架橋を助
成する添加剤(例、グルコース、リボース)または生体内反応を高める添加剤(例、成長因子、遺伝子転写因子、シリコン、ナトリウム排泄増加ペプチド)も加水分解工程(工程IV)の間に添加できる。
【0074】
「V:二次架橋」
この工程は、複合材料の機械的および分解上の性質をさらに調整するために実施することができる。上記の工程IIIに挙げた架橋手順のある部分あるいはすべてを、二次架橋を
達成するために用いることができる。
【0075】
以下の実施例および添付する図は、本発明を理解するのにさらに役立つように提供される。実施例および図は、本発明の範囲を制限するものと考えてはならない。実施例および図で記載されたいかなる特徴は前記の説明のいかなる態様にも適用可能である。
【実施例1】
【0076】
実施例1は、前記説明した合成方法の一例であり、工程IからIIIのみを適用して実施される。3種共沈殿は室温(20〜25℃)、約3.2のpH(アンモニアで滴定して保持)で実施される。この実施例において、共沈殿物は37℃で乾燥、脱水素熱的処理を経て架橋される。CaPの加水分解的変換も二次架橋もこの実施例では実施されない。
【0077】
「材料」
・コラーゲン:再生、ペプシン抽出豚デルマールコラーゲン(アテロコラーゲン);85%タイプI、15%タイプIII:日本ミートパッカー社(Japan Meat Packers,日本、大阪)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma‐Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma
Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:アンモニア;NH3;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
【0078】
「手順」
〔工程I〕
溶液A
Ca(OH)2を0.48MのH3PO4に室温で濃度0.12Mになるように溶解し、
得られた溶液をアンモニアを用いてpH3.2まで滴定する。
溶液B
コンドロイチン‐6‐硫酸を脱イオン水に3.2g/Lとなるように溶解する。一定の攪拌のもと、コンドロイチン硫酸溶液にCa(NO3)2.4H2O、それからCa(OH
)2を、硝酸塩と水酸化物のモル比が1.5になるように添加し、全カルシウム濃度2・
4Mの分散液を製造する。
0.144gのコラーゲンを20mLの溶液Aに加え、溶解するまでホモジナイザーを用いて混合する。それから4mLの溶液Bを一定攪拌のもと溶液Aに加える。
60分間攪拌を続け、3.15<pH<3.30の範囲を確実に保つようにpHを監視する。それから得られたスラリーを室温で24時間、熟成する。
【0079】
〔工程II〕
そのスラリーを空気中37℃で5日間乾燥し、残った3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、引き続いて再び37℃でもう24時間乾燥する。
得られた3種共沈殿物のX線回折パターンを図1(Cu‐K(α)照射)およびSEM画像を図2に示す。
【0080】
〔工程III〕
3種共沈殿物を、105℃、50ミリトールの真空のもと、48時間の脱水素熱的処理(DHT)で架橋する。DHT後の3種共沈殿物のTEM画像を図3に示す。図4はDHT後の3種共沈殿物のX線回折パターンを示しており、ブルシャイト相が脱水素された形のモネタイトに変換されていることを示唆している。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、前述の説明の合成方法の例であり、工程IからIVのみの適用を経て実施さ
れる。3種共沈殿は室温、pH4.0で実施される。この実施例において、pHのコントロールは、水酸化カルシウムおよび硝酸カルシウム濃度の注意深いコントロール(3種共沈殿中のブルシャイトのコラーゲンとGAG合計との重量比のコントロールも可能な手法)によって達成される。得られた3種共沈殿物は、−20℃に凍結され真空下に置かれ、それから加熱して非結合水(即ち、氷)を昇華に誘導する。一次架橋は1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド処理を用いて実施される。得られる乾燥した3種共沈殿物はそれから、pH6.67、温度約37℃での加水分解によってリン酸八カルシウムに変換される。この実施例において、二次架橋は実施されない。
【0082】
「材料」
・タイプI:牛の腱から酸溶解、インテグラライフサイエンスプラインスボロ社(Integra
Life Science Plainsboro, NJ,米国)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:なし
・架橋剤:(i)1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
【0083】
「手順」
〔工程I〕
ブルシャイトのコラーゲンとガリコサミノグリカンの合計との質量比を目標の1:1に選択する。
200mLの全反応体積中でコラーゲンとGAGの合計濃度を21mg/mLに設定する。
pH変動の実験的3次元マップ(一定の[Ca2+]で、[P]反応物イオン比率1.0まで作成された)を異なる(i)イオン濃度(即ち、[Ca2+]=[H3PO4])および(ii)硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比率で用いて、pHが4.0で一定に保たれる点の軌跡が決定される。これは図5(pHを4.0に保つためのイオン濃度およびの硝酸カルシウム:水酸化カルシウム比との組み合わせ群)に示している。
この点の軌跡を同一軸でブルシャイト質量収量のマップと重ね合わせ、21mg/mL曲線との交点の求めることによって、リン酸カルシウム(21mg/mL)のコラーゲンとGAGの合計(21mg/mL)との1:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーがpH4.0で([Ca2+]=[H3PO4]=0.1383M;Ca(NO3).4H2O:Ca(OH)2=0.1356)で製造することができる一組の反応物濃度が与えられる。
図6(リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との1:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーのpH4.0合成のための条件の決定方法)参照。
3.8644gのコラーゲンを氷浴で冷却した0.1383MのH3PO4の171.4mLに分散し、15,000rpmで90分以上攪拌し、直径19mmの固定子を備えたホモジナイザーを用いて非常に粘調なコラーゲン分散液を作り出す。
0.3436gのコンドロイチン‐6‐硫酸(GAG)を室温で、0.1383Mの14.3mLに溶解し、溶解しているGAGを分散させるため周期的に振り混ぜて、GAG溶液を製造する。
90分後に、14.3mLのGAG溶液を混合されているコラーゲン分散液に約0.5mL/分の速度で加え、15,000rpmで連続的に均一化し、全90分間混合して、非常に粘調なコラーゲン/GAGを得る。
90分の混合後、1.804gのCa(OH)2および0.780gのCa(NO3)2
.4H2Oを極めて粘調なコラーゲン/GAG分散液に15,000rpmの一定の混合
のもと30分かけて加え、コラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物スラリーを作り出し、その後、さらに14.3mLの0.1383MのH3PO4をそのスラリーに混合する。
3種共沈殿物スラリーのpHは約4.0である。
3種共沈殿物スラリーは25℃で48時間保持される。
【0084】
〔工程II〕
3種共沈殿物スラリーを−20℃の冷凍庫に入れ、一晩中固形化させる。
凍結したスラリーはそれから冷凍庫から取り出し、約80ミリトールの真空に置き、温度を室温まで上昇させ、これによってスラリーから氷の昇華を誘導し、これを48時間かけて進行させる。
非結合水除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を図7に示し、共沈殿物の表面のSEM画像を図8(CaP:コラーゲン+GAG=1:1の3種共沈殿物の表面の二次(SE)および後方散乱電子(BSE)画像)に示す。
【0085】
〔工程III〕
非結合水の完全な除去後、得られる乾燥した3種共沈殿物1.25gを40mLの脱イオン水の中で20分間、水和させる。
0.035MのEDACおよび0.014MのNHSの溶液20mLを3種共沈殿物と脱イオン水をいれた容器に加え、3種共沈殿物をゆっくり攪拌しながら室温で2時間、架橋させる。
EDAC溶液を取り除き、3種共沈殿物をリン酸緩衝溶液(PBS)でリンスし、ゆっくり攪拌して新鮮なPBS中、37℃で2時間、成長させる。
PBS中で2時間後、3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、ゆっくり攪拌しながら37℃で2回10分間隔で、成長させる。
それから3種共沈殿物を37℃で72時間乾燥させる。図9にEDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を示す。
【0086】
〔工程IV〕
架橋した3種共沈殿物顆粒を37℃で50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用いて溶液のpHを6.67に調整する。
温度およびpHを48時間、一定に保ち、その時間後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥する。
OCPに変換後の共沈殿物のX線回折パターンを図10(コラーゲン/GAG/OCP生体材料を形成するために、OCPに37℃、pH6.67で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)に示す。
【実施例3】
【0087】
実施例3は、前述の説明の合成方法の例であり、工程IからVまでの適用を経て実施される。3種共沈殿は室温、pHは約4.5で実施される。実施例2のように、pHのコントロールは、滴定剤を用いず、水酸化カルシウムおよび硝酸カルシウム濃度を注意深くコントロールして達成する。得られた共沈殿物は、−20℃に凍結され、真空下に置かれ、それから加熱して非結合水(即ち、氷)を昇華に誘導する。一次架橋は1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド処理を用いて実施する。得られる乾燥した共沈殿物はそれから、pH8.50、約37℃でアパタイトに変換される。二次架橋はガンマ線照射を用いて実施する。
【0088】
「材料」
・タイプI:牛の腱から酸溶解、インテグラライフサイエンスプラインスボロ社(Integra
Life Science Plainsboro, NJ,米国)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:なし
・架橋剤:(i)1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
【0089】
「手順」
〔工程I〕
ブルシャイトのコラーゲンとグリコサミノグリカンの合計との質量比を目標の3:1に選択する。
200mLの全反応体積中でコラーゲンとGAGの合計濃度を10mg/mLに設定する。
pH変動の実験的3次元マップ(一定の[Ca2+]で、[P]反応物イオン比率1.0まで)を異なる(i)イオン濃度(即ち、[Ca2+]=[H3PO4])および(ii)硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比率で用いて、pHが4.5で一定に保たれる点の軌跡が決定される。これは図11(pHを4.5に保つためのイオン濃度および、硝酸カル
シウム:水酸化カルシウム比との組み合わせ群)に示している。
この点の軌跡をブルシャイト質量収量のマップと重ね合わせ(同一軸で)、30mg/mL(コラーゲンとGAGの合計濃度の3倍)曲線との交点の求めることによって、リン酸カルシウム(30mg/mL)のコラーゲンとGAGの合計濃度(10mg/mL)との3:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーがpH4.5で([Ca2+]=[H3PO4]=0.1768M;Ca(NO3).4H2O:Ca(OH)2=0.049)で製造す
ることができる一組の反応物濃度が与えられる。これが図12(リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との3:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーのpH4.5合成のための条件の決定方法)に示される。
1.837gのコラーゲンを氷浴で冷却した0.1768MのH3PO4の171.4mLに分散し、15,000rpmで90分間攪拌し、直径19mmの固定子を備えたホモジナイザーを用いてコラーゲン分散液を作り出す。
0.163gのコンドロイチン‐6‐硫酸(GAG)を室温で、0.1768Mの14.3mLに溶解し、溶解しているGAGを分散させるため周期的に振り混ぜて、GAG溶液を製造する。
90分後に、14.3mLのGAG溶液を混合されているコラーゲン分散液に約0.5mL/分の速度で加え、15,000rpmで連続的に均一化し、全90分間混合して、コラーゲン/GAGが得られる。
90分の混合の後、2.498gのCa(OH)2および0.380gのCa(NO3)2.4H2Oをコラーゲン/GAG分散液に15,000rpmの一定の混合のもと30分かけて加えて、コラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物スラリーを作り出し、その後、さらに14.3mLの0.1768MのH3PO4をその混合しているスラリーに添加する。
3種共沈殿物スラリーのpHは約4.5である。
3種共沈殿物スラリーは25℃で48時間保持される。
【0090】
〔工程II〕
3種共沈殿物スラリーを−20℃の冷凍庫に入れ、一晩中固形化させる。
凍結したスラリーは冷凍庫から取り出し、約80ミリトールの真空に置き、温度を室温まで上昇させ、これによってスラリーから氷の昇華を誘導し、これを48時間かけて進行させる。非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を図13に示す。
【0091】
〔工程III〕
非結合水の完全な除去後、得られる乾燥3種共沈殿物1.25gを40mLの脱イオン水の中で20分間、水和させる。
0.018MのEDACおよび0.007MのNHSの溶液20mLを3種共沈殿物と脱イオン水をいれた容器に加え、3種共沈殿物をゆっくり攪拌しながら室温で2時間、架橋させる。
EDAC溶液を取り除き、3種共沈殿物をリン酸緩衝溶液(PBS)でリンスし、ゆっくり攪拌しながら新鮮なPBS中、37℃で2時間、成長させる。
PBS中で2時間後、3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、ゆっくり攪拌しながら37℃で、2回10分間隔で、成長させる。
それから3種共沈殿物を37℃で72時間乾燥させる。図14にEDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を示す。
【0092】
〔工程IV〕
架橋した3種共沈殿物顆粒を37℃でブルシャイトに関して予め飽和した50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用いて溶液のpHを8.50に調整する。
温度およびpHを72時間、一定に保ち、その時間後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥する。アパタイトに変換後の共沈殿物のX線回折パターンを図15(コラーゲン/GAG/アパタイト生体材料を形成するために、アパタイトに37℃、pH8.50で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)に示す。
【0093】
〔工程V〕
乾燥したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物を線量32.1kGyのガンマ線照射を施した。図16にガンマ線照射後(ガンマ線照射による二次架橋後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)のX線か回折パターンを示す。
【実施例4】
【0094】
「材料」
・コラーゲン:再生、ペプシン抽出豚デルマールコラーゲン(アテロコラーゲン);重量で85%タイプI、重量で15%タイプIII;日本ミートパッカー社(Japan Meat Packers,日本、大阪)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma‐Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:アンモニア;NH3;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
【0095】
「手順」
〔工程I〕
溶液AはCa(OH)2を0.48MのH3PO4に室温で濃度0.12Mになるように
溶解し、得られた溶液をpH3.2まで滴定して準備した。
溶液Bはコンドロイチン‐6‐硫酸を脱イオン水に3.2g/Lとなるように溶解して準備した。一定の攪拌のもと、コンドロイチン硫酸溶液にCa(NO3)2.4H2O、そ
れからCa(OH)2を、硝酸塩:水酸化物のモル比が1.5になるように添加し、全カ
ルシウム濃度2・4Mの分散液を製造した。
0.144gのコラーゲンを20mLの溶液Aに加え、溶解するまでホモジナイザーを用いて混合した。それから4mLの溶液Bを一定攪拌のもと溶液Aに加えた。60分間攪拌を続け、3.15<pH<3.30の範囲を確実に保つようにpHを監視した。それから得られたスラリーを室温で24時間、熟成した。
【0096】
〔工程II〕
そのスラリーを空気中37℃で5日間乾燥し、残った3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、引き続いて再び37℃でもう24時間乾燥した。
【0097】
〔工程III〕
共沈殿物を希薄な酢酸(pH3.2)に入れ、線量30kGyのガンマ線で照射した。それから架橋した沈殿物を溶液から分離し、リンスして空気中37℃で乾燥した。
【0098】
〔工程IV〕
架橋した共沈殿物顆粒を37℃で50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用い
て溶液のpHを6.65に調整した。温度およびpHを48時間、一定に保ち、その後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥した。
【0099】
〔工程V〕
架橋、加水分解した共沈殿物顆粒を室温で真空炉に置き、50ミリトールの真空にして、それから温度を105℃まで上げた。24時間後、温度を室温に戻し、真空を解除した。
【0100】
図17は、3種共沈殿物および乾燥(工程IとII)直後の複合体のX線回折パターンを
示す。このパターンで存在する主要な相はブルシャイトであることが確認される。
【0101】
図18は、一次架橋(工程III)後の共沈殿物顆粒の構造のSEM顕微鏡写真を示す。
顆粒の微細構造的に均一な本質に言及することは価値がある。
【0102】
リン酸八カルシウムへの加水分解の進行(工程IV)は、図19のXRDパターンで説明される。進行する12.5°のブルシャイトの強度の減少、4.5°の主要なリン酸八カルシウム(OCP)の強度の増加によって48時間に渡って無機相のOCPへの変換が示唆される。
【0103】
複合体のTEM画像を図20に示す。コラーゲン/GAGマトリクス中に分散した10〜20nmの低アスペクト比のリン酸カルシウム結晶のランダム分布は明らかである。
【0104】
本発明の複合生体材料は生体吸収材料として使用することができる。移植の後、その材料から作製されたデバイスが完全に吸収され、後には健康な再生された組織だけが残り、移植それ自体の痕跡を残さないことが期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は医用用途のための合成骨、歯科材料および再生足場、特にコラーゲン、リン酸カルシウム材料および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む合成骨、歯科材料および再生足場およびそれらの前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
自然骨はコラーゲン、グリコサミノグリカンを含む非コラーゲン状有機相およびリン酸カルシウムとの生体複合体である。その複雑な階層構造によって、高剛性、強度および破壊靭性などの優れた機械的性質を有し、それによって骨は日々受ける生理学的な応力に耐える。この分野の研究者が直面する難題は、人体や動物体内の合成材料の中や周辺に自然骨が成長する組成および構造を有する合成材料を作ることである。
【0003】
骨は、体環境の中で形成される骨類似アパタイト層によって(生体活性と称される性質)人体内のリン酸カルシウムに直接結合することが観察されている。一方、コラーゲンおよび、コラーゲンやグリコサミノグリカンのような他の生体有機物を含む共重合体は、人体の骨の生成および維持に欠かせないものを含む多数の細胞タイプの接合や増殖に最適な基材として知られている。
【0004】
ヒドロキシアパタイトはリン酸カルシウムであり、骨の代用材料の成分として最も一般的に使用されている。しかしながら、ブルシャイト、リン酸三カルシウムおよびリン酸八カルシウムなどの他のリン酸カルシウム形と比べたとき、それは、比較的に不溶性である。人体中の材料吸収速度は特に遅いので、アパタイトの比較的低い溶解性が、生体材料を製造する場合、不利に働くことがあり得る。
【0005】
ヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムは機械的に硬い材料である。しかしながら、それらは自然骨と比べると比較的脆い。コラーゲンは機械的に靭性のある材料であるが、自然骨と比べると比較的剛性が低い。コラーゲンとグリコサミノグリカンの共重合体を含む材料はコラーゲン単体に比較して靭性と剛性があるが、しかし、自然骨と比べるとまだ比較的に剛性が低い。
【0006】
従来技術で、ヒドロキシアパタイトよりも機械的に改良された靭性、並びにコラーゲンおよびコラーゲンとグリコサミノグリカンの共重合体よりも改良された剛性を有する合成骨代用材料を製造するこれまでの試みには、コラーゲンとアパタイトを機械的に混合する方法がある。そのような機械的方法は欧州特許公開EP‐A‐0164484(特許文献1)に記載されている。
【0007】
この技術のその後の開発には、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびコンドロイチン‐4‐硫酸を含みこれらの成分を機械的に混合して骨代替材料の製造を含む。これは、欧州特許公開EP‐A‐0214070(特許文献2)に記載されている。この文献はさらに、コンドロイチン‐4‐硫酸をコラーゲンに脱水素熱的に架橋させることが記載されている。アパタイト、コラーゲンおよびコンドロイチン‐4‐硫酸を含む材料は良好な生体適合性を有することが見出されている。アパタイトをコラーゲン、任意選択的にコンドロイチン‐4‐硫酸と機械的に混合することで、コラーゲン/コンドロイチン‐4‐硫酸でコートされたアパタイト粒子が実質的に形成される。そのような材料は、生体適合性はあるものの、人体または動物体内では自然骨の成長に限界があり、合成材料のリン酸カルシウム相の改造にならないことが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公開EP‐A‐0164484
【特許文献2】欧州特許公開EP‐A‐0214070
【発明の概要】
【0009】
本発明は従来技術に付随する少なくともいくつかの問題を解決しようとするものである。
【0010】
第一の態様において、本発明はコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、カルシウム源、リン源および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む酸性水溶液を供給する工程、およびコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを一緒に前記水溶液から3種共沈殿物を形成するように沈殿する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
3種共沈殿物なる用語は3種類の化合物がその溶液/分散液から実質的に同時に沈殿した3種類の化合物の沈殿を包含する。それは、特に成分を個別に、例えば異なる溶液から沈殿させ、それらの成分を機械的に混合して形成した材料と区別される。共沈殿物の微細構造は成分を機械的に混合して形成した材料と本質的に異なる。
【0012】
第一の態様において、溶液のpHは2.5から6.5、より好ましくは2.5から5.5である。さらに好ましくは溶液のpHが3.0から4.5である。さらにより好ましくは溶液のpHは3.8から4.2である。もっとも好ましくは溶液のpHが約4である。
【0013】
カルシウム源は好ましくは、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアルコキシド、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウムおよびヘパリンのカルシウム塩から1つ以上が選択される。ヘパリンのカルシウム塩は豚の腸粘膜から誘導することができる。適当なカルシウム塩はシグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc)から市販されている。
【0014】
リン源は好ましくは、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、オルトリン酸水素二ナトリウム2水和物(Na2HPO4.2H2O時折GPRセレンセ
ン塩と称される)およびリン酸トリメチル、リン酸のアルカリ金属塩(例、NaまたはK)およびリン酸のアルカリ土類塩(例、MgまたはCa)から1つ以上が選択される。
【0015】
グリコサミノグリカンはニ糖の繰り返し単位を含む長鎖の分岐のない多糖類を含む一群の高分子である。好ましくはコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸およびヒアルロン酸から1つ以上が選択される。コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン‐4‐硫酸またはコンドロイチン‐6‐硫酸でよいし、その両方ともシグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc)から入手できる。コンドロイチン‐6‐硫
酸は鮫の軟骨から誘導できる。ヒアルロン酸は人間の臍帯から誘導できる。ヘパリンは豚の腸粘膜から誘導できる。
【0016】
3種共沈殿物の沈殿において溶液の温度は、好ましくは4.0から50℃である。より好ましくは溶液の温度は15から40℃である。溶液は20から30℃の室温でもよく、20から27℃が好ましい。最も好ましくは約25℃である。
【0017】
水溶液のカルシウムイオン濃度は典型的には0.00025から1moldm‐3、好
ましくは0.001から1moldm‐3である。その方法がさらにろ過および/または
低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中のカルシウムイオン濃度はより好ましくは0.05から0.5moldm‐3(例、0.08から0.25moldm‐3)、最も好ましくは
0.1から0.5moldm‐3である。その方法がさらに、凍結乾燥および任意選択的
に射出成形工程を含む場合、水溶液中のカルシウムイオン濃度はより好ましくは0.01から0.3moldm‐3、最も好ましくは0.05から0.18moldm‐3である。
【0018】
好ましくは、溶液はリン酸塩イオンを含み、溶液中のリン酸塩イオン濃度は典型的には0.00025から1moldm‐3、好ましくは0.001から1Mである。その方法
がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中のリン酸塩イオン濃度はより好ましくは0.05から0.5moldm‐3、さらにより好ましくは0.1から
0.5M、例えば0.1から0.035moldm‐3である。その方法はさらに、凍結
乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、水溶液中のリン酸塩イオン濃度はより好ましくは0.01から0.3moldm‐3、さらにより好ましくは0.05から0.
18Mである。
【0019】
好ましくは、沈殿前の溶液中のコラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1である。より好ましくは、コラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が10:1から12:1、最も好ましくはその比率が11:1から23:2である。
【0020】
好ましくは、3種共沈殿物中のコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100、より好ましくは5:1から1:20、さらにより好ましくは3:2から1:10、最も好ましくは3:2から1:4である。
【0021】
沈殿前の溶液中のコラーゲン濃度は典型的には、1から20g/L、より好ましくは1から10g/Lである。その方法がろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、溶液中のコラーゲン濃度がより好ましくは1から10g/L、さらにより好ましくは1.5から2.5g/L、最も好ましくは1.5から2.0g/Lである。その方法が凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、沈殿前の溶液中のコラーゲン濃度が好ましくは5から20g/L、より好ましくは5から12g/L、最も好ましくは9から10.5g/Lである。
【0022】
沈殿前の溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカン全濃度は典型的には、0.01から1.5g/L、より好ましくは0.01から1g/Lである。その方法がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、水溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカンの濃度は好ましくは0.03から1.25g/L、さらにより好ましくは0.125から0.25g/L、最も好ましくは0.13から0.182g/Lである。その方法がさらに凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカンの濃度はより好ましくは0.15から1.5g/L、さらに好ましくは0.41から1.2g/L、最も好ましくは0.78から0.96g/Lである。
【0023】
好ましくはその溶液がカルシウムイオンを含み、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率が典型的には重量で1:40から500:1、その方法がさらにろ過および/または低温乾燥の工程を含む場合、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率は好ましくは1:40から250:1、さらにより好ましくは1:13から5:4であり、最も好ましくは1:13から1:2である。その方法がさらに凍結乾燥および任意選択的に射出成形工程を含む場合、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率はより好ましくは1:8から500:1、さらにより好ましくは5:12から30:1、最も好ましくは5:5から5:1である。
【0024】
沈殿は、コラーゲン、カルシウム源、リン源、1つ以上のグリコサミノグリカンを酸性水溶液中で組み合わせて、沈殿が生じるまで放置するか、溶液を攪拌、アンモニアのよう
な塩基性の滴定剤を用いて滴定、予め作成したブルシャイトのような核剤の添加、カルシウム源の添加速度の変化、およびこれらの技術の組み合わせによって達成される。
【0025】
第二の態様において、本発明は、コラーゲン、リン酸八カルシウムおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を供給する工程、および前記複合材料中の少なくともブルシャイトの幾分かが加水分解によってリン酸八カルシウムに変換する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0026】
生体材料たる用語は人体または動物体と生体適合性がある材料を包含する。
【0027】
第二の態様において、複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は本発明の第一の態様に関連して本明細書で記述される方法によって形成することができる。
【0028】
好ましくは、ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解の工程が3種共沈殿物を水溶液と接触させることを含み、その水溶液はリン酸八カルシウムがブルシャイトよりも熱力学的に安定するpH以上である。好ましくは、この水溶液のpHは6から8である。より好ましくは、この水溶液のpHは6.3から7である。最も好ましくは、この水溶液のpHは約6.65である。水溶液は、例えば、pHが滴定剤でコントロールされた脱イオン水、緩衝溶液、他のカルシウム含有化合物および/またはリン含有化合物に関して飽和した溶液を含む。好ましい水溶液はアンモニアを用いて所望のpHに滴定した酢酸を含む。
【0029】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解工程は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらにより好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0030】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムへの加水分解工程は、好ましくは12から144時間、より好ましくは18から72時間、最も好ましくは24から48時間で実施される。
【0031】
第三の態様において、本発明は、コラーゲン、アパタイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料の製造方法であって、その方法が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を供給する工程、および前記複合材料中のブルシャイトの少なくとも幾分かが加水分解によってアパタイトに変換する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0032】
アパタイトはカルシウムとリン酸塩を含む一群の鉱物であり、一般式Ca5(PO4)3
(X)で表され、式中、Xは典型的にはOH‐、F‐、Cl‐のイオン、当業者に公知の他のイオンでもよい。アパタイトはシリコン置換アパタイトのような置換されたアパタイトも含む。アパタイトはヒドロキシアパタイトを含み、それはアパタイトの特定例である。ヒドロキシアパタイトはシリコンで置換されてもよい。
【0033】
第三の態様において、好ましくは複合材料が、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は、発明の第一の態様に関連して本明細書で記述される方法によって形成することができる。
【0034】
好ましくは、ブルシャイトのアパタイトへの加水分解の工程が3種共沈殿物を水溶液と接触させることを含み、その水溶液はアパタイトがブルシャイトよりも熱力学的に安定す
るpH以上である。好ましくはブルシャイトのアパタイトへの変換は、水溶液のpHが6.65から9であり、より好ましくは7から8.5であり、さらにより好ましくは7.2から8.5である。水溶液は、例えば、pHが滴定剤でコントロールされた脱イオン水、緩衝溶液、他のカルシウム含有化合物および/またはリン含有化合物に関して飽和した溶液を含む。
【0035】
ブルシャイトのアパタイトへの加水分解工は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらに好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0036】
ブルシャイトのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは12から288時間、より好ましくは18時間から72時間、最も好ましくは24から48時間で実施される。
【0037】
ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換速度を増加させる方法は、(i)温度を上げること、(ii)溶液中のブルシャイトの濃度および/または(iii)攪拌速度である。
【0038】
本発明に従って、アパタイトとリン酸八カルシウムの両方を含む生体材料を製造することが望ましいであろう。本発明の第二および第三の態様の方法は、リン酸八カルシウムとアパタイトの両方を含む生体材料を製造するために組合すことができる。まず、3種共沈殿物中のブルシャイトをリン酸八カルシウムに変換し、それからリン酸八カルシウムを部分的にアパタイトに変換することができる。全体として、またはほぼ全体として(例、少なくとも98%)、ブルシャイトまたはリン酸八カルシウムのアパタイトへの変換は典型的にpHが8.0以上、約12時間で生じる。したがって、前記材料中のブルシャイトおよび/またはアパタイトの部分的変換は12時間以内で加水分解によって達成することができる。
【0039】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくはpHが6.65から10、より好ましくは7.2から10、さらにより好ましくは8から9である。
【0040】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは20から50℃、より好ましくは30から40℃、さらに好ましくは36から38℃、最も好ましくは約37℃の温度で実施される。
【0041】
リン酸八カルシウムのアパタイトへの加水分解工程は、好ましくは2から144時間、より好ましくは12から96時間、最も好ましくは24から72時間で実施される。
【0042】
本発明の第二および第三の態様において、ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換が、好ましくは30から40℃の温度で実施される。より好ましくはその変換は36から38℃の温度で実施される。最も好ましくは、その変換は約37℃で実施される。
【0043】
好ましくは、本発明の方法が、3種共沈殿物中の1つ以上のグリコサミノグリカンとコラーゲンとの架橋工程を含む。3種共沈殿物によって、これはコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物およびその誘導体を含む。誘導体は、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換された共沈殿物および、成形または鋳造された、またはいかなる化学的または機械的な加工にかけられた共沈殿物を含む。架橋はいかなる従来技術を用いても達成される。
【0044】
好ましくは、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換され、ブルシャイトのリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換前にグリコサミノグリカンとコラーゲンとが架橋される。この架橋は、3種共沈殿物を1つ以上のガンマ線照射、紫外線照射、脱水素熱的処理、ブドウ糖、マンノース、リボースまたは蔗糖のような単純な糖によって非酵素的な糖化、3種共沈殿物をグルタルアルデヒド、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよび/またはノルジヒドログアヤレト酸の1つ以上に接触およびこれらの方法のいかなる組み合わせによっても達成される。これらの方法は従来技術である。
【0045】
好ましくは、少なくともブルシャイトの幾分かがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換される場合、ブルシャイがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへの変換後にグリコサミノグリカンとコラーゲンとが架橋される。ブルシャイトがアパタイト/リン酸八カルシウムへ変換後の架橋が上記に記載の1つ以上の方法、または脱水素熱的処理、またはこれらの方法のいかなる組み合わせによっても達成される。脱水素熱的処理は基材を昇温下、低圧で処理する。脱水素熱的処理の温度は95℃から135℃でよい。その温度は、脱水素熱的処理が典型的に18から36時間で完了が所望される場合、好ましくは100℃から110℃、最も好ましくは105℃から110℃である。その温度は、脱水素熱的処理が典型的に4から8時間で完了が所望される場合、好ましくは120℃から135℃、最も好ましくは125℃から135℃である。
【0046】
好ましくは、コラーゲンとグリコサミノグリカンとが、ブルシャイトがリン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトへ変換される前と後両方で架橋される。
【0047】
本発明の方法は、複合生体材料を骨または歯の代用として用いるため適当な構造に成形する工程を含む。そのような工程は3種共沈殿物の形成の後で、しかし、ブルシャイトのいかなる変換または生ずるかもしれないコラーゲンとグリコサミノグリカンとの架橋の前に起こるかもしれない。
【0048】
別の方法として、生体材料の成形工程はブルシャイトのアパタイトおよび/またはリン酸八カルシウムの変換後、またはコラーゲンとグリコサミノグリカンとの架橋後で起こるかもしれない。
【0049】
好ましくは、複合材料は、(i)ろ過および/または低温乾燥、(ii)凍結乾燥、(iii)射出成形および(iv)常温圧縮から選択される技術で成形される。ろ過および/または低温乾燥は、その温度が15℃から40℃、最も好ましくは35℃から40℃であり、典型的に材料の密度の高い粒状形になる。凍結乾燥は典型的には、開放多孔形状になる。射出成形は用いる金型の形に依存して材料の広範囲な形状/形態になる。常温圧縮は典型的には密度の高いペレット形状になる。
【0050】
さらに本発明は、前駆体材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料を合成生体材料に変化させるのに適する前駆体材料を提供する。好ましくは、その複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む3種共沈殿物を含むまたは実質的に構成される。3種共沈殿物は本発明の第一の態様の方法によって製造することができる。
【0051】
本発明はまた、コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本明細書で記述される本発明の方法によって得ることができる。
【0052】
本発明はまた、コラーゲン、リン酸八カルシウムおよび1つ以上のグリコサミノグリカ
ンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本発明の第二の態様に従う方法によって得ることができる。
【0053】
本発明はまた、コラーゲン、アパタイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合生体材料を提供し、その生体材料が本発明の第三の態様に従う方法によって得ることができる。
【0054】
本発明はまた、コラーゲン、グリコサミノグリカンおよびブルシャイトの3種共沈殿物を含む複合生体材料を提供する。
【0055】
本発明はまた、一つ以上のリン酸カルシウム材料の粒子、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカン含む複合生体材料を提供し、コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、リン酸カルシウム材料の粒子がマトリクス中に分散し、およびそのリン酸カルシウム材料がブルシャイト、リン酸八カルシウムおよび/またはアパタイトの1つ以上から選択される。
【0056】
以下の説明は、他に特に指定がない限り、本発明に従って複合生体材料のすべての態様に関する。
【0057】
コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカンは好ましくは架橋されている。
【0058】
コラーゲンは好ましくは材料中に5から90(乾燥)重量%、より好ましくは15から60(乾燥)重量%、より好ましくは20から40(乾燥)重量%の量で存在する。
【0059】
材料中に1つ以上のグリコサミノグリカンは、好ましくは0.01から12(乾燥)重量%、より好ましくは1から5.5(乾燥)重量%、最も好ましくは1.8から2.3(乾燥)重量%の量で存在する。
【0060】
材料がブルシャイトを含む場合、好ましくはコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量(乾燥)で10:1から1:100、より好ましくは重量(乾燥)5:1から1:20、最も好ましくは重量(乾燥)で3:2から1:10、例えば、重量(乾燥)で3:2から1:4である。
【0061】
材料がリン酸八カルシウムを含む場合、コラーゲンとリン酸八カルシウムとの比率は、好ましくは重量(乾燥)で10:1から1:100、より好ましくは重量(乾燥)で5:1から1:20、最も好ましくは3:2から1:10重量(乾燥)である。
【0062】
コラーゲンと1つ以上のグリコサノグリカン全量との比率が好ましくは重量(乾燥)で8:1から30:1であり、より好ましくは、重量(乾燥)で10:1から30:1、さらにより好ましくは重量(乾燥)で10:1から12:1、最も好ましくは重量(乾燥)で11:1から23:2である。
【0063】
本発明による複合生体材料は代用骨または歯科材料として使用することができる。
【0064】
本発明はまた、本発明の複合生体材料を含む合成骨材料、骨移植物、骨接ぎ片、骨代用品、骨足場、充填剤、コーティングまたは接着剤を提供する。コーティングなる用語は本発明の生体材料または前駆体を含むいかなるコーティングを含む。コーティングは補綴部材、骨または、人体または動物の体に使用する目的のいかなる基材の外面または内面に適用できるが、それは粒子状材料を含む。本発明の組成は、限定されないが骨および歯科材料を含む無機物化された生体材料で生体内および生体外修復用に用いることができる。本
発明の生体材料は同種移植および自家移植の成長に用いることができる。
【0065】
リン酸八カルシウムを含む本発明による生体材料は、前駆体ブルシャイト相が無い、または実質的に無くてよい。この生体材料は、ブルシャイトが生体材料中のリン酸カルシウムの全量に対して重量で2%以下でよい。
【0066】
リン酸カルシウム材料は、相が純粋なリン酸八カルシウムまたはアパタイトを含むまたは実質的に構成される。相が純粋とは、所望の相(X線解析で測定)が少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%を意味する。別の方法として、生体材料は、生体材料の所望の性質に依存するが、リン酸八カルシウムとアパタイトの混合物でもよい。
【0067】
ブルシャイトを含む本発明の材料は、生体材料を作成する前駆体材料として使用するかまたはそれ自体で生体材料として使用するのが適しているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】共沈殿後の複合体のXRDパターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図2】3種共沈殿物のSEM顕微鏡写真である。
【図3】3種共沈殿物のTEM顕微鏡写真である。
【図4】105℃、50ミリトール、48時間の脱水素熱的処理後の複合体のXRDパターンの図であり、ブルシャイト相が脱水素化された形のモネタイトに変換されたことを示す。
【図5】pH4.0に保つための、イオン濃度と、硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比との組み合わせ群を示すグラフである。
【図6】リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との質量比1:1を含む3種共沈殿物スラリーのpH4.0合成のための条件を求めるためのグラフである。
【図7】非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図8】CaP:コラーゲン+GAG=1:1の3種共沈殿物表面の二次(SE)および後方散乱電子(BSE)画像を示す写真である。
【図9】EDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図10】コラーゲン/GAG/OCP生体材料を形成するために、リン酸八カルシウム(OCP)に37℃、pH6.67で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図11】pH4.5に保つための、イオン濃度と、硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比との組み合わせ群を示すグラフである。
【図12】リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との3:1質量比を含む3種共沈殿物スラリーのpH4.5合成のための条件を求めるためのグラフである。
【図13】非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図14】EDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイト3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図15】コラーゲン/GAG/アパタイト生体材料を形成するために、アパタイトに37℃、pH8.50で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図16】ガンマ線照射による二次架橋後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐Kα照射)を示す図である。
【図17】三種共沈及び乾燥処理(工程IおよびII)直後における複合材料のX線回折パターンを示す図である。
【図18】一次架橋(工程III)後の共沈殿物顆粒の構造を示すSEM顕微鏡写真である。
【図19】リン酸八カルシウムへの加水分解の進行(工程IV)の情況を示すXRDパターンの図である。
【図20】複合体のTEM画像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明による方法は以下の一連の方法を用いて実施されるが、その方法とは、コラーゲン、1つ以上のグリコサノグリカンまたは1つ以上のリン酸カルシウム成分の生体材料を製造するために全体としてまたは部分的に適用される。以下の説明は実施例の方法で提供され、本発明によるいかなる態様の方法にも適用が可能である。
【0070】
「I:コラーゲン、GAGおよびリン酸カルシウム・ブルシャイトの酸性pHでの3種共
沈殿」
この工程は複合体の3種(またはそれ以上)の成分からなる溶液から沈殿を経て同時形成を開始し、3種(またはそれ以上)それぞれの相の比率をコントロールするために実施される。複合体の組成上の性質のコントロール(特に、コラーゲン:GAG:CaP比率)は、pH、温度、熟成時間、カルシウムイオン濃度、リンイオン濃度、コラーゲン濃度およびGAG濃度の1つ以上を変化させることにより達成される。pHは一定に保っても(例えば、緩衝剤、pHスタット滴定または他の方法を用いて)または変化させてもよい。可能な2次(汚染物)相は、他の酸性リン酸カルシウム(例、モネタイト、リン酸水素カルシウム)および、滴定および反応剤付加の副産物を含む錯体(例、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム)を含む。架橋を助成する添加剤(例、グルコース、リボース)または生体内反応を高める添加剤(例、成長因子、遺伝子転写因子、シリコン、ナトリウム排泄増加ペプチド)もこの工程で添加することができる。
【0071】
「II:ネット・シェイプの形成」
この工程は最終複合体形状の所望の構造、特に気孔構造のコントロールに重点を置いて製造するために実施される。技術として、ろ過および低温乾燥(密度の高い粒状形となる)、凍結乾燥(開放気孔形状になる)、射出成形(金型のタイプに依存して広範囲な形状になる)および常温圧縮(密度の高いペレット形状になる)が挙げられる。
【0072】
「III:一次架橋」
この工程は好ましくは、高いpHの溶液に置かれる場合、複合体のGAG含量が急速に流出せず、さらに、複合体の機械的および分解上の性質を高めるために実施される。技術として、低温物理的技術(例、ガンマ線照射、紫外線照射、脱水素熱的処理)、化学的技術(例、単純な糖での非酵素的糖化、グルタルアルデヒド、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド、ノルジヒドログアヤレト酸)または組み合わせ方法(例、同時に非酵素的糖化とガンマ線照射)が挙げられる。リン酸八カルシウム(即ち、工程IVとして)に変換が望ましい場合、一次架橋は37℃未満で有利に実施され、ブルシャイト相がその脱水素化形であるモネタイト(容易にリン酸八カルシウムに加水分解されないリン酸カルシ
ウム)に変換されるのを防ぐ。
【0073】
「IV:加水分解」
この工程は、ブルシャイト(生理的pHにおいて高い溶解性の相)からのCaP相が加水分解され、リン酸八カルシウムおよび/またはアパタイト(生理的pHにおいて低い溶解性の相)になり、実質的に溶解性汚染物質(例、硝酸アンモニウム、リン酸水素カルシウム)を除去するために部分的にまたは全面的に実施される。OCPに加水分解の場合、選択したpHは約6.65の一定値に有利に保持され(緩衝液、pHスタットまたは他の方法を用いて)、約37℃で約24〜48時間である。工程Iの場合のように、架橋を助
成する添加剤(例、グルコース、リボース)または生体内反応を高める添加剤(例、成長因子、遺伝子転写因子、シリコン、ナトリウム排泄増加ペプチド)も加水分解工程(工程IV)の間に添加できる。
【0074】
「V:二次架橋」
この工程は、複合材料の機械的および分解上の性質をさらに調整するために実施することができる。上記の工程IIIに挙げた架橋手順のある部分あるいはすべてを、二次架橋を
達成するために用いることができる。
【0075】
以下の実施例および添付する図は、本発明を理解するのにさらに役立つように提供される。実施例および図は、本発明の範囲を制限するものと考えてはならない。実施例および図で記載されたいかなる特徴は前記の説明のいかなる態様にも適用可能である。
【実施例1】
【0076】
実施例1は、前記説明した合成方法の一例であり、工程IからIIIのみを適用して実施される。3種共沈殿は室温(20〜25℃)、約3.2のpH(アンモニアで滴定して保持)で実施される。この実施例において、共沈殿物は37℃で乾燥、脱水素熱的処理を経て架橋される。CaPの加水分解的変換も二次架橋もこの実施例では実施されない。
【0077】
「材料」
・コラーゲン:再生、ペプシン抽出豚デルマールコラーゲン(アテロコラーゲン);85%タイプI、15%タイプIII:日本ミートパッカー社(Japan Meat Packers,日本、大阪)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma‐Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma
Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:アンモニア;NH3;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
【0078】
「手順」
〔工程I〕
溶液A
Ca(OH)2を0.48MのH3PO4に室温で濃度0.12Mになるように溶解し、
得られた溶液をアンモニアを用いてpH3.2まで滴定する。
溶液B
コンドロイチン‐6‐硫酸を脱イオン水に3.2g/Lとなるように溶解する。一定の攪拌のもと、コンドロイチン硫酸溶液にCa(NO3)2.4H2O、それからCa(OH
)2を、硝酸塩と水酸化物のモル比が1.5になるように添加し、全カルシウム濃度2・
4Mの分散液を製造する。
0.144gのコラーゲンを20mLの溶液Aに加え、溶解するまでホモジナイザーを用いて混合する。それから4mLの溶液Bを一定攪拌のもと溶液Aに加える。
60分間攪拌を続け、3.15<pH<3.30の範囲を確実に保つようにpHを監視する。それから得られたスラリーを室温で24時間、熟成する。
【0079】
〔工程II〕
そのスラリーを空気中37℃で5日間乾燥し、残った3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、引き続いて再び37℃でもう24時間乾燥する。
得られた3種共沈殿物のX線回折パターンを図1(Cu‐K(α)照射)およびSEM画像を図2に示す。
【0080】
〔工程III〕
3種共沈殿物を、105℃、50ミリトールの真空のもと、48時間の脱水素熱的処理(DHT)で架橋する。DHT後の3種共沈殿物のTEM画像を図3に示す。図4はDHT後の3種共沈殿物のX線回折パターンを示しており、ブルシャイト相が脱水素された形のモネタイトに変換されていることを示唆している。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、前述の説明の合成方法の例であり、工程IからIVのみの適用を経て実施さ
れる。3種共沈殿は室温、pH4.0で実施される。この実施例において、pHのコントロールは、水酸化カルシウムおよび硝酸カルシウム濃度の注意深いコントロール(3種共沈殿中のブルシャイトのコラーゲンとGAG合計との重量比のコントロールも可能な手法)によって達成される。得られた3種共沈殿物は、−20℃に凍結され真空下に置かれ、それから加熱して非結合水(即ち、氷)を昇華に誘導する。一次架橋は1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド処理を用いて実施される。得られる乾燥した3種共沈殿物はそれから、pH6.67、温度約37℃での加水分解によってリン酸八カルシウムに変換される。この実施例において、二次架橋は実施されない。
【0082】
「材料」
・タイプI:牛の腱から酸溶解、インテグラライフサイエンスプラインスボロ社(Integra
Life Science Plainsboro, NJ,米国)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:なし
・架橋剤:(i)1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
【0083】
「手順」
〔工程I〕
ブルシャイトのコラーゲンとガリコサミノグリカンの合計との質量比を目標の1:1に選択する。
200mLの全反応体積中でコラーゲンとGAGの合計濃度を21mg/mLに設定する。
pH変動の実験的3次元マップ(一定の[Ca2+]で、[P]反応物イオン比率1.0まで作成された)を異なる(i)イオン濃度(即ち、[Ca2+]=[H3PO4])および(ii)硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比率で用いて、pHが4.0で一定に保たれる点の軌跡が決定される。これは図5(pHを4.0に保つためのイオン濃度およびの硝酸カルシウム:水酸化カルシウム比との組み合わせ群)に示している。
この点の軌跡を同一軸でブルシャイト質量収量のマップと重ね合わせ、21mg/mL曲線との交点の求めることによって、リン酸カルシウム(21mg/mL)のコラーゲンとGAGの合計(21mg/mL)との1:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーがpH4.0で([Ca2+]=[H3PO4]=0.1383M;Ca(NO3).4H2O:Ca(OH)2=0.1356)で製造することができる一組の反応物濃度が与えられる。
図6(リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との1:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーのpH4.0合成のための条件の決定方法)参照。
3.8644gのコラーゲンを氷浴で冷却した0.1383MのH3PO4の171.4mLに分散し、15,000rpmで90分以上攪拌し、直径19mmの固定子を備えたホモジナイザーを用いて非常に粘調なコラーゲン分散液を作り出す。
0.3436gのコンドロイチン‐6‐硫酸(GAG)を室温で、0.1383Mの14.3mLに溶解し、溶解しているGAGを分散させるため周期的に振り混ぜて、GAG溶液を製造する。
90分後に、14.3mLのGAG溶液を混合されているコラーゲン分散液に約0.5mL/分の速度で加え、15,000rpmで連続的に均一化し、全90分間混合して、非常に粘調なコラーゲン/GAGを得る。
90分の混合後、1.804gのCa(OH)2および0.780gのCa(NO3)2
.4H2Oを極めて粘調なコラーゲン/GAG分散液に15,000rpmの一定の混合
のもと30分かけて加え、コラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物スラリーを作り出し、その後、さらに14.3mLの0.1383MのH3PO4をそのスラリーに混合する。
3種共沈殿物スラリーのpHは約4.0である。
3種共沈殿物スラリーは25℃で48時間保持される。
【0084】
〔工程II〕
3種共沈殿物スラリーを−20℃の冷凍庫に入れ、一晩中固形化させる。
凍結したスラリーはそれから冷凍庫から取り出し、約80ミリトールの真空に置き、温度を室温まで上昇させ、これによってスラリーから氷の昇華を誘導し、これを48時間かけて進行させる。
非結合水除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を図7に示し、共沈殿物の表面のSEM画像を図8(CaP:コラーゲン+GAG=1:1の3種共沈殿物の表面の二次(SE)および後方散乱電子(BSE)画像)に示す。
【0085】
〔工程III〕
非結合水の完全な除去後、得られる乾燥した3種共沈殿物1.25gを40mLの脱イオン水の中で20分間、水和させる。
0.035MのEDACおよび0.014MのNHSの溶液20mLを3種共沈殿物と脱イオン水をいれた容器に加え、3種共沈殿物をゆっくり攪拌しながら室温で2時間、架橋させる。
EDAC溶液を取り除き、3種共沈殿物をリン酸緩衝溶液(PBS)でリンスし、ゆっくり攪拌して新鮮なPBS中、37℃で2時間、成長させる。
PBS中で2時間後、3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、ゆっくり攪拌しながら37℃で2回10分間隔で、成長させる。
それから3種共沈殿物を37℃で72時間乾燥させる。図9にEDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を示す。
【0086】
〔工程IV〕
架橋した3種共沈殿物顆粒を37℃で50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用いて溶液のpHを6.67に調整する。
温度およびpHを48時間、一定に保ち、その時間後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥する。
OCPに変換後の共沈殿物のX線回折パターンを図10(コラーゲン/GAG/OCP生体材料を形成するために、OCPに37℃、pH6.67で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)に示す。
【実施例3】
【0087】
実施例3は、前述の説明の合成方法の例であり、工程IからVまでの適用を経て実施される。3種共沈殿は室温、pHは約4.5で実施される。実施例2のように、pHのコントロールは、滴定剤を用いず、水酸化カルシウムおよび硝酸カルシウム濃度を注意深くコントロールして達成する。得られた共沈殿物は、−20℃に凍結され、真空下に置かれ、それから加熱して非結合水(即ち、氷)を昇華に誘導する。一次架橋は1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド処理を用いて実施する。得られる乾燥した共沈殿物はそれから、pH8.50、約37℃でアパタイトに変換される。二次架橋はガンマ線照射を用いて実施する。
【0088】
「材料」
・タイプI:牛の腱から酸溶解、インテグラライフサイエンスプラインスボロ社(Integra
Life Science Plainsboro, NJ,米国)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:なし
・架橋剤:(i)1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS);シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
【0089】
「手順」
〔工程I〕
ブルシャイトのコラーゲンとグリコサミノグリカンの合計との質量比を目標の3:1に選択する。
200mLの全反応体積中でコラーゲンとGAGの合計濃度を10mg/mLに設定する。
pH変動の実験的3次元マップ(一定の[Ca2+]で、[P]反応物イオン比率1.0まで)を異なる(i)イオン濃度(即ち、[Ca2+]=[H3PO4])および(ii)硝酸カルシウム:水酸化カルシウムの比率で用いて、pHが4.5で一定に保たれる点の軌跡が決定される。これは図11(pHを4.5に保つためのイオン濃度および、硝酸カル
シウム:水酸化カルシウム比との組み合わせ群)に示している。
この点の軌跡をブルシャイト質量収量のマップと重ね合わせ(同一軸で)、30mg/mL(コラーゲンとGAGの合計濃度の3倍)曲線との交点の求めることによって、リン酸カルシウム(30mg/mL)のコラーゲンとGAGの合計濃度(10mg/mL)との3:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーがpH4.5で([Ca2+]=[H3PO4]=0.1768M;Ca(NO3).4H2O:Ca(OH)2=0.049)で製造す
ることができる一組の反応物濃度が与えられる。これが図12(リン酸カルシウムのコラーゲンとGAGの合計との3:1質量比を有する3種共沈殿物スラリーのpH4.5合成のための条件の決定方法)に示される。
1.837gのコラーゲンを氷浴で冷却した0.1768MのH3PO4の171.4mLに分散し、15,000rpmで90分間攪拌し、直径19mmの固定子を備えたホモジナイザーを用いてコラーゲン分散液を作り出す。
0.163gのコンドロイチン‐6‐硫酸(GAG)を室温で、0.1768Mの14.3mLに溶解し、溶解しているGAGを分散させるため周期的に振り混ぜて、GAG溶液を製造する。
90分後に、14.3mLのGAG溶液を混合されているコラーゲン分散液に約0.5mL/分の速度で加え、15,000rpmで連続的に均一化し、全90分間混合して、コラーゲン/GAGが得られる。
90分の混合の後、2.498gのCa(OH)2および0.380gのCa(NO3)2.4H2Oをコラーゲン/GAG分散液に15,000rpmの一定の混合のもと30分かけて加えて、コラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物スラリーを作り出し、その後、さらに14.3mLの0.1768MのH3PO4をその混合しているスラリーに添加する。
3種共沈殿物スラリーのpHは約4.5である。
3種共沈殿物スラリーは25℃で48時間保持される。
【0090】
〔工程II〕
3種共沈殿物スラリーを−20℃の冷凍庫に入れ、一晩中固形化させる。
凍結したスラリーは冷凍庫から取り出し、約80ミリトールの真空に置き、温度を室温まで上昇させ、これによってスラリーから氷の昇華を誘導し、これを48時間かけて進行させる。非結合水の除去後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を図13に示す。
【0091】
〔工程III〕
非結合水の完全な除去後、得られる乾燥3種共沈殿物1.25gを40mLの脱イオン水の中で20分間、水和させる。
0.018MのEDACおよび0.007MのNHSの溶液20mLを3種共沈殿物と脱イオン水をいれた容器に加え、3種共沈殿物をゆっくり攪拌しながら室温で2時間、架橋させる。
EDAC溶液を取り除き、3種共沈殿物をリン酸緩衝溶液(PBS)でリンスし、ゆっくり攪拌しながら新鮮なPBS中、37℃で2時間、成長させる。
PBS中で2時間後、3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、ゆっくり攪拌しながら37℃で、2回10分間隔で、成長させる。
それから3種共沈殿物を37℃で72時間乾燥させる。図14にEDAC架橋後のコラーゲン/GAG/ブルシャイトの3種共沈殿物のX線回折パターン(Cu‐K(α)照射)を示す。
【0092】
〔工程IV〕
架橋した3種共沈殿物顆粒を37℃でブルシャイトに関して予め飽和した50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用いて溶液のpHを8.50に調整する。
温度およびpHを72時間、一定に保ち、その時間後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥する。アパタイトに変換後の共沈殿物のX線回折パターンを図15(コラーゲン/GAG/アパタイト生体材料を形成するために、アパタイトに37℃、pH8.50で72時間かけて変換後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/CaP3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)に示す。
【0093】
〔工程V〕
乾燥したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物を線量32.1kGyのガンマ線照射を施した。図16にガンマ線照射後(ガンマ線照射による二次架橋後のEDACで架橋したコラーゲン/GAG/Ap3種共沈殿物、Cu‐K(α)照射)のX線か回折パターンを示す。
【実施例4】
【0094】
「材料」
・コラーゲン:再生、ペプシン抽出豚デルマールコラーゲン(アテロコラーゲン);重量で85%タイプI、重量で15%タイプIII;日本ミートパッカー社(Japan Meat Packers,日本、大阪)
・GAG:鮫軟骨由来コンドロイチン‐6‐硫酸;ナトリウム塩;シグマアルドリッチ社(Sigma‐Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・カルシウム源:(i)水酸化カルシウム;Ca(OH)2シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)(ii)硝酸カルシウム;Ca(NO3)2.4H2O;シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Inc,St.Louis,MO,米国)
・リン源:オルトリン酸;H3PO4;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
・滴定剤:アンモニア;NH3;ビーディーエッチラボラトリーサプライズ社(BDH Laboratory supplies, Poole,英国)
【0095】
「手順」
〔工程I〕
溶液AはCa(OH)2を0.48MのH3PO4に室温で濃度0.12Mになるように
溶解し、得られた溶液をpH3.2まで滴定して準備した。
溶液Bはコンドロイチン‐6‐硫酸を脱イオン水に3.2g/Lとなるように溶解して準備した。一定の攪拌のもと、コンドロイチン硫酸溶液にCa(NO3)2.4H2O、そ
れからCa(OH)2を、硝酸塩:水酸化物のモル比が1.5になるように添加し、全カ
ルシウム濃度2・4Mの分散液を製造した。
0.144gのコラーゲンを20mLの溶液Aに加え、溶解するまでホモジナイザーを用いて混合した。それから4mLの溶液Bを一定攪拌のもと溶液Aに加えた。60分間攪拌を続け、3.15<pH<3.30の範囲を確実に保つようにpHを監視した。それから得られたスラリーを室温で24時間、熟成した。
【0096】
〔工程II〕
そのスラリーを空気中37℃で5日間乾燥し、残った3種共沈殿物を脱イオン水でリンスし、引き続いて再び37℃でもう24時間乾燥した。
【0097】
〔工程III〕
共沈殿物を希薄な酢酸(pH3.2)に入れ、線量30kGyのガンマ線で照射した。それから架橋した沈殿物を溶液から分離し、リンスして空気中37℃で乾燥した。
【0098】
〔工程IV〕
架橋した共沈殿物顆粒を37℃で50mLの脱イオン水の中に入れ、アンモニアを用い
て溶液のpHを6.65に調整した。温度およびpHを48時間、一定に保ち、その後に共沈殿物をろ過し、脱イオン水でリンスして空気中37℃で乾燥した。
【0099】
〔工程V〕
架橋、加水分解した共沈殿物顆粒を室温で真空炉に置き、50ミリトールの真空にして、それから温度を105℃まで上げた。24時間後、温度を室温に戻し、真空を解除した。
【0100】
図17は、3種共沈殿物および乾燥(工程IとII)直後の複合体のX線回折パターンを
示す。このパターンで存在する主要な相はブルシャイトであることが確認される。
【0101】
図18は、一次架橋(工程III)後の共沈殿物顆粒の構造のSEM顕微鏡写真を示す。
顆粒の微細構造的に均一な本質に言及することは価値がある。
【0102】
リン酸八カルシウムへの加水分解の進行(工程IV)は、図19のXRDパターンで説明される。進行する12.5°のブルシャイトの強度の減少、4.5°の主要なリン酸八カルシウム(OCP)の強度の増加によって48時間に渡って無機相のOCPへの変換が示唆される。
【0103】
複合体のTEM画像を図20に示す。コラーゲン/GAGマトリクス中に分散した10〜20nmの低アスペクト比のリン酸カルシウム結晶のランダム分布は明らかである。
【0104】
本発明の複合生体材料は生体吸収材料として使用することができる。移植の後、その材料から作製されたデバイスが完全に吸収され、後には健康な再生された組織だけが残り、移植それ自体の痕跡を残さないことが期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料の製造方法であって、コラーゲン、カルシウム源、リン源および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む酸性水溶液を供給する工程と、前記コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを一緒に前記水溶液から3種共沈殿物を形成するように沈殿する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水溶液のpHが2.5から6.5である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液のpHが3から4.5である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液のpHが3.8から4.2である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カルシウム源が硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアルコキシド、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウムおよびヘパリンのカルシウム塩から1つ以上が選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リン源がリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、オルトリン酸水素二ナトリウム2水和物およびリン酸トリメチルから1つ以上が選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸およびヒアルロン酸から1つ以上が選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液の温度が4から50℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液の温度が15から40℃である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液中のコラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液がカルシウムイオンを含み、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率が重量で1:40から500:1である請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記共沈殿物中のコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液がカルシウムイオンを含み、水溶液中のカルシウムイオン濃度が0.00025から1Mである請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液がリン酸塩を含み、水溶液中のリン酸塩濃度が0.00025から1Mである請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液中のコラーゲン濃度が1.0から20g/Lである請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカン全濃度が、0.01から1.5g/Lである請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むことを特徴とする複合材料。
【請求項18】
前記複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物で実質的に構成される請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記3種共沈殿物が請求項1〜16のいずれか一項で定義される方法に従って製造される請求項17または18に記載の複合材料。
【請求項20】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項21】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の複合材料に含まれる3種共沈殿物におけるブルシャイトの少なくとも幾分かを加水分解することによって得られたリン酸八カルシウムと、コラーゲンと、1つ以上のグリコサミノグリカンとを含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項22】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の複合材料に含まれる3種共沈殿物におけるブルシャイトの少なくとも幾分かを加水分解することによって得られたアパタイトと、コラーゲンと、1つ以上のグリコサミノグリカンとを含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項23】
代用骨または歯科材料として使用するための請求項20〜22のいずれか一項に記載の複合生体材料。
【請求項24】
コラーゲンが5から90重量%で存在することを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項25】
1つ以上のグリコサミノグリカンが0.01から12重量%で存在することを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項26】
コラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100であることを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項27】
コラーゲンとリン酸八カルシウムとの比率が重量で10:1から1:100であることを特徴とする請求項21に記載の材料。
【請求項28】
コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1であることを特徴とする請求項17〜27のいずれか一項に記載の材料。
【請求項29】
1つ以上のリン酸カルシウム材料、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含む生体材料であって、前記コラーゲンと前記1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、前記リン酸カルシウム材料が前記マトリクス中に分散されており、前記リン酸カルシウム材料がブルシャイト、ブルシャイトを加水分解して得られたリン酸八カルシウムおよびブルシャイトを加水分解して得られたアパタイトから1つ以上が選択されることを特徴とする生体材料。
【請求項1】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを含む複合材料の製造方法であって、コラーゲン、カルシウム源、リン源および1つ以上のグリコサミノグリカンを含む酸性水溶液を供給する工程と、前記コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンを一緒に前記水溶液から3種共沈殿物を形成するように沈殿する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水溶液のpHが2.5から6.5である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液のpHが3から4.5である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液のpHが3.8から4.2である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カルシウム源が硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアルコキシド、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウムおよびヘパリンのカルシウム塩から1つ以上が選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リン源がリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、オルトリン酸水素二ナトリウム2水和物およびリン酸トリメチルから1つ以上が選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸およびヒアルロン酸から1つ以上が選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液の温度が4から50℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液の温度が15から40℃である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液中のコラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液がカルシウムイオンを含み、コラーゲンとカルシウムイオンとの比率が重量で1:40から500:1である請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記共沈殿物中のコラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液がカルシウムイオンを含み、水溶液中のカルシウムイオン濃度が0.00025から1Mである請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液がリン酸塩を含み、水溶液中のリン酸塩濃度が0.00025から1Mである請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液中のコラーゲン濃度が1.0から20g/Lである請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液中の1つ以上のグリコサミノグリカン全濃度が、0.01から1.5g/Lである請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むことを特徴とする複合材料。
【請求項18】
前記複合材料がコラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物で実質的に構成される請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記3種共沈殿物が請求項1〜16のいずれか一項で定義される方法に従って製造される請求項17または18に記載の複合材料。
【請求項20】
コラーゲン、ブルシャイトおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項21】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の複合材料に含まれる3種共沈殿物におけるブルシャイトの少なくとも幾分かを加水分解することによって得られたリン酸八カルシウムと、コラーゲンと、1つ以上のグリコサミノグリカンとを含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項22】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の複合材料に含まれる3種共沈殿物におけるブルシャイトの少なくとも幾分かを加水分解することによって得られたアパタイトと、コラーゲンと、1つ以上のグリコサミノグリカンとを含むことを特徴とする複合生体材料。
【請求項23】
代用骨または歯科材料として使用するための請求項20〜22のいずれか一項に記載の複合生体材料。
【請求項24】
コラーゲンが5から90重量%で存在することを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項25】
1つ以上のグリコサミノグリカンが0.01から12重量%で存在することを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項26】
コラーゲンとブルシャイトとの比率が重量で10:1から1:100であることを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項27】
コラーゲンとリン酸八カルシウムとの比率が重量で10:1から1:100であることを特徴とする請求項21に記載の材料。
【請求項28】
コラーゲンと1つ以上のグリコサミノグリカン全量との比率が重量で8:1から30:1であることを特徴とする請求項17〜27のいずれか一項に記載の材料。
【請求項29】
1つ以上のリン酸カルシウム材料、コラーゲンおよび1つ以上のグリコサミノグリカンの3種共沈殿物を含む生体材料であって、前記コラーゲンと前記1つ以上のグリコサミノグリカンとが架橋してマトリクスを形成し、前記リン酸カルシウム材料が前記マトリクス中に分散されており、前記リン酸カルシウム材料がブルシャイト、ブルシャイトを加水分解して得られたリン酸八カルシウムおよびブルシャイトを加水分解して得られたアパタイトから1つ以上が選択されることを特徴とする生体材料。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図2】
【図3】
【図8】
【図18】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図2】
【図3】
【図8】
【図18】
【図20】
【公開番号】特開2012−110739(P2012−110739A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20970(P2012−20970)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2006−537412(P2006−537412)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(501484851)ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2006−537412(P2006−537412)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(501484851)ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]