説明

リン酸カルシウム系焼結多孔体およびその製造方法並びにリン酸カルシウム系焼結多孔体顆粒物

【課題】取り扱いに支障を来たさない程度の適度の強度を有し、しかも容易に加工できる程度の良好な加工性を備えており、生体補填材料の素材として有用なリン酸カルシウム系焼結多孔体、およびこうしたリン酸カルシウム系焼結多孔体から得られる顆粒状物、並びにこのようなリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するための方法を提供する。
【解決手段】本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体は、平均気孔径が0.1〜50μmで相互に連結した連続気孔と、平均気孔径が100〜600μmで相互に独立した大気孔が存在すると共に、全体の気孔率が50〜95体積%のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工骨、人工歯、医療・歯科領域の骨充填材等の生体補填材料の素材として、或は浄化用フィルターや断熱材等の素材として有用なリン酸カルシウム系焼結多孔体、およびこうしたリン酸カルシウム系焼結多孔体から得られる顆粒状物、並びにリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウムは、人間の骨や歯の主要構成物質であり、生体内に埋入された場合に生体との親和性が良く、自然骨との化学結合性も良好であるので、人工骨、人工歯、医療・歯科領域の骨充填材等の生体補填材料の素材として用いられている。特に、リン酸カルシウムの多孔体は、生体内組織との接触面積が大きくなり、また加工性も良好であることから、生体補填材料の素材として有用なものとして期待されている。また、リン酸カルシウム多孔体は、多孔性に起因して、気体や液体の浄化用フィルター等の素材として、或は断熱性が良好であることによって、断熱材等の建築材料の素材としても期待されている。更に、医療・歯科領域の骨充填材等として用いる場合には、所定の粒径を有する顆粒状とされるのが一般的である。
【0003】
こうしたリン酸カルシウム多孔体に関する技術として、これまでにも様々なものが提案されている。例えば、特許文献1、2には、細孔の直径が0.1〜10μmまたは10〜100μmの範囲にある三次元連続貫通孔を有するリン酸カルシウム多孔体(リン酸カルシウム系焼結多孔体)について提案されている。しかしながら、このような小さな孔では、新生骨の形成のためには不利なものとなる。即ち、新生骨の形成には、多孔体内に細胞組織や血液が侵入し易い大きさの孔が必要となるのであるが、上記のような細孔では、多孔体内に細胞や血液が十分に侵入できないことがあり、新生骨が十分に形成されにくいことになるので、このようなリン酸カルシウム多孔体は生体補填材料としての適用上限界がある。
【0004】
リン酸カルシウム多孔体に関する他の技術として、例えば特許文献3には、大きさが70μm〜4mmの人工貫通孔を有し、空隙率(気孔率)が20〜80体積%程度である低温硬化型リン酸カルシウム多孔体について提案されている。この技術では、多孔体を反応・硬化させる際に長柱体を配置することによって人工貫通孔を形成するものであるが、人工貫通孔以外の気泡は連続していない気泡(独立気泡)となっており、人口貫通孔だけでは多孔体内への細胞組織や血液の侵入が不十分なものとなる。
【0005】
一方、特許文献4には、リン酸カルシウム系材料を含むスラリーを形成し、これに起泡剤を添加することによってスラリー中に泡を発生させ(以下、「起泡法」と呼ぶ)、これを焼結することによって、直径150μm以上の比較的大きな気泡を有するリン酸カルシウム多孔体を製造する技術について提案されている。しかしながら、こうした起泡法で形成されたリン酸カルシウム多孔体では、その製造的制約から内部と外部では気泡の大きさが不均一なものとなり、細胞組織や血液と直接接触する外部での気孔の大きさが小さなもの(例えば50μm以下)となって、生体補填材料としての適用上限界がある。
【0006】
また、リン酸カルシウム多孔体においては、骨充填材としての適用性を良好にするために、比較的大きな気孔(大気孔)だけを形成することも考えられるが、大気孔だけを形成したのでは、強度が低いものとなってしまう。上記特許文献4の技術では、基本的に大きな気孔を形成することを主旨とするものであるが、起泡法で形成されたリン酸カルシウム多孔体では気孔径の大きさに拘わらず、強度面でも問題がある。即ち、上記のような起泡法では、原料スラリー調製に界面活性剤が必然的に添加されることになるが、この界面活性剤はリン酸カルシウム粒子同士の結合性を阻害し、その結果としてリン酸カルシウム多孔体の強度が低下することになる。
【0007】
リン酸カルシウム多孔体の強度が低下すると、外科手術の際に、リン酸カルシウム多孔体の取り扱いが困難なものとなり、骨充填材として患部に入れるまでに所定の形状が保持できないという問題が生じる。一方、リン酸カルシウム多孔体の強度があまり高過ぎると、加工性が悪くなって、外科手術中に患部の状況に応じた微調整が困難になり、特殊な装置によって切削加工することが必要になる。その結果、手術時間が長くなって、患者に大きな負担を強いることになる。
【0008】
こうしたことから、リン酸カルシウム多孔体を生体補填材料として適用するには、取り扱いに支障を来たさない程度の適度の強度を有し、しかも手術中に手術用メスで容易に加工できる程度の良好な加工性を備えていることが必要となる。また、この多孔体を顆粒(顆粒状物)にした場合においても、上記と同様に適度な強度が求められる。即ち、顆粒状物が柔らかすぎると、充填時に崩壊して微細粒子になってしまい、適切な気孔が消滅する。一方、固すぎると、充填時に微調整ができないため、隙間が多数存在することになる。こうしたことから、顆粒状物にした場合においても、適度な強度を有していることは重要な要件である。
【特許文献1】特開2002−274968号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】特開2004−284898号公報 特許請求の範囲等
【特許文献3】特開2005−46530号公報 特許請求の範囲等
【特許文献4】特開2000−10851号公報 特許請求の範囲等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、取り扱いに支障を来たさない程度の適度の強度を有し、しかも容易に加工できる程度の良好な加工性を備えており、生体補填材料の素材として有用なリン酸カルシウム系焼結多孔体、およびこうしたリン酸カルシウム系焼結多孔体から得られる顆粒状物、並びにこのようなリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得た本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体は、平均気孔径が0.1〜50μmで相互に連結した連続気孔と、平均気孔径が100〜600μmで相互に独立した大気孔が存在すると共に、全体の気孔率が50〜95体積%である点に要旨を有するものである。
【0011】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体において、前記連続気孔は、平均気孔径が0.1〜10μm未満の微細気孔と、平均気孔径が10〜50μmの小気孔を含むものが一形態として挙げられ、こうした形態では3種類の気孔が三次元的に存在するものとなる。
【0012】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体おけるリン酸カルシウムとしては、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムおよびヒドロキシアパタイト等が含まれ、これらよりなる群から選ばれる1種以上によってリン酸カルシウム系焼結多孔体が構成される。
【0013】
上記のようなリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するに当たっては、リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子、球状有機粒子および水を混合してスラリーを調製し、このスラリーを、焼成工程を含む熱処理を施すことによってリン酸カルシウム系焼結多孔体を得ることができる。
【0014】
この製造方法において、前記熱処理は、35〜500℃の温度範囲で行なう乾燥・固化工程、500〜1000℃の温度範囲で行なう焼成工程と、1000〜1500℃の温度範囲で行なう焼結工程を含むものが好ましい。
【0015】
リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子および球状有機粒子の混合割合は、リン酸カルシウム系原料:5〜85質量%、水溶性・膨潤製高分子:2〜80質量%、球状有機粒子:5〜90質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明方法で用いるリン酸カルシウム系原料としては、リン酸二カルシウム(二水・無水)、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウムおよび非晶質リン酸カルシウムよりなる群から選ばれる1種以上からなるものが挙げられる。
【0017】
前記水溶性高分子としては、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、αデンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチル化デンプンナトリウム塩、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム塩よりなる群から選ばれる1種以上からなるものが挙げられる。
【0018】
前記球状有機粒子としては、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる1種以上からなるものが挙げられる。
【0019】
一方、上記目的を達成することのできたリン酸カルシウム系焼結多孔体顆粒状物は、上記のようなリン酸カルシウム系焼結多孔体を粉砕して得られた顆粒状物であり、その平均粒径が0.1〜5mmである点に要旨を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、平均気孔径が0.1〜50μmで相互に連結した連続気孔と、平均気孔径が100〜600μmで相互に独立した大気孔が混在したものであるので、取り扱いに支障を来たさない程度の適度の強度を有し(例えば、後述する圧縮強度で0.5MPa以上)、しかも容易に加工できる程度の良好な加工性を備えたものとなり、生体補填材料の素材として最適である。また本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、多孔体としての基本的特性として表面積が大きなものとなるので、浄化用フィルターの素材として有用であるばかりでなく、リン酸カルシウム系焼結多孔体としての断熱性を生かして断熱材等の建築用材料としても有用である。更に、このようなリン酸カルシウム系焼結多孔体を粉砕して得られた顆粒状物は、医療・歯科領域の骨充填材等として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、前記課題を解決するために様々な角度から検討した。その結果、平均気孔径が0.1〜50μmで相互に連結した連続気孔と、平均気孔径が100〜600μmで相互に独立した大気孔が混在したもので、その全体の気孔率を50〜95体積%としたもの、および上記連続気孔が、平均気孔径が0.1〜10μm未満の微細気孔と、平均気孔径が10〜50μmの小気孔を含むようなリン酸カルシウム系焼結多孔体では、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、平均気孔径が球状の有機粒子が焼失してなる100〜600μmで相互に独立した大気孔を有するので、この部分が細胞組織や血液を捕捉する領域を形成することになって、生体補填材料の機能を発揮することになる。一般的には、平均気孔径が100μm以上の大気孔だけが形成された多孔体では強度が低下し、取り扱い性が低下する傾向を示すものとなるが、本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、平均気孔径が0.1〜50μmである連続気孔を有するリン酸カルシウム部分をベースに、平均気孔径が100〜600μmの大気孔を形成することで、独立した大気孔同士の間でベースとなる小気孔を有するリン酸カルシウム部分にたわみを生じさせ、多孔体骨格に固い部位と柔らかい部位を自然に形成させることで、適切な強度を確保することができる。
【0023】
特に、平均気孔径が0.1〜50μmである連続気孔が、原料粒子が焼結し合うことによってその間に存在する平均気孔径:0.1〜10μm未満の微細気孔と、水溶性高分子が焼失して形成される平均気孔径:10〜50μmの小気孔を含むものでは、大気孔の中に小気孔と微細気孔が存在し、小気孔の中に微細気孔が存在することから、3種類の気孔が相互に連通することになり、適切な強度を確保することができるものとなる。
【0024】
大気孔は円形若しくは楕円形、連続気孔(または小気孔および微細気孔)は円形若しくは楕円形から不定形に形成された空隙からなるものであり、骨格形状は丸みのある粒子が焼結して連結配列したものとなり、厚みが1〜20μm程度となる。骨格の厚みが20μmよりも大きいと小気孔と微細気孔の数が少なくなり、十分な気孔率が得られないだけでなく、硬くなりすぎて加工性が悪くなる。また、厚みが1μmよりも小さいと、強度が低いため、取り扱いに支障を来す恐れがある。また、上記大気孔は相互に独立したものとなるが、連続気孔との関係では各大気孔はその壁面に連続気孔を有するものであり、相互に連通したものとなる。即ち、多孔体全体としても連通性に優れ、多孔体本来の性能を発揮するものである。
【0025】
本発明における微細気孔の平均気孔径は走査型電子顕微鏡(SEM)で2000〜5000倍の倍率で5カ所撮影したときの平均値であり、小気孔の平均気孔径は走査型電子顕微鏡で250〜1000倍の倍率で5ヶ所撮影したときの平均値であり、大気孔の平均気孔径は走査型電子顕微鏡で30〜100倍の倍率で5ヶ所撮影したときの平均値である。
【0026】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、全体の気孔率(大気孔と連続気孔の合計の気孔率)が50〜95体積%であることも重要な要件である。気孔率がこうした範囲にあることによって、大気孔と連続気孔(または大気孔、微細気孔および小気孔)の分布割合も適切な状態となって、手で持っても崩れない程度の適度の強度を維持し、手術用メスで容易に切削加工できる程度の良好な加工性を確保できるものとなる。即ち、気孔率が50体積%よりも低くなると、強度が高くなって、生体補填材料として用いるときに、手術時に患部の状況に応じた微調整が困難になる。また気孔率が95体積%を超えると、適度な強度が得られないために、手術時における多孔体の取り扱いが困難になり、患部に入れるまでに所定に形状に保持することが困難になる。尚、気孔率の測定は、多孔体の体積と質量、リン酸カルシウムの真比重等に基づいて計算によって求めることができる。
【0027】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体において、その素材となるリン酸カルシウムとしては、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムおよびヒドロキシアパタイト等が含まれ、これらよりなる群から選ばれる1種以上によってリン酸カルシウム系焼結多孔体が構成される。また、本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体は生体補填材料として使用する場合には、その溶解性も必要な特性となるが、この溶解性はリン酸カルシウムの種類によって異なるものとなる。リン酸カルシウムの溶解性は、溶解性の高い物質から、α型リン酸三カルシウム>リン酸四カルシウム>β型リン酸三カルシウム>ヒドロキシアパタイトとなるので、多孔体を構成するリン酸カルシウムの割合を調整することによって、リン酸カルシウム系焼結多孔体の溶解度を制御することができる。
【0028】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体では、上記のような特性を有するものであるので、生体補填材料の素材として最適なものとなる。また、多孔体としての基本的特性とし表面積が大きなものとなるので、空気中の雑菌、花粉、粉塵、有害ガス(NOxやSOx)等を除去するための空気浄化用フィルターの素材として、或は水中の重金属、有機物質、細菌等を除去するための液体浄化用フィルターの素材等として有用であるばかりでなく、リン酸カルシウム系焼結多孔体としての断熱性を生かして断熱材等の建築用材料としても有用である。
【0029】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体は、そのままの状態で生体補填材料として用いることができるが、生体充填材料としての機能をより高めるために、各種多糖類(例えばキトサンやセルロース)、各種蛋白質(例えば、コラーゲンやアルブミン)等で気孔内壁を被覆・充填して用いることもできる。また、各種薬剤(例えば、各種生理活性物質、ビタミン)や増殖因子(例えば、骨形成蛋白質等)と併用して用いることもできる。
【0030】
また浄化用フィルターや建築材料の素材として用いるにあっても、各種多糖類(例えばキトサンやセルロース)や、各種高分子(例えば、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピエレン、ポリウレタン等)で被覆したものとしても良い。
【0031】
本発明のリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するに当たっては、リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子、球状有機粒子および水を混合してスラリーを調製し、このスラリーを、焼成工程を含む熱処理を施すことによってリン酸カルシウム系焼結多孔体とすることができる。
【0032】
この製造方法において、前記熱処理は、35〜500℃の温度範囲で行なう乾燥・固化工程、500〜1000℃の温度範囲で行なう焼成工程と、1000〜1500℃の温度範囲で行なう焼結工程を含むものであることが好ましい。この熱処理において、35〜500℃の温度範囲で行なう乾燥・固化工程(第1の熱処理)は、スラリーを乾燥・固化させると共に、スラリー中の原料の均一化を図るためのものであり、そのためには加熱温度を35℃以上とすることが好ましい。しかしながら、500℃を超えると固化が十分に進行しないうちに脱脂されるため、不均一な気孔となり、内部欠陥が生じ易くなる。尚、本発明方法では、所定の型にスラリーを注入してその多孔体の形状を設定できるのであるが、この第1の熱処理の段階では、スラリーが乾燥・固化した状態であり、容易に切削加工できるので、この段階で所定の形状に加工するようにしても良い。
【0033】
500〜1000℃の温度範囲で行なう焼成工程(第2の熱処理)では、スラリー中のリン酸カルシウム系原料を焼成すると共に、水溶性高分子と球状有機粒子を消失させるものであり、これらが消失することによって、多孔体中の各種気孔(大気孔および小気孔)が形成されることになる。こうした作用を発揮させるためには、加熱温度は少なくとも500℃以上とする必要があるが、1000℃を超えると固化が十分に進行しないうちに焼結が進むため、不均一な気孔となり、内部欠陥が生じ易くなる。
【0034】
次いで、1000〜1500℃の温度範囲で焼結工程(第3の熱処理)を行うが、この焼結工程ではリン酸カルシウム多孔体の結晶構造や非結晶構造を安定化させるためのものであり、そのためには加熱温度は1000℃以上とする必要があるが、1500℃を超えると焼結が激しく進むため、加工性が乏しくなる。また、熱分解により、求める組成を均質に得ることができなくなる。
【0035】
また、上記焼結工程は、組成を決定させるための工程でもある。即ち、ヒドロキシアパタイトなら1000〜1400℃、リン酸四カルシウムなら1400〜1500℃、α型リン酸三カルシウムなら1200〜1500℃、β型リン酸三カルシウムなら1000〜1200℃となり、その他組み合わせや組成により適宜1000〜1500℃内での温度範囲が決定される。組成はCaとPのモル比で定義でき、これらのモル比(Ca/P)が1.5ならα型リン酸三カルシウムやβ型リン酸三カルシウム、モル比(Ca/P)が1.5〜1.67ならα型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウムおよびヒドロキシアパタイト、モル比(Ca/P)が1.67ならヒドロキシアパタイト、モル比(Ca/P)が1.67〜2.0ならヒドロキシアパタイトとリン酸四カルシウム、モル比(Ca/P)が2.0ならリン酸四カルシウムであり、原料のリン酸カルシウムの組み合わせで組成が決定される。
【0036】
熱処理するときの時間については、使用する原料の種類や熱処理温度に影響され、特に限定されるものではないが、通常は各熱処理工程で1〜30時間程度が有効である。即ち、焼成・焼結工程での熱処理時間があまり長くなると、熱分解や粒度成長が生じるので30時間以下とすることが好ましく、逆にあまりに短くなると緻密化が十分に進まないので1時間以上とするのが良い。また、焼成工程において、所定の温度まで上昇させるときの昇温速度は、0.1〜20℃/分程度であることが好ましい(より好ましくは1〜5℃/分)。この昇温速度が0.1℃/分未満では生産性が低下し、20℃/分を超えると、水溶性高分子と球状有機粒子の熱分解が急激に生じて不均一な気孔分布となり易くなる。
【0037】
スラリーを調整するときのリン酸カルシウム系原料、水溶性高分子および球状有機粒子の混合割合は、リン酸カルシウム系原料:5〜85質量%、水溶性高分子:2〜80質量%、球状有機粒子:5〜90質量%であることが好ましい。リン酸カルシウム系原料が5質量%未満になったり、水溶性高分子の割合が80質量%を超えたり、球状有機粒子の割合が90質量%を超えると、気孔率が高くなりすぎて(気孔率95体積%超)になって多孔体の強度が低下することになる。また、リン酸カルシウム系原料が85質量%を超えたり、水溶性高分子の割合が2質量%未満になったり、球状有機粒子の割合が5質量%未満になると、気孔率が低くなりすぎて(気孔率50体積%未満)になって多孔体の強度が高くなり過ぎ、加工性が悪くなるばかりか、表面積が小さくなって各種用途に適用する多孔体としての機能が発揮されにくくなる。尚、リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子および球状有機粒子の混合割合は、リン酸カルシウム系原料:15〜50質量%、水溶性高分子:4〜40質量%、球状有機粒子:20〜80質量%であることがより好ましい。また上記混合割合の範囲内で、水溶性高分子と、球状有機粒子との混合比率を調整することによって、大気孔と連続気孔の分布も制御できる。
【0038】
上記のような割合で混合された原料(リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子および球状有機粒子)は、水と混合することによってスラリーとされる。このときの原料と水の混合比率については、特に限定されるものではないが、水/原料(質量比)で0.1〜2.0程度が適当である。この比が0.1未満になると、スラリーの流動性が悪くなり、水と原料とが混ざらなくなる。またこの比が2.0を超えると、原料が水に均一に分散しにくくなって(若しくは沈殿してしまい)、最終的に得られる多孔体の気孔分布が不均一なものとなり易い。
【0039】
本発明方法で用いるリン酸カルシウム系原料としては、焼結した後に多孔体の骨格を形成するリン酸カルシウムとなるものであればよいが、こうした原料としては上記したα型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、ヒドロキシアパタイトの他、リン酸二カルシウム(二水・無水)、リン酸八カルシウムや非晶質リン酸カルシウム等も使用することができ、これらの1種以上を用いれば良い。リン酸カルシウム系原料の使用形態は、粉末や顆粒等の状態で使用できるが、このうち粉末状態で使用することが好ましい。また原料の焼結および粒成長に伴い、微細気孔の平均気孔径を0.1〜10μmに制御するため、このときの粉末の平均粒径は1〜20μm程度のものを用いるのが良い。
【0040】
原料で用いる水溶性高分子は、スラリーとしたときにスラリー中で溶解若しくは膨潤した状態となる高分子を使用するものであり、この高分子は焼成工程において消失し、その部分に連続気孔(特に、小気孔)が形成されることになる。従って、水溶性高分子の大きさが、小気孔の大きさに反映することになる。
【0041】
こうした水溶性高分子としては、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、αデンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチル化デンプンナトリウム塩、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム塩
等が挙げられ、これらから1種以上を選んで使用することができる。
【0042】
一方、前記球状有機粒子は、焼成工程において消失し、その部分に大気孔が形成されることになる。従って、球状有機粒子の大きさが、小気孔の大きさに反映することになるので、その大きさ平均粒径で100〜600μmのものを使用することになる。
【0043】
こうした球状有機粒子としては、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂等の各種樹脂からなるものが挙げられ、これらの1種以上を選んで使用できる。
【0044】
本発明方法によれば、原料を配合したスラリーを所定形状の型に注入することによって様々な形状(例えば、円筒状、円盤状、角柱状、角盤状)のブロック体をして得ることができ、そのまま各種用途に用いても良いが、得られたブロック体を粉砕した顆粒状若しくは粉末状として用いることもできる。また顆粒状のもの(リン酸カルシウム系焼結多孔体顆粒状物)は、医療・歯科領域の骨補填材料として用いることを想定すれば、その平均粒径は0.1〜5mmであることが好ましい。即ち、顆粒状物の平均粒径が0.1mm未満では粒径が小さすぎて充填部で安定されないことによって、骨形成が妨げられるため、好ましくなく、平均粒径が5mmを超えると骨補填材間の隙間が大きくなり、強度が低くなるため好ましくない。
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
α型リン酸三カルシウム粉末(α−TCP)(平均粒径:4.7μm、太平化学産業株式会社製)、馬鈴薯デンプン(平均粒径38μm、三和澱粉株式会社製)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはポリスチレン(PS)(平均粒径:233μm,または355μm:積水化成品工業株式会社製)を所定の割合で混合し、これをステンレス鋼製ビーカーに入れ、更に蒸留水(和光純薬株式会社製)を加えて攪拌機にて100rpmの回転速度で60分攪拌し、水溶性スラリーを調製した。
【0047】
得られた各種スラリーを、アルミナ製坩堝内に流し込み、100℃で3時間の熱処理(第1の熱処理)を行ない、スラリーを乾燥・固化した。次いで、この坩堝を冷却後、電気炉に移して、昇温速度:5℃/分で1000℃まで加熱し、その温度で3時間保持(第2の熱処理)した。更に、冷却後、高温電気炉に移し、昇温速度:5℃/分で1400℃まで加熱し、その温度で3時間保持(第3の熱処理)してリン酸三カルシウム焼結多孔体とした。
【0048】
得られたα型リン酸三カルシウム焼結多孔体について、オートグラフ(株式会社島津製作所製)によって下記の条件で圧縮強度を測定すると共に、手術用メスによる切削(カット)によって加工性を評価した(評価基準 ○:カットできる、△:柔らかく崩れる、×:固くカットできない)。また気孔率を多孔体の体積、質量、真比重から求めた。その結果を、スラリーの原料配合割合と共に、下記表1に示す。
(オートグラフ条件)
フルスケール:980N
試験速度:10mm/min
試験片:角柱材(6.9mm角×20mm高さ)
【0049】
【表1】

【0050】
この結果から、次のように考察できる。まず試験No.1〜7のものは本発明で規定する要件を満足する多孔体であり、圧縮強度も適度の値を示しており、加工性も良好なものであった。またこれらのものについて、その多孔体の形態について、SEMによって観察したところ、平均気孔径が3μm程度の微細気孔、平均気孔径が24μm程度の小気孔と平均気孔径が277μmの大気孔が混在したものであることが確認できた。試験No.7によって得られた多孔体の結晶構造を図1(図面代用電子顕微鏡写真)に示す[図1(a)は50倍、図1(b)は100倍、図1(c)は600倍]。
【0051】
これに対して、試験No.8〜10のものは、本発明で規定する要件を満足しない多孔体であり、圧縮強度および加工性のいずれかの特性が劣化している。詳細には、試験No.8のものは、原料としてのデンプン(水溶性の高分子)を配合していないものであり、球状有機粒子による大気孔だけが形成されており、圧縮強度は低く、加工は柔らかく崩れやすいため、不良であった。試験No.9のものは、原料としてのポリメタクリル酸メチル(球状有機粒子)を配合していないものであり、小気孔だけが形成されており、圧縮強度は非常に低く、加工は柔らかく崩れやすいため、不良であった。
【0052】
試験No.10のものは、原料としてのデンプンおよびポリメタクリル酸メチルのいずれも配合していないものであり、ほとんど気孔が形成されておらず、圧縮強度は非常に高く、加工は固くカットできないため、不良であった。試験No.9によって得られた多孔体の結晶構造を図2(図面代用電子顕微鏡写真)に示す[図2(a)は50倍、図2(b)は100倍、図2(c)は600倍]。
【0053】
[実施例2]
α型リン酸三カルシウム粉末(α−TCP)(平均粒径:13.4μm、太平化学産業株式会社製)、β型リン酸三カルシウム粉末(β−TCP)(平均粒径:1.8μm、太平化学産業株式会社製)またはヒドロキシアパタイト(HAP)粉末(平均粒径:5.8μm、太平化学産業株式会社製)と、馬鈴薯デンプン(平均粒径:38μm、三和澱粉株式会社製)およびポリスチレン(PS)(平均粒径:355μm:積水化成品工業株式会社製)を、各々2:1:1の割合で混合し、これをステンレス鋼製ビーカーに入れ、更に蒸留水(和光純薬株式会社製)をデンプンに対して3倍量となる様に加えて攪拌機にて100rpmの回転速度で60分攪拌し、水溶性スラリーを調製した。このとき、HAPとβ−TCPの混合組成については、これらを当量の割合で混合し、上記と同様の条件で調製した(下記表2の試験No.15)。
【0054】
得られた各種スラリーを、アルミナ製坩堝内に流し込み、100℃で3時間の熱処理(第1の熱処理)を行ない、スラリーを乾燥・固化した。次いで、この坩堝を冷却後、電気炉に移して、昇温速度:5℃/分で800℃まで加熱し、その温度で3時間保持(第2の熱処理)した。更に、冷却後、高温電気炉に移し、昇温速度:5℃/分で各所定の焼結温度まで加熱し、その温度で3時間保持(第3の熱処理)して、各種焼結多孔体を得た。このとき、上記β型リン酸カルシウム粉末(β−TCP)またはヒドロキシアパタイト(HAP)粉末を原料とした水溶性スラリーを調製し、起泡剤によって気泡を形成した多孔体(他の条件は上記と同じ)についても製造した(起泡法:後記表2の試験No.18、19)。
【0055】
得られた焼結多孔体について、切削加工して1cm角×1cmのブロック体を得て、気孔率を多孔体の体積、質量、真比重から求め、手術用メスによる切削(カット)によって加工性を評価した(評価基準 ○:カットできる、△:柔らかく崩れる、×:固くカットできない)。また、乳鉢で粉砕して、篩い分けし、平均粒径が0.1〜0.5mm、または0.2〜2mmの顆粒状物を得た。
【0056】
得られた各試料について、X線回折装置(XRD装置:株式会社リガク社製)によって、結晶相の同定を行った。また、各試料(顆粒状物)をSEM(株式会社日立製作所製)で観察することによって、大気孔、小気孔および微細気孔の大きさを確認した。その結果を、スラリーの原料配合割合と共に、下記表2に示す。尚、顆粒状の各気孔の評価は、各所定の粒径範囲にあるものを「○」、所定の粒径範囲から外れているもの(若しくは存在しないもの)を「×」で示した。
【0057】
【表2】

【0058】
この結果から、次のように考察できる。まず試験No.11〜17のものは本発明で規定する要件を満足する顆粒状物であり、多孔体の加工性も良好であった。またこれらの顆粒状物について、SEMによって観察したところ、平均気孔径が252μmの大気孔、平均気孔径が18μmの小気孔、平均気孔径が3μmの微細気孔の存在が確認できた。試験No.13によって得られた顆粒状物の結晶構造を図3(図面代用電子顕微鏡写真)に示す[図3(a)は60倍、図3(b)は500倍、図3(c)は3000倍]。
【0059】
これに対して、試験No.18、19のものは、本発明で規定する要件を満足しない多孔体であり(起泡法によって製造したもの)、加工性が劣化している。試験No.18のものは、微細気孔が存在しないため固くカットできず、不良であった。試験No.19のものは、小気孔が存在しないため加工は柔らかく崩れ易く、不良であった。試験No.18によって得られた多孔体の結晶構造を図4(図面代用電子顕微鏡写真)に示す[図4(a)は60倍、図4(b)は500倍、図4(c)は3000倍]。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】試験No.7によって得られた多孔体の結晶構造を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【図2】試験No.9によって得られた多孔体の結晶構造を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【図3】試験No.13によって得られた多孔体の結晶構造を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【図4】試験No.18によって得られた多孔体の結晶構造を示す図面代用電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム系焼結多孔体であって、平均気孔径が0.1〜50μmで相互に連結した連続気孔と、平均気孔径が100〜600μmで相互に独立した大気孔が存在すると共に、全体の気孔率が50〜95体積%であることを特徴とするリン酸カルシウム系焼結多孔体。
【請求項2】
前記連続気孔は、平均気孔径が0.1〜10μm未満の微細気孔と、平均気孔径が10〜50μmの小気孔を含むものである請求項1に記載のリン酸カルシウム系焼結多孔体。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムは、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムおよびヒドロキシアパタイトよりなる群から選ばれる1種以上である請求項1または2に記載のリン酸カルシウム系焼結多孔体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸カルシウム系焼結多孔体を製造するに当り、リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子、球状有機粒子および水を混合してスラリーを調製し、このスラリーを、焼成工程を含む熱処理を施すことによってリン酸カルシウム系焼結多孔体を得ることを特徴とするリン酸カルシウム系焼結多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、35〜500℃の温度範囲で行なう乾燥・固化工程、500〜1000℃の温度範囲で行なう焼成工程と、1000〜1500℃の温度範囲で行なう焼結工程を含むものである請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
リン酸カルシウム系原料、水溶性高分子、および球状有機粒子の混合割合が、リン酸カルシウム系原料:5〜85質量%、水溶性高分子:2〜80質量%、球状有機粒子:5〜90質量%である請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記リン酸カルシウム系原料は、リン酸二カルシウム(二水・無水)、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウムおよび非晶質リン酸カルシウムよりなる群から選ばれる1種以上からなるものである請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性高分子は、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、αデンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチル化デンプンナトリウム塩、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム塩よりなる群から選ばれる1種以上からなるものである請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記球状有機粒子は、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる1種以上からなるものである請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸カルシウム系焼結多孔体を粉砕して得られた顆粒状物であり、その平均粒径が0.1〜5mmであるリン酸カルシウム系焼結多孔体顆粒状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−290952(P2007−290952A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62206(P2007−62206)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(591040557)太平化学産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】