説明

リン酸耐性ポリマレイミドプレポリマー組成物

本発明は、アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;溶媒;およびヘテロポリ酸を含んでなるリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に関する。リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、プレプレグ、積層板、プリント回路基板、鋳型、複合材料、成形品、接着剤および被覆材のような種々の応用に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、引用により本明細書に編入される、2009年3月17日出願の米国特許出願第61/160,830号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦支援研究、開発に関する陳述
適用できない。
【技術分野】
【0003】
発明の分野
本発明はリン酸耐性の進歩した(advanced)ポリマレイミドプレポリマー組成物およびそれらから製造されるプレプレグ製品のような製品に関する。リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、(i)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルの進歩した(advancement)反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー:(ii)溶媒:および(iii)ヘテロポリ酸を含む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ビスマレイミドは重付加および重合製品の製造用原料として使用することができる。例えば、特許文献1は不飽和ビスマレイミドおよびアミンから製造される重付加生成物を開示し、特許文献2はビスマレイミドおよび有機ジチオールからの重付加生成物の製造を記載し、特許文献3および4は重付加生成物を形成するために、触媒の存在下でビスマレイミドと多価フェノールおよび多価アルコールとの反応を記載し、そして特許文献5はビスマレイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルから調製される重付加生成物について記載している。
【0005】
それらの熱安定性および良好な機械的特性のために、ビスマレイミドから製造される重付加生成物は種々のプレプレグ適用に使用することができる。粉末として供給される1つのこのような重付加生成物はビスマレイミドジフェニルメタンおよびメチレンジアニリンの反応生成物である。次に粉末の重付加生成物をプレプレグ使用のためにN−メチルピロリドンのような高沸点溶媒中に溶解することができる。しかしこのような溶液の安定度は、静置時に急速に起こる沈殿および粘度増加により限定される。従って、溶液の調製は使用直前に実施しなければならない。
【0006】
特許文献6および7に開示された重付加生成物および溶液に改善が認められた。特許文献6は、特定の反応時間に、かつ特定の反応温度で、特定モル量の塩基性触媒の存在下におけるポリマレイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルの反応から生成される重付加生成物を開示している。生成される生成物は低沸点溶媒のメチルエチルケトン中における改善された溶解度、ならびに沈殿物の不在により証明されるような改善された貯蔵安定度を示す。貯蔵安定度のさらなる改善は特許文献7に記載されており、そこでは、ポリマレイミドがアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルと反応した後にフェノチアジンまたはヒドロキノンが添加される。
【0007】
従って本発明の目的は、それらから製造されるプレプレグ製品の熱および機械的特性に対して不都合な影響を伴わずに酸、そして特にリン酸に対する耐性を示す改善された重付加生成物の組成物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,658,764号
【特許文献2】米国特許第3,741,942号
【特許文献3】米国特許第4,038,251号
【特許文献4】米国特許第4,065,433号
【特許文献5】米国特許第4,100,140号
【特許文献6】米国特許第5,189,128号
【特許文献7】米国特許第5,637,387号
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明はリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に関し、これは:
(a)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;
(b)溶媒;および
(c)ヘテロポリ酸を含んでなる。
【0010】
リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物を高温で反応させて、ポリマレイミドプレポリマーを形成し、実質的にすべてのアミン触媒を除去し;そしてその後、溶媒およびヘテロポリ酸を添加することにより調製することができる。他の態様では、プレプレグまたは積層構造物は本発明のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に含浸された布帛または繊維を硬化することにより調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は一般的に(i)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;(ii)触媒;および(iii)ヘテロポリ酸を含む。驚くべきことに、溶媒およびヘテロポリ酸をポリマレイミドプレポリマーに加えることで、プレポリマーが酸性環境、特に高濃度リン酸環境に対する耐性を現すことができるようになることが見いだされた。本発明のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、悪影響を及ぼすことなく酸性環境に、室温または室温よりさらに高い温度で長期間にわたり暴露することができる。「室温」とは約20℃の温度を意味する。
【0012】
適用可能なポリイミドは、少なくとも2個の式
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、Rは水素またはメチルである]
の基を含む。
【0015】
他の態様において、ポリイミドはポリマレイミド、好ましくは式
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、Rは水素またはメチルであり、そしてXは−C2n−(ここでn=2〜20)、−CHCHSCHCH−、フェニレン、ナフタレン、キシレン、シクロペンチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−ビス−(メチレン)−シクロヘキシレン、または式(a)
【0018】
【化3】

【0019】
{式(a)中、RおよびRは独立して塩素、臭素、メチル、エチルまたは水素であり、そしてZは直接結合、メチレン、2,2−プロピリデン、−CO−、−O−、−S−、−SO−または−SO−である}の基である]
のビスマレイミドである。好ましくは、Rはメチルであり、Xはヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、または示した式(a)[式中、Zはメチレン、2,2−プロピリデンまたは−O−であり、そしてRおよびRは水素である]の基である。
【0020】
ポリイミドの例には、N,N'−エチレン−ビスマレイミド、N−ヘキサメチレン−ビスマレイミド、N,N'−m−フェニレン−ビスマレイミド、N,N'−p−フェニレン−ビスマレイミド、N,N−4,4'−ジフェニルメタン−ビスマレイミド、N,N'−4,4'−3,3−ジクロロ−ジフェニルメタン−ビスマレイミド、N,N'−4,4'−(ジフェニルエーテル)−ビスマレイミド、N,N−4,4'−ジ−フェニルスルホン−ビスマレイミド、N,N'−4,4'−ジシクロヘキシルメタン−ビスマレイミド、N,N'−α,4,4'−ジメチレンシクロヘキサン−ビスマレイミド、N,N'−m−
キシレン−ビスマレイミド、N,N'−p−キシレン−ビスマレイミド、N,N'−4,4'−ジフェニルシクロヘキサン−ビスマレイミド、N,N'−m−フェニレン−ビスシトラコンイミド、N,N'−4,4'−ジフェニルメタン−ビスシトラコンイミド、N,N'−4,4'−2,2−ジフェニルプロパン−ビスマレイミド、N,N'−α,1,3−ジプロピレン−5,5−ジメチル−ヒダントイン−ビスマレイミド、N,N'−4,4'−ジフェニルメタン−ビスイタコンイミド、N,N'−p−フェニレン−ビスイタコンイミド、N,N'−4,4'−ジフェニルメタン−ビスジメチルマレイミド、N,N'−4,4'−2,2'−ジフェニルプロパン−ビスジメチルマレイミド、N,N'−ヘキサメチレン−ビスジメチルマレイミド、N,N−4,4'−(ジフェニルエーテル)−ビスジメチルマレイミドおよびN,N'−4,4'−ジフェニルスルホン−ビスジメチルマレイミドがある。
【0021】
適用可能なアルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテルには、アリルフェノール、メタリルフェノールまたはそれらのエーテルを含むことができる。好ましくは、アルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテルは式(1)〜(4):
【0022】
【化4】

【0023】
[式中、Rは直接結合、メチレン、イソプロピリデン、−O−、−S−、−SO−または−SO−である]、
【0024】
【化5】

【0025】
[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはプロペニルであり、ただしR、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルである]
【0026】
【化6】

【0027】
[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはアルケニルであり、ただしR、R、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてRは式(1)で定義されたようなものである];ならびに
【0028】
【化7】

【0029】
[式中、R、R、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立して水素、C〜CアルキルおよびC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはプロペニルであり、ただしR、R、R10、R11、R12およびR13の少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてbは0〜10の整数である]
の化合物である。また式(1)〜(4)の化合物の混合物を使用することも可能である。
【0030】
アルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテル化合物の例には、O,O'−ジアリル−ビスフェノールA、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジアリルジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、O,O'−ジメタリル−ビスフェノールA、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメタリルジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メタリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメタリルフェニル)−プロパン、4−メタリル−2−メトキシフェノール、2,2−ビス(4−メトキシ−3−アリルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メトキシ−3−メタリルフェニル)プロパン、4,4'−ジメトキシ−3,3'−ジアリルジフェニル、4,4'−ジメトキシ−3,3'−ジメタリルジフェニル、ビス(4−メトキシ−3−アリルフェニル)メタン
、ビス(4−メトキシ−3−メタリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メトキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メトキシ−3,5−ジメタリルフェニル)プロパン、4−アリルベラトロールおよび4−メタリル−ベラトロールがある。
【0031】
アルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物は1モルのポリイミド当たり約0.05モル〜2.0モルの間の範囲で使用することができる。他の態様において、アルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物は1モルのポリイミド当たり約0.1モル〜1.0モルの間の範囲で使用することができる。
【0032】
適用可能なアミン触媒には、第三級、第二級および第一級アミン、または異なるタイプの幾つかのアミノ基を含むアミンおよび第四級アンモニウム化合物がある。アミンはモノアミンまたはポリアミンのいずれでもよく、そしてジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、ベンジルアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジイソブチルアミノアセトニトリル、N,N−ジブチルアミノアセトニトリル、複素環式塩基(例えば、キノリン、N−メチルピロリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびそれらの同族体)、ならびにまたメルカプトベンゾチアゾールを含むことができる。列挙することができる適当な第四級アンモニウム化合物の例は、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドおよびベンジルトリメチルアンモニウムメトキシドである。トリプロピルアミンが好ましい。
【0033】
アミン触媒は進歩した反応体の総重量当たり約0.1%〜10重量%間の範囲で使用することができる。他の態様において、存在するアミン触媒は進歩した反応体の総重量当たり約0.2%〜5重量%間の範囲で使用することができる。
【0034】
ポリマレイミドプレポリマーの調製法には、ポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物をブレンドし、そして透明な溶融物がえられるまで、ブレンドを約25℃〜150℃の温度に加熱する工程を含む。次いでアミン触媒を添加し、そして約100℃〜140℃の温度で適当な時間にわたり反応を継続し、そこですべてのアミン触媒が真空下で除去される。進歩の度合いは125℃で0〜100ポアズ目盛を使用して樹脂溶融体の粘度を測定することによりモニターすることができ、進歩したポリマレイミドプレポリマーに関して20〜90ポアズの範囲に入ることができる。またゲル化時間もさらなるパラメーターとして使用することができ、約170℃〜175℃の温度で測定される総ゲル形成に対する時間を反映し、そして300秒〜2000秒の範囲にわたることができる。
【0035】
リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物はさらに溶媒を含む。溶媒は低沸点溶媒(最高約160℃の沸点、そして好ましくは最高約100℃)であることができ、それらにはケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン;グリコールエーテルおよびグリコールエーテルアセテート類、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルおよびグリコールエチルエーテルアセテート;炭化水素類、例えばトルエンおよびアニソール;メトキシプロパノール;ジメチルホルムアミド;およびそれらの混合物がある。
【0036】
溶媒はリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の総重量に基づき、約10%〜50重量%の間の範囲で使用することができる。別の態様では、溶媒は進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の総重量に基づき、約17.5%〜40重量%の間の範囲、好ましくは約20%〜30重量%で使用することができる。
【0037】
リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物はさらにヘテロポリ酸を含む。ヘテロポリ酸は、酸素結合を介してW、MoまたはVと連結しているP、As、SiまたはBを中心原子として有する酸素酸である。そのような酸の例はタングステンおよびモリブデンリン酸およびタングステンおよびモリブデンヒ酸である。好適であるのはリンタングステン酸水和物である。
【0038】
ヘテロポリ酸はリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の総重量に基づき、約0.0001%〜10重量%の間の範囲で使用することができる。別の耐性ではヘテロポリ酸は1%〜5%溶液として溶媒と混合することができ、これをリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の総重量に基づき、約1%〜5重量%の間の範囲で使用する。
【0039】
リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、溶媒およびヘテロポリ酸をポリマレイミドプレポリマーに進歩した反応の最後で加えることにより調製することができる。最高約80重量%まで高い固体、および50センチポイズ以下の低粘度組成物がこれにより形成され、これは室温または室温より高い温度で数日間、酸耐性である。
【0040】
前記の成分の外に、リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は場合により、硬化前の任意の段階で、1種または複数の安定剤、増量剤、充填剤、補強剤、顔料、染料、可塑化剤、増粘剤、ゴム、硬化促進剤、希釈剤またはそれらの任意の混合物と混合してもよい。
【0041】
使用することができる安定剤には、フェノチアジン自体、または1〜3個の置換基を有するC−置換フェノチアジン、または1個の置換基を有するN−置換フェノチアジン、例えば3−メチル−フェノチアジン、3−エチル−フェノチアジン、10−メチル−フェノチアジン;3−フェニル−フェノチアジン、3,7−ジフェニル−フェノチアジン;3−クロロフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、3−ブロモフェノチアジン、3−ニトロフェノチアジン、3−アミノフェノチアジン、3,7−ジアミノフェノチアジン;3−スルホニル−フェノチアジン、3,7−ジスルホニル−フェノチアジン、3,7−ジチオシアナトフェノチアジン;置換キニンおよびカテコール、ナフテン酸銅、ジメチルジチオ炭酸亜鉛およびリンタングステン酸水和物がある。安定剤は進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の総重量に基づき約0.1%〜10重量%の量でリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に添加することができる。
【0042】
使用することができる増量剤、補強剤、充填剤、硬化促進剤および顔料には例えば、コールタール、ビチューメン、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、雲母、アスベスト、石英粉末、石膏、三酸化アンチモン、ベントン、シリカエーロゲル("aerosil")、リトポン、重晶石、二酸化チタン、ユージノール、ジクミル過酸化物、イソユージノール、カーボンブラック、黒鉛および鉄粉がある。他の添加物、例えば難燃剤、流動性調節剤(例えばシリコーン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルブチレート、ワックス、ステアレート等(一部は離型剤としても使用される))を進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に添加することもできる。
【0043】
前記のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は、プレプレグ、種々の厚さの積層板、プリント回路基板、鋳型、複合材料、成形品、接着剤および被覆材のような広範囲の最終用途に適する。
【0044】
プレプレグは基材を、リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に含浸
またはそれで被覆することにより得ることができる。基材は積層板に使用されるすべての基材を含む。それらの例には、Eガラス布、NEガラス布およびDガラス布のような種々のガラス布、天然の無機繊維の布帛、芳香族ポリアミド繊維または芳香族ポリエステル繊維のような液晶繊維から得られる織物布帛および不織布帛、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維またはアクリル繊維のような合成繊維から得られる織物布帛および不織布帛、木綿布帛、麻布帛またはフェルトのような天然繊維の不織布帛、炭素繊維の布帛、クラフトペーパー、コットンペーパーまたは紙ガラス混合ペーパーのような天然セルロースタイプの布帛、および多孔質PTFEがある。
【0045】
1つの態様において、ポリマーの基材は本発明の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に含浸または被覆される。ポリマーの基材は、それぞれがポリマーを使用する織物布帛、不織布帛、シートまたは多孔質物体である限り、特に限定はされない。それらの例には、芳香族ポリアミドにより代表されるリオトロピック液晶ポリマー、ポリフェニレンベンゾチアゾール、芳香族ポリエステルにより代表されるサーモトロピック液晶ポリマー、ポリエステルアミド、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびフルオロ樹脂を含む。ポリマーは意図する適用または性能に応じ、必要に応じて適宜選択される。これらのポリマーは単独で使用しても必要に応じて組み合わせて使用してもよい。基材の厚さは特に限定はされない。一般的に約3μm〜200μmである。
【0046】
プレプレグの製法は、それがリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物および基材と組み合わされてプレプレグを製造することができる限り、特に限定はされない。1つの態様において、前記の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物を基材に含浸またはそれに適用し、次いで組成物を例えば、乾燥機内で1〜90分間、80℃〜200℃でB段階まで加熱し、これによりプレプレグを製造する方法が提供される。プレプレグの樹脂含量は約30〜90重量%の範囲にあることができる。
【0047】
またメタルクラッド積層板も、1枚のプレプレグまたは少なくとも2枚のプレプレグを積み重ね、銅フォイルまたはアルミニウムフォイル(1もしくは複数)のような金属フォイルを、積み重ねたプレプレグ(1もしくは複数)の上面および下面または片面上に張り合わせ、そして生成されたセットを加熱し、加圧することにより得ることができる。
【0048】
プリント配線板用の積層板および多層板の一般的技術をメタルクラッド積層板の成形条件に適用することができる。例えば、一般に多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等は約100℃〜300℃の間の温度および約0.2MPa〜10MPa間の圧力で、そして約0.1〜5時間の加熱時間で使用される。さらに本発明のプレプレグを別に調製される内層配線板と組み合わせて、生成されるセットを積層成形することにより多層板を製造することもできる。
【0049】
特定の態様において、プレプレグまたは積層構造物は、(i)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;(ii)溶媒;および(iii)ヘテロポリ酸を含んでなるリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に含浸または被覆された基材の硬化生成物を含んでなる。
【実施例】
【0050】
実施例1. 本実施例は本発明のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物の調製を具体的に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
4,4'−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールを反応器に入れ、そして真空下に置いた。N,N'−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミドを反応器に添加し、そして4,4'−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールと混合して反応混合物を形成した。反応混合物を132℃に加熱し、次に真空下に置き、そして次に、透明な琥珀色の溶液になったら、100℃に冷却した。トリプロピルアミンを溶液に添加し、そして30分間連続的に撹拌した。その後、温度を120℃に高め、そして120℃を維持し、そして溶液を1.5時間真空下に置いた。真空を外し、そして溶媒を溶液に加え、そして70〜80ポアズの粘度に到達するまで120℃の温度に維持した。次に溶液を50℃に放置冷却し、そこでリンタングステン酸水和物を加えた。次に反応器から取り出された、進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物は177℃で90分間、次いで218℃で4時間、硬化させた。
【0053】
硬化した進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物のサンプルは、次いで200℃で貯蔵され、そして一定期間、リン酸に暴露され、そして寸法の変化および重量損失を測定した。結果は表1に示される:
【0054】
【表2】

【0055】
実施例2. 実施例1に関して配合安定性実験を、室温および−4℃で行った。ブレンドした配合物のゲル化時間を、最初に171℃で測定し、そしてその粘度を室温で測定した。次いで配合物はゲルになるまで毎月監視された。この実験中、配合物のサンプルを引き抜き、そして室温に放置調整した後、安定性データを集めた。−4℃で保存された場合、配合物は12カ月以上長い安定性を示し、これにより少なくとも1年間は−4℃で保存することができる。比較すると、室温で保存した場合、配合物は6カ月間にわたり安定性を示す。
【0056】
以上に開示された主題は説明であって、限定するものではないと考えられ、そして添付の特許請求の範囲は本発明の真の範囲内に入るすべてのそのような変更物、強化物および
他の態様を網羅することが意図される。従って本発明の範囲は、法律により許される最大限度まで、以下の請求項およびそれらの同等物の最も広範な、許容可能な解釈により決定されるべきであり、そして以上の詳細な説明により制約または限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;
(b)溶媒;および
(c)ヘテロポリ酸
を含んでなるリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項2】
ポリイミドが式
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルであり、そしてXはC2n−(ここでn=2)、−CHCHSCHCH−、フェニレン、ナフタレン、キシレン、シクロペンチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−ビス−(メチレン)−シクロヘキシレン、または式(a)
【化2】

{式(a)中、RおよびRは独立して塩素、臭素、メチル、エチルまたは水素であり、そしてZは直接結合、メチレン、2,2−プロピリデン、−CO−、−O−、−S−、−SO−または−SO−である}の基である]
のビスマレイミドである、請求項1に記載のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項3】
がメチルであり、Xがヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、または式(a)[式(a)中、Zはメチレン、2,2−プロピリデンまたは−O−であり、そしてRおよびRは水素である]の基である、請求項2に記載のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項4】
ビスマレイミドがN,N'−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミドである、請求項2に記載のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項5】
アルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルが式 (1) 〜 (4):
【化3】

[式中、Rは直接結合、メチレン、イソプロピリデン、−O−、−S−、−SO−または−SO−である];
【化4】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニルであり、ただしR、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルである];
【化5】

[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニルであり、ただしR、R、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてRは式(1)中に定義された通りである];および
【化6】

[式中、R、R、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立して水素、C−CアルキルおよびC〜C10アルケニルであり、ただしR、R、R10、R11、R12およびR13の少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてbは0〜10の整数である]
の化合物である、請求項1に記載のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項6】
ヘテロポリ酸がリンタングステン酸水和物である請求項1に記載のリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項7】
溶媒がアセトンであるリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項8】
(a)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物を高められた温度で反応させて、ポリマレイミドプレポリマーを形成し、
(b)実質的にすべてのアミン触媒を除去し、そして
(c)溶媒およびヘテロポリ酸をポリマレイミドプレポリマーに加えて、リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物を形成する:
工程を含んでなる、リン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物を調製する方法。
【請求項9】
工程(b)の次に、安定剤をポリマレイミドプレポリマーに添加する工程をさらに含んでなる請求項8の方法。
【請求項10】
請求項8に従い調製されたリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物。
【請求項11】
(a)アミン触媒の存在下で、ポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミドプレポリマー;
(b)溶媒;および
(c)ヘテロポリ酸
を含んでなるリン酸耐性の進歩したポリマレイミドプレポリマー組成物に含浸または被覆された布帛または繊維の硬化生成物を含んでなるプレプレグまたは積層構造物。

【公表番号】特表2012−520931(P2012−520931A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500874(P2012−500874)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/027418
【国際公開番号】WO2010/107750
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509282365)ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】