説明

リン除去方法及びリン吸着材の再生方法

【課題】 アロフェン質の鉱物をリン吸着材として用いながら、被処理水のpHが高くてもリンを好適に除去するだけでなく、被処理水のリン濃度が低い場合であっても、さらに低濃度にまでリンを除去することのできるリン除去方法を提供する。
【解決手段】 黄鉄鉱を含む鉱物からなるpH低下材60を被処理水に接触させて被処理水のpHを低下させる第一処理工程と、アロフェン質の鉱物(赤玉土等)からなるリン吸着材61を被処理水に接触させて被処理水に含まれるリンを吸着する第二処理工程とを経て、被処理水に含まれるリンを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水中に含まれる低濃度のリンを好適に除去することのできるリン除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、沼湖や河川等の富栄養化による自然環境の破壊が深刻な問題となってきている。富栄養化は、生活排水や工業排水が沼湖等に流入して、水中のリン濃度が高まることによって引き起こされることで知られている。このため、水中に含まれるリンを除去するための研究が盛んに行われるようになってきており、これまでにも種々のリン吸着材やリン除去方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アロフェンを主成分とする物質を形成してから、300〜600℃で焼成してなるリン除去材が記載されている([請求項1]参照)。これにより、リン除去材をリン除去能力と強度とに優れたものとして、沼湖等の富栄養化をより好適に防止することができるようになるとされている([発明の効果]参照)。
【0004】
また、特許文献2には、リン吸着物質を内部に包括して表層部に硝化菌が固定化されたゲルを水に好気的条件で接触させることを特徴とするアンモニア及びリンの同時除去方法が記載されている(請求項1を参照)。これにより、除去処理にかかる時間の短縮やそれに用いる装置の簡素化を図ることができるとされている(発明の効果を参照)。特許文献2には、pHが酸性側のときにリン吸着能力が最大となる物質(アロフェン等)をリン吸着物質として使用することや(請求項2、第2欄39〜42行目を参照)、pHを6に中和したスラリーから前記ゲルを作製することについても記載されている(第4欄29〜43行目を参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平06−026663号公報
【特許文献2】特開平07−313970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のリン除去材は、変異荷電するアロフェンを主成分とする物質で形成されているために、被処理水のpHが高くなるとリン除去能力が著しく低下するおそれがあるものであった。より具体的には、特許文献1のリン除去材は、外液のpHが低い(酸性側である)とプラスに荷電するのに対して、外液のpHが高い(アルカリ性側である)とマイナスに荷電する性質を有するために、被処理水のpHが低いときには、マイナスに永久荷電しているリンを好適に吸着することができるものの、被処理水のpHが高いときには、リンとの間に斥力が作用してリンを吸着することができなくなるものであった。恒常的にアルカリ性を示す、あるいは天気のよい日の昼等に一時的にアルカリ性を示す沼湖や河川は珍しくなく、我が国にも数多く存在しているが、このようにpHが高い沼湖等では、特許文献1のリン除去材を使用しても所望の効果が得られないおそれがあった。
【0007】
これに対し、特許文献2の同時除去方法は、pHを6に中和したスラリーで作製された前記ゲルをリン吸着材として使用するものであり、アロフェンの変異荷電を考慮したものではあったが、リン吸着材のリン吸着能力が低く、必ずしも沼湖や河川の富栄養化を防止することができるものではなかった。すなわち、特許文献2の同時除去方法では、被処理水中に1.3mg/Lの高濃度で含まれるリンを0.25mg/L程度にまで除去することはできるものの([0014]参照)、被処理水中に0.05mg/L前後(富栄養化の問題が生じている沼湖や河川における一般的なリンの濃度)の低濃度で含まれるリンをさらに0.02mg/L以下(富栄養化の原因となる藻が発生しない濃度)にまで除去するのは困難であった。また、特許文献2の同時除去方法では、リン吸着材として用いるゲルの強度に不安があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、変異荷電するアロフェン質の鉱物をリン吸着材として用いながら、被処理水のpHが高くてもリンを好適に除去することのできるリン除去方法を提供するものである。また、被処理水のリン濃度が低い場合であっても、さらに低濃度にまでリンを除去することができるリン除去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、黄鉄鉱を含む鉱物(パイライトとも呼ばれる)からなるpH低下材を被処理水に接触させて該被処理水のpHを低下させる第一処理工程と、アロフェン質の鉱物からなるリン吸着材を前記被処理水に接触させて該被処理水中のリンを吸着する第二処理工程とを経て、前記被処理水中のリンを除去することを特徴とするリン除去方法を提供することによって解決される。これにより、被処理水のpHが高い場合であっても、該被処理水中のリンを好適に除去することが可能になる。また、アロフェン質の鉱物と被処理水とを広い面積で接触させることができるので、リン吸着材に優れたリン吸着能力を発揮させることも容易である。
【0010】
pH低下材は、黄鉄鉱を含む鉱物であれば特に限定されないが、蝋石であると好ましい。なかでも、等級の低い蝋石であるとより好ましく、未利用品の蝋石であるとさらに好ましい。蝋石は、主に白タイル等の原料として利用されるが、等級の低い蝋石は、黄鉄鉱の含有量が多く黒色斑点があるために、未利用品となるのが通常であるが、このような未利用品を資源として有効に利用することが可能になるためである。リン除去方法に用いられたpH低下材のうち、黄鉄鉱が溶出して斑点が消滅しているものは、石材として再利用することもできる。pH低下材は、黄鉄鉱を含む鉱物を破砕して得られた粉末を無機バインダに混合して造形したものを用いてもよい。pH低下材は、加圧することによってその強度を高めることができる。
【0011】
リン吸着材は、アロフェン質の鉱物かなるものであれば特に限定されない。具体的には、赤玉土、鹿沼土、黒ぼく土等のアロフェン(シリカ及びアルミナを含む非晶質の粘土鉱物)を主成分とする鉱物や、石炭灰(フライアッシュ)等のアロフェン質の鉱物(シリカ及びアルミナを含む非晶質の鉱物であってアロフェンと似た性質(変異荷電)を示す鉱物)がリン吸着材として例示される。リン吸着材は、これらの鉱物の焼成物であると好ましい。これにより、リン吸着材の強度を高めることが可能になる。リン吸着材としてフライアッシュを用いる場合には、該フライアッシュを無機バインダに混合して造形したものを加圧することにより、その強度を高めることができる。リン吸着材に吸着されたリンは、例えば、苦土石灰からなる洗浄材で洗浄することによって容易に脱離させることができるために、本発明のリン除去方法に用いられたリン吸着材は、再びリン吸着材として再利用することができる。また、使用後の洗浄材は、リンを含んでいるために、リン酸肥料として有効に再利用することができる。
【0012】
リン吸着材が、300〜1000℃で0.5〜5.0時間焼成されたものであるとより好ましい。リン吸着材の焼成温度が300℃未満であったり、焼成時間が0.5時間未満であったりすると、リン吸着材のリン吸着能力や強度が低くなるおそれがあり、リン吸着材の焼成温度が1000℃を超えたり、焼成時間が5.0時間を超えたりしても、リン吸着材のリン吸着能力や強度に著しい向上は見受けられないためである。リン吸着材の焼成温度は、400℃以上であるとより好ましく、450℃以上であるとさらに好ましい。また、800℃以下であるとより好ましく、700℃以下であるとさらに好ましい。550℃以下であると最適である。一方、リン吸着材の焼成時間は、1時間以上であるとより好ましく、1.5時間以上であるとさらに好ましい。また、4時間以下であるとより好ましく、3時間以下であるとさらに好ましい。2時間以下であると最適である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、変異荷電するアロフェン質の鉱物をリン吸着材として用いながら、被処理水のpHが高くてもリンを好適に除去することのできるリン除去方法を提供することが可能になる。また、被処理水のリン濃度が低い場合であっても、さらに低濃度にまでリンを除去することができるリン除去方法を提供することも可能になる。さらに、pH低下材やリン吸着材の再利用が可能であり、自然環境に対して優しいリン除去方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のリン除去方法の好適な実施態様を、図面を用いてより具体的に説明する。本発明のリン除去方法は、黄鉄鉱を含む鉱物からなるpH低下材を被処理水に接触させて該被処理水のpHを低下させる第一処理工程と、アロフェン質の鉱物からなるリン吸着材を前記被処理水に接触させて該被処理水中のリンを吸着する第二処理工程とを経て、前記被処理水中のリンを除去するものであれば特に限定されないが、以下においては、自然流下式のリン除去方法(実施例1)と、浮島式のリン除去方法(実施例2)と、浄化水路式(実施例3)との3パターンについて説明する。
【0015】
[実施例1] 図1は、実施例1(自然流下式)のリン除去方法を示した説明図である。本実施例のリン除去方法は、図1に示すように、河川10を流れる水を被処理水として処理槽20に引き込んで、該被処理水に含まれるリンを除去するものとなっている。河川10から処理槽20へ被処理水を導入する導入水路30には、スクリーン40を設けており、粒径の大きな石やゴミ等が処理槽20に入り込むのを防止している。本実施例のリン除去方法では、スクリーン40として金網を使用している。また、スクリーン40と処理槽20との間には、スクリーン40では流入を防止できなかった粒径の小さな砂やゴミ等を沈殿させるための沈殿槽50を設けている。被処理水は、導入水路30で砂利やゴミ等が取り除かれた後、処理槽20へ導入されてリンが除去される。処理槽20を通過してリン濃度が低下した被処理水は、送出水路31から再び河川10に返される。本実施例のリン除去方法は、河川等の流れのある水域で好適に実施することができる。
【0016】
[処理槽20−全体] 処理槽20についてより詳しく説明する。処理槽20は、図1に示すように、上下3つの層21,22,23に区分されている。このうち、最下層21には、導入水路30の一端側が接続されており、最上層23の上側には、送出水路31の一端側が接続されている。このため、被処理水は、処理槽20の下部から導入されて処理槽20を下側から上側に移動し、処理槽20の上部から送出されるようになっている。層21と層22との間、及び層22と層23との間には、後述するpH低下材60やリン吸着材61を支持するための荷台70が設けられている。荷台70は、pH低下材60やリン吸着材61を支持できる強度、及び通水性を有するものであれば特に限定されないが、本実施例のリン除去方法においては、パンチングメタルを使用している。
【0017】
[処理槽20−層21] 被処理水が導入される最下層21は、図1に示すように、処理材等が充填されていない空洞部となっている。このように、層21を設けておくことによって、処理槽20の内部に発生する汚泥を沈殿させて除去するだけでなく、導入水路30から処理槽20へ導入された被処理水を上側の層22,23の全体へより均一に供給して、被処理水が層22,23をショートパスするのを防止することも可能になる。層21には、pH低下材60やリン吸着材61を支持するための補強材を配設してもよい。
【0018】
[処理槽20−層22] 処理槽20の中間層22には、図1に示すように、pH低下材60を充填している。すなわち、層22は、被処理水のpHを低下させる(第一処理工程を行う)ための層となっている。このように、リンを除去する前の段階で被処理水のpHを低下させることにより、後述する第二処理工程でリンを効率的に吸着することができるようになる。使用するpH低下材60は、黄鉄鉱を含む鉱物であれば特に限定されないが、黄鉄鉱の含有率(重量%)が、0.5[%]以上のものであると好ましい。黄鉄鉱の含有率は、1[%]以上であるとより好ましく、3[%]以上であるとさらに好ましい。また、5[%]以上であるとより好ましく、10[%]以上であるとさらに好ましい。20[%]以上であると最適である。未利用品の蝋石の中には、黄鉄鉱の含有率が30[%]を超えるものもある。本実施例のリン除去方法においては、pH低下材60として、未利用品(黄鉄鉱の含有率(重量%)が2.4[%]以上)の蝋石を使用している。pH低下材60は、鉱山の池に予め浸漬させること等により、鉄酸化菌や硫黄酸化細菌に触菌させられたものであるとより好ましい。これにより、pH低下材60に付着する菌の絶対数を増加させて、pH低下材60のpH低下能力をさらに向上させることが可能になる。
【0019】
pH低下材60の粒径は、特に限定されるものではないが、通常、1〜300[mm]に設定される。pH低下材60の粒径が1[mm]未満であると、層22にショートパスが生ずるおそれがあり、300[mm]を超えると、被処理水とpH低下材60との接触面積が小さくなるおそれがあるためである。いずれの場合も、pH低下材60の処理能力が著しく低下するおそれがある。pH低下材60の粒径は、10[mm]以上であると好ましく、20[mm]以上であるとさらに好ましい。30[mm]以上であると最適である。一方、pH低下材60の粒径は、200[mm]以下であると好ましく、100[mm]以下であるとさらに好ましい。70[mm]以下であると最適である。本実施例のリン除去方法においては、底面の直径が約50[mm]で高さが約50[mm]の略円柱形状のpH低下材60を使用しており、pH低下材60の粒径は、約50[mm]となっている。pH低下材60は、裸の状態で充填してもよいが、その粒径が小さい場合には、所定量ごとに通水性の袋や容器に詰め込んだ状態で充填すると、pH低下材60の充填作業や取出し作業が容易になるために好ましい。
【0020】
処理槽20に充填するpH低下材60の量[m3]は、pH低下材60のpH低下能力や、被処理水の流量や、被処理水のpH等によっても異なり特に限定されるものではないが、例えば、被処理水(流量を1000[m3/日]とする)のpHを5.2まで低下させたい場合には、下記表1のように見積もることができる。ここで、下記表1左欄のpHは、pH低下材60に接触させる前の被処理水のpHである。
【表1】

ただし、pH低下材60は、黄鉄鉱の含有率が10〜33[%]で、嵩密度が2.8[kg/L]のものを使用した。また、pH低下材60の量[m3]は、安全率を150[%]として算出した。
【0021】
本実施例のリン除去方法に用いられたpH低下材60は、黄鉄鉱が溶出しているために、白タイル等の石材として再利用することができる。
【0022】
[処理槽20−層23] 処理槽20の最上層23には、図1に示すように、リン吸着材61を充填している。すなわち、層23は、被処理水に含まれるリンを吸着する(第二処理工程を行う)ための層となっている。層23に到達した被処理水は、通常、層22でpHが7以下の酸性側にまで低下されているために、被処理水に含まれるリンは、リン吸着材61によって吸着されやすくなっている。使用するリン吸着材61は、アロフェン質の鉱物からなるものであれば特に限定されないが、アルミニウムの含有率(重量%)が3[%]以上のものであると好ましい。アルミニウムの含有率(重量%)は、5[%]以上であるとより好ましく、10[%]以上であるとさらに好ましい。また、20[%]以上であるとより好ましく、30[%]以上であるとさらに好ましい。本実施例のリン除去方法においては、リン吸着材61として、500[℃]で2時間焼成した赤玉土を使用しており、アルミニウムの含有率は約13[%]となっている。
【0023】
本実施例のリン除去方法において、リン吸着材61は、造形していないものを使用している。リン吸着材61の粒径は、特に限定されるものではないが、通常、1〜300[mm]に設定される。リン吸着材61の粒径が1[mm]未満であると、層23にショートパスが生ずるおそれがあり、300[mm]を超えると、被処理水とリン吸着材61との接触面積が小さくなるおそれがあるためである。いずれの場合も、リン吸着材61のリン吸着能力が著しく低下するおそれがある。リン吸着材61の粒径は、5[mm]以上であると好ましく、7[mm]以上であるとさらに好ましい。10[mm]以上であると最適である。一方、リン吸着材61の粒径は、100[mm]以下であると好ましく、50[mm]以下であるとさらに好ましい。30[mm]以下であると最適である。本実施例のリン除去方法において、リン吸着材61の粒径は、約20[mm]となっている。リン吸着材61は、裸の状態で充填してもよいが、その粒径が小さい場合には、所定量ごとに通水性の袋や容器に詰め込んだ状態で充填すると、リン吸着材61の充填作業や取出し作業が容易になるために好ましい。
【0024】
処理槽20に充填するリン吸着材61の量[m3]は、リン吸着材61のリン吸着能力や、被処理水20の流量や、被処理水20の水質等によっても異なり特に限定されるものではないが、例えば、被処理水(流量を1000[m3/日]とする)のリン濃度を0.02[mg/L]まで低下させたい場合には、下記表2のように見積もることができる。ここで、下記表2左欄のリン濃度は、リン吸着材61に接触させる前の被処理水のリン濃度である。
【表2】

ただし、リン吸着材61は、被処理水中のリンの残留濃度を[0.02mg/L]に低下させるときの単位吸着量(1[g]のリン吸着材61が吸着できるリンの量[mg]である。)が1mg/gであるものを使用した。また、リン吸着材61は、嵩密度が0.84[kg/L]のものを使用し、その耐久年数は1年(被処理水のpHが5強程度であれば、リン吸着材61に含まれるアルミナや鉄が被処理水に含まれるリンと化学反応することによって、リンが除去される可能性もあるために、リン吸着材61の耐久年数は、1年より大幅に延長されることもある。)とした。リン吸着材61の量[m3]が大きくなる場合には、導入水路40と送出水路41との間に複数個の処理槽30を並列に配してもよい。
【0025】
リンを飽和状態にまで吸着したリン吸着材61は、苦土石灰からなる洗浄材で洗浄することによって、リン吸着能力を取り戻すために、再びリン吸着材61として再利用することができる。また、このとき使用した洗浄材は、リンを吸着しているために、良質のリン酸肥料として有効に再利用することができる。
【0026】
[実施例2] 図2は、実施例2(浮島式)のリン除去方法を示した説明図である。本実施例のリン除去方法は、図2に示すように、池11に浮かべられた処理槽20によって行われる。処理槽20は、発泡スチロール等の浮力体80の上に固定されている。池11に蓄えられた水は、被処理水として、導入水路30に取り付けられたポンプPによって吸い上げられて処理槽20の下部に導入される。処理槽20を下側から上側に通過してリン濃度が低下した被処理水は、送出水路31から再び池11に返される。
【0027】
本実施例のリン除去方法において、処理槽20は、実施例1の場合と同様に、上下3つの層21,22,23に区分されている。中間層22にpH低下材60が、最上層23にリン吸着材61がそれぞれ充填されている点や、最下層21が、空洞部となっている点でも、実施例1の場合と同様である。処理槽20の層21の側壁には、泥抜き窓90が設けられており、層21に沈殿した砂や泥を外部に取り出すことができるようになっている。泥抜き窓90は、処理槽20の稼動時には、キャップ等で塞がれる。また、層23に充填されたリン吸着材61には、水生植物100が植えつけられており、リン吸着材61で吸収できなかったリンや窒素を水生植物100に吸収させることができるようになっている。本実施例のリン除去方法は、沼湖等の停滞水域で好適に実施することができる。
【0028】
[実施例3] 図3は、実施例3(浄化水路式)のリン除去方法を示した説明図である。本実施例のリン除去方法は、図3に示すように、処理槽20自体が水路を形成するものとなっている。水路12(生活排水用水路、農業用排水路、河川バイパス用水路等)を流れる水は、被処理水として、導入水路30から処理槽20の上流側へ導入される。処理槽20を上流側から下流側に通過してリン濃度が低下した被処理水は、送出水路31から河川10に送出される。
【0029】
本実施例のリン除去方法において、処理槽20は、上流側から下流側に向かって順に5つの室24,25,26,27,28に区分されている。室24は、実施例1の沈殿僧50と同様の機能を有する沈殿室となっている。また、室25,26は、pH低下材60が充填されたpH調整室となっている。さらに、室27は、リン吸着材61が充填された脱リン室となっている。さらにまた、室28は、pH上昇材62が充填されたpH調節室となっている。この室28を設けることによって、河川10の酸性化を防止することが可能になる。pH上昇材62は、被処理水のpHを低下できるものであれば特に限定されず、例えば、貝殻等のカルシウム系の材料を用いてもよいが、本実施例のリン除去方法においては、水質浄化機能にも優れた木炭を使用している。導入水路30は、室24の上部に接続されており、送出水路31は室28の上部に接続されている。また、室24の上部は、室25の下部と通じており、室25の上部は、室26の下部と通じている。さらに、室26の上部は、室27の下部と通じており、室27の上部は、室28の下部と通じている。各室をこのように接続することによって、被処理水が各室の下側から上側に流れるようになり、被処理水をpH低下材60やリン除去材61に確実に所定時間以上接触させることが可能になる。各室は、一体的に成形されたものであってもよいし、別個に成形された複数個の槽をパイプ等で連結したものであってもよい。また、各室を設ける数は、pH低下材60やリン吸着材61の量等によって適宜設定される。本実施例のリン除去方法は、河川等の流れのある水域で好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1(自然流下式)のリン除去方法を示した説明図である。
【図2】実施例2(浮島式)のリン除去方法を示した説明図である。
【図3】実施例3(水路浄化式)のリン除去方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 河川
11 池
12 水路
20 処理槽
21〜23 層
24〜28 室
30 導入水路
31 送出水路
40 スクリーン
50 沈殿僧
60 pH低下材
61 リン吸着材
62 pH上昇材
70 荷台
80 浮力体
90 泥抜き窓
100 水生植物
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄鉄鉱を含む鉱物からなるpH低下材を被処理水に接触させて該被処理水のpHを低下させる第一処理工程と、アロフェン質の鉱物からなるリン吸着材を前記被処理水に接触させて該被処理水中のリンを吸着する第二処理工程とを経て、前記被処理水中のリンを除去することを特徴とするリン除去方法。
【請求項2】
前記pH低下材が蝋石である請求項1記載のリン除去方法。
【請求項3】
前記リン吸着材が、赤玉土、鹿沼土、黒ぼく土、又は石炭灰である請求項1記載のリン除去方法。
【請求項4】
前記リン吸着材が、300〜1000℃で0.5〜5.0時間焼成されたものである請求項3記載のリン除去方法。
【請求項5】
請求項1記載のリン除去方法に用いられた前記pH低下材を石材として再利用するpH低下材の再利用方法。
【請求項6】
請求項1記載のリン除去方法に用いられた前記リン吸着材を苦土石灰からなる洗浄材で洗浄して前記リン吸着材からリンを脱離させることを特徴とするリン吸着材の再生方法。
【請求項7】
請求項6記載のリン吸着材の再生方法に用いられた前記洗浄材をリン酸肥料として再利用する洗浄材の再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−150172(P2006−150172A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340965(P2004−340965)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303025168)同和工営株式会社 (7)
【Fターム(参考)】