説明

リークテスト装置

【課題】ワーク100にシール部材4を介して当接することで該ワーク100との間に密閉空間Sを形成するワーク当接台2と、該密閉空間S内にヘリウムを供給して該空間内を所定圧に加圧するヘリウムガス供給装置37とを備えたリークテスト装置1において、シール部材4のシール性を可及的に向上させる。
【解決手段】シール部材4を中空状の弾性チューブ4a乃至4dで構成するとともに、各弾性チューブ4a乃至4dに空気を供給するための空気供給口を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの被検査部からのリークを検査するためのリークテスト装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のリークテスト装置では、ワークにシール部材を介して当接することで該ワークとの間に密閉空間を形成するワーク当接部材と、該密閉空間内に気体又は液体(流体)を供給して該空間内を加圧する加圧供給手段とが設けられており、該加圧供給手段により密閉空間内を所定圧に加圧した状態で、流体検知機(ヘリウムディテクタ等)により被検査部からリークする気体又は液体を検知したり、圧力センサにより密閉空間内の圧力変動を検出したりすることで、ワークの被検査部におけるリークを診断可能になっている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すリークテスト装置は、上面が開口した凹状部を有する基台(ワーク当接部材)を有しており、この基台の上端内周部に段部が形成され、この段部にワークをセットして、シール部材により該ワークと段部との間をシールすることで、ワークと基台との間に密閉空間を形成するようにしている。そして、該リークテスト装置では、基台の周側面に密閉空間内の圧力を検出する圧力センサを配設して、該圧力センサの検出圧力が所定圧力未満の場合にリーク有りと診断するようになっている。
【特許文献1】特開平5−3065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のリークテスト装置のシール部材としては、通常、Oリングや、ガスケットが使用される。これらのシール部材はいずれも、ワークのシール面(シール部材によるシールが必要とされる面)とワーク当接部材との間で変形して両者の隙間を埋めることでシールを行うものであるため、例えばシール面に凹凸があるとそこでの変形が不十分になって、所定のシール性能を発揮することができず、この結果、密閉空間内の圧力をリーク診断に必要な所定圧力まで高めることができないという問題がある。
【0005】
そこで、シール部材をスポンジ材のように変形し易いもので構成しておき、ワーク当接部材に対してワークを所定の押圧力で押し付けて固定することで、スポンジ材を、ワークとワーク当接部材との間で十分に変形させて、シール部材のシール性能を向上させることが考えられる。
【0006】
しかしながら、スポンジ材をシール部材として使用したとすると、例えばテスト対象となるワークが航空機部品のように大型のものである場合に、スポンジ材の変形量を均一化することができず、シール部材の変形が不十分な箇所ではシール性能が著しく低下してしまうという問題があり、また、シール性能を向上させようとしてワークをワーク当接部材に押し付ければ押し付けるほどワークが変形してさらにシール部材のシール性能が悪化するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークのシール面にシール部材を介して当接することで該ワークとの間に密閉空間を形成するワーク当接部材と、該密閉空間内に気体又は液体を供給して該空間内を所定圧に加圧する加圧供給手段とを備えたリークテスト装置において、その構成に工夫を凝らすことで、シール部材のシール性を可及的に向上させることによって、ワークが大型であったりワークシール面に凹凸面が含まれていたりしても上記密閉空間の気密性を十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、シール部材を中空状の弾性シール部材で構成するとともに、該弾性シール部材の内部に気体又は液体を供給できるように、該弾性シール部材に流体供給口を設けるようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、ワークにシール部材を介して当接することで該ワークとの間に密閉空間を形成するワーク当接部材と、該密閉空間内に気体又は液体を供給して該空間内を所定圧に加圧する加圧供給手段とを備え、該供給した気体又は液体が該ワークの被検査部からリークしているか否かを検査するリークテスト用のリークテスト装置を対象とする。
【0010】
そして、上記シール部材は、中空状の弾性シール部材で構成され、上記弾性シール部材には、その内部に気体又は液体を供給するための流体供給口が設けられているものとする。
【0011】
この構成によれば、シール部材が中空状の弾性シール部材で構成されており、該弾性シール部材には、その内部に気体又は液体を供給するための流体供給口が設けられている。したがって、リークテスト時に流体供給口より弾性シール部材内に気体又は液体(流体)を供給することで、弾性シール部材を、その内部の流体圧力でもってワークシール面に押し付けてワークシール面とワーク当接部材との間で変形させることができる。したがって、ワークシール面が凹凸面であったとしても、この凹凸面の形状に対応して弾性シール部材が変形することで、該シール面でのシール性を確保することができる。また、ワークが航空機部品のように大型のものであっても、弾性シール部材を、その内部の流体圧力でもってワークシール面にそのいずれの箇所においても同じ押圧力で(均一に)押し付けることができ、該シール面でのシール性を十分に確保することができ、したがって、上記密閉空間の気密性が損なわれることもない。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記ワークにおける上記シール部材によるシール面は、その少なくとも一部が凹凸面とされ、上記中空状の弾性シール部材は、上記ワーク当接部材における少なくとも上記凹凸面に対応する部分に取り付けられているものとする。
【0013】
このように、上記中空状の弾性シール部材を、ワークのシール面のうち少なくとも凹凸面とされる部分とワーク当接部材との間に配設するようにしたことで、シールが困難とされる凹凸面でのシール性を確実に向上させることが可能となる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記ワークのシール面と上記ワーク当接部材との距離が所定距離になるように、該ワークの位置決めを行う位置決め手段をさらに備えているものとする。
【0015】
この構成によれば、リークテストを行うにあたって、ワークのシール面とワーク当接部材との距離を、所定距離に維持することができる。したがって、ワークとワーク当接部との距離が離れ過ぎることによりシール部材の変形量が不足したり、ワークをワーク当接部に押し付け過ぎることによりワークが変形したりするのを防止することができ、延いては、シール部材によるワークシール面でのシール性を可及的に向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記弾性シール部材の流体供給口より該弾性シール部材内に気体又は液体が供給されたときに、該弾性シール部材が上記ワークに向かって膨張するように該膨張方向を規制するガイド部材をさらに備えているものとする。
【0017】
この構成によれば、弾性シール部材内に気体又は液体を供給したときに、弾性シール部材が、ガイド部材によりガイドされてワークに向かって膨張することとなる。したがって、リークテスト時に、弾性シール部材をワークのシール面に押し付けて上記密閉空間の気密性を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のリークテスト装置によると、シール部材によるワークシール面でのシール性を可及的に向上させることができるため、ワークが大型であったりワークシール面に凹凸面が含まれていたりしても、ワークとワーク当接部材との間に形成される密閉空間の気密性を十分に確保することができる。よって、リークテスト時に密閉空間内の圧力を加圧供給手段により速やかに所定圧まで高めることができ、ワークのリークテストを円滑にかつ確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るリークテスト装置1を示し、このリークテスト装置1は、航空機の燃料タンク部品をワーク100として、その被検査部(後述する)におけるリークを検査するために使用される。該リークテスト装置1は、ワーク100がセットされるセットジグ3と、ワーク100に対してシール部材としての中空弾性チューブ4を介して当接することで該ワーク100との間に密閉空間Sを形成するワーク当接台2と、密閉空間S内にヘリウムガスを供給するヘリウムガス供給装置37とを備えている。リークテストは、作業者がヘリウムディテクタにより被検査部付近を実際に検査することで行われる。尚、以下の説明では、特に断らない限り、ワーク100がセットジグ3にセットされかつセットジグ3のワーク当接台2に対する位置決めが完了しているものとして(図1の状態にあるものとして)説明を行う。また、図1の紙面と垂直な方向は、テスト装置1の左右方向であって、紙面手前側を装置右側といい、その反対側を装置左側という。
【0021】
ワーク100は、図2に示すように、航空機の主翼B内に配設される燃料タンク90の前後のフレーム部材として使用されるものであって、強化繊維プラスチック(FRP(Fiber Reinforced Plastics))で構成されている。該ワーク100は、断面コ字状の柱状体からなるものであって(図3参照)、縦辺部101と、該縦辺部101の両端部にそれぞれ接続されかつ上下方向にて互いに対向する上側横辺部102及び下側横辺部103とを有している。
【0022】
上側横辺部102は、縦辺部101の上端部からその厚さ方向の一側に向かって延びて該縦辺部101に対して垂直に接続されており、下側横辺部103は、縦辺部101の下端部から該一側に向かって斜め下側に延びている。該両横辺部102,103の先端部は、設計上の要求により上側から見て波状に形成されており(図3参照)、両横辺部102,103の先端面102a,103aは、波状の凹凸面とされている。
【0023】
ワーク100の縦辺部101には、該縦辺部101(燃料タンク90)を主翼Bに固定するL字ブラケット取付用の螺子孔101fが複数形成されており、ブラケット104には、この螺子孔101fに対応する位置に貫通孔102fが形成されている。ブラケット104は、その取付面104a(図2参照)を縦辺部101の外側面101a(コ字外側面)に当接させた状態で貫通孔102fに挿通されたボルト107を螺子孔101fに螺合してワーク100に取付け固定される。ボルト107の先端部は、ブラケット104がワーク100に固定された状態で縦辺部101の内側面101b(コ字内側面)から突出し、該内側面101bには、この突出部分を覆うようにシール剤106が塗布されている。本実施形態では、このシール剤106の塗布が完了した後のワーク100の螺子孔101f部分を被検査部としてリークテスト行う。
【0024】
上記セットジグ3は、略矩形状に形成されかつワーク100の縦辺部101をその外側(コ字外側)より支持する垂直支持板5と、ワーク100の下側横辺部103をその下側より支持する水平支持板6とを有している。
【0025】
垂直支持板5は、その長手方向がワーク100の長手方向に一致する矩形状を呈していて、床面Fに対して垂直に配設されている。該垂直支持板5の一側面には、縦辺部101の周縁部に沿うようにワーク受け部7が突設されている。ワーク受け部7のワーク受け面には、ワーク100に傷等が付かないように、エンジニアリングプラスチック製の座面プレート8が取り付けられている。また、垂直支持板5には、ワーク受け部7にセットされたワーク100を固定するべく手動式クランパー(図示省略)が、複数設けられている。
【0026】
垂直支持板5における上記ブラケット104に対応する部分は略矩形状に切り欠かれて切欠部5aを形成しており、これにより、ワーク100をセットジグ3にセットした状態で、作業者がヘリウムディテクタを切欠部5aを通して被検査部に近づけることができる。
【0027】
水平支持板6は、該垂直支持板5に対して連結部材9を介して連結されていて、床面Fに対して平行に(垂直支持板5に対して垂直に)配設されている。水平支持板6の上面には、ワーク100の下側横辺部103の下端縁に沿うようにワーク受け部10が突設され、ワーク受け部10のワーク受け面には、上記ワーク側面側のワーク受け部7と同様にエンジニアリングプラスチック製の座面プレート11が取り付けられている。
【0028】
水平支持板6は、下面にキャスター12を有する左右一対の脚柱13により支持されていて、垂直支持板5と共に床面Fに対して移動自在になっている。
【0029】
水平支持板6のワーク当接台2側の面における左右両端部には、雄雌嵌合(テーパ嵌合)によりワーク当接台2に対するセットジグ3の位置決めを行う位置決め部材17が取り付けられている。この位置決め部材17は、テーパコーン状に形成されていて、ワーク当接台2に取り付けられた位置決め部材18のテーパ状凹部18aに嵌合することで、セットジグ3のワーク当接台2に対する位置決めを行う。
【0030】
上記ワーク当接台2は、上記垂直支持板5に対向して略平行に配設された基板19を有している。基板19は、その長手方向がワーク長手方向(装置左右方向)に一致する略矩形状を呈している。基板19は、連結部材38を介して左右一対の脚柱21に連結支持されており、脚柱21の下面にはキャスタ20が取り付けられている。これにより、ワーク当接台2は床面Fに対して移動自在になっている。両脚柱21は補強柱22により互いに連結されており、この補強柱22のセットジグ3側の面に上記位置決め部材18が取り付けられている。
【0031】
上記基板19の上側の左右の角部には、外周面に雄螺子部が形成されたシャフト23が突設されており、このシャフト23を、上記垂直支持板5(セットジグ3)の貫通孔5gに挿通して該雄螺子部にナット24を螺合させることで、ワーク当接台2(基板19)がセットジグ3に固定される。
【0032】
基板19のセットジグ3側の面には、ワーク100を該基板19に対して垂直に投影したときの投影領域の外周縁に沿うように枠状壁30が突設されている。
【0033】
具体的には、上記枠状壁30は、基板長手方向(装置左右方向)に延びかつ上下方向に互いに所定間隔を隔てて並ぶ上側枠壁30a及び下側枠壁30bと、上下方向に延びかつ基板長手方向(装置左右方向)に互いに所定間隔を隔てて並ぶ左側枠壁30c及び右側枠壁30dとで構成されており、上側及び下側枠壁30a,30bは、リブ41を介して基板19に連結されている。
【0034】
左側枠壁30c及び右側枠壁30dは、図1に示すように、ワーク100との間にその内側壁面(コ字内側面)に沿って所定間隔H1の隙間が生じるように形成されている。また、上側枠壁30aは、ワーク100との間にその上側横辺部102の先端面102aに沿って所定間隔H2の隙間を生じるように形成され、同様に、下側枠壁30bは、ワーク100との間にその下側横辺部103の先端面103aに沿って所定間隔の隙間H3を生じるように形成されている。尚、図1中、符号30gは、密閉空間S内に供給されるヘリウムガスの導入口であって、この導入口30gにガス供給管43を介してヘリウムガス供給装置37が接続される。
【0035】
上記弾性チューブ4は、中空円筒状のゴム製チューブからなるものであって、枠状壁30の突出側(ワークセットジグ側)の端面に沿って(上記所定間隔H1乃至H3の隙間に沿って)配設されるとともに、該枠状壁30に接着剤でもって接着固定されている。
【0036】
上記弾性チューブ4は、上側及び下側枠壁30a,30bに沿ってそれぞれ配設される上側及び下側弾性チューブ4a,4bと、左側及び右側枠壁30c,30dに沿ってそれぞれ配設される左側及び右側弾性チューブ4c,4dとで構成されている。
【0037】
上側及び下側弾性チューブ4a,4bは、その長さが装置左右方向に長くなるため、撓みを防止する観点から厚肉で変形剛性の高いチューブが使用される一方、左側及び右側枠壁30c,30dに沿って配設される弾性チューブ4c,4dは、各枠壁30c,30dの形状に合わせてコ字状に屈曲させる必要があるため、上側及び下側弾性チューブ4a,4bに比べて薄肉で変形剛性の小さいチューブが使用される。
【0038】
各弾性チューブ4a乃至4dは、該各チューブ内に空気を供給するための空気供給口4g(図3ではチューブ4a,4bの空気供給口のみを示す)を有しており、この空気供給口がエアホース42(図1参照)を介してエア源39に接続される。このエアホース42には手動式の開閉バルブ35が設けられており、作業者がバルブ35を操作することで、該エア源39より各弾性チューブ4a乃至4d内に空気が供給される状態と該空気供給が遮断される状態とを切換え可能になっている。
【0039】
各弾性チューブ4a乃至4dは、エア源39からの空気供給が遮断された状態では、図4に示すように、萎んだ状態となり(図では上側弾性チューブ4a及び右側弾性チューブ4dのみを示す)、この状態では、各チューブ4a乃至4dとワーク100との間に隙間Pが生じている。そして、各弾性チューブ4a乃至4dは、エア源39から空気が供給されることで、図5に示すように、ワーク100に当接するまで膨らんでこの隙間Pを埋めるように構成されている。そうして、各チューブ4a乃至4dが膨らむことによって、ワーク100とワーク当接台2(枠状壁30及び基板19)との間に密閉空間Sが形成されることとなる。
【0040】
ここで、左側及び右側枠壁30c,30dにおけるセットジグ3側の端縁部には、図6に示すように、左右の弾性チューブ4c,4d(図では左側弾性チューブ4cのみを示す)を枠壁厚さ方向の両側から挟みこむウレタン製のガイドプレート36が取り付けられている。このガイドプレート36は、各チューブ4c,4dが空気供給時に、その変形剛性の低さに起因して枠壁厚さ方向(図6の左右方向)に膨張する(拉げる)のを阻止して、該各チューブ4c,4dの膨張方向をワーク当接台2側からセットジグ3側(ワーク100側)に向かう方向に規制する。
【0041】
以上のように構成されたリークテスト装置1を用いてリークテストを行う際には、作業者は以下の手順でテストを行う。すなわち、先ず、ワーク100をセットジグ3にセットしてクランパーで固定する。そして、ワーク100のセットが完了したセットジグ3を床面F上で移動させて、垂直支持板5の貫通孔5gの軸心位置を、ワーク当接台2のシャフト23の軸心位置に合わせる。その上で、セットジグ3をワーク当接台2に向かって接近させて、両位置決め部材17及び18が嵌合したときに、該セットジグ3の位置決めが完了したものとして、シャフト23の雄螺子部にナット24を螺合して締め付ける。
【0042】
そうして、ナットを締め付けてセットジグ3をワーク当接台2に固定した後に、上記バルブ35を操作してエア源39より各弾性チューブ4a乃至4d内に空気を供給する。空気供給を開始してから所定時間が経過した後に(各チューブ4a乃至4d内に十分に空気が供給された後に)、ヘリウムガス供給装置37を作動させて密閉空間S内にヘリウムガスを供給する。そして、該密閉空間S内の圧力が所定圧(本実施形態では5psi)になったことを不図示の圧力センサにより確認した後に、ヘリウムディテクタによるリーク診断を行う。具体的には、セットジグ3の垂直支持板5に形成された切欠部5aに手を通して、被検査部(螺子孔101f)周辺つまりブラケット104の取付けボルト107周辺にヘリウムディテクタを近づける。ヘリウムディテクタの検出レベルが所定レベル以上である場合には螺子孔101fにてリークがあるものと診断する。
【0043】
以上の如く、上記実施形態では、ワーク100とワーク当接台2(枠状壁30)との間に設けられるシール部材を中空円筒状の弾性チューブ4a乃至4dで構成するとともに、該弾性チューブ4a乃至4d内にそれぞれエア源39より空気を供給可能にしたから、ワーク100のシール面(シール部材によるシールを必要とする面)が、上側及び下側横辺部102,103の先端面102a,103aのように凹凸面であったとしても、リークテスト時に上側弾性チューブ及び下側弾性チューブ4a,4b内に空気を供給することで、ワークシール面とワーク当接台2との間で弾性チューブ4a,4bが該凹凸形状に対応して膨らむ(変形する)こととなり、これによって、密閉空間Sの気密性を確保することができる。したがって、リークテストを行うにあたって、密閉空間S内を確実に上記所定圧まで加圧することができ、ワーク100のリーク診断を円滑にかつ確実に行うことができる。
【0044】
また、上記実施形態では、上記両位置決め部材17,18の嵌合によりワーク当接台2に対するセットジグ3の位置決めを行うことで、ワーク100とワーク当接台2(枠状壁30)との間に隙間が生じるようになっている。
【0045】
こうすることで、ワーク100をセットジグ3に押付け過ぎることによる、ワーク100の変形を防止し、延いては密閉空間Sの気密性を十分に確保することができる。また、シール部材を例えば中実状のスポンジ材等で構成した場合、図7に示すように、下側横辺部103と左右枠壁30c,30d(図7では右側枠壁30dのみ示す)との間、及び、縦辺部101と左右枠壁30c,30dとの間のスポンジ材には、圧縮荷重が作用するのに対し、上側横辺部102と左右枠壁30c,30dとの間のスポンジ材には剪断荷重が作用することとなり、この剪断荷重が作用する領域Rにおいては圧縮荷重が作用する領域Uに比べて、スポンジ材の変形量が少なくなってシール性が著しく低下することとなる。しかしながら、上記のように、予め生じたワーク100と枠状壁30との隙間にて弾性チューブ4a乃至4dを膨らませるようにすれば、弾性チューブ4a乃至4dを、ワーク100のシール面全体にいずれの箇所においても同じ膨張力で均一に押し付けることができるから、シール面でのシール性を可及的に向上させて、密閉空間Sの気密性を確保することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、変形剛性が低い左側及び右側弾性チューブ4c,4dに対して、その膨張方向を規制するガイドプレート36を設けるようにしたから、リークテスト時に弾性チューブ4c,4d内に空気を供給したときに、各弾性チューブ4c,4dを、ガイドプレート36によりガイドしてワーク100側に向かって膨張させることができる。これにより、各弾性チューブ4c,4dをワーク100のシール面に確実に押し付けて、密閉空間Sの気密性を十分に確保することができる。
【0047】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、ワーク100は、航空機用の燃料タンク部品とされているが、これに限ったものではなく、例えば自動車用エンジン部品(例えばシリンダヘッド)等、航空機部品に比べて小型の部品としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ワーク100のリークの有無を、被検査部にヘリウムディテクタを近づけることで検出するようにしているが、例えば、密閉空間S内の圧力変動を検知することでリークの有無を診断するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、密閉空間S内に供給する気体をヘリウムとしているが、これに限ったものではなく、例えば密閉空間S内に空気を供給して、エアリークディテクタにより被検査部におけるエアリークを検出するようにしてもよい。また、密閉空間内に液体を供給するものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、リークテスト時に弾性チューブ4a乃至4d内に空気を供給するようにしているが、必ずしも空気を供給する必要はなく、例えばヘリウム等の他の気体を供給するようにしてもよいし、また水等の液体を供給するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、枠状壁30の全周に亘って弾性チューブ4(4a乃至4d)を配設するようにしているが、これに限ったものではなく、特にシールが困難な箇所であるワーク100の両横辺部102,103の先端面102a,103aに対応するシール部材のみを弾性チューブ4で構成して、その他の部分はスポンジ材やパッキン等の従来のシール部材で構成するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、左側及び右側弾性チューブ4c,4dに対してのみガイドプレート36を設けるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば上側及び下側弾性チューブ4a,4bに対してもその膨張方向を規制するガイドプレート36を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ワークにシール部材を介して当接することで該ワークとの間に密閉空間を形成するワーク当接部材と、該密閉空間内に気体又は液体を供給して該空間内を所定圧に加圧する加圧供給手段とを備え、該供給した気体又は液体が該ワークの被検査部からリークしているか否かを検査するリークテスト用のリークテスト装置に有用であり、特に、ワークにおける上記シール部材よるシール面が凹凸面を含む場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係るリークテスト装置を示す縦断面図である。
【図2】ワークが航空機の燃料タンク部品として使用される様子を示す模式図である。
【図3】ワーク当接台及びワークを示す斜め右側から見た斜視図である。
【図4】弾性チューブ内に空気を供給する前の状態を示す模式図である。
【図5】弾性チューブ内に空気を供給した後の状態を示す模式図である。
【図6】図3におけるVI-VI線断面図である。
【図7】シール部材に作用する荷重状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0055】
S 密閉空間
1 リークテスト装置
2 ワーク当接台(ワーク当接部材)
4 弾性チューブ(シール部材)
4a 上側弾性チューブ(シール部材)
4b 下側弾性チューブ(シール部材)
4c 左側弾性チューブ(シール部材)
4d 右側弾性チューブ(シール部材)
4g 空気供給口(流体供給口)
17 位置決め部材(位置決め手段)
18 位置決め部材(位置決め手段)
36 ガイドプレート(ガイド部材)
37 ヘリウムガス供給装置(加圧供給手段)
100 ワーク
102a(先端面、凹凸面)
103a(先端面、凹凸面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにシール部材を介して当接することで該ワークとの間に密閉空間を形成するワーク当接部材と、該密閉空間内に気体又は液体を供給して該空間内を所定圧に加圧する加圧供給手段とを備え、該供給した気体又は液体が該ワークの被検査部からリークしているか否かを検査するリークテスト用のリークテスト装置であって、
上記シール部材は、中空状の弾性シール部材で構成され、
上記弾性シール部材には、その内部に気体又は液体を供給するための流体供給口が設けられていることを特徴とするリークテスト装置。
【請求項2】
請求項1記載のリークテスト装置において、
上記ワークにおける上記シール部材によるシール面は、その少なくとも一部が凹凸面とされ、
上記中空状の弾性シール部材は、上記ワーク当接部材における少なくとも上記凹凸面に対応する部分に取り付けられていることを特徴とするリークテスト装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリークテスト装置において、
上記ワークのシール面と上記ワーク当接部材との距離が所定距離になるように、該ワークの位置決めを行う位置決め手段をさらに備えていることを特徴とするリークテスト装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリークテスト装置において、
上記弾性シール部材の流体供給口より該弾性シール部材内に気体又は液体が供給されたときに、該弾性シール部材が上記ワークに向かって膨張するように該膨張方向を規制するガイド部材をさらに備えていることを特徴とするリークテスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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