説明

リーダライタ及び非接触ICモジュール

【課題】本発明は、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減させるとともに、認証処理を行う必要のある非接触ICカードとのみ認証処理を行うことができる非接触ICモジュール及びリーダライタを提供する。
【解決手段】本発明の非接触ICモジュールAは、リーダライタBから受信する電波に含まれる同期補正情報に基づいてリーダライタBに送信するタイミングを変化させるとともに、受信強度が第1の閾値未満である場合にはリーダライタBとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を行い、リーダライタBから受信する電波の受信強度が第1の閾値以上である場合にはリーダライタBとの間で行うべき第2の認証処理を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタとの間で非接触型の無線通信を利用して情報の送受信を行う非接触ICモジュール、及びそのリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型のICモジュール(以下、非接触ICモジュールと称する。なお、この非接触ICモジュールは、カードサイズの非接触ICカード、携帯端末装置に搭載される、非接触ICカード型技術を利用した小型モジュール、荷札として荷に貼り付けられる非接触ICタグなどを含み、ICチップとアンテナとを含んで構成される)と、その非接触ICモジュールと無線通信を行うリーダライタと、を含んで構成されるシステムが、様々なサービスに利用されている。このシステムでは、リーダライタと無線通信を行っている非接触ICモジュールが当該システムによるサービスを提供可能なものであるか否かを識別するために、リーダライタは、非接触ICモジュールとの間で認証処理を行っている。
【0003】
特許文献1には、上記認証処理に要する処理時間を短縮するためになされた非接触ICカードリーダ装置について、開示されている。
【特許文献1】特開2004−102885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、タッチアンドゴー形式を適用した非接触ICカードリーダライタと、密着型の非接触ICカード(つまり、非接触ICカードリーダライタにおける読み取り部と無線通信を行うためには、その読み取り部と2ミリ未満の距離に位置する必要がある非接触ICカード)と、の間での認証処理について開示されている。このシステムでは、非接触ICカードリーダライタは、2枚以上の非接触ICカードを一時期に読み取り部にタッチさせることができない構造であり、一枚の非接触ICカードとのみ認証を行うことを想定したものである。また、非接触ICカードリーダライタは、利用者が非接触ICカードを非接触ICカードリーダライタと通信可能な距離に位置させるために非接触ICカードを読み取り部にタッチするという行為を行ってはじめて、非接触ICカードと認証を開始するものである。
【0005】
一方、遠隔型の非接触ICカード(つまり、リーダライタにおける読み取り部と無線通信を行うために、その読み取り部と70センチ以上の距離に位置することが許容される非接触ICカード)との間で認証処理を行う場合、リーダライタと通信可能な距離に複数枚の非接触ICカードが位置することによって、リーダライタは、その複数枚の非接触ICカードと同時期に認証を行うことが考えられる。また、リーダライタは、利用者が意図せず非接触ICカードを非接触ICカードリーダライタと通信可能な距離に位置させた場合にも、非接触ICカードと認証を開始することが考えられる。
【0006】
このように、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合には、密着型の非接触ICカードとの間での無線通信と異なってくる。すなわち、リーダライタと非接触ICカードが一対多となる可能性が高く、常に複数の非接触ICカードが存在することが想定される。そのため、リーダライタは効率良く周囲に存在する非接触ICカードとの同期を取って通信を行う必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、リーダライタの周囲に存在する非接触ICカード
の数の状況に応じて、効率良く通信の同期補正を実現する非接触ICモジュール、携帯端末装置、及びリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリーダライタは、電波の送受信を行う無線部と、無線部による非接触ICモジュールとの無線通信を制御する制御部とを備え、制御部は、無線部により非接触ICモジュールから受信する電波の受信強度が第1の閾値未満かつ第1の閾値よりも値が小さい第2の閾値以上である場合に、非接触ICモジュールとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を行い、無線部により非接触ICモジュールから受信する電波の受信強度が第1の閾値以上である場合に、非接触ICモジュールとの間で行うべき認証処理のうちの、第1の認証処理を除く第2の認証処理を行い、無線部により非接触ICモジュールに対して送信する電波に、非接触ICモジュールが送信するタイミングを計るための同期補正情報を含むものである。
【0009】
また、本発明のリーダライタにおける制御部は、無線部により複数の非接触ICモジュールからの応答を受信できる受信数によって同期補正情報の内容を変更するものである。
【0010】
また、本発明のリーダライタにおける制御部は、非接触ICモジュールの応答数が所定値よりも少ない場合に、同期補正情報で示される時間値を小さくするものである。
【0011】
また、本発明のリーダライタにおける制御部は、非接触ICモジュールの応答数が所定値よりも多い場合に、同期補正情報で示される時間値を大きくするものである。
【0012】
この構成により、リーダライタは周囲に複数個存在する遠隔型の非接触ICモジュールの台数を把握することが可能となり、リーダライタが送信するタイミングと前記非接触ICモジュールが送信するタイミングを周囲環境に応じて柔軟に変更することが可能となり、効率の良いシステムを提供することができる。さらに、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減させることができる。
【0013】
また、本発明の非接触ICモジュールは、電波の送受信を行う無線部と、無線部によるリーダライタとの無線通信を制御する制御部とを備え、制御部は、無線部によりリーダライタから受信する電波の受信強度が第1の閾値未満かつ第1の閾値よりも値が小さい第2の閾値以上である場合に、リーダライタとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を行い、無線部によりリーダライタから受信する電波の受信強度が第1の閾値以上である場合に、リーダライタとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を除く第2の認証処理を行い、無線部によりリーダライタから受信する電波に含まれる同期補正情報に基づきリーダライタに対して送信する電波の送信タイミングを変化させるものである。
【0014】
この構成により、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減させるとともに、認証処理を行う必要のある非接触ICカードとのみ認証処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非接触ICモジュール及びリーダライタによれば、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減させるとともに、認証処理を行う必要のある非接触ICカードとのみ認証処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態のリーダライタと非接触ICモジュールとを含んで構成されるシステムについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の非接触ICモジュールの構成図、図2は、本発明の実施の形態のリーダライタの構成図である。まず、図1の非接触ICモジュールAの構成について説明する。非接触ICモジュールAは、復調処理部11と、全体制御部12と、メモリ13と、変調処理部14と、アンテナ15とを備えている。
【0017】
復調処理部11は、リーダライタBからアンテナ15を通じて受信されたFSK(Frequency Shift Keying)変調信号を復調し、受信信号を取り出すように機能する。さらに、FSK変調信号の受信強度を計測し、その計測した数値を全体制御部12に出力する。なお、ここでは、復調処理部11がFSK変調された信号を復調するよう記載したが、本発明の実施の形態のシステムにおける非接触ICモジュールは、リーダライタから受信した信号がASK(Amplitude Shift Keying)変調されていれば、そのASK変調信号を復調するようにしてもよい。
【0018】
全体制御部12は、復調処理部11から入力する受信強度に関する数値を参照して、後述するシーケンスに則った信号の送受信をリーダライタBと行うよう復調処理部11及び変調処理部14を制御するとともに、メモリ13に対する読み込みまたは書き込みのアクセスを実行するように機能する。
【0019】
変調処理部14は、アンテナ15を介して受信した無変調搬送波を、メモリ13から全体制御部12を通して読み出されたデータに基づいてFSK変調し、アンテナ15を介してリーダライタBへ送出するように機能する。なお、ここではパッシブ型の非接触ICモジュールについて述べたが、本発明の非接触ICモジュールに適用されるものは、パッシブ型に限るものではない。なお、ここでは、変調処理部14が搬送波をFSK変調するよう記載したが、本発明の実施の形態のシステムにおける非接触ICモジュールが、搬送波をASK変調するようにしてもよい。
【0020】
次に、図2のリーダライタBの構成について説明する。リーダライタBは、全体制御部21と、通信制御部22と、メモリ23と、変調処理部24と、搬送波発振器25と、サーキュレータ26と、復調処理部27と、を備え、外部にアンテナ28を備えている。
【0021】
全体制御部21は、復調処理部27から入力する、非接触ICモジュールAから受信した信号の受信強度を参照して、後述するシーケンスに則った信号の送受信を非接触ICモジュールAと行うよう通信制御部22に命令するとともに、非接触ICモジュールAに対するデータの書き込み、読み出しの制御を通信制御部22に命令する。
【0022】
通信制御部22は、全体制御部21の制御下で、対象とする非接触ICモジュールAのIDや非接触ICモジュールAに書き込ませるデータをメモリ23から読み出して、変調処理部24に渡すように機能する。
【0023】
変調処理部24は、メモリ23から読み出した前記データにより、搬送波発振器25が発生する、例えば400MHzの、無変調搬送波に対しFSK変調処理を行うように機能する。なお、ここでは、変調処理部24が搬送波をFSK変調するよう記載したが、本発明の実施の形態のシステムにおけるリーダライタが、搬送波をASK変調するようにしてもよい。
【0024】
サーキュレータ26は、方向性を持った結合器であり、上述のように変調処理部24が変調したFSK変調信号を、アンテナ28を介して非接触ICモジュールAへ送信すると
ともに、非接触ICモジュールAからアンテナ28を介して受信したFSK変調信号を復調処理部27へ供給するように機能する。
【0025】
復調処理部27は、搬送波発振器25の無変調搬送波を用いてFSK変調データを復調し、復調したデータを全体制御部21へ送出するように機能する。さらに、FSK変調信号の受信強度を計測し、その計測した数値を全体制御部21に出力する。なお、全体制御部21は、その復調したデータにもとづいて、非接触ICモジュールAから受信したデータの内容を認識する。なお、ここでは、復調処理部27がFSK変調されたデータを復調するよう記載したが、本発明の実施の形態のシステムにおけるリーダライタは、非接触ICモジュールから受信した信号がASK変調されていれば、そのASK変調信号を復調するようにしてもよい。
【0026】
以下、本発明の実施の形態の携帯端末装置及びリーダライタについて詳細に説明する。図3に、本発明の実施の形態の携帯端末装置とリーダライタの位置関係の一例を示す図を、図4に、本発明の実施の形態の携帯端末装置とリーダライタの間での認証処理シーケンスを、それぞれ示す。
【0027】
図3に示すように、リーダライタ2の付近には、非接触ICモジュールを搭載した複数台の携帯端末装置1a〜1nが位置しているものとする。また、複数台の携帯端末装置1a〜1nのうち、携帯端末装置1j〜1nは、非接触ICモジュールがリーダライタ2と無線通信を行うことができる通信範囲外(図3における、点線で形成される円C1の外部。円C1は、リーダライタ2を中心とする円であって、リーダライタ2が非接触ICモジュールと無線通信を行うために最低限必要な受信強度の閾値(レベル1)に応じて描かれている)に位置する。また、複数台の携帯端末装置1a〜1nのうち、携帯端末装置1a〜1iは、非接触ICモジュールがリーダライタと無線通信を行うことができる通信範囲内(図3における、点線で形成される円C1の内部)に位置し、さらに、携帯端末装置1aは、その通信範囲内であって、よりリーダライタに近い領域(上記レベル1よりも値の大きい受信強度の閾値(レベル2)に応じて描かれる円C2の内部)に位置する。
【0028】
以降、携帯端末装置1aが、通信範囲外に位置する点P0、及び円C1の内部かつ円C2の外部に位置する点P1を経て、円C2の内部に位置する点P2に至る場合の、携帯端末装置1a及びリーダライタ2の処理について、図4を参照して説明する。
【0029】
点P0に位置する携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュールは、周期Tにてキャリアセンスを行ってもリーダライタ2が出力する電波を受信することができず、したがって、認証処理を行うことができない。一方、円C1の内部に位置する携帯端末装置1b〜1iは、後述するプレ認証フェーズにてリーダライタ2との間で認証処理を実行している。携帯端末装置1b〜1iは、リーダライタ2から受信した、要求信号(この要求信号は、図4における、プレ認証要求に対応する)を含む電波の受信強度を計測し、その計測した受信強度と受信強度の閾値であるレベル1とを比較して、携帯端末装置1b〜1iが円C1の内部に位置するか否かを判別している。また、リーダライタ2は、円C1の内部に位置する携帯端末装置1b〜1iとの間で、後述するプレ認証フェーズにて認証処理を実行している。リーダライタ2は、携帯端末装置1b〜1iから受信した、応答信号(この応答信号は、図4における、プレ認証応答1またはプレ認証応答2に対応する)を含む電波の受信強度を計測し、その計測した受信強度と受信強度の閾値であるレベル1とを比較して、携帯端末装置1b〜1iが円C1の内部に位置するか否かを判別している。
【0030】
点P1または点P2に位置する携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュールは、リーダライタ2が定期的にプレ認証要求を出力するタイミング(図4に示す、プレ認証要求と記載された白抜きの矢印の幅は、リーダライタ2がプレ認証要求を送信する期間に
相当する)と、周期Tにてキャリアセンスを行うタイミング(図4に示す、「○」で示される時点において、携帯端末装置1a〜1iは、キャリアセンスを行う)と、が一致すれば、リーダライタ2からプレ認証要求を受信する。同時に、非接触ICモジュールは、リーダライタ2からプレ認証要求を含む電波の受信強度を計測し、その計測した受信強度と受信強度の閾値であるレベル1およびレベル2とを比較する。ここで、図5に示す、本発明の実施の形態におけるプレ認証要求とプレ認証応答を送受信するタイミングを説明する図と、図6に示す、本発明の実施の形態におけるプレ認証要求とプレ認証応答のフレームフォーマットを説明する図と、を参照して、携帯端末装置1a〜1iとリーダライタ2が送受信するプレ認証要求とプレ認証応答について説明する。なお、図5(b)の下段の図は、図5(b)の上段の図における点線で囲まれた範囲を拡大したものである。
【0031】
図5(a)に示すように、リーダライタ2は、定期的にプレ認証要求を送信し、一方、携帯端末装置1a〜1iに搭載される非接触ICモジュールは、周期Tにてキャリアセンスを行う。携帯端末装置1a〜1iに搭載される非接触ICモジュールは、図3に示す点P0に位置するときは、図5(a)に示すように、周期的にキャリアセンスを繰り返すものの、プレ認証要求を受信することができず、リーダライタ2に応答を返すことはない。
【0032】
携帯端末装置1aが点P1または点P2に位置する場合、その携帯端末装置1a〜1iに搭載される非接触ICモジュールは、キャリアセンスを行ったときにリーダライタ2から送信されるプレ認証要求を受信することができる。このとき、携帯端末装置1a〜1iに搭載される非接触ICモジュールは、キャリアセンスを行ってプレ認証要求がリーダライタ2から送信されていることを検出した時点(図5(b)に示す時点t1)から、リーダライタ2がプレ認証要求を送信し終える時点(図5(b)に示す、プレ認証要求のフレームの終端である時点t2)まで、プレ認証要求を受信する。プレ認証要求を構成するフレームは、図5(b)の下段の図に示すように、簡易情報を構成するサブフレームと、完全情報を構成するサブフレームと、に分割される。また、図5(a)に示すTxは、リーダライタ2がプレ認証要求を送信する間隔を示しており、図5(b)で示すように、リーダライタ2はTxの間に携帯端末装置1a〜1iから、後述するプレ認証要求に対する応答であるプレ認証応答を受信することとなる。
【0033】
図5(b)では、プレ認証要求のフレームは、簡易情報を構成するサブフレーム4個と(図5(b)では、簡易情報No.1から簡易情報No.4に該当する)、完全情報を構成するサブフレーム1個と、から構成される。リーダライタ2は、含まれるデータが同一の簡易情報を連続して4回送信した後、完全情報を送信する。簡易情報を構成するサブフレームのフレームフォーマットは、図6(a)に示すように、非接触ICモジュールがビット同期をとるためのビット同期信号、非接触ICモジュールがフレーム同期をとるための簡易情報フレーム同期信号、及び、簡易情報の主要データとなる簡易ID情報によって構成される。簡易ID情報は、サブフレームの種別やデータ長などを特定するための制御情報を含むヘッダと、リーダライタ2が決済処理を行うことができるサービス(例えば、Suica(登録商標)やEdy(登録商標))を識別するためのサービスIDと、を含んで構成される。なお、簡易情報フレーム同期信号に簡易情報固有のビットパターンを挿入することによって、あるサブフレームを受信した非接触ICモジュールが、簡易ID情報のヘッダを認識する前にその簡易情報フレーム同期信号を参照して、そのサブフレームが簡易情報であると識別するようにしてもよい。
【0034】
また、完全情報を構成するサブフレームのフレームフォーマットは、図6(b)に示すように、非接触ICモジュールがビット同期をとるためのビット同期信号、非接触ICモジュールがフレーム同期をとるための完全情報フレーム同期信号、完全情報の主要データとなる完全ID情報及び、リーダライタ2の周囲環境に応じて効率よく同期補正を行うための同期補正情報によって構成される。
【0035】
完全ID情報は、サブフレームの種別やデータ長などを特定するための制御情報を含むヘッダと、リーダライタ2が決済処理を行うことができるサービス(例えば、Suica(登録商標)やEdy(登録商標))を識別するためのサービスIDと、さらに、プレ認証要求を送信したリーダライタ2を識別するための送信元IDを含んで構成される。
【0036】
完全情報は、送信元IDを含んで構成される点で、簡易情報と異なる。なお、完全情報フレーム同期信号に完全情報固有のビットパターンを挿入することによって、あるサブフレームを受信した非接触ICモジュールが、完全ID情報のヘッダを認識する前にその完全情報フレーム同期信号を参照して、そのサブフレームが完全情報であると識別するようにしてもよい。
【0037】
同期補正情報は、図5(a)に示す時間Txを示すものであり、リーダライタ2が送信するプレ認証要求の送信間隔を表すものである。これは、言い換えれば非接触ICモジュールがプレ認証要求を受信した後にリーダライタ2に対するプレ認証応答を返すタイミングである。
【0038】
リーダライタ2は時間Txが長ければ長いほど、周囲にある非接触ICモジュールの応答を数多く受信することが可能となるが、Txの時間が長すぎる場合にはリアルタイム性が悪くなり効率の悪いシステムとなってしまう。逆に、Txの時間が短い場合には、リアルタイム性は向上するがリーダライタ2の周囲に数多くの非接触ICモジュールが存在してしまう。その結果、非接触ICモジュールからの応答を全て受信することができなくなり、通信が成立しない非接触ICモジュールが出てくる可能性がある。このため、Txの時間は長すぎても、短すぎてもシステムとしては良くないため適切に調整する必要がある。
【0039】
非接触ICモジュールは、図5(b)の下段の図に示すように、時点t1においてキャリアセンスを行って簡易情報No.3を構成するデータの途中からプレ認証要求の受信を開始した場合、そのプレ認証要求を構成するサブモジュールのうち、簡易情報No.3よりも後のサブフレームである簡易情報No.4及び完全情報を受信し、簡易情報に含まれるサービスIDまたは完全情報に含まれるサービスID及び送信元IDを参照して、自装置(非接触ICモジュール)によって決済処理を行うことが許可されているサービスのID及び送信元IDと一致すれば、プレ認証応答1またはプレ認証応答2をリーダライタ2に送信する。非接触ICモジュールは、受信したプレ認証要求を含む電波の受信強度を計測しており、その計測した受信強度と受信強度の閾値であるレベル1及びレベル2とを比較して、計測した受信強度が受信強度の閾値であるレベル1以上かつレベル2未満であれば(すなわち、非接触ICモジュールが点P1に位置する場合)、プレ認証応答1を送信し、計測した受信強度が受信強度の閾値であるレベル2以上であれば(すなわち、非接触ICモジュールが点P2に位置する場合)、プレ認証応答2を送信する。
【0040】
なお、プレ認証要求を構成するサブモジュールのうちの、ある簡易情報を受信した非接触ICモジュールは、その簡易情報のサービスIDに挿入されているIDが自装置(非接触ICモジュール)によって決済処理を行うことができるサービスのIDと一致しなければ、自装置(非接触ICモジュール)によって決済処理を行うことができるサービスではないと判定し、完全情報を受信するまでも無く、その簡易情報よりも後のサブフレームである簡易情報及び完全情報の受信を停止することもできる。従来、リーダライタは、ポーリング処理時に、本発明の実施の形態の完全情報に相当する情報のみによって構成されるコマンドを非接触ICモジュールへ送信し、非接触ICモジュールは、送信元ID(リーダライタのID)を含む完全情報に相当する情報に基づいて、自装置(非接触ICモジュール)が決済処理を行うことができるサービスであるかを判定していた。本発明の実施の
形態のように、リーダライタ2が簡易情報を含むプレ認証要求を非接触ICモジュールへ送信することによって、非接触ICモジュールは、送信元ID(リーダライタのID)を含まない簡易情報に相当する情報に基づいて、自装置(非接触ICモジュール)が決済処理を行うことができるサービスであるかを簡易に判定することにより、判定処理に伴う負担を軽減することができる。
【0041】
続いて、非接触ICモジュールが送信するプレ認証応答を構成するフレームについて、説明する。プレ認証応答を構成するフレームのフレームフォーマットは、図6(c)に示すように、リーダライタ2がビット同期をとるためのビット同期信号、リーダライタ2がフレーム同期をとるための応答フレーム同期信号、及び、プレ認証応答の主要データとなるID情報によって構成される。ID情報は、フレームの種別やデータ長などを特定するための制御情報を含むヘッダと、非接触ICモジュールが決済処理を行うことができるサービス(例えば、Suica(登録商標)やEdy(登録商標))を識別するためのサービスIDと、プレ認証応答を受信すべきリーダライタ2を識別するための送信先ID、プレ認証応答を送信する非接触ICモジュールを識別するための送信元IDを含んで構成される。リーダライタ2は、非接触ICモジュールが送信するプレ認証応答1またはプレ認証応答2を、上記プレ認証応答を構成するフレームにおける、ID情報のヘッダに挿入されているデータによって識別する。
【0042】
なお、上記プレ認証応答を構成するフレームにおける応答フレーム同期信号にプレ認証応答1固有のビットパターンまたはプレ認証応答2固有のビットパターンを挿入することによって、プレ認証応答を受信したリーダライタ2が、ID情報のヘッダを認識する前にその応答フレーム同期信号を参照して、そのフレームがプレ認証応答1またはプレ認証応答2であると識別するようにしてもよい。
【0043】
また、非接触ICモジュールはプレ認証応答1またはプレ認証応答2を送信する際には、全体制御部12に備えられているタイマによって、プレ認証要求の完全ID情報に続く同期補正情報で示されたTxの時間を判断し、Txの時間内に収まるように各々の非接触ICモジュールがランダムに応答タイミングを生成してプレ認証応答1またはプレ認証応答2を送信することで、各々の非接触ICモジュール同士の無線電文の衝突を回避し、リーダライタ2は複数の非接触ICモジュールからの応答を処理することが可能となる。
【0044】
リーダライタ2は、プレ認証応答1またはプレ認証応答2のいずれかを受信すると、次に説明する処理を実行する。すなわち、リーダライタ2は、受信したプレ認証応答を含む電波の受信強度を計測しており、その計測した受信強度と受信強度の閾値であるレベル1及びレベル2とを比較して、計測した受信強度が受信強度の閾値であるレベル1以上かつレベル2未満であれば、そのプレ認証応答を送信した非接触ICモジュールが図4に示す円C1の内部かつ円C2の外部に位置すると判定し、計測した受信強度が受信強度の閾値であるレベル2以上であれば、そのプレ認証応答を送信した非接触ICモジュールが図4に示す円C2の内部に位置すると判定する。または、非接触ICモジュールからプレ認証応答1またはプレ認証応答2のいずれかを受信すると、受信した応答信号に応じて、その非接触ICモジュール(非接触ICモジュールを搭載する携帯端末装置1a〜1i)が図4に示す円C1の内部かつ円C2の外部に位置する、または円C2の内部に位置すると判定するようにしてもよい。
【0045】
前者は、リーダライタ2が主体となって非接触ICモジュールの位置を計測しており、後者は、非接触ICモジュールが主体となって非接触ICモジュールの位置を計測している。非接触ICモジュールは、携帯端末装置の筐体内に搭載されることが多く、その筐体の形状によって非接触ICモジュールを取り巻く電波環境は異なる、つまり、非接触ICモジュールが受信する電波の受信強度やリーダライタ2が非接触ICモジュールから受信
する電波の受信強度が変化するため、リーダライタ2は、両方の判定結果を参照することによって、非接触ICモジュールの位置をより的確に認識することができる。
【0046】
次に、リーダライタ2が、プレ認証応答1を受信した場合のリーダライタ2による処理について説明する。リーダライタ2は、プレ認証応答1を受信すると、プレ認証応答1を構成するID情報のサービスID、送信元ID(非接触ICモジュールのID)を参照して、その非接触ICモジュールがそのサービスIDにより特定されるサービスを利用して決済することができるサービス対象であるか、あるいは、そのサービスIDにより特定されるサービスの利用が禁止されていないか(ブラックリストに登録されていないか)、などを判別する。リーダライタ2は、サービスIDにより特定されるサービスを利用可能な非接触ICモジュールのIDのリストを保持していれば、自装置(リーダライタ2)のみの処理によって、当該非接触ICモジュールがサービス対象であるか否かを判別できるが、そのリストを保持していなければ、当該非接触ICモジュールがサービス対象であるか否かをリーダライタ2の上位装置であるサーバに問い合わせ、サーバから取得した結果を基に判別する。リーダライタ2は、非接触ICモジュールがサービスIDにより特定されるサービスを利用して決済することができるサービス対象であると判別した場合、プレ認証応答1に対する応答信号であるプレ認証確認1をそのプレ認証応答1を送信した非接触ICモジュール宛てに送信するとともに(リーダライタ2は、受信したプレ認証応答のフレームフォーマットにおける送信元IDにより、プレ認証確認1の送信先である非接触ICモジュールのIDを特定することができる)、当該非接触ICモジュールのIDを記憶する。一方、非接触ICモジュールは、リーダライタ2からプレ認証確認1を受信すると、リーダライタ2によって自装置(非接触ICモジュール)がサービスIDにより特定されるサービスのサービス対象であると判別されたことを認識する。
【0047】
また、リーダライタ2は前述したように、複数の非接触ICモジュールからプレ認証応答1またはプレ認証応答2を受信する必要がある。プレ認証要求の送信間隔であるTxを、はじめは長い時間で設定してプレ認証要求を送信し、このプレ認証要求に対する応答であるプレ認証応答1またはプレ認証応答2がTx時間内に、どの程度の応答数があるかをカウントする。
【0048】
そして、このときの時間Tx内での応答カウント数が所定値以下であれば、次のプレ認証要求の完全情報フレームで指定する同期補正情報の値を小さくし、Tx時間を少し短く設定する。これは、リーダライタ2の周囲に、認証すべき非接触ICモジュールが想定よりも少ないことを意味しており、Tx時間を短くすることによってシステムの応答性をよくすることができる。
【0049】
また、時間Tx内での応答カウント数が所定値よりも多ければ、次のプレ認証要求の完全情報サブフレームで指定する同期補正情報の値を大きくし、Tx時間を長く設定する。これは、リーダライタ2の周囲に、認証すべき非接触ICモジュールが想定よりも多く存在している可能性があることを意味しており、リーダライタ2が周囲に存在している非接触ICモジュールの応答を受け切れていない可能性がある。Tx時間を長く設定することによって、リーダライタ2の周囲に存在する多数の非接触ICモジュールの応答を漏れなく受信することで、周囲状況を適切に把握することが可能となる。
【0050】
このように同期補正情報を、プレ認証要求を送信する毎に状況に合わせて変化させることにより、リーダライタ2の周囲環境に応じた適切なTx時間を設定することが可能となり、効率の良い同期補正を行うことが可能となり、柔軟なシステムを提供することができる。
【0051】
次に、リーダライタ2が、プレ認証応答2を受信した場合のリーダライタ2による処理
について説明する。リーダライタ2は、プレ認証応答2を受信すると、プレ認証応答2を構成するID情報のサービスID、送信元ID(非接触ICモジュールのID)を参照して、その非接触ICモジュールがそのサービスIDにより特定されるサービスを利用して決済することができるサービス対象であるか、あるいは、そのサービスIDにより特定されるサービスの利用が禁止されていないか(ブラックリストに登録されていないか)、などを判別する。リーダライタ2は、サービスIDにより特定されるサービスを利用可能な非接触ICモジュールのIDのリストを保持していれば、自装置(リーダライタ2)のみの処理によって、当該非接触ICモジュールがサービス対象であるか否かを判別できるが、そのリストを保持していなければ、当該非接触ICモジュールがサービス対象であるか否かをリーダライタ2の上位装置であるサーバに問い合わせ、サーバから取得した結果を基に判別する。リーダライタ2は、非接触ICモジュールがサービスIDにより特定されるサービスを利用して決済することができるサービス対象であると判別した場合、プレ認証応答2に対する応答信号であるプレ認証確認2をそのプレ認証応答2を送信した非接触ICモジュール宛てに送信するとともに(リーダライタ2は、受信したプレ認証応答のフレームフォーマットにおける送信元IDにより、プレ認証確認1の送信先である非接触ICモジュールのIDを特定することができる)、当該非接触ICモジュールのIDを記憶する。
【0052】
なお、リーダライタ2がプレ認証応答2を受信する場合、そのプレ認証応答2を送信した非接触ICモジュールは、図3に示す円C2の内部に位置していることになるが、円C2の内部に位置する前には、円C1の内部かつ円C2の外部に位置しており、既にプレ認証応答1をリーダライタ2に送信していることが考えられる。この場合、リーダライタ2は、プレ認証応答1に対してプレ認証確認1を送信した非接触ICモジュールのIDを記憶しているため、記憶しておいた非接触ICモジュールのIDと、プレ認証応答2を構成するID情報の送信元ID(非接触ICモジュールのID)と、を比較して、その非接触ICモジュールがそのサービスIDにより特定されるサービスを利用して決済することができるサービス対象であるか、あるいは、そのサービスIDにより特定されるサービスの利用が禁止されていないか(ブラックリストに登録されていないか)、などを判別するようにしてもよい。これにより、サービスを提供可能な非接触ICモジュールであるか否かを判別する処理に伴う、リーダライタ2による負担を軽減することができる。
【0053】
さらに、一度プレ認証確認1を受信した非接触ICモジュールは、リーダライタ2から受信するプレ認証要求を含む電波の受信強度がレベル2以上になるまでの期間、プレ認証要求に対してプレ認証応答1を送信しないようにしてもよい。これにより、リーダライタ2は、サービスを提供可能な非接触ICモジュールであると一度判別した非接触ICモジュールを再度、判別することがなくなるため、その判別する処理に伴うリーダライタ2による負担を軽減することができる。
【0054】
リーダライタ2は、プレ認証応答2を送信した非接触ICモジュール宛てにプレ認証確認2を送信すると、続いて、他の非接触ICモジュール宛てに、プレ認証を停止するよう要求するプレ認証停止要求を送信する。プレ認証停止要求のフレームフォーマットは、例えば、プレ認証要求のフレームフォーマットと同様のものであって、サブフレームである簡易情報及び完全情報のフレーム同期信号やヘッダの領域に、当該プレ認証停止要求に固有のビットパターンを割り当てればよい。このプレ認証停止要求を受信した非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1b〜1iに搭載される非接触ICモジュール)は、ある所定の期間、周期Tにて行うキャリアセンスを停止する。一方、プレ認証確認2を受信した非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュール)もまた、プレ認証停止要求を受信する場合が考えられるが、プレ認証確認2を受信した場合には、その後プレ認証停止要求を受信したとしてもプレ認証確認2を受信した時点から上記所定の期間キャリアセンスを継続するようにする、と取り決めておく。こう
して、プレ認証確認2を受信した非接触ICモジュールのみが、リーダライタ2から送信される本認証要求を待ち受けることになる。以後、非接触ICモジュールがプレ認証停止要求をリーダライタ2から受信するまでの期間を「プレ認証フェーズ」と称する。また、プレ認証停止要求を受信した非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1b〜1iに搭載される非接触ICモジュール)が、キャリアセンスを停止する期間のことを「プレ認証停止フェーズ」と称し、後述する、本認証要求を受信した非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュール)が決済処理を完了するまでの期間を「本認証フェーズ」と称する。
【0055】
本認証要求を受信した非接触ICモジュールは、決済処理を実行するために必要な情報(以降、決済情報と称することがある)を本認証応答に挿入してリーダライタ2に送信する。リーダライタ2は、決済情報を非接触ICモジュールから受信すると、その決済情報をリーダライタ2の上位装置へ送信し、その上位装置によって行われる決済情報チェック処理の結果を受信する。リーダライタ2は、その決済情報チェック処理の結果が適正であった場合には、以下、チャレンジアンドレスポンス方式を用いた認証を行う。すなわち、リーダライタ2は、非接触ICモジュールに記憶されている鍵情報を送信するよう要求し、非接触ICモジュールから鍵情報を受信すると、生成した乱数データを非接触ICモジュールに送信するとともに、その乱数データに対して非接触ICモジュールから受信した鍵情報によって演算を施し、その演算結果を記憶する。一方、非接触ICモジュールは、受信した乱数データに対して自装置(非接触ICモジュール)が記憶している鍵情報によって演算を施し、その演算結果をリーダライタ2に送信する。リーダライタ2は、先に演算し記憶しておいた演算結果と、非接触ICモジュールから受信した演算結果と、を比較し、一致する場合には、当該非接触ICモジュールが適正なものであると認証する。なお、本明細書では、認証フェーズにおけるチャレンジアンドレスポンス方式を採用した認証と、プレ認証フェーズにおけるプレ認証要求を用いた認証とを区別するために、前者を「本認証」、後者を「プレ認証」と称する。
【0056】
その後、リーダライタ2は、本認証を行ってセッションを確立した後、データ読み出し要求を送信して非接触ICモジュールから決済処理に必要なデータを受信するとともに、その受信したデータを上位装置に送信し、そのデータを基に所定の演算を行う上位装置から受信した演算結果に応じて、データ書き込み要求を非接触ICモジュールに送信し、非接触ICモジュールに決済処理に必要なデータの書き込みを行わせる。データ書き込み要求をリーダライタ2から受信した非接触ICモジュールは、その要求に応じたデータの書き込みを行い、その書き込みが正常に終了した場合には書き込み完了通知をリーダライタ2に送信する。本認証フェーズは、本認証及びデータ読み出し、データ書き込みの一連の処理をもって終了する。
【0057】
リーダライタ2は、非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュール)から書き込み完了通知を受信する、または、その書き込み完了通知を受信する前に、プレ認証停止要求を送信してから所定の期間が経過する(つまり、本認証またはデータ読み出し、データ書き込みに失敗する)、と、プレ認証要求の送信を開始する。これにより、このプレ認証停止要求を受信してプレ認証停止フェーズに遷移していた非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1b〜1iに搭載される非接触ICモジュール)は、再度、プレ認証フェーズに遷移する。なお、リーダライタ2が本認証フェーズを終了したあとすぐにプレ認証要求の送信を開始すると、本認証フェーズを終了した非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュール)がプレ認証フェーズから再度本認証フェーズに遷移してしまい、一度のサービスの利用に対して二度の決済処理が発生してしまうことが考えられる。これを防ぐために、リーダライタ2は、非接触ICモジュール(図4では、携帯端末装置1aに搭載される非接触ICモジュール)との決済処理が終了してから所定時間が経過することを待って、プレ認
証要求の送信を開始するようにすればよい。また、決済処理を終了した非接触ICモジュールが、決済処理が終了してから所定時間が経過するまでは、プレ認証要求をリーダライタ2から受信しても応答を返さないようにすることによって、一度のサービスの利用に対して二度の決済処理が発生してしまうことを抑制することができる。さらに、決済処理が終了してから所定時間が経過した後、同じ非接触ICモジュールが連続して本認証フェーズに遷移する可能性が残るが、同じ非接触ICモジュールが連続して本認証フェーズに遷移したことを判別できるリーダライタ2が、リーダライタ2の操作者に対してブザーやLEDなどによって、一度のサービスの利用に対して二度の決済処理が発生していることを報知するようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態の非接触ICモジュール及びリーダライタによれば、リーダライタは、プレ認証フェーズにてリーダライタによるサービスを提供可能な非接触ICモジュールを簡易的に認証し、本認証フェーズにて決済処理を行おうとする利用者が所持する非接触ICモジュール、つまり、リーダライタから所定の距離よりも近い場所に位置する非接触ICモジュール一台とのみ、高い安全性が求められる認証を行い、各フェーズの認証に成功した非接触ICモジュールのみが決済処理を実行することができる。
【0059】
さらに、プレ認証要求に含まれるサブフレームである完全情報に同期補正情報が含まれることにより、リーダライタは常に周囲環境の状況変化を捉えることが可能となり、状況に応じた適切な設定でプレ認証要求を送信することができる。その結果、複数の非接触ICモジュールを効率的に処理することができ、効率の良いシステムを提供することが可能となる。
【0060】
このため、遠隔型の非接触ICモジュールとリーダライタによって実施されるシステムであっても、同時期に複数台の非接触ICモジュールと行う認証は簡易な処理である一方、高い安全性が求められる認証を行う非接触ICモジュールは一台に限られるため、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減することができる。
【0061】
また、遠隔型の非接触ICモジュールとリーダライタによって実施されるシステムであっても、本認証を行わせるリーダライタと非接触ICモジュールの距離を適宜設定することによって、複数枚の非接触ICモジュールのうちの、決済処理を行う必要のある非接触ICカードを特定し、利用者が意図しない決済処理が行われることを防ぐことができる。
【0062】
また、従来、決済処理時に、本発明の実施の形態で説明したところのプレ認証と本認証を行っていたが、本発明の実施の形態では、リーダライタは、任意の非接触ICモジュールに対して当該非接触ICモジュールが後で決済処理を行う行わないに関わらず決済処理前にプレ認証を行っておき、決済処理を行う時に決済処理の対象となる非接触ICモジュールに対して本認証のみを行う構成であるため、決済処理時に要する時間を、プレ認証を行わないで済む分短縮することができる。
【0063】
また、本発明の実施の形態で説明したプレ認証を実施するために、リーダライタと非接触ICモジュールにて送受信されるデータは少量で済むため、遠隔型の非接触ICモジュールとリーダライタによって実施されるシステムに利用されることが考えられる特定小電力無線にとって、本発明の非接触ICモジュール及びリーダライタは極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上、本発明の非接触ICモジュール、携帯端末装置、及びリーダライタによれば、リーダライタと遠隔型の非接触ICカードとの間で無線通信を行わせる場合に、複数枚の非接触ICカードとの間での認証処理に伴って生じるリーダライタの負担を軽減させるとと
もに、認証処理を行う必要のある非接触ICカードとのみ認証処理を行うことができるという効果を奏し、リーダライタとの間で非接触型の無線通信を利用して情報の送受信を行う非接触ICモジュール、及びそのリーダライタに関する分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態の非接触ICモジュールの構成図
【図2】本発明の実施の形態のリーダライタの構成図
【図3】本発明の実施の形態の携帯端末装置とリーダライタの位置関係の一例を示す図
【図4】本発明の実施の形態の携帯端末装置とリーダライタの間での認証処理シーケンス図
【図5】本発明の実施の形態におけるプレ認証要求とプレ認証応答を送受信するタイミングを説明する図
【図6】本発明の実施の形態におけるプレ認証要求とプレ認証応答のフレームフォーマットを説明する図
【符号の説明】
【0066】
A、1a〜1i 非接触ICモジュール
11 復調処理部
12 全体制御部
13 メモリ
14 変調処理部
15 アンテナ
B、2 リーダライタ
21 全体制御部
22 通信制御部
23 メモリ
24 変調処理部
25 搬送波発振器
26 サーキュレータ
27 復調処理部
28 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の送受信を行う無線部と、
前記無線部による非接触ICモジュールとの無線通信を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記無線部により前記非接触ICモジュールから受信する電波の受信強度が第1の閾値未満かつ前記第1の閾値よりも値が小さい第2の閾値以上である場合に、前記非接触ICモジュールとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を行い、
前記無線部により前記非接触ICモジュールから受信する電波の受信強度が前記第1の閾値以上である場合に、前記非接触ICモジュールとの間で行うべき認証処理のうちの、前記第1の認証処理を除く、第2の認証処理を行い、
前記無線部により前記非接触ICモジュールに対して送信する電波に、前記非接触ICモジュールが送信するタイミングを計るための同期補正情報を含むリーダライタ。
【請求項2】
制御部は、無線部により複数の非接触ICモジュールからの応答を受信できる受信数によって同期補正情報の内容を変更する請求項2記載のリーダライタ。
【請求項3】
制御部は、非接触ICモジュールの応答数が所定値よりも少ない場合に、同期補正情報で示される時間値を小さくする請求項2記載のリーダライタ。
【請求項4】
制御部は、非接触ICモジュールの応答数が所定値よりも多い場合に、同期補正情報で示される時間値を大きくする請求項2記載のリーダライタ。
【請求項5】
電波の送受信を行う無線部と、
前記無線部によるリーダライタとの無線通信を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記無線部により前記リーダライタから受信する電波の受信強度が第1の閾値未満、かつ前記第1の閾値よりも値が小さい第2の閾値以上である場合に、前記リーダライタとの間で行うべき認証処理のうちの第1の認証処理を行い、
前記無線部により前記リーダライタから受信する電波の受信強度が前記第1の閾値以上である場合に、前記リーダライタとの間で行うべき認証処理のうちの前記第1の認証処理を除く第2の認証処理を行い、
前記無線部により前記リーダライタから受信する電波に含まれる同期補正情報に基づき前記リーダライタに対して送信する電波の送信タイミングを変化させる非接触ICモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−277172(P2009−277172A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130425(P2008−130425)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】