説明

リード線の癖取り装置

【課題】 冬場のような低温環境下に置かれるような場合にあっても、リード線に付いてしまった巻き癖を好ましく取り除くことができるリード線の癖取り装置を提供する。
【解決手段】 巻取ボビン100に巻き取られたリード線Wの癖を除去するリード線の癖取り装置であって、前記リード線Wを引き出し可能に巻き取る巻取ボビン100を収容するボビン収容筐体10と、一側端部が開口されると共に、内部が前記ボビン収容筐体内部10aと一体となるように中空を形成して前記リード線Wの癖を除去可能なレベラLが内蔵されるリード線ガイド筒部30と、ヒータ55と、該ヒータ55の近傍に設けられて前記ボビン収容筐体内部10に送風可能なファン56bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線の癖取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子回路間において電気的な接続を目的に配されるリード線にあっては、通電可能な導線の周囲を、電気絶縁性を有する樹脂によって被覆されるものが広く用いられている。前記リード線が電子回路間で配される際は、そのリード線の端部は適宜な処理がなされる。すなわち、リード線の端部の絶縁被覆を除去して、通電可能な導線を露出させ、その導線を接続箇所に合わせた形状に変形させる等の処理がなされる。このようなリード線の端部の処理は、引き出し可能に巻き取る巻取ボビンに巻き取られた(特許文献1参照)長尺のリード線を、その巻取ボビンから引き出して所望の長さに切断し、上述した各種の処理がなされるものであった。
【0003】
一方、巻取ボビンに巻き取られた長尺のリード線は、その巻取ボビンに巻かれた状態で保管される。そのため、その長尺のリード線にあっては、その巻取ボビンから引き出した場合、その巻取ボビンに巻き取られたままの形状、すなわち癖(以下、巻き癖と言う。)が付いたものとなってしまっていた。このリード線の巻き癖は、リード線の軸線を絶縁被覆する樹脂の特性によるものである。一般に、前記リード線の軸線を絶縁被覆する樹脂は、温度が所定温度より高くなった場合には軟らかくなり、所定温度より低くなった場合には硬くなる傾向にある。つまり、夏場のような暖かい環境下にあっては、樹脂は軟らかくなるので、リード線に付いた巻き癖は取れ易いものとなる。しかしながら、冬場のような寒い環境下にあっては、樹脂は硬くなってしまい、上述した巻き癖は、なかなか取れ難いものとなってしまっていた。
【0004】
上述したような、リード線に巻き癖が付いてしまった状態で、リード線の端部処理を行おうとすれば、その巻き癖による曲がりによって、リード線の位置決めし難くなって端部処理が行い難くなってしまう不具合が生じていた。
【特許文献1】特開平9−175738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、引き出し可能に巻き取る巻取ボビンに巻き取られた長尺のリード線の巻き癖を除去するリード線の癖取り装置であって、例えば、冬場のような低温環境下に置かれるような場合にあっても、リード線に付いてしまった巻き癖を好ましく取り除くことができるリード線の癖取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の手段のリード線の癖取り装置を提供する。
すなわち、請求項1に係る発明は、巻取ボビンに巻き取られたリード線の癖を除去するリード線の癖取り装置であって、前記リード線を引き出し可能に巻き取る巻取ボビンを収容するボビン収容筐体と、一端が前記リード線の送出し口となるように開口されると共に、他端が前記ボビン収容筐体と連通するように中空が形成され、該中空には前記リード線の癖を除去可能なレベラが内蔵されるリード線ガイド筒部と、ヒータと、該ヒータの近傍に設けられて前記ボビン収容筐体内部に送風可能なファンとを備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係るリード線の癖取り装置にあっては、ヒータの近傍に設けられたファンによって送られる空気は、該ヒータによって温められて温風となり、ボビン収容筐体内部に送られる。そして、ボビン収容筐体内部は、その温風によって温められる。また同時に、その温風は、ボビン収容筐体内部と一体となるように中空が形成されるリード線ガイド筒部内部にまで送られ、その温風によってリード線ガイド筒部内部も温められる。ここで、前記ボビン収容筐体には、リード線を引き出し可能に巻き取る巻取ボビンが収容される。すなわち、この巻取ボビンに巻き取られたリード線は、この温風によって温められることとなる。また、そのリード線が、前記リード線ガイド筒部先端に引き出される場合にあっても、その内部に送られる温風によって、リード線は温められることとなる。
【0008】
従って、リード線は、その温風によって温められることとなって、軟らかくなる。これによって、リード線ガイド筒部内に設けられた、リード線の癖を除去するレベラによって、前記リード線の癖を除去するに際して、好適にリード線の巻取り癖が除去されることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のリード線の癖取り装置において、前記リード線ガイド筒部を、重力方向斜めに設けることを特徴とする。
【0010】
この発明に係るリード線の癖取り装置にあっては、リード線ガイド筒部が重力方向斜めに設けられることによって、内部に設けられるレベラも重力方向斜めに設けられることとなる。この場合、前記リード線は、前記巻取ボビンからリード線ガイド筒部先端まで引き出され、さらにこの装置の外部に送り出されるが、その送り出されるリード線は、そのリード線ガイド筒部が設けられる方向と同様な方向で送り出されることとなる。つまり、送り出されたリード線は、その送り出される方向に所望の処理装置を設けておけば、そのリード線を他の物体に接触されること無く、その所望の処理装置にリード線を供給することができる。
従って、送り出されたリード線は、他の物体に接触することによって新たな癖が付いてしまうことなく、処理に好適な状態で処理装置に供給される。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のリード線の癖取り装置において、前記ボビン収容筐体内に、前記巻取ボビンとは別に予備巻取ボビンを収容する予備巻取ボビン収容部を設けることを特徴とする。
【0012】
この発明に係るリード線の癖取り装置にあっては、上述したように、ボビン収容筐体内は、その内部に送られる温風によって温められることとなる。ところで、このボビン収容筐体内部には、巻取ボビンから巻き取られたリード線を引き出しているが、これとは別の、予備のリード線が巻き取られた巻取ボビンが、予備巻取ボビン収容部に収容される。
従って、現在、リード線が引き出される巻取ボビンのリード線が無くなってしまった場合に、この巻取ボビンに換え、この予備巻取ボビン収容部に収容された巻取ボビンをセットすれば、既に温められているため、すぐに好適にリード線を引き出して癖取りを行うことができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のリード線の癖取り装置において、癖が除去された前記リード線の、リード線送出し口から送り出された長さを検出するリード線長さ検出器と、前記リード線送出し口から送り出すリード線引張機と、前記リード線長さ検出器によって検出されるリード線の長さに応じて、前記リード線引張機が、前記巻取ボビンから前記リード線を引出すリード線引張速度を変更する制御器とを備えることを特徴とする。
【0014】
この発明に係るリード線の癖取り装置にあっては、例えば、所望の処理装置によって前記リード線が処理される速度が遅く、このリード線の癖取り装置から送り出されるリード線の送り出し速度が速い場合には、前記リード線の癖取り装置と所望の処理装置との間の、送り出されたリード線は、徐々に長くなっていき、ひいては長くなり過ぎることによって、リード線が地面に接してしまう場合がある。仮に、リード線が地面に接してしまうと、その接触によって、癖取りされたリード線に新たな癖がついてしまう問題が生ずる。加えて、地面は埃等が散乱しており、この埃等がリード線に付着して汚してしまうと商品として具合が悪い。
【0015】
また逆に、所望の処理装置によって前記リード線が処理される速度が速く、このリード線の癖取り装置から送り出されるリード線の送り出し速度が遅い場合には、前記リード線の癖取り装置と所望の処理装置との間の、送り出されたリード線は、徐々に短くなってゆき、ひいては短くなり過ぎることによって、リード線にテンションが発生し、そのテンションによって、癖取りされたリード線に、新たな癖が付いてしまう問題が生ずる。
【0016】
リード線の長さ検出器が、癖取り装置から送り出される長さが、予め定めた長さより長いと検出した場合には、制御器は、リード線引張機が巻取ボビンからリード線を引出すリード線引張速度を、遅くするように制御する。また、これとは逆に、リード線の長さ検出器が、癖取り装置から送り出される長さを予め定めた長さより短いと検出した場合には、制御器は、リード線引張機に、巻取ボビンからリード線を引出すリード線引張速度を速くするように制御する。
【0017】
従って、上述したリード線にあっては、前記リード線の癖取り装置と所望の処理装置との間の、送り出されたリード線の長さを適当の長さに保つことができて、癖取りされたリード線に新たな癖をつけてしまうことが防止される。また、リード線が地面と接触して汚れてしまうことも防止される。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るリード線の癖取り装置によれば、例えば、冬場のような低温環境下に置かれるような場合にあっても、リード線に付いてしまった巻き癖を好ましく取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るリード線の癖取り装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図1は本発明に係るリード線の癖取り装置の全体正面図、図2は図1に示すリード線の癖取り装置の要部を示す拡大正面図、図3は図2に示すリード線の癖取り装置の上面断面図、さらに、図4は図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するボビン収容筐体の拡大図、図5は図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するリード線ガイド筒部の拡大図、図6は図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するヒータ器の拡大図、そして、図7は図1に示すリード線の癖取り装置に検出器を設けた実施形態を示す図、図8は図7に示す検出器の要部拡大図である。
【0020】
図1及び図2に示すリード線癖取り装置1は、大まかに分けて、リード線Wを引き出し可能に巻き取る巻取ボビン100及び予備巻取ボビン105を内部に収容可能に、重力方向縦長の筐体で構成されるボビン収容筐体10と、前記ボビン収容筐体10の垂直方向の側面に設けられるリード線ガイド筒部30と、前記リード線ガイド筒部30とは前記ボビン収容筐体10を挟んで対向した側に設けられるヒータ装置50とから構成されている。さらに、上述したボビン収容筐体10は、垂直方向に伸びる架台61の上方に取り付けられ、該架台61の下方には、架台載置台62を介して複数のキャスタ63が取り付けられる。従って、このリード線癖取り装置1自体は、地面G上を適宜に移動可能に構成されたものとなっている。なお、前記巻取ボビン100,105は、前記リード線Wを該巻取ボビン100,105の断面周方向に巻き取るボビンであって、前記リード線Wの引出し方向に垂直となる方向に、後に詳述する上軸体72及び下軸体73と嵌合可能な中心軸孔101,106が設けられている。
【0021】
次に、このリード線癖取り装置1を構成する各部分、すなわち、ボビン収容筐体10と、前記リード線ガイド筒部30と、前記ヒータ装置50とを、分割して図3に示す上面図及び前記癖取り装置の各部分を示す図4、図5、図6を参照して説明する。
前記ボビン収容筐体10は、上面11及び下面12を設けると共に、4つの部材から構成される各側壁面13,14,15,16が囲うように設けられて、重力方向縦長の直方体形状の金属からなる筐体で構成されている。すなわち、前記各側壁面13,14,15,16を構成する4つの側壁面を構成する部材は、図3に示す上面図及び図4に示す正面図からも分かるように、大まかにその位置関係から説明すると、図3において左方(図4でも左方)に位置する筒部取付側壁面13と、その筒部取付側壁面13と対向して図3において右方(図4でも右方)に位置するヒータ取付側壁面14と、図3において上方(図4では隠れた裏側方)に位置する架台取付側壁面15と、図3において下方(図4においては手前側方)に位置する側壁面(以下、開閉扉とも称する場合もある。)16とから構成されたものとなっている。
【0022】
前記筒部取付側壁面13は、その外方に、後に詳述するレベラL等が内蔵される前記リード線ガイド筒部30が設けられる側壁面である。すなわち、前記筒部取付側壁面13の上部には開口された開口穴31が設けられ、該開口穴31とリード線ガイド筒部30の開口部32とが合わさるように、該リード線ガイド筒部30が重力方向斜めに設けられている。従って、前記ボビン収容筐体10の内部10aと前記リード線ガイド筒部30の内部30aとは、中空を一体に構成されたものとなっている。
【0023】
前記ヒータ取付側壁面14は、その外方に、ヒータ55及びファン56bが内蔵されたヒータ装置50が設けられる側壁面である。すなわち、前記ヒータ取付側壁面14の中央には、開口穴51が設けられ、該開口穴51とヒータ装置50の開口部52とが合わさるようにヒータ装置50が設けられる。従って、前記ボビン収容筐体10の内部10aと前記ヒータ装置50の内部50aとは、その内部の中空を一体に構成される。従って、後にも説明するが、前記ヒータ装置50によって温められた空気は、前記ボビン収容筐体10の内部10a及び前記リード線ガイド筒部30の内部30aに流出入可能に構成されることとなる。
【0024】
前記架台取付側壁面15は、その外方に、上述した架台61が取り付けられると共に後にも説明するが、レベラL及びボビン100を回転させるための駆動装置70が設けられる側壁面である。前記駆動装置70には、図示されない電動モータが内蔵されるモータボックス71を備える。
【0025】
また、開閉扉16は、前記ヒータ取付側壁面14側方の端部が、前記ヒータ取付側壁面14の端部に二つのヒンジ17a,17bを介して取り付けられる側壁面である。また、前記開閉扉16は、逆側の筒部取付側壁面13の端部には磁石部18a,18bを設けて、前記筒部取付側壁面13から、このボビン収容筐体10の内方10aに突出して形成される接着突出部13a,13bに、その磁力によって着脱可能に構成されている。なお、前記開閉扉16には、前記ヒンジ17a,17bが設けられる反対側方(筒部取付側壁面13側方)に、手で掴むことが可能な取手19が手前側方に突出するように設けられている。
【0026】
つまり、前記開閉扉16は、前記取手19を、図2及び図4において手前側方に引っ張った場合、前記ヒンジ17a,17bを回転軸に回転可能にされる。これによって、前記ボビン収容筐体内部の開け閉め可能としている。なお、通常においては、前記磁石18a、18bと前記接着突出部13a,13bにくっついて、前記開閉扉16は閉じた状態となって筐体が構成されるが、内部のボビン100,105等を適宜に変更したい場合に、前記ボビン収容筐体10を、前記開閉扉16によって開けることができるものとなっている。
【0027】
前記ボビン収容筐体10は、上述した筒部取付側壁面13、ヒータ取付側壁面14、架台取付側壁面15、開閉扉16、上面11及び下面12によって筐体で構成される。このように構成されたボビン収容筐体10の内部10aは、前記巻取ボビン100,105の中心軸孔101,106に嵌合可能な上軸体72及び下軸体73が、前記架台取付側壁面15に上下に突出して設けられる。なお、前記上軸体72は、前記架台取付側壁面15を貫通して前記駆動装置70の回転部材74と係合されている。
【0028】
次に、前記筒部取付側壁面13の外方に設けられるリード線ガイド筒部30について説明する。前記リード線ガイド筒部30は、図2及び図5に示すように、中空とされる部分の断面が正方形に形成されると共に、一端は開口した開口部32として形成され、上述した筒部取付側壁面13の開口穴31を塞ぐように合わされている。また、他端も開口して、リード線を送出し可能とするリード線送出し口33として構成される。そして、前記リード線ガイド筒部30の中空内部30aには、前記巻取ボビン100,105から引き出されたリード線Wを真っ直ぐにするための公知のレベラLが内蔵されている。このレベラLは、広く一般に用いられるレベラであり、前記リード線Wに対して上下方向及び左右方向に、回転可能なローラ状のリード線押圧部材34aが、その軸線を平行にして千鳥状に複数配置される。そして、前記押圧部材34aの押圧力を適宜変更する付勢ネジ34bが、前記押圧部材34aの軸線に対して垂直となる方向に設けられている。
【0029】
前記リード線ガイド筒部30にあっても、その筒部の側壁面を形成する一部の側壁面が、上述したボビン収容筐体10の開閉扉16と同様に構成される。すなわち、図5に示す手前側の側壁面を構成する筒開閉扉36は、側壁面35の端部に設けられたヒンジ37a,37bを介して、回転可能に設けられている。加えて、前記筒開閉扉36の内方には磁石部38a,38bが設けられて、前記筒部取付側壁面39の端部突出部40に接着可能に構成されている。これによって、筒開閉扉36は、その内部を適宜に変更できるように、開け閉め可能とされている。
【0030】
そして、前記リード線ガイド筒部30は、その開口端が前記筒部取付側壁面13に設けられる開口穴31を覆うように、前記筒部取付側壁面13に重力方向斜めに設けられる。すなわち、前記ボビン収容筐体10の内部と、このリード線ガイド筒部30の内部とは、その中空が一体となって構成されることとなって、前記ボビン収容筐体10の内部の空気とリード線ガイド筒部30の内部の空気は、互いに流出入可能なものとなる。
【0031】
前記リード線ガイド筒部30のリード線送出し口33の近傍には、リード線Wを引張するリード線引張機Rが設けられている。すなわち、前記リード線引張機Rは、回転可能二つの第一ローラ部材R1及び第二ローラ部材R2が設けられ、さらに、これらローラ部材R1,R2を互いに接近離間させる押圧ネジR3が設けられる。つまり、前記押圧ネジR3は、前記第一ローラ部材R1及び第二ローラ部材R2を接近させて、これらローラ部材R1,R2の間に配されるリード線Wを好適に押圧して挟持する。また、前記第一ローラ部材R1は、上述した駆動装置70と連結帯R4及び連結回転体R5を介して連結される。つまり、前記駆動装置70の回転力は、前記連結帯R4及び連結回転体R5を介して第一ローラ部材R1に伝達されることとなって、前記第一ローラ部材R1は回転する。そして、前記第一ローラ部材R1及び第二ローラ部材R2によって挟持されたリード線Wは、その回転によって引っ張り出され、前記リード線送出し口33から送り出されることとなる。
【0032】
次に、前記架台取付側壁面15の外方に設けられる駆動装置70について説明する。前記駆動装置70は、上述したように、電動モータが内蔵されるモータボックス71を備え、該電動モータによる回転駆動力を、連結帯74を介して、前記巻取ボビン100の中心軸孔101に嵌合して軸支する上軸体72と係合する回転部材75に伝達するように構成される。さらに、前記回転部材75は、前記連結帯R4及び連結回転体R5を介して前記第一ローラ部材R1に、その回転が伝達される。
【0033】
前記駆動装置70にあっては、前記巻取ボビン100を回転させる前記回転部材75の回転速度と前記第一ローラ部材R1の回転速度とにおいて適宜な調節がなされるように、前記第一ローラ部材R1には、図示されない、連結帯スベリ機構が設けられている。すなわち、前記巻取ボビン100に巻き取られたリード線Wは、その送り出されたリード線Wの長さに従って、巻き取られたリード線の径が小さくなる。これによって、前記巻取ボビン100が1回転するにあたって送出されるリード線Wの長さは短くなる。従って、前記連結帯スベリ機構によって連結帯R4を前記第一ローラ部材R1から滑らせて、前記リード線引張機Rのリード線W引張スピードと、前記前記回転部材75のリード線Wの送出しスピードとを、適宜に調節して適当なものとしている。
【0034】
次に、前記ヒータ取付側壁面14の外方に設けられるヒータ装置50について説明する。このヒータ装置50は、内部に電気ヒータ55が設けられると共に、該ヒータ装置50の開口部52とは対向する外側面53の中央辺りに、外部と連通されるガラリ56aが設けられる。そして、前記ガラリ56aの内方には、ボビン収容筐体10の内部10aに送風可能なファン56bが設けられる。すなわち、前記ガラリ56aと前記リード線送出し口33とが、外部と連通するように開口される。すなわち、前記ガラリ56aが、このリード線癖取り装置1の空気の流入口となり、前記リード線ガイド筒部30のリード線送出し口33が空気の流出口となる。
【0035】
以上のように構成されたリード線癖取り装置1にあっては、ヒータ55の近傍に設けられたファン56bによって送られる空気が、該ヒータ55によって温められて温風にされ、前記ボビン収容筐体10の内部10aに送られることとなる。温風は、ボビン収容筐体内部10aを温めるばかりか、そのボビン収容筐体10の内部10aに設けられる巻取ボビン100,105に巻き取られたリード線Wの樹脂も温めることとなる。つまり、リード線Wの絶縁被覆を形成する樹脂は、その温風によって軟らかくされ、付いてしまった巻き癖が取れ易くされる状態となる。加えて、次に引き出される予備ボビン105に巻き取られたリード線は、その温風によって温められる。つまり、現在、引き出されている巻取ボビン100のリード線の引き出しが終わった直後でも、次のリードの樹脂は温められてあるため、癖が取れ易くされる軟らかい状態となっている。これによって、巻取ボビン100からリード線が引き出し終わっても、連続的に、次のリード線の引き出しが行える。
【0036】
また、ヒータ装置50によって送られる温風は、上述したボビン収容筐体10の内部10aを温めた後に、ボビン収容筐体内部10aと一体となるように中空が形成されるリード線ガイド筒部内部30aに送られることとなる。そして、その温風は、前記リード線ガイド筒部30の内部30aも温めて、前記リード線ガイド筒部30のリード線送出し口33から外部に排気される。なお、前記リード線ガイド筒部30の内部30aにあっては、その内部30aに装置されるレベラLによって、リード線Wの巻き癖は除去される。
【0037】
つまり、前記リード線Wは、前記レベラLによって巻き癖が除去されるまで、前記ヒータ装置による温風によって温められる。これによって、前記リード線Wの絶縁被覆を形成する樹脂を軟らかい状態にして、巻き癖が好適に除去されるものとする。加えて、前記リード線ガイド筒部30は、ボビン収容筐体10に対して重力方向斜めに設けられるように構成されるため、この斜めに向かう方向をリード線処理装置に向ければ、巻き癖が除去されたリード線Wに無駄なテンションをかけず、また、新たな癖が付き難い状態を維持しながら、リード線処理装置に供給されることとなる。
【0038】
さらに、このリード線癖取り装置1にあっては、次のリード線Wを引き出す予備の巻取ボビン105を、前記ボビン収容筐体10に収容可能に構成したため、この予備の巻取ボビン105に巻き取られたリード線Wの絶縁被覆を形成する樹脂も温める。従って、絶縁被覆を形成する樹脂は温められて、リード線Wに付着した巻き癖が、好適にレベラLで除去され易い状態となっている。従って、現在、引き出されている巻取ボビン100のリード線Wが引き出され終わった後にあっても、この予備の巻取ボビン105を前記上軸体72にセットすれば、すぐに前記リード線処理装置にリード線Wを供給できることとなる。
【0039】
次に、前記リード線癖取り装置についての別の実施の形態について説明する。
すなわち、前記リード線癖取り装置1にあっては、適宜の送出し長さ検出器80を設けて、前記リード線送出し口33から送り出されたリード線Wの送出しスピードを調節可能に構成してもよい。すなわち、図示されないが、前記リード線送出し口33側方に設けられるリード線Wの端部等を処理するリード線処理装置と、前記リード線癖取り装置1との間に、前記リード線送出し口33から送り出されたリード線Wの送出し長さを検出する送出し長さ検出器80を、該リード線送出し口33側方に設けて、前記リード線癖取り装置1Aを構成してもよい。なお、上述したリード線癖取り装置1と同様に構成される部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
すなわち、図7に示すリード線癖取り装置1Aにあっては、前記リード線送出し口33から巻き癖が除去されて送り出されるリード線Wは、その後に、物体に接触したりすることによって新たな癖が付かないように、図7に示すように、ごく自然に垂らされてリード線処理装置に供給される。ここで、リード線癖取り装置1と、前記リード線処理装置との間には、図示するような送出し長さ検出器80が設けられる。
【0041】
前記リード線長さ検出器80は、図8の拡大図に示されるように、重力方向に長尺に構成された基台81に、その基台の長手方向に溝82が設けられる。前記溝82には、長手方向、つまり重力方向の上下に滑らかに移動可能な検出部材83が、支持力を受けない状態で前記溝82に設けられている。前記検出部材83には、下向き凸に滑らかに湾曲した板状のリード線当接部84が設けられている。そして、前記リード線当接部84は、上述したように、ごく自然に垂らされたリード線Wの上方に位置して、該リード線Wが下方から前記リード線当接部84を上方に引っ張り上げるように当接して配置される。つまり、前記検出部材83は、前記リード線Wに乗っているように支持される。そして、前記リード線Wの長さによって、前記検出部材83の支持される位置まで滑らかに移動するものとなっている。また、前記リード線長さ検出器80は、前記溝82内に設けられた、図示されない位置検出器によって、前記検出部材83の位置が検出される。そして、その検出された位置に基づいて、前記リード線Wの垂らされている長さが認識されるように構成される。つまり、前記検出部材83が下方に位置する場合には、前記リード線Wの長さは長いものと認識され、また逆に、前記検出部材83が上方に位置する場合には、前記リード線Wの長さは短いものと認識される。なお、前記位置検出器による検出部材83の位置検出は、該検出部材83が所定位置に位置された場合に検出されるように構成されている。
【0042】
具体的には、前記リード線送出し口33からリード線Wが早く送り出され、且つリード線処理装置によるリード線Wの端末等の処理が遅い場合には、リード線送出し口33から送り出された前記リード線癖取り装置1とリード線処理装置との間の、リード線Wの垂らされる長さは長くなる。つまり、前記リード線Wは、より撓んだようになる。これによって、前記リード線Wに当接する検出部材83も、その撓みに合わせて下方に滑らかに移動する。そして、前記検出部材83が所定位置まで移動した場合に、前記位置検出器によって位置が検出されることとなって、前記リード線が長く撓んでいることを認識する。
【0043】
また逆に、前記リード線送出し口33からリード線Wが遅く送り出され、且つリード線処理装置によるリード線Wの端末等の処理が早い場合には、リード線送出し口33から送り出された前記リード線癖取り装置1とリード線処理装置との間の、リード線Wの垂らされる長さは短くなる。つまり、前記リード線Wは、より張ったようになる。これによって、前記リード線Wに当接する検出部材83も、その張りに合わせて上方に滑らかに移動する。そして、前記検出部材83が所定位置まで移動した場合に、前記位置検出器によって位置が検出されることとなって、前記リード線が長く撓んでいることを認識する。
【0044】
上述のように、送り出されたリード線Wの長さが認識された場合には、その認識に基づいて、前記リード線長さ検出器80に内蔵される図示されない制御器は、前記駆動装置70の駆動を制御する。すなわち、認識されたリード線Wの長さが長いと認識された場合にあっては、前記制御器は、前記駆動装置70の駆動、つまり、巻取ボビン100を回転させるための回転部材75及び前記リード線Wを引張する第一ローラ部材R1を回転させるための前記モータボックス71に内蔵される電動モータの回転を、遅くするように制御する。なお、前記位置検出器による前記検出部材83の検出は、前記検出部材83が所定位置に位置された場合に位置検出器による検出が行われるように構成されている。
【0045】
このように前記リード線癖取り装置1Aが制御されることによって、リード線送出し口33から送り出された前記リード線癖取り装置1とリード線処理装置との間の、リード線Wの垂らされる長さは、長くなるようにされる。つまり、垂らされるリード線のテンションは緩められるようにされる。従って、送り出されたリード線Wにテンションが加わり過ぎないものとなって、該リード線Wに新たな癖が着いてしまったりすること等を防止する。
【0046】
これに比して、認識されたリード線Wの長さが短いと認識された場合にあっては、前記制御器は、前記駆動装置70の駆動、つまり、巻取ボビン100を回転させるための回転部材75及び前記リード線Wを引張する第一ローラ部材R1を回転させるための前記モータボックス71に内蔵される電動モータの回転を、早くするように制御する。
【0047】
前記リード線癖取り装置1Aが制御されることによって、リード線送出し口33から送り出された前記リード線癖取り装置1とリード線処理装置との間の、リード線Wの垂らされる長さは、短くなるようにされる。つまり、垂らされるリード線Wのテンションは高められるようにされる。従って、送り出されたリード線Wが緩められ過ぎて、該リード線Wが床に着いてしまって汚れてしまったり、該リード線Wに新たに癖が着いてしまったりすること等を防止する。
【0048】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜の選択が可能である。
例えば、上述したレベラにあっては、回転可能ローラ状のリード線押圧部材が千鳥状に配置されるもので構成されたが、これに限定されず、リード線を真っ直ぐすることが可能なレベラであれば代替可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るリード線の癖取り装置の全体正面図である。
【図2】図1に示すリード線の癖取り装置の要部を示す拡大正面図である。
【図3】図2に示すリード線の癖取り装置の上面断面図である。
【図4】図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するボビン収容筐体の拡大図である。
【図5】図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するリード線ガイド筒部の拡大図である。
【図6】図2に示すリード線の癖取り装置の一部を構成するヒータ器の拡大図である。
【図7】図1に示すリード線の癖取り装置に検出器を設けた実施形態を示す図である。
【図8】図7に示す検出器の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0050】
1 リード線の癖取り装置
10 ボビン収容筐体
10a ボビン収容筐体内部
30 リード線ガイド筒部
55 ヒータ
56b ファン
100 巻取ボビン
W リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取ボビンに巻き取られたリード線の癖を除去するリード線の癖取り装置であって、
前記リード線を引き出し可能に巻き取る巻取ボビンを収容するボビン収容筐体と、
一端が前記リード線の送出し口となるように開口されると共に、他端が前記ボビン収容筐体と連通するように中空が形成され、該中空には前記リード線の癖を除去可能なレベラが内蔵されるリード線ガイド筒部と、
ヒータと、該ヒータの近傍に設けられて前記ボビン収容筐体内部に送風可能なファンとを備えたことを特徴とするリード線の癖取り装置。
【請求項2】
前記リード線ガイド筒部を、重力方向斜めに設けたことを特徴とする請求項1に記載のリード線の癖取り装置。
【請求項3】
前記ボビン収容筐体内に、前記巻取ボビンとは別に予備巻取ボビンを収容する予備巻取ボビン収容部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリード線の癖取り装置。
【請求項4】
癖が除去された前記リード線の、リード線送出し口から送り出された長さを検出するリード線長さ検出器と、
前記リード線送出し口から送り出すリード線引張機と、
前記リード線長さ検出器によって検出されるリード線の長さに応じて、前記リード線引張機が、前記巻取ボビンから前記リード線を引出すリード線引張速度を変更する制御器とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のリード線の癖取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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