説明

ルイス酸触媒を用いたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】例えば3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを、簡単にかつ低温で、費用のかかる精製工程を用いることなく、即ち高分子量又は高ヒドロキシル化成分を伴うことなく、高純度で製造することができる方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1種の化合物Aを、少なくとも1つのカルボン酸基を含む少なくとも1種の化合物Bと反応させることからなり、化合物A及び/又は化合物Bは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、反応を、少なくとも1つの直接結合したジ(シクロ)アルキルアミノ基を有するルイス酸触媒の存在下に行うことより、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルイス酸触媒の存在下にエポキシド及びカルボン酸を反応させることによりヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル及びそれらの混合物を意味する。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、とりわけ、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリウレタン分散体及び2成分または多成分被覆系の二重硬化−硬化剤を調製するためのイソシアネート含有化合物との反応に使用される。ここに記載した種類の化合物は、特に、ラジカル重合により硬化する被覆剤の成分として使用される。この方法は、化学線により開始することができる。2つの反応機構の組み合わせによる硬化は、当業者には二重硬化と呼ばれる。
【0003】
非常に高度に架橋された塗膜を得るために、高い官能性、特に多数のラジカル重合性二重結合を有する化合物を用いるのが好都合であり、そのような化合物は、有利には、高官能価のアクリレート及び/又はメタクリレート基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いて製造することができる。対象となる分子構造の製造を容易にするには、ヒドロキシ官能基ができるだけ狭く分布しているヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることも好都合である。従って、トロメチロールプロパン又はペンタエリトリトールのようなポリオールの(メタ)アクリル酸とのエステル化によるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合成は、ランダムに進行し、ヒドロキシ官能基の広い分布を生じるので、不利である。
【0004】
また、高い分子量を有する副生物がしばしば形成される。このような副生物は、アクリレートの炭素−炭素二重結合へのヒドロキシル基の付加生成物であると同定されてきた(例えば、Analytical Science, Nov. 2001, 第17巻,1295-1299頁)。DE-A 19 860 041 は、二重硬化−硬化剤を製造するためにポリイソシアネートと反応させることができる化合物として、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを開示している。しかしながら、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの製造に関する詳細は記載されていない。
【0005】
共に高純度で市販されている、グリシジルメタクリレートとアクリル酸との適当な触媒を用いた反応により3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを調製することが、文献に記載されている。生成物の精製及び純度に関するデータは示されていない。そこで、DE-A 0 900 778 は、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドにより触媒された、エステル化反応における過剰のアクリル酸とグリシジルメタクリレートの反応を記載している。
【0006】
3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートも、特級グレード(fine chemical grade)で得られる(Sigma-Aldrich Chemie GmbH, ドイツ Taufkirchen 在)。しかし、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された純度は60質量%未満であり、特に、望ましくない高分子量成分が見つかっている。製造方法は開示されていない。
【0007】
グリシジル化合物とカルボン酸との反応のための非常に多数の異なる触媒が、被覆技術から知られている。この反応は、例えば、ラッカー硬化のための架橋反応として、しばしば使用される。アンモニウム又はホスホニウム塩又はアミン及びホスフィンに加えて、ある種の金属化合物も記載されている。
【0008】
ホウ素含有ルイス酸のある性質は、Polymer 1996, 37(20), 4629-4631頁で研究されている。エポキシド−酸架橋反応のための触媒としてのホウ素含有ルイス酸の使用が記載されている。しかしながら、(メタ)アクリレートの存在下での反応には、低温で触媒活性である触媒のみが適している。何故なら、そうでなければ、(メタ)アクリレートの望ましくない重合が生じる危険があるからである。更に、架橋反応に比べて、化学合成には触媒のより高い選択性が必要である。(メタ)アクリレートへのヒドロキシル基又はカルボキシル基のマイケル類似付加又はヒドロキシル−エポキシド反応のような副反応により、高分子量を有するが故に望ましくない副生物が生じる。
【0009】
3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートは、蒸留による精製の後の純度85%超で、Roehm GmbH(ドイツ、ダルムシュタット)から販売されている。製品の安定性は低く、冷所で保存しなければならないので、商業的に実現可能な工業的規模で使用することは困難である。
【特許文献1】DE-A 19 860 041
【特許文献2】DE-A 0 900 778
【非特許文献1】Analytical Science, Nov. 2001, 第17巻,1295-1299頁
【非特許文献2】Polymer 1996, 37(20), 4629-4631頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、例えば3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを、簡単にかつ低温で、費用のかかる精製工程を用いることなく、即ち高分子量又は高ヒドロキシル化成分を伴うことなく、高純度で製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例えば、グリシジルメタクリレート及びアクリル酸のバルクでの反応が、ある種の弱ルイス酸ボラン化合物、例えばトリスジメチルアミノボランを触媒として用いることにより、80℃で急速にかつ完全に進行することが見出された。
【0012】
即ち、本発明は、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1種の化合物Aを、少なくとも1つのカルボン酸基を含む少なくとも1種の化合物Bと反応させることからなる、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であって、化合物A及び/又は化合物Bは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、反応を、少なくとも1つの直接結合したジ(シクロ)アルキルアミノ基を有するルイス酸触媒の存在下に行う製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
化合物Aとして使用するのに適した化合物は、モノエポキシド化合物又はポリエポキシド化合物、特に二又は三官能性エポキシドである。そのような化合物の例には、エポキシド化オレフィン、(環式)脂肪族又は芳香族ポリオールのグリシジルエーテル及び/又は飽和又は不飽和カルボン酸のグリシジルエステルが包含される。好ましいモノエポキシド化合物には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ベルサト酸のグリシジルエステル、ブチル−グリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、フェニル−グリシジルエーテル、o−クレシル−グリシジルエーテル、又は1,2−エポキシブタンが含まれる。グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0014】
好ましいポリエポキシド化合物には、ビスフェノールA又はビスフェノールF型のポリグリシジル化合物及びそれらのパー水素化誘導体、若しくは多官能性アルコール(例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン又はペンタエリトリトール)のグリシジルエーテルが含まれる。
【0015】
また、例えばグリシジルメタクリレートのある割合を用いたビニルモノマー(例えば、一官能性アクリレート、メタクリレート、又はスチレン)のエポキシ官能性ポリマーを使用することもできる。
【0016】
化合物Bは、一、二又は多官能性カルボン酸である。適当なモノカルボン酸には、飽和及び好ましくは不飽和カルボン酸、例えば安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、天然又は合成脂肪酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、二量体アクリル酸、又はクロトン酸が含まれる。適当なジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及び水素化二量体脂肪酸が含まれる。
【0017】
ジカルボン酸を、存在するなら無水物形で、対応する量の水を加えて使用することもできる。純粋な酸の他、酸官能性ポリエステル、又は過剰の酸を用いて調製された対応する反応混合物も使用できる。そのような混合物、特にポリエーテル−及び/又はポリエステルアクリレートと例えば過剰のアクリル酸を含む混合物が、EP-A 0 976 716、EP-A 0 054 105及びEP-A 0 126 341に記載されている。
【0018】
酸官能性ポリマー、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のある割合を用いたビニルモノマー(例えば、一官能性アクリレート、メタクリレート又はスチレン)のポリアクリレートを使用することもできる。
【0019】
化合物A及び/又は化合物Bは、少なくとも1つのアクリレート基及び/又はメタクリレート基を含む。次の組み合わせが好ましい:グリシジルアクリレート及びアクリル酸、グリシジルメタクリレート及びメタクリル酸、グリシジルメタクリレート及びアクリル酸、ビスフェノールA又はパー水素化ビスフェノールAのグリシジルエーテル及びアクリル酸、更にこれら組み合わせの混合物。グリシジルメタクリレートとアクリル酸との組み合わせが特に好ましい、酸対エポキシドの当量比は、広い範囲で変化することができる。しかしながら、1.2:1.0〜1.0:1.2の当量比が好ましく、1.05:1.00〜1.00:1.05の当量比がより好ましい。反応生成物中で一方の化合物の残留濃度が低くなるようにするには、他方の化合物を僅かに過剰な量で使用することが特に有利である。例えば、本発明の方法において、当量比を適切に選択した場合に、アクリル酸又はグリシジルメタクリレートの0.1質量%未満の残留濃度を達成することができる。
【0020】
本発明の方法において、化合物Aと化合物Bとの反応は、それぞれ直接結合された少なくとも1つ、好ましくは2つ又はそれ以上のジ(シクロ)アルキルアミノ基を含む、ルイス酸ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ランタン、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム及びハフニウム化合物により触媒される。好ましいルイス酸化合物は、ビス−(ジメチルアミノ)−ジメチルシラン、テトラキス−(ジメチルアミノ)−シラン、テトラキス−(ジメチルアミノ)−ジルコニウム、テトラキス−(ジメチルアミノ)−ジボラン、トリス−(ジエチルアミノ)−アルミニウム二量体、トリス−(ジメチルアミノ)−アルミニウム二量体、及びトリス−(ジメチルアミノ)−ボランである。トリス−(ジメチルアミノ)−ボランが特に好ましい。
【0021】
触媒は任意の量で使用できるが、実際の使用量は、便宜上、必要最少量に限定される。通常、最適量は、反応させる特定の化合物に依存し、適当な予備実験により決定できる。触媒は、化合物A及び化合物Bの質量に基づき、好ましくは0.05〜5.0質量%、より好ましくは0.1〜1.0%、最も好ましくは0.1〜0.5質量%の量で使用される。
【0022】
反応は、1種又はそれ以上の、アクリレート及びメタクリレート用安定剤の存在下に行われる。酸素含有気体に加え、不飽和化合物の質量に基づき、0.01〜1質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の量の化学安定剤が、早期の重合を防止するために適している。そのような安定剤は、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第4版、XIV/1巻, 1961年433頁以降(Georg Thieme Verlag、Stuttgart)に記載されている。そのような安定剤の例には、銅化合物、3価燐化合物(例えば、亜リン酸塩、亜ホスホン酸塩)、ジ亜チオン酸ナトリウム(sodium dithionite)、亜硫酸水素ナトリウム、硫黄、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニルエタノールジアミン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、p−ニトロソジメチルアニリン、ジフェニルニトロソアミン、フェノール類(例えば、p−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−t−ブチルピロカテコール、2,5−ジ−t−アミル−ヒドロキノン)、テトラメチルチウラムジスルフィド、2−メルカプトベンズチアゾール、ジメチル−ジチオカルバミン酸のナトリウム塩、フェノチアジン、及びN−オキシル化合物(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPO)又はその誘導体)などが含まれる。
【0023】
本発明によれば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン及び/又はp−メトキシフェノール並びにこれらの混合物が好ましい。
【0024】
反応は、反応体及び生成物に対して不活性である有機溶媒の存在下で行うことができる。溶媒の例は、ラッカー溶媒、例えば酢酸ブチル、ソルベントナフサ、酢酸メトキシプロピル、又は炭化水素(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又はイソオクタン)などである。反応の終了後、溶媒は、例えば蒸留により除去することができ、あるいは反応生成物中に残しておいてもよい。好ましくは、溶媒の使用は避ける。
【0025】
溶媒の他、反応性希釈剤も使用することができる。希釈剤の例は、被覆剤の放射線硬化技術において知られている化合物である(Roempp Lexikon Chemie 第10版491頁(Georg Theme Verlag、Stuttgart)参照)。希釈剤の具体例は、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル、好ましくはアクリル酸のエステル、及び下記のようなアルコールである。
【0026】
一価アルコールには、異性体のブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール及びデカノール;脂環式アルコール、例えばイソボルノール、シクロヘキサノール及びアルキル化シクロヘキサノール並びにジシクロペンタノール;芳香脂肪族アルコール、例えば、フェノキシエタノール及びノニルフェニルエタノール;及びテトラヒドロフルフリルアルコールが含まれる。これらアルコールのアルコキシル化誘導体も使用できる。
【0027】
二価アルコールの例には、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロパングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、及びこれらアルコールのアルコキシル化誘導体が含まれる。好ましい二価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールである。より高い官能価のアルコールには、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はジペンタエリトリトール若しくはこれらアルコールのアルコキシル化誘導体が含まれる。
【0028】
化合物A及び化合物Bの反応は、例えば静的ミキサーを用いて連続的に、又は例えば適当な攪拌槽を用いてバッチ式に、行うことができる。バッチ式を採用した場合、化合物はどのような順序で反応させてもよい。好ましくは、一方の化合物を最初に導入し、触媒の大部分及び安定剤を添加し、混合物を攪拌しながら加熱する。次いで、他方の化合物を、一度に全て、又は好ましくは徐々に添加し、反応中、温度は、加熱により又は反応熱を利用して、できるだけ一定に維持する。転化率は分析により測定する。分析は、例えば赤外線スペクトル又は近赤外線スペクトルを記録することにより分光的に行うことができるが、採取したサンプルを、例えば滴定、ガスクロマトグラフィ又は屈折率測定により分析して行うこともできる。試料の滴定により決定される酸含有量及びエポキシド含有量の両方が、反応の転化率の指標として特に適している。化合物の添加及び反応は、60〜130℃、好ましくは65〜120℃、より好ましくは75〜95℃の温度で行うことができる。
【0029】
連続法を採用した場合、分単位の十分に短い滞留時間であるなら、130℃以上の温度を使用することもできる。
【0030】
好ましくは、反応は、エポキシド含有量(分子量42として計算)が0.2質量%未満、好ましくは0.1質量%未満に、酸価が10mgKOH/g未満、好ましくは5mgKOH/g未満に達するまで、継続する。反応がこの時点より前に停止した場合、例えば、減圧の適用又は好ましくは酸素を含むガスの流通により、揮発性反応体の残留濃度を低下させて、対応して低いエポキシド含有量及び酸含有量を達成することができる。また、少量のエポキシド反応性化合物、例えばリン酸ブチルなどの強酸を添加することにより、エポキシド含有量を低下することもできる。酸の残留濃度も、同様の方法、例えばカルボジイミド又はアジリジンとの反応により、低下させることができる。
【0031】
反応生成物は、直ちに更に反応させ又は処理することができるが、まず貯蔵又は輸送すすることもできる。更なる反応、例えばポリイソシアネートとの反応は、好ましくは生成物を抽出又は蒸留などによりさらに精製することなく、行うことができる。
【0032】
本発明の方法は、特に、比較的高い選択性に特徴がある。化合物A及び化合物Bとしてそれぞれモノマー化合物を使用した場合、ゲル浸透クロマトグラフィによってオリゴマー的又はポリマー的性質を有する成分の反応生成物中濃度は、好ましくは35質量%未満、より好ましくは25質量%未満である。
【0033】
本発明の方法の生成物は、化学線により硬化できる、原料又は原料用組成物の調製に使用するのに特に適している。生成物を、適切な原料の合成のための中間体として使用する場合、例えば本発明の方法において生成され及び/又は場合により存在するヒドロキシル基との更なる反応、又は、例えば第1級及び/又は第2級アミノ基を含む化合物の添加により存在する二重結合への付加による反応が起こる。特に、ヒドロキシル基は、既知の方法を用いたウレタン化及び/又はアロファネート化により更に反応させることができる。
【0034】
本発明の方法の生成物、並びに更なる化学反応により得られた生成物は、化学線により硬化できる組成物、例えばラッカー、被覆剤、印刷インキ、シーラント、含浸樹脂及びパテの成分として適している。
【0035】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例により制限されるものではない。実施例中、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量に基づく。
【実施例】
【0036】
酸価は、「mgKOH/g-試料」単位で示し、DIN 3682に従い、ブロモチモールブルー(エタノール溶液)に対して、0.1モル/LNaOH溶液を用いて測定した(黄色から緑へ、更に青への色変化)。
【0037】
ヒドロキシル価は、「mgKOH/g-試料」単位で示し、DIN 53240に従い、無水酢酸による冷アセチル化の後に、0.1モル/LNaOHメタノール溶液を用い、ジメチルアミノピリジンを触媒として、測定した。
【0038】
エポキシド含有量は、塩化メチレン/酢酸に溶解した試料を、ヨウ化テトラブチルアンモニウムの添加後に、過塩素酸標準溶液(0.1モル/L)により滴定して、測定した。このようにして、放出されたアミン及び存在するあらゆる塩基性アミンを測定した。塩基性(遊離)アミンは、ヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加しない以外は、上記と同様にして測定した。両測定値の差が、CH-O-CH(分子量42g/モル)として計算さえたエポキシドの濃度(質量%)である。測定方法は、DIN 16945に基づく。
【0039】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC):溶離剤テトラヒドロフラン(THF)、RI検出、ポリスチレン標準に対して較正した後積分。
粘度:回転粘度計、23℃で測定
【0040】
実施例1:エポキシアクリレートの製造
最初に、142.23gのEpiloxTM A 19-00(ドイツLeuna在 Leuna-Harze GmbH製ビスフェノールAエポキシド樹脂、エポキシド当量質量190g)、0.20gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及び0.70gのトリス(ジメチルアミノ)ボラン(ドイツTaufkirchen在 Sigma-Aldrich Chemie GmbH製)を、機械式攪拌機、温度計及びガス導入管を備えた加熱できるガラス製フラスコに導入し、攪拌しながら、空気(0.5L/hr)を流して、70℃に加熱した。56.67gのアクリル酸を、この温度で、45分かけて添加した。その後、混合物を90℃で攪拌し、反応の進行を、採取した試料の酸価を測定することにより、追跡した。酸価は、4時間後に34mgKOH/g、12時間後に8mgKOH/g、15時間後に5mgKOH/gであった。次いで、混合物を50.00gのLaromerTM HDDA(ドイツLudwigshafen在 BASF AG製ヘキサンジオールジアクリレート)により希釈し、冷却した。粘度は、147000mPa.sであり、色指数は48APHAであり、酸価は5.0mgKOH/gであった。
【0041】
グリシジルメタクリレートとアクリル酸との反応
13.27gのグリシジルメタクリレート、0.02gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、6.78gのアクリル酸及び0.10gの表1に示す1種の触媒を、小さい開口及び磁石攪拌器を備えたガラス容器中で、それぞれ80℃で反応させた。酸価は、24時間後及び48時間後に測定した。酸価が48時間後に4mgKOH/gより大きければ、そのバッチは、さらに分析することなく廃棄した。
【0042】
【表1】

【0043】
本発明に従った実施例9の触媒と比べて、実施例2〜6(比較)の触媒は、所定の量では、非常に低い活性を示し、実施例7〜8(比較)の触媒は低い活性を示した。反応生成物は、酸価、ヒドロキシル価及び純度(GPC分析)については、比較生成物と少なくも同等であった。
【0044】
以上、本発明を、説明の目的で詳細に記載してきたが、そのような詳細な記載は単に説明のためであって、特許請求の範囲により限定される場合を除き、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、当業者なら種々の変更を行えると理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1種の化合物Aを、少なくとも1つのカルボン酸基を含む少なくとも1種の化合物Bと反応させることからなる、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であって、化合物A及び/又は化合物Bは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、反応を、少なくとも1つの直接結合したジ(シクロ)アルキルアミノ基を有するルイス酸触媒の存在下に行う製造方法。
【請求項2】
化合物A及び化合物Bに基づいて0.05〜5.0質量%のルイス酸触媒を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
化合物A及び化合物Bに基づいて0.1〜1.0質量%のルイス酸触媒を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
化合物A及び化合物Bに基づいて0.1〜0.5質量%のルイス酸触媒を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ルイス酸触媒は、少なくとも1つの直接結合したジ(シクロ)アルキルアミノ基を有するホウ素、アルミニウム、ジルコニウム及び/又はケイ素化合物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
化合物Aは、グリシジルメタクリレート及び/又はグリシジルアクリレートを含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
化合物Bは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
化合物Aはグリシジルメタクリレートを含み、化合物Bはアクリル酸を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ルイス酸は、少なくとも1つの直接結合したジ(シクロ)アルキルアミノ基を有するホウ素化合物を含む請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
ルイス酸触媒は、トリス(ジメチルアミノ)ボロンを含む請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−232832(P2006−232832A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43538(P2006−43538)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】