説明

ルビプロストン結晶、その製造方法および用途

ルビプロストン結晶、その製造方法、それを含む医薬組成物またはキット、およびその胃腸管疾患、特に便秘の治療用薬物を製造するための使用。この結晶は、X線粉末回折パターンに14.6±0.2°、17.0±0.2°および19.6±0.2°の2θ反射角測定の特性ピークが含まれ、アモルファスのルビプロストンに比べて、純度が高く、性質が安定で、保存と使用が便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルビプロストン結晶に関する。さらに、本発明は、胃腸管疾患の治療用薬物を製造するためのルビプロストン結晶の使用、およびルビプロストン結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルビプロストン、すなわち、(-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタノピラン-5-イル]ヘプタン酸は、プロスタグランジン類の化合物であって、通常、下記の互変異性体の形態で存在する。

ルビプロストンは、局所作用の塩素イオンチャネル活性化剤として、特異的に胃腸管上皮細胞膜におけるII型塩素イオンチャネルに作用し、高塩素イオン濃度の腸液の分泌を刺激し、胃腸管運動を促進することにより、軟化した便が胃腸管を通ることを促進し、便秘の症状を緩和することができる。アメリカン・スキャンポ・ファーマシューティカルズの製品であるルビプロストン(lubiprostone/Amitiza)カプセルはすでにアメリカ食品医薬品局(FDA)により承認されており、成人慢性特発性便秘症の治療に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、今のところ、油状の外観を有するアモルファス形態のルビプロストンのみが製造・使用されている。薬物を生産する途中、非結晶の化合物では、薬品の純度レベルと均一性を制御することが難しい。また、非結晶形態のルビプロストンの安定性は満足できるものではない。
本分野では、ルビプロストンの結晶形に関する検討や報告は未だない。よって、本分野では、製薬用途に適するルビプロストン結晶の開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、ルビプロストンの結晶を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、ルビプロストン結晶を製造する方法を提供することにある。
さらに、本発明のもう一つの目的は、胃腸管疾患の治療用薬物を製造するためのルビプロストン結晶の使用にある。
本発明の一つの態様は、そのX線粉末回折パターンに、14.6±0.2°、17.0±0.2°および19.6±0.2°の2θ反射角測定の特性ピークが含まれるルビプロストン結晶を提供する。
【0005】
一つの好ましい例において、前記X線粉末回折パターンには、さらに7.6±0.2°、8.5±0.2°、10.6±0.2°、17.7±0.2°、20.1±0.2°および23.4±0.2°の2θ反射角測定のピークが含まれる。
もう一つの好ましい例において、前記X線粉末回折パターンには、さらに10.9±0.2°、12.0±0.2°、12.2±0.2°、12.4±0.2°、14.9±0.2°、15.5±0.2°、15.9±0.2°、18.6±0.2°、21.5±0.2°、22.0±0.2°、22.2±0.2°、22.9±0.2°、23.6±0.2°、24.6±0.2°、25.1±0.2°、25.6±0.2°、29.0±0.2°、29.4±0.2°、30.2±0.2°、31.2±0.2°、31.9±0.2°、32.5±0.2°、33.5±0.2°、34.3±0.2°、38.0±0.2°、39.2±0.2°、41.4±0.2°および44.3±0.2°の2θ反射角測定のピークが含まれる。
【0006】
もう一つの好ましい例において、前記ルビプロストンの示差走査熱量分析パターンは、約61±0.2℃に最大吸収ピークを有する。
もう一つの好ましい例において、前記結晶のX線粉末回折パターンにおける2θ反射角特性ピークの半値幅は2°以下である。
【0007】
本発明のもう一つの実施態様は、前記ルビプロストン結晶を製造する方法を提供する。該方法は、
(a)ルビプロストンを中等極性或いは高極性の溶媒(i)に溶解させてルビプロストン溶液とする工程と、
(b)降温および/或いは他の低極性の溶媒(ii)または水の添加によりルビプロストン結晶を得る工程と、
を含む。
【0008】
一つの好ましい例において、前記溶媒(i)は、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
もう一つの好ましい例において、前記溶媒(i)は、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
もう一つの好ましい例において、前記溶媒(ii)は、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、水およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
もう一つの好ましい例において、前記溶媒(ii)はn−ヘキサンである。
もう一つの好ましい例において、前記降温とは、工程(a)で得られる溶液の温度を30℃〜-100℃に降下させるものである。
もう一つの好ましい例において、前記降温とは、工程(a)で得られる溶液の温度を20℃〜-80℃、好ましくは10℃〜-50℃、より好ましくは0℃〜-30℃に降下させるものである。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、本発明にかかるルビプロストン結晶または前記方法によって製造されるルビプロストン結晶および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
一つの好ましい例において、前記医薬組成物におけるルビプロストン結晶は、組成物の全重量の0.001〜99.9重量%、好ましくは1〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%、さらに好ましくは10〜80重量%を占める。
もう一つの好ましい例において、前記医薬組成物は、さらに胃腸管疾患の治療に用いられる他の活性物質を含む。
もう一つの好ましい例において、前記他の活性物質はプロトンポンプ阻害薬類薬物であり、好ましくはオメプラゾールやランソプラゾールである。
もう一つの好ましい例において、前記医薬組成物は胃腸管疾患、好ましくは便秘の治療に用いられる。
【0010】
本発明のもう一つの態様は、胃腸管疾患の治療用薬物を製造するための前記ルビプロストン結晶の使用を提供する。
一つの好ましい例において、前記医薬組成物は、高塩素イオン濃度の腸液の分泌の刺激、胃腸管運動の促進、軟化した便が胃腸管を通ることの促進、および/或いは便秘の症状の緩和に用いられる。
本発明のもう一つの態様は、前記ルビプロストン結晶と、薬学的に許容される担体と、を配合する工程を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明のもう一つの態様は、
(a)前記ルビプロストン結晶または前記方法によって製造されるルビプロストン結晶と、
(b)胃腸管疾患を治療する他の活性物質と、
(c)取扱書と、
を含む胃腸管疾患治療用キットを提供する。
一つの好ましい例において、前記他の活性物質はプロトンポンプ阻害薬類薬物であり、好ましくはオメプラゾールやランソプラゾールである。
本発明の他の主旨は、本文の公開される内容によって、この分野の技術者にとっては明らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ルビプロストン結晶のX線粉末回折(XRD)スペクトルを示す。
【図2】ルビプロストン結晶の示差走査熱量分析(DSC)スペクトルを示す。
【図3】ルビプロストン結晶の赤外(IR)走査画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは長期にわたって深く検討したところ、ルビプロストンの結晶を得て、しかも意外なことに、該当結晶は、純度が高く、性質が安定で、脂肪酸に溶解しやすいなどの薬用佐剤の優れた特性を有し、かつアモルファス形態のルビプロストンに比べて保存も使用も便利で、薬物やキットの製造のためのルビプロストンの原料としてはとりわけ適合することを見出した。上記調査に基づき、本発明を完成するに至った。
【0014】
ルビプロストン結晶の製造
本発明において、用語の「結晶」とは、原子や分子の複合物が特定の形態に配列されている固体を指す。
本発明者らは検討したところ、ルビプロストンを適切な溶媒で溶解させた後、さらに他の溶媒の添加および/或いは降温によって、ルビプロストン結晶を溶液から析出させることができることを見出した。
本発明の一つの実施態様において、ルビプロストン結晶は、2種類の溶媒を用いて得られる。まず、例えば酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはこれらの混合物などのルビプロストンを溶解できる溶媒(i)に、ルビプロストンを溶解し、そして、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンおよび石油エーテルなどのアルカン系化合物、水またはこれらの混合物などの、ルビプロストン溶解溶液から結晶を析出させる溶媒(ii)を加えて、溶液からルビプロストン結晶を析出させる。
【0015】
本発明の一つの実施態様において、前記結晶を析出させる溶媒の添加量は、ルビプロストン溶液との比で、10000:1〜0.01:1(ml/ml)、好ましくは100:1〜1:1(ml/ml)である。溶媒(i)添加時の温度は0℃〜80℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは室温〜50℃である。溶媒(ii)添加時の温度は-10℃〜80℃、好ましくは-5℃〜60℃、より好ましくは0℃〜50℃である。
本発明のもう一つの実施態様において、本発明に係るルビプロストン結晶は、まず、ルビプロストンを溶解できる溶媒(i)(例えば酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはこれらの混合物など)でルビプロストンを溶解させ、そして液温を降下させて結晶を析出させるという方法によって製造することができる。本発明の一つの実施態様において、前記ルビプロストン溶液の温度を30℃〜-100℃、好ましくは20℃〜-80℃、より好ましくは10℃〜-50℃、さらに好ましくは0℃〜-30℃に降下させる。
【0016】
ルビプロストン結晶は、ルビプロストンが溶媒(i)に溶解した溶液を得てから、溶媒(ii)を添加しつつ液温を降下させることによっても得られる。本発明の一つの実施態様において、低極性溶媒(ii)を添加するとともに、前記ルビプロストン溶液の温度を30℃〜-100℃、好ましくは10℃〜-50℃、さらに好ましくは0℃〜-30℃に降下させる。
【0017】
ルビプロストン結晶の同定および性質
本発明者らはルビプロストン結晶を得た後、さらに多種の手段と装置でその性質を検討した。
「X線粉末回折」は、「X線多結晶回折(XRD)」ともいい、現在、結晶構造(即ち結晶形)の測定に常用される試験方法である。X線粉末回折装置により、X線が結晶を透過する時に一連の回折パターンを生じるが、このスペクトルにおける異なる回折線およびその強度は特定の構造の原子団で決定され、これによって結晶の具体的な結晶構造を特定することができる。
結晶のX線粉末回折パターンの測定方法は当業界で知られている。例えば、Bruker D8 AdvancedのX線粉末回折装置により、2°/分の走査速度で、銅ターゲットを用いてスペクトルを得る。
【0018】
本発明に係るルビプロストン結晶は特定の結晶形態を持っており、そのX線回折パターンには特定の特性ピークがある。具体的には、本発明に係るルビプロストン結晶のスペクトルには、14.6±0.2°、17.0±0.2°および19.6±0.2°の主要な2θ特性吸収ピークがある。一つの好ましい実施態様において、該当スペクトルには、さらに7.6±0.2°、8.5±0.2°、10.6±0.2°、17.7±0.2°、20.1±0.2°および23.4±0.2°の2θ特性吸収ピークがある。ルビプロストン結晶は、図1と実質的に同じX線回折パターンを有することがより好ましい。
「示差走査熱量分析」は、「示差走査熱分析(DSC)」ともいい、加熱の途中で、被検物質と基準物質とのエネルギーの差と、温度との関係を計測する技術である。DSCスペクトルにおけるピークの位置、形状および数は物質の性質に係わるので、定性的に物質を特定するのに用いられる。当業界では、この方法は常に物質の相転移点、ガラス転移点、反応熱量などの多種のパラメータの計測に用いられる。
【0019】
物質は非結晶形態にある場合、加熱の途中では確定的な融点がないが、本発明に係るルビプロストン結晶は確定的な融点があり、つまり、加熱の途中で狭い温度範囲内に固相から液相に変換するものである。
DSCの測定方法は当業界で知られている。例えば、DSC Q20示差走査熱量分析装置を用いて、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで昇温して、結晶のDSC走査スペクトルを得る。
【0020】
本発明の一つの実施態様において、DSCによれば、本発明の方法で得られるルビプロストンは、61℃付近に最大ピークを有し、図2とほぼ同じDSCスペクトルを有することが好ましく、60.97℃に最大ピークを有することがより好ましい。
赤外(IR)パターンによっても結晶構造を特定することができ、その測定方法は当業界で知られている。例えば、PE Spectrum One Bを用いて、KBr:サンプル=200:1になるようにプレスして錠剤に成型し、400〜4000cm-1の範囲で走査する。本発明に係るルビプロストン結晶は図3とほぼ同じ赤外スペクトルを有することが好ましい。
【0021】
ルビプロストン結晶の使用およびその組成物
本発明で製造されるルビプロストン結晶は安定性がよく、保存と使用が便利で、且つ純度が高いため、原料薬として胃腸管疾患(例えば腸蠕動の促進や便秘症状の緩和)の治療薬を提供し、あるいはその製造に使用することができる。
したがって、本発明はさらに、有効量のルビプロストン結晶と、薬学的に許容される担体と、を含む本発明に係るルビプロストン結晶の組成物に関する。
本文に用いられるように、用語の「含有」或いは「含む」は、「包含」、「基本的に……からなる」および「からなる」を含む。用語の「有効量」とは、ヒトおよび/或いは動物に対して機能や活性を奏し、且つヒトおよび/或いは動物に許容される量を指す。
【0022】
本文に用いられるように、用語の「薬学的に許容される」とは、ヒトおよび/或いは動物に適用して過度の副作用(例えば毒性、刺激やアレルギー反応)がないもので、即ち合理的な利益/リスク比を持つものを指す。用語の「薬学的に許容される担体」とは、治療剤の投与に使用される担体を指し、各種の賦形剤と希釈剤を含む。この用語は、それ自身が必要な活性成分ではなく、且つ使用後過度の毒性がない薬剤担体を示す。適切な担体は当業界の当業者に良く知られている。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Pub. Co.,N.J. 1991には、薬学的に許容される賦形剤に係わる十分な検討を見出すことができる。
【0023】
前記「薬学的に許容される担体」は、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、沸騰剤、矯味剤、コーティング材、賦形剤または徐放・制御放出剤からなる群から選ばれることが好ましい。組成物において、薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセリン、エタノールなどの液体を含有してもよい。さらに、これらの担体には、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、沸騰剤、湿潤剤や乳化剤、矯味剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在してもよい。通常、これらの物質は無毒で、不活性で、かつ薬学的に許容される水性の担体媒体に配合してもよく、ただし、pHは通常約5〜8、好ましくは約6〜8である。
【0024】
本発明に係る医薬組成物におけるルビプロストン結晶の有効成分は組成物の全重量の0.001〜99.9重量%、好ましくは1〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%、さらに好ましくは10〜80重量%を占める。余分は薬学的に許容される担体および他の添加剤などである。
本文に用いられるように、用語の「単位投与剤型」とは、投与を便利にするため、本発明に係る組成物を一回の投与に必要な剤型にすることを指し、各種の固形剤(例えば錠剤)、液形剤、カプセル剤、徐放剤を含むが、これらに限定されるものではない。本発明のもう一つの好ましい実施態様において、前記組成物は単位投与剤型または複数回投与剤型であり、それにおけるルビプロストン結晶の含有量は0.01〜2000mg/剤、好ましくは0.1〜1000mg/剤、より好ましくは1〜500mg/剤である。
【0025】
さらに、本発明にかかる医薬組成物は、胃腸管疾患(例えば腸蠕動の促進や便秘症状の緩和)の治療に用いられる他の活性物質を含んでもよく、前記他の活性物質は例えばプロトンポンプ阻害薬類薬物から選ばれるもので、オメプラゾール、ランソプラゾール或いはこれらの組合せなどを含むが、これらに限定されるものではない。
本発明にかかる組成物は従来の経路で投与することができ、投与経路として、経口投与、筋肉注射、皮下注射などを含むが、これらに限定されるものではない。経口投与が好ましい。組成物の形態は投与経路に合わせるべきである。本発明に係る組成物の投与量は、活性物質として、通常一日あたり約0.01-2000mg/60kg体重/日、好ましくは約0.05〜1500mg/60kg体重/日、より好ましくは0.1〜1000mg/60kg体重/日、最も好ましくは1〜500mg/60kg体重/日である。
【0026】
本発明のもう一つの好ましい例において、一日当たり1〜6回、好ましくは1〜3回、最も好ましくは1回で、本発明組成物を投与する。用いられるルビプロストン結晶の有効投与量は、投与または治療される対象の重篤度によって変化すると理解されるものである。具体的には、対象の個体状況(例えば対象の体重、年齢、健康状況、生み出される効果)によって決定するべきで、すべては熟練の医者や栄養士の判断可能な範囲に含まれる。
本発明の組成物はそのまま使用してもよく、他の治療剤や佐剤と併用してもよい。本発明の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、さらに有効量(例えば0.5〜100mg/60kg体重/日、好ましくは1〜50mg/60kg体重/日)の他の活性物質と併用してもよく、前記他の活性物質は例えばプロトンポンプ阻害薬類薬物で、オメプラゾール、ランソプラゾール或いはこれらの組合せなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
通常、2種または2種以上の薬剤が併用される場合は、これらの薬剤がそれぞれ単独で投与される場合より優れた効果を示す。本発明にかかるルビプロストン結晶の有効成分の治療活性が、併用される薬物や他の佐剤に阻害されないことが好ましい。
勿論、本発明に係るルビプロストン結晶を用いて、本発明に係るルビプロストン結晶と、オメプラゾール、ランソプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬類薬物から選ばれる他の胃腸管疾患を治療する活性物質と、を含む胃腸管疾患治療用キットを製造することもできる。前記キットは、使用者や医者をガイドするための該当キットの取扱書と、容器と、賦形剤と、などを任意に含んでもよく、当業界の当業者は必要によりキットにおける任意な成分を選定することができる。
【0028】
実施例
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるものだけで、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いは製造者指示の条件で行われる。特に説明しない限り、すべての%と部は重量基準である。
別途に定義しない限り、文中に使用されるすべての専門・科学用語は、当業界の熟練者によく知られる意味と同じである。また、記載される内容に類似或は同等の方法および材料はいずれも本発明の方法に使用することができる。文中に開示する好ましい実施態様および材料は、本発明を説明することのみを意図している。
【実施例1】
【0029】
ルビプロストン結晶の製造1
16,16-ジフルオロ-13,14-ジヒドロ-15-カルボニル-PGE2ベンジルエステル(8.44g)の酢酸エチル(300ml)溶液に、パラジウムカーボン5%を加えた。混合物を水素雰囲気下で振とうさせた。反応完了後、反応混合物をろ過し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られたものを濃縮乾固して、油状の生成物(4.04g)、即ちルビプロストンの油状物を得た。
室温下で、ルビプロストンの油状物2.6gを酢酸エチル10mlに溶解させた。n−ヘキサン200mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥して、白色固体2.3gを得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3に示す。
【実施例2】
【0030】
ルビプロストン結晶の製造2
室温下で、ルビプロストンの油状物(実施例1で製造したもの)0.2gをアセトン0.5mlに溶解させた。n−ヘキサン15mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥し、白色固体を0.16g得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3と同様であった。
【実施例3】
【0031】
ルビプロストン結晶の製造3
室温下で、ルビプロストンの油状物(実施例1で製造したもの)0.2gをジクロロメタン0.5mlに溶解させた。n−ヘキサン15mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥し、白色固体を0.17g得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3と同様であった。
【実施例4】
【0032】
ルビプロストン結晶の製造4
室温下で、ルビプロストンの油状物(実施例1で製造したもの)0.2gをイソプロパノール0.5mlに溶解させた。n−ヘキサン15mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥し、白色固体を0.15g得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3と同様であった。
【実施例5】
【0033】
ルビプロストン結晶の製造5
室温下で、ルビプロストンの油状物(実施例1で製造したもの)0.2gをアセトン0.5mlに溶解させ、水20mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥し、白色固体を0.14g得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3と同様であった。
【実施例6】
【0034】
ルビプロストン結晶の製造6
室温下で、ルビプロストンの油状物(実施例1で製造したもの)0.2gをメタノール0.5mlに溶解させ、水20mlをゆっくり滴下した。得られた混合物を室温下で4時間攪拌し、白色固体をゆっくり析出させ、次いで、氷水浴下で1時間攪拌した。減圧ろ過し、減圧乾燥し、白色固体を0.13g得た。そのXRD、DSC、IRパターンは図1〜3と同様であった。
【実施例7】
【0035】
ルビプロストン結晶の特性の測定
1.ルビプロストン結晶のX線粉末回折
装置:Bruker D8 Advanced
検出方法およびパラメータ:2°/分の走査速度で、銅ターゲットを用いてパターンを得た。
検出結果:ルビプロストン結晶のX線粉末回折パターンを図1に示し、その具体的なデータを表1に示す。
表1 図1のX線粉末回折に対応するデータ


(表1続き)


【0036】
2.ルビプロストン結晶の示差走査熱量分析
装置:DSC Q20(TA)
検出方法およびパラメータ:10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで昇温した。
検出結果:ルビプロストンの示差走査熱量分析パターンを図2に示す。ルビプロストンは、60.97℃に一つの吸収ピークを有した。
【0037】
3.ルビプロストン結晶の赤外走査
装置:PE Spectrum One B
検出方法およびパラメータ: KBr:サンプル=200:1になるようにプレスして、400〜4000cm-1の範囲で走査した。
検出結果:ルビプロストンの赤外走査パターンを図3に示す。
【実施例8】
【0038】
安定性の比較
本実施例において、ルビプロストンの油状物(製造方法は実施例1を参照)と実施例1および実施例2で得られた最終産物(結晶サンプル)との安定性試験を行い、結果を比較した。
ルビプロストンの油状物と実施例1および実施例2のサンプルをそれぞれ、封止して40℃で7日間置いた。完了後、サンプルにおける不純物の含有量を分析した。結果を表2に示す。

表2


以上のデータから明らかなように、ルビプロストン結晶は優れた安定性を持つ。
【0039】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読了後、当業界が本発明に各種の変動や修正を行うことができるが、これらの等価物は本発明の請求の範囲に含まれることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンに14.6±0.2°、17.0±0.2°および19.6±0.2°の2θ反射角測定の特性ピークが含まれる、ルビプロストン結晶。。
【請求項2】
前記X線粉末回折パターンに、さらに7.6±0.2°、8.5±0.2°、10.6±0.2°、17.7±0.2°、20.1±0.2°および23.4±0.2°の2θ反射角測定のピークが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のルビプロストン結晶。
【請求項3】
前記結晶のX線粉末回折パターンにおける2θ反射角特性ピークの半値幅が2°以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のルビプロストン結晶。
【請求項4】
(a)ルビプロストンを中等極性或いは高極性の溶媒(i)に溶解させてルビプロストン溶液とする工程と、
(b)降温および/或いは他の低極性の溶媒(ii)または水の添加によりルビプロストン結晶を得る工程と、
を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載のルビプロストン結晶を製造する方法。
【請求項5】
前記溶媒(i)が、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒(ii)が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、水およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記降温が、工程(a)で得られる溶液の温度を30℃〜-100℃に降下させるものである、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のルビプロストン結晶または請求項4〜7のいずれか1つに記載の方法によって製造されるルビプロストン結晶と、
薬学的に許容される担体と、
を含む医薬組成物。
【請求項9】
胃腸管疾患の治療用薬物を製造するための、請求項1〜3のいずれか1つに記載のルビプロストン結晶の使用。
【請求項10】
(a)請求項1〜3のいずれか1つに記載のルビプロストン結晶または請求項4〜7のいずれか1つに記載の方法によって製造されるルビプロストン結晶と、
(b)胃腸管疾患を治療する他の活性物質と、
(c)取扱書と、
を含む、胃腸管疾患治療用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516430(P2011−516430A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502211(P2011−502211)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070971
【国際公開番号】WO2009/121228
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(506010046)上海天偉生物制薬有限公司 (6)
【Fターム(参考)】