説明

ルミネセンスの極めて高いランタニド錯体の獲得方法

本発明は、{[M(L)]X(H2O)npという一般構造式の遷移金属の配位錯体に関する。ここで、式中、Mはランタニド群に属する元素を表わし、Lは十座発色団配位子を表わす。Xは対イオンを表わし、nは水和水分子数を表わし、pは単量体数に対応し、H2Oは水和水分子を表わす。本発明は同様に、6−クロロメチルピリジン−2−カルボキシラートのエチルエステルとエチレンジアミンとの間の有機媒質内での反応による配位子の調製方法、ならびに塩化ランタニドと配位子との間の水性媒質内での反応による配位錯体の調製方法にも関する。本発明は、さらに、生物学的検定および医療用画像用発光プローブの開発ならびにナノテクノロジー向けの新規材料の開発における、ルミネセンス画像用マーカーとしての、医療分野でのかかる錯体の利用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属、特にランタニドの新しい配位錯体、そして医療分野でのそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ランタニドイオンの独特の電子特性、例えば寿命の長いそのルミネセンスおよびその明確な発光スペクトルのため、この化合物は、医療分野において利用するのに理想的な手段となっている。
【0003】
実際、ランタニド錯体を利用することでノイズとみなされる螢光と目標信号を区別することが可能になる。かくして、前記錯体は往々にして、検出器の設計において構造上および解析上の問題を解決するための分光学的プローブならびに発光プローブとして、および螢光撮像システムとして利用される。
【0004】
「International Union of Pure and Applied Chemistry」(IUPAC)(国際純正応用化学連合)が発行した規則によると、ランタニドというのは、セリウム(Z=58)からルテチウム(Z=71)に至る化学元素の系列を意味する。ランタン(Z=57)を含めると、これらの元素はランタノイドと呼ばれる。「希土類」という用語は、ランタノイドにスカンジウム(Z=21)とイットリウム(Z=39)を加えたものであり、これらは類似の化学的特性を有する。実際には、ランタニド、ランタノイドおよび希土類という呼称は、これらの元素を記述するために利用される。
【0005】
一般に、ランタニドは、+3の酸化状態にある場合、その最も安定した化合物を形成する。イオンLnIIIの電子構造は、LaIIIについてのキセノンの電子構造であり、その後LuIIIについては電子軌道4fから[Xe]4f14までの充填に対応する。
【0006】
実際には、ランタニド錯体で実施された研究の大部分は、寿命の長い可視光エミッタ、特にEuIIIおよびTbIII、またはPrIII、ErIII、YbIIIもしくはNdIIIといったような近赤外線スペクトルのエミッタを含有する発光プローブの確立に向けられてきた。
【0007】
しかしながら、ラポルテ禁制と呼ばれる禁止された4f−4f遷移がランタニドの直接的励起を妨げることから、この励起は或る種の適切な有機発色団を用いて実施されなくてはならない。
【0008】
本発明において「発色団」というのは、UV/可視光を吸収しこれを金属中心に移送する能力をもつ分子のことを意味し、この金属中心はこのエネルギーを受入れることで光を発出する能力をもつ状態に「励起される」(アンテナ効果)。好ましくは、「アンテナ」とも呼ばれる「発色団」は、一つの有機分子内で共役された二重結合の充分に長い配列に関与する可能性のある原子団に対応する。αに非局在化可能である電子πを担持する芳香族環が、本発明の意味での発色団とみなされるものとする。
【0009】
なお、生理学的条件下での実用的な理由から、ランタニドイオンは、きわめて安定した錯体の中に取込まれなくてはならない。実際、ランタニドに対する配位子のエネルギー伝達効率は、高性能プローブの設計にとって決定的なものである。
【0010】
さらに、高い量子収率を得るためには、周囲の水分子と金属との相互作用の結果としてのランタニドイオンの励起状態の非放射的脱励起を妨げるかまたは少なくとも最小限におさえることが必要である。
【0011】
この目的で研究された或る種の多座配位子内への発色団の取込みは、溶解状態のキレート化ランタニドのより高い安定性を導き、水分子に対する中心金属のより大きな保護を可能にする。
【0012】
しかしながら、高い配位数を取ろうとするランタニドイオンの傾向およびその立体化学的選択性の欠如のため、これらの配位子の設計は大いなる挑戦となっている。
【0013】
様々な研究グループが採用した一つの戦略は、LnIII9配位錯体内での三つの3価結合単位を組織するべく、一つの配位子の「3脚」構造に基づいている。
【0014】
このアプローチは、一部のケースにおいて、周囲の水分子に対する中心金属の有効な保護を導いたが、合成の困難さからほとんど利点がないものとなっている。
【0015】
ランタニドイオンを中心とした四つの二座基の配置を可能にする多座配位子の調製は、キノリナートまたはトロポロナートといったような、二座発色団配位子から得られるテトラ錯体について観察された優れたルミネセンス特性にも関わらず、さほど研究者の注意を引かなかった。
【0016】
近年、四つの二価発色団を含む八座配位子が、非常に効果的な、近赤外線(NIR)スペクトルまたは紫外線(UV)ゾーン内でのエネルギーの発出を伴うランタニド錯体を導いた。
【0017】
それでも、これらの錯体の構造はまだ解明されておらず、二座単位を互いに結合させる配位子の構造の一部分がきわめて柔軟性あるものであるという事実は、中心金属の保護が最適となるにはまだ程遠いということを暗に意味している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上述の欠点特に水性媒質内でのその安定性およびその柔軟性に関する欠点を補正する遷移金属、特にランタニドの新しい配位錯体を提案することにある。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、調製が容易で高いルミネセンス量子収率を呈する遷移金属特にランタニドの新しい配位錯体を提案することにある。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、医療およびバイオテクノロジーの分野で利用される可能性のある化学的および光物理的特性を呈する新しい配位錯体を提案することにある。
【0021】
本発明のその他の目的および利点は、単なる一例として示され本発明を制限することを目的とするものではない以下の記述の中から明らかになるものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、
{[M(L)]X(H2O)np
という一般構造式(I)の遷移金属の配位錯体において、式中、
− Mはランタニド群に属する元素を表わし、
− Lは
【化1】

という一般構造式(II)の十座発色団配位子を表わし、この式中、
・ R1、R2、R3およびR4は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ A1、A2、A3およびA4は、
【化2】

という一般構造式(III)の構造に独立して対応し、この式中、
・ U1、U2、U3は独立してCまたはNに対応し、
・ R5、R6およびR7は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ Yは、C、O、S、PまたはNに対応し、
・ mはYの自由原子価数に対応する整数であり、
・ R8は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
− xは対イオンを表わし、
− nは水和水分子数を表わし、
− pは単量体数に対応し、
− H2Oは水和水分子を表わす、
配位錯体に関する。
【0023】
アルキル基は場合によって、C1−C20、好ましくはC1−C10で、飽和または不飽和、単置換または多置換、線状、分枝または環状であってよく、単数または複数の置換基がN、O、F、Cl、P、SiまたはSといったような単数または複数のヘテロ原子を含有し得る。かかるアルキル基としては、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基およびペンチル基を挙げることができる。同様に、不飽和アルキル基としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、tertブテニル、ペンテニルおよびアセチレニルを挙げることができる。
【0024】
アリール基は、各々3〜8個の原子を含む単数または複数の芳香族環またはヘテロ芳香族環から成る、単置換または多置換された芳香族またはヘテロ芳香族含炭素構造であり得、ヘテロ原子はN、O、PまたはSであり得る。
【0025】
任意には、アルキル基またはアリール基が多置換されている場合、置換基は互いに異なるものであり得る。アルキル基およびアリール基の置換基としては、特に、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、置換または未置換アリール基、置換または未置換ヘテロアリール基、アミノ基、シアノ基、アジド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ケト基、カルボキシ基、エーテルオキシ基およびアルコキシ基例えばメトキシ基を挙げることができる。
【0026】
本発明は、同様に、上述のとおりの配位子の調製方法にも関するものであり、該調製方法は、
【化3】

(なお式中、R1、R2、R3およびR4は上記で定義づけしたとおりである)という一般構造式(IV)のジアミンと、
【化4】

(なお式中、Y、R5、R6、R7、R8、U1、U2およびU3は上記で定義づけしたとおりであり、Rはアルキルまたはアリールに対応し、LGはジアミンからの求核性置換を受ける可能性のある離脱基を表わす)という構造式(V)の少なくとも一つの化合物との反応を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明はさらに、ランタニドの塩と配位子の間の水性媒質内での反応を含むことを特徴とする配位錯体の調製方法、ならびに医療分野例えば画像診断、放射線療法および中性子センサ、X線用スクリーン、画像および生物学的検定用プローブ、ダイオード、光ファイバなどの設計におけるそれらの利用にも関する。
【0028】
本発明は、添付図面が付随する以下の記述を読むことによってより良く理解できるものである。
−図1は、滴定曲線のグラフを表わす。
−図2は、ランタニド錯体の分子構造を表わす。
−図3は、第二のランタニド錯体の分子構造を表わす。
−図4は、ランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
−図5は、333Kでのランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
−図6は、298Kでのランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
−図7は、274nmでの励起後の二つのランタニド錯体の発光スペクトルを表わす。
−図8は、ランタニドの発光スペクトルおよび励起スペクトルを表わす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明はまず第一に、
{[M(L)]X(H2O)np
という一般構造式(I)の遷移金属の配位錯体において、式中、
− Mはランタニド群に属する元素を表わし、
− Lは、
【化5】

という一般構造式(II)の十座発色団配位子を表わし、この式中、
・ R1、R2、R3およびR4は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ A1、A2、A3およびA4は、
【化6】

という一般構造式(III)の構造に独立して対応し、この式中、
・ U1、U2およびU3は独立してCまたはNに対応し、
・ R5、R6およびR7は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ Yは、C、O、S、PまたはNに対応し、
・ mはYの自由原子価数に対応する整数であり、
・ R8は、水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
− xは対イオンを表わし、
− nは水和水分子数を表わし、
− pは単量体数に対応し、
− H2Oは水和水分子を表わす、
配位錯体に関する。
【0030】
その時の物理的状態(例えば結晶化または溶解状態など)に応じて、錯体はいわゆる配位溶媒分子を含むことができ、これは特に水分子である。
【0031】
本発明の特定の一態様に従うと、ランタニドの群に属する元素は、ユウロピウム(Eu)もしくはセリウム(Ce)またはテルビウム(Tb)である。
【0032】
有利には、R1、R2、R3およびR4は独立して水素、メチルまたはエチルであり、好ましくはそれら全てが水素であるものとする。
【0033】
発明者らは、A1、A2、A3およびA4が同一であれば、分子の対称性を保つことができ、かくしてアンテナ効果を増大させ疑似エネルギー伝達が回避されることから、それが好ましいと考えている。
【0034】
同様に、Yが硫黄または酸素であることが好ましく、その場合、mは0に等しい。
【0035】
一般に、含炭素芳香族基を選択することが好ましく、発明者らは、U1、U2およびU3が炭素であることが有利であると考えている。
【0036】
本発明に従った好ましい錯体は、R5、R6およびR7が独立して、水素または、メチルもしくはエチルといったようなアルキル基であるものであり、有利にはこれらは同一であり、好ましくは水素に対応する。
【0037】
このタイプの配位錯体の利点の一つは、水性媒質中でのその安定性にあり、該安定性によって、生理学的および生物学的媒質内、ひいては医療分野におけるそれらの利用が可能になる。
【0038】
或る種の生体系におけるその重要性によって知られている金属であるカルシウムは、本発明の配位子によってランタニドよりも低レベルで錯化される。この選択性は医療への応用にとってきわめて重要である。
【0039】
本発明の特定の一態様に従うと、前記配位子は、エチレンジアミン骨格構造により連結された四つの二座発色団を含む。
【0040】
本発明の特定の一態様に従うと、前記配位子はエチレンジアミン骨格構造により結合される四つのピリジンカルボキシラート基を含む。
【0041】
本発明の特定の一態様に従うと、四つのピリジンカルボキシラート基を含む配位子は、N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンである。
【0042】
本発明に従った配位子の利点の一つ、特にN,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンタイプの配位子の利点の一つは、該配位子が10個の電子供与原子および、一つのランタニド特にEu、TbおよびCeの錯化に完全に適応したエチレンジアミンブリッジにより構成されている「骨格構造」と同様に、周囲の水分子特に溶媒の水分子に対する中心金属のきわめて有効な保護をもたらす赤外線領域内での発光を伴うランタニドをも含む、という点にある。この保護の結果、特にEuIIIおよびTbIIIと配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンの錯体は、高い溶解度および高い安定性に付随する寿命の長い水中ルミネセンスを呈する。
【0043】
本発明に従うと、錯体中に存在する対イオンXは、元素周期表の1A族に属する一元素、より特定的にはカリウムである。ユウロピウムおよびセリウムの錯体に対する対イオンK+の結合方法は、異なる二つの構造、すなわちユウロピウムとの錯体の場合には単量体構造そしてセリウムとの錯体の場合には二量体構造を導く。
【0044】
pの値は錯体のタイプに応じて変動し、各々の錯体を形成する単量体の数を表わし、pはユウロピウムの場合がそうであるように単量体錯体については1に等しく、セリウムの場合がそうであるように二量体錯体についてはpは2に等しい(実施例を参照のこと)。
【0045】
同様にして、nの値は考慮対象の錯体および大気条件ならびに温度条件に応じて異なる。標準的には、この数は、溶解していない錯体について0〜20の間に含まれることになる。
【0046】
本発明は同様に、上述のとおりの十座発色団配位子の調製にも関するものであり、該調製は、
【化7】

(なお式中、R1、R2、R3およびR4は上記で定義づけしたとおりである)という一般構造式(IV)のジアミンと、
【化8】

(なお式中、Y、R5、R6、R7、R8、U1、U2およびU3は上記で定義づけしたとおりであり、Rはアルキルまたはアリールに対応し、LGはジアミンからの求核性置換を受ける可能性のある離脱基を表わす)という構造式(V)の少なくとも一つの化合物との反応によるものである。
【0047】
有利には、当業者は、最も置換活性の高い離脱基、特にアミンと反応するものの中からLGを選択するものである。発明者らは、有利にはCl、Br、I、−OTf、−OTs、CNを利用することができると考えている。
【0048】
R基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ベンジル基の中から、そしてヘテロアルキル特にトリメチルシリル(TMS)またはテルブチルジメチルシリル(TBDMS)といったようなアルコール官能基の保護基として用いられる基の中から選択されるものである。
【0049】
本発明に従った方法は、適合された全ての溶媒内で実施可能であり、特にこれはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、トルエンといった有機溶媒である。
【0050】
好ましい作業条件は、当業者が自らその化合物のために選択した置換基に基づいて自ら容易に決定するものであり、アミンによる置換反応は当該技術分野において周知である。アミンの反応を容易にするため一塩基の存在下で反応を実施すること、その後反応媒質を酸化させてR基により保護されたアルコールを再生することが好ましい。
【0051】
かくして、該方法に従うと、好ましくは有機媒質内での6−クロロメチルピリジン−2−カルボキシラートのエチルエステルとエチレンジアミンとの間の反応により、本発明においてH4tpaenとも呼称される十座配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンが、26.0%の最終収率で五段階で容易に得られる。
【0052】
概略的に、該反応を以下のように描写することができる:
【化9】

【0053】
配位子H4tpaenの調製は単純で、大規模に利用可能で、かつルミネセンス画像用マーカーを開発するため生体分子に結合する能力をもつ或る種の官能基と錯体を定着させるために容易に修正可能である。
【0054】
配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンは、以下の要領で調製可能である。
【0055】
アルゴン雰囲気下で、精製されたばかりのエチレンジアミン(250mL、3.6mmol)および無水K2CO3(2.04g、14.8mmol)を無水アセトニトリル(50mL)中6−クロロメチルピリジン−2−カルボキシラート(2.95g、14.8mmol)のエチルエステル溶液に連続的に添加する。溶媒のろ過および蒸発の後、黄色油を得る。
【0056】
ジクロロメタン中に再度取込んだ後、形成された溶液を水(100mL)で二回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させる。溶媒の蒸発後、その他の精製を全く行なわずに、得られた黄色油を利用する。
【0057】
酸基を再生するためには、HCl6M(40mL)の水溶液中に溶解された粗製生成物(2.56g)を一晩還流させる。5mLまで溶媒を蒸発させた後、溶液を一晩中5℃で冷却させる。沈殿物をろ過により収集し、HCl6M溶液で洗浄し、次に真空下で乾燥させる。かくして1.37gのH4tpaen・6HCl・5H2Oが42%という収率で得られる。
【0058】
4tpaen・6HCl・5H2Oの元素分析は以下のとおりである:MM=909.33、C3044613Cl6:C39.42、H4.88、N9.24、実際値C39.49、H4.90、N9.24。
【0059】
4tpaenのNMRスペクトルは以下のとおりである:
1H NMR(D2O,400MHz,298K,pH=5):δ3.57(s,4H,NCH2CH2N)、4.36(s,8H,NCH2py)、7.48(d,4H,CH)、7.77(d,4H,CH)、7.84(t,4H,CH)。
13C NMR(D2O,100MHz):δ=51.6(CH2);56.4(CH2);57.8(CH2);125.8(CHpy);128.4(CHpy);142.9(CHpy);147.4(Cpy);152.0(Cpy);166.4(COOH);172.1(COOH)。
【0060】
本発明はさらにランタニドの塩と配位子との水性媒質中での反応による配位錯体の調製方法に関する。
【0061】
有利には、ランタニド塩はランタニドの塩化物である。
【0062】
配位子は有利には上述のとおりとする。
【0063】
本発明の特定の一態様によると、ランタニドは、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)またはテルビウム(Tb)であり、有利には、ランタニドは、赤外線領域内での発光を伴うランタニドの中から選択されるものとする。
【0064】
配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンから得られた水中で可溶な錯体を、前記配位子と六水和塩化ランタニド特にセリウムまたはユウロピウムとの反応後、そしてpHを6に調整した後、50〜60%の間に含まれる収率で単離させる。
【0065】
制限的な意味のない例としては、ユウロピウム錯体およびセリウム錯体は、三塩化ユウロピウムまたは三塩化セリウムと配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンとの間の反応により調製可能である。
【0066】
これらの錯体は以下の要領で調製可能である。
【0067】
水(0.5mL)中のCeCl3・7H2OまたはEuCl3・6H2O(0.138mmol)の溶液を、KOH(0.2M)の添加によりpHを5に調整した、水(6mL)中のN,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミン(0.138mmol)の溶液に対して添加する。かくして得られた溶液を大気温で2時間攪拌し、追加でKOH(0.2M)を加えることによりpHを6に調整する。
【0068】
水を蒸発させた後、得られた固体をEtOH(5mL)中に再度取込み、溶液をろ過して不可溶塩を除去する。溶媒を蒸発させ、残渣を水中に再び取込む。
【0069】
固体の水溶液(1mL)の5日間にわたる緩慢な蒸発により、白色固体の形での錯体([Eu(tpaen)]K)および黄色固体の形での錯体([Ce(tpaen)]K)を50〜60%の間に含まれる収率で得ることが可能となる。
【0070】
これらの錯体の化学的および物理的特性は以下のとおりである:
[Eu(tpaen)]:1H NMR(D2O,400MHz,298K,pD=6.9):δ−2.07(s br,2H,H6/H6')、−1.11(s br,2H,H4')、−0.99(s br,2H,H4)、3.48(s br,2H,H5)、4.28(s br,2H,H5')、4.41(d br,2H,H3')、5.43(d br,2H,H3),5.65(s br,2H,H1')、5.79(s br,2H,H1)、5.96(br,2H,H2'),6.53(br,2H,H2),8.40(br,2H,H6/H6')。
[Ce(tpaen)]:1H NMR(D2O,400MHz,298K,pD=5.4):δ−2.03(s br,2H,H6/H6'),0.09(s br,2H,H5')、1.18(s br,2H,H6/H6')、3.25(d,2H,H4')、3.51(d,2H,H4)、5.44(s br,2H,H5)、7.97(d,2H,H3)、8.10(d,2H,H3')、8.45(d,2H,H1),8.91(t,2H,H2)、8.94(d,2H,H1')、9.04(t,2H,H2')。
【0071】
[Eu(tpaen)]K(H2O)3・4H2O:C30H38EuKN6O15についての結晶学的データ、M=913.7、単斜晶系、空間群P2(1)/n、a=11.995(2)、b=14.539(3)、c=21.407(5)Å、β=106.186(3) V=3585.2(12)Å3、Z=4、pc=1.693gcm-3、μ=1.944mm-1、T=298K。収集した12504の反射のうち、5133がユニークなものであった(Rint=0.0192)。データ処理はR1=0.0296、wR2=0.0667で収束した。残留密度の最大/最小値0.693および−0.528eÅ-3
【0072】
{[Ce(tpaen)]K(H2O)32・16H2O:C30H46CeKN6O19についての結晶学的データ、M=973.95、単斜晶系、空間群P2(1)/c、a=11.7615(10)、b=14.5931(12)、c=22.965(2)Å、β=101.640(1) V=3860.7(6)Å3、Z=4、pc=1.676gcm-3、μ=1.374mm-1、T=193K。収集した12929の反射のうち、7459がユニークなものであった(Rint=0.0310)。データ処理はR1=0.0430、wR2=0.1340で収束した。残留密度の最大/最小値1.055および−2.462eÅ-3
【0073】
なお、電位差滴定により配位子H6tpaenについて五つの脱プロトン化定数[pKa1=2.8(1)、pKa2=3.2(1)、pKa3=3.9(2)、pKa4=5.1(1)およびpKa5=7.8(1)]ならびにEuIIIおよびCaIIの対応する錯体の安定度定数[EuIIIの錯体についてlogβEuL=15.3(3)およびlogβCaL=8.5(5)]を決定することができる。図1は、配位子H6tpaen(▲)、錯体Eutpaen(◇)および錯体Catpaen(■)についての滴定曲線を示す。
【0074】
pEu=15.7、pGd=15.0及びpCa=8.5の値(7.4のpH、[M]total=1μMおよび[tpaa]total=10μMでの−log[M]free)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)についてのpEu=14.0という値に比較された場合、tpaen配位子が、インビボで利用するのに充分な安定性をもつランタニド錯体を形成することを示し、同様にカルシウムに比べたユウロピウムに対する優れた選択性をも示している。
【0075】
電位差滴定のためには、Eu(III)錯体の溶液を、水中での規定量のEuCl3・6H2Oの溶解により調製することができる。H6tpaenの脱プロトン化定数はKai=[H6-iL]2-i/[H5-iL]1-i[H]+により得られ、すでに前述したとおり、得られる値はpKa1=2.8(1)、pKa2=3.2(1)、pKa3=3.9(2)、pKa4=5.1(1)およびpKa5=7.8(1)である。
【0076】
イオンEu3+の正確な濃度は、基準としてH2Na2edta溶液を、そして指示薬としてキシレノールオレンジを用いて、酢酸塩緩衝液(pH=4.5)内での比色滴定により決定することができる。
【0077】
Ca(II)溶液は、水中にCaCl2を溶解させることによって調製可能である。イオンCa2+の正確な濃度は、基準としてH2Na2edta溶液を、そして指示薬としてカルゴナイトを用いて、最高12.5のpHで比色滴定により決定することができる。H4tpaen(3×10-4M)、酸性化された(pH最高2.5)1:1のLn:配位子混合物([L]3×10-4M)、酸性化された(pH最高2.5)1:1のCa:配位子混合物([L]7×10-5M)の溶液20mLを、KOH0.1Mの溶液を添加した後アルゴン下でサーモスタット(25.0℃±0.1℃)付きセル内で滴定する。
【0078】
KCl(μ=0.1M)でイオン力を判定した。ガラスpH電極の備わった電位差計Metrohm751GPD Titrinoで滴定を行なった。各々の測定前に電極システムを較正した。
【0079】
起電力はE=E°+sp[H+]という等式により得られ、ここでE°およびsは、滴定のため酸のゾーンを用いてμ=0.1M(KCl)で0.1MのKOHと共に既知の量のHClの滴定により決定される。水のイオン積について用いられた値は、pKw=13.77であった。各実験について、50点を超えるデータを収集した。
【0080】
さらに、図2および3で示されているように、それぞれ錯体[Eu(tpaen)]K(H2O)3・4H2Oおよび{[Ce(tpaen)]K(H2O)32・16H2Oの結晶構造をX線回折により分析した。二つの錯体中、イオンLnIIIは四つの酸素原子(金属−Oの距離の平均値は、ユウロピウムについて2.42(1)Åそしてセリウムについては2.50(4)Åである)および六つの窒素原子(金属−N−ピリジンの距離の平均値は、ユウロピウムについて2.65(4)Åおよびセリウムについて2.72(1)Åであり、金属−N−アミンの距離の平均値は、ユウロピウムについて2.91(1)Å、セリウムについて2.91(4)Åである)により十配位される。
【0081】
溶液中に存在する配位された水の分子数qは、パーカー方程式(q=ALn(1/τH2O−1/τD2O−αLn)、(なお式中ATb=5ms、AEu=1.2ms、αTb=0.06ms-1およびαEu=0.25ms-1である)を用いて寿命時間の測定に基づいて決定された。量子収率Qは、方程式Qx/Qr=Ar(ν)×nx2×Dx/Ax(ν)×nr2×Dr、(なお式中xは試料、rは基準;Aは吸光度、νは利用された励起波数、nは屈折率そしてDは発光強度の積分である)を用いて計算した。
【0082】
トリス(ジピコリナート)錯体[Eu(dpa)33-](Φ=13.5%、0.1Mのトリス緩衝液中7.5×10-5M)および[Tb(dpa)33-(Φ=26.5%、0.1Mのトリス緩衝液中6.5×10-5M)をそれぞれに、Eu−およびTbの試料の量子収率の決定のための基準として利用する。ローダミン101(Qabs=エタノール中100%)およびクレシルバイオレット(Qabs=メタノール中54%)との関係におけるトリ(ジピコリナート)錯体の量子収率を測定してデータの整合性を確認した。
【0083】
本発明に従った錯体の化学的および物理的分析は、配位子N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンのピリジンカルボキシラート基の「腕」が、らせんおよびC2偽対称配置で中心金属を取り囲んでいることを示している。
【0084】
二つの錯体は、光学異性体ΛおよびΔのラセミ混合物の中で結晶化する。
【0085】
298Kのtpaen配位子とユウロピウムの錯体の場合について図4に示されているとおりのユウロピウムおよびセリウムの錯体の核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、それらの構造が、NMRスペクトルの獲得時間中配位子の四つの「腕」が金属と配位された状態にとどまっているC2剛性対称と相容性あるものである、ということを示している(*EtoH)。
【0086】
観察された対称性は、固体状態で見られるものに類似した溶解状態での二重らせんキラル構造と符合している。
【0087】
錯体は、D2Oでの錯体[Ce(tpaen)]-という特定のケースについてそれぞれ333Kおよび298Kの温度で実施された、図5(*DSS:#不純物)および図6(*自由配位子)の1H NMRによって示されているように、298〜363Kの間の温度範囲内でその剛性構造を保つ。
【0088】
上述のものに類似のC2剛性対称の存在は、同様に、7.7というpHで重水中で現場にて調製されるLaおよびTbの錯体についても同じ温度範囲に関して観察された。高いデンティシティ(denticity)をもつ配位子とのランタニド錯体についてきわめて稀にしか見られないこれらの溶解状態の錯体の高い剛性は、単一のエチレンジアミン鎖によって確保される10個の供与原子の配置が、溶媒分子に対する高い有効な保護を中心金属にもたらすランタニド錯体の形成に充分適合されたものである、ということを表わしている。
【0089】
この保護の結果として、tpaen配位子とEuIIIおよびTbIIIの錯体は、水中および重水中で寿命の長い強いルミネセンスを提供する。[Eu(tpaen)]-および[Tb(tpaen)]-についてのEu(50)およびTb(54)レベルの寿命時間は、それぞれEuおよびTb錯体中の0.04±0.2および0.03±0.2の配位された水分子の存在と符合している。
【0090】
従って、ランタニド、特にEuおよびTbのイオンのルミネセンス特性は、tpaen配位子により大幅に改善される。図7は、274nmでの配位子の励起の後の[Eu(tpaen)]-(実線)および[Tb(tpaen)]-(点線)の発光スペクトルを示す。
【0091】
配位子から金属に向けた効果的なエネルギー伝達は、ユウロピウムとテルビウムの錯体の励起スペクトルおよび吸光スペクトル間の類似性によって強調される。図8は、トリス緩衝液中の[Tb(tpaen)]-錯体の吸光スペクトル(点線)および励起スペクトル(実線)を示している。
【0092】
15%の実験誤差で0.1M濃度の通気されたトリス緩衝液中で[Tb(dpa)33-錯体との関係において測定された[Tb(tpaen)]-錯体についての量子収率(Φ=45%)は、今日までに言及されてきた中で最も高い値の一つである。tpaen発色団は同様に効果的な形で、7%という量子収率値をもつユウロピウムイオンにも感光性を与える。この値は、TbIII錯体について得られた値よりは低いものの、それでも、現在市販されている発光プローブにおいて用いられているランタニド錯体の量子収率よりも高い。
【0093】
下表に示されているとおり、これらのイオンの強いルミネセンスは、配位子から金属に向けた効果的なエネルギー伝達および周囲の水分子による非放射的不活性化に対する中心金属の保護の結果である。
【0094】
【表1】

【0095】
発明者らの知るかぎり今日までに観察された最も長い寿命時間の一つである、水中のテルビウム錯体において見られるルミネセンスの寿命時間は、金属から配位子に向けたエネルギーのリターンを含む脱励起過程の存在を排除する。寿命時間についてのこの値は、二つのピリジンカルボキシラート基を含有する8価の配位子の錯体について近年開示されたもの(22988cm-1)に類似する[Tb(tpaen)]錯体のトリプレット状態と全く矛盾のないものである。テルビウム錯体についての高い量子収率はこの値と充分符合する。
【0096】
本発明に従った配位錯体は複数の利点を呈している。一方では、十座発色団において四つの2価発色団を配置するためのこの直接的アプローチは、生理学的pHで安定し高い溶解度をもつランタニド錯体を生成する。他方では、配位子のアーキテクチャは、溶媒の分子との相互作用から中心金属が実際に保護されている剛性構造を導く。
【0097】
さらに、このアプローチは、医用画像および生物学的検定における利用のために、好ましくは紫外線または近赤外線のゾーン内でルミネセンスを発出する発色団から作製されたこれらの化合物を用いて、可視紫外線、赤外線および近赤外線のゾーン内で発光性の安定したプローブを開発するための多種多様な展望を開くものである。より一般的には、医療分野、とくに医療分析の分野は本発明の恩恵を受けることができると思われる。なお、本出願で記述されているような化合物には、ルミネセンス画像用のマーカーを開発するべく生体分子に結合する能力をもつ或る種の官能基を定着させることができる。該錯体は、デンドリマーといった認識官能基を取込むことができ、また同様に、ペプチド、オリゴヌクレオチド、重合体、ナノチューブに結合させることもできる。
【0098】
本発明はかくして、特に発光プローブとして役立つべく、本発明に従った錯体上に定着させられた生体分子にも関する。本発明に従った錯体は、その特性のため、ナノテクノロジー産業そして特にダイオードまたは光ファイバといったようなナノテクノロジーデバイスにおいて利用可能である。
【0099】
当然のことながら、本発明の枠から逸脱することなく、当業者が理解できるその他の実施形態を考慮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】滴定曲線のグラフを表わす。
【図2】ランタニド錯体の分子構造を表わす。
【図3】第二のランタニド錯体の分子構造を表わす。
【図4】ランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
【図5】333Kでのランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
【図6】298Kでのランタニド錯体の1H NMRスペクトルを表わす。
【図7】274nmでの励起後の二つのランタニド錯体の発光スペクトルを表わす。
【図8】ランタニドの発光スペクトルおよび励起スペクトルを表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{[M(L)]X(H2O)np
という一般構造式(I)の遷移金属の配位錯体において、式中、
− Mはランタニド群に属する元素を表わし、
− Lは、
【化1】

という一般構造式(II)の十座発色団配位子を表わし、この式中、
・ R1、R2、R3およびR4は水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ A1、A2、A3およびA4は、
【化2】

という一般構造式(III)の構造に独立して対応し、この式中、
・ U1、U2およびU3は独立してCまたはNに対応し、
・ R5、R6およびR7は水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
・ Yは、C、O、S、PまたはNに対応し、
・ mはYの自由原子価数に対応する整数であり、
・ R8は水素、アルキル基またはアリール基に独立して対応し、
−Xは対イオンを表わし、
−nは水和水分子数を表わし、
−pは単量体数に対応し、
−H2Oは水和水分子を表わす、
配位錯体。
【請求項2】
ランタニド群に属する元素がユウロピウムであることを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
ランタニド群に属する元素がセリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項4】
ランタニド群に属する元素がテルビウムであることを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項5】
1、R2、R3およびR4が独立して水素、メチルまたはエチルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の錯体。
【請求項6】
1、A2、A3およびA4が同一であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の錯体。
【請求項7】
Yが硫黄または酸素であり、かつmが0に等しいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の錯体。
【請求項8】
1、U2およびU3が炭素であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の錯体。
【請求項9】
5、R6およびR7が水素であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の錯体。
【請求項10】
配位子が、エチレンジアミン骨格構造により結合されている四つの二座発色団基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項11】
配位子が、エチレンジアミン骨格構造により結合されている四つのピリジンカルボキシラート基を含むことを特徴とする、請求項1または10に記載の錯体。
【請求項12】
配位子が、N,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンであることを特徴とする、請求項1〜11に記載の錯体。
【請求項13】
対イオンが元素周期表の1A族に属する元素であることを特徴とする、請求項1〜12に記載の錯体。
【請求項14】
対イオンがカリウムであることを特徴とする、請求項1〜13に記載の錯体。
【請求項15】
【化3】

(なお式中、R1、R2、R3およびR4は上記で定義づけしたとおりである)という一般構造式(IV)のジアミンと、
【化4】

(なお式中、Y、R5、R6、R7、R8、U1、U2およびU3は上記で定義づけしたとおりであり、Rはアルキルまたはアリールに対応し、LGはジアミンからの求核性置換を受ける可能性のある離脱基を表わす)という構造式(V)の少なくとも一つの化合物との反応を含むことを特徴とする、請求項1または14に記載の配位子の調製方法。
【請求項16】
LGがCl、Br、I、−OTf、−OTs、CNの中から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の配位子の調製方法。
【請求項17】
Rが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、トリメチルシリル(TMS)基またはテルブチルジメチルシリル(TBDMS)基の中から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
6−クロロメチルピリジン−2−カルボキシラートのエチルエステルとエチレンジアミンとの間の有機媒質内での反応を含むことを特徴とする、請求項15〜17に記載の配位子の調製方法。
【請求項19】
ランタニドの塩と配位子との間の水性媒質内での反応を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の配位錯体の調製方法。
【請求項20】
ランタニド塩が塩化ランタニドであることを特徴とする、請求項19に記載の配位錯体の調製方法。
【請求項21】
三塩化ユウロピウムとN,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピラジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンとの間の反応を含むことを特徴とする、請求項20に記載の配位錯体の調製方法。
【請求項22】
三塩化セリウムとN,N,N’,N’−テトラキス[(6−カルボキシピリジン−2−イル)メチル]−エチレンジアミンとの間の反応を含むことを特徴とする、請求項20に記載の配位錯体の調製方法。
【請求項23】
医療分野における請求項1〜14のいずれか一つに記載の錯体の利用。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の錯体上に定着された生体分子。
【請求項25】
医用画像または生物学的検定用の発光プローブにおける、請求項1〜14のいずれか一つに記載の錯体の利用。
【請求項26】
ナノテクノロジーデバイスにおける請求項1〜14のいずれか一つに記載の錯体の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−507905(P2009−507905A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530565(P2008−530565)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002089
【国際公開番号】WO2007/031640
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(500539103)コミッサリア ア レネルジ アトミック (29)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】