説明

ルミネセンス用途のクリセン化合物

本開示は、エレクトロルミネッセンス用途に有用なクリセン化合物に関する。本発明は、活性層がそのようなクリセン化合物を含む電子デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、その記載内容全体が参照により援用される2009年7月1日に出願された米国仮特許出願第61/222,244号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、エレクトロルミネッセンスのクリセン化合物に関する。本発明は、活性層がこのようなクリセン化合物を含む電子デバイスにも関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイを構成する発光ダイオードなどの光を発する有機電子デバイスは、多くの異なる種類の電子装置中に存在する。すべてのこのようなデバイスにおいては、2つの電気接触層の間に有機活性層が挟まれている。少なくとも1つの電気接触層は、光が電気接触層を通過できるように光透過性である。電気接触層に電気を印加すると、有機光活性層は、光透過性電気接触層を透過する光を発する。
【0004】
発光ダイオード中の活性成分として有機エレクトロルミネッセンス化合物が使用されることが知られている。アントラセン、チアジアゾール誘導体、およびクマリン誘導体などの単純な有機分子はエレクトロルミネッセンスを示すことが知られている。半導体共役ポリマーもエレクトロルミネッセンス成分として使用されており、たとえば、米国特許第5,247,190号明細書、米国特許第5,408,109号明細書、および欧州特許出願公開第443 861号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エレクトロルミネッセンス化合物、特に青色発光の化合物が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
式I:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中:
1、R2、R3、およびR4は、同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、およびシリルからなる群から選択され、R1基とR2基、またはR3基とR4基は、互いに結合して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
5およびR6は、同じまたは異なるものであって、D、アルキル、シリル、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、およびフルオレニルからなる群から選択され;
7およびR8は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかであり;
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
aおよびbは、同じまたは異なるものであって、1〜5の整数であり;
cおよびdは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数である)
で表される化合物を提供する。
【0009】
7およびR8が、D、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかである式Iの化合物も提供される。
【0010】
式Iの化合物を含む活性層を含む電子デバイスも提供される。
【0011】
本明細書において提示される概念の理解をすすめるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】有機電子デバイスの一例の図である。
【0013】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
多数の態様および実施形態が本明細書において開示されるが、これらは例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、当業者には、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が可能であることが理解されよう。
【0015】
任意の1つ以上の実施形態の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、クリセン化合物、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0016】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「脂肪族環」は、非局在化π電子を有さない環状基を意味することを意図している。ある実施形態においては、脂肪族環は不飽和を有さない。ある実施形態においては、この環は1つの二重結合または三重結合を有する。
【0018】
用語「アルキル」は、1つの結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味することを意図しており、線状、分枝状、または環状の基が含まれる。この用語は、ヘテロアルキル類を含むことを意図している。用語「炭化水素アルキル」は、ヘテロ原子を全く有さないアルキル基を意味する。ある実施形態においては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0019】
用語「アリール」は、1つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。この用語は、1つの環を有する基、および1つの結合によって結合したり互いに縮合したりする場合がある複数の環を有する基を含んでいる。この用語は、ヘテロアリール類を含むことを意図している。用語「アリーレン」は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。ある実施形態においては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0020】
用語「分枝アルキル」は、少なくとも1つの第2級または第3級炭素を有するアルキル基を意味する。用語「第2級アルキル」は、第2級炭素原子を有する分枝アルキル基を意味する。用語「第3級アルキル」は、第3級炭素原子を有する分枝アルキル基を意味する。ある実施形態においては、分枝アルキル基は、第2級または第3級炭素を介して結合する。
【0021】
用語「化合物」は、原子からなる分子から構成される非帯電物質であって、これらの原子が、物理的手段によって分離することができない物質を意味することを意図している。デバイス中の層に言及するために使用される場合、語句「隣接する」は、ある層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味するものではない。他方で、語句「隣接するR基」は、化学式中で互いに隣同士であるR基(すなわち、1つの結合によって連結した複数の原子上に存在する複数のR基)を意味するために使用される。接頭語「フルオロ」は、1つ以上の炭素原子がフッ素で置換されていることを示す。
【0022】
接頭語「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示している。ある実施形態においては、この異なる原子はN、O、またはSである。
【0023】
用語「層」は、用語「膜」と同義的に使用され、所望の領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されることはない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊機能領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層および膜は、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
用語「有機電子デバイス」または場合により単に「電子デバイス」は、1つ以上の有機半導体層または有機半導体材料を含むデバイスを意味することを意図している。
【0025】
用語「光活性」は、エレクトロルミネッセンスおよび/または感光性を示すあらゆる材料を意味する。
【0026】
用語「シロキサン」は、基(RO)3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、またはフルオロアルキルである)を意味する。
【0027】
用語「シリル」は、基R3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、フルオロアルキル、またはアリールである)を意味する。ある実施形態においては、Rアルキル基中の1つ以上の炭素がSiで置換されている。ある実施形態においては、シリル基は(ヘキシル)2Si(CH3)CH2CH2Si(CH32−および[CF3(CF26CH2CH22Si(CH3)−である。
【0028】
特に明記しない限り、すべての基は、置換されることができるし、非置換であることもできる。ある実施形態においては、置換基は、D、ハライド、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、アリール、およびシアノからなる群から選択される。すべての基は、部分的または完全に重水素化されていてもよい。
【0029】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの記載内容全体が参照として援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0030】
さらに、全体的にIUPAC番号方式が使用され、周期表の族は、左から右に1〜18の番号が付けられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition,2000)。
【0031】
2.クリセン化合物
本開示の一実施形態は式I:
【0032】
【化2】

【0033】
(式中:
1、R2、R3およびR4は、同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、およびシリルからなる群から選択され、R1基とR2基、またはR3基とR4基は、互いに結合して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
5およびR6は、同じまたは異なるものであって、D、アルキル、シリル、フェニル、ナフチル、カルバゾリル、およびフルオレニルからなる群から選択され;
7およびR8は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかであり;
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
aおよびbは、同じまたは異なるものであって、1〜5の整数であり;
cおよびdは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数である)
の組成物である。この化合物は青色発光が可能である。
【0034】
本明細書に記載のクリセン化合物は、アミノ窒素上にメタ置換フェニル環を有し、そのメタ置換基はアリール基である。本発明の化合物は、電子デバイス中で良好な寿命を示し、青色発光する。この色は、C.l.E.色度図(国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage),1931)によるx座標およびy座標として求められる。「青色」とは、エレクトロルミネッセンスの色座標がx≦0.145およびy≦0.14であることを意味する。
【0035】
ある実施形態においては、R1からR4は炭化水素アルキル基である。ある実施形態においては、R1は分枝炭化水素アルキル基であり、R2からR4はHである。ある実施形態においては、分枝炭化水素アルキル基は3〜8個の炭素原子を有する。ある実施形態においては、分枝炭化水素アルキル基は、イソプロピルおよび2−ブチルからなる群から選択される第2級アルキルである。ある実施形態においては、分枝炭化水素アルキル基は、t−ブチルおよび2−(2−メチル)−ブチルからなる群から選択される第3級アルキルである。
【0036】
ある実施形態においては、R1とR2とを合わせたもの、およびR3とR4とを合わせたものが5または6員の脂肪族環を形成する。ある実施形態においては、この脂肪族環はシクロヘキシルおよびシクロペンチルからなる群から選択される。ある実施形態においては、脂肪族環は1つ以上のアルキル置換基を有する。ある実施形態においては、R1とR2とを合わせたものが5または6員の脂肪族環を形成し、R3およびR4はHである。
【0037】
ある実施形態においては、R1からR4のそれぞれがHである。
【0038】
ある実施形態においては、R5およびR6は、直鎖または分枝アルキル基である。ある実施形態においては、R5およびR6は、直鎖または分枝炭化水素アルキル基である。ある実施形態においては、R5およびR6は、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素アルキル基である。ある実施形態においては、c=d=1であり、R5およびR6は4位に存在する。用語「4位」は、窒素が結合した炭素に対してパラ位の炭素を意味する。ある実施形態においては、c=d=2であり、R5およびR6は2位および4位に存在する。用語「2位」は、窒素が結合した炭素に対してオルト位の炭素を意味する。
【0039】
ある実施形態においては、R5およびR6は、o−フェニル基、m−フェニル基、p−フェニル基、m−N−カルバゾリル基、p−N−カルバゾリル基、および2−フルオレニル基からなる群から選択される芳香族基である。m−N−カルバゾリルとは、対象分子のフェニル環の3位に結合した基
【0040】
【化3】

【0041】
を意味する。p−N−カルバゾリルとは、対象分子のフェニル環の4位に結合した上記基を意味する。2−フルオレニルとは、
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、RはHまたはアルキルである)
の基を意味する。2−フルオレニル基は、窒素が結合した炭素に対してメタ位またはパラ位であることができる。上記の芳香族基は、D、アルキル基、シリル基、またはフェニル基でさらに置換されていてもよい。
【0044】
ある実施形態においては、R7およびR8は、1〜10の炭素原子を有する炭化水素アルキル基から選択される。ある実施形態においては、aおよびbは1であり、R7およびR8は、窒素が結合した炭素に対してパラ位に存在する。ある実施形態においては、aおよびbは2であり、2つのR7基およびR8基は、窒素が結合した炭素に対してパラ位またはオルト位に存在する。
【0045】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、N−カルバゾリルフェニル、および式II:
【0046】
【化5】

【0047】
(式中:
9は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、およびアリールからなる群から選択され;
eは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数であり;
fは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜5の整数であり;
mは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜6の整数である)
で表される基からなる群から選択される。「N−カルバゾリルフェニル」は、基
【0048】
【化6】

【0049】
を意味する。カルバゾリルフェニル基は、窒素が結合した炭素に対してメタ位またはパラ位であることができる。この基は、D、アルキル基、シリル基、またはフェニル基でさらに置換されていてもよい。
【0050】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、式IIa:
【0051】
【化7】

【0052】
(式中、R9、e、f、およびmは前述の定義の通りである)
で表される。
【0053】
式Iのある実施形態においては、R7およびR8は、D、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基がが互いに結合してナフチル基を形成することができるかである。驚くべきことで予期せぬことに、これらのR7基およびR8基を有する化合物は、深青色光を発することが分かった。この色は、C.l.E.色度図(国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage),1931)によりx座標およびy座標として決定される。「深青色」は、エレクトロルミネセンス(electroluminesence)の色座標がx≦0.145およびy≦0.128であることを意味する。深青色発光体は、多くのディスプレイ用途において所望の色域を実現するために必要となる。
【0054】
ある実施形態においては、本発明のクリセン化合物は化合物E1からE7から選択される:
【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
本発明の新規クリセン類は、周知のカップリング反応および置換反応によって調製することができる。代表的な調製は実施例に示している。
【0060】
本発明に記載のクリセン化合物は、液相堆積技術を使用して膜を形成することができる。ホストマトリックス中に分散したこれらの材料の薄膜は、良好から優秀なフォトルミネッセンス特性および青色発光を示す。
【0061】
3.電子デバイス
本明細書に記載の青色発光材料を含む1つ以上の層を有することが有益となりうる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
有機電子デバイス構造の一例を図1に示す。デバイス100は、第1の電気接触層のアノード層110、および第2の電気接触層のカソード層160、並びにそれらの間の光活性層140を有する。アノードに隣接して緩衝層120が存在する。緩衝層に隣接して、正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が存在する。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む電子輸送層150が存在することができる。選択肢の1つとして、デバイスは、アノード110の隣に1つ以上の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)、および/またはカソード160の隣に1つ以上の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用することができる。
【0063】
層120から150は、個別および集合的に活性層と呼ばれる。
【0064】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;緩衝層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0065】
デバイス100の用途に依存するが、光活性層140は、印加電圧によって励起する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。光検出器の例としては、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、および光電管、ならびに光起電力セルが挙げられ、これらの用語は、Markus、John、Electronics and Nucleonics Dictionary、470および476(McGraw−Hill, Inc.1966)に記載されている。
【0066】
a.光活性層
式Iのクリセン化合物は、層140中の光活性材料として有用である。これらの化合物は単独で使用することもできるし、ホスト材料と組み合わせることもできる。
【0067】
ある実施形態においては、ホストは、ビス縮合環状芳香族化合物である。
【0068】
ある実施形態においては、ホストはアントラセン誘導体化合物である。ある実施形態においては、この化合物は、式:
An−L−An
(式中:
Anはアントラセン部分であり;
Lは二価の連結基である)
で表される。この式のある実施形態においては、Lは、単結合、−O−、−S−、−N(R)−、または芳香族基である。ある実施形態においては、Anはモノ−またはジフェニルアントリル部分である。
【0069】
ある実施形態においては、ホストは、式:
A−An−A
式中:
Anは、アントラセンまたは重水素化アントラセン部分であり;
Aは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、芳香族基である)
で表される。
【0070】
ある実施形態においては、A基は、アントラセン部分の9位および10位に結合する。ある実施形態においては、Aは、ナフチル、ナフチルフェニレン、ナフチルナフチレン、およびそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される。ある実施形態においてはこの化合物は対称であり、ある実施形態においてはこの化合物は非対称である。
【0071】
ある実施形態においては、ホストは、式:
【0072】
【化12】

【0073】
(式中:
1およびA2は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、H、D、芳香族基、およびアルケニル基からなる群から選択されるか、あるいはAは1つ以上の縮合芳香環を表すことができるかのいずれかであり;
pおよびqは、同じまたは異なるものであって、1〜3の整数である)
で表される。ある実施形態においては、このアントラセン誘導体は非対称である。ある実施形態においては、p=2およびq=1である。ある実施形態においては、A1およびA2の少なくとも1つがナフチル基または重水素化ナフチル基である。
【0074】
ある実施形態においては、ホストは、
【0075】
【化13】

【0076】
およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0077】
式Iのクリセン化合物は、光活性層中の発光ドーパントとして有用であることに加えて、光活性層140中の別の発光ドーパントの電荷キャリアホストとして機能することもできる。本発明のクリセン化合物は、単独のホスト材料として使用することができるし、1種類以上の追加のホスト材料と組み合わせて使用することもできる。
【0078】
b.他のデバイス層
デバイス中の他の層は、そのような層中に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0079】
アノード110は、正電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。アノードは、たとえば金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料でできていいてもよいし、伝導性ポリマー、およびそれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属が挙げられる。アノードが光透過性となるべき場合には、インジウムスズ酸化物などの12族、13族、および14族の金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノード110は、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」、Nature 第357巻、pp 477−479(1992年6月11日)に記載されるようなポリアニリンなどの有機材料を含むこともできる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0080】
緩衝層120は緩衝材料を含み、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。緩衝材料は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよい。これらは、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい液体から気相堆積または堆積することができる。
【0081】
緩衝層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成され得る。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。
【0082】
緩衝層は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。
【0083】
ある実施形態においては、緩衝層は、少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび少なくとも1種類のフッ素化酸ポリマーを含む。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0084】
層130の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.Wangにより,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第18巻、p.837−860、1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子は:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)、および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物である。一般に使用される正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、およびポリアニリンである。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。場合により、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。場合により、これらのポリマーおよびコポリマーは架橋性である。
【0085】
層150中に使用可能な他の電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ);ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの混合物が挙げられる。層150は、電子輸送の促進と、層界面での励起子の消光を防止する緩衝層または閉じ込め層としての両方の機能を果たすことができる。好ましくは、この層は電子移動を促進し、励起子の消光を減少させる。
【0086】
カソード160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソードの材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウム、ならびに組み合わせた材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、Li含有有機金属化合物、LiF、およびLi2Oを有機層とカソード層との間に堆積することもできる。
【0087】
有機電子デバイス中に別の層を有することが知られている。たとえば、注入される正電荷量を制御するため、および/または層のバンドギャップの整合性を促進するため、あるいは保護層として機能させるために、アノード110と緩衝層120との間に層(図示せず)が存在してもよい。銅フタロシアニン、ケイ素酸窒化物、フルオロカーボン類、シラン類、またはPtなどの金属の超薄層などの、当技術分野において周知の層を使用することができる。あるいは、アノード層110、活性層120、130、140、および150、あるいはカソード層160の一部またはすべては、電荷キャリア輸送効率を増加させるために表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、好ましくは、高いエレクトロルミネッセンス効率を有するデバイスを得るために発光層中の正電荷および負電荷の釣り合いを取ることによって決定される。
【0088】
各機能層は2つ以上の層で構成されてよいことを理解されたい。
【0089】
本発明のデバイスは、好適な基体上に個別の層を順次気相堆積するなどの種々の技術によって作製することができる。ガラス、プラスチック、および金属などの基体を使用することができる。熱蒸着、化学蒸着などの従来の気相堆積技術を使用することができる。あるいは、有機層は、限定するものではないが、スピンコーティング、浸漬コーティング、ロール・トゥ・ロール技術、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティングまたは印刷技術を使用して、好適な溶媒中の溶液または分散体から適用することもできる。
【0090】
本発明は、2つの電気接触層の間に少なくとも1つの活性層を含む電子デバイスであって、デバイスの少なくとも1つの活性層が式1のクリセン化合物を含む電子デバイスにも関する。多くの場合デバイスは追加の正孔輸送および電子輸送層を有する。
【0091】
高効率LEDを実現するために、正孔輸送材料のHOMO(最高被占分子軌道)がアノードの仕事関数に合わせられることが望ましく、電子輸送材料のLUMO(最低空分子軌道)がカソードの仕事関数に合わせられることが望ましい。材料の化学的適合性および昇華温度も、電子輸送材料および正孔輸送材料の選択における重要な考慮事項である。
【0092】
本明細書に記載のクリセン化合物を使用して作製されたデバイスの効率は、デバイス中の別の層を最適化することによってさらに改善できることを理解されたい。たとえば、Ca、Ba、またはLiFなどのより効率的なカソードを使用することができる。動作電圧を下げ量子効率を増加させる成形基体および新規な正孔輸送材料も利用可能である。種々の層のエネルギー準位を調整しエレクトロルミネッセンスを促進するために追加層を加えることもできる。
【0093】
本発明のクリセン化合物は、多くの場合、蛍光性およびフォトルミネッセンスであり、酸素感受性インジケーターおよびバイオアッセイにおける蛍光インジケーターなど、OLED以外の用途において有用となりうる。
【実施例】
【0094】
以下の実施例により、本発明の特定の特徴および利点を説明する。これらは、本発明の説明を意図するものであり、限定を意図するものではない。特に明記しない限り、すべてのパーセント値は重量を基準としている。
【0095】
実施例1
この実施例では、化合物E1であるN6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−N6,N12−ビス(4’−(ナフタレン−1−イル)ビフェニル−4−イル)クリセン−6,12−ジアミンの調製を示す。
【0096】
【化14】

【0097】
ドライボックス中で、6,12−ジブロモクリセン(0.27g、0.69mmol)、N−(2,4−ジメチルフェニル)−N−(4’−(ナフタレン−1−イル)ビフェニル−4−イル)アミン(0.60g、1.41mmol)、トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.042g、0.21mmol)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.094g、0.103mmol)を丸底フラスコ中で混合し、20mlの乾燥トルエン中に溶解させた。得られた溶液を1分間撹拌した後、ナトリウムtert−ブトキシド(0.145g、1.51mmol)および10mlの乾燥トルエンを加えた。マントルヒーターを取り付け、反応物を60Cで18時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、1インチのシリカゲルのプラグおよび1インチのセライトのプラグで濾過し、トルエン(500mL)で洗浄した。減圧下で揮発分を除去して黄色固体を得た。粗生成物を、ヘキサン中クロロホルムのグラジエント(0%から20%)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。DCMおよびアセトニトリルから再結晶して、0.400g(60%)の生成物を黄色固体として得た。1H NMR(CDCl3)は構造と一致している。
【0098】
実施例2
この実施例では、化合物E2であるN6,N12−ビス(4−(ビフェニル−3−イル)フェニル−2−イル)−N6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミンの調製を示す。
【0099】
【化15】

【0100】
ドライボックス中で、6,12−ジブロモクリセン(0.68g、1.75mmol)、N−(2,4−ジメチルフェニル)−N−(4−(ビフェニル−3−イル)フェニル−2−イル)アミン(1.35g、3.67mmol)、トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.035g、0.175mmol)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.080g、0.087mmol)を丸底フラスコ中で混合し、15mlの乾燥トルエン中に溶解させた。得られた溶液を1分撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.37g、3.84mmol)および5mlの乾燥トルエンを加えた。マントルヒーターを取り付け、反応物を60Cで3日間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、1インチのシリカゲルのプラグおよび1インチのセライトのプラグで濾過し、トルエン(500mL)で洗浄した。減圧下で揮発分を除去して黄色固体を得た。粗生成物を、ヘキサン中クロロホルムのグラジエント(0%から40%)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。DCMおよびアセトニトリルから再結晶して0.900g(59%)の生成物を黄色固体として得た。1H NMR(CDCl3)は構造と一致している。
【0101】
実施例3
この実施例では、化合物E3であるN6,N12−ビス(3−(9−カルバゾリル)フェニル)−N6,N12−ビス(4−t−ブチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミンの調製を示す。
【0102】
【化16】

【0103】
窒素を充填したグローブボックス中に0.39gのジブロモクリセン(1mM)を入れ、0.80g(2.1mM)の適切な第2級アミン(9−(3−ブロモフェニル)−カルバゾールおよび4−t−ブチルアニリンから前述のように調製)および0.22gのt−BuONa(2.2mM)を10mLのキシレンとともに加える。2mLのキシレン中に溶解させた0.15gのPd2DBA3(0.15mM)、0.06gのP(t−Bu)3(0.30mM)を加える。窒素下で、110℃におけるマントル中、グローブボックス中で1時間加熱混合する。溶液は直ちに暗紫色になるが、約80℃に到達すると、暗黄褐色になり顕著な青色ルミネッセンスを示す。約80Cまで冷却し、終夜撹拌を続ける。冷却し、グローブボックスから取り出してワークアップを行い、塩基性アルミナ/シリカ/フロリジルプラグで濾過し、1/1のDCM/トルエンで溶出させる。この青色ルミネッセンス材料はカラムから淡黄色溶液として溶出する。少量になるまで蒸発させ、ジエチルエーテルを加えると、青色PLを有する淡黄色固体として沈殿し約1.0gの収量となる。シリカゲル上でTLCを行うと、トルエン/ヘキサン中で1つの青色スポットが示される。材料は、トルエンに対して中程度の溶解性であり、その構造は1−H nmr分光法によって確認される。
【0104】
実施例4
この実施例では、化合物E4であるN6,N12−テトラ(3−(9−カルバゾリル)フェニル)−クリセン−6,12−ジアミンの調製を示す。
【0105】
【化17】

【0106】
窒素を充填したグローブボックス中に0.39gのジブロモクリセン(1mM)を入れ、1.0g(2.1mM)の適切な第2級アミン(9−(3−アミノフェニル)カルバゾールおよび9−(3−ブロモフェニル)カルバゾールから前述のように調製)および0.22gのt−BuONa(2.2mM)を10mLのキシレンとともに加える。2mLのキシレン中に溶解させた0.15gのPd2DBA3(0.15mM)、0.06gのP(t−Bu)3(0.30mM)を加える。窒素下で、110℃におけるマントル中、グローブボックス中で1時間加熱混合する。溶液は直ちに暗紫色になるが、約80℃に到達すると、暗黄褐色になり顕著な青色ルミネッセンスを示す。約80℃まで冷却し、終夜撹拌を続ける。室温まで冷却し、グローブボックスから取り出してワークアップを行い、塩基性アルミナ/シリカ/フロリジルプラグで濾過し、1/1のDCM/トルエンで溶出させる。この青色ルミネッセンス材料はカラムから淡黄色溶液として溶出する。少量になるまで蒸発させ、ジエチルエーテルを加えると、青色PLを有する淡黄色固体として沈殿し約1.0gの収量となる。シリカゲル上でTLCを行うと、トルエン/ヘキサン中で1つの青色スポットが示される。材料は、トルエンに対して高い溶解性であり、その構造は1−H nmr分光法によって確認される。
【0107】
前述のものと類似の合成技術を使用して、化合物E5〜E7および以下の比較例化合物Aを調製した。
【0108】
【化18】

【0109】
実施例5
この実施例では、深青色発光を示すデバイスの製造および性能を示す。以下の材料を使用した:
アノード=インジウムスズ酸化物(50nm)
緩衝層=緩衝液1(50nm)、これは導電性ポリマーとポリマーフッ素化スルホン酸との水性分散体である。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。
【0110】
正孔輸送層=HT−1、ビナフタレンポリマー(20nm)
光活性層=重量比13:1のホストH1:ドーパント(60nm)。ドーパントは表中に示している。
【0111】
電子輸送層=金属キノレート誘導体(10nm)
カソード=CsF/Al(0.7/100nm)
【0112】
OLEDデバイスは溶液処理と熱蒸着技術との組み合わせによって製造した。Thin Film Devices,Incのパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、30オーム/スクエアのシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。次に、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0113】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却の直後に、緩衝液1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に発光層溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空室に入れた。熱蒸着によって電子輸送層を堆積し、次にCsF層を堆積した。次に真空下でマスクを交換し、Al層を熱蒸着によって堆積した。真空室に通気し、ガラス蓋、デシカント(dessicant)、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0114】
分光放射計を使用して、発光色の座標を求めた。結果を表1中に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例6
この実施例では、深青色発光を示すデバイスの製造および性能を示す。
【0117】
アノードの厚さが180nmであったことを除けば、実施例5に記載されるようにデバイスを作製した。結果を表2中に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
実施例7〜9
これらの実施例では、深青色発光を示すデバイスの製造および性能を示す。
【0120】
緩衝層の厚さが25nmであり、光活性層の厚さが48nmであったことを除けば、実施例5に記載されるようにデバイスを作製した。結果を表3中に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
実施例10〜13
これらの実施例では、青色または深青色発光を示すデバイスの製造および性能を示す。
【0123】
正孔輸送層にHT−2を使用し、光活性層の厚さが40nmであったことを除けば、実施例5に記載されるようにデバイスを作製した。HT−2は別のビナフタレンポリマーである。結果を表4中に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つ以上のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0126】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0127】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0128】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、範囲内で記載される値に関する言及は、その範囲内の個別のそれぞれの値を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中:
1、R2、R3、およびR4は、同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、およびシリルからなる群から選択され、R1基とR2基、またはR3基とR4基は、互いに結合して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
5およびR6は、同じまたは異なるものであって、D、アルキル、シリル、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、およびフルオレニルからなる群から選択され;
7およびR8は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかであり;
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
aおよびbは、同じまたは異なるものであって、1〜5の整数であり;
cおよびdは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数である)
で表される化合物。
【請求項2】
7およびR8が、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が、イソプロピル、2−ブチル、t−ブチル、および2−(2−メチル)−ブチルからなる群から選択される分枝炭化水素アルキル基であり、R2からR4がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1およびR2を合わせたものがシクロペンチルおよびシクロヘキシルからなる群から選択される脂肪族環を形成し、R3およびR4がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
1からR4のそれぞれがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
5およびR6が、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
a=b=1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
5およびR6が、o−フェニル基、m−フェニル基、m−N−カルバゾリル基、および2−フルオレニル基からなる群から選択される芳香族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
7およびR8が、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Ar1およびAr2が、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、N−カルバゾリルフェニル、および式II:
【化2】

(式中:
9は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、およびアリールからなる群から選択され;
eは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数であり;
fは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜5の整数であり;
mは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜6の整数である)
で表される基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
E1からE7から選択される化合物。
【請求項12】
第1の電気接触層と、第2の電気接触層と、それらの間の少なくとも1つの活性層とを含む有機電子デバイスであって、前記活性層が式I:
【化3】

(式中:
1、R2、R3およびR4は、同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、およびシリルからなる群から選択され、R1基とR2基、またはR3基とR4基は、互いに結合して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
5およびR6は、同じまたは異なるものであって、D、アルキル、シリル、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、およびフルオレニルからなる群から選択され;
7およびR8は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかであり;
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
aおよびbは、同じまたは異なるものであって、1〜5の整数であり;
cおよびdは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数である)
で表される化合物を含む、有機電子デバイス。
【請求項13】
7およびR8が、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、フェニル、ビフェニル、およびN−カルバゾリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接する2つのR7基または隣接する2つのR8基が互いに結合してナフチル基を形成することができるかである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
1からR4がHである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
5およびR6が、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素アルキル基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
5およびR6が、o−フェニル基、m−フェニル基、m−N−カルバゾリル基、および2−フルオレニル基からなる群から選択される芳香族基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
式Iの化合物がE1〜E7から選択される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
前記活性層が、光活性層であり、ホスト材料をさらに含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1の電気接触層と前記活性層との間に緩衝層をさらに含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記緩衝層が、少なくとも1種類の導電性ポリマーと少なくとも1種類のフッ素化酸ポリマーとを含む、請求項19に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532111(P2012−532111A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517888(P2012−517888)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040578
【国際公開番号】WO2011/002870
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】