説明

ルータ装置

【課題】物理リンク毎の回線使用率をより均等にできるルータ装置を提供する。
【解決手段】パケット通信網において隣接するルータ装置20との間に複数の物理リンクL1〜L3が設けられたルータ装置10であって、IPパケットを受信する受信部11と、IPパケットを隣接するルータ装置20へ送信する送信順序を決定する送信順序情報付与部13と、複数の物理リンクL1〜L3それぞれに対応し、IPパケットを格納する複数のバッファ14a〜14cと、他のバッファより所定の時点において少ない使用量である一のバッファを選択バッファとして選択すると共に送信順序が決定されたIPパケットを選択バッファに格納させるパケット振分部12と、送信順序情報付与部13で決定された送信順序で、選択バッファに格納されたIPパケットを対応する一の物理リンクに送出するパケット送出部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットを送受信するパケット通信網において、隣接するルータ装置との間に複数の物理リンクが設けられたルータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPパケットを送受信するパケット通信網では、ノードである複数のルータ装置が互いに接続されている。このようなパケット通信網においては、トラフィック量の増加に伴って、各ルータ装置間が複数の物理リンクによって接続されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の物理リンクによって接続されるルータ装置間では、IPパケット内の送信元アドレスSrcと送信先アドレスDestとからハッシュ値を計算し、計算されたハッシュ値に対応するそれぞれの物理リンク(使用帯域)に各IPパケットを振り分けるようにしている。このようなハッシュ値による振り分けでは、各IPパケットのフローが均等に分散される。
【0005】
しかしながら、ハッシュ値による振り分けでは、同じ送信元アドレスSrcと同じ送信先アドレスDestとを有するIPパケットを大量に送信する場合、複数の物理リンクのうち特定の物理リンクにIPパケットが集中してしまうため、複数の物理リンクでの送信状況に偏りが生じてしまう。そして、このような偏った送信状況の結果、物理リンクにおけるトラフィック量(回線使用率)が各物理リンクにおいてばらばらになり、物理リンクを必ずしも有効に活用できていない場合があった。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、物理リンク毎の回線使用率をより均等にすることができるルータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るルータ装置は、パケットを送受信するパケット通信網において隣接するルータ装置との間に複数の物理リンクが設けられたルータ装置であって、隣接するルータ装置のうち送信先のルータ装置に送信するためのパケットを取得するパケット取得手段と、パケット取得手段で取得されたパケットを送信先のルータ装置へ送信する送信順序を決定する送信順序決定手段と、複数の物理リンクそれぞれに対応し、パケット取得手段で取得されたパケットを格納する複数のバッファと、複数のバッファのうち他のバッファより所定の時点において少ないバッファ使用率である一のバッファを選択バッファとして選択すると共に、送信順序決定手段で送信順序が決定されたパケットを選択バッファに格納させるパケット振分手段と、パケット振分手段により選択バッファに格納されたパケットを、送信順序決定手段で決定された送信順序で、対応する一の物理リンクに送出するパケット送出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成により、パケット振分手段は、複数のバッファのうち他のバッファより所定の時点において少ないバッファ使用率である選択バッファに送信順序が決定されたパケットを格納させ、パケット送出手段は、その選択バッファに格納されたパケットをその送信順序で、選択バッファに対応する一の物理リンクに送出する。バッファ使用率がより均等になるようにされた各バッファからパケットが送出されるので、これにより、物理リンク毎の回線使用率がより均等になるようにパケットを分散させて隣接する送信先のルータ装置に送信できる。なお、ここでいう「バッファ使用率」とは、複数のバッファそれぞれのバッファ総容量に対する格納データ容量(バッファ使用量)の比率を意味し、複数のバッファそれぞれの総容量が同等である場合等には、バッファ使用量をバッファ使用率として用いることもできる。
【0009】
また、送信順序決定手段は、パケット取得手段で取得されたパケットに対して、送信先のルータ装置への送信順序を示す送信順序情報を付与し、パケット送出手段は、パケット振分手段により選択バッファに入力されたパケットを対応する一の物理リンクに送出する際、パケットから送信順序情報を取り除いてもよい。この構成により、送信先のルータ装置へのパケットの送信順序を容易に決定できると共に、パケットの送信前に送信順序情報を取り除くことができるので、本発明を確実に実施できる。
【0010】
また、送信順序決定手段は、パケット取得手段で取得されたパケットに対して、送信先のルータ装置への送信順序を示す送信順序情報を付与し、パケット送出手段は、送信順序決定手段により送信順序情報が付与されたパケットを対応する一の物理リンクに送出するようにしてもよい。この場合、ルータ装置で付与された送信順序情報を、送信先のルータ装置から更に先の送信先のルータ装置などへの送信処理に利用することができ、送信先のルータ装置で新たな送信順序情報を付与する必要がなくなることから、パケットの転送処理を早く行うことができる。
【0011】
また、パケット取得手段は、隣接するルータ装置のうち送信元のルータ装置からルータ装置への送信順序を示す送信順序情報が付与されたパケットを受信することにより取得し、送信順序決定手段は、パケット取得手段で取得されたパケットを送信先のルータ装置へ送信する送信順序を、パケットに付与された送信順序情報に応じて決定するようにしてもよい。この場合、送信元のルータ装置で利用された送信順序情報を、ルータ装置から送信先のルータ装置への送信処理に利用することができ、ルータ装置で新たな送信順序情報を付与する必要がなくなることから、パケットの転送処理を早く行うことができる。
【0012】
また、パケット振分手段は、複数のバッファのうち他のバッファに比べて所定の時点において最も少ないバッファ使用率である一のバッファを選択バッファとして選択することが好適である。この構成により、最もバッファ使用率が少ないバッファ及びそのバッファに対応する物理リンクを使用してパケットを送信するので、物理リンク毎の回線使用率が一層均等になるようにパケットを分散させて隣接するルータ装置に送信できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のバッファのうち他のバッファより所定の時点において少ないバッファ使用率である選択バッファに優先的にパケットを入力するので、物理リンク毎の回線使用率をより均等にさせるようにパケットを分散させて送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るルータ装置を含むパケット通信網の一部構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るルータ装置におけるIPパケットの送信手順を模式的に示す図である。
【図3】IPパケットの構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係るルータ装置のハードウェア構成を示す図である。
【図5】IPパケットの振分動作の手順を示すフローチャートである。
【図6】IPパケットの送出動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】バッファ管理DBにおけるバッファ使用量の変化を示す図である。
【図8】送信順序管理DBにおける送信順序番号の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るルータ装置10について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るルータ装置10を含むパケット通信網の一部構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態に係るルータ装置10におけるIPパケットの送信手順を模式的に示す図である。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
ルータ装置10は、図1及び図2に示すように、隣接するルータ装置20(送信先のルータ装置)と複数の物理リンクL1,L2,L3によって接続され、ルータ装置10から隣接するルータ装置20へIPパケットを送信することができるようになっている。両ルータ装置10,20を接続する物理リンクL1,L2,L3は、例えば光ファイバによって構成される。この3つの物理リンクL1,L2,L3によって論理回線が形成され、各物理リンクL1,L2,L3は、回線番号♯1,♯2,♯3によって特定される。なお、隣接するルータ装置20は、ルータ装置10と同様の構成を有する。
【0017】
ルータ装置10は、受信部11(パケット取得手段)と、パケット振分部12(パケット振分手段)と、送信順序情報付与部13(送信順序決定手段)と、バッファ14a,14b,14cと、パケット送出部15(パケット送出手段)とを備えている。受信部11は、図示省略した別のルータ装置(送信元のルータ装置)から物理リンクL4を介してIPパケットを受信することにより、隣接するルータ装置20に送信するためのIPパケットを取得する部分である。受信部11は、受信したIPパケットをパケット振分部12へ出力する。出力される各IPパケットとしては、例えば図2に示すように、IPパケットIP1,IP2,IP3,IP4などがあり、各IPパケットIP1〜IP4は、図3のIPパケットIP3で例示するのと同様に、IPヘッダ、レイヤ4ヘッダ(TCP、UDPなど)及びデータ部分をそれぞれ有する。
【0018】
パケット振分部12は、バッファ14a〜14cから一のバッファを選択し、そのバッファにIPパケットを格納させる振分動作を行う部分であり、バッファ使用量(バッファ使用率)を管理するバッファ管理データベース(以下「バッファ管理DB」と記す)とIPパケットの送信順序を管理する送信順序管理データベース(以下「送信順序管理DB」と記す)とを有する。パケット振分部12は、IPパケットを受信部11より受信すると、IPパケットのパケット長(データ容量)を検索する。そして、パケット振分部12は、IPパケットをバッファに格納する直前(所定の時点)にバッファ14a〜14cに格納されているIPパケットのデータ容量合計であるバッファ使用量をバッファ毎にバッファ管理DBを用いて検索する。このバッファ管理DBには、例えば図7(a)〜(c)に示すように、回線番号♯1〜♯3と、これら回線番号♯1〜♯3に対応する各バッファ14a〜14cそれぞれのバッファ使用量とが記憶されている。
【0019】
パケット振分部12は、バッファ管理DBを用いたバッファ使用量の検索により、他のバッファと比べて最も少ないバッファ使用量である一のバッファを選択バッファとして選択する。そして、パケット振分部12は、バッファ管理DBにおいて、選択バッファに対応する回線番号のバッファ使用量に対して、例えば図7(b)の回線番号♯1に示すように、検索したIPパケットのパケット長を加算させて、バッファ管理DBのバッファ使用量を更新させる。
【0020】
また、パケット振分部12は、送信順序をIPパケットにマーキングするため、IPパケットを後述する送信順序情報付与部13へ一旦送信し、送信順序がマーキングされたIPパケットの送信順序の番号を送信順序管理DBに記憶させる。この送信順序管理DBには、例えば図8(a)〜(c)に示すように、回線番号♯1〜♯3と、これら回線番号♯1〜♯3に対応する各バッファ14a〜14cそれぞれに格納されているIPパケットにマーキングされた送信順序番号とが記憶されている。そして、このようなバッファ管理DBへのバッファ使用量の更新及び送信順序管理DBへの送信順序番号の更新が適切に行われた後、パケット振分部12は、IPパケットを選択バッファに格納させる。なお、パケット振分部12は、後述するパケット送出部15と双方向に接続されており、パケット送出部15がバッファ管理DBや送信順序管理DBにアクセスできるようになっている。
【0021】
送信順序情報付与部13は、受信部11で受信した順序でIPパケットを隣接するルータ装置20へ送信する送信順序を決定する部分であり、パケット振分部12から送信された各IPパケットの先頭部分に、図3に示すような送信順序を示す送信順序情報(例えば“196”といった送信順序番号を示す情報)を付与するマーキングを行う。送信順序情報付与部13は、送信順序がマーキングされた各IPパケットをパケット振分部12に戻す。
【0022】
バッファ14a〜14cは、受信部11で受信された1以上のIPパケットIP1〜IP4をパケット振分部12による振分動作に応じて一時的に格納する部分である。バッファ14a〜14cは、それぞれ同じバッファ総容量を有しており、例えば、図2に示すように、IPパケットIP1,IP4,IP2,IP3の順にデータ容量が大きくなる各IPパケットを格納する場合、パケット振分部12の振分動作により、IPパケットIP1とIPパケットIP4とがバッファ14aに,IPパケットIP2がバッファ14bに、IPパケットIP3がバッファ14cにそれぞれ格納されるようになっている。このような格納により、各バッファ14a〜14cのバッファ使用量、即ちバッファ使用率がより均等になるようにされている。また、バッファ14aは物理リンクL1に、バッファ14bは物理リンクL2に、バッファ14cは物理リンクL3にそれぞれ対応しており、格納されたIPパケットを対応する物理リンクに転送できるようになっている。
【0023】
パケット送出部15は、送信順序管理DBに基づき、バッファ14a〜14cに格納された各IPパケットIP1〜IP4を、物理リンクL1〜L3を通じて隣接するルータ装置20へ送信させるための部分である。パケット送出部15は、バッファ14a〜14cのいずれかに格納されたIPパケットIP1〜IP4の送信順序情報をパケット振分部12の送信順序管理DBにアクセスして読み取り、その送信順序情報における番号が小さいものから順に、その送信順序情報それぞれに対応付けられたIPパケットを送信する。具体的には、例えば図2に示すように、最初にバッファ14aに格納されているIPパケットIP1を、次にバッファ14bに格納されているIPパケットIP2を、続いてバッファ14cに格納されているIPパケットIP3、最後にバッファ14aに格納されているIPパケットIP4といった順序で、各IPパケットIP1〜IP4をバッファ14a〜14cに対応する物理リンクL1〜L3に送出する。
【0024】
パケット送出部15によってIPパケットが送出されると、パケット送出部15は、パケット振分部12のバッファ管理DBや送信順序管理DBにアクセスし、例えば図7(c)に示すように、送出したIPパケットのパケット長をバッファ管理DBの使用バッファ量から減算させて、バッファ管理DBのバッファ使用量を更新させると共に、例えば図8(c)に示すように、送出したIPパケットの送信順序番号を送信順序管理DBの送信順序番号から削除させて、送信順序管理DBの送信順序番号を更新させる。なお、パケット送出部15は、IPパケットを物理リンクL1〜L3に送出する際、送信順序情報をIPパケットから取り除いて、受信部11で受信したIPパケットの構成と同様の構成に戻す。
【0025】
以上が本実施形態に係るルータ装置10の機能構成である。引き続いて、図4に本実施形態に係るルータ装置10のハードウェア構成を示す。図4に示すように、ルータ装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、通信モジュール104及び補助記憶装置105等のハードウェアにより構成されている。これらの構成要素は、バスを介して各種信号の入出力が可能なように接続されている。これらの構成要素が動作することにより、上述した機能が発揮される。
【0026】
引き続いて、本実施形態に係るルータ装置10におけるパケット振分部12でのIPパケットの振分動作について図5、図7及び図8を参照して説明する。図5は、IPパケットの振分動作の手順を示すフローチャートであり、図7は、バッファ管理DBにおけるバッファ使用量の変化を示す図であり、図8は、送信順序管理DBにおける送信順序番号の変化を示す図である。
【0027】
まず、図5に示すように、パケット振分部12がIPパケットを受信する(S11)。パケット振分部12は、受信したIPパケットのIPパケット長を検索する(S12)。続いて、パケット振分部12は、物理リンクL1〜L3を特定する回線番号♯1,♯2,♯3に対応するバッファ使用量をバッファ管理DBで検索する(S13)。ステップS13におけるバッファ管理DBの検索結果としては、例えば図7(a)に示すように、回線番号♯1のバッファ使用量が0バイト、回線番号♯2のバッファ使用量が155バイト、回線番号♯3のバッファ使用量が230バイトである。
【0028】
ステップS13で各回線番号♯1〜♯3におけるバッファ使用量を検索した後、その中で最小のバッファ使用量である回線番号♯1を選択する(S14)。なお、本実施形態では、最小のバッファ使用量を検索する際、最小のバッファ使用量が同じである回線が2つ以上ある場合は、物理リンクL1〜L3を特定する回線番号が小さい方を選択する。そして、選択された回線番号♯1のバッファ使用量に対して、ステップS12で検索したIPパケット長80バイトを図7(b)に示すように加算して(S15)、回線番号♯1のバッファ使用量を80バイトとする。
【0029】
続いて、ステップS15でIPパケット長がバッファ管理DBに加算されたIPパケットを送信順序情報付与部13へ一旦送り、送信順序情報をそのIPパケットに付与して、IPパケットに送信順序番号をマーキングする(S16)。ステップS16で送信順序番号をIPパケットにマーキングした後、IPパケットをパケット振分部12に戻し、図8(a)に示す送信順序管理DBに対して、図8(b)に示すように、マーキングされたIPパケットの送信順序番号201を送信順序管理DBの回線番号♯1に追加する。その後、IPパケットをパケット振分部12で選択した回線番号♯1に対応するバッファに格納させる(S17)。このような振分動作を、IPパケットが受信される毎に行う(S18)。
【0030】
次に、本実施形態に係るルータ装置10におけるパケット送出部15でのIPパケットの送出動作について図6、図7及び図8を参照して説明する。図6は、IPパケットの送出動作の手順を示すフローチャートである。
【0031】
まず、図6に示すように、パケット送出部15は、各回線番号♯1〜♯3(バッファ14a〜14c)の送信順序管理DBを監視する(S21)。ステップS21での監視により、パケット送出部15は、各回線番号♯1〜♯3のうち最小の送信順序番号を送信順序管理DBで検索する(S22)。そして、図8(b)に示すように、検索された最小の送信順序番号196が付与されたIPパケットを回線番号♯2のバッファから対応する物理リンクへ転送する(S23)。なお、転送する前に、IPパケットに付与された送信順序情報を取り除く。
【0032】
続いて、パケット送出部15は、ステップS23で転送されたIPパケットのバッファ使用量55バイトを、図7(c)に示すように、バッファ管理DBから削除させる(S24)。また、パケット送出部15は、転送されたIPパケットの送信順序番号196を、図8(c)に示すように、送信順序管理DBから削除させる(S25)。このような送出動作を、バッファにIPパケットがある場合には行う(S26)。
【0033】
本実施形態によれば、ルータ装置10のパケット振分部12は、複数のバッファ14a〜14cのうち他のバッファより所定の時点において少ないバッファ使用量である選択バッファに送信順序が決定されたIPパケットを入力し、パケット送出部15は、その選択バッファに入力されたIPパケットを、上述した送信順序で選択バッファに対応する一の物理リンクに送出する。バッファ使用量がより均等になるようにされた各バッファ14a〜14cから各IPパケットIPが送出されるので、これにより、物理リンクL1〜L3毎の回線使用率がより均等になるようにIPパケットを分散させて隣接するルータ装置20に送信できる。その結果、送信速度が速くなり、無駄な回線増速を抑止できる。
【0034】
また、本実施形態によれば、送信順序情報付与部13は、受信したIPパケットに対して、隣接するルータ装置20への送信順序を示す送信順序情報を付与し、パケット送出部15は、選択バッファに入力されたIPパケットを対応する物理リンクに送出する際、IPパケットから送信順序情報を取り除くようになっている。このため、隣接するルータ装置20への送信順序を容易に決定できると共に、IPパケットの送信前に送信順序情報を取り除くことができるので、パケット通信を確実に実施できる。なお、上述した送信順序情報をIPパケット自体に直接付与せずに、送信順序情報を、IPパケットを構成するデータやヘッダと対応づけて、IPパケットの送信順序を管理するようにしてもよい。
【0035】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、バッファ14a〜14cのうち最も少ないバッファ使用量のバッファを選択バッファとして選択するようにしているが、少なくとも他のバッファより少ないバッファ使用量であるバッファを選択バッファとして選択するようにすれば、物理リンク毎の回線使用率をより均等にさせることができる。また、上記実施形態では、物理リンクL1〜L3の3本の回線を用意したが、この回線を例えば5本設けるようにしてもよく、少なくとも2本の回線があればよい。
【0036】
また、上記実施形態では、送信元のルータ装置から受信されたIPパケットを隣接するルータ装置20へ送信する場合について説明したが、ルータ装置10自身において新たに生成したIPパケット又はルータ装置10に接続される他の機器から取得したIPパケットを隣接するルータ装置20へ送信する場合に本発明を適用させてももちろんよい。更に、上記実施形態では、受信部11の受信順序でIPパケットを隣接するルータ装置20へ送信するようにしているが、ルータ装置20への送信順序は必ずしも受信順に限られる訳ではなく、優先度を示す信号が含まれたIPパケットを取得した場合には、優先度に応じて隣接するルータ装置20へIPパケットを送信するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、パケット送出部15から隣接するルータ装置20へIPパケットを送信する際、IPパケットに付与された送信順序情報を取り除くようにしているが、送信の際、送信順序情報を取り除かずに、送信順序情報が付与されたIPパケットをそのまま隣接するルータ装置20に送信するようにしてもよい。そして、送信順序情報が付与されたIPパケットを受信したルータ装置20の送信順序情報付与部(不図示)は、更なる送信先のルータ装置(宛先となるルータ装置含む)へIPパケットを送信する送信順序を、このIPパケットに付与された送信順序情報に応じて決定するようにしてもよい。ここで、ルータ装置20と、更なる送信先のルータ装置とは隣接しており、複数の物理リンクにより接続されている。また、ルータ装置20は、上記の送信順序の決定機能以外、上述したルータ装置10と同様の構成である。この場合、ルータ装置10で付与された送信順序情報を、送信先となる隣接するルータ装置20から更に先の送信先のルータ装置などへの送信処理に利用することができ、隣接するルータ装置20などで新たな送信順序情報を付与する必要がなくなることから、パケットの転送処理を早く行うことができる。
【0038】
また、送信先のルータ装置へIPパケットを送信する際に送信順序情報を取り除くか、又は、取り除かずにIPパケットを送信して送信先のルータ装置で送信順序情報を利用するかは任意に設定することができる。例えば、隣接するルータ装置間を複数の物理リンクで接続する場合と1つの物理リンクで接続する場合とが混在するようなパケット通信網においては、送信順序情報の取り除き又はその利用についての設定情報を予めIPパケットに持たせておいて、一律に行わせるようにすることができる。また、送信先のルータ装置に応じて送信順序情報を取り除くか否かの情報を予めルータ装置10,20に記憶させておき、その情報に基いて送信順序情報を取り除くかを決定してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…ルータ装置、11…受信部(パケット取得手段)、12…パケット振分部(パケット振分手段)、13…送信順序情報付与部(送信順序決定手段)、14a〜14c…バッファ、15…パケット送出部(パケット送出手段)、20…隣接するルータ装置(送信先のルータ装置)、101…CPU、102…RAM、103…ROM、104…通信モジュール、105…補助記憶装置、IP1,IP2,IP3,IP4…IPパケット、L1,L2,L3…物理リンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを送受信するパケット通信網において隣接するルータ装置との間に複数の物理リンクが設けられたルータ装置であって、
前記隣接するルータ装置のうち送信先のルータ装置に送信するためのパケットを取得するパケット取得手段と、
前記パケット取得手段で取得されたパケットを前記送信先のルータ装置へ送信する送信順序を決定する送信順序決定手段と、
前記複数の物理リンクそれぞれに対応し、前記パケット取得手段で取得されたパケットを格納する複数のバッファと、
前記複数のバッファのうち他のバッファより所定の時点において少ないバッファ使用率である一のバッファを選択バッファとして選択すると共に、前記送信順序決定手段で送信順序が決定されたパケットを前記選択バッファに格納させるパケット振分手段と、
前記パケット振分手段により前記選択バッファに格納されたパケットを、前記送信順序決定手段で決定された送信順序で、対応する一の物理リンクに送出するパケット送出手段と、を備えることを特徴とするルータ装置。
【請求項2】
前記送信順序決定手段は、前記パケット取得手段で取得されたパケットに対して、前記送信先のルータ装置への送信順序を示す送信順序情報を付与し、
前記パケット送出手段は、前記パケット振分手段により前記選択バッファに入力されたパケットを前記対応する一の物理リンクに送出する際、該パケットから前記送信順序情報を取り除くことを特徴とする請求項1に記載のルータ装置。
【請求項3】
前記送信順序決定手段は、前記パケット取得手段で取得されたパケットに対して、前記送信先のルータ装置への送信順序を示す送信順序情報を付与し、
前記パケット送出手段は、前記送信順序決定手段により前記送信順序情報が付与されたパケットを前記対応する一の物理リンクに送出することを特徴とする請求項1に記載のルータ装置。
【請求項4】
前記パケット取得手段は、前記隣接するルータ装置のうち送信元のルータ装置から前記ルータ装置への送信順序を示す送信順序情報が付与されたパケットを受信することにより取得し、
前記送信順序決定手段は、前記パケット取得手段で取得された前記パケットを前記送信先のルータ装置へ送信する送信順序を、前記パケットに付与された前記送信順序情報に応じて決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のルータ装置。
【請求項5】
前記パケット振分手段は、前記複数のバッファのうち他のバッファに比べて所定の時点において最も少ないバッファ使用率である一のバッファを前記選択バッファとして選択することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のルータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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