説明

ルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法

【課題】同一の車種においてサンルーフの有無に拘わらず、1種類の型で対応できる、ルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】車両の前方領域において、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の一の補強湾曲部10,20,30と、車両の後方領域でおいて、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の他の補強湾曲部40,50,60と、を備えたルーフパネル1であって、前記一の補強湾曲部10,20,30がサンルーフの開口部2形成領域X内に形成され、かつ前記他の補強湾曲部40,50,60がサンルーフの開口部2形成領域Xの後方に形成されると共に、前記他の補強湾曲部40,50,60の前方端部がサンルーフの開口部形成領域Xから所定寸法S離れた位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法に関し、特に、車両の天部を形成するルーフパネルであって、剛性を高めたルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の天部を形成するルーフパネルの剛性を高めるため、例えば、特許文献1に示すように車両の前後方向にビード部が形成されたルーフパネルが知られている。
図5(a)に基づいて、特許文献1に示されたルーフパネル100のビート構造について説明する。図に示すように、車両Vの幅方向にビード部101,102,103,104が複数設けられ、このビード部101,102,103,104は車両の前後方向(図中、符号Fが車両の前方向符号Rが車両の後方向)に延設されている。
そして、このビード部101,102,103,104の断面は、図5(b)に示すように、ルーフパネル100の外表面から外部に突出した凸状形状(台形状)に形成されている。
【0003】
ところで、このルーフパネル100には、図6に示すようにサンルーフ110が形成される場合がある。一般的に、サンルーフ110はユーザの求めによってなされるオプションであって、同一の車種においてサンルーフ110が設けられる場合と、サンルーフ110が設けられない場合がある。
このサンルーフ110が設けられない場合には、ルーフパネル100は、図5(a)に示すように、ビード部101,102,103,104が車両の幅方向に複数設けられ、かつ車両の前後方向に延設された状態になされる。
一方、サンルーフ110が形成されるルーフパネル100には、図6に示すように、サンルーフ110のための開口部110aを避けて、車両の前後方向にビード部101,104が形成される。
【0004】
このように、サンルーフ110(開口部110a)を避けて、ビード部101,104を形成する理由は、ビード部が形成された部分に、前記開口部をプレスにより穿孔することが困難なためである。即ち、ルーフパネル100にサンルーフ110(開口部110a)を形成する場合、先ず、ビード部が形成され、続いて開口部110aが形成されるが、既にビード部が形成されていることにより、開口部110aの穿孔を困難にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−306167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図6に示したルーフパネル100にあっては、開口部110aの後方の領域にビードが設けられていないため、ルーフパネル100の剛性を確保するためには、ルーフパネル100を厚肉に設定しなければならなかった。この場合、ルーフパネル100の重量が増加するという技術的課題があった。
これを解決するために、図7に示すように、開口部110aの後方の領域にビード102,103を形成し、ルーフパネル100の剛性を確保することも考えられる。
【0007】
しかしながら、開口部110aの後方の領域にビード102,103を形成する場合には、図5に示した前記ルーフパネルを成形する型と異なる型を用意し、その型に基づいてビード部を形成した後、前記開口部110aを形成しなければならかった。
即ち、同一の車種において、サンルーフが設けられる場合とサンルーフが設けられない場合とにおいて異なる金型を用意し、夫々異なる金型を用いて、ルーフパネルを成形しなければならず、製造コストが嵩むという技術的課題があった。
【0008】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、同一の車種においてサンルーフの有無に拘わらず、1種類の型で対応できる、ルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法を提供することを目的とするものである。また、機械的剛性が強い、補強湾曲部を備えたルーフパネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるルーフパネルは、車両の前方領域において、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の一の補強湾曲部と、車両の後方領域において、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の他の補強湾曲部と、を備えたルーフパネルであって、前記一の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域内に形成され、かつ前記他の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域の後方に形成されると共に、前記他の補強湾曲部の前方端部がサンルーフの開口部形成領域から所定寸法離れた位置に形成されていることを特徴としている。
【0010】
このように、ルーフパネルに補強湾曲部が形成されているため、ルーフパネルの剛性を強くすることができる。
また、前記一の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域内に形成され、かつ前記他の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域の後方に形成されると共に、この他の補強湾曲部の前方端部がサンルーフの開口部形成領域から所定寸法離れた位置に形成されている。
そのため、前記一の補強湾曲部及び他の補強湾曲部を形成した後、サンルーフの開口部を形成でき、1種類の金型で同一の車種においてサンルーフを設ける場合と、サンルーフを設けない場合に対応することができる。
【0011】
ここで、前記一の補強湾曲部は、平面視上車両の前部側に円弧部が形成され、前記円弧部から車両の後方に向かって右側面部及び左側面部が形成され、更に、側面視上パネル基準面から緩やかな傾斜をもって車両上方に突出して、円弧部、右側面部、左側面部が形成され、その上方に上面部が形成され、前記他の補強湾曲部は、平面視上車両の後部側に円弧部が形成され、前記円弧部から車両の前方に向かって右側面部及び左側面部が形成され、更に、側面視上パネル基準面から緩やかな傾斜をもって車両上方に突出して、円弧部、右側面部、左側面部が形成され、その上方に上面部が形成され、前記一の補強湾曲部及び他の補強湾曲部を構成する、円弧部、右側面部、左側面部、上面部が曲面によって形成されていることが望ましい。
【0012】
このように前記一の補強湾曲部及び他の補強湾曲部を構成する、円弧部、右側面部、左側面部、上面部が曲面によって形成されているため、ルーフパネルの剛性を強くすることができる。
【0013】
また、前記一の補強湾曲部は、3個の補強湾曲部によって構成され、車両の幅方向の両側に設けられた2個の補強湾曲部は、パネル基準面よりも高く形成され、前記2個の補強湾曲部に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されていることが望ましい。
このように、前記2個の補強湾曲部に挟まれる、中央に位置する補強湾曲部は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されているため、2個の補強湾曲部によって挟まれた領域における凹凸(中央に位置する補強湾曲部)は視覚的にあまり目立たない。そのため、ユーザに対して意匠的に違和感を与えることがなく、しかも剛性を強くすることができる。
【0014】
更に、前記他の補強湾曲部は、3個の補強湾曲部によって構成され、車両の幅方向の両側に設けられた2個の補強湾曲部は、パネル基準面よりも高く形成され、前記2個の補強湾曲部に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されていることが望ましい。
【0015】
このように、他の補強湾曲部においても、一の補強湾曲部と同様に、2個の補強湾曲部に挟まれる、中央に位置する補強湾曲部が、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されているため、2個の補強湾曲部によって挟まれた領域における凹凸(中央に位置する補強湾曲部)は視覚的にあまり目立たない。そのため、ユーザに対して意匠的に違和感を与えることがなく、しかも剛性を向上させることができる。
【0016】
特に、車両の幅方向に設けられた2個の補強湾曲部に挟まれた、中央に位置する補強湾曲部の高さが、パネル基準面と同一の高さに形成されていることが望ましい。
このように、補強湾曲部の高さが、パネル基準面と同一の高さに形成されていることにより、中央に位置する補強湾曲部の両側に形成される凹部を十分な深さになすことができ、機械的剛性を向上させることができる。
【0017】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるルーフパネルの製造方法は、上記ルーフパネルの製造方法において、平板状のルーフパネル基材を、一及び他の補強湾曲部が形成された一つの金型でプレスし、補強湾曲部を形成する工程と、前記補強湾曲部の形成工程の後、サンルーフを設ける場合には、前記ルーフパネル基材に、開口部をプレスにより形成することを特徴としている。
前記補強湾曲部を形成した後、サンルーフの開口部を形成でき、1種類の金型でサンルーフを設ける場合とサンルーフを設けない場合に対応することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同一の車種においてサンルーフの有無に拘わらず、1種類の型で対応できる、ルーフパネル及びこのルーフパネルの製造方法を得ることができる。また、機械的剛性が強い、補強湾曲部を備えたルーフパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかるルーフパネルを示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示したルーフパネルのA−A断面図である。
【図3】図3は、図1に示したルーフパネルのB−B(C−C)断面図である。
【図4】図4は、図3の断面図を模式的に示した図である。
【図5】図5は、従来のルーフパネルを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図6】図6は、従来のサンルーフ付きルーフパネルを示す斜視図である。
【図7】図7は、従来のサンルーフ付きルーフパネルの後方領域にビード部を形成した場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態にかかるルーフパネルを示す平面図、図2は、図1に示したルーフパネルのA−A断面図、図3は、図1に示したルーフパネルのB−B(C−C)断面図、図4は、図3の断面図を模式的に示した図である。
図1に示すように、このルーフパネル1には、従来のようなルーフの外表面から外部に突出した凸状形状(台形状)のビード部は形成されておらず、なだらかに湾曲した補強湾曲部10,20,30,40,50,60が形成されている。
【0021】
この補強湾曲部10,20,30,40,50,60について説明する。
先ず、車両の前後方向に3組の補強湾曲部10,40と、補強湾曲部20,50と、補強湾曲部30,60が設けられ、車両の幅方向に、2組の補強湾曲部10,20,30と、補強湾曲部40,50,60が設けられている。
【0022】
前記補強湾曲部10,20,30は、車両の前後方向に同一長さ寸法Y1に形成され、かつサンルーフの開口部2の形成予定領域X内に配置されている。また補強湾曲部40,50,60は、サンルーフの開口部2の形成予定領域Xの後方に同一長さ寸法Z1に形成されている。
【0023】
更に、各補強湾曲部10,20,30,40,50,60について説明する。
第1の補強湾曲部10は、平面視上、車両の前部側に円弧部11が形成され、前記円弧部から車両の後方に向かって右側面部12,左側面部13が形成されている。
これら円弧部11及び側面部12,13は、図2、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pから徐々にルーフ外表面から外部(車両上方)に突出するように、緩やかに傾斜した曲面として形成されている。そして、円弧部11及び側面部12,13の上端部には、上面部14が形成されている。この上面部14は曲面になされている。
【0024】
また、前記側面部13の下端部は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方に位置し、ルーフパネル1に凹部70が形成される。
また、前記側面部12,13、上面部14は、前部稜線R1から下降する傾斜面(曲面)とし形成され、稜線16より後方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
【0025】
第2の補強湾曲部20は、平面視上、車両の前部側に円弧部21が形成され、前記円弧部21から車両の後方に向かって側面部22,23が形成されている。これら円弧部21及び側面部22,23は、徐々にルーフ外表面から外部(車両上方)に突出するように、緩やかに傾斜した曲面として形成されている。
【0026】
前記側面部22は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方の位置から、徐々にルーフパネル1のパネル基準面Pまで緩やかに傾斜した曲面として形成されている。即ち、前記側面部13と側面部22とにより、第1の補強湾曲部10と第2の補強湾曲部20との間に、凹部70が形成される。
【0027】
そして、円弧部21及び側面部22,23の上端部には、曲面からなる上面部24が形成されている。
この上面部24は、図3、図4に示すようにパネル基準面Pの高さに形成されている。また、前記側面部23は、パネル基準面Pから緩やかに傾斜した曲面として形成され、その下端部は、パネル基準面Pの下方位置に形成される。
また、前記側面部22,23、上面部24は、前部稜線R1から下降する傾斜面とし形成され、稜線26より後方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
【0028】
前記第3の補強湾曲部30は、平面視上、車両の前部側に円弧部31が形成され、前記円弧部31から車両の後方に向かって右側面部32,左側面部33が形成されている。
これら円弧部31及び側面部33は、ルーフパネル1の基準面から徐々にルーフの外表面から外部(車両上方)に突出するように緩やかに傾斜した曲面として形成されている。
また曲面として形成された右側面部32の下端部は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方に位置し、ルーフパネル1に凹部71が形成される。そして、円弧部31及び側面部32,33の上端部には、上面部34が形成されている。この上面部34は曲面になされている。
また、前記側面部32,33、上面部34は、前部稜線R1から下降する傾斜する曲面とし形成され、稜線36より後方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
【0029】
また、前記稜線16,26,36は同一直線上に位置している。また前記円弧部11,21,31の先端部は、車幅方向において、同一直線m上に位置している。
【0030】
ここで、前記前記円弧部11,21,31の先端部(直線m)から前記稜線16,26,36の長さ寸法をY1とし、第1の補強湾曲部10の進行方向右側の斜面部12から第3の補強湾曲部30の進行方向左側の斜面部33までの長さ寸法をY2とする。一方、サンルーフの開口部2の形成予定領域Xの車両の前後方向の長さ寸法X1は、前記長さ寸法をY1より長く、またサンルーフの開口部2の形成予定領域Xの車両の幅方向の長さ寸法X2は、前記長さ寸法をY2より長い。
即ち、第1の補強湾曲部10、第2の補強湾曲部20、第3の補強湾曲部30は、前記サンルーフの開口部2の形成予定領域X内に形成されている。
【0031】
前記第4の補強湾曲部40は、平面視上、車両の後部側に円弧部41が形成され、前記円弧部41から車両の前方に向かって右側面部42及び左側面部43が形成されている。
これら円弧部41及び側面部42,43は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pから徐々にルーフ外表面から外部(車両上方)に突出するように、緩やかに傾斜した曲面として形成されている。そして、円弧部41及び側面部42,43の上端部には、上面部44が形成されている。この上面部44は曲面になされている。
また、前記側面部43の下端部は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方に位置し、ルーフパネル1に凹部72が形成される。
また、前記側面部42,43、上面部44は、後部稜線R2から下降する傾斜面(曲面)とし形成され、稜線46より前方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
【0032】
前記第5の補強湾曲部50は、平面視上、車両の後部側に円弧部51が形成され、前記円弧部51から車両の前方に向かって右側面部52及び左側面部53が形成されている。
これら円弧部51及び側面部52,53は、徐々にルーフ外表面から外部(車両上方)に突出するように、緩やかに傾斜した曲面として形成されている。
前記側面部52は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方の位置から、徐々にルーフパネル1のパネル基準面Pまで緩やかに傾斜した曲面として形成されている。即ち、前記側面部43と側面部52とにより、第4の補強湾曲部40と第5の補強湾曲部50との間に、凹部72が形成される。
【0033】
そして、円弧部51及び側面部52,53の上端部には、曲面からなる上面部54が形成されている。
この上面部54は、図3、図4に示すようにパネル基準面Pの高さに形成されている。また、前記側面部53は、パネル基準面Pから緩やかに傾斜した曲面として形成され、その下端部はパネル基準面Pの下方位置し、ルーフパネル1に凹部73が形成される。
また、前記側面部52,53、上面部54は、後部稜線R2から下降する傾斜面(曲面)とし形成され、稜線56より前方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
【0034】
前記第6の補強湾曲部60は、平面視上、車両の後部側に円弧部61が形成され、前記円弧部61から車両の前方に向かって右側面部62及び左側面部63が形成されている。
これら円弧部61及び側面部63は、ルーフパネル1のパネル基準面Pから徐々にルーフ外表面から外部(車両上方)に突出するように、緩やかに傾斜した曲面として形成されている。
【0035】
また曲面として形成され前記右側面部62の下端部は、図3に示すように、ルーフパネル1のパネル基準面Pよりも下方に位置し、ルーフパネル1に凹部73が形成される。
そして、円弧部61及び側面部62,63の上端部には、上面部64が形成されている。この上面部64は曲面になされている。
また、前記側面部62,63、上面部64は、後部稜線R2から下降する傾斜面とし形成され、稜線66より前方はルーフパネル1のパネル基準面Pとされる。
尚、前記稜線46,56,66は同一直線上に位置している。
【0036】
ここで、前記稜線46,56,66と、サンルーフの開口部2の形成予定領域Xとの間には、所定の隙間Sが設けられている。即ち、第4の補強湾曲部40、第5の補強湾曲部50、第6の補強湾曲部60の前方端部は、前記開口部2の形成予定領域Xから所定寸法S離れた位置から車両後方に向けて形成されている。
【0037】
更に、図4に基づいて、第1〜第6の補強湾曲部10,20,30,40,50,60の高さについて説明する。
車両の幅方向に設けられた両側の補強湾曲部10,30,40,60は、パネル基準面Pよりも高く(パネル基準面PよりもH1高く)形成され、前記両側の補強湾曲部10,30,40,60に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部20,50は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されている。
【0038】
また、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部20,50は同等な構成であるため、補強湾曲部20を例にとって説明する。
この車両の幅方向に設けられた2個の補強湾曲部10,30に挟まれた、中央に位置する補強湾曲部20の上面部24は、図4に示すように、パネル基準面Pと同一の高さに形成され、前記上面部24から補強湾曲部20の側面部22の下端部まで、高さ寸法(深さ寸法)H2に形成されている。
したがって、補強湾曲部20の側面部22の下端部から、前記補強湾曲部10の上面部14までの高さはH1+H2となり、大きな高さ寸法(凹部70の深さ寸法)を得ることができる。
【0039】
ここで、補強湾曲部20の上面部24を、前記両側の補強湾曲部10,30の上面部14,34と同一の高さ(図4の符号24aの高さ)に形成することによっても、凹部70の深さ寸法(H1+H2)を得ることができる。
しかしながら、補強湾曲部20の上面部24を、前記両側の補強湾曲部10、30の上面部14、34と同一の高さに形成すると、両側の補強湾曲部10,30によって挟まれた領域(所定幅の領域内に)おいて、高低差のある凹凸(中央に位置する補強湾曲部)が存在するため、視覚的に目立ち、ユーザに対して意匠的に違和感を与え、あまり好ましいものではない。
【0040】
したがって、車両の幅方向に設けられた両側の補強湾曲部10,30,40,60は、パネル基準面Pよりも高く(パネル基準面PよりもH1高く)形成され、前記両側の補強湾曲部10,30,40,60に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部20,50は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されている。特に、パネル基準面Pと同一の高さに形成されているのが好ましい。
【0041】
以上のように本発明に係る実施形態によれば、ルーフパネルに第1〜第6の補強湾曲部10,20,30,40,50,60が形成されているため、ルーフパネル1の剛性を強くすることができる。また、第1〜第3の補強湾曲部10,20,30がサンルーフの開口部2の形成領域X内に形成され、かつ前記第4〜第6の補強湾曲部40,50,60がサンルーフの開口部2の形成領域Xの後方に形成されると共に、この第4〜第6の補強湾曲部40,50,60の前方端部がサンルーフの開口部2の形成領域Xから所定寸法S離れた位置に形成されている。そのため、第1〜第6の補強湾曲部10,20,30,40,50,60を形成した後、サンルーフの開口部2を形成することができる。
【0042】
次に、このルーフパネルの製造方法について説明する。
先ず、平板状のルーフパネル基材に、前記した第1〜第6の補強湾曲部10〜60を形成する。このとき、第1〜第6の補強湾曲部10〜60対応した凹凸曲面を有する金型(一つの金型)で、ルーフパネル基材をプレスすることによって形成する。
【0043】
そして、更にサンルーフを設ける場合には、第1〜第6の補強湾曲部10〜60が形成されたルーフパネル基材に、サンルーフの開口部をプレスにより穿孔する。
このとき、前記したように、開口部2形成領域X内に第1〜第3の補強湾曲部10,20,30が収容されており、開口部2の切断線上には、前記第1〜第3の補強湾曲部10,20,30は位置していない。また第4〜第6の補強湾曲部40,50,60も、開口部2の形成領域Xから所定寸法S離れており、開口部2の切断線上には位置していない。
そのため、前記第1〜第6の補強湾曲部10,20,30,40,50,60が形成されたルーフパネルに対して、一つの金型でプレスすることによって、サンルーフの開口部を設けることができ、安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ルーフパネル
2 サンルーフの開口部
10 第1の補強湾曲部
11 円弧部
12 側面部
13 側面部
14 上面部
20 第2の補強湾曲部
21 円弧部
22 側面部
23 側面部
24 上面部
30 第3の補強湾曲部
31 円弧部
32 側面部
33 側面部
34 上面部
40 第4の補強湾曲部
41 円弧部
42 側面部
43 側面部
44 上面部
50 第5の補強湾曲部
51 円弧部
52 側面部
53 側面部
54 上面部
60 第6の補強湾曲部
61 円弧部
62 側面部
63 側面部
64 上面部
V 車両
F 車両前方
R 車両後方
R1 前部稜線
R2 後部稜線
P パネル基準面
X 開口部形成予定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方領域において、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の一の補強湾曲部と、車両の後方領域において、車両の前後方向に延設され、かつ車両の幅方向に設けられた複数の他の補強湾曲部と、を備えたルーフパネルであって、
前記一の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域内に形成され、かつ前記他の補強湾曲部がサンルーフの開口部形成領域の後方に形成されると共に、前記他の補強湾曲部の前方端部がサンルーフの開口部形成領域から所定寸法離れた位置に形成されていることを特徴とするルーフパネル。
【請求項2】
前記一の補強湾曲部は、平面視上車両の前部側に円弧部が形成され、前記円弧部から車両の後方に向かって右側面部及び左側面部が形成され、更に、側面視上パネル基準面から緩やかな傾斜をもって車両上方に突出して、円弧部、右側面部、左側面部が形成され、その上方に上面部が形成され、
前記他の補強湾曲部は、平面視上車両の後部側に円弧部が形成され、前記円弧部から車両の前方に向かって右側面部及び左側面部が形成され、更に、側面視上パネル基準面から緩やかな傾斜をもって車両上方に突出して、円弧部、右側面部、左側面部が形成され、その上方に上面部が形成され、
前記一の補強湾曲部及び他の補強湾曲部を構成する、円弧部、右側面部、左側面部、上面部が曲面によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のルーフパネル。
【請求項3】
前記一の補強湾曲部は、3個の補強湾曲部によって構成され、
車両の幅方向の両側に設けられた2個の補強湾曲部は、パネル基準面よりも高く形成され、
前記2個の補強湾曲部に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されていることを特徴する請求項1または請求項2記載のルーフパネル。
【請求項4】
前記他の補強湾曲部は、3個の補強湾曲部によって構成され、
車両の幅方向の両側に設けられた2個の補強湾曲部は、パネル基準面よりも高く形成され、
前記2個の補強湾曲部に挟まれる、車両の幅方向の中央に位置する補強湾曲部は、前記2個の補強湾曲部の高さよりも低く形成されていることを特徴する請求項1または請求項2記載のルーフパネル。
【請求項5】
車両の幅方向に設けられた2個の補強湾曲部に挟まれた、中央に位置する補強湾曲部の高さが、パネル基準面と同一の高さに形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のルーフパネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載されたルーフパネルの製造方法において、
平板状のルーフパネル基材を、一及び他の補強湾曲部が形成された一つの金型でプレスし、補強湾曲部を形成する工程と、
前記補強湾曲部の形成工程の後、サンルーフを設ける場合には、前記ルーフパネル基材に、開口部をプレスにより形成することを特徴とするルーフパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91407(P2013−91407A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234502(P2011−234502)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】