説明

レジスト塗布装置

【課題】レジスト微粒子を小さくして膜厚を均一にした電着レジスト膜を高精度に形成でき、量産性に優れたスプレーレジスト法によるレジスト膜の塗布装置を提供する。
【解決手段】レジスト塗布装置(100)は、レジスト剤とキャリアガスと混合して霧状にレジスト剤を噴霧する二流体ノズル(82)と、レジスト容器(80)と、レジスト粒子のうちの重量の小さいレジスト粒子をキャリアガスとともに排出する排出口(81)と、排出口からキャリアガスにより送り込まれる重量の小さいレジスト粒子を吐出する吐出ノズル(71)と、吐出ノズルに取り付けられ重量の小さいレジスト粒子を帯電させる電極針(72)と、帯電したレジスト粒子を使って複数のウエハ(10)にレジスト膜を形成するため、それぞれのウエハに対して接地領域を有するウエハ保持部(76)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジスト膜塗布装置を技術分野とし、特に圧電振動子として形成される圧電体ウエハにレジスト膜を形成する電着塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は周波数制御素子として発信機器に組み込まれて、通信機器を含む各種の電子機器に内蔵される。通信機器の小型化、薄型化に伴い、水晶振動子の一層の小型化、薄型化が要求されている。
【0003】
通常では、水晶振動子を圧電体ウエハの全面に設けてスプレーレジスト法によって電着レジスト膜を形成させる。たとえば特許文献1は、厚みが均一なレジスト膜を形成させるため吐出ノズル先端に設けた電極針を複数本として、吐出ノズルの外周に均等間隔で配置される。これによりムラのない膜厚が均一な電着レジストが形成できる。
【特許文献1】特開2006−58628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の発明は、ミスト状のレジスト微粒子を吐出ノズルの先端で帯電させる電極針を吐出ノズル外周に備えた構造のため、電極針の周辺に発生した微細な渦の影響を受け、ウエハの表面に加工された凹凸の角部分に安定して薄いレジスト膜が得られない問題があった。
【0005】
また、レジスト剤の液温の変化により粘性が変わり、ミスト状のレジスト微粒子の大きさにバラツキが生じて、均質なレジスト膜が得られない問題があった。
さらに、レジスト剤を収容する容器が小さく吐出ノズルに供給するレジスト微粒子供給量にムラが生じ、安定して薄いレジスト膜を電着させるのに問題があった。
【0006】
また、ウエハを1枚ずつレジスト膜塗布装置にセットして、レジスト膜の形成を行っている。このため、量産性に問題があった。
【0007】
そこで本発明は、レジスト微粒子を小さくして膜厚を均一にした電着レジスト膜を高精度に形成でき、量産性に優れたスプレーレジスト法によるレジスト膜の塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点のレジスト塗布装置は、レジスト剤とキャリアガスと混合して霧状にレジスト剤を噴霧する二流体ノズルと、二流体ノズルを所定高さに設け、この二流体ノズルから噴霧されたレジスト粒子のうちの重量の大きいレジスト粒子を下部に落下させるレジスト容器と、レジスト粒子のうちの重量の小さいレジスト粒子をキャリアガスとともに排出する排出口と、排出口からキャリアガスにより送り込まれる重量の小さいレジスト粒子を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルに取り付けられ、重量の小さいレジスト粒子を帯電させる電極針と、帯電したレジスト粒子を使って複数のウエハにレジスト膜を形成するため、それぞれのウエハに対して接地領域を有するウエハ保持部と、を備える。
この構成により、ウエハ保持部にウエハを複数枚セットできるため、複数枚のウエハに同時にレジスト膜を塗布することができる。
【0009】
第2の観点のレジスト塗布装置のウエハ保持部は、その第1面にウエハを入れ込む凹部を有しこの凹部に接地領域が形成されている。
この第2の観点のレジスト塗布装置によると、凹部にウエハを入れ込むとウエハが接地状態になるため、接地のために特別に作業をする必要がない。
【0010】
第3の観点のレジスト塗布装置のウエハ保持部はウエハをクランプするクランプ部を有し、このクランプ部に接地領域が形成されている。
ウエハを保持する際にクランプ部でウエハをクランプする際に入れ込むとウエハが接地状態になるため、接地のために特別に作業をする必要がない。
【0011】
第4の観点のレジスト塗布装置は、凹部は第1面の反対の第2面に貫通する貫通開口を有する。
吐出ノズルからの吐出圧力によってはレジスト粒子が跳ね返る圧により角部又は孔部にレジスト膜が形成しにくくなる。この構成によると、吐出ノズルからのキャリアガスの圧力が高いときなどに貫通開口を使用することで、角部又は孔部であってもレジスト膜を形成しやすくする。
【0012】
第5の観点のレジスト塗布装置のキャリアガスは、温度調整されてレジスト剤と混合される。
キャリアガスが温度調整されることでレジスト粒子の粘度が一定し、圧電体ウエハに使用されるミスト状のレジスト粒子を均一に圧電体ウエハに塗布する際に、キャリアガスの圧電体ウエハに形成された角部又は貫通孔にもレジスト層を形成しやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、角部であっても複数枚のウエハ上にレジスト膜の塗布厚を均一に、薄く形成することができる。
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<レジスト塗布装置の概略>
図1は、水晶ウエハ基板10に対してレジスト微粒子R1を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置100の構成例を示す概略断面図である。レジスト塗布装置100は、塗布チャンバ70、レジスト微粒子生成チャンバ80及びレジストタンク90を備えている。
【0015】
レジストタンク90には、液体のレジスト剤R2が入っている。たとえば、レジスト剤R2は、ノボラック系ポジレジストである。レジストタンク90内のレジスト剤R2は、液体供給ポンプ92によってレジスト微粒子生成チャンバ80に送られる。レジストタンク90内は一定温度に設定されている。レジスト剤R2はたとえば10°Cから30°C、好ましくは20°C前後に設定されている。
【0016】
液体供給ポンプ92によって送られたレジスト剤R2は、まずレジスト微粒子生成チャンバ80の上部に取り付けられたスプレーノズル82に送られる。また、レジスト剤R2を噴霧するため加圧された窒素(N)又はアルゴン(Ar)などの不活性ガスのキャリアガスがスプレーノズル82に供給されている。このキャリアガスは、一定温度に温度調整されている。
【0017】
レジスト微粒子生成チャンバ80は、その形状が円筒形状、角筒形状又は多角筒形状であり、充分な高さ(たとえば1500mm)がある。そして、スプレーノズル82の先端はレジスト微粒子生成チャンバ80の中央よりも上部位置に設けている。レジスト微粒子R1の排出口81は、スプレーノズル82の先端位置よりも上方に設けられ、レジスト微粒子生成チャンバ80の容器の天井までの間の高さで排出口81の高さを調整する調整部を設けている。
【0018】
スプレーノズル82は、二流体ノズルになっており、内側の配管からレジスト剤R2が噴出され、内側の配管を覆う外側配管からキャリアガスが噴出される。このためスプレーノズル82は、レジスト剤R2を微粒子(ミスト状)に噴霧することができる。
【0019】
微粒子となったレジスト微粒子R1はレジスト微粒子生成チャンバ80内に漂う。レジスト微粒子R1のうち、大きな直径のレジスト微粒子R1、すなわち重量のあるレジスト微粒子R1はレジスト微粒子R1自体の自重によってレジスト微粒子生成チャンバ80の下方に落ちる。レジスト微粒子生成チャンバ80の下方に落ちたレジスト微粒子は、互いにくっついてレジスト剤R2となる。そしてレジスト剤R2は一時的にレジスト微粒子生成チャンバ80の底面に蓄えられ、バルブ84を経由して戻しポンプ94によりレジストタンク90に再び戻される。
【0020】
一方、小さな直径のレジスト微粒子R1は、レジスト微粒子生成チャンバ80の下方に落ちることなくレジスト微粒子生成チャンバ80内で漂う。そして、レジスト微粒子R1は、排出口81からキャリアガスとともに吐出ノズル71に供給される。つまり、レジスト微粒子生成チャンバ80はキャリアガスで加圧され、キャリアガスの加圧力によりレジスト微粒子R1が排出口81を経由して塗布チャンバ70内に配置された吐出ノズル71に送られる。
【0021】
レジスト微粒子R1は、塗布チャンバ70内でキャリアガスとともに吐出ノズル71から、水晶ウエハ基板10の表面10aに向かって噴射される。水晶ウエハ基板10は、エハ受台板76の基板セット位置で水平に保持されている。ウエハ受台板76は、チャック73に固定され、チャック73は、Y方向駆動手段75に接続され、図1で左右方向に移動可能である。また、Y方向駆動手段75がX方向駆動手段77に接続され、チャック73は、図1中で紙面表裏方向(前後方向)に移動可能である。この構成については、図3を使って詳述する。
【0022】
本実施例では、レジスト微粒子生成チャンバ80の天井に近い位置に排出口81bを設け、レジスト微粒子生成チャンバ80の天井から遠い位置、すなわちスプレーノズル82の噴霧口に近い位置に排出口81cを設け、第1バルブ86又は第2バルブ87を開閉して排出口81bと排出口81cとを切り換えている。レジスト微粒子R1は、レジスト微粒子生成チャンバ80の天井に近いほど粒径は小さくなる。このため排出口81bと排出口81cを切り換えることにより、水晶ウエハ基板10に適したレジスト微粒子R1の大きさを選択することができる。
【0023】
塗布チャンバ70内で水晶ウエハ基板10に塗布されなかったレジスト微粒子R1は、互いに引っ付きあい自重により塗布チャンバ70底面に落ちる。これらが集まることによりレジスト剤R2となり、バルブ85を経由して戻しポンプ94によりレジストタンク90に再び戻される。なお、レジスト剤R2からレジスト微粒子R1にする過程で、レジスト剤R2の溶剤、たとえばシンナーが気化していくので徐々にレジスト剤R2の濃度が濃くなっていく。このため、塗布チャンバ70又は他の配管に溶剤を定期的に補充していくことが好ましい。
【0024】
レジスト剤の種類により粘度が変わり、またレジスト剤の温度によっても粘度が変わるため、水晶ウエハ基板10の角部及び孔部に対しても均一な膜厚を形成する際にはレジスト剤の温度調整が必要である。さらに、水晶ウエハ基板10の角部及び孔部に対しても均一な膜厚を形成するためにはレジスト微粒子R1の粒径も大きく影響する。本実施形態では、レジスト微粒子R1の粒径を選択することができるので、水晶ウエハ基板10により均一なレジスト膜を形成し易い。また、レジスト微粒子R1はスプレーノズル82からキャリアガスの圧力により形成し、その際にキャリアガスがレジスト微粒子R1の熱を奪ったり又は熱を与えたりするため、キャリアガスの温度調整は重要である。
【0025】
キャリアガスの温度が上がれば、レジスト剤R2又はレジスト微粒子R1の粘度が下がり、レジスト微粒子R1の粒径が小さくなる方向になるため、キャリアガスの温度に応じて排出口81の高さを低くすることで、常に一定の粒径のレジスト微粒子R1を吐出ノズル71に送ることもできる。
<水晶ウエハ基板>
【0026】
図2(a)は、本実施形態に用いる円形の水晶ウエハ基板10の構成を示す斜視図である。円形の水晶ウエハ基板10は、たとえば厚さ0.8mmの人工単結晶水晶からなり、円形の水晶ウエハ基板10の直径は3インチ又は4インチである。さらに、円形の水晶ウエハ基板10は軸方向が特定できるように、水晶ウエハ基板10の周縁部10eの一部には、水晶の結晶方向を特定するオリエンテーションフラット10cが形成されている。
【0027】
図2(b)は、本実施形態に用いる矩形の水晶ウエハ基板15の構成を示す斜視図である。矩形の水晶ウエハ基板15は、たとえば厚さ約0.8mmの人工水晶からなり、矩形の水晶ウエハ基板15の一辺は2インチである。さらに、矩形の水晶ウエハ基板15は軸方向が特定できるように、水晶ウエハ基板15の周縁部15eの一部には、水晶の結晶方向を特定するオリエンテーションフラット15cが形成されている。
【0028】
図2(a)の円形の水晶ウエハ基板10及び図2(b)の矩形の水晶ウエハ基板15は、すでに音叉型水晶振動片20が形成された状況を示している。音叉型水晶振動片20は、完全に1個の振動片とはなっておらず、音叉型水晶振動片20の基部の一部が円形の水晶ウエハ基板10又は矩形の水晶ウエハ基板15と接続されている。このため、一つ一つの音叉型水晶振動片20をパレットなどに並べて処理することなく、数百から数千個の音叉型水晶振動片20を一枚の水晶ウエハ基板10及び水晶ウエハ基板15として、取り扱うことができる。
【0029】
水晶ウエハ基板10は音叉型水晶振動片20が形成された後、電極膜18がスパッタリングなどで形成される。電極膜18は、水晶ウエハ基板10にクロム(Cr)層を数百オングストロームで形成し、そのクロム層の上に金(Au)層を数百オングストロームで形成した構成である。電極膜18は、音叉型水晶振動片20が形成されたことによる貫通孔及びオリエンテーションフラット10cなどにも形成される。なお、以下の実施形態では、図2(a)に示すオリエンテーションフラット10cを有する円形の水晶ウエハ基板10で説明する。
【0030】
<ウエハ駆動手段の構成>
図3(a)は、図1の塗布チャンバ70内の拡大図であり、図3(b)は、図3(a)の平面図である。吐出ノズル71から吐出されたレジスト微粒子R1は、水晶ウエハ基板10を均一な厚さで満遍なく塗布するために、Y方向駆動手段75及びX方向駆動手段77が矢印AR1方向及び矢印AR2方向に移動可能である。これによりウエハ受台板76と共に水晶ウエハ基板10が移動する。Y方向駆動手段75及びX方向駆動手段77は、リニアモータで構成されたり、ステッピングモータとボールネジとから構成されたりする。ウエハ受台板76の移動速度は、水晶ウエハ基板10のレジスト微粒子R1の膜厚と、吐出ノズル71からのレジスト微粒子R1の供給量によって適宜設定する。
【0031】
ウエハ受台板76、チャック73、Z方向駆動手段75又はX方向駆動手段77の外側表面は、プラスチックなどの非導電性材料で覆う。ウエハ受台板76は、水晶ウエハ基板10を保持する。ウエハ受台板76は、水晶ウエハ基板10の電極膜18と接する部分78のみ導電性材料が表面に出ている。レジスト微粒子R1がウエハ受台板76又は駆動手段などに付着しにくくするためである。
ウエハ受台板76は、水晶ウエハ基板10の形状、大きさにより各種類のものを準備し、必要に応じて取り換え使用する。
【0032】
吐出ノズル71は中央に電極針72が備えられ、その電極針72には直流電源部DCから50kV〜150kV程度の高電圧の直流が印加されている。一方、水晶ウエハ基板10の電極膜18は接地されるように構成されている。レジスト微粒子R1が電極針72の近傍を通過する際にレジスト微粒子R1が帯電される。このため、吐出ノズル7から吐出されたレジスト微粒子R1は吐出圧力とともにクーロン力によって水晶ウエハ基板10に塗布される。
【0033】
水晶ウエハ基板10には、数百から数千個の音叉型水晶振動片20が設けられているため、複数の貫通穴又は凹凸が水晶ウエハ基板10に形成されている。塗布されるレジスト微粒子R1は、クーロン力により貫通穴内部にもそして角部にも均一に形成される。
【0034】
本実施形態では、吐出ノズル71が固定され水晶ウエハ基板10がXY平面で移動する構成にしたが、吐出ノズル71がXY平面で移動し水晶ウエハ基板10が固定される構成でもよい。また、レジスト微粒子R1はクーロン力で水晶ウエハ基板10に引っ付くため、重力作用はほとんど無視できるため、吐出ノズル71を水平に固定し水晶ウエハ基板10をXZ平面又はYZ平面に移動する構成としてもよい。
【0035】
図4Aは、第1ウエハ受台板76−1と水晶ウエハ基板10の構成を示した部分断面図である。
図4A(a)に示す第1ウエハ受台板76−1は、5枚の水晶ウエハ基板10を設置できるアルミ合金又はステンレスなどの導電性金属板である。第1ウエハ受台板76−1には水晶ウエハ基板10の直径より多少大きめの凹んだ凹部78a,78b,78c,78d及び78eが形成されている。第1ウエハ受台板76−1の凹部78の深さはほぼ水晶ウエハ基板10の厚さと同等又は多少厚くなっている。凹部78の内側はさらに凹んだ窪み部97を有しており、第1ウエハ受台板76−1の裏面側に貫通していない。
【0036】
水晶ウエハ基板10は凹部78にセットされる。窪み部97が形成されているため、水晶ウエハ基板10がセットされた際に水晶ウエハ基板10の周囲のみが凹部78と接するようになっている。第1ウエハ受台板76−1は、凹部78にセットされた水晶ウエハ基板10を上から押さえるクランプ部79を有している。
【0037】
図4A(b−1)及び(b−2)は第1ウエハ受台板76−1の凹部78の拡大図である。
水晶ウエハ基板10の周囲が接する凹部78には、導通部ECが形成されている。ウエハ受台板76は上述したように導電性金属板であり、導通部ECは絶縁層がその部分に形成されていない状態である。つまり、ウエハ受台板76は導通部ECを除いて絶縁層で覆われている。絶縁層としてはプラスチックなどの非導電性材料であり、好ましくはフッ素樹脂(4フッ化エチレン樹脂)が適している。本来、帯電したレジスト微粒子R1は接地された水晶ウエハ基板10にのみにレジスト層を形成するが、不要にレジスト微粒子R1がウエハ受台板76が付着した際に、不フッ素樹脂の絶縁層はレジスト微粒子R1を掃除し易いからである。
【0038】
図4A(b−1)の凹部78では、凹部78の水平面と垂直面とに導通部ECが形成されている。そして、凹部78にセットされた水晶ウエハ基板10が上からクランプ部79で押さえられ、ネジSCで固定されている。
一方、図4A(b−2)の凹部78では、凹部78の水平面に導通部ECが形成されている。そして、水晶ウエハ基板10を押さえるクランプ部79の下面に導通部ECが形成され、そのクランプ部79の導通部ECも接地されている。本実施形態では、基板押え79は金属製ブロック4個を均等に配置しているが、1個の金属製リングを用いてウエハを押えてもよい。
【0039】
窪み部97が窪んでいるため直接水晶ウエハ基板10の中央部がウエハ受台板76に接することはない。水晶ウエハ基板10の片面にレジスト層を形成した後、他方の面にレジスト層を形成する際にはすでに形成されたレジスト層が傷つかないようにするためである。また、水晶ウエハ基板10の周辺部には音叉型水晶振動片20が形成されていないためレジスト層が傷ついても問題がない。
【0040】
図4Bは、第2ウエハ受台板76−2と水晶ウエハ基板10の構成を示した部分断面図である。
図4B(a)に示す第2ウエハ受台板76−1も、5枚の水晶ウエハ基板10を設置できるアルミ合金又はステンレスなどの導電性金属板である。第2ウエハ受台板76−1には水晶ウエハ基板10の直径より多少大きめの凹んだ凹部78a,78b,78c,78d及び78eが形成されている。第2ウエハ受台板76−1の凹部78の内側は貫通開口98が形成されている。
【0041】
図4B(b−1)及び(b−2)は第2ウエハ受台板76−2の凹部78の拡大図である。
第1ウエハ受台板76−1と同様に凹部78には、導通部ECが形成されている。第2ウエハ受台板76−2は導通部ECを除いて絶縁層で覆われている。絶縁層としてはプラスチックなどの非導電性材料であり、好ましくはフッ素樹脂(4フッ化エチレン樹脂)が適している。第1ウエハ受台板76−1と同様に、本実施形態では、基板押え79は金属製ブロック4個を均等に配置しているが、1個の金属製リングを用いてウエハを押えてもよい。
【0042】
第1ウエハ受台板76−1と第2ウエハ受台板76−2とは、窪み部97があるか貫通開口98があるかの違いである。吐出ノズル71から吐出されるレジスト微粒子R1は、電極針72の近傍を通過する際に帯電する。このため、帯電しているレジスト微粒子R1は接地されている水晶ウエハ基板10に均一に塗布されるが、角部又は孔部にはなかなか均一に付きにくい。吐出ノズル71の吐出圧力によっては窪み部97から跳ね返る風圧が邪魔して角部又は孔部にレジスト膜が形成しにくくなる。そこで、吐出ノズル71からのキャリアガスの圧力が高いときなどに貫通開口98を使用することが好ましい。一方、吐出ノズル71からのキャリアガスの圧力が弱いとき又は適切なときには、窪み部97からの跳ね返る風圧がレジスト微粒子R1が角部又は孔部に付きやすくなる。なお、貫通開口98で第2ウエハ受台板76−2の底面が解放されていると、水晶ウエハ基板10の脱着が容易になる。
【0043】
<窒素ガス加温装置の概略>
図5は、キャリアガスの一つとして窒素ガスを一定温度に調整するガス温調装置110の構成例を示す概略断面図である。ガス温調装置110は、窒素ガス温調槽120、循環液温調タンク130及び温度制御盤140を備えている。
【0044】
窒素ガス温調槽120には、液体たとえば水が入っており、その中を窒素が流れる供給配管121及び排出配管122が配置されている。供給配管121又は排出配管122は液体との接触面積が大きくなるようにらせん状に形成されている。配管と液体との接触面積が大きくなれば蛇行状であってもよい。また供給配管121又は排出配管122に羽(フィン)を設けて接触面積を増やしてもよい。窒素ガスはたとえば10°Cから30°C、好ましくは20°C前後になるように設定されている。窒素ガス温度はレジスト剤R2と同じであることが好ましい。
【0045】
循環液温調タンク130内には循環水が蓄えられる。そして、循環液温調タンク130内に水温を調整する温調器142と水温度を検知するサーモカップル144とが設置されている。そして、窒素ガス温調槽120と循環液温調タンク130との間には循環ポンプ131が配置され、循環液温調タンク130内の温度調整された水は窒素ガス温調槽120に送られる。循環液温調タンク130内からの循環される水によって窒素ガス温調槽120内は一定温度に保たれる。
【0046】
温度制御盤140は、温調器142と温調ケーブル141を介して接続され、サーモカップル144と温度ケーブル143を介して接続されている。温度制御盤140は、サーモカップル144からの温度を検知し、所定温度より高いか低いかを判断しその結果に基づいて、温調器142内のヒーター又はクーラのON―OFFを行う。温度制御盤140は、温調器142内のON−OFFのタイミングをたとえばPID制御によって、循環液温調タンク130内の循環液を一定温度に保っている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
スプレーノズル82は、レジスト剤R2を噴霧するため加圧された窒素又はアルゴンなどの不活性ガスのキャリアガスが供給されるとしたが、基本的には加圧ガスであれば適用できる。
また、レジスト膜の形成される対象物は凹凸を有する水晶ウエハ基板10としたが、平板状であっても他の材料であっても適用できる。また上記実施形態では水晶ウエハで説明しているが、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では循環液温調タンク130に温調器142とサーモカップル144とを設置したが、窒素ガス温調槽120に温調器142を設置し循環液温調タンク130にサーモカップル144を設置してもよい。
また、窒素ガスの温度を調節する設備として、循環液温調タンク130と循環ポンプ131とを設けたが、これらを設けることなく直接窒素ガス温調槽120の液体を温度調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】レジスト微粒子の塗布に関する一実施例を説明するレジスト膜塗布装置100の構成例を示す概略断面図である。
【図2】(a)は本実施形態に用いる円形の水晶ウエハ基板10を示す斜視図、(b)は矩形のウエハ基板15を示す斜視図である。
【図3】(a)は図1の塗布チャンバ70内の拡大図であり、(b)は(a)の平面図である。
【図4A】(a)は第1ウエハ受台板76−1と水晶ウエハ基板10の部分断面図であり、(b)はその拡大図である。
【図4B】(a)は第2ウエハ受台板76−2と水晶ウエハ基板10の部分断面図であり、(b)はその拡大図である。
【図5】窒素ガスを一定温度に加温する装置110の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 … 水晶ウエハ基板、(10c … オリエンテーションフラット)
15 … 水晶ウエハ基板(15c … オリエンテーションフラット)
18 … 電極膜
20 … 音叉型水晶振動片
70 … 塗布チャンバ
71 … 吐出ノズル
72 … 電極針
73 … チャック
75 … Y方向駆動手段
76 … ウエハ受台板(76−1 … 第1ウエハ受台板,76−2 … 第1ウエハ受台板)
77 … X方向駆動手段
78 … 凹部(78a,78b,78c,78d,78e)
79 … クランプ部
80 … レジスト微粒子生成チャンバ
81 … 排出口
82 … スプレーノズル
84,85、86,87 … バルブ
90 … レジストタンク
97 … 窪み部
98 … 貫通開口
100 … レジスト塗布装置
110 … 窒素ガス加温装置
120 … 窒素ガス温調槽
121,122 … 窒素ガス配管
130 … 循環液温調タンク
131 … 循環ポンプ
140 … 温度制御盤
142 … 温調器
144 … サーモカップル
AR1,AR2 … 矢印
R1 … レジスト微粒子
R2 … レジスト剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト剤とキャリアガスと混合して霧状に前記レジスト剤を噴霧する二流体ノズルと、
前記二流体ノズルを所定高さに設け、この二流体ノズルから噴霧されたレジスト粒子のうちの重量の大きいレジスト粒子を下部に落下させるレジスト容器と、
前記レジスト粒子のうちの重量の小さいレジスト粒子を前記キャリアガスとともに排出する排出口と、
前記排出口から前記キャリアガスにより送り込まれる重量の小さいレジスト粒子を吐出する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルに取り付けられ、前記重量の小さいレジスト粒子を帯電させる電極針と、
前記帯電したレジスト粒子を使って複数のウエハにレジスト膜を形成するため、それぞれのウエハに対して接地領域を有するウエハ保持部と、
を備えることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記ウエハ保持部はその第1面に前記ウエハを入れ込む凹部を有し、この凹部に前記接地領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
前記ウエハ保持部は前記ウエハをクランプするクランプ部を有し、このクランプ部に前記接地領域が形成されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記凹部は前記第1面の反対の第2面に貫通する貫通開口を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記キャリアガスは、温度調整されて前記レジスト剤と混合されることを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−59985(P2009−59985A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227343(P2007−227343)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】