説明

レセプタクルのシールドケース

【課題】回路基板に実装したときに基板固定用脚部の半田付け部に過剰な応力が発生しないようにし、半田付け部にクラックが発生しないようにしたレセプタクルのシールドケースを提供する。
【解決手段】前方に向けて開口したプラグ挿入用の開口部22を有し該開口部に挿入されたプラグ100の嵌合部を包囲するように天板部21Aと底板部21Bと左右側板部とを有した角筒形状のシールドケース本体21と、左右側板部の下部に底板部の下面よりも下方に突出するように設けられた基板固定用脚部23、24とを有するシールドケース20において、底板部の下面の基板固定用脚部よりもプラグ挿入用の開口部に近い位置で左右幅方向に互いに離間した少なくとも2箇所に、回路基板に基板固定用脚部を半田付けしてレセプタクル1を実装したときに、回路基板の上面に弾性接触することで、基板固定用脚部への応力を緩和するバネ凸部25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグと接続されるレセプタクル(レセプタクルコネクタとも呼ばれる)のシールドケース(シェルとも呼ばれる)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5及び図6は特許文献1に記載された従来例のレセプタクルの構成を示す図である。
このレセプタクル200は、複数のコンタクトを240を保持したハウジング210と、ハウジング210に固定されたシールドケース220とを備える。
【0003】
シールドケース220は、前方に向けて開口したプラグ挿入用の開口部222を有し該開口部222に挿入されたプラグの嵌合部を包囲するように天板部221Aと底板部221Bと左右側板部221Cとを有した角筒形状のシールドケース本体221と、該シールドケース本体221の左右側板部221Cの下部に前記底板部221Bの下面よりも下方に突出するように設けられた突片223、224と、を具備しており、該突片223、224が、回路基板(図示略)にレセプタクル200を実装するときに回路基板にレセプタクル200を固定するための基板固定用脚部(以下、基板固定用脚部も突片と同じ符号223、224で示す)とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−157378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このレセプタクル200を回路基板に実装する場合、シールドケース220の基板固定用脚部223、224を回路基板に半田付けすることで固定しているが、固定した状態でシールドケース220の底板部221Bの下面と回路基板の上面との間に隙間がある場合、レセプタクル200の開口部222にプラグを中途嵌合した状態でこじった際に、基板固定用脚部223、224の半田付け部に過剰な応力が発生し、半田付け部にクラックが発生するおそれがあることが分かった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板に実装したときに基板固定用脚部の半田付け部に過剰な応力が発生しないようにし、半田付け部にクラックが発生しないようにしたレセプタクルのシールドケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るレセプタクルのシールドケースは、下記(1)を特徴としている。
(1) 前方に向けて開口したプラグ挿入用の開口部を有し該開口部に挿入されたプラグの嵌合部を包囲するように天板部と底板部と左右側板部とを有した角筒形状のシールドケース本体と、前記左右側板部の下部に前記底板部の下面よりも下方に突出するように設けられた突片と、を備え、該突片が、回路基板に前記レセプタクルを実装するときに回路基板にレセプタクルを固定するための基板固定用脚部とされた、プラグと接続されるレセプタクルのシールドケースであって、
前記底板部の下面の前記基板固定用脚部よりも前記プラグ挿入用の開口部に近い位置で左右幅方向に互いに離間した少なくとも2箇所に、前記回路基板に前記基板固定用脚部を半田付けして前記レセプタクルを実装したときに、前記回路基板の上面に弾性接触することで、前記基板固定用脚部への応力を緩和するバネ凸部が設けられていること。
【0008】
上記(1)の構成のレセプタクルのシールドケースによれば、底板部の下面の基板固定用脚部よりもプラグ挿入用の開口部に近い位置で左右幅方向に互いに離間した少なくとも2箇所に、回路基板の上面に弾性接触することで基板固定用脚部への応力を緩和するバネ凸部が設けられているので、プラグを開口部に中途挿入した状態でこじった場合にも、バネ凸部でそのこじり力を吸収することができ、基板固定用脚部に無理な応力が発生しないようにすることができて、基板固定用脚部の半田付け部のクラックの発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路基板に実装したときに基板固定用脚部の半田付け部に過剰な応力が発生しないようにすることができ、同脚部の半田付け部にクラックが発生しないようにすることができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態のシールドケースを用いたレセプタクルの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のシールドケースを用いたレセプタクルの外観構成図で、図2(a)は上からみた斜視図、図2(b)は裏返して見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のシールドケースを用いたレセプタクルにプラグを中途嵌合してこじった場合にバネ凸部がそのこじり力を吸収している状態を示す図であって、図3(a)は同レセプタクルにプラグを中途嵌合してこじった場合にバネ凸部がそのこじり力を吸収している状態を示す側断面図、図3(b)はその要部拡大側断面図である。
【図4】バネ凸部がない場合の比較例を示す要部拡大側断面図である。
【図5】従来のレセプタクルの構成を示す斜視図である。
【図6】同レセプタクルの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のシールドケースを用いたレセプタクルの分解斜視図、図2は同レセプタクルの外観構成図で、図2(a)は上からみた斜視図、図2(b)は裏返して見た斜視図、図3(a)は同レセプタクルにプラグを中途嵌合してこじった場合にバネ凸部がそのこじり力を吸収している状態を示す側断面図で、図3(b)はその要部拡大側断面図である。
【0013】
このレセプタクル1は、プラグ100(図3参照)と接続されるもので、上下段の複数のコンタクト40と、これらコンタクト40を保持するハウジング10と、ハウジング10に装着固定されるシールドケース20とを備えている。ハウジング10は、ハウジング本体11から前側に突出する薄板状のインシュレータ部12を有しており、そのインシュレータ部12の上面と下面に形成された端子配列溝13に、ハウジング本体11に圧入した上段と下段のコンタクト40の先端側の電気接触部がそれぞれ挿入セットされるようになっている。
【0014】
シールドケース20は、前方に向けて開口したプラグ挿入用の開口部22を有し該開口部22に挿入されたプラグの嵌合部を包囲するように天板部21Aと底板部21Bと左右側板部21Cとを有した角筒形状のシールドケース本体21と、該シールドケース本体21の左右側板部21Cの下部に前記底板部21Bの下面よりも下方に突出するように設けられた突片23、24と、を具備しており、該突片23、24が、回路基板80(図3参照)にレセプタクル1を実装するときに回路基板にレセプタクル1を固定するための基板固定用脚部(以下、基板固定用脚部も突片と同じ符号23、24で示す)とされている。
【0015】
また、天板部21Aと底板部21Bと左右側板部21Cには、プラグ挿入用の開口部22にプラグ100が嵌合されたとき、プラグ100側のシールドケースに弾性接触して導通するバネ凸部25が設けられている。さらに、底板部21Bの下面の基板固定用脚部23、24よりもプラグ挿入用の開口部22に近い位置で、左右幅方向に互いに離間した2箇所には、回路基板80に基板固定用脚部23、24を半田付けしてレセプタクル1を実装したときに、回路基板80の上面に弾性接触することで、基板固定用脚部23、24への応力を緩和するバネ凸部25が設けられている。
【0016】
これらバネ凸部25は、図3に示すように、レセプタクル1を回路基板80に実装したとき、回路基板80のできるだけ前端側に位置するように設けられており、回路基板80の上面に弾性接触するようになっている。従って、図3のようにプラグ100を開口部22に中途挿入した状態でこじった場合、バネ凸部25でそのこじり力を吸収することができ、基板固定用脚部23、24に無理な応力が発生しないようにすることができ、基板固定用脚部23、24の半田付け部のクラックの発生を防ぐことができる。
【0017】
ちなみに、図4に示すように、バネ凸部がない場合(図中二点鎖線の円で示す箇所に図3で示したバネ凸部25がない場合)は、シールドケース20の底板部21Bの下面と回路基板80の上面との間に隙間dがあることによって、プラグ100からこじり力が加えられた際にシールドケース20が隙間d分だけ変形し、その変形による応力が基板固定用脚部23の半田付け部に作用する。従って、基板固定用脚部23の半田付け部にクラックが発生する可能性がある。
【0018】
これに対し、本実施形態のレセプタクル1では、シールドケース20の底板部21Bに2つのバネ凸部25があることによって、それを防ぐことができる。ここで、バネ凸部25は1つだけでも、ある程度の機能を果たすことはできるかもしれないが、左右のバランスを考えると最低2個は必要である。これら2個のバネ凸部25がバランス良くプラグ100からのこじり力を吸収することで、左右の基板固定用脚部23の応力を緩和することができる。従って、回路基板80にレセプタクル1を実装した場合の左右の基板固定用脚部23の半田付け部の品質を保つことができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0019】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0020】
1 レセプタクル
20 シールドケース
21 シールドケース本体
21A 天板部
21B 底板部
21C 側板部
22 プラグ挿入用の開口部
23,24 基板固定用脚部(突片)
25 バネ凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に向けて開口したプラグ挿入用の開口部を有し該開口部に挿入されたプラグの嵌合部を包囲するように天板部と底板部と左右側板部とを有した角筒形状のシールドケース本体と、前記左右側板部の下部に前記底板部の下面よりも下方に突出するように設けられた突片と、を備え、該突片が、回路基板に前記レセプタクルを実装するときに回路基板にレセプタクルを固定するための基板固定用脚部とされた、プラグと接続されるレセプタクルのシールドケースであって、
前記底板部の下面の前記基板固定用脚部よりも前記プラグ挿入用の開口部に近い位置で左右幅方向に互いに離間した少なくとも2箇所に、前記回路基板に前記基板固定用脚部を半田付けして前記レセプタクルを実装したときに、前記回路基板の上面に弾性接触することで、前記基板固定用脚部への応力を緩和するバネ凸部が設けられていることを特徴とするレセプタクルのシールドケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146455(P2012−146455A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3166(P2011−3166)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】