説明

レゾルシノールをベースにしたマンニッヒ塩基

本発明は、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、ならびにトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンから調製されるマンニッヒ塩基に関する。これらの製造方法、およびこれらのアミン反応性化合物の硬化剤としての使用も開示する。本発明のマンニッヒ塩基は、接着剤の硬化剤成分として特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンニッヒ塩基の調製および使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
マンニッヒ塩基は長い間知られており、反応性システムの硬化成分中に採用されてきた。フェノールは、その調製に用いられてきた。しかし、出発物質としてのフェノール(ヒドロキシベンゼン)には、それから調製されたマンニッヒ塩基が未反応のフェノール画分を有するという大きな欠点がある。フェノールの毒性に起因して、フェノールをベースにしたマンニッヒ塩基は、多くの市場分野で採用することができない。したがって、フェノールを含まないマンニッヒ塩基を調製するために多くの努力がされてきた。したがって、例えば、ノニルフェノール、またはp-tert-ブチルフェノール、またはカルダノールをベースにしたマンニッヒ塩基が開発され商業化されてきた。
【0003】
マンニッヒ塩基は、主にエポキシ樹脂の促進剤として、あるいはエポキシ樹脂およびポリウレタンの硬化剤として用いられている。国際公開第WO00/15687号は、例えば、マンニッヒ塩基とアミンとのアミン交換反応によって調製されたマンニッヒ塩基促進剤を記載している。
【0004】
既知のマンニッヒ塩基の調製方法は、特に、高分子量の縮合生成物の形成を可能な限り回避すべき場合に、非常に不都合であり実施が困難である。したがって、例えば、欧州特許出願公開第EP-A-1 475 411号は、m-クレゾールまたは3,5-キシレノールとポリアミンとをベースにしたマンニッヒ塩基を調製するための2段階調製法であって、好ましくは第三級アミンを使用する方法を開示している。別の2段階マンニッヒ塩基調製法は、欧州特許出願公開第EP-A-1 475 412号によって開示されていて、ここでは、前記塩基は、m-クレゾール、3,5-キシレノール、またはレゾルシノール等のフェノールと、ポリアミンとから、好ましくは第三級アミンを用いて得られる。しかし、これらの2段階調製法は、追加的な不都合を伴い、マンニッヒ塩基の製造をより高価にする。
【特許文献1】国際公開第WO00/15687号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第EP-A-1 475 411号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第EP-A-1 475 412号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、新規なマンニッヒ塩基の提供し、さらに、フェノールを含まず且つ簡単な方法で調製可能なこれらの新規なマンニッヒ塩基の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、従来技術のポリアミンとフェノール化合物との特定の選択により、この目的を達成することができる、請求項1に記載のマンニッヒ塩基を調製することができることが明らかとなった。これらのマンニッヒ塩基は、安価で容易に入手可能な原材料から簡単な調製法で調製可能である。これらは、特に低温での、アミン反応性化合物との優れた硬化挙動を示す点で注目に値する。
【0007】
本発明の他の態様は、他の独立請求項に記載されている。本発明のさらなる有利な実施態様は、従属請求項から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、ならびにトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンから調製可能なマンニッヒ塩基に関する。
【0009】
レゾルシノール(CAS No.[108-46-3])は、さまざまな純度で商業的に広く入手可能である。レゾルシノールが他のジヒドロキシベンゼン異性体であるピロカテコールおよびヒドロキノンと異なる品質の1つは、そのより低い毒性である(ドイツウォーターハザード分類WGK 2または3に対してWGK 1、あるいはスイス毒性分類2に対して3)。特に、これらのフェノールと他のフェノール(例えば、フェノール自体、例えば、クレゾールまたはキシレノールの様々な異性体等)とを比較すると、驚くべきことに、レゾルシノールが例外的にマンニッヒ塩基の調製に適していることが明らかとなった。
【0010】
当業者に典型的に知られている形態のホルムアルデヒドは、直接に、あるいはホルムアルデヒドのドナー化合物から用いることができる。パラホルムアルデヒドの形態またはホルマリン溶液の形態のホルムアルデヒドが好ましい。ホルマリン溶液が特に好ましい。
【0011】
本発明のマンニッヒ塩基の調製には、さらに、トリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンが用いられる。トリエチレンテトラミン(TETA)(CAS No.[112-24-3])(3,6-ジアザオクタン-1,8-ジアミン)、およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)(CAS No.[112-57-2])(3,6,9-トリアザウンデカン-1,11-ジアミン)は両方とも、商業的に広く入手可能であり、非常に有利な価格である。特に、これらは工業グレードで入手可能であり利用されている。この種の工業グレードが好ましい。当業者は、この種の工業グレードのTETAおよびTEPAが、純粋な、化学的に均一な物質ではないことを承知している。特に、これらの調製法のため、これらはさらなる物質および異性体を含んでいる。主として形成されるこの種の異性体および物質は、
TETAについては:
− N,N’-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン(ビスAEPまたはジAEP)(CAS No.[6531-38-0])
− ピペラジノエチルエチレンジアミン(PEEDA)(CAS No.[24028-46-4])
− トリス(2-アミノエチル)アミン(NTEAまたはNTE)(CAS No.[4097-89-6])
および、TEPAについては:
− 4-アミノエチルトリエチレンテトラミン(AETETA)(CAS No.[31295-46-2])
− アミノエチルピペラジノエチルエチレンジアミン(AEPEEDA)(CAS No.[ 31295-54-2])
− ピペラジノエチルジエチレントリアミン(PEDETA)(CAS No.[ 31295-49-5])
である。
【0012】
さらなる化合物および異性体が少量形成される可能性があるが、上述により明示した化合物と一緒にしたこれらの合計量は、工業用TETAまたはTEPAの重量に対して3重量%未満である。TETAとTEPA、またはTETAのみ、またはTEPAのみを用いることができる。
【0013】
ポリアミン(TETAおよびTEPA)はいずれも、高いN/C比を有していて、したがって、小さい分子によって、したがって少量で多量のアミノ基を組み込むことが可能である。
【0014】
レゾルシノール、ホルムアルデヒド、ならびにTETAおよび/またはTEPAから調製されたマンニッヒ塩基は、800〜1100 mgKOH/g、特に900〜1000 mgKOH/gの範囲、好ましくは950〜1000 mgKOH/gの範囲のアミン価を有することが好ましい。検出可能な量の未反応レゾルシノールを全く含まないマンニッヒ塩基を調製することが可能である。
【0015】
本発明のさらなる態様は、上述したマンニッヒ塩基の調製に関する。
【0016】
この調製のために、レゾルシノール、トリエチレンテトラミン、および/またはテトラエチレンペンタミンを、25℃未満の温度でホルムアルデヒドと反応させる。特に、ホルムアルデヒドを、撹拌および冷却しながら、25℃未満、特に15℃未満の温度で、レゾルシノールならびにトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンを含む予備混合物に添加する。この添加は、好ましくは少しずつに分けて、特に滴下の形態で行うことが好ましい。このレゾルシノール/[TETAおよび/またはTEPA]の予備混合物は、レゾルシノールを溶解するために最初に約80℃に加熱し、さらにホルムアルデヒドの添加前に冷却することが好ましい。レゾルシノールをより効率的に溶解するためおよび粘度を低くするために、予備混合物にさらに溶媒、特にアルコール、好ましくはメタノールを含ませる場合、この溶媒をホルムアルデヒドとの反応の前に添加することが有利であることが明らかになった。この溶媒を最初に(すなわち予備混合物の調製中に)使用することが特に有利である。ホルムアルデヒドを滴下により添加した後、反応混合物の温度を上昇、特に約95℃に上昇させ、同時に、典型的に0.6 bar〜0.9 barのわずかに減圧にすることが好ましい。これらの条件下、おそらくホルムアルデヒドによって導入された水、および生成した水、および用いた溶媒が蒸留により除かれる。用いる溶媒は、したがって、有利には、この温度および圧力で容易に蒸留により除かれるように選択するべきである。
【0017】
本マンニッヒ塩基は、工業用トリエチレンテトラミンおよび/または工業用テトラエチレンペンタミン中に既に存在しているものではない追加の第三級アミンを存在させることなしに調製可能である点で特に有利であることが見出された。
【0018】
レゾルシノールと、ホルムアルデヒドと、TETAおよびTEPAの合計とのモル比は、特に、1:1.5〜2.5:2.5〜3.5である。特に、このような比として、1:約2:約3の数が特に好適であることが実証された。
【0019】
このように形成されたマンニッヒ塩基は、未反応のレゾルシノールを含まないことが好ましく、このことは、マンニッヒ塩基中に検出可能な量のレゾルシノールが存在しないことを意味する。さらに、形成されたマンニッヒ塩基は、特に、800〜1100 mgKOH/g、特に900〜1000 mgKOH/gの範囲、好ましくは950〜1000 mgKOH/gの範囲のアミン価を有する。
【0020】
本マンニッヒ塩基は、そのままで、あるいは組成物に含有させて使用することができる。
【0021】
本マンニッヒ塩基は、アミン反応性官能基を少なくとも2個有するアミン反応性物質の硬化剤として特に好適である。特に好適なこの種のアミン反応性官能基は、グリシジルエーテルおよび/またはイソシアネート基である。
【0022】
1つの実施態様では、アミン反応性官能基を少なくとも2個有するアミン反応性物質は、ジグリシジルエーテルである。特に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルである。特に好適なこの種のジグリシジルエーテルは、いわゆる液状樹脂、特に、Araldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282 (Huntsman社)、またはD.E.R 331 (Dow社)の商品名で、市場で入手可能な液状樹脂である。
【0023】
別の実施態様では、アミン反応性官能基を少なくとも2個有するアミン反応性物質は、ポリイソシアネート、または少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーである。好適なポリイソシアネートは、さらに特に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわちイソホロンジイソシアネートすなわちIPDI)、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、および4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーは、特に、少なくとも1種の上述したポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとから得られる種類のプレポリマーを含む。好適なポリオールには、特に、少なくとも2個のOH基、特に2個または3個のOH基を有する、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリエステルポリオールが含まれる。
【0024】
アミン反応性官能基を少なくとも2個有するアミン反応性物質を本発明のマンニッヒ塩基と混合すると、マンニッヒ塩基のアミノ基とアミン反応性物質のアミン反応性官能基との反応が引き起こされ、硬化が起こる。
【0025】
したがって、本発明は、第一成分K1および第二成分K2からなる2成分型組成物も含む。第一成分K1は、アミンと反応可能な官能基を少なくとも2個有するアミン反応性化合物を少なくとも1種含む。第二成分K2は、既に上述した種類のマンニッヒ塩基を少なくとも1種含む。アミンと反応可能な官能基を少なくとも2個有するアミン反応性化合物として好適な化合物は、既に上述した。
【0026】
第一成分K1は、複数のアミン反応性化合物を含むことが有利である。したがって、特に、比較的高い粘度のアミン反応性化合物と低粘度のアミン反応性化合物とを用いることが推奨される。低粘度アミン反応性化合物として特に好適なものは、いわゆる反応性希釈剤として知られている化合物である。
【0027】
マンニッヒ塩基に加えて、第二成分K2は、さらなるアミンを含むことができる。問題となるこのアミンは、特に、脂肪族または脂環族、好ましくはイソホロンジアミン(IPDA)である。成分K2は、さらにTETAまたはTEPAを含むことが好ましい。この追加のアミンは、マンニッヒ塩基は、早くてもマンニッヒ塩基の後、あるいは成分K2が配合される前に添加する。
【0028】
成分K1およびK2はいずれも、必要であれば、当業者に公知のさらなる成分を含んでいてもよい。この種のさらなる成分は特に、フィラー、可塑剤、溶媒、触媒、および/または添加剤である。
【0029】
好ましいフィラーには、特に、カーボンブラック、チョーク、特にコーティングされたチョーク、砂、ケイ酸塩、軽量フィラー(例えば、セラミックビーズまたはガラスビーズさらに特に、中空セラミックまたは中空ガラスビーズ等)、ヒュームドシリカ、およびフライアッシュが含まれる。
【0030】
好ましい溶媒は、特に、VOC(揮発性有機化合物)として分類されない種類の溶媒である。比較的高沸点の炭化水素が特に好ましい。
【0031】
好ましい可塑剤は、特に、フタレートおよびアジペート、特に、フタル酸ジイソデシル(DIDP)およびアジピン酸ジオクチル(DOA)である。
【0032】
この種の2成分型組成物の用途は広範である。特に好ましい用途は、接着剤またはシーラントであり、特に構造接着剤である。実際に、本発明のマンニッヒ塩基によって達成可能な特性が、特に接着剤の分野において特に望ましいことが明らかになった。
【0033】
特に、特に低温での高い硬化速度が達成可能であること、および、硬化が低温(すなわち室温)で起こった場合でも高いガラス転移温度(Tg)が実現可能であることが見出された。このことは、エポキシ樹脂組成物にとって特に重要である。なぜならば、現在高いTgを達成するために使用されているマンニッヒ塩基を含まないアミン硬化剤(例えば、イソホロンジアミンをベースにした硬化剤)は、高温(例えば60℃より高い温度)で反応させなければならないか、あるいは、室温での硬化後に、続けて加熱操作(すなわち、60℃より高い温度へのその後加熱)を必然的に含まなければならないかのいずれかであるからである。さらに、マンニッヒ塩基を含まないアミン硬化剤で反応させたエポキシ樹脂を使用すると、硬化がいわゆるβ段階にとどまり、その後続いて加熱することによってのみ最終的な強度が達成可能であるという問題が生ずることが多い。さらに、この種のマンニッヒ塩基を含まないアミン硬化剤は、10℃未満の温度、特に5℃未満の温度で硬化させることが、不可能ではないとしても非常に困難である。これらの従来技術の欠点は、本発明のマンニッヒ塩基により解決することができる。特に、室温で硬化した後に、その後の加熱を必要とすることなく80℃より高いガラス転移温度を達成することが可能である。さらに、この種の組成物は、特に10℃未満、好ましくは-10℃〜5℃の間の低い温度でも硬化する。
【0034】
全ての用途にとって、特に環境毒性学的および職業衛生学的な見地から、本発明のマンニッヒ塩基を使用して、フェノールを含まず、他のフェノール化合物も含まず、好ましくは、検出可能な量以上の未反応のレゾルシノールも含まない硬化成分を提供することが可能になることは重要である。
【0035】
上述した2成分型組成物の成分K1とK2とを混合した後、この接着剤を基材表面に適用し、さらなる基材表面に接合させる。この硬化した組成物は、形成された複合材の2つの基材表面間の力を伝達することができる接着層として機能する。
【0036】
その特性のため、この2成分型組成物は、特に建造物、土木工学、および工業用の構造接着剤として好適である。
【0037】
例えば、この種の2成分型組成物、特に2成分型エポキシ樹脂組成物(すなわち、成分K1がジグリシジルエーテルを含む場合)は、繊維強化複合材のための接着剤として使用することができる。この実例は、建造物、例えば橋の強化における、炭素繊維ストリップの接着である。
【0038】
さらに、本発明の2成分型組成物、特に2成分型エポキシ樹脂組成物は、繊維強化複合材の製造のためのポリマーマトリクスとして使用することができる。したがって、例えば、炭素繊維またはガラス繊維を2成分型組成物に埋め込み、硬化した状態において例えば薄層構造の形態の繊維複合材として用いることができる。
【0039】
同様に、例えば、2成分型組成物、特に2成分型エポキシ樹脂組成物を用いて、繊維織布または繊維不織布を建造物に適用することができ、そこで、建造物と共に、繊維強化複合材を形成することができる。
【実施例】
【0040】
[マンニッヒ塩基の調製]
a)溶媒希釈による調製
表1で指定したフェノール化合物1 molを、表1で指定した工業グレードのポリアミン3 molおよびメタノール90 gと共に反応槽に窒素下で仕込み、フェノールが溶解するまで、必要であれば最高80℃までの温度で加熱を行った。その後、氷浴を用いて2〜13℃の温度に冷却した。次いで、撹拌しながら、2 molのホルムアルデヒド(37%ホルマリン溶液の形態で用いた)を、激しく撹拌し且つ氷浴で冷却しながら、滴下により添加した。ホルムアルデヒドの滴下による添加が完了した後、400 mbarの圧力下で90℃まで温度を徐々に昇温させた。最後に、真空度を50 mbarまで上げた。得られた留出液の量は、使用したメタノールおよび水ならびに生成した水の理論量に相当した。
【0041】
【表1】

【0042】
粘度は、レオマット(Rheomat)のコーン/プレート(40 mmコーン、300回転/秒、または20 mmコーン、50回転/秒)を使用して20℃で測定した。残存ポリアミン含有量は、GC/FID(Optima-5MS、60 mgを酢酸エチル10 mlに溶解、キャリアガスHe、2〜6 mg/mlの濃度範囲における3点の外部較正)を使用して測定した。残存フェノール化合物含有量は、HPLC/PDA(Varian社、LiChrosphere 100 RP-18、溶離液は水、アセトニトリル、UV 273 nm)を使用して測定した。
アミン価は、Mettler社(スイス)のMemotitrator DL-55を使用した滴定によって測定した。
【0043】
b)溶媒希釈なしでの調製
1 molのレゾルシノールを、窒素下で、表2に指定した工業グレードのポリアミン1.7 molと共に、反応槽に仕込んだ。この最初の内容物を、レゾルシノールの固体が存在しなくなるまで140℃に加熱した。その後、この内容物を、氷浴を用いて、90℃〜80℃の間の温度に冷却し、次いで、表2に指定した工業グレードのポリアミンをさらに1.7 mol添加し、5℃〜10℃の温度に冷却した。その後、撹拌しながら、2 molのホルムアルデヒド(37%ホルマリン溶液の形態で使用)を、激しく攪拌しかつ氷浴で冷却しながら、滴下により添加した。ホルムアルデヒドの滴下による添加が完結した後、400 mbarの圧力下で、温度を徐々に150℃に昇温させた。最後に、真空度を50 mbarまで上げた。得られた蒸留物の量は、使用した水および生成した水の理論量に相当した。M2およびM3のそれぞれの結果は、安定なマンニッヒ塩基である一方、ポリアミンとしてIPDAを用いた比較例(比較例M3)、およびポリアミンとしてジエチレントリアミン(DETA)を用いた比較例(比較例M4)は、ゲル化した。
【0044】
【表2】

【0045】
[硬化剤としての使用]
マンニッヒ塩基を、エポキシ樹脂成分K1のための硬化成分K2として用いた。このエポキシ樹脂成分は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)GY 250、Huntsman社)80重量%と、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)DY-H、Huntsman社、エポキシ価6.25〜6.65)20重量%とからなる(K1−1)か、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)GY 250、Huntsman社)85重量%と、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)DY-T/CH、Huntsman社)15重量%とからなる(K1−2)かのいずれかである。
【0046】
【表3】

【0047】
可使時間(potlife)は、混合した成分100 gを、ビーカー中、室温で、スパチュラを用いて撹拌することによって測定した。報告した可使時間は、そのバッチがゲル化した時間である。
引張強さは(TS(1日))および破断伸び(BE(1日))は、室温で1日硬化させた後で、ISO 527に準拠して、Zwick社の引張強さ装置を使用して5 mm/秒の測定速度で測定した。
ガラス転移温度は、DSC(0〜250℃、10°/分)を使用してピーク最大値として測定した。
【0048】
[接着剤としての使用]
組成物Z1およびZ2を用いてアルミニウム板とスチール板とを接着させた。本接着剤は、効果的な接着性および効果的な接着強度を示した。
【0049】
さらに、マンニッヒ塩基M1を、硬化成分K2として、Sikadur(登録商標)-30(Sika Schweiz AG社から商業的に入手可能)のA成分(この成分は、成分K1として、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとエポキシ反応性希釈剤とを1:10の混合比でベースにしている)と混合し、コンクリートスラブをコンクリート群に接着するために使用した。この接着剤は、効果的な接着性および効果的な接着強度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシノール、ホルムアルデヒド、ならびにトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンから調製可能なマンニッヒ塩基。
【請求項2】
前記レゾルシノール:ホルムアルデヒド:(トリエチレンテトラミン+テトラエチレンペンタミン)のモル比が、1:1.5〜2.5:2.5〜3.5、特に1:約2:約3であることを特徴とする、請求項1に記載のマンニッヒ塩基。
【請求項3】
前記トリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンが、工業グレードのトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のマンニッヒ塩基。
【請求項4】
アミン価が800〜1100 mgKOH/g、特に900〜1000 mgKOH/gの範囲、好ましくは950〜1000 mgKOH/gの範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基。
【請求項5】
前記マンニッヒ塩基が、検出可能な量の未反応レゾルシノールを含まないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基。
【請求項6】
レゾルシノール、トリエチレンテトラミン、および/またはテトラエチレンペンタミンを、25℃未満の温度でホルムアルデヒドと反応させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基の調製方法。
【請求項7】
前記反応が、工業用トリエチレンテトラミンおよび/または工業用テトラエチレンペンタミン中に既に存在しているものではない追加の第三級アミンを存在させることなく起こることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ホルムアルデヒドを、レゾルシノールならびにトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラエチレンペンタミンを含む予備混合物に、撹拌しながら添加することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
溶媒、特にアルコール、好ましくはメタノールを、ホルムアルデヒドとの反応の前に添加することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ホルムアルデヒドとの反応の後で、水および溶媒を蒸留により除くことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アミンと反応可能な官能基を少なくとも2個有するアミン反応性化合物を少なくとも1種含む第一成分K1と、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基を少なくとも1種含む第二成分K2とからなる2成分型組成物。
【請求項12】
前記第一成分K1が、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基に加えて、さらなるアミン、特に脂肪族または脂環族アミン、好ましくはイソホロンジアミンを含むことを特徴とする、請求項11に記載の2成分型組成物。
【請求項13】
前記第一成分K1中の、アミンと反応可能な官能基を少なくとも2個有する前記アミン反応性化合物が、ジグリシジルエーテル、特に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項11または12に記載の2成分型組成物。
【請求項14】
前記第一成分K1中の、アミンと反応可能な官能基を少なくとも2個有する前記アミン反応性化合物が、ポリイソシアネート、または少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーであることを特徴とする、請求項11または12に記載の2成分型組成物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の2成分型組成物の、接着剤またはシーラント、特に構造接着剤としての使用。
【請求項16】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の2成分型組成物の2つの成分K1およびK2を混合し且つ硬化させることによって得られることを特徴とする、硬化した組成物。
【請求項17】
請求項16の硬化した組成物を接着剤層として含む複合材。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマンニッヒ塩基の、アミン反応性官能基を少なくとも2個有するアミン反応性物質の硬化剤としての使用。
【請求項19】
アミン反応性官能基を少なくとも2個有する前記アミン反応性物質が、ジグリシジルエーテル、特に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
アミン反応性官能基を少なくとも2個有する前記アミン反応性物質が、ポリイソシアネート、または少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーであることを特徴とする、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2008−539207(P2008−539207A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508234(P2008−508234)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061917
【国際公開番号】WO2006/117339
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】