説明

レゾルバ

【課題】 シートコイル部の狭幅化によるレゾルバ全体の小型コンパクト化及び低コスト化を図る。
【解決手段】 励磁信号Sx,Syが入力するシートコイル部Cmにより形成した励磁巻線2x,2y又は検出信号Sdが出力するシートコイル部Cdにより形成した検出巻線3の一方を固定し、かつ他方を回転部4に設けて構成したレゾルバ本体10と、回転部4の回転角Φに応じて変化する検出信号Sdと励磁信号Sx,Syの位相差から回転角Φを検出する信号処理回路30を備えるレゾルバ1を構成するに際して、励磁巻線2x,2yにおける各磁極Mn…,Ms…を構成する複数の導線部L…をそれぞれ一又は二以上に区分し、各区分Z…内における各導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z…同士を順次直列接続し、かつ正弦波磁束分布を生じさせるように各導線部L…の位置xa…又は各導線部L…の電気抵抗ra…を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部の回転角に応じて変化する検出巻線の検出信号と励磁巻線の励磁信号の位相差から回転角を検出するレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転部の回転角を検出するレゾルバは知られている。この種のレゾルバは、電気角で90゜位置を異ならせた空間位置に固定して設けた励磁信号が入力する二相の励磁巻線と、回転部に設けた検出信号が出力する検出巻線とを有し、励磁信号と検出信号の位相差から回転部の回転角を検出できる。即ち、回転部の回転角をΦとすると、励磁巻線の一方の相はsinΦ,他方の相はcosΦとなる。今、励磁巻線に位相が90゜異なる励磁信号V・sinωtとV・cosωtをそれぞれ付与すると、検出巻線から出力する検出信号は、E=(V・sinωt・cosΦ)+(V・cosωt・sinΦ)=V・sin(ωt+Φ)となり、回転部の回転角に対応して位相が変化する検出信号を得る。よって、励磁信号と検出信号の位相差から回転部の回転角Φを求めることができる。
【0003】
ところで、このようなレゾルバは、回転角の検出精度が要求されるため、正確な関数が成立するよう設計上の多くの配慮がなされている。例えば、回転部の1回転が2極構造である場合、回転部の1回転の角度変化が入力周波数の1周期の位相変化と一致するため、通常は多極構造とすることにより角度分割精度を高めている。また、励磁巻線を設けるステータ及び検出巻線を設けるロータ鉄心(回転部)には、多くの巻線スロットを形成した積層珪素鋼板を用いるため、精密な機械加工と正確な巻線手法によって、磁気回路上のギャップやピッチの均一性を確保している。しかし、回転角の検出精度を高めることを目的として精密な機械加工と正確な巻線手法を採用しても、自ずと限界があるとともに、これに伴う大幅なコストアップも無視できない。
【0004】
一方、励磁信号の周波数を高くすれば、巻線数を少なくすることができる。このような角度検出器は、一般にインダクトシンとして知られており、通常、数十〜数百〔KHz〕の高周波信号を用いることにより巻数を少なくしている。しかし、この原理をレゾルバに適用しても、周波数が高いゆえに回転部の回転角を読取処理する際の電気回路の構成が精度面,コスト面及び安定性の面で実用化が困難となる。したがって、一般的な高精度のレゾルバに用いる周波数は、数〔KHz〕に設定されている。
【0005】
結局、従来のレゾルバでは、巻線数が多くなり、かつ精度が要求されることから、小型コンパクト化と軽量化において限界があり、また、部品(材料)コストと製造コストが大きくなる難点があるとともに、このような実情に基づく妥協的な見地から検出精度の高度化を実現できない問題があった。
【0006】
そこで、この問題を解決するため、本出願人は、既に、シートコイルを利用することにより、レゾルバの小型コンパクト化,軽量化及び低コスト化を実現するとともに、復調処理後における信号処理の容易化と安定化,検出精度の高度化を図ったレゾルバを、特許文献1により提案した。このレゾルバは、励磁信号が入力する励磁巻線及び検出信号が出力する検出巻線を有し、励磁巻線又は検出巻線を設けた受動体の変位量に応じて変化する検出信号に基づいて変位量を検出するレゾルバにおいて、特に、シートコイルにより形成した励磁巻線に、励磁信号により高周波信号を変調した変調信号を入力するとともに、シートコイルにより形成した検出巻線から出力する変調信号を復調して検出信号を得れるようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−292205号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1で開示されるレゾルバは、次のような更なる改善の余地が存在した。
【0008】
即ち、フレキシブルプリント基板等によりシートコイルを形成する場合、基本的には、一般的なワイヤを巻回したコイルを模して形成するため、巻線パターンは、一本の導体ラインを一枚の基板面に這わして形成する。したがって、有効磁束を発生しない導線部分(渡り線)を考慮した場合、多極構造とすれば、渡り線は少なくできるものの、少ない極数で正確な正弦波磁束分布を得ようとする場合、導線部の本数に応じた本数の渡り線が必要となる。結局、渡り線の本数が増大し、シートコイルの広幅化によるレゾルバ本体の大型化、更にはコストアップを招き、特に、小型ロボット等の高精度かつ超小型のレゾルバの要求に応えることができないという解決すべき課題が存在した。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレゾルバの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、励磁信号Sx,Syが入力するシートコイル部Cmにより形成した励磁巻線2x,2y又は検出信号Sdが出力するシートコイル部Cdにより形成した検出巻線3の一方を固定し、かつ他方を回転部4に設けて構成したレゾルバ本体10と、回転部4の回転角Φに応じて変化する検出信号Sdと励磁信号Sx,Syの位相差から回転角Φを検出する信号処理回路30を備えるレゾルバ1を構成するに際して、少なくとも、励磁巻線2x,2yにおける各磁極Mn…,Ms…を構成する複数の導線部L…をそれぞれ一又は二以上に区分し、各区分Z,Z…内における各導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z,Z…同士を順次直列接続し、かつ正弦波磁束分布を生じさせるように各導線部L…の位置xa,xb,xc…又は各導線部L…の電気抵抗ra,rb,rc…を設定してなることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、信号処理回路30には、励磁巻線2x,2yに対して励磁信号Sx,Syにより高周波信号Scを変調した変調信号Smx,Smyを入力するとともに、検出巻線3から出力する変調信号Smoを復調して検出信号Sdを得る機能を設けることができる。また、シートコイル部Cm,Cdは、回転部4に対して導線部L…が直角になるように配してもよいし、回転部4に対して導線部L…が平行になるように配してもよい。さらに、電気抵抗ra…は、各導線部L…に対する異ならせた幅寸法により設定してもよいし、各導線部L…に直列接続した抵抗素子Ra…により設定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係るレゾルバ1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 励磁巻線2x,2yにおける各磁極Mn…,Ms…を構成する複数の導線部L…をそれぞれ一又は二以上に区分し、各区分Z…内における各導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z…同士を順次直列接続し、かつ正弦波磁束分布を生じさせるように各導線部L…の位置xa…又は各導線部L…の電気抵抗ra…を設定したため、有効磁束を発生しない導線部分(渡り線)の本数を可及的に少なくすることができ、シートコイル部Cmの狭幅化によるレゾルバ全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を図ることができる。したがって、小型ロボット等の高精度かつ超小型のレゾルバが要求される分野に用いて最適となる。
【0014】
(2) 好適な態様により、シートコイル部Cm,Cdを、回転部4に対して導線部L…が直角になるように配すれば、薄形化(偏平化)したレゾルバ1を比較的容易に構成できるとともに、シートコイル部Cm,Cdを、回転部4に対して導線部L…が平行になるように配すれば、小径化したレゾルバ1を比較的容易に構成でき、用途に適した形態を臨機応変に構築できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、各導線部L…の電気抵抗ra…を異ならせれば、各導線部L…同士の間隔を均等化することができ、導線部L…の全体の密度(本数)を高めることができるとともに、特に、各導線部L…に対する異ならせた幅寸法により電気抵抗ra…を設定すれば、導線部L…のみで異なる電気抵抗ra…を容易に設定できるとともに、各導線部L…に直列接続した抵抗素子Ra…により電気抵抗ra…を設定すれば、様々な電気抵抗ra…を広範囲かつ正確に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係るレゾルバ1の構成について、図1〜図5及び図7を参照して説明する。
【0018】
図5中、10はレゾルバ本体であり、詳細な構造を図1〜図4に示す。レゾルバ本体10は、図2に示すように、仮想線で示すケーシング11に固定されたステータ部12と当該ケーシング11の中心に回動自在に支持されたロータ部13を備える。
【0019】
ステータ部12は、ケーシング11に固定したドーナツ形のベース部14を有し、このベース部14の中心寄りに、出力トランス15(図5)を構成する二次巻線15bを設けるとともに、ベース部14の外周寄りに位置する一面に、ドーナツ形の鉄心16を固定し、さらに、鉄心16の面上に、励磁側(固定側)のシートコイル部Cmを貼付等により取付ける。シートコイル部Cmは、図1〜図3に示すように、全体をフレキシブルプリント基板等により形成し、ドーナツ形の絶縁シート17と、この絶縁シート17の表面(おもて面)に形成した一方の励磁巻線2xと、この絶縁シート17の裏面に形成した他方の励磁巻線2yを有する。したがって、励磁巻線2xと励磁巻線2yは絶縁シート17により絶縁される。
【0020】
励磁巻線2x,2yの具体的な巻線パターンを図3(図1)に示す。図3(a)は励磁巻線2xを示すとともに、図3(b)は励磁巻線2yを示す。同図に示すように、励磁巻線2xと2yは、基本的な構成が同一であり、電気角で90゜位置を異ならせて配する。例示の励磁巻線2x(励磁巻線2yも同じ)は、360゜を二分割した180゜範囲にそれぞれ第一巻線部2xnと第二巻線部2xsを配して構成し、磁極Mn(N極)と磁極Ms(S極)の二極を発生させることができる。第一巻線部2xn(第二巻線部2xsも同じ)は、十八本の導線部L…を有する。そして、この十八本の導線部L…を順次六つに区分し、各区分Z…内における三本の導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z…同士を渡り線Lw…により順次直列接続する。この接続系統を図7に展開して示す。これにより、三ターンの巻数を有する第一巻線部2xnを構成できる。
【0021】
また、各導線部L…の周方向における位置xa,xb,xc…は、正弦波磁束分布を生じさせることができるように選定(設定)する。即ち、図1に示すように、各導線部L…間の角度(間隔)Qa,Qb…をそれぞれ異ならせることにより、正弦波磁束分布を生じさせる。このような巻線パターンを構成することにより、導線部L…の数が十八本であっても渡り線Lw…の数は五本(図7参照)で足りることになる。因に、図1に示す巻線パターンの形態において、各区分Z…内における各導線部L…を並列接続しない場合には、導線部L…の本数だけ、即ち、十八本必要になり、この結果、有効磁束を発生しない導線部分(渡り線)の本数が増大し、全体長も長くなる。しかし、本実施形態に係るレゾルバ1では、励磁巻線2x,2yにおける各磁極Mn,Msを構成する十八本の導線部L…をそれぞれ六つに区分し、各区分Z…内における各導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z…同士を順次直列接続し、かつ正弦波磁束分布を生じさせるように各導線部L…の位置xa…を異ならせたため、有効磁束を発生しない導線部分(渡り線)の本数を可及的に少なくすることができ、シートコイル部Cmの狭幅化によるレゾルバ全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を図ることができる。なお、T…は、各巻線パターンの端部における接続部を示す。
【0022】
一方、ロータ部13は回転部4を構成し、回転軸21と、この回転軸21に固定した回転板22と、出力トランス15(図5)を構成する一次巻線15aを有する。回転板22は、その一面にドーナツ形の鉄心23を固定し、さらに、鉄心23の面上に、上記シートコイル部Cmに対向する検出側(回転側)のシートコイル部Cdを貼付等により取付ける。シートコイル部Cdは、ドーナツ形の絶縁シート24とこの絶縁シート24の表面に形成した検出巻線3を有する。そして、検出巻線3の両端部は一次巻線15aの両端部にそれぞれ接続する。
【0023】
検出巻線3の具体的な巻線パターンを図4に示す。例示の検出巻線3は、360゜を二分割した180゜の範囲にそれぞれ第一巻線部3nと第二巻線部3sを配する。第一巻線部3n(第二巻線部3sも同じ)は、180゜対向位置に二本の導線部L…をそれぞれ有する。そして、これらの導線部L…を渡り線Lw…により交互に接続する。このような構成を有するレゾルバ本体10は、シートコイル部Cm,Cdの導線部L…が回転部4に対して直角になるため、薄形化(偏平化)したレゾルバ本体10を比較的容易に構成できる利点がある。
【0024】
他方、レゾルバ本体10には、図5に示す信号処理回路30を接続する。30iは入力側回路であり、この入力側回路30iは、水晶発振器を用いてクロック信号Scを生成する発振部31、この発振部31から出力するクロック信号Scに基づいてカウンタパルスSpを生成するカウンタパルス回路32、このカウンタパルス回路32から出力するカウンタパルスSpに基づいて周波数が1〔MHz〕程度の高周波信号Shを生成する高周波信号生成回路33、この高周波信号生成回路33から出力する高周波信号Shに基づいて周波数が1〔KHz〕程度の励磁信号Sx,Syを生成する励磁信号生成回路34、この励磁信号生成回路34から出力する一方の励磁信号Sxが入力し、かつ励磁信号Sxの極性反転位置で、高周波信号生成回路33から得る高周波信号Shの極性を反転させて出力する極性反転回路35、この極性反転回路35から出力する高周波信号Shを励磁信号Sxにより変調する変調回路36、この変調回路36から出力する変調信号Smxを一方の励磁巻線2xに供給する出力回路37、励磁信号生成回路34から出力する他方の励磁信号Syが入力し、かつ励磁信号Syの極性反転位置で、高周波信号生成回路33から得る高周波信号Shの極性を反転させて出力する極性反転回路38、この極性反転回路38から出力する高周波信号Shを励磁信号Syにより変調する変調回路39、この変調回路39から出力する変調信号Smyを他方の励磁巻線2yに供給する出力回路40を備えて構成する。
【0025】
一方、30oは出力側回路であり、この出力側回路30oは、出力トランス15の二次巻線15bに接続することにより当該二次巻線15bから出力する変調信号Smoを復調して検出信号Sdを得る出力処理回路51、この出力処理回路51から出力する検出信号Sdが入力する角度検出回路52を備える。また、60は励磁信号Sx,Syと検出信号Sd間に発生する位相誤差を補正する位相補正回路であり、この位相補正回路60は、温度ドリフトに基づく補正信号Seを生成する温度補正信号生成部53、温度補正信号生成部53から出力する補正信号Seによりカウンタパルス回路32から出力するカウンタパルスSpを補正する補正回路54を備える。なお、55は高周波信号を出力する高周波信号生成回路を示すとともに、56は参照信号Ssを生成する参照信号生成回路を示す。
【0026】
次に、このような構成を有する本実施形態に係るレゾルバ1の動作について、各図を参照して説明する。
【0027】
まず、発振部31からはクロック信号Scが出力し、このクロック信号Scはカウンタパルス回路32に付与される。このカウンタパルス回路32ではクロック信号Scに基づいてカウンタパルスSp(図6(f)参照)が生成され、このカウンタパルスSpは高周波信号生成回路33の入力側,温度補正信号生成部53の入力側及び補正回路54の入力側にそれぞれ付与される。高周波信号生成回路33ではカウンタパルスSpに基づいて周波数が1〔MHz〕程度の高周波信号Shが生成され、この高周波信号Shは励磁信号生成回路34の入力側に付与される。励磁信号生成回路34では高周波信号Shに基づいて周波数が1〔KHz〕程度の励磁信号Sx,Syが生成される。
【0028】
この場合、生成される一方の励磁信号Sxは、V・sinω2t(図6(a)の仮想線で示す包絡線)となり、この励磁信号Sxは変調回路36及び極性反転回路35にそれぞれ付与される。これにより、変調回路36では、極性反転回路35から付与される高周波信号Shが励磁信号生成回路34から付与される励磁信号Sxにより振幅変調され、得られた変調信号Smxは出力回路37を介して励磁巻線2xに付与される。この際、極性反転回路35により高周波信号生成回路33から付与される高周波信号Shの極性は、励磁信号Sxの極性反転位置tx…毎に反転せしめられ、この反転処理された高周波信号Shが変調回路36に付与される。そして、励磁巻線2xに付与される変調信号Smxは、図6(a)に仮想線で示すようになり、この変調信号Smxの電圧は、高周波信号Scの角速度をω1とすると、Vx=(V・sinω2t)×(±sinω1t)となる。
【0029】
また、励磁信号生成回路34で生成される他方の励磁信号Syは、最大電圧をV〔V〕,角速度をω2とすると、V・cosω2t(図6(b)の仮想線で示す包絡線)となり、この励磁信号Syは変調回路39及び極性反転回路38にそれぞれ付与される。これにより、変調回路39では、極性反転回路38から付与される高周波信号Shが励磁信号生成回路34から付与される励磁信号Syにより振幅変調され、得られた変調信号Smyは出力回路40を介して励磁巻線2yに付与される。この際、極性反転回路38により高周波信号生成回路33から付与される高周波信号Shの極性は、励磁信号Syの極性反転位置ty…毎に反転せしめられ、この反転処理された高周波信号Shが変調回路39に付与される。そして、励磁巻線2yに付与される変調信号Smyは、図6(b)に仮想線で示すようになり、この変調信号Smyの電圧は、Vy=(V・cosω2t)×(±sinω1t)となる。
【0030】
今、一例として回転部4rが45゜回転した場合を想定する。この場合、励磁信号Sxに基づいて検出巻線3に誘起する図6(a)に実線で示す電圧Ex=(V・sinω2t)×cos│45゜│と、励磁信号Syに基づいて検出巻線3に誘起する図6(b)に実線で示す電圧Ey=(V・cosω2t)×sin│45゜│の合成電圧Eo=Ex+Ey=(V・sinω2t)×cos│45゜│+(V・cosω2t)×sin│45゜│が検出巻線3から出力し、この出力が変調信号Smoとなる。そして、この変調信号Smoは出力トランス15を介して出力処理回路51に付与されるとともに、この変調信号Smoは温度補正信号生成部53に付与される。出力処理回路51では変調信号Smoが復調(検波)され、図6(c)に示す検出信号Sdが得られるとともに、この検出信号Sdは角度検出回路52に付与される。
【0031】
また、温度補正信号生成部53では変調信号Smoから高周波信号成分が分離され、分離された高周波信号成分とカウンタパルス回路32から得るカウンタパルスSpと高周波信号生成回路55から得る高周波信号に基づいて当該高周波信号成分の温度ドリフトによる誤差成分が検出され、さらに、この誤差成分に基づいて補正信号Seが生成される。そして、この補正信号Seは補正回路54に付与される。そして、補正回路54ではカウンタパルス回路32から付与されるカウンタパルスSpが、当該補正信号Seにより補正される。
【0032】
一方、補正回路54から得る補正されたカウンタパルスSpeは、高周波信号生成回路55に付与され、当該カウンタパルスSpeに基づいて高周波信号Sheが生成される。高周波信号生成回路55から得る高周波信号Sheは参照信号生成回路56に付与され、当該高周波信号Sheに基づいて図6(c)に示す参照信号Ssが生成され、この参照信号Ssは角度検出回路52に付与される。そして、角度検出回路52では参照信号Ssから図6(d)に示す参照パルスPsを生成するとともに、検出信号Sdから図6(e)に示す検出パルスPdを生成する。また、この参照パルスPsの立上がりと検出パルスPdの立上がり間でカウンタパルスSpをカウントし、このカウント値を角度に変換して回転軸21(ロータ部13)の回転角を求める。具体的には、カウント値と回転角の関係を予めデータベース化し、データベースからカウント値に対応する回転角を読み出してもよいし、予め設定した関数式を用いることにより演算により求めてもよい。実施例では、結果として45゜の回転角が得られることになる。
【0033】
次に、本発明の変更実施形態に係るレゾルバ1について、図8〜図10を参照して説明する。
【0034】
まず、図8に示す変更実施形態は、各導線部L…の接続態様を変更したものである。レゾルバ1は、基本構成として、各区分Z,Z…内の各導線部L…を並列接続するとともに、各区分Z,Z…同士を順次直列接続する構成を備えている。図8の接続態様は、区分Z…の数を二つとして、図1の接続態様よりも少なくするとともに、各区分Z…における並列接続する導線部L…の数を五本として、図1の接続態様よりも多くしたものである。したがって、図8の接続態様は、渡り線Lwの本数に着目すれば、渡り線Lwの本数をより少なくできる利点があり、このような接続態様は、性能設定や用途等に応じて任意に選択することができる。
【0035】
また、図9に示す変更実施形態は、正弦波磁束分布を生じさせるに際し、各導線部L…の電気抵抗ra,rb,rc…を異ならせたものである。したがって、この場合には、各導線部L…同士の間隔を均等化することができ、導線部L…の全体の密度(本数)を高めることができる利点がある。そして、図9(a)は、各導線部L…の電気抵抗ra,rb,rc…を設定するに際し、各導線部L…の幅寸法を異ならせたものである。即ち、第一の導線部Lの幅寸法を最も狭い寸法Daに設定し、第二の導線部Lの幅寸法を寸法Daよりも広い寸法Dbに設定し、第三の導線部Lの幅寸法を寸法Dbよりも広い寸法Dcに設定したものである。したがって、図9(a)の場合は、導線部L…のみで異なる電気抵抗ra,rb,rc…を容易に設定できる利点がある。また、図9(b)は、各導線部L…の電気抵抗ra,rb,rc…を設定するに際し、各導線部L…に直列接続した抵抗素子Ra,Rb,Rc…により設定したものである。したがって、図9(b)の場合には、様々な電気抵抗ra…を広範囲かつ正確に設定できる利点がある。
【0036】
さらに、図10に示す変更実施形態は、シートコイル部Cm,Cdの導線部L…を、回転部4に対して平行に配したものである。即ち、ステータ部12を偏平な円筒形に形成し、内周面12iに、シートコイル部Cmを貼付等により取付けるとともに、ロータ部13を偏平な円柱形に形成し、外周面13fに、シートコイル部Cdを貼付等により取付ける。なお、図1〜図4に示したシートコイル部Cmは、絶縁シート17の表裏面に励磁巻線2x,2yをそれぞれ形成した場合を示したが、図10に示すシートコイル部Cmは、絶縁シート17xの片面に励磁巻線2xを形成した第一シート部Cmxと、絶縁シート17yの片面に励磁巻線2yを形成した第二シート部Cmyを用意し、第一シート部Cmxと第二シート部Cmyを貼合わせて構成した場合を示す。この場合、第一シート部Cmxと第二シート部Cmyは、電気角で90゜位置が異なる。一方、図10に示すシートコイル部Cdも同様に構成する。この場合、第一シート部Cdxと第二シート部Cdyは、所定角度(例示は、60゜)位相を異ならせ、無用な干渉作用を防止している。また、図10に示すステータ部12及びロータ部13は、複数の珪素鋼板12p…,13p…を積層して構成した。よって、図10に示す変更実施形態の場合には、小径化したレゾルバ1を比較的容易に構成できる。このように、本実施形態に係るレゾルバ1は、図1〜図4に示した実施形態と合わせ、用途に適した形態を臨機応変に構築できる利点がある。
【0037】
なお、図8〜図10において、図1〜図7と同一機能部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、詳細な説明は省略する。
【0038】
以上、最良の実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量(相数等),数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、検出巻線3に変調信号を入力し、かつ励磁巻線2x,2yから出力を得ることにより、sinΦとcosΦの出力電圧比により角度を求めてもよい。また、変調信号Smx,Smyは励磁信号Sx,Syにより高周波信号Shを振幅変調した場合を示したが、位相変調等の他の変調方式の採用を妨げるものではない。なお、本発明に係るレゾルバ1は、特に、小型ロボット(介護用ロボット,家庭用ロボット等)や産業機械などをはじめ、高精度かつ超小型のレゾルバ(センサ)が要求される各種分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るレゾルバに備えるレゾルバ本体の横断面図(図2中A−A線断面)、
【図2】同レゾルバに備えるレゾルバ本体の縦断側面図、
【図3】同レゾルバに備えるレゾルバ本体の励磁巻線の巻線パターン図、
【図4】同レゾルバに備えるレゾルバ本体の検出巻線の巻線パターン図、
【図5】同レゾルバのブロック構成図、
【図6】同レゾルバの各部における信号のタイムチャート、
【図7】同レゾルバのレゾルバ本体の励磁巻線における巻線パターンの展開図、
【図8】本発明の変更実施形態に係るレゾルバのレゾルバ本体の励磁巻線における巻線パターン図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係るレゾルバのレゾルバ本体の励磁巻線の部分抽出拡大図を含む巻線パターン図、
【図10】本発明の他の変更実施形態に係るレゾルバのレゾルバ本体の構成を示す分解説明図、
【符号の説明】
【0040】
1:レゾルバ,2x:励磁巻線,2y:励磁巻線,3:検出巻線,4:回転部,10:レゾルバ本体,30:信号処理回路,Cm:シートコイル部,Cd:シートコイル部,Sx:励磁信号,Sy:励磁信号,Sd:検出信号,Sc:高周波信号,Smx:変調信号,Smy:変調信号,Smo:変調信号,Mn…:磁極,Ms…:磁極,L…:導線部,Z…:区分,xa…:導線部の位置,ra…:導線部の電気抵抗,Ra…:抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁信号が入力するシートコイル部により形成した励磁巻線又は検出信号が出力するシートコイル部により形成した検出巻線の一方を固定し、かつ他方を回転部に設けて構成したレゾルバ本体と、前記回転部の回転角に応じて変化する検出信号と前記励磁信号の位相差から前記回転角を検出する信号処理回路を備えるレゾルバにおいて、少なくとも、前記励磁巻線における各磁極を構成する複数の導線部をそれぞれ一又は二以上に区分し、各区分内における各導線部を並列接続するとともに、各区分同士を順次直列接続し、かつ正弦波磁束分布を生じさせるように各導線部の位置又は各導線部の電気抵抗を設定してなることを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
前記信号処理回路は、前記励磁巻線に対して前記励磁信号により高周波信号を変調した変調信号を入力するとともに、前記検出巻線から出力する変調信号を復調して前記検出信号を得る機能を備えることを特徴とする請求項1記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記シートコイル部は、前記回転部に対して前記導線部が直角又は平行になるように配することを特徴とする請求項1記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記電気抵抗は、各導線部に対する異ならせた幅寸法により、又は各導線部に直列接続した抵抗素子により設定することを特徴とする請求項1記載のレゾルバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−14374(P2009−14374A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173816(P2007−173816)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(596130277)
【Fターム(参考)】