説明

レトルト可能な食品のためのゲルおよびその調製方法

【課題】レトルト加工が施される、例えば、パスタ、米、オート麦および大麦を含む様々な食品の安定性を維持するために用いることのできる食品組成物を提供する。
【解決手段】加えられる水を除いて、i)第1の混合物であって、第1の混合物の総質量に基づいて、a)少なくとも70質量%のゼラチン、b)10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、c)10質量%までの食品デンプン、d)10質量%までのガム、e)必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、およびf)必要に応じて、10質量%までの糖を含む第1の混合物と;必要に応じて、ii)第2の混合物であって、第2の混合物の総質量に基づいて、a)75質量%までのクエン酸、b)60質量%までのアスコルビン酸、c)15質量%までの塩化ナトリウム、およびd)15質量%までのクエン酸塩を含む第2の混合物とを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを形成することのできる新規の食品組成物に関する。本発明はまた、食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルにも関する。本発明はさらに、食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを調製する方法に関する。本発明のゲルを含む食品成分は、レトルト加工後も十分に安定である。
【背景技術】
【0002】
レトルト加工は一般に、パッケージに入れられ密封された食品を、加圧レトルト容器内に収容されるトレイまたはバスケット内に配置する工程を含む。次いで、このパッケージは、病原体を殺しながら、食品を調理するのに十分な温度の蒸気に曝される。適切にレトルト加工された食品は、消費者に販売するのに安全である。
【0003】
今日、MRE(「すぐに食べられる食事(Meals Ready to Eat)」を意味する軍事頭文字)を含む様々な食品を調製するためにレトルト加工が一般に用いられている。MREは、全く水が必要ないので、消費者が簡単に調製できる。MREは、必要なときに冷たいままで食べることができるが、密封されたまま沸騰水中に漬けることを含む様々な様式で加熱することもできる。レトルト食品は、消費者の調製時間を短縮し、食品の安全性を高めることができる。しかしながら、レトルト技術に欠点がないわけではない。
【0004】
レトルト加工には、殺菌を行うために食品を高温(121℃〜148℃辺り)に加熱することが必要である。エネルギーと設備の費用が増加することに加え、高温加工によって、食品に粘りけが出て塊状になり(特に、食品にデンプンが含まれる場合)、「やけど(burn on)」と称される、食品のラインスケール(linescale)またはファウリング(fouling)が生じることがあり、それによって、市場に受け入れられない焼き過ぎまたは煮過ぎの味が与えられてしまう。失敗した食品は、消費者に販売できず、したがって、廃棄され、食材と労力が浪費されたことになる。したがって、レトルトプロセスの生産性と収益性が減少してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、レトルト加工が施される、例えば、パスタ、米、オート麦および大麦を含む様々な食品の安定性を維持するために用いることのできる食品組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを形成することのできる食品組成物が提供される、この食品組成物は、安定剤として働き、食品、特に、レトルト加工されたデンプン系の食品に安定性を与える。ここに用いたように、「安定化」および「安定性」という単語は、レトルト加工が施された食品成分を説明する場合、固い、粘りけのある、塊状の、焼き過ぎた、またはそうではなく失敗した状態には実質的にない食品成分を称する。
【0007】
本発明のある実施の形態における食品組成物は、加えられる水を除いて、i)第1の混合物であって、a)第1の混合物の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、b)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%まで(典型的に、約0.5質量%から約10質量%)の非ガム、非デンプンの多糖類、c)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%まで(典型的に、約0.5質量%から約10質量%)の食品デンプン、d)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%まで(典型的に、約0.5質量%から約10質量%)のガム、e)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、およびf)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖を含む第1の混合物と;必要に応じて、ii)第2の混合物であって、a)第2の混合物の総質量に基づいて、75質量%まで(典型的に、約25質量%から約75質量%)のクエン酸、b)第2の混合物の総質量に基づいて、60質量%まで(典型的に、約20質量%から約60質量%)のアスコルビン酸、c)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%まで(典型的に、約3質量%から約15質量%)の塩化ナトリウム、およびd)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%まで(典型的に、約3質量%から約15質量%)のクエン酸塩を含む第2の混合物とを有してなり、本発明のゲルに含まれる食品成分は、レトルト加工後に安定である。一般に、第1と第2の混合物の相対量は、約10:1から約40:1の範囲にある。
【0008】
本発明の別の態様によれば、食品成分のためのゲルキャリヤとして有効であり、レトルト加工が施される食品を安定化させるゲル組成物が提供される。本発明のゲル組成物は、i)第1の溶液であって、a)第1の溶液の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、b)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、c)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、d)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までのガム、e)第1の溶液の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、f)第1の溶液の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖、およびg)50℃と110℃の間の温度を有する水を含む第1の溶液と、必要に応じて、ii)第2の溶液であって、a)第2の溶液の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、b)第2の溶液の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、c)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、d)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩、およびe)一般に1℃と30℃の間の温度を有する水を含む第2の溶液とを有してなり、本発明のゲルに含まれる食品成分は、レトルト加工後に安定である。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを調製する方法が提供される。この方法は、i)第1の溶液であって、a)第1の溶液の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、b)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、c)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、d)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までのガム、e)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、f)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの糖、およびg)50℃と110℃の間の温度を有する水を含む第1の溶液を、ii)第2の溶液であって、a)第2の溶液の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、b)第2の溶液の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、c)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、d)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩、およびe)一般に1℃と30℃の間の温度を有する水を含む第2の溶液と組み合わせることによって、ブレンドを調製し;ブレンドがゲルを形成するまでブレンドを保持し;少なくとも一種類の食品成分をゲルに添加する各工程を有してなり、本発明のゲルに含まれる食品成分がレトルト加工後に安定である。本発明の別の態様によれば、安定なレトルト食品が提供される。安定なレトルト食品は、一般に、デンプン系食材(例えば、パスタ、米、オート麦、大麦およびそれらの混合物などの、穀物系材料)である食品、本発明のゲルキャリヤおよび水を含む。一般に、乾燥質量基準(水が加えられていない状態)のゲルキャリヤの量は、水を含む食品全体の約0.75質量%から約10質量%までである。水は、所望のコンシステンシーにとって十分な量であって、例えば、食品を調理するために所望の量で存在する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、安定なレトルト食品が提供される。この食品は、食品成分と水を、約90質量%から約99.25質量%;i)第1の混合物であって、a)第1の混合物の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、b)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、c)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、d)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%までのガム、e)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、およびf)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖を含む第1の混合物と、必要に応じて、ii)第2の混合物であって、a)第2の混合物の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、b)第2の混合物の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、c)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、およびd)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩を含む第2の混合物とを含む組成物を、約10質量%から約0.75質量%;有してなり、第1の混合物の、第2の混合物が存在する場合のそれに対する比は、約10:1から約40:1の範囲にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明には、魚膠やアイシングラスを除いた任意のゼラチンを使用できる。牛ゼラチンを使用することが好ましい。本発明に使用されることが好ましい牛ゼラチンは、商標名gelatine Type B, 225 Bloomで、ゼリタ・グループ(Gelita Group)から販売されているものである。
【0012】
本発明には、任意の適切な非ガム、非デンプンの多糖類を使用できる。適切な非ガム多糖類は一般に、約3600を超える重量平均分子量を有する。マルトデキストリンが好ましい。使用されるマルトデキストリンは、商標名C Drylight 01970でセレスター(Cerestar)から販売されているものである。本発明に使用されるマルトデキストリンは、3のデキストロース当量(DE)を有する。
【0013】
本発明には、任意の適切な食品デンプンを使用できる。米デンプンを使用することが好ましい。このデンプンは、蝋質であっても、非蝋質であっても差し支えない。デンプンは未変性であることが好ましいが、変性デンプンを使用しても差し支えない。デンプンは、約2から8マイクロメートルなどの、非常に小さな顆粒サイズを有することが好ましい。デンプンは、低い糊化温度を有することが好ましい。本発明に使用されることが好ましい米デンプンは、商標名Remyline AX DRでレミー・インダストリーズ(Remy Industries)から販売されているものである。
【0014】
本発明には、任意の適切なガムを使用できる。グアールガムを使用することが好ましい。本発明に使用することが好ましいグアールガムは、商標名Edicol ULC 50でシンゲルマン(Singelmann)により販売されているものである。本発明に使用されるグアールガムが、約100,000〜150,000の範囲の数平均分子量を有することが好ましい。
【0015】
本発明には、任意の適切な陰イオン界面活性剤を使用できる。カルボキシメチルセルロースナトリウムを使用することが好ましい。
【0016】
本発明には、任意の適切な糖を使用できる。デキストロースが好ましい。
【0017】
ゼラチン、多糖類、食品デンプン、ガム、陰イオン界面活性剤および糖を、当該技術分野に公知の任意の方法により組み合わせて、第1の混合物を形成する。各成分を、櫂形ミキサを用いて乾式混合により組み合わせることが好ましい。混合物は、どのような形態にあっても差し支えないが、粉末形態にあることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の混合物は、第1の混合物の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、好ましくは約80から約95質量%のゼラチン、より好ましくは約87.5から約89質量%のゼラチンを含む。
【0019】
本発明の第1の混合物は、第1の混合物の総質量に基づいて、約15質量%までの多糖類、好ましくは約0.5から約6質量%の多糖類、より好ましくは約1から約4質量%の多糖類を含む。
【0020】
本発明の第1の混合物はさらに、第1の混合物の総質量に基づいて、約10質量%までの食品デンプン、好ましくは約0.5から約8質量%の食品デンプン、より好ましくは約2から約6質量%の食品デンプンを含む。米デンプンが好ましいデンプンである。さらに、本発明の第1の混合物は、第1の混合物の総質量に基づいて、約10質量%までのガム、好ましくは約0.05から約5質量%のガム、より好ましくは約0.5から約2質量%のガムを含む。
【0021】
本発明の第1の混合物は、必要に応じて、第1の混合物の総質量に基づいて、約10質量%までの陰イオン界面活性剤、好ましくは約0.05から約5質量%の陰イオン界面活性剤、より好ましくは約0.5から約2質量%の陰イオン界面活性剤も含む。さらに、本発明の第1の混合物は、必要に応じて、第1の混合物の総質量に基づいて、約10質量%までの糖、好ましくは約0.05から約5質量%の糖、より好ましくは約0.5から約2質量%の糖も含む。
【0022】
本発明の第1の混合物は、好ましい粉末形態において、第1の混合物の総質量に基づいて、約8から約15質量%、好ましくは11.5質量%の含水量を有する。本発明の第1の混合物は、約0.49の水分活性を有する。第1の混合物の水分活性は、当該技術分野で公知の任意の方法により決定される。含水量は、粉末形態にある第1の混合物の質量に対する水の質量の、百分率で表される比として定義される。含水量は、当該技術分野で公知の任意の方法により決定される。含水量は、100℃の温度でのハロゲン乾燥により決定されることが好ましい。
【0023】
本発明の第2の混合物は、第2の混合物の総質量に基づいて、約75質量%までのクエン酸、好ましくは約55質量%のクエン酸を含む。第2の混合物はまた、第2の混合物の総質量に基づいて、約60質量%までのアスコルビン酸、好ましくは約35質量%のアスコルビン酸を含む。さらに、本発明の第2の混合物は、第2の混合物の総質量に基づいて、約15質量%までの塩化ナトリウム、好ましくは約5質量%の塩化ナトリウムを含む。本発明の第2の混合物は、第2の混合物の総質量に基づいて、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムおよびそれらの混合物を含む、約15質量%までのクエン酸塩、好ましくは約5質量%のクエン酸塩も含む。
【0024】
本発明に、任意の食品等級のクエン酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウムおよびクエン酸塩を使用して差し支えない。クエン酸カルシウムが好ましいクエン酸塩である。クエン酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウムおよびクエン酸塩を当該技術分野において公知の任意の方法により組み合わせて、第2の混合物を形成する。クエン酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウムおよびクエン酸塩を、櫂形ミキサを用いた乾式混合により組み合わせることが好ましい。本発明の第2の混合物は、どのような形態にあっても差し支えないが、粉末形態にあることが好ましい。粉末は、当該技術分野において公知の任意の方法により形成される。
【0025】
本発明の第2の混合物は、好ましい粉末形態において、第2の混合物の総質量に基づいて、約1から約5質量%、好ましくは1.9質量%の含水量を有する。本発明の第2の混合物は、約0.52の水分活性を有する。第2の混合物の水分活性は、当該技術分野で公知の任意の方法により決定される。含水量は、粉末形態にある第2の混合物の質量に対する水の質量の、百分率で表される比として定義される。含水量は、当該技術分野で公知の任意の方法により決定される。含水量は、100℃の温度でのハロゲン乾燥により決定されることが好ましい。
【0026】
本発明の第1の混合物はさらに、50℃と100℃の間、好ましくは60℃と70℃の間、より好ましくは65℃の温度を持つ水を含むことが好ましい。この水は、当該技術分野において公知の任意の混合方法を用いて本発明の第1の混合物と混合される。高剪断ミキサを使用することが好ましい。混合は、好ましい粉末形態にある第1の混合物が水中に実質的に溶解し、それによって、第1の溶液を形成するまで続けられる。
【0027】
本発明の第2の混合物はさらに、1℃と30℃の間、好ましくは1℃と15℃の間、より好ましくは10℃の温度を持つ水を含むことが好ましい。この水は、当該技術分野において公知の任意の混合方法を用いて本発明の第2の混合物と混合される。高剪断ミキサを使用することが好ましい。混合は、好ましい粉末形態にある第2の混合物が水中に実質的に溶解し、それによって、第2の溶液を形成するまで続けられる。第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、ブレンドを形成する。以下に記載する条件下で、ブレンドはゲルを形成する。任意の食品等級の油および/または調味料を、任意の所望の量でブレンドに添加しても差し支えない。油をブレンドに添加する理由の1つは、ゲルに「舌触り」を与えることにある。
【0028】
本発明の第1と第2の溶液を組み合わせて、ブレンドを形成するのに、任意の混合技法を用いて差し支えない。高剪断ミキサを使用することが好ましい。第1と第2の溶液の混合は、混合タンク内で行う。ブレンドが形成された際に、混合タンクから貯蔵タンクにブレンドをポンプで汲み上げるのに、当該技術分野において公知の任意のポンプを用いることができる。貯蔵タンクは、ゲルが形成されるまで、30℃以下、好ましくは10℃以下の温度でブレンドを維持する。この操作は、例えば、ジャケットを通して冷却水を循環させる貯蔵タンクを用いて行うことができる。ゲルが形成されるまでブレンドを貯蔵タンクに保持しなければならない時間は、存在するブレンドの量に依存する。一般に、100ポンド(約45.4kg)のブレンドは、1.50から2.00時間でゲルを形成する。ここに用いたように、「ゲル」という用語は、実質的に半固体状態にあるブレンドを称する。ゲルは、約6.0から約6.2の範囲にあるpHを有することが好ましい。ゲルのpHは、当該技術分野において公知の任意の方法により決定される。
【0029】
ブレンドがゲルを形成したことを判定するために、どのような技法を用いても差し支えない。「ハンド・アイ法(hand/eye method)」を使用することが好ましい。この方法は、目でブレンドを観察する、および/またはブレンドが実質的に半固体状態にあることを観察するまで、当該技術分野において公知の任意の方法によりブレンドを撹拌する工程を含む。
【0030】
一旦ブレンドがゲルを形成したら、食品等級の成分をゲルに添加して、ゲル中で食品成分の懸濁物を形成する。本発明に用いられる食品成分は、未調理のまま、またはある程度調理された状態にあることが好ましい。本発明に用いられる食品成分としては、パスタ、オート麦、米を含むデンプン系の食品、様々な食品粒子またはそれらの任意の組合せが挙げられる。食品粒子としては、任意の供給者から入手できる、乾燥野菜、乾燥果物、乾燥ナッツ、乾燥米および/または大麦が挙げられる。添加される塩化ナトリウムを含む、スパイス、調味料およびハーブを用いて、懸濁物を所望のように味付けしても差し支えない。実質的に乾燥した、未精製米、粗挽きされたオート麦および/または小粒にされた大麦片を使用することがより好ましい。食品成分がゲル中に実質的に懸濁されるまで、食品成分を、低剪断混合方法を用いてゲルと混合する。食品成分は、掻取式ミキサを用いてゲルと混合することが好ましい。
【0031】
所望の量の懸濁物を、任意のレトルト用包装材料中に充填する。包装材料はレトルト用プラスチックボウルまたはパウチであることが好ましい。包装材料がレトルト用フレキシブルパウチであることがより好ましい。懸濁物をレトルト用包装材料中に充填するために、どのタイプの充填装置を用いても差し支えない。
【0032】
貯蔵タンクから充填装置に懸濁物を移送する任意のタイプのプロセスを用いて差し支えない。懸濁物を充填装置にポンプで送り込むのに、貯蔵タンクの仕様に準拠したポンプを使用することが好ましい。
【0033】
懸濁物を適切なパッケージ中に適切に充填した後、パッケージに真空酸素除去、窒素フラッシングまたは酸素吸着を施すことが好ましい。本発明の懸濁物のパッケージ充填を窒素でフラッシングすることが好ましい。窒素フラッシングは、パッケージの未充填部分から酸素を除去することによって、酸化により損なわれることに対して保護し、酸素を不活性窒素で置き換える公知のプロセスである。窒素フラッシングは、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて行われる。
【0034】
酸素除去後(使用する場合)、本発明の懸濁物を収容するパッケージを密封する。本発明の包装された懸濁物を、レトルト加工により殺菌することが好ましい。レトルト殺菌は公知であり、静止式および回転式レトルトの両方を含む。
【0035】
一般的な静止式または回転式レトルトにおいて、レトルトパッケージ内に充填され、密封された製品は、加圧レトルト容器内のトレイまたはバスケット中に配置される。次いで、パッケージを高温、一般に、121℃〜148℃に曝す。この温度は、病原体を殺しながら、食品成分を調理するのに十分である。一般的なレトルトサイクルは、加熱段階と冷却段階の両方を有する。追加のプログラム可能な変数としては、圧力、温度、回転速度(適用される場合)および水レベルが挙げられる。レトルト加工に用いられる時間と温度は、密封されたレトルトパッケージ内に収容された懸濁物により異なる。
【0036】
意外なことに、消費前に照射により単に加熱され(望ましい場合)、消費者の調製後に許容される時間に亘り望ましいテキスチャーを有する、本発明のゲルを含む高品質の食用成分を製造するために、未調理のまたはある程度調理されたデンプン含有食品成分を本発明に用いることができる。
【0037】
レトルト中、デンプンは、未調理のまたはある程度調理されたデンプン含有食品成分から抜け出る。その結果、一般に、糊状のまたはネバネバした製品ができあがる。しかしながら、本発明のゲルを含む食品成分を消費者が適切に調製したときに、完成した製品に糊状態(ネバネバさ)は生じない。これは、本発明のゲルを含むデンプン含有食品成分から抜け出たデンプンは、放出されず、むしろゲル中のタンパク質と結合するからである。
【0038】
前述したように、本発明に用いることのできるデンプン含有食品成分は、粗挽きされたオート麦を含む。粗挽きされたオート麦を含む本発明の懸濁物は、約120℃で約23〜27分でレトルトされる。
【0039】
静止式および回転式レトルトの両方は、ゲル中に懸濁された食品成分を調理する。そのような調理には、消費者が、消費するために懸濁物を調製するのに費やさなければならない時間を減少させる有益な効果がある。例えば、静止式または回転式レトルトにより加工されていない粗挽きされたオート麦は、消費者が調製するのに約30分かかる。しかしながら、粗挽きされたオート麦を含み、レトルト加工された本発明の懸濁物は、消費者が調製するのにちょうど1分間しかかからず、適切に調製したときに、消費者の調製後に所望のテキスチャーを維持する。ここに用いた「適切に調製した」とは、提供された指示書にしたがう調製を称する。
【0040】
前述したように、未精製の実質的に乾燥した米を本発明の食品成分として使用できる。未精製の実質的に乾燥した米を含む本発明の懸濁物は、約165℃で約30〜45分間でレトルト加工できる。未精製の実質的に乾燥した米を含む本発明の懸濁物は、消費者が調製するのにちょうど1分間しかかからず、適切に調製したときに、消費者の調製後に所望のテキスチャーを維持する。
【実施例】
【0041】
本発明の以下の実施例は、説明と実例の目的で提供される。
【0042】
実施例1:レトルト米製品の調製:
本発明によるゲルは、I.第1の混合物であって、第1の混合物の総質量に基づいて、a)89質量%の、ゼリタ・グループから販売されている「Gelatine Type B, 225 Bloom」、b)2質量%の、セレスターから販売されている「C Drylight 01970」、c)5質量%の、レミー・インダストリーズから販売されている「Remylie AX DR」、d)1質量%の、シンゲルマンから販売されている「Edicol ULV 50」、e)1質量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、およびf)2質量%のデキストロースからなる第1の混合物をゲルの総質量に基づいて1.03質量%と、II.65℃の温度を有する水をゲルの総質量に基づいて80質量%と、III.第2の混合物であって、第2の混合物の総質量に基づいて、a)55質量%のクエン酸、b)35質量%のアスコルビン酸、c)5質量%の塩化ナトリウム、およびd)5質量%のクエン酸カルシウムからなる第2の混合物をゲルの総質量に基づいて0.05質量%と、IV.10℃の温度を有する水を、ゲルの総質量に基づいて17.95質量%とを含む組合せであるブレンドを貯蔵タンク内に保持することによって、調製できる。次いで、懸濁物は、懸濁物の総質量に基づいて、a)59質量%の本発明のゲル、b)0.50質量%の塩、およびc)40.50質量%の、乾燥した未精製米を含む食品成分を組み合わせることによって形成できる。貯蔵タンクは、ブレンドがゲルを形成するまで、約10℃以下の温度で1.50から2.00時間に亘りブレンドを維持する。食品成分がゲル中に懸濁されて懸濁物を形成するまで、低剪断混合下で、乾燥した未精製米、乾燥野菜、乾燥ナッツおよび乾燥果物を加えることができる。
【0043】
所望の量の懸濁物を貯蔵タンクから、懸濁物をレトルト用フレキシブルパウチ中に充填するための充填装置にポンプで汲み出す。次いで、パウチに窒素フラッシングを行うことができる。次いで、このパッケージを約165℃に30〜45分間曝すことができる。本発明の実施例1により製造されたレトルト米製品は、約0.91の水分活性を有する。本発明の実施例1により製造されたレトルト米製品におけるマルトデキストリンの量は、0.035である。
【0044】
実施例2:レトルト加工された粗挽きされたオート麦製品の調製:
本発明によるゲルは、I.第1の混合物であって、第1の混合物の総質量に基づいて、a)89質量%の、ゼリタ・グループから販売されている「Gelatine Type B, 225 Bloom」、b)2質量%の、セレスターから販売されている「C Drylight 01970」、c)5質量%の、レミー・インダストリーズから販売されている「Remylie AX DR」、d)1質量%の、シンゲルマンから販売されている「Edicol ULV 50」、e)1質量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、およびf)2質量%のデキストロースからなる第1の混合物をゲルの総質量に基づいて1.50質量%と、II.65℃の温度を有する水をゲルの総質量に基づいて80質量%と、III.第2の混合物であって、第2の混合物の総質量に基づいて、a)55質量%のクエン酸、b)35質量%のアスコルビン酸、c)5質量%の塩化ナトリウム、およびd)5質量%のクエン酸塩からなる第2の混合物をゲルの総質量に基づいて0.05質量%と、IV.10℃の温度を有する水を、ゲルの総質量に基づいて17.95質量%とを含む組合せであるブレンドを貯蔵タンク内に保持することによって、調製できる。次いで、懸濁物は、懸濁物の総質量に基づいて、a)75.40質量%の本発明のゲル、b)0.50質量%の塩、およびc)25.00質量%の、粗挽きされたオート麦を含む食品成分を組み合わせることによって形成できる。貯蔵タンクは、ブレンドがゲルを形成するまで、約10℃以下の温度で1.50から2.00時間に亘りブレンドを維持する。食品成分がゲル中に懸濁されて懸濁物を形成するまで、低剪断混合下で、粗挽きされたオート麦、乾燥野菜、乾燥ナッツおよび乾燥果物を加えることができる。
【0045】
所望の量の懸濁物を貯蔵タンクから、懸濁物をレトルト用ボウル中に充填するための充填装置にポンプで汲み出す。次いで、このボウルに窒素フラッシングを施すことができる。次いで、ボウルを、加圧レトルト容器内のトレイまたはバスケットに配置する。次いで、このパッケージを約120℃で23〜27分間曝すことができる。本発明の実施例2により製造されたレトルト加工された粗挽きされたオート麦製品は、約0.91の水分活性を有する。本発明の実施例2により製造されたレトルト加工された粗挽きされたオート麦製品中のマルトデキストリンの量は、0.04である。
【0046】
本発明を、当業者に理解されるように、ある好ましい実施の形態を参照して説明してきたが、本発明に、様々な変更、改変および再構成を行うことができ、そのような変更、改変および再構成は、特許請求の範囲により包含されることが意図されているのが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを形成できる食用組成物であって、加えられる水を除いて、
i)第1の混合物であって、
a)第1の混合物の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、
b)第1の混合物の総質量に基づいて、約0.5質量%から約10質量%の非ガム、非デンプンの多糖類、
c)第1の混合物の総質量に基づいて、約0.5質量%から約10質量%の食品デンプン、
d)第1の混合物の総質量に基づいて、約0.05質量%から約10質量%のガム、
e)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、および
f)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖、
を含む第1の混合物と、
必要に応じて、
ii)第2の混合物であって、加えられる水を除いて、
a)第2の混合物の総質量に基づいて、約25質量%から約75質量%のクエン酸、
b)第2の混合物の総質量に基づいて、約20質量%から約60質量%のアスコルビン酸、
c)第2の混合物の総質量に基づいて、約3質量%から約15質量%の塩化ナトリウム、および
d)第2の混合物の総質量に基づいて、約3質量%から約15質量%のクエン酸塩、
を含む第2の混合物と、
を有してなり、前記ゲルに含まれる食品成分は、レトルト加工後に安定であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ゼラチンが牛ゼラチンであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記糖がデキストロースであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記食品デンプンが米デンプンであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ガムがグアールガムであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記陰イオン界面活性剤がカルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の混合物の含水量が、該第1の混合物の総質量に基づいて、8から15質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の混合物の含水量が、該第2の混合物の総質量に基づいて、1から5質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルであって、
i)第1の溶液であって、
a)第1の溶液の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、
b)第1の溶液の総質量に基づいて、約0.5質量%から約10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、
c)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、
d)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までのガム、
e)第1の溶液の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、
f)第1の溶液の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖、および
g)50℃と110℃の間の温度を有する水、
を含む第1の溶液と、
必要に応じて、
ii)第2の溶液であって、
a)第2の溶液の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、
b)第2の溶液の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、
c)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、
d)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩、および
e)1℃と30℃の間の温度を有する水、
を含む第2の溶液と、
を有してなり、前記ゲルに含まれる食品成分は、レトルト加工後に安定であることを特徴とするゲル。
【請求項10】
前記ゼラチンが牛ゼラチンであることを特徴とする請求項9記載のゲル。
【請求項11】
前記糖がデキストロースであることを特徴とする請求項9記載のゲル。
【請求項12】
前記食品デンプンが米デンプンであることを特徴とする請求項9記載のゲル。
【請求項13】
前記ガムがグアールガムであることを特徴とする請求項9記載のゲル。
【請求項14】
前記陰イオン界面活性剤がカルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする請求項9記載のゲル。
【請求項15】
食品成分のためのゲルキャリヤとして効果的なゲルを調製する方法であって、
i)第1の溶液であって、
a)第1の溶液の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、
b)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、
c)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、
d)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までのガム、
e)第1の溶液の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、
f)第1の溶液の総質量に基づいて、10質量%までの糖、および
g)50℃と110℃の間の温度を有する水、
を含む第1の溶液を、
必要に応じて、
ii)第2の溶液であって、
a)第2の溶液の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、
b)第2の溶液の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、
c)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、
d)第2の溶液の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩、および
e)1℃と30℃の間の温度を有する水、
を含む第2の溶液と、
組み合わせることによって、ブレンドを調製し、
前記ブレンドがゲルを形成するまで該ブレンドを保持し、
少なくとも一種類の食品成分を前記ゲルに添加する、
各工程を有してなり、前記ゲルに含まれる前記食品成分がレトルト加工中に安定であることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記食品成分を前記ゲル中で懸濁させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
懸濁物をレトルトパッケージ中に充填する工程をさらに含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁物をレトルト加工する工程をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
レトルト加工後、前記食品成分が前記ゲルによって実質的に被覆されていることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記食品成分が、米、パスタ、オート麦、大麦およびそれらの混合物からなる群より選択される食品を含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項21】
請求項15記載により製造された食品。
【請求項22】
請求項18記載により製造された食品。
【請求項23】
安定なレトルト食品であって、
食品成分と水を、約90質量%から約99.25質量%、
i)第1の混合物であって、
a)第1の混合物の総質量に基づいて、少なくとも70質量%のゼラチン、
b)第1の混合物の総質量に基づいて、約0.05質量%から約10質量%までの非ガム、非デンプンの多糖類、
c)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%までの食品デンプン、
d)第1の混合物の総質量に基づいて、10質量%までのガム、
e)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの陰イオン界面活性剤、および
f)第1の混合物の総質量に基づいて、必要に応じて、10質量%までの糖、
を含む第1の混合物と、
必要に応じて、
ii)第2の混合物であって、
a)第2の混合物の総質量に基づいて、75質量%までのクエン酸、
b)第2の混合物の総質量に基づいて、60質量%までのアスコルビン酸、
c)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%までの塩化ナトリウム、および
d)第2の混合物の総質量に基づいて、15質量%までのクエン酸塩、
を含む第2の混合物と、
を含む組成物を、約10質量%から約0.75質量%、
有してなり、前記第1の混合物の、前記第2の混合物が存在する場合のそれに対する比が、約10:1から約40:1の範囲にあることを特徴とする食品。
【請求項24】
前記食品成分がデンプン系食品を含むことを特徴とする請求項23記載の食品。
【請求項25】
前記食品成分が、米、パスタ、オート麦、大麦、野菜、果物、およびナッツ類からなる群より選択されることを特徴とする請求項23記載の食品。

【公開番号】特開2007−125016(P2007−125016A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−295621(P2006−295621)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(506151785)ザ・クェーカー・オーツ・カンパニー (4)
【Fターム(参考)】