説明

レドックスフロー電池

【課題】電解液を貯留するタンクの側方の同じ側から往路配管と復路配管をタンクに接続しても、タンク内の電解液全体を有効に利用できるレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】正極電解液を貯留する正極用タンク106内に往路配管108Aを延伸させる。そして、往路配管108Aの開口端8Aと復路配管110Aの開口端10Aとを、タンク106を側面視したときに形成される矩形の対角位置に配置する。その結果、タンク106を対角線方向に横切る電解液の流れが形成され、タンク106内の電解液全体が有効に利用されるので、安定した充放電特性を発揮するレドックスフロー電池とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した充放電特性を有するレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった新エネルギーの導入が世界的に推進されている。これらの発電出力は、天候に影響されるため、大量に導入が進むと、周波数や電圧の維持が困難になるといった電力系統の運用に際しての問題が予測されている。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の貯蓄、負荷平準化などを図ることが期待される。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間に隔膜を介在させた電池要素に正極電解液及び負極電解液をそれぞれ供給して充放電を行なう。上記電解液は、代表的には、酸化還元により価数が変化する金属イオンを含有する水溶液が利用される。正極にFeイオン、負極にCrイオンを用いる鉄−クロム系レドックスフロー電池の他、正極及び負極の両極にVイオンを用いるバナジウム系レドックスフロー電池が代表的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−147374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクから電池要素に送液する往路配管と、電池要素からタンクに電解液を戻す復路配管のタンクへの繋ぎ方によって、充電不足あるいは放電不足を引き起こす場合がある。具体的には、レドックスフロー電池の設置スペースの関係上、往路配管と復路配管をタンクの側方の同じ側からタンクの外壁面に接続せざるを得ない場合がある。例えば、直方体状のタンクであれば4つある外壁面の一面に、多角柱状のタンクや円筒状のタンクであればタンクを側面視したとき見える外壁面に往路配管と復路配管を接続する場合がある。その場合、タンク内の電解液の流れが、往路配管と復路配管が接続される外壁面側に偏ってしまい、その外壁面に対向する側で電解液が滞留し易い。その滞留した分だけタンク内の電解液を有効に利用することができなくなり、レドックスフロー電池の充放電不足が引き起こされる恐れがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、電解液を貯留するタンクの側方の同じ側から往路配管と復路配管をタンクに接続しても、タンク内の電解液全体を有効に利用できるレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明レドックスフロー電池は、正極電極、負極電極、およびこれら電極間に介在される隔膜を備える電池要素に、正極電解液および負極電解液を供給して充放電を行なうレドックスフロー電池であって、電解液を貯留するタンクから前記電池要素に送液する往路配管、および前記電池要素に送液された電解液を当該電池要素から前記タンクに戻す復路配管は共に、前記タンクの外壁面の同じ側からタンクに接続され、かつ、当該タンクに接続される両配管の少なくとも一方はさらに前記タンク内に延伸されている。そして、前記タンクを側面視したときに当該タンクによって形作られる略矩形形状をタンク矩形、当該タンク内の電解液によって形作られる略矩形形状を電解液矩形としたとき、前記往路配管の開口端と復路配管の開口端は、次のような配置となっていることを特徴とする。
往路配管の開口端…前記電解液矩形のいずれかの角部の近傍に配置される。
復路配管の開口端…前記電解液矩形の角部もしくは前記タンク矩形の角部のうち、前記往路配管の開口端と対角位置にある角部の近傍に配置される。
【0008】
ここで、タンクの形状には、円筒状や、直方体状を含む多角柱状など、種々存在するが、いずれの形状であっても側面視したときの形状はほぼ矩形となる。また、樽形形状や円錐台形状などの異形タンクもあるが、これらの場合も強度の問題から極端な異形となることはなく、その側面視形状はほぼ矩形形状となる。つまり、タンクを側面視したときにタンク内の電解液によって形作られる形状も略矩形形状となる。
【0009】
上記構成を備える本発明レドックスフロー電池によれば、タンクと電池要素との間で電解液を循環させたときに、タンクの対角方向への電解液の流れを形成することができる。その結果、タンク内の電解液において電解液を全体的に撹拌する対流が形成され、タンク内の電解液全体を有効に利用することができる。タンク内の電解液全体を有効に利用できると、レドックスフロー電池は安定した充放電特性を長期にわたって発揮することができる。
【0010】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記往路配管と復路配管の開口端は共に、前記電解液に開口していることが好ましい。
【0011】
往路配管からタンク内の電解液を吸液し、復路配管からタンク内へ電解液を排液する構成上、往路配管の開口端は必ず電解液に開口していなければならないが、復路配管の開口端は電解液(液相)に開口していても良いし、気相に開口していても良い。但し、上記好ましい構成のように、両配管の開口端が共に電解液に開口していれば、復路配管の開口端から往路配管の開口端に向かうスムーズな電解液の流れが形成され易い。そのため、両配管の開口端を電解液に開口させる構成とすることで、復路配管の開口端を気相に開口させる構成よりも、タンク内の電解液を効果的に撹拌することができる。
【0012】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記正極電解液は、正極活物質としてMnイオンを含むことが好ましい。
【0013】
レドックスフロー電池の起電力を向上させるためには、標準酸化還元電位が高い金属イオンを活物質に用いることが考えられる。従来のレドックスフロー電池に利用されている正極活物質の金属イオンの標準酸化還元電位は、Fe2+/Fe3+が0.77V、V4+/V5+が1.0Vである。これに対して、本発明者は、正極活物質となる金属イオン(活物質イオン)として、水溶性の金属イオンであり、従来の金属イオンよりも標準酸化還元電位が高く、バナジウムよりも比較的安価で、資源供給面においても優れると考えられるマンガン(Mn)を用いたレドックスフロー電池を検討した。Mn2+/Mn3+の標準酸化還元電位は、1.51Vであり、Mnイオンは、起電力がより大きなレドックス対を構成するための好ましい特性を有する。
【0014】
ここで、本発明者の検討の結果、正極活物質としてMnイオンを採用したレドックスフロー電池では、正極用電解液中でMnイオン(活物質イオン)の濃度分布に偏りが生じ易いとの知見を得た。放電時の酸化状態であるMn2+に比べて充電時の酸化状態であるMn3+の比重が大きいため、正極用タンクの下部側ではMn3+濃度がMn2+に比べて高い電解液(充電状態の電解液)があり、上部側ではMn2+濃度がMn3+に比べて高い電解液(放電状態の電解液)がある2層状態となり易い。そのため、正極用タンクの下部から電池要素に送液する構成を採用した場合、充電状態にある電解液を常に電池要素に送液することになるので、レドックスフロー電池に十分に充電させることができなくなる恐れがある。最悪の場合、充電時に過電圧となったり、活物質の析出が生じたりする恐れがある。しかし、本発明レドックスフロー電池では、タンクにおける往路配管の開口端と復路配管の開口端の配置によって、タンク内の電解液を効果的に対流させることができるので、正極活物質としてMnイオンを用いることに伴う問題点を解決することができる。
【0015】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記負極電解液は、負極活物質としてTiイオンを含むことが好ましい。
【0016】
本発明者は、負極活物質となる金属イオンとしてチタン(Ti)に着目し、そのTiを用いたレドックスフロー電池を検討した。Ti4+/Ti3+の標準酸化還元電位は、0Vであり、このチタンも起電力がより高いレドックス対を構成するための好ましい特性を有する。特に、正極活物質としてMnイオンを、負極活物質としてTiイオンを用いたレドックスフロー電池は、高い起電力を得ることができるレドックスフロー電池として期待される。
【0017】
ここで、本発明者の検討の結果、負極活物質としてTiイオン(活物質イオン)を採用したレドックスフロー電池では、Mn系の正極用タンクと反対に、負極用タンクの上部側に充電状態の電解液があり、下部側に放電状態の電解液がある2層状態となり易いことが分かった。これは、放電時の酸化状態であるTi4+に比べて充電時の酸化状態であるTi3+の比重が小さいためである。このような場合、負極用タンクの下部から電池要素に送液する構成とすると、放電状態にある電解液を常に電池要素に送液することになるので、レドックスフロー電池から十分に放電させることができなくなる恐れがある。しかし、本発明レドックスフロー電池では、タンクにおける往路配管の開口端と復路配管の開口端の配置によって、タンク内の電解液を効果的に対流させることができるので、正極活物質としてTiイオンを用いることに伴う問題点を解決することができる。
【0018】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記タンク内の電解液中に延伸され、かつ前記タンクの内底面側に位置する配管は、前記内底面を這うように配置されることが好ましい。
【0019】
タンクの内底面に配管を這わせることで、配管の振れなどによって配管の一部に過剰な曲げ応力が作用することを防止できる。また、タンクの内底面に配管を這わせることで、当該配管の開口端が電解液の最底部に配されるので、電解液における対流をより大きくすることができる。
【0020】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記タンク内の電解液中に延伸され、かつ前記タンク内の電解液の液面側に位置する配管は、前記電解液に浮く材料で構成されていることが好ましい。
【0021】
タンクの電解液に配管を浮かせることで、配管に過剰な曲げ応力が作用することを防止できる。また、タンクの電解液に配管を浮かせることで、当該配管の開口端が電解液の最上部に配されるので、電解液における対流をより大きくすることができる。
【0022】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記電解液中に延伸される配管が、前記タンクの内底面および内壁面を含むタンク内周面に近接し、当該タンク内周面に向かって開口する場合、当該配管の開口端は、前記タンク内周面から5cm以上離隔していることが好ましい。
【0023】
上記構成とすることで、電解液中の対流が阻害されることを効果的に防止することができる。配管の開口端がタンク内周面に近すぎると、タンク内周面が電解液の流れを阻害する恐れがある。
【0024】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記電解液中に延伸される配管は、その開口端部近傍の周壁に少なくとも1つの補助孔を有する構成とすることが挙げられる。
【0025】
上記構成とすることで、往路配管にあっては往路配管に電解液を吸液する際の流体抵抗を低下させることができ、復路配管にあっては復路配管から電解液を排出する際の流体抵抗を低下させることができる。その結果、タンクから電池要素へ電解液を送液するポンプの出力を抑えることができる。
【0026】
ここで、タンクの内底面側に配置される配管にあっては、配管の周壁のうち、当該内底面に対向していない部分に補助孔を設けることが好ましい。当該内底面に対向する部分に補助孔が形成されていると、流体抵抗を低下させる効果が半減する。また、タンクの電解液の液面側に配置される配管にあっては、配管の周壁のうち、当該液面に対向しない部分に補助孔を設けることが好ましい。そうすることで、タンク内で電解液が跳ねることを防止できる。
【0027】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記タンクの外壁面に対する前記往路配管と復路配管の接続位置は共に、前記電解液の液面寄りの位置であることが挙げられる。
【0028】
上記構成によれば、タンクの外壁面と配管の周壁との間のシール部分に不具合が生じたときに、タンクからの電解液の漏れ量を抑えることができる。これは、シール部分がタンクの高い位置にあるからである。また、シール部分がタンクの高い位置にある分、シール部分にかかる水圧が小さくなるので、シール部分に不具合が生じ難いという効果もある。
【0029】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、前記往路配管は、前記復路配管よりも前記タンクの内底面寄りの位置に配置される配管であることが好ましい。
【0030】
上記構成とすることで、電解液を電池要素に送液する際、電解液を送液するためのポンプの出力を抑えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明レドックスフロー電池は、安定した充放電特性を有するレドックスフロー電池である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】各実施形態に共通するレドックスフロー電池の基本構成の概略構成図である。
【図2】実施形態1に記載のレドックスフロー電池における往路配管と復路配管の配置を説明する説明図であって、(A)は往路配管を電解液中に延伸させた状態、(B)は往路配管をタンクの内底面に這わせた状態を示す図である。
【図3】実施形態2に記載のレドックスフロー電池における往路配管と復路配管の配置を説明する説明図であって、(A)は復路配管を電解液中に延伸させた状態、(B)は復路配管を電解液に浮かせた状態を示す図である。
【図4】実施形態3に記載のレドックスフロー電池における往路配管と復路配管の配置を説明する概略説明図であって、(A)は電解液中で両配管を互いに離れる方向に延伸させた状態、(B)は電解液中で往路配管を復路配管から離れる方向に延伸させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明レドックスフロー電池の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態のレドックスフロー電池に備わる構成の大部分は共通するため、その共通する構成を図1に基づいて説明する。その後、各実施形態に固有の構成についてそれぞれ図面を参照しつつ説明する。
【0034】
<レドックスフロー電池の共通構成>
図1は、各実施形態のレドックスフロー電池(以下、RF電池)100のうち、共通する構成を有する部分を示す概略構成図である。RF電池100に使用する電解液の活物質は特に限定されないが、本実施形態のRF電池100では、正極活物質としてMnイオン、負極活物質としてTiイオンを用いている。図1における実線矢印は、充電、破線矢印は、放電を意味する。なお、図1に示す活物質イオンは代表的な形態を示しており、図示される以外の形態も含み得る。例えば、図1では、4価のTiイオンとしてTi4+を示すが、TiO2+などのその他の形態も含み得る。
【0035】
図1のRF電池100は、代表的には、交流/直流変換器を介して、発電部(例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他、一般の発電所など)や変電設備を含む電力系統に接続され、発電部を電力供給源として充電を行い、負荷を電力提供対象として放電を行なう。このRF電池100は、従来のRF電池と同様に、電池要素100cと、この電池要素100cに電解液を循環させる循環機構(タンク、配管、ポンプ)とを備える。
【0036】
[電池要素と循環機構]
RF電池100に備わる電池要素100cは、正極電極104を内蔵する正極セル102と、負極電極105を内蔵する負極セル103と、両セル102,103を分離すると共にイオンを透過する隔膜101と、を備える。正極セル102には、正極電解液を貯留する正極用タンク106が往路配管108,復路配管110を介して接続される。負極セル103には、負極電解液用を貯留する負極用タンク107が往路配管109,復路配管111を介して接続される。往路配管108,109には、各極の電解液を循環させるためのポンプ112,113を備える。電池要素100cは、配管108〜111、ポンプ112,113を利用して、正極セル102(正極電極104)、負極セル103(負極電極105)にそれぞれ正極用タンク106の正極電解液、負極用タンク107の負極電解液を循環供給して、各極の電解液中の活物質となる活物質イオン(正極にあってはMnイオン、負極にあってはTiイオン)の価数変化反応に伴って充放電を行なう。
【0037】
電池要素100cは通常、複数積層されたセルスタックと呼ばれる形態で利用される。電池要素100cを構成するセル102,103は、一面に正極電極104、他面に負極電極105が配置される双極板(図示せず)と、電解液を供給する給液孔及び電解液を排出する排液孔を有し、かつ上記双極板の外周に形成される枠体(図示せず)とを備えるセルフレームを用いた構成が代表的である。複数のセルフレームを積層することで、上記給液孔及び排液孔は電解液の流路を構成し、この流路は配管108〜111に接続される。セルスタックは、セルフレーム、正極電極104、隔膜101、負極電極105、セルフレーム、…と順に繰り返し積層されて構成される。
【0038】
[電解液]
本実施形態のRF電池100に用いられる正負の電解液には、MnイオンとTiイオンを含有する共通のものを使用している。正極側にあってはMnイオンが正極活物質として働き、負極側にあってはTiイオンが負極活物質として働く。また、正極側におけるTiイオンは、理由は不明ではあるが、MnOの析出を抑制する。Mnイオン及びTiイオンの各濃度はいずれも0.3M以上5M以下とすることが好ましい。
【0039】
本実施形態のように、正負の電解液に共通の電解液を用いることで、次に3つの効果を奏することができる。
(1)活物質イオンが電池要素の隔膜を介して対極に移動して、各極で本来反応する活物質イオンが相対的に減少することによる電池容量の減少現象を効果的に回避できる。
(2)充放電に伴って経時的に液移り(一方の極の電解液が隔膜を介して他方の極に移動する現象)が生じて両極の電解液の液量やイオン濃度にばらつきが生じた場合でも、両極の電解液を混合するなどして、上記ばらつきを容易に是正できる。
(3)正負個別に専用の電解液を作製する必要がなく、電解液の製造性に優れる。
【0040】
電解液の溶媒としては、HSO、KSO、NaSO、HPO、H、KPO、NaPO、KPO、HNO、KNO、及びNaNOから選択される少なくとも一種の水溶液を利用することができる。
【0041】
[タンク]
正極用タンク106と負極用タンク107の形状は、特に限定されない。タンク106,107の代表的な形状として、円筒形状や角筒形状を挙げることができる。これら円筒形状や角筒形状のタンク106,107を側面視した形状は、矩形形状(タンク矩形)となる。その他、底面よりも上面が小さい円錐台形状のタンク106,107としても良いし、中間部が膨らんだ樽型形状のタンク106,107としても良い。前者の場合、底面よりも極端に上面を小さくすることはないし、後者の場合も、極端に中間部を膨らませることはないので、これらのタンク106,107を側面視した形状も、概略矩形形状(タンク矩形)となる。
【0042】
[その他]
図示しないが、RF電池100は、電池容量を監視するモニタセルを備えていても良い。モニタセルは基本的に交流/直流変換器に接続されず、電池要素100cと同一の構成を備える電池要素100cよりも小型の単セルであり、正極用タンク106と負極用タンク107から正負の電解液の供給を受けて、電池要素100cと同様に起電力を生じる。その開路電圧からRF電池100の電池容量を知ることができる。モニタセルは、セルスタックを構成する一部のセルの場合や、充放電用のセルスタックと直列に電解液流路を構成した別のセルの場合などがある。
【0043】
<実施形態1>
以上説明した基本構成に加え、実施形態1のRF電池100ではさらに、正極用タンク106に接続される往路配管108と、負極用タンク107に接続される往路配管110が、各タンク106,107内に貯留されるタンク106内の電解液中に延伸されている。以下、本実施形態の往路配管108,110の構成を図2(A)に基づいて説明する。なお、図2では、正極用タンク106を側面視したときのタンク106に対する往路配管108Aと復路配管110Aの接続状態のみを図示する。具体的に図示しないが、負極用タンク107(図1参照)側でも同様の構成が設けられていると考えて良い。
【0044】
[往路配管]
往路配管108Aは、タンク106の高さ方向の内底面寄りの位置でタンク106の外壁面に接続され、さらにタンク106の電解液中に延伸されている。そして往路配管108Aの開口端8Aは、タンク106中の電解液によって形作られる矩形形状(電解液矩形)の角部近傍(紙面左下側)に配置されている。
【0045】
往路配管108Aの開口端8Aは、往路配管108Aに電解液を吸い込み易いように、タンク106の内壁面から5cm以上離隔させることが好ましい。また、開口端8A近傍の往路配管108Aの周壁に補助孔を形成して、さらに往路配管108Aへ電解液を吸い込み易くしても構わない。補助孔は、タンク106の内底面に向かないように形成することが好ましい。その他、往路配管108Aの開口端8A近傍以外に補助孔があってもよい。
【0046】
往路配管108Aの材質は特に限定されないが、耐食性を考慮して、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂などのプラスチック材料が好適に利用できる。特に、ポンプ112で電解液をタンク106から吸い上げる際に往路配管108Aが拉げないように往路配管108Aに所定の強度(剛性)を持たせるのであれば、例えば、比較的厚みのあるPVC配管を往路配管108Aとして利用できる。また、タンク106内へ往路配管108Aを配置し易いように往路配管108Aに可撓性(弾性)を持たせるのであれば、例えば、フッ素樹脂製のホースなどを利用できる。
【0047】
往路配管108Aは、一つの部材から構成されていても良いし、複数の部材を繋ぎ合わせて構成されていても良い。分割構成であると組み立てが容易になる。また、分割構成の場合、各部材の材質を異ならせることもできる。例えば、往路配管108Aにおけるタンク106との接続部分から数cm程度までを剛性の材質からなる部材で構成し、その部分から開口端8Aに至るまでを弾性の材質からなる部材で構成することが挙げられる。
【0048】
往路配管108Aの開口端8Aの近傍には、往路配管108Aをタンク106の内底面に支持する支持部材6Aが設けられている。ここで、剛性を有する往路配管108Aを採用した場合、往路配管108Aにおけるタンク106との接続部分に曲げ応力が作用して当該接続部分で往路配管108Aが折損する恐れがある。この場合、支持部材6Aは、接続部分に作用する曲げ応力を緩和する役割を果たす。一方、可撓性を有する往路配管108Aを採用した場合、往路配管108Aの開口端8Aが所望の位置から移動する恐れがある。この場合、支持部材6Aは、開口端8Aの移動を規制する役割を果たす。
【0049】
[復路配管]
復路配管110Aは、タンク106の高さ方向の電解液液面寄りの位置でタンク106の外壁面に接続され、その開口端10Aはタンク106の外壁面に形成されている。つまり、復路配管110Aの開口端10Aは、タンク106中の電解液によって形作られる矩形(電解液矩形)の4つの角部のうち、往路配管108Aの開口端8Aが配置される角部の対角位置にある角部(紙面右上側)に配置されている。なお、復路配管110Aの開口端10Aは、往路配管108Aの開口端8Aに対しておよそ対角位置にあれば良いので、当該開口端10Aが数cm〜十数cm程度、電解液中に延伸されていても良い。また、復路配管110Aの開口端10Aは、タンク106内の気相に開口していても良い。開口端10Aが気相に開口する場合、当該開口端10Aは、往路配管108Aの開口端8Aに対向する位置の電解液の液面からタンク106の右上角部までの間に配置する。つまり、電解液矩形の角部近傍の気相からタンク矩形の角部近傍の気相までの間に開口端10Aを配置する。
【0050】
復路配管110Aの材質には、往路配管108Aと同じものを利用することができる。また、復路配管110Aは、一つの部材から構成されていても良いし、複数の部材を繋ぎ合わせて構成されていても良い。
【0051】
[効果]
以上説明したタンク106内における往路配管108Aの開口端8Aと復路配管110Aの開口端10Aの配置によって、タンク106と電池要素100cの正極セル102との間で電解液を循環させたときに、タンク106の内部空間を対角線方向に横切る電解液の流れを形成することができる(図1の負極用タンク107においても同様)。その結果、電解液における活物質イオン(正極用タンク106においてはMnイオン)の濃度を均一にすることができ、高い起電力を安定して発揮するRF電池100とすることができる。
【0052】
<変形例1−1>
実施形態1の変形例として、図2(B)に示すように、往路配管108Bをタンク106の内底面に這わせる構成を説明する。なお、復路配管110Bとその開口端10Bは、実施形態1のものと全く同じである。
【0053】
タンク106の内底面ぎりぎりの位置でタンク106の外壁面に往路配管108Bを接続することは技術的に難しい。そのため、タンク106と往路配管108Bとの接続部分は、タンク106の内底面から約5cm以上離れた位置となる。その場合、往路配管108Bにおけるタンク106との接続部分から開口端8Bまでの長さが長いため、当該接続部分にテコの原理で過剰な曲げ応力が作用する恐れがある。実施形態1では、当該接続部分に作用する曲げ応力を緩和するために支持部材6A(図1参照)を用いたが、本変形例1−1では往路配管108Bをタンク106の内底面に向かってS字状に屈曲させ、往路配管108Bの大部分をタンク106の内底面に這わせることで当該曲げ応力を緩和している。また、往路配管108Bをタンク106の内底面に這わせることで、タンク106内の最下部の電解液を往路配管108Bに吸い込ませることができるため、タンク106に生じる電解液の対流を実施形態1の構成より大きくすることができる。
【0054】
往路配管108Bをタンク106の内底面に這わせる構成として、往路配管108Bをコルゲート管として、タンク106への接続部分からコルゲート管をタンク106の内底面に向かって屈曲させても良い。その他、タンク106の内部に向かって数cm〜十数cm程度、剛性の管を差し込んで、その管の先端に樹脂などの可撓性のホースを取り付けることで、タンク106の内底面を這う往路配管108Bを形成することもできる。
【0055】
また、往路配管108Bに補助孔を設けるのであれば、その補助孔は往路配管108Bにおけるタンク106の内底面に接する部分以外の部分に設けるようにする。内底面に接する部分に補助孔を設けると、補助孔を設ける意味がなくなるからである。
【0056】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1と異なり、復路配管110Cをタンク106内に延伸させたRF電池を図3(A)に基づいて説明する(図3の見方は図2と同じである)。往路配管108Cと復路配管110Cの配置以外の構成は実施形態1と同じとすることができる。
【0057】
[往路配管]
往路配管108Cは、タンク106の高さ方向のタンク内底面寄りの位置でタンク106の外壁面に接続され、その開口端8Cはタンク106の外壁面に形成されている。つまり、往路配管108Cの開口端8Cは、タンク106中の電解液によって形作られる矩形(電解液矩形)の角部(紙面右下側)に配置されている。なお、開口端8Cは、数cm〜十数cm程度、電解液中に延伸されていても良い。
【0058】
[復路配管]
復路配管110Cは、タンク106の高さ方向の電解液液面寄りの位置でタンク106の外壁面に接続され、さらに電解液中に延伸されている。復路配管110Cの開口端10Cは、電解液矩形の4つの角部のうち、往路配管108Cの開口端8Cの対角位置にある角部(紙面左上側)に配置される。また、復路配管110Cの開口端10C側は、支持部材6Cによってタンク106の内底面に支持されている。なお、復路配管110Cは、必ずしも電解液中に開口する必要はなく、タンク106内の気相に開口していても良い。その場合も、往路配管108Cの開口端8Cと復路配管110Cの開口端10Cとは、対角位置に配置する。
【0059】
[効果]
以上説明した実施形態2の構成によっても、タンク106と電池要素100cとの間で電解液を循環させたときに、タンク106内で、復路配管110Cの開口端10Cから往路配管108Cの開口端8Cに向かってタンク106の内部空間を対角線方向に横切る電解液の流れを形成することができる。その結果、実施形態1と同様に電解液における活物質イオンの濃度を均一にすることができる。
【0060】
<変形例2−1>
実施形態2の変形例として、図3(B)に示すように、復路配管110Dを電解液に浮かせる構成を説明する。往路配管108Dとその開口端8Dは、実施形態2のものと全く同じである。
【0061】
本変形例2−1では、電解液中に配される復路配管110Dのうち、その開口端10Dから所定の長さの部分を電解液に浮く材質で構成した。電解液の密度によって電解液に浮く密度を持った材質は異なるが、例えば、電解液が硫酸を用いたMn/Ti系電解液の場合、復路配管110Dとしてはフッ素樹脂製のホース等を挙げることができる。
【0062】
上記構成とすることで、タンク106と復路配管110Dとの接続部分に作用する応力を緩和することができる。場合によっては、実施形態2で復路配管110C(図3(A))を支持するために設けられていた支持部材6C(図3(A))を省略することもできる。但し、電解液に浮く材質でできた復路配管110Dは可撓性に富むことが多いため、開口端10Dからの電解液の放出の勢いによって開口端10Dの位置が変化する可能性もある。そこで、何らかの支持部材で開口端10Cの位置を固定することが好ましい。例えば、タンク106における図3(B)の左側面、又は図示しない前後側面に、復路配管110Dの端部を適宜な支持部材で支持する。その際、図3(B)の左側面と開口端10Dとの間に所定の間隔をあけておくことが好ましい。
【0063】
なお、実施形態2と同様に、往路配管108Dを約数cm〜十数cm程度電解液中に延伸して、往路配管108Dの開口端8Dをタンク106内の電解液中に開口させても構わない。
【0064】
<実施形態3>
実施形態3では、往路配管と復路配管の両方共、タンクの高さ方向の電解液液面側に寄った位置でタンクに接続する構成を図4に基づいて説明する。
【0065】
図1に示すRF電池100の設置スペースの都合上、どうしても往路配管108と復路配管110を、タンク106の外壁面の近接する位置に繋がざるを得ない場合がある。その場合は、往路配管108と復路配管110を両方共、電解液中に延伸させた上で、少なくとも一方の配管を屈曲させて、両配管の開口端部が対角位置に配置されるようにすれば良い。
【0066】
図4(A)の例では、往路配管108Eをタンク106内底部に向かって屈曲させ、復路配管110Eをそのまま直線状に延伸させている。そうすることで、往路配管108Eの開口端8Eと復路配管110Eの開口端10Eとを対角位置に配置している。
【0067】
一方、図4(B)の例では、復路配管110Fを電解液中に数cm〜十数cm程度、延伸させている。これに対して、往路配管108Fをタンク106の内底面に向かって屈曲させた上で、さらにタンク106の内底面の位置で復路配管110Fの開口端10Fから離れる方向に屈曲させ、内底面に這わせた状態としている。そうすることで、往路配管108Fの開口端8Fと復路配管110Fの開口端10Fとを対角位置に配置している。なお、図4(B)の例では復路配管110Fを電解液中に延伸させなくても図4(A)の構成と同じ効果を得ることができる。
【0068】
ここで、設置スペースの問題がなくとも往路配管108E(108F)と復路配管110E(110F)の両方共、タンク106の高さ方向の電解液液面寄りの位置でタンク106に接続しても良い。配管の接続位置が高いと、配管のシール部分に不具合が生じたとき、電解液の漏れ量を少なくすることができるからである。また、配管の接続位置が高い位置にある分だけシール部分にかかる電解液の水圧を低くすることができ、シール部分が損傷し難くなる。
【0069】
<変形例3−1>
図4の往路配管108E,108Fと復路配管110E,110Fをタンク106に接続する位置は、電解液の液面よりも上であっても良い。その場合、タンク106内で往路配管108E,108Fを電解液の側に屈曲させ、開口端8E,8Fを電解液中に開口させる。他方、復路配管110E,110Fもタンク106内で電解液の側に屈曲させると良い。なお、復路配管110E,110Fの開口端10E,10Fは、電解液中に開口させても良いし、タンク106内の気中に開口させても良い。
【0070】
<実施形態4>
実施形態1〜3ではタンクを側面視したときの往路配管の開口端と復路配管の開口端の配置のみに言及した。これに対して、タンクを上面視したときにも両配管の開口端の位置を出来るだけ離隔させて置くことが好ましい。
【0071】
例えば、直方体状のタンクの場合、そのタンクを上面視したときの形状は矩形となる。その場合、往路配管と復路配管をタンク側面の一面からタンク内に導入し、タンク内部で往路配管と復路配管の少なくとも一方を屈曲或いは斜行させ、その矩形の対角位置に往路配管の開口端と復路配管の開口端を配置すると良い。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。例えば、正極電解液がMnイオンを含有し、負極電解液がTiイオンを含有しない構成、あるいは負極電解液がTiイオンを含有し、正極電解液がMnイオンを含有しない構成のように、正負電解液の種類を異ならせても良い。その他、正極活物質としてVイオンやFeイオンを用いても良いし、負極活物質としてVイオンやCrイオンなどを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明レドックスフロー電池は、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーの発電に対して、発電出力の変動の安定化、発電電力の余剰時の蓄電、負荷平準化などを目的とした大容量の蓄電池に好適に利用することができる。その他、本発明レドックスフロー電池は、一般的な発電所や工場などに併設されて、瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした大容量の蓄電池としても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 レドックスフロー電池
100c 電池要素
101 隔膜
102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
106 正極用タンク 107 負極用タンク
108,108A〜108F,109 往路配管
110,110A〜110F,111 復路配管
112,113 ポンプ
8A〜8F,10A〜10F 開口端
6A,6C 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極、負極電極、およびこれら電極間に介在される隔膜を備える電池要素に、正極電解液および負極電解液を供給して充放電を行なうレドックスフロー電池であって、
電解液を貯留するタンクから前記電池要素に送液する往路配管、および前記電池要素に送液された電解液を当該電池要素から前記タンクに戻す復路配管は共に、前記タンクの側方の同じ側からタンクの外壁面に接続され、かつ、当該タンクに接続される両配管の少なくとも一方はさらに前記タンク内に延伸されており、
前記タンクを側面視したときに当該タンクによって形作られる略矩形形状をタンク矩形、当該タンク内の電解液によって形作られる略矩形形状を電解液矩形としたとき、
前記往路配管の開口端は、前記電解液矩形のいずれかの角部の近傍に配置され、
前記復路配管の開口端は、前記電解液矩形の角部もしくは前記タンク矩形の角部のうち、前記往路配管の開口端と対角位置にある角部の近傍に配置されることを特徴とするレドックスフロー電池。
【請求項2】
前記往路配管と復路配管の開口端は共に、前記電解液に開口していることを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記正極電解液は、正極活物質としてMnイオンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記負極電解液は、負極活物質としてTiイオンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記電解液中に延伸され、かつ前記タンクの内底面側に位置する配管は、前記内底面を這うように配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記電解液中に延伸され、かつ前記タンク内の電解液の液面側に位置する配管は、前記電解液に浮く材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記電解液中に延伸される配管が、前記タンクの内底面および内壁面を含むタンク内周面に近接し、当該タンク内周面に向かって開口する場合、
当該配管の開口端は、前記タンク内周面から5cm以上離隔していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記電解液中に延伸される配管は、その開口端部近傍の周壁に少なくとも1つの補助孔を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記タンクの外壁面に対する前記往路配管と復路配管の接続位置は共に、前記電解液の液面寄りの位置であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記往路配管は、前記復路配管よりも前記タンクの内底面寄りの位置に配置される配管であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25963(P2013−25963A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158430(P2011−158430)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】