説明

レバー嵌合式コネクタ

【課題】カバー外れを防止できる一方で、コネクタカバーを容易に取り外せるレバー嵌合式コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタハウジング13に軸支され、レバー19を回転操作することで、相手コネクタとの嵌合と離脱を助勢するレバー19と、コネクタハウジング13から導出された電線を覆うコネクタカバー21と、を備えたレバー嵌合式コネクタであって、コネクタカバー21は、コネクタハウジング側面43に突設される係止突起45に枠状係止部47が係止されて固定されると共に、枠状係止部47から延出して先端に傾斜面51が形成された突出片49を備え、レバー19は、レバー19の仮係止位置で突出片49に外側から当接するように突設された平板部55と、平板部55から外側に突出してレバー19がコネクタ嵌合位置近傍に回転されたときにコネクタハウジング13の当接部61に当接し、平板部55がコネクタハウジング側面43と傾斜面51との間に配置されるよう変位させる起立壁57と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー嵌合式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンルームの配線に用いられるコネクタには、洗車用の高圧洗浄水が掛かったり、走行時に飛石などが衝突したりする場合に備え、コネクタカバーが取り付けられるものがある(例えば、特許文献1参照)。
図8に示すように、コネクタカバー501は、前方(コネクタ503の後端面と対向する方向)に開口する箱状の本体部505を備え、この本体部505にコネクタハウジング507の後端側を入り込ませて取り付けられる。本体部505の両側面には係止部となる係止溝509が形成され、コネクタハウジング507の主体部511の両側面に設けられた同じく係止部となる係止突起513が解離可能に係止してコネクタカバー全体の固定がなされる(図8(b)参照)。
【0003】
本体部505の上面部には一対の片517が前方側に突出するように形成されており、コネクタハウジング507の後端側の上面両側縁に形成された溝部519にスライドさせつつ挿入可能としている。これによって、コネクタカバー501をコネクタ503に円滑に取り付けることができる。コネクタカバー501がコネクタ503に取り付けられると、不図示の電線は本体部内でU字状に屈曲して前側に折り返され、本体部505の前端縁の下方に設けられた不図示の電線引出口から本体の外に引き出される。本体部505の下面における電線引出口よりも後方には、電線クリップ521が垂下形成され、電線引出口より引き出された電線を後方に誘導するようになっている。
【0004】
また、コネクタの完全嵌合時において、電線カバー(コネクタカバー)が不用意に離脱することを防止するようにした電線カバー離脱防止機能付きレバー嵌合式コネクタも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−32037号公報
【特許文献2】特開2011−82065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のコネクタカバー501の場合は、コネクタハウジング507またはコネクタカバー501に互いの係止が外れるような荷重が加わった場合、係止部の引っ掛かり代が減少する。このため、コネクタカバー501の保持力が確保できなくなるという問題があった。特に係止部に対して係止を解除する方向の荷重が加わった場合に、保持力の低下は顕著であった。これに対し、コネクタカバー501の保持力向上のため、係止部の引っ掛かり代を増加させる対策をとると、コネクタカバー501の保持力は向上する一方で、解体時にコネクタカバー501が外れ難くなるという新たな問題が生じる。
【0007】
また、引用文献2に開示された電線カバー離脱防止機能付きレバー嵌合式コネクタは、レバーの操作に起因するコネクタハウジングからの電線カバーの不用意な離脱を防止するものであり、電線カバーを離脱させる際には解除治具によって係止部を解除しなければならず、解体時の作業性がよくないという問題がある。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、コネクタ嵌合前は電線からの荷重によるカバー外れを防止でき、コネクタ嵌合後の離脱操作時はコネクタカバーを容易に取り外すことができるレバー嵌合式コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 相手コネクタハウジングに嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに回転可能に軸支され、係合部を前記相手コネクタハウジングに設けられる被係合部に係合させて回転操作することで、前記相手コネクタハウジングとの嵌合と離脱を助勢するレバーと、前記コネクタハウジングから導出された電線を覆うコネクタカバーと、を備えたレバー嵌合式コネクタであって、前記コネクタカバーは、コネクタハウジング側面に突設される係止突起に枠状係止部が係止されて前記コネクタハウジングに固定されると共に、前記枠状係止部から延出して先端に前記コネクタハウジング側面に対面する傾斜面が形成された突出片を備え、前記レバーは、該レバーの仮係止位置で前記突出片に外側から当接するように突設された平板部と、前記平板部から外側に突出して前記レバーがコネクタ嵌合位置近傍に回転されたときに前記コネクタハウジングの当接部に当接し、前記平板部が前記コネクタハウジング側面と前記傾斜面との間に配置されるよう変位させる起立壁と、を備えることを特徴とするレバー嵌合式コネクタ。
【0010】
上記(1)のレバー嵌合式コネクタによれば、コネクタ嵌合前、コネクタハウジングの係止突起に係止されたコネクタカバーの枠状係止部が、レバーの平板部によって突出片を介して外側から当接される。これにより、枠状係止部の外側への変位が規制され、枠状係止部が係止突起から解除され難くなる。つまり、保持力が向上する。
一方、コネクタ嵌合後、即ちコネクタ嵌合位置近傍からコネクタ嵌合位置に回転されたレバーは、平板部に設けられた起立壁がコネクタハウジングの当接部に当接し、平板部がコネクタハウジング側面と突出片の傾斜面との間に配置されている。そこで、レバーが離脱操作されると、レバーの平板部がコネクタハウジング側面と突出片との間に入り込み、突出片をコネクタハウジング側面から離れる方向に変位させる。突出片がコネクタハウジング側面から離れることで、突出片の基端側に設けられている枠状係止部が、コネクタハウジング側面に設けられた係止突起から解除される方向に変位するので、コネクタカバーを容易に取り外すことができる。
【0011】
(2) 上記(1)のレバー嵌合式コネクタであって、前記平板部の突出先端に、前記傾斜面に沿う平板側傾斜面が形成されていることを特徴とするレバー嵌合式コネクタ。
【0012】
上記(2)のレバー嵌合式コネクタによれば、コネクタ嵌合後、平板部の突出先端に形成された平板側傾斜面がコネクタハウジング側面と突出片の傾斜面との間に配置される。そこで、レバーが離脱操作された際、レバーの平板部はコネクタハウジング側面と突出片との間に入り込み易くなり、係止突起に対する枠状係止部の解除が確実となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレバー嵌合式コネクタによれば、コネクタ嵌合前は電線からの荷重によるカバー外れを防止でき、コネクタ嵌合後の離脱操作時はコネクタカバーを容易に取り外すことができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るレバー嵌合式コネクタの分解斜視図である。
【図2】(a)は図1に示したレバー嵌合式コネクタのコネクタ嵌合前の側面図、(b)はそのA−A矢視断面図、(c)はその斜視図である。
【図3】(a)は図2(b)のB部拡大図、(b)は図2(c)のC部拡大図である。
【図4】(a)は図1に示したレバー嵌合式コネクタのコネクタ嵌合後の側面図、(b)はそのD−D矢視断面図、(c)はその斜視図である。
【図5】(a)は図4(b)のE部拡大図、(b)は図4(c)のF部拡大図である。
【図6】(a)は図1に示したレバー嵌合式コネクタのコネクタ解体時の側面図、(b)はそのG−G矢視断面図、(c)はその斜視図である。
【図7】(a)は図6(b)のH部拡大図、(b)は図6(c)のI部拡大図である。
【図8】(a)は従来のコネクタカバーを備えたコネクタの斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るレバー嵌合式コネクタを詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るレバー嵌合式コネクタ11は、コネクタハウジング13と、フロントホルダー15と、パッキン17と、レバー19と、コネクタカバー21と、に大別して構成される。このレバー嵌合式コネクタ11は、相手コネクタ23と嵌合される。
【0017】
コネクタハウジング13の嵌合方向前部には、嵌合開口部25が形成される。嵌合開口部25の内方には、インナーハウジング27が嵌合相手方向に向かって突出する。インナーハウジング27の内部には雌端子29(図2参照)を収容する複数の端子収容室31が形成される。従って、相手コネクタハウジング33には雄端子35が収容される。なお、本実施形態では、レバー嵌合式コネクタ11が、雌端子29を備える雄コネクタとなるが、雄端子35を備える雌コネクタであってもよい。
【0018】
フロントホルダー15は、インナーハウジング27に前方から嵌合することで、端子収容室31の雌端子29を本係止する。パッキン17は、インナーハウジング27の後部外周に装着される。インナーハウジング27の外周に装着されたパッキン17は、相手コネクタハウジング33が嵌合することで、相手コネクタハウジング33の内周面に密接する。
【0019】
レバー嵌合式コネクタ11は、係合部37を有するレバー19がコネクタハウジング13に回転可能に軸支され、係合部37を相手コネクタハウジング33に設けられる被係合部39に係合させてレバー19を回転操作することで、相手コネクタハウジング33との嵌合と離脱を助勢する。これにより、相手コネクタ23との嵌合離脱力を低減させることができる。
【0020】
コネクタハウジング13には、嵌合開口部25と反対側となる後部電線導出部41に、コネクタカバー21が装着される。図示しない電線が導出される後部電線導出部41のコネクタハウジング側面43には、係止突起45が突設される。一方、コネクタカバー21には、この係止突起45に係止する枠状係止部47が形成される。コネクタカバー21は、この枠状係止部47が係止突起45に係止されることで、後部電線導出部41から導出された電線を覆うようにコネクタハウジング13に固定される。
【0021】
図3に示すように、枠状係止部47にはコネクタハウジング側面43に沿って突出片49が延出される。突出片49の延出先端には、コネクタハウジング側面43に対面する傾斜面51が形成される。
【0022】
レバー嵌合式コネクタ11は、コネクタハウジング13に取り付けられるレバー19が、相手コネクタ23とのコネクタ嵌合前の状態で図2(a)に示す傾斜した仮係止位置53に保持される。図2(b)に示すように、レバー19は、コネクタハウジング13の内方に挿入配置される。相手コネクタ23は、更にそのレバー19の内方に配置されることとなる。
【0023】
レバー19には、図3に示すように、平板部55が突設される。この平板部55は、レバー19が仮係止位置53のとき、コネクタカバー21の突出片49に外側から当接する。つまり、コネクタ嵌合前は、突出片49がレバー19の平板部55に覆われる。これにより、係止突起45と枠状係止部47の互いの係合が外れる方向への荷重に対して、互いの掛かり代の減少を抑制し、大きいカバー保持力を確保できる。
【0024】
この平板部55には、外側に突出する起立壁57が設けられている。起立壁57は、レバー19が図4に示すコネクタ嵌合位置59の直前におけるコネクタ嵌合位置近傍に回転されたときに、コネクタハウジング13の当接部61に当接し、平板部55をコネクタハウジング側面43側へ付勢する。即ち、起立壁57は、当接部61に当接することで、図5に示すように、平板部55がコネクタハウジング側面43と傾斜面51との間に配置されるよう変位させる。
【0025】
本実施形態のレバー嵌合式コネクタ11では、図5(a)の位置からレバー19がコネクタハウジング13を離脱させる方向に回転され、コネクタ嵌合位置近傍に達したときには、平板部55の突出先端が突出片49の傾斜面51に接触するよう構成されている。即ち、上述したように、レバー19がコネクタハウジング13を嵌合させる方向に回転され、コネクタ嵌合位置近傍に達したときには、起立壁57がコネクタハウジング13の当接部61に当接して平板部55をコネクタハウジング側面43側へ付勢するが、平板部55の突出先端は突出片49の外側に位置するように構成されており、平板部55の突出先端は外方へ弾性変形させられた状態である。これにより、レバー19がコネクタハウジング13を離脱させる方向に回転され、コネクタ嵌合位置近傍に達したときには、平板部55の突出先端を突出片49の傾斜面51に接触させることが可能になる。
【0026】
本実施形態において、平板部55の突出先端には平板側傾斜面63が形成されている。平板側傾斜面63は、対向する傾斜面51に沿って形成されている。
【0027】
次に、上記構成のレバー嵌合式コネクタ11の作用を説明する。
レバー嵌合式コネクタ11は、コネクタ嵌合前、図2、図3に示すように、コネクタハウジング13の係止突起45に係止したコネクタカバー21の枠状係止部47が、レバー19の平板部55によって(突出片49を介して)外側から当接されている。これにより、枠状係止部47の外側への変位が規制され、枠状係止部47が係止突起45から解除され難くなる。つまり、保持力が向上し、カバー外れを防止することができる。
【0028】
一方、図4、図5に示すように、レバー19が、コネクタハウジング13を嵌合させる方向に回転され、コネクタ嵌合位置近傍に達すると、起立壁57がコネクタハウジング13の当接部61に当接する。更に、レバー19が同方向に回転されると、当接部61から起立壁57が反力を受け、その結果、平板部55を内側へ撓ませる。そして、コネクタ嵌合後、レバー19はコネクタ嵌合位置59となり、平板部55の突出先端がコネクタハウジング側面43と突出片49の傾斜面51との間に配置される。そこで、コネクタ嵌合後には、図5(b)に示すように、突出片49が露出する。
【0029】
図6及び図7に示すように、相手コネクタ23と嵌合状態にあるレバー嵌合式コネクタ11が、相手コネクタ23と嵌合解除のために、レバー19が離脱操作されてコネクタ嵌合位置近傍に回転されると、レバー19の平板部55の突出先端がコネクタハウジング側面43と突出片49との間に入り込む。これにより、突出片49がコネクタハウジング側面43から離れる方向に変位する。突出片49がコネクタハウジング側面43から離れることで、突出片49の基端側に設けられている枠状係止部47が、コネクタハウジング側面43に設けられた係止突起45から解除される方向に変位するので、コネクタカバー21を容易に取り外すことができる。
【0030】
また、本実施形態に係るレバー嵌合式コネクタ11では、コネクタ嵌合後、平板部55の突出先端がコネクタハウジング側面43と突出片49の傾斜面51との間に配置されている状態において、平板部55の突出先端には、傾斜面51に沿う平板側傾斜面63が対向する。これにより、レバー19が離脱操作される際、レバー19の平板部55の突出先端がコネクタハウジング側面43と突出片49との間に入り込み易くなり、係止突起45に対する枠状係止部47の解除が確実となる。
【0031】
従って、本実施形態に係るレバー嵌合式コネクタ11によれば、コネクタ嵌合前は電線からの荷重によるカバー外れを防止でき、コネクタ嵌合後の離脱操作時はコネクタカバー21を容易に取り外すことができる。
【0032】
尚、本発明のレバー嵌合式コネクタに係るレバー、コネクタハウジング、相手コネクタハウジング、コネクタカバー、係止突起、枠状係止部、突出片、平板部及び起立壁等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
11…レバー嵌合式コネクタ
13…コネクタハウジング
19…レバー
21…コネクタカバー
33…相手コネクタハウジング
37…係合部
39…被係合部
43…コネクタハウジング側面
45…係止突起
47…枠状係止部
49…突出片
51…傾斜面
53…仮係止位置
55…平板部
57…起立壁
59…コネクタ嵌合位置
61…当接部
63…平板側傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタハウジングに嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに回転可能に軸支され、係合部を前記相手コネクタハウジングに設けられる被係合部に係合させて回転操作することで、前記相手コネクタハウジングとの嵌合と離脱を助勢するレバーと、前記コネクタハウジングから導出された電線を覆うコネクタカバーと、を備えたレバー嵌合式コネクタであって、
前記コネクタカバーは、コネクタハウジング側面に突設される係止突起に枠状係止部が係止されて前記コネクタハウジングに固定されると共に、前記枠状係止部から延出して先端に前記コネクタハウジング側面に対面する傾斜面が形成された突出片を備え、
前記レバーは、該レバーの仮係止位置で前記突出片に外側から当接するように突設された平板部と、前記平板部から外側に突出して前記レバーがコネクタ嵌合位置近傍に回転されたときに前記コネクタハウジングの当接部に当接し、前記平板部が前記コネクタハウジング側面と前記傾斜面との間に配置されるよう変位させる起立壁と、を備えることを特徴とするレバー嵌合式コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のレバー嵌合式コネクタであって、
前記平板部の突出先端に、前記傾斜面に沿う平板側傾斜面が形成されていることを特徴とするレバー嵌合式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45571(P2013−45571A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181771(P2011−181771)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】