説明

レバー式コネクタ

【課題】 レバー式コネクタのレバーロック解除を円滑に行う。
【解決手段】 雌コネクタ5には、これらを跨ぐようにしてレバー20が回動可能に設けられている。雌雄のコネクタが嵌合しているときはレバー20は雌コネクタ5の上面に撓み可能に設けられたロック片6に係止している。レバー20の操作部24にはシーソ状に可動係止部27が設けられ、解除操作片28の持ち上げ操作により作動片30がロック片6を押し下げ、レバー20との係止が解除される。解除操作片28の持ち上げ操作は、レバー20全体の回動操作方向と略等しいため、コネクタの離脱のための操作を一連のものにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円滑なロック解除が可能なレバー式コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】レバー式のコネクタの一例として特表平8−508131公報に記載のものが知られている。このコネクタのハウジングには、図6、7に示すように回動可能なレバー2が設けられている。レバー2はハウジング1の両端面に密着する一対のカム板部とハウジング1を跨ぐようにして両カム板部を連結する連結片とからなっている。カム板部にはカム溝3が形成され、嵌合する相手側コネクタに設けられたカムピン(図示せず)がその入口に係合した状態でレバー2を回動させると、カム溝3に沿ってカムピンが案内され、引き寄せられるようにコネクタ同士の嵌合がなされるようになっている。正規嵌合状態に至ると、ハウジング1に設けられた撓み可能なロック片4がレバー2の連結片に係止し、レバー2の回動が規制されるという構造になっている。このロック片4はハウジング1の上壁の一部を切り欠いて形成され、ハウジング1の内外方向へ撓んでレバー2の連結片と係止及び離脱可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のコネクタの離脱作業を行う場合、まずレバー2のロックを解除しなければならない。しかしこのためには、一方の手でロック片4の自由端側をレバー2の係止片に引っ掛からない高さまで押し込み、同時に他方の手でレバー2を回動させるという両手操作が必要となり、非常に作業し難く、解除操作が円滑に行えないという難点があった。
【0004】本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、円滑なレバーのロック解除が可能なレバー式コネクタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相互に嵌合可能なコネクタハウジングのうちの一方のコネクタハウジングにはカムピンが突設され、他方のコネクタハウジングには回動可能なレバーが設けられるとともに、このレバーの回動操作に伴い前記カムピンを前記カム溝に沿って案内することにより前記両コネクタを嵌合・離脱可能となっており、かつ前記他方のコネクタハウジングには撓み可能なロック片が設けられて前記両コネクタハウジングが正規に嵌合した状態で前記レバーと解離可能に弾性係止するようになっているレバー式コネクタであって、前記レバーを回動操作させるための操作部には、このレバーを、前記両コネクタを離脱させるときの回動方向と近似した方向の操作によって前記ロック片を前記レバーと解離させる押し込み位置に変位させる可動係止部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0006】請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記レバーの操作部は前記ロック片に係止可能な固定係止部と、この固定係止部の外方においてシーソ状に撓み可能に支持された前記可動係止部とからなり、かつこの可動係止部の一端側は前記ロック片に対する作動片となり、他端側は前記レバーにおける前記コネクタ同士を解除させるときの操作方向に近似した持ち上げ操作によって前記作動片を前記ロック片に対する係止を解除する方向に変位させる解除操作片となっているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】請求項1の発明によれば、両コネクタを離脱させる場合には、可動係止部を操作すると、ロック片が押し込み位置に変位してレバーとの係止が解除される。この状態で、レバーを回動させて両コネクタを離脱させるのであるが、可動係止部の上記した操作の方向とレバーの回動の方向とは近似しているため、ロック解除からレバーの回動に至るまでの操作を連続してかつ片手によって行うことができるため、操作性に優れたものとなる。
【0008】請求項2の発明によれば、可動係止部の解除操作片を持ち上げ操作すると、反対側の端部である作動片がロック片を押し下げて、固定係止部に対する係止が解除される。この場合においても、解除操作片の持ち上げ操作方向がレバーの回動操作方向と近似するため、操作が円滑である。このように、請求項2の発明によれば、可動係止部にシーソ構造という簡易な構造を採用することで、ロック解除を円滑に行う、という目的を実現できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態を図1ないし図5によって説明する。図中、5は雌コネクタハウジングであり、11は雌コネクタに対して嵌合可能に形成された雄コネクタハウジングである。雄コネクタ11の内部には図示しない雄端子金具が配されているとともに、その対応する内壁面には一対のカムピン12が内向きに突出している。
【0010】一方、雌コネクタ5の内部には図示しない雌端子金具が収容されており、雌雄両コネクタが正規に嵌合したときに、雌雄の端子金具同士が接続されるようになっている。なお、雄コネクタ11は端子金具に接続された電線が図1における下方へ導出されるようになっているのに対し、雌コネクタ5では同図における右方へ導出される。
【0011】また、雌コネクタ5には雌雄のコネクタの嵌合を行わせるためのレバー20が回動可能に設けられている。このレバー20は、雌コネクタ5の両側面に沿って配される一対のカム板部23と、両カム板部23の端部同士を接続する操作部24とから全体がコの字状をなし、雌コネクタ5の両側面を跨ぐようにして組み付けられている。そして、両カム板部23の先端のほぼ中心部においてそれぞれ支持ピン22により回動可能に取付けられている。また、カム板部23には円弧状をなしてカム溝21が形成されており、雌雄コネクタの嵌合にあたり両カムピン12を受け入れ、レバー20の回動操作に伴ってカムピン12を案内することで雌雄コネクタの嵌合を行う役割を果たしている。
【0012】雌雄コネクタを嵌合させるときに、カムピン12をそのままカム溝21内に導入できるようにするため、レバー20が図1に示す位置にあるとき、カム溝21の入り口が雄コネクタ11との嵌合方向に沿った方向に向くようにしてある。すなわち、雌コネクタ5の側面の端縁には一対のストッパ突縁10が外方へ突出して形成されており、両カム板部23の両側縁とそれぞれ係止することで、図1に示す位置(待機位置)に保持されるようにしてある。
【0013】カム溝21は、その入り口となる開口始端から支持ピン22に徐々に近づくような円弧状をなして終端に至っている。なお、レバー20の回動操作によりカムピン12がカム溝21の終端に至ったときの位置(図2に示す姿勢)が、両コネクタの正規嵌合位置であり、レバー20はこの位置(動作位置)でロックがされるようになっている。
【0014】すなわち、雌コネクタ5において動作位置にあるレバー20の操作部24と対向する部分にはロック片6が配されている。図3に示すように、ロック片6は雌コネクタ5の壁面をコの字状に切り欠くことによって形成され、全体は内方へ、つまり雌コネクタ5の内部へ没入する方向へ撓み可能となっている。ロック片6の先端部には自由端側へ向けて上り勾配となる傾斜面7Aに連続した突部7が形成され、雌コネクタ5の壁面から突出するように形成されている。そして、レバー20の回動操作により、レバー20が動作位置に至るときには操作部24に摺接することでロック片6が押し下げられ、突部7を通過して動作位置に至ると全体は復帰して突部7と操作部24との係止によりレバー20の戻り止めがなされる。また、このときにはレバー20の操作部24はロック片6と雌コネクタ5の上面に形成されたストッパ段面9との間に挟まれるようにしてあるため、レバー20は両コネクタの嵌合・離脱いずれの操作方向に関しても規制がなされるようになっている。
【0015】なお、この実施形態における突部7には操作部24との摺接時の抵抗を軽減するために、レバー20の回動操作方向に沿って二条の溝8が肉抜きされている。
【0016】次に、レバー20の操作部24に設けられたロック片6に対する係止構造を説明する(図4及び図5R>5参照)。操作部24は、内周側に配され前記したロック片6の突部7に係止可能な固定係止部32と、この固定係止部32の外周側に配された連結片25とを有して内外二重にして両カム板部23を連結している。操作部24は上記固定係止部32と連結片25に加え、連結片25の内面側に形成された可動係止部27とからなっている。
【0017】固定係止部32は一方の端縁側が下向きに突出して係止突部33が形成されており、ロック片6の突部7に対する所定の係止代を確保するようにしている。
【0018】可動係止部27は連結片25の内面において、前後幅の方向に関する中央部からやや後方へずれた位置に接続部26を有し、ここを支点としてシーソ状に変位可能となっている。また、可動係止部27は接続部26を境として一端側(図4,図5において右端側)が解除操作片28となり、他端側(同図における左端側)が作動片30となっている。解除操作片28は操作部24の外方(後方)へ突出する長さをもって形成され、またその下面側から指をあてがうため、滑り止めとしての段差縁29が階段状に形成されている。一方、作動片30は操作部24の外方(前方)へ突出する長さをもって形成され、かつ先端の押圧部31は径方向内向きに屈曲しており、レバー20が動作位置にあるときには図4に示すように、ロック片6の突部7の上面に当接あるいは僅かに隙間をおいて臨むようになっている。かくして、解除操作片28が図5に示すように持ち上げ操作されると、反対側の作動片30側では係止突部33の先端と干渉することなくロック片6の突部7に対する押し下げ動作がなされ、これにより、固定係止部32とロック片6の突部7との係止が解除され、レバー20の戻し方向への回動が許容されるようになる。そして、この間の解除操作片28の操作方向はレバー20の回動操作方向とほぼ同一であることから、レバー20に対するロックの解除操作とその後のレバー20の回動操作を一連の操作として行うことができるわけである。
【0019】次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明する。雌雄コネクタを嵌合させる場合には、レバー20を図1に示す待機位置に保持したまま雌雄コネクタを緩く嵌め合わせる。これにより、カムピン12はカム溝21の入り口部分に導入される。この状態で、レバー20を図1に示す時計回りに回動させると、カムピン12がカム溝21に案内されながら移動し、その過程で雌雄コネクタの嵌合が進む。そして、レバー20がほぼ起立して図2に示す位置にまで回動すると、レバー20における固定係止部32の係止突部33がロック片6の傾斜面7Aを乗り越える間にロック片6を押し下げ変形させ、突部7を乗り越えると、ロック片6は復帰し、係止突部33との係止により、ロック片6は戻り止めがなされるとともに、固定係止部32がストッパ段面9に当接してさらなる回動が規制される。
【0020】かくして、レバー20が動作位置にロックされると、図示はしないが、雌雄コネクタ同士が正規に嵌合した状態に保持される。
【0021】上記とは逆に、両コネクタを離脱させる場合には、連結片25に指を掛けながら解除操作片28を持ち上げ操作する。これにより、可動係止部27は接続部26を中心としてシーソ状に変形するため、作動片30は係止突部33の先端と係止することなくロック片6を押し下げ変形する。このため、ロック片6の突部7と固定係止部32との係止状態が解徐されるため、レバー20を図2に示す反時計回りに回動させることができ、これによってカムピン12はカム溝21内を復動し雌雄コネクタを離脱させる。
【0022】以上のように、本実施形態によれば、雌雄コネクタを離脱させる場合に、解除操作片28の操作方向が、ほぼレバー20を回動させる操作方向に等しいことから、レバー20のロック解除操作の延長で回動操作を行うことができる。したがって、従来のように両手でレバー20の回動操作を可能にしているものと異なり、操作性にきわめて優れたものとなる。また、これらの操作を可動係止部27という簡単なシーソ構造のものにより円滑なロック解除操作が実現されている。
【0023】<他の実施形態>本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記実施形態では、固定係止部に係止突部を設けたが、ロック片の突部に対する十分な係止代が確保できる固定係止部であれば設けなくてもよい。
【0024】(2)前記実施形態では、作動片の先端を径方向内向きに屈曲させて押圧部を設けたが、屈曲部を設けなくてもロック片の突部を押し下げてロックを解除できる作動片であればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である両コネクタの離脱状態の正面図
【図2】両コネクタの正規嵌合状態の正面図
【図3】その上面図
【図4】両コネクタの嵌合状態の操作部断面図
【図5】作動片がロック片を押圧している状態の操作部断面図
【図6】従来例の正面図
【図7】その上面図
【符号の説明】
5…雌型コネクタハウジング
6…ロック片
11…雄型コネクタハウジング
12…カムピン
20…レバー
21…カム溝
24…操作部
25…連結片
27…可動係止部
28…解除操作片
30…作動片
32…固定係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 相互に嵌合可能なコネクタハウジングのうちの一方のコネクタハウジングにはカムピンが突設され、他方のコネクタハウジングには回動可能なレバーが設けられるとともに、このレバーの回動操作に伴い前記カムピンを前記カム溝に沿って案内することにより前記両コネクタを嵌合・離脱可能となっており、かつ前記他方のコネクタハウジングには撓み可能なロック片が設けられて前記両コネクタハウジングが正規に嵌合した状態で前記レバーと解離可能に弾性係止するようになっているレバー式コネクタであって、前記レバーを回動操作させるための操作部には、このレバーを、前記両コネクタを離脱させるときの回動方向と近似した方向の操作によって前記ロック片を前記レバーと解離させる押し込み位置に変位させる可動係止部が設けられていることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項2】 前記レバーの操作部は前記ロック片に係止可能な固定係止部と、この固定係止部の外方においてシーソ状に撓み可能に支持された前記可動係止部とからなり、かつこの可動係止部の一端側は前記ロック片に対する作動片となり、他端側は前記レバーにおける前記コネクタ同士を解除させるときの操作方向に近似した持ち上げ操作によって前記作動片を前記ロック片に対する係止を解除する方向に変位させる解除操作片となっていることを特徴とする請求項1記載のレバー式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−164117(P2002−164117A)
【公開日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−361191(P2000−361191)
【出願日】平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】