レプリキンペプチドおよびその使用
本発明は、単離したインフルエンザペプチドおよび核酸配列、ならびに急速複製および毒性を予測する高度に保存されたレプリキンおよびレプリキン骨格配列においてアミノ酸または核酸の置換パターンを有する前記インフルエンザペプチドおよび核酸配列を識別する方法を提供する。置換の予測パターンを有するペプチドおよび核酸配列を識別するステップを含む、新生インフルエンザ株における毒性を予測する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、レプリキンとして知られる一群のペプチド、およびそのようなペプチドをコード化する核酸に関する。レプリキンは、アミノ酸配列およびそれらのアミノ酸配列をコード化するヌクレオチド配列内で定義された構造特性を共有する。レプリキンペプチドは、ウイルスおよび有機体の急速な複製と関連付けられている。レプリキン骨格は、一群のレプリキンペプチドのサブセットである。レプリキン骨格は、エピデミックと関連しているインフルエンザウイルスの株において高度に保存され、急速な複製、毒性および宿主細胞の死亡率と関連付けられている。本発明者は今回、インフルエンザウイルス株に高度に保存されたレプリキンおよびレプリキン骨格におけるアミノ酸の置換パターン、および対応するヌクレオチドを識別した。識別された置換パターンは毒性の変化と関連し、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックの予測として有用である。
【0002】
本出願は、2006年5月30日提出の米国仮出願番号60/808,944の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。以下の出願は、参照により本明細書に追加で組み込まれる。2006年2月16日提出の米国出願番号11/355,120、2005年2月16日提出の米国仮出願番号60/653,083、2005年4月28日提出の米国出願番号11/116,203、2004年4月28日提出の米国仮出願番号60/565,847、2004年6月4日提出の米国出願番号10/860,050、2003年2月23日提出の米国仮出願60/531,686、2003年9月23日提出の60/504,958、および2003年6月6日提出の60/476,186、2002年7月8日提出の米国出願番号10/189,437、2002年3月26日提出の米国出願番号10/105,232、2001年7月9日提出の米国仮出願60/303,396および2001年3月27日提出の60/278,761の優先権を主張する2001年10月26日提出の米国出願番号09/984,057。
【背景技術】
【0003】
急速な複製は、特定の細菌、ウイルスおよび悪性腫瘍における毒性の特徴である。2001年10月26日提出の米国特許出願番号09/984,057は、レプリキンが一群の保存アミノ酸および核酸配列として、規定の配列構造を共有し、急速に複製する悪性腫瘍、細菌、ウイルス、その他有機体および複製関連タンパク質において広く検出され、急速な複製および毒性に関連する、と初めて説明した。レプリキンはアミノ酸配列またはアミノ酸配列をコード化する核酸配列であり、当該アミノ酸配列は、モチーフの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、およびモチーフの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基、第2リジン残基から6〜10残基に位置する少なくとも1つのリジン残基、少なくとも1つのヒスチジン残基および少なくとも6%のリジン残基を含むモチーフを含む7〜約50のアミノ酸を含む。
【0004】
プロテオミクスの観点から、レプリキンモチーフは、脳グリア芽腫悪性腫瘍に存在するグリオーマペプチド配列に基づくアルゴリズムに由来する。健康なヒトゲノムと比較して、グリオーマに特有のペプチドにおいて認められるレプリキンアルゴリズムは、この場合の複製において、保存構造および特定の機能に関連する幅広いタンパク質群の発見をもたらした。次にインフルエンザ、HIV、癌およびトマト縮葉ウイルスを含む異種疾患における、毒性の増加と、タンパク質内に存在するか、またはゲノムにコード化されるレプリキンペプチドの濃度の増加との関連が確立された。続いて、レプリキンの存在は、イースト、藻類、植物、マラリア、インフルエンザ、ジェミニ縮葉トマトウイルス、HIVおよび癌等の様々な有機体における急速な複製現象と関連付けられた。
【0005】
急速に複製する有機体におけるレプリキンの存在の検出に加えて、1)レプリキン濃度(タンパク質100アミノ酸あたりのレプリキン数またはゲノム内にコード化されるレプリキン数および、2)急速な複製に依存する特定の機能状態にあるレプリキン組成物が発見され、レプリキンは、それらが存在する有機体の複製率と量的および質的に関連するという発見の基礎を提供する。これらの機能を証明する例は、グリア芽腫細胞における急速な複製と毒性との間に見られる関係、インフルエンザウイルスにおけるレプリキンとインフルエンザパンデミックおよびエピデミックの予測との間に見られる関係、およびHIVにおけるレプリキン濃度と急速な複製との関係を含む。
【0006】
レプリキン配列、および特にレプリキン配列のモチーフを定義する要素は、急速に複製するウイルスおよび有機体、ならびに複製に関連するタンパク質において長期間保存されることが分かった。レプリキン配列は保存されるため、感染物質を検出するための一貫した標的を提供する。このレプリキンの保存は、レプリキン構造自体が、それが存在し保存されるウイルスおよび有機体の複製および生存において役割を有することも証明する。そのようにして、感染物質内で識別されたレプリキンは、感染物質に対する治療およびワクチンを開発するための良い標的である。
【0007】
レプリキン骨格は、レプリキンのサブセットである。レプリキン骨格ペプチドは、感染物質において高度に保存されることが示されており、また急速な複製、毒性および宿主細胞の死亡率と関連付けられている。レプリキン骨格ペプチドは、約16〜約30のアミノ酸を含むレプリキンペプチド配列であり、さらに(1)任意に末端リジンに直接隣接する追加のリジンを含む末端リジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジンから6〜10アミノ酸残基にあるリジンと、(4)少なくとも6%のリジンと、を含む。レプリキン骨格ペプチドは、時間、地理的空間、または疫学的発生を問わず、ウイルスまたは有機体の個別の分離株内で識別される、または遺伝子情報を共有する異なるウイルスまたは有機体において、例えば遺伝子再集合により識別される一連の保存されたレプリキンペプチドの一員である。
【0008】
上述のように、最初に発見されたレプリキンは、グリオーマレプリキンであり、マリグニンと称される多形性脳グリア芽腫細胞(グリオーマ)細胞タンパク質において識別された。米国特許番号7,189,800を参照のこと。グリオーマレプリキンが正常で健康なヒトゲノムに存在することは知られていなかった。グリオーマレプリキンの相同体を捜索するために考案されたアルゴリズムは、相同体が4,000以上のタンパク質配列に共通でないことを明らかにした。しかし驚くことに、相同体はすべての腫瘍ウイルスおよび藻類、植物、真菌、ウイルスおよび細菌の複製タンパク質において認められた。2002年7月8日提出の米国特許出願番号10/189,437を参照のこと。そのようにして、広範なウイルスおよび有機体にわたるレプリキンの存在は、複製機能および急速な複製と関連付けられた。
【0009】
急速に複製するウイルスおよび有機体ならびに複製関連タンパク質を広く検討した結果、ゲノム、タンパク質またはタンパク質フラグメントにおける100アミノ酸あたりのレプリキン数は、急速な複製の機能的現象と関連しうることが発見された。米国特許出願番号10/189,437を参照のこと。
【0010】
レプリキン濃度と急速な複製との関連は、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質のアミノ酸配列と、過去100年間のインフルエンザ流行に関する疫学的データとの比較においてさらに証明された。この比較により、1902年〜2001年の4つの主要なインフルエンザ株のうちの各1つずつ生じたインフルエンザエピデミックにおける株特異性インフルエンザレプリキンの濃度が4〜10倍増加したことが明らかになった。4つの主要なインフルエンザ株は、インフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2、および(A)H3N2である。次に、濃度の増加は、少なくとも1つの特異的レプリキン組成物が消失してから1年〜最長64年後に再出現すること、および新規の株特異性レプリキン組成物の出現によることが証明された。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0011】
レプリキンアミノ酸構造は、非レプリキンアミノ酸と同程度に変異または変化するわけではないことが認められた。レプリキン構造は、ウイルスおよび有機体において、またウイルスと有機体との間に時間を越えて保存される。この保存は、レプリキン構造が生存において重要性を有することを証明する。そのようにして、保存レプリキン構造は、生存に関連する新規の不変標的を提供し、それらは感染または悪性腫瘍の識別および治療に有用である。
【0012】
レプリキンは、細菌、ウイルス、植物、および悪性腫瘍を含む一連のウイルスおよび有機体に保存されることが示された。特定の構造は生存機能と極めて密接に関連するため、細菌、ウイルス、植物およびその他の有機体にわたって保存されるレプリキン構造を絶えず変化させることは明らかに不可能であり、これはレプリキンが生存機能と密接に関与することを示唆する。
【0013】
レプリキンが保存されるかどうか、または代わりに、広範な自然変異の影響を受けやすいかどうかの検討は、口蹄疫ウイルス(FMDV)の様々な分離株のタンパク質配列を走査することにより行った。これらウイルスのタンパク質における変異は、何十年もの間、世界的に十分立証されている。全体レプリキンおよび特定のレプリキンにおいて認められた各構成要素レプリキンアミノ酸残基の両方が存在するかについて、FMDV分離株のタンパク質配列を視診した。隣接アミノ酸で生じるように、長期にわたって広範な置換の影響を受けるのではなく、レプリキン構造を含むアミノ酸は、ほとんど置換されないか、またはまったく置換されないことが認められた。つまり、非レプリキン配列と比較して、レプリキン構造は保存された。同様の配列保存は、麦ユビキチン活性酵素E等の植物、およびHIVの分離株における転写活性剤(Tat)タンパク質で認められた。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0014】
任意の構造の保存は、その構造が攻撃および破壊または刺激のために安定した不変標的を提供するかどうかについて極めて重要である。構造が何らかの方法で有機体の基本的な生存機序に関係している場合、その構造は保存される傾向がある。可変構造は不定標的を提供する。これは、以前の構造に対して特異的に生成された抗体等のアタッカーを回避するための良い手段であり、そのため修飾形態に対しては有効でない。インフルエンザウイルスはこの手段を使用するため、例えば、以前のワクチンが現行の毒性ウイルスに対してあまり効果的でなくなる可能性がある。
【0015】
レプリキン構造の必須成分はヒスチジン(h)であり、これは酸化還元酵素における金属基と頻繁に結合すること、および複製に必要なエネルギー源を提供するというその有望な機能が知られている。長期にわたるレプリキン配列の再検討により、レプリキンにおけるヒスチジン構造は常に一定であることが示唆される。そのようにして、レプリキン構造は、ウイルスまたは有機体の複製の破壊についての一層魅力的な標的を保持する。
【0016】
レプリキン含有タンパク質も酸化還元機能、およびタンパク質の合成または延長、ならびに細胞の複製と関連付けられることが多い。金属ベースの酸化還元機能との関連、嫌気性複製中のレプリキン含有グリオーママリグニン濃度の増加、および低濃度(ピコグラム/細胞)の抗マリグニン抗体の細胞毒性は、すべてレプリキンが主要な呼吸性生存機能に関連することを示唆し、非レプリキンアミノ酸の変異特性の影響を受けにくい場合が多いことが発見された。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0017】
急速に複製するウイルスおよび有機体において、複製の速度とウイルスまたは有機体に存在するレプリキン配列の濃度との関連が確立された。100アミノ酸中のレプリキン配列の濃度は、ウイルスまたは有機体のレプリキン数と称される。インフルエンザウイルスにおいて、レプリキン数の増加は、過去100年間のインフルエンザ流行と関連付けられている。
【0018】
例えば、血球凝集素タンパク質における株特異性レプリキン濃度と、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックとの量的関連が確立された(図6)。過去100年の3つのインフルエンザパンデミック、H1N1、H2N2、およびH3N2のそれぞれにおいて、パンデミックをレプリキン数の増加によりレトロスペクティブ(retrospectively)に予測し、関連付けた。図6〜8および10〜11。4度のH5N1エピデミック、すなわち1997年、2001年、および2003〜2004年(図11)および2006年のエピデミックのそれぞれにおいて、レプリキン数の増加は予測的であった。インフルエンザエピデミックと株特異性ウイルスタンパク質化学との関連については、これまで報告がなかった。
【0019】
株特異性エピデミックが発生する1〜3年前にインフルエンザ群において特異性レプリキン数が増加するという発見に類似して、コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質におけるレプリキン数の増加も2003年のSARSパンデミックをレトロスペクティブ(retrospectively)に予測することが分かった。コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、以下のように増加した。1999年3.1(±1.8)、2000年3.9(±1.2)、2001年3.9(±1.3)、および2002年5.1(±3.6)。このパンデミック前の増加は、レプリキンを豊富に含むコロナウイルスが2003年のSARSパンデミックに関与したという発見を支持する(図8を参照)。
【0020】
HIVウイルスにおけるレプリキン数も急速な複製および毒性と関連付けられている。HIV分離株において、HIVの増殖遅延型低タイター株(NSI、「Bru」はHIV感染の初期によく見られる)は、100アミノ酸につき1.1(+/−1.6)のレプリキン濃度を有することが分かった。一方、HIVの急速に増殖する高タイター株(S1、「Lai」はHIV感染の後期によく見られる)は、100アミノ酸残基につき6.8(+/−2.7)のレプリキン濃度を有する。さらに、中国および世界のその他多くの地域でトマトの収穫に打撃を与えたトマト縮葉ジェミニウイルスは、重複レプリキンのため高いレプリキン数を有することが示された。トマト葉巻ジェミニウイルスにおけるレプリキン数は、100アミノ酸につき最高20.7レプリキンまで達することが認められた。
【0021】
レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの株において最初に識別された一群のレプリキンのサブセットである。レプリキン骨格は、インフルエンザの毒性株において高度に保存される。レプリキンおよびレプリキン骨格は、急速な複製および毒性と関連付けられているため、現在はインフルエンザウイルスの新生株におけるレプリキンの存在および濃度を使用して、到来するインフルエンザエピデミックを予測する。当該技術分野において、高い毒性および宿主細胞の死亡率をもたらすレプリキンまたはレプリキン骨格内のわずかな変化を識別する方法が必要とされる。また当該技術分野において、インフルエンザの毒性の高い株の治療を目的とする保存レプリキンおよびレプリキン骨格配列も必要とされる。さらに当該技術分野において、インフルエンザの新生株におけるワクチンの調整およびその他の治療に有用なレプリキンおよびレプリキン骨格アミノ酸配列の必要性がある。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、16〜約30のアミノ酸を含み、さらに
(1)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、を含むインフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離したレプリキンペプチドを提供し、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン配列は、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列と比較して置換を含み、本置換はヒスチジンの置換ではなく、またインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
本置換は、インフルエンザウイルスの第3株に追加で存在し、インフルエンザウイルスの第3株における本置換の存在は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連し、インフルエンザウイルスの第3株は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含むレプリキン配列を含む。
【0023】
好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン配列における異なるアミノ酸残基で置換されるインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する。
【0024】
別の好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン配列における、ロイシン以外のアミノ酸残基で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は任意の疎水性アミノ酸、すなわちメチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンまたはバリンで置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸はメチオニンまたはイソロイシンで置換される。別の好適な実施形態において、単離したレプリキン配列は、H5N1インフルエンザウイルスから単離される。
【0025】
別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキン骨格ペプチドを含むワクチンを提供する。さらに別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキン骨格ペプチドに対する抗体を提供する。
【0026】
本発明は、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキンペプチドをさらに提供する。インフルエンザウイルスの第1株は、インフルエンザウイルスの新生株であり、単離したレプリキンペプチドは、7〜約50のアミノ酸を含み、
(1)単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基にある第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、を含むモチーフを識別するステップであって、インフルエンザウイルスの第2株における他は同一の配列と比較して、識別されたモチーフの末端残基間のレプリキンペプチド配列に位置するアミノ酸において置換が発生し、インフルエンザウイルスの第1株の識別されたモチーフの末端残基間における前記置換は、第2株と比較して、急速な複製および高い毒性に関連するステップと、識別されたモチーフを選択するステップと、識別されたモチーフを含むレプリキンペプチドを単離するステップと、により単離される。本発明は、インフルエンザのH5N1株から単離されたインフルエンザレプリキンペプチドをさらに提供する。
【0027】
別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキンペプチドを含むワクチンを提供する。さらに別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキンペプチドに対する抗体を提供する。
【0028】
本発明は、本発明の単離したレプリキンペプチドも提供する。レプリキンペプチドは、約29のアミノ酸を含む。単離したレプリキンペプチドは、アミノ酸配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含んでもよく、[S]はロイシン以外の任意のアミノ酸であってもよい。好適な実施形態において、[S]は、ロイシン以外のアミノ酸であってもよい。別の好適な実施形態において、[S]は任意の疎水性アミノ酸であってもよく、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンまたはバリンを含む。別の好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。別の好適な実施形態において、単離したインフルエンザレプリキンペプチドは、インフルエンザのH5N1株から単離される。
【0029】
本発明は、上述の単離した配列のうちの任意の1つ以上、またはその抗原部分列、あるいは上述の単離した配列のいずれかに結合する抗体、乃至はその抗原部分列を含むワクチンも提供する。
【0030】
本発明は、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を提供する。本方法は、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチド、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチド、およびインフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドを含むステップと、
(2)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換される第3レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸を識別するステップと、
(3)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株が高い複製、毒性、または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(4)第2レプリキン骨格と比較して、第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基も、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格ペプチドにおいて置換されることを判断するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数と、インフルエンザウイルスの第1株の初期分離株のレプリキン数とを比較するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いことを判断するステップと、
(7)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップと、を含む。
【0031】
好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、第2レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基にある。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基である。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、ロイシン以外の疎水性アミノ酸である。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、メチオニンまたはイソロイシンである。別の好適な実施形態において,第1、第2および第3レプリキン骨格は、29のアミノ酸を含む。さらに別の実施形態において、毒性の増加はパンデミックの兆候である。
【0032】
本発明は、インフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法も提供する。本方法は、インフルエンザウイルスの第1新生株からレプリキンペプチドを識別するステップであって、インフルエンザレプリキンペプチドは、7〜約50アミノの酸で構成され、
(1)単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基に位置する第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、を含むモチーフを含み、
インフルエンザウイルスの第2株における同一配列と比較して、モチーフの末端残基間のアミノ酸において置換が発生したステップと、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株における同一配列の置換と、インフルエンザウイルスの第3株における急速な複製および高い毒性とを関連付けるステップと、インフルエンザウイルスの第1株の毒性の増加を予測するステップと、を含む。
【0033】
さらなる実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法は、コンピュータを使用して実施される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、様々な有機体におけるレプリキンの発生頻度を表す棒グラフを示す図である。
【0035】
【図2】図2は、コンピュータを使用し、インフルエンザウイルスの少なくとも3つの株のレプリキン骨格を比較することにより、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を実施するという本発明の一側面を表すボックス図である。
【0036】
【図3】図3は、レコグニン16‐merへの曝露に応答して産生される抗マリグニン抗体の量を示す棒グラフを示す図である。
【0037】
【図4A−E】図4Aは、通常の蛍光灯で撮影された血液塗抹標本の写真を示す図である。図4Bは、通常の蛍光灯で撮影された血液塗抹標本の写真を示す図であり、2つの白血病細胞の存在を示す。図4Cは、抗マリグニン抗体の存在下のグリオーマ細胞の緻密層の写真を示す図である。図4Dおよび図4Eは、抗マリグニン抗体の添加から30分および45分後に撮影された図4Cの細胞層の写真を示す図である。
【0038】
【図4F】図4Fは、抗マリグニン抗体による生体外の小細胞肺癌細胞の成長抑制を示す棒グラフを示す図である。
【0039】
【図5】図5は、良性または悪性乳房疾患患者の術前および術後の血清に存在する抗マリグニン抗体の量のプロットを示す図である。
【0040】
【図6】図6は、インフルエンザBおよびインフルエンザA株、H1N1の血球凝集素において認められたレプリキンの濃度を1918年から2001年まで年毎に示すグラフを示す図である。
【0041】
【図7】図7は、インフルエンザA株、H2N2およびH3N2、並びにその構成レプリキンにより定義される新生株、H3N2(R)の血球凝集素において観察されたレプリキン濃度を1950年から2001年まで年毎に示すグラフを示す図である。
【0042】
【図8】図8は、1917年〜2002年のコロナウイルスヌクレオキャプシドレプリキンを含む幾つかのウイルス株の1年あたりのレプリキン数を表すグラフを示す図である。
【0043】
【図9A】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【図9B】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【図9C】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【0044】
【図10】図10は、H5N1血球凝集素の1年あたりのレプリキン数を表すチャートを示す図である。
【0045】
【図11】図11は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行するインフルエンザのH5N1株の血球凝集素タンパク質におけるレプリキンパターンの濃度の急激な増加について説明するグラフを示す図である。図11は、H5N1の血球凝集素タンパク質の増加するレプリキン濃度(「レプリキン数」)は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行したことを示す図である。H5N1インフルエンザにおいて、1995年〜1997年の株特異性レプリキン濃度(レプリキン数、平均値+/−標準偏差)の増加は、1997年の香港H5N1エピデミックに先行し(E1)、1999年〜2001年の増加は、2001年のエピデミックに先行し(E2)、および2002年〜2004年の増加は、2004年のエピデミックに先行した(E3)。1999年の減少は、香港におけるE1エピデミックを受けて鶏を大量に処分したことに伴って生じた。
【0046】
【図12A】図12は、異なるタンパク質において実質的に固定したアミノ酸位置で発生するレプリキン骨格を説明する表を示す図である。
【図12B】図12は、異なるタンパク質において実質的に固定したアミノ酸位置で発生するレプリキン骨格を説明する表を示す図である。
【0047】
【図13】図13は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1940年〜2001年)におけるインフルエンザBウイルスの血球凝集素に存在するレプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0048】
【図14A】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【図14B】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【図14C】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0049】
【図15】図15は、1957年〜2000年におけるインフルエンザH2N2ウイルスの血球凝集素に存在するレプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0050】
【図16】図16は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1968年〜2000年)のインフルエンザウイルスのH3N2血球凝集素に存在するH3N2レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0051】
【図17A】図17は、インフルエンザウイルス、SARSウイルスおよびその他の急速に複製するウイルスならびに悪性腫瘍におけるレプリキン構造と、宿主細胞の死亡率の増加との関係を示す表を示す図である。
【図17B】図17は、インフルエンザウイルス、SARSウイルスおよびその他の急速に複製するウイルスならびに悪性腫瘍におけるレプリキン構造と、宿主細胞の死亡率の増加との関係を示す表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
本明細書で使用されるように、レプリキンペプチドまたはレプリキンタンパク質は、7〜約50のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、(1)第2リジン残基から6〜10アミノ酸残基に位置する少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%のリジン残基とを含む。同様に、レプリキン配列は、レプリキンペプチドをコード化する核酸配列である。
【0053】
本明細書で使用されるように、「レプリキン骨格」は、一連の保存レプリキンペプチドを意味し、各レプリキンペプチド配列は、約16〜約30のアミノ酸を含み、さらに(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジン残基から6〜10アミノ酸残基にあるリジン残基と、(4)少なくとも約6%のリジンとを含む。また「レプリキン骨格」は、一連の「レプリキン骨格」の個別部材または複数部材を意味する。
【0054】
本明細書で使用されるように、「初期発生」ウイルスまたは有機体は、ウイルスまたは有機体の別の標本が採取された日に先立って、自然源のウイルスまたは有機体から採取されたウイルスまたは有機体の標本である。「後期発生」ウイルスまたは有機体は、ウイルスまたは有機体の別の標本が採取された日の後に自然源のウイルスまたは有機体から採取されたウイルスまたは有機体の標本である。
【0055】
本明細書で使用されるように、「新生株」は、そのようなウイルスの株の早期発生分離株、またはそのようなウイルスのその他の株におけるレプリキン濃度と比較して、1つ以上のそのタンパク質配列において、高濃度または増加濃度のレプリキン配列を有するものとして識別されたウイルスの株を意味する。高濃度または増加濃度のレプリキンは、例えばインフルエンザウイルスにおいて、少なくとも約6ヶ月以上、また好ましくは少なくとも約1年以上、最も好ましくは少なくとも約3年以上の期間にわたって発生するが、はるかに短い期間であってもよい。
【0056】
本明細書に記載のレプリキンの「官能基誘導体」は、レプリキンのフラグメント、変型、類似物、または化学的誘導体であり、レプリキンに特異的な抗体との免疫学的交差反応性を少なくとも一部保持する。レプリキンペプチドのフラグメントは、任意の分子のサブセットを意味する。変型ペプチドは、直接化学合成、例えば、当該技術分野においてよく知られる方法を使用することにより形成されてもよい。非天然タンパク質に対するレプリキンの類似物は、実質的に総タンパク質またはそのフラグメントのいずれかに類似する。レプリキンの化学的誘導体は、追加の化学部分を含む。
【0057】
本明細書において使用されるように、所定のレプリキン内の総アミノ酸のパーセントとしての「相同性」は、レプリキン構造、例えばリジンおよびヒスチジンを「定義する」アミノ酸により維持される位置において定義するアミノ酸に重要であり、レプリキン構造内のその他のアミノ酸に対しては、以前の出願においてHIV TATタンパク質に関して示されるように、あまり重要でないか、またはまったく重要でない。保存は、これらの比較的不変の「定義」アミノ酸に関して定義される。「定義」アミノ酸以外における特定の変型または置換は、本出願の対象である。これらはランダムではなく、例えば、ここに示されるようにパンデミックと関連があると思われる。またこれまで考えられていたよりも重要である。所定の機能を用いて反復することにより、それらは基本的なレプリキン骨格のサブセットを表す。
【0058】
本明細書で使用されるように、「変異」はアミノ酸の置換により生じる有機体の構造および特性の変化を意味する。反対に「保存」、「保存された」または関連する用語は、本明細書で使用されるように、置換の欠失による特定アミノ酸の保存を意味する。
【0059】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、2つ以上のアミノ酸から成る化合物を意味する。ここで、1つのアミノ酸のカルボキシル基は別のアミノ酸のアミノ基と結合し、ペプチド結合を形成する。ペプチドという用語は、そのような化合物をコード化するアミノ酸配列の意味でも使用される。
【0060】
本明細書で使用されるように、「単離した」または「合成した」ペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、精製後、実質的に細胞物質、またはペプチドが由来する細胞、あるいは組織源からのその他の夾雑タンパク質またはペプチドを含まないペプチド、あるいは任意の方法で化学的に合成された場合は、実質的に化学的前駆体、またはその他の化学物質を含まないペプチド、乃至は組み換え遺伝子技術により合成された場合に実質的に夾雑ペプチドを含まないペプチドを意味する。単離は、生体内、生体外、および現在ではプロテオミクスソフトウェア法を使用してコンピュータで(in silico)行ってもよい。
【0061】
本明細書で使用されるように、「レプリキン数」または「レプリキン濃度」は、タンパク質または有機体における100アミノ酸あたりのレプリキン数を意味する。レプリキン数の低いウイルスまたは有機体の第2株、早期発生株または後期発生株と比較して、ウイルスまたは有機体の第1株におけるレプリキンが高い程、第1ウイルスまたは有機体のさらに急速な複製と関連することが分かった。
【0062】
I.インフルエンザエピデミックおよびパンデミックに関連する高いレプリキン数
過去100年間のインフルエンザウイルスタンパク質配列およびインフルエンザ疫学に関するわれわれの研究は、インフルエンザにおける複製および毒性の増加を予測する方法を提供する。インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列から得た歴史的および現在のデータの再検討から、1902年〜2001年のインフルエンザエピデミックに関連する株において、4つの主要なインフルエンザ株、すなわちインフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2,および(A)H3N2のうちの1つにおける株特異性インフルエンザレプリキン濃度が4倍〜10倍増加することが明らかになる。さらに、エピデミックに関連する血球凝集素タンパク質におけるレプリキン濃度の増加は、少なくとも1つの特異的レプリキン組成物が消失してから1年〜最長64年後に再出現すること、および新規の株特異性レプリキン組成物の出現に起因することがわかる。
【0063】
インフルエンザゲノムにおいてレプリキンが発見される前は、インフルエンザにおける血清学的血球凝集素および抗体分類のみが説明されていた。株特異性保存ペプチド配列については記載されていなかった。さらに、任意の株特異性ペプチド配列の濃度および組成物における変化が疫学的に立証されたエピデミックまたは急速な複製と関連するという記載はなかった。そのようにして、株特異性化学構造については、それを用いて、到来するインフルエンザシーズンに優勢となる株を予測することも、ワクチンの全体ウイルス株混合物を毎年考案することも知られていなかった。
【0064】
高度のレプリキン構造の保存が認められたことにより、同一の構造は100年間持続するか、または1年〜64年欠失した後に再出現しうるが、これまでインフルエンザタンパク質におけるアミノ酸のランダム置換に起因すると考えられた変化は、組織化されたレプリキンの保存過程による変化である可能性が高いことが示された。
【0065】
歴史的データの検討に照らして、インフルエンザにおけるレプリキン濃度の増加を監視することが、将来のエピデミックを予測するツールとして提供された。このツールは、多数の最近のインフルエンザ流行を有効に予測した。例えば、H3N2の歴史上最大となる、H3N2レプリキン濃度における近年の急激な増加(1997年〜2000年)および1968年の高死亡率H3N2パンデミック、および1975年と1977年の2度の高死亡率エピデミックにおいて最後に見られたが、20年〜25年間欠失した特異的レプリキン組成物の再出現を予測し、併せて2002年のH3N2エピデミックを予測した。
【0066】
インフルエンザB、H1N1、H2N2およびH3N3におけるパンデミック
特に注目すべきことに、試験したインフルエンザウイルスのほぼすべての個別株の血球凝集素タンパク質において、100アミノあたり少なくとも1つのレプリキンが存在することを認めた。アミノ酸配列データが入手可能な各年(1902年〜2001年)のインフルエンザウイルスの4つの一般的な株であるインフルエンザB、H1N1,H2N2、およびH3N2それぞれの分離株の血球凝集素タンパク質において発生することが認められたレプリキン配列を図13、14、15、および16に示す。
【0067】
各インフルエンザA株は、それぞれ1918年、1957年、および1968年におけるパンデミックに関与している。図6および7のデータは、試験した4つの一般的なインフルエンザウイルスのすべての分離株の各インフルエンザ血球凝集素タンパク質において、100アミノ酸あたり少なくとも1つのレプリキンが存在することを示し、複製の生存レベルの維持におけるレプリキンの機能を示唆する。1990年代において、H3N2株が減少する間、H3N2分離株の多くにはレプリキンが存在しなかったが、高濃度の新規レプリキンがH3N2分離株に出現した。これはH3N2(R)株の出現を定義する。図16を参照のこと。
【0068】
図6および図7に示されるレプリキン濃度の幾つかの特性は、4つのインフルエンザウイルス株すべてに共通すると思われる。第1に、濃度は長年にわたり循環し、上昇および下降の1サイクルは2〜30年の期間で生じる。この上昇および下降は、血球凝集素およびノイラミニダーゼ分類による個別のインフルエンザウイルス株の優性に関して知られている増大および減少と一致する。
【0069】
第2に、パンデミックに関与することが既に示されている各インフルエンザウイルス株のピークレプリキン濃度は、3つの年のパンデミックにそれぞれ特異的および個別に関連する。例えば、インフルエンザウイルス株H1N1の関与が示された1918年のパンデミックの場合に、H1N1におけるレプリキン濃度のピークが独立に生じた(P1)。H2N2の発現、関与が認められた1957年のパンデミックの場合に、H2N2におけるレプリキンのピーク濃度が生じた(P2)。またH3N2が発現し、パンデミックの原因であることが示された1968年のパンデミックの場合に、H3N2におけるレプリキンのピーク濃度が生じた(P3)。
【0070】
第3に、上記3度のパンデミックそれぞれの直後の年に、特異的レプリキン濃度が顕著に減少した。これは、恐らくそれぞれのパンデミックで生成された免疫が広く分布したことを反映していると考えられる。したがって、このパンデミック後の減少は、それが関与したパンデミック(P1)直後のH1N1に特異的であり、その時点におけるすべての株の一般的な特性ではない。インフルエンザBにおけるレプリキン濃度の増加は、H1N1におけるレプリキン濃度の減少と同時に発生した。例えば、1951年におけるEB1および1976年におけるEB2はどちらも死亡率が最も高いインフルエンザBエピデミックに関連した(Stuart‐Harris,et al.,Edward Arnold Ltd.(1985)。
【0071】
第4に、濃度の一次ピーク増を越える二次ピーク濃度は、3度のパンデミックそれぞれから15年後に発生した。この二次ピークは、H1N1「エピデミック」年における1918年のパンデミックから15年後(E1)、H2N2「エピデミック」年における1957年のパンデミックから8年後(E2)、およびH3N2「エピデミック」年における1968年のパンデミックから7年後(E3)のエピデミックに伴う。これらの特定レプリキンの二次ピーク濃度は、株からの回復を反映する場合がある。
【0072】
第5に、各株の特異的レプリキン濃度のピークは、1つまたはその他の両株のレプリキン濃度における減少に関連すると考えられる場合が多く、宿主細胞部位の株間の競合を示唆する。第6に、各株のレプリキン濃度は35年(H2N2)から60年(インフルエンザB)の期間をかけて減少するという明らかな全体的傾向がある。この減少は、インフルエンザワクチンが一般に使用される前の1940年〜1964年のインフルエンザBの場合に明らかであったため、ワクチンの影響によるものではない。インフルエンザBの場合において、レプリキンの減少後の回復が1965年以降に発生したことが分かるが、レプリキン濃度は1997年および2000年に再度減少した(図6)。これは、最近の分離株におけるインフルエンザBの発生が低いことと関連する。1978年〜1979年にピークを迎えたH1N1レプリキン濃度(図6)は、H1N1株の再出現および普及とともに、1996年に再度ピークに達し、H1N1エピデミックと一致した(図6)。1997年〜2000年の間にH1N1レプリキン濃度も減少し、これらの年に得られた分離株におけるH1N1株の存在が減少した。H2N2レプリキンの場合、35年の減少から回復しなかった(図7)。またこれは最近の分離株からH2N2が欠失していることに関連する。H3N2の場合、多くの分離株のレプリキン濃度は、1996年〜2000年までの期間にゼロまで落ちたが、その他のH3N2分離株は、レプリキン濃度の著しく急激な増加を示した。これは、H3N2の亜株の出現を示す。本明細書ではH3N2(R)と指定する。
【0073】
上述のように、図6および7は、レプリキン濃度がピークに達する前に1年〜3年の段階的な増加が認められることが多いことを示す。この段階的な増加は、レプリキンのピークと同時に起こるエピデミックの発生に先行する。したがって、特定の株の濃度における段階的な増加は、特定の株がエピデミックまたはパンデミックをもたらす最も有力な原因であることを示す。
【0074】
インフルエンザウイルスのH3N2(R)におけるレプリキン濃度は、1997年〜2000年に増加したことが認められた(図7)。結果として2002年に生じたエピデミックは、エピデミックに先行するレプリキン濃度の増加の予測値を示した。H3N2レプリキン濃度における3つの類似する以前のピークは、株が最初に発現した1968年のH3N2に基づくパンデミック(図7)、および1972年と1975年のH3N2に基づくエピデミックにおいて発生したことが見られた(図7)。これらのパンデミックおよびエピデミックは、それぞれ過度の死亡率と関連した(Ailing,et al.,Am J.Epidemiol.,113(1):30‐43(1981)。
【0075】
したがって、1997年〜2000年におけるH3N2レプリキンのH3N2(R)亜種の濃度における急速な上昇は、統計的に、到来しつつある深刻なエピデミックまたはパンデミックの初期警告を表した。H3N2エピデミックが2000年にロシアで発生したという記載(図7、E4)、および2001年にH3N2が世界で最も頻繁に単離されたインフルエンザウイルス株であるという2001年12月のCDCレポートにより、この予測が正しいことが示された(Morbidity and Mortality Weekly Reports(MMWR),Center for Disease Control;50(48):1084‐68(Dec.7,2001)。
【0076】
インフルエンザウイルスBの株におけるレプリキンの組成物
インフルエンザウイルスB株において識別された合計26のレプリキンのうち(図13)、以下10のレプリキンが、1940年〜2001年に試験された各インフルエンザB分離株に存在する。重複するレプリキン配列は個別にリストされる。
KSHFANLK(配列番号:_)
KSHFANLKGTK(配列番号:_)
KSHFANLKGTKTRGKLCPK(配列番号:_)
HEKYGGLNK(配列番号:_)
HEKYGGLNKSK(配列番号:_)
HEKYGGLNKSKPYYTGEHAK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVVKKTPLKLANGTK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVKTPLKLANGTKYRPPAK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVKTPLKLANGTKYRPPAKLLK(配列番号:_)
【0077】
図13および14は、H1N1レプリキンと比較して、インフルエンザB血球凝集素におけるレプリキン構造がはるかに優れた安定性を持つようであることを示す。インフルエンザBは、任意のパンデミックに関与しておらず、動物または鳥類の保有宿主を有しないようである(Stuart‐Harris et al.,Edward Arnold Ltd.,London(1985))。
【0078】
インフルエンザの株における遺伝子浮動
インフルエンザパンデミックまたはエピデミックそれぞれの場合において、新規レプリキンが出現する。所定の分離株における所定の血球凝集素において、2つの同一レプリキンは認められていない。新規レプリキンの出現が、別の動物または鳥類層からの転移に対してどの程度の変異を表すかは不明である。一部の場合において、毎年1つ以上の元のレプリキン構造が保存されるが、同時に新規のレプリキンが出現する。例えば、インフルエンザウイルスB血球凝集素において、1919年〜2001年の間、常に5つのレプリキンが保存されたが、同一期間に26のレプリキンが出現および消失した(一部は数年間の欠失後に再発した)。特定のレプリキン構造が消失し、何年か後に再出現することは、レプリキンが新たな変異を通じてではなく、別のウイルス宿主細胞層から回帰することを示唆する。
【0079】
異なるインフルエンザ株の活性における変化は、順に、以下の2つのあまり知られていない過程のうちの1つにより達成される置換の生成物であるインフルエンザ血球凝集素における配列変化に関連すると考えられている。i)血球凝集素分子における一連の点変異の累積に起因すると考えられる抗原浮動またはii)変化が著しいため遺伝子再集合は、ヒトおよび非ヒト宿主細胞のウイルス間で発生すると仮定される抗原浮動。第1に、本データは、異なるインフルエンザ株の活性における変化が、非特異的配列変化に関連するのではなく、株特異性レプリキンの高い濃度およびエピデミックに関連する複製の株特異的増加に基づく、または関連する。
【0080】
さらに、どの配列変化が「浮動」または「転移」によるものか、また保存、保有宿主における保管、および再出現によるものかについて、考えられる識見に関するデータを評価した。データは、レプリキン濃度におけるエピデミック関連の増加は、血球凝集素あたりの既存のレプリキンの複製によるものではなく、少なくとも1つのレプリキン組成物が、消失してから1年〜最長59年後に再出現することによること、加えてA株に限っては、新規の株特異性レプリキン組成物の出現によることを示唆する(図13〜16)。そのため、1951および1977のインフルエンザBエピデミックにおけるレプリキン濃度の増加は、エピデミックの年における新規レプリキン組成物の出現に関連するのではなく、以前に発生したが消失していたレプリキン組成物の再出現に関連する(図13)。
【0081】
対照的に、A株の場合は、以前に消失していたウイルスレプリキンの再出現に加え、新規の組成物が出現する(例えば、1996年エピデミックの年のH1N1において、6つの以前のレプリキンが再出現したことに加え、10の新規組成物が出現した)。インフルエンザBではなく、A株のみがヒトでない動物および鳥類の保有宿主にアクセスできるため、完全に新規の組成物は、恐らく、レプリキンアルゴリズムの基本的要件である「3点認識」以外は新規組成物との類似点がないように思われる既存のヒトレプリキンの変異ではなく、ヒトでない保有宿主に由来すると考えられる(図13〜17)。Bと比較して多産性の高いH1N1、およびパンデミックはB株ではなく3つのA株のみによって産生されたという事実は、どちらも非ヒトウイルス保有宿主から新規のレプリキン組成物を受け取るヒトA株の能力機能であってもよい。
【0082】
1年だけ出現した後に消失し、現在まで再出現していない幾つかのレプリキンがある(図13〜16)。また1年〜最長81年間消失した後、同一のレプリキン配列が再出現した他のレプリキンもある。キーレプリキン「k」および「h」アミノ酸、およびそれらの間のスペースは、以下の株特異性レプリキン:10のインフルエンザB、H1N1の単一レプリキン、およびH3N2の単一レプリキンに関して、および欠失後の同一レプリキンの再出現に関して図13〜16に示されるように、特定のレプリキンが一定に存在する間、長年にわたり保存される。
【0083】
残りの血球凝集素配列のレプリキン構造内外におけるその他アミノ酸の置換または置換活性が顕著であるにもかかわらず、インフルエンザレプリキンヒスチジン(h)はまったく置換されないようであり、リジン(k)はほとんど置換されない。この保存の例は、以下において見られる。1918年〜2000年の間一定であったH1N1レプリキン「hp(v/i)tigecpkyv(r/k)(s/t)(t/a)k」(配列番号:_)、1975年〜1998年の間一定であったH3N2レプリキン「hcd(g/q)f(q,r)nekwdlf(v/i)er(s/t)k」(配列番号:_)、および1975年に最初に出現し、25年間消失した後、2000年に再出現したH3N2レプリキン「hqn(s/e)(e/q)g(t/s)g(q/y)aad(l/q)kstq(a/n)a(i/l)d(q/g)I(n/t)(g/n)k,(l/v)n(r/s)vi(e/c)k」(配列番号:_)。多くのアミノ酸が置換されたが、最大約50アミノ酸において、2つのリジン、離れた6〜10の残基、1つのヒスチジン、最小6%のリジンから成る基本的レプリキン構造は保存された。
【0084】
完全にランダムな置換では、これらH1N1およびH3N2レプリキンが持続することも、1902〜2001年までインフルエンザBにおいて10のレプリキン構造が持続することも、1919年の18‐merレプリキンが74年間欠失した後1993年に再出現することも不可能であったと考えられる。ランダムな種の置換ではなく、その不変性は、秩序的に制御された過程、または少なくともキーレプリキン残基が何らかの方法で固定または結合されるような保護、例えば、リジンは恐らく核酸と結合され、ヒスチジンは恐らく呼吸性の酸化還元酵素と結合されること示唆する。この保存を制御する機序は現時点で不明である。
【0085】
II.保存および遺伝子浮動はワクチン開発のための初期警告機序を提供する
H1N1レプリキンの場合において、1918年パンデミックに関連するP1ピークに存在する2つのレプリキンは、12の新規レプリキンを含む1933年の回復E1ピークには存在しなかった。したがって、一定して保存されるレプリキンは、単独または併用のいずれもワクチンに対する最適な選択である。しかし、1年の濃度増加を伴う最近出現したレプリキンであっても、さらに1年以上持続および増加することが多く、濃度のピークおよびエピデミックに達するため、合成レプリキンを用いたワクチン接種の初期警告および時期を提供する(例えば、図6の1990年初頭のH1N1を参照のこと。例えば、図10および図11のH5N1 1995年〜2002年も参照)。
【0086】
図7、8、10および11におけるデータは、インフルエンザタンパク質配列におけるレプリキンの存在および濃度と、インフルエンザのパンデミックおよびエピデミックの発生との直接的な関係を示す。したがって、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列に関して、レプリキンの存在および濃度を分析することにより、インフルエンザパンデミックおよび/またはエピデミックの予測、およびインフルエンザワクチン製剤の標的を提供する。このデータを再度参照して、これまで株特異性化学構造を用いて、到来するインフルエンザのシーズンに優勢となる株を予測することも、ワクチンの全体ウイルス株の混合物を毎年考案することも知られていなかったことは注目に値する。
【0087】
株特異性エピデミックが発生する1年〜3年前のインフルエンザ群における株特異性レプリキン数の発見と同様に、コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数の増加も識別されている。コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、以下のように増加した:1999年3.1(±1.8)、2000年3.9(±1.2)、2001年3.9(±1.3)、および2002年5.1(±3.6)。このパンデミック前の増加は、コロナウイルスが2003年のSARSパンデミックに関与したという発見を支持する(図8および表3を参照)。
【0088】
したがって、レプリキン構造およびレプリキン数を監視することにより、1917年〜1918年のガチョウレプリキンおよびインフルエンザおよびコロナウイルス株の両方に見られるようなその修飾型および付随レプリキンに対する合成株特異性ワクチン予防接種および抗体治療を開発する手段が提供される。
【0089】
図9は、1962年〜2003年に収集された分離株上でそのタンパク質配列を入手できるヌクレオキャプシドコロナウイルスタンパク質の自動レプリキン分析を表す。個別のタンパク質はそれぞれ受入番号で表し、レプリキンの存在について分析する。自動レプリキン分析の一部として、レプリキン数(100アミノ酸あたりのレプリキン数)を自動的に計算する。各年の総レプリキン数について、1年あたりの平均(±標準偏差(S.D.))レプリキン数を自動的に計算する。エピデミック前に、特定ウイルス株(コロナウイルス)における特定タンパク質(ヌクレオキャプシドタンパク質)の複製が増加していることを早期に警告するこの例は、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックに先行するインフルエンザウイルスの株において見られる増加と比較できる(図6、7、10および11)。1999年〜2002年のレプリキン数の上昇は、2002年末に出現し、2003年へと続いたSARSコロナウイルスのパンデミックに一致するとみられる場合がある。図8は、1917年〜2002年のコロナウイルスヌクレオチドキャプシドレプリキンを含む幾つかのウイルス株のレプリキン数を示すグラフである。
【0090】
III.インフルエンザにおけるレプリキン
株が最初に出現し、その年にパンデミックをもたらした1918年から2000年までの配列が入手可能な各H1N1分離株において、レプリキン「hp(v/i)tigecpkyv‐(r/k)(s/t)(t/a)k」が1つのみ存在する。(図14)(「(v/i)」は、アミノ酸vまたはiが異なる年において同一位置に存在することを示す。)H1N1は持続性レプリキンを1つのみ含むが、H1N1は、インフルエンザBより多産性であると思われる。H1N1に関して、82年間に95の異なるレプリキン構造が存在するのに対し、インフルエンザB分離株に関しては、62年間に存在する異なるレプリキンは31に留まる(図13および14)。多くの新規レプリキン構造における増加は、エピデミックの年に発生し(図13〜16)、総レプリキン濃度の増加に関連する(図6、7、10および11)。
【0091】
インフルエンザH2N2レプリキン:インフルエンザH2N2は、1957年のヒトパンデミックに関与した。1957年の株において識別された20レプリキンのうち3つは、H2N2分離株のそれぞれに保存され、1995年までPubMedでの試験用に入手可能であった(図15)。
ha(k/q/m)(d/n)ilekthngk(配列番号:_)
ha(k/q/m)(d/n)ilekthngklc(k/r)(配列番号:_)
kgsnyp(v/i)ak(g/r)synntsgeqmliiwq(v/i)h(配列番号:_)
【0092】
しかしH1N1とは反対に、1961年に始まったH2N2では、13の追加レプリキンが発見されたにすぎなかった。このような少数の新規レプリキン発現は、H2N2レプリキンの濃度および分離株におけるH2N2の発現が長年にわたって減少したことに関連する(図7)。
【0093】
インフルエンザH3N2は、1968年のヒトパンデミックに関与した。1968年に出現した5つのレプリキンは1977年以降消失したが、1990年代に再度出現した(図16)。22年間持続したレプリキン構造はhcd(g/q)f(q/r)nekwdlf(v/i)er(s/t)kのみであり、これは1977年に初めて出現し、1998年まで持続した。1990年代半ばの12の新規H3N2レプリキンの出現は(図16)、同時期のレプリキン濃度の増加、および最近の分離株におけるH3N2株の流行に関連し、それら分離株の一部から全レプリキンの同時消失を伴う(図7)。これは、新規の亜株H3N2(R)の出現を示唆する。2003年11月および12月におけるH3N2新規株(Fujian)のエピデミックは、最初に2001年7月9日提出の米国仮出願番号60/303,396において行われた予測を裏付けた。
【0094】
図6、7、10および11は、インフルエンザエピデミックおよびパンデミックが、インフルエンザウイルスにおけるレプリキン濃度の増加と関連し、これは少なくとも1つのレプリキンが、消失してから1年〜59年後に再発するためであることを示す。またA株に限って、新規の株特異性レプリキン組成物の発生が見られる(図14〜16、図6および7におけるH5N1のエピデミック前の新規レプリキン数の増加も参照)。単一のタンパク質内で個別のレプリキンが反復することによるレプリキン濃度の増加は、インフルエンザウイルスでは発生しないようであるが、その他の有機体において見られる。
【0095】
IV.ガチョウレプリキン骨格
1917年にガチョウから単離されたインフルエンザウイルスの血球凝集素におけるレプリキン(ガチョウレプリキンと命名)は、翌年の1918年パンデミックに関与したインフルエンザのH1N1株において出現し、以下のようにたった2つの置換を持つことを発見した:kkg(t/s)sypklsksy(t/v)nnkgkevlvlwgvhh。表1は、複数のマイナー置換およびその他のインフルエンザ株への明らかな転移があったにもかかわらず、インフルエンザ1917年ガチョウレプリキン(GR)がその後85年間、実質的に保存されたことを示す。われわれは、1917年インフルエンザGRが、H1N1(1918年のパンデミック)、H2N2(1957〜58年のパンデミック)、H3N2(1968年のパンデミック、2000年の中国およびロシアにおけるエピデミック、2003年のFujian株エピデミック)およびH5N1(1997年中国でのエピデミック)において表れるいくつかのインフルエンザ株の間で明らかな移動性を示すことを発見した。1997年に、その構造はH1N2において、その1918年構造KKGSSYPKLSKSYVNNKGKEVLVLWGVHHに正確に回復された。
【0096】
高い毒性および宿主細胞の死亡率に関連しうるレプリキン配列は、インフルエンザウイルスの新生株を予測、識別および治療するための標的を提供する。表1は、ガチョウレプリキンを示す。ガチョウレプリキンおよびその相同体は、以下の90年間のインフルエンザ株に関するデータにおいて、インフルエンザウイルスの新生株における毒性の予測に有用であることが示された。ガチョウレプリキンおよびその相同体をひとまとめにして考えると、それらはレプリキン骨格のアルゴリズムに適合し、一連の保存レプリキンペプチドを必要とする。各レプリキンペプチド配列は、約16〜約30のアミノ酸を含み、さらに(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジン残基から6〜約10アミノ酸残基にあるリジン残基と、(4)少なくとも約6%のリジンと、を含む。
【0097】
V.インフルエンザにおける高い毒性と関連するレプリキン骨格配列
高い毒性または宿主細胞の死亡率を示したインフルエンザ分離株から得た1つ以上のレプリキン骨格配列における置換に同一のアミノ酸に置換を有するインフルエンザ分離株におけるレプリキン骨格配列は、インフルエンザウイルスの新生株における標的および治療として有用である。したがって、本発明は、16〜約30のアミノ酸を含み、
(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、をさらに含む、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン骨格ペプチドを提供し、
インフルエンザウイルスの第1株の単離したレプリキン骨格配列は、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン骨格配列と比較して、アミノ酸置換を含み、アミノ酸置換はヒスチジン置換ではなく、またインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン骨格配列は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
インフルエンザウイルスの第3株のレプリキン骨格配列には追加で置換が存在し、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
インフルエンザウイルスの第3株における置換の存在は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、複製、毒性、または宿主細胞の増加に関連する。
【0098】
好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン配列における異なるアミノ酸残基で置換されるインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する。
【0099】
別の好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、インフルエンザウイルスの第1株の単離したレプリキン配列におけるロイシン以外のアミノ酸で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は、メチオニンまたはイソロイシンで置換される。別の好適な実施形態において、単離したレプリキン配列は、H5N1インフルエンザウイルスから単離される。
【0100】
本発明者は、100年間の疫学的データを使用し、インフルエンザウイルスにおけるレプリキン濃度がウイルスの毒性と関連することを立証した。また同一の疫学的データを使用し、特定の高度に保存されたレプリキン配列の構造と、毒性およびエピデミックとを関連付けた。同一の100年間の疫学的データにおいて、長期にわたって高度に保存されたレプリキン配列における個別の配列変化を再検討した結果、レトロスペクティブ(retrospectively)およびプロスペクティブ(prospective)な予測能力が示された。
【0101】
ガチョウレプリキン骨格におけるレプリキン骨格も同様に、ガチョウレプリキン相同体を含むインフルエンザウイルスの新生株を治療するための標的を提供することが示された。例えば、ベトナムにおける病原性の高いH5N1の2004年株(表1において「2004年 H5N1 ベトナム、高い病原性」と標識)の29アミノ酸レプリキン骨格ペプチドは、UTOPEとして知られる短い合成レプリキン配列およびキーホールリンペットヘモシアニンアジュバントで相補され、ウサギおよび鶏に皮下注射した場合に、強い免疫反応を提供した。例7を参照のこと。
【0102】
表1は、2006年までのガチョウレプリキンおよびその相同体を提供する。表1における構造は、アミノ末端における一定長の一定リジン、およびカルボキシル末端における一定ヒスチジン残基は、異なる株において固定骨格で数十年にわたり保存されることを示す。ガチョウレプリキンの相同体は、1917年〜2006年における1918年、1957年、および1968年の3度のパンデミックにそれぞれ関与する株のH1N1、H2N2およびH3N2に出現し、さらにH1N2、H7N7、H5N2およびH5N1間の置換を含む。ガチョウレプリキンにおいて発生した特定の置換も、ランダムではなく選択的であり、長年にわたり保持される傾向がある。そのため、一般にアミノ酸置換はランダムに生じると仮定されるが、実際は、インフルエンザにおけるすべての置換がランダムとは限らないようである。数十年にわたるこのレプリキン保存により、合成インフルエンザワクチンの産生が可能になり、急速かつ安価に事前調整することができ、また1年以上有効である。
【0103】
そのため、合成インフルエンザワクチンの標的は、インフルエンザウイルスにおける保存レプリキン骨格である。レプリキン骨格は、約16〜約30のアミノ酸配列を含む一連の保存ペプチドを含み、
(1)末端リジンおよび末端リジンに直接隣接する残基部分にある任意のリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接する残基部分にある別のヒスチジンと、
(3)少なくとも1つの別のリジンから約6〜約10アミノ酸残基内にある少なくとも1つのリジンと、
(4)16〜約30のアミノ酸ペプチド内にある少なくとも約6%のリジンと、をさらに含む。またレプリキン骨格ペプチドは、一連のレプリキン骨格の個別部材または複数部材を意味する。
【0104】
合成インフルエンザワクチンの非限定的かつ好適な標的は、約29アミノ酸および末端リジンに直接隣接するリジンを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格である。別の好適な標的において、レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基にあるロイシンは、別のアミノ酸で置換される。別の好適な標的において、ロイシンの置換は、疎水性アミノ酸を用いて行われる。別の好適な標的において、ロイシンの置換は、メチオニンまたはイソロイシンを用いて行われる。
【0105】
合成インフルエンザワクチンのあまり好適でない標的は、約29アミノ酸の第1ペプチド、および
(1)末端リジンおよび末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、を含み、
(3)任意のその他のリジンから6〜10アミノ酸残基内のリジンを含まないインフルエンザウイルスの第1株における外骨格であってもよい。第1株の早期発生標本またはウイルスの別株は、約29のアミノ酸を含む。
【0106】
表1において、ガチョウレプリキンおよびその相同体の経歴は、1917年から現在の鳥類H5N1ウイルスの流行まで追跡される。表1は、インフルエンザのウイルス株におけるガチョウレプリキンの「骨格」相同性の保存を示す。
【0107】
表1は、その他のインフルエンザレプリキンにおけるガチョウレプリキンおよびその相同体のタンパク質構造の存在の経歴を、1年毎またはそれより短期間毎に示す。表1は、それら相同体におけるアミノ酸置換の経歴およびレプリキンの定義およびレプリキンにより供給される急速な複製機能に不可欠なレプリキン構造の特定アミノ酸の保存をさらに示す。
【表1】
【0108】
表1の検討は、アミノ酸のランダム置換が1917年から現在までのインフルエンザ悪性株において発生した場合、ガチョウレプリキンの特定フレームワークアミノ酸は、エピデミックが発生した株において毎年保存されないことを示す。しかし、ランダム置換の結果とは反対に、インフルエンザの毒性株は、毎年一貫して、レプリキンを定義する位置に保存アミノ酸を含む。つまり、レプリキンを定義するアミノ酸の1つ、例えばリジンまたはヒスチジンにおいて置換が発生する場合、レプリキンの定義は喪失する。それにもかかわらず、レプリキン配列は85年間以上にわたって保存される。したがって、特定アミノ酸が長年にわたって保存されることから、置換は完全にランダムであるとは言えない。レプリキンの定義に重要でないアミノ酸(例えばリジンまたはヒスチジン以外のアミノ酸)において置換が発生するという事実は、株の病原性におけるレプリキンの重要性を示す。
【0109】
さらに表1から、置換が発生する場合、レプリキン骨格の特定の明らかに好適な位置において発生することが分かることに注目する。表1は、1位、3〜24位および26〜27位における置換の再発を示す。さらに、置換はこれらの位置全体で発生するが、リジンは第2リジン(これらの毒性株で置換されていない)から6〜10アミノ酸の位置に存在し続ける。
【0110】
29のアミノ酸ストレッチ内のリジン位置に置換がある場合であっても、1957年に見られるように、11位のKが10位に移動すると、その新規位置は2005年まで維持された。YP,AY、N(15位)およびLVLWGを有し、ほぼ例外なくレプリキン骨格の相同構造を保存する。
【0111】
中国(安徽省)におけるH5N1の2006年株のレプリキン骨格において追加のKが出現したことに注目することが重要である。この追加のKの存在は、レプリキン骨格におけるレプリキン数の増加を知らせる。2006年中国(安徽省)株は、(以下で説明されるように)6.6のレプリキン数を有する。レプリキン数6.6は、H5N1株に関してこれまで認められた中で最高値であり、インフルエンザの全体A株において、1918年のパンデミックをもたらしたインフルエンザ株のレプリキン数にのみ匹敵する。この最初の2006年報告が反復および維持される場合、2004年および2005年のカウント4.5および4.0がそれぞれ実質的に増加することを示し、H5N1「鳥インフルエンザ」のエピデミックの継続または増加を予測する。
【0112】
レプリキン骨格配列を含むインフルエンザウイルスの初期毒性株を再検討し、レプリキン骨格が非レプリキン配列に分解されたが、レプリキン骨格の骨格構造に対する識別可能な相同性を維持する場合の複製速度および毒性に対する影響を判断した。レプリキン骨格における内部KおよびHが欠失することにより(末端におけるそれらとは異なり)、例えば、29のアミノ酸における2または3未満の含有レプリキンを表さないか、またはもはや完全にレプリキンでないが、例えば、非限定的に骨格の29アミノ酸KKXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXHH等の外部「シェル」を保存することは、分離株のウイルス配列に見られることが多く、高いレプリキン数および毒性は、典型的にエピデミックまたは流行の終端時に失われる。このレプリキン骨格の「破壊」(または不完全な合成)は、レプリキン数における減少に関する場合と同様に、流行またはエピデミックの衰弱を示す別の指標として有用であり、内部KおよびHを伴う完全に代表的な骨格の出現のように、より多くのレプリキン、すなわち高いレプリキン数を産生し、その出現は通常レプリキン数が3を越える場合、またそれに近づく場合に発生する。これは、流行またはエピデミックの来たる出現の指標として有用である。この実際の使用に加えて、このシェル現象は、以前に認識されなかったレプリキン骨格は、ウイルスの重要な構造的要素であり、流行およびエピデミックにおけるウイルスの「成功」と密接に関連する機能を有することを証明する別の「原理の証拠」である。
【0113】
例えば、レプリキン骨格を有する特定インフルエンザ種の早期発生標本は、後に以下のように変化する。
1)29アミノ酸長が保存される。
2)最初2つのアミノ酸位置(1および2)が保存される。例えば、KK。
3)最後2つのアミノ酸位置(28および29)が保存される。例えば、HH。
4)しかし、KKから6〜10アミノ酸にKはもはや存在しない(レプリキンの定義を必要とする)。
そのようにして、骨格はもはやレプリキン骨格ではなく、骨格エクソスケルトンとなる。レプリキン骨格は、高いレプリキン数およびエピデミックの発生に関連するが、骨格エクソスケルトンはウイルスの休眠およびエピデミックの減少または終了に関連する。したがって、骨格エクソスケルトンは、レプリキン骨格および特定のウイルス流行が減少している場合に残基として残る変性構造であるため、この目的において有用な診断構造であると思われる。これは、1)抗体または小さい阻害性RNA等の抗急速複製の標的、および2)抗ウイルスワクチンのベースとしてのレプリキン骨格の実態および使用を確認する。
【0114】
レプリキン骨格の完全性および保存は、好ましくは2つのリジンで開始し、2つのヒスチジンで終端する固定29アミノ酸配列が存在するという事実により理解されてもよい。次に好ましくは、骨格は16〜約30アミノ酸長である。
【0115】
アミノ酸置換
骨格構造を破壊しないレプリキン骨格における置換は、特定のアミノ酸に限定されないようである。しかし、特定のアミノ酸はペプチドの構造および機能に対して類似の影響を及ぼす共通の化学特性を共有するため、同様のアミノ酸を持つレプリキン配列に対して同様の構造的影響を共有する1つのアミノ酸の置換は、異なる基からの別のアミノ酸によるアミノ酸の置換より可能性が高いと想定される。
【0116】
アミノ酸は、酸性、塩基性、親水性、および疎水性4つのカテゴリに分類されてもよい。特定の基におけるアミノ酸は、異なる基のアミノ酸と比較して、その基内のアミノ酸と置換される可能性が高いと想定される。酸性側鎖を有する酸基は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。塩基性側鎖を有する塩基は、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンを含む。極性中立側鎖を有する中性の親水性基は、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トレオニン、セリンおよびシステインを含む。非極性中立側鎖を有する疎水性基は、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、アラニン、グリシン、プロリン、バリンおよびロイシンを含む。そのようにして、レプリキン骨格配列における特定アミノ酸の好適な置換は、本発明において想定されるように、同一のアミノ酸基内の置換、つまり置換アミノ酸である。例えば、ロイシンは、グルタミン酸よりもメチオニンにより置換される可能性が高く、メチオニンの置換は、ペプチドの特定部分の一部機能を破壊する可能性が低いと想定される。
【0117】
レプリキン骨格のH5N1インフルエンザ保存
幾つかの国における現行の高死亡率H5N1「鳥インフルエンザ」の流行は、延滞インフルエンザパンデミックの第1段階を表すかもしれないというという懸念がある。1つの報告(Ungchusak K et al.N Eng J Med 2005 Jan 27;352(4):323‐5)は、推定されるH5N1の最初のヒトからヒトへの転移において、「ウイルス遺伝子のシーケンシングは、血球凝集素のレセプタ結合部位における変化またはウイルスのその他のキー特性を識別しなかった。8つのウイルス遺伝子セグメントの配列は、すべてタイにおける最近の鳥類分離株から得られたその他のH5N1配列と密接にクラスタ化したことを示唆する」。系統発生解析は、「ヒトインフルエンザウイルスとの再集合」の証拠がないため、H5N1は新規の変型ではないことを示唆した。しかし、われわれはここで、過去2度のH5N1エピデミックにおいて変化せず、実際に1959年以降保存されていた特定のH5N1タンパク質配列の部位における最近の3つの変化を報告する。これまで、ウイルスエピデミックおよび休眠に関連するタンパク質化学は存在しなかった。われわれは、過去100年の3度のインフルエンザパンデミック、H1N1、H2N2およびH3N2のそれぞれが、リジンおよびヒスチジンを豊富に含み、急速複製に関連するウイルスにおける特定ペプチド類、つまりレプリキンの濃度の増加により、およびそれに関連してレトロスペクティブ(retrospectively)に予測されたことを発見した。1997年、2001年、および2003年〜2004年の3度のH5N1エピデミックそれぞれにおいて、レプリキンが予測的であることを発見した(図11)。それらが分離株に出現する各年において、図11に示されるように100アミノ酸あたりのレプリキンを数えることができ、また表1に示されるようにそれらの配列を分析および比較することができる。レプリキンの分析は、入手可能な配列情報におけるレプリキン濃度を測定する目的で、手動または本発明の好適な側面においてソフトウエアを使用して自動に行われてもよい。
【0118】
図11は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックの流行に先立つインフルエンザのH5N1株の血球凝集素タンパク質におけるレプリキンパターンの濃度の急速増加を示すグラフである。図11を検討すると、H5N1の血球凝集素タンパク質において増加するレプリキン濃度(「レプリキン数」)が、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行したことが分かる。例えば、1995年〜1997年のレプリキン数(標準+/−SD)における増加は、1997年の香港H5N1エピデミックに先行した(E1)。1999年〜2001年のレプリキン数の増加は、2001年のエピデミックに先行した(E2)。および2002年〜2004年のレプリキン数の増加は、2004年のエピデミックに先行した(E3)。1999年の減少は、香港におけるE1エピデミックを受けて鶏を大量に処理したことで発生した。
【0119】
ウイルスタンパク質におけるレプリキンの総数に加えて、長年にわたる各レプリキンの構造は有益な情報であり、抗体および小RNA等のワクチンおよびその他治療に対する標的を提供する。上述のように、表1は、1917年にインフルエンザに感染したガチョウにおいて最初に認められたレプリキン(ガチョウレプリキン)を示す。アミノ末端における一定長の不変リジン、およびカルボキシ末端におけるヒスチジン残基は、数十年にわたって固定骨格の異なる株に保存された。ガチョウレプリキンの相同体は、1917年〜2006年の株(1918年、1957年、1968年の3度のパンデミックに関与した株であるH1N1、H2N2およびH3N2を含む)において出現し、H1N2、H7N7、H5N2およびH5N1間のさらなる置換を伴う。ガチョウレプリキンにおいて発生した特定の置換でさえも、ランダムではなく選択的であり、長年にわたり保持される傾向がある。そのため、一般にアミノ酸置換はランダムに発生すると仮定されるが、インフルエンザでは、すべての置換が実際にランダムであるとは限らないと思われる。数十年にわたるこのレプリキン保存により、合成インフルエンザワクチンを急速かつ安価に事前調整でき、それらは1年以上有効である。
【0120】
1997年のH5N1香港エピデミックにおいて、ヒト死亡率は約27%であった。2004において、アジアでH5N1に感染したことが報告された52人のうち、約70%が死亡した。最近では、ベトナムにおける11症例のうち9例が、2004年12月28日〜2005年1月27日までに死亡した。ウイルスの毒性は増加したと考えられるが、ヒトからヒトへのさらなる感染の拡大に必要であると考えられる任意の変化は、まだ発生していないと考えられている。しかし、われわれは、2004年ベトナム、タイおよび中国で分離株から得られたガチョウレプリキン骨格の3つのH5N1レプリキンアミノ酸残基の18位、24位、および28位において最近の置換を認めた(表1を参照)。24位における置換は、1959年H5N1の出現以降発生していないが、その他の株、1957年のH2N2および1968年のH3N2により発生し、合わせて200万人を越える死者をもたらした過去2度のインフルエンザパンデミック、およびH7N7により生じた最近の毒性エピデミックに存在した(表1を参照)。これらは考えられる危険の兆候にすぎないが、図11に示される上昇レプリキン数と併せて、置換に関するこれらのデータおよびそのようなレプリキンデータとパンデミックとの過去の関連は、ウイルスがヒトからヒトに広まる可能性は低いという系統発生解析から得られるような安心感を与えない。
【0121】
表1は、インフルエンザのウイルス株におけるレプリキン骨格の完全性を示す。上述のように、レプリキン骨格がエクソスケルトン骨格に分解されると、病原性が減少すると考えられる。したがって、一般的に2つのリジンで開始し、2つのヒスチジンで終端する固定29アミノ酸配列が存在するという事実から、レプリキン骨格の完全性および保存が見られる。
【0122】
本発明の側面は、ウイルスの病原性または複製速度、エピデミックまたはパンデミックを追跡するか、またはエピデミックあるいはパンデミックの発生を予測するレプリキン構造および機能の組み合わせである。この組み合わせの例は、1918年の株およびH5N1の現行H5N1株等のインフルエンザ株におけるレプリキン数の増加をカウントに使用される本発明のレプリキンアルゴリズムの能力である。1918年インフルエンザパンデミックおよび「鳥インフルエンザ」の現行の流行におけるレプリキン数は、本発明に従う、および本発明により可能となる典型的側面の予測能力を示す。
【0123】
インドネシアおよびベトナムにおいてヒトH5N1株から発見された単一置換は、以前のH5N1株には存在しないが、最近の1957年(H2N2)および1968年(H3N2)における2度の致死的ヒトパンデミックに歴史的に存在する
上記表1を再検討したところ、1957年の高死亡率インフルエンザパンデミックに関与するインフルエンザウイルスのH2N2株、および1968年の高死亡率インフルエンザパンデミックに関与するインフルエンザのH3N2株は、ガチョウレプリキン骨格におけるアミノ酸番号24に単一のアミノ酸置換を含むことが明らかになった。表1を参照のこと。本出願人は、インドネシアおよびベトナムでヒトにおいて発見されたH5N1ウイルスタンパク質における最近の単一アミノ酸置換もガチョウレプリキン骨格におけるアミノ酸番号24に置換を有することを発見した。インドネシアおよびベトナムで最近ヒトにおいて単離されたH5N1ガチョウレプリキンペプチドは、KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV(M/I)WGIHHであり、H5N1のインドネシア株は24位にイソロイシンを含み、H5N1のベトナム株は24位にメチオニンを含む。上述のように、本出願人は、アミノ酸24における置換が高い毒性およびヒトパンデミックを予測することを教授する。
【0124】
ヒトにおいて最近単離されたH5N1のインドネシア株は、H5N1のガチョウレプリキンにおけるアミノ酸番号24での置換(本明細書では「S」置換と指定する)が以前のどのH5N1株にも存在しないが、1957年(H2N2)および1968年(H3N2)の過去2度の高死亡率インフルエンザパンデミックには存在したため重要である。1957年および1968年のパンデミックは、数百万人の死をもたらした。24位におけるアミノ酸置換は、1人が死亡した最近のH7N7の流行(幸いなことに短期間)においても同様に存在した。表1を参照のこと。それにもかかわらず、H5N1ガチョウレプリキンにおける24位のアミノ酸置換は、1959年から現在(2006年)までに分析および記録されたすべてのH5N1から欠失している。
【0125】
国立医学図書館(Pubmed)の1200万を越えるエントリを見直した結果、アミノ酸配列におけるS置換を検出し、FluForecast(登録商標)ソフトウエアを使用して、Sが長年にわたって発生したことを追跡した(www.Replikins.comを参照)。
【0126】
S置換は、鶏からの最近のH5N1分離株では認められなかった。代わりに、高い死亡率を伴うヒト症例から得られたH5N1分離株において最近認められたにすぎない。S置換は、2004年ベトナムおよび2006年インドネシアにおいてヒトから得た分離株で観察された。表1を参照のこと。ベトナムおよびインドネシアのヒトにおける疫学的証拠は、H5N1ガチョウレプリキンにおけるS置換が、対ヒト「クラスタ」と関連することを示唆する。ここで、鳥からヒトへの転移は確立されておらず、またヒト同士の転移は除外されている。S置換は、H5N1のヒト同士の転移が、これまでのところまれではあるが、既に発生している可能性があることを示唆する。
【0127】
世界保健機構(WHO)および米国疾病対策予防センター(CDC)のスポークスパーソンは、最近、高い死亡率を持つH5N1のインドネシア人症例から得たH5N1分離株において「著しく」心配な配列変化は見られていないと発表した。著しい配列変化は、ヒトからヒトへの転移が生じる前に必要であると当業者は考える。そのため、「著しい」配列変化はヒトパンデミックの必要条件であると考えられる。S置換と対ヒト「クラスタ」との関連は、WHOおよびCDCにより予測された「著しい」配列が、上述のようなガチョウレプリキン骨格内の単一アミノ酸変化において予期せず検出されうることを示唆する。
【0128】
ガチョウレプリキンウイルスペプチドは、H1N1、H2N2、H2N3、およびH5N1において、88年間(1917年から現在まで)高度に保存されることが発見されたという事実にもかかわらず、驚くべき変異、つまりS変異がガチョウレプリキンにおいて特定の保存位置、24位において識別された。上記で確立されたように、タンパク質におけるレプリキン濃度の増加は、急速複製およびエピデミックと関連している。例えば、図6、7、8、10および11を参照のこと。上昇する「レプリキン数」(100アミノ酸あたりのレプリキン数)は、各主要なインフルエンザエピデミック、過去100年における最近の3度のインフルエンザパンデミック、および1997年〜現在までの過去3度のH5N1エピデミックと量的に関連し、予測的であることが多いことが分かった。図6、7、8、10および11を参照のこと。
【0129】
S置換等の単一置換は、単独でパンデミックの唯一の原因とはならない。それにもかかわらず、S置換の発生は、1957年および1968年における過去2度の高死亡率パンデミックにおけるマーカである。さらに、鶏においては(現在まで)発生していないが、ヒトのみにおけるH5N1でのS置換の発生は、高い総レプリキン数および死亡率を伴い、H5N1が実際にヒトパンデミックに至る経路となりうることを示唆する。
【0130】
ヒトパンデミックが到来する可能性が高いことを示唆する証拠は、レプリキン数および高い死亡率と併せて、S置換を識別する前に行われた安心な評価とは顕著に異なる。そのため、S置換の詳細な機能は完全に知られてはいないが、この証拠は、S置換の疫学的機能が高いレプリキン数と併せて明らかであることを示唆する。
【0131】
H5N1から完全なパンデミックが実体化するかどうか、またそれがいつであるかを最終的に決定する要因は依然として不明である。次のパンデミックの因子となりうるH5N1の最終置換構造に関する情報がこれまで欠如していたため、適切なワクチンを産生する試みが遅れている。本明細書に開示されるレプリキンペプチド構造およびガチョウレプリキン骨格は、到来の可能性があるパンデミックに対するワクチンの産生について必要な指示を提供する。
【0132】
標的としてのS置換レプリキン骨格
インフルエンザウイルスの新生株におけるレプリキン骨格での予測的置換により提供される合成ワクチンのターゲットに関する非限定例は、表1の配列標示「1957 H2N2ヒトインフルエンザパンデミック」、「1968 H3N2ヒトインフルエンザパンデミック」、「1979〜2003 H7N7インフルエンザ」、「2004 H5N1(ベトナム、高い病原性)」および「2006 H5N1インドネシア(高い病原性)」で提供される。上述のように、ガチョウレプリキンおよび表1に開示されるその他すべての配列と比較して、ロイシンを1957年および1968年パンデミック株におけるイソロイシンで置換すること、およびロイシンをH7N7の1979年〜2003年株におけるイソロイシンで置換することは、ロイシンが2004年ベトナムのH5N1新生株におけるメチオニン、および2006年インドネシアのH5N1新生株におけるイソロイシンで最近置換されたことにより連続的な毒性の増加がもたらされるという予測的重要性を提供する。ベトナムおよびインドネシアにおける高い死亡率は、ヒトからヒトに転移した幾つかの証拠とともに、これらの置換株において毒性が実際に増加したことを示唆する。したがって、これらの株の置換レプリキン骨格ペプチドは、合成ワクチンの開発に役立つレプリキン骨格ペプチドの非限定的な好適実施形態である。本発明の別の非限定実施形態は、2004年ベトナムから単離された置換H5N1および2006年インドネシアから単離された置換H5N1のレプリキン骨格ペプチドであり、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基で置換された末端ヒスチジンから5番目の位置にある。より好適な実施形態において、レプリキン骨格ペプチドは、末端ヒスチジンから5番目の位置で、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸と置換される。
【0133】
本発明の別の実施形態において、1957年H2N2パンデミック株の骨格ペプチド、1968年H3N2パンデミック株、および1979年〜2003年H7N7株は、これらの新生株に対する合成ワクチンの相同性標的も提供する。
【0134】
したがって、本発明は、本発明の単離したレプリキンペプチドも提供する。本レプリキンペプチドは、約29のアミノ酸を含む。単離したレプリキンペプチドは、アミノ酸配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含んでもよく、[S]はインフルエンザウイルスの第2株と比較して、置換される任意のアミノ酸であるか、その他はほぼ同一のレプリキンペプチド配列を含んでもよい。好適な実施形態において、[S]は任意の疎水性アミノ酸であってもよい。さらに好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。さらに好適な実施形態において、上記で具体化された配列は、インフルエンザのH5N1株から単離される。
【0135】
VI.レプリキン骨格を使用したインフルエンザ毒性の増加を予測する方法
長期にわたるレプリキン骨格の歴史的データは、インフルエンザウイルスの新生株の毒性を予測するツールを提供する。インフルエンザウイルスの株において、レプリキン数が長期にわたって増加している場合、それはインフルエンザウイルスの新生株であり、毒性の増加を予想できる。インフルエンザウイルスの新生株が、歴史的に毒性が高いインフルエンザウイルスの株における毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連するレプリキン骨格ペプチドにアミノ酸置換を含む場合、新生株は毒性の増加を有すると予測してもよい。
【0136】
したがって本発明は、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を提供する。本方法は、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチドと、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチドと、インフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドと、を含むステップと、
(2)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換された第3レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸を識別するステップと、
(3)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株が、高い複製、毒性、または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(4)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸残基と同一の残基位置にあることを判断するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数と、インフルエンザウイルスの第1株の初期分離株のレプリキン数とを比較するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いことを判断するステップと、
(7)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップと、を含む。
【0137】
例えば、上述および表1に開示されるように、H2N2およびH3N2の1957年および1968年パンデミック株においてイソロイシンを持つ、ならびにH7N7の1979年〜2003年株においてイソロイシンを持つ開示レプリキン骨格におけるガチョウレプリキンおよびその相同体におけるロイシンの置換は、2004年ベトナムでのH5N1の新生株におけるメチオニンとのロイシンの最近の置換、および2006年インドネシアでのH5N1の新生株におけるイソロイシンとの置換が継続的な毒性の増加をもたらすという予測重要性を提供する。高い死亡率およびヒト同士の感染が結合して起こることが証明されたことからも分かるように、ベトナムおよびインドネシア株において毒性は明らかに増加した。
【0138】
したがって、本発明の方法の非限定的な好適実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン骨格ペプチドは、任意のその他のアミノ酸の場合、ロイシンの置換を受けた。より好適な実施形態において、置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸で行われた。さらに好適な実施形態において、置換はメチオニンまたはイソロイシンで行われた。一層好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン骨格ペプチドにおける置換は、レプリキン骨格ペプチドの24位、または代替として末端ヒスチジンから5番目の残基において行われた。
【0139】
本発明は、パンデミックを予測する方法も提供する。本方法は、ウイルスDNAを単離およびシーケンシングするステップと、コード化されたアミノ酸配列に関して、結果として生じる配列を走査するステップと、アミノ酸配列に関して本明細書に記載される予測方法を行うステップと、を含む。核酸配列は、アミノ酸の配列をコード化する場合、アミノ酸配列と相同である。本発明の方法の好適な実施形態において、パンデミックを予測する方法は、結果として生じる核酸配列を走査するステップと、ガチョウレプリキンの24位における変化を特定するステップと、H5N1のガチョウレプリキンにおけるS置換の存在に基づいて、将来のパンデミックを予測するステップとを含む。
【0140】
上述の非限定的方法は、発見された任意のレプリキン骨格または以下に開示される任意のレプリキン骨格を採用してもよい。
【0141】
VII.レプリキンを使用してインフルエンザ毒性の増加を予測する方法
本発明は、長期にわたるレプリキン配列の変化、地理、または疫学的事象を監視することにより、インフルエンザウイルスの株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する非限定的な方法も提供する。インフルエンザウイルスの株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法は、
(1)インフルエンザウイルスの第1株を識別するステップであって、インフルエンザウイルスの株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の早期発生分離株のレプリキン数より大きいステップと、
(2)インフルエンザウイルスの第1株の第1レプリキンペプチドを識別するステップと、
(3)第1レプリキンペプチドと相同であるが、アミノ酸の場合、アミノ酸置換はヒスチジン残基において行われない、インフルエンザウイルスの第2株における第2レプリキンペプチドを識別するステップと、
(4)第2レプリキンペプチドと相同であるが、アミノ酸置換は第1レプリキンペプチドにおけるアミノ酸置換と同位置で行われる、インフルエンザウイルスの第3株における第3レプリキンペプチドを識別するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第3株が、インフルエンザウイルスの第2株において高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株が、インフルエンザウイルスの第2株において高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すことを予測するステップと、を含む。
【0142】
本方法の好適な実施形態において、アミノ酸置換はリジン残基またはヒスチジン残基において行われない。レプリキンアルゴリズムは、第1、第2および第3レプリキンペプチドのそれぞれにおいて満たされる必要がある。
【0143】
本発明は、インフルエンザのH5N1株から単離したインフルエンザレプリキンペプチドをさらに提供する。
【0144】
VIII.エビ白点ウイルスにおける相同性骨格配列
本発明者は、レプリキンについて現在までに調査されたすべてのその他ウイルスおよび有機体と比較して(マラリアを除く)、白点エビウイルスが異常に高いレプリキン数を有することをさらに発見した。レプリキンは、真菌、イースト、ウイルス、細菌、藻類において急速な複製を基本的に伴うことが示されているが、本発明者は、藻類以外の海洋有機体におけるレプリキンの存在を始めて示した。また藻類についても、レプリキンの存在が急速な蔓延に関連する。エビにおいて、最初は東洋諸国で、また現在では西半球の国々でも白点ウイルスがエビの捕獲量に何百万ドルもの損害を与えている。現時点で有効な予防または治療はない。レプリキン高死亡率海洋ウイルス性疾患のその他の例は、コイ等の魚、サケの出血性疾患において見られ、海洋生態系および疾患に広まる可能性がある。
【0145】
エビ白点症候群ウイルス(WSSV)のヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキンの反復配列の存在は、異常に高いレプリキン数103.8の要因である。このウイルスレプリキン数は、例えば、通常1未満〜最大5または7の範囲であるインフルエンザウイルスのレプリキン数よりはるかに高く、熱帯熱マラリア原虫(マラリア)に見られる(今までのところ)記録的なレプリキン数111のみに匹敵する。興味深いことに、エビ白点症候群の有機体はウイルスであり、熱帯熱マラリア原虫の場合はトリパノソームであるが、エビ(白点ウイルス)またはヒト(マラリア)にかかわらず、どちらも赤血球、異常な宿主細胞におけるそれらの繁殖サイクルの重要部分を費やし、電撃性の急速に複製する疾患であって宿主細胞の高い死亡率を伴い、またどちらも高いレプリキン数をそのような記録的に高い値まで増加する同一の方法、つまりレプリキン反復およびレプリキン重複を使用すると考えられる。
【0146】
本発明者は、ウイルスのレプリキン骨格部分における毒性インフルエンザウイルスと白点ウイルスとの関係も確立した。これら2つのウイルスの関係はこれまで示唆されていない。広範な置換が存在するが、エビ白点症候群ウイルスの幾つかの短鎖レプリキンに関する本出願人の発見は、特に長さおよびキーリジン(k)ならびにヒスチジン(h)残基(固定骨格またはレプリキン骨格)に関して、インフルエンザウイルスレプリキン配列に対する著しい相同性を示し、両ウイルス群において、同様のレプリキン産生機序が使用されることを示唆する。
【表2】
【0147】
さらに、ブタおよび鳥類を含むがそれらに限定されない多くの種は、ヒトインフルエンザ感染の動物「保有宿主」を提供することが知られているため、現在、エビウイルス等の海洋形態を検査することができ、ブタインフルエンザおよび鳥インフルエンザ等の流行に対する初期警告診断的利点を有する。一部インフルエンザウイルスの類似性が種の間で認められており、これらウイルスの種間転移が知られているが、ウイルスの活性を図る定量方法はこれまでにない。これまで、異なる種に移動する可能性のある保有宿主の活性の増加を評価すること、よって事前の警告を出すことは不可能であった。現在、各種におけるレプリキンの活性について、ウイルス複製速度の増加およびその他の種に転移する可能性のある種におけるエピデミックの出現の証拠を常に監視することができる。
【0148】
このデータは、独自の歴史およびその宿主細胞の急速複製および疾患の共有機能を有する新種のペプチドとしてレプリキンをさらに指示する。そのエビ宿主細胞に対する高い死亡率を伴う白点症候群ウイルスは、現在そのレプリキンをウイルスレプリキンの初期形態、または類似形態学的分岐として評価した。いずれかの場合において、インフルエンザウイルスの場合のように、鳥および動物レプリキンの保有宿主として良好に作用する。エビにおけるこれらレプリキン発見を診断および予防に使用することは、インフルエンザおよびレプリキンを含むその他の有機体に対する診断および予防に使用する場合と同様に行う。
【0149】
IX.1918年パンデミックに遡るSARSウイルスおよびH3N2‐FUJIANインフルエンザウイルスレプリキンにおける相同配列
特定のSARSウイルスレプリキンペプチドは、ガチョウレプリキンと相同であるレプリキン骨格配列との相同体を含むインフルエンザウイルス分離株の幾つかの株におけるペプチドと相同体を共有する。相同体は、2,000万人もの死をもたらした1918年インフルエンザパンデミックの株における配列に遡る2006年毒性インフルエンザ株から拡大する。
【0150】
SARSコロナウイルスは、2002年〜2003年インフルエンザシーズンにおいて最初に出現した。インフルエンザGRおよびコロナウイルスレプリキン(または一部の不明な共有前駆体)から得たSARSレプリキンの2002年における二重複製期限は、すべて2002年に発生した以下の事象により示唆される。1)85年間で初めての縮合は、GR‐H1N2レプリキン配列が29から28アミノ酸になったことに見られる(表3)(現行エピデミックにおける29〜27アミノ酸から得たH3N2Fujianにおいて同様の縮合が見られた(表3))。2)GR‐H1N2のレプリキン数は、H1N2から移動するGRに一致して顕著な減少を示した。3)コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、顕著な増加を示した。4)以下のモチーフを含むレプリキンを持つSARSコロナウイルスが2002年〜2003年に出現した。GR 1918およびGR‐H1N2 2001に既に見られる「kkg」および「k‐k」;インフルエンザGR‐H1N2 2001に見られる「k‐kk、「kk」および「kl」;鳥類気管支炎コロナウイルスレプリキンに見られる「kk」;およびブタエピデミック下痢コロナウイルスのレプリキンに見られる「kk‐kk‐k」、「k‐k」、「kk」、「kl」および「kt」(表3)。
【表3】
【0151】
1917年ガチョウレプリキンの存在を含む、近年の増加的に高いレプリキン数のピークは、現在H1N2(表3)において、1917年のレプリキン数に近づいており、来るべきパンデミックの警告となりうる。SARSウイルスおよびH3N2‐Fujianウイルスは、高い死亡率に関連すると思われるガチョウレプリキン(図17)の短いレプリキン派生物の現行キャリアであるため、既に始まっている可能性がある。
【0152】
ガチョウレプリキンは少なくとも85年の歴史を持ち、インフルエンザおよびSARSのA株の大部分またはすべてに関与するため、レプリキン自体およびその構成要素は、パナマ型保護に対する保存されたワクチン候補である。7〜21アミノ酸長、ガチョウと比較してリジンおよびヒスチジン%の豊富な縮合型短鎖SARSレプリキンは、29アミノ酸長のガチョウレプリキンの死亡率(2.5%)と比較して、SARSの高い死亡率(10〜55%)と関連して発生した。SARSにおける長鎖レプリキンとここで混合された短鎖レプリキンは、高い死亡率に関与する可能性がある。これは、エボラおよび天然痘ウイルスならびに炭疽菌等のその他の有機体のレプリキンの場合も同様である(表3)。これらの短鎖SARSレプリキンは、一層高い未治療死亡率に関連する天然痘、炭疽菌、およびエボラ等のその他有機体の短鎖レプリキンと驚くべき相同性を示した(表3)。インフルエンザレプリキンを用いたSARSコロナウイルス相同体におけるレプリキンの検出により、ワクチンの小型SARS抗原の合成を可能にした。
【0153】
短鎖合成ワクチンは、はるかに短期間で安価に産生することができ、一般に現行の全体ウイルスワクチンにおける数千の望ましくないタンパク質の複数のエピトープにより引き起こされる感染および免疫干渉に付随する副作用を回避するはずである。短鎖グリオーマレプリキン「kagvaflhkk」は、合成物質のための良好なベースとなることが立証された。米国特許番号6,242,578を参照のこと。これは、癌細胞に対する細胞毒性を有する抗マリグニン抗体をピコグラム/細胞で産生し、癌患者の生存と量的に関連する。われわれは、ヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質において認められる5つのSARS短鎖レプリキンを合成した。例6を参照のこと。これらの合成短鎖SARSレプリキンをウサギに注射した場合、大量の特定抗体を産生した。例えば、21アミノ酸SARSヌクレオキャプシドレプリキン抗体は、1:204,800を越える希釈で結合する。様々な小ペプチドを用いて、天然痘ワクチンにおいて見られるように、総タンパク質または数千のタンパク質、あるいは核酸の使用により生じる望ましくない副作用のない強い免疫反応を得るための試みが以前に他者により行われたが、失敗に終わっているため、小型合成レプリキン抗原が強い免疫反応を実現する能力は、これらのSARSワクチンの有効性にとって重要である。
【0154】
図17に示されるような結果を用いて、インフルエンザおよびSARSウイルスにおけるレプリキン構造と高い死亡率との関連を評価した。高い死亡率と短鎖または縮合レプリキン配列との関連は、図17のセクションBに示される高死亡率の有機体、インフルエンザおよびSARS以外のウイルス、および細菌、マラリアおよび癌において見られる。レプリキン構造の統一概念、および任意の細胞型または感染性有機体ではなく、レプリキンと急速複製との関連に関する統一概念の裏付けとして、流布および毒性に複製が重要となる広範囲のウイルス、細菌、マラリアおよび癌有機体における基本的レプリキン構造の普及に加えて、以下の相同配列が認められている。1位および2位における「k」に注目する。取り込みまたは急速複製を刺激するためDNA、RNAまたはその他のレセプタあるいはリガンドに提示する「k」の配列に注目する。「二重k」および「複数k」の頻度に注目する。最も縮合短縮されたレプリキンの3位における「g」の頻度および三重項「kkg」、「hek」、「hdk」、および「hkk」の発生に注目する。このレプリキンは、天然痘ウイルス、炭疽菌ウイルス、ラウス肉腫、および多形性グリア芽腫(グリオーマ)、大腸癌および乳癌におけるc‐src、メラノーマおよび大腸癌におけるc‐yesを含む最高の死亡率を持つ有機体、癌細胞、および遺伝子に関連する。オーストラリアおよび東南アジアにおいて2つの近年出現した高死亡率ウイルスであるニパウイルスおよびヘンドラウイルスのほぼ同一レプリキン構造にも注目する。これら2つのウイルスは、それらに対して形成された類似または同一の抗体を有することが報告されているが、その構造的ベースについてはこれまで知られておらず、われわれがこの類似抗体に対する2つのほぼ同一レプリキンを発見した。
【0155】
また表3は、われわれが発見した2003年の5つのSARSレプリキンと、1917年インフルエンザガチョウレプリキンおよび2つのコロナウイルス(鳥類気管支炎コロナウイルスおよびブタエピデミック下痢ウイルス)との関連を示す。表3および図17における最初の2003年ヒトSARSレプリキンは、2002年におけるインフルエンザH1N2の中間構造による、1917年インフルエンザガチョウレプリキンおよびヒト1918年レプリキンに対する特定の配列相同性を示す(例えば、1位、18位および19位におけるレプリキン「k」を参照)。1917年ガチョウレプリキン配列は、表3および図17において、1999年におけるレプリキンの定義に重要ではないアミノ酸に多くの置換があるにもかかわらず、大部分が保存されていることを示す(置換はイタリック体で示される)。次に、元の29アミノ酸1917年レプリキン配列は、2001年H1N2レプリキンにおける1917年〜1918年のその構造にほぼ正確に回復されたことが分かった。しかし、2002年H1N2インフルエンザレプリキンは、29から28アミノ酸に短縮され、アミノ酸kevl(i/v)wg(v/i)hhが「左にシフト」したことがはっきりと証明される。
【0156】
2003年に1つのレプリキンが、最初にリストされる2003年ヒトSARSウイルスの21アミノ酸レプリキンにさらに短縮(または小型化)された。2003年SARSレプリキンにおけるkの割合(%)は、ガチョウレプリキンおよび1918年ヒトパンデミックレプリキンの20.7%と比較して、現在38.1%(8/21)である。インフルエンザ29アミノ酸レプリキンと比較して、3つのSARSレプリキンが、さらに19、11および9アミノ酸長配列にそれぞれ短縮(または小型化)されたことが認められた。図に示されるSARS9アミノ酸配列におけるkの割合(%)は44.4%(4/9)である。SARSレプリキンの短縮に関して、ヒトにおけるSARS死亡率は、1918年インフルエンザパンデミックにおける2.5%と比較して、若年層において10%、老年層において55.5%まで上昇した。
【0157】
アミノ酸配列を表3に示し、相同の程度およびインフルエンザレプリキンの85年間(1917年〜2002年)にわたる保存を強調表示する。1917年ガチョウレプリキンにおいてその証拠が最初に認められた。そのような保存は、これまで認められていない。また表3は、2003年ヒトSARSウイルスにおけるレプリキンが、最初に1917年ガチョウレプリキンとして、また1918年ヒトパンデミックインフルエンザレプリキンとして出現したインフルエンザレプリキンに対する相同性を有することに加え、コロナウイルス鳥類気管支炎ウイルスレプリキン(例えば、1位および2位が「k」であり、「h」で終端する)およびコロナウイルス急性下痢ウイルスレプリキン(例えば、レプリキンの1位および11位が「k」であり、末端が「h」である)の両方に対して特定の配列相同性があることを示す。インフルエンザおよびコロナウイルスレプリキンの両方に関連するというこの証拠は、幾つかの最近のインフルエンザエピデミックおよび以前のパンデミックと同様に、SARSが香港で発生し、SARSウイルスが、ヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質を含むその構造に一部起因して新規コロナウイルスとして分類されていることからも興味深い。SARSがヒトにおいてエピデミック肺炎として最初に出現したことについては、特定の疫学的証拠も関連している。このエピデミック肺炎は、込み合った香港のアパートで勃発した。そこでは糞便汚水の激しい逆流があり、それが換気扇により空中に浮遊した。
【0158】
X.インフルエンザワクチン、治療および治療薬
本発明は、任意の1つ以上の上述の単離した配列、または任意の1つ以上の上述の単離した配列の任意の抗原部分列、あるいは上述の単離した配列またはそれらの部分列のいずれかに結合する抗体を含むワクチンも提供する。
【0159】
現在、インフルエンザ用ワクチン製剤は、WHOおよびCDCの国際会議において毎年2回変更されている。ワクチン製剤は、世界の所定地域におけるインフルエンザウイルス株の最近の優勢に関する血清学的証拠に基づく。しかし、本発明に先立って、インフルエンザウイルス株に特異的なアミノ酸配列の変化と、インフルエンザエピデミックまたはパンデミックの発生との関連付けはなかった。
【0160】
インフルエンザウイルスタンパク質における特定レプリキンおよびその濃度を観察することにより、インフルエンザパンデミックおよびエピデミックに関する第1の特異的な量的初期化学的関連が提供され、特異的に調整されたインフルエンザワクチンを産生して適時投与することにより、世界の特定地域において流行しているインフルエンザウイルスの出現株または再出現株を治療することができる。インフルエンザウイルス株の分離株のタンパク質配列、例えば血球凝集素タンパク質配列について、レプリキンの存在、濃度および/または保存を分析することにより、インフルエンザウイルスパンデミックおよびエピデミックを予測できる。さらに、そのようなインフルエンザ流行の重大性は、最も豊富にあることが認められたレプリキン配列または所定の期間、例えば約1〜約3年にわたってウイルス分離株中で上昇傾向にあるレプリキン配列に基づいたインフルエンザペプチドワクチンを投与することにより、著しく低減できる。
【0161】
本発明のインフルエンザペプチドワクチンは、単一のレプリキンペプチド配列を含んでもよく、またはインフルエンザウイルス株において見られる複数のレプリキン配列を含んでもよい。好ましくは、ペプチドワクチンは、所定の期間にわたって濃度の増加が見られ、少なくともその期間は保存されるレプリキン配列に基づく。
【0162】
例えば、好適なワクチンは、レプリキン骨格の一部材であるレプリキン配列を含んでもよい。レプリキン骨格配列とインフルエンザウイルスの高い毒性株との関連性と併せて、レプリキン骨格の高い保存性により、レプリキン骨格配列は合成ワクチンに好適な配列となる。ガチョウレプリキン骨格の一部材は、ウサギおよび鶏に皮下投与された場合に強い免疫反応を提供するために有効であることが証明された。例7を参照のこと。
【0163】
本発明のワクチンは、新規のレプリキンペプチドと併せて保存レプリキンペプチドを含んでもよく、または新規のレプリキンペプチド配列に基づいてもよい。レプリキンペプチドは、化学合成または組み換え遺伝子技術を含む任意の方法で合成することができ、レプリキン配列のみを含むペプチドに基づくワクチンが好ましいが、非レプリキン配列を含んでもよい。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、薬学的に許容しうるキャリアおよび/またはアジュバントを含んでもよい。
【0164】
本発明のインフルエンザワクチンは、単独で、またはガンシクロビル;インターフェロン;インターロイキン;アマンタジン、リマンタジン等のM2阻害剤;ザナミビルおよびオセルタミビル等のノイラミニダーゼ阻害剤等の抗ウイルス薬と併用して、および抗ウイルス薬の組み合わせとともに投与することができる。
【0165】
本発明のインフルエンザワクチンは、免疫反応において抗体を産生できる任意の動物に投与してもよい。例えば、本発明のインフルエンザワクチンは、ウサギ、鶏、ブタ、またはヒトに投与されてもよい。本発明のインフルエンザワクチンは、一連のインフルエンザ株または特定のインフルエンザ株に配向されてもよい。
【0166】
本発明に従う非限定的側面において、インフルエンザワクチンは、インフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2、(A)H3N2、H5N1を含むインフルエンザの動物またはヒト株、またはその後に生じる可能性のあるウイルスの任意のヒト変型、および現行の鳥類H5N1等の主に動物に見られるインフルエンザ株に対する免疫反応を対象としてもよい。インフルエンザワクチンは、インフルエンザタンパク質の任意の一部における特定のレプリキンアミノ酸配列をさらに対象としてもよい。UTOPE KKKKHKKKKHに共有結合したH5N1ウイルスのレプリキン骨格KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHを含むインフルエンザワクチンおよびよく知られたキーホールリンペットシアニンンアジュバントは、鶏およびウサギにおいて強い免疫反応を提供した。例7を参照のこと。
【0167】
本発明の非限定的実施形態は、レプリキン骨格配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含むインフルエンザワクチンを提供する。[S]は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して置換される以外はほぼ同一のレプリキンペプチド配列を含む任意のアミノ酸であってもよい。好適な実施形態において、[S]は疎水性アミノ酸であってもよい。さらに好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。一層好適な実施形態において、上記で具体化された配列は、インフルエンザのH5N1株から単離された配列である。
【0168】
さらに非限定的な側面において、インフルエンザワクチンは、KKKKHまたはKKKKHKKKKKH等のUTOPEを含んでもよい。さらなる代替例において、ワクチンは、本明細書で‐KLHと表示される、よく知られたキーホールリンペットヘモシアニン等のアジュバントの追加を含んでもよい。さらに好適な非限定的側面において、インフルエンザワクチンは、2つのUTOPE、およびKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVMWGIHH KKKKHKKKKKHK‐KLHまたはKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVIWGIHH KKKKHKKKKKHK‐KLH等のアジュバント配列をさらに含むインフルエンザH5N1のレプリキン骨格を含んでもよい。本発明の側面は、以前に単離され、表1において「2004年 H5N1ベトナム、高い病原性」または「2006年 インドネシア、高い病原性」と標識される鳥インフルエンザレプリキンの1つとして示されるレプリキン骨格配列を含んでもよい。
【0169】
100μgのペプチドから成るワクチンをウサギおよび鶏に皮下注射により投与することにより、1:50未満のワクチン接種を受けていない希釈物からの抗体反応は、ワクチン接種後3〜4週間で、1:120,000の希釈から1:240,000を越えるピークに達することが予測される。
【0170】
グリオーマレプリキン(配列番号:_)「kagvaflhkk」またはC型肝炎レプリキン(配列番号:_)「hyppkpgcivpak」等のレプリキン、あるいは(配列番号:_)「kcfncgkegh」または(配列番号:_)「kvylawvpahk」等のHIVレプリキンに基づく合成レプリキンワクチン、または好ましくは所定の期間にわたって保存される、および/または出現または再出現するレプリキンに基づくインフルエンザワクチンを使用し、抗体濃度を増加させて、ウイルス感染した細胞をそれぞれ溶解し、ウイルスを細胞外に放出して化学療法が有効になるようにしてもよい。
【0171】
レプリキンフラグメントを認識および結合することにより、細胞の破壊をもたらす抗体の誘導を目的とする場合は、特定のレプリキン構造のみを利用することが好ましい。大型タンパク質配列は、「複製関連機能」を有することが当業者に知られているが、大型タンパク質を使用するワクチンは失敗するか、または有効でないことが分かる場合が多い。
【0172】
本発明者は単一の理論に固執することを望まないが、本明細書における研究は、先行技術のワクチンが、大型タンパク質配列の使用に基づくため効果がないこと、つまり抗体の形態で適切な免疫反応および/または細胞性免疫を産生できず、保護能がないことを示唆する。大型タンパク質配列は、常に1つ以上のエピトープ(特定の抗体形成を誘導できる独立した抗原配列)を有し、レプリキン構造は、通常これらの可能なエピトープのうちの1つを含む。その他のエピトープが大型タンパク質に存在することは、免疫系に無関係の抗原刺激を「大量に送り込む」ことによって、レプリキン抗原を阻止する可能性があり、レプリキンに対する抗体の適切な形成が妨害される場合がある。このよく知られた抗原優位現象に関する議論については、例えば、Webster,R.G.,J.Immunol.,97(2):177‐183(1966)、およびWebster et al.,J.Infect.Dis.,134:48‐58,1976、Klenerman et al,Nature 394:421‐422(1998)を参照のこと。この抗原優位現象によって、免疫系により提示および認識される第1ペプチドエピトープがその後広まり、その他のペプチドエピトープが同時に提示されるが、それに対する抗体が形成される。これは、ワクチン形成において、有機体からのその他のエピトープを提示する前に、定常レプリキンペプチドを最初に免疫系に提示することによって、レプリキンが先取されず免疫記憶に残るようにすることが重要である別の理由である。
【0173】
レプリキンワクチンに対する初期反応の量的測定
数日または数週間におけるレプリキンワクチンに対する初期特定抗体反応を量的に測定する能力は、臨床反応が数ヶ月または数年後にしか測定できないその他のワクチンに優る主要な実践的利点である。
【0174】
アジュバント
様々なアジュバントを使用し、宿主細胞種に応じて、免疫学的反応を強化してもよい。例えば、フロインド(完全および不完全)、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーリンペットヘモシアニン、ジントロフェノール、およびBCG、ホルマリン死菌体(Corynebacterium parvum)等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、それらに限定されない。それらにおける合成UTOPEのワクチン使用に加えて、UTOPEをその他レプリキンワクチンおよび非レプリキンワクチンに対するアジュバントとして使用できる。
【0175】
UTOPES
kの割合(%)が高いレプリキンは、ウサギに投与された場合に最も高い抗体反応を生成することが示された。本発明者が設計したこれらの合成ペプチドは、万能合成エピトープ、または「UTOPE」と指定し、これらのUTOPEに基づくワクチンは「UVAX」と称される。推定合成ワクチンであるUVAXは、単一ワクチン、またはより特異的なレプリキンワクチンまたはその他ワクチンと併用投与されるアジュバントとして使用してもよい。以下は、推定UTOPEおよびUVAXの例である。
考案した合成レプリキン 配列番号:
(UTOPEまたはUVAX)
KKKKHK ___
KKKHKK ___
KKHKKK ___
KHKKKK ___
KKKKKKH ___
KKKKKHK ___
KKKKHKK ___
KKKHKKK ___
KKHKKKK ___
KHKKKKK ___
HKKKKKK ___
【0176】
レコグニンおよび/またはレプリキンペプチドを対象に投与し、対象の免疫系を誘導して抗レプリキン抗体を産生してもよい。一般的に0.5〜約2mg用量、好ましくは各ペプチドの1mg用量を対象に投与し、免疫反応を誘導する。必要に応じて、後次の用量を投与してもよい。
【0177】
置換の識別はワクチンの初期開発を提供する
以前の卵および細胞に基づくインフルエンザワクチンの生成方法は、望ましくない副作用を生じる可能性のある数千もの不要なタンパク質を含み、生成に6〜9ヶ月以上かかり、試験にさらなる時間を要した。FluForecast(登録商標)は、現在、エピデミックまたはパンデミックが到来しつつあるという株特異性警告を1〜3年先行して行うことが可能である。またキーレプリキンおよび置換アミノ酸「S」の発見により、より正確で潜在的に安全な合成ワクチンを短期間、つまり数日以内に調整して試験することができる。
【0178】
H5N1ガチョウレプリキンにおけるS置換の識別は、H5N1におけるS置換から生じる将来のヒトパンデミックに対するワクチンの開発用の標的を熟練者に提供する。ワクチンは、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHの任意の一部を含んでもよく、24位におけるS置換(末端ヒスチジンから5残基目)は、任意のアミノ酸置換を表す場合がある。好適な実施形態において、S置換はロイシン以外のアミノ酸を表す。より好適な実施形態において、S置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸を表す。さらに好適な実施形態において、置換はメチオニンまたはイソロイシンを表す。1つの非限定的ワクチン実施形態は、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHの7〜29アミノ酸を含む。別の非限定的実施形態において、ワクチンは配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHの7〜29アミノ酸を含む。代替として、本ワクチンはキーリンペットヘモシアニン等のアジュバントまたはその他のアジュバント、および/またはKKKKHK等のUTOPEあるいは任意のその他のUTOPEを含んでもよい。別の非限定実施形態において、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHの7〜29アミノ酸抗原部分列に対する抗体も考慮される。本発明のレプリキン骨格またはレプリキン配列の約7〜約29アミノ酸を有する任意の抗原部分列は、ワクチンおよび抗体を産生するための免疫系の刺激を考慮する。
【0179】
配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHのすべてまたは任意の一部に対する抗体は、当業者により開発されてもよい。特に24位を含むエピトープに配向された抗体も同様に、当業者により開発されてもよい。好適な実施形態において、S置換はロイシン以外のアミノ酸を表す。より好適な実施形態において、S置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸を表す。さらに好適な実施形態において、S置換はメチオニンまたはイソロイシンを表す。例えば、KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV(M/I)を含む配列のすべてまたは任意の一部に対する抗体は、当業者により開発されてもよい。
【0180】
S置換を有するガチョウレプリキンに対する抗体を使用し、配列に対する抗体を持つH5N1感染を治療するか、または鳥、動物、またはヒトにおけるH5N1の毒性感染を診断してもよい。
【0181】
現在までに試験されたすべてのレプリキン配列は、免疫原生特性を示している。マリグニンから得た16‐merレプリキンをウサギに注射したところ、16‐merレプリキンに特異的な抗体が産生された。米国特許6,242,578B1の例6および図9Aおよび9B、SARSコロナウイルスのヌクレオキャプシド、スパイクおよびエンベロープタンパク質において認められたSARSレプリキンを合成し、ウサギで試験した。免疫反応を定量した。例6を参照のこと。本発明者は、表1において「2004 H5N1 ベトナム、高い病原性」と標示されるH5N1「鳥インフルエンザ」レプリキンの29アミノ酸レプリキン骨格から41アミノ酸レプリキン配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHKKKKHKKKKKHK‐KLH指定のワクチンV120304U2を、2つのUTOPE単位(KKKKHK)をH5N1骨格のC末端に追加し、2つのUTOPE単位のC末端上で共役結合した追加のアジュバント(キーホールリンペットヘモシアニン(‐KLHと記す)を追加して設計した。100μgのワクチンV120304U2をウサギおよび鶏に皮下注射した。抗体反応をワクチン接種前および注射から1週間〜8週間後に測定した。抗体反応は1週間で認められ、ワクチン接種から3〜4週間後にピークに達した。ピーク抗体反応は、1:120,000の希釈〜1:240,000を越える希釈の範囲であった。当業者は、本明細書に記載のレプリキン配列およびレプリキン骨格配列それぞれに対する抗体を開発してもよい。
【0182】
レプリキンヌクレオチド配列
レプリキンDNAまたはRNAは、ウイルス、細菌またはその他のレプリキンコード化物質の感染に起因する疾患を診断するための使用法を多数有する可能性がある。例えば、レプリキンヌクレオチド配列は、原位置で加水分解アッセイを含む、生検組織または血液の加水分解アッセイ、例えばサザンまたはノーザン分析において使用し、例えば、組織標本または環境標本における特定有機体の存在を診断してもよい。また本発明は、関心の特定病原体に存在する特定レプリキンに特異的な抗体を含む、または特定のレプリキン、および任意に診断に必要な様々なバッファおよび/または試薬に対して特異的に加水分解する核酸分子(センスまたはアンチセンス)を含むキットについて考慮する。
【0183】
また、アンチセンスRNAおよびDNA分子、およびレプリキン‐またはレコグニン含有mRNAの翻訳を抑制するよう機能するリボザイムを含むオリゴリボヌクレオチド配列も本発明の範囲に含まれる。アンチセンスRNAおよびDNA分子およびリボザイムはどちらも、当該技術分野において知られる任意の方法で調整されてもよい。アンチセンス分子は、多様なベクターに組み込んで対象に送達することができる。熟練した医師であれば、最適な送達経路を決定できるが、一般にi.v.(静脈内)またはi.m.(筋肉内)送達が通常である。用量も容易に解明できる。
【0184】
特に、好適なアンチセンス核酸分子は、例えば、インフルエンザウイルスポリペプチドをコード化するmRNAに含まれるレプリキン配列に相補的である。本レプリキン配列は、7〜約50のアミノ酸から成り、(1)第2リジン残基から6〜10残基にある少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%のリジン残基と、を含む。より好ましくは、遺伝子のコード鎖に存在するレプリキン、またはインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質をコード化するmRNAに相補的なアンチセンス核酸分子である。本アンチセンス核酸分子は、6ヶ月から1年以上の期間保存されることが示された、および/またはその他のインフルエンザウイルス株のレプリキン濃度と比較して、高いレプリキン濃度を有することが示されたインフルエンザウイルスの株に存在するレプリキンをコード化するヌクレオチド配列に相補的である。レプリキン濃度の増加は、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは約1年、最も好ましくは約2〜3年以上かけて発生する。
【0185】
同様に、mRNAに対して相補的なアンチセンス核酸分子は、(1)第2リジン残基から6〜19残基にある少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%リジン残基と、を含む7〜約50アミノ酸のレプリキン配列を含むレプリキンをコード化するmRNAに相補的である。より好ましくは、遺伝子のコード鎖、またはウイルスのタンパク質をコード化するmRNAに対して相補的なアンチセンス核酸分子である。
【0186】
XI.コンピュータ
本発明は、コンピュータを使用してインフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法も提供する。レプリキンを含むインフルエンザ株の存在について、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を含むデータバンクをコンピュータにより走査することもできる。またインフルエンザウイルスの新生株を予測するための要件を満たすレプリキン骨格ペプチドは高い毒性を持つ。
【0187】
図2は、本発明の前述の実施形態と併用するために入手可能なコンピュータのブロック図である。コンピュータは、プロセッサ、入出力装置、および前述の実施形態の毒性予測方法を表す実装可能なプログラム指示を格納するメモリを含んでもよい。メモリはスタティックメモリ、揮発性メモリ、および/または非揮発性メモリを含んでもよい。スタティックメモリは、磁気的、または電気的あるいは光学的保存媒体で提供される従来の読み取り専用メモリ(「ROM」)であってもよい。揮発性メモリは、従来のランダムアクセスメモリ(「RAM」)であってもよく、またプロセッサ内にキャッシュとして集積されるか、または個別の集積回路としてプロセッサ外で提供されてもよい。非揮発性メモリは、電気的、磁気的または光学的保存媒体であってもよい。
【0188】
以下の例は本発明のみを説明することを意図し、本明細書で提供される本発明の全範囲を限定しない。当然のことながら、本発明の修正および変型は上述の教示により包含され、本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく添付の請求項の範囲に含まれる。
【0189】
実施例1
レプリキンの抽出、単離、および識別の過程、およびレプリキン含有有機体を標的、標識または破壊するためのレプリキンの使用
a)藻類
バミューダ水地から以下の藻類を収集し、同日に抽出するか、または−20℃で凍結し、次の日に抽出した。中性バッファにおける1gアリコート、例えば100ccの0.005Mリン酸バッファ溶液pH7(「リン酸バッファ」)中の藻類を冷室(0〜5℃)において15分間、ワーリングブレンダで均質化し、3000rpmで遠心分離して、上澄みを蒸発により濃縮し、冷たいリン酸バッファに対して透析することにより約15ml量を産生した。この抽出液の量を記録し、タンパク質分析用に得られたアリコートおよび残渣を分別して、1〜4のpK範囲を有するタンパク質留分を得た。
【0190】
分別の好適な方法は、以下のクロマトグラフィである。抽出溶液を冷室(4℃)において、0.005Mリン酸バッファで平衡されたDEAEセルロース(Cellex‐D)カラム2.5x11.0cm上で分別する。溶離溶媒の段階的な変化は、以下の溶液を用いて行った。
溶液1‐4.04gのNaH2P04および0.5gのNaH2P04を15リットルの蒸留水(0.005モル、pH7)に溶解する。
溶液2‐8.57gのNaH2P04を2,480mlの蒸留水に溶解する。
溶液3‐17.1gのNaH2P04を2,480mlの蒸留水に溶解する(0.05モル、pH4.7)。
溶液4‐59.65gのNaH2P04を2,470mlの蒸留水に溶解する(0.175モル)。
溶液5‐101.6gのNaH2P04を2,455mlの蒸留水に溶解する(pH4.3)。
溶液6‐340.2gのNaH2P04を2,465mlの蒸留水に溶解する(1.0モル、pX‐i4.1)。
溶液7‐283.63gの80%リン酸(H3P04)を2,460mlの蒸留水中で形成する(1.0モル、pH1.0)。
【0191】
6〜10ml量の抽出液をカラムに移し、溶液1と重ねた。また300mlの溶液1の容器を取り付け、重力によりカラム上に滴下させた。3mlアリコートの溶離剤を収集し、溶液1で除去されるすべてのタンパク質がカラムから除去されるまで、OD280におけるタンパク質含有量について分析した。次に溶液2をカラムに適用し、各溶液で除去可能なタンパク質がすべてカラムから除去されるまで、溶液3、4、5、6および7を連続して適用する。溶液7からの溶離剤を複合し、リン酸バッファに対して透析し、透析液および透析物に関するタンパク質含有量を特定し、両者をゲル電気永動により分析した。3,000〜25,000ダルトン分子量のペプチドまたはタンパク質の1つまたは2つのバンドを溶液7において取得する。例えば、溶液7においてにおいて示された藻類のCaulerpa mexicana、Laurencia obtura、Cladophexa prolifera、Sargassum natans、Caulerpa verticillata、Halimeda tuna、およびPenicillos capitatusはすべて、上述のような抽出および治療後に、感染のないこのモル重量領域において明らかなペプチドバンドを溶離する。これらの溶液7タンパク質またはそれらの溶離されたバンドを加水分解し、アミノ酸組成物を特定する。そのようにして得られたペプチドは、6%以上のリジン組成物を含むレプリキン前駆体である。次に、アミノ酸配列に対するこれらのレプリキンペプチド前駆体を特定し、米国特許6,242,578B1において詳述される加水分解および質量分析によりレプリキンを特定する。「3点認識」法により定義される基準を満たすものをレプリキンとして識別する。この手順は、イースト、細菌および任意の植物レプリキンにも適用できる。
【0192】
b)ウイルス
a)藻類の場合において上述のように、同一の抽出物およびカラムクロマトグラフィ分離法を使用し、ウイルス感染細胞におけるレプリキンを単離および識別した。
【0193】
c)腫瘍細胞の生体内および生体外組織培養
a)藻類の場合において上述されるような同一の抽出物およびカラムクロマトグラフィ分離法を使用し、腫瘍細胞におけるレプリキンを単離および識別する。例えば、悪性脳腫瘍から単離されたアストロシチン、組織培養中のグリオブラストーマ腫瘍細胞から単離されたマリグニン(Aglyco lOB)、組織培養中のMCF7哺乳類癌細胞、および組織培養中のP3Jリンフォーマ細胞のレプリキン前駆体であり、それぞれa)リジン含有率9.1%、6.7%、6.7%および6.5%で産生されたレプリキン前駆体において上述のように治療される。米国特許6,242,578B1の例10に記載のAglyco lOBの加水分解および質量分解により、アミノ酸配列ykagvaflhkkndiide、16‐merレプリキンが産生された。
【0194】
実施例2
レプリキンの診断的使用の例として、Aglyco lOBまたは16‐merレプリキンを抗原として使用し、診断的目的で血清中に存在するその対応する抗体の量を獲得および定量してもよいことは、米国特許6,242,578B1の図2、3、4および7に示される。
【0195】
標識、栄養または破壊の目的でレプリキンに結合する物質の産生に関する例として、ウサギに16‐merレプリキンを注射し、16‐merレプリキンに特異的な抗体を産生することは、米国特許6,242,578B1の例6および図9Aおよび9Bに示される。
【0196】
16‐merレプリキンに対する抗体を使用し、このレプリキンを含む特定細胞を標識するというレプリキンを標識する物質の使用例は、米国特許6,242,578B1の図8および例6に示される。
【0197】
16‐merレプリキンに対する抗体を使用し、このレプリキンを含む特定細胞を抑制または破壊するというレプリキンを破壊する物質の使用例は、米国特許6,242,578B1の図9に示される。
【0198】
実施例3
インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質の分離株またはノイラミニダーゼタンパク質の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。インフルエンザウイルスの分離株を取得し、インフルエンザ血球凝集素および/またはノイラミニダーゼタンパク質のアミノ酸配列を任意の当該技術分野で知られる方法、例えば血球凝集素またはノイラミニダーゼ遺伝子のシーケンシングおよびそこからタンパク質配列を派生させることにより取得する。新規レプリキンの存在、長期にわたるレプリキンの保存、および各分離株中のレプリキン濃度について、配列を走査する。レプリキン配列および濃度と、以前(約6ヶ月〜約3年前)に分離株から得られたアミノ酸配列との比較により、到来するインフルエンザシーズンにおいてインフルエンザの原因として最も可能性の高い株、および季節性インフルエンザペプチドワクチンまたは核酸ベースワクチンに対するベースを形成する株の出現の予測に使用するデータを提供する。濃度の増加の観察、特に約6ヶ月〜約3年以上にわたるインフルエンザウイルスの所定株におけるレプリキン濃度の段階的な増加は、将来のインフルエンザエピデミックまたはパンデミックの考えられる原因として、株の出現を予測する。
【0199】
新生株において認められたレプリキンに基づくペプチドワクチンまたは核酸ベースワクチンを生成する。長期にわたって血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ配列内のレプリキン配列の濃度が最も高く増加したインフルエンザウイルスの株として新生株を識別する。好ましくは、ペプチドまたは核酸ワクチンは、新生株に保存されることが観察された任意のレプリキン配列に基づくか、またはそれらを含む。保存レプリキンは、好ましくは血球凝集素またはノイラミニダーゼに約2年間および好ましくはそれ以上存在するレプリキン配列である。ワクチンは、新生株において識別されたレプリキン配列の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0200】
ワクチン産生の場合、効果的なワクチンに有用であると識別されたレプリキンペプチドまたはペプチドは、任意の方法で合成される。化学合成および分子生物学技術、クローンニング、宿主細胞における発現、およびその後の精製を含む。ペプチドは、好ましくは、それに対する治療的抗体反応を誘導するために決定された量で薬学的に許容しうるキャリアと混合されてもよい。一般に、用量は約0.1mg〜約10mgである。
【0201】
インフルエンザワクチンは、好ましくは「インフルエンザシーズン」の開始に先立って、それを必要とする患者に投与される。インフルエンザのシーズンは、一般に10月後半に始まり、4月後半まで続く。しかし、ワクチンは、1年の任意の時期に投与してもよい。インフルエンザワクチンは毎年1回投与されることが好ましく、現在までに観察されたレプリキン配列に基づき、および好ましくはインフルエンザウイルスの新生株において保存される。インフルエンザワクチンに含めるべき別の好適なレプリキンは、1年以上欠失した後、インフルエンザの株において再出現したことが示されたレプリキンである。
【0202】
実施例4
コロナウイルスヌクレオキャプシドの分離株、またはスパイク、あるいはエンベロープ、乃至はその他のタンパク質の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。
【0203】
実施例5
熱帯熱マラリア原虫抗原の分離株の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。
【0204】
実施例6
SARSコロナウイルスのヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質において認められた5つの短いSARSレプリキンのアミノ酸配列を合成し、ウサギで試験してSARSコロナウイルスにおけるレプリキン配列に対する免疫反応を試験した。以下のレプリキン配列を試験した:(1)2003年ヒトSARSヌクレオキャプシド(配列番号:_);(2)2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_);(3)2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_)、2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_);(4)2003年SARSエンベロープタンパク質(配列番号:_);および(5)2003年ヒトSARSヌクレオキャプシドタンパク質(配列番号:_)。各合成ペプチドをウサギに皮下注射した。試験したウサギは、1:100,000を越える希釈で結合された5つの配列それぞれに対して測定可能な特異的抗体を産生した。21アミノ酸SARSヌクレオキャプシドレプリキン抗体(配列番号:_)は、1:204,800を越える希釈で結合することが示された。様々な小型ペプチドを用いて、総タンパク質または天然痘ワクチンに見られるような数千のタンパク質または核酸により生じる望ましくない副作用を伴うことなく、強い免疫反応を得るという試みが他者により行われたが、失敗に終わったため、小型の合成レプリキン抗原が強い免疫反応を獲得する能力は、SARSワクチンの有効性にとって重要であることが示された。
【0205】
実施例7
41アミノ酸レプリキン配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHKKKKHKKKKKHK‐KLH指定ワクチンV120304U2は、本発明者により、表1において「2004年H5N1ベトナム、高い病原性」と標示されるH5N1「鳥インフルエンザ」レプリキンの29アミノ酸レプリキン骨格から、H5N1骨格のC末端上の2つのUTOPE単位(KKKKHK)および2つのUTOPE単位のC末端上で共有結合される追加のアジュバント(キーホールリンペットヘモシアニン(‐KLHと標示)を追加して設計された。100μgのワクチンV120304U2をウサギおよび鶏に皮下注射した。ワクチン接種前および注射後1週間から8週間の抗体反応を測定した。抗体反応は1週間目に認められ、ワクチン接種から3〜4週間後にピークに達した。ピーク抗体反応は、1:120,000の希釈から1:240,000を越える希釈の範囲であった。高結合96ウェルプレート上で固体相(0.1μg/100μl/ウェル)に結合されたペプチド‐GGG(ヤギγグロブリン)を用いて酵素免疫測定法(ELISA)により抗体タイターを特定した。まず血清を50倍に希釈した後、さらに2倍連続希釈法で希釈した。ELISAタイターの結果は、405nmの0.2において光学密度から得られる、および連続希釈曲線の非線形回帰分析から生じた推定希釈要素から判断した。西洋ワサビペルオキシダーゼ複合2次抗体およびABTS置換基を使用して検出を行った(ABTSは、Boehringer Mannheim.GmbHの登録商標である)。表4は、2羽の鶏および2匹のウサギから得られた結果を示す。ウサギD4500に関する試験から得られた個別のウェル結果を表5に示す。例6に報告された結果と併せて、合計6回のウサギまたは鶏における抗体反応に関するレプリキン配列の試験において、6つの配列すべてが測定可能な抗体反応を生じ、抗原を証明した。
【0206】
【表4】
【0207】
【表5】
【0208】
実施例8
インフルエンザの新生毒性株は、以下の方法を使用して予測してもよい。インフルエンザウイルスの毒性株におけるレプリキン骨格の存在について、インフルエンザウイルスの分離株の配列および疫学的データを、疫学的データと合わせて、または本明細書に記載のレプリキン骨格アルゴリズムに基づくコンピュータプログラムを使用して、視覚的走査シーケンスにより分析する。
【0209】
単離したインフルエンザウイルスペプチドは、単離したペプチドが16〜約30のアミノ酸を含み、さらに、
(1)末端リジン、および任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジン、および末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから約6〜約10アミノ酸内にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、を含む場合、レプリキン骨格ペプチドであると見なされてもよい。
【0210】
レプリキン骨格配列を含む単離した配列を、レプリキン骨格系のその他の部材と共有および置換された配列について調べ、疫学的毒性のレベルにより比較する。疫学的毒性は、発生の程度および/または宿主死亡率%、または当業者に知られる任意の方法で決定されてもよい。
【0211】
次に、個別のレプリキン骨格ペプチド内の個別の置換を、個別のレプリキン骨格ペプチドが単離した特定の分離株に関連する高い毒性の発生との関連について調べる。6ヶ月〜3年をかけて増加するレプリキン数に基づいて新生株であること、および代表的なレプリキン骨格ペプチドを含むことが示されたインフルエンザウイルスの現行株を調べ、初期新生株における高い毒性に関連する置換が、インフルエンザの新生株に存在するかどうかを判断する。高い毒性に関連する個別の置換が存在する場合、インフルエンザウイルスの新生株も高い毒性を有すると予測してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、レプリキンとして知られる一群のペプチド、およびそのようなペプチドをコード化する核酸に関する。レプリキンは、アミノ酸配列およびそれらのアミノ酸配列をコード化するヌクレオチド配列内で定義された構造特性を共有する。レプリキンペプチドは、ウイルスおよび有機体の急速な複製と関連付けられている。レプリキン骨格は、一群のレプリキンペプチドのサブセットである。レプリキン骨格は、エピデミックと関連しているインフルエンザウイルスの株において高度に保存され、急速な複製、毒性および宿主細胞の死亡率と関連付けられている。本発明者は今回、インフルエンザウイルス株に高度に保存されたレプリキンおよびレプリキン骨格におけるアミノ酸の置換パターン、および対応するヌクレオチドを識別した。識別された置換パターンは毒性の変化と関連し、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックの予測として有用である。
【0002】
本出願は、2006年5月30日提出の米国仮出願番号60/808,944の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。以下の出願は、参照により本明細書に追加で組み込まれる。2006年2月16日提出の米国出願番号11/355,120、2005年2月16日提出の米国仮出願番号60/653,083、2005年4月28日提出の米国出願番号11/116,203、2004年4月28日提出の米国仮出願番号60/565,847、2004年6月4日提出の米国出願番号10/860,050、2003年2月23日提出の米国仮出願60/531,686、2003年9月23日提出の60/504,958、および2003年6月6日提出の60/476,186、2002年7月8日提出の米国出願番号10/189,437、2002年3月26日提出の米国出願番号10/105,232、2001年7月9日提出の米国仮出願60/303,396および2001年3月27日提出の60/278,761の優先権を主張する2001年10月26日提出の米国出願番号09/984,057。
【背景技術】
【0003】
急速な複製は、特定の細菌、ウイルスおよび悪性腫瘍における毒性の特徴である。2001年10月26日提出の米国特許出願番号09/984,057は、レプリキンが一群の保存アミノ酸および核酸配列として、規定の配列構造を共有し、急速に複製する悪性腫瘍、細菌、ウイルス、その他有機体および複製関連タンパク質において広く検出され、急速な複製および毒性に関連する、と初めて説明した。レプリキンはアミノ酸配列またはアミノ酸配列をコード化する核酸配列であり、当該アミノ酸配列は、モチーフの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、およびモチーフの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基、第2リジン残基から6〜10残基に位置する少なくとも1つのリジン残基、少なくとも1つのヒスチジン残基および少なくとも6%のリジン残基を含むモチーフを含む7〜約50のアミノ酸を含む。
【0004】
プロテオミクスの観点から、レプリキンモチーフは、脳グリア芽腫悪性腫瘍に存在するグリオーマペプチド配列に基づくアルゴリズムに由来する。健康なヒトゲノムと比較して、グリオーマに特有のペプチドにおいて認められるレプリキンアルゴリズムは、この場合の複製において、保存構造および特定の機能に関連する幅広いタンパク質群の発見をもたらした。次にインフルエンザ、HIV、癌およびトマト縮葉ウイルスを含む異種疾患における、毒性の増加と、タンパク質内に存在するか、またはゲノムにコード化されるレプリキンペプチドの濃度の増加との関連が確立された。続いて、レプリキンの存在は、イースト、藻類、植物、マラリア、インフルエンザ、ジェミニ縮葉トマトウイルス、HIVおよび癌等の様々な有機体における急速な複製現象と関連付けられた。
【0005】
急速に複製する有機体におけるレプリキンの存在の検出に加えて、1)レプリキン濃度(タンパク質100アミノ酸あたりのレプリキン数またはゲノム内にコード化されるレプリキン数および、2)急速な複製に依存する特定の機能状態にあるレプリキン組成物が発見され、レプリキンは、それらが存在する有機体の複製率と量的および質的に関連するという発見の基礎を提供する。これらの機能を証明する例は、グリア芽腫細胞における急速な複製と毒性との間に見られる関係、インフルエンザウイルスにおけるレプリキンとインフルエンザパンデミックおよびエピデミックの予測との間に見られる関係、およびHIVにおけるレプリキン濃度と急速な複製との関係を含む。
【0006】
レプリキン配列、および特にレプリキン配列のモチーフを定義する要素は、急速に複製するウイルスおよび有機体、ならびに複製に関連するタンパク質において長期間保存されることが分かった。レプリキン配列は保存されるため、感染物質を検出するための一貫した標的を提供する。このレプリキンの保存は、レプリキン構造自体が、それが存在し保存されるウイルスおよび有機体の複製および生存において役割を有することも証明する。そのようにして、感染物質内で識別されたレプリキンは、感染物質に対する治療およびワクチンを開発するための良い標的である。
【0007】
レプリキン骨格は、レプリキンのサブセットである。レプリキン骨格ペプチドは、感染物質において高度に保存されることが示されており、また急速な複製、毒性および宿主細胞の死亡率と関連付けられている。レプリキン骨格ペプチドは、約16〜約30のアミノ酸を含むレプリキンペプチド配列であり、さらに(1)任意に末端リジンに直接隣接する追加のリジンを含む末端リジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジンから6〜10アミノ酸残基にあるリジンと、(4)少なくとも6%のリジンと、を含む。レプリキン骨格ペプチドは、時間、地理的空間、または疫学的発生を問わず、ウイルスまたは有機体の個別の分離株内で識別される、または遺伝子情報を共有する異なるウイルスまたは有機体において、例えば遺伝子再集合により識別される一連の保存されたレプリキンペプチドの一員である。
【0008】
上述のように、最初に発見されたレプリキンは、グリオーマレプリキンであり、マリグニンと称される多形性脳グリア芽腫細胞(グリオーマ)細胞タンパク質において識別された。米国特許番号7,189,800を参照のこと。グリオーマレプリキンが正常で健康なヒトゲノムに存在することは知られていなかった。グリオーマレプリキンの相同体を捜索するために考案されたアルゴリズムは、相同体が4,000以上のタンパク質配列に共通でないことを明らかにした。しかし驚くことに、相同体はすべての腫瘍ウイルスおよび藻類、植物、真菌、ウイルスおよび細菌の複製タンパク質において認められた。2002年7月8日提出の米国特許出願番号10/189,437を参照のこと。そのようにして、広範なウイルスおよび有機体にわたるレプリキンの存在は、複製機能および急速な複製と関連付けられた。
【0009】
急速に複製するウイルスおよび有機体ならびに複製関連タンパク質を広く検討した結果、ゲノム、タンパク質またはタンパク質フラグメントにおける100アミノ酸あたりのレプリキン数は、急速な複製の機能的現象と関連しうることが発見された。米国特許出願番号10/189,437を参照のこと。
【0010】
レプリキン濃度と急速な複製との関連は、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質のアミノ酸配列と、過去100年間のインフルエンザ流行に関する疫学的データとの比較においてさらに証明された。この比較により、1902年〜2001年の4つの主要なインフルエンザ株のうちの各1つずつ生じたインフルエンザエピデミックにおける株特異性インフルエンザレプリキンの濃度が4〜10倍増加したことが明らかになった。4つの主要なインフルエンザ株は、インフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2、および(A)H3N2である。次に、濃度の増加は、少なくとも1つの特異的レプリキン組成物が消失してから1年〜最長64年後に再出現すること、および新規の株特異性レプリキン組成物の出現によることが証明された。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0011】
レプリキンアミノ酸構造は、非レプリキンアミノ酸と同程度に変異または変化するわけではないことが認められた。レプリキン構造は、ウイルスおよび有機体において、またウイルスと有機体との間に時間を越えて保存される。この保存は、レプリキン構造が生存において重要性を有することを証明する。そのようにして、保存レプリキン構造は、生存に関連する新規の不変標的を提供し、それらは感染または悪性腫瘍の識別および治療に有用である。
【0012】
レプリキンは、細菌、ウイルス、植物、および悪性腫瘍を含む一連のウイルスおよび有機体に保存されることが示された。特定の構造は生存機能と極めて密接に関連するため、細菌、ウイルス、植物およびその他の有機体にわたって保存されるレプリキン構造を絶えず変化させることは明らかに不可能であり、これはレプリキンが生存機能と密接に関与することを示唆する。
【0013】
レプリキンが保存されるかどうか、または代わりに、広範な自然変異の影響を受けやすいかどうかの検討は、口蹄疫ウイルス(FMDV)の様々な分離株のタンパク質配列を走査することにより行った。これらウイルスのタンパク質における変異は、何十年もの間、世界的に十分立証されている。全体レプリキンおよび特定のレプリキンにおいて認められた各構成要素レプリキンアミノ酸残基の両方が存在するかについて、FMDV分離株のタンパク質配列を視診した。隣接アミノ酸で生じるように、長期にわたって広範な置換の影響を受けるのではなく、レプリキン構造を含むアミノ酸は、ほとんど置換されないか、またはまったく置換されないことが認められた。つまり、非レプリキン配列と比較して、レプリキン構造は保存された。同様の配列保存は、麦ユビキチン活性酵素E等の植物、およびHIVの分離株における転写活性剤(Tat)タンパク質で認められた。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0014】
任意の構造の保存は、その構造が攻撃および破壊または刺激のために安定した不変標的を提供するかどうかについて極めて重要である。構造が何らかの方法で有機体の基本的な生存機序に関係している場合、その構造は保存される傾向がある。可変構造は不定標的を提供する。これは、以前の構造に対して特異的に生成された抗体等のアタッカーを回避するための良い手段であり、そのため修飾形態に対しては有効でない。インフルエンザウイルスはこの手段を使用するため、例えば、以前のワクチンが現行の毒性ウイルスに対してあまり効果的でなくなる可能性がある。
【0015】
レプリキン構造の必須成分はヒスチジン(h)であり、これは酸化還元酵素における金属基と頻繁に結合すること、および複製に必要なエネルギー源を提供するというその有望な機能が知られている。長期にわたるレプリキン配列の再検討により、レプリキンにおけるヒスチジン構造は常に一定であることが示唆される。そのようにして、レプリキン構造は、ウイルスまたは有機体の複製の破壊についての一層魅力的な標的を保持する。
【0016】
レプリキン含有タンパク質も酸化還元機能、およびタンパク質の合成または延長、ならびに細胞の複製と関連付けられることが多い。金属ベースの酸化還元機能との関連、嫌気性複製中のレプリキン含有グリオーママリグニン濃度の増加、および低濃度(ピコグラム/細胞)の抗マリグニン抗体の細胞毒性は、すべてレプリキンが主要な呼吸性生存機能に関連することを示唆し、非レプリキンアミノ酸の変異特性の影響を受けにくい場合が多いことが発見された。米国特許出願番号10/860,050を参照のこと。
【0017】
急速に複製するウイルスおよび有機体において、複製の速度とウイルスまたは有機体に存在するレプリキン配列の濃度との関連が確立された。100アミノ酸中のレプリキン配列の濃度は、ウイルスまたは有機体のレプリキン数と称される。インフルエンザウイルスにおいて、レプリキン数の増加は、過去100年間のインフルエンザ流行と関連付けられている。
【0018】
例えば、血球凝集素タンパク質における株特異性レプリキン濃度と、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックとの量的関連が確立された(図6)。過去100年の3つのインフルエンザパンデミック、H1N1、H2N2、およびH3N2のそれぞれにおいて、パンデミックをレプリキン数の増加によりレトロスペクティブ(retrospectively)に予測し、関連付けた。図6〜8および10〜11。4度のH5N1エピデミック、すなわち1997年、2001年、および2003〜2004年(図11)および2006年のエピデミックのそれぞれにおいて、レプリキン数の増加は予測的であった。インフルエンザエピデミックと株特異性ウイルスタンパク質化学との関連については、これまで報告がなかった。
【0019】
株特異性エピデミックが発生する1〜3年前にインフルエンザ群において特異性レプリキン数が増加するという発見に類似して、コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質におけるレプリキン数の増加も2003年のSARSパンデミックをレトロスペクティブ(retrospectively)に予測することが分かった。コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、以下のように増加した。1999年3.1(±1.8)、2000年3.9(±1.2)、2001年3.9(±1.3)、および2002年5.1(±3.6)。このパンデミック前の増加は、レプリキンを豊富に含むコロナウイルスが2003年のSARSパンデミックに関与したという発見を支持する(図8を参照)。
【0020】
HIVウイルスにおけるレプリキン数も急速な複製および毒性と関連付けられている。HIV分離株において、HIVの増殖遅延型低タイター株(NSI、「Bru」はHIV感染の初期によく見られる)は、100アミノ酸につき1.1(+/−1.6)のレプリキン濃度を有することが分かった。一方、HIVの急速に増殖する高タイター株(S1、「Lai」はHIV感染の後期によく見られる)は、100アミノ酸残基につき6.8(+/−2.7)のレプリキン濃度を有する。さらに、中国および世界のその他多くの地域でトマトの収穫に打撃を与えたトマト縮葉ジェミニウイルスは、重複レプリキンのため高いレプリキン数を有することが示された。トマト葉巻ジェミニウイルスにおけるレプリキン数は、100アミノ酸につき最高20.7レプリキンまで達することが認められた。
【0021】
レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの株において最初に識別された一群のレプリキンのサブセットである。レプリキン骨格は、インフルエンザの毒性株において高度に保存される。レプリキンおよびレプリキン骨格は、急速な複製および毒性と関連付けられているため、現在はインフルエンザウイルスの新生株におけるレプリキンの存在および濃度を使用して、到来するインフルエンザエピデミックを予測する。当該技術分野において、高い毒性および宿主細胞の死亡率をもたらすレプリキンまたはレプリキン骨格内のわずかな変化を識別する方法が必要とされる。また当該技術分野において、インフルエンザの毒性の高い株の治療を目的とする保存レプリキンおよびレプリキン骨格配列も必要とされる。さらに当該技術分野において、インフルエンザの新生株におけるワクチンの調整およびその他の治療に有用なレプリキンおよびレプリキン骨格アミノ酸配列の必要性がある。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、16〜約30のアミノ酸を含み、さらに
(1)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、を含むインフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離したレプリキンペプチドを提供し、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン配列は、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列と比較して置換を含み、本置換はヒスチジンの置換ではなく、またインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
本置換は、インフルエンザウイルスの第3株に追加で存在し、インフルエンザウイルスの第3株における本置換の存在は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連し、インフルエンザウイルスの第3株は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に本末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび本末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含むレプリキン配列を含む。
【0023】
好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン配列における異なるアミノ酸残基で置換されるインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する。
【0024】
別の好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン配列における、ロイシン以外のアミノ酸残基で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は任意の疎水性アミノ酸、すなわちメチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンまたはバリンで置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸はメチオニンまたはイソロイシンで置換される。別の好適な実施形態において、単離したレプリキン配列は、H5N1インフルエンザウイルスから単離される。
【0025】
別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキン骨格ペプチドを含むワクチンを提供する。さらに別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキン骨格ペプチドに対する抗体を提供する。
【0026】
本発明は、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキンペプチドをさらに提供する。インフルエンザウイルスの第1株は、インフルエンザウイルスの新生株であり、単離したレプリキンペプチドは、7〜約50のアミノ酸を含み、
(1)単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基にある第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、を含むモチーフを識別するステップであって、インフルエンザウイルスの第2株における他は同一の配列と比較して、識別されたモチーフの末端残基間のレプリキンペプチド配列に位置するアミノ酸において置換が発生し、インフルエンザウイルスの第1株の識別されたモチーフの末端残基間における前記置換は、第2株と比較して、急速な複製および高い毒性に関連するステップと、識別されたモチーフを選択するステップと、識別されたモチーフを含むレプリキンペプチドを単離するステップと、により単離される。本発明は、インフルエンザのH5N1株から単離されたインフルエンザレプリキンペプチドをさらに提供する。
【0027】
別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキンペプチドを含むワクチンを提供する。さらに別の側面において、本発明は、本発明の単離したインフルエンザウイルスレプリキンペプチドに対する抗体を提供する。
【0028】
本発明は、本発明の単離したレプリキンペプチドも提供する。レプリキンペプチドは、約29のアミノ酸を含む。単離したレプリキンペプチドは、アミノ酸配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含んでもよく、[S]はロイシン以外の任意のアミノ酸であってもよい。好適な実施形態において、[S]は、ロイシン以外のアミノ酸であってもよい。別の好適な実施形態において、[S]は任意の疎水性アミノ酸であってもよく、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンまたはバリンを含む。別の好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。別の好適な実施形態において、単離したインフルエンザレプリキンペプチドは、インフルエンザのH5N1株から単離される。
【0029】
本発明は、上述の単離した配列のうちの任意の1つ以上、またはその抗原部分列、あるいは上述の単離した配列のいずれかに結合する抗体、乃至はその抗原部分列を含むワクチンも提供する。
【0030】
本発明は、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を提供する。本方法は、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチド、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチド、およびインフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドを含むステップと、
(2)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換される第3レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸を識別するステップと、
(3)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株が高い複製、毒性、または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(4)第2レプリキン骨格と比較して、第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基も、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格ペプチドにおいて置換されることを判断するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数と、インフルエンザウイルスの第1株の初期分離株のレプリキン数とを比較するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いことを判断するステップと、
(7)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップと、を含む。
【0031】
好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、第2レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基にある。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基である。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、ロイシン以外の疎水性アミノ酸である。別の好適な実施形態において、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、メチオニンまたはイソロイシンである。別の好適な実施形態において,第1、第2および第3レプリキン骨格は、29のアミノ酸を含む。さらに別の実施形態において、毒性の増加はパンデミックの兆候である。
【0032】
本発明は、インフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法も提供する。本方法は、インフルエンザウイルスの第1新生株からレプリキンペプチドを識別するステップであって、インフルエンザレプリキンペプチドは、7〜約50アミノの酸で構成され、
(1)単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのリジン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基に位置する第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、を含むモチーフを含み、
インフルエンザウイルスの第2株における同一配列と比較して、モチーフの末端残基間のアミノ酸において置換が発生したステップと、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株における同一配列の置換と、インフルエンザウイルスの第3株における急速な複製および高い毒性とを関連付けるステップと、インフルエンザウイルスの第1株の毒性の増加を予測するステップと、を含む。
【0033】
さらなる実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法は、コンピュータを使用して実施される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、様々な有機体におけるレプリキンの発生頻度を表す棒グラフを示す図である。
【0035】
【図2】図2は、コンピュータを使用し、インフルエンザウイルスの少なくとも3つの株のレプリキン骨格を比較することにより、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を実施するという本発明の一側面を表すボックス図である。
【0036】
【図3】図3は、レコグニン16‐merへの曝露に応答して産生される抗マリグニン抗体の量を示す棒グラフを示す図である。
【0037】
【図4A−E】図4Aは、通常の蛍光灯で撮影された血液塗抹標本の写真を示す図である。図4Bは、通常の蛍光灯で撮影された血液塗抹標本の写真を示す図であり、2つの白血病細胞の存在を示す。図4Cは、抗マリグニン抗体の存在下のグリオーマ細胞の緻密層の写真を示す図である。図4Dおよび図4Eは、抗マリグニン抗体の添加から30分および45分後に撮影された図4Cの細胞層の写真を示す図である。
【0038】
【図4F】図4Fは、抗マリグニン抗体による生体外の小細胞肺癌細胞の成長抑制を示す棒グラフを示す図である。
【0039】
【図5】図5は、良性または悪性乳房疾患患者の術前および術後の血清に存在する抗マリグニン抗体の量のプロットを示す図である。
【0040】
【図6】図6は、インフルエンザBおよびインフルエンザA株、H1N1の血球凝集素において認められたレプリキンの濃度を1918年から2001年まで年毎に示すグラフを示す図である。
【0041】
【図7】図7は、インフルエンザA株、H2N2およびH3N2、並びにその構成レプリキンにより定義される新生株、H3N2(R)の血球凝集素において観察されたレプリキン濃度を1950年から2001年まで年毎に示すグラフを示す図である。
【0042】
【図8】図8は、1917年〜2002年のコロナウイルスヌクレオキャプシドレプリキンを含む幾つかのウイルス株の1年あたりのレプリキン数を表すグラフを示す図である。
【0043】
【図9A】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【図9B】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【図9C】図9は、コロナウイルス分離株のヌクレオキャプシドについての1年あたりの平均レプリキン数を表すチャートを示す図である。
【0044】
【図10】図10は、H5N1血球凝集素の1年あたりのレプリキン数を表すチャートを示す図である。
【0045】
【図11】図11は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行するインフルエンザのH5N1株の血球凝集素タンパク質におけるレプリキンパターンの濃度の急激な増加について説明するグラフを示す図である。図11は、H5N1の血球凝集素タンパク質の増加するレプリキン濃度(「レプリキン数」)は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行したことを示す図である。H5N1インフルエンザにおいて、1995年〜1997年の株特異性レプリキン濃度(レプリキン数、平均値+/−標準偏差)の増加は、1997年の香港H5N1エピデミックに先行し(E1)、1999年〜2001年の増加は、2001年のエピデミックに先行し(E2)、および2002年〜2004年の増加は、2004年のエピデミックに先行した(E3)。1999年の減少は、香港におけるE1エピデミックを受けて鶏を大量に処分したことに伴って生じた。
【0046】
【図12A】図12は、異なるタンパク質において実質的に固定したアミノ酸位置で発生するレプリキン骨格を説明する表を示す図である。
【図12B】図12は、異なるタンパク質において実質的に固定したアミノ酸位置で発生するレプリキン骨格を説明する表を示す図である。
【0047】
【図13】図13は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1940年〜2001年)におけるインフルエンザBウイルスの血球凝集素に存在するレプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0048】
【図14A】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【図14B】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【図14C】図14は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1918年〜2000年)におけるインフルエンザウイルスのH1N1血球凝集素に存在するH1N1レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0049】
【図15】図15は、1957年〜2000年におけるインフルエンザH2N2ウイルスの血球凝集素に存在するレプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0050】
【図16】図16は、そのアミノ酸配列が入手可能な各年(1968年〜2000年)のインフルエンザウイルスのH3N2血球凝集素に存在するH3N2レプリキン配列を提供する表を示す図である。
【0051】
【図17A】図17は、インフルエンザウイルス、SARSウイルスおよびその他の急速に複製するウイルスならびに悪性腫瘍におけるレプリキン構造と、宿主細胞の死亡率の増加との関係を示す表を示す図である。
【図17B】図17は、インフルエンザウイルス、SARSウイルスおよびその他の急速に複製するウイルスならびに悪性腫瘍におけるレプリキン構造と、宿主細胞の死亡率の増加との関係を示す表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
本明細書で使用されるように、レプリキンペプチドまたはレプリキンタンパク質は、7〜約50のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、(1)第2リジン残基から6〜10アミノ酸残基に位置する少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%のリジン残基とを含む。同様に、レプリキン配列は、レプリキンペプチドをコード化する核酸配列である。
【0053】
本明細書で使用されるように、「レプリキン骨格」は、一連の保存レプリキンペプチドを意味し、各レプリキンペプチド配列は、約16〜約30のアミノ酸を含み、さらに(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジン残基から6〜10アミノ酸残基にあるリジン残基と、(4)少なくとも約6%のリジンとを含む。また「レプリキン骨格」は、一連の「レプリキン骨格」の個別部材または複数部材を意味する。
【0054】
本明細書で使用されるように、「初期発生」ウイルスまたは有機体は、ウイルスまたは有機体の別の標本が採取された日に先立って、自然源のウイルスまたは有機体から採取されたウイルスまたは有機体の標本である。「後期発生」ウイルスまたは有機体は、ウイルスまたは有機体の別の標本が採取された日の後に自然源のウイルスまたは有機体から採取されたウイルスまたは有機体の標本である。
【0055】
本明細書で使用されるように、「新生株」は、そのようなウイルスの株の早期発生分離株、またはそのようなウイルスのその他の株におけるレプリキン濃度と比較して、1つ以上のそのタンパク質配列において、高濃度または増加濃度のレプリキン配列を有するものとして識別されたウイルスの株を意味する。高濃度または増加濃度のレプリキンは、例えばインフルエンザウイルスにおいて、少なくとも約6ヶ月以上、また好ましくは少なくとも約1年以上、最も好ましくは少なくとも約3年以上の期間にわたって発生するが、はるかに短い期間であってもよい。
【0056】
本明細書に記載のレプリキンの「官能基誘導体」は、レプリキンのフラグメント、変型、類似物、または化学的誘導体であり、レプリキンに特異的な抗体との免疫学的交差反応性を少なくとも一部保持する。レプリキンペプチドのフラグメントは、任意の分子のサブセットを意味する。変型ペプチドは、直接化学合成、例えば、当該技術分野においてよく知られる方法を使用することにより形成されてもよい。非天然タンパク質に対するレプリキンの類似物は、実質的に総タンパク質またはそのフラグメントのいずれかに類似する。レプリキンの化学的誘導体は、追加の化学部分を含む。
【0057】
本明細書において使用されるように、所定のレプリキン内の総アミノ酸のパーセントとしての「相同性」は、レプリキン構造、例えばリジンおよびヒスチジンを「定義する」アミノ酸により維持される位置において定義するアミノ酸に重要であり、レプリキン構造内のその他のアミノ酸に対しては、以前の出願においてHIV TATタンパク質に関して示されるように、あまり重要でないか、またはまったく重要でない。保存は、これらの比較的不変の「定義」アミノ酸に関して定義される。「定義」アミノ酸以外における特定の変型または置換は、本出願の対象である。これらはランダムではなく、例えば、ここに示されるようにパンデミックと関連があると思われる。またこれまで考えられていたよりも重要である。所定の機能を用いて反復することにより、それらは基本的なレプリキン骨格のサブセットを表す。
【0058】
本明細書で使用されるように、「変異」はアミノ酸の置換により生じる有機体の構造および特性の変化を意味する。反対に「保存」、「保存された」または関連する用語は、本明細書で使用されるように、置換の欠失による特定アミノ酸の保存を意味する。
【0059】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、2つ以上のアミノ酸から成る化合物を意味する。ここで、1つのアミノ酸のカルボキシル基は別のアミノ酸のアミノ基と結合し、ペプチド結合を形成する。ペプチドという用語は、そのような化合物をコード化するアミノ酸配列の意味でも使用される。
【0060】
本明細書で使用されるように、「単離した」または「合成した」ペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、精製後、実質的に細胞物質、またはペプチドが由来する細胞、あるいは組織源からのその他の夾雑タンパク質またはペプチドを含まないペプチド、あるいは任意の方法で化学的に合成された場合は、実質的に化学的前駆体、またはその他の化学物質を含まないペプチド、乃至は組み換え遺伝子技術により合成された場合に実質的に夾雑ペプチドを含まないペプチドを意味する。単離は、生体内、生体外、および現在ではプロテオミクスソフトウェア法を使用してコンピュータで(in silico)行ってもよい。
【0061】
本明細書で使用されるように、「レプリキン数」または「レプリキン濃度」は、タンパク質または有機体における100アミノ酸あたりのレプリキン数を意味する。レプリキン数の低いウイルスまたは有機体の第2株、早期発生株または後期発生株と比較して、ウイルスまたは有機体の第1株におけるレプリキンが高い程、第1ウイルスまたは有機体のさらに急速な複製と関連することが分かった。
【0062】
I.インフルエンザエピデミックおよびパンデミックに関連する高いレプリキン数
過去100年間のインフルエンザウイルスタンパク質配列およびインフルエンザ疫学に関するわれわれの研究は、インフルエンザにおける複製および毒性の増加を予測する方法を提供する。インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列から得た歴史的および現在のデータの再検討から、1902年〜2001年のインフルエンザエピデミックに関連する株において、4つの主要なインフルエンザ株、すなわちインフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2,および(A)H3N2のうちの1つにおける株特異性インフルエンザレプリキン濃度が4倍〜10倍増加することが明らかになる。さらに、エピデミックに関連する血球凝集素タンパク質におけるレプリキン濃度の増加は、少なくとも1つの特異的レプリキン組成物が消失してから1年〜最長64年後に再出現すること、および新規の株特異性レプリキン組成物の出現に起因することがわかる。
【0063】
インフルエンザゲノムにおいてレプリキンが発見される前は、インフルエンザにおける血清学的血球凝集素および抗体分類のみが説明されていた。株特異性保存ペプチド配列については記載されていなかった。さらに、任意の株特異性ペプチド配列の濃度および組成物における変化が疫学的に立証されたエピデミックまたは急速な複製と関連するという記載はなかった。そのようにして、株特異性化学構造については、それを用いて、到来するインフルエンザシーズンに優勢となる株を予測することも、ワクチンの全体ウイルス株混合物を毎年考案することも知られていなかった。
【0064】
高度のレプリキン構造の保存が認められたことにより、同一の構造は100年間持続するか、または1年〜64年欠失した後に再出現しうるが、これまでインフルエンザタンパク質におけるアミノ酸のランダム置換に起因すると考えられた変化は、組織化されたレプリキンの保存過程による変化である可能性が高いことが示された。
【0065】
歴史的データの検討に照らして、インフルエンザにおけるレプリキン濃度の増加を監視することが、将来のエピデミックを予測するツールとして提供された。このツールは、多数の最近のインフルエンザ流行を有効に予測した。例えば、H3N2の歴史上最大となる、H3N2レプリキン濃度における近年の急激な増加(1997年〜2000年)および1968年の高死亡率H3N2パンデミック、および1975年と1977年の2度の高死亡率エピデミックにおいて最後に見られたが、20年〜25年間欠失した特異的レプリキン組成物の再出現を予測し、併せて2002年のH3N2エピデミックを予測した。
【0066】
インフルエンザB、H1N1、H2N2およびH3N3におけるパンデミック
特に注目すべきことに、試験したインフルエンザウイルスのほぼすべての個別株の血球凝集素タンパク質において、100アミノあたり少なくとも1つのレプリキンが存在することを認めた。アミノ酸配列データが入手可能な各年(1902年〜2001年)のインフルエンザウイルスの4つの一般的な株であるインフルエンザB、H1N1,H2N2、およびH3N2それぞれの分離株の血球凝集素タンパク質において発生することが認められたレプリキン配列を図13、14、15、および16に示す。
【0067】
各インフルエンザA株は、それぞれ1918年、1957年、および1968年におけるパンデミックに関与している。図6および7のデータは、試験した4つの一般的なインフルエンザウイルスのすべての分離株の各インフルエンザ血球凝集素タンパク質において、100アミノ酸あたり少なくとも1つのレプリキンが存在することを示し、複製の生存レベルの維持におけるレプリキンの機能を示唆する。1990年代において、H3N2株が減少する間、H3N2分離株の多くにはレプリキンが存在しなかったが、高濃度の新規レプリキンがH3N2分離株に出現した。これはH3N2(R)株の出現を定義する。図16を参照のこと。
【0068】
図6および図7に示されるレプリキン濃度の幾つかの特性は、4つのインフルエンザウイルス株すべてに共通すると思われる。第1に、濃度は長年にわたり循環し、上昇および下降の1サイクルは2〜30年の期間で生じる。この上昇および下降は、血球凝集素およびノイラミニダーゼ分類による個別のインフルエンザウイルス株の優性に関して知られている増大および減少と一致する。
【0069】
第2に、パンデミックに関与することが既に示されている各インフルエンザウイルス株のピークレプリキン濃度は、3つの年のパンデミックにそれぞれ特異的および個別に関連する。例えば、インフルエンザウイルス株H1N1の関与が示された1918年のパンデミックの場合に、H1N1におけるレプリキン濃度のピークが独立に生じた(P1)。H2N2の発現、関与が認められた1957年のパンデミックの場合に、H2N2におけるレプリキンのピーク濃度が生じた(P2)。またH3N2が発現し、パンデミックの原因であることが示された1968年のパンデミックの場合に、H3N2におけるレプリキンのピーク濃度が生じた(P3)。
【0070】
第3に、上記3度のパンデミックそれぞれの直後の年に、特異的レプリキン濃度が顕著に減少した。これは、恐らくそれぞれのパンデミックで生成された免疫が広く分布したことを反映していると考えられる。したがって、このパンデミック後の減少は、それが関与したパンデミック(P1)直後のH1N1に特異的であり、その時点におけるすべての株の一般的な特性ではない。インフルエンザBにおけるレプリキン濃度の増加は、H1N1におけるレプリキン濃度の減少と同時に発生した。例えば、1951年におけるEB1および1976年におけるEB2はどちらも死亡率が最も高いインフルエンザBエピデミックに関連した(Stuart‐Harris,et al.,Edward Arnold Ltd.(1985)。
【0071】
第4に、濃度の一次ピーク増を越える二次ピーク濃度は、3度のパンデミックそれぞれから15年後に発生した。この二次ピークは、H1N1「エピデミック」年における1918年のパンデミックから15年後(E1)、H2N2「エピデミック」年における1957年のパンデミックから8年後(E2)、およびH3N2「エピデミック」年における1968年のパンデミックから7年後(E3)のエピデミックに伴う。これらの特定レプリキンの二次ピーク濃度は、株からの回復を反映する場合がある。
【0072】
第5に、各株の特異的レプリキン濃度のピークは、1つまたはその他の両株のレプリキン濃度における減少に関連すると考えられる場合が多く、宿主細胞部位の株間の競合を示唆する。第6に、各株のレプリキン濃度は35年(H2N2)から60年(インフルエンザB)の期間をかけて減少するという明らかな全体的傾向がある。この減少は、インフルエンザワクチンが一般に使用される前の1940年〜1964年のインフルエンザBの場合に明らかであったため、ワクチンの影響によるものではない。インフルエンザBの場合において、レプリキンの減少後の回復が1965年以降に発生したことが分かるが、レプリキン濃度は1997年および2000年に再度減少した(図6)。これは、最近の分離株におけるインフルエンザBの発生が低いことと関連する。1978年〜1979年にピークを迎えたH1N1レプリキン濃度(図6)は、H1N1株の再出現および普及とともに、1996年に再度ピークに達し、H1N1エピデミックと一致した(図6)。1997年〜2000年の間にH1N1レプリキン濃度も減少し、これらの年に得られた分離株におけるH1N1株の存在が減少した。H2N2レプリキンの場合、35年の減少から回復しなかった(図7)。またこれは最近の分離株からH2N2が欠失していることに関連する。H3N2の場合、多くの分離株のレプリキン濃度は、1996年〜2000年までの期間にゼロまで落ちたが、その他のH3N2分離株は、レプリキン濃度の著しく急激な増加を示した。これは、H3N2の亜株の出現を示す。本明細書ではH3N2(R)と指定する。
【0073】
上述のように、図6および7は、レプリキン濃度がピークに達する前に1年〜3年の段階的な増加が認められることが多いことを示す。この段階的な増加は、レプリキンのピークと同時に起こるエピデミックの発生に先行する。したがって、特定の株の濃度における段階的な増加は、特定の株がエピデミックまたはパンデミックをもたらす最も有力な原因であることを示す。
【0074】
インフルエンザウイルスのH3N2(R)におけるレプリキン濃度は、1997年〜2000年に増加したことが認められた(図7)。結果として2002年に生じたエピデミックは、エピデミックに先行するレプリキン濃度の増加の予測値を示した。H3N2レプリキン濃度における3つの類似する以前のピークは、株が最初に発現した1968年のH3N2に基づくパンデミック(図7)、および1972年と1975年のH3N2に基づくエピデミックにおいて発生したことが見られた(図7)。これらのパンデミックおよびエピデミックは、それぞれ過度の死亡率と関連した(Ailing,et al.,Am J.Epidemiol.,113(1):30‐43(1981)。
【0075】
したがって、1997年〜2000年におけるH3N2レプリキンのH3N2(R)亜種の濃度における急速な上昇は、統計的に、到来しつつある深刻なエピデミックまたはパンデミックの初期警告を表した。H3N2エピデミックが2000年にロシアで発生したという記載(図7、E4)、および2001年にH3N2が世界で最も頻繁に単離されたインフルエンザウイルス株であるという2001年12月のCDCレポートにより、この予測が正しいことが示された(Morbidity and Mortality Weekly Reports(MMWR),Center for Disease Control;50(48):1084‐68(Dec.7,2001)。
【0076】
インフルエンザウイルスBの株におけるレプリキンの組成物
インフルエンザウイルスB株において識別された合計26のレプリキンのうち(図13)、以下10のレプリキンが、1940年〜2001年に試験された各インフルエンザB分離株に存在する。重複するレプリキン配列は個別にリストされる。
KSHFANLK(配列番号:_)
KSHFANLKGTK(配列番号:_)
KSHFANLKGTKTRGKLCPK(配列番号:_)
HEKYGGLNK(配列番号:_)
HEKYGGLNKSK(配列番号:_)
HEKYGGLNKSKPYYTGEHAK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVVKKTPLKLANGTK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVKTPLKLANGTKYRPPAK(配列番号:_)
HAKAIGNCPIWVKTPLKLANGTKYRPPAKLLK(配列番号:_)
【0077】
図13および14は、H1N1レプリキンと比較して、インフルエンザB血球凝集素におけるレプリキン構造がはるかに優れた安定性を持つようであることを示す。インフルエンザBは、任意のパンデミックに関与しておらず、動物または鳥類の保有宿主を有しないようである(Stuart‐Harris et al.,Edward Arnold Ltd.,London(1985))。
【0078】
インフルエンザの株における遺伝子浮動
インフルエンザパンデミックまたはエピデミックそれぞれの場合において、新規レプリキンが出現する。所定の分離株における所定の血球凝集素において、2つの同一レプリキンは認められていない。新規レプリキンの出現が、別の動物または鳥類層からの転移に対してどの程度の変異を表すかは不明である。一部の場合において、毎年1つ以上の元のレプリキン構造が保存されるが、同時に新規のレプリキンが出現する。例えば、インフルエンザウイルスB血球凝集素において、1919年〜2001年の間、常に5つのレプリキンが保存されたが、同一期間に26のレプリキンが出現および消失した(一部は数年間の欠失後に再発した)。特定のレプリキン構造が消失し、何年か後に再出現することは、レプリキンが新たな変異を通じてではなく、別のウイルス宿主細胞層から回帰することを示唆する。
【0079】
異なるインフルエンザ株の活性における変化は、順に、以下の2つのあまり知られていない過程のうちの1つにより達成される置換の生成物であるインフルエンザ血球凝集素における配列変化に関連すると考えられている。i)血球凝集素分子における一連の点変異の累積に起因すると考えられる抗原浮動またはii)変化が著しいため遺伝子再集合は、ヒトおよび非ヒト宿主細胞のウイルス間で発生すると仮定される抗原浮動。第1に、本データは、異なるインフルエンザ株の活性における変化が、非特異的配列変化に関連するのではなく、株特異性レプリキンの高い濃度およびエピデミックに関連する複製の株特異的増加に基づく、または関連する。
【0080】
さらに、どの配列変化が「浮動」または「転移」によるものか、また保存、保有宿主における保管、および再出現によるものかについて、考えられる識見に関するデータを評価した。データは、レプリキン濃度におけるエピデミック関連の増加は、血球凝集素あたりの既存のレプリキンの複製によるものではなく、少なくとも1つのレプリキン組成物が、消失してから1年〜最長59年後に再出現することによること、加えてA株に限っては、新規の株特異性レプリキン組成物の出現によることを示唆する(図13〜16)。そのため、1951および1977のインフルエンザBエピデミックにおけるレプリキン濃度の増加は、エピデミックの年における新規レプリキン組成物の出現に関連するのではなく、以前に発生したが消失していたレプリキン組成物の再出現に関連する(図13)。
【0081】
対照的に、A株の場合は、以前に消失していたウイルスレプリキンの再出現に加え、新規の組成物が出現する(例えば、1996年エピデミックの年のH1N1において、6つの以前のレプリキンが再出現したことに加え、10の新規組成物が出現した)。インフルエンザBではなく、A株のみがヒトでない動物および鳥類の保有宿主にアクセスできるため、完全に新規の組成物は、恐らく、レプリキンアルゴリズムの基本的要件である「3点認識」以外は新規組成物との類似点がないように思われる既存のヒトレプリキンの変異ではなく、ヒトでない保有宿主に由来すると考えられる(図13〜17)。Bと比較して多産性の高いH1N1、およびパンデミックはB株ではなく3つのA株のみによって産生されたという事実は、どちらも非ヒトウイルス保有宿主から新規のレプリキン組成物を受け取るヒトA株の能力機能であってもよい。
【0082】
1年だけ出現した後に消失し、現在まで再出現していない幾つかのレプリキンがある(図13〜16)。また1年〜最長81年間消失した後、同一のレプリキン配列が再出現した他のレプリキンもある。キーレプリキン「k」および「h」アミノ酸、およびそれらの間のスペースは、以下の株特異性レプリキン:10のインフルエンザB、H1N1の単一レプリキン、およびH3N2の単一レプリキンに関して、および欠失後の同一レプリキンの再出現に関して図13〜16に示されるように、特定のレプリキンが一定に存在する間、長年にわたり保存される。
【0083】
残りの血球凝集素配列のレプリキン構造内外におけるその他アミノ酸の置換または置換活性が顕著であるにもかかわらず、インフルエンザレプリキンヒスチジン(h)はまったく置換されないようであり、リジン(k)はほとんど置換されない。この保存の例は、以下において見られる。1918年〜2000年の間一定であったH1N1レプリキン「hp(v/i)tigecpkyv(r/k)(s/t)(t/a)k」(配列番号:_)、1975年〜1998年の間一定であったH3N2レプリキン「hcd(g/q)f(q,r)nekwdlf(v/i)er(s/t)k」(配列番号:_)、および1975年に最初に出現し、25年間消失した後、2000年に再出現したH3N2レプリキン「hqn(s/e)(e/q)g(t/s)g(q/y)aad(l/q)kstq(a/n)a(i/l)d(q/g)I(n/t)(g/n)k,(l/v)n(r/s)vi(e/c)k」(配列番号:_)。多くのアミノ酸が置換されたが、最大約50アミノ酸において、2つのリジン、離れた6〜10の残基、1つのヒスチジン、最小6%のリジンから成る基本的レプリキン構造は保存された。
【0084】
完全にランダムな置換では、これらH1N1およびH3N2レプリキンが持続することも、1902〜2001年までインフルエンザBにおいて10のレプリキン構造が持続することも、1919年の18‐merレプリキンが74年間欠失した後1993年に再出現することも不可能であったと考えられる。ランダムな種の置換ではなく、その不変性は、秩序的に制御された過程、または少なくともキーレプリキン残基が何らかの方法で固定または結合されるような保護、例えば、リジンは恐らく核酸と結合され、ヒスチジンは恐らく呼吸性の酸化還元酵素と結合されること示唆する。この保存を制御する機序は現時点で不明である。
【0085】
II.保存および遺伝子浮動はワクチン開発のための初期警告機序を提供する
H1N1レプリキンの場合において、1918年パンデミックに関連するP1ピークに存在する2つのレプリキンは、12の新規レプリキンを含む1933年の回復E1ピークには存在しなかった。したがって、一定して保存されるレプリキンは、単独または併用のいずれもワクチンに対する最適な選択である。しかし、1年の濃度増加を伴う最近出現したレプリキンであっても、さらに1年以上持続および増加することが多く、濃度のピークおよびエピデミックに達するため、合成レプリキンを用いたワクチン接種の初期警告および時期を提供する(例えば、図6の1990年初頭のH1N1を参照のこと。例えば、図10および図11のH5N1 1995年〜2002年も参照)。
【0086】
図7、8、10および11におけるデータは、インフルエンザタンパク質配列におけるレプリキンの存在および濃度と、インフルエンザのパンデミックおよびエピデミックの発生との直接的な関係を示す。したがって、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列に関して、レプリキンの存在および濃度を分析することにより、インフルエンザパンデミックおよび/またはエピデミックの予測、およびインフルエンザワクチン製剤の標的を提供する。このデータを再度参照して、これまで株特異性化学構造を用いて、到来するインフルエンザのシーズンに優勢となる株を予測することも、ワクチンの全体ウイルス株の混合物を毎年考案することも知られていなかったことは注目に値する。
【0087】
株特異性エピデミックが発生する1年〜3年前のインフルエンザ群における株特異性レプリキン数の発見と同様に、コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数の増加も識別されている。コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、以下のように増加した:1999年3.1(±1.8)、2000年3.9(±1.2)、2001年3.9(±1.3)、および2002年5.1(±3.6)。このパンデミック前の増加は、コロナウイルスが2003年のSARSパンデミックに関与したという発見を支持する(図8および表3を参照)。
【0088】
したがって、レプリキン構造およびレプリキン数を監視することにより、1917年〜1918年のガチョウレプリキンおよびインフルエンザおよびコロナウイルス株の両方に見られるようなその修飾型および付随レプリキンに対する合成株特異性ワクチン予防接種および抗体治療を開発する手段が提供される。
【0089】
図9は、1962年〜2003年に収集された分離株上でそのタンパク質配列を入手できるヌクレオキャプシドコロナウイルスタンパク質の自動レプリキン分析を表す。個別のタンパク質はそれぞれ受入番号で表し、レプリキンの存在について分析する。自動レプリキン分析の一部として、レプリキン数(100アミノ酸あたりのレプリキン数)を自動的に計算する。各年の総レプリキン数について、1年あたりの平均(±標準偏差(S.D.))レプリキン数を自動的に計算する。エピデミック前に、特定ウイルス株(コロナウイルス)における特定タンパク質(ヌクレオキャプシドタンパク質)の複製が増加していることを早期に警告するこの例は、インフルエンザのエピデミックおよびパンデミックに先行するインフルエンザウイルスの株において見られる増加と比較できる(図6、7、10および11)。1999年〜2002年のレプリキン数の上昇は、2002年末に出現し、2003年へと続いたSARSコロナウイルスのパンデミックに一致するとみられる場合がある。図8は、1917年〜2002年のコロナウイルスヌクレオチドキャプシドレプリキンを含む幾つかのウイルス株のレプリキン数を示すグラフである。
【0090】
III.インフルエンザにおけるレプリキン
株が最初に出現し、その年にパンデミックをもたらした1918年から2000年までの配列が入手可能な各H1N1分離株において、レプリキン「hp(v/i)tigecpkyv‐(r/k)(s/t)(t/a)k」が1つのみ存在する。(図14)(「(v/i)」は、アミノ酸vまたはiが異なる年において同一位置に存在することを示す。)H1N1は持続性レプリキンを1つのみ含むが、H1N1は、インフルエンザBより多産性であると思われる。H1N1に関して、82年間に95の異なるレプリキン構造が存在するのに対し、インフルエンザB分離株に関しては、62年間に存在する異なるレプリキンは31に留まる(図13および14)。多くの新規レプリキン構造における増加は、エピデミックの年に発生し(図13〜16)、総レプリキン濃度の増加に関連する(図6、7、10および11)。
【0091】
インフルエンザH2N2レプリキン:インフルエンザH2N2は、1957年のヒトパンデミックに関与した。1957年の株において識別された20レプリキンのうち3つは、H2N2分離株のそれぞれに保存され、1995年までPubMedでの試験用に入手可能であった(図15)。
ha(k/q/m)(d/n)ilekthngk(配列番号:_)
ha(k/q/m)(d/n)ilekthngklc(k/r)(配列番号:_)
kgsnyp(v/i)ak(g/r)synntsgeqmliiwq(v/i)h(配列番号:_)
【0092】
しかしH1N1とは反対に、1961年に始まったH2N2では、13の追加レプリキンが発見されたにすぎなかった。このような少数の新規レプリキン発現は、H2N2レプリキンの濃度および分離株におけるH2N2の発現が長年にわたって減少したことに関連する(図7)。
【0093】
インフルエンザH3N2は、1968年のヒトパンデミックに関与した。1968年に出現した5つのレプリキンは1977年以降消失したが、1990年代に再度出現した(図16)。22年間持続したレプリキン構造はhcd(g/q)f(q/r)nekwdlf(v/i)er(s/t)kのみであり、これは1977年に初めて出現し、1998年まで持続した。1990年代半ばの12の新規H3N2レプリキンの出現は(図16)、同時期のレプリキン濃度の増加、および最近の分離株におけるH3N2株の流行に関連し、それら分離株の一部から全レプリキンの同時消失を伴う(図7)。これは、新規の亜株H3N2(R)の出現を示唆する。2003年11月および12月におけるH3N2新規株(Fujian)のエピデミックは、最初に2001年7月9日提出の米国仮出願番号60/303,396において行われた予測を裏付けた。
【0094】
図6、7、10および11は、インフルエンザエピデミックおよびパンデミックが、インフルエンザウイルスにおけるレプリキン濃度の増加と関連し、これは少なくとも1つのレプリキンが、消失してから1年〜59年後に再発するためであることを示す。またA株に限って、新規の株特異性レプリキン組成物の発生が見られる(図14〜16、図6および7におけるH5N1のエピデミック前の新規レプリキン数の増加も参照)。単一のタンパク質内で個別のレプリキンが反復することによるレプリキン濃度の増加は、インフルエンザウイルスでは発生しないようであるが、その他の有機体において見られる。
【0095】
IV.ガチョウレプリキン骨格
1917年にガチョウから単離されたインフルエンザウイルスの血球凝集素におけるレプリキン(ガチョウレプリキンと命名)は、翌年の1918年パンデミックに関与したインフルエンザのH1N1株において出現し、以下のようにたった2つの置換を持つことを発見した:kkg(t/s)sypklsksy(t/v)nnkgkevlvlwgvhh。表1は、複数のマイナー置換およびその他のインフルエンザ株への明らかな転移があったにもかかわらず、インフルエンザ1917年ガチョウレプリキン(GR)がその後85年間、実質的に保存されたことを示す。われわれは、1917年インフルエンザGRが、H1N1(1918年のパンデミック)、H2N2(1957〜58年のパンデミック)、H3N2(1968年のパンデミック、2000年の中国およびロシアにおけるエピデミック、2003年のFujian株エピデミック)およびH5N1(1997年中国でのエピデミック)において表れるいくつかのインフルエンザ株の間で明らかな移動性を示すことを発見した。1997年に、その構造はH1N2において、その1918年構造KKGSSYPKLSKSYVNNKGKEVLVLWGVHHに正確に回復された。
【0096】
高い毒性および宿主細胞の死亡率に関連しうるレプリキン配列は、インフルエンザウイルスの新生株を予測、識別および治療するための標的を提供する。表1は、ガチョウレプリキンを示す。ガチョウレプリキンおよびその相同体は、以下の90年間のインフルエンザ株に関するデータにおいて、インフルエンザウイルスの新生株における毒性の予測に有用であることが示された。ガチョウレプリキンおよびその相同体をひとまとめにして考えると、それらはレプリキン骨格のアルゴリズムに適合し、一連の保存レプリキンペプチドを必要とする。各レプリキンペプチド配列は、約16〜約30のアミノ酸を含み、さらに(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、(3)別のリジン残基から6〜約10アミノ酸残基にあるリジン残基と、(4)少なくとも約6%のリジンと、を含む。
【0097】
V.インフルエンザにおける高い毒性と関連するレプリキン骨格配列
高い毒性または宿主細胞の死亡率を示したインフルエンザ分離株から得た1つ以上のレプリキン骨格配列における置換に同一のアミノ酸に置換を有するインフルエンザ分離株におけるレプリキン骨格配列は、インフルエンザウイルスの新生株における標的および治療として有用である。したがって、本発明は、16〜約30のアミノ酸を含み、
(1)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、をさらに含む、インフルエンザウイルスの第1株から単離したレプリキン骨格ペプチドを提供し、
インフルエンザウイルスの第1株の単離したレプリキン骨格配列は、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン骨格配列と比較して、アミノ酸置換を含み、アミノ酸置換はヒスチジン置換ではなく、またインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン骨格配列は、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
インフルエンザウイルスの第3株のレプリキン骨格配列には追加で置換が存在し、
(1)16〜約30のアミノ酸と、
(2)末端リジンおよび任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(3)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(4)別のリジンから6〜約10アミノ酸にあるリジンと、
(5)少なくとも6%のリジンと、を含み、
インフルエンザウイルスの第3株における置換の存在は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して、複製、毒性、または宿主細胞の増加に関連する。
【0098】
好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン配列における異なるアミノ酸残基で置換されるインフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する。
【0099】
別の好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列におけるアミノ酸残基は、インフルエンザウイルスの第1株の単離したレプリキン配列におけるロイシン以外のアミノ酸で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸で置換される。別の好適な実施形態において、アミノ酸は、メチオニンまたはイソロイシンで置換される。別の好適な実施形態において、単離したレプリキン配列は、H5N1インフルエンザウイルスから単離される。
【0100】
本発明者は、100年間の疫学的データを使用し、インフルエンザウイルスにおけるレプリキン濃度がウイルスの毒性と関連することを立証した。また同一の疫学的データを使用し、特定の高度に保存されたレプリキン配列の構造と、毒性およびエピデミックとを関連付けた。同一の100年間の疫学的データにおいて、長期にわたって高度に保存されたレプリキン配列における個別の配列変化を再検討した結果、レトロスペクティブ(retrospectively)およびプロスペクティブ(prospective)な予測能力が示された。
【0101】
ガチョウレプリキン骨格におけるレプリキン骨格も同様に、ガチョウレプリキン相同体を含むインフルエンザウイルスの新生株を治療するための標的を提供することが示された。例えば、ベトナムにおける病原性の高いH5N1の2004年株(表1において「2004年 H5N1 ベトナム、高い病原性」と標識)の29アミノ酸レプリキン骨格ペプチドは、UTOPEとして知られる短い合成レプリキン配列およびキーホールリンペットヘモシアニンアジュバントで相補され、ウサギおよび鶏に皮下注射した場合に、強い免疫反応を提供した。例7を参照のこと。
【0102】
表1は、2006年までのガチョウレプリキンおよびその相同体を提供する。表1における構造は、アミノ末端における一定長の一定リジン、およびカルボキシル末端における一定ヒスチジン残基は、異なる株において固定骨格で数十年にわたり保存されることを示す。ガチョウレプリキンの相同体は、1917年〜2006年における1918年、1957年、および1968年の3度のパンデミックにそれぞれ関与する株のH1N1、H2N2およびH3N2に出現し、さらにH1N2、H7N7、H5N2およびH5N1間の置換を含む。ガチョウレプリキンにおいて発生した特定の置換も、ランダムではなく選択的であり、長年にわたり保持される傾向がある。そのため、一般にアミノ酸置換はランダムに生じると仮定されるが、実際は、インフルエンザにおけるすべての置換がランダムとは限らないようである。数十年にわたるこのレプリキン保存により、合成インフルエンザワクチンの産生が可能になり、急速かつ安価に事前調整することができ、また1年以上有効である。
【0103】
そのため、合成インフルエンザワクチンの標的は、インフルエンザウイルスにおける保存レプリキン骨格である。レプリキン骨格は、約16〜約30のアミノ酸配列を含む一連の保存ペプチドを含み、
(1)末端リジンおよび末端リジンに直接隣接する残基部分にある任意のリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接する残基部分にある別のヒスチジンと、
(3)少なくとも1つの別のリジンから約6〜約10アミノ酸残基内にある少なくとも1つのリジンと、
(4)16〜約30のアミノ酸ペプチド内にある少なくとも約6%のリジンと、をさらに含む。またレプリキン骨格ペプチドは、一連のレプリキン骨格の個別部材または複数部材を意味する。
【0104】
合成インフルエンザワクチンの非限定的かつ好適な標的は、約29アミノ酸および末端リジンに直接隣接するリジンを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格である。別の好適な標的において、レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基にあるロイシンは、別のアミノ酸で置換される。別の好適な標的において、ロイシンの置換は、疎水性アミノ酸を用いて行われる。別の好適な標的において、ロイシンの置換は、メチオニンまたはイソロイシンを用いて行われる。
【0105】
合成インフルエンザワクチンのあまり好適でない標的は、約29アミノ酸の第1ペプチド、および
(1)末端リジンおよび末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジンおよび末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、を含み、
(3)任意のその他のリジンから6〜10アミノ酸残基内のリジンを含まないインフルエンザウイルスの第1株における外骨格であってもよい。第1株の早期発生標本またはウイルスの別株は、約29のアミノ酸を含む。
【0106】
表1において、ガチョウレプリキンおよびその相同体の経歴は、1917年から現在の鳥類H5N1ウイルスの流行まで追跡される。表1は、インフルエンザのウイルス株におけるガチョウレプリキンの「骨格」相同性の保存を示す。
【0107】
表1は、その他のインフルエンザレプリキンにおけるガチョウレプリキンおよびその相同体のタンパク質構造の存在の経歴を、1年毎またはそれより短期間毎に示す。表1は、それら相同体におけるアミノ酸置換の経歴およびレプリキンの定義およびレプリキンにより供給される急速な複製機能に不可欠なレプリキン構造の特定アミノ酸の保存をさらに示す。
【表1】
【0108】
表1の検討は、アミノ酸のランダム置換が1917年から現在までのインフルエンザ悪性株において発生した場合、ガチョウレプリキンの特定フレームワークアミノ酸は、エピデミックが発生した株において毎年保存されないことを示す。しかし、ランダム置換の結果とは反対に、インフルエンザの毒性株は、毎年一貫して、レプリキンを定義する位置に保存アミノ酸を含む。つまり、レプリキンを定義するアミノ酸の1つ、例えばリジンまたはヒスチジンにおいて置換が発生する場合、レプリキンの定義は喪失する。それにもかかわらず、レプリキン配列は85年間以上にわたって保存される。したがって、特定アミノ酸が長年にわたって保存されることから、置換は完全にランダムであるとは言えない。レプリキンの定義に重要でないアミノ酸(例えばリジンまたはヒスチジン以外のアミノ酸)において置換が発生するという事実は、株の病原性におけるレプリキンの重要性を示す。
【0109】
さらに表1から、置換が発生する場合、レプリキン骨格の特定の明らかに好適な位置において発生することが分かることに注目する。表1は、1位、3〜24位および26〜27位における置換の再発を示す。さらに、置換はこれらの位置全体で発生するが、リジンは第2リジン(これらの毒性株で置換されていない)から6〜10アミノ酸の位置に存在し続ける。
【0110】
29のアミノ酸ストレッチ内のリジン位置に置換がある場合であっても、1957年に見られるように、11位のKが10位に移動すると、その新規位置は2005年まで維持された。YP,AY、N(15位)およびLVLWGを有し、ほぼ例外なくレプリキン骨格の相同構造を保存する。
【0111】
中国(安徽省)におけるH5N1の2006年株のレプリキン骨格において追加のKが出現したことに注目することが重要である。この追加のKの存在は、レプリキン骨格におけるレプリキン数の増加を知らせる。2006年中国(安徽省)株は、(以下で説明されるように)6.6のレプリキン数を有する。レプリキン数6.6は、H5N1株に関してこれまで認められた中で最高値であり、インフルエンザの全体A株において、1918年のパンデミックをもたらしたインフルエンザ株のレプリキン数にのみ匹敵する。この最初の2006年報告が反復および維持される場合、2004年および2005年のカウント4.5および4.0がそれぞれ実質的に増加することを示し、H5N1「鳥インフルエンザ」のエピデミックの継続または増加を予測する。
【0112】
レプリキン骨格配列を含むインフルエンザウイルスの初期毒性株を再検討し、レプリキン骨格が非レプリキン配列に分解されたが、レプリキン骨格の骨格構造に対する識別可能な相同性を維持する場合の複製速度および毒性に対する影響を判断した。レプリキン骨格における内部KおよびHが欠失することにより(末端におけるそれらとは異なり)、例えば、29のアミノ酸における2または3未満の含有レプリキンを表さないか、またはもはや完全にレプリキンでないが、例えば、非限定的に骨格の29アミノ酸KKXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXHH等の外部「シェル」を保存することは、分離株のウイルス配列に見られることが多く、高いレプリキン数および毒性は、典型的にエピデミックまたは流行の終端時に失われる。このレプリキン骨格の「破壊」(または不完全な合成)は、レプリキン数における減少に関する場合と同様に、流行またはエピデミックの衰弱を示す別の指標として有用であり、内部KおよびHを伴う完全に代表的な骨格の出現のように、より多くのレプリキン、すなわち高いレプリキン数を産生し、その出現は通常レプリキン数が3を越える場合、またそれに近づく場合に発生する。これは、流行またはエピデミックの来たる出現の指標として有用である。この実際の使用に加えて、このシェル現象は、以前に認識されなかったレプリキン骨格は、ウイルスの重要な構造的要素であり、流行およびエピデミックにおけるウイルスの「成功」と密接に関連する機能を有することを証明する別の「原理の証拠」である。
【0113】
例えば、レプリキン骨格を有する特定インフルエンザ種の早期発生標本は、後に以下のように変化する。
1)29アミノ酸長が保存される。
2)最初2つのアミノ酸位置(1および2)が保存される。例えば、KK。
3)最後2つのアミノ酸位置(28および29)が保存される。例えば、HH。
4)しかし、KKから6〜10アミノ酸にKはもはや存在しない(レプリキンの定義を必要とする)。
そのようにして、骨格はもはやレプリキン骨格ではなく、骨格エクソスケルトンとなる。レプリキン骨格は、高いレプリキン数およびエピデミックの発生に関連するが、骨格エクソスケルトンはウイルスの休眠およびエピデミックの減少または終了に関連する。したがって、骨格エクソスケルトンは、レプリキン骨格および特定のウイルス流行が減少している場合に残基として残る変性構造であるため、この目的において有用な診断構造であると思われる。これは、1)抗体または小さい阻害性RNA等の抗急速複製の標的、および2)抗ウイルスワクチンのベースとしてのレプリキン骨格の実態および使用を確認する。
【0114】
レプリキン骨格の完全性および保存は、好ましくは2つのリジンで開始し、2つのヒスチジンで終端する固定29アミノ酸配列が存在するという事実により理解されてもよい。次に好ましくは、骨格は16〜約30アミノ酸長である。
【0115】
アミノ酸置換
骨格構造を破壊しないレプリキン骨格における置換は、特定のアミノ酸に限定されないようである。しかし、特定のアミノ酸はペプチドの構造および機能に対して類似の影響を及ぼす共通の化学特性を共有するため、同様のアミノ酸を持つレプリキン配列に対して同様の構造的影響を共有する1つのアミノ酸の置換は、異なる基からの別のアミノ酸によるアミノ酸の置換より可能性が高いと想定される。
【0116】
アミノ酸は、酸性、塩基性、親水性、および疎水性4つのカテゴリに分類されてもよい。特定の基におけるアミノ酸は、異なる基のアミノ酸と比較して、その基内のアミノ酸と置換される可能性が高いと想定される。酸性側鎖を有する酸基は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。塩基性側鎖を有する塩基は、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンを含む。極性中立側鎖を有する中性の親水性基は、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トレオニン、セリンおよびシステインを含む。非極性中立側鎖を有する疎水性基は、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、アラニン、グリシン、プロリン、バリンおよびロイシンを含む。そのようにして、レプリキン骨格配列における特定アミノ酸の好適な置換は、本発明において想定されるように、同一のアミノ酸基内の置換、つまり置換アミノ酸である。例えば、ロイシンは、グルタミン酸よりもメチオニンにより置換される可能性が高く、メチオニンの置換は、ペプチドの特定部分の一部機能を破壊する可能性が低いと想定される。
【0117】
レプリキン骨格のH5N1インフルエンザ保存
幾つかの国における現行の高死亡率H5N1「鳥インフルエンザ」の流行は、延滞インフルエンザパンデミックの第1段階を表すかもしれないというという懸念がある。1つの報告(Ungchusak K et al.N Eng J Med 2005 Jan 27;352(4):323‐5)は、推定されるH5N1の最初のヒトからヒトへの転移において、「ウイルス遺伝子のシーケンシングは、血球凝集素のレセプタ結合部位における変化またはウイルスのその他のキー特性を識別しなかった。8つのウイルス遺伝子セグメントの配列は、すべてタイにおける最近の鳥類分離株から得られたその他のH5N1配列と密接にクラスタ化したことを示唆する」。系統発生解析は、「ヒトインフルエンザウイルスとの再集合」の証拠がないため、H5N1は新規の変型ではないことを示唆した。しかし、われわれはここで、過去2度のH5N1エピデミックにおいて変化せず、実際に1959年以降保存されていた特定のH5N1タンパク質配列の部位における最近の3つの変化を報告する。これまで、ウイルスエピデミックおよび休眠に関連するタンパク質化学は存在しなかった。われわれは、過去100年の3度のインフルエンザパンデミック、H1N1、H2N2およびH3N2のそれぞれが、リジンおよびヒスチジンを豊富に含み、急速複製に関連するウイルスにおける特定ペプチド類、つまりレプリキンの濃度の増加により、およびそれに関連してレトロスペクティブ(retrospectively)に予測されたことを発見した。1997年、2001年、および2003年〜2004年の3度のH5N1エピデミックそれぞれにおいて、レプリキンが予測的であることを発見した(図11)。それらが分離株に出現する各年において、図11に示されるように100アミノ酸あたりのレプリキンを数えることができ、また表1に示されるようにそれらの配列を分析および比較することができる。レプリキンの分析は、入手可能な配列情報におけるレプリキン濃度を測定する目的で、手動または本発明の好適な側面においてソフトウエアを使用して自動に行われてもよい。
【0118】
図11は、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックの流行に先立つインフルエンザのH5N1株の血球凝集素タンパク質におけるレプリキンパターンの濃度の急速増加を示すグラフである。図11を検討すると、H5N1の血球凝集素タンパク質において増加するレプリキン濃度(「レプリキン数」)が、3度の「鳥インフルエンザ」エピデミックに先行したことが分かる。例えば、1995年〜1997年のレプリキン数(標準+/−SD)における増加は、1997年の香港H5N1エピデミックに先行した(E1)。1999年〜2001年のレプリキン数の増加は、2001年のエピデミックに先行した(E2)。および2002年〜2004年のレプリキン数の増加は、2004年のエピデミックに先行した(E3)。1999年の減少は、香港におけるE1エピデミックを受けて鶏を大量に処理したことで発生した。
【0119】
ウイルスタンパク質におけるレプリキンの総数に加えて、長年にわたる各レプリキンの構造は有益な情報であり、抗体および小RNA等のワクチンおよびその他治療に対する標的を提供する。上述のように、表1は、1917年にインフルエンザに感染したガチョウにおいて最初に認められたレプリキン(ガチョウレプリキン)を示す。アミノ末端における一定長の不変リジン、およびカルボキシ末端におけるヒスチジン残基は、数十年にわたって固定骨格の異なる株に保存された。ガチョウレプリキンの相同体は、1917年〜2006年の株(1918年、1957年、1968年の3度のパンデミックに関与した株であるH1N1、H2N2およびH3N2を含む)において出現し、H1N2、H7N7、H5N2およびH5N1間のさらなる置換を伴う。ガチョウレプリキンにおいて発生した特定の置換でさえも、ランダムではなく選択的であり、長年にわたり保持される傾向がある。そのため、一般にアミノ酸置換はランダムに発生すると仮定されるが、インフルエンザでは、すべての置換が実際にランダムであるとは限らないと思われる。数十年にわたるこのレプリキン保存により、合成インフルエンザワクチンを急速かつ安価に事前調整でき、それらは1年以上有効である。
【0120】
1997年のH5N1香港エピデミックにおいて、ヒト死亡率は約27%であった。2004において、アジアでH5N1に感染したことが報告された52人のうち、約70%が死亡した。最近では、ベトナムにおける11症例のうち9例が、2004年12月28日〜2005年1月27日までに死亡した。ウイルスの毒性は増加したと考えられるが、ヒトからヒトへのさらなる感染の拡大に必要であると考えられる任意の変化は、まだ発生していないと考えられている。しかし、われわれは、2004年ベトナム、タイおよび中国で分離株から得られたガチョウレプリキン骨格の3つのH5N1レプリキンアミノ酸残基の18位、24位、および28位において最近の置換を認めた(表1を参照)。24位における置換は、1959年H5N1の出現以降発生していないが、その他の株、1957年のH2N2および1968年のH3N2により発生し、合わせて200万人を越える死者をもたらした過去2度のインフルエンザパンデミック、およびH7N7により生じた最近の毒性エピデミックに存在した(表1を参照)。これらは考えられる危険の兆候にすぎないが、図11に示される上昇レプリキン数と併せて、置換に関するこれらのデータおよびそのようなレプリキンデータとパンデミックとの過去の関連は、ウイルスがヒトからヒトに広まる可能性は低いという系統発生解析から得られるような安心感を与えない。
【0121】
表1は、インフルエンザのウイルス株におけるレプリキン骨格の完全性を示す。上述のように、レプリキン骨格がエクソスケルトン骨格に分解されると、病原性が減少すると考えられる。したがって、一般的に2つのリジンで開始し、2つのヒスチジンで終端する固定29アミノ酸配列が存在するという事実から、レプリキン骨格の完全性および保存が見られる。
【0122】
本発明の側面は、ウイルスの病原性または複製速度、エピデミックまたはパンデミックを追跡するか、またはエピデミックあるいはパンデミックの発生を予測するレプリキン構造および機能の組み合わせである。この組み合わせの例は、1918年の株およびH5N1の現行H5N1株等のインフルエンザ株におけるレプリキン数の増加をカウントに使用される本発明のレプリキンアルゴリズムの能力である。1918年インフルエンザパンデミックおよび「鳥インフルエンザ」の現行の流行におけるレプリキン数は、本発明に従う、および本発明により可能となる典型的側面の予測能力を示す。
【0123】
インドネシアおよびベトナムにおいてヒトH5N1株から発見された単一置換は、以前のH5N1株には存在しないが、最近の1957年(H2N2)および1968年(H3N2)における2度の致死的ヒトパンデミックに歴史的に存在する
上記表1を再検討したところ、1957年の高死亡率インフルエンザパンデミックに関与するインフルエンザウイルスのH2N2株、および1968年の高死亡率インフルエンザパンデミックに関与するインフルエンザのH3N2株は、ガチョウレプリキン骨格におけるアミノ酸番号24に単一のアミノ酸置換を含むことが明らかになった。表1を参照のこと。本出願人は、インドネシアおよびベトナムでヒトにおいて発見されたH5N1ウイルスタンパク質における最近の単一アミノ酸置換もガチョウレプリキン骨格におけるアミノ酸番号24に置換を有することを発見した。インドネシアおよびベトナムで最近ヒトにおいて単離されたH5N1ガチョウレプリキンペプチドは、KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV(M/I)WGIHHであり、H5N1のインドネシア株は24位にイソロイシンを含み、H5N1のベトナム株は24位にメチオニンを含む。上述のように、本出願人は、アミノ酸24における置換が高い毒性およびヒトパンデミックを予測することを教授する。
【0124】
ヒトにおいて最近単離されたH5N1のインドネシア株は、H5N1のガチョウレプリキンにおけるアミノ酸番号24での置換(本明細書では「S」置換と指定する)が以前のどのH5N1株にも存在しないが、1957年(H2N2)および1968年(H3N2)の過去2度の高死亡率インフルエンザパンデミックには存在したため重要である。1957年および1968年のパンデミックは、数百万人の死をもたらした。24位におけるアミノ酸置換は、1人が死亡した最近のH7N7の流行(幸いなことに短期間)においても同様に存在した。表1を参照のこと。それにもかかわらず、H5N1ガチョウレプリキンにおける24位のアミノ酸置換は、1959年から現在(2006年)までに分析および記録されたすべてのH5N1から欠失している。
【0125】
国立医学図書館(Pubmed)の1200万を越えるエントリを見直した結果、アミノ酸配列におけるS置換を検出し、FluForecast(登録商標)ソフトウエアを使用して、Sが長年にわたって発生したことを追跡した(www.Replikins.comを参照)。
【0126】
S置換は、鶏からの最近のH5N1分離株では認められなかった。代わりに、高い死亡率を伴うヒト症例から得られたH5N1分離株において最近認められたにすぎない。S置換は、2004年ベトナムおよび2006年インドネシアにおいてヒトから得た分離株で観察された。表1を参照のこと。ベトナムおよびインドネシアのヒトにおける疫学的証拠は、H5N1ガチョウレプリキンにおけるS置換が、対ヒト「クラスタ」と関連することを示唆する。ここで、鳥からヒトへの転移は確立されておらず、またヒト同士の転移は除外されている。S置換は、H5N1のヒト同士の転移が、これまでのところまれではあるが、既に発生している可能性があることを示唆する。
【0127】
世界保健機構(WHO)および米国疾病対策予防センター(CDC)のスポークスパーソンは、最近、高い死亡率を持つH5N1のインドネシア人症例から得たH5N1分離株において「著しく」心配な配列変化は見られていないと発表した。著しい配列変化は、ヒトからヒトへの転移が生じる前に必要であると当業者は考える。そのため、「著しい」配列変化はヒトパンデミックの必要条件であると考えられる。S置換と対ヒト「クラスタ」との関連は、WHOおよびCDCにより予測された「著しい」配列が、上述のようなガチョウレプリキン骨格内の単一アミノ酸変化において予期せず検出されうることを示唆する。
【0128】
ガチョウレプリキンウイルスペプチドは、H1N1、H2N2、H2N3、およびH5N1において、88年間(1917年から現在まで)高度に保存されることが発見されたという事実にもかかわらず、驚くべき変異、つまりS変異がガチョウレプリキンにおいて特定の保存位置、24位において識別された。上記で確立されたように、タンパク質におけるレプリキン濃度の増加は、急速複製およびエピデミックと関連している。例えば、図6、7、8、10および11を参照のこと。上昇する「レプリキン数」(100アミノ酸あたりのレプリキン数)は、各主要なインフルエンザエピデミック、過去100年における最近の3度のインフルエンザパンデミック、および1997年〜現在までの過去3度のH5N1エピデミックと量的に関連し、予測的であることが多いことが分かった。図6、7、8、10および11を参照のこと。
【0129】
S置換等の単一置換は、単独でパンデミックの唯一の原因とはならない。それにもかかわらず、S置換の発生は、1957年および1968年における過去2度の高死亡率パンデミックにおけるマーカである。さらに、鶏においては(現在まで)発生していないが、ヒトのみにおけるH5N1でのS置換の発生は、高い総レプリキン数および死亡率を伴い、H5N1が実際にヒトパンデミックに至る経路となりうることを示唆する。
【0130】
ヒトパンデミックが到来する可能性が高いことを示唆する証拠は、レプリキン数および高い死亡率と併せて、S置換を識別する前に行われた安心な評価とは顕著に異なる。そのため、S置換の詳細な機能は完全に知られてはいないが、この証拠は、S置換の疫学的機能が高いレプリキン数と併せて明らかであることを示唆する。
【0131】
H5N1から完全なパンデミックが実体化するかどうか、またそれがいつであるかを最終的に決定する要因は依然として不明である。次のパンデミックの因子となりうるH5N1の最終置換構造に関する情報がこれまで欠如していたため、適切なワクチンを産生する試みが遅れている。本明細書に開示されるレプリキンペプチド構造およびガチョウレプリキン骨格は、到来の可能性があるパンデミックに対するワクチンの産生について必要な指示を提供する。
【0132】
標的としてのS置換レプリキン骨格
インフルエンザウイルスの新生株におけるレプリキン骨格での予測的置換により提供される合成ワクチンのターゲットに関する非限定例は、表1の配列標示「1957 H2N2ヒトインフルエンザパンデミック」、「1968 H3N2ヒトインフルエンザパンデミック」、「1979〜2003 H7N7インフルエンザ」、「2004 H5N1(ベトナム、高い病原性)」および「2006 H5N1インドネシア(高い病原性)」で提供される。上述のように、ガチョウレプリキンおよび表1に開示されるその他すべての配列と比較して、ロイシンを1957年および1968年パンデミック株におけるイソロイシンで置換すること、およびロイシンをH7N7の1979年〜2003年株におけるイソロイシンで置換することは、ロイシンが2004年ベトナムのH5N1新生株におけるメチオニン、および2006年インドネシアのH5N1新生株におけるイソロイシンで最近置換されたことにより連続的な毒性の増加がもたらされるという予測的重要性を提供する。ベトナムおよびインドネシアにおける高い死亡率は、ヒトからヒトに転移した幾つかの証拠とともに、これらの置換株において毒性が実際に増加したことを示唆する。したがって、これらの株の置換レプリキン骨格ペプチドは、合成ワクチンの開発に役立つレプリキン骨格ペプチドの非限定的な好適実施形態である。本発明の別の非限定実施形態は、2004年ベトナムから単離された置換H5N1および2006年インドネシアから単離された置換H5N1のレプリキン骨格ペプチドであり、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基で置換された末端ヒスチジンから5番目の位置にある。より好適な実施形態において、レプリキン骨格ペプチドは、末端ヒスチジンから5番目の位置で、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸と置換される。
【0133】
本発明の別の実施形態において、1957年H2N2パンデミック株の骨格ペプチド、1968年H3N2パンデミック株、および1979年〜2003年H7N7株は、これらの新生株に対する合成ワクチンの相同性標的も提供する。
【0134】
したがって、本発明は、本発明の単離したレプリキンペプチドも提供する。本レプリキンペプチドは、約29のアミノ酸を含む。単離したレプリキンペプチドは、アミノ酸配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含んでもよく、[S]はインフルエンザウイルスの第2株と比較して、置換される任意のアミノ酸であるか、その他はほぼ同一のレプリキンペプチド配列を含んでもよい。好適な実施形態において、[S]は任意の疎水性アミノ酸であってもよい。さらに好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。さらに好適な実施形態において、上記で具体化された配列は、インフルエンザのH5N1株から単離される。
【0135】
VI.レプリキン骨格を使用したインフルエンザ毒性の増加を予測する方法
長期にわたるレプリキン骨格の歴史的データは、インフルエンザウイルスの新生株の毒性を予測するツールを提供する。インフルエンザウイルスの株において、レプリキン数が長期にわたって増加している場合、それはインフルエンザウイルスの新生株であり、毒性の増加を予想できる。インフルエンザウイルスの新生株が、歴史的に毒性が高いインフルエンザウイルスの株における毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連するレプリキン骨格ペプチドにアミノ酸置換を含む場合、新生株は毒性の増加を有すると予測してもよい。
【0136】
したがって本発明は、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法を提供する。本方法は、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、レプリキン骨格は、インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチドと、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチドと、インフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドと、を含むステップと、
(2)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換された第3レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸を識別するステップと、
(3)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第3株が、高い複製、毒性、または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(4)第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基は、第2レプリキン骨格と比較して、第1レプリキン骨格ペプチドにおけるアミノ酸残基と同一の残基位置にあることを判断するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数と、インフルエンザウイルスの第1株の初期分離株のレプリキン数とを比較するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いことを判断するステップと、
(7)インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップと、を含む。
【0137】
例えば、上述および表1に開示されるように、H2N2およびH3N2の1957年および1968年パンデミック株においてイソロイシンを持つ、ならびにH7N7の1979年〜2003年株においてイソロイシンを持つ開示レプリキン骨格におけるガチョウレプリキンおよびその相同体におけるロイシンの置換は、2004年ベトナムでのH5N1の新生株におけるメチオニンとのロイシンの最近の置換、および2006年インドネシアでのH5N1の新生株におけるイソロイシンとの置換が継続的な毒性の増加をもたらすという予測重要性を提供する。高い死亡率およびヒト同士の感染が結合して起こることが証明されたことからも分かるように、ベトナムおよびインドネシア株において毒性は明らかに増加した。
【0138】
したがって、本発明の方法の非限定的な好適実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン骨格ペプチドは、任意のその他のアミノ酸の場合、ロイシンの置換を受けた。より好適な実施形態において、置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸で行われた。さらに好適な実施形態において、置換はメチオニンまたはイソロイシンで行われた。一層好適な実施形態において、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン骨格ペプチドにおける置換は、レプリキン骨格ペプチドの24位、または代替として末端ヒスチジンから5番目の残基において行われた。
【0139】
本発明は、パンデミックを予測する方法も提供する。本方法は、ウイルスDNAを単離およびシーケンシングするステップと、コード化されたアミノ酸配列に関して、結果として生じる配列を走査するステップと、アミノ酸配列に関して本明細書に記載される予測方法を行うステップと、を含む。核酸配列は、アミノ酸の配列をコード化する場合、アミノ酸配列と相同である。本発明の方法の好適な実施形態において、パンデミックを予測する方法は、結果として生じる核酸配列を走査するステップと、ガチョウレプリキンの24位における変化を特定するステップと、H5N1のガチョウレプリキンにおけるS置換の存在に基づいて、将来のパンデミックを予測するステップとを含む。
【0140】
上述の非限定的方法は、発見された任意のレプリキン骨格または以下に開示される任意のレプリキン骨格を採用してもよい。
【0141】
VII.レプリキンを使用してインフルエンザ毒性の増加を予測する方法
本発明は、長期にわたるレプリキン配列の変化、地理、または疫学的事象を監視することにより、インフルエンザウイルスの株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する非限定的な方法も提供する。インフルエンザウイルスの株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法は、
(1)インフルエンザウイルスの第1株を識別するステップであって、インフルエンザウイルスの株のレプリキン数は、インフルエンザウイルスの第1株の早期発生分離株のレプリキン数より大きいステップと、
(2)インフルエンザウイルスの第1株の第1レプリキンペプチドを識別するステップと、
(3)第1レプリキンペプチドと相同であるが、アミノ酸の場合、アミノ酸置換はヒスチジン残基において行われない、インフルエンザウイルスの第2株における第2レプリキンペプチドを識別するステップと、
(4)第2レプリキンペプチドと相同であるが、アミノ酸置換は第1レプリキンペプチドにおけるアミノ酸置換と同位置で行われる、インフルエンザウイルスの第3株における第3レプリキンペプチドを識別するステップと、
(5)インフルエンザウイルスの第3株が、インフルエンザウイルスの第2株において高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すことを判断するステップと、
(6)インフルエンザウイルスの第1株が、インフルエンザウイルスの第2株において高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すことを予測するステップと、を含む。
【0142】
本方法の好適な実施形態において、アミノ酸置換はリジン残基またはヒスチジン残基において行われない。レプリキンアルゴリズムは、第1、第2および第3レプリキンペプチドのそれぞれにおいて満たされる必要がある。
【0143】
本発明は、インフルエンザのH5N1株から単離したインフルエンザレプリキンペプチドをさらに提供する。
【0144】
VIII.エビ白点ウイルスにおける相同性骨格配列
本発明者は、レプリキンについて現在までに調査されたすべてのその他ウイルスおよび有機体と比較して(マラリアを除く)、白点エビウイルスが異常に高いレプリキン数を有することをさらに発見した。レプリキンは、真菌、イースト、ウイルス、細菌、藻類において急速な複製を基本的に伴うことが示されているが、本発明者は、藻類以外の海洋有機体におけるレプリキンの存在を始めて示した。また藻類についても、レプリキンの存在が急速な蔓延に関連する。エビにおいて、最初は東洋諸国で、また現在では西半球の国々でも白点ウイルスがエビの捕獲量に何百万ドルもの損害を与えている。現時点で有効な予防または治療はない。レプリキン高死亡率海洋ウイルス性疾患のその他の例は、コイ等の魚、サケの出血性疾患において見られ、海洋生態系および疾患に広まる可能性がある。
【0145】
エビ白点症候群ウイルス(WSSV)のヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキンの反復配列の存在は、異常に高いレプリキン数103.8の要因である。このウイルスレプリキン数は、例えば、通常1未満〜最大5または7の範囲であるインフルエンザウイルスのレプリキン数よりはるかに高く、熱帯熱マラリア原虫(マラリア)に見られる(今までのところ)記録的なレプリキン数111のみに匹敵する。興味深いことに、エビ白点症候群の有機体はウイルスであり、熱帯熱マラリア原虫の場合はトリパノソームであるが、エビ(白点ウイルス)またはヒト(マラリア)にかかわらず、どちらも赤血球、異常な宿主細胞におけるそれらの繁殖サイクルの重要部分を費やし、電撃性の急速に複製する疾患であって宿主細胞の高い死亡率を伴い、またどちらも高いレプリキン数をそのような記録的に高い値まで増加する同一の方法、つまりレプリキン反復およびレプリキン重複を使用すると考えられる。
【0146】
本発明者は、ウイルスのレプリキン骨格部分における毒性インフルエンザウイルスと白点ウイルスとの関係も確立した。これら2つのウイルスの関係はこれまで示唆されていない。広範な置換が存在するが、エビ白点症候群ウイルスの幾つかの短鎖レプリキンに関する本出願人の発見は、特に長さおよびキーリジン(k)ならびにヒスチジン(h)残基(固定骨格またはレプリキン骨格)に関して、インフルエンザウイルスレプリキン配列に対する著しい相同性を示し、両ウイルス群において、同様のレプリキン産生機序が使用されることを示唆する。
【表2】
【0147】
さらに、ブタおよび鳥類を含むがそれらに限定されない多くの種は、ヒトインフルエンザ感染の動物「保有宿主」を提供することが知られているため、現在、エビウイルス等の海洋形態を検査することができ、ブタインフルエンザおよび鳥インフルエンザ等の流行に対する初期警告診断的利点を有する。一部インフルエンザウイルスの類似性が種の間で認められており、これらウイルスの種間転移が知られているが、ウイルスの活性を図る定量方法はこれまでにない。これまで、異なる種に移動する可能性のある保有宿主の活性の増加を評価すること、よって事前の警告を出すことは不可能であった。現在、各種におけるレプリキンの活性について、ウイルス複製速度の増加およびその他の種に転移する可能性のある種におけるエピデミックの出現の証拠を常に監視することができる。
【0148】
このデータは、独自の歴史およびその宿主細胞の急速複製および疾患の共有機能を有する新種のペプチドとしてレプリキンをさらに指示する。そのエビ宿主細胞に対する高い死亡率を伴う白点症候群ウイルスは、現在そのレプリキンをウイルスレプリキンの初期形態、または類似形態学的分岐として評価した。いずれかの場合において、インフルエンザウイルスの場合のように、鳥および動物レプリキンの保有宿主として良好に作用する。エビにおけるこれらレプリキン発見を診断および予防に使用することは、インフルエンザおよびレプリキンを含むその他の有機体に対する診断および予防に使用する場合と同様に行う。
【0149】
IX.1918年パンデミックに遡るSARSウイルスおよびH3N2‐FUJIANインフルエンザウイルスレプリキンにおける相同配列
特定のSARSウイルスレプリキンペプチドは、ガチョウレプリキンと相同であるレプリキン骨格配列との相同体を含むインフルエンザウイルス分離株の幾つかの株におけるペプチドと相同体を共有する。相同体は、2,000万人もの死をもたらした1918年インフルエンザパンデミックの株における配列に遡る2006年毒性インフルエンザ株から拡大する。
【0150】
SARSコロナウイルスは、2002年〜2003年インフルエンザシーズンにおいて最初に出現した。インフルエンザGRおよびコロナウイルスレプリキン(または一部の不明な共有前駆体)から得たSARSレプリキンの2002年における二重複製期限は、すべて2002年に発生した以下の事象により示唆される。1)85年間で初めての縮合は、GR‐H1N2レプリキン配列が29から28アミノ酸になったことに見られる(表3)(現行エピデミックにおける29〜27アミノ酸から得たH3N2Fujianにおいて同様の縮合が見られた(表3))。2)GR‐H1N2のレプリキン数は、H1N2から移動するGRに一致して顕著な減少を示した。3)コロナウイルスヌクレオキャプシドタンパク質のレプリキン数は、顕著な増加を示した。4)以下のモチーフを含むレプリキンを持つSARSコロナウイルスが2002年〜2003年に出現した。GR 1918およびGR‐H1N2 2001に既に見られる「kkg」および「k‐k」;インフルエンザGR‐H1N2 2001に見られる「k‐kk、「kk」および「kl」;鳥類気管支炎コロナウイルスレプリキンに見られる「kk」;およびブタエピデミック下痢コロナウイルスのレプリキンに見られる「kk‐kk‐k」、「k‐k」、「kk」、「kl」および「kt」(表3)。
【表3】
【0151】
1917年ガチョウレプリキンの存在を含む、近年の増加的に高いレプリキン数のピークは、現在H1N2(表3)において、1917年のレプリキン数に近づいており、来るべきパンデミックの警告となりうる。SARSウイルスおよびH3N2‐Fujianウイルスは、高い死亡率に関連すると思われるガチョウレプリキン(図17)の短いレプリキン派生物の現行キャリアであるため、既に始まっている可能性がある。
【0152】
ガチョウレプリキンは少なくとも85年の歴史を持ち、インフルエンザおよびSARSのA株の大部分またはすべてに関与するため、レプリキン自体およびその構成要素は、パナマ型保護に対する保存されたワクチン候補である。7〜21アミノ酸長、ガチョウと比較してリジンおよびヒスチジン%の豊富な縮合型短鎖SARSレプリキンは、29アミノ酸長のガチョウレプリキンの死亡率(2.5%)と比較して、SARSの高い死亡率(10〜55%)と関連して発生した。SARSにおける長鎖レプリキンとここで混合された短鎖レプリキンは、高い死亡率に関与する可能性がある。これは、エボラおよび天然痘ウイルスならびに炭疽菌等のその他の有機体のレプリキンの場合も同様である(表3)。これらの短鎖SARSレプリキンは、一層高い未治療死亡率に関連する天然痘、炭疽菌、およびエボラ等のその他有機体の短鎖レプリキンと驚くべき相同性を示した(表3)。インフルエンザレプリキンを用いたSARSコロナウイルス相同体におけるレプリキンの検出により、ワクチンの小型SARS抗原の合成を可能にした。
【0153】
短鎖合成ワクチンは、はるかに短期間で安価に産生することができ、一般に現行の全体ウイルスワクチンにおける数千の望ましくないタンパク質の複数のエピトープにより引き起こされる感染および免疫干渉に付随する副作用を回避するはずである。短鎖グリオーマレプリキン「kagvaflhkk」は、合成物質のための良好なベースとなることが立証された。米国特許番号6,242,578を参照のこと。これは、癌細胞に対する細胞毒性を有する抗マリグニン抗体をピコグラム/細胞で産生し、癌患者の生存と量的に関連する。われわれは、ヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質において認められる5つのSARS短鎖レプリキンを合成した。例6を参照のこと。これらの合成短鎖SARSレプリキンをウサギに注射した場合、大量の特定抗体を産生した。例えば、21アミノ酸SARSヌクレオキャプシドレプリキン抗体は、1:204,800を越える希釈で結合する。様々な小ペプチドを用いて、天然痘ワクチンにおいて見られるように、総タンパク質または数千のタンパク質、あるいは核酸の使用により生じる望ましくない副作用のない強い免疫反応を得るための試みが以前に他者により行われたが、失敗に終わっているため、小型合成レプリキン抗原が強い免疫反応を実現する能力は、これらのSARSワクチンの有効性にとって重要である。
【0154】
図17に示されるような結果を用いて、インフルエンザおよびSARSウイルスにおけるレプリキン構造と高い死亡率との関連を評価した。高い死亡率と短鎖または縮合レプリキン配列との関連は、図17のセクションBに示される高死亡率の有機体、インフルエンザおよびSARS以外のウイルス、および細菌、マラリアおよび癌において見られる。レプリキン構造の統一概念、および任意の細胞型または感染性有機体ではなく、レプリキンと急速複製との関連に関する統一概念の裏付けとして、流布および毒性に複製が重要となる広範囲のウイルス、細菌、マラリアおよび癌有機体における基本的レプリキン構造の普及に加えて、以下の相同配列が認められている。1位および2位における「k」に注目する。取り込みまたは急速複製を刺激するためDNA、RNAまたはその他のレセプタあるいはリガンドに提示する「k」の配列に注目する。「二重k」および「複数k」の頻度に注目する。最も縮合短縮されたレプリキンの3位における「g」の頻度および三重項「kkg」、「hek」、「hdk」、および「hkk」の発生に注目する。このレプリキンは、天然痘ウイルス、炭疽菌ウイルス、ラウス肉腫、および多形性グリア芽腫(グリオーマ)、大腸癌および乳癌におけるc‐src、メラノーマおよび大腸癌におけるc‐yesを含む最高の死亡率を持つ有機体、癌細胞、および遺伝子に関連する。オーストラリアおよび東南アジアにおいて2つの近年出現した高死亡率ウイルスであるニパウイルスおよびヘンドラウイルスのほぼ同一レプリキン構造にも注目する。これら2つのウイルスは、それらに対して形成された類似または同一の抗体を有することが報告されているが、その構造的ベースについてはこれまで知られておらず、われわれがこの類似抗体に対する2つのほぼ同一レプリキンを発見した。
【0155】
また表3は、われわれが発見した2003年の5つのSARSレプリキンと、1917年インフルエンザガチョウレプリキンおよび2つのコロナウイルス(鳥類気管支炎コロナウイルスおよびブタエピデミック下痢ウイルス)との関連を示す。表3および図17における最初の2003年ヒトSARSレプリキンは、2002年におけるインフルエンザH1N2の中間構造による、1917年インフルエンザガチョウレプリキンおよびヒト1918年レプリキンに対する特定の配列相同性を示す(例えば、1位、18位および19位におけるレプリキン「k」を参照)。1917年ガチョウレプリキン配列は、表3および図17において、1999年におけるレプリキンの定義に重要ではないアミノ酸に多くの置換があるにもかかわらず、大部分が保存されていることを示す(置換はイタリック体で示される)。次に、元の29アミノ酸1917年レプリキン配列は、2001年H1N2レプリキンにおける1917年〜1918年のその構造にほぼ正確に回復されたことが分かった。しかし、2002年H1N2インフルエンザレプリキンは、29から28アミノ酸に短縮され、アミノ酸kevl(i/v)wg(v/i)hhが「左にシフト」したことがはっきりと証明される。
【0156】
2003年に1つのレプリキンが、最初にリストされる2003年ヒトSARSウイルスの21アミノ酸レプリキンにさらに短縮(または小型化)された。2003年SARSレプリキンにおけるkの割合(%)は、ガチョウレプリキンおよび1918年ヒトパンデミックレプリキンの20.7%と比較して、現在38.1%(8/21)である。インフルエンザ29アミノ酸レプリキンと比較して、3つのSARSレプリキンが、さらに19、11および9アミノ酸長配列にそれぞれ短縮(または小型化)されたことが認められた。図に示されるSARS9アミノ酸配列におけるkの割合(%)は44.4%(4/9)である。SARSレプリキンの短縮に関して、ヒトにおけるSARS死亡率は、1918年インフルエンザパンデミックにおける2.5%と比較して、若年層において10%、老年層において55.5%まで上昇した。
【0157】
アミノ酸配列を表3に示し、相同の程度およびインフルエンザレプリキンの85年間(1917年〜2002年)にわたる保存を強調表示する。1917年ガチョウレプリキンにおいてその証拠が最初に認められた。そのような保存は、これまで認められていない。また表3は、2003年ヒトSARSウイルスにおけるレプリキンが、最初に1917年ガチョウレプリキンとして、また1918年ヒトパンデミックインフルエンザレプリキンとして出現したインフルエンザレプリキンに対する相同性を有することに加え、コロナウイルス鳥類気管支炎ウイルスレプリキン(例えば、1位および2位が「k」であり、「h」で終端する)およびコロナウイルス急性下痢ウイルスレプリキン(例えば、レプリキンの1位および11位が「k」であり、末端が「h」である)の両方に対して特定の配列相同性があることを示す。インフルエンザおよびコロナウイルスレプリキンの両方に関連するというこの証拠は、幾つかの最近のインフルエンザエピデミックおよび以前のパンデミックと同様に、SARSが香港で発生し、SARSウイルスが、ヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質を含むその構造に一部起因して新規コロナウイルスとして分類されていることからも興味深い。SARSがヒトにおいてエピデミック肺炎として最初に出現したことについては、特定の疫学的証拠も関連している。このエピデミック肺炎は、込み合った香港のアパートで勃発した。そこでは糞便汚水の激しい逆流があり、それが換気扇により空中に浮遊した。
【0158】
X.インフルエンザワクチン、治療および治療薬
本発明は、任意の1つ以上の上述の単離した配列、または任意の1つ以上の上述の単離した配列の任意の抗原部分列、あるいは上述の単離した配列またはそれらの部分列のいずれかに結合する抗体を含むワクチンも提供する。
【0159】
現在、インフルエンザ用ワクチン製剤は、WHOおよびCDCの国際会議において毎年2回変更されている。ワクチン製剤は、世界の所定地域におけるインフルエンザウイルス株の最近の優勢に関する血清学的証拠に基づく。しかし、本発明に先立って、インフルエンザウイルス株に特異的なアミノ酸配列の変化と、インフルエンザエピデミックまたはパンデミックの発生との関連付けはなかった。
【0160】
インフルエンザウイルスタンパク質における特定レプリキンおよびその濃度を観察することにより、インフルエンザパンデミックおよびエピデミックに関する第1の特異的な量的初期化学的関連が提供され、特異的に調整されたインフルエンザワクチンを産生して適時投与することにより、世界の特定地域において流行しているインフルエンザウイルスの出現株または再出現株を治療することができる。インフルエンザウイルス株の分離株のタンパク質配列、例えば血球凝集素タンパク質配列について、レプリキンの存在、濃度および/または保存を分析することにより、インフルエンザウイルスパンデミックおよびエピデミックを予測できる。さらに、そのようなインフルエンザ流行の重大性は、最も豊富にあることが認められたレプリキン配列または所定の期間、例えば約1〜約3年にわたってウイルス分離株中で上昇傾向にあるレプリキン配列に基づいたインフルエンザペプチドワクチンを投与することにより、著しく低減できる。
【0161】
本発明のインフルエンザペプチドワクチンは、単一のレプリキンペプチド配列を含んでもよく、またはインフルエンザウイルス株において見られる複数のレプリキン配列を含んでもよい。好ましくは、ペプチドワクチンは、所定の期間にわたって濃度の増加が見られ、少なくともその期間は保存されるレプリキン配列に基づく。
【0162】
例えば、好適なワクチンは、レプリキン骨格の一部材であるレプリキン配列を含んでもよい。レプリキン骨格配列とインフルエンザウイルスの高い毒性株との関連性と併せて、レプリキン骨格の高い保存性により、レプリキン骨格配列は合成ワクチンに好適な配列となる。ガチョウレプリキン骨格の一部材は、ウサギおよび鶏に皮下投与された場合に強い免疫反応を提供するために有効であることが証明された。例7を参照のこと。
【0163】
本発明のワクチンは、新規のレプリキンペプチドと併せて保存レプリキンペプチドを含んでもよく、または新規のレプリキンペプチド配列に基づいてもよい。レプリキンペプチドは、化学合成または組み換え遺伝子技術を含む任意の方法で合成することができ、レプリキン配列のみを含むペプチドに基づくワクチンが好ましいが、非レプリキン配列を含んでもよい。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、薬学的に許容しうるキャリアおよび/またはアジュバントを含んでもよい。
【0164】
本発明のインフルエンザワクチンは、単独で、またはガンシクロビル;インターフェロン;インターロイキン;アマンタジン、リマンタジン等のM2阻害剤;ザナミビルおよびオセルタミビル等のノイラミニダーゼ阻害剤等の抗ウイルス薬と併用して、および抗ウイルス薬の組み合わせとともに投与することができる。
【0165】
本発明のインフルエンザワクチンは、免疫反応において抗体を産生できる任意の動物に投与してもよい。例えば、本発明のインフルエンザワクチンは、ウサギ、鶏、ブタ、またはヒトに投与されてもよい。本発明のインフルエンザワクチンは、一連のインフルエンザ株または特定のインフルエンザ株に配向されてもよい。
【0166】
本発明に従う非限定的側面において、インフルエンザワクチンは、インフルエンザB、(A)H1N1、(A)H2N2、(A)H3N2、H5N1を含むインフルエンザの動物またはヒト株、またはその後に生じる可能性のあるウイルスの任意のヒト変型、および現行の鳥類H5N1等の主に動物に見られるインフルエンザ株に対する免疫反応を対象としてもよい。インフルエンザワクチンは、インフルエンザタンパク質の任意の一部における特定のレプリキンアミノ酸配列をさらに対象としてもよい。UTOPE KKKKHKKKKHに共有結合したH5N1ウイルスのレプリキン骨格KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHを含むインフルエンザワクチンおよびよく知られたキーホールリンペットシアニンンアジュバントは、鶏およびウサギにおいて強い免疫反応を提供した。例7を参照のこと。
【0167】
本発明の非限定的実施形態は、レプリキン骨格配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHを含むインフルエンザワクチンを提供する。[S]は、インフルエンザウイルスの第2株と比較して置換される以外はほぼ同一のレプリキンペプチド配列を含む任意のアミノ酸であってもよい。好適な実施形態において、[S]は疎水性アミノ酸であってもよい。さらに好適な実施形態において、[S]はメチオニンまたはイソロイシンであってもよい。一層好適な実施形態において、上記で具体化された配列は、インフルエンザのH5N1株から単離された配列である。
【0168】
さらに非限定的な側面において、インフルエンザワクチンは、KKKKHまたはKKKKHKKKKKH等のUTOPEを含んでもよい。さらなる代替例において、ワクチンは、本明細書で‐KLHと表示される、よく知られたキーホールリンペットヘモシアニン等のアジュバントの追加を含んでもよい。さらに好適な非限定的側面において、インフルエンザワクチンは、2つのUTOPE、およびKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVMWGIHH KKKKHKKKKKHK‐KLHまたはKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVIWGIHH KKKKHKKKKKHK‐KLH等のアジュバント配列をさらに含むインフルエンザH5N1のレプリキン骨格を含んでもよい。本発明の側面は、以前に単離され、表1において「2004年 H5N1ベトナム、高い病原性」または「2006年 インドネシア、高い病原性」と標識される鳥インフルエンザレプリキンの1つとして示されるレプリキン骨格配列を含んでもよい。
【0169】
100μgのペプチドから成るワクチンをウサギおよび鶏に皮下注射により投与することにより、1:50未満のワクチン接種を受けていない希釈物からの抗体反応は、ワクチン接種後3〜4週間で、1:120,000の希釈から1:240,000を越えるピークに達することが予測される。
【0170】
グリオーマレプリキン(配列番号:_)「kagvaflhkk」またはC型肝炎レプリキン(配列番号:_)「hyppkpgcivpak」等のレプリキン、あるいは(配列番号:_)「kcfncgkegh」または(配列番号:_)「kvylawvpahk」等のHIVレプリキンに基づく合成レプリキンワクチン、または好ましくは所定の期間にわたって保存される、および/または出現または再出現するレプリキンに基づくインフルエンザワクチンを使用し、抗体濃度を増加させて、ウイルス感染した細胞をそれぞれ溶解し、ウイルスを細胞外に放出して化学療法が有効になるようにしてもよい。
【0171】
レプリキンフラグメントを認識および結合することにより、細胞の破壊をもたらす抗体の誘導を目的とする場合は、特定のレプリキン構造のみを利用することが好ましい。大型タンパク質配列は、「複製関連機能」を有することが当業者に知られているが、大型タンパク質を使用するワクチンは失敗するか、または有効でないことが分かる場合が多い。
【0172】
本発明者は単一の理論に固執することを望まないが、本明細書における研究は、先行技術のワクチンが、大型タンパク質配列の使用に基づくため効果がないこと、つまり抗体の形態で適切な免疫反応および/または細胞性免疫を産生できず、保護能がないことを示唆する。大型タンパク質配列は、常に1つ以上のエピトープ(特定の抗体形成を誘導できる独立した抗原配列)を有し、レプリキン構造は、通常これらの可能なエピトープのうちの1つを含む。その他のエピトープが大型タンパク質に存在することは、免疫系に無関係の抗原刺激を「大量に送り込む」ことによって、レプリキン抗原を阻止する可能性があり、レプリキンに対する抗体の適切な形成が妨害される場合がある。このよく知られた抗原優位現象に関する議論については、例えば、Webster,R.G.,J.Immunol.,97(2):177‐183(1966)、およびWebster et al.,J.Infect.Dis.,134:48‐58,1976、Klenerman et al,Nature 394:421‐422(1998)を参照のこと。この抗原優位現象によって、免疫系により提示および認識される第1ペプチドエピトープがその後広まり、その他のペプチドエピトープが同時に提示されるが、それに対する抗体が形成される。これは、ワクチン形成において、有機体からのその他のエピトープを提示する前に、定常レプリキンペプチドを最初に免疫系に提示することによって、レプリキンが先取されず免疫記憶に残るようにすることが重要である別の理由である。
【0173】
レプリキンワクチンに対する初期反応の量的測定
数日または数週間におけるレプリキンワクチンに対する初期特定抗体反応を量的に測定する能力は、臨床反応が数ヶ月または数年後にしか測定できないその他のワクチンに優る主要な実践的利点である。
【0174】
アジュバント
様々なアジュバントを使用し、宿主細胞種に応じて、免疫学的反応を強化してもよい。例えば、フロインド(完全および不完全)、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーリンペットヘモシアニン、ジントロフェノール、およびBCG、ホルマリン死菌体(Corynebacterium parvum)等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、それらに限定されない。それらにおける合成UTOPEのワクチン使用に加えて、UTOPEをその他レプリキンワクチンおよび非レプリキンワクチンに対するアジュバントとして使用できる。
【0175】
UTOPES
kの割合(%)が高いレプリキンは、ウサギに投与された場合に最も高い抗体反応を生成することが示された。本発明者が設計したこれらの合成ペプチドは、万能合成エピトープ、または「UTOPE」と指定し、これらのUTOPEに基づくワクチンは「UVAX」と称される。推定合成ワクチンであるUVAXは、単一ワクチン、またはより特異的なレプリキンワクチンまたはその他ワクチンと併用投与されるアジュバントとして使用してもよい。以下は、推定UTOPEおよびUVAXの例である。
考案した合成レプリキン 配列番号:
(UTOPEまたはUVAX)
KKKKHK ___
KKKHKK ___
KKHKKK ___
KHKKKK ___
KKKKKKH ___
KKKKKHK ___
KKKKHKK ___
KKKHKKK ___
KKHKKKK ___
KHKKKKK ___
HKKKKKK ___
【0176】
レコグニンおよび/またはレプリキンペプチドを対象に投与し、対象の免疫系を誘導して抗レプリキン抗体を産生してもよい。一般的に0.5〜約2mg用量、好ましくは各ペプチドの1mg用量を対象に投与し、免疫反応を誘導する。必要に応じて、後次の用量を投与してもよい。
【0177】
置換の識別はワクチンの初期開発を提供する
以前の卵および細胞に基づくインフルエンザワクチンの生成方法は、望ましくない副作用を生じる可能性のある数千もの不要なタンパク質を含み、生成に6〜9ヶ月以上かかり、試験にさらなる時間を要した。FluForecast(登録商標)は、現在、エピデミックまたはパンデミックが到来しつつあるという株特異性警告を1〜3年先行して行うことが可能である。またキーレプリキンおよび置換アミノ酸「S」の発見により、より正確で潜在的に安全な合成ワクチンを短期間、つまり数日以内に調整して試験することができる。
【0178】
H5N1ガチョウレプリキンにおけるS置換の識別は、H5N1におけるS置換から生じる将来のヒトパンデミックに対するワクチンの開発用の標的を熟練者に提供する。ワクチンは、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHの任意の一部を含んでもよく、24位におけるS置換(末端ヒスチジンから5残基目)は、任意のアミノ酸置換を表す場合がある。好適な実施形態において、S置換はロイシン以外のアミノ酸を表す。より好適な実施形態において、S置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸を表す。さらに好適な実施形態において、置換はメチオニンまたはイソロイシンを表す。1つの非限定的ワクチン実施形態は、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHの7〜29アミノ酸を含む。別の非限定的実施形態において、ワクチンは配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHの7〜29アミノ酸を含む。代替として、本ワクチンはキーリンペットヘモシアニン等のアジュバントまたはその他のアジュバント、および/またはKKKKHK等のUTOPEあるいは任意のその他のUTOPEを含んでもよい。別の非限定実施形態において、配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHの7〜29アミノ酸抗原部分列に対する抗体も考慮される。本発明のレプリキン骨格またはレプリキン配列の約7〜約29アミノ酸を有する任意の抗原部分列は、ワクチンおよび抗体を産生するための免疫系の刺激を考慮する。
【0179】
配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[S]WGIHHのすべてまたは任意の一部に対する抗体は、当業者により開発されてもよい。特に24位を含むエピトープに配向された抗体も同様に、当業者により開発されてもよい。好適な実施形態において、S置換はロイシン以外のアミノ酸を表す。より好適な実施形態において、S置換はロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸を表す。さらに好適な実施形態において、S置換はメチオニンまたはイソロイシンを表す。例えば、KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV(M/I)を含む配列のすべてまたは任意の一部に対する抗体は、当業者により開発されてもよい。
【0180】
S置換を有するガチョウレプリキンに対する抗体を使用し、配列に対する抗体を持つH5N1感染を治療するか、または鳥、動物、またはヒトにおけるH5N1の毒性感染を診断してもよい。
【0181】
現在までに試験されたすべてのレプリキン配列は、免疫原生特性を示している。マリグニンから得た16‐merレプリキンをウサギに注射したところ、16‐merレプリキンに特異的な抗体が産生された。米国特許6,242,578B1の例6および図9Aおよび9B、SARSコロナウイルスのヌクレオキャプシド、スパイクおよびエンベロープタンパク質において認められたSARSレプリキンを合成し、ウサギで試験した。免疫反応を定量した。例6を参照のこと。本発明者は、表1において「2004 H5N1 ベトナム、高い病原性」と標示されるH5N1「鳥インフルエンザ」レプリキンの29アミノ酸レプリキン骨格から41アミノ酸レプリキン配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHKKKKHKKKKKHK‐KLH指定のワクチンV120304U2を、2つのUTOPE単位(KKKKHK)をH5N1骨格のC末端に追加し、2つのUTOPE単位のC末端上で共役結合した追加のアジュバント(キーホールリンペットヘモシアニン(‐KLHと記す)を追加して設計した。100μgのワクチンV120304U2をウサギおよび鶏に皮下注射した。抗体反応をワクチン接種前および注射から1週間〜8週間後に測定した。抗体反応は1週間で認められ、ワクチン接種から3〜4週間後にピークに達した。ピーク抗体反応は、1:120,000の希釈〜1:240,000を越える希釈の範囲であった。当業者は、本明細書に記載のレプリキン配列およびレプリキン骨格配列それぞれに対する抗体を開発してもよい。
【0182】
レプリキンヌクレオチド配列
レプリキンDNAまたはRNAは、ウイルス、細菌またはその他のレプリキンコード化物質の感染に起因する疾患を診断するための使用法を多数有する可能性がある。例えば、レプリキンヌクレオチド配列は、原位置で加水分解アッセイを含む、生検組織または血液の加水分解アッセイ、例えばサザンまたはノーザン分析において使用し、例えば、組織標本または環境標本における特定有機体の存在を診断してもよい。また本発明は、関心の特定病原体に存在する特定レプリキンに特異的な抗体を含む、または特定のレプリキン、および任意に診断に必要な様々なバッファおよび/または試薬に対して特異的に加水分解する核酸分子(センスまたはアンチセンス)を含むキットについて考慮する。
【0183】
また、アンチセンスRNAおよびDNA分子、およびレプリキン‐またはレコグニン含有mRNAの翻訳を抑制するよう機能するリボザイムを含むオリゴリボヌクレオチド配列も本発明の範囲に含まれる。アンチセンスRNAおよびDNA分子およびリボザイムはどちらも、当該技術分野において知られる任意の方法で調整されてもよい。アンチセンス分子は、多様なベクターに組み込んで対象に送達することができる。熟練した医師であれば、最適な送達経路を決定できるが、一般にi.v.(静脈内)またはi.m.(筋肉内)送達が通常である。用量も容易に解明できる。
【0184】
特に、好適なアンチセンス核酸分子は、例えば、インフルエンザウイルスポリペプチドをコード化するmRNAに含まれるレプリキン配列に相補的である。本レプリキン配列は、7〜約50のアミノ酸から成り、(1)第2リジン残基から6〜10残基にある少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%のリジン残基と、を含む。より好ましくは、遺伝子のコード鎖に存在するレプリキン、またはインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質をコード化するmRNAに相補的なアンチセンス核酸分子である。本アンチセンス核酸分子は、6ヶ月から1年以上の期間保存されることが示された、および/またはその他のインフルエンザウイルス株のレプリキン濃度と比較して、高いレプリキン濃度を有することが示されたインフルエンザウイルスの株に存在するレプリキンをコード化するヌクレオチド配列に相補的である。レプリキン濃度の増加は、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは約1年、最も好ましくは約2〜3年以上かけて発生する。
【0185】
同様に、mRNAに対して相補的なアンチセンス核酸分子は、(1)第2リジン残基から6〜19残基にある少なくとも1つのリジン残基と、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基と、(3)少なくとも6%リジン残基と、を含む7〜約50アミノ酸のレプリキン配列を含むレプリキンをコード化するmRNAに相補的である。より好ましくは、遺伝子のコード鎖、またはウイルスのタンパク質をコード化するmRNAに対して相補的なアンチセンス核酸分子である。
【0186】
XI.コンピュータ
本発明は、コンピュータを使用してインフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法も提供する。レプリキンを含むインフルエンザ株の存在について、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を含むデータバンクをコンピュータにより走査することもできる。またインフルエンザウイルスの新生株を予測するための要件を満たすレプリキン骨格ペプチドは高い毒性を持つ。
【0187】
図2は、本発明の前述の実施形態と併用するために入手可能なコンピュータのブロック図である。コンピュータは、プロセッサ、入出力装置、および前述の実施形態の毒性予測方法を表す実装可能なプログラム指示を格納するメモリを含んでもよい。メモリはスタティックメモリ、揮発性メモリ、および/または非揮発性メモリを含んでもよい。スタティックメモリは、磁気的、または電気的あるいは光学的保存媒体で提供される従来の読み取り専用メモリ(「ROM」)であってもよい。揮発性メモリは、従来のランダムアクセスメモリ(「RAM」)であってもよく、またプロセッサ内にキャッシュとして集積されるか、または個別の集積回路としてプロセッサ外で提供されてもよい。非揮発性メモリは、電気的、磁気的または光学的保存媒体であってもよい。
【0188】
以下の例は本発明のみを説明することを意図し、本明細書で提供される本発明の全範囲を限定しない。当然のことながら、本発明の修正および変型は上述の教示により包含され、本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく添付の請求項の範囲に含まれる。
【0189】
実施例1
レプリキンの抽出、単離、および識別の過程、およびレプリキン含有有機体を標的、標識または破壊するためのレプリキンの使用
a)藻類
バミューダ水地から以下の藻類を収集し、同日に抽出するか、または−20℃で凍結し、次の日に抽出した。中性バッファにおける1gアリコート、例えば100ccの0.005Mリン酸バッファ溶液pH7(「リン酸バッファ」)中の藻類を冷室(0〜5℃)において15分間、ワーリングブレンダで均質化し、3000rpmで遠心分離して、上澄みを蒸発により濃縮し、冷たいリン酸バッファに対して透析することにより約15ml量を産生した。この抽出液の量を記録し、タンパク質分析用に得られたアリコートおよび残渣を分別して、1〜4のpK範囲を有するタンパク質留分を得た。
【0190】
分別の好適な方法は、以下のクロマトグラフィである。抽出溶液を冷室(4℃)において、0.005Mリン酸バッファで平衡されたDEAEセルロース(Cellex‐D)カラム2.5x11.0cm上で分別する。溶離溶媒の段階的な変化は、以下の溶液を用いて行った。
溶液1‐4.04gのNaH2P04および0.5gのNaH2P04を15リットルの蒸留水(0.005モル、pH7)に溶解する。
溶液2‐8.57gのNaH2P04を2,480mlの蒸留水に溶解する。
溶液3‐17.1gのNaH2P04を2,480mlの蒸留水に溶解する(0.05モル、pH4.7)。
溶液4‐59.65gのNaH2P04を2,470mlの蒸留水に溶解する(0.175モル)。
溶液5‐101.6gのNaH2P04を2,455mlの蒸留水に溶解する(pH4.3)。
溶液6‐340.2gのNaH2P04を2,465mlの蒸留水に溶解する(1.0モル、pX‐i4.1)。
溶液7‐283.63gの80%リン酸(H3P04)を2,460mlの蒸留水中で形成する(1.0モル、pH1.0)。
【0191】
6〜10ml量の抽出液をカラムに移し、溶液1と重ねた。また300mlの溶液1の容器を取り付け、重力によりカラム上に滴下させた。3mlアリコートの溶離剤を収集し、溶液1で除去されるすべてのタンパク質がカラムから除去されるまで、OD280におけるタンパク質含有量について分析した。次に溶液2をカラムに適用し、各溶液で除去可能なタンパク質がすべてカラムから除去されるまで、溶液3、4、5、6および7を連続して適用する。溶液7からの溶離剤を複合し、リン酸バッファに対して透析し、透析液および透析物に関するタンパク質含有量を特定し、両者をゲル電気永動により分析した。3,000〜25,000ダルトン分子量のペプチドまたはタンパク質の1つまたは2つのバンドを溶液7において取得する。例えば、溶液7においてにおいて示された藻類のCaulerpa mexicana、Laurencia obtura、Cladophexa prolifera、Sargassum natans、Caulerpa verticillata、Halimeda tuna、およびPenicillos capitatusはすべて、上述のような抽出および治療後に、感染のないこのモル重量領域において明らかなペプチドバンドを溶離する。これらの溶液7タンパク質またはそれらの溶離されたバンドを加水分解し、アミノ酸組成物を特定する。そのようにして得られたペプチドは、6%以上のリジン組成物を含むレプリキン前駆体である。次に、アミノ酸配列に対するこれらのレプリキンペプチド前駆体を特定し、米国特許6,242,578B1において詳述される加水分解および質量分析によりレプリキンを特定する。「3点認識」法により定義される基準を満たすものをレプリキンとして識別する。この手順は、イースト、細菌および任意の植物レプリキンにも適用できる。
【0192】
b)ウイルス
a)藻類の場合において上述のように、同一の抽出物およびカラムクロマトグラフィ分離法を使用し、ウイルス感染細胞におけるレプリキンを単離および識別した。
【0193】
c)腫瘍細胞の生体内および生体外組織培養
a)藻類の場合において上述されるような同一の抽出物およびカラムクロマトグラフィ分離法を使用し、腫瘍細胞におけるレプリキンを単離および識別する。例えば、悪性脳腫瘍から単離されたアストロシチン、組織培養中のグリオブラストーマ腫瘍細胞から単離されたマリグニン(Aglyco lOB)、組織培養中のMCF7哺乳類癌細胞、および組織培養中のP3Jリンフォーマ細胞のレプリキン前駆体であり、それぞれa)リジン含有率9.1%、6.7%、6.7%および6.5%で産生されたレプリキン前駆体において上述のように治療される。米国特許6,242,578B1の例10に記載のAglyco lOBの加水分解および質量分解により、アミノ酸配列ykagvaflhkkndiide、16‐merレプリキンが産生された。
【0194】
実施例2
レプリキンの診断的使用の例として、Aglyco lOBまたは16‐merレプリキンを抗原として使用し、診断的目的で血清中に存在するその対応する抗体の量を獲得および定量してもよいことは、米国特許6,242,578B1の図2、3、4および7に示される。
【0195】
標識、栄養または破壊の目的でレプリキンに結合する物質の産生に関する例として、ウサギに16‐merレプリキンを注射し、16‐merレプリキンに特異的な抗体を産生することは、米国特許6,242,578B1の例6および図9Aおよび9Bに示される。
【0196】
16‐merレプリキンに対する抗体を使用し、このレプリキンを含む特定細胞を標識するというレプリキンを標識する物質の使用例は、米国特許6,242,578B1の図8および例6に示される。
【0197】
16‐merレプリキンに対する抗体を使用し、このレプリキンを含む特定細胞を抑制または破壊するというレプリキンを破壊する物質の使用例は、米国特許6,242,578B1の図9に示される。
【0198】
実施例3
インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質の分離株またはノイラミニダーゼタンパク質の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。インフルエンザウイルスの分離株を取得し、インフルエンザ血球凝集素および/またはノイラミニダーゼタンパク質のアミノ酸配列を任意の当該技術分野で知られる方法、例えば血球凝集素またはノイラミニダーゼ遺伝子のシーケンシングおよびそこからタンパク質配列を派生させることにより取得する。新規レプリキンの存在、長期にわたるレプリキンの保存、および各分離株中のレプリキン濃度について、配列を走査する。レプリキン配列および濃度と、以前(約6ヶ月〜約3年前)に分離株から得られたアミノ酸配列との比較により、到来するインフルエンザシーズンにおいてインフルエンザの原因として最も可能性の高い株、および季節性インフルエンザペプチドワクチンまたは核酸ベースワクチンに対するベースを形成する株の出現の予測に使用するデータを提供する。濃度の増加の観察、特に約6ヶ月〜約3年以上にわたるインフルエンザウイルスの所定株におけるレプリキン濃度の段階的な増加は、将来のインフルエンザエピデミックまたはパンデミックの考えられる原因として、株の出現を予測する。
【0199】
新生株において認められたレプリキンに基づくペプチドワクチンまたは核酸ベースワクチンを生成する。長期にわたって血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ配列内のレプリキン配列の濃度が最も高く増加したインフルエンザウイルスの株として新生株を識別する。好ましくは、ペプチドまたは核酸ワクチンは、新生株に保存されることが観察された任意のレプリキン配列に基づくか、またはそれらを含む。保存レプリキンは、好ましくは血球凝集素またはノイラミニダーゼに約2年間および好ましくはそれ以上存在するレプリキン配列である。ワクチンは、新生株において識別されたレプリキン配列の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0200】
ワクチン産生の場合、効果的なワクチンに有用であると識別されたレプリキンペプチドまたはペプチドは、任意の方法で合成される。化学合成および分子生物学技術、クローンニング、宿主細胞における発現、およびその後の精製を含む。ペプチドは、好ましくは、それに対する治療的抗体反応を誘導するために決定された量で薬学的に許容しうるキャリアと混合されてもよい。一般に、用量は約0.1mg〜約10mgである。
【0201】
インフルエンザワクチンは、好ましくは「インフルエンザシーズン」の開始に先立って、それを必要とする患者に投与される。インフルエンザのシーズンは、一般に10月後半に始まり、4月後半まで続く。しかし、ワクチンは、1年の任意の時期に投与してもよい。インフルエンザワクチンは毎年1回投与されることが好ましく、現在までに観察されたレプリキン配列に基づき、および好ましくはインフルエンザウイルスの新生株において保存される。インフルエンザワクチンに含めるべき別の好適なレプリキンは、1年以上欠失した後、インフルエンザの株において再出現したことが示されたレプリキンである。
【0202】
実施例4
コロナウイルスヌクレオキャプシドの分離株、またはスパイク、あるいはエンベロープ、乃至はその他のタンパク質の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。
【0203】
実施例5
熱帯熱マラリア原虫抗原の分離株の配列データをレプリキンの存在および濃度について分析することは、配列の視覚走査または本明細書に記載の3点認識法に基づくコンピュータプログラムを使用して行う。
【0204】
実施例6
SARSコロナウイルスのヌクレオキャプシド、スパイク、およびエンベロープタンパク質において認められた5つの短いSARSレプリキンのアミノ酸配列を合成し、ウサギで試験してSARSコロナウイルスにおけるレプリキン配列に対する免疫反応を試験した。以下のレプリキン配列を試験した:(1)2003年ヒトSARSヌクレオキャプシド(配列番号:_);(2)2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_);(3)2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_)、2003年ヒトSARSスパイクタンパク質(配列番号:_);(4)2003年SARSエンベロープタンパク質(配列番号:_);および(5)2003年ヒトSARSヌクレオキャプシドタンパク質(配列番号:_)。各合成ペプチドをウサギに皮下注射した。試験したウサギは、1:100,000を越える希釈で結合された5つの配列それぞれに対して測定可能な特異的抗体を産生した。21アミノ酸SARSヌクレオキャプシドレプリキン抗体(配列番号:_)は、1:204,800を越える希釈で結合することが示された。様々な小型ペプチドを用いて、総タンパク質または天然痘ワクチンに見られるような数千のタンパク質または核酸により生じる望ましくない副作用を伴うことなく、強い免疫反応を得るという試みが他者により行われたが、失敗に終わったため、小型の合成レプリキン抗原が強い免疫反応を獲得する能力は、SARSワクチンの有効性にとって重要であることが示された。
【0205】
実施例7
41アミノ酸レプリキン配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHKKKKHKKKKKHK‐KLH指定ワクチンV120304U2は、本発明者により、表1において「2004年H5N1ベトナム、高い病原性」と標示されるH5N1「鳥インフルエンザ」レプリキンの29アミノ酸レプリキン骨格から、H5N1骨格のC末端上の2つのUTOPE単位(KKKKHK)および2つのUTOPE単位のC末端上で共有結合される追加のアジュバント(キーホールリンペットヘモシアニン(‐KLHと標示)を追加して設計された。100μgのワクチンV120304U2をウサギおよび鶏に皮下注射した。ワクチン接種前および注射後1週間から8週間の抗体反応を測定した。抗体反応は1週間目に認められ、ワクチン接種から3〜4週間後にピークに達した。ピーク抗体反応は、1:120,000の希釈から1:240,000を越える希釈の範囲であった。高結合96ウェルプレート上で固体相(0.1μg/100μl/ウェル)に結合されたペプチド‐GGG(ヤギγグロブリン)を用いて酵素免疫測定法(ELISA)により抗体タイターを特定した。まず血清を50倍に希釈した後、さらに2倍連続希釈法で希釈した。ELISAタイターの結果は、405nmの0.2において光学密度から得られる、および連続希釈曲線の非線形回帰分析から生じた推定希釈要素から判断した。西洋ワサビペルオキシダーゼ複合2次抗体およびABTS置換基を使用して検出を行った(ABTSは、Boehringer Mannheim.GmbHの登録商標である)。表4は、2羽の鶏および2匹のウサギから得られた結果を示す。ウサギD4500に関する試験から得られた個別のウェル結果を表5に示す。例6に報告された結果と併せて、合計6回のウサギまたは鶏における抗体反応に関するレプリキン配列の試験において、6つの配列すべてが測定可能な抗体反応を生じ、抗原を証明した。
【0206】
【表4】
【0207】
【表5】
【0208】
実施例8
インフルエンザの新生毒性株は、以下の方法を使用して予測してもよい。インフルエンザウイルスの毒性株におけるレプリキン骨格の存在について、インフルエンザウイルスの分離株の配列および疫学的データを、疫学的データと合わせて、または本明細書に記載のレプリキン骨格アルゴリズムに基づくコンピュータプログラムを使用して、視覚的走査シーケンスにより分析する。
【0209】
単離したインフルエンザウイルスペプチドは、単離したペプチドが16〜約30のアミノ酸を含み、さらに、
(1)末端リジン、および任意に末端リジンに直接隣接するリジンと、
(2)末端ヒスチジン、および末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジンと、
(3)別のリジンから約6〜約10アミノ酸内にあるリジンと、
(4)少なくとも6%のリジンと、を含む場合、レプリキン骨格ペプチドであると見なされてもよい。
【0210】
レプリキン骨格配列を含む単離した配列を、レプリキン骨格系のその他の部材と共有および置換された配列について調べ、疫学的毒性のレベルにより比較する。疫学的毒性は、発生の程度および/または宿主死亡率%、または当業者に知られる任意の方法で決定されてもよい。
【0211】
次に、個別のレプリキン骨格ペプチド内の個別の置換を、個別のレプリキン骨格ペプチドが単離した特定の分離株に関連する高い毒性の発生との関連について調べる。6ヶ月〜3年をかけて増加するレプリキン数に基づいて新生株であること、および代表的なレプリキン骨格ペプチドを含むことが示されたインフルエンザウイルスの現行株を調べ、初期新生株における高い毒性に関連する置換が、インフルエンザの新生株に存在するかどうかを判断する。高い毒性に関連する個別の置換が存在する場合、インフルエンザウイルスの新生株も高い毒性を有すると予測してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
16〜30アミノ酸を含むインフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離したレプリキンペプチドであって、さらに、
(1)末端リジン、および任意に当該末端リジンに直接隣接するリジン;
(2)末端ヒスチジン、および当該末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(3)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(4)少なくとも6%のリジン
を含み、ここで、当該インフルエンザウイルスの第1株の実質的に単離したレプリキンペプチドは、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列と比較して、アミノ酸置換を含み、当該アミノ酸置換は、ヒスチジンの置換ではなく、また上記インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列は、
(1)16〜30アミノ酸;
(2)末端リジン、および任意に当該末端リジンに直接隣接するリジン;
(3)末端ヒスチジン、および当該末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(4)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(5)少なくとも6%のリジン
を含み、インフルエンザウイルスの第3株はレプリキン配列を含み、当該レプリキン配列は、
(1)16〜30アミノ酸;
(2)末端リジン、および任意に前記末端リジンに直接隣接するリジン;
(3)末端ヒスチジン、および前記末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(4)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(5)少なくとも6%のリジン
を含み、インフルエンザウイルスの上記第1株のレプリキン配列に存在する置換は、インフルエンザウイルスの上記第3株のレプリキン配列に追加で存在し、およびインフルエンザウイルスの上記第3株における置換の存在は、インフルエンザウイルスの上記第2株と比較して、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連することを特徴とする、前記レプリキンペプチド。
【請求項2】
前記置換アミノ酸残基が、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキンペプチドの末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する、請求項1に記載のレプリキンペプチド。
【請求項3】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基である、請求項2に記載のレプリキンペプチド。
【請求項4】
前記置換アミノ酸残基が、任意の疎水性アミノ酸である、請求項3に記載のレプリキンペプチド。
【請求項5】
前記置換アミノ酸残基が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項4に記載のレプリキンペプチド。
【請求項6】
配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[X]WGIHHを含み、ここで残基[X]は、ロイシン以外の任意のアミノ酸である、請求項5に記載のレプリキンペプチド。
【請求項7】
前記残基[X]が、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンおよびバリンからなる群から選択される、請求項6に記載のレプリキンペプチド。
【請求項8】
前記残基[X]は、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項7に記載のレプリキンペプチド。
【請求項9】
前記単離レプリキンが、H5N1インフルエンザウイルスペプチドである、請求項1に記載のレプリキンペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載のレプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項11】
請求項1に記載のレプリキンペプチドの抗原部分配列を含むワクチンであって、当該抗原部分配列が、請求項1に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基である、前記ワクチン。
【請求項12】
KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[X]WGIHHの実質的に単離されたアミノ酸配列を含むワクチンであって、当該残基[X]が、ロイシン以外の任意のアミノ酸である、前記ワクチン。
【請求項13】
前記残基[X]が、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸である、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記残基[X]が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
アジュバントをさらに含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項16】
UTOPEをさらに含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項17】
請求項1に記載のレプリキンペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項18】
請求項1に記載のレプリキンペプチドの抗原部分列に対する実質的に単離した抗体であって、当該抗原部分配列が、請求項1に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基を含む、前記抗体。
【請求項19】
インフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離されたレプリキンペプチドであって、当該インフルエンザウイルスの第1株が、インフルエンザウイルスの新生株であり、また上記実質的に単離されたレプリキンペプチドが、7〜約50アミノ酸を含み、そして以下の:
(1)上記レプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、及び当該レプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基若しくは少なくとも1つのリジン残基;
(2)第2リジン残基から6〜10残基に位置する第1リジン残基;
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(4)少なくとも6%のリジン残基
から成るモチーフを識別し、ここで上記インフルエンザウイルスの第2株における他の点では同一の配列と比較して、識別されたモチーフの末端残基の間のレプリキンペプチド配列に位置する1つのアミノ酸における置換が生じ、リジンまたはヒスチジンが置換されず、インフルエンザウイルスの前記第1株の前記識別されたモチーフの前記末端残基間の前記置換が、第2株と比較して、急速複製および毒性の増加に関連する;
前記識別されたモチーフを選択し、前記識別されたモチーフを含む前記レプリキンペプチドを単離するステップによって単離される、前記レプリキンペプチド。
【請求項20】
インフルエンザウイルスのH5N1株から単離される、請求項19に記載のレプリキンペプチド。
【請求項21】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項22】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの前記アミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基を含む抗原部分配列を含むワクチン。
【請求項23】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドに対して実質的に単離される抗体。
【請求項24】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの抗原部分配列に対して実質的に単離される抗体であって、当該抗原部分配列が、請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの7〜29アミノ酸残基を含む、前記抗体。
【請求項25】
インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法であって、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、当該レプリキン骨格は、上記インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチド、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチド、およびインフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドを含むステップ、
(2)上記第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換された上記第3レプリキン骨格ペプチドにおける1つのアミノ酸を識別するステップであって、当該置換アミノ酸がヒスチジンではないステップ、
(3)インフルエンザウイルスの前記第2株と比較して、インフルエンザウイルスの前記第3株が、高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すかどうかを判断するステップ、
(4)上記第2レプリキン骨格と比較して、上記第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基が、上記第1レプリキン骨格ペプチドにおいても置換されるかどうかを判断するステップ、
(5)上記インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数を、上記インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数と比較するステップ、
(6)上記インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数が、上記インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いかどうかを判断するステップ、
(7)上記インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記第2レプリキン骨格と比較して、前記第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基が、第2レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に配置される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外のアミノ酸残基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外の疎水性アミノ酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記置換アミノ酸残基が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1、第2および第3レプリキン骨格が、29のアミノ酸を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
インフルエンザウイルスの第1新生株からレプリキンペプチドを識別するステップであって、前記インフルエンザウイルスレプリキンペプチドは7〜約50アミノ酸で構成され、また前記インフルエンザウイルスレプリキンペプチドは、
(1)前記単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および少なくとも1つのリジン残基または前記単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基にある第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、から成るモチーフを含み、
前記インフルエンザウイルスの第2株における同一配列と比較して、前記モチーフの前記末端残基間でアミノ酸の置換が発生し、リジンまたはヒスチジンは置換されていないステップと、インフルエンザウイルスの第3株における同一配列における前記置換をインフルエンザウイルスの前記第2株と比較して、インフルエンザウイルスの前記第3株における急速複製および毒性の増加とを関連付けるステップと、およびインフルエンザウイルスの前記第1株の前記毒性の増加を予測するステップと、を含むことを特徴とするインフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法。
【請求項32】
アミノ酸配列KKX1X2X3YPTIKX4X5X6NNTNX7EDLLVX8WGIX9Hを含む実質的に単離されたレプリキンペプチドであって、式中、
X1はNまたはGであり、
X2はNまたはSであり、
X3はAまたはTであり、
X4はRまたはKであり、
X5はSまたはTであり、
X6は任意のアミノ酸残基であり、
X7は任意のアミノ酸残基であり、
X8はロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、そして
X9はHまたはQである、前記レプリキンペプチド。
【請求項33】
X6がYである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項34】
X7がQ、I、M、VまたはHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項35】
X7がQまたはHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項36】
X7がQである、請求項35に記載のレプリキンペプチド。
【請求項37】
X8がメチオニン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アスパラギンまたはグルタミンであることを、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項38】
X8がメチオニン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニンまたはトリプトファンである、請求項37に記載のレプリキンペプチド。
【請求項39】
X8がメチオニンまたはイソロイシンである、請求項38に記載のレプリキンペプチド。
【請求項40】
X8がメチオニンである、請求項39に記載のレプリキンペプチド。
【請求項41】
X8がイソロイシンである、請求項39に記載のレプリキンペプチド。
【請求項42】
X9がHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項43】
X1がNであり、
X2がSであり、
X3がTであり、
X4がRであり、そして
X5がSである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項44】
請求項32に記載のレプリキンペプチドの抗原部分配列を含む実質的に単離されたペプチドであって、当該抗原部分配列が、請求項32に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ残基である、前記ペプチド。
【請求項45】
請求項32に記載の実質的に単離されたレプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項46】
請求項44に記載の実質的に単離されたペプチドを含むワクチン。
【請求項47】
請求項32に記載の実質的に単離されたレプリキンペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項48】
請求項44に記載の実質的に単離されたペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項49】
請求項1に記載のレプリキンペプチドをコードする、実質的に単離された核酸。
【請求項50】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドをコードする、実質的に単離された核酸。
【請求項1】
16〜30アミノ酸を含むインフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離したレプリキンペプチドであって、さらに、
(1)末端リジン、および任意に当該末端リジンに直接隣接するリジン;
(2)末端ヒスチジン、および当該末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(3)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(4)少なくとも6%のリジン
を含み、ここで、当該インフルエンザウイルスの第1株の実質的に単離したレプリキンペプチドは、インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列と比較して、アミノ酸置換を含み、当該アミノ酸置換は、ヒスチジンの置換ではなく、また上記インフルエンザウイルスの第2株のレプリキン配列は、
(1)16〜30アミノ酸;
(2)末端リジン、および任意に当該末端リジンに直接隣接するリジン;
(3)末端ヒスチジン、および当該末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(4)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(5)少なくとも6%のリジン
を含み、インフルエンザウイルスの第3株はレプリキン配列を含み、当該レプリキン配列は、
(1)16〜30アミノ酸;
(2)末端リジン、および任意に前記末端リジンに直接隣接するリジン;
(3)末端ヒスチジン、および前記末端ヒスチジンに直接隣接するヒスチジン;
(4)別のリジンから6〜10アミノ酸にあるリジン;及び
(5)少なくとも6%のリジン
を含み、インフルエンザウイルスの上記第1株のレプリキン配列に存在する置換は、インフルエンザウイルスの上記第3株のレプリキン配列に追加で存在し、およびインフルエンザウイルスの上記第3株における置換の存在は、インフルエンザウイルスの上記第2株と比較して、複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加に関連することを特徴とする、前記レプリキンペプチド。
【請求項2】
前記置換アミノ酸残基が、インフルエンザウイルスの第1株のレプリキンペプチドの末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に位置する、請求項1に記載のレプリキンペプチド。
【請求項3】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基である、請求項2に記載のレプリキンペプチド。
【請求項4】
前記置換アミノ酸残基が、任意の疎水性アミノ酸である、請求項3に記載のレプリキンペプチド。
【請求項5】
前記置換アミノ酸残基が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項4に記載のレプリキンペプチド。
【請求項6】
配列KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[X]WGIHHを含み、ここで残基[X]は、ロイシン以外の任意のアミノ酸である、請求項5に記載のレプリキンペプチド。
【請求項7】
前記残基[X]が、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、グリシン、プロリンおよびバリンからなる群から選択される、請求項6に記載のレプリキンペプチド。
【請求項8】
前記残基[X]は、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項7に記載のレプリキンペプチド。
【請求項9】
前記単離レプリキンが、H5N1インフルエンザウイルスペプチドである、請求項1に記載のレプリキンペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載のレプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項11】
請求項1に記載のレプリキンペプチドの抗原部分配列を含むワクチンであって、当該抗原部分配列が、請求項1に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基である、前記ワクチン。
【請求項12】
KKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLV[X]WGIHHの実質的に単離されたアミノ酸配列を含むワクチンであって、当該残基[X]が、ロイシン以外の任意のアミノ酸である、前記ワクチン。
【請求項13】
前記残基[X]が、ロイシン以外の任意の疎水性アミノ酸である、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記残基[X]が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
アジュバントをさらに含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項16】
UTOPEをさらに含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項17】
請求項1に記載のレプリキンペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項18】
請求項1に記載のレプリキンペプチドの抗原部分列に対する実質的に単離した抗体であって、当該抗原部分配列が、請求項1に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基を含む、前記抗体。
【請求項19】
インフルエンザウイルスの第1株から実質的に単離されたレプリキンペプチドであって、当該インフルエンザウイルスの第1株が、インフルエンザウイルスの新生株であり、また上記実質的に単離されたレプリキンペプチドが、7〜約50アミノ酸を含み、そして以下の:
(1)上記レプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、及び当該レプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基若しくは少なくとも1つのリジン残基;
(2)第2リジン残基から6〜10残基に位置する第1リジン残基;
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(4)少なくとも6%のリジン残基
から成るモチーフを識別し、ここで上記インフルエンザウイルスの第2株における他の点では同一の配列と比較して、識別されたモチーフの末端残基の間のレプリキンペプチド配列に位置する1つのアミノ酸における置換が生じ、リジンまたはヒスチジンが置換されず、インフルエンザウイルスの前記第1株の前記識別されたモチーフの前記末端残基間の前記置換が、第2株と比較して、急速複製および毒性の増加に関連する;
前記識別されたモチーフを選択し、前記識別されたモチーフを含む前記レプリキンペプチドを単離するステップによって単離される、前記レプリキンペプチド。
【請求項20】
インフルエンザウイルスのH5N1株から単離される、請求項19に記載のレプリキンペプチド。
【請求項21】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項22】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの前記アミノ酸配列の7〜29アミノ酸残基を含む抗原部分配列を含むワクチン。
【請求項23】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドに対して実質的に単離される抗体。
【請求項24】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの抗原部分配列に対して実質的に単離される抗体であって、当該抗原部分配列が、請求項19に記載の前記レプリキンペプチドの7〜29アミノ酸残基を含む、前記抗体。
【請求項25】
インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性、または宿主細胞の死亡率の増加を予測する方法であって、
(1)複数のレプリキン骨格ペプチドを含むインフルエンザウイルスレプリキン骨格を識別するステップであって、当該レプリキン骨格は、上記インフルエンザウイルスの第1株から単離した第1レプリキン骨格ペプチド、インフルエンザウイルスの第2株から単離した第2レプリキン骨格ペプチド、およびインフルエンザウイルスの第3株から単離した第3レプリキン骨格ペプチドを含むステップ、
(2)上記第2レプリキン骨格ペプチドと比較して、置換された上記第3レプリキン骨格ペプチドにおける1つのアミノ酸を識別するステップであって、当該置換アミノ酸がヒスチジンではないステップ、
(3)インフルエンザウイルスの前記第2株と比較して、インフルエンザウイルスの前記第3株が、高い複製、毒性または宿主細胞の死亡率を示すかどうかを判断するステップ、
(4)上記第2レプリキン骨格と比較して、上記第3レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基が、上記第1レプリキン骨格ペプチドにおいても置換されるかどうかを判断するステップ、
(5)上記インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数を、上記インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数と比較するステップ、
(6)上記インフルエンザウイルスの第1株のレプリキン数が、上記インフルエンザウイルスの第1株の初期発生分離株のレプリキン数より多いかどうかを判断するステップ、
(7)上記インフルエンザウイルスの第2株と比較して、インフルエンザウイルスの第1株における複製、毒性または宿主細胞の死亡率の増加を予測するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記第2レプリキン骨格と比較して、前記第1レプリキン骨格において置換されたアミノ酸残基が、第2レプリキン骨格の末端ヒスチジンから5アミノ酸残基に配置される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外のアミノ酸残基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記置換アミノ酸残基が、ロイシン以外の疎水性アミノ酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記置換アミノ酸残基が、メチオニンまたはイソロイシンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1、第2および第3レプリキン骨格が、29のアミノ酸を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
インフルエンザウイルスの第1新生株からレプリキンペプチドを識別するステップであって、前記インフルエンザウイルスレプリキンペプチドは7〜約50アミノ酸で構成され、また前記インフルエンザウイルスレプリキンペプチドは、
(1)前記単離したレプリキンペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリジン残基、および少なくとも1つのリジン残基または前記単離したレプリキンペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(2)第2リジン残基から6〜10残基にある第1リジン残基と、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基と、
(4)少なくとも6%のリジン残基と、から成るモチーフを含み、
前記インフルエンザウイルスの第2株における同一配列と比較して、前記モチーフの前記末端残基間でアミノ酸の置換が発生し、リジンまたはヒスチジンは置換されていないステップと、インフルエンザウイルスの第3株における同一配列における前記置換をインフルエンザウイルスの前記第2株と比較して、インフルエンザウイルスの前記第3株における急速複製および毒性の増加とを関連付けるステップと、およびインフルエンザウイルスの前記第1株の前記毒性の増加を予測するステップと、を含むことを特徴とするインフルエンザウイルスの新生株における毒性の増加を予測する方法。
【請求項32】
アミノ酸配列KKX1X2X3YPTIKX4X5X6NNTNX7EDLLVX8WGIX9Hを含む実質的に単離されたレプリキンペプチドであって、式中、
X1はNまたはGであり、
X2はNまたはSであり、
X3はAまたはTであり、
X4はRまたはKであり、
X5はSまたはTであり、
X6は任意のアミノ酸残基であり、
X7は任意のアミノ酸残基であり、
X8はロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、そして
X9はHまたはQである、前記レプリキンペプチド。
【請求項33】
X6がYである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項34】
X7がQ、I、M、VまたはHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項35】
X7がQまたはHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項36】
X7がQである、請求項35に記載のレプリキンペプチド。
【請求項37】
X8がメチオニン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アスパラギンまたはグルタミンであることを、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項38】
X8がメチオニン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニンまたはトリプトファンである、請求項37に記載のレプリキンペプチド。
【請求項39】
X8がメチオニンまたはイソロイシンである、請求項38に記載のレプリキンペプチド。
【請求項40】
X8がメチオニンである、請求項39に記載のレプリキンペプチド。
【請求項41】
X8がイソロイシンである、請求項39に記載のレプリキンペプチド。
【請求項42】
X9がHである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項43】
X1がNであり、
X2がSであり、
X3がTであり、
X4がRであり、そして
X5がSである、請求項32に記載のレプリキンペプチド。
【請求項44】
請求項32に記載のレプリキンペプチドの抗原部分配列を含む実質的に単離されたペプチドであって、当該抗原部分配列が、請求項32に記載のレプリキンペプチドのアミノ酸配列の7〜29アミノ残基である、前記ペプチド。
【請求項45】
請求項32に記載の実質的に単離されたレプリキンペプチドを含むワクチン。
【請求項46】
請求項44に記載の実質的に単離されたペプチドを含むワクチン。
【請求項47】
請求項32に記載の実質的に単離されたレプリキンペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項48】
請求項44に記載の実質的に単離されたペプチドに対する実質的に単離された抗体。
【請求項49】
請求項1に記載のレプリキンペプチドをコードする、実質的に単離された核酸。
【請求項50】
請求項19に記載の前記レプリキンペプチドをコードする、実質的に単離された核酸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【公表番号】特表2009−538630(P2009−538630A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513433(P2009−513433)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/069978
【国際公開番号】WO2008/060702
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(501141781)
【出願人】(501141792)
【出願人】(507273792)
【出願人】(507273806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/069978
【国際公開番号】WO2008/060702
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(501141781)
【出願人】(501141792)
【出願人】(507273792)
【出願人】(507273806)
【Fターム(参考)】
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