説明

レンジフード

【課題】調理器具で発生した油煙や水蒸気を含む空気中の油粒子を高い捕集効率で捕集でき、油捕集用フィルターを省略してその清掃作業の不要なレンジフードを提供する。
【解決手段】レンジフード1は、フード本体部12に設けられた吸込口11から吸込まれた空気Bを、フード本体部の内部の通気路15を流してファン13で排気する。レンジフードは、通気路を流れる空気中の油粒子の流れ方向に対して交差する方向に液体噴射部17で水の微粒子18を噴射して、この水微粒子を油粒子に衝突させることにより油粒子を冷却して捕集する第1段階の捕集手段と、液体噴射部と対向して配置された第1のバッフル19に、第1段階の捕集手段で捕集されなかった油粒子および水微粒子を衝突させてこれらを捕集する第2段階の捕集手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所に設置されるキッチンの調理器具(調理用の加熱器具)の上方に設置して、調理時に発生する油煙などを含む空気を室外に排気するためのレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンジフードには各種構造のものがあるが、その一例として、調理器具で発生した油煙や水蒸気を含む空気を、レンジフード内部に設けた油捕集用のフィルターを通過させることにより、この空気中の油煙を構成する油粒子を捕集して、フィルター以降のフード内部の油汚れや屋外への油煙の放出量を軽減させる場合がある。
このレンジフードは、フィルターの有する多くの孔のところに油が次第に付着していくので、この油の付着量が多くなってくると、孔が次第に塞がってレンジフードの捕集能力が低下する。
そのため、時々フィルターの清掃を行なって、付着した油を除去する作業が必要不可欠である。しかし、レンジフードは高い位置にあるので作業性が悪く、キッチン廻りの掃除箇所のうち、レンジフードはユーザーにとって好ましくない場所の上位にランクされている。
【0003】
そこで、特許文献1(特開平7−180872号公報)には、フィルターに対してノズルで水を噴霧することにより、フィルターを清潔に保つようにしたレンジフードが提案されている。
一方、特許文献2(特開平8−939号公報)には、レンジフードにバッフルを設け、空気中の油脂分など汚染物質をバッフルに衝突させて除去するとともに、洗浄ノズルから洗浄液をバッフルに向けて噴射することによりバッフルを洗浄するようにしたレンジフードが記載されている。
【特許文献1】特開平7−180872号公報
【特許文献2】特開平8−939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレンジフードでは、フィルター裏面に水を噴出しているため、最も汚れが付きやすいフィルター表面は汚れが落ちにくい。
一方、特許文献2(特に、その図7,図8など)に示すレンジフードは、洗浄ノズルから洗浄液を噴射してバッフルを洗浄するようにしている。
ところが、調理器具で熱せられることによって発生した油煙を構成する油粒子は、高温で細かくなっているので、多孔質のフィルターよりも風道の開口部の大きいバッフルの構造では、バッフルに衝突せずにレンジフード内を通過してしまう頻度が多くなって、油粒子を十分に捕集できない恐れがある。
その結果、レンジフードの内部の通気路やファンに多くの油が付着してたり多くの油が屋外に排気されてしまい、住宅の外壁を汚す原因となったり環境への悪影響の恐れもあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、調理器具で発生した油煙や水蒸気を含む空気中の油粒子を高い捕集効率で捕集することができ、また、油捕集用のフィルターを省略してその面倒な清掃作業を不要にすることができるレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明にかかるレンジフードは、フード本体部に設けられた吸気口から吸込まれた空気を、前記フード本体部の内部の通気路を流してファンにより排気するレンジフードであって、前記通気路を流れる前記空気中の油粒子の流れ方向に対して交差する方向に液体噴射部で液体の微粒子を噴射して、この液体微粒子を前記油粒子に衝突させることによりこの油粒子を冷却して捕集する第1段階の捕集手段と、前記液体噴射部と対向して配置された第1のバッフルに、前記第1段階の捕集手段で捕集されなかった前記油粒子および前記液体微粒子を衝突させてこれらを捕集する第2段階の捕集手段とを備えている。
前記第1のバッフルより下流側に、第2のバッフルを有する第3段階の捕集手段を配置し、前記通気路を移動した前記油粒子および前記液体微粒子を前記第2のバッフルに衝突させてこれらを捕集するのが好ましい。
好ましくは、前記バッフルのバッフル面には親水性塗装処理がなされており、このバッフル面に衝突した前記油粒子および前記液体微粒子がこのバッフル面をスムーズに流下する。
前記液体噴射部と前記バッフルは、前記フード本体部の中心線に対して左右対称に設けられているのが好ましい。
好ましくは、前記液体噴射部で噴射される前記液体微粒子の流速は、前記通気路を流れる前記空気の風量に対応して適切な流速になるように調節可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるレンジフードは、上述のように構成したので、調理器具で発生した油煙や水蒸気を含む空気中の油粒子を高い捕集効率で捕集することができ、また、油捕集用のフィルターを省略してその面倒な清掃作業を不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
下記の実施例にかかるレンジフードには、フード本体部の内部の通気路を流れる油煙や水蒸気を含む空気中の油粒子の移動方向に対して交差する方向に液体噴射部で液体(たとえば、水)の微粒子を噴射して、この液体微粒子を油粒子に衝突させることにより油粒子を冷却して油粒子を捕集する第1段階の捕集手段と、液体噴射部と対向して配置された第1のバッフルに、第1段階の捕集手段で捕集されなかった油粒子および液体微粒子を衝突させてこれらを捕集する第2段階の捕集手段とを設けることにより、油粒子を高い捕集効率で捕集するとともに油捕集用のフィルターを省略するという目的を実現している。
台所に設置されるキッチン(たとえば、複合厨房家具の一種であるシステムキッチン)に設けられて油煙や水蒸気を発生する調理器具としては、コンロ(たとえば、ガスコンロ,その他のコンロ(IHクッキングヒーター,ラジエントヒーターまたはシーズヒーターを用いたコンロ),オーブンレンジ,スチームオーブン,トースター,フィッシュロースター,電子レンジ,炊飯器などがある。
【実施例】
【0009】
以下、本発明にかかる実施例を図1ないし図17を参照して説明する。
図1ないし図17は本発明の一実施例を示す図で、図1は、レンジフードが設置された台所の一部を示す斜視図、図2は、使用直前のレンジフードの正面断面図、図3は、使用中の状態を示すレンジフードの正面断面図、図4は、図3中のIV部を例にとってレンジフードの原理を示す説明図である。
図5は、レンジフードを下方から見たときの斜視図、図6,図7は、それぞれレンジフードの正面断面図,側面断面図、図8は、整流板を開いた状態のレンジフードの斜視図、図9はレンジフードの分解斜視図、図10は、図9に示すレンジフードをさらに分解した状態を示す斜視図である。
図11は、レンジフードを上方から見たときの斜視図、図12は、図11に示すレンジフードの各部品を破線で示した斜視図、図13は、図12に示すレンジフードの内部の一部を示す斜視図、図14は、整流板を開いた状態のレンジフードの斜視図、図15はレンジフードの分解斜視図、図16は、図15に示すレンジフードをさらに分解した状態を示す斜視図である。
なお、説明の便宜上、図1中の符号D1,D2,D3,D4で示す各方向を、それぞれレンジフードの左方,右方,前方,後方とする。
【0010】
図1ないし図3に示すように、台所2には、複合厨房家具の一種であるシステムキッチン3が設置されている。システムキッチン3は、床面上に設置されたキャビネット4を有している。キャビネット4には、グリル5とIH(電磁誘導加熱)クッキングヒーター6とを有するコンロ7が設けられている。コンロ7は、調理器具(調理用の加熱器具)の一種である。
コンロ7の上方にはレンジフード1が設置され、レンジフード1の横には収納庫8が設置されている。レンジフード1は、コンロ7を使って調理を行う際に発生する油煙や水蒸気を含んで上昇する空気Bを吸込んで、室外に排気することができる。
レンジフード1は、コンロ7の上方に位置して吸気口11が設けられたフード本体部12と、フード本体部12の上方に配置されてファン13が設けられたファンユニット14とを有している。
レンジフード1は、フード本体部12に設けられた吸気口11から吸込まれた空気Bを、フード本体部12内の通気路15を流してファン13により排気する。
【0011】
図2ないし図4に示すように、レンジフード1は、第1段階の捕集手段S1と第2段階の捕集手段S2を備えている。コンロ7で発生した油煙は、多数の油粒子16により構成されている。
第1段階の捕集手段S1では、フード本体部12内の通気路15を流れる空気B中の油粒子16の流れ方向(C方向)に対して交差する方向(E方向)に、液体としての水Wの多数の微粒子(すなわち、微小な水滴)18を液体噴射部17で噴射する。これにより、この水の微粒子18を油粒子16に衝突させて、この油粒子16を冷却して捕集する。
第2段階の捕集手段S2では、液体噴射部17と対向して配置された第1のバッフル19に、第1段階の捕集手段S1で捕集されなかった油粒子16および液体微粒子としての水の微粒子18を衝突させて、油粒子16と水の微粒子18とを捕集する。
これにより、レンジフード1は、コンロ7で発生した油煙や水蒸気を含む空気B中の油粒子16を、高い捕集効率で捕集することができる。
すなわち、油粒子16を第1段階の捕集手段S1で捕集した後、続けて第2段階の捕集手段S2で捕集するという、直列的な二つの段階の捕集手段S1,S2をレンジフード1に設けたので、油粒子16を高い捕集効率で捕集することができる。また、従来必要であった油捕集用のフィルターを省略して、その面倒な清掃作業を不要にすることができる。
【0012】
さらに、レンジフード1は、第2のバッフル20を有する第3段階の捕集手段S3を備えている。第3段階の捕集手段S3は、第1のバッフル19より下流側に直列的に配置されている。第3段階の捕集手段S3は、通気路15を移動した油粒子16および水の微粒子18を第2のバッフル20に衝突させて、これら油粒子16と水の微粒子18を捕集する機能を有している。
その結果、第1段階の捕集手段S1と第2段階の捕集手段S2の両方の捕集手段で捕集しきれなかった油粒子16と水の微粒子18を、第3段階の捕集手段S3で最終的に捕集することができ、レンジフード1全体の捕集効率をさらに向上させることができる。
なお、液体として水Wを使用した場合を示したが、水の代わりにたとえば泡立ちの少ない洗剤を含む洗浄液などであってもよい。
【0013】
図2,図3,図5ないし図16に示すように、フード本体部12は、平面視でほぼ矩形で下方側に開口したケーシング30を有している。フード本体部12は、その中心線CLを中心として左右にほぼ対称形になっている。
フード本体部12の上部にはファンユニット14が配置されている。フード本体部12の後部分とファンユニット14は、幕板44により覆われてユーザーからは見えないようになっている。
ファンユニット14は、フード本体部12の上部で且つ後方に寄せて配置されている。ファンユニット14の内部にはファン13が設置され、ファン13の吐出側は、室外まで延びたダクト31に接続されている。
ファン13はシロッコファンであり、その吸込側がフード本体部12の通気路15と連通している。ファン13は、通気路15を流れる空気Bを吸込んで、ダクト31を介して室外に排気する。
【0014】
フード本体部12の下面側は矩形の開口部32になっており、開口部32の周囲が矩形の内周縁33になっている。
吸込性能を高めるために、開口部32には、左右一対の整流板34が互いに離れた状態で対向配置されている。整流板34は、ケーシング30に取付けられたヒンジ35に支持されて、揺動可能になっている。
整流板34は、通常は開口部32の大部分を覆うように、水平方向に対して若干傾斜した状態で支持されているが、清掃や点検などを行うときには、ヒンジ35を中心として矢印Gに示すように下方に開くようになっている。
左右一対の整流板34は、中心線CL側が低くなるように傾斜するとともに前後方向に延びて配置されている。一対の整流板34は、その上方の第1段階の捕集手段S1,第2段階の捕集手段S2および第3段階の捕集手段S3で捕集された油Lや水Wが流下するのを受け、この油Lや水Wを中心線CL方向に集める機能を有している。
整流板34の前方の縁部45と後方の縁部45は若干上方に折曲形成された縁になっており、整流板34の上面を捕集タンク36に向かって流れる油Lや水Wが、縁部45から流れ落ちないようになっている。
【0015】
左右の整流板34の間の中央部には、捕集タンク36が前後方向に延びて配置され、捕集タンク36はケーシング30に着脱可能に取付けられている。捕集タンク36には、左右の整流板34上を流下してきた油Lや水Wが貯留される。
整流板34を使用状態の姿勢に保持したままで、捕集タンク36のみを取り外すことができるようになっている。捕集タンク36に油Lや水Wが溜まったら、捕集タンク36を、ケーシング30から取り外して清掃できるようにしている。
なお、捕集タンク36に排水管(図示せず)を接続して、捕集タンク36内の油Lや水Wを、この排水管を介して下方に流すようにすれば、捕集タンク36をいちいち取り外して清掃する必要がなくなるので、ユーザーの負担が軽減する。
【0016】
ケーシング30の下面側の開口部の内周縁33と整流板34との間の隙間(開口)が、吸気口11になっている。
ファン13の運転時には、コンロ7で発生した油煙や水蒸気を含む空気Bは、吸気口11からフード本体部12内の通気路15に流れ込む。そして、空気Bは、ケーシング30の上面に形成された開口39を通ってファン13に吸引される。
【0017】
通気路15の中央部には、断面きのこ状の第1のバッフル19が、前後方向に延びて配置されている。第1のバッフル19の上方すなわち下流側には、左右一対の第2のバッフル20が前後方向に延びて配置されている。一対の第2のバッフル20のバッフル面42は、滑らかな曲面状に形成されている。
第1のバッフル19と第2のバッフル20は、ケーシング30に設けられている。第1のバッフル19の左右方向外方には、一対の液体噴射部17が前後方向に延びて配置されている。
一対の液体噴射部17より左右方向外方に、水Wを貯蔵するための一対のタンク37が、前後方向に延びて配置されている。なお、タンク37は、フード本体部12内に固定された場合を示しているが、タンク37を、カートリッジの構造にしてケーシング30に対して着脱可能にしてもよい。
左右一対のタンク37と左右一対の液体噴射部17は、第1のバッフル19とほぼ同じ高さ位置に位置してケーシング30に設けられている。一対の液体噴射部17は、第1のバッフル19に対向して配置されている。
【0018】
第1のバッフル19は、滑らかな曲面形状をなす左右一対のバッフル面38を有している。左側のバッフル面38は、正面から見て断面逆C形に形成され、右側のバッフル面38は、正面から見て断面C形に形成されている。
左右一対のタンク37には、給水用の水Wが貯留されている。タンク37内の水Wは、ポンプ(図示せず)など圧力発生手段により、矢印Hに示すように、液体噴射部17に所望の圧力で供給される。なお、タンク37の代わりに給水管(図示せず)を設けて、この給水管から所望の圧力の水Wを液体噴射部17に供給するようにしてもよい。
【0019】
左右一対の液体噴射部17は、通気路15における空気Bの通路を確保するように、下方に行くにしたがって次第に左右方向に広がる傾斜面となっている噴射面40を有している。
噴射面40には多数の孔41が形成されている。タンク37から液体噴射部17に供給された水Wは、噴射面40の孔41から、多数の水の微粒子18となって、第1のバッフル19のバッフル面38に向かって噴射される。
液体噴射部17で噴射される水の微粒子(液体微粒子)18の流速は、通気路15を流れる空気Bの風量に対応して適切な流速になるように調節可能である。フード本体部12に設けられた操作部43をユーザーが操作することにより、ファン13を制御して空気Bの風量(風速)を調節し、また、タンク37内の水Wを液体噴射部17に供給するポンプなどを制御して、液体噴射部17で噴射される水の微粒子18の流速,粒径などを調節することができる。
こうすることにより、液体噴射部17で噴射される水の微粒子18を、空気Bとともに通気路15を流れる油粒子16に適切に衝突させて、この油粒子16を冷却し捕集することができる。
【0020】
一対の第2のバッフル20は、第1のバッフル19の斜め上方の位置で前後方向に延びて形成されるとともに、左右に対向配置されている。左側の第2のバッフル20は、第1のバッフル19の斜め左上に配置され、右側の第2のバッフル20は、第1のバッフル19の斜め右上に配置されている。左側の第2のバッフル20は逆倒J字状をなし、右側の第2のバッフル20は倒J字状をなしている。
こうして、液体噴射部17と第1のバッフル19と第2のバッフル20は、フード本体部12の中心線CLに対して左右対称に設けられている。これにより、レンジフード1は、中心線CLを中心として左右のバランスがよくなるので、取付け作業が容易になり、また、運転中の振動や音などの発生が抑制される。
なお、液体噴射部17と第1のバッフル19と第2のバッフル20を、フード本体部12の中心線CLに対して左右対称に設けた場合を示したが、レンジフードの取付け場所などの都合で、左右一方側にのみ液体噴射部17とバッフル19,20を設けた場合であってもよい。
【0021】
第1のバッフル19のバッフル面38と、第2のバッフル20のバッフル面42には、親水性塗装処理がなされており、これらバッフル面38,42に衝突した油粒子16と水の微粒子(液体微粒子)18が、このバッフル面38,42をスムーズに流下するようにしている。
これにより、油粒子16と水の微粒子18がバッフル面38,42に接触したとき、水の微粒子18がバッフル面38,42の表面に広がって水膜を形成するので、バッフル面38,42に衝突した油粒子16が油分となって水膜上に浮き上がって自然に流れ落ちることになり、バッフル面38,42が汚れ難くなる。
なお、バッフル面38,42に限らず、フード本体部12で通気路15を形成する内面全体と、ファンユニット14で通気路15を形成する内面全体に、それぞれ親水性塗装処理を行えば、この親水性塗装処理を行なった表面に水が付着すると、油分が浮き上がって自然に流れる作用があるので、レンジフード1の内部全体を常時清浄な状態に保つことができる。
【0022】
図17は、操作部43の操作によるレンジフード1の機能を示す説明図である。
図17に示すように、「常時換気」のモードのスイッチ60を押すと、レンジフード1は換気扇としての機能を発揮し、この時、排気風量が「極少」,液体噴射部17からの水噴出が「無」となる。「切」のスイッチ61を押すと、照明,常時換気以外の全てのモードが切れる。
調理が終わって「3分後切」のモードのスイッチ62を押すと、その後、3分間の遅延運転を行なって、3分後に照明と常時換気以外の全てのモードが切れる。遅延運転の最中、水の噴出は「無」となって水噴出は作動しない。
水噴出のモードのスイッチ63は、通常運転モード65が選択されて「強」,「中」,「弱」のいずれかのモードが作動している状態のときにのみ、水噴出を行うことができるようになっている。水噴出のスイッチ63をON,OFFすると、液体噴出部17から水の微粒子18の噴出がON,OFFになる。
照明のスイッチ64をON,OFFすると、フード本体部12に取付けられている照明(図示せず)がON,OFFになる。
【0023】
次に、「通常運転モード」65を選択したいときには、「強」,「中」,「弱」の各モードのスイッチ66,67,68のうちいずれか一つのスイッチを押すことになり、このとき、液体噴出部17から水の微粒子18が噴出される。
「通常運転モード」65において、「強」のモードのスイッチ66を押すと、空気Bの風量すなわち排気風量が「大」,水噴出速度が「速」,水噴出量が「多」となる。この「強」のモードは、たとえば、魚や肉を使った調理を行なって空気B中に多くの油煙を含む場合に適している。
このときは、空気B中の油煙すなわち油粒子16の量が多かったりその粒径が大きかったりするので、レンジフード1による排気風量を大きくして、速やかに排気する必要があるからである。
排気風量が大きくなると、排気風速が速くなる。この排気風速に対応して、液体噴射部17から噴射される水の微粒子18の速度を速くし、水の噴出量を多くする必要がある。
【0024】
「通常運転モード」65において、「弱」のモードのスイッチ68を押すと、空気Bの風量すなわち排気風量は「少」,水噴出速度は「遅」,水噴出量は「少」となる。この「弱」のモードは、油煙をそれほど発生しない調理、たとえば煮物の調理を行うときなどに適している。
このモードを選ぶときは、油煙の発生が少ないかまたはほとんど発生しない場合なので、排気風量は少なくてよく、これに対応して液体噴出部17から噴出する水の噴出速度は遅く、また、水噴出量も少なくてよい。
「通常運転モード」65において「中」のモードは、「強」のモードと「弱」のモードの中間の場合に選択される。「中」のモードのスイッチ67を押すと、空気Bの風量すなわち排気風量は「中」,水噴出速度は「中」,水噴出量も「中」となり、「強」のモードと「弱」のモードの中間の状態になる。
【0025】
「通常運転モード」65で、強,中,弱のそれぞれのスイッチ66,67,68のうちいずれか一つのスイッチを押した後、「水噴出」のモードのスイッチ63を押すと、通常運転モード中の水の噴出が無くなる。この状態で、再度「水噴出」のスイッチ63を押すと、水噴出を再び開始する。
これは、たとえば、煮物やお湯を沸かすなどの調理時には油煙がほとんど発生せず、油粒子16を捕集する必要がないので、水噴出を止めることができるようにするのに都合のよい機能である。
【0026】
次に、レンジフード1の動作について説明する。
システムキッチン3でユーザーがコンロ7を使って調理をする際には、操作部43を操作してレンジフード1を運転する。なお、「常時換気」のスイッチ60は、調理時ではなく、台所2の室内の汚染空気を換気したい場合に使用するモード用であり、スイッチ60を押せば、ファン13が低速で回転して排気風量は極少となり、水噴出は作動しない。
【0027】
コンロ7を使う調理を行なって、コンロ7から油煙や水蒸気が発生する場合には、通常運転モード65を選択する。油煙などの発生の程度に応じて、スイッチ66,67,68のうちいずれか一つのスイッチを押す。
すると、ファン13が起動するので、コンロ7で発生した油煙や水蒸気を含む空気Bは、吸気口11から吸込まれ、フード本体部12の内部の通気路15を流れた後、ダクト31を通って室外に排気される。すなわち、油煙などを含んだ空気Bは、吸気口11から吸込まれて通気路15を流れる。
タンク37内の水Wは、液体噴射部17に供給され、噴射面40から噴射されて多数の水の微粒子18になる。この水の微粒子18は、空気B中の多数の油粒子16が流れるC方向に対して交差するE方向に噴射される。
すると、冷たい水の微粒子18が高温の油粒子16に衝突するので、油粒子16が冷却される。その結果、油粒子16は、比重が大きくなって重くなるとともに、油粒子16同士も合体してサイズが大きくなるので、自重により落下していく。こうして、第1段階の捕集手段S1で油粒子16が捕集される。
【0028】
第1段階の捕集手段S1で捕集されなかった油粒子16は、液体噴射部17と対向する第1のバッフル19のバッフル面38に、水の微粒子18とともに衝突する。バッフル面38に衝突した油粒子16と水の微粒子18は、その流速がゼロになって捕集される。
こうして、油粒子16と水の微粒子18は、第2段階の捕集手段S2により捕集され、バッフル面38に沿って油Lおよび水Wとなって下方に流れ、整流板34上を流れて捕集タンク36に集められる。
【0029】
ところが、二つの捕集手段S1,S2で捕集されなかった油粒子16がある場合には、この油粒子16は、第1のバッフル19より下流側(すなわち上方)に配置された第3段階の捕集手段S3の第2のバッフル20で最終的に捕集する必要がある。
すなわち、通気路15を流れている油粒子16および水の微粒子18を、第2のバッフル20のバッフル面42に衝突させることにより、これら油粒子16と水の微粒子18とを捕集する。
コンロ7で発生した油煙を構成する油粒子16は、第2のバッフル20に到達するまでにはかなり冷却されてサイズが大きくなっているので、さらに油粒子16の捕集が容易になる。
【0030】
第1のバッフル19のバッフル面38と、第2のバッフル20のバッフル面42は、親水性塗装処理がなされているので、バッフル面38,42に衝突してその流速がゼロになった油粒子16と水の微粒子18は、バッフル面38,42をスムーズに流れ落ちる。
空気Bに含まれている水蒸気も、水の微粒子18が衝突することにより冷却されて、第1段階の捕集手段S1で捕集されるとともに、第2段階の捕集手段S2で第1のバッフル19に衝突して捕集され、第3段階の捕集手段S3で第2のバッフル20に衝突して最終的に捕集される。
なお、レンジフード1は、油粒子16を捕集するのが主な機能であり、水の微粒子18や空気B中の水蒸気の各一部分が捕集されずに室外に排気されたとしても、いずれも水であるので実害はない。
【0031】
通常運転モード65において、スイッチ66,67,68のうちいずれか一つの所望のスイッチを押すことにより、最適なモードを選択できる。したがって、液体噴射部17で噴射される水の微粒子18の流速が、通気路15を流れる空気Bの風量に対応して適切な流速になるように調節される。
その結果、水の微粒子18は、油粒子16の流れ方向に対して交差する方向に流れて、油粒子16に衝突して油粒子16を冷却し、その後、油粒子16と水の微粒子18は、第1のバッフル19と第2のバッフル20に衝突して高い捕集効率で捕集される。
【0032】
このように、本実施例では、油粒子16を三つの段階の捕集手段S1,S2,S3で直列式に且つ段階的に順次捕集するので、第1段階の捕集手段S1で捕集されなかった油粒子16は、第2段階の捕集手段S2の第1のバッフル19で捕集される。もし、第1のバッフル19で捕集できなかった油粒子16があれば、この油粒子16は第2のバッフル20で最終的に捕集される。
その結果、空気B中の油粒子16の捕集効率を高くすることができ、室外に排出される空気Bにはほとんど油粒子16は含まれないことになる。
【0033】
一対の整流板34を下方に開いたり、捕集タンク36を取り外しできるので(図8,図14)、これら整流板34,捕集タンク36の清掃や通気路15内の清掃,点検を容易に行うことができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、台所に設置されるキッチン(たとえば、システムキッチン)などに設けられたコンロなど調理器具の上方に設置されるレンジフードに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1ないし図17は本発明の一実施例を示す図で、図1は、レンジフードが設置された台所の一部を示す斜視図である。
【図2】使用直前のレンジフードの正面断面図である。
【図3】使用中の状態を示すレンジフードの正面断面図である。
【図4】図3中のIV部を例にとってレンジフードの原理を示す説明図である。
【図5】レンジフードを下方から見たときの斜視図である。
【図6】レンジフードの正面断面図である。
【図7】レンジフードの側面断面図である。
【図8】整流板を開いた状態のレンジフードの斜視図である。
【図9】レンジフードの分解斜視図である。
【図10】図9に示すレンジフードをさらに分解した状態を示す斜視図である。
【図11】レンジフードを上方から見たときの斜視図である。
【図12】図11に示すレンジフードの各部品を破線で示した斜視図である。
【図13】図12に示すレンジフードの内部の一部を示す斜視図である。
【図14】整流板を開いた状態のレンジフードの斜視図である。
【図15】レンジフードの分解斜視図である。
【図16】図15に示すレンジフードをさらに分解した状態を示す斜視図である。
【図17】操作部の操作によるレンジフードの機能を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 レンジフード
11 吸込口
12 フード本体部
13 ファン
15 通気路
16 油粒子
17 液体噴射部
18 水の微粒子(液体の微粒子)
19 第1のバッフル
20 第2のバッフル
38,42 バッフル面
B 空気
C 油粒子の流れ方向
CL 中心線
E 交差する方向
S1 第1段階の捕集手段
S2 第2段階の捕集手段
S3 第3段階の捕集手段
W 水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード本体部に設けられた吸気口から吸込まれた空気を、前記フード本体部の内部の通気路を流してファンにより排気するレンジフードであって、
前記通気路を流れる前記空気中の油粒子の流れ方向に対して交差する方向に液体噴射部で液体の微粒子を噴射して、この液体微粒子を前記油粒子に衝突させることによりこの油粒子を冷却して捕集する第1段階の捕集手段と、
前記液体噴射部と対向して配置された第1のバッフルに、前記第1段階の捕集手段で捕集されなかった前記油粒子および前記液体微粒子を衝突させてこれらを捕集する第2段階の捕集手段とを備えたことを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
請求項1に記載のレンジフードであって、
前記第1のバッフルより下流側に、第2のバッフルを有する第3段階の捕集手段を配置し、前記通気路を移動した前記油粒子および前記液体微粒子を前記第2のバッフルに衝突させてこれらを捕集することを特徴とするレンジフード。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンジフードであって、
前記バッフルのバッフル面には親水性塗装処理がなされており、このバッフル面に衝突した前記油粒子と前記液体微粒子がこのバッフル面をスムーズに流下するようにしたことを特徴とするレンジフード。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載のレンジフードであって、前記液体噴射部と前記バッフルは、前記フード本体部の中心線に対して左右対称に設けられていることを特徴とするレンジフード。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載のレンジフードであって、前記液体噴射部で噴射される前記液体微粒子の流速は、前記通気路を流れる前記空気の風量に対応して適切な流速になるように調節可能であることを特徴とするレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−64347(P2008−64347A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240432(P2006−240432)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】