説明

レンズを包装する方法

コンタクトレンズのパッケージが滅菌溶液に浸漬されたコンタクトレンズが入っている密封容器を含んでいる。そのコンタクトレンズはシリコーンヒドロゲルコポリマー製であり、および前記溶液は、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止するのに有効な量の安定剤を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定度と貯蔵寿命を改良されたシリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズを入れるコンタクトレンズ用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンヒドロゲルは、コンタクトレンズの用途に使用される一クラスの材料である。ヒドロゲルは、水を平衡状態で含有する、水和され架橋されたポリマー系で構成されている。シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズの場合、そのヒドロゲルコポリマーは、一般に、少なくとも一種のレンズ形成性シコーン含有モノマーおよび少なくとも一種のレンズ形成性親水性モノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって製造される。
【0003】
ヒドロゲル製コンタクトゲルは、一般に、コンタクトレンズと滅菌包装溶液を保持するガラス製バイアル内または容器部分を含むプラスチック製ブリスターパッケージ内に包装される。前記溶液に浸漬されたコンタクトレンズの入っているこのバイアルまたは容器は、例えば、その容器を覆うパッケージのリッドストック(lidstock)を密閉することによって密封される。そのパッケージは、レンズを安全に輸送しおよび貯蔵する手段として働く。コンタクトレンズは、かなりの期間、使用するためそのパッケージから取り出すことがないことがある。例えば、そのパッケージ内のレンズは、製造業者または販売業者が在庫品として保管することがあり、また、コンタクトレンズの着用者が購入して長期間備蓄することもある。したがって、包装されたレンズは、十分な貯蔵寿命を有することが大切である。事実、コンタクトレンズのパッケージにはレンズの貯蔵寿命の限界を示す期限日が表示されている。
【0004】
シリコーンヒドロゲルコポリマーは、シリコーンヒドロゲル製でない従来のレンズより、加水分解作用に対して不安定な傾向が大きい。換言すれば、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズは、それが包装されて貯蔵されている間に、そのヒドロゲルコポリマーの架橋密度が変化するため、時間の経過とともに、モジュラスなどの機械的特性が変化する傾向が大きい。機械的特性のこのような変化によって、貯蔵寿命が必要な貯蔵寿命より短くなってしまうことがある。このように、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズが、シリコーンヒドロゲル製でない従来のレンズより貯蔵寿命が短いことは、珍しいことではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を認識して、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズの包装と貯蔵に付随する各種問題点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
各種側面によって、本発明は、滅菌溶液中に浸漬されたコンタクトレンズが入っている密封容器を含むコンタクトレンズパッケージであって、そのコンタクトレンズがシリコーンヒドロゲルコポリマー製であり、かつその溶液が、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止するのに有効な量の安定剤を含有しているコンタクトレンズパッケージを提供する。
【0007】
各種の好ましい実施態様によって、前記安定剤は、機械的特性の変化、例えばモジュラスの変化を阻止する。
【0008】
その安定剤は、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーと、イオン複合体または水素結合複合体を形成できる。
【0009】
一例を挙げると、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーがアニオンであり、そして前記安定剤は、カチオン電荷を有し、カチオン剤や双性イオン剤である。
【0010】
一例を挙げると、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーがカチオンであり、そして前記安定剤は、アニオン電荷を有し、アニオン剤や双性イオン剤である。
【0011】
一例を挙げると、前記安定剤は、前記コポリマーのアニオン基と複合するアミンである。前記安定剤および/またはコポリマーのアミン部分は、第四級化アンモニウムでもよい。
【0012】
一例を挙げると、前記安定剤は、前記コポリマーの水素結合受容基と水素結合する基を有している。
【0013】
好ましい実施態様によれば、前記溶液とコンタクトレンズが入っている容器の上のリップストックを閉じ、次いでその密閉された容器内で、コンタクトレンズと溶液は、例えばオートクレーブ処理で滅菌される。
【0014】
また、本発明は、溶液とシリコーンヒドロゲルコポリマー製コンタクトレンズが入っている、コンタクトレンズパッケージの容器を密封し、次いで前記パッケージ中のコンタクトレンズを長時間貯蔵して、前記安定剤が、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性が貯蔵中、変化するのを阻止するステップを含む方法も提供するものである。
【0015】
本発明は、安定剤を含有する滅菌溶液中に浸漬されたシリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズを、密閉パッケージ内に貯蔵し、その安定剤は、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性が、貯蔵中、変化するのを阻止するステップを含むシリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズの加水分解作用に対する安定度を改善する方法を提供するものである。
【0016】
本発明は、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性が、貯蔵中、変化するのを阻止する安定剤を含有する溶液中に浸漬されたシリコーンヒドロゲルコポリマー製コンタクトレンズを、密閉パッケージ内に貯蔵するステップを含む、密閉パッケージに入れたシリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズの貯蔵寿命を延長する方法を提供するものである。
【0017】
本発明には、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性が、貯蔵中、変化するのを阻止する安定剤を含有する溶液中に浸漬されたシリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズを、密閉パッケージ内に貯蔵するステップを含む、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズに少なくとも2年、より好ましくは少なくとも3年の貯蔵寿命を付与する方法が含まれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズを包装するのに有用である。ヒドロゲルは、水を平衡状態で含有する、水和された架橋ポリマー系で構成されている。したがって、ヒドロゲルは、親水性モノマーから製造されるコポリマーである。シリコーンヒドロゲルの場合、そのヒドロゲルコポリマーは、一般に、少なくとも一種のレンズ形成性シリコーン含有モノマーおよび少なくとも一種のレンズ形成性親水性モノマーを含む混合物を重合させることによって製造される。前記シリコーン含有モノマーまたは前記親水性モノマーは、架橋剤として働くことができ(架橋剤は多数の重合性官能基を有するモノマーと定義されている)、または別の架橋剤を、ヒドロゲルコポリマーが形成される初期のモノマー混合物に採用できる(用語「モノマー」もしくは「モノマーの」および類似の用語は、本明細書で使用する場合、「プレポリマー」、「マクロモノマー」および類縁用語で呼称される高分子量化合物のみならず、遊離ラジカル重合反応で重合可能な分子量の比較的低い化合物も意味する)。シリコーンヒドロゲルは、一般に、含水率が約10-約80質量%である。シリコーンヒドロゲルコポリマーがシリコーン含有架橋剤から製造される場合、初期のモノマー混合物はさらに、単官能シリコーン含有モノマーを含有していてもよい。
【0019】
有用なレンズ形成性の親水性モノマーの例としては、アミド類、例えばN,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジメチルメタクリルアミド;環式ラクタム類、例えばN-ビニル-2-ピロリドン;(メタ)アクリレーテッドアルコール類、例えばメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸グリセリル;(メタ)アクリレーテッドポリエチレングリコール類;(メタ)アクリル酸類、例えばメタクリル酸とアクリル酸;ならびにアズラクトン含有モノマー類、例えば2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン-5-オンおよび2-ビニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン-5-オンがある。なお、用語「(メタ)」は、本明細書で使用する場合、随意選択的なメチル置換体を意味する。したがって、用語「(メタ)アクリレート)」はメタクリレートまたはアクリレートを意味し、および用語「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸またはアクリル酸を意味する。さらに別の例は、米国特許第5,070,215号に開示されている親水性のビニル炭酸(vinyl carbonate)またはビニルカルバミン酸(vinyl carbamate)のモノマー、および米国特許第4,910,277号に開示されている親水性オキサゾロンのモノマーである。なお、これら特許の開示事項は本明細書に援用するものである。その外の適切な親水性モノマーは当業者には分かるであろう。
【0020】
シリコーンヒドロゲルを製造する際に使用する利用可能なシリコーン含有モノマーの材料は、当該技術分野でよく知られており、多数の例が、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,260,000号、同第5,310,779号および同第5,358,995号に提供されている。
【0021】
利用可能なシリコーン含有モノマーとしては、嵩高のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーがある。かような一官能価で嵩高のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの例は、下記式I:
【0022】
【化1】

[式中、Xは-O-または-NR-を表し、
各R1は、独立して水素またはメチルを表し、
各R2は、独立して低級アルキル基、フェニル基または下記式:
【0023】
【化2】

(式中、R2’は、独立して低級アルキル基またはフェニル基を表し、およびhは1-10である)で表される基を示す]で表される。一つの好ましい嵩高モノマーは、3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランまたはトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートである。
【0024】
別のクラスの代表的なシリコーン含有モノマーとしては、シリコーン含有の炭酸ビニルまたはカルバミン酸ビニルのモノマー、例えば、1,3-ビス[(4-ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト-1-イル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス[(4-ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト-1-イル]ポリジメチルシロキサン;3-(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボネート;3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボネート;t-ブチルジメチルシロキシエチルビニルカルボネート;トリメチルシリルエチルビニルカルボネート;およびトリメチルシリルメチルビニルカルボネートがある。
【0025】
シリコーンを含有するビニルカルボネートまたはビニルカルバメートのモノマーの例は、下記式II:
【0026】
【化3】

(式中、Y’は-O-、-S-または-NH-を表し、
RSiはシリコーン含有有機基を表し、
R3は水素またはメチルを表し、
dは1、2、3または4であり、およびqは0または1である)で表される。
【0027】
適切なシリコーン含有有機基RSiとしては、下記諸式:
【0028】
【化4】

[上記諸式中、R4は下記式:
【0029】
【化5】

(式中、p’は1-6である)で表され、
R5は、1-6個の炭素原子を含有するアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、
eは1-200であり、n’は1、2、3または4であり、およびm’は0、1、2、3、4または5である]で表される基がある。
【0030】
式IIに含まれる特定の種の例は、下記式III :
【0031】
【化6】

で表される。
【0032】
別のクラスのシリコーン含有モノマーとしては、ポリウレタン-ポリシロキサンのマクロモノマー(時には、プレポリマーと呼称される)があり、これは伝統的なウレタンエラストマーと同様に、ハード-ソフト-ハードのブロックを有していてもよい。シリコーンウレタンモノマーの例は、下記式IVおよびV:
【0033】
【化7】

[上記式中、Dは、6-30個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを表し、
Gは、1-40個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを表しかつその主鎖中にエーテル結合、チオ結合またはアミン結合を含んでいてもよい、
*はウレタン結合またはウレイド結合を表し、
aは少なくとも1であり、
Aは下記式VI:
【0034】
【化8】

{上記式中、各RSは、独立して1-10個の炭素原子を有しかつ炭素原子間にエーテル結合を有していてもよいアルキル基もしくはフルオロ置換アルキル基を表し、
m’は少なくとも1であり、および
pは、400-10,000の部分質量を示す数値であり、
EとE’は、各々独立して下記式VII :
【0035】
【化9】

(上記式中、R6は、水素またはメチルであり、
R7は、水素、1-6個の炭素原子を有するアルキルラジカルまたは-CO-Y-R9基(式中Yは-O-、-S-または-NH-である)であり、
R8は、1-10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基であり、
R9は、1-12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Xは、-CO-または-OCO-を表し、
Zは、-O-または-NH-を表し、
Arは6-30個の炭素原子を有する芳香族基を表し、
wは0-6であり、xは0または1であり、yは0または1であり、およびzは0または1である)で表される重合性不飽和有機基を表す}で表される二価のポリマー基を表す]で表される。
【0036】
シリコーン含有ウレタンモノマーのより具体的な例は、下記式(VIII):
【0037】
【化10】

(上記式中、mは少なくとも1でありそして好ましくは3または4であり;aは少なくとも1でありそして好ましくは1であり;pは、部分質量400-10,000を提供しそして好ましくは少なくとも30である数値であり;R10は、イソシアネート基を除いた後のジイソシアネートのジラジカル、例えばイソホロンジイソシアネートのジラジカルであり;および各E”は下記式:
【0038】
【化11】

で表される基である)で表される。
【0039】
代表的なシリコーンヒドロゲル材料は、共重合されてヒドロゲルのコポリマー材料を形成する初期モノマー混合物に対して、5-50質量%、好ましくは10-25質量%の一種もしくは二種以上のシリコーンマクロモノマー;5-75質量%、好ましくは30-60質量%の一種もしくは二種以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)クリルモノマー;および10-50質量%、好ましくは20-40質量%の親水性モノマーを含有している。一般に、前記シリコーンマクロモノマーは、その分子の二つ以上の末端を、不飽和基でキャップされたポリオルガノシロキサンである。上記構造式中の末端基に加えて、Deichertらの米国特許第4,153,641号は、アクリルオキシまたはメタクリルオキシを含む追加の不飽和基を開示している。例えば、Laiの米国特許第5,512,205号、同第5,449,729号および同第5,310,779号に教示されているフマレート含有材料も、本発明の有用な基質である。好ましくは、前記シランマクロモノマーは、シリコーン含有のビニルカルボネートもしくはビニルカルバメート、または一つ以上のハード-ソフト-ハード-ブロックを有しかつ親水性モノマーで末端をキャップされたポリウレタン-ポリシロキサンである。
【0040】
本発明に有用なコンタクトレンズ材料の具体例は、米国特許第6.891,010号(Kunzlerら)、同第5,908,906号(Kunzlerら)、同第5,714,557号(Kunzlerら)、同第5,710,302号(Kunzlerら)、同第5,708,094号(Laiら)、同第5,616,757号(Bamburyら)、同第5,610,252号(Bamburyら)、同第5,512,205号(Lai)、同第5,449,729号(Lai)、同第5,387,662号(Kunzlerら)、同第5,310,779号(Lai)および同第5,260,000号(Nanduら)に教示されている。なおこれら特許の開示事項は本明細書に援用するものである。
【0041】
利用可能なカチオンのシリコーン含有モノマー単位の代表例としては、下記式IX
【0042】
【化12】

で表されるカチオンモノマーがあり、なお上記式中の各符号は以下のように定義される。
【0043】
各Lは、独立して、ウレタン基、カルボネート基、カルバメート基、カルボキシル基、ウレイド基、スルホニル基、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C30アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C30フルオロアルキル基、エステル含有基、エーテル含有基、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換もしくは未置換のC1-C30アルコキシ基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換のC5-C30アリール基、置換もしくは未置換のC5-C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換のC5-C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換のC3-C30ヘテロ環式リング、置換もしくは未置換のC4-C30ヘテロシクロールアルキル基、置換もしくは未置換のC6-C30ヘテロアリールアルキル基、C5-C30フルオロアリール基、またはヒドロキシル置換アルキルエーテルおよびその組合せでよい。
【0044】
X-は、少なくとも一電荷の対イオンである。一電荷の対イオンの例としては、Cl-、Br-、I-、CF3CO2-、CH3CO2-、HCO3-、CH3SO4-、p-トルエンスルホネート、HSO4-、H2PO4-、NO3-およびCH3CH(OH)CO2-からなる群がある。二重電荷の対イオンの例としては、SO42-、CO32-およびHPO42-がある。その外の荷電対イオンは、当業者には明らかであろう。対イオンの残留量は水和された生成物中に存在すると解すべきである。したがって、有毒な対イオンは使用してはならない。同様に、単一電荷の対イオンの場合、対イオンと第四級シロキサニルの比率は1:1であると解すべきである。対イオンの負の電荷が大きくなると、対イオンの全電荷に対する比率が変化する。
【0045】
R1とR2は各々、独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C30アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C30フルオロアルキル基、C1-C20エステル基、エーテル含有基、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換もしくは未置換のC1-C30アルコキシ基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換のC3-C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換のC5-C30アリール基、置換もしくは未置換のC5-C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換のC5-C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換のC3-C30ヘテロ環式リング、置換もしくは未置換のC4-C30ヘテロシクロールアルキル基、置換もしくは未置換のC6-C30ヘテロアリールアルキル基、フッ素基、C5-C30フルオロアリール基、またはヒドロキシル基であり、およびVは独立して、重合性エチレン系不飽和有機ラジカルである。
【0046】
式IXで表されるモノマーには、下記式X
【0047】
【化13】

(式中、各R1は同じであって-OSi(CH3)3であり、R2はメチルであり、L1はアルキルアミドであり、L2は、重合性ビニル基に結合している、2個もしくは3個の炭素原子を有するアルキルアミドもしくはアルキルエステルであり、R3はメチルであり、R4はHであり、およびX-はBr-もしくはCl-である)で表されるモノマーが含まれている。
【0048】
別の構造体は下記構造式XI-XV:
【0049】
【化14】

を有している。
【0050】
先に開示したカチオンのシリコーン含有モノマーの合成方法の模式図を以下に示す。
【0051】
【化15】

【0052】
本発明で使用する、利用可能なカチオンのシリコーン含有モノマー単位の別のクラスの例としては、式XVI:
【0053】
【化16】

(上記式中、各Lは、同じでも異なっていてもよく、式IXにおいてLについて先に定義したのと同じであり;X-は、式IにおいてX-について先に定義したのと同じ少なくとも一電荷の対イオンであり;R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、各々独立して、式IにおいてR1について先に定義したのと同じであり;Vは、独立して、重合性エチレン系不飽和有機ラジカルであり;およびnは1-約300の整数である)で表されるカチオンモノマーがある。
【0054】
式XVIで表されるモノマーとしては、下記諸式XVII-XXI:
【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

で表されるモノマーがある。
【0057】
式XVIで表されるカチオンのシリコーン含有モノマーの合成方法の模式図を以下に示す。
【0058】
【化19】

【化20】

【0059】
式XIXで表されるカチオンのシリコーン含有モノマーの合成方法の模式図を以下に示す。
【0060】
【化21】

【0061】
本発明で使用する、利用可能なカチオンのシリコーン含有モノマー単位の別のクラスの例としては、式XXII:
【0062】
【化22】

(式中、xは0-1000であり;yは1-300であり;各Lは、同じでも異なっていてもよく、式IにおいてLについて先に定義したのと同じであり;X-は、式IにおいてX-について先に定義したのと同じ少なくとも一電荷の対イオンであり;R1、R13およびR14は、各々独立して、式IにおいてR1について先に定義したのと同じであり、およびAは重合性ビニル部分である)で表されるカチオンモノマーがある。
【0063】
式XXIIで表される好ましいカチオンランダムコポリマーは、下記式XXIII
【0064】
【化23】

(式中、xは0-1000であり、およびyは1-300である)に示してある。
【0065】
式XXIIおよびXXIIIで表されるカチオンシリコーン含有ランダムコポリマーを製造する合成方法の模式図を以下に示す。
【0066】
【化24】

【0067】
本発明で使用する利用可能なカチオン材料の別のクラスの例としては、式XXIV
【0068】
【化25】

[式中、xは0-1000であり、yは1-300であり、R15とR16は同じまたは異なっていてもよくかつ式IにおいてR1について先に定義したのと同じ基でもよく、ならびにR17は、独立して、下記式:XXVとXXVI
【0069】
【化26】

(上記式中、Lは同じでも異なっていてもよくかつ式IにおいてLについて先に定義したのと同じであり;X-は、式IにおいてX-について先に定義したのと同じ少なくとも一電荷の対イオンであり;R18は、同じでも異なっていてもよくかつ式IにおいてR1について先に定義したのと同じ基でもよく;およびR19は独立して水素またはメチルである)の一つ以上である]で表されるカチオンランダムコポリマーがある。
【0070】
カチオンシリコーン含有ランダムコポリマー、例えば本明細書に開示されている重合性カチオン側基を有するポリジメチルシロキサンを製造する合成方法の模式図を以下に示す。
【0071】
【化27】

【化28】

【0072】
カチオン側基および重合性カチオン側基を有するポリジメチルシロキサンを製造する別の合成模式図を以下に示す。
【0073】
【化29】

【0074】
重合性側基およびカチオン側基を有するポリジメチルシロキサンを製造するさらに別の合成模式図を以下に示す。
【0075】
【化30】

【0076】
シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズは、コンタクトレンズと滅菌包装溶液を保持する容器部分を有するコンテナー内に包装される。そのコンテナーの例は、通常のコンタクトレンズブリスターパッケージである。その溶液中に浸漬されているコンタクトレンズの入っているこの容器は、例えば、その容器を覆うパッケージのリッドストックを密閉することによって密封される。例えば、前記リッドストックは、前記容器の周囲を密閉する。
【0077】
前記溶液およびコンタクトレンズは、パッケージの容器内に密封されている間に滅菌される。滅菌技術の例としては、前記容器とコンタクトレンズに、熱エネルギー、マイクロ波、γ線または紫外線を掛ける方法がある。具体例としては、前記溶液とコンタクトレンズを、パッケージコンテナー中に密封しながら、少なくとも100℃の温度に、より好ましくは少なくとも120℃に、例えば、オートクレーブ処理によって加熱する方法がある。
【0078】
本発明は、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズが、そのパッケージ内に貯蔵中、シリコーンヒドロゲル製でない通常のレンズより、その物理的特性が変化する傾向が大きいという問題点を認識した。シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズの重要な物理的特性としては、機械的特性、例えばモジュラスおよび引裂き強さ;含水率;酸素透過係数;および表面特性、特にレンズが表面コーティングを有しているときの表面特性がある。その上に、本発明は、機械的特性の変化によって、さらに、レンズの寸法、例えばレンズの直径に望ましくない変化を生ずることがあることを認識した。
【0079】
一例として、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズは、時間の経過とともに架橋密度が変化する傾向が大きい。これは、機械的特性、特にモジュラスを変化させて、包装されているレンズの貯蔵寿命を、所望の貯蔵寿命より短くすることがある。
【0080】
物理的特性の変化による問題は、イオンのレンズ形成性モノマーを含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーの場合一層一般的である。アニオンのレンズ形成性モノマーの例は、酸類であり、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸およびN-ビニロキシカルボニル-β-アラニンなどのカルボン酸含有モノマーがある。カチオンのレンズ形成性モノマーの例は第四級アンモニウム含有モノマーである。双性イオンのレンズ形成性モノマーの例は、アニオン部分とカチオン部分の両者を含有するモノマーである。イオン官能基、特にカルボキシル基を含有するものは、時間の経過とともにシリコーン含有部分を部分的に加水分解する性質を有し、その結果、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性を変化させると考えられる。イオンモノマーを含むシリコーンヒドロゲルコポリマーは、加水分解されやすいが、かようなイオンモノマーを欠くシリコーンヒドロゲルコポリマーでさえ、包装されて長期間貯蔵されると、特にシリコーン含有架橋剤を含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーは、やはり加水分解されて物理的特性が変化することがある。
【0081】
レンズ形成性イオンモノマーを含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーの場合、一クラスの安定剤としては、そのヒドロゲルコポリマーとイオン複合体を形成する安定剤がある。
【0082】
したがって、レンズ形成性アニオンモノマーを含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーに対する安定剤としては、そのレンズ形成性アニオンモノマーとイオン複合体を形成するカチオン剤および双性イオン剤を含むカチオン電荷を有する安定剤がある。かようなカチオン安定剤の例としては、第四級アンモニウム含有材料、例えば、第四級アンモニウム置換基を含有するカチオンセルロース、カチオングア(cation guar)およびキトサン誘導体がある。
【0083】
レンズ形成性カチオンモノマーを含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーに対する安定剤としては、そのレンズ形成性カチオンモノマーとイオン複合体を形成するアニオン剤および双性イオン剤を含むアニオン電荷を有する安定剤がある。かようなアニオン安定剤の例としては、(メタ)クリル酸、イタコン酸、リン酸ヒドロキシアルキルおよびエチレンジアミン四酢酸のポリマーがある。双性イオン剤の例としては、ジグリシンおよび3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)がある。
【0084】
レンズ形成性双性イオンモノマーを含有するシリコーンヒドロゲルコポリマーに対する安定剤は、カチオン電荷剤とアニオン電荷剤の混合物でもよい。
【0085】
一クラスの適切な安定剤としては、アミン含有剤、特にポリマーでないアミン含有剤、例えば、アミノ炭化水素類;アミノアルコール類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(Tris)、ビス-Trisおよびビス-Trisプロパン;N-モルホリノ含有剤類とアミノ酸類およびその誘導体がある。これらの薬剤は、各種のシリコーンヒドロゲルコポリマー特に酸含有モノマーなどのレンズ形成性アニオンモノマーを含有するコポリマーと複合体を形成し、かつそのコポリマーを安定化しまたはその加水分解を阻止するのに有効である。
【0086】
本発明のシリコーンヒドロゲルコポリマーは、安定剤とシリコーンヒドロゲルコポリマーとの水素結合による安定化などの、イオン複合体の形成以外の機構で安定化することができる。一例として、シリコーンヒドロゲルコポリマーのイオン基と水素結合複合体を形成する安定剤としては、ポリビニルピロリジノン類;ポリエチレングリコール類;ポリビニルアルコール類;ポリプロピレングリコール類;糖類(多糖類および非イオンのセルロースとグアル類を含む);多価アルコール類、例えばプロピレングリコールおよびグリセリン;ならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーがある。
【0087】
別の例として、イオンとして電荷を有していないシリコーンヒドロゲルコポリマーは、各種イオン安定剤によって安定化することができる。例えば、ポリビニルピロリジノン;ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールを、特にその表面に含有しているシリコーンヒドロゲルコポリマーは、アクリル酸のポリマーなどのアニオン剤で安定化できる。例えば、結合されているかまたは閉じ込められているポリN-ビニル-2-ピロリドンを含有するレンズ表面は、(メタ)アクリル酸のポリマーと水素結合した複合体を形成できる。
【0088】
包装されて貯蔵されている間、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性が変化するのを阻止するのに有効な量の安定剤が含有されている。好ましくは、安定剤は、室温(25℃)で貯蔵する場合、シリコーンヒドロゲルコポリマーのモジュラスの変化を阻止して、その変化を、少なくとも1年間、より好ましくは少なくとも2年間および最も好ましくは少なくとも3年間、ただ25%までにするのに有効である。安定剤は、前記期間にわたって室温で貯蔵する場合、含水量の変化を阻止して、その変化を、好ましくは1質量%未満まで、より好ましくは0.5質量%未満までにするのに有効である。安定剤は、前記期間にわたって室温で貯蔵する場合、レンズ直径の変化を阻止して、その変化を、好ましくは0.1μm未満までに、より好ましくは0.05μm未満までにするのに有効である。
【0089】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの安定度は,その溶液とパッケージ内に貯蔵されたシリコーンヒドロゲルレンズの貯蔵寿命を試験する、当該技術分野で公知の方法を利用して試験できる。かような試験の一方法は、「実時間」ベースの方法であり、1ロットまたは2ロット以上のコンタクトレンズを、各種の時間間隔で試験される幾つかのレンズとともに室温で貯蔵する方法である。これらレンズが、試験される時間間隔でその物理的特性を維持している場合、そのレンズは、その時間間隔で、望ましい安定度を有している。このような試験の別の方法は、貯蔵寿命の加速試験に関するFDA(米国食品医薬品局)のガイドラインによる「加速」ベースの方法である。第一例として、複数ロットのコンタクトレンズを45℃で貯蔵し、その幾つかのレンズを各種の時間間隔で試験する。この場合、推定される安定な期間はその試験期間の4倍に相当する。第二例として、複数ロットのコンタクトレンズを60℃で貯蔵し、その幾つかのレンズを各種の時間間隔で試験する。この場合、推定される安定度はその試験期間の11.3倍に相当する。したがって、レンズが3年間安定であるかどうかを確認するための、この加速試験法での試験期間は97日であり、そしてレンズが1年間安全であるかどうかを確認するための、この加速試験法での試験期間は33日である。これらの試験は、一般に、相対湿度45%で実施する。
【0090】
その包装溶液は、好ましくは、包装溶液の全重量に対して0.02-5.0質量%の量の安定剤を含有する水溶液である。安定剤のこの特定量は、その安定剤およびコポリマーによって変化するが、一般に、安定剤は、この範囲内の量で存在している。
【0091】
包装溶液は、pHが好ましくは約6.0-8.0であり、より好ましくは約6.5-7.8であり、そして最も好ましくは6.7-7.7である。適切な緩衝剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、Tris)、Bis-Tris、Bis-Tris Propane、ホウ酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、アミノ酸類およびこれらの混合物がある。緩衝剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、Bis-Tris、Bis-Tris Propaneおよび重炭酸ナトリウムがある。緩衝剤は、存在している場合、一般に、約0.05-2.5質量%の範囲内の量で、および好ましくは0.1-1.5質量%の範囲内の量で使用される。安定剤のいくつかは緩衝剤として働き、そして必要に応じて、補助緩衝剤を利用できる。安定化は、併記した実施例で例証したように、pHによって左右されることが分かったのである。
【0092】
包装溶液は、浸透圧質量モル濃度が約200-400 mOsm/kg、より好ましくは約250-350 mOms/kgである等張溶液または近等張溶液を提供するため、張性調節剤を、随意選択的に、緩衝剤の形で、さらに含んでいてもよい。適切な張性調節剤の例としては、塩化ナトリウムと塩化カリウム、デキストロース、グリセリン、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムがある。これら薬剤は、存在している場合、一般に約0.01-2.5質量%の範囲内の量で、および好ましくは約0.2-約1.5質量%の範囲内の量で使用される。
【0093】
包装溶液は、随意選択的に、抗菌剤を含有していてもよいが、かような薬剤は含有していない方がよい。
【実施例】
【0094】
以下の諸実施例は本発明の好ましい各種実施態様を例示する。
【0095】
以下の成分:M2D39すなわち式XIX(式中、nは約39である)で表されるモノマー;N-ビニル-2-ピロリドン(NVP);トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(Tris);2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Hema);希釈剤のプロピレングリコール;UVブロッカーの2-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-イル)-4-ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート;Vaso-64 開始剤;および着色剤の1,4-ビス[4-(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノンを混合することによって、モノマー混合物を調製した。その混合物を、ポリプロピレン製の2パート型に注入した。なおこの型は、コンタクトレンズの裏面を形成する裏面半型とコンタクトレンズの前面を形成する前面半型からなっている。その混合物を、前記型に入れたまま熱で硬化させた。生成したコンタクトレンズを型から取り出し、抽出し次いで水和した。
【0096】
表1に列挙した緩衝剤を調製した。そのホウ酸緩衝剤はホウ酸とホウ酸ナトリウムを含有し、これら成分の比率は所望のpH値が得られるように調節した。そのリン酸緩衝剤は一塩基性リン酸ナトリウムと二塩基性リン酸ナトリウムを含有し、これら成分の比率は所望のpH値が得られるように調節した。そのクエン酸緩衝剤はクエン酸ナトリウムを含有し、所望のpH値を得るために必要なHClを添加した。そのTrizma緩衝剤はTrizma(トロメタミン)を含有し、所望のpH値を得るために必要なHClを添加した。そのMOPS緩衝剤は3-(モルホリノ)プロパンスルホン酸を含有し、所望のpH値を得るために必要なNaOHを添加した。そのジグリシン緩衝剤はジグリシンを含有し、所望のpH値を得るために必要なNaOHを添加した。
【0097】
【表1】

【0098】
対照として、実施例1のコンタクトレンズの含水量(水の質量%)、直径(mm)およびモジュラス(g/mm2)を含む各種特性を測定した。実施例1のコンタクトレンズを、コンタクトレンズ用ガラス製バイヤルパッケージ内の、表1に示す各緩衝剤中に浸漬した。そのパッケージをリッドストックで密封し、次いで、121℃で30分間、1サイクルまたは2サイクル(下記表にそれぞれ1Xまたは2Xで示してある)オートクレーブ処理した。試料のコンタクトレンズの特性を、単一もしくは複数のサイクルのオートクレーブ処理の後、再測定した。モジュラスの試験は、ヒドロゲル試料がホウ酸緩衝食塩水中に浸漬されているInstron(Model 4502)測定器を利用するASTM D-1708aに従って実施した。なおフィルム試料の適切な大きさは、ゲージ長22 mmおよびゲージ幅4.75 mmであり、この試料はさらに、末端が、Instron測定器のクランプで試料を把持するのに適しているドッグボーン(dogbone)形でありかつ厚さが200±50μmである。含水量は、その水和された状態と脱水された状態のヒドロゲルコンタクトレンズの重量を比較することによって測定した。以下の表には、平均値を報告してある。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
一回および二回のオートクレーブ処理サイクルを受けたレンズを比較することは、包装溶液をスクリ−ニングするのに有用である。すなわち、一回と二回のオートクレーブ処理サイクルの間に物理的特性が有意な変化を示すレンズをもたらす包装溶液では、長期間にわたって安定であるコンタクトレンズが得られそうにない。表2-4で分かるように、本発明の安定剤を含有していない包装溶液の多くは、その中に包装されたコンタクトレンズの安定度が許容できない安定度であった。
【0103】
各種の溶液とコンタクトレンズを、加速貯蔵寿命ベースで、加速貯蔵寿命試験に関するUSFDAのガイドラインに従って試験した。表1に示す包装溶液中に浸漬したコンタクトレンズを60℃で貯蔵し、幾つかのレンズを各種の時間間隔で試験した。この場合、推定される安定性は、その試験期間の11.3倍に相当する。
【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
表5-7に見られるように、本発明の安定剤を含有する包装溶液は、コンタクトレンズを安定化するのに、比較溶液(ホウ酸塩7.2)より有効であった。
【0108】
本発明の各種の好ましい実施態様について述べてきたが、当業者は、前掲の特許請求の範囲に記載された本発明の精神と範囲を逸脱することなく各種の変形、付加および変更を実施できることが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌溶液に浸漬されたコンタクトレンズが入っている密封容器を含むコンタクトレンズパッケージであって、該コンタクトレンズがシリコーンヒドロゲルコポリマー製でありかつ該溶液が該シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止するのに有効な量の安定剤を含有しているコンタクトレンズパッケージ。
【請求項2】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーがイオン性である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーがアニオン性である請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーがカチオン性である請求項2に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記安定剤が、前記コポリマーのアニオン基と複合するアミンである請求項2に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記安定剤が、アミノ炭化水素類、アミノアルコール類およびアミノ酸類からなる群から選択される請求項5に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記安定剤が、前記コポリマーのアニオン基とイオン複合体を形成する第四級アンモニウム含有化合物である請求項3に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記安定剤が、前記コポリマーのカチオン基と複合するアニオン基を含有している請求項4に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記安定剤が、前記コポリマーのイオン基と水素結合する基を含有している請求項2に記載のパッケージ。
【請求項10】
前記安定剤が、ポリビニルピロリジノン類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルアルコール類、ポリプロピレングリコール類、糖類および多価アルコール類からなる群から選択される請求項9に記載のパッケージ。
【請求項11】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーが、シリコーン含有架橋モノマーおよび親水性モノマーを含むモノマー混合物の重合生成物である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーが、シリコーン含有架橋モノマー、親水性モノマーおよび単官能シリコーン含有モノマーを含むモノマー混合物の重合生成物である請求項11に記載のパッケージ。
【請求項13】
前記シリコーンヒドロゲルコポリマーが、シリコーン含有モノマー、親水性モノマーおよびイオンモノマーを含むモノマー混合物の重合生成物である請求項2に記載のパッケージ。
【請求項14】
前記イオンモノマーがカチオンモノマーを含み、ならびに前記安定剤がMOPS、トロメタミン、ジグリシンおよびその混合物からなる群から選択される請求項13に記載のパッケージ。
【請求項15】
前記溶液が、pH 6-8である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項16】
前記溶液が、抗菌剤を欠いている請求項1に記載のパッケージ。
【請求項17】
前記溶液が、0.02-5.0質量%の安定剤を含有している請求項1に記載のパッケージ。
【請求項18】
リッドストックが、前記溶液とコンタクトレンズが入っている容器を密閉している請求項1に記載のパッケージ。
【請求項19】
前記リッドストックが、前記容器の周囲を密閉している請求項18に記載のパッケージ。
【請求項20】
前記溶液とコンタクトレンズが、前記パッケージの容器中に密封されたまま熱エネルギーを受ける請求項18に記載のパッケージ。
【請求項21】
前記溶液とコンタクトレンズが、少なくとも100℃の温度まで加熱される請求項20に記載のパッケージ。
【請求項22】
前記溶液とコンタクトレンズが、前記パッケージの容器中に密封されたまま滅菌される請求項18に記載のパッケージ。
【請求項23】
前記溶液とコンタクトレンズが入っているパッケージがオートクレーブで処理される請求項1に記載のパッケージ。
【請求項24】
前記安定剤が、前記シリコーンヒドロゲルコポリマーのモジュラスの変化を阻止するのに有効な量で存在している請求項1に記載のパッケージ。
【請求項25】
溶液およびシリコーンヒドロゲルコポリマー製コンタクトレンズが入っているコンタクトレンズパッケージの容器を密封し、次いで、
そのパッケージ中にコンタクトレンズを長期間貯蔵する
ステップを含み、その貯蔵中、安定剤が、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止する方法。
【請求項26】
貯蔵中、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止する安定剤を含有する滅菌溶液中に浸漬されたコンタクトレンズを密封パッケージ中に貯蔵するステップを含む、シリコーンヒドロゲルコポリマー製コンタクトレンズの加水分解作用に対する安定度を改良する方法。
【請求項27】
貯蔵中、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止する安定剤を含有する溶液中に浸漬されたコンタクトレンズを密封パッケージ中に貯蔵するステップを含む、密封パッケージ中に入れたシリコーンヒドロゲルコポリマー製コンタクトレンズの貯蔵寿命を延長する方法。
【請求項28】
貯蔵中、シリコーンヒドロゲルコポリマーの物理的特性の変化を阻止する安定剤を含有する溶液中に浸漬されたコンタクトレンズを密封パッケージ中に貯蔵するステップを含む、シリコーンヒドロゲル製コンタクトレンズに少なくとも3年の貯蔵寿命を付与する方法。

【公表番号】特表2009−520219(P2009−520219A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545823(P2008−545823)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047795
【国際公開番号】WO2007/070653
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】