説明

レンズアレイシート及びそれのダイシング方法

【課題】寸法安定性が良く正確にダイシングできる構造を有し、ダイシングすべき位置が正確に表示されており、ダイシングした個別片毎に光源の中央へレンズを均一に配設することができ、均質なレンズの個別片が歩留まり良く簡便に製造できるレンズアレイシート、及びそれからレンズの個別片を得るダイシング方法を提供する。
【解決手段】レンズアレイシート1は、縦横夫々に列をなして等間隔に並んだ複数のレンズ4が、透明樹脂基材2の少なくとも何れかの面側に設けられており、複数のレンズ4よりなる列の横列同士間と縦列同士間とを各々の中央でダイシングすべき格子状のライン8上に、その端部を明示するマーカー3a〜dが、形成されている。レンズアレイのダイシング方法は、レンズアレイ1を作製する工程、それを固定する工程、マーカー3a〜dを認識しそれを基準にして、ライン8の上をダイシングする工程、レンズの個別片7を取り上げる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)に装着されるレンズを一挙に多数製造する際に用いられるレンズアレイシート、及びそれからレンズを得るためにダイシングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、電圧を印加すると発光する半導体素子の一種である。その発光ダイオードからの光を集束又は拡散させるレンズが、発光ダイオードやそれをパッケージングしたデバイスの出射方向の前面に、装着される。
【0003】
数mm程度の発光ダイオードに装着されるこのレンズは、極めて小さく個別に成形し難い。そのため、図8のように、透明樹脂基材32上で縦横夫々に列をなして等間隔に多数並んだレンズ34が設けられた四角いレンズアレイシート31を用いて、製造される。通常、金型内で成形したレンズアレイシート31の隣り合う端辺39a・39bを、L字型のガイド42に押し当てて位置決めしてから、スリッター35で、所定の位置からダイシングを開始し、等間隔の格子状にダイシングして、レンズの個別片37の多数を、一挙に得る。
【0004】
この場合、ダイシングの位置をプログラムして、何回かダイシングを繰り返す過程で、一回ごとのダイシングのずれが段々大きくなることがある。また、レンズアレイシート31は、成形時の温度のばらつきによる膨張・収縮の不均一や、形状に由来する厚さ又は成分、濃度のばらつきによる不均質のせいで、ロット間でわずかにシートの端面の形状に違いが生じ、折角正確に位置決めできても、所期の間隔でダイシングを繰り返すと、ダイシングすべきライン38上から次第に外れてダイシングされてしまう結果、ロット間で、また同一ロットでも得られた個別片37はレンズ34が不均一にずれて形成されてしまう。
【0005】
また、レンズアレイシート31は、片面にレンズを有する表裏非対称面のシートであるので、成形時の温度の加熱・冷却の過程で、内部歪みが発生し、それが原因で、成形後に反り返りが生じる。その結果、その端辺39a・39bが真直ぐにならず、端辺39a・39b近傍での歪み40a・40bを生じたり、中央が椀状に反ってしまったりする。そのため、正確に位置決めできず、レンズアレイシート31とガイド42との間に隙間41を生じ、所期間隔でダイシングしても、ダイシングすべきライン38上から外れてしまったり、シート面に対し切断面が直角にダイシングできなかったりする。その結果、得られた個別片37は、その中央からレンズ34がずれて形成されたり、端面に直角が形成されなかったりする。
【0006】
特許文献1に、複数の光学レンズが一体的に設けられ、光学レンズを設置する鏡筒の軸心と光学レンズの光軸との相対位置が把握されたマークが付されたレンズ成形体を、マークから演算される切断線に沿って、各光学レンズ毎にダイシングされて、複数の光学レンズを得る光学レンズの製造方法が開示されている。このような製造方法は、マークを基準に、ダイシングラインを演算するので、上記のごとくシート端面を基準にするよりは幾分かは正確である。しかしながら、基準のマークとダイシングすべき位置は演算によるものなので、演算されたラインと、実際にダイシングするラインとの間で公差を生じさせてしまう。また、同文献には、ダイシング前の成形体が、片面にのみレンズを設けた表裏非対称な成形体であることによる反りなどの変形を取り除いてダイシング加工に適したレンズアレイシートとすることについて、記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−195124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、寸法安定性が良く正確にダイシングできる構造を有するレンズアレイシートであって、ダイシングすべき位置が正確に表示されており、ダイシングしたときに得られた個別片毎にLEDなどの光源の中央へレンズを均一に配設することができ、均質な個別片のレンズが歩留まり良く簡便に製造できるレンズアレイシート、及びそれをダイシングして個別のレンズを精度よく高い歩留りで得るためのダイシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたレンズアレイシートは、縦横夫々に列をなして等間隔に並んだ複数のレンズが、透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側に設けられており、該複数のレンズよりなる列の横列同士間と縦列同士間とを各々の中央でダイシングすべき格子状のライン上に、該ラインの端部を明示するマーカーが、形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載されたレンズアレイシートは、請求項1に記載されたもので、前記透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側で、肉厚部が、前記透明樹脂基材の縁に沿い及び/又は前記基材の面を横切りつつ線状に、前記複数のレンズよりなる列とずれて、形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載されたレンズアレイシートは、請求項1に記載されたもので、前記透明樹脂基材の片面側に、粘着シートが貼付されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載されたレンズアレイシートは、請求項1に記載されたもので、前記ライン上に、ダイシングされる溝が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載されたレンズアレイシートは、請求項1に記載されたもので、前記ダイシングすべき格子状のライン上のうち、前記透明樹脂基材の各縁の端側の少なくとも2箇所に、前記マーカーが形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載されたレンズアレイシートは、請求項1に記載されたもので、前記透明樹脂基材のうら面側で、複数の発光ダイオードデバイスが、前記複数のレンズ毎に重なり合って接合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、縦横に夫々、列をなして等間隔に並んだ複数のレンズを、透明樹脂基材の少なくとも何れか一面側に設け、隣り合うその横列同士間と縦列同士間とを各々の中央でダイシングすべき格子状のライン上にその端部を明示するマーカーを形成して、レンズアレイシートを作製する工程、前記レンズアレイシートを、固定する工程、前記マーカーを認識し、それを基準にして、前記マーカーより前記ラインの上を前記格子状にダイシングする工程、前記レンズの個別片を取り上げる工程を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、請求項7に記載されたもので、一方向から前記マーカーへ向けて投光し、前記マーカーの形状を画像撮影することにより、又は光透過、屈折若しくは光反射による前記マーカーとその周囲との輝度の違いを受光することにより、そのマーカーを前記認識することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、請求項7に記載されたもので、前記透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側で肉厚部が前記透明樹脂基材の縁に沿いつつ及び/又はその面を横切りつつ前記複数のレンズよりなる列とずれて線状に形成されているレンズアレイシートを、前記格子状にダイシングした後に、該肉厚部を切断分離することを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、請求項7に記載されたもので、前記レンズアレイシートを作製した後、ダイシングすべき面のうら面側へ、そのレンズアレイシートに粘着シートを貼付してから、前記レンズアレイシートを前記固定し、該粘着シートを切断分離せずに前記ダイシングすることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、請求項10に記載されたもので、前記粘着シートが、熱又は光で硬化して粘着性を低下させるものであり、前記ダイシングし、前記個別片を形成してから、前記粘着シートを硬化させた後、前記個別片を取り上げることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載されたレンズアレイのダイシング方法は、請求項7に記載されたもので、前記複数のレンズに夫々対応して一体化される複数の発光ダイオードデバイスを、単一基板上に載置し、前記レンズアレイシートに接着して前記固定してから、該発光ダイオードデバイスの夫々と共に前記レンズアレイシートをダイシングして、独立したレンズ付き半導体発光装置となる前記個別片にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のレンズアレイシートは、ダイシングすべき格子状のライン上に、その端部を正確に示すマーカーが形成されている。そのため、レンズアレイシートは、成形時のシートの大きさ、バリや歪みの存在などの外形、周縁の歪み具合、レンズ列間隔が、幾分不揃いであっても、ダイシングすべきラインと実際にダイシングしたラインとの間で公差を生じないから、所期通りにずれることなくダイシングすることが可能なものである。
【0022】
このレンズアレイシートを用いれば、マーカーに従いそれによって正確に特定されたダイシングすべきライン通りに、簡易な操作でダイシングできるから、レンズの生産効率が向上し、その歩留まりが良い。
【0023】
このレンズアレイシートは、透明樹脂基材の縁に沿ったりその面を横切ったりしてその一部が厚くなっている肉厚部が形成されていると、そのシート周縁の歪みやシート全体の歪みによる反り返りが抑制されるので、ダイシングの際に、より一層、公差を生じない。
【0024】
このレンズアレイシートは、そのうら面側に、硬化によって粘着性が低下する粘着シートが着脱可能に貼付されていると、安定してダイシングでき、その後に、この粘着シート6を硬化すると、その粘着力が低下し、僅かな外力でレンズの個別片が、剥がれるようになる。その後、個々のレンズを確実に取り上げて、発光ダイオードやそれをパッケージングしたデバイスの前面に、着実に装着することができる。
【0025】
このレンズアレイシートは、ライン上にダイシングされる脆弱な溝を有すると、極めて弱い力で、溝に沿って効率良く確実にダイシングすることができ、それに用いるスリッターのようなダイシング刃を長持ちさせることができる。また、ダイシング刃が溝をガイドにして真直ぐにダイシングして行くので、多少の機械振動によっても全くぶれることなく、綺麗かつ正確にダイシングが行われる。
【0026】
さらに、このレンズアレイシートは、そのうら面側で、複数の発光ダイオードデバイスがその出射方向側に配置される各レンズに重なり合いつつ接合されていると、ダイシングによって、レンズと発光ダイオードデバイスとを一体形成したレンズ付き半導体発光装置の多数を、効率的に、一挙に製造することができるものである。
【0027】
本発明のレンズアレイシートのダイシング方法によれば、このシートの大きさや外形や周縁の歪み具合がロット毎に不揃いであったり、レンズ列間隔が同一ロット内で又は異なるロット間で不揃いであったりしても、各々のマーカーを基準にして、レンズアレイシートを所期通りにダイシングして、多数のレンズの個別片を一挙に製造できるから、生産性が高く、レンズアレイシートが大型であるか小型であるかに関わらず、個別片の形状が均一でその中央にレンズが確実に配設されるから、歩留まりが良い。
【0028】
このレンズアレイシートのダイシング方法は、マーカー自体を撮影したりマーカーの輝点を受光したりして光学的に簡易にマーカーを確実に認識して、ダイシングすべき場所を、正確に位置決めすることができる。
【0029】
このレンズアレイシートのダイシング方法は、レンズアレイシートに肉厚部を設けておくことによって、レンズアレイシートの成形時やダイシング時の反り返りを防ぐことができ、ダイシング面をレンズアレイシートの表裏面に対して常に垂直に維持することができる。
【0030】
このレンズアレイシートのダイシング方法は、ダイシングすべき面のうら面側へ、そのレンズアレイシートに着脱可能な粘着シートを貼付し、固定させておくことによって、位置決めした後に、ずれることなく、正確かつ確実にダイシングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を適用するレンズアレイシートを用いたダイシング方法の実施途中を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用する別なレンズアレイシートの一部切り欠き斜視図である。
【図3】本発明を適用する別なレンズアレイシートの一部切り欠き斜視図である。
【図4】本発明を適用する別なレンズアレイシートの一部側面図である。
【図5】本発明を適用する別なレンズアレイシートの一部切り欠き斜視図である。
【図6】本発明を適用する別なレンズアレイシートの製造途中を示す一部切り欠き斜視図である。
【図7】本発明を適用する別なレンズアレイシートの製造途中を示す一部切り欠き斜視図である。
【図8】本発明を適用外とする従来のレンズアレイシートを用いたダイシング方法の実施途中を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0033】
本発明のレンズアレイシートの好ましい形態について、図1を参照しながら説明する。
【0034】
本発明のレンズアレイシート1は、略正方形の薄いシート状であって、シリコーン樹脂製の熱硬化性透明樹脂基材2のおもて面に、同質の凸レンズ4が縦横夫々に列をなして等間隔に並んで一体成形されたものである。凸レンズ4の数は、縦横とも一列当たり12個である。隣り合うその横列同士間の中心線と縦列同士間の中心線とそれらに平行して各最外列の外枠線とが、ダイシングすべき格子状のライン8となっている。その格子の各枡目の丁度中央に夫々、凸レンズ4が、位置している。
【0035】
格子状の全ライン8上で、それの各ラインの両方の端部に、透明樹脂基材2のおもて面からうら面を貫通する鋭角のくさび形の切れ込みであるマーカー3として、個々のマーカー3a,3a・・・、3b,3b・・・、3c,3c・・・、3d,3d・・・からなる一群のマーカー3a〜dが設けられている。3aと3bとのような各ラインの両方の端部のマーカーは、夫々の鋭角同士が互いに向かい合うように、対称になっている。このマーカー3は、レンズアレイシート1をダイシングする際の基準となるもので、マーカー3a−3b,3a−3b,・・・と、3c−3d,3c−3d,・・・とのような各鋭角の頂点同士を結ぶ直線は、ダイシングすべき格子状のライン8を示している。
【0036】
透明樹脂基材2のうら面には、それより幾分大きな(メタ)アクリロイル基含有ウレタン樹脂製の紫外線硬化型粘着シート6が、貼付されている。紫外線硬化性粘着シート6は、貼付時には適度な粘着性を示すが、紫外線で硬化させると、再粘着しない程度であってレンズアレイシートからダイシングされた個別片を容易く取り上げることができる程度の微粘着性を示すものである。
【0037】
なお、このマーカー3は、透明樹脂基材2のおもて面に形成されていてもよく、うら面に形成されていてもよい。
【0038】
レンズアレイシート1の材質は、射出成形や金型プレス成形等の各種成形方法でレンズ成形が可能な樹脂であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂として、シリコーン樹脂の例を挙げたが、その他の熱硬化性樹脂、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、エポキシ樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが、挙げられる。これらの中でも、硬質のシリコーン樹脂や軟質のシリコーンゴムのような転写性に特に優れたシリコーンであると、金型通りに精密に転写されるので、小型で、レンズの光軸を成形段階で正確に調整できるため、特に好ましい。レンズアレイシート1の硬度は、JIS K 7215(プラスチックのデュロメーター硬さ試験方法)の方法により測定されるショアD硬度で、10°以上とすることが好ましく、20°〜90°であると一層好ましい。
【0039】
このレンズアレイシート1は、ダイシング可能な形状であれば特に限定されず、正方形以外の多角形であってもよく、円形であってもよい。
【0040】
紫外線硬化性粘着シート6は、硬化前にはその粘性によりレンズアレイシートのうら面に貼付して、ダイシングのようにずれ応力がかかっても、個別片がずれてばらばらになってしまうのを防止し、硬化後には、粘性を低下させて、容易く個別片を取り上げることを可能にするものである。紫外線硬化性粘着シート6を始めとする活性エネルギー線硬化性粘着シートは、例えば、紫外線等の光線で硬化するアクリル基含有ポリウレタン樹脂や不飽和オレフィン含有ポリウレタン樹脂製の光硬化性樹脂シート、熱で硬化するエポキシ樹脂製の熱硬化性粘着シートが挙げられる。
【0041】
別な態様であるレンズアレイシート1は、図2に示すように、レンズアレイシートの反り返りを防止するための肉厚部9が、透明樹脂基材2の縁に沿って、又は透明樹脂基材2を横切って、この透明樹脂基材2の一部を厚くしつつ、レンズアレイシート1の凸レンズ4とずれて、形成されていてもよい。縁に沿っている肉厚部9に、マーカー3として、切れ込みである個々のマーカー3a,3a・・・からなる一群のマーカー3a・・・が形成されている。この肉厚部9、及びマーカー3a,3a・・・からなる一群のマーカー3a・・・は、凸レンズ4とずれて、透明樹脂基材2のおもて面側で形成されていてもよく、図3に示すようにうら面側で形成されていてもよい。
【0042】
別な態様であるレンズアレイシート1は、図4(a)に示すように、マーカー3aや3cを基準にして、透明樹脂基材2のおもて面からうら面までフルカットのダイシングができ、さらに粘着シート6の厚さの中程までのハーフカットのダイシングができる程度の厚みを有するものであってもよい。
【0043】
レンズアレイシート1は、図4(b)に示すように、格子状のライン8(図1参照)上に、断面が台形乃至V字形又はU字型の溝22を有していてもよい。この溝22は、硬いレンズアレイシート1の格子状のライン8を脆弱にして、容易くダイシングできるように、透明樹脂基材2の厚さの中程まで達していることが好ましい。この溝22に沿って、ダイシング刃がぶれることなく、走行できる。
【0044】
このレンズアレイシート1に設けられている凸レンズ4に代えて、図4(c)に示すように、フレネルレンズであってもよい。レンズアレイシート1の縁に、マーカー3aや3cを有する肉厚部9を有していると、凸レンズよりも薄いフレネルレンズ4が歪まないので、好ましい。図4(d)に示すように、格子状のライン8(図1参照)上に、断面が台形乃至V字形又はU字型の溝22を有していてもよい。フレネルレンズ4は、フレネルレンズ4が、透明樹脂基材2上で盛り上がって形成されていてもよいが、図4(e)に示すように、めり込むようにして形成されて、透明樹脂基材2の厚みによって保護されて傷つき難くなっていてもよい。レンズは、凹レンズ(不図示)であってもよい。
【0045】
レンズアレイシート1は、図5(a)に示すように、溝22の端で盛り上がった三角錐状のマーカー3b・3c・・・を有していてもよい。レンズアレイシート1は、図5(b)に示すように、溝22の端で、溝方向へ略くさび形に切れ込んだマーカー3b・3c・・・を有していてもよい。レンズアレイシート1は、図5(c)に示すように、溝22の端で、透明樹脂基材2の縁の肉厚部にまで延びて切れ込んだ略くさび形のマーカー3b・・・を有していてもよい。
【0046】
別なレンズアレイシート1は、図6に示すように、セラミックス製立方体の上面側の窪み部分の底部に、基板23上で縦横に密着しつつ配列している複数の発光ダイオード10が配置され、その窪み部分が透明樹脂で充填され、発光ダイオード10から延びたリード線12が下面側に導出されている発光ダイオードデバイス11が、その上面側で、透明樹脂基材2のうら側へ、凸レンズ4をおもて面にしたまま、接合されていてもよい。レンズ4の径は、透明樹脂で充填されたその窪み部分の開口径の同径以上となっている。その窪みをレンズ4が丁度、覆い被さるように、複数の発光ダイオード10上に、透明樹脂基材2が載置されている。各発光ダイオード10の境界面は丁度、透明樹脂基材2上のダイシングすべきライン8(図1参照)に重なり合っている。
【0047】
別なレンズアレイシート1は、図7に示すように、セラミックス製立方体の上面側の窪み部分の底部に、基板23上で等間隔に離れつつ配列している複数の発光ダイオード10が配置されてその窪みより上方に突出しており、その窪み部分が透明樹脂で充填されている同様な発光ダイオードデバイス11が、その上面側で、透明樹脂基材2のうら側に、凸レンズ4をおもて側にして、接合されているものであってもよい。透明樹脂基材2は、レンズ4の発光ダイオード10側で、突出した発光ダイオード10が嵌まる略半円状凹み24を有している。さらに透明樹脂基材2は、発光ダイオード10側で、略半円状凹み24と、発光ダイオードデバイス11が嵌まる略直方体状の凹み25とを、その中心軸が発光ダイオード10との光軸と一致するようにして、有している。レンズ4の径は、透明樹脂で充填されたその窪み部分の開口径の同径以上となっている。発光ダイオードデバイス11が略直方体状の凹み25に嵌まるように、複数の発光ダイオードデバイス11上を、透明樹脂基材2が覆い被されている。透明樹脂基材2のダイシングすべきライン(図1参照)上に溝22が形成されていることが好ましい。溝22は、丁度、複数の発光ダイオード10間の隙間26に重なり合うように形成され、その端部に、マーカー3b・3c・・・を有している。
【0048】
このレンズアレイシート1は、以下のようにして製造される。
【0049】
図1に示されるレンズアレイシート1の透明樹脂基材2のおもて面側で縦横に複数列並ぶ凸レンズ4に対応する凹部と、それが格子状の各枡目の中央に位置するようにその格子状のラインを示すように透明樹脂基材2の表裏を貫通して切れ込んだくさび形のマーカー3に対応する凸部とを、雌金型に予め設ける。その凹凸部を予め研磨しておき、ダイシングの後に凸レンズ4の光軸と発光ダイオードデバイスの中心軸とを一致させる心取りしなくて済むように、金型の内壁面を精密に調整しておく。
【0050】
その金型に、熱硬化性樹脂原料であるシリコーン樹脂原料を注入し、圧縮成形機で加圧しながら加熱して硬化させて、凸レンズ4及びマーカー3ごと透明樹脂基材2を、成形により一挙に形成する。金型から透明樹脂基材2を離型させた後、その透明樹脂基材2のうら面に、その四方端部よりも幾分はみ出すように、(メタ)アクリル系ウレタン樹脂製の紫外線硬化性粘着シート6を貼付すると、このレンズアレイシート1が得られる。
【0051】
このレンズアレイシート1のまま、各レンズ4の光学特性について検査しておき、欠陥のあるレンズ4の位置を、マークしたり記録したりして、識別できるようにしておくことが好ましい。これにより、ダイシングの際に、欠陥のあるレンズ4だけを峻別して除外することができる。
【0052】
このレンズアレイシート1を用いたダイシング方法は、以下の通りである。
【0053】
このレンズアレイシート1のおもて面側を上に向け、うら面側の紫外線硬化性粘着シート6を介して、ダイシング装置の水平なダイシング用台座上の略中央の所定位置、例えば台座(不図示)上でレンズアレイシート1の四隅が配置されるべき位置を示す標示21の枠内に、レンズアレイシート1を、見当で合わせ、減圧吸引によって、固定する。一群のマーカー3aと3bとの間隔及び一群のマーカー3cと3dとの間隔に対応する距離だけ離れた二台のカメラ20(1)及び20(2)を、台座の上部に、台座へ向けて配置する。一群のマーカー3aのうち最もカメラ20(1)寄りのマーカー3aがカメラ20(1)の視野に、一方、一群のマーカー3bのうち最もカメラ20(2)寄りのマーカー3bがカメラ20(2)の視野に、夫々入るように、台座をレンズアレイシート1ごと、相対的に移動させる。
【0054】
各カメラ20(1)・20(2)で、夫々マーカー3a及び3bを、定倍率に拡大して、デジタル画像撮影する。その画像データを画像解析器へ送信し、その画像データによる撮影画像を基にして、透明樹脂基材2部分とそこから欠けたくさび形のマーカー3a及び3b部分との透過率の違いによる明暗を検知して、マーカー3a及び3bの各くさび形に交差する2辺を、演算処理して求め、それらマーカー3a及び3bの両鋭角の頂点に対応する画像上での相対座標を、演算処理して求める。次いで、それら画像上での各マーカー3a及び3bの鋭角の頂点と、画像上での各カメラ20(1)・20(2)の視野の中心との相対的なずれを、算出する。
【0055】
その画像上での相対的なずれの大きさ及びずれの方向と、カメラ20(1)・20(2)による撮影画像の倍率とを勘案して、台座上での各マーカー3a及び3bの鋭角の頂点の絶対座標を算出する。この絶対座標を基にして、台座上での各マーカー3a及び3bの鋭角の頂点が、丁度、カメラ20(1)・20(2)の視野の中心となるように、台座をレンズアレイシート1ごと相対的に移動させ、この絶対座標のずれを補償する。必要に応じ、画像撮影して、画像上で、各マーカー3a・3bの鋭角の頂点と各カメラ20(1)・20(2)の視野の中心とのずれが無いことを確認する。
【0056】
台座に対して鉛直に配置されたカメラ20(1)及び20(2)のその鉛直方向と、円盤状のスリッター5の円盤面とが、同一面上となるように、スリッター5を、配設しておく。スリッター5は、当初、台座上方の待機位置に、配置されている。スリッター5を、回転させながら、マーカー3aの鋭角の頂点に向けて降下させ、レンズアレイシート1の粘着シート6を切断せずに透明樹脂基材2だけを、フルカットするように、切断し始める。スリッター5を、回転させながら、水平に、マーカー3bの鋭角の頂点へ向け、移動させると、ダイシングすべき格子状のライン8に沿って、ダイシングが施される。マーカー3bの鋭角の頂点までダイシングされたら、スリッター5を上昇させ、待機位置に、戻す。
【0057】
レンズアレイシート1ごと台座を、隣り合うマーカー3aと3aとの幅だけ、カメラ20(1)及び20(2)の方向へ、動かす。それによって、一群のマーカー3aのうちマーカー3aに隣り合うマーカー3aがカメラ20(1)の視野に、一方、一群のマーカー3bのうちマーカー3bに隣り合うマーカー3bがカメラ20(2)の視野に、夫々入るように、レンズアレイシート1が、相対的に移動する。
【0058】
マーカー3b・・・とマーカー3b・・・とを基準に、順次、これらの一連の動作を、繰り返す。一群のマーカー3a及び3bでの繰り返しの動作が終わったら、台座を左周りに90度回転させる。次いで、一群のマーカー3cのうち最もカメラ20(1)寄りのマーカー3cがカメラ20(1)の視野に、一方、一群のマーカー3dのうち最もカメラ20(2)寄りのマーカー3dがカメラ20(2)の視野に、夫々入るように、台座をレンズアレイシート1ごと相対的に移動させる。マーカー3c・3c・・・とマーカー3d・3d・・・との夫々について順次、これらの一連の動作を、繰り返す。一群のマーカー3c及び3dでの繰り返しの動作が終わると、レンズアレイシート1は、格子状にダイシングされている。この際、格子状の各枡目の中央に、レンズ2が均一に、位置している。
【0059】
このダイシング後、レンズアレイシート1を紫外線硬化性粘着シート6ごと台座から外し、純水で超音波洗浄し、レンズを画像処理などにより光学検査し、不具合のあるレンズをマークしておく。その後、粘着シート6の表裏何れかの面側から紫外線を照射して、粘着シート6を硬化させたあと、紫外線硬化性粘着シート6を、3a及び3b方向と、3c及び3d方向とに、夫々引き離すように、水平に引き伸ばす。あるいは、うら面側から突き捧で軽く押すことにより、またはその両方の組合せにより隣り合う個別片7が個々に分離する状態になる。レンズアレイシート1への粘着シートとの貼着、洗浄、光学検査操作は、適宜工程順を入れ替えてもよい。
【0060】
マウンター機で吸引しているマウンターノズルで、うら面側から突き捧で軽く押した個別片7を吸い付けると、個別片7が容易く粘着シート6から剥がれる。個別片7を、必要に応じて発光ダイオードやそれをパッケージングしたデバイスに、接着して実装する。(不図示)
【0061】
レンズアレイシート1上のダイシングすべき格子状のライン8毎にその両端でマーカー3a〜3dが形成されライン8毎に単数のスリッター5でダイシングする例を示したが、ダイシングすべき格子状のライン8の数本おき毎にその両端でマーカーが形成されその数本分を纏めて複数のスリッターでダイシングしてもよい。レンズアレイシート1上のダイシングすべき格子状のラインのうち平行な最遠のライン同士の両端でマーカーが形成されそれらを基準にレンズアレイシート1を均等にダイシングしてもよく、その斜交い同士だけでマーカーが形成されそれらを基準にレンズアレイシート1を均等にダイシングしてもよい。
【0062】
マーカー3の鋭角の頂点は、マーカー3の画像から明暗によって認識される例を示したが、光透過性や光反射性によって認識されてもよい。例えば、一方向からマーカーへ向けて投光し、光透過、屈折若しくは光反射により、マーカー3、特にマーカーの突き出たり窪んだりしている尖端とその周囲とを受光したときの輝度の違いを識別することにより、認識することができる。
【0063】
マーカー3は、表裏に貫通したくさび形のものの例を示したが、カメラ20(1)・20(2)の撮影によって認識できるものであれば、特に形状や形態を限定されず、レンズアレイシート1と一体成形されたものであってもよく、レンズアレイシート1の成形後に印刷又は切削されたものであってもよい。マーカー3は、印刷されたものでカメラの撮影画像から接線を基に中心を基準点として求めることができる円形状、交点を基準点として求めることができるX印状、そのまま基準点となる点状であってもよい。
【0064】
ダイシングは、スリッターの他、カッター刃、ダイヤモンドブレードのようなダイシング刃を用いて行われてもよく、レーザーダイシング、特にレーザーを、透明樹脂基材の中部に焦点合わせして、照射して、改質させ外部応力を加えて亀裂を生じさせることによってカットできるというステルスダイシングによって行われてもよい。
【0065】
ダイシングは、レンズアレイシート1の透明樹脂基材2のみをフルカットする例を示したが、柔軟で破断し易いゴム製のレンズアレイシート1をハーフカットするものであってもよい。
【0066】
図2〜7のレンズアレイシート1でも同様にして、ダイシングすることができる。ダイシングの際に、予め検査し欠陥であることが分かっていたレンズ4の個別片を、除外しつつ、欠陥のないレンズ4の個別片のみを、マウント機により、取り上げてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
先ず、図2に示すような形状のレンズアレイシートを以下のようにして調製した。レンズアレイシートの成形には、LEDレンズ用シリコーンレジン「LPS−L500」(信越化学工業株式会社製;商品名)を用いて、射出成形機により、行った。このシリコーンレジンを、レンズアレイシート金型に定量充填し、180℃×10分間の条件で成形した。成形されたシリコーンレジン製レンズアレイシートは、10列×10行の100個のレンズがベース厚み0.3mmの透明樹脂基材上に並べられたものである。レンズアレイシートの反りを防止するため、シート全周に幅2mmで高さ1mmの厚肉部が設けられ、さらに、ベース外周部には精度よくダイシングするためにくさび形の切れ込みであるダイシングマーカーも縦横列毎に同時に成形されている。
【0069】
次いで、得られたシリコーンレジン製レンズアレイシートのうら面側に、粘着シートとして「スミライト FSL-N4000シリーズ UVダイシングテープ 帯電防止グレード」(住友ベークライト株式会社製;商品名)を、貼り付けた。レンズ面を上にして、そのレンズアレイシートを、減圧吸引により、ダイシング用台座に吸引密着してセッティングした。画像撮影によりマーカーを検出し、それらマーカーを基準にして、切溝幅200μmのダイヤモンドブレードで、シリコーンレジン製レンズアレイシートのみを5mm×5mmにダイシングした。この際、UVダイシングテープは、切断されておらず、シリコーンレジン製レンズアレイシートからレンズの個別片がばらばらになるのを防いでいる。
【0070】
次に、純水中での超音波処理によるダスト除去工程を経て、シリコーンレジン製レンズアレイシートの画像処理による光学検査を行い、気泡、異物などの不具合があった箇所をマーキングして、実装の際に除去すべき不良レンズを特定した。
【0071】
最後に、ダイシングカットしたシリコーンレジン製レンズアレイシートのUVダイシングテープに、紫外線を照射し、その粘着材を硬化させて、粘着力を低下させ、UVダイシングテープをエキスパンドすると、レンズの個別片が、UVダイシングテープに極弱く張り付いたまま、得られた。発光ダイオードデバイスであるLEDケースとして、その外周部に、レンズの位置決めの為に、高さ0.5mmで幅0.5mmの壁が設けられているものを用いた。実装装置のマウントアームにより、レンズをひとつずつLEDケースへ、実装した。この際、LEDケースには、発光素子の保護としてシリコーンゴム製の封止材が未硬化で充填されており、ダイシングカットされたシリコーンレジンレンズ単品が封止材上に載せられ、封止材の硬化時にレンズと接着した。
【0072】
一方、実装操作の際に、マーキングされ特定された不良レンズは、不良を示すマーキングを画像で検出して、除外され、実装されること無く廃棄された。
【0073】
(実施例2)
先ず、図5(c)に示すような形状のレンズアレイシートを以下のようにして調製した。レンズアレイシートの成形には、LEDレンズ用シリコーンレジン「LPS−L500」(信越化学工業株式会社製;商品名)を用いて、射出成形機により、行った。このシリコーンレジンを、レンズアレイシート金型に定量充填し、180℃×10分間の条件で成形した。成形されたシリコーンレジン製レンズアレイシートは、10列×10行の100個のレンズがベース厚み0.3mmの透明樹脂基材上に並べられたものである。レンズアレイシートの反りを防止するため、シート全周に幅2mmで高さ1mmの厚肉部が設けられ、さらに、基板には精度よくダイシングするため、ダイシングすべきライン上がV字形の溝となって、格子状に成形されている。
【0074】
次いで、得られたシリコーンレジン製レンズアレイシートのうら面側に、粘着シートとして「スミライト FSL-N4000シリーズ UVダイシングテープ 帯電防止グレード」(住友ベークライト株式会社製;商品名)を、貼り付けた。レンズ面を上にして、そのレンズアレイシートを、減圧吸引により、ダイシング用台座に吸引密着してセッティングした。画像撮影によりマーカーを検出し、それらマーカーを基準にして、切溝幅200μmのダイヤモンドブレードで、シリコーンレジン製レンズアレイシートのみを5mm×5mmにダイシングした。この際、UVダイシングテープは、切断されておらず、シリコーンレジン製レンズアレイシートからレンズの個別片がばらばらになるのを防いでいる。
【0075】
次に、純水中での超音波処理によるダスト除去工程を経て、シリコーンレジン製レンズアレイシートの画像処理による光学検査を行い、気泡、異物などの不具合があった箇所をマーキングして、実装の際に除去すべきレンズを特定した。
【0076】
最後に、ダイシングカットしたシリコーンレジン製レンズアレイシートのUVダイシングテープに、紫外線を照射し、その粘着材を硬化させて、粘着力を低下させ、UVダイシングテープをエキスパンドすると、レンズの個別片が、UVダイシングテープに極弱く張り付いたまま、得られた。発光ダイオードデバイスであるLEDケースとして、その外周部に、レンズの位置決めの為に、高さ0.5mmで幅0.5mmの壁が設けられているものを用いた。実装装置のマウントアームにより、レンズをひとつずつLEDケースへ、実装した。この際、LEDケースには、発光素子の保護としてシリコーンゴム製の封止材が未硬化で充填されており、ダイシングカットされたシリコーンレジンレンズ単品が封止材上に載せられ、封止材の硬化時にレンズと接着した。
【0077】
一方、実装操作の際に、マーキングされ特定された不良レンズは、不良を示すマーキングを画像で検出して、除外され、実装されること無く廃棄された。
【0078】
(実施例3)
先ず、図7に示すような形状のレンズアレイシートを以下のようにして調製した。レンズアレイシートの成形には、LEDレンズ用シリコーンレジン「LPS−L500」(信越化学工業株式会社製;商品名)を用いて、射出成形機により、行った。このシリコーンレジンを、レンズアレイシート金型に定量充填し、180℃×10分間の条件で成形した。成形されたシリコーンレジン製レンズアレイシートは、10列×10行の100個のレンズがベース厚み0.3mmの透明樹脂基材上に並べられたものである。レンズアレイシートの反りを防止するため、シート全周に幅2mmで高さ1mmの厚肉部が設けられ、さらに、基板には精度よくダイシングするため、ダイシングすべきライン上がV字形の溝となって、格子状に成形されている。
【0079】
次に、純水中での超音波処理によるダスト除去工程を経て、シリコーンレジン製レンズアレイシートの画像処理による光学検査を行い、気泡、異物などの不具合があった箇所をマーキングして、実装の際に除去すべきレンズを特定した。
【0080】
シリコーンレジン製レンズアレイシートは、LED集合基板のLED素子と同ピッチで配列されている。そのLED集合基板は、LED素子が10列×10行で100個並べられている。反射ケースがLED素子毎に各々備え付けられて、発光ダイオードデバイスとなっている。
【0081】
レンズとLED素子との位置合わせとして、LED集合基板外周には、位置決めのために幅0.5mmで高さ1mmの壁が設けられている。これにより、シリコーンレジン製レンズアレイシートがずれないように位置決めを行なうことができるようになっている。シリコーンレジン製レンズアレイシートと、LED集合基板とを重ね合わせた。
【0082】
反射ケースの中には、シリコーンゲル製LED封止材が、未硬化のまま充填されている。気泡が巻き込まれないように、反射ケースとシリコーンレジン製レンズアレイシートが互いに嵌め合いつつ、シリコーンレジン製レンズアレイシートを、端から徐々にLED集合基板上へ載置して、それらを一体化させた。
【0083】
次いで、得られたシリコーンレジン製レンズアレイシートと一体化したLED集合基板のうら面側に、粘着シートとして「スミライト FSL-N4000シリーズ UVダイシングテープ 帯電防止グレード」(住友ベークライト株式会社製;商品名)を、貼り付けた。レンズ面を上にして、これを、減圧吸引により、ダイシング用台座に貼り付けてセッティングした。画像撮影によりマーカーを検出し、それらマーカーを基準にして、切溝幅200μmのダイヤモンドブレードで、シリコーンレジン製レンズアレイシートとLEDとを同時にダイシングした。この際、UVダイシングテープは、切断されておらず、レンズ付きLEDの個別片がばらばらになるのを防いでいる。その後、エアノズルにより空気を吹き付けてエア洗浄した。
【0084】
最後に、ダイシングカットしたシリコーンレジン製レンズアレイシートのUVダイシングテープに、紫外線を照射し、その粘着材を硬化させて、粘着力を低下させ、UVダイシングテープを、うら面側から突き捧で押すと、レンズ付きLEDパッケージである個別片が、UVダイシングテープに極弱く張り付いたまま、得られた。そのひとつずつを、実装装置のマウントアームにより、取り上げ、回路基板へ、実装した。
【0085】
一方、実装操作の際に、マーキングされ特定された不良レンズは、不良を示すマーキングを画像で検出して、除外され、実装されること無く廃棄された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のレンズアレイシートを用いたダイシング方法は、発光ダイオードから発する光を集束したり拡散したりするレンズを、一挙に多数製造するのに、有用である。
【符号の説明】
【0087】
1はレンズアレイシート、2は透明樹脂基材、3,3a,3a・3a・・・,3b,3b・3b・・・,3c,3c・3c・・・,3d,3d・3d・・・はマーカー、4は凸レンズ、5はスリッター、6は紫外線硬化性粘着シート、7は個別片、8はダイシングすべき格子状のライン、9は肉厚部、10は発光ダイオード、11は発光ダイオードデバイス、12はリード線、20(1),20(2)はカメラ、21は標示、22は溝、23は基板、24・25は凹み、26は間隙、31はレンズアレイシート、32は透明樹脂基材、34は凸レンズ、35はスリッター、37は個別片、38はダイシングすべき格子状のライン、39a,39bは端辺、40a,40bは歪み、41は隙間、42はガイドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横夫々に列をなして等間隔に並んだ複数のレンズが、透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側に設けられており、該複数のレンズよりなる列の横列同士間と縦列同士間とを各々の中央でダイシングすべき格子状のライン上に、該ラインの端部を明示するマーカーが、形成されていることを特徴とするレンズアレイシート。
【請求項2】
前記透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側で、肉厚部が、前記透明樹脂基材の縁に沿い及び/又は前記基材の面を横切りつつ線状に、前記複数のレンズよりなる列とずれて、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項3】
前記透明樹脂基材の片面側に、粘着シートが貼付されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項4】
前記ライン上に、ダイシングされる溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項5】
前記ダイシングすべき格子状のライン上のうち、前記透明樹脂基材の各縁の端側の少なくとも2箇所に、前記マーカーが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項6】
前記透明樹脂基材のうら面側で、複数の発光ダイオードデバイスが、前記複数のレンズ毎に重なり合って接合されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項7】
縦横に夫々、列をなして等間隔に並んだ複数のレンズを、透明樹脂基材の少なくとも何れか一面側に設け、隣り合うその横列同士間と縦列同士間とを各々の中央でダイシングすべき格子状のライン上にその端部を明示するマーカーを形成して、レンズアレイシートを作製する工程、
前記レンズアレイシートを、固定する工程、
前記マーカーを認識し、それを基準にして、前記マーカーより前記ラインの上を前記格子状にダイシングする工程、
前記レンズの個別片を取り上げる工程、
を有することを特徴とするレンズアレイのダイシング方法。
【請求項8】
一方向から前記マーカーへ向けて投光し、前記マーカーの形状を画像撮影することにより、又は光透過、屈折若しくは光反射による前記マーカーとその周囲との輝度の違いを受光することにより、そのマーカーを前記認識することを特徴とする請求項7に記載のレンズアレイのダイシング方法。
【請求項9】
前記透明樹脂基材の少なくとも何れかの面側で肉厚部が前記透明樹脂基材の縁に沿いつつ及び/又はその面を横切りつつ前記複数のレンズよりなる列とずれて線状に形成されているレンズアレイシートを、前記格子状にダイシングした後に、該肉厚部を切断分離することを特徴とする請求項7に記載のレンズアレイのダイシング方法。
【請求項10】
前記レンズアレイシートを作製した後、ダイシングすべき面のうら面側へ、そのレンズアレイシートに粘着シートを貼付してから、前記レンズアレイシートを前記固定し、該粘着シートを切断分離せずに前記ダイシングすることを特徴とする請求項7に記載のレンズアレイのダイシング方法。
【請求項11】
前記粘着シートが、熱又は光で硬化して粘着性を低下させるものであり、前記ダイシングし、前記個別片を形成してから、前記粘着シートを硬化させた後、前記個別片を取り上げることを特徴とする請求項10に記載のレンズアレイのダイシング方法。
【請求項12】
前記複数のレンズに夫々対応して一体化される複数の発光ダイオードデバイスを、単一基板上に載置し、前記レンズアレイシートに接着して前記固定してから、該発光ダイオードデバイスの夫々と共に前記レンズアレイシートをダイシングして、独立したレンズ付き半導体発光装置となる前記個別片にすることを特徴とする請求項7に記載のレンズアレイのダイシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137896(P2011−137896A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296531(P2009−296531)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】