説明

レンズシート、面光源装置、透過型表示装置

【課題】画面左右方向における輝度の不均一性や3次元映像の視認性の低下等を改善し、良好な3次元映像を表示可能なレンズシート、これを備える面光源装置及び透過型表示装置を提供する。
【解決手段】レンズシート14は、入射側のプリズム層143に形成される単位プリズム142は、略三角柱状であり、出射側のレンズ層145に形成される略円柱形状の単位レンズ144の配列方向と平行な方向に複数配列され、単位レンズ144の配列方向の中央においては、単位プリズム142とそれに対応する単位レンズ144とは、シート面の法線方向から見てその頂点の位置が一致し、単位レンズ144の配列方向中央から端部に向かうにつれて、しだいに単位プリズム142の頂点が単位レンズ144の頂点144tよりもより端部側に位置するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシート、これを備える面光源装置、透過型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、立体映像を表示可能な表示装置に対する需要が高まっている。
立体映像を表示する方法としては、例えば、視差を有する左眼用映像光及び右眼用映像光を、偏光面の異なる直線偏光とし、偏光眼鏡を用いてそれぞれの眼に映像が届くようにするものや、時分割で表示される視差を有する左眼用映像、右眼用映像を、観察者の左右の眼にそれぞれ届くように、観察用眼鏡によって左右の目が視認できる映像を切り替えるもの等がある。しかし、このような眼鏡を使用する表示装置では、眼鏡の装着を観察者が煩わしく思う場合があった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示す表示装置のように、裸眼で立体映像を観察可能な表示装置の開発も、進められている。特許文献1に示す表示装置では、LCD(Liquid Crystal Display)パネルと導光板との間に設けられる両面プリズムシートによって、左右の眼用の映像を、それぞれ所定の方向へ出射させている。この両面プリズムシートは、入射側に三角柱レンズ列を有し、出射側に三角柱レンズ列と同一方向に配列され、三角柱レンズ列と同一ピッチであり、三角柱レンズと対応する位置に形成される円筒状レンズ列を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3930021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような両面プリズムシートを用いた3次元映像表示装置では、三角柱プリズム及び円筒状レンズの配列方向において、その観察画面の中央部分は明瞭な3次元映像が観察可能であるが、その両端部側は、映像が暗くなったり、3次元映像が不明瞭となったりするという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、画面左右方向における輝度の不均一性や3次元映像の視認性の低下等を改善し、良好な3次元映像を表示可能なレンズシート、これを備える面光源装置及び透過型表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、右眼用映像光と左眼用映像光とを交互にそれぞれ所定の方向へ出射することにより立体映像を表示可能な透過型表示装置の透過型表示部を背面から照射する面光源装置に用いられ、両面に光学形状が形成されるレンズシートであって、シート状の基材層(141)と、前記基材層の出射側に、略円柱形状の一部形状又は略楕円柱形状の一部形状である凸形状の単位レンズ(144)が複数配列されて形成されたレンズ層(145)と、前記基材層の入射側に、凸形状の単位プリズム(142,242)が複数配列されて形成されたプリズム層(143,243)と、を備え、前記単位プリズムは、略三角柱状であり、前記単位レンズの配列方向と平行な方向に複数配列され、前記基材層を介して、1つの前記単位レンズに対して1つの前記単位プリズムが対応しており、前記単位レンズの配列方向の中央においては、前記単位プリズムとそれに対応する前記単位レンズとは、シート面の法線方向から見てその頂点(142t,144t,242t)の位置が一致しており、前記単位レンズの配列方向中央から端部に向かうにつれて、しだいに前記単位プリズムの頂点(142t,242t)が前記単位レンズの頂点(144t)に対してより該端部側に位置し、シート面の法線方向から見て、前記単位レンズの頂点とその単位レンズに対応する前記単位プリズムの頂点との前記単位レンズの配列方向におけるずれ量(Δx)がしだいに大きくなっていること、を特徴とするレンズシート(14,24)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズム(142,242)の配列ピッチ(P2)は、前記単位レンズ(144)の配列ピッチ(P4)よりも大きいこと、を特徴とするレンズシート(14,24)である。
請求項3の発明は、請求項1に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズムの配列ピッチは、一定であり、前記単位レンズの配列ピッチは、その配列方向において、中央から両端部に向かうにつれてしだいに小さくなること、を特徴とするレンズシートである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズム(142,242)の頂点(142t、242t)は、その配列方向において、該単位プリズムに対応する前記単位レンズ(144)のレンズ幅内に位置すること、を特徴とするレンズシート(14,24)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズム(242)の側面(242a,242b)は、凹曲面であること、を特徴とするレンズシート(24)である。
請求項6の発明は、請求項5に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズム(242)の頂点(242t)は、前記単位レンズ(144)の配列方向の中央において、前記単位レンズ側から平行光を照射した場合の該平行光の焦点位置よりも、該レンズシートの厚み方向において前記基材層側に位置すること、を特徴とするレンズシート(24)である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、前記単位プリズム(14,24)は、電離放射線硬化型樹脂製であること、を特徴とするレンズシートである。
【0009】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のレンズシート(14,24)と、前記レンズシートに対して前記プリズム層(143,243)側に配置される導光板(13)と、前記単位プリズムの配列方向における前記導光板の両端面(13a,13b)に対向する位置にそれぞれ配置される第1の光源部(12A)及び第2の光源部(12B)と、を備える面光源装置(12A,12B,13,14,24)である。
請求項9の発明は、請求項8に記載の面光源装置(12A,12B,13,14,24)と、前記面光源装置により背面側から照明される透過型表示部(11)と、を備え、前記第1の光源部(12A)及び前記第2の光源部(12B)は、交互に点灯と消灯と繰り返し、前記透過型表示部は、前記第1の光源部が点灯して前記第2の光源部が消灯する場合に、右眼用映像を表示し、前記第2の光源部が点灯して前記第1の光源部が消灯する場合に、左眼用映像を表示し、前記第1の光源部及び前記第2の光源部の点灯及び消灯に同期して、表示する映像を切り替えること、を特徴とする透過型表示装置(10)である。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明によるレンズシートは、基材層の入射側に、略三角柱状であり、単位レンズの配列方向と平行な方向に複数配列された単位プリズムを有し、基材層を介して1つの単位レンズに対して1つの単位プリズムが対応している。単位レンズの配列方向の中央においては、単位プリズムとそれに対応する単位レンズとは、シート面の法線方向から見てその頂点の位置が一致しており、単位レンズの配列方向中央から端部に向かうにつれて、しだいに単位プリズムの頂点が単位レンズの頂点に対してよりその端部側に位置し、シート面の法線方向から見て、単位レンズの頂点とその単位レンズに対応する単位プリズムの頂点との単位レンズの配列方向におけるずれ量がしだいに大きくなっている。
従って、単位プリズムの頂部近傍に入射した光を観察者側の所定の方向へ立ち上げることができ、このレンズシートを、右眼用映像光と左眼用映像光とを交互に所定の方向へそれぞれ出射することによって立体映像を表示可能な透過型表示装置の面光源装置に用いることにより、右眼用映像光を右眼に届け、左眼用映像光を左眼に届けることができるので、良好な立体映像を観察者に提供できる。そして、レンズシートの正面方向から見て、単位プリズム及び単位レンズの配列方向において、両端部が暗く中央が明るいという輝度の不均一性や、両端部の3次元映像が不完全になるという3次元映像の品位の低下を改善できる。
【0011】
(2)単位プリズムの配列ピッチは、単位レンズの配列ピッチよりも大きいので、単位プリズムの配列方向に沿って両端部に向かうにつれて、単位プリズムの頂点が単位レンズの頂点に対してより外側(端部側)に位置することとなる。従って、単位プリズムの頂部近傍に入射した光を観察者側の所定の方向へ立ち上げることができ、このレンズシートを、右眼用映像光と左眼用映像光とを交互に所定の方向へそれぞれ出射することによって立体映像を表示可能な透過型表示装置の面光源装置に用いることにより、右眼用映像光を右眼に届け、左眼用映像光を左眼に届けることができるので、良好な立体映像を観察者に提供できる。そして、レンズシートの正面方向から見て、単位プリズム及び単位レンズの配列方向において、両端部が暗く中央が明るいという輝度の不均一性や、両端部の3次元映像が不完全になるという3次元映像の品位の低下を改善できる。
【0012】
(3)単位プリズムの配列ピッチは、一定であり、単位レンズの配列ピッチは、その配列方向において、中央から両端部に向かうにつれてしだいに小さくなるので、単位プリズムの頂点が単位レンズの頂点に対してより外側(端部側)に位置することとなる。従って、単位プリズムの頂部近傍に入射した光を観察者側の所定の方向へ立ち上げることができ、このレンズシートを、右眼用映像光と左眼用映像光とを交互に所定の方向へそれぞれ出射することによって立体映像を表示可能な透過型表示装置の面光源装置に用いることにより、右眼用映像光を右眼に届け、左眼用映像光を左眼に届けることができるので、良好な立体映像を観察者に提供できる。そして、レンズシートの正面方向から見て、単位プリズム及び単位レンズの配列方向において、両端部が暗く中央が明るいという輝度の不均一性や、両端部の3次元映像が不完全になるという3次元映像の品位の低下を改善できる。
【0013】
(4)単位プリズムの頂点は、その配列方向において、その単位プリズムに対応する単位レンズのレンズ幅内に位置するので、単位プリズムに入射した光が、その殆どが単位プリズムに対応する単位レンズから出射することができ、レンズシートに入射した光を所定の方向に出射することができ、迷光を低減できる。
【0014】
(5)単位プリズムの側面は、凹曲面であるので、単位プリズムの頂点近傍の形状や寸法の精度がそれほど高くない場合にも、観察者側へ光を立ち上げることができる。
【0015】
(6)単位プリズムの頂点は、その配列方向の中央において、単位レンズ側から平行光を照射した場合の平行光の焦点位置よりも、レンズシートの厚み方向において基材層側に位置する。単位プリズムは、その側面が凹曲面であるので、単位プリズムに入射した光を効率よく出射側に立ち上げ、所定の方向へ出射することができ、焦点位置よりも単位プリズムの頂点が基材層側に位置する場合であっても、単位プリズムに入射した光を効率よく出射側に立ち上げることができる。
【0016】
(7)単位プリズムは、電離放射線硬化型樹脂製であるので、製造が容易である。
【0017】
(8)本発明によるレンズシートと、レンズシートに対してプリズム層側に配置される導光板と、単位プリズムの配列方向における導光板の両端面に対向する位置にそれぞれ配置される第1の光源部及び第2の光源部とを備える面光源装置であるので、各光源部からの光をそれぞれ所定の方向へ交互に光を出射することができ、また、正面方向からみた場合に画面の位置に依らず明るさの均一性の高い面光源装置とすることができる。
【0018】
(9)本発明による面光源装置と、面光源装置により背面側から照明される透過型表示部とを備え、第1の光源部及び第2の光源部は、交互に点灯と消灯と繰り返し、透過型表示部は、第1の光源部が点灯して第2の光源部が消灯する場合に、右眼用映像を表示し、第2の光源部が点灯して第1の光源部が消灯する場合に、左眼用映像を表示し、第1の光源部及び第2の光源部の点灯及び消灯に同期して、表示する映像を切り替えることを特徴とする透過型表示装置である。従って、観察者が、左右の眼用の映像の視認を制御する眼鏡等を用いることなく観察可能な3次元映像を表示することができる。また、画面左右方向の両端部に生じやすい輝度の低下やクロストークを効果的に低減でき、良好な立体映像を観察者に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の表示装置及び面光源装置を説明する図である。
【図2】第1実施形態のレンズシートの形状を説明する図である。
【図3】配列方向における単位レンズの頂点に対する単位プリズムの頂点の位置のずれとレンズシートからの光の出射強度分布を示す図である。
【図4】配列方向における単位レンズの頂点に対する単位プリズムの頂点の位置のずれとレンズシートからの光の出射強度分布を示す図である。
【図5】配列方向における単位レンズの頂点に対する単位プリズムの頂点の位置のずれとレンズシートからの光の出射強度分布を示す図である。
【図6】第1実施形態のレンズシートの画面左右方向各部における光の様子を示す図である。
【図7】第1実施形態の表示装置と比較例の表示装置とにおける光の出射方向を示す図である。
【図8】第2実施形態のレンズシートの形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、特許請求の範囲の記載は、シートという記載で統一して使用した。従って、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光学シートは、光学フィルムとしてもよいし、光学板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の表示装置及び面光源装置を説明する図である。
表示装置10は、LCDパネル11と、光源部12A,12Bと、導光板13と、レンズシート14と、制御部15とを備え、LCDパネル11に表示される映像を背面から照明して表示する透過型液晶表示装置である。この表示装置10は、観察者Oが立体視用の眼鏡等を用いることなく、立体映像を観察可能とする立体映像表示装置である。
表示装置10の面光源装置(バックライト)は、エッジライド型であり、本実施形態では、光源部12A,12B、導光板13、レンズシート14が相当する。
【0022】
LCDパネル11は、透過型の液晶表示素子を備える透過型表示部である。本実施形態のLCDパネル11は、例えば、画面サイズが対角2.8インチの略矩形状であり、解像度320×240ピクセルの表示が可能である。また、LCDパネル11には、マトリクス状に複数の副画素が配列されている。この副画素は、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)の原色を表示し、R,G,Bの3つの副画素が1セットで1画素(ピクセル)を構成している。本実施形態では、1つの画素は、略正方形状であり、画面左右方向及び画面上下方向に配列されている。また、1つの画素は、画面左右方向に3分割され、R,G,Bの副画素が配列されている。画素の配列ピッチは、約178μmであり、副画素の画面左右方向における配列ピッチは、約59μmである。なお、上記の例に限らず、1つの画素は3つ以上の副画素からなるものとしてもよい。
このLCDパネル11は、制御部15からの指示により、視差を有する2つの視差映像である右眼用映像と左眼用映像とを交互に表示する。
【0023】
以下の明細書においては、一例として、表示装置10の使用状態における観察画面(LCDパネル11)の短辺に平行な方向を使用状態における画面上下方向(画面垂直方向)とし、長辺に平行な方向を使用状態における画面左右方向(画面水平方向)とする。図1では、表示装置10の画面左右方向に平行な断面を示している。なお、以下の説明中において、特に断りが無い場合、画面左右方向、画面上下方向とは、表示装置10の使用状態における画面左右方向、画面上下方向であるとする。
【0024】
光源部12A,12Bは、LCDパネル11を照明する光を発する部分である。光源部12A,12Bは、導光板13の画面左右方向の両端面13a,13bに面する位置に、それぞれ設けられている。そして、光源部12A,12Bは、制御部15の指示により、交互に点灯及び消灯する。この光源部12A,12Bの点灯及び消灯は、LCDパネル11の表示映像の切り替えと同期している。
本実施形態の光源部12A,12Bは、白色光を発するLED(Light Emitting Diode)を発光源とし、導光板13の画面左右方向の両端部に沿って画面上下方向へ延在する不図示のライトガイドと組み合わせて使用している。
【0025】
導光板13は、光源部12A,12Bが発した光を導光する部材である。図1に示すように、単位レンズ144及び単位プリズム142の配列方向において対向する導光板13の2つの端面13a,13bに面する位置には、光源部12A,12Bが配置されている。
本実施形態の導光板13は、アクリル系樹脂製であるが、これに限らず、例えば、PC(ポリカーボネート)樹脂製のもの等を適宜選択して用いてよい。
この導光板13は、その背面側の面13dに印刷等により拡散作用を有するドット(不図示)が形成されている。なお、導光板13は、出射側の面13cに粗面化加工等を施してもよい。
導光板13の背面側(レンズシート14とは反対側)に、不図示の反射板等を設けてもよい。この反射板は、光を反射可能であり、レンズシート14等により導光板13側へ反射された光を、反射して再度レンズシート14側へ向ける部材である。このような反射板を設けることにより、光源部の光をより効率的に使用することができる。
【0026】
レンズシート14は、基材層141と、基材層141の入射側(導光板13側)の面に形成されたプリズム層143と、基材層141の出射側(LCDパネル11側)の面に形成されたレンズ層145とを有している。プリズム層143は、複数配列された単位プリズム142を有し、レンズ層145は、単位プリズム142の配列方向と平行な方向を配列方向として複数配列された単位レンズ144を有している。
このレンズシート14は、入射側(導光板13側)の単位プリズム142に入射した光を、単位レンズ144から略正面方向に位置する観察者Oの左右の眼にそれぞれ届く方向へ出射する。レンズシート14は、配列方向(画面左右方向)における中央においては、図1に示すように、表示装置10の観察面(レンズシート14のシート面)に対して略正面方向に位置する観察者Oから見て、光源部12Aからの光Laがシート面の法線方向に対して画面左右方向右側に出射し、光源部12Bからの光Lbをシート面の法線方向に対して画面左右方向左側に出射する。本実施形態では、画面左右方向におけるシート面に対する出射強度分布おいて、光Laのピーク強度の半値角が画面左右方向右側に0〜15°であり、光Lbのピーク強度の半値角が画面左右方向左側に0〜15°となるように、レンズシート14は、設計されている。
【0027】
図2は、第1実施形態のレンズシート14の形状を説明する図である。図2(a)は、レンズシート14のシート面に直交し、単位プリズム142及び単位レンズ144の配列方向(画面左右方向)に平行な断面を示している。図2(b)は、図2(a)の断面において、配列方向における一方の端部(観察者Oから見て画面左右方向右側端部)の拡大図であり、図2(c)は、図2(a)の断面において、配列方向の中央(画面左右方向中央)の拡大図であり、図2(d)は、図2(a)の断面において、配列方向における他方の端部(観察者Oから見て画面左右方向左側端部)の拡大図である。
なお、シート面とは、例えば、レンズシート14において、レンズシート14全体として見たときにおける、レンズシート14の平面方向となる面を示すものであり、本明細書中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。また、このレンズシート14のシート面は、表示装置10(LCDパネル11)の観察面に平行である。
【0028】
基材層141は、このレンズシート14のベース(基材)となる層であり、光透過性を有するシート状の部材を用いている。基材層141の入射側(導光板13側)には、プリズム層143が形成され、基材層141の出射側(LCDパネル11側)には、レンズ層145が形成されている。
本実施形態の基材層141は、光透過性を有する熱可塑性樹脂製のシート状の部材が用いられている。基材層141の厚さは、Tである。
【0029】
レンズ層145は、基材層141の出射側(LCDパネル11側)の面に形成された層であり、その出射側の面に単位レンズ144がシート面に沿って画面左右方向に複数配列されている。
単位レンズ144は、略円柱状の一部形状であり、所謂、シリンドリカルレンズである。この単位レンズ144は、その形状により、光源部12A,12Bから発せられ、導光板13内を導光してレンズシート14に入射した光を、それぞれ所定の方向へ出射させる作用を有している。
単位レンズ144は、単位レンズ144の配列方向(画面左右方向)における位置に依らずその形状が一定であり、その配列ピッチがP4である。なお、明瞭な立体映像を表示し、映像の筋感やモアレ等の表示不良の低減効果をより高めるという観点から、単位レンズ144の配列ピッチP4及び後述の単位プリズム142の配列ピッチP2は、LCDパネル11の副画素の画面左右方向の配列ピッチよりも小さいことがより好ましい。
【0030】
プリズム層143は、基材層141の入射側(導光板13側)の面に形成され、その入射側の面には、シート面に沿って画面左右方向に複数の単位プリズム142が配列されている。単位プリズム142の配列方向は、単位レンズ144の配列方向に平行である。
単位プリズム142は、略二等辺三角柱状である。単位プリズム142の画面左右方向に平行であってシート面に直交する断面の断面形状は、略二等辺三角形形状であり、その断面形状における側面142a,142bに相当する辺の長さが等しい。
単位プリズム142は、配列方向(画面左右方向)における位置によらず形状が一定であり、その配列ピッチP2は、単位レンズの配列ピッチP4よりも大きい。
【0031】
図2(c)に示すように、配列方向において中央(観察画面左右方向中央)では、単位プリズム142の頂点142tは、シート面の法線方向から見て、単位レンズ144の頂点144tと一致しており、シート面に直交し、単位レンズ144の頂点144tを通る仮想直線Hは、単位プリズム142の頂点142tを通る。
しかし、単位プリズム142の配列ピッチP2が単位レンズの配列ピッチP4よりも大きいため、単位レンズ144及び単位プリズム142の配列方向の中央では、単位レンズ144の頂点144tをと単位プリズム142の頂点142tとはシート面の法線方向から見て一致しているが、配列方向において端部側へ向かうにつれて単位プリズム142と単位レンズ144との位置がしだいに端部側(外側)へずれていく。そして、単位レンズ144及び単位プリズム142の配列方向において中央から端部側へ向かうにつれて、しだいに単位プリズムの頂点142tと、対応する単位レンズ144の頂点144tとの配列方向におけるずれ量は、大きくなる。
【0032】
図2(b)に示すように、観察者Oから見て画面左右方向右側端部に向かうにつれて、頂点142tは、単位レンズの頂点144tを通りシート面に直交する直線Hに対して、しだいに画面左右方向右側に位置するようになる。そして、配列方向(画面左右方向)における単位レンズ144の頂点144tと単位プリズム142の頂点142tとのずれ量Δxは、観察者Oから見て画面左右方向右側に向かうにつれて大きくなる。
また、図2(d)に示すように、観察者Oから見て画面左右方向左側に向かうにつれて、頂点142tは、単位レンズの頂点144tを通りシート面に直交する直線Hに対して、しだいに画面左右方向左側に位置するようになる。そして、配列方向(画面左右方向)における単位レンズ144の頂点144tと単位プリズム142の頂点142tとのずれ量Δxは、観察者Oから見て画面左右方向左側に向かうにつれて大きくなる。
【0033】
この単位プリズム142は、それぞれが、基材層141を介して対向する位置にある単位レンズ144と、略1対1で対応しており、シート面の法線方向からみて、単位プリズム142の頂点142tは、その単位プリズム142に対応する単位レンズ144のレンズ幅より外側に位置することはない。即ち、単位プリズム142の頂点142tは、その単位プリズム142に対応する単位レンズ144のレンズ幅内に位置している。
【0034】
単位プリズム142の配列方向の中央に位置する単位プリズム142の頂点142tは、レンズシート14の厚み方向(シート面の法線方向)において、単位レンズ144の仮想の焦点に略等しい。この焦点とは、基材層141の入射側が単位プリズム142を形成する樹脂で十分な厚さで被覆されている状態で、単位レンズ144側からシート面に直交する方向から平行光を照射したときに、その略平行光の焦点(集光点)となる点である。
本実施形態の単位プリズム142(プリズム層143)は、紫外線硬化型樹脂製である。なお、単位レンズ144は、紫外線硬化型樹脂に限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂を用いてもよい。
【0035】
本実施形態のレンズシート14の実施例として、例えば、以下のような各部の寸法を有するレンズシート14を用いることが可能である。実施例のレンズシート14は、単位レンズ144の配列ピッチP4=約70μmであり、その曲率半径が約50μmであり、ランド厚が約10μmである。また、基材層141の厚さT=38μmである。さらに、単位プリズム142は、そのプリズム高さ(単位プリズム142間の谷底となる点から頂点142tまでの厚み方向における寸法)が約60μmであり、ランド厚が約10μmであり、頂角が約60°である。また、単位プリズム142の配列ピッチP2は、巨視的には単位レンズ144の配列ピッチP4と略同ピッチであるが、実施際には、その差の測定が困難な程度に単位レンズ144の配列ピッチP4よりわずかに大きい。そして、単位レンズ144及び単位プリズム142の配列方向における頂点142tと頂点144tとのずれ量Δxが単位レンズ144の配列ピッチP4に対する比Δx/Pは、配列方向(画面左右方向)の中央部でΔx/P4=0(即ち、Δx=0)であり、両端部でΔx/P4=約0.15である。
【0036】
図1に戻って、制御部15は、光源部12A,12Bの発光を交互に切り替え、かつ、この光源部12A,12Bの発光に同期してLCDパネル11が表示する右眼用映像と左眼用映像とを切り替えるように指示する。即ち、制御部15の指示により、例えば、光源部12Bが消灯して光源部12Aが発光するときにLCDパネル11が右眼用映像を表示し、光源部12Aが消灯して光源部12Bが発光するときにLCDパネル11が左眼用映像を表示する。
本実施形態の制御部15は、LCDパネル11の表示映像の切り替え及び光源部12A,12Bの交互の発光を、所定の周波数で同期しながら行うように指示する。なお、この周波数は、使用するLCDパネル11の特性や使用環境等に応じて、適宜設定してよい。
【0037】
本実施形態の表示装置10の立体映像の表示方法を説明する。
図1に示す表示装置10において、例えば、光源部12Aが発した光は、導光板13内を進み、導光板13の出射側の面13cから出射し、レンズシート14の単位プリズム142の一方の側面142aに入射する。
単位プリズム142に入射した光は、側面142aに対向する側面142bで全反射して単位レンズ144側へ向かう。そして単位レンズ144から略正面方向に位置する観察者Oの右眼側となる方向へ出射し、LCDパネル11へ入射する。このとき、LCDパネル11は、右眼用映像を表示しているので、観察者Oの右眼へ右眼用映像の光が到達する。一方、光源部12Bは消灯しているので、左眼に到達する光は、非常に少なく、立体映像の視認に影響を与えることはない。
【0038】
また、光源部12Bが発した光は、導光板13を導波して導光板13の出射側の面13cから出射し、レンズシート14の単位プリズム142の一方の側面142bに入射する。入射した光は、対向する側面142aで全反射して単位レンズ144側へ向かう。そして単位レンズ144から略正面方向に位置する観察者Oの左眼側となる方向へ出射し、LCDパネル11へ入射する。このとき、LCDパネル11は、左眼用映像を表示しているので、観察者Oの左眼へ左眼用映像の光が到達する。一方、光源部12Aは消灯しているので、右眼に到達する光は、非常に少なく、立体映像の視認に影響を与えることはない。
従って、観察者Oの右眼には右眼用映像が届き、左眼には左眼用映像が届き、これらが高速で切り替わるので、観察者Oは、これらの視差映像により裸眼で立体視が行え、3次元映像を観察できる。
【0039】
ここで、単位プリズム142の頂点142tの単位レンズ144の頂点144tに対する配列方向における位置のずれとその作用について説明する。
図3〜5は、配列方向における単位レンズの頂点に対する単位プリズムの頂点の位置のずれとレンズシートからの光の出射強度分布を示す図である。図3〜5において、縦軸は、相対強度であり、ピーク強度を1とした場合の出光強度比率を示し、横軸は画面左右方向におけるシート面に対する出射角度を示しており、正の方向を観察者Oから見た画面左右方向右側、負の方向を観察者Oの画面左右方向左側としている。
図3〜5は、単位プリズム142の頂点142tを観察者Oから見て単位レンズ144の頂点144tの左側に所定量ずらして作製された評価用のレンズシートを面光源装置に用いた場合の光の出射強度分布をシミュレーションにより求めた結果を示している。
各評価用のレンズシートは、単位プリズム142の頂点142tのずれの大きさ(ずれ量Δx)が所定の値で一定である点以外は本実施形態のレンズシート14と略同様の形状である。
【0040】
このシミュレーションは、評価用のレンズシートのシート面に対して±75°(観察者Oから見て右側から75°、左側から75°)方向から光が入射するものとして行った。シート面に対する入射角度±75°とは、単位プリズム142の配列方向において、本実施形態の光源部12A,12Bからそれぞれ発せられ、導光板13から出射する光の出射角度のピーク方向の光がレンズシート14に入射する入射角度に相当する。この導光板13からの出射角度は、単位プリズム142の配列方向の位置に依らず略一定である。
【0041】
図3は、配列方向における単位プリズム142の頂点142tの位置と単位レンズ144の頂点144tの位置とが一致している場合(配列方向における頂点位置のずれ量Δx=0である場合)の光の出射角度分布を示している。
図4(a)は、配列方向における単位レンズ144の頂点144tの位置に対する単位プリズム142の頂点142tの位置のずれ量Δxが、単位レンズ144のピッチP4の5%に相当する(Δx/P4=0.05)場合の光の出射角度分布を示し、図4(b)は、配列方向における単位レンズ144の頂点144tの位置に対する単位プリズム142の頂点142tの位置のすれ量Δxが、単位レンズ144のピッチP4の10%に相当する(Δx/P4=0.10)場合の光の出射角度分布を示している。
【0042】
図5(a)は、配列方向における単位レンズ144の頂点144tの位置に対する単位プリズム142の頂点142tの位置のずれ量Δxが、単位レンズ144のピッチP4の15%に相当する(Δx/P4=0.15)場合の光の出射角度分布を示し、図5(b)は、配列方向における単位レンズ144の頂点144tの位置に対する単位プリズム142の頂点142tの位置のずれ量Δxが、単位レンズ144のピッチP4の20%に相当する(Δx/P4=0.20)場合の光の出射角度分布を示している。
【0043】
図3に示すように、配列方向において、単位プリズム142の頂点142tの位置と単位レンズ144の頂点144tの位置が一致している場合、入射角度+75°の光(光源部12Aからの光に相当)は、観察者Oから見て右側約2.5度をピークとして出射し、入射角度−75°の光(光源部12Bからの光に相当)は、観察者Oから見て左側約2.5度をピークとして出射している。
しかし、図4,5に示すように、単位プリズム142の頂点142tを単位レンズ144の頂点144tと一致する位置から、それぞれずれ量Δxの単位レンズ144の配列ピッチP4に対する比を5%、10%、15%、20%とし、それぞれ観察者Oから見て左側へずらすことにより、入射角度+75°の光(光源部12Aからの光に相当)及び入射角度−75°の光(光源部12Bからの光に相当)は、いずれもそのピークとなる出射角度が観察者Oからみて右側(中央側)へ移動している。
【0044】
図4(a)に示すように、ずれ量Δx/P4=0.05では、入射角度+75°の光は、正面方向に対して右側約3.5°をピークとして出射し、入射角度−75°の光は、正面方向に対して左側約1.5°をピークとして出射していた。
また、図4(b)に示すように、ずれ量Δx/P4=10%では、入射角度+75°の光は、正面方向に対して右側約5.5°をピークとして出射し、入射角度−75°の光は、正面方向に対して約0°をピークとして出射していた。
図5(a)に示すように、ずれ量Δx/P4=15%では、入射角度+75°の光は、正面方向に対して右側約7.5°をピークとして出射し、入射角度−75°の光は、正面方向に対して右側約1.5°をピークとして出射していた。
また、図5(b)に示すように、ずれ量Δx/P4=20%では、入射角度+75°の光は、正面方向に対して右側約9.5°をピークとして出射し、入射角度−75°の光は、正面方向に対して右側約2.5°をピークとして出射していた。
上述のように、単位プリズム142の頂点142tのずれ量の比Δx/P4(即ち、ずれ量Δx)が大きくなるにつれて、入射角度±75°の光(光源部12A,12Bからの光に相当)のピークとなる出射角度が観察者Oから見てより右側(中央側)に変化している。しかも、2つのピーク方向のなす角度は略一定である。
【0045】
図6は、第1実施形態のレンズシートの画面左右方向各部における光の様子を示す図である。図6(a)は、画面左右方向右側端部での光の様子を示し、図6(b)は、画面左右方向中央での光の様子を示し、図6(c)は、画面左右方向左側端部での光の様子を示している。
図3〜図5に示す結果から、図6に示すように、配列方向において、単位プリズム142の頂点142tが対応する単位レンズ144の頂点144tよりも外側に位置する領域では、そのずれ量の大きさに応じて、光のシート面に対する出射角度方向が、配列方向中央に比べて、内側に傾くことがわかる。
【0046】
例えば、画面左右方向中央では、図6(b)に示すように、光源部12A,12Bからの光La,Lbは、それぞれ、画面法線方向に対して所定の角度をなす方向へ出射する。
また、画面左右方向右側端部では、図6(a)に示すように、単位プリズムの頂点142tが単位レンズの頂点144tに対して配列方向において右側に位置しており、光La,Lbの出射方向は、画面左右方向中央での出射角度に比べて、いずれも画面左右方向左側(中央側)へ変化する。さらに、画面左右方向左側端部では、図6(c)に示すように、単位プリズムの頂点142tが単位レンズの頂点144tに対して配列方向において左側に位置しており、光La,Lbの出射角度は、画面左右方向中央での出射方向に比べて、いずれも画面左右方向右側(中央側)へ変化している。
そして、光La,Lbの出射角度の中央側への変化量の大きさは、頂点のずれ量Δxに応じて、画面左右方向において中央から両端部側に向かうにつれてしだいに大きくなる。
【0047】
ここで、本実施形態のレンズシート14を用いた本実施形態の表示装置10と、比較例のレンズシートを用いた比較例の表示装置30とを比較する。
図7は、第1実施形態の表示装置と比較例の表示装置とにおける光の出射方向を示す図である。図7(a)は、本実施形態の表示装置10における光の出射方向を示し、図7(b)は、比較例の表示装置30における光の出射方向を示している。なお、図7(a),(b)において、理解を容易にするために表示装置は簡略化して示している。
比較例の表示装置30に用いられるレンズシート(不図示)は、単位プリズムの側面が平面である略二等辺三角柱状であり、単位プリズムは、配列ピッチが単位レンズの配列ピッチに等しく、その頂点は、シート面の法線方向から見て、配列方向の位置によらず単位レンズの頂点と一致している。これらの点が本実施形態とは異なる以外は、比較例のレンズシート及び表示装置30は、本実施形態のレンズシート14及び表示装置10と略同様の形状である。
【0048】
比較例の表示装置30では、図7(b)に示すように、画面左右方向において中央部分は、左眼用映像の光Lbが左眼に、右眼用映像の光Laが右眼に届くので、立体視が可能であり、観察者Oは、明るく良好な3次元映像が観察できる。
しかし、比較例の表示装置30では、画面左右方向の両端部において、右眼用映像の光La及び左眼用映像の光bの出射方向は、画面左右方向の中央における出射方向と同じである。そのため、比較例の表示装置30では、画面左右方向両端部から出射した光は、観察者Oに届く量が大幅に低減し、観察者Oから見て画面左右方向両端部が暗くなって映像が観察できなかったり、画面左右方向両端部から出射した右眼用映像の光が左眼に届くといったクロストークが生じて画面左右方向両端部の立体視が不完全なものとなり、3次元映像が観察できなかったりするという問題が生じ、3次元映像の画質の低下が生じる。
【0049】
これに対して、レンズシート14を備える本実施形態の表示装置10では、配列方向における中央部は、図7(a)に示すように、左眼用映像の光Lb及び右眼用映像の光Laはそれぞれ所定の方向に出射されており、左眼用映像の光Lbが左眼に、右眼用映像の光Laが右眼に届き、観察者Oは、立体視が可能であり、明るく良好な3次元映像が観察できる。
また、画面左右方向両端部では、図7(a)に示すように、それぞれの映像光La,Lbは、その出射角度が画面左右方向中央側(内側)へ傾いている。またその傾きは、画面左右方向両端部側に向かうにつれて大きくなっている。
【0050】
これは、前述の図3〜図6に示したように、画面配列方向において中央部から外側に向かうにつれて、本実施形態の単位プリズム142の頂点142tがより外側に位置するように形成したことにより、単位レンズ144から出射する光は、その配列方向における位置が外側になるほど内側(配列方向中央側)に向かって出射することに起因する。
これにより、本実施形態の表示装置10であれば、画面左右方向両端部から出射した光であっても、観察者O側に届くので、画面左右方向の位置に依らず、明るい映像が観察される。また、右眼用映像は右眼に、左眼用映像は左眼に届くので、クロストークは大幅に低減され、画面の位置に依らず良好な3次元映像が観察される。従って、本実施形態によれば、良好な3次元映像を提供できる。
【0051】
以上のことから、本実施形態によれば、画面左右方向において両端部の映像が暗くなるような輝度の不均一性や、画面左右方向両端部における3次元映像の視認性の低下を極力低減でき、明るく良好な3次元映像を表示可能なレンズシート14、これを備える面光源装置及び透過型表示装置を提供できる。
また、配列方向における単位プリズム142の頂点142tの単位レンズ144の頂点144tに対する位置のずれ量Δxの大きさ、即ち、単位プリズム142の配列ピッチP2及び単位レンズ144の配列ピッチP4を調整することにより、画面サイズや観察距離等に応じた対応が容易に行える。
【0052】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態のレンズシートの形状を説明する図である。図8(a)は、第2実施形態のレンズシート24のシート面に直交して単位プリズム142及び単位レンズ144の配列方向(画面左右方向)に平行な断面を示している。図8(b)は、図8(a)の断面において、配列方向における一方の端部(観察者Oから見て画面左右方向右側端部)の拡大図であり、図8(c)は、図8(a)の断面において、配列方向の中央(画面左右方向中央)の拡大図であり、図8(d)は、図8(a)の断面において、配列方向における他方の端部(観察者Oから見て画面左右方向左側端部)の拡大図である。
第2実施形態のレンズシート24は、単位プリズム242の形状が第1実施形態に示した単位プリズム142とは異なる点以外は、前述のレンズシート14と略同様の形態である。従って、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態のレンズシート24は、単位レンズ144が配列されたレンズ層145と、基材層141と、単位プリズム242が配列されたプリズム層243を備えている。このレンズシート24は、第1実施形態のレンズシート14と同様に、面光源装置及び表示装置10に用いることができる。
【0053】
プリズム層243は、基材層141の入射側の面に形成され、その入射側の面には単位プリズム242が複数配列されている。単位プリズム242は、略二等辺三角柱状であるが、その側面242a,242bは、入射側(導光板13側)から見て凹となる凹曲面であり、単位プリズム142の谷底となる点で側面242a,242bは滑らかに繋げられている。単位プリズム242の側面242aとこれに隣接する単位プリズム242の側面242bがなす曲面は、図8に示す断面において、略放物線状である。なお、単位プリズム242の配列方向に平行であってシート面に直交する断面において、隣り合う単位プリズム242の側面242a,242bが形成する曲線は、略カテナリー曲線状であってもよい。
【0054】
この単位プリズム242は、単位レンズ144の配列方向に平行な方向に配列されている。単位プリズム242は、その配列方向における位置によらず、その形状が一定である。単位プリズム242の配列ピッチP2は、その配列方向における位置に依らず一定であり、単位レンズ144の配列ピッチP4よりも大きい。なお、本実施形態では、単位プリズム242形状が一定である例を示したが、これに限らず、単位プリズム242は、形状変化していてもよい。
単位プリズム242の頂点242tは、配列方向中央ではシート面の法線方向から見て、単位レンズ144の頂点144tと一致している。しかし、配列方向に沿って端部側となるにつれて、単位プリズム242の頂点242tは、しだいに頂点144tに対してより端部側(外側)に位置し、そのずれ量Δxも大きくなる。
【0055】
この単位プリズム242の頂点242tは、画面配列方向中央において、単位レンズ144側から平行光を照射した場合の単位レンズの焦点位置よりも基材層141側に位置していてもよいし、焦点位置に一致していてもよい。焦点位置より基材層側に頂点242tが位置していた場合にも、本実施形態の単位プリズム242であれば、導光板からの光を効率よく出射側へ立ち上げることができる。
【0056】
本実施形態のレンズシート24の実施例として、例えば、以下のような各部の寸法を有するレンズシート24を用いることが可能である。実施例のレンズシート24は、単位レンズ144の配列ピッチP4=約70μmであり、その曲率半径が約50μmであり、ランド厚が約10μmである。また、基材層141の厚さT=38μmである。さらに、単位プリズム242は、そのプリズム高さ(単位プリズム242間の谷底となる点から頂点242tまでの厚み方向における寸法)が約30μmであり、ランド厚が約15μmであり、単位プリズム242の配列ピッチP2は、巨視的には単位レンズ144の配列ピッチP4と略同ピッチであるが、実施際には、その差の測定が困難な程度に単位レンズ144の配列ピッチP4よりわずかに大きい。そして、単位レンズ144及び単位プリズム242の配列方向における頂点144tと頂点242tとのずれ量Δxが単位レンズ144の配列ピッチP4に対する比Δx/Pは、配列方向(画面左右方向)の中央部でΔx/P4=0(即ち、Δx=0)であり、両端部でΔx/P4=0.15である。
【0057】
このような形態とした場合にも、前述の第1実施形態と同様に、画面左右方向における両端部での輝度の低下や3次元映像の視認性の低下等を極力低減することができ、観察者に対してより良好な3次元映像を表示できる。
また、本実施形態のレンズシート24では、単位プリズム242の側面が凹曲面となっているので、単位プリズム242への頂点242t近傍に入射する光束を、入射時及び全反射時に、その側面の凹曲面形状によって出射方向を広げることができる。従って、本実施形態のレンズシート24を表示装置10に用いることにより、側面が平面からなる単位プリズムを使用した場合に生じやすい映像の筋感やモアレの改善効果が期待できる。さらに、単位プリズムの頂点近傍の形状や寸法の精度がそれほど高くない場合にも、観察者O側へ光を立ち上げることができる。
【0058】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、単位レンズ144は、略円柱状のシリンドリカルレンズである例を示したが、これに限らず、例えば、長軸がシート面に直交する楕円柱形状の一部形状としてもよい。
【0059】
(2)各実施形態において、図2及び図8等に示すように、単位プリズム142,242は、頂点142t,242tを含む先端部が尖った形状である例を示したが、これに限らず、例えば、その先端部が導光板13側(入射側)に凸となる曲面によって形成される形態としてもよい。このような形態とすることにより、単位プリズム142,242の先端部が破損し難くなる。
【0060】
(3)各実施形態において、単位レンズ144は、配列方向のにおいてピッチが一定である例を示したが、これに限らず、例えば、単位プリズムの配列ピッチP2を一定とし、単位レンズ144の配列ピッチP4を配列方向において変化させる等、調整した形態としてもよい。
【0061】
(4)各実施形態において、レンズシート14,24の単位レンズ144は、基材層141の出射側に紫外線硬化型樹脂によって形成される例を示したが、これに限らず、例えば、レンズ層145(単位レンズ144)及び基材層141を、熱可塑性樹脂製とし、押し出し成形すること等により一体に成形してもよい。このような形態とすることにより、一度に基材層141及び単位レンズが形成されるので製造が容易である。
【0062】
(5)各実施形態において、基材層141は、PET樹脂製である例を示したが、これに限らず、例えば、PC樹脂や、TAC(トリアセチルセルロース),PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂製のシート状の部材を用いることができる。
【0063】
(6)各実施形態において、導光板13は、その背面側の面に印刷等により拡散作用を有するドット(不図示)が形成されている例を示したが、これに限らず、例えば、その背面側の面や出射側(LCDパネル11側)の面に各種の単位レンズ等が配列された形態としてもよいし、その背面にドット等を備えていない形態としてもよい。また、導光板13は、拡散材等を含有する形態としてもよい。
【0064】
(7)各実施形態において、表示装置10は、LCDパネル11の画面サイズが対角2.8インチである例を示したが、これに限らず、より大きな画面サイズ、例えば、対角4インチや7インチのものとしてもよいし、より小さいサイズにしてもよい。このような大きな画面サイズの場合、特に画面左右方向の両端部でのクロストークによる3次元映像の視認性の低下や映像の輝度の低下が問題となりやすいが、各実施形態のレンズシート14,24を採用することにより、それらの問題を改善し、より良好な3次元映像を表示できる。
【0065】
(8)各実施形態において、光源部12A,12Bは、発光源をLED光源とし、ライトガイドと組み合わせて用いる例を示したが、これに限らず、例えば、光源部として冷陰極管を用いてもよい。このとき、冷陰極管と導光板13との間に冷陰極管からの光を遮蔽可能なシャッターを設け、このシャッターの開閉とLCDパネル11の映像の表示とを同期させる形態としてもよい。さらに、LED等の点光源が、入光面13a,13bに沿って複数配列されている形態としてもよい。
【0066】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0067】
10 表示装置
11 LCDパネル
12A,12B 光源部
13 導光板
14,24 レンズシート
141 基材層
142,242 単位プリズム
143,243 プリズム層
144 単位レンズ
145 レンズ層
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用映像光と左眼用映像光とを交互にそれぞれ所定の方向へ出射することにより立体映像を表示可能な透過型表示装置の透過型表示部を背面から照射する面光源装置に用いられ、両面に光学形状が形成されるレンズシートであって、
シート状の基材層と、
前記基材層の出射側に、略円柱形状の一部形状又は略楕円柱形状の一部形状である凸形状の単位レンズが複数配列されて形成されたレンズ層と、
前記基材層の入射側に、凸形状の単位プリズムが複数配列されて形成されたプリズム層と、
を備え、
前記単位プリズムは、略三角柱状であり、前記単位レンズの配列方向と平行な方向に複数配列され、前記基材層を介して、1つの前記単位レンズに対して1つの前記単位プリズムが対応しており、
前記単位レンズの配列方向の中央においては、前記単位プリズムとそれに対応する前記単位レンズとは、シート面の法線方向から見てその頂点の位置が一致しており、
前記単位レンズの配列方向中央から端部に向かうにつれて、しだいに前記単位プリズムの頂点が前記単位レンズの頂点に対してより該端部側に位置し、シート面の法線方向から見て、前記単位レンズの頂点とその単位レンズに対応する前記単位プリズムの頂点との前記単位レンズの配列方向におけるずれ量がしだいに大きくなっていること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムの配列ピッチは、前記単位レンズの配列ピッチよりも大きいこと、
を特徴とするレンズシート。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムの配列ピッチは、一定であり、
前記単位レンズの配列ピッチは、その配列方向において、中央から両端部に向かうにつれてしだいに小さくなること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムの頂点は、その配列方向において、該単位プリズムに対応する前記単位レンズのレンズ幅内に位置すること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムの側面は、凹曲面であること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項6】
請求項5に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムの頂点は、前記単位レンズの配列方向の中央において、前記単位レンズ側から平行光を照射した場合の該平行光の焦点位置よりも、該レンズシートの厚み方向において前記基材層側に位置すること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のレンズシートにおいて、
前記単位プリズムは、電離放射線硬化型樹脂製であること、
を特徴とするレンズシート。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のレンズシートと、
前記レンズシートに対して前記プリズム層側に配置される導光板と、
前記単位プリズムの配列方向における前記導光板の両端面に対向する位置にそれぞれ配置される第1の光源部及び第2の光源部と、
を備る面光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の面光源装置と、
前記面光源装置により背面側から照明される透過型表示部と、
を備え、
前記第1の光源部及び前記第2の光源部は、交互に点灯と消灯と繰り返し、
前記透過型表示部は、
前記第1の光源部が点灯して前記第2の光源部が消灯する場合に、右眼用映像を表示し、
前記第2の光源部が点灯して前記第1の光源部が消灯する場合に、左眼用映像を表示し、
前記第1の光源部及び前記第2の光源部の点灯及び消灯に同期して、表示する映像を切り替えること、
を特徴とする透過型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3321(P2013−3321A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133683(P2011−133683)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】