レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置
【課題】迷光によるコントラストの低下を防止することが可能なレンズユニット、並びに、このレンズユニットを備えたLEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備える。第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されている。
【解決手段】レンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備える。第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のLED(発光ダイオード)素子を略直線状に配列したLEDヘッドを用いた電子写真方式の画像形成装置や、複数の受光素子を略直線状に配列した受光部に原稿の像を結像させるスキャナやファクシミリ等の読取装置では、物体の正立等倍像をライン状に形成するレンズユニットが用いられている。
【0003】
このようなレンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、縮小倒立像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを対向配置させてなるレンズ対を有し、複数のレンズ対を略直線状に配列している。また、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の遮光部材を配置し、物体と第1のレンズとの間に第2の遮光部材を配置することで、他のレンズ対からの光線の侵入によるクロストークを抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−204208号公報(特に、段落0036および図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の構成では、第2の遮光部材の内壁で反射された光線が、迷光として第1のレンズに入射して結像面に到達する場合があり、結像のコントラストが低下し、例えば印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、迷光によるコントラストの低下を防止することが可能なレンズユニット、並びに、このレンズユニットを備えたLEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備え、第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレンズユニットは、また、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備える。第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、内壁に十点平均粗さが2μm以上の粗面部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迷光が結像面に到達することを抑制することができ、結像のコントラストを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドを示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるLEDへツドを示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットを示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの遮光板を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットのマスク板を示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの第1のレンズ板を示す平面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニット1の長手方向に沿った断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に対する比較例におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるレンズユニットのマスク板を示す平面図である。
【図13】マスク板の粗面部の表面粗さとエッチング処理時間との関係を示すグラフである。
【図14】照度分布の測定方法を示す概略図である。
【図15】図14の照度分布の測定方法により測定された照度分布である。
【図16】本発明の第2の実施の形態におけるマスク板の粗面部の十点平均粗さRzと照度分布との関係を示す。
【図17】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナを示す概略図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナの読取ヘッドの基本構成を示す概略図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナの読取ヘッドの光学系を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施の形態.
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置としてのプリンタを示す概略図である。プリンタ100は、電子写真方式を用いたカラーLEDプリンタであり、着色材としての顔料を含む樹脂からなるトナーを用いて、画像データをもとに印字媒体上に画像を形成する。
【0012】
プリンタ100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成するプロセスユニット(画像形成部)10Y,10M,10C,10Kを備えている。各プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kは、共通の構成を有しているため、総称してプロセスユニット10とする。プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kは、用紙101の搬送経路に沿って、(ここでは図1における右から左に)一列に配置されている。
【0013】
プロセスユニット10は、静電潜像担持体としての感光体ドラム41を有している。感光体ドラム41の周囲には、帯電ローラ(帯電装置)42と、LEDヘッド(露光装置)3と、現像器5と、クリーニングブレード43とが配置されている。帯電ローラ42は、感光体ドラム41の表面に電荷を供給して一様に帯電させる。LEDヘッド3は、帯電された感光体ドラム41の表面に、画像データに応じて選択的に光を照射し、静電潜像を形成する。現像器5は、感光体ドラム41の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する。現像器5には、トナーを補給するためのトナーカートリッジ51が取り付けられている。クリーニングブレード43は、トナー像の転写(後述)後に感光体ドラム41の表面に残留するトナーを除去する。
【0014】
プリンタ100の下部には、印刷媒体としての用紙101を収容する給紙カセット60が装着されている。この給紙カセット60の近傍には、用紙101を給紙カセット60から取り出して搬送路に送り出す給紙ローラ61が備えられている。この給紙ローラ61に隣接して、用紙101をプロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに向けて搬送する搬送ローラ62,63が備えられている。
【0015】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの下方には、転写ベルトユニット8が配置されている。転写ベルトユニット8は、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに沿って用紙101を搬送する転写ベルト81と、この転写ベルト81が張架された駆動ローラ82aおよび従動ローラ82bとを有している。転写ベルト81は、その表面で用紙101を吸着保持すると共に、駆動ローラ82aの回転によって移動し、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに沿って用紙101を搬送する。
【0016】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの各感光体ドラム41との間で転写ベルト81を挟むように、4つの転写ローラ(転写器)80が配置されている。これら転写ローラ80は、各感光体ドラム41上に形成されたトナー像を用紙101上に転写するものである。
【0017】
用紙101の搬送路に沿って、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの下流側には、定着器9が配置されている。定着器9は、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとを有し、用紙101上に転写されたトナー像を熱および圧力により定着させる。また、定着器9のさらに下流側には、定着器9を通過した用紙101をプリンタ100の外部の排出部66に排出する排出ローラ64,65が配置されている。
【0018】
上述した帯電ローラ42および転写ローラ80には、図示しない電源から所定の電圧が印可される。また、感光体ドラム41および各ローラには、それぞれ図示しないモータから、ギアを介して駆動力が伝達される。
【0019】
プリンタ100には、外部装置から印刷データを受信する外部インターフェースと、プリンタ100の全体の制御を行う制御部(図示せず)とが備えられている。また、現像器5、LEDヘッド3、定着器9および図示しない各モータには、それぞれ制御部および電源が接続されている。
【0020】
<LEDヘッド>
次に、本実施の形態におけるLEDヘッド3の構成について説明する。図2は、本実施の形態における露光装置としてのLEDヘッド3の概略図である。LEDヘッド3は、感光体ドラム41に対向するように配置されている。なお、図示の便宜上、図2では、LEDヘッド3を感光体ドラム41の下方に示している。
【0021】
LEDヘッド3は、LEDアレイ300と、このLEDアレイ300の出射側に配置されたレンズユニット1と、これらを支持するホルダ34とを備えている。LEDアレイ300は、発光部としての複数のLED素子30を、感光体ドラム41の回転軸AXRと平行な方向に略直線状に配列したものである。
【0022】
ここでは、LED素子30の配列方向(すなわち感光体ドラム41の回転軸AXRの方向)を、Y方向とする。また、Y方向と直交する方向であって、LED素子30が感光体ドラム41に対向する方向を、Z方向とする。また、Y方向およびZ方向の両方と直交する方向を、X方向とする。
【0023】
レンズユニット1は、LED素子30の配列方向(すなわちY方向)に長い長尺形状を有している。レンズユニット1の詳細については、後述する。
【0024】
図3は、本実施の形態におけるLEDヘッド3を示す断面図であり、図2における線分III−IIIに沿った断面図である。レンズユニット1の長手方向(Y方向)およびレンズ光軸の両方に直交する方向をレンズユニット1の幅方向とすると、レンズユニット1は、その幅方向がX方向と一致するように配置されている。また、図3に示す断面において、レンズユニット1の幅方向(X方向)中心を通るZ方向の直線CLの延長線上に、上述したLED素子30および感光体ドラム41の回転軸AXRが位置している。
【0025】
LED素子30と、このLED素子30を駆動するためのドライバIC31は、配線基板33上に配置されており、これらLED素子30およびドライバIC31は、ワイヤ32によって電気的に接続されている。
【0026】
<レンズユニット>
次に、本実施の形態におけるレンズユニット1の構成について説明する。
図4は、本実施の形態におけるレンズユニット1を示す分解斜視図である。レンズユニット1は、物体側のレンズアレイとしての第1のレンズ板11と、結像側のレンズアレイとしての第2のレンズ板13と、第1の遮光部材としての遮光板21と、第2の遮光部材としてのマスク板23とを有している。
【0027】
第1のレンズ板11および第2のレンズ板13は、遮光板21を挟んで相対するように配置されている。第1のレンズ板11には、マイクロレンズである第1のレンズ12が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第2のレンズ板13には、マイクロレンズである第2のレンズ14が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第1のレンズ12および第2のレンズ14の配列間隔は同じであり、第1のレンズ12の光軸AXL(図5)と第2のレンズ14の光軸とは一致している。
【0028】
すなわち、レンズユニット1は、光軸AXLが一致するように配置された2つのレンズ12,14からなるレンズ対を、光軸AXLに直交する方向に略直線状に配列した構成となっている。これら第1のレンズ板11と第2のレンズ板13とを合わせて、レンズアレイと称する場合もある。
【0029】
遮光板21には、第1の空孔(開口または絞りとも称する)22が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。また、マスク板23には、第2の空孔24が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第1の空孔22および第2の空孔24は、第1のレンズ12および第2のレンズ14の光軸AXL上に配置されている。
【0030】
図5は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。レンズユニット1の物体面OPは、Y方向に配列されたLED素子30(図3)に相当し、結像面IPは、感光体ドラム41(図3)の表面に相当する。
【0031】
物体面OPと第1のレンズ板11との間には、上述したマスク板23が配置されている。また、物体面OPから距離LOの位置に、第1のレンズ板11の第1のレンズ12が配置されている。第1のレンズ12の厚さは、LTで表わされる。
【0032】
第1のレンズ板11の第1のレンズ12と、第2のレンズ板12の第2のレンズ14との間には、上述した遮光板21が配置されている。第1のレンズ12と第2のレンズ14とは、光軸AXLが一致するように、距離LSを隔てて配置される。第2のレンズ14の厚さは、第1のレンズ12の厚さと同じ(LT)である。レンズユニット1の結像面IPは、第2のレンズ14から光軸AXLの方向に距離LIだけ離れた位置にある。
【0033】
次に、遮光板21およびマスク板23、並びにこれらの空孔22,24について説明する。遮光板21の第1の空孔22は、第1のレンズ12側の開口寸法が、第2のレンズ14側の開口寸法よりも小さく形成されている。また、マスク板23の第2の空孔24は、物体面OP側の開口寸法が、第1のレンズ12側の開口寸法よりも大きく形成されている。
【0034】
すなわち、第1の空孔22の内壁は、上方(出射側)ほど開口寸法が大きくなるように、光軸AXLに対して傾斜している。一方、第2の空孔24の内壁は、下方(入射側)ほど開口寸法が大きくなるように、光軸AXLに対して傾斜している。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法よりも大きい。
【0035】
第1のレンズ12は、光軸AXLの方向に距離LO1だけ離れた位置にある物体30Aの結像としての中間像30Bを、光軸方向に距離LI1だけ離れた中間像面IMP上に形成する。中間像30Bは、物体30Aの倒立縮小像になっている。第2のレンズ14は、距離LI1だけ離れた位置にある中間像30Bの結像30Cを、光軸AXLの方向にLI1だけ離れた結像面IP上に結像する。結像30Cは、物体30Aの正立等倍像になっている。
【0036】
レンズユニット1の物体面OPから第1のレンズ12までの距離LOは、上述した距離LO1と同じに設定されている。第1のレンズ12と第2のレンズ14の間隔LSは、LI1の2倍(すなわちLS=2×LI1)に設定されている。第2のレンズ14からレンズユニット1の結像面IPまでの距離LIは、LO1と同じに設定されている。ここでは、第1のレンズ12および第2のレンズ14のそれぞれの厚さLTは、例えば1.3mmとし、間隔LSは、例えば2.2mmとする。
【0037】
図6は、遮光板21を示す平面図である。遮光板21は、Y方向に長い形状を有し、LED素子30の光線を遮光する素材、例えばポリカーボネートにより形成されている。遮光板21の第1の空孔22は、上記のとおりY方向に略直線状に2列に配列されている。第1の空孔22の配列間隔は、上述した第1のレンズ12の配列間隔と同じである。第1の空孔22の第1のレンズ12側のY方向の開口寸法AY3は、第2のレンズ14側の同方向の開口寸法AY4よりも小さい(AY3<AY4)。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX3は、第2のレンズ14側の同方向の開口寸法AX4よりも小さい(AX3<AX4)。
【0038】
ここでは、第1の空孔22の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX3は、例えば0.67mmとし、Y方向の開口寸法AY3は、例えば0.8mmとする。第1の空孔22の第2のレンズ14側のX方向の開口寸法AX4は、例えば0.76mmとし、Y方向の開口寸法AY4は、例えば0.9mmとする。また、遮光板21の厚さは、例えば2.2mmとする。
【0039】
第1の空孔202は、また、光軸AXLを延長した軸線を中心とする円筒面を、YZ面に平行な1つの平面と、XZ面に平行な2つの平面とで切断した形状を有している。
【0040】
より好ましくは、第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3は、Y方向の開口寸法AY3の半分よりも大きい(RX3>AY3/2)。また、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX4は、Y方向の開口寸法AY4の半分よりも大きい(RX4>AY4/2)。第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3は、例えば0.45mmであり、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX4は、例えば0.52mmである。
【0041】
図7は、マスク板23を示す平面図である。マスク板23は、Y方向に長い形状を有し、LED素子30の光線を遮光する素材、例えばポリカーボネートにより形成されている。マスク板23の第2の空孔24は、上記のとおりY方向に略直線状に2列に配列されている。第2の空孔24の配列間隔は、上述した第1のレンズ12の配列間隔と同じである。第2の空孔24の物体面OP側のY方向の開口寸法AY1は、第1のレンズ12側の同方向の開口寸法AY2よりも大きい(AY1>AY2)。第2の空孔24の物体面OP側のX方向の開口寸法AX1は、第1のレンズ12側の同方向の開口寸法AX2よりも大きい(AX1>AX2)。
【0042】
さらに、Y方向における、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法AY3は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法AY2より大きい(AY3>AY2)。また、X方向における、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法AX3は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法AX2より大きい(AX3>AX2)。マスク板23は、発光部の光線を遮光する素材により形成される。
【0043】
ここでは、マスク板23の第2の空孔24の物体面OP側のX方向の開口寸法AX1は、例えば0.73mmとし、Y方向の開口寸法AY1は、例えば0.8mmとする。第2の空孔24の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX2は、例えば0.57mmとし、Y方向の開口寸法AY2は、例えば0.5mmとする。また、マスク23の厚さは、例えば1.1mmとする。
【0044】
第2の空孔204は、また、光軸AXLを延長した軸線を中心とする円筒面を、YZ面に平行な1つの平面と、XZ面に平行な2つの平面とで切断した形状を有している。
【0045】
より好ましくは、第2の空孔204の物体面OP側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1は、Y方向の開口寸法AY1の半分よりも大きい(RX1>AY1/2)。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX2は、Y方向の開口寸法AY2の半分よりも大きい(RX2>AY2/2)。第2の空孔24の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1は、例えば0.43mmであり、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX2は、例えば0.30mmである。
【0046】
図8は、第1のレンズ板11を示す平面図である。第1のレンズ12は、Y方向(第1のレンズ板11の長手方向)の配列間隔PYが、X方向(第1のレンズ板11の幅方向)の配列間隔PXよりも大きい(PY>PX)。隣接する2つの第1のレンズ12は境界で接し、千鳥状に、隙間なく緻密に配列されている。言い換えると、Y方向における第1のレンズ12の半径はPY/2であり、第1のレンズ12の半径RLは、PY/2より大きい。第1のレンズ板11は、LED素子30の光線を透過する素材、例えばシクロオレフィンポリマー樹脂(日本ゼオン株式会社製「ゼオネックスE48R」)により構成されている。
【0047】
ここでは、第1のレンズ12の半径RLは、例えば1.4mmである。また、X方向の配列間隔PXは、例えば0.8mmであり、Y方向の配列間隔PYは、例えば1.2mmである。
【0048】
第2のレンズ板13は、上述した第1のレンズ板11と同一の形状を有しており、第2のレンズ板13の第2のレンズ14は、第1のレンズ板11の第1のレンズ12と同一のパターンで配列されている。また、第2のレンズ板13は、LED素子30の光線を透過する素材、例えばシクロオレフィンポリマー樹脂(日本ゼオン株式会社製「ゼオネックスE48R」)により構成されている。
【0049】
第1のレンズ12および第2のレンズ14の各レンズ面は、以下の数式(1)で表される回転対称高次非球面で構成する。
【0050】
【数1】
【0051】
ここで、関数Z(r)は、各レンズ面の面頂点を原点とし、原点に対し、レンズ板11,13の素材で構成されている側を負の数で表す。rは、光軸AXLに平行な方向(Z方向)の軸を中心とする半径方向の回転座標系を示し、各図に示したX,Y方向の各座標に対して、r=(X2+Y2)1/2の関係がある。CRは曲率半径、Aは非球面係数4次の係数、Bは非球面係数6次の係数、Cは非球面係数8次の係数を示す。
【0052】
第1のレンズ12の物体面OP側のレンズ面と、第2のレンズ14の結像面IP側のレンズ面とは、互いに同一形状である。また、第1のレンズ12の遮光板21側のレンズ面と、第2のレンズ14の遮光板21側のレンズ面とは、互いに同一形状である。
【0053】
<プリンタの動作>
このように構成された画像形成装置としてのプリンタ100の動作について、図1を参照して説明する。各プロセスユニット10では、電圧が印加された帯電ローラ42により、感光体ドラム41の表面が一様に帯電される。感光体ドラム41の回転に伴い、帯電された表面がLEDヘッド3に対向する位置に達すると、LEDヘッド3により感光体ドラム41の表面が露光され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器5によって現像され、感光体ドラム41の表面にトナー像が形成される。
【0054】
一方、給紙カセット60にセットされた用紙101は、給紙ローラ61によって一枚ずつ給紙カセット60から繰り出され、搬送ローラ62,63によって転写ベルトユニット8に搬送される。さらに、用紙101は、転写ベルト81に吸着保持されて搬送され、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kを順に通過する。各プロセスユニット10では、感光体ドラム41の表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム41の回転に伴って転写部(転写ローラ80および転写ベルト81)の近傍に到達した際に、転写ローラ80および転写ベルト81との電位差により、用紙101上に転写される。
【0055】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kを通過し、各色のトナー像が重ね合わされるように転写された用紙101は、転写ベルト81により、定着器9に搬送される。定着器9では、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bによる加圧および加熱が行われ、トナーが溶融して用紙101に固定される。すなわち、トナー像が用紙101に定着する。トナー像の定着が完了した用紙101は、排出ローラ64,65により、排出部66に排出され、プリンタ100の動作が終了する。
【0056】
次に、露光装置としてのLEDヘッド3の動作について、図3を参照して説明する。プリンタ100の制御装置から、画像データに基づく制御信号がLEDヘッド3に送信されると、LEDヘッド3のドライバIC31の制御信号により、各LED素子30が任意の光量で発光する。LED素子30から出射された光線は、レンズユニット1に入射し、感光体ドラム41の表面に結像する。
【0057】
<レンズユニットの作用>
このときのレンズユニット1の作用について、図5を用いて説明する。図5に示すように、第1のレンズ12は、第1の空孔22の内部の中間像面IMP上に、物体30Aの結像としての中間像30Bを形成する。中間像30Bは、物体30Aの倒立縮小像になっている。第2のレンズ14は、結像面IP上に、中間像30Bの結像としての結像30cを結像する。結像30Cは物体30Aの正立等倍像になっている。
【0058】
ここで、上述したように、マスク板23の第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)が、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)より大きく、第2の空孔24の内壁が下方(入射側)ほど外側に広がるように傾斜しているため、図5に示した光線S1,S2のように、第2の空孔24の内壁で反射された光線の多くは第1のレンズ12に入射せず、物体面OP側に反射される。これにより、第2の空孔24で反射された光線が迷光となって結像面IPに到達することを抑制し、結像のコントラストを向上することができる。
【0059】
また、マスク板23の第2の空孔24の内壁の傾斜を、(遮光板21の第1の空孔22の内壁の傾斜に比べて)より大きく形成することで、第2の空孔24の内壁で反射された光線が、より多く物体面OP側に向かうようにし、迷光を遮断する効果を高めている。
【0060】
次に、第1のレンズ12の視野外側の光線が結像面IPに到達することを防止する作用について、図9を参照して説明する。図9は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。
【0061】
図9において、光線R1と光線R8は、第1のレンズ12の視野外側の光線を示している。第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)が、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)よりも大きく、第2の空孔24の内壁が光軸AXLに対して傾斜しているため、光線R1と光線R8は、第2の空孔24を通過して第1のレンズ12に入射する。
【0062】
しかしながら、本実施の形態では、遮光板21の第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)が、第2のレンズ14側の開口寸法(AX4,AY4)よりも小さく、遮光板21の第1のレンズ板11側の端面Aによって光線R1と光線R8が遮断されるため、光線R1と光線R8は、遮光板21の第1の空孔22には入射しない。従って、視野外側の光線が第1の空孔22の内壁で反射して迷光となって結像面IPに到達することを抑制し、結像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0063】
また、上述したように、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)が、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)より大きいため、結像を形成する光線を遮断せずに、迷光となる光線を遮断することができる。その結果、十分な明るさを確保しつつ、結像のコントラストを向上することができる。
【0064】
次に、本実施の形態における遮光板21(第1の空孔22)を他の構成に置き換えた比較例について、図10を参照して説明する。図10(A)および(B)は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。
【0065】
図10(A)に示す比較例では、遮光板21の第1の空孔22の開口寸法が、第1のレンズ12側と第2のレンズ14側とで同じである。この比較例では、第1のレンズ12の視野外側の光線R1と光線R8は、マスク板23の第2の空孔24と第1のレンズ12を通過したのち、遮光板21の第1の空孔22の内壁で反射されて迷光となり、第2のレンズ14に入射する。この迷光は結像面IPに達するため、結像のコントラストの低下を招く。
【0066】
図10(B)に示す比較例では、遮光板21の第1の空孔22の開口寸法が、第2のレンズ14側よりも第1のレンズ12側で大きい。この比較例では、第1のレンズ12の視野外側の光線R1と光線R8は、マスク板23の第2の空孔24と第1のレンズ12を通過したのち、遮光板21の第1の空孔22の内壁で反射されて迷光となり、第2のレンズ14に入射する。この迷光は結像面IPに達するため、結像のコントラストの低下を招く。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、図9に示したように、遮光板21の第1の空孔22の内壁が、上方(出射側)ほど開口寸法が大きくなるように傾斜しているため、第1のレンズ12を通過した視野外側の光線R1と光線R8を、遮光板21の第1のレンズ板11側の端面Aにおいて遮断することができる。加えて、図5を参照して説明したように、マスク板23の第2の空孔24の内壁が、下方(入射側)ほど開口寸法が大きくなるように傾斜しているため、マスク板23の内壁で反射した光線の多くを物体面OP側に出射し、迷光が結像面IPに到達することを抑制することができる。
【0068】
なお、図9において、結像30Cを形成する光線の主光線R2〜R7を示すが、主光線R2〜R7は、第1のレンズ12と第2のレンズ14との間で光軸AXLと平行、すなわちテレセントリックとなることが好ましい。主光線R2〜R7は、第1のレンズ12の前側焦点位置である、物体面OPと第1のレンズ12との間で集光するため、この位置で光束が最も細い。そのため、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)を、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)より小さくしても、主光線R2〜R7は遮断されない。そのため、結像を暗くすることなく、迷光を遮断することができる。
【0069】
また、図6および図7を参照して説明したように、第1の空孔22の光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3,RX4を、Y方向の開口寸法AY3,AY4の半分よりも大きくし(RX3>AY3/2、RX4>AY4/2)、第2の空孔24の光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1,RX2を、Y方向の開口寸法AY1,AY2の半分よりも大きくすることにより(RX1>AY1/2、RX2>AY2/2)、結像を形成する光線をより多く取り込むことができる。その結果、結像のコントラストを低下させることなく、十分な明るさを確保することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、物体側に配置した遮光部材で反射された光線(迷光)が結像面に到達することを抑制できるため、結像のコントラストを向上することができる。
【0071】
また、このように構成されたレンズユニットを画像形成装置の露光装置に用いることにより、印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れを防止することができる。
【0072】
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図11は、第2の実施の形態におけるレンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。第2の実施の形態におけるレンズユニット1は、マスク板23の構成において、第1の実施の形態のレンズユニット1と異なる。
【0073】
<レンズユニットの構成>
第2の実施の形態におけるレンズユニット1のマスク板23は、第2の空孔24を有しているが、この第2の空孔24は、物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)と、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)とが同一に構成されている。また、第2の空孔24の内壁には、粗面部25が形成されている。粗面部25の十点平均粗さRzは、2μm以上である。
【0074】
図12は、マスク板23を示す平面図である。Y方向(マスク板23の長手方向)における、第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法AY1と、第1のレンズ12側の開口寸法AY2とは同一である(AY1=AY2)。また、X方向(マスク板23の長手方向に直交する方向)における、第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法AX1と、第1のレンズ12側の開口寸法AX2とは同一である(AX1=AX2)。
【0075】
マスク板23は、ポリカーボネートを射出成形することにより形成されるが、さらにクロム酸/硫酸エッチング液によりエッチング処理することにより、第2の空孔24の内壁に粗面部25が形成される。
【0076】
図13は、粗面部25の十点平均粗さRzと、エッチング処理時間との関係を示すグラフである。図13の縦軸は、日本工業規格JISB0601−1994で表される十点平均粗さRz(単位μm)であり、横軸は、エッチングの処理時間T(分)である。十点平均粗さRzは、日本工業規格JISB0601−1994に従い、表面粗さ・輪郭形状測定器SEF3500K(株式会社小坂研究所製)を用いて測定した。触針先端半径は2μm、触針圧は0.7mN、測定長は2.5mm、触針測定速度は0.1mm/s、カットオフは2.5mmとした。
【0077】
マスク板23のエッチング処理前には、第2の空孔24の内壁の十点平均粗さRzは1μmであった。これに対し、10分のエッチング処理を行うことにより、第2の空孔24の内壁に、十点平均粗さRzが2μmの粗面部25が形成された。
【0078】
なお、第2の実施の形態のレンズユニット1は、マスク板23の第2の空孔部24を除き、第1の実施の形態のレンズユニット1と同様に構成されている。
【0079】
<レンズユニットの作用>
次に、第2の実施の形態のレンズユニット1の作用について、図11を参照して説明する。第2の空孔24の内壁に粗面部25が形成されているため、第2の空孔24の内壁に入射した光線(図11に示す光線S1,S2)は、粗面部25によって吸収され、第1のレンズ12側には出射されない。従って、迷光が結像面IPに到達することを抑制することができ、結像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、第2の空孔24の物体側の開口寸法(AX1,AY1)と、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)とが同一であるとしたが、同一でない場合においても、第2の空孔24の内壁に入射した光線は粗面部25によって吸収されるため、迷光が結像面IPに到達することを抑制する効果を得ることができる。従って、第1の実施の形態の第2の空孔24の内壁に、本実施の形態の粗面部25を設けることも可能である。
【0081】
次に、本実施の形態のレンズユニット1を実装したLEDヘッド3を用いて得られた結像30Cの照度分布測定について説明する。図14は、照度分布の測定方法を示す斜視図である。図14において、照度分布測定器700は、スリット701が形成されたマスク702と、照度計703とを有している。スリット701の長手方向は、第1のレンズ12の配列方向(レンズユニット1の長尺方向)と直交する方向(X方向)とする。マスク702は、スリット701以外の部分でLED素子30の光線を遮断する。照度計703は、結像30Cから出射された光線のうち、スリット701を通過した光線の強さを測定する。
【0082】
照度分布測定器700は、LEDヘッド3の長手方向(Y方向)に移動可能とした。また、スリット701と第2のレンズ14との距離は、LIとなるように設定した。照度分布の測定においては、LED素子30の配列問隔が0.042mmであるLEDヘッド3を用いた。このLEDヘッド3は、1インチ(約25.4mm)に600個のLED素子30が配列されたものであり、600dpi(Dot per inch)の解像度に対応する。LED素子30のうち1個を点灯し隣接する3個を非点灯とするパターンで点灯させた。図15は、照度分布測定器700を用いて測定された照度分布を示すグラフである。照度分布の最大値はIMAX、最小値はIMINである。
【0083】
図16は、本実施の形態のマスク板23の粗面部25の十点平均粗さRzと、結像30Cの照度分布との関係を示すグラフである。横軸は、図13に示した十点平均粗さRzであり、縦軸は、図15に示した照度分布の最小値IMINの最大値IMAXに対する比、
IB=IMIN/IMAX×100(%)
である。IBの値が高いほど、結像のコントラストが低く、画像形成装置の印刷画像上で本来トナーが付着しないところにトナーが付着して汚れが発生する原因となる。
【0084】
図16から、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm以上ではIBが小さく、十点平均粗さRzの変化に対してIBが殆ど変化していないが、十点平均粗さRzが2μm未満ではIBが急激に増加していることが分かる。これは、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm未満の場合には、印刷画像の白抜き文字や白細線で汚れが発生する可能性があることを示している。
【0085】
本実施の形態のレンズユニット1をLEDヘッド3に実装した、解像度600dipのプリンタ100を用いて画像を印刷し、印刷画像を評価したところ、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm以上の場合には、2ポイントの大きさの白抜き文字や、2ドットの細線に汚れは発生しなかった。一方、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm未満の場合には、2ポイントの大きさの白抜き文字や、2ドットの細線に汚れが発生した。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、物体側に配置した遮光部材の空孔の内壁に粗面部を設けて光線の反射を防止することにより、結像のコントラストを向上することができる。また、このようなレンズユニットを画像形成装置の露光装置に用いることにより、印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れを防止することができる。
【0087】
第3の実施形態.
次に、本発明の第3の実施形態における読取装置について説明する。図17は、上述した第1または第2の実施の形態におけるレンズユニットを備えた読取装置としてのスキャナ500の基本構成を示す概略図である。図17に示すスキャナ500は、原稿600の画像を取り込み、電子データを生成するものである。
【0088】
<読取装置の構成>
スキャナ500は、原稿600を載置する原稿台502と、原稿600を照明する照明装置としてのランプ501と、原稿600の表面で反射された光を取り込み、電子データに変換する読取ヘッド400と、この読取ヘッド400を原稿600の面と平行に移動可能に支持するレール503と、読取ヘッド400をレール503に沿って移動させる駆動機構510とを備えている。原稿台502は、可視光を透過する素材で構成されている。ランプ501から発せられた光は、原稿台502を透過して原稿600の表面で反射され、再び原稿台502を透過して読取ヘッド400に入射する。
【0089】
駆動機構510は、モータ506と、このモータ506により回転駆動される駆動ベルト505と、駆動ベルト505が張架された複数の滑車504とを備え、駆動ベルト505の一部が読取ヘッド400の接続されている。モータ506の回転により、駆動ベルト505が移動し、これにより読取ヘッド400がレール503に沿って、原稿600の面と平行に移動する。なお、上記のランプ501は読取ヘッド400に取り付けられており、読取ヘッド400と共に移動する。
【0090】
<読取ヘッド>
図18は、読取ヘッド400の基本構成を示す図である。読取ヘッド400は、原稿600で反射された光の光路を折り曲げるミラーと、原稿600の結像を形成するレンズユニット1と、レンズユニット1による結像位置に配設されたラインセンサ401とを備えている。ラインセンサ401は、複数の受光素子が略直線状に一列に配列されており、原稿600の結像を電気信号に変換する。なお、ラインセンサ401における複数の受光素子の配列方向は、原稿台502と平行で、且つ、読取ヘッド400の移動方向と直交する方向である。
【0091】
図19は、第2の実施の形態における読取ヘッド400の構成を示す断面図である。図17に示すように、レンズユニット1は、その物体面OPが原稿600の表面と一致し、結像面IPがラインセンサ401の入射面と一致するように配置されている。レンズユニット1は、第1の実施の形態または第2の実施の形態で説明したものであり、第1のレンズ12を有する第1のレンズ板11と、第2のレンズ14を有する第2のレンズ板13と、遮光板21と、マスク板23とを備えている。第1のレンズ12の配列方向、および第2のレンズ14の配列方向は、ラインヘッド401の受光素子の配列方向と平行である。
【0092】
<読取装置の動作>
このように構成されたスキャナ(読取装置)500の動作について、図17〜図19を参照して説明する。図17に示すように、ランプ501が点灯すると、ランプ501から発せられた光線は、原稿台502を透過して原稿600の表面で反射され、再び原稿台502を透過して読取ヘッド400に入射する。図18に示すように、読取ヘッド400に入射した光線は、ミラー402により反射され、レンズユニット1を透過して、ラインセンサ401に入射する。レンズユニット1の第1のレンズ12および第2のレンズ14により、ラインセンサ401上に原稿600の結像が形成され、ラインセンサ401により電気信号に変換される。
【0093】
また、図17に示すように、モータ506により駆動ベルト505が駆動され、読取ヘッド400およびランプ501がレール503に沿って移動する。これにより、読取ヘッド400のラインセンサ401は、原稿600の二次元イメージを取り込む。
【0094】
この第3の実施の形態では、スキャナ500(読取装置)のレンズユニット1が、迷光を結像面に到達させない構成を有しており、結像のコントラストの低下を防止することができるため、原稿600の画像データを正確に取り込むことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 レンズユニット、 11 第1のレンズ板、 12 第1のレンズ、 13 第2のレンズ板、 14 第2のレンズ、 21 遮光板(第1の遮光部材)、 22 第1の空孔、 23 マスク板(第2の遮光部材)、 24 第2の空孔、 25 粗面部、 3 LEDヘッド(露光装置)、 30 LED素子、 300 LEDアレイ、 41 感光体ドラム、 42 帯電ローラ、 5 現像器、 80 転写ローラ、 81 転写ベルト、 100 プリンタ、 30A 物体、 30B 中間像、 30C 結像。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のLED(発光ダイオード)素子を略直線状に配列したLEDヘッドを用いた電子写真方式の画像形成装置や、複数の受光素子を略直線状に配列した受光部に原稿の像を結像させるスキャナやファクシミリ等の読取装置では、物体の正立等倍像をライン状に形成するレンズユニットが用いられている。
【0003】
このようなレンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、縮小倒立像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを対向配置させてなるレンズ対を有し、複数のレンズ対を略直線状に配列している。また、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の遮光部材を配置し、物体と第1のレンズとの間に第2の遮光部材を配置することで、他のレンズ対からの光線の侵入によるクロストークを抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−204208号公報(特に、段落0036および図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の構成では、第2の遮光部材の内壁で反射された光線が、迷光として第1のレンズに入射して結像面に到達する場合があり、結像のコントラストが低下し、例えば印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、迷光によるコントラストの低下を防止することが可能なレンズユニット、並びに、このレンズユニットを備えたLEDヘッド、露光装置、画像形成装置および読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレンズユニットは、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備え、第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレンズユニットは、また、物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、物体と第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材とを備える。第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、第2の空孔は、内壁に十点平均粗さが2μm以上の粗面部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迷光が結像面に到達することを抑制することができ、結像のコントラストを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドを示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるLEDへツドを示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットを示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの遮光板を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットのマスク板を示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの第1のレンズ板を示す平面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニット1の長手方向に沿った断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に対する比較例におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるレンズユニットの長手方向に沿った断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるレンズユニットのマスク板を示す平面図である。
【図13】マスク板の粗面部の表面粗さとエッチング処理時間との関係を示すグラフである。
【図14】照度分布の測定方法を示す概略図である。
【図15】図14の照度分布の測定方法により測定された照度分布である。
【図16】本発明の第2の実施の形態におけるマスク板の粗面部の十点平均粗さRzと照度分布との関係を示す。
【図17】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナを示す概略図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナの読取ヘッドの基本構成を示す概略図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態におけるスキャナの読取ヘッドの光学系を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施の形態.
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置としてのプリンタを示す概略図である。プリンタ100は、電子写真方式を用いたカラーLEDプリンタであり、着色材としての顔料を含む樹脂からなるトナーを用いて、画像データをもとに印字媒体上に画像を形成する。
【0012】
プリンタ100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成するプロセスユニット(画像形成部)10Y,10M,10C,10Kを備えている。各プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kは、共通の構成を有しているため、総称してプロセスユニット10とする。プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kは、用紙101の搬送経路に沿って、(ここでは図1における右から左に)一列に配置されている。
【0013】
プロセスユニット10は、静電潜像担持体としての感光体ドラム41を有している。感光体ドラム41の周囲には、帯電ローラ(帯電装置)42と、LEDヘッド(露光装置)3と、現像器5と、クリーニングブレード43とが配置されている。帯電ローラ42は、感光体ドラム41の表面に電荷を供給して一様に帯電させる。LEDヘッド3は、帯電された感光体ドラム41の表面に、画像データに応じて選択的に光を照射し、静電潜像を形成する。現像器5は、感光体ドラム41の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する。現像器5には、トナーを補給するためのトナーカートリッジ51が取り付けられている。クリーニングブレード43は、トナー像の転写(後述)後に感光体ドラム41の表面に残留するトナーを除去する。
【0014】
プリンタ100の下部には、印刷媒体としての用紙101を収容する給紙カセット60が装着されている。この給紙カセット60の近傍には、用紙101を給紙カセット60から取り出して搬送路に送り出す給紙ローラ61が備えられている。この給紙ローラ61に隣接して、用紙101をプロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに向けて搬送する搬送ローラ62,63が備えられている。
【0015】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの下方には、転写ベルトユニット8が配置されている。転写ベルトユニット8は、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに沿って用紙101を搬送する転写ベルト81と、この転写ベルト81が張架された駆動ローラ82aおよび従動ローラ82bとを有している。転写ベルト81は、その表面で用紙101を吸着保持すると共に、駆動ローラ82aの回転によって移動し、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kに沿って用紙101を搬送する。
【0016】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの各感光体ドラム41との間で転写ベルト81を挟むように、4つの転写ローラ(転写器)80が配置されている。これら転写ローラ80は、各感光体ドラム41上に形成されたトナー像を用紙101上に転写するものである。
【0017】
用紙101の搬送路に沿って、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kの下流側には、定着器9が配置されている。定着器9は、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとを有し、用紙101上に転写されたトナー像を熱および圧力により定着させる。また、定着器9のさらに下流側には、定着器9を通過した用紙101をプリンタ100の外部の排出部66に排出する排出ローラ64,65が配置されている。
【0018】
上述した帯電ローラ42および転写ローラ80には、図示しない電源から所定の電圧が印可される。また、感光体ドラム41および各ローラには、それぞれ図示しないモータから、ギアを介して駆動力が伝達される。
【0019】
プリンタ100には、外部装置から印刷データを受信する外部インターフェースと、プリンタ100の全体の制御を行う制御部(図示せず)とが備えられている。また、現像器5、LEDヘッド3、定着器9および図示しない各モータには、それぞれ制御部および電源が接続されている。
【0020】
<LEDヘッド>
次に、本実施の形態におけるLEDヘッド3の構成について説明する。図2は、本実施の形態における露光装置としてのLEDヘッド3の概略図である。LEDヘッド3は、感光体ドラム41に対向するように配置されている。なお、図示の便宜上、図2では、LEDヘッド3を感光体ドラム41の下方に示している。
【0021】
LEDヘッド3は、LEDアレイ300と、このLEDアレイ300の出射側に配置されたレンズユニット1と、これらを支持するホルダ34とを備えている。LEDアレイ300は、発光部としての複数のLED素子30を、感光体ドラム41の回転軸AXRと平行な方向に略直線状に配列したものである。
【0022】
ここでは、LED素子30の配列方向(すなわち感光体ドラム41の回転軸AXRの方向)を、Y方向とする。また、Y方向と直交する方向であって、LED素子30が感光体ドラム41に対向する方向を、Z方向とする。また、Y方向およびZ方向の両方と直交する方向を、X方向とする。
【0023】
レンズユニット1は、LED素子30の配列方向(すなわちY方向)に長い長尺形状を有している。レンズユニット1の詳細については、後述する。
【0024】
図3は、本実施の形態におけるLEDヘッド3を示す断面図であり、図2における線分III−IIIに沿った断面図である。レンズユニット1の長手方向(Y方向)およびレンズ光軸の両方に直交する方向をレンズユニット1の幅方向とすると、レンズユニット1は、その幅方向がX方向と一致するように配置されている。また、図3に示す断面において、レンズユニット1の幅方向(X方向)中心を通るZ方向の直線CLの延長線上に、上述したLED素子30および感光体ドラム41の回転軸AXRが位置している。
【0025】
LED素子30と、このLED素子30を駆動するためのドライバIC31は、配線基板33上に配置されており、これらLED素子30およびドライバIC31は、ワイヤ32によって電気的に接続されている。
【0026】
<レンズユニット>
次に、本実施の形態におけるレンズユニット1の構成について説明する。
図4は、本実施の形態におけるレンズユニット1を示す分解斜視図である。レンズユニット1は、物体側のレンズアレイとしての第1のレンズ板11と、結像側のレンズアレイとしての第2のレンズ板13と、第1の遮光部材としての遮光板21と、第2の遮光部材としてのマスク板23とを有している。
【0027】
第1のレンズ板11および第2のレンズ板13は、遮光板21を挟んで相対するように配置されている。第1のレンズ板11には、マイクロレンズである第1のレンズ12が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第2のレンズ板13には、マイクロレンズである第2のレンズ14が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第1のレンズ12および第2のレンズ14の配列間隔は同じであり、第1のレンズ12の光軸AXL(図5)と第2のレンズ14の光軸とは一致している。
【0028】
すなわち、レンズユニット1は、光軸AXLが一致するように配置された2つのレンズ12,14からなるレンズ対を、光軸AXLに直交する方向に略直線状に配列した構成となっている。これら第1のレンズ板11と第2のレンズ板13とを合わせて、レンズアレイと称する場合もある。
【0029】
遮光板21には、第1の空孔(開口または絞りとも称する)22が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。また、マスク板23には、第2の空孔24が、Y方向に沿って直線状に2列に配列されている。第1の空孔22および第2の空孔24は、第1のレンズ12および第2のレンズ14の光軸AXL上に配置されている。
【0030】
図5は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。レンズユニット1の物体面OPは、Y方向に配列されたLED素子30(図3)に相当し、結像面IPは、感光体ドラム41(図3)の表面に相当する。
【0031】
物体面OPと第1のレンズ板11との間には、上述したマスク板23が配置されている。また、物体面OPから距離LOの位置に、第1のレンズ板11の第1のレンズ12が配置されている。第1のレンズ12の厚さは、LTで表わされる。
【0032】
第1のレンズ板11の第1のレンズ12と、第2のレンズ板12の第2のレンズ14との間には、上述した遮光板21が配置されている。第1のレンズ12と第2のレンズ14とは、光軸AXLが一致するように、距離LSを隔てて配置される。第2のレンズ14の厚さは、第1のレンズ12の厚さと同じ(LT)である。レンズユニット1の結像面IPは、第2のレンズ14から光軸AXLの方向に距離LIだけ離れた位置にある。
【0033】
次に、遮光板21およびマスク板23、並びにこれらの空孔22,24について説明する。遮光板21の第1の空孔22は、第1のレンズ12側の開口寸法が、第2のレンズ14側の開口寸法よりも小さく形成されている。また、マスク板23の第2の空孔24は、物体面OP側の開口寸法が、第1のレンズ12側の開口寸法よりも大きく形成されている。
【0034】
すなわち、第1の空孔22の内壁は、上方(出射側)ほど開口寸法が大きくなるように、光軸AXLに対して傾斜している。一方、第2の空孔24の内壁は、下方(入射側)ほど開口寸法が大きくなるように、光軸AXLに対して傾斜している。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法よりも大きい。
【0035】
第1のレンズ12は、光軸AXLの方向に距離LO1だけ離れた位置にある物体30Aの結像としての中間像30Bを、光軸方向に距離LI1だけ離れた中間像面IMP上に形成する。中間像30Bは、物体30Aの倒立縮小像になっている。第2のレンズ14は、距離LI1だけ離れた位置にある中間像30Bの結像30Cを、光軸AXLの方向にLI1だけ離れた結像面IP上に結像する。結像30Cは、物体30Aの正立等倍像になっている。
【0036】
レンズユニット1の物体面OPから第1のレンズ12までの距離LOは、上述した距離LO1と同じに設定されている。第1のレンズ12と第2のレンズ14の間隔LSは、LI1の2倍(すなわちLS=2×LI1)に設定されている。第2のレンズ14からレンズユニット1の結像面IPまでの距離LIは、LO1と同じに設定されている。ここでは、第1のレンズ12および第2のレンズ14のそれぞれの厚さLTは、例えば1.3mmとし、間隔LSは、例えば2.2mmとする。
【0037】
図6は、遮光板21を示す平面図である。遮光板21は、Y方向に長い形状を有し、LED素子30の光線を遮光する素材、例えばポリカーボネートにより形成されている。遮光板21の第1の空孔22は、上記のとおりY方向に略直線状に2列に配列されている。第1の空孔22の配列間隔は、上述した第1のレンズ12の配列間隔と同じである。第1の空孔22の第1のレンズ12側のY方向の開口寸法AY3は、第2のレンズ14側の同方向の開口寸法AY4よりも小さい(AY3<AY4)。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX3は、第2のレンズ14側の同方向の開口寸法AX4よりも小さい(AX3<AX4)。
【0038】
ここでは、第1の空孔22の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX3は、例えば0.67mmとし、Y方向の開口寸法AY3は、例えば0.8mmとする。第1の空孔22の第2のレンズ14側のX方向の開口寸法AX4は、例えば0.76mmとし、Y方向の開口寸法AY4は、例えば0.9mmとする。また、遮光板21の厚さは、例えば2.2mmとする。
【0039】
第1の空孔202は、また、光軸AXLを延長した軸線を中心とする円筒面を、YZ面に平行な1つの平面と、XZ面に平行な2つの平面とで切断した形状を有している。
【0040】
より好ましくは、第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3は、Y方向の開口寸法AY3の半分よりも大きい(RX3>AY3/2)。また、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX4は、Y方向の開口寸法AY4の半分よりも大きい(RX4>AY4/2)。第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3は、例えば0.45mmであり、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX4は、例えば0.52mmである。
【0041】
図7は、マスク板23を示す平面図である。マスク板23は、Y方向に長い形状を有し、LED素子30の光線を遮光する素材、例えばポリカーボネートにより形成されている。マスク板23の第2の空孔24は、上記のとおりY方向に略直線状に2列に配列されている。第2の空孔24の配列間隔は、上述した第1のレンズ12の配列間隔と同じである。第2の空孔24の物体面OP側のY方向の開口寸法AY1は、第1のレンズ12側の同方向の開口寸法AY2よりも大きい(AY1>AY2)。第2の空孔24の物体面OP側のX方向の開口寸法AX1は、第1のレンズ12側の同方向の開口寸法AX2よりも大きい(AX1>AX2)。
【0042】
さらに、Y方向における、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法AY3は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法AY2より大きい(AY3>AY2)。また、X方向における、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法AX3は、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法AX2より大きい(AX3>AX2)。マスク板23は、発光部の光線を遮光する素材により形成される。
【0043】
ここでは、マスク板23の第2の空孔24の物体面OP側のX方向の開口寸法AX1は、例えば0.73mmとし、Y方向の開口寸法AY1は、例えば0.8mmとする。第2の空孔24の第1のレンズ12側のX方向の開口寸法AX2は、例えば0.57mmとし、Y方向の開口寸法AY2は、例えば0.5mmとする。また、マスク23の厚さは、例えば1.1mmとする。
【0044】
第2の空孔204は、また、光軸AXLを延長した軸線を中心とする円筒面を、YZ面に平行な1つの平面と、XZ面に平行な2つの平面とで切断した形状を有している。
【0045】
より好ましくは、第2の空孔204の物体面OP側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1は、Y方向の開口寸法AY1の半分よりも大きい(RX1>AY1/2)。また、第1の空孔22の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX2は、Y方向の開口寸法AY2の半分よりも大きい(RX2>AY2/2)。第2の空孔24の第1のレンズ12側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1は、例えば0.43mmであり、第1の空孔22の第2のレンズ14側における光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX2は、例えば0.30mmである。
【0046】
図8は、第1のレンズ板11を示す平面図である。第1のレンズ12は、Y方向(第1のレンズ板11の長手方向)の配列間隔PYが、X方向(第1のレンズ板11の幅方向)の配列間隔PXよりも大きい(PY>PX)。隣接する2つの第1のレンズ12は境界で接し、千鳥状に、隙間なく緻密に配列されている。言い換えると、Y方向における第1のレンズ12の半径はPY/2であり、第1のレンズ12の半径RLは、PY/2より大きい。第1のレンズ板11は、LED素子30の光線を透過する素材、例えばシクロオレフィンポリマー樹脂(日本ゼオン株式会社製「ゼオネックスE48R」)により構成されている。
【0047】
ここでは、第1のレンズ12の半径RLは、例えば1.4mmである。また、X方向の配列間隔PXは、例えば0.8mmであり、Y方向の配列間隔PYは、例えば1.2mmである。
【0048】
第2のレンズ板13は、上述した第1のレンズ板11と同一の形状を有しており、第2のレンズ板13の第2のレンズ14は、第1のレンズ板11の第1のレンズ12と同一のパターンで配列されている。また、第2のレンズ板13は、LED素子30の光線を透過する素材、例えばシクロオレフィンポリマー樹脂(日本ゼオン株式会社製「ゼオネックスE48R」)により構成されている。
【0049】
第1のレンズ12および第2のレンズ14の各レンズ面は、以下の数式(1)で表される回転対称高次非球面で構成する。
【0050】
【数1】
【0051】
ここで、関数Z(r)は、各レンズ面の面頂点を原点とし、原点に対し、レンズ板11,13の素材で構成されている側を負の数で表す。rは、光軸AXLに平行な方向(Z方向)の軸を中心とする半径方向の回転座標系を示し、各図に示したX,Y方向の各座標に対して、r=(X2+Y2)1/2の関係がある。CRは曲率半径、Aは非球面係数4次の係数、Bは非球面係数6次の係数、Cは非球面係数8次の係数を示す。
【0052】
第1のレンズ12の物体面OP側のレンズ面と、第2のレンズ14の結像面IP側のレンズ面とは、互いに同一形状である。また、第1のレンズ12の遮光板21側のレンズ面と、第2のレンズ14の遮光板21側のレンズ面とは、互いに同一形状である。
【0053】
<プリンタの動作>
このように構成された画像形成装置としてのプリンタ100の動作について、図1を参照して説明する。各プロセスユニット10では、電圧が印加された帯電ローラ42により、感光体ドラム41の表面が一様に帯電される。感光体ドラム41の回転に伴い、帯電された表面がLEDヘッド3に対向する位置に達すると、LEDヘッド3により感光体ドラム41の表面が露光され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器5によって現像され、感光体ドラム41の表面にトナー像が形成される。
【0054】
一方、給紙カセット60にセットされた用紙101は、給紙ローラ61によって一枚ずつ給紙カセット60から繰り出され、搬送ローラ62,63によって転写ベルトユニット8に搬送される。さらに、用紙101は、転写ベルト81に吸着保持されて搬送され、プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kを順に通過する。各プロセスユニット10では、感光体ドラム41の表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム41の回転に伴って転写部(転写ローラ80および転写ベルト81)の近傍に到達した際に、転写ローラ80および転写ベルト81との電位差により、用紙101上に転写される。
【0055】
プロセスユニット10Y,10M,10C,10Kを通過し、各色のトナー像が重ね合わされるように転写された用紙101は、転写ベルト81により、定着器9に搬送される。定着器9では、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bによる加圧および加熱が行われ、トナーが溶融して用紙101に固定される。すなわち、トナー像が用紙101に定着する。トナー像の定着が完了した用紙101は、排出ローラ64,65により、排出部66に排出され、プリンタ100の動作が終了する。
【0056】
次に、露光装置としてのLEDヘッド3の動作について、図3を参照して説明する。プリンタ100の制御装置から、画像データに基づく制御信号がLEDヘッド3に送信されると、LEDヘッド3のドライバIC31の制御信号により、各LED素子30が任意の光量で発光する。LED素子30から出射された光線は、レンズユニット1に入射し、感光体ドラム41の表面に結像する。
【0057】
<レンズユニットの作用>
このときのレンズユニット1の作用について、図5を用いて説明する。図5に示すように、第1のレンズ12は、第1の空孔22の内部の中間像面IMP上に、物体30Aの結像としての中間像30Bを形成する。中間像30Bは、物体30Aの倒立縮小像になっている。第2のレンズ14は、結像面IP上に、中間像30Bの結像としての結像30cを結像する。結像30Cは物体30Aの正立等倍像になっている。
【0058】
ここで、上述したように、マスク板23の第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)が、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)より大きく、第2の空孔24の内壁が下方(入射側)ほど外側に広がるように傾斜しているため、図5に示した光線S1,S2のように、第2の空孔24の内壁で反射された光線の多くは第1のレンズ12に入射せず、物体面OP側に反射される。これにより、第2の空孔24で反射された光線が迷光となって結像面IPに到達することを抑制し、結像のコントラストを向上することができる。
【0059】
また、マスク板23の第2の空孔24の内壁の傾斜を、(遮光板21の第1の空孔22の内壁の傾斜に比べて)より大きく形成することで、第2の空孔24の内壁で反射された光線が、より多く物体面OP側に向かうようにし、迷光を遮断する効果を高めている。
【0060】
次に、第1のレンズ12の視野外側の光線が結像面IPに到達することを防止する作用について、図9を参照して説明する。図9は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。
【0061】
図9において、光線R1と光線R8は、第1のレンズ12の視野外側の光線を示している。第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)が、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)よりも大きく、第2の空孔24の内壁が光軸AXLに対して傾斜しているため、光線R1と光線R8は、第2の空孔24を通過して第1のレンズ12に入射する。
【0062】
しかしながら、本実施の形態では、遮光板21の第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)が、第2のレンズ14側の開口寸法(AX4,AY4)よりも小さく、遮光板21の第1のレンズ板11側の端面Aによって光線R1と光線R8が遮断されるため、光線R1と光線R8は、遮光板21の第1の空孔22には入射しない。従って、視野外側の光線が第1の空孔22の内壁で反射して迷光となって結像面IPに到達することを抑制し、結像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0063】
また、上述したように、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)が、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)より大きいため、結像を形成する光線を遮断せずに、迷光となる光線を遮断することができる。その結果、十分な明るさを確保しつつ、結像のコントラストを向上することができる。
【0064】
次に、本実施の形態における遮光板21(第1の空孔22)を他の構成に置き換えた比較例について、図10を参照して説明する。図10(A)および(B)は、レンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。
【0065】
図10(A)に示す比較例では、遮光板21の第1の空孔22の開口寸法が、第1のレンズ12側と第2のレンズ14側とで同じである。この比較例では、第1のレンズ12の視野外側の光線R1と光線R8は、マスク板23の第2の空孔24と第1のレンズ12を通過したのち、遮光板21の第1の空孔22の内壁で反射されて迷光となり、第2のレンズ14に入射する。この迷光は結像面IPに達するため、結像のコントラストの低下を招く。
【0066】
図10(B)に示す比較例では、遮光板21の第1の空孔22の開口寸法が、第2のレンズ14側よりも第1のレンズ12側で大きい。この比較例では、第1のレンズ12の視野外側の光線R1と光線R8は、マスク板23の第2の空孔24と第1のレンズ12を通過したのち、遮光板21の第1の空孔22の内壁で反射されて迷光となり、第2のレンズ14に入射する。この迷光は結像面IPに達するため、結像のコントラストの低下を招く。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、図9に示したように、遮光板21の第1の空孔22の内壁が、上方(出射側)ほど開口寸法が大きくなるように傾斜しているため、第1のレンズ12を通過した視野外側の光線R1と光線R8を、遮光板21の第1のレンズ板11側の端面Aにおいて遮断することができる。加えて、図5を参照して説明したように、マスク板23の第2の空孔24の内壁が、下方(入射側)ほど開口寸法が大きくなるように傾斜しているため、マスク板23の内壁で反射した光線の多くを物体面OP側に出射し、迷光が結像面IPに到達することを抑制することができる。
【0068】
なお、図9において、結像30Cを形成する光線の主光線R2〜R7を示すが、主光線R2〜R7は、第1のレンズ12と第2のレンズ14との間で光軸AXLと平行、すなわちテレセントリックとなることが好ましい。主光線R2〜R7は、第1のレンズ12の前側焦点位置である、物体面OPと第1のレンズ12との間で集光するため、この位置で光束が最も細い。そのため、第2の空孔24の第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)を、第1の空孔22の第1のレンズ12側の開口寸法(AX3,AY3)より小さくしても、主光線R2〜R7は遮断されない。そのため、結像を暗くすることなく、迷光を遮断することができる。
【0069】
また、図6および図7を参照して説明したように、第1の空孔22の光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX3,RX4を、Y方向の開口寸法AY3,AY4の半分よりも大きくし(RX3>AY3/2、RX4>AY4/2)、第2の空孔24の光軸AXLから内壁までのX方向の距離RX1,RX2を、Y方向の開口寸法AY1,AY2の半分よりも大きくすることにより(RX1>AY1/2、RX2>AY2/2)、結像を形成する光線をより多く取り込むことができる。その結果、結像のコントラストを低下させることなく、十分な明るさを確保することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、物体側に配置した遮光部材で反射された光線(迷光)が結像面に到達することを抑制できるため、結像のコントラストを向上することができる。
【0071】
また、このように構成されたレンズユニットを画像形成装置の露光装置に用いることにより、印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れを防止することができる。
【0072】
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図11は、第2の実施の形態におけるレンズユニット1の長手方向(Y方向)に沿った断面図である。第2の実施の形態におけるレンズユニット1は、マスク板23の構成において、第1の実施の形態のレンズユニット1と異なる。
【0073】
<レンズユニットの構成>
第2の実施の形態におけるレンズユニット1のマスク板23は、第2の空孔24を有しているが、この第2の空孔24は、物体面OP側の開口寸法(AX1,AY1)と、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)とが同一に構成されている。また、第2の空孔24の内壁には、粗面部25が形成されている。粗面部25の十点平均粗さRzは、2μm以上である。
【0074】
図12は、マスク板23を示す平面図である。Y方向(マスク板23の長手方向)における、第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法AY1と、第1のレンズ12側の開口寸法AY2とは同一である(AY1=AY2)。また、X方向(マスク板23の長手方向に直交する方向)における、第2の空孔24の物体面OP側の開口寸法AX1と、第1のレンズ12側の開口寸法AX2とは同一である(AX1=AX2)。
【0075】
マスク板23は、ポリカーボネートを射出成形することにより形成されるが、さらにクロム酸/硫酸エッチング液によりエッチング処理することにより、第2の空孔24の内壁に粗面部25が形成される。
【0076】
図13は、粗面部25の十点平均粗さRzと、エッチング処理時間との関係を示すグラフである。図13の縦軸は、日本工業規格JISB0601−1994で表される十点平均粗さRz(単位μm)であり、横軸は、エッチングの処理時間T(分)である。十点平均粗さRzは、日本工業規格JISB0601−1994に従い、表面粗さ・輪郭形状測定器SEF3500K(株式会社小坂研究所製)を用いて測定した。触針先端半径は2μm、触針圧は0.7mN、測定長は2.5mm、触針測定速度は0.1mm/s、カットオフは2.5mmとした。
【0077】
マスク板23のエッチング処理前には、第2の空孔24の内壁の十点平均粗さRzは1μmであった。これに対し、10分のエッチング処理を行うことにより、第2の空孔24の内壁に、十点平均粗さRzが2μmの粗面部25が形成された。
【0078】
なお、第2の実施の形態のレンズユニット1は、マスク板23の第2の空孔部24を除き、第1の実施の形態のレンズユニット1と同様に構成されている。
【0079】
<レンズユニットの作用>
次に、第2の実施の形態のレンズユニット1の作用について、図11を参照して説明する。第2の空孔24の内壁に粗面部25が形成されているため、第2の空孔24の内壁に入射した光線(図11に示す光線S1,S2)は、粗面部25によって吸収され、第1のレンズ12側には出射されない。従って、迷光が結像面IPに到達することを抑制することができ、結像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、第2の空孔24の物体側の開口寸法(AX1,AY1)と、第1のレンズ12側の開口寸法(AX2,AY2)とが同一であるとしたが、同一でない場合においても、第2の空孔24の内壁に入射した光線は粗面部25によって吸収されるため、迷光が結像面IPに到達することを抑制する効果を得ることができる。従って、第1の実施の形態の第2の空孔24の内壁に、本実施の形態の粗面部25を設けることも可能である。
【0081】
次に、本実施の形態のレンズユニット1を実装したLEDヘッド3を用いて得られた結像30Cの照度分布測定について説明する。図14は、照度分布の測定方法を示す斜視図である。図14において、照度分布測定器700は、スリット701が形成されたマスク702と、照度計703とを有している。スリット701の長手方向は、第1のレンズ12の配列方向(レンズユニット1の長尺方向)と直交する方向(X方向)とする。マスク702は、スリット701以外の部分でLED素子30の光線を遮断する。照度計703は、結像30Cから出射された光線のうち、スリット701を通過した光線の強さを測定する。
【0082】
照度分布測定器700は、LEDヘッド3の長手方向(Y方向)に移動可能とした。また、スリット701と第2のレンズ14との距離は、LIとなるように設定した。照度分布の測定においては、LED素子30の配列問隔が0.042mmであるLEDヘッド3を用いた。このLEDヘッド3は、1インチ(約25.4mm)に600個のLED素子30が配列されたものであり、600dpi(Dot per inch)の解像度に対応する。LED素子30のうち1個を点灯し隣接する3個を非点灯とするパターンで点灯させた。図15は、照度分布測定器700を用いて測定された照度分布を示すグラフである。照度分布の最大値はIMAX、最小値はIMINである。
【0083】
図16は、本実施の形態のマスク板23の粗面部25の十点平均粗さRzと、結像30Cの照度分布との関係を示すグラフである。横軸は、図13に示した十点平均粗さRzであり、縦軸は、図15に示した照度分布の最小値IMINの最大値IMAXに対する比、
IB=IMIN/IMAX×100(%)
である。IBの値が高いほど、結像のコントラストが低く、画像形成装置の印刷画像上で本来トナーが付着しないところにトナーが付着して汚れが発生する原因となる。
【0084】
図16から、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm以上ではIBが小さく、十点平均粗さRzの変化に対してIBが殆ど変化していないが、十点平均粗さRzが2μm未満ではIBが急激に増加していることが分かる。これは、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm未満の場合には、印刷画像の白抜き文字や白細線で汚れが発生する可能性があることを示している。
【0085】
本実施の形態のレンズユニット1をLEDヘッド3に実装した、解像度600dipのプリンタ100を用いて画像を印刷し、印刷画像を評価したところ、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm以上の場合には、2ポイントの大きさの白抜き文字や、2ドットの細線に汚れは発生しなかった。一方、粗面部25の十点平均粗さRzが2μm未満の場合には、2ポイントの大きさの白抜き文字や、2ドットの細線に汚れが発生した。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、物体側に配置した遮光部材の空孔の内壁に粗面部を設けて光線の反射を防止することにより、結像のコントラストを向上することができる。また、このようなレンズユニットを画像形成装置の露光装置に用いることにより、印刷画像の白抜き文字や白細線の汚れを防止することができる。
【0087】
第3の実施形態.
次に、本発明の第3の実施形態における読取装置について説明する。図17は、上述した第1または第2の実施の形態におけるレンズユニットを備えた読取装置としてのスキャナ500の基本構成を示す概略図である。図17に示すスキャナ500は、原稿600の画像を取り込み、電子データを生成するものである。
【0088】
<読取装置の構成>
スキャナ500は、原稿600を載置する原稿台502と、原稿600を照明する照明装置としてのランプ501と、原稿600の表面で反射された光を取り込み、電子データに変換する読取ヘッド400と、この読取ヘッド400を原稿600の面と平行に移動可能に支持するレール503と、読取ヘッド400をレール503に沿って移動させる駆動機構510とを備えている。原稿台502は、可視光を透過する素材で構成されている。ランプ501から発せられた光は、原稿台502を透過して原稿600の表面で反射され、再び原稿台502を透過して読取ヘッド400に入射する。
【0089】
駆動機構510は、モータ506と、このモータ506により回転駆動される駆動ベルト505と、駆動ベルト505が張架された複数の滑車504とを備え、駆動ベルト505の一部が読取ヘッド400の接続されている。モータ506の回転により、駆動ベルト505が移動し、これにより読取ヘッド400がレール503に沿って、原稿600の面と平行に移動する。なお、上記のランプ501は読取ヘッド400に取り付けられており、読取ヘッド400と共に移動する。
【0090】
<読取ヘッド>
図18は、読取ヘッド400の基本構成を示す図である。読取ヘッド400は、原稿600で反射された光の光路を折り曲げるミラーと、原稿600の結像を形成するレンズユニット1と、レンズユニット1による結像位置に配設されたラインセンサ401とを備えている。ラインセンサ401は、複数の受光素子が略直線状に一列に配列されており、原稿600の結像を電気信号に変換する。なお、ラインセンサ401における複数の受光素子の配列方向は、原稿台502と平行で、且つ、読取ヘッド400の移動方向と直交する方向である。
【0091】
図19は、第2の実施の形態における読取ヘッド400の構成を示す断面図である。図17に示すように、レンズユニット1は、その物体面OPが原稿600の表面と一致し、結像面IPがラインセンサ401の入射面と一致するように配置されている。レンズユニット1は、第1の実施の形態または第2の実施の形態で説明したものであり、第1のレンズ12を有する第1のレンズ板11と、第2のレンズ14を有する第2のレンズ板13と、遮光板21と、マスク板23とを備えている。第1のレンズ12の配列方向、および第2のレンズ14の配列方向は、ラインヘッド401の受光素子の配列方向と平行である。
【0092】
<読取装置の動作>
このように構成されたスキャナ(読取装置)500の動作について、図17〜図19を参照して説明する。図17に示すように、ランプ501が点灯すると、ランプ501から発せられた光線は、原稿台502を透過して原稿600の表面で反射され、再び原稿台502を透過して読取ヘッド400に入射する。図18に示すように、読取ヘッド400に入射した光線は、ミラー402により反射され、レンズユニット1を透過して、ラインセンサ401に入射する。レンズユニット1の第1のレンズ12および第2のレンズ14により、ラインセンサ401上に原稿600の結像が形成され、ラインセンサ401により電気信号に変換される。
【0093】
また、図17に示すように、モータ506により駆動ベルト505が駆動され、読取ヘッド400およびランプ501がレール503に沿って移動する。これにより、読取ヘッド400のラインセンサ401は、原稿600の二次元イメージを取り込む。
【0094】
この第3の実施の形態では、スキャナ500(読取装置)のレンズユニット1が、迷光を結像面に到達させない構成を有しており、結像のコントラストの低下を防止することができるため、原稿600の画像データを正確に取り込むことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 レンズユニット、 11 第1のレンズ板、 12 第1のレンズ、 13 第2のレンズ板、 14 第2のレンズ、 21 遮光板(第1の遮光部材)、 22 第1の空孔、 23 マスク板(第2の遮光部材)、 24 第2の空孔、 25 粗面部、 3 LEDヘッド(露光装置)、 30 LED素子、 300 LEDアレイ、 41 感光体ドラム、 42 帯電ローラ、 5 現像器、 80 転写ローラ、 81 転写ベルト、 100 プリンタ、 30A 物体、 30B 中間像、 30C 結像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、当該第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、
前記第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、
前記物体と前記第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材と
を備え、
前記第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、前記第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第1の空孔の第1のレンズ側の開口寸法は、前記第2の空孔の第1のレンズ側の開口寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1の空孔の内壁および前記第2の空孔の内壁は、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸に対して、傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第2の空孔の内壁の前記光軸に対する傾斜は、前記第1の空孔の内壁の前記第1のレンズの前記光軸に対する傾斜よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、当該第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、
前記第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、
前記物体と前記第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材と
を備え、
前記第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、前記第2の空孔は、内壁に十点平均粗さが2μm以上の粗面部が形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
前記第1の空孔の内壁は、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸に対して、傾斜していることを特徴とする請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記第2の空孔の前記粗面部が、エッチング処理により形成されたものであることを特徴とする請求項5または6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1のレンズおよび第2のレンズが、隙間なく配列されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸の方向、および前記配列の方向の両方に直交する方向を、前記レンズアレイの幅方向とすると、
前記光軸から前記第1の空孔の内壁までの前記幅方向の距離が、前記第1のレンズ側および前記第2のレンズ側のいずれにおいても、前記配列の方向における前記第1の空孔の開口寸法の半分よりも大きいこと
を特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸の方向、および前記配列の方向の両方に直交する方向を、前記レンズアレイの幅方向とすると、
前記光軸から前記第2の空孔の内壁までの前記幅方向の距離が、前記物体側および前記第1のレンズ側のいずれにおいても、前記配列の方向における前記第2の空孔の開口寸法の半分よりも大きいことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えたLEDヘッド。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた露光装置。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた画像形成装置。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた読取装置。
【請求項1】
物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、当該第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、
前記第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、
前記物体と前記第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材と
を備え、
前記第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、前記第2の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも物体側の開口寸法が大きく形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第1の空孔の第1のレンズ側の開口寸法は、前記第2の空孔の第1のレンズ側の開口寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1の空孔の内壁および前記第2の空孔の内壁は、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸に対して、傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第2の空孔の内壁の前記光軸に対する傾斜は、前記第1の空孔の内壁の前記第1のレンズの前記光軸に対する傾斜よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
物体の縮小倒立像を形成する第1のレンズと、当該第1のレンズが形成した像の拡大倒立像を形成する第2のレンズとを有するレンズ対を、略直線状に複数配列したレンズアレイと、
前記第1のレンズと第2のレンズとの間に第1の空孔を有する第1の遮光部材と、
前記物体と前記第1のレンズとの間に第2の空孔を有する第2の遮光部材と
を備え、
前記第1の空孔は、第1のレンズ側の開口寸法よりも第2のレンズ側の開口寸法が大きく形成され、前記第2の空孔は、内壁に十点平均粗さが2μm以上の粗面部が形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
前記第1の空孔の内壁は、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸に対して、傾斜していることを特徴とする請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記第2の空孔の前記粗面部が、エッチング処理により形成されたものであることを特徴とする請求項5または6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1のレンズおよび第2のレンズが、隙間なく配列されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸の方向、および前記配列の方向の両方に直交する方向を、前記レンズアレイの幅方向とすると、
前記光軸から前記第1の空孔の内壁までの前記幅方向の距離が、前記第1のレンズ側および前記第2のレンズ側のいずれにおいても、前記配列の方向における前記第1の空孔の開口寸法の半分よりも大きいこと
を特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの共通の光軸の方向、および前記配列の方向の両方に直交する方向を、前記レンズアレイの幅方向とすると、
前記光軸から前記第2の空孔の内壁までの前記幅方向の距離が、前記物体側および前記第1のレンズ側のいずれにおいても、前記配列の方向における前記第2の空孔の開口寸法の半分よりも大きいことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えたLEDヘッド。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた露光装置。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた画像形成装置。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のレンズユニットを備えた読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−189915(P2012−189915A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54956(P2011−54956)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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