レンズラック及びプラスチックレンズの製造方法
【課題】複数のプラスチックレンズを一度に製造できるようにする。
【解決手段】本発明のレンズラック1は、複数の第1の挟持部材3と、複数の第1の挟持部材3を有する第1の支持台2と、複数の第1の挟持部材3に対向してプラスチックレンズを成形する成形型を挟持する複数の第2の挟持部材5と、複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台4と、を備えている。また、複数の第1の挟持部材3又は複数の第2の挟持部材5の少なくとも一方に、複数の第1の挟持部材3又は複数の第2の挟持部材5を成形型に向かって付勢するコイルばね6を備えている。
【解決手段】本発明のレンズラック1は、複数の第1の挟持部材3と、複数の第1の挟持部材3を有する第1の支持台2と、複数の第1の挟持部材3に対向してプラスチックレンズを成形する成形型を挟持する複数の第2の挟持部材5と、複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台4と、を備えている。また、複数の第1の挟持部材3又は複数の第2の挟持部材5の少なくとも一方に、複数の第1の挟持部材3又は複数の第2の挟持部材5を成形型に向かって付勢するコイルばね6を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型重合によってプラスチックレンズを成型するためのレンズラック及びそのレンズラックを用いたプラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは一般に注型重合法によって成型される。プラスチックレンズの成形型としては、円筒形で側面に注入口を有する型、いわゆるガスケットと、レンズの両面を成形する上型モールド及び下型モールドとが用いられている。そして、プラスチックレンズ材料を注入口から成形型のキャビティ内に吐出させて注入し、注入したプラスチックレンズ材料を重合させることで、プラスチックレンズが製造される。
【0003】
しかしながら、プラスチックレンズ材料を重合させると重合収縮が起こり、モールドの位置がずれることがあった。特許文献1に記載のプラスチックレンズ製造装置では、挟持部材を用いてモールドを挟持することで重合収縮にモールドを追従させて、モールドの位置がずれることを防止している。
【0004】
図11を参照して従来のプラスチックレンズの製造装置について説明する。図11は、従来のプラスチックレンズの製造装置を示す断面図である。
図11に示すように、プラスチックレンズ製造装置101は、成形型102と、挟持部材103を有している。成形型102は、2枚のモールド104と、ガスケット105とから構成されている。モールド104の両面は、曲面として形成されている。ガスケット105の一方には、注入口106が設けられている。また、2枚のモールド104の外縁は、ガスケット105に当接し、2枚のモールド104は、互いに対向するようにガスケット105に固定される。この固定により2枚のモールド104と、ガスケット105との間に空間ができ、この空間をキャビティ107という。
【0005】
次に、従来のプラスチックレンズの製造方法について説明する。まず、注入口106からプラスチックレンズ材料をキャビティ107内に注入する。プラスチックレンズ材料の注入が完了したら、注入口106を不図示のシール材で封止する。そして、モールド104に挟持部材103を装着させる。挟持部材103をモールド104に装着させることで、モールド104に挟持部材103からの挟持力が働き、重合収縮が起きてもモールド104が追従する。その結果、モールド104の位置がずれることを防止している。プラスチックレンズ材料が重合することで、プラスチックレンズの製造が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−164550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたプラスチックレンズの製造装置では、使用者が成形型に対して1つずつ挟持部材を装着させる必要があった。そのため、複数のプラスチックレンズを製造する際には、使用者の作業が繁雑となり、複数のプラスチックレンズの製造に時間がかかる、という問題を有していた。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができるレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のレンズラックは、複数の第1の挟持部材と、複数の第1の挟持部材を有する第1の支持台と、複数の第1の挟持部材に対向してプラスチックレンズを成形する複数の成形型を挟持する複数の第2の挟持部材と、複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台と、を備えている。また、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材の少なくとも一方に、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を成形型に向かって付勢する付勢部材を備えている。
【0010】
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、以下(1)から(4)に示す工程を含んでいる。
(1)複数の成形型を複数の第1の挟持部材に設置する工程と、
(2)成形型の注入部からプラスチックレンズ材料を吐出させ、複数の成形型にプラスチックレンズ材料を注入する工程と、
(3)複数の成形型を複数の第2の挟持部材で挟持し、第1の挟持部材及び第2の挟持部材に設けられた付勢部材で複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を複数の成形型に向かって付勢する工程と、
(4)複数の成形型に注入したプラスチックレンズ材料を重合させる工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法によれば、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができ、作業を容易に行うことができる。また、付勢部材によって、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を付勢することで、重合収縮が発生しても、第1の挟持部材又は第2の挟持部材を追従させることができる。これにより、成形型を構成するモールドの位置がずれることを防止できる。さらに、曲率が異なるプラスチックレンズを同時に製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のレンズラックの実施の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる第1の挟持部材を示す図であり、図2(A)は第1の挟持部材を示す斜視図、図2(B)は第1の挟持部材を示す分解側面図である。
【図3】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる第2の挟持部材を示す図であり、図3(A)は第2の挟持部材を示す側面図、図3(B)は第2の挟持部材を示す上面図である。
【図4】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる保持部を示す正面図である。
【図5】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型を第1の挟持部材の上に設置した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型の上に第2の挟持部材を当接して成形型を挟持した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型を挟持した状態を示す側面図である。
【図8】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いた曲率が異なるプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図であり、図8(A)は第1の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図、図8(B)は第1の曲率よりも大きい第2の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。
【図9】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図であり、図9(A)は成形型に第2の挟持部材を当接させた状態を示す断面図、図9(B)は成形型にプラスチックレンズ材料を注入している状態を示す断面図である。
【図10】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図であり、図10(C)は成形型にプラスチックレンズ材料の注入が完了した状態を示す断面図、図10(D)は第1の挟持部材及び第2の挟持部材により成形型を挟持している状態を示す断面図である。
【図11】従来のプラスチックレンズの製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法の実施形態例について、図1〜図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.レンズラックの構成例
2.プラスチックレンズの製造方法
【0014】
<1.レンズラックの構成例>
[レンズラック]
まず、本発明のレンズラックの実施の形態例(以下、「本例」という。)について説明する。図1は、本例のレンズラックを示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、レンズラック1は、第1の支持台2と、複数の第1の挟持部材3と、第2の支持台4と、複数の第2の挟持部材5とを備えている。また、レンズラック1は回動機構7と、保持部8を備えている。レンズラック1は、第1の挟持部材3に2枚のモールドとガスケットで構成された成形型を設置して、プラスチックレンズを成型するものである。なお、本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法については、後述する。
【0016】
[第1の支持台]
第1の支持台2について説明する。
図1に示すように、第1の支持台2は、2つの側面部2a、2bと、2つの側面部2a、2bを連結する連結部2cを有している。第1の支持台2の2つの側面部2a、2bは、略平板状に形成されている。また、2つの側面部2a、2bは、第1の支持台2の幅方向Xの両側に配置され、その主面が互いに対向している。連結部2cは、棒状の部材からなり、その軸方向が第1の支持台2の幅方向Xに沿って配置されている。そして、連結部2cの両端は、2つの側面部2a、2bに固定されている。
【0017】
第1の支持台2には、複数の受け台9と、回動機構7と、保持部8と、3つの支持部13が設けられている。3つの支持部13は、鉛直方向Zと直交し、かつ、第1の支持台2の幅方向Xと直交する第1の支持台2の短手方向Yに沿って所定の間隔を開けて配置されている。3つの支持部13は、それぞれ第1の支持棒13aと、第2の支持棒13bを有している。第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、第1の支持台2の幅方向Xの両側に配置された2つの側面部2a、2bを貫通し、第1の支持台2に固定されている。
【0018】
第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、複数の受け台9を支持している。また、第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、第1の支持台2の鉛直方向Zに対する高さが異なるように配置されている。第2の支持棒13bは、第1の支持棒13aよりも第1の支持台2の短手方向Yの一側に配置され、第1の支持棒13aは、第2の支持棒13bよりも鉛直方向Zの上方に位置している。この結果、第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bに支持される受け台9は、水平方向に対して所定の角度で傾斜する。なお、受け台9の傾斜は、成形型にプラスチックレンズ材料を充填したとき、成形型内に発生する気泡を注入口から排出しやすくするために設けられている。そのため、成形型を第1の挟持部材3に設置したときに成形型の注入口が傾斜方向の上側に向くようになればよく、例えば、受け台9の傾斜角度を10°〜90°とすることができる。
【0019】
受け台9は、略円盤状に形成されており、その中央部には固定孔9aが設けられている(図7参照)。この固定孔9aには、後述する支柱23が貫通する。受け台9の一面には、ストッパー10と、レール11とが設けられている。また、受け台9の他面には、第1の接続部12a及び第2の接続部12bと、スペーサー9bが設けられている(図7参照)。第2の接続部12bは、スペーサー9bに配置されている。第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bがそれぞれ第1の接続部12a及び第2の接続部12bに接続することで、受け台9が支持される。
【0020】
受け台9は、第1の支持台2の幅方向Xに沿って4つずつ配置され、第1の支持台2の短手方向Yに沿って3つずつ配置されている。そのため、本例のレンズラック1では、12個の受け台9が設けられている。
【0021】
ストッパー10は、受け台9の外縁における第2の支持棒13b側に設けられている。ストッパー10は、受け台9の一面に対して略垂直に板状の部材が接続することで形成されている。このストッパー10は、後述する成形型41を第1の挟持部材3に設置したときに成形型41が脱落することを防止している。
【0022】
そして、受け台9の一面には、レール11が設けられている。このレール11は、後述する第1の挟持部材3の支持部材22に形成されている溝部22cと係合する。
【0023】
[第1の挟持部材]
次に、第1の挟持部材3について説明する。
図2(A)及び図2(B)は、本例のレンズラック1にかかる第1の挟持部材3を示す図である。
図2(A)に示すように、第1の挟持部材3は、受け部21と、付勢部材の一例に示すコイルばね6と、支持部材22と、支柱23(図2(B)参照)とを有している。受け部21は、略円盤上に形成されており、その一面には、後述する成形型41の下型モールド42bと当接する曲面状の凸面部21aが形成されている。
【0024】
図2(B)に示すように、凸面部21aと反対側の平面部21gの中央部には、収容部21bと、段差部21dと、固定部21fとが設けられている。収容部21bは、平面部21gから受け部21の軸方向の凸面部21a側に向かって凹んで形成されている。収容部21bにはコイルばね6の一端部が収容されるため、収容部21bの内径は、コイルばね6の外径に対応した大きさに設定されている。
【0025】
段差部21dは、収容部21bの凸面部21a側に設けられている。段差部21dには、コイルばね6の一端6aと対向する対向面21cが形成されている。この対向面21cは、コイルばね6の一端6aと当接する。また、段差部21dを設けたことにより、収容部21bの凸面部21a側には、段差面21e及び固定部21fが形成されている。段差面21eは、対向面21cよりも軸方向の凸面部21a側に位置している。固定部21fには、支柱23の一端部が挿入され、この段差面21eに支柱23の軸方向の一端面23aが当接する。
【0026】
支持部材22は、略円盤形状に形成されている。支持部材22は、コイルばね6の他端部を収納する収納部22aと、溝部22cと、貫通孔22dとを有している。支持部材22の一面の中央部には収納部22aが設けられている。収納部22aの内径は、コイルばね6の他端部が収納されるため、コイルばね6の外径に対応した大きさに設定されている。また、収納部22aには、コイルばね6の他端6bと対向する対向面22bが形成されている。この対向面22bは、コイルばね6の他端部が収納部22aに収納されることにより、コイルばね6の他端6bと当接する。
【0027】
なお、本例のレンズラック1の支持部材22を略円盤形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、四角形状や楕円形状等のその他各種の形状とすることも可能である。
【0028】
支持部材22の他面には、所定の間隔をあけて2つの溝部22cが形成されている。この溝部22cは、受け台9の2つのレール11に対応した大きさに設定され、このレール11に係合する。
【0029】
支持部材22の半径方向の中心部には、貫通孔22dが設けられている。この貫通孔22dは、収納部22aと連通している。貫通孔22dには支柱23が挿入されるため、貫通孔22dの内径は、支柱23の外径に対応した大きさに設定されている。
【0030】
支柱23は、略円柱状に形成される。この支柱23は、受け台9の固定孔9a、支持部材22の貫通孔22d、コイルばね6、受け部21の収容部21bの順で貫通し、固定部21fに挿入される(図7参照)。支柱23の一端面23aは、受け部21の段差面21eと当接する。そして、支柱23が、受け台9の固定孔9aを貫通して、レール11と溝部22cが係合することで、第1の挟持部材3が受け台9に固定される。そのため、第1の挟持部材3は、水平方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0031】
また、支柱23の軸方向の他端部には、止め部23bが設けられている。この止め部23bの外径は、受け台9の固定孔9aの内径よりも大きく設定されている。このため、止め部23bが受け台9の他面に当接し、支柱23が受け台9の一面側から抜け出ることを防止することができる。
【0032】
コイルばね6は、受け部21と支持部材22に挟まれて配置される。コイルばね6の一端6aは、受け部21の対向面21cに当接し、コイルばね6の他端6bは、支持部材22の対向面22bに当接する。
【0033】
受け部21の凸面部21aが押圧されると、コイルばね6は、支持部材22側に押圧され収縮する。コイルばね6が収縮すると、コイルばね6には、受け部21側への付勢力が生まれる。この付勢力により、コイルばね6は受け部21を押し上げ、コイルばね6に押し上げられた受け部21は成形型41の下型モールド42bを押圧する(図7参照)。
【0034】
本例では、付勢部材としてコイルばねを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。受け部21に付勢する力を加えるようにすればよく、例えば、付勢部材としてエアポンプ又はゴム等の弾性を有する部材を用いてもよい。
【0035】
[第2の支持台]
次に、第2の支持台4について説明する。
図1に示すように、第2の支持台4は、2本のアーム部4aと、レバー4bと、3つの支持棒4cとを有している。
2本のアーム部4aは、棒状の部材であり、その軸方向が互いに平行になるように設けられている。また、アーム部4aの一端部は、その軸方向に対して略垂直に屈折しており、回動機構7に接続している。回動機構7は、第1の支持台2の側面部2a、2bにおける短手方向Yの一端部に配置されている。また、回動機構7は、第2の支持台4のアーム部4aを回動可能に支持している。これにより、第2の支持台4は、回動機構7を介して、第1の支持台2に回動可能に支持される。
【0036】
アーム部4aの他端部には、レバー4bが設けられている。このレバー4bに力を加えると、回動機構7を中心にアーム部4aが回動される。レバー4bは、後述する保持部8の係止部8aに係止される構成となっている。そのため、レバー4bの大きさは、係止部8aの大きさに対応した大きさに設定されている。
【0037】
さらに、アーム部4aの中央部には、3つの支持棒4cが軸方向に沿って所定の間隔を開けて設けられている。この支持棒4cは、2本のアーム部4aを連結している。3つの支持棒4cには、固定部4dを介して、それぞれ4つの第2の挟持部材5が固定されている。また、支持棒4cは、レバー4bに保持部8の係止部8aを係止したときに、第2の挟持部材5が後述する成形型41の上型モールド42aと当接する位置に配置されている。
【0038】
第2の支持台4の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。
【0039】
[第2の挟持部材]
次に、図3(A)及び図3(B)を参照して、第2の挟持部材5について説明する。
図3(A)及び図3(B)は、本例のレンズラック1にかかる第2の挟持部材5を示す図である。
図3(A)に示すように、第2の挟持部材5は、円盤状の挟持部5aと、この挟持部5aの半径方向の中央部に接続される円筒状の固定部5bとを有している。この挟持部5aには、曲面状に凹んだ凹部5cが設けられている。この凹部5cは、成形型41の上型モールド42aの凸面と当接するため、成形型41の上型モールド42aのせり出しを吸収することができる(図8(A)参照)。
【0040】
固定部5bは、第2の支持台4の支持棒4cに固定される。固定部5bの固定穴5dには、第2の支持台4の固定部4dが挿入される(図7参照)。これにより、第2の挟持部材5が固定部4dを介して、第2の支持台4に固定される。
【0041】
また、本例では、第1の挟持部材3にコイルばね6を配置したがこれに限定されるものではない。コイルばね6は、第1の挟持部材3又は第2の挟持部材5のどちらか一方に設けられていればよく、例えば、第2の挟持部材5にコイルばね6を設けてもよい。
【0042】
第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5の材質は、例えば、デルリン(登録商標)を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、モールド42より軟らかく熱に強いプラスチックを用いてもよい。これにより、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5に当接するモールド42が傷つかなくすることができる。
【0043】
[保持部]
次に、図4を参照して、保持部8について説明する。
図4は、本例のレンズラック1にかかる保持部8を示す側面図である。
図4に示すように、保持部8は、略長方形をなす板状に形成されており、係止部8aと、回動部8bを有している。保持部8の長手方向の一端部には、フック状の係止部8aが設けられており、保持部8の長手方向の他端部には、回動部8bが形成されている。図1に示すように、保持部8は第1の支持台2の側面部2a、2bの短手方向Yの他端部に回動部8bを介して、回動可能に取り付けられている。
【0044】
図6は本例のレンズラック1における成形型41の上に第2の挟持部材5を当接させて成形型41を挟持した状態を示す斜視図である。
図6に示すように、係止部8aは、レバー4bを下ろしたときに保持部8を第1の支持台2の短手方向Yの他端側から一端側に回動部8bを中心に回動させることで、レバー4bに引っかけて係止することができる。このとき、第2の支持台4の支持棒4cに固定されている第2の挟持部材5が後述する成形型41の上型モールド42aに当接し、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5は対向する(図7参照)。これにより、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5によって成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bを挟持することができる。なお、成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bを挟持しているとき、第2の挟持部材5は水平方向に対して所定の角度で傾斜する。
【0045】
保持部8の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。
【0046】
本例では、第1の支持台2に保持部8を設けて、挟持状態を保持しているがこれに限定されるものではない。成形型41を挟持していればよく、例えば、第2の支持台4に突起を設けるとともに、第1の支持台2に凹部を設け、突起と凹部とが係合することで、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5による挟持状態を保持してもよい。
【0047】
[成形型]
次に、成形型41について説明する。
図8は本例のレンズラック1を用いた曲率が異なるプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。図8(A)は第1の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図、図8(B)は第1の曲率よりも大きい第2の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。
図8(A)に示すように、成形型41は円筒形状に形成されている。この成形型41は、モールド42と、ガスケット43と、注入部45とを有している。モールド42は、上型モールド42aと、下型モールド42bとから構成される。上型モールド42aと下型モールド42bは、第1の曲率を有しており、製造するプラスチックレンズの曲率に対応している。上型モールド42aは、第2の挟持部材5の凹部5cと当接する。一方、下型モールド42bは、第1の挟持部材3の受け部21と当接する。
【0048】
ガスケット43は、円筒形状の弾性を有する樹脂からなる部材である。ガスケット43は、上型モールド42aと下型モールド42bが対向した状態で、モールド42の外縁と当接する。2枚のモールド42a、42bとガスケット43によりできた空間をキャビティ44という。ガスケット43の外壁には、キャビティ44にプラスチックレンズ材料を注入する注入部45が設けられている。この注入部45は、ガスケット43の外壁からキャビティ44に貫通する管状の部材である。また、ガスケット43の内壁には、プラスチックレンズ材料を吐出させキャビティ44内に注入される注入口43aが設けられている。
【0049】
ガスケット43の材料としては、適度な弾性を有する材料であれば使用可能であり、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー等を好適に用いることができる。
【0050】
図8(B)に示す成形型51は、成形型41と同様に円筒形状に形成されている。この成形型51は、モールド52と、ガスケット53と、注入部45とを有している。このモールド52は、上型モールド52aと、下型モールド52bとから構成され、モールド42が有する第1の曲率より大きな第2の曲率を有している。
【0051】
ガスケット53は、ガスケット43と同様に円筒形状の弾性を有する樹脂からなる部材である。成形型51は、第2の曲率を有する上型モールド52aと下型モールド52bが対向した状態で、ガスケット53がモールド52の外縁と当接することで構成されている。2枚のモールド52a、52bとガスケット53によりできた空間をキャビティ54という。
【0052】
ガスケット53の外壁には、ガスケット43と同様にプラスチックレンズ材料を注入する注入部45が設けられている。また、ガスケット53の内壁には、プラスチックレンズ材料を吐出させキャビティ54内に注入される注入口53aが設けられている。
【0053】
成形型41のモールド42と成形型51のモールド52の曲率が異なるため、キャビティ44の形状はキャビティ54の形状と異なる。そのため、成形型41、51で成型されるプラスチックレンズの形状も異なる。
【0054】
また、図8(A)及び図8(B)に示すように、成形型41、51におけるモールド42、52の曲率は、異なっている。そのため、コイルばね6は、モールド42、52に対応して伸縮し、受け部21を付勢する。そして、受け部21の凸面部21aは、成形型41、51の下型モールド42b、52bの曲面に応じて当接する。その結果、本例のレンズラック1は、様々な曲率のプラスチックレンズを一度に製造することができる。
【0055】
<2.プラスチックレンズの製造方法>
次に、図5〜図10を参照して上述した構成を有する本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法について説明する。
図5は本例のレンズラック1における成形型41を第1の挟持部材3の上に設置した状態を示す斜視図であり、図7は本例のレンズラック1における成形型41を挟持した状態を示す側面図である。また、図9及び図10は本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図である。
【0056】
まず、図5に示すように、レンズラック1の第1の挟持部材3に成形型41を設置する。図7に示すように、成形型41を第1の挟持部材3に設置すると、第1の挟持部材3における受け部21の凸面部21aが成形型41の下型モールド42bと当接する。そして、レバー4bに力を加えると、回動機構7を介して、第2の支持台4のアーム部4aが回動する。これにより、第2の支持台4に固定されている第2の挟持部材5が第1の挟持部材3に設置された成形型41に接近し、第2の挟持部材5の凹部5cが成形型41の上型モールド42aに当接する。このとき、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5は対向し、第2の挟持部材5は水平方向に対して所定の角度で傾斜する。そして、図9(A)に示すように、成形型41の上型モールド42aに第2の挟持部材5を当接させた後、プラスチックレンズ材料Mを注入部45に入れる。
【0057】
次に、図9(B)に示すように、注入部45に入ったプラスチックレンズ材料Mを注入口43aからキャビティ44内に吐出させ注入する。そして、図10(C)に示すように、プラスチックレンズ材料Mをキャビティ44内に充填させる。受け台9が所定の角度で傾斜しているため、プラスチックレンズ材料Mを充填するときに発生する気泡を注入口43aから排出することができる。
【0058】
その後、図6に示すように、レバー4bに力を加えていき、第2の挟持部材5によって成形型41の上型モールド42aを押圧させる。そして、図10(D)に示すように、第1の挟持部材3が下型モールド42bに押圧され、第1の挟持部材3の内部に配置されたコイルばね6が収縮し、成形型41が下がっていく。このとき、第2の挟持部材5は成形型41の上型モールド42aを押圧し、第1の挟持部材3はコイルばね6からの付勢力により成形型41の下型モールド42bを押圧する。そのため、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持することができる。
【0059】
図6に示すように、第2の支持台4のアーム部4aが第1の支持台2の短手方向Yと平行になるまでレバー4bに力を加え、保持部8を回動させて係止部8aをレバー4bに引っかける。そして、保持部8は、成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bが第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5に挟持された状態を保持する。その後、注入されたプラスチックレンズ材料Mを重合させる。その結果、成形型41が第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により挟持された状態となっているため、重合収縮が起こってもモールド42が追従することができ、プラスチックレンズの成形不良を少なくすることができる。
【0060】
その後、プラスチックレンズ材料Mの重合が完了したら、レバー4bから係止部8aをはずして挟持状態を解除する。さらにレバー4bを持ち上げて第2の挟持部材5を成形型41からはずし、成形型41をレンズラック1から取り外す。これにより、プラスチックレンズの製造が完了する。また、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5を複数設け、それぞれにコイルばね6が取り付けられている。この結果、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができる。
【0061】
なお、本例では、成形型41を第1の挟持部材3に設置してからプラスチックレンズ材料Mを注入する工程を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、成形型41のキャビティ44内にプラスチックレンズ材料Mを注入してから成形型41を第1の挟持部材3に設置してもよい。
【0062】
本例のレンズラック1では、受け台9を12個とした例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受け台9を11個以下あるいは、13個以上としてもよい。また、本例のレンズラック1では、受け台9の数に合わせて12個の第2の挟持部材5が設けられているが、第2の挟持部材5の数は、受け台9の数に合わせて適宜変えてもよい。
【0063】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0064】
本例のレンズラック1では、第1の支持台2に接続される回動機構7を介して、第2の支持台4を回動させ、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持しているが、これに限定されるものではない。例えば、注入部が鉛直方向Zの上方に向いていればよく、第1の支持台2に対して第2の支持台4を鉛直方向Zに昇降させて成形型41を挟持してもよい。あるいは、第1の支持台2の側面部2a、2bの長手方向を鉛直方向Zに沿うように第1の支持台2を配置し、かつ、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5とが対向するように第2の支持台4を配置する。そして、第1の支持台2に対して鉛直方向Zと直交する水平方向に第2の支持台4を移動させて、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・レンズラック、2・・・第1の支持台、3・・・第1の挟持部材、4・・・第2の支持台、4a・・・アーム部、4b・・・レバー、4c・・・支持棒、5・・・第2の挟持部材、5a・・・挟持部、5b・・・固定部、6・・・コイルばね(付勢部材)、7・・・回動機構、8・・・保持部、8a・・・係止部、8b・・・回動部、9・・・受け台、10・・・ストッパー、11・・・レール、12・・・接続部、13・・・支持部、21・・・受け部、22・・・支持部材、22a・・・収納部、22b・・・対向面、22c・・・溝部、22d・・・貫通孔、23・・・支柱、41・・・成形型、42,52・・・モールド、43,53・・・ガスケット、44,54・・・キャビティ、45・・・注入部
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型重合によってプラスチックレンズを成型するためのレンズラック及びそのレンズラックを用いたプラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは一般に注型重合法によって成型される。プラスチックレンズの成形型としては、円筒形で側面に注入口を有する型、いわゆるガスケットと、レンズの両面を成形する上型モールド及び下型モールドとが用いられている。そして、プラスチックレンズ材料を注入口から成形型のキャビティ内に吐出させて注入し、注入したプラスチックレンズ材料を重合させることで、プラスチックレンズが製造される。
【0003】
しかしながら、プラスチックレンズ材料を重合させると重合収縮が起こり、モールドの位置がずれることがあった。特許文献1に記載のプラスチックレンズ製造装置では、挟持部材を用いてモールドを挟持することで重合収縮にモールドを追従させて、モールドの位置がずれることを防止している。
【0004】
図11を参照して従来のプラスチックレンズの製造装置について説明する。図11は、従来のプラスチックレンズの製造装置を示す断面図である。
図11に示すように、プラスチックレンズ製造装置101は、成形型102と、挟持部材103を有している。成形型102は、2枚のモールド104と、ガスケット105とから構成されている。モールド104の両面は、曲面として形成されている。ガスケット105の一方には、注入口106が設けられている。また、2枚のモールド104の外縁は、ガスケット105に当接し、2枚のモールド104は、互いに対向するようにガスケット105に固定される。この固定により2枚のモールド104と、ガスケット105との間に空間ができ、この空間をキャビティ107という。
【0005】
次に、従来のプラスチックレンズの製造方法について説明する。まず、注入口106からプラスチックレンズ材料をキャビティ107内に注入する。プラスチックレンズ材料の注入が完了したら、注入口106を不図示のシール材で封止する。そして、モールド104に挟持部材103を装着させる。挟持部材103をモールド104に装着させることで、モールド104に挟持部材103からの挟持力が働き、重合収縮が起きてもモールド104が追従する。その結果、モールド104の位置がずれることを防止している。プラスチックレンズ材料が重合することで、プラスチックレンズの製造が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−164550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたプラスチックレンズの製造装置では、使用者が成形型に対して1つずつ挟持部材を装着させる必要があった。そのため、複数のプラスチックレンズを製造する際には、使用者の作業が繁雑となり、複数のプラスチックレンズの製造に時間がかかる、という問題を有していた。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができるレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のレンズラックは、複数の第1の挟持部材と、複数の第1の挟持部材を有する第1の支持台と、複数の第1の挟持部材に対向してプラスチックレンズを成形する複数の成形型を挟持する複数の第2の挟持部材と、複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台と、を備えている。また、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材の少なくとも一方に、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を成形型に向かって付勢する付勢部材を備えている。
【0010】
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、以下(1)から(4)に示す工程を含んでいる。
(1)複数の成形型を複数の第1の挟持部材に設置する工程と、
(2)成形型の注入部からプラスチックレンズ材料を吐出させ、複数の成形型にプラスチックレンズ材料を注入する工程と、
(3)複数の成形型を複数の第2の挟持部材で挟持し、第1の挟持部材及び第2の挟持部材に設けられた付勢部材で複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を複数の成形型に向かって付勢する工程と、
(4)複数の成形型に注入したプラスチックレンズ材料を重合させる工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法によれば、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができ、作業を容易に行うことができる。また、付勢部材によって、複数の第1の挟持部材又は複数の第2の挟持部材を付勢することで、重合収縮が発生しても、第1の挟持部材又は第2の挟持部材を追従させることができる。これにより、成形型を構成するモールドの位置がずれることを防止できる。さらに、曲率が異なるプラスチックレンズを同時に製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のレンズラックの実施の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる第1の挟持部材を示す図であり、図2(A)は第1の挟持部材を示す斜視図、図2(B)は第1の挟持部材を示す分解側面図である。
【図3】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる第2の挟持部材を示す図であり、図3(A)は第2の挟持部材を示す側面図、図3(B)は第2の挟持部材を示す上面図である。
【図4】本発明のレンズラックの実施の形態例にかかる保持部を示す正面図である。
【図5】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型を第1の挟持部材の上に設置した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型の上に第2の挟持部材を当接して成形型を挟持した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明のレンズラックの実施の形態例における成形型を挟持した状態を示す側面図である。
【図8】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いた曲率が異なるプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図であり、図8(A)は第1の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図、図8(B)は第1の曲率よりも大きい第2の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。
【図9】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図であり、図9(A)は成形型に第2の挟持部材を当接させた状態を示す断面図、図9(B)は成形型にプラスチックレンズ材料を注入している状態を示す断面図である。
【図10】本発明のレンズラックの実施の形態例を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図であり、図10(C)は成形型にプラスチックレンズ材料の注入が完了した状態を示す断面図、図10(D)は第1の挟持部材及び第2の挟持部材により成形型を挟持している状態を示す断面図である。
【図11】従来のプラスチックレンズの製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のレンズラック及びプラスチックレンズの製造方法の実施形態例について、図1〜図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.レンズラックの構成例
2.プラスチックレンズの製造方法
【0014】
<1.レンズラックの構成例>
[レンズラック]
まず、本発明のレンズラックの実施の形態例(以下、「本例」という。)について説明する。図1は、本例のレンズラックを示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、レンズラック1は、第1の支持台2と、複数の第1の挟持部材3と、第2の支持台4と、複数の第2の挟持部材5とを備えている。また、レンズラック1は回動機構7と、保持部8を備えている。レンズラック1は、第1の挟持部材3に2枚のモールドとガスケットで構成された成形型を設置して、プラスチックレンズを成型するものである。なお、本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法については、後述する。
【0016】
[第1の支持台]
第1の支持台2について説明する。
図1に示すように、第1の支持台2は、2つの側面部2a、2bと、2つの側面部2a、2bを連結する連結部2cを有している。第1の支持台2の2つの側面部2a、2bは、略平板状に形成されている。また、2つの側面部2a、2bは、第1の支持台2の幅方向Xの両側に配置され、その主面が互いに対向している。連結部2cは、棒状の部材からなり、その軸方向が第1の支持台2の幅方向Xに沿って配置されている。そして、連結部2cの両端は、2つの側面部2a、2bに固定されている。
【0017】
第1の支持台2には、複数の受け台9と、回動機構7と、保持部8と、3つの支持部13が設けられている。3つの支持部13は、鉛直方向Zと直交し、かつ、第1の支持台2の幅方向Xと直交する第1の支持台2の短手方向Yに沿って所定の間隔を開けて配置されている。3つの支持部13は、それぞれ第1の支持棒13aと、第2の支持棒13bを有している。第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、第1の支持台2の幅方向Xの両側に配置された2つの側面部2a、2bを貫通し、第1の支持台2に固定されている。
【0018】
第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、複数の受け台9を支持している。また、第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bは、第1の支持台2の鉛直方向Zに対する高さが異なるように配置されている。第2の支持棒13bは、第1の支持棒13aよりも第1の支持台2の短手方向Yの一側に配置され、第1の支持棒13aは、第2の支持棒13bよりも鉛直方向Zの上方に位置している。この結果、第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bに支持される受け台9は、水平方向に対して所定の角度で傾斜する。なお、受け台9の傾斜は、成形型にプラスチックレンズ材料を充填したとき、成形型内に発生する気泡を注入口から排出しやすくするために設けられている。そのため、成形型を第1の挟持部材3に設置したときに成形型の注入口が傾斜方向の上側に向くようになればよく、例えば、受け台9の傾斜角度を10°〜90°とすることができる。
【0019】
受け台9は、略円盤状に形成されており、その中央部には固定孔9aが設けられている(図7参照)。この固定孔9aには、後述する支柱23が貫通する。受け台9の一面には、ストッパー10と、レール11とが設けられている。また、受け台9の他面には、第1の接続部12a及び第2の接続部12bと、スペーサー9bが設けられている(図7参照)。第2の接続部12bは、スペーサー9bに配置されている。第1の支持棒13a及び第2の支持棒13bがそれぞれ第1の接続部12a及び第2の接続部12bに接続することで、受け台9が支持される。
【0020】
受け台9は、第1の支持台2の幅方向Xに沿って4つずつ配置され、第1の支持台2の短手方向Yに沿って3つずつ配置されている。そのため、本例のレンズラック1では、12個の受け台9が設けられている。
【0021】
ストッパー10は、受け台9の外縁における第2の支持棒13b側に設けられている。ストッパー10は、受け台9の一面に対して略垂直に板状の部材が接続することで形成されている。このストッパー10は、後述する成形型41を第1の挟持部材3に設置したときに成形型41が脱落することを防止している。
【0022】
そして、受け台9の一面には、レール11が設けられている。このレール11は、後述する第1の挟持部材3の支持部材22に形成されている溝部22cと係合する。
【0023】
[第1の挟持部材]
次に、第1の挟持部材3について説明する。
図2(A)及び図2(B)は、本例のレンズラック1にかかる第1の挟持部材3を示す図である。
図2(A)に示すように、第1の挟持部材3は、受け部21と、付勢部材の一例に示すコイルばね6と、支持部材22と、支柱23(図2(B)参照)とを有している。受け部21は、略円盤上に形成されており、その一面には、後述する成形型41の下型モールド42bと当接する曲面状の凸面部21aが形成されている。
【0024】
図2(B)に示すように、凸面部21aと反対側の平面部21gの中央部には、収容部21bと、段差部21dと、固定部21fとが設けられている。収容部21bは、平面部21gから受け部21の軸方向の凸面部21a側に向かって凹んで形成されている。収容部21bにはコイルばね6の一端部が収容されるため、収容部21bの内径は、コイルばね6の外径に対応した大きさに設定されている。
【0025】
段差部21dは、収容部21bの凸面部21a側に設けられている。段差部21dには、コイルばね6の一端6aと対向する対向面21cが形成されている。この対向面21cは、コイルばね6の一端6aと当接する。また、段差部21dを設けたことにより、収容部21bの凸面部21a側には、段差面21e及び固定部21fが形成されている。段差面21eは、対向面21cよりも軸方向の凸面部21a側に位置している。固定部21fには、支柱23の一端部が挿入され、この段差面21eに支柱23の軸方向の一端面23aが当接する。
【0026】
支持部材22は、略円盤形状に形成されている。支持部材22は、コイルばね6の他端部を収納する収納部22aと、溝部22cと、貫通孔22dとを有している。支持部材22の一面の中央部には収納部22aが設けられている。収納部22aの内径は、コイルばね6の他端部が収納されるため、コイルばね6の外径に対応した大きさに設定されている。また、収納部22aには、コイルばね6の他端6bと対向する対向面22bが形成されている。この対向面22bは、コイルばね6の他端部が収納部22aに収納されることにより、コイルばね6の他端6bと当接する。
【0027】
なお、本例のレンズラック1の支持部材22を略円盤形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、四角形状や楕円形状等のその他各種の形状とすることも可能である。
【0028】
支持部材22の他面には、所定の間隔をあけて2つの溝部22cが形成されている。この溝部22cは、受け台9の2つのレール11に対応した大きさに設定され、このレール11に係合する。
【0029】
支持部材22の半径方向の中心部には、貫通孔22dが設けられている。この貫通孔22dは、収納部22aと連通している。貫通孔22dには支柱23が挿入されるため、貫通孔22dの内径は、支柱23の外径に対応した大きさに設定されている。
【0030】
支柱23は、略円柱状に形成される。この支柱23は、受け台9の固定孔9a、支持部材22の貫通孔22d、コイルばね6、受け部21の収容部21bの順で貫通し、固定部21fに挿入される(図7参照)。支柱23の一端面23aは、受け部21の段差面21eと当接する。そして、支柱23が、受け台9の固定孔9aを貫通して、レール11と溝部22cが係合することで、第1の挟持部材3が受け台9に固定される。そのため、第1の挟持部材3は、水平方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0031】
また、支柱23の軸方向の他端部には、止め部23bが設けられている。この止め部23bの外径は、受け台9の固定孔9aの内径よりも大きく設定されている。このため、止め部23bが受け台9の他面に当接し、支柱23が受け台9の一面側から抜け出ることを防止することができる。
【0032】
コイルばね6は、受け部21と支持部材22に挟まれて配置される。コイルばね6の一端6aは、受け部21の対向面21cに当接し、コイルばね6の他端6bは、支持部材22の対向面22bに当接する。
【0033】
受け部21の凸面部21aが押圧されると、コイルばね6は、支持部材22側に押圧され収縮する。コイルばね6が収縮すると、コイルばね6には、受け部21側への付勢力が生まれる。この付勢力により、コイルばね6は受け部21を押し上げ、コイルばね6に押し上げられた受け部21は成形型41の下型モールド42bを押圧する(図7参照)。
【0034】
本例では、付勢部材としてコイルばねを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。受け部21に付勢する力を加えるようにすればよく、例えば、付勢部材としてエアポンプ又はゴム等の弾性を有する部材を用いてもよい。
【0035】
[第2の支持台]
次に、第2の支持台4について説明する。
図1に示すように、第2の支持台4は、2本のアーム部4aと、レバー4bと、3つの支持棒4cとを有している。
2本のアーム部4aは、棒状の部材であり、その軸方向が互いに平行になるように設けられている。また、アーム部4aの一端部は、その軸方向に対して略垂直に屈折しており、回動機構7に接続している。回動機構7は、第1の支持台2の側面部2a、2bにおける短手方向Yの一端部に配置されている。また、回動機構7は、第2の支持台4のアーム部4aを回動可能に支持している。これにより、第2の支持台4は、回動機構7を介して、第1の支持台2に回動可能に支持される。
【0036】
アーム部4aの他端部には、レバー4bが設けられている。このレバー4bに力を加えると、回動機構7を中心にアーム部4aが回動される。レバー4bは、後述する保持部8の係止部8aに係止される構成となっている。そのため、レバー4bの大きさは、係止部8aの大きさに対応した大きさに設定されている。
【0037】
さらに、アーム部4aの中央部には、3つの支持棒4cが軸方向に沿って所定の間隔を開けて設けられている。この支持棒4cは、2本のアーム部4aを連結している。3つの支持棒4cには、固定部4dを介して、それぞれ4つの第2の挟持部材5が固定されている。また、支持棒4cは、レバー4bに保持部8の係止部8aを係止したときに、第2の挟持部材5が後述する成形型41の上型モールド42aと当接する位置に配置されている。
【0038】
第2の支持台4の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。
【0039】
[第2の挟持部材]
次に、図3(A)及び図3(B)を参照して、第2の挟持部材5について説明する。
図3(A)及び図3(B)は、本例のレンズラック1にかかる第2の挟持部材5を示す図である。
図3(A)に示すように、第2の挟持部材5は、円盤状の挟持部5aと、この挟持部5aの半径方向の中央部に接続される円筒状の固定部5bとを有している。この挟持部5aには、曲面状に凹んだ凹部5cが設けられている。この凹部5cは、成形型41の上型モールド42aの凸面と当接するため、成形型41の上型モールド42aのせり出しを吸収することができる(図8(A)参照)。
【0040】
固定部5bは、第2の支持台4の支持棒4cに固定される。固定部5bの固定穴5dには、第2の支持台4の固定部4dが挿入される(図7参照)。これにより、第2の挟持部材5が固定部4dを介して、第2の支持台4に固定される。
【0041】
また、本例では、第1の挟持部材3にコイルばね6を配置したがこれに限定されるものではない。コイルばね6は、第1の挟持部材3又は第2の挟持部材5のどちらか一方に設けられていればよく、例えば、第2の挟持部材5にコイルばね6を設けてもよい。
【0042】
第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5の材質は、例えば、デルリン(登録商標)を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、モールド42より軟らかく熱に強いプラスチックを用いてもよい。これにより、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5に当接するモールド42が傷つかなくすることができる。
【0043】
[保持部]
次に、図4を参照して、保持部8について説明する。
図4は、本例のレンズラック1にかかる保持部8を示す側面図である。
図4に示すように、保持部8は、略長方形をなす板状に形成されており、係止部8aと、回動部8bを有している。保持部8の長手方向の一端部には、フック状の係止部8aが設けられており、保持部8の長手方向の他端部には、回動部8bが形成されている。図1に示すように、保持部8は第1の支持台2の側面部2a、2bの短手方向Yの他端部に回動部8bを介して、回動可能に取り付けられている。
【0044】
図6は本例のレンズラック1における成形型41の上に第2の挟持部材5を当接させて成形型41を挟持した状態を示す斜視図である。
図6に示すように、係止部8aは、レバー4bを下ろしたときに保持部8を第1の支持台2の短手方向Yの他端側から一端側に回動部8bを中心に回動させることで、レバー4bに引っかけて係止することができる。このとき、第2の支持台4の支持棒4cに固定されている第2の挟持部材5が後述する成形型41の上型モールド42aに当接し、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5は対向する(図7参照)。これにより、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5によって成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bを挟持することができる。なお、成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bを挟持しているとき、第2の挟持部材5は水平方向に対して所定の角度で傾斜する。
【0045】
保持部8の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。
【0046】
本例では、第1の支持台2に保持部8を設けて、挟持状態を保持しているがこれに限定されるものではない。成形型41を挟持していればよく、例えば、第2の支持台4に突起を設けるとともに、第1の支持台2に凹部を設け、突起と凹部とが係合することで、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5による挟持状態を保持してもよい。
【0047】
[成形型]
次に、成形型41について説明する。
図8は本例のレンズラック1を用いた曲率が異なるプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。図8(A)は第1の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図、図8(B)は第1の曲率よりも大きい第2の曲率を有するプラスチックレンズを製造する状態を示す断面図である。
図8(A)に示すように、成形型41は円筒形状に形成されている。この成形型41は、モールド42と、ガスケット43と、注入部45とを有している。モールド42は、上型モールド42aと、下型モールド42bとから構成される。上型モールド42aと下型モールド42bは、第1の曲率を有しており、製造するプラスチックレンズの曲率に対応している。上型モールド42aは、第2の挟持部材5の凹部5cと当接する。一方、下型モールド42bは、第1の挟持部材3の受け部21と当接する。
【0048】
ガスケット43は、円筒形状の弾性を有する樹脂からなる部材である。ガスケット43は、上型モールド42aと下型モールド42bが対向した状態で、モールド42の外縁と当接する。2枚のモールド42a、42bとガスケット43によりできた空間をキャビティ44という。ガスケット43の外壁には、キャビティ44にプラスチックレンズ材料を注入する注入部45が設けられている。この注入部45は、ガスケット43の外壁からキャビティ44に貫通する管状の部材である。また、ガスケット43の内壁には、プラスチックレンズ材料を吐出させキャビティ44内に注入される注入口43aが設けられている。
【0049】
ガスケット43の材料としては、適度な弾性を有する材料であれば使用可能であり、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー等を好適に用いることができる。
【0050】
図8(B)に示す成形型51は、成形型41と同様に円筒形状に形成されている。この成形型51は、モールド52と、ガスケット53と、注入部45とを有している。このモールド52は、上型モールド52aと、下型モールド52bとから構成され、モールド42が有する第1の曲率より大きな第2の曲率を有している。
【0051】
ガスケット53は、ガスケット43と同様に円筒形状の弾性を有する樹脂からなる部材である。成形型51は、第2の曲率を有する上型モールド52aと下型モールド52bが対向した状態で、ガスケット53がモールド52の外縁と当接することで構成されている。2枚のモールド52a、52bとガスケット53によりできた空間をキャビティ54という。
【0052】
ガスケット53の外壁には、ガスケット43と同様にプラスチックレンズ材料を注入する注入部45が設けられている。また、ガスケット53の内壁には、プラスチックレンズ材料を吐出させキャビティ54内に注入される注入口53aが設けられている。
【0053】
成形型41のモールド42と成形型51のモールド52の曲率が異なるため、キャビティ44の形状はキャビティ54の形状と異なる。そのため、成形型41、51で成型されるプラスチックレンズの形状も異なる。
【0054】
また、図8(A)及び図8(B)に示すように、成形型41、51におけるモールド42、52の曲率は、異なっている。そのため、コイルばね6は、モールド42、52に対応して伸縮し、受け部21を付勢する。そして、受け部21の凸面部21aは、成形型41、51の下型モールド42b、52bの曲面に応じて当接する。その結果、本例のレンズラック1は、様々な曲率のプラスチックレンズを一度に製造することができる。
【0055】
<2.プラスチックレンズの製造方法>
次に、図5〜図10を参照して上述した構成を有する本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法について説明する。
図5は本例のレンズラック1における成形型41を第1の挟持部材3の上に設置した状態を示す斜視図であり、図7は本例のレンズラック1における成形型41を挟持した状態を示す側面図である。また、図9及び図10は本例のレンズラック1を用いたプラスチックレンズの製造方法の説明図である。
【0056】
まず、図5に示すように、レンズラック1の第1の挟持部材3に成形型41を設置する。図7に示すように、成形型41を第1の挟持部材3に設置すると、第1の挟持部材3における受け部21の凸面部21aが成形型41の下型モールド42bと当接する。そして、レバー4bに力を加えると、回動機構7を介して、第2の支持台4のアーム部4aが回動する。これにより、第2の支持台4に固定されている第2の挟持部材5が第1の挟持部材3に設置された成形型41に接近し、第2の挟持部材5の凹部5cが成形型41の上型モールド42aに当接する。このとき、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5は対向し、第2の挟持部材5は水平方向に対して所定の角度で傾斜する。そして、図9(A)に示すように、成形型41の上型モールド42aに第2の挟持部材5を当接させた後、プラスチックレンズ材料Mを注入部45に入れる。
【0057】
次に、図9(B)に示すように、注入部45に入ったプラスチックレンズ材料Mを注入口43aからキャビティ44内に吐出させ注入する。そして、図10(C)に示すように、プラスチックレンズ材料Mをキャビティ44内に充填させる。受け台9が所定の角度で傾斜しているため、プラスチックレンズ材料Mを充填するときに発生する気泡を注入口43aから排出することができる。
【0058】
その後、図6に示すように、レバー4bに力を加えていき、第2の挟持部材5によって成形型41の上型モールド42aを押圧させる。そして、図10(D)に示すように、第1の挟持部材3が下型モールド42bに押圧され、第1の挟持部材3の内部に配置されたコイルばね6が収縮し、成形型41が下がっていく。このとき、第2の挟持部材5は成形型41の上型モールド42aを押圧し、第1の挟持部材3はコイルばね6からの付勢力により成形型41の下型モールド42bを押圧する。そのため、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持することができる。
【0059】
図6に示すように、第2の支持台4のアーム部4aが第1の支持台2の短手方向Yと平行になるまでレバー4bに力を加え、保持部8を回動させて係止部8aをレバー4bに引っかける。そして、保持部8は、成形型41の上型モールド42a及び下型モールド42bが第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5に挟持された状態を保持する。その後、注入されたプラスチックレンズ材料Mを重合させる。その結果、成形型41が第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により挟持された状態となっているため、重合収縮が起こってもモールド42が追従することができ、プラスチックレンズの成形不良を少なくすることができる。
【0060】
その後、プラスチックレンズ材料Mの重合が完了したら、レバー4bから係止部8aをはずして挟持状態を解除する。さらにレバー4bを持ち上げて第2の挟持部材5を成形型41からはずし、成形型41をレンズラック1から取り外す。これにより、プラスチックレンズの製造が完了する。また、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5を複数設け、それぞれにコイルばね6が取り付けられている。この結果、複数のプラスチックレンズを一度に製造することができる。
【0061】
なお、本例では、成形型41を第1の挟持部材3に設置してからプラスチックレンズ材料Mを注入する工程を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、成形型41のキャビティ44内にプラスチックレンズ材料Mを注入してから成形型41を第1の挟持部材3に設置してもよい。
【0062】
本例のレンズラック1では、受け台9を12個とした例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受け台9を11個以下あるいは、13個以上としてもよい。また、本例のレンズラック1では、受け台9の数に合わせて12個の第2の挟持部材5が設けられているが、第2の挟持部材5の数は、受け台9の数に合わせて適宜変えてもよい。
【0063】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0064】
本例のレンズラック1では、第1の支持台2に接続される回動機構7を介して、第2の支持台4を回動させ、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持しているが、これに限定されるものではない。例えば、注入部が鉛直方向Zの上方に向いていればよく、第1の支持台2に対して第2の支持台4を鉛直方向Zに昇降させて成形型41を挟持してもよい。あるいは、第1の支持台2の側面部2a、2bの長手方向を鉛直方向Zに沿うように第1の支持台2を配置し、かつ、第1の挟持部材3と第2の挟持部材5とが対向するように第2の支持台4を配置する。そして、第1の支持台2に対して鉛直方向Zと直交する水平方向に第2の支持台4を移動させて、第1の挟持部材3及び第2の挟持部材5により成形型41を挟持してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・レンズラック、2・・・第1の支持台、3・・・第1の挟持部材、4・・・第2の支持台、4a・・・アーム部、4b・・・レバー、4c・・・支持棒、5・・・第2の挟持部材、5a・・・挟持部、5b・・・固定部、6・・・コイルばね(付勢部材)、7・・・回動機構、8・・・保持部、8a・・・係止部、8b・・・回動部、9・・・受け台、10・・・ストッパー、11・・・レール、12・・・接続部、13・・・支持部、21・・・受け部、22・・・支持部材、22a・・・収納部、22b・・・対向面、22c・・・溝部、22d・・・貫通孔、23・・・支柱、41・・・成形型、42,52・・・モールド、43,53・・・ガスケット、44,54・・・キャビティ、45・・・注入部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の挟持部材と、
前記複数の第1の挟持部材を有する第1の支持台と、
前記複数の第1の挟持部材に対向してプラスチックレンズを成形する複数の成形型を挟持する複数の第2の挟持部材と、
前記複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台と、
前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材の少なくとも一方に設けられ、前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材を前記成形型に向かって付勢する付勢部材と、
を備えたレンズラック。
【請求項2】
前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材は、水平方向に対して傾斜して前記第1の支持台又は前記第2の支持台に支持される
請求項1記載のレンズラック。
【請求項3】
前記第1の支持台及び前記第2の支持台には、前記第1の支持台と前記第2の支持台を相対的に回動可能に支持する回動部を有する
請求項1又は2記載のレンズラック。
【請求項4】
前記第1の支持台及び前記第2の支持台には、前記複数の第1の挟持部材及び前記複数の第2の挟持部材が前記成形型を挟持する状態を保持するための保持部を有する
請求項1〜3にいずれかに記載のレンズラック。
【請求項5】
複数の成形型を複数の第1の挟持部材に設置する工程と、
前記複数の成形型の注入部からプラスチックレンズ材料を吐出させ、前記複数の成形型に前記プラスチックレンズ材料を注入する工程と、
前記複数の成形型を複数の第2の挟持部材で挟持し、前記第1の挟持部材又は前記第2の挟持部材に設けられた付勢部材で前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材を前記複数の成形型に向かって付勢する工程と、
前記複数の成形型に注入した前記プラスチックレンズ材料を重合させる工程と、
を有するプラスチックレンズの製造方法。
【請求項1】
複数の第1の挟持部材と、
前記複数の第1の挟持部材を有する第1の支持台と、
前記複数の第1の挟持部材に対向してプラスチックレンズを成形する複数の成形型を挟持する複数の第2の挟持部材と、
前記複数の第2の挟持部材を有する第2の支持台と、
前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材の少なくとも一方に設けられ、前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材を前記成形型に向かって付勢する付勢部材と、
を備えたレンズラック。
【請求項2】
前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材は、水平方向に対して傾斜して前記第1の支持台又は前記第2の支持台に支持される
請求項1記載のレンズラック。
【請求項3】
前記第1の支持台及び前記第2の支持台には、前記第1の支持台と前記第2の支持台を相対的に回動可能に支持する回動部を有する
請求項1又は2記載のレンズラック。
【請求項4】
前記第1の支持台及び前記第2の支持台には、前記複数の第1の挟持部材及び前記複数の第2の挟持部材が前記成形型を挟持する状態を保持するための保持部を有する
請求項1〜3にいずれかに記載のレンズラック。
【請求項5】
複数の成形型を複数の第1の挟持部材に設置する工程と、
前記複数の成形型の注入部からプラスチックレンズ材料を吐出させ、前記複数の成形型に前記プラスチックレンズ材料を注入する工程と、
前記複数の成形型を複数の第2の挟持部材で挟持し、前記第1の挟持部材又は前記第2の挟持部材に設けられた付勢部材で前記複数の第1の挟持部材又は前記複数の第2の挟持部材を前記複数の成形型に向かって付勢する工程と、
前記複数の成形型に注入した前記プラスチックレンズ材料を重合させる工程と、
を有するプラスチックレンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−171112(P2012−171112A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32559(P2011−32559)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(509333807)ホヤ レンズ タイランド リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(509333807)ホヤ レンズ タイランド リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
【Fターム(参考)】
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