説明

レンズ成形用金型

【課題】多数個取りレンズ金型に備えられた1対の入れ子型の全てについて、第一面と第二面の光軸中心を高精度で合わせる。
【解決手段】固定型20は、光学機能転写面23aを形成する鏡面駒23と、鏡面駒23を備えた入れ子型22と、入れ子型22を複数個設けた型枠21とによって構成される。可動型30も同様な構成をとる。入れ子型22および32は、位置決め穴24および34と、位置決めピン25および35とを備える。固定型20と可動型30が閉じたときに、位置決め穴24に位置決めピン35が勘合し、位置決めピン25に位置決め穴34が勘合する。入れ子型22および32は、位置決め穴24および34と前記位置決めピン25および35を、それぞれ2つづつ備える。2つの位置決め穴はレンズ光軸に対して点対称位置に配置され、2つの位置決めピンは位置決め穴に対して90°ずらした位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズを成形するための金型に関し、特に、光学レンズを成形する際に、レンズの第1面の中心と第2面の中心とが位置ズレしないようにしたレンズ成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズを成形する金型は、下記特許文献1に開示されているような上型と下型によって構成されるものが一般的である。上型と下型は、同一軸上で対向する一対の型板にそれぞれ取り付けられ、型板の一方に設けられたガイド軸が、他方に設けられたガイド穴に嵌合して位置決めされ、一方が摺動可能となっている。例えば、上型を摺動可能とした場合、下型には胴型が取り付けられ、レンズ成形面が設けられた下型本体部分が胴型に設けられた円筒穴に嵌合する。上型は、上型本体部分が胴型の円筒穴に嵌合し、円筒穴の内部で、上型に設けられたレンズ成形面が下型に設けられたレンズ成形面と同一軸上で対向してレンズ成形空間を形成する。下型に設けられたレンズ成形面上に、予め加熱されたガラス素材が置かれ、上型と下型が閉じることによって前記レンズ成形空間が形成され、前記ガラス素材にレンズ形状が転写される。
【特許文献1】特開2005−206430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示された金型では、上型と下型は胴型によってそれぞれのレンズ成形面の光軸中心が一致するようになっている。しかし、上型および下型の位置精度は、一義的には前述のガイド軸とガイド穴によって決まる型板相互間の位置精度を受け、更に、上型および下型と胴型との間にはクリアランスが設けられているので、上型および下型がクリアランスの分だけ胴型に対して逆方向にズレる可能性がある。
【0004】
また、前記金型が複数個取りの場合は、上型および下型のそれぞれに複数個のレンズ成形面が設けられるので、レンズ成形面の金型上における位置精度も影響し、個々のレンズ成形面の光軸中心の最終的な位置精度は更に悪くなる。従って、全てのレンズ成形面の光軸中心を高精度で合わせることは、金型の各寸法を相当の精度で作らなければならず、多くの困難な問題がある。
【0005】
掛かる課題に対して、本発明は、上型および下型のそれぞれに複数個の入れ子型を取り付け、上下の入れ子型同士で位置決めを行うようにすることで、入れ子型の位置のバラツキをなくし、入れ子型に設けたレンズ成形面の光軸中心を高精度で合わせることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるレンズ成形用金型は、固定型と可動型のそれぞれに、レンズの光学機能面を転写する光学機能転写面を備えた入れ子型と、該入れ子型が位置調節可能に取り付けられる型枠とを備える。前記入れ子型は、前記固定型と可動型が閉じたときに、それぞれの入れ子型同士が互いに位置決めし合う位置決め手段として位置決め穴と位置決めピンとを設ける。前記固定型の位置決め穴に前記可動型の位置決めピンが勘合し、前記固定型の位置決めピンに前記可動型の位置決め穴が勘合する。
【0007】
前記入れ子型は、前記位置決め穴と前記位置決めピンを、それぞれ2つづつ備える。前記2つの位置決め穴はレンズ光軸に対して点対称位置に配置される。前記位置決めピンはレンズ光軸を中心にして前記位置決め穴から90°ずらした位置に配置、埋設する。前記位置決めピンは、前記型枠に設けられた固定穴とも勘合する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構造で、多数個取り金型に設けられた全てのレンズ成形面の光軸中心を高精度で合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態である光学レンズを成形する金型の構造について説明する。図1および図2に示すレンズ成形用金型10は、固定型20および可動型30より構成されている。固定型20は、型枠21と、型枠21に位置調節可能に取り付けられた入れ子型22、および入れ子型22に嵌め込まれた鏡面駒23とによって構成され、可動型30も同様の構成となっている。
【0010】
可動型30の型枠31にはガイド軸36が備えられている。固定型20の型枠21には、前記ガイド軸36と嵌合するガイド穴26が設けられ、前記ガイド軸36がガイド穴26を摺動して、固定型20と可動型30の開閉が行われる。
【0011】
型枠21には8個の扇形をした入れ子型22が円形に嵌めこまれている(図2および図3参照)。図示しないが、可動型30の型枠31にも同様に8個の入れ子型32が円形に嵌めこまれている。型枠21に嵌め込まれた8個の入れ子型と型枠31に嵌め込まれた8個の入れ子型は、それぞれが対になるように配置されている。
【0012】
図4に示すように、入れ子型22は、中央にレンズ成形スペース40を設けている。レンズ成形スペース40の中心部は鏡面駒23を嵌め込むための穴41が明けられ、その周囲にフランジ形成面42が設けられている。フランジ形成面42は可動型30の入れ子型32に設けられたフランジ形成面52(図3参照)とによってレンズのフランジ部を形成する。
【0013】
前記穴41には鏡面駒23が嵌めこまれ、鏡面駒23の先端は光学機能転写面23aが形成されている。光学機能転写面23aは、光学レンズとして、入射光、出射光を所定の角度に屈折させる機能を実現するための設計形状に従う形状に形成される範囲であり、成形時にレンズに転写するため鏡面になっている。鏡面駒23は、可動型30の入れ子型32の穴51に嵌めこまれた鏡面駒33との間の空間でレンズ形状を形成する。
【0014】
型枠21に設けられた固定穴27を貫通した位置決めピン25は、入れ子型22を貫通してその先端が入れ子型22から飛び出している。位置決めピン25と入れ子型22の穴は締り嵌めになっているので、位置決めピン25は入れ子型22にしっかり固定されている。位置決めピン25は2本設けられ、前記鏡面駒23の光軸を中心に180°対称な位置に配置されている。
【0015】
位置決めピン25から90°回転した位置に位置決め穴24が2つ設けられている。そして入れ子型32には、位置決めピン25の同軸上で対向する位置に位置決め穴34が設けられ、位置決め穴24の同軸上で対向する位置に位置決めピン35が設けられている。
【0016】
次に本発明による金型の作用について説明する。前述のように可動型30の型枠31に設けられたガイド軸36が、固定型20の型枠21に設けられたガイド穴26に嵌合しガイドされて摺動し、固定型20と可動型30の開閉が行われる。
【0017】
ここで、入れ子型22に配置された位置決めピン25と位置決め穴24は鏡面駒23の光軸を中心に90°間隔で交互に配置されており、位置決めピン25と位置決め穴24を通る円の中心に光軸が位置する。一方、入れ子型32に配置された位置決めピン35と位置決め穴34も鏡面駒33の光軸を中心に90°間隔で交互に配置されており、位置決めピン35と位置決め穴34を通る円の中心に光軸が位置する。
【0018】
型枠21と型枠31が合わさる直前で位置決めピン25が位置決め穴34に、位置決めピン35が位置決め穴24に嵌合する。位置決めピン25および35は入れ子型22および32に締り嵌めにて固定されているので、入れ子型22と32に設けられたそれぞれの位置決めピンおよび位置決め穴は一致することになり、その中心位置にある鏡面駒23の光学機能転写面23aの光軸中心と鏡面駒33の光学機能転写面33aの光軸中心とが完全に一致する。
【0019】
このように一対の入れ子型22と32の間で光軸合わせが行われる。この光軸合わせは、前記8組の入れ子型について、それぞれが独立して行われるので、個々の入れ子型の僅かなバラツキさえも問題にならない。
【0020】
前述の実施形態では多数個取り金型について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、1個取り金型に採用しても良い。
【0021】
なお、前述の実施形態では射出成形用金型について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、モールドプレス金型に採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による射出成形用レンズ金型の固定型と可動型の断面図である。
【図2】8個の入れ子型を嵌め込んだ型枠を示す斜視図である。
【図3】可動型用入れ子型を示す斜視図である。
【図4】固定型用入れ子型を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 金型
20 固定型
21,31 型枠
22,32 入れ子型
23,33 鏡面駒
23a,33a 光学機能転写面
24,34 位置決め穴
25,35 位置決めピン
26 ガイド穴
30 可動型
36 ガイド軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの光学機能面を転写する光学機能転写面を備えた入れ子型と、該入れ子型が位置調節可能に取り付けられる型枠とを、固定型と可動型のそれぞれに備えたレンズ成形用金型において、
前記入れ子型は、前記固定型と可動型が閉じたときに、それぞれの入れ子型同士が互いに位置決めし合う位置決め手段を設けたことを特徴とするレンズ成形用金型。
【請求項2】
前記位置決め手段は、互いに嵌合する位置決めピンと位置決め穴であることを特徴とする請求項1記載のレンズ成形用金型。
【請求項3】
前記位置決め穴は、レンズ光軸に対して180°対称な位置に配置された2つの位置決め穴であることを特徴とする請求項2記載のレンズ成形用金型。
【請求項4】
前記位置決めピンは、前記位置決め穴に対しレンズ光軸を中心にして90°回転した位置に埋設したことを特徴とする請求項3記載のレンズ成形用金型。
【請求項5】
前記位置決めピンは、前記型枠に設けられた固定穴と勘合することを特徴とする請求項2ないし4いずれか記載のレンズ成形用金型。
【請求項6】
前記型枠は前記入れ子型を複数個備え、一度に複数個のレンズを成形することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載のレンズ成形用金型。
【請求項7】
前記光学機能転写面は、前記入れ子型に取り付けられた鏡面駒に形成されたことを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載のレンズ成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−188815(P2008−188815A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23926(P2007−23926)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】