説明

レンズ装置、テレビカメラシステムおよびフォーカシングアシスト方法

【課題】フォーカシングにおける絞り開放・ズーム移動を素早く行えるようにする。
【解決手段】撮影者が、フォーカス操作と同時期にRET−SW35をオンにしてフォーカスアシスト要求を発生させると、ズームのテレ側移動および/または絞りの開放で、被写界深度が浅くなる。RET−SW35は、ズームデマンド20など、レンズ装置12の操作のしやすい場所に元々設けられているため、撮影者は、特別に設けられた操作手段を操作することなく、被写界深度を浅くし、マニュアルフォーカス操作を素早くかつ高精度で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ装置、テレビカメラシステムおよびフォーカシングアシスト方法に係り、特に、テレビカメラのフォーカスデマンドへのフォーカス指令に連動して被写界深度を浅くする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によると、カメラとVTR等を接続しないとき、VTRSWの操作で送り返し映像出力の切り替えを行う。
【0003】
特許文献2によると、従来監視カメラで焦点を調整する場合、周りの明るさに応じ、光量を減少させるためのNDフィルタ(Neutral Density Filter)をレンズ前に入れることにより、強制的に絞りを開放する。スイッチが調整モード側に切り替えられることにより、自動絞りレンズの絞りが強制的に開放となり、被写界深度が浅い状態で焦点を調整可能な状態になる。
【0004】
特許文献3によると、入射する光量に応じて、NDフィルタの光路中へ自動的に挿抜し、アイリス2の開度を所定量以上に保つことにより、光の回折による解像度の低下を防止する。
【0005】
特許文献4によると、焦点深度の深いワイド側の領域での撮影時には、アイリス連動モード選択スイッチをON状態にしておくことにより、マスターレンズ群、アイリスおよびNDフィルタが連動して駆動する。
【0006】
特許文献5によると、被写界深度を可変するためにズームレンズを移動する。
【0007】
特許文献6によると、受光センサーへの入射光量が所定値より大きいときは可変NDフィルタを透過率の低い方へ回転させ、反対に所定値より小さいときは可変NDフィルタを透過率の高い方へ回転させる。
【0008】
特許文献7によると、初期設定スイッチがONされると、レンズの絞り(アイリス)を開放にし、ズームをテレ端にしてフォーカスレンズを移動させてピント調整する。初期設定スイッチは、レンズ本体に設けてもよいし、テレビカメラ側に設けてもよい。また、初期設定スイッチは、遠隔操作のためのコントローラに設けてもよいし、フォーカスコントローラやズーム/エクステンダーコントローラ等の他のコントローラに初期設定スイッチを付加する態様も可能である。さらに、初期設定スイッチは、カメラマンが操作する操作手段として用意する態様以外に、レンズ装置の電源スイッチと連動させた構成とし、レンズ装置の電源投入時に初期設定スイッチが自動的にONとなるように構成することも可能である。
【0009】
特許文献8はNeutral Density(ND)フィルタの一例を示す。
【0010】
その他、本願に関係する技術として、特許文献9および10がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-168649号公報
【特許文献2】特開2003-234952号公報
【特許文献3】特開平10-210487号公報
【特許文献4】特開2006-195340号公報
【特許文献5】特開2004-170612号公報
【特許文献6】特開平9-145311号公報
【特許文献7】特開平11-127376号公報
【特許文献8】特開2004-333554号公報
【特許文献9】特開2004-280048号公報
【特許文献10】特許3941078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
通常、テレビカメラでは、録画やオンエア直前にフォーカシングを行い、ベストピントの状態の画像を使用する。この場合、ズームをテレに移動してフォーカシングを行い、必要とする画角に戻すことでピンボケを防いでいる。しかしながら、このズーミング操作に手間を要するため、時間のないときは、該操作は難しい。
【0013】
特許文献7のように、初期設定スイッチのオンに応じてレンズの絞り(アイリス)を開放にし、ズームをテレ端にすることも考えられるが、初期設定スイッチの場所によっては、素早い操作が難しい。
【0014】
さらに、特許文献7のように、初期設定スイッチを他のコントローラに初期設定スイッチを付加したり電源スイッチなどのスイッチと共用したりした場合、それらのスイッチの誤操作により意図しない状態になり、撮影に支障をきたすことがある。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、誤操作があっても撮影に支障をきたすことなく、フォーカシングにおける絞り開放・ズーム移動を素早く行える装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、フォーカスレンズ群、ズームレンズ群、および絞りを有するテレビカメラのレンズ装置であって、送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従ってズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、絞りを駆動して絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、ズーム駆動部によるズームレンズ群のテレ側への駆動および/または絞り駆動部による絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行する制御部と、を備えたレンズ装置を提供する。
【0017】
フォーカス駆動部は、変更処理の実行後、フォーカス調節操作の入力に応じてフォーカスレンズ群を移動する。
【0018】
制御部は、フォーカス調節操作の入力の完了から所定時間が経過した場合、ズーム駆動部によるズームレンズ群のテレ側への駆動および/または絞り駆動部による絞りの開放を終了し、元の状態に復帰させる。
【0019】
制御部は、ズームレンズ群および/または絞りを元の状態に復帰させることに伴うフォーカス位置のずれを、元の状態に対応した補正値で調節する。
【0020】
レンズ装置を通過する光量を任意の値に制限する遮光部材と、遮光部材の制限する光量を変化させる遮光駆動部と、変更処理の実行により絞りが開放された場合、絞りの開放に応じた被写体像の光量の増分を検出する光量検出部と、を備え、制御部は、遮光駆動部を制御し、光量検出部の検出した光量の増分を相殺するよう遮光部材の制限する光量を変化させる。
【0021】
光量検出部は、絞りの開口径の増大に応じた発光量を発光する発光部と、発光部からの発光を、遮光部材を介して受光し、発光部からの発光量の増分を検出する光量増分検出部と、を備える。
【0022】
好ましくは、変更処理の実行により絞りが開放された場合、絞りの開放の前後で、絞りの開口径に相当する絞り位置を検出する絞り位置検出部を備え、光量検出部は、絞り位置検出部の検出した絞りの開放の前後における絞り位置の変化に応じた被写体像の光量の増分を検出する。
【0023】
遮光部材は可変ND(Neutral Density)フィルタを含む。
【0024】
フォーカス駆動部は、変更処理の実行後、フォーカス調節操作の入力に応じてフォーカスレンズ群を移動し、制御部は、フォーカス調節操作の入力の完了から所定時間が経過した場合、遮光部材による光量の制限を終了し、元の状態に復帰させる。
【0025】
本発明は、上記のレンズ装置と、レンズ装置と接続し、レンズ装置を介して撮像面に結像された被写体像を映像信号に変換して出力するテレビカメラ本体と、現在放映ないし記録中の映像信号である送り返し映像信号を入力する送り返し映像信号入力部と、送り返し映像信号入力部の入力した送り返し映像信号またはテレビカメラ本体の出力した映像信号のうちいずれか1つを選択的に表示可能なモニタと、備え、モニタは、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、テレビカメラ本体の出力した映像信号を表示し、送り返し映像切替操作の入力のみがあった場合、送り返し映像信号を表示するテレビカメラシステム。
【0026】
本発明は、フォーカスレンズ群と、ズームレンズ群と、絞りと、送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従ってズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、絞りを駆動して絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、を備えたレンズ装置が、送り返し映像切替操作を入力するステップと、フォーカス調節操作を入力するステップと、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、ズーム駆動部によるズームレンズ群のテレ側への駆動および/または絞り駆動部による絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行するステップと、を実行するフォーカシングアシスト方法を提供する。
【0027】
本発明は、フォーカスレンズ群と、ズームレンズ群と、絞りと、送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従ってズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、絞りを駆動して絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、を備えたレンズ装置と、レンズ装置と接続し、レンズ装置を介して撮像面に結像された被写体像を映像信号に変換して出力するテレビカメラ本体と、現在放映ないし記録中の映像信号である送り返し映像信号を入力する送り返し映像信号入力部と、送り返し映像信号入力部の入力した送り返し映像信号またはテレビカメラ本体の出力した映像信号のうちいずれか1つを選択的に表示可能なモニタと、を備えたテレビカメラシステムが、送り返し映像切替操作を入力するステップと、フォーカス調節操作を入力するステップと、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、ズーム駆動部によるズームレンズ群のテレ側への駆動および/または絞り駆動部による絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行するステップと、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、テレビカメラ本体の出力した映像信号をモニタに表示し、送り返し映像切替操作の入力のみがあった場合、送り返し映像信号をモニタに表示するステップと、を実行するフォーカシングアシスト方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
この発明によると、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、ズーム駆動部によるズームレンズ群のテレ側への駆動および/または絞り駆動部による絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行する。撮影者は、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力を同時に行うことで、被写界深度を浅くし、正確かつ素早くフォーカシングできる。
【0029】
また、この発明によると、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、テレビカメラ本体の出力した映像信号をモニタに表示し、送り返し映像切替操作の入力のみがあった場合、送り返し映像信号をモニタに表示する。撮影者は、送り返し映像切替操作の入力とフォーカス調節操作の入力が同時に行うことで、被写界深度を浅くした上、モニタを見ながら正確かつ素早くフォーカシングできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】テレビカメラシステムの一実施形態を示した外観図
【図2】第2実施形態に係るレンズ装置およびテレビカメラシステムのブロック図
【図3】フォーカシングアシスト処理のフローチャート
【図4】第2実施形態に係るレンズ装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明が適用されるテレビカメラシステムの一実施形態を示した外観図である。同図に示すようにテレビカメラ10は、主に放送用または業務用に使用されるテレビカメラであり、レンズ装置12とカメラ本体14とで構成され、図示しないペデスタルドリー上に設置された雲台に支持されている。
【0032】
雲台には、左右2本のパン棒が延設されており、右側のパン棒のグリップ部には、フォーカスデマンド(フォーカスコントローラ)26が設置され、左側のパン棒のグリップ部にはズームデマンド(ズームコントローラ)20が設置されている。撮影時、カメラマンは、右手でフォーカスデマンド26を把持し、左手でズームデマンド20を把持している。
【0033】
レンズ装置12には、周辺機器または外部機器との接続をするために、RS−232C(その他の通信形式でもよい)インターフェース15が配置される。またレンズ装置12には、フォーカスデマンド26やズームデマンド20と接続をするためのRS−485インターフェース16が配置される。
【0034】
RS−232Cインターフェース15には、現在記録中または放映中の送り返し映像信号が、他のカメラ本体やテレビスタジオマスターシステムから入力される。
【0035】
フォーカスデマンド26には、回動可能なフォーカスノブ30が設けられており、マニュアルフォーカス(MF)によりフォーカス制御を行う際に、このフォーカスノブ30を回動操作すると、その回動位置に応じたフォーカス位置を目標位置としてフォーカスレンズ群64a(後述)の移動を指令するフォーカス制御信号がフォーカスデマンド26からレンズ装置12に与えられる。これにより、レンズ装置12のフォーカスレンズがフォーカス制御信号によって指令された目標位置に移動する。
【0036】
ズームデマンド20には、回動可能なサムリング34が設けられており、そのサムリング34を左右方向に回動操作すると、回動位置に応じたズーム速度を目標速度としてズームレンズ群64b(後述)の移動を指令するズーム制御信号がズームデマンド20からレンズ装置12に与えられる。これにより、レンズ装置12のズームレンズ群64bがズーム制御信号によって指令された目標速度で移動する。
【0037】
また、本図では省略するが、フォーカスデマンド26には、オートフォーカス(AF)に関する各種操作部材が設けられるとともに、AFによりピントを合わせる対象の被写体範囲(AFの対象範囲)を示すAF枠の制御(位置等の変更)を行うためのAF枠制御装置(AF枠自動追尾装置)が組み込まれ、そのAF枠制御装置の各種操作部材もフォーカスデマンド26に設けられている。
【0038】
カメラ本体14の上には、表示装置であるビューファインダー36が設置されている。このビューファインダー36には、本テレビカメラ10で撮影されている被写体の映像が表示されるため、カメラマンはその映像を見ながらフォーカスデマンド26やズームデマンド20を操作することによって所望の構図で被写体を撮影することができるようになっている。尚、以下において、撮影映像または撮影画像と称した場合には、テレビカメラ10で現在撮影されている映像または画像を示すものとする。
【0039】
また、ビューファインダー36に表示される撮影映像には、現在AF枠が設定されている位置、大きさ、形状(縦横比)を示すAF枠の画像が重畳されて表示されるようになっており、AFによりフォーカス制御を行う場合には撮影映像内のどの範囲の被写体にピントが合わせられるかを知ることができるようになっている。尚、MFとAFのフォーカス制御は、フォーカスデマンド26に設けられたフォーカスモードスイッチ等で切り換えられるようになっている。
【0040】
ズームデマンド20には、送り返しスイッチ(RET−SW)35が設けられている。RET−SW35は、他のカメラ本体あるいはテレビスタジオマスターシステムから、RS−232Cインターフェース15を経由して、カメラ本体14に送り返し映像信号が送り返されるようにするためのスイッチである。RET−SW35のオン(送り返し信号要求の発生)に応じ、オンエア信号は、カメラ本体14に送られ、ビューファインダー36に表示される。RET−SW35がオフのときは、映像信号処理回路71から出力された映像が、ビューファインダー36に表示される。RET−SW35は、ロック式(一旦押下すると再び押下するまでオン状態が継続)でもノンロック式(押下が継続する限りでオン状態が継続)でもよい。
【0041】
図2はテレビカメラ10のブロック図である。
【0042】
レンズ装置12は、カメラ本体14のレンズマウントに装着される撮影レンズ64を備えており、その撮影レンズ64により、被写体がカメラ本体14の撮像素子70の撮像面に結像されるようになっている。撮影レンズ64には、その構成要素としてフォーカスレンズ群64a、ズームレンズ群64b、可変ND(Neutral Density)フィルタ64c、絞り64d、マスターレンズ群64eなどの撮影条件を調整するための可動部が設けられており、それらの可動部は、モータ(サーボ機構)などの駆動系によって電動駆動されるようになっている。例えば、フォーカスレンズ群64aやズームレンズ群64bは光軸Lに沿った方向に移動し、フォーカスレンズ群64aが移動することによってフォーカス(被写体距離)調整が行われ、またズームレンズ群64bが移動することによって焦点距離(ズーム倍率)調整が行われる。
【0043】
可変NDフィルタ64cは、連続的あるいは段階的な透過率を複数有しており、印加する電圧を変化させるか、あるいは機械的に回転させることで、それらの中から任意の透過率を選択し、撮像素子70へ結像する被写体像の受光量を調節する。
【0044】
尚、AFに関するシステムにおいては、少なくともフォーカスレンズ群64aが電動で駆動できればよく、その他の可動部は手動でのみ駆動可能であってもよい。
【0045】
また、レンズ装置12には、レンズCPU65やAFユニット66などが搭載されている。レンズCPUはレンズ装置12全体を統括制御するものである。また、AFユニット66は、AFによるフォーカス制御(自動ピント調整)を行うために必要な情報を取得するための処理部であり、AF処理部27やAF用撮像回路等(図示を省略)から構成されている。
【0046】
また、レンズ装置12には、後述のフォーカシングアシスト処理による絞り64dの駆動に伴う撮像素子70の受光量の増大を抑えるため、可変NDフィルタ64cの濃度(減光率)調節により該受光量を一定に保つための光量調整部50が備えられている。
【0047】
可変NDフィルタ64cの側部には、絞り64dの前段および後段の光路から分岐した被写体光を遮る遮光板60a・遮光板60bがそれぞれ設けられている。LED61と受光素子62は、遮光板60a・遮光板60bにより、撮影レンズ64の光路から隔てられて設置されている。そのため、受光素子62は、その光路から分岐した被写体光を受光せずLED61の光のみを受光する。LED61の発光量は定常である。
【0048】
レンズCPU65は、絞り64dの開口径の増大と連動し、それに応じて増大する露光量の増分ΔEVを相殺する可変NDフィルタ64cの目標濃度(減光率)を決定する。レンズCPU65は、該決定された濃度に対応するデジタル信号をD/A変換器63に入力する。このデジタル信号はD/A変換器63で電圧信号に変換され、可変NDフィルタ64cの駆動系に印加される。これにより可変NDフィルタ64cの濃度が調節される。
【0049】
受光素子62がLED61から受光した光の受光量に対応する電圧信号は、A/D変換器69によりデジタル信号化されてレンズCPU65に入力される。レンズCPU65は、該受光量から、現在の可変NDフィルタ64cの濃度(減光率)を算出する。これは、該受光量をLED61の定常発光量で除算することで算出できる。レンズCPU65は、現在の可変NDフィルタ64cの濃度と目標濃度とを比較し、それらの差異が解消するよう目標濃度(減光率)を再び決定し、該決定された濃度に対応する制御信号をD/A変換器63を経由して可変NDフィルタ64cの駆動系に印加する。この駆動系が、この制御信号に対応した透過率をさらに選択することで、可変NDフィルタ64cの濃度が調節され、撮像素子70の受光量が、絞り64dの開放の前後で保たれるように調節される。
【0050】
カメラ本体14にはレンズ装置12とケーブルで接続するためのインターフェース(I/F)52が設けられており、SCI68・73を通じてレンズCPU65と本体CPU72の間のシリアル通信により各種信号のやり取りが行えるようになっている。
【0051】
これにより、カメラ本体14の本体CPU72から送出された各種制御信号がレンズCPU65に与えられ、その制御信号に従った処理がレンズCPUで実行されるようになっている。例えば、AFによるフォーカス制御(AFモード)の指示が与えられた場合には、不図示のAFユニットから得られる焦点評価値に基づいてAFによるフォーカス制御が行われ、MFによるフォーカス制御(MFモード)の指示が与えられた場合には、不図示のフォーカスノブの操作に基づいて与えられるフォーカス位置指令信号に従ってMFによるフォーカス制御が行われるようになっている。
【0052】
映像信号処理回路71は、撮像素子70から出力された映像信号をデジタル処理し、HDTV信号に変換して、ビューファインダー36に出力する。
【0053】
SCI68・73は、レンズ装置12とカメラ本体14との間でシリアル通信を行うためのインターフェース回路である。この通信では、各種指令、上記AF枠情報等が送受信される。
【0054】
図3は、テレビカメラシステムが実行するフォーカシングアシスト処理のフローチャートを示す。この処理は、映像の記録やオンエアの前に行われる。
【0055】
S1では、図示しない操作手段への操作に従って出力されるコントロール信号に基づいて、フォーカスレンズ群64a以外の可動部、例えばズームレンズ群64bを、操作者の所定の操作に従って電動駆動する。
【0056】
S2では、レンズCPU65は、フォーカスデマンド26のフォーカスノブ30へのマニュアルフォーカス(MF)操作があったか否かを判断する。Yesの場合はS3、Noの場合はS10に進む。
【0057】
S3では、レンズCPU65は、MF操作に応じ、フォーカスレンズ群64aを駆動し、ピント合わせを開始する。
【0058】
S4では、レンズCPU65は、MF操作があったことに加えてRET−SW35がオンになったか否か(フォーカシングアシスト要求があったか否か)を判断する。Yesの場合はS5、Noの場合はS11に進む。
【0059】
フォーカシングアシスト要求は、フォーカス操作とRET−SW35のオンがどちらも行われることを条件として発生し、S5に進む。S5では、レンズCPU65は、ズームレンズ群64bがテレ端に移動するよう駆動系に指示する。
【0060】
S6では、レンズCPU65は、絞り64dが開放になるよう駆動系に指示する。S5およびS6は、マニュアルフォーカシングを素早く高精度にするために、被写界深度を浅くする処理である。そのためには、S5およびS6のうち少なくとも一方が実行されれば足りるが、好ましくは、図示の通り双方が実行される。
【0061】
S7では、レンズCPU65は、光量調整部50を介し、絞り64dの開放の前後で光量が変化しないよう、可変NDフィルタ64cの濃度を選択し、受光量を調節する。
【0062】
S8では、レンズCPU65は、図示しないRAMに記憶される、アシストフラグをオンに設定する。さらにレンズCPU65は、アシストフラグのオンに応じ、本体CPU72は、ビューファインダー36へ出力する映像信号を、I/F52経由の送り返し映像信号から、映像信号処理回路71経由の映像信号に切り替える。ただし、アシストフラグのオンの際に、既にビューファインダー36へ映像信号処理回路71経由の映像信号が出力されている場合、この切り替えは不要であり、映像信号処理回路71経由の映像信号の出力を継続する。
【0063】
S9では、レンズCPU65は、不図示のタイマーによる計時を開始する。その後、S1に戻る。
【0064】
S10では、S9による計時の開始から所定の時間、例えば0.3秒が経過したか否かを判断する。Yesの場合はS11に進み、Noの場合はS9に戻る。
【0065】
S11では、レンズCPU65は、アシストフラグがオンであるか否かを判断する。Yesの場合はS12に進み、Noの場合はS9に戻る。
【0066】
S12では、レンズCPU65は、ズームレンズ群64bがRET−SW35押下前の位置に戻るよう駆動系に指示する。この指示に応じ、ズームレンズ群64bが駆動され、画角が元に戻る。
【0067】
ズームレンズ群64bの位置の復帰に伴うフォーカス位置のずれは、自動的に補正されてもよい。例えば、ズームレンズ群64bの元の位置からテレ端までの移動量に対応したフォーカスレンズ群64aの位置補正量を予めレンズ装置12のEEPROMなどに記憶しておき、レンズCPU65は、復帰後のズームレンズ群64bの元の位置に対応した位置補正量だけフォーカスレンズ群64aを駆動することで、フォーカス位置のずれを補正する。
【0068】
S13では、レンズCPU65は、絞り64dがRET−SW35押下前の開口径に戻るよう駆動系に指示する。
【0069】
この絞り64dの開口径の復帰に伴うフォーカス位置のずれは、自動的に補正されてもよい。例えば、絞り64dの元の開口径と開放時の開口径の差に対応したフォーカスレンズ群64aの位置補正量を予めレンズ装置12のEEPROMなどに記憶しておき、レンズCPU65は、復帰後の絞り64dの元の開口径に対応した位置補正量だけフォーカスレンズ群64aを駆動することで、フォーカス位置のずれを補正する。
【0070】
S14では、レンズCPU65は、可変NDフィルタ64cがRET−SW35押下前の濃度に戻るよう駆動系に指示する。
【0071】
S15では、レンズCPU65は、アシストフラグをオフにする。そして、S9に戻る。
【0072】
尚、図示は省略するが、MF操作がないまま、単にRET−SW35がオンになった場合(送り返し信号要求が発生した場合)、レンズCPU65は、I/F52経由で、送り返し信号要求の発生を通知するととともに、送り返し映像信号を本体CPU72に送る。本体CPU72は、該要求発生の通知を受信すると、ビューファインダー36へ出力する映像信号を、映像信号処理回路71経由の映像信号から、I/F52経由の送り返し映像信号に切り替える。
【0073】
以上の処理により、撮影者が、フォーカス操作と同時にRET−SW35をオンにしてフォーカスアシスト要求を発生させると、ズームのテレ側移動および/または絞りの開放で、被写界深度が浅くなる。RET−SW35は、ズームデマンド20など、レンズ装置12の操作のしやすい場所に元々設けられているため、撮影者は、特別に設けられた操作手段を操作することなく、被写界深度を浅くし、マニュアルフォーカス操作を素早くかつ高精度で行うことができる。
【0074】
また、フォーカスアシスト要求の発生によって、絞り64dが開放されても、可変NDフィルタ64cの濃度調整により、該開放による露光量の増大が防止され、ビューファインダー36の映像を見てフォーカシング操作する撮影者に悪影響を与えない。
【0075】
さらに、誤ってフォーカスアシスト要求を発生させても、MF操作を行わず所定時間が経過すれば、元の被写界深度に戻るため、撮影の支障は小さい。あるいは、フォーカスアシスト要求を発生させようとして誤って送り返し信号要求が発生しても、ビューファインダー36にオンエア信号が表示されるだけで、撮影の支障は小さい。
【0076】
また、MF操作だけがされた場合(S2でYesかつS4でNo)は、ズームレンズ群64bや絞り64dと連動しないフォーカス調整が可能である。
【0077】
<第2実施形態>
図4は本発明の第2実施形態に係るテレビカメラシステムを構成するレンズ装置120の要部を示す。図示は省略するが、レンズ装置120は、レンズ装置12と同様、SCI68を介して、図1と同様のカメラ本体14と接続するとともに、RS−485インターフェース16を介して、フォーカスデマンド26やズームデマンド20と接続し、テレビカメラシステムを構成する。
【0078】
レンズ装置120は、第1実施形態の光量調整部50ではなく、光量調整部500を有している。それ以外の構成は第1実施形態と同様である。光量調整部500に備えられるブロックのうち、第1実施形態と同一のものには、同一の符号を付している。
【0079】
光量調整部500に備えられるGCA(ゲインコントロールアンプ)部67は、上述のフォーカシングアシスト処理の実行時、受光素子62の出力(DC信号)を所定のレベルに保つよう、可変NDフィルタ64cの透過率の選択を制御する。
【0080】
一方、レンズCPU65は、絞り64dの開放に連動して、LED61の発光量を制御する。すなわち、絞り64dの開口径が増大するにつれてLED61の発光量を増大させるよう制御する。GCA部67は、受光素子62の受光した受光量の増大分に応じ、可変NDフィルタ64cに透過率を減少させる(減光率を増加させる)電圧信号を印加する。これにより、絞り64dの開口径の増大による露光量の増分ΔEVが相殺される。このように、本テレビカメラシステムでも、図4のフォーカシングアシスト処理を実施することができ、フォーカス時の絞り開放により撮像素子70への受光量が増加することなく一定に保たれる。
【0081】
あるいは、レンズCPU65は、ホール素子など公知の絞り位置検出手段にて絞り64dの開放前後の絞り位置(F値)を検出し、その絞り位置の変化に対応する露光量の増分ΔEVを相殺するよう可変NDフィルタ64cの透過率の選択を制御してもよい。
【符号の説明】
【0082】
12:レンズ装置、14:カメラ本体、26:フォーカスデマンド、35:RET−SW、36:ビューファインダー、64:撮影レンズ、50:光量調整部、65:レンズCPU、72:本体CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズ群、ズームレンズ群、および絞りを有するテレビカメラのレンズ装置であって、
送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、
フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、
ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、
前記フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、
前記ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従って前記ズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、
前記絞りを駆動して前記絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、
前記送り返し映像切替操作の入力と前記フォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、前記ズーム駆動部による前記ズームレンズ群のテレ側への駆動および/または前記絞り駆動部による前記絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行する制御部と、
を備えたレンズ装置。
【請求項2】
前記フォーカス駆動部は、前記変更処理の実行後、前記フォーカス調節操作の入力に応じて前記フォーカスレンズ群を移動する請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フォーカス調節操作の入力の完了から所定時間が経過した場合、前記ズーム駆動部による前記ズームレンズ群のテレ側への駆動および/または前記絞り駆動部による前記絞りの開放を終了し、元の状態に復帰させる請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ズームレンズ群および/または前記絞りを元の状態に復帰させることに伴うフォーカス位置のずれを、前記元の状態に対応した補正値で調節する請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記レンズ装置を通過する光量を任意の値に制限する遮光部材と、
前記遮光部材の制限する光量を変化させる遮光駆動部と、
前記変更処理の実行により前記絞りが開放された場合、前記絞りの開放に応じた被写体像の光量の増分を検出する光量検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記遮光駆動部を制御し、前記光量検出部の検出した光量の増分を相殺するよう前記遮光部材の制限する光量を変化させる請求項1〜4のいずれかに記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記光量検出部は、
前記絞りの開口径の増大に応じた発光量を発光する発光部と、
前記発光部からの発光を、前記遮光部材を介して受光し、前記発光部からの発光量の増分を検出する光量増分検出部と、
を備える請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記変更処理の実行により前記絞りが開放された場合、前記絞りの開放の前後で、前記絞りの開口径に相当する絞り位置を検出する絞り位置検出部を備え、
前記光量検出部は、前記絞り位置検出部の検出した前記絞りの開放の前後における絞り位置の変化に応じた被写体像の光量の増分を検出する請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記遮光部材は可変ND(Neutral Density)フィルタを含む請求項5〜7のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記フォーカス駆動部は、前記変更処理の実行後、前記フォーカス調節操作の入力に応じて前記フォーカスレンズ群を移動し、
前記制御部は、前記フォーカス調節操作の入力の完了から所定時間が経過した場合、前記遮光部材による光量の制限を終了し、元の状態に復帰させる請求項5〜8のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置と接続し、前記レンズ装置を介して撮像面に結像された被写体像を映像信号に変換して出力するテレビカメラ本体と、
現在放映ないし記録中の映像信号である送り返し映像信号を入力する送り返し映像信号入力部と、
前記送り返し映像信号入力部の入力した送り返し映像信号または前記テレビカメラ本体の出力した映像信号のうちいずれか1つを選択的に表示可能なモニタと、
を備え、
前記モニタは、前記送り返し映像切替操作の入力と前記フォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、前記テレビカメラ本体の出力した映像信号を表示し、前記送り返し映像切替操作の入力のみがあった場合、前記送り返し映像信号を表示するテレビカメラシステム。
【請求項11】
フォーカスレンズ群と、ズームレンズ群と、絞りと、送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、前記フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、前記ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従って前記ズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、前記絞りを駆動して前記絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、を備えたレンズ装置が、
送り返し映像切替操作を入力するステップと、
フォーカス調節操作を入力するステップと、
前記送り返し映像切替操作の入力と前記フォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、前記ズーム駆動部による前記ズームレンズ群のテレ側への駆動および/または前記絞り駆動部による前記絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行するステップと、
を実行するフォーカシングアシスト方法。
【請求項12】
フォーカスレンズ群と、ズームレンズ群と、絞りと、送り返し映像切替操作を入力する送り返し操作入力部と、フォーカス調節操作を入力するフォーカス操作入力部と、ズーム調節操作を入力するズーム操作入力部と、前記フォーカス操作入力部に入力されたフォーカス調節操作に従ってフォーカスレンズ群を移動可能なフォーカス駆動部と、前記ズーム操作入力部に入力されたズーム調節操作に従って前記ズームレンズ群を移動可能なズーム駆動部と、前記絞りを駆動して前記絞りの開口径を可変させる絞り駆動部と、を備えたレンズ装置と、前記レンズ装置と接続し、前記レンズ装置を介して撮像面に結像された被写体像を映像信号に変換して出力するテレビカメラ本体と、現在放映ないし記録中の映像信号である送り返し映像信号を入力する送り返し映像信号入力部と、前記送り返し映像信号入力部の入力した送り返し映像信号または前記テレビカメラ本体の出力した映像信号のうちいずれか1つを選択的に表示可能なモニタと、を備えたテレビカメラシステムが、
送り返し映像切替操作を入力するステップと、
フォーカス調節操作を入力するステップと、
前記送り返し映像切替操作の入力と前記フォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、前記ズーム駆動部による前記ズームレンズ群のテレ側への駆動および/または前記絞り駆動部による前記絞りの開放を含む浅い被写界深度への変更処理を実行するステップと、
前記送り返し映像切替操作の入力と前記フォーカス調節操作の入力が同時にあった場合、前記テレビカメラ本体の出力した映像信号を前記モニタに表示し、前記送り返し映像切替操作の入力のみがあった場合、前記送り返し映像信号を前記モニタに表示するステップと、
を実行するフォーカシングアシスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173328(P2012−173328A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32214(P2011−32214)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】