説明

レンズ鏡筒

【課題】光軸方向に移動可能な複数の光学系を、駆動に伴う振動を抑制した状態で保持し得るレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】
第1光学系(48)及び第2光学系(49)を含む撮影光学系(44)と、筐体(94)と、ガイドバー(100)と、前記ガイドバーにおける第1の部分(101)を移動可能な第1挿通部(72)を有し、前記第1光学系を保持する第1保持枠(71)と、前記ガイドバーの第2の部分(103)を移動可能な第2挿通部(82)を有し、前記第2光学系を保持する第2保持枠(81)と、前記ガイドバーにおける前記第1の部分と前記第2の部分との間に接続されており、前記ガイドバーを前記筐体に対して固定支持する中間固定支持部(95)と、を有するレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒の中には、モータ等によって独立に駆動される複数のレンズ群を有するものが存在する。例えば、最も対物側にあるレンズ群を固定し、中間にあるレンズ群を移動させる内焦式のオートフォーカス機構を採用するレンズ鏡筒は、焦点距離を一定に保ちながらオートフォーカスを行うために、2以上のレンズ群を独立に駆動することが求められる。また、レンズ群を光軸方向に移動させる機構としては、カム機構や、送りねじと回転型モータを用いるものや、ボイスコイルモータのような電磁アクチュエータを用いるものが知られている。
【0003】
ここで、レンズ群を駆動する場合、アクチュエータによる駆動に伴い振動が発生する。アクチュエータが発生する振動の周波数が、レンズ群を支持する構造材の固有振動数と一致する場合、構造材の振動が大きくなり、騒音等の問題が発生することが指摘されている。アクチュエータの駆動に伴う振動に起因する騒音を抑制するための技術として、ヤング率の異なる2種類の樹脂で鏡胴を構成する技術が提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−311263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レンズ群をガイドバーによって支持する構造を有するレンズ鏡筒では、アクチュエータの駆動に伴う振動は、鏡胴の振動だけではなく、ガイドバーの振動を励起してしまう場合がある。例えば、2以上のレンズ群を独立に駆動するレンズ鏡筒では、2以上のレンズ群を共通のガイドバーで支持することによって、互いのレンズ群の光軸を、高精度かつ容易に一致させることができる。しかしながら、共通のガイドバーは、軸方向の長さが長くなり、かつ固有振動数が小さくなる傾向にあり、振動を励起されやすい。
【0006】
本発明に係るレンズ鏡筒は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光軸方向に移動可能な複数の光学系を、駆動に伴う振動を抑制した状態で保持し得るレンズ鏡筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ鏡筒(40)は、
光軸方向に移動可能な第1光学系(48)及び第2光学系(49)を含み、撮影光を透過させる撮影光学系(44)と、
前記撮影光学系を収納する筐体(94)と、
前記光軸方向に延在し、両端部が前記筐体に固定されるガイドバー(100)と、
前記ガイドバーに挿通され、前記ガイドバーにおける第1の部分(101)を移動可能な第1挿通部(72)を有し、前記第1光学系を保持する第1保持枠(71)と、
前記ガイドバーに挿通され、前記ガイドバーにおける前記第1の部分とは異なる第2の部分(103)を移動可能な第2挿通部(82)を有し、前記第2光学系を保持する第2保持枠(81)と、
前記ガイドバーにおける前記第1の部分と前記第2の部分との間に接続されており、前記ガイドバーを前記筐体に対して固定支持する中間固定支持部(95)と、
前記第1光学系を前記光軸方向に移動させる第1アクチュエータ(76,77)と、
前記第2光学系を前記光軸方向に移動させる第2アクチュエータ(86)と、
前記第1アクチュエータを、第1駆動周波数(Fpwm_1)によって駆動する第1モータドライバ(52)と、
前記第2アクチュエータを、第2駆動周波数(Fpwm_2)によって駆動する第2モータドライバ(62)と、を有し、
前記ガイドバーのうち一方の端部から前記中間固定支持部までの部分であって前記第1の部分を含む第1振動部(102)の1次固有振動数と、前記ガイドバーのうち他方の端部から前記中間固定支持部までの部分であって前記第2の部分を含む第2振動部(104)の1次固有振動数が、
前記第1駆動周波数、前記第2駆動周波数、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数の差分、又は前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数の加算周波数のいずれとも異なる。
【0008】
また、例えば、本発明に係るレンズ鏡筒において、前記第1駆動周波数と、前記第2駆動周波数とは異なる周波数であっても良い。
【0009】
また、例えば、本発明に係るレンズ鏡筒において、前記第1駆動周波数と、前記第2駆動周波数とは略同一の周波数であっても良く、
前記第1モータドライバと前記第2モータドライバは、互いに異なる位相で前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータを駆動しても良い。
【0010】
また、例えば、前記中間固定支持部は、前記第1保持枠に接触して前記第1保持枠の移動を制限する第1制限部材(95a)及び前記第2保持枠に接触して前記第2保持枠の移動を制限する第2制限部材(95b)のうち少なくとも一方を有しても良い。
【0011】
また、例えば、前記第1アクチュエータは、前記第1保持枠に固定される第1コイル(78)を有する電磁アクチュエータであっても良く、
前記第2アクチュエータは、前記第2保持枠に固定される第2コイル(88)を有する電磁アクチュエータであっても良く、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータは、磁気回路(91,91a,91b)を共用しても良い。
【0012】
また、例えば、前記第1光学系は、前記撮影光学系の焦点調整を行う焦点調整部であっても良く、
前記第2光学系は、前記撮影光学系の変倍を目的とした変倍部であっても良い。
【0013】
また、例えば、前記第2モータドライバは、前記第1光学系の移動に伴う画角変動を抑制するように、前記第1モータドライバと同期して前記第2アクチュエータを駆動しても良い。
【0014】
また、例えば、前記第1振動部の1次固有振動数は、前記第2振動部の1次固有振動数より大きく、
前記第1駆動周波数は、前記第2駆動周波数より大きくても良い。
【0015】
また、例えば、前記第1アクチュエータによる前記第1光学系の駆動振幅(a1)は、前記第2アクチュエータによる前記第2光学系の駆動振幅(a2)より大きく、
前記第1振動部の長さ(L1)は、前記第2振動部の長さ(L2)より長くても良い。
【0016】
また、例えば、前記第1電磁アクチュエータは、前記磁気回路を形成するために用いられる第1永久磁石(80)を含んでも良く、
前記第2電磁アクチュエータは、前記磁気回路を形成するために用いられ前記第1永久磁石とは磁極の向きが逆方向である第2永久磁石(90)を含んでも良く、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石とは、前記光軸方向で見て、前記中間固定支持部を間に挟んで配置されていても良い。
【0017】
また、例えば、本発明に係るレンズ鏡筒において、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石の間には、前記磁気回路を形成するために用いられ、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石とは磁極の向きが略直交する第3永久磁石(93)が設けられていても良い。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を含むカメラシステムの概略ブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すレンズ鏡筒に含まれる第4レンズ群の周辺を表す斜視図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る第4レンズ群及び第5レンズ群の駆動機構および支持構造を表す概念図である。
【図4】図4は、焦点調整時における第4レンズ群及び第5レンズ群の位置変化を説明したグラフである。
【図5】図5は、第1モータドライバ及び第2モータドライバによるPWM駆動波形を説明した概念図である。
【図6】図6は、図3に示す第1電磁アクチュエータ及び第2電磁アクチュエータの磁気回路の構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。
【図7】図7は、第1変形例に係る磁気回路の構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。
【図8】図8は、第2変形例に係る磁気回路の構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒40を含むカメラシステムの概略ブロック図である。図1では、カメラボディ20に対して着脱可能に接続され、カメラシステムの一部として用いられるレンズ鏡筒40を例に説明を行うが、本発明に係るレンズ鏡筒としては、これに限定されない。また、レンズ鏡筒40を取り付けるカメラボディ20の構成は特に限定されず、レンズ鏡筒40とカメラボディ20は一体であっても良い。また、レンズ鏡筒40は、スチールカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話などの撮像装置に適用されてもよく、望遠鏡、双眼鏡などに適用されても良い。
【0021】
レンズ鏡筒40は、撮影光を透過させてカメラボディ20へ導く撮影光学系44を有する。これに対して、カメラボディ20は、撮影光学系44を透過した撮影光を受光し、電気的な画像信号に変換する撮像素子21を有する。撮像素子21としては、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いることができるが、特に限定されない。
【0022】
カメラボディ20は、撮像素子21の他に、フレームレート制御器22、AFE回路23、ボディ側A/D変換器24、画像処理演算部25等を有する。フレームレート制御器22は、撮像素子21による画像信号取得のタイミングを制御する。フレームレート制御器22は、例えば1/30〜1/60secの周期(フレームレート30〜60fps)で画像信号を取得するように、撮像素子21の信号取得タイミングを制御することができる。
【0023】
撮像素子21で取得された画像信号は、AFE回路23及びボディ側A/D変換器24を経て画像処理演算部25に入力される。AFE回路23は、撮像素子21で得られた画像信号に対するノイズ除去や増幅等を行う。ボディ側A/D変換器24は、アナログ信号である画像信号を、デジタル信号である画像データに変換する。
【0024】
画像処理演算部25は、画像データに対して各種の演算処理を行う。また、カメラボディ20には、バッファメモリ28,29、画像生成部30、記憶部31及び表示部32が備えられており、画像処理演算部25に入力された画像データは、これらの部分に出力される。バッファメモリ28,29は、画像データを一時的に格納し、所定のタイミングで画像生成部30に出力する。画像生成部30は、フレームレートに同期した動画像を生成し、表示部32及び記憶部31に出力する。
【0025】
記憶部31は、メモリカードのような不揮発性メモリ等によって構成され、画像生成部30によって生成された動画像を記憶する。なお、画像生成部30で生成され、記憶部31によって記憶される画像は、動画像に限定されず、静止画像であっても良い。表示部32は、液晶ディスプレイ等によって構成され、画像生成部30によって生成された動画像等を表示することができる。
【0026】
画像処理演算部25は、評価値演算部26及び駆動形態演算部27を有する。評価値演算部26及び駆動形態演算部27は、レンズ鏡筒40で行われるオートフォーカス動作に関する演算を行う。後述するように、レンズ鏡筒40では、撮影画像のコントラスト情報から、焦点調整部である第4レンズ群48の合焦位置を決定する山登りAFを行う。評価値演算部26及び駆動形態演算部27は、山登りAFに必要な情報を、画像データから算出する。
【0027】
評価値演算部26は、画像データのコントラストを調査し、合焦させるべき領域のコントラスト状態を算出する。算出された画像データのコントラスト状態は、駆動形態演算部27に出力される。駆動形態演算部27は、画像データのコントラスト状態等から、山登りAFにおけるウォブリング(振動的な駆動)に必要な情報を算出する。駆動形態演算部27で算出される情報には、例えば焦点調整部が、合焦位置に対して対物側又は像面側のいずれの方向に、どの程度ずれているのかという情報が含まれる。画像処理演算部25で算出された山登りAFに関する情報は、レンズ鏡筒40のレンズ演算部41に出力される。
【0028】
レンズ鏡筒40とカメラボディ20は、双方のマウント部を接合することによって締結される。また、マウント部には、レンズ鏡筒40とカメラボディ20の間の電力供給やデータ通信を可能とする電気接点部33が設けられている。
【0029】
レンズ鏡筒40の撮影光学系44は、第1レンズ群45、第2レンズ群46、第3レンズ群47、第4レンズ群48及び第5レンズ群49を含む。撮影光学系44を構成する各レンズ群45〜49は、外形状が筒状である筐体94(図3参照)の内部に収納されている。
【0030】
第1レンズ群45は、5つのレンズ群のなかで最も対物側に配置されており、凸のパワーを有する。第1レンズ群45は、レンズ鏡筒40の筐体94に固定された固定群であり、焦点調整、変倍動作(ズーミング)又は手振れ補正のいずれの動作時にも移動しない。
【0031】
第2レンズ群46は、対物側から数えて2番目の位置に配置されており、凹のパワーを有する。第2レンズ群46は、レンズ鏡筒40の筐体94に対して相対移動可能に取り付けられた移動群であり、変倍動作時において光軸Z方向に移動する。第2レンズ群46は、ワイド時には対物側に、テレ時には像面側に移動する。なお、変倍動作時には、第2レンズ群46の他に、後述する第4レンズ群48及び第5レンズ群49も移動する。すなわち、レンズ鏡筒40は、凹のパワーを有する第2レンズ群46及び第4レンズ群48と、凸のパワーを有する第5レンズ群49を用いて、変倍動作を行う。
【0032】
第2レンズ群46は、変倍動作時において、不図示の駆動機構によって駆動される。第2レンズ群46を駆動する駆動機構としては、特に限定されないが、例えばステッピングモータと送りネジを組み合わせた駆動機構を採用することができる。なお、第2レンズ群46については、第4及び第5レンズ群48,49のようなウォブリングは行われない。
【0033】
第3レンズ群47は、対物側から数えて3番目の位置に配置されており、凸のパワーを有する。第3レンズ群47は、像振れ補正レンズ群であり、手振れ補正時において、光軸Zに対して略直交する方向へ移動する。第3レンズ群47は、焦点調整及び変倍には影響しない。
【0034】
第3レンズ群47は、不図示の駆動機構によって駆動される。第3レンズ群47を駆動する駆動機構としては、VCM(ボイスコイルモータ)等を使用することができる。なお、第3レンズ群47と第4レンズ群48の間には、光量及び撮影深度の調整を行う絞り(不図示)が設置されている。
【0035】
第4レンズ群48は、対物側から数えて4番目の位置に配置されており、凹のパワーを有する。第4レンズ群48は、レンズ鏡筒40の筐体94に対して相対移動可能に取り付けられた移動群であり、焦点調整時及び変倍動作時において、光軸Z方向に移動する。第4レンズ群48は、第2レンズ群46と同様に、変倍動作において、ワイド時には対物側に、テレ時には像面側に移動する。
【0036】
焦点調整時において、第4レンズ群48は、対物側に移動することにより、撮影光学系44の合焦対象を、至近側の被写体に変えることができる。また、第4レンズ群48は、像面側に移動することにより、撮影光学系44の合焦対象を、遠方(無限遠方向)の被写体に変えることができる。後述するように、焦点調整時には、第4レンズ群48だけでなく、第5レンズ群49も移動する。しかし、焦点調整時における第5レンズ群49の移動は、第4レンズ群48の移動に伴う画角変動を抑制するための動作である。したがって、撮影光学系44の焦点調整を行う焦点調整部は、第4レンズ群48である。
【0037】
図2は、第4レンズ群48の周辺部分を表す斜視図である。第4レンズ群48は、光軸方向に移動可能な第1保持枠71に保持されている。第1保持枠71は、第1主挿通部72を有しており、第1主挿通部72には、主ガイドバー100によって挿通される貫通孔73が形成されている。また、第1保持枠71は、第1従挿通部74を有しており、第1従挿通部74には、従ガイドバー110に挿通される貫通孔75が形成されている。
【0038】
図2には表示していないが、主ガイドバー100及び従ガイドバー110の両端部は、レンズ鏡筒40の筐体94に固定されている。主ガイドバー100及び従ガイドバー110は、光軸Z方向に延在し、いずれも光軸Zに略並行である。第1保持枠71及び第4レンズ群48は、主ガイドバー100及び従ガイドバー110によって、光軸Z方向に移動可能であって、かつその他の方向への自由度は規制された状態で、支持されている。
【0039】
図1に示すように、レンズ鏡筒40は、第4レンズ群48を光軸Z方向に移動させる第1電磁アクチュエータ76,77を有する。第1電磁アクチュエータ76は、第1保持枠71に固定される第1コイル78(図2参照)と、レンズ鏡筒40の筐体94に固定されるヨーク及び永久磁石を含む。本実施形態に係る第1電磁アクチュエータ76は、VCM(ボイスコイルモータ)であるが、第1電磁アクチュエータとしてはこれに限定されず、他の電磁リニアモータを用いても良い。第1電磁アクチュエータ76については、後ほど詳述する。第4レンズ群48を移動させる他方の第1電磁アクチュエータ77は、第1電磁アクチュエータ76と同様に、第1保持枠71に固定される第1コイル79(図2参照)と、ヨーク及び永久磁石を含む。ただし、第1電磁アクチュエータ77は、第1電磁アクチュエータ76と同様の構成であるため、第1電磁アクチュエータ77についての詳細な説明は省略する。
【0040】
図1に示すように、レンズ鏡筒40は、第1電磁アクチュエータ76,77の駆動及び制御を行う機構を備えており、第1レンズ移動量演算部42、第1制御器51、第1モータドライバ52、第1レンズ位置検出センサ53及び第1A/D変換器54を有する。第1レンズ移動量演算部42は、画像処理演算部25で算出されたコントラスト状態に基づく情報と、撮影光学系44の光学的特性に基づき、焦点を合わせるために必要な第4レンズ群48の目標移動量及びウォブリングの振幅を演算する。
【0041】
第1制御器51は、第1レンズ移動量演算部42の算出結果と、第1レンズ位置検出センサ53を介して得られる第4レンズ群48の位置情報から、第4レンズ群48の制御量を算出する。第1制御器51が第1モータドライバ52に制御量を出力する制御周期は、特に限定されないが、撮像素子21による画像信号の取得周期(フレームレート)より小さいことが一般的であり、例えば1〜0.25msecの周期(1〜4Hz)とすることができる。
【0042】
第1モータドライバ52は、第1制御器51において算出された制御量に基づき、第1電磁アクチュエータ76,77の第1コイル78(図2参照)に電力を供給し、第1電磁アクチュエータ76,77を駆動する。焦点調整時において、第1モータドライバ52は、第1電磁アクチュエータ76,77を振動的に駆動し、山登りAFを実施する。第1モータドライバ52による第1電磁アクチュエータ76,77の駆動方式は特に限定されないが、例えば第1モータドライバ52は、第1電磁アクチュエータ76,77をPWM(Pulse Width Modulation (パルス幅変調))駆動するものであっても良い。第1モータドライバ52が第1電磁アクチュエータ76,77をPWM駆動する場合、その駆動周波数である第1駆動周波数は、例えば20kHz程度とすることができるが、特に限定されない。
【0043】
第1レンズ位置検出センサ53は、第4レンズ群48の光軸Z方向の位置を検出する。本実施形態では、図2に示すように、第1レンズ位置検出センサ53として、第1保持枠71及び第4レンズ群48の移動に伴う磁気変化から、第4レンズ群48の位置を検出するGMRセンサを用いている。しかし、第1レンズ位置検出センサ53としてはこれに限定されず、間接又は直接的に第4レンズ群48の位置を検出できるものであればどのようなものでも良い。
【0044】
図1に示すように、第1レンズ位置検出センサ53による検出出力は、第1A/D変換器54によってデジタル信号に変換され、第1制御器51による制御量の算出に用いられる。
【0045】
第5レンズ群49は、対物側から数えて5番目の位置に配置されており、凸のパワーを有する。第5レンズ群49は、レンズ鏡筒40の筐体94に対して相対移動可能に取り付けられた移動群であり、焦点調整時及び変倍動作時において、光軸Z方向に移動する。第5レンズ群49は、第2レンズ群46及び第4レンズ群48と同様に、変倍動作において、ワイド時には対物側に、テレ時には像面側に移動する。
【0046】
第5レンズ群49は、焦点調整時において、第4レンズ群48の振動的な移動に伴う画角変動を抑制または打ち消すように移動する。例えば、第4レンズ群48が対物側(ワイド側)に動いた場合、これと同時に第5レンズ群49が像面側(テレ側)に動くことによって、レンズ鏡筒40は、撮影光学系44の焦点距離を維持しつつ、焦点調整を行うことができる。このように、焦点調整時における第5レンズ群49の移動は、補正のための従属的な動作である。したがって、第5レンズ群49は、撮影光学系44の変倍を目的とした変倍部に含まれる。
【0047】
第5レンズ群49は、光軸方向に移動可能な第2保持枠81によって保持されている。第2保持枠81の構造は、図2に示す第1保持枠71の構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。図3に示すように、第2保持枠81は、第1保持枠71と共通の主ガイドバー100及び従ガイドバー110によって、光軸方向の動きをガイドされる。すなわち、第2保持枠81は、第2主挿通部82を有しており、第2主挿通部82には、主ガイドバー100によって挿通される貫通孔83が形成されている。
【0048】
図1に示すように、レンズ鏡筒40は、第5レンズ群49を光軸Z方向に移動させる第2電磁アクチュエータ86,87を有する。図3に示すように、第2電磁アクチュエータ86は、第1電磁アクチュエータ76と同様に、第2保持枠81に固定される第2コイル88と、レンズ鏡筒40の筐体94に固定されるヨーク及び永久磁石を含む。第2電磁アクチュエータ86の構造については、第1電磁アクチュエータ76と合わせて後ほど詳述する。ただし、第2電磁アクチュエータ87は、第2電磁アクチュエータ86と同様の構成であるため、第2電磁アクチュエータ87についての詳細な説明は省略する。
【0049】
図1に示すように、レンズ鏡筒40は、第2電磁アクチュエータ86,87の駆動及び制御を行う機構を備えており、第2レンズ移動量演算部43、第2制御器61、第2モータドライバ62、第2レンズ位置検出センサ63及び第2A/D変換器64を有する。第2レンズ移動量演算部43は、コントラスト状態に基づく情報と、撮影光学系44の光学的特性に基づき、第4レンズ群48の移動に伴う画角変動を補正するために必要な第5レンズ群49の目標移動量及びウォブリングの振幅を演算する。
【0050】
第2制御器61は、第2レンズ移動量演算部43の算出結果と、第2レンズ位置検出センサ63を介して得られる第5レンズ群49の位置情報から、第5レンズ群49の制御量を算出する。第2制御器61の制御周期は、第1制御器51の制御周期と同様とすることができる。
【0051】
第2モータドライバ62は、第2制御器61において算出された制御量に基づき、第2電磁アクチュエータ86,87のコイル(第2コイル88等(図3参照))に電力を供給し、第2電磁アクチュエータ86,87を駆動する。焦点調整時において、第2モータドライバ62は、第2電磁アクチュエータ86,87を振動的に駆動し、山登りAFに伴う画角変動を抑制する。第2モータドライバ62による第2電磁アクチュエータ86,87の駆動方式は特に限定されないが、第1モータドライバ52と同様に、PWM駆動とすることができる。第2モータドライバ62が第2電磁アクチュエータ86,87をPWM駆動する場合、その駆動周波数である第2駆動周波数は、例えば20kHz程度とすることができるが、特に限定されない。なお、第2駆動周波数は、第1駆動周波数とは異なる周波数とすることが、共通のガイドバーである主ガイドバー100及び従ガイドバー110の振動を抑制する観点から好ましい。
【0052】
第2レンズ位置検出センサ63は、第5レンズ群49の光軸Z方向の位置を検出する。第2レンズ位置検出センサ63の構造は、図2に示す第1レンズ位置検出センサ53と同様である。第2レンズ位置検出センサ63による検出出力は、第2A/D変換器64によってデジタル信号に変換され、第2制御器61による制御量の算出に用いられる。
【0053】
図3は、第4レンズ群48及び第5レンズ群49の駆動機構および支持構造を表す概念図であり、第4レンズ群48及び第5レンズ群49の周辺部分の断面を模式的に表したものである。図3に示すように、第4レンズ群48と第5レンズ群49は光軸Z方向に沿って隣接するように配置されている。主ガイドバー100は、第1保持枠71の第1主挿通部72と、第2保持枠81の第2主挿通部82とを挿通しており、両方の保持枠71,81を支持している。
【0054】
主ガイドバー100の対物側端部100a及び像面側端部100bは、筐体94に固定されている。第1保持枠71の第1主挿通部72は、主ガイドバー100の対物側の一部である第1の部分101を移動可能である。また、第2保持枠81の第2主挿通部82は、主ガイドバー100の像面側の一部である第2の部分103を移動可能である。中間固定支持部95は、主ガイドバー100における第1の部分101と第2の部分103の間に接続されている。また、中間固定支持部材95は、筐体94にも接続されており、主ガイドバー100を筐体94に対して固定支持する。
【0055】
中間固定支持部95は、中間固定支持部95の本体部から対物側に突出する第1制限部材95aと、像面側に突出する第2制限部材95bとを有する。第1制限部材95aは、第1保持枠71に接触して、第1保持枠71の移動を制限する。これにより、第1主挿通部72の移動可能範囲である第1の部分101の長さd1は、主ガイドバー100における対物側端部100aから中間固定支持部95までの部分である第1振動部102の長さL1より小さくなる。
【0056】
また、第2制限部材95bは、第2保持枠81に接触して、第2保持枠81の移動を制限する。これにより、第2主挿通部82の移動可能範囲である第2の部分103の長さd2は、主ガイドバー100における像面側端部100bから中間固定支持部95までの部分である第2振動部104の長さL2より小さくなる。制限部材95a,95bの材質は特に限定されないが、第1保持枠71及び第2保持枠81が中間固定支持部95に衝突した際の衝撃を好適に緩和するために、ゴムやエラストマーのような弾性部材で形成されることが好ましい。
【0057】
第4レンズ群48を移動させる第1電磁アクチュエータ76は、第1保持枠71に固定される第1コイル78と、第2電磁アクチュエータ86との共用であるヨーク92、ヨーク92に固定される第1永久磁石80とによって構成される。また、第5レンズ群49を移動させる第2電磁アクチュエータ86は、第2保持枠81に固定される第2コイル88と、第1電磁アクチュエータ76との共用であるヨーク92と、ヨーク92に固定される第2永久磁石90とによって構成される。
【0058】
共用のヨーク92は、光軸Z方向に引き延ばされた四角筒形状を有しており、一方の長側面92aが筐体94に固定されている。また、ヨーク92の他方の長側面92bは、第1電磁アクチュエータ76の第1コイル78と第2電磁アクチュエータ86の第2コイル88を挿通している。第1電磁アクチュエータ76の第1永久磁石80は、第1コイル78に対向するように、ヨーク92の内側面に固定されている。また、第2電磁アクチュエータ86の第2永久磁石90は、第2コイル88に対向するように、ヨーク92の内側面に固定されている。
【0059】
ヨーク92、第1永久磁石80及び第2永久磁石90は、第1電磁アクチュエータ76と第2電磁アクチュエータ86の共用に係る磁気回路91を形成するために用いられている。すなわち、ヨーク92、第1永久磁石80及び第2永久磁石90によって形成される磁気回路91は、第1コイル78及び第2コイル88の両方を通過している。
【0060】
本実施形態に係るレンズ鏡筒40において、第1永久磁石80は、そのN極が第1コイル78と対向しており、S極がヨーク92に接触するように配置されている。また、第2永久磁石90は、そのS極が第2コイル88と対向しており、N極がヨーク92に接触するように配置されている。すなわち、矢印166で示す第2永久磁石90の磁極の向きは、矢印165で示す第1永久磁石80の磁極の向きとは逆方向である。このように、第2永久磁石90の磁極の向きを、第1永久磁石80の磁極の向きとは逆方向とすることによって、駆動に必要な領域の磁束密度を強く、かつ平坦な分布とすることができる。
【0061】
図6は、図3に示す磁気回路91の構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。また、図8は、第2変形例に係る磁気回路91bの構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。図8に示す磁気回路91bは、図3の磁気回路91と同様のヨーク92と、磁極の向きが光軸方向に沿って変化しない共用永久磁石96によって形成されている。図8の下部に示すグラフの曲線139は、コイル78,88が通過するヨーク92内部における磁気回路91bの空隙磁束密度Φを表している。なお、グラフの横軸の位置は、上部の断面図と揃えてある。共用永久磁石96を用いた磁気回路91bでは、共用永久磁石96の中央部分において空隙磁束密度が強く、第1コイル78の移動領域である領域135や、第2コイルの移動領域である領域136において、空隙磁束密度が弱くなる。また、領域135及び領域136における空隙磁束密度が平坦とならない。
【0062】
図6の下部に示すグラフの曲線137は、図8と同様に、コイル78,88が通過するヨーク92内部における磁気回路91の空隙磁束密度を表している。第1永久磁石80と第2永久磁石90の磁極の向きを逆方向とした磁気回路91では、図8の磁気回路91bと比較して、第1コイル78の移動領域である領域135や、第2コイル88の移動領域である領域136における空隙磁束密度が強い。また、図8の磁気回路91bと比較して、領域135及び領域136における空隙磁束密度が平坦化されている。これにより、第1電磁アクチュエータ76及び第2電磁アクチュエータ86は、高精度な位置制御を容易に実現することができ、また消費電力を抑制することができる。
【0063】
また、第1永久磁石80と第2永久磁石90の間には隙間が形成されており、第1永久磁石80と第2永久磁石とは、光軸Z方向で見て、中間固定支持部95を間に挟んで配置されている(図3参照)。このような配置は、領域135及び領域136における空隙磁束密度の平坦化に寄与している。また、隙間を形成することにより、共用に係る磁気回路91を形成するために用いられる永久磁石の体積を低減することが可能であるため、このような構成は、軽量化に適しており、コスト抑制効果も期待できる。
【0064】
さらに、図3及び図6に示す第2永久磁石90及び第1永久磁石80は、図8に示す共用永久磁石96より光軸方向の長さが短いため、パーミアン係数が小さく、熱減磁に対して強い。また、第2永久磁石90及び第1永久磁石80は、光軸方向の長さが短いため機械的強度が大きく、レンズ鏡筒40の組立時における取扱いが容易である。
【0065】
図4は、焦点調整時における第4レンズ群48及び第5レンズ群49の位置変化を説明したグラフである。図4の縦軸は光軸Z方向の変位を表しており、グラフ上方に行くほど、各レンズ群48,49が対物側に位置していることを意味する。グラフ上方の軌跡155は、時間経過に伴う第4レンズ群48の変位を表しており、グラフ下方の軌跡156は、時間経過に伴う第5レンズ群49の変位を表している。
【0066】
第4レンズ群48の軌跡155の中央を通っている点線157は、第4レンズ群48の目標位置(目標移動量)を表している。第4レンズ群48の目標移動量は、評価値取得タイミングにおいてカメラボディ20で取得されたコントラスト状態に基づき、レンズ鏡筒40の第1レンズ移動量演算部42で算出される(図1参照)。図4の、軌跡155の形状から分かるように、第4レンズ群48は振幅a1でウォブリングされている。第4レンズ群48のウォブリングの振幅a1についても、目標移動量と同様に、レンズ鏡筒40の第1レンズ移動量演算部42で算出される(図1参照)。
【0067】
先に述べたように、第1レンズ移動量演算部42は、撮影光学系44を合焦させるように第4レンズ群48の目標移動量を算出しているので、第4レンズ群48は、合焦位置の変化に対して、振動しながら追従する。
【0068】
第5レンズ群49の軌跡156の中央を通っている点線158は、第4レンズ群48の目標位置(目標移動量)を表している。また、軌跡156の形状から分かるように、第5レンズ群49は振幅a2でウォブリングされている。先に述べたように、レンズ鏡筒40の第2レンズ移動量演算部43は、第4レンズ群48の移動に伴う画角変動を抑制するように、第5レンズ群49の目標移動量及び振幅a2を算出している。したがって、第5レンズ群49は、第4レンズ群48のウォブリングに同期しながら、ウォブリングされる。
【0069】
また、第4レンズ群48及び第5レンズ群49は、変倍動作において、いずれもワイド時には対物側に移動し、テレ時には像面側に移動するレンズである。したがって、焦点調整時において第5レンズ群49が第4レンズ群48による画角変動を打ち消す場合、第5レンズ群49は、第4レンズ群48とは逆方向に移動する。このような動作により、第5レンズ群49のウォブリングは、第4レンズ群48の画角変動を抑制するだけでなく、第4レンズ群48のウォブリングによる振動を抑制する効果を奏する。また、振動をより効果的に抑制する観点から、第1電磁アクチュエータ76,77によって動かされる移動体(第4レンズ群48及び第1保持枠71等を含む)の質量と振幅a1の積が、第2電磁アクチュエータ86,87によって動かされる移動体(第5レンズ群49及び第2保持枠81等を含む)の質量と振幅a2の積に対して、略等しくなるように調整されてもよい。
【0070】
図3に示す第1モータドライバ52は、第1電磁アクチュエータ76における第1コイル78の電流を変化させ、図4に示すような第4レンズ群48の移動を実現する。また、第2モータドライバ62は、第2電磁アクチュエータ86における第2コイル88の電流を変化させ、図4に示すように第5レンズ群49を光軸Z方向に移動させる。
【0071】
図5は、図3に示す第1モータドライバ52が第1電磁アクチュエータ76を駆動する駆動信号169と、第2モータドライバ62が第2電磁アクチュエータ86を駆動する駆動信号170を表している。第1モータドライバ52は、第1駆動周波数Fpwm_1で第1電磁アクチュエータ76をPWM駆動しており、第2モータドライバ62は、第2駆動周波数Fpwm_2で第2電磁アクチュエータ86,87をPWM駆動している。図5に示すように、第2駆動周波数Fpwm_2(1/t2)は、第1駆動周波数Fpwm_1(1/t1)とは異なる周波数である。
【0072】
図3に示すように、主ガイドバー100は、第1電磁アクチュエータ76の移動対象である第1保持枠71と、第2電磁アクチュエータ86の移動対象である第2保持枠81の両方を支持している。したがって、第1モータドライバ52による第1電磁アクチュエータ76のPWM駆動と、第2モータドライバ62による第2電磁アクチュエータ86のPWM駆動とが互いに同期している場合、主ガイドバー100の振動が大きくなるおそれがある。しかし、図5に示すように、第1駆動周波数Fpwm_1と第2駆動周波数Fpwm_2とを互いに異なる周波数とすることによって、主ガイドバー100の振動を抑制することができる。また、第1駆動周波数Fpwm_1と第2駆動周波数Fpwm_2が同一の周波数であっても、駆動の位相をずらすことによって同様の効果を得られる。
【0073】
また、図3に示す主ガイドバー100の第1振動部102と第2振動部104の1次固有振動数は、第1駆動周波数Fpwm_1及び第2駆動周波数Fpwm_2に対して所定の関係になるように決定する。すなわち、第1振動部102と第2振動部104の1次固有振動数は、第1駆動周波数Fpwm_1、第2駆動周波数Fpwm_2、第1駆動周波数Fpwm_1と第2駆動周波数Fpwm_2の差分、第1駆動周波数Fpwm_1と第2駆動周波数Fpwm_2の加算周波数のいずれとも異なる。
【0074】
これにより、主ガイドバー100の第1振動部102及び第2振動部104が、保持枠71,81に固定されるコイル78,88の電流変動に対応した振動により励振されてしまう現象を、抑制することができる。主ガイドバー100の振動を抑制することにより、騒音を抑制することができ、また、撮影者へ伝わる不快な振動を抑制することができる。さらに、主ガイドバー100における第1振動部102及び第2振動部104の振動を抑制することにより、レンズ群48,49の位置検出精度を良好に保つことができる。
【0075】
図3に示す主ガイドバー100において、第1振動部102と第2振動部104の1次固有振動数は、例えば中間固定支持部95の位置を光軸方向にずらすことにより、容易に変化させることができる。すなわち、中間固定支持部95は、各レンズ群48,49を支持する各振動部102,104の剛性を向上させることができ、さらに、各振動部102,104の長さL1,L2を調整し、アクチュエータ76,86の駆動に伴う振動に対して、主ガイドバー100が共振してしまう現象を防止することができる。
【0076】
また、第1振動部102の1次固有振動数が、第2振動部104の1次固有振動数より大きい場合は、第1駆動周波数Fpwm_1が第2駆動周波数Fpwm_2より大きくても良い。ここで、各第1振動部102,104は、直接支持している保持枠71,73に固定されたコイル78,88を駆動するモータドライバ52,62からの影響を、より大きく受ける。したがって、このような関係とすることにより、各振動部102,104の1次固有振動数と、これに対応するモータドライバ52,62の駆動周波数Fpwm_1,Fpwm_2との差異を大きくし、各振動部102,104の振動を抑制することができる。
【0077】
また、図4に示す第4レンズ群48の駆動振幅a1が、第5レンズ群49の駆動振幅a2より大きい場合は、図3に示す第1振動部102の長さL1を、第2振動部104の長さL2より長くすることが好ましい。先述したように、駆動振幅a1と駆動振幅a2が異なる場合、振幅が小さい側(本実施形態の場合は第2電磁アクチュエータ86側)の移動体の質量を大きくすることによって、ウォブリングによる振動を抑制することができる。さらに、これと併せて、移動体の質量が大きい(すなわちレンズ群の振幅が小さい)第5レンズ群49側の第2振動部104をより短くすることにより、主ガイドバー100の剛性を容易に確保できる。
【0078】
なお、図5に示すようにPWM駆動の駆動周波数をずらしても、PWM駆動の駆動周期は、制御器51,61による制御周期及びフレーム間隔に比べて十分に小さい。したがって、このようなPWM駆動を行った場合でも、第1モータドライバ52と第2モータドライバ62は、図4に示すような第5レンズ群49と第4レンズ群48が同期しているウォブリングを実現できる。
【0079】
第4レンズ群48及び第5レンズ群49を移動させるアクチュエータ76,86の磁気回路91は、図8に示す第2変形例以外にも、様々な変形例を採用し得る。例えば、図7は、第1変形例に係る磁気回路91aの構造及び空隙磁束密度の分布を表す概念図である。第1変形例では、第1永久磁石80と第2永久磁石90の間に第3永久磁石93が配置されている。第3永久磁石93は、第1永久磁石80及び第2永久磁石90と同様に、共用のヨーク92の内側面に固定されている。
【0080】
第3永久磁石93は、第1電磁アクチュエータと第2電磁アクチュエータの共用に係る磁気回路91aを形成するために用いられている。第3永久磁石93は、N極が第1永久磁石80に近接し、S極が第2永久磁石90に近接するように配置されている。すなわち、矢印167で示す第3永久磁石93の磁極の向きは、光軸Z方向と略平行であり、第1永久磁石80及び第2永久磁石90の磁極の向きに対して略直交する。第3永久磁石93を配置したことにより、磁気回路91aには、新たな磁束ループが追加されている。
【0081】
図7の下部に示すグラフの曲線138は、図6と同様に、磁気回路91aの空隙磁束密度を表している。磁気回路91aでは、第3永久磁石93が追加されたことにより、第1コイル78の移動領域である領域135及び第2コイル88の移動領域である領域136における空隙磁束密度が、図3に示す第1実施形態より強くなっている。このように、第1永久磁石80と第2永久磁石90の間に、これらの磁石とは磁極の向きが略直交する第3永久磁石93を配置することにより、駆動に使用される領域の磁束密度をさらに強くし、平坦化することができる。
【0082】
上述したレンズ鏡筒40は、主ガイドバー100を筐体94に対して固定支持する中間固定支持部95を有するため、各レンズ群48,49を支持する各振動部102,104の剛性を向上させることができる。また、中間固定支持部95の位置を調整することにより、各振動部102,104の長さL1,L2及び1次固有振動数を調整し、アクチュエータ76,86の駆動に伴う振動に対して主ガイドバー100が共振してしまう現象を防止することができる。
【0083】
また、中間固定支持部95によって補強される主ガイドバー100は、山登りAFを行う第4レンズ群48と、第4レンズ群48の移動に伴う画角補正を行う第5レンズ群49とを支持する構造として、特に好適である。なぜなら、主ガイドバー100は、第1電磁アクチュエータ76及び第2電磁アクチュエータ86の駆動に伴う振動を抑制しつつ、第4レンズ群48と第5レンズ群49を好適に保持できるからである。また、主ガイドバー100は、第4レンズ群48と第5レンズ群49の光軸を精度良く一致させることができる。
【0084】
また、レンズ鏡筒40は、第1電磁アクチュエータ76と第2電磁アクチュエータ86が、磁気回路を共用しているため、部品数が少なく組立が容易であるとともに、小型化に適している。また、レンズ鏡筒40は、磁気回路を共用させることにより、第1電磁アクチュエータ76と第2電磁アクチュエータ86を効率的に構成し、第1光学系としての第4レンズ群48及び第2光学系としての第5レンズ群49を、精度良く高速に移動させることができる。
【0085】
なお、上述の実施形態では、第4レンズ群48及び第5レンズ群49を移動させるアクチュエータとして、電磁アクチュエータであるボイスコイルモータを採用しているが、第4レンズ群48及び第5レンズ群49を移動させるアクチュエータはこれに限定されない。例えば、第4レンズ群48及び第5レンズ群49は、第2レンズ群46と同様に、送りネジ等と組み合わせられたステッピングモータによって移動させられても良い。また、各アクチュエータは、PWM駆動やPDM(Pulse Density Modulation)駆動のように、スイッチングによる所定の駆動周波数を有する駆動方式で駆動されることが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
10…カメラシステム
20…カメラボディ
21…撮像素子
22…フレームレート制御器
23…AFE回路
24…ボディ側A/D変換器
25…画像処理演算部
26…評価値演算部
27…駆動形態演算部
28,29…バッファメモリ
30…画像生成部
31…記憶部
32…表示部
33…電気接点部
40…レンズ鏡筒
41…レンズ演算部
42…第1レンズ移動量演算部
43…第2レンズ移動量演算部
51…第1制御器
52…第1モータドライバ
53…第1レンズ位置検出センサ
54…第1A/D変換器
61…第2制御器
62…第2モータドライバ
63…第2レンズ位置検出センサ
64…第2A/D変換器
44…撮影光学系
45…第1レンズ群
46…第2レンズ群
47…第3レンズ群
48…第4レンズ群
49…第5レンズ群
71…第1保持枠
72…第1主挿通部
73,83…貫通孔
74…第1従挿通部
81…第2保持枠
82…第2主挿通部
76,77…第1電磁アクチュエータ
78,79…第1コイル
80…第1永久磁石
86,87…第2電磁アクチュエータ
88…第2コイル
90…第2永久磁石
91,91a,91b…磁気回路
92…ヨーク
93…第3永久磁石
95…中間固定支持部
95a…第1制限部材
95b…第2制限部材
96…共用永久磁石
94…筐体
100…主ガイドバー
101…第1の部分
102…第1振動部
103…第2の部分
104…第2振動部
110…従ガイドバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に移動可能な第1光学系及び第2光学系を含み、撮影光を透過させる撮影光学系と、
前記撮影光学系を収納する筐体と、
前記光軸方向に延在し、両端部が前記筐体に固定されるガイドバーと、
前記ガイドバーに挿通され、前記ガイドバーにおける第1の部分を移動可能な第1挿通部を有し、前記第1光学系を保持する第1保持枠と、
前記ガイドバーに挿通され、前記ガイドバーにおける前記第1の部分とは異なる第2の部分を移動可能な第2挿通部を有し、前記第2光学系を保持する第2保持枠と、
前記ガイドバーにおける前記第1の部分と前記第2の部分との間に接続されており、前記ガイドバーを前記筐体に対して固定支持する中間固定支持部と、
前記第1光学系を前記光軸方向に移動させる第1アクチュエータと、
前記第2光学系を前記光軸方向に移動させる第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータを、第1駆動周波数によって駆動する第1モータドライバと、
前記第2アクチュエータを、第2駆動周波数によって駆動する第2モータドライバと、を有し、
前記ガイドバーのうち一方の端部から前記中間固定支持部までの部分であって前記第1の部分を含む第1振動部の1次固有振動数と、前記ガイドバーのうち他方の端部から前記中間固定支持部までの部分であって前記第2の部分を含む第2振動部の1次固有振動数が、
前記第1駆動周波数、前記第2駆動周波数、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数の差分、又は前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数の加算周波数のいずれとも異なることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1駆動周波数と、前記第2駆動周波数とは異なる周波数であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1駆動周波数と、前記第2駆動周波数とは略同一の周波数であり、
前記第1モータドライバと前記第2モータドライバは、互いに異なる位相で前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータを駆動することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記中間固定支持部は、前記第1保持枠に接触して前記第1保持枠の移動を制限する第1制限部材及び前記第2保持枠に接触して前記第2保持枠の移動を制限する第2制限部材のうち少なくとも一方を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項3に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1アクチュエータは、前記第1保持枠に固定される第1コイルを有する電磁アクチュエータであり、
前記第2アクチュエータは、前記第2保持枠に固定される第2コイルを有する電磁アクチュエータであり、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータは、磁気回路を共用することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1光学系は、前記撮影光学系の焦点調整を行う焦点調整部であり、
前記第2光学系は、前記撮影光学系の変倍を目的とした変倍部であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第2モータドライバは、前記第1光学系の移動に伴う画角変動を抑制するように、前記第1モータドライバと同期して前記第2アクチュエータを駆動することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1振動部の1次固有振動数は、前記第2振動部の1次固有振動数より大きく、
前記第1駆動周波数は、前記第2駆動周波数より大きいことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1アクチュエータによる前記第1光学系の駆動振幅は、前記第2アクチュエータによる前記第2光学系の駆動振幅より大きく、
前記第1振動部の長さは、前記第2振動部の長さより長いことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項5に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1電磁アクチュエータは、前記磁気回路を形成するために用いられる第1永久磁石を含み、
前記第2電磁アクチュエータは、前記磁気回路を形成するために用いられ前記第1永久磁石とは磁極の向きが逆方向である第2永久磁石を含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石とは、前記光軸方向で見て、前記中間固定支持部を間に挟んで配置されていることを有するレンズ鏡筒。
【請求項11】
請求項10に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石の間には、前記磁気回路を形成するために用いられ、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石とは磁極の向きが略直交する第3永久磁石が設けられていることを特徴とするレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11749(P2013−11749A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144597(P2011−144597)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】