レンチウイルス感染症を治療するための方法
本発明は、レンチウイルスのVifタンパク質の活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法を提供する。本発明は、本スクリーニング方法によって特定される物質を提供し、レンチウイルス感染を治療するための方法をさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はレンチウイルス感染症、特に免疫不全ウイルス感染症の治療の分野に関する。
【0002】
相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み入れられる2003年6月10日に出願された米国特許仮出願第60/477,549号および2003年9月24日に出願された米国特許仮出願第60/505,738号の恩典を主張するものである。
【0003】
連邦政府資金援助研究に関する陳述
米国立衛生研究所により与えられた助成金番号P01 HD40543、R01 CA86814、および2P30 A127763-1に従って、米国政府は本発明における権利の一部を保有することができる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質である。HIV感染はCD4+ Tリンパ球の枯渇を招く。AIDSは、免疫機能不全、日和見感染症、神経学的機能異常および腫瘍増殖を含む様々な病理学的状態を特徴とする。
【0005】
HIV-1は、APOBEC3G(アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様3G、CEM15としても公知である)の生来の潜在的抗ウイルス機能を回避するため、HIV-1および多くの関連する霊長類レンチウイルスによってコードされるタンパク質であるVif(ビリオン感染因子)に依存する。APOBEC3Gは、ビリオンに組み込まれて、逆転写の過程で形成される新たに合成されるウイルスDNAに広範な超変異をもたらすDNAシチジンデアミナーゼである。
【0006】
AIDSの治療には、アジドブジン(azidovudine; AZT)、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI)、d4T、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC)、ネビラピン、ラミブジン(エピビル、3TC)、サキナビル(インビラーゼ)、リトナビル(ノルビル)、インジナビル(クリクシバン)、およびデラビルジン(レスクリプター)を含む複数の薬剤が承認されている。しかし、HIVと戦うために用いられる入手可能な薬剤の中に完全に有効なものはなく、治療によってしばしば薬剤耐性ウイルスが生じる。
【0007】
HIV感染症と戦うための多くの薬剤が入手可能であるにも関わらず、当技術分野ではHIVの複製を阻害して、かつ、HIVおよびその他のレンチウイルス感染症の治療に適したさらなる薬剤が必要である。本発明は、HIVのVifタンパク質を標的とする物質、およびAPOBEC3Gの生来の潜在的抗レンチウイルス特性を維持する方法でVifの作用に干渉する物質を特定するための方法を提供することによってこの必要に応える。
【0008】
文献
Fisher et al. (1987) Science 237,888-893; von Schwedler et al. (1993) J Virol 67, 4945- 4955; Desrosiers et al. (1998) J Virol 72, 1431-1437; Gabuzda et al. (1992) J Virol 66, 6489-6495; Sova and Volsky (1993) J Virol 67, 6322-6326; Harris et al.(2003) (2003) Cell 113: 803- 809; Harris et al. (2004) Cell 116: 629; Lecossier et al. (2003) Science 300: 1112; Mangeat et al. (2003) Nature 424: 99-103; Zhang et al. (2003) Nature 424: 94-98.
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、レンチウイルスVifタンパク質の活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法を提供する。本発明は、本スクリーニング方法によって特定される物質を提供して、レンチウイルス感染症を治療するための方法をさらに提供する。
【0010】
定義
本明細書で用いられるように、「治療(treatment)」、「治療する(treating)」などの用語は所望の薬学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は疾患またはその症状の完全または部分的阻止に関して予防的であってよく、さらに/または疾病および/もしくはその疾患に起因する有害な影響の部分的または完全治癒に関して治療的であってもよい。本明細書で用いられるように「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を網羅して、(a)その疾患に対する素因を持っている可能性はあるが、まだその疾患であると診断されたことはない被験者においてその疾患が発症することを防ぐこと;(b)その疾患を阻害する、即ち、その進行を阻止すること;および(c)例えばその疾患の症状を完全にまたは部分的に除去するなど、例えばその疾患の退行を惹起してその疾患を緩和することが含まれる。レンチウイルス感染の状況において、「治療」という用語はウイルスとの初回接触後の全身感染症の確立の予防、およびまだそのウイルスに感染していない個人の予防的治療を含む。
【0011】
本明細書で互換的に用いられる「個人」、「宿主」、「被験者」および「患者」という用語は、マウス、ネコ、サル、ヒト、家畜哺乳動物、競技用哺乳動物、およびペット哺乳動物を含む哺乳動物を意味するが、これらに限定されるものではない。この用語は、Vifをコードするレンチウイルスによる感染に対して感受性の哺乳動物を含む。多くの態様において、ヒトの治療が関心対象である。
【0012】
「遺伝的形質転換」という用語は、新しいDNA(即ち、その細胞に対して外因性のDNA)の取り込み後に細胞内で誘発される永続的または一過性の遺伝的変化を意味する。遺伝的変化は、その新しいDNAを宿主細胞のゲノムに組み込むことによって、または新しいDNAをエピソームエレメントとして一時的または安定的に維持することによって生じ得る。細胞が哺乳動物細胞である場合、永続的な遺伝的変化は一般にそのDNAがその細胞のゲノムに導入されることによって達成される。
【0013】
「生物学的試料」は個人から採取される様々な試料タイプを含んで、診断またはモニターアッセイに用いることができる。その定義は、生物由来の血液またはその他の液体試料、生検標本のような固体組織試料、または組織培養物もしくはそれから得られる細胞およびその子孫細胞を含む。その定義には、試薬での処理、洗浄、またはCD4+ Tリンパ球、グリア細胞、マクロファージ、腫瘍細胞、末梢血単核細胞(PBMC)などの一部の細胞集団の濃縮のように、採取後に任意の方法で操作された試料も含まれる。「生物学的試料」という用語には臨床試料が含まれ、培養物中の細胞、細胞上清、組織試料、臓器、骨髄なども含まれる。
【0014】
本明細書で用いられるように「レンチウイルス」という用語は、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1);ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2);サル免疫不全ウイルス(SIV);およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)を意味する。
【0015】
本発明についてさらに説明する前に、本発明が記載される特定の態様に限定されるものではなく、従って、当然、変更可能であることが理解されるべきである。本発明の範囲は添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書で用いられる用語は特定の態様のみを説明するためのものであって、限定的であることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0016】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限および下限の間にあって、文脈からそうでないことが明示される場合を除いて、下限値の十分の一の単位までの各介在値、および記載される範囲内にあるその他の任意の記載値または介在値は本発明に内包されると理解される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、それぞれにその狭い範囲に含まれる可能性があり、記載される範囲において何らかの具体的な除外限界値が示されれば、同じく本発明に含まれる。記載される範囲が一方または双方の限界値を含む場合、これらの含まれる限界値の一方または双方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0017】
別途定義される場合を除いて、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の業者によって広く理解されるものと同一の意味を持つ。本明細書に述べられるものと同等または相当するあらゆる方法および材料も本発明の実践または試験において用いることができるが、ここでは好ましい方法および材料について記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物の引用に関連してその方法および/または材料を開示および説明するために参照として本明細書に組み入れられる。
【0018】
本明細書および添付される特許請求の範囲で用いられるように、「一つの(a)」、「および(and)」、および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明示される場合を除いて、複数の指示物を含む。従って、例えば「一つのVifタンパク質」という言及はこのような多数のタンパク質を含み、「その物質」という言及は一つまたは複数の物質および当業者に公知であるその同等品などへの言及を含む。
【0019】
本明細書で論じる刊行物は、単にそれらの開示が本出願の出願日よりも前であるために示されるものである。本明細書は決して、先行発明という理由で本発明がこのような刊行物に先行する権利を与えられないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、示される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なる可能性があり、独自に確認される必要がある場合がある。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、レンチウイルスVifタンパク質の活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法、およびAPOBEC3Gの不活性型をAPOBEC3Gの活性型に転換する物質を特定する方法をさらに提供する。本発明は、本スクリーニング方法によって特定される物質を提供して、レンチウイルス感染症を治療するための方法をさらに提供する。
【0021】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)は、APOBEC3G(アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様G3、CEM15としても公知である)の生来の潜在的抗ウイルス機能を回避するために、HIV-1および多くの関連する霊長類レンチウイルスによってコードされるタンパク質であるVif(ビリオン感染因子)に依存する。APOBEC3Gは、ウイルス粒子に組み込まれて、逆転写の過程に形成される新たに合成されるウイルスDNAに広範な超変異をもたらすDNAシチジンデアミナーゼである。
【0022】
本発明は、次の観察所見に一部基づく:1)VifはVifをコードするレンチウイルスが感染した感染細胞内(例えば、T細胞、マクロファージ、グリア細胞などを含む)での分解に関して天然のAPOBEC3Gタンパク質をターゲティングすることによってそのビリオンへの組み込みを障害する;2)Vif単独で十分にAPOBEC3Gの消失を誘導して、Vifがその他のウイルスタンパク質の活性を必要としないことを示す;3)Vifは直接的または間接的にAPOBEC3Gと結合する;4)APOBEC3GおよびVifは感染したH9細胞内において>700kDの複合体として同時に分画化されて、この大きなAPOBEC3G複合体はRNアーゼでの処理によって分解する;5)APOBEC3Gはポリユビキチン化される;6)Vifは分解においてポリユビキチン化APOBEC3GのようなAPOBEC3Gタンパク質の修飾型を標的とする;7)VifはAPOBEC3G mRNAの翻訳を阻害する;8)APOBEC3GはHIV感染許容性細胞において高分子量(HMW)複合体として見出される;9)一部の因子は細胞内のAPOBEC3Gタンパク質の量を増加させることができる;10)低分子量(LMW)APOBEC3G複合体はシチジンデアミナーゼ活性を示すが、HMW APOBEC3G複合体はこの活性を示さない。
【0023】
スクリーニング方法
本発明はレンチウイルスのVif活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。この方法は、一般的に、Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質を含む試料を被験物質と接触させる工程、およびもしあればその被験物質のVif活性に対する影響を測定する工程を伴う。Vif活性に影響を及ぼす被験物質はレンチウイルス感染症治療のための候補物質である。
【0024】
本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量を増加させる物質を特定する方法をさらに提供する。この方法は、一般に、細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。関心対象の被験物質は、増加が達成されるメカニズムに関わらず、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる。例えば、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質には、i)メカニズムに関わらず、細胞による活性APOBEC3Gの産生を亢進させる物質;ii)細胞内の不活性型APOBEC3Gの形成を抑制する物質;iii)細胞内において不活性型APOBEC3Gから活性型APOBEC3Gへの変化を誘導する物質などが含まれる。
【0025】
本発明は、細胞内において不活性型APOBEC3Gタンパク質を活性型APOBEC3Gタンパク質に転換させる物質を特定する方法を提供する。この方法は、一般に、細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、不活性型APOBEC3Gの活性型APOBEC3Gへの転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0026】
本明細書で用いられるように、「活性型APOBEC3G」という用語は酵素的に活性であってレンチウイルスゲノムに一つまたは複数の変異を誘導するAPOBEC3Gの型を意味する。APOBEC3Gの「活性」型はレンチウイルスのゲノムに変異を誘導することのできる型である。一般に、活性型APOBEC3Gは、例えば低分子量複合体に含まれる型のようなAPOBEC3Gの低分子量型である。いくつかの態様において、低分子量型APOBEC3Gは、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)により求められるように、約50kDから約100kDの範囲の分子量を持つ複合体に含まれるAPOBEC3Gの型である。APOBEC3Gの量を増加させる関心対象の物質は、多くの態様において、レンチウイルスゲノムに変異を誘導するAPOBEC3Gの量を増加させる物質であり、活性APOBEC3Gは、ウイルスの複製が阻害されて、また/または感染性ウイルスの産生が抑制されるほど十分に多くの変異を誘導する。
【0027】
本明細書で用いられるように、「不活性APOBEC3G」という用語は、例えば、細胞の細胞質においてレンチウイルスを機能不全とするような、レンチウイルスゲノムの変異を誘導しない型、例えば、感染性ウイルスの産生に有害な影響を及ぼすのに十分な数のレンチウイルスゲノムの変異を誘導しない型のように、相対的に不活性であるAPOBEC3Gの型;またはレンチウイルスのビリオンに組み込まれないAPOBEC3Gの型を意味する。いくつかの態様において、APOBEC3Gの不活性型は高分子量複合体に含まれる型である。いくつかの態様において、APOBEC3Gの高分子量型は、サイズ排除FPLCにより求められる通り、約700kDよりも大きい範囲の分子量を持つ複合体に含まれるAPOBEC3Gの型である。
【0028】
本明細書で用いられるように、「Vif活性」という用語には、APOBEC3GへのVifの結合;Vif介在性の、内因性APOBEC3Gタンパク質のビリオン内への組み込みの抑制;APOBEC3Gおよび細胞RNAを含む高分子複合体とのVifの結合;VifによるAPOBEC3G mRNAの翻訳の阻害;およびVifによるAPOBEC3G分解の誘導が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
Vif活性を阻害する物質を特定するための本アッセイは多くの方法でデザインすることができる。いくつかの態様において、アッセイは、Vifの存在下において細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を提供する。その他の態様において、アッセイはAPOBEC3GまたはAPOBEC3G高分子量複合体とのVifの結合に対する被験物質の影響を測定する工程を提供する。これらの態様は以下に詳細に述べられる。
【0030】
細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質レベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、多くの方法でデザインすることができる。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定するための本アッセイは、マイナス鎖DNAにおけるC→U変異を誘導し、その結果、ウイルスのプラス鎖DNAにおいてG→Aの変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、APOBEC3Gのレンチウイルス粒子へのパッケージングに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。
【0031】
細胞内において不活性型APOBEC3Gタンパク質を活性型APOBEC3Gタンパク質に転換させる物質を特定する方法は多くの方法でデザインすることができる。例えば、いくつかの態様において、不活性型APOBEC3Gを活性型APOBEC3Gに転換させる物質を特定する方法は細胞を被験物質と接触させる工程;およびAPOBEC3Gが細胞内で結合する複合体の分子量を測定する工程を伴う。一般に、関心対象の物質は高分子量APOBEC3G含有複合体を低分子量APOBEC3G含有複合体に転換させる被験物質である。その他の態様において、不活性型APOBEC3Gを活性型APOBEC3Gに転換させる物質を特定する方法は、細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、細胞に含まれるレンチウイルスゲノムのAPOBEC3G誘導性変異の数に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0032】
本スクリーニング方法はインビトロにおいて実施される。いくつかの態様において、その方法は細胞に基づいた方法である。その他の態様において、方法は細胞を用いない方法である。
【0033】
「候補物質」、「物質(agent)」、「物質(substance)」、「被験物質」および「化合物」という用語は本明細書において互換的に用いられる。候補物質には多くの化学的分類が含まれ、一般的には合成、半合成または天然の無機もしくは有機分子である。
【0034】
いくつかの態様において、候補物質は50ダルトンよりも大きくて約2,500ダルトンよりも小さな分子量を持つ小さな有機化合物である。
【0035】
候補物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含んでよく、少なくともアミン、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含んでよく、化学的官能基の少なくとも2つを含んでもよい。候補物質は、上記の官能基の一つまたは複数と置換された、環式炭素もしくは複素環式構造、および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含むことができる。候補物質は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子からも見出される。
【0036】
その他の態様において、候補物質は2,500ダルトンよりも大きな分子量を持つ。これらの態様において、候補物質はペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、炭水化物、多糖類、脂質、リポ多糖類、糖タンパク質、プロテオグリカン、リポタンパク質、またはその他の高分子であり得る。
【0037】
候補物質は、合成または天然化合物のライブラリを含む実に様々なソースから得られる。例えば、多くの方法を用いて、無作為化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、様々な有機化合物および生体分子の方向付けされた任意の合成を行うことができる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物性抽出物の形の天然化合物のライブラリが入手可能か、または容易に製造される。さらに、天然または合成により製造されるライブラリおよび化合物は、通常の化学的、物理的、および生化学的方法で容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリの製造に使用することができる。公知の薬学的物質は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような、方向付けされたまたは任意の化学的修飾に供して構造類似体を製造することができる。
【0038】
候補物質は、トリパンブルー色素排除、MTT([3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド])アッセイなどのような周知のアッセイ法を用いて、アッセイで用いられる細胞に対して発現する可能性のある細胞毒性活性について評価される。顕著な細胞毒性活性を示さない物質が候補物質と見なされる。
【0039】
本発明のアッセイは、通常、一つまたは複数の対照を含む。従って、被験試料は被験物質を含み、対照試料は被験物質を除く被験試料のすべての成分を有する。一般に、異なる濃度に対する示差的反応を得るために、多くのアッセイの組み合わせが異なる物質濃度を用いて同時に実施される。典型的には、これらの濃度の一つが負の対照(すなわち濃度0または検出限界よりも低い濃度)とされる。スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、一つまたは複数の分子は標識と結合でき、この場合、その標識は直接的または間接的に検出可能なシグナルを発することができる。様々な標識には、ラジオアイソトープ、蛍光物質、化学的発光物質、酵素、特異的結合分子、例えば磁性粒子のような粒子などが含まれる。特異的結合分子には、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよびアンチジゴキシンなどのようなペアが含まれる。特異的結合メンバーにおいて、相補的メンバーは通常、公知の方法に従って検出に備える分子で標識されるであろう。
【0040】
スクリーニングアッセイには、様々な試薬を含めることができる。これらには、塩、例えばアルブミンなどの中性タンパク質、至適なタンパク質-タンパク質結合の促進および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用の抑制に用いられる界面活性剤などのような試薬が含まれる。ヌクレアーゼ阻害物質、抗菌物質などのようなアッセイの効率を高める試薬を用いることができる。これらの成分は任意の順序で加えてよい。インキュベーションは、典型的には4℃から40℃の間の任意の適切な温度で実施される。インキュベーション期間は活性が至適となるように選択されるが、高速の大量処理スクリーニングを促進するために至適化してもよい。典型的には0.1から1時間の間で十分である。
【0041】
スクリーニング方法は多くの異なる方法でデザインすることができ、この場合、当技術分野において公知であるように、様々なアッセイの環境およびプロトコルを用いることができる。例えば、成分の一つを固体支持体と結合させて、残りの成分をその支持体に結合させた成分と接触させることができる。別の例として、いくつかの態様においては、活性をアッセイするタンパク質は内因性タンパク質(例えば、細胞によって通常産生されるタンパク質)であり、その他の態様においては、活性をアッセイするタンパク質は、細胞内で産生されるコードタンパク質のように、発現構築物にコードされて細胞内に導入される。この方法の上記の成分は、実質的に同時にまたは異なる時期に組み合わせることができる。
【0042】
アッセイが結合アッセイである場合、必ずしも必要という訳ではないが一般的には、本方法は接触およびインキュベーションの後に非結合成分を除去するための洗浄工程を含み、このような洗浄工程は、一般に、放射性または蛍光標識された非特異的結合成分のような、検出中にバックグラウンドシグナルを生じる標識を除去するために必要な場合に用いられる。任意の洗浄工程に続いて、結合複合体の存在が検出される。
【0043】
多くの態様において、安全性の理由から、本アッセイ法がウイルス感染性、ウイルス粒子におけるAPOBEC3Gのキャプシド形成などを調べる工程を伴う場合、感染性レンチウイルスを用いる代わりに、本アッセイはウイルス構造タンパク質(例えば、Gag)およびウイルス粒子のキャプシド形成に必要なその他のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物を用いる。但し、このように産生されるウイルス粒子は実験者に対する病原性はないであろう。従って、本出願において、「レンチウイルス感染細胞」という用語および同様の用語は、病原性ウイルスに感染した細胞、および(例えば、検査目的のために)ウイルス構築物をトランスフェクトされたがヒトに対して病原性であるウイルス粒子を産生しない細胞を含むことが理解される。
【0044】
さらに、レンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性変異数に対する被験物質の影響を測定する工程を含む本方法は、レンチウイルスゲノム全体を用いて実施される必要はない。その代わり、レンチウイルスゲノムの一部を用いてレンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性変異の数に対する被験物質の影響を測定することができる。従って、本明細書で用いられるように「レンチウイルス核酸」という用語はレンチウイルスゲノムのすべてまたは一部を含み、この場合、核酸は一本鎖または二本鎖であってよい。「レンチウイルス核酸」という用語は、レンチウイルスのヌクレオチド配列に加えて、異種性ヌクレオチド配列(例えば、検出可能マーカーをコードするヌクレオチド配列のような非レンチウイルス性ヌクレオチド配列;非レンチウイルス性対照エレメントなど)を含む核酸を含む。「レンチウイルス核酸」という用語は、天然のレンチウイルスヌクレオチド配列;レンチウイルスヌクレオチド配列の変異型;および合成レンチウイルスヌクレオチド配列を含む核酸を含む。「レンチウイルス核酸」という用語は、レンチウイルスのマイナス鎖DNAを含む核酸を含む。多くの態様において、レンチウイルスゲノムにおける変異の数を測定する工程、特にレンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性の変異数を測定する工程を伴うアッセイでは、レンチウイルスマイナス鎖DNAを含むレンチウイルス核酸が用いられる。
【0045】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の対照におけるVif活性のレベルに比して、Vif活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上減少させる物質である。
【0046】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gレベルと比べて、細胞内の活性APOBEC3Gの量を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0047】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルス核酸の変異数と比べて、レンチウイルス核酸の変異(例えば、APOBEC3G誘導性変異)の数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0048】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の不活性APOBEC3Gレベルと比べて、真核細胞において酵素的に不活性型のAPOBEC3Gの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を酵素的に活性型のAPOBEC3Gに転換する物質である。
【0049】
APOBEC3Gレベル
いくつかの態様において、本スクリーニング法は、Vifタンパク質が存在する場合の細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。従って、いくつかの態様において、その方法は、VifおよびAPOBEC3Gを産生する細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0050】
これらの態様において、関心対象の被験物質は、Vifタンパク質が存在し、かつ、被験物質が添加されない場合のAPOBEC3Gレベルと比べて、Vifタンパク質が存在する場合のAPOBEC3Gレベルを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍以上増加させる。
【0051】
細胞によって産生されるAPOBEC3Gタンパク質は、GenBankアクセッション番号NP_068594において提供されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異型を持つ可能性がある。例えば、APOBEC3Gタンパク質はNP_068594において提供される配列のアミノ末端および/またはカルボキシル末端からの1〜50個のアミノ酸の切断を含むことができる。用いられるAPOBEC3Gタンパク質は、例えば、その配列が1個〜約20個のアミノ酸置換を含むことができるなど、NP_068594において提供される配列と1個〜約20個のアミノ酸が異なることができる。典型的には、用いられるAPOBEC3Gタンパク質は固有の天然のタンパク質のシチジンデアミナーゼ活性を保持する。適切なAPOBEC3Gタンパク質には、APOBEC3G、およびAPOBEC3Gタンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端にインフレームで融合した異種タンパク質(「融合パートナー」)を含む融合タンパク質も含まれる。適切な融合パートナーには、例えば6Hisなどの例えば(His)nの精製を容易にするペプチドおよびポリペプチド;例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン、
FLAG、
c-myc、
などのエピトープタグを提供するペプチドおよびポリペプチド;例えば、検出可能な産物(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)を産生する酵素のような検出可能なシグナルを発するペプチドおよびポリペプチド、または例えば蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)などのようにそれ自体が検出可能であるタンパク質が含まれる。いくつかの態様において、APOBEC3Gタンパク質はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0052】
細胞によって産生されるVifタンパク質は、任意の公知のレンチウイルスVifタンパク質のアミノ酸配列を有しても良い。例えば、HIV-1のVifタンパク質のアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AAP33677、AAN74526、AAN74517、AAP29646、AAD10945、AAD10937、AAD10929などにおいて提供される。
【0053】
多くの態様において、Vifが存在する場合のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響は、VifおよびAPOBEC3Gのコード配列を含む発現ベクター(典型的には異なるベクター)をインビトロ培養において適切な真核細胞に導入して、VifおよびAPOBEC3Gタンパク質を産生する遺伝子改変細胞を製造する工程;遺伝子改変細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、遺伝子改変細胞によって産生されるAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程によって調べられる。
【0054】
Vifタンパク質のコード領域(細胞内でのVifタンパク質の産生のため)またはAPOBEC3Gのコード領域(細胞内でのAPOBEC3Gの産生のため)を含むように、真核細胞での発現に適した発現ベクターが構築される。VifまたはAPOBEC3Gコード領域を含む発現ベクターは、一般に、機能的に連結したVifまたはAPOBEC3Gをコードするポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼすために必要な調節配列(「制御配列」または「制御領域」)を含む。発現ベクターは、典型的には、転写開始領域、プロモーター領域、VifまたはAPOBEC3Gをコードするヌクレオチド配列、および転写終止領域を含む。適切なプロモーターは構成的プロモーターおよび誘導型プロモーターを含み、その多くは当技術分野において周知である。発現ベクターは、一般に、VifまたはAPOBEC3Gタンパク質をコードする核酸配列の挿入に備えるために、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を持っている。発現宿主において機能する選択マーカーが存在する場合もある。
【0055】
発現ベクターは、リン酸カルシウム沈降法;電気穿孔法;感染(発現ベクターがウイルス粒子にパッケージングされる場合);リポソーム介在性トランスフェクションなどを含む、任意の慣例的方法を用いて真核細胞に導入される。適切な細胞は真核細胞であり、典型的には、霊長類細胞を含む哺乳動物細胞、例えば、COS細胞、293T細胞、Jurkat細胞、H9細胞などを含む不死化細胞株などであるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
被験物質がVifに誘導されるAPOBEC3Gタンパク質レベルの減少を阻害するか否かについては、細胞内の特定のタンパク質レベルを測定するための、任意の公知の方法によって調べることができる。いくつかの態様において、アッセイは、APOBEC3G特異的抗体を用いた免疫学的アッセイである。そのような方法には、細胞抽出物からAPOBEC3Gを免疫沈降させる工程、およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)により免疫沈降したAPOBEC3Gを分析する工程;APOBEC3Gおよび検出可能なシグナルを発する融合パートナーを含む融合タンパク質を産生する細胞内の検出可能融合パートナーを検出する工程;APOBEC3Gを産生する細胞に由来するAPOBEC3Gの標準的SDS-PAGEおよび免疫ブロット(例えば、タンパク質をSDS-PAGE中に得られたゲルから膜に移して、その膜を検出可能なように標識した抗体で探査する工程)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
その他の態様において、アッセイはAPOBEC3G融合タンパク質の融合パートナーを検出するアッセイである。従って、例えばAPOBEC3Gが、APOBEC3Gおよび融合パートナーとして検出可能なシグナルを発するタンパク質を含む融合タンパク質の一部である場合、そのアッセイはその融合パートナーを検出する。融合パートナーには、緑色蛍光タンパク質(GFP);花虫類(Anthozoa)由来の蛍光タンパク質(例えば、Matz et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17: 969-973を参照されたい);ルシフェラーゼ;β-ガラクトシダーゼなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。APOBEC3G融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物が真核細胞に導入される。細胞内で産生されるAPOBEC3Gタンパク質の量はその融合パートナーを検出することによって測定される。融合パートナーが免疫学的タグである場合は、免疫学的アッセイ(タンパク質ブロッティング法、ELISAなど)が用いられる。融合パートナーが検出可能な産物を生成する酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)である場合は、酵素アッセイが用いられる。蛍光発生性の融合パートナーの検出には、蛍光定量アッセイが用いられる。発光性の産物を生じる融合パートナーの検出にはルミノメーターが用いられる。融合パートナーは、融合パートナーに適した任意の公知の方法によって検出される。融合パートナーは、細胞抽出物において、融合パートナーに適したアッセイ(例えば、酵素アッセイ、免疫学的アッセイなど)を用いて検出される;または例えばフローサイトメトリーを用いて、無傷細胞中の融合パートナーが検出される。例えば、融合パートナーが蛍光シグナルを発する場合は、いくつかの態様において、APOBEC3Gレベルはフローサイトメーターを用いて測定される。
【0058】
以下は、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定するための適切なアッセイの一つの非限定的な例である。細胞がルシフェラーゼ-APOBEC3G(luc-APOBEC3G)融合タンパク質を合成するように、哺乳動物細胞(例えば、不死化細胞株)にルシフェラーゼ-APOBEC3G融合タンパク質のコード配列を含む発現ベクターを安定的にトランスフェクトする。基質が細胞に侵入するようにルシフェラーゼの基質を細胞培養培地に加えて、発光性産物を生じるようにルシフェラーゼ-APOBEC3Gのルシフェラーゼ部分によって機能させる。細胞内のルシフェラーゼレベルはルミノメーターを用いて検出して、luc-APOBEC3Gの量は相対発光量として表す。Vif/luc-APOBEC3G細胞を得るために、細胞にVifのコード配列を含む発現ベクターをトランスフェクトする。Vifはluc-APOBEC3Gの分解を誘導するので、Vif/luc-APOBEC3G細胞中にVifタンパク質が存在すると、Vifが存在しない場合のluc-APOBEC3Gレベルと比べて、luc-APOBEC3Gレベルが減少する。Vif/luc-APOBEC3G細胞をVif誘導性APOBEC3G分解を抑制する被験物質に接触させると、luc-APOBEC3Gレベルが被験物質を添加しない場合のVif/luc-APOBEC3G細胞中のluc-APOBEC3Gレベルに対して増加する。
【0059】
従って、いくつかの態様において、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定する方法は、Vifおよび検出可能なシグナルを発するタンパク質に融合したAPOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質(および、必要ならば、検出可能なシグナルを発するタンパク質の基質)に接触させる工程;および、もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gレベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定する方法は、VifおよびAPOBEC3G-ルシフェラーゼタンパク質を産生する細胞を被験物質およびルシフェラーゼの基質に接触させる工程;および、もしあれば、被験物質を添加しない場合の細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼレベルと比べて、細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼレベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼタンパク質レベルを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍以上増加させる物質は、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を阻害する物質である。
【0060】
細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法
いくつかの態様において、本発明は細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定する方法を提供する。これらの態様において、本スクリーニング方法は細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。この方法は、一般に、APOBEC3Gを産生する細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0061】
これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gレベルと比べて、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0062】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gの産生量と比べて、細胞内の活性APOBEC3Gの産生(例えば、合成)を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0063】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルス核酸の変異数と比べて、レンチウイルス核酸の変異(例えば、APOBEC3G誘導性変異)数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0064】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルスのマイナス鎖におけるC→U変異数と比べて、レンチウイルスのマイナス鎖におけるC→U変異数を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0065】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるキャプシド形成されたAPOBEC3Gを持つレンチウイルス粒子の割合と比べて、細胞によって産生されるキャプシド形成されたAPOBEC3Gを持つレンチウイルス粒子の割合を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0066】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるウイルスの感染性と比べて、細胞によって産生されるレンチウイルスの感染性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上低下させる物質である。
【0067】
その他の態様において、関心対象の被験物質は活性な低分子量APOBEC3G複合体を得るために不活性高分子量APOBEC3G複合体の分解を促進する物質である。これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の不活性高分子量APOBEC3G複合体レベルと比べて、真核細胞において、不活性高分子量APOBEC3G複合体の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を、酵素的に活性な低分子量APOBEC3G複合体へと分解を促進する物質である。
【0068】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の不活性APOBEC3Gレベルと比べて、真核細胞において酵素的に不活性型のAPOBEC3Gの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を、酵素的に活性型のAPOBEC3Gに転換する物質である。
【0069】
いくつかの態様において、細胞は内因性APOBEC3Gを産生する細胞である。その他の態様において、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響は、APOBEC3Gコード配列を含む発現ベクターをインビトロ培養において適切な真核細胞に導入して、APOBEC3Gタンパク質を産生する遺伝子改変細胞を製造する工程;遺伝子改変細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、遺伝子改変細胞によって産生される活性APOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程によって調べられる。
【0070】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルは様々な方法で測定することができる。いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gの産生を増加させる物質を特定するための本アッセイはAPOBEC3G産生レベルに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、マイナス鎖におけるC→U変異を誘導して、その結果、ウイルス逆転写においてG→A変異を誘導する、および/またはDNAコピーにおいてC→T変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、APOBEC3Gのレンチウイルス粒子へのパッケージングに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、その物質のウイルス感染性に対する影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、本アッセイは、不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0071】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイが、細胞によるAPOBEC3G合成量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、APOBEC3Gを産生する細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いたイムノブロッティングアッセイまたはAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いたELISAアッセイを用いてAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。細胞は通常、APOBEC3Gを放出するように溶解される。もう一つの例として、APOBEC3Gプロモーターの制御下においてAPOBEC3Gをコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物を含む細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いたイムノブロッティングアッセイまたはAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いたELISAアッセイを用いてAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。もう一つの非限定的な例として、APOBEC3Gプロモーターの制御下においてAPOBEC3Gのすべてまたは一部および検出可能なシグナルを発する検出可能な異種性タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、ヘマグルチニンなどのエピトープタグ)を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物を含む細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、また、その異種性タンパク質を当技術分野において周知の標準的アッセイを用いて検出することによってAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。
【0072】
いくつかの態様において、細胞質のAPOBEC3Gレベルが検出される。いくつかの態様において、レンチウイルスに感染していない細胞の細胞質における活性APOBEC3Gレベルを増加させることが有利である。 このような細胞がレンチウイルスに感染すると、細胞の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルが増加して、その結果、APOBEC3G誘導性のレンチウイルスゲノムの変異の数が増加し、細胞によって産生される感染性ウイルスレベルが減少する。これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の非感染細胞の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルと比べて、非感染細胞(例えば、レンチウイルスに感染していない細胞)の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる。被験物質が細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを増加させるか否かについては、任意の公知のアッセイ(例えば、シチジンデアミナーゼアッセイ)を用いて調べることができる。被験物質が細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを増加させるか否かは、例えば、実施例に述べられるように、APOBEC3G特異的抗体を用いた核および細胞質画分のイムノブロッティングによって容易に調べられる。
【0073】
活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイが、レンチウイルスマイナス鎖におけるC→U変異を誘導して、その結果、ウイルス逆転写におけるG→A変異を誘導する、および/またはDNAコピーにおいてC→T変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、レンチウイルスマイナス鎖に誘導されるC→U変異数は、被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーを鋳型とし、TaqポリメラーゼまたはPfuポリメラーゼを用いて増幅されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物を検出することによって測定することができる。Taqポリメラーゼはウラシルを含む鋳型を複製して、Pfuポリメラーゼはウラシルを含む鋳型は容易には複製しない。Taqポリメラーゼを用いて実施されるPCRでは(使用されるプライマーの位置に基づいて)予想されるサイズの産物が得られるが、Pfuポリメラーゼを用いて実施されるPCRではTaqで産生される産物よりも大幅に少ない量が産生される。もう一つの例として、Taqポリメラーゼおよび鋳型として被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーを用いて増幅されるPCR産物の配列が決定されて、G→A置換の存在が検出される。従って、例えばいくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルは被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数を検出することによって測定される。被験物質が細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる場合、被験物質を添加する場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数は被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数よりも多いことが予測される。
【0074】
いくつかの態様において、APOBEC3G誘導性のレンチウイルス核酸における変異数は、インビトロにおけるシチジンデアミナーゼアッセイを用いて測定される。例えば、脱アミノ化のための放射標識されたオリゴヌクレオチド基質を、APOBEC3Gを含まないまたは含む被験試料と共にインキュベートする。適切な基質はAPOBEC3G作用のための標的であるデオキシシチジンを含む。APOBEC3Gはシトシン塩基を脱アミノ化してウラシルに変化させる。ウラシルはウラシルDNAグリコシラーゼ(UDGまたはUNG)の作用に対して感受性である。酵素反応にUDG/UNGを加えるとオリゴヌクレオチドからウラシル塩基が除去されて、シチジン脱アミノ部位に脱塩基部位が生じる。次いで、この脱塩基部位におけるオリゴヌクレオチドのリン酸-糖骨格はアルカリ加水分解に対して感受性である。従って、反応にNaOHを加えると、脱アミノ部位に開裂が生じる。開裂はアクリルアミド-尿素ゲルを用いた電気泳動法によってモニターされ、それによってAPOBEC3G活性は、より長い基質であるオリゴヌクレオチドから派生するより短い開裂産物の生成によってスコア化され、この場合、開裂は脱アミノ部位において特異的に生じる。
【0075】
活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定するための本アッセイが、APOBEC3Gタンパク質のウイルスキャプシド形成レベルを測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、レンチウイルス粒子を産生する被験細胞(例えば、HIVなどのレンチウイルスによる感染に対して感受性の細胞;例えば、細胞表面にCD4+、CCR5、およびCXCR4を発現する細胞)を被験物質と接触させて、細胞上清中のウイルス粒子についてAPOBEC3Gの存在を分析することによってウイルス粒子中のAPOBEC3Gレベルを測定する。例えば、細胞上清に含まれるウイルス粒子をウイルス構築物のトランスフェクション後24〜48時間に回収して、細胞破壊片を除去し(例えば、遠心分離によって)、ウイルス粒子を濃縮する。ウイルス粒子中のAPOBEC3Gは免疫学的アッセイを用いて検出する。例えば、APOBEC3Gは、ウイルス粒子が溶解され、タンパク質がゲル上で分離されてナイロン膜またはその他のタイプの膜のような固相支持体に移されて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いて膜上のAPOBEC3Gが検出されるイムノブロットアッセイにおいて検出される。
【0076】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイがレンチウイルス感染性のレベルを測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、CD4+細胞における1回力価測定アッセイを用いて被験物質を添加する場合および添加しない場合のウイルス力価を測定することによって調べることができる。適切なアッセイは、許容性被験細胞(例えば、HIVなどのレンチウイルスによる感染に対して感受性の細胞;例えば、細胞表面にCD4+、CCR5、およびCXCR4を発現する細胞)をレンチウイルス産生細胞(例えば、レンチウイルス構築物をトランスフェクトした細胞)から得られた上清に接触させる工程を伴ってもよく、その被験細胞は機能的に結合されたHIVの長い末端反復配列(LTR)の転写制御下において検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)など)のコード配列を含むために、細胞に感染性のHIVウイルス粒子が感染するとHIV LTRが活性化して検出可能なマーカーが産生される。被験細胞への感染にはウイルス粒子を含む細胞上清が用いられて、被験細胞の感染は検出可能マーカーのアッセイによって検出される。被験物質に接触させたレンチウイルス産生細胞の細胞上清を、被験物質に接触させていない同一細胞の細胞上清と比較する。感染した被験細胞の数が、細胞上清中のウイルス粒子の感染性の指標である。検出可能マーカーが緑色蛍光タンパク質である場合、感染性は蛍光標示式セルソーターを用いて判定することができる。検出可能マーカーがβ-ガラクトシダーゼである場合、感染性は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-β-D-ガラクトシダーゼ染色により判定することができる。例えば、Mangeat et al.((2003) Nature 424: 99-103を参照されたい。多量の活性APOBEC3Gを持つHIV感染細胞の上清におけるHIVウイルス粒子の感染性は、少量の活性APOBEC3Gを持つHIV感染細胞の上清におけるHIVウイルス粒子の感染性よりも低いことが予想される。
【0077】
本方法が不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、細胞内の高分子量APOBEC3G複合体および低分子量APOBEC3G複合体の量は、例えば、被験物質に接触させておいた細胞の溶解、および溶解物のサイズ排除FPLCを行うことによって測定することができる。
【0078】
APOBEC3GへのVif結合を阻害する物質を特定する方法
いくつかの態様において、本発明はVifポリペプチドとAPOBEC3GまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法を提供する。その方法は、一般に、VifポリペプチドおよびAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、VifとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、VifポリペプチドとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法は、細胞に基づいた方法である。その他の態様において、VifポリペプチドとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法は、細胞を用いない方法である。
【0079】
VifおよびAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との結合複合体形成は、任意の公知の方法を用いて検出され得る。適切な方法には、酵母二重ハイブリッド法;FRETアッセイ;BRETアッセイ;蛍光消光アッセイ;蛍光異方性(anisotropy)アッセイ;免疫学的アッセイ;および検出可能なように標識されたタンパク質の固定化したタンパク質(例えば、GST-Vif)への結合を伴うアッセイが含まれる。
【0080】
免疫学的アッセイ、および検出可能なように標識されたタンパク質の固定化したタンパク質への結合を伴うアッセイは、様々な方法で変更することができる。免疫沈降法によるアッセイをデザインすることができ、この場合、Vif/APOBEC3Gポリペプチド複合体は、Vif特異的な抗体、APOBEC3Gに特異的な抗体、またはVif融合タンパク質の融合パートナーに特異的な抗体および/またはAPOBEC3G融合ポリペプチドの融合パートナーに特異的な抗体で沈降させることによって検出される。いくつかの態様において、APOBEC3Gタンパク質またはVifタンパク質は、不溶性の支持体に直接固定される。その他の態様において、APOBEC3Gタンパク質またはVifタンパク質は、二番目のタンパク質に融合または結合されて、その二番目のタンパク質は不溶性の支持体に固定される。不溶性の支持体には、マルチウェルプレートのようなプラスチック表面(例えば、ポリスチレンなど);磁気ビーズ、プラスチックビーズなどを含むビーズ;膜(例えば、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースなど)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
その他の態様において、アッセイは、固定されたAPOBEC3GへのVifの結合を検出する、または固定されたVifタンパク質へのAPOBEC3Gの結合を検出する結合アッセイである。いくつかの態様において、Vifポリペプチドは検出可能な標識で標識され、固定されたAPOBEC3Gポリペプチドへの結合が検出される。その他の態様において、APOBEC3Gポリペプチドは検出可能な標識で標識され、固定されたVifポリペプチドへの結合が検出される。その他の態様において、Vifポリペプチドは固定され、VifポリペプチドへのAPOBEC3Gポリペプチドの結合がAPOBEC3Gポリペプチド特異的な抗体を用いて検出されて、その抗体が直接標識されるか、または標識された二次抗体が用いられる。その他の態様において、APOBEC3Gポリペプチドは固定され、そのAPOBEC3GポリペプチドへのVifポリペプチドの結合がVifポリペプチドに特異的な抗体を用いて検出されて、その抗体が直接標識されるか、または標識された二次抗体が使用される。
【0082】
VifポリペプチドとAPOBEC3Gポリペプチドとの結合複合体の形成は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、異方性測定法および蛍光消光測定法を用いて検出することもできる。
【0083】
FRETは、励起状態のドナー蛍光体から近位にある受容体蛍光体へのエネルギーの転移を伴う。この転移が起こるためには、ドナーおよび受容体の分子が近位(例えば、10ナノメーターの距離よりも近い、通常は10から100Åの距離)になければならず、かつ、ドナー発光体の発光スペクトルが受容体発光体の励起スペクトルと重複しなければならない。これらの態様において、蛍光標識されたVifタンパク質は、例えばMatz et al., Nature Biotechnology (October 1999) 17: 969 973に述べられる蛍光タンパク質のような二番目の蛍光タンパク質または色素;「ヒト化」GFPを含む緑色蛍光タンパク質(GFP);例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、および第5,874,304号に述べられる発光オワンクラゲ(Aequoria victoria)由来のGFP、またはその蛍光変異体;例えばWO 99/49019およびPeelle et al. (2001) J Protein Chem. 20: 507-519に記載されるウミシイタケ(Renilla reniformis)、ラニラムレリ(Renilla mulleri)またはチロサルクスゲルニ(Ptilosarcus guernyi)のような別の種に由来するGFP;「ヒト化」組換え型GFP(hrGFP)(Stratagene);例えばクマリン、および例えば7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリンのような誘導体、Bodipy FLのようなボディピー色素、カスケードブルー、フルオレセインおよび例えばフルオレセインイソチオシアネートのような誘導体、オレゴングリーン、例えばテキサスレッド、テトラメチルローダミンなどのローダミン色素、エオジンおよびエリスロシン、例えばCy3およびCy5などのシアニン色素、例えばカンタム(quantum)色素などのランタニドイオンの大環状キレート、例えばルシフェラーゼなどの化学発光色素などの、その他の蛍光色素と共同してドナーおよび/または受容体として機能する。
【0084】
BRETは、生物発光ドナーから蛍光受容体タンパク質へのエネルギー転移に基づくタンパク質-タンパク質相互作用アッセイである。BRETのシグナルは、ドナーから放出される光量に対する受容体から放出される光量によって求められる。二つのタンパク質が接近すると、これら二つの値の割合が増加する。BRETアッセイについては、文献に詳細に説明されている。例えば、米国特許第6,020,192号、第5,968,750号および第5,874,304号;ならびにXu et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 151-156を参照されたい。BRETアッセイは、生物発光ドナータンパク質と蛍光受容体タンパク質との間の転移を分析することによって行うことができる。ドナータンパク質と受容体タンパク質との間の相互作用は、生物発光および蛍光タンパク質より放出される光の割合の変化によってモニターすることができる。本出願において、Vifタンパク質はドナーおよび/または受容体タンパク質として機能する。
【0085】
蛍光Vifは、Vifおよび例えばMatz et al.((1999) Nature Biotechnology 17: 969-973)に記載されるような蛍光タンパク質のような蛍光融合パートナー、任意の種に由来する緑色蛍光タンパク質またはその誘導体;例えばWO 99/49019およびPeelle et al. (2001) J Protein Chem. 20: 507-519に述べられるようなウミシイタケ、ラニラムレリまたはチロサルクスゲルニのような別の種に由来するGFP;「ヒト化」組換え型GFP(hrGFP)(Stratagene);例えば米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、および第5,874,304に記載されるような、オワンクラゲ由来のGFPまたはその蛍光変異体を含む構築物を製造することによって産生され得る。このような構築物の製造およびVif/蛍光タンパク質の融合タンパク質の産生は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0086】
あるいは、結合は蛍光異方性アッセイにより測定することができる。蛍光異方性アッセイについては、文献に詳細に述べられている。例えば、JamesonおよびSawyer (1995) Methods Enzymol. 246: 283-300を参照されたい。
【0087】
いくつかの態様において、本方法は、APOBEC3Gおよび細胞RNAを含む高分子量複合体(>700kD)へのVif結合を検出する工程を伴う。これらの態様において、スクリーニング方法は典型的には細胞に基づく方法である。細胞は一般に、前記のように適切な真核細胞におけるVifおよびAPOBEC3Gの産生に備える発現ベクターによって遺伝子改変される。VifおよびAPOBEC3Gの産生のための時間経過後、細胞を溶解して、溶解物についてAPOBEC3G複合体中のVifの存在を調べる。APOBEC3G複合体とVifとの結合を検出するための任意の公知の方法が適切である。非限定的な例は、実施例1に述べる通り、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)である。
【0088】
活性物質
本発明は、Vifの活性を抑制または阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質;および不活性高分子量APOBEC3G複合体を活性低分子量APOBEC3G複合体に転換させる物質をさらに提供する。多くの態様において、本発明のスクリーニング方法を用いて特定される物質が、特に関心の対象である。本物質はレンチウイルスの複製阻害に有効であり、従って、レンチウイルス感染症の治療に有効である。
【0089】
多くの態様において、物質は小分子であり、例えば50ダルトンよりも大きくて約2,500ダルトンよりも小さな分子量の小さな有機または無機化合物である。物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含んでもよく、少なくともアミン、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含んでよく、化学的官能基の少なくとも2つを含んでよい。物質は、上記の官能基の一つまたは複数と置換された環式炭素もしくは複素環式構造、および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含んでよい。物質は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせを含む生体分子からも見出される。
【0090】
いくつかの態様において、活性物質はペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)である。適切なペプチドには、約3アミノ酸から約50アミノ酸、約5アミノ酸から約30アミノ酸、約10アミノ酸から約25アミノ酸、約25アミノ酸から約50アミノ酸、約50アミノ酸から約75アミノ酸、または約75アミノ酸から約100アミノ酸までの長さのペプチドを含む。いくつかの態様において、ペプチドは直鎖状であり、その他の態様において、ペプチドは環状である。いくつかの態様においてペプチドは修飾され、例えばそのペプチドに共有結合または非共有結合により結合した一つまたは複数の非ペプチド成分を含む。適切な非ペプチド成分には、ポリエチレングリコール(PEG)成分;炭水化物成分;脂質成分;脂肪酸成分;ポリサッカライド成分;リン酸基などが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、活性ペプチドは、例えばインビボにおいて安定性および滞留時間を高める異種性ペプチド;細胞膜の通過を容易にする異種性ペプチド;細胞表面受容体に結合する異種性ペプチド;二量体化に備える異種性ペプチド;エピトープタグを提供する異種性ペプチド;検出可能シグナルを発する異種性ペプチドなどに結合する。
【0091】
ペプチドは、天然および非天然に生じるアミノ酸を含むことができる。ペプチドは、D-アミノ酸、D-およびL-アミノ酸の組み合わせ、ならびにペプチドに特殊な性状を付与する様々な「デザイナー」アミノ酸(例えばβ-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、およびNα-メチルアミノ酸など)を含んでよい。さらに、ペプチドは環式ペプチドであってもよい。ペプチドは、特定の配座モチーフを導入するために非古典的アミノ酸を含んでよい。任意の公知の非古典的アミノ酸を使用することができる。非古典的アミノ酸には、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート;(2S,3S)-メチルフェニルアラニン、(2S,3R)-メチル-フェニルアラニン、(2R,3S)-メチル-フェニルアラニン、および(2R,3R)-メチル-フェニルアラニン;2-アミノテトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸;ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート;β-カルボリン(D体およびL体);HIC(ヒスチジンイソキノリンカルボン酸);およびHIC(ヒスチジン環状尿素)が含まれるが、これらに限定されるものではない。アミノ酸類似体およびペプチド模倣物は、LL-Acp(LL-3-アミノ-2-プロペニドン-6-カルボン酸)、β-ターンを誘導するジペプチド類似体;β-シート誘導類似体;βターン誘導類似体;α-ヘリックス誘導類似体;γ-ターン誘導類似体;Gly-Alaターン類似体;アミド結合した同配体;トレトラゾルなどを含むがこれらに限定的ではない特異的な二次構造を誘導またはこれに有利に作用するように、ペプチドに組み込むことができる。
【0092】
ペプチドはデプシペプチドであってもよく、これは直鎖状および環状デプシペプチドであってよい。Kuisle et al. (1999) Tet. Letters 40: 1203-1206。「デプシペプチド」は少なくとも2つのα-アミノ酸および少なくとも一つのα-ヒドロキシカルボン酸の配列を含む化合物であって、それらはヒドロキシカルボン酸から派生する少なくとも一つの通常のペプチド結合およびエステル結合によって結合し、「直鎖状デプシペプチド」はS-S架橋を介して、またはヒドロキシ-もしくはメルカプトアミノ酸のヒドロキシル基もしくはメルカプト基、および別のアミノ酸またはヒドロキシ酸のカルボキシル基を介して形成される環を含むことはできるが、ヒドロキシカルボン酸に由来するペプチドまたはエステル結合のみを介して形成される環は含まない。「環状デプシペプチド」は、ヒドロキシカルボン酸から派生するペプチドまたはエステル結合のみを介して形成される少なくとも一つの環を含むペプチドである。
【0093】
ペプチドは環式または二環式であり得る。例えば、カルボキシル基またはエステルの-OHまたはエステル(-OR)がそれぞれN末端のアミノ基で内部置換することによって環式ペプチドを形成するように、C末端カルボキシル基またはC末端エステルの環化を誘導することができる。例えば、合成および開裂によってペプチド酸を生じた後、遊離酸は、塩化メチレン(CH2Cl2)、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物等の溶液中のジシクロヘキシカルボジイミド(DCC)のような適切なカルボシキル基活性化物質によって活性化エステルに転換される。続いて、N末端アミンを用いた活性化エステルの内部置換によって、環式ペプチドが形成される。重合とは対照的に内部環化は、非常に薄い溶液を使用しても促進され得る。環式ペプチドを製造する方法は、当技術分野において周知である。
【0094】
「二環式」という用語は、閉環が二つ存在するペプチドを意味する。その閉環は、ペプチド内のアミノ酸同士の共有結合によって形成される。隣接していない二つのアミノ酸の共有結合は、共有ペプチド結合によって既に結合されている隣接アミノ酸ペアとの間の第二の共有結合として、閉環を構成する。閉環を形成する共有結合はアミド結合であってもよく、すなわち一つのアミノ酸の一つの遊離アミノと二番目のアミノ酸の遊離カルボキシルの間に形成される結合、またはペプチド内のアミノ酸の側鎖間もしくは「R」基間に形成される結合であってよい。従って、二環式ペプチドは「真」の二環式ペプチド、つまり、そのペプチドのN末端およびC末端の間のペプチド結合の形成によって環化されるペプチドであるか、「デプシ-二環式」ペプチド、すなわち末端アミノ酸がその側鎖分子を介して共有結合するペプチドであり得る。
【0095】
デスアミノまたはデスカルボキシ残基は、プロテアーゼに対する感受性を低下させるか、ペプチドの立体構造を制限するために、末端のアミノ基またはカルボキシル基がないようにペプチドの末端に組み込まれることができる。C末端の官能基には、アミド基、アミド低級アルキル基、アミドジ(低級アルキル)基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、およびカルボキシ基、ならびにその低級エステル誘導体、および薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。
【0096】
前記のN末端およびC末端の修飾に加えて、ペプチドまたはペプチド模倣物はそのペプチドの可溶性および循環半減期を亢進させるために、様々な親水性ポリマーの一つもしくはいくつかで修飾またはこれらに共有結合することができる。ペプチドへの結合に適した非タンパク性親水性ポリマーには、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールに例証されるようなポリアルキルエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキシアルケン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびセルロース誘導体、デキストランおよびデキストラン誘導体などが含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、このような親水性ポリマーは、約500から約100,000ダルトン、約2,000から約40,000ダルトン、または約5,000から約20,000ダルトンの範囲の平均分子量を持つ。ペプチドは、Zallipsky, S., Bioconjugate Chem., 6: 150-165 (1995); Monfardini, C, et al., Bioconjugate Chem., 6: 62-69 (1995);米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、第4,179,337号またはWO 95/34326に示される任意の方法を用いて、このようなポリマーを用いて誘導体形成されるか、またはこのようなポリマーに結合することができる。
【0097】
活性ペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)は、いくつかの態様において、タンパク質軽質導入による細胞質膜を介しての取り込みを可能とするために、アルギニン残基を含むデカペプチドに抱合される。このような修飾によって、ペプチドは高い効率で(例えば、細胞質膜を介して)細胞に侵入することができる。
【0098】
いくつかの態様において、活性ペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)はペプチドアプタマーである。ペプチドアプタマーは、タンパク質機能の優勢阻害剤として機能するペプチドまたは小さなポリペプチドである。ペプチドアプタマーは標的タンパク質に特異的に結合して、それらの機能能力を遮断する。KoloninおよびFinley (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 14266-14271。ペプチドアプタマーの選択性が高いために、特定のタンパク質のターゲッティングばかりでなく、所与のタンパク質の所与の機能(例えば、タンパク質結合機能)のターゲティングにも使用することができる。さらに、ペプチドアプタマーは時間的、空間的または誘導的方法で発現を調節するプロモーターを使用することによって、制御された形で発現させることができる。
【0099】
標的タンパク質に対して高い親和性および特異性を持って結合するペプチドアプタマーは、当技術分野において公知の様々な技術で単離することができる。ペプチドアプタマーは、酵母二重ハイブリッドスクリーニングによってランダムペプチドライブラリから単離することができる(Xu et al., (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 12473-12478)。それらは、ファージライブラリ(Hoogenboom et al., Immunotechnology (1998) 4: 1-20)または化学的に作出されたペプチド/ライブラリから単離することもできる。
【0100】
真核細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質には、高分子量複合体におけるAPOBEC3Gの含有を阻止または抑制する物質;高分子量APOBEC3G複合体の分解を媒介する物質;および細胞による活性APOBEC3Gタンパク質の産生を増加させる物質が含まれる。
【0101】
活性APOBEC3Gの産生を増加させる物質には、例えばCD3に対する抗体(例えば、Orthoclone OKTe(登録商標)ムロモナブ-CD3)など)のような抗体;例えばIL-2(例えば、Proleukin(登録商標)IL-2(アルデスロイキン))のようなサイトカイン;IL-15;例えばプロストラチン(12-デオキシホルボル-13-アセテート)、ホルボル-12-ミリステート-13-アセテートなどのホルボルエステル;例えばフィトヘマグルチニンのようなレクチン;マイトジェンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gの量を増加させるために、前記の物質の一つまたは複数の組み合わせが使用される。
【0102】
不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する物質には、タンパク質-タンパク質相互作用を崩壊させる物質;RNアーゼ;APOBEC3Gホモ二量体化を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;APOBEC3GとRNAとの結合を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;APOBEC3Gと高分子量APOBEC3G複合体に含まれるその他のポリペプチドとの結合を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;HMW APOBEC3G複合体中のRNAをターゲッティングする低分子干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスRNA;HMW APOBEC3G複合体のタンパク質成分をコードするmRNAをターゲッティングするsiRNAまたはアンチセンスRNAなどが含まれる。
【0103】
APOBEC3Gホモ二量体化を阻害する、および/もしくはHMW APOBEC3G複合体の形成を阻害する、および/もしくは不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する、および/もしくはVif活性を阻害するペプチド物質には、APOBEC3Gのアミノ末端に対応するペプチド、およびAPOBEC3Gのカルボキシル末端に対応するペプチドが含まれるが、これらに限定されるものではない。使用に適した例示的な非限定的ペプチドには、APOBEC3Gのアミノ末端の40個のアミノ酸の、例えば、約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約30、または約30から約40個の隣接するアミノ酸を含むペプチドが含まれる。例えば、適切なペプチドは次のペプチド
およびその変異体の約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約30、または約30から約40個の隣接するアミノ酸を含む。その他の例示的ペプチドは、次のペプチド
の約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約25個の隣接するアミノ酸を含み、SEQ ID NO:6に示される配列を持つペプチドの完全長までのペプチド;ならびに前記の任意のペプチドの変異体(例えば、前記のペプチドとはアミノ酸配列が約1アミノ酸から約10アミノ酸だけ異なるペプチド)が含まれる。上記の任意の環化型ペプチド、および、例えば上記のようにペプチドに共有結合した一つまたは複数のポリエチレングリコール成分の付加による修飾(例えば、PEG化ペプチド)、一つまたは複数の糖鎖の付加による修飾などの、一つまたは複数の修飾を持つ上記の任意のペプチドも使用に適している。
【0104】
Vifに誘導されるAPOBEC3Gの分解を抑制するペプチド物質には、APOBEC3Gのアミノ末端部分の約5個から約100個の隣接するアミノ酸を含むペプチド、例えば、APOBEC3Gのアミノ末端部分の約5から約10、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、約70から約80、約80から約90、または約90から約100個の隣接するアミノ酸を含むペプチドが含まれる。例えば、Vifに誘導されるAPOBEC3Gの分解を抑制する適切なペプチド物質には、SEQ ID NO:7に示される配列を持つペプチドの約5から約10、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、約70から約80、約80から約90、または約90から約100個の隣接アミノ酸を含むペプチドが含まれる。前記の任意のペプチドの変異体(例えば、前記ペプチドとはアミノ酸配列が約1アミノ酸から約10アミノ酸だけ異なるペプチド)も使用に適している。上記の任意の環化型ペプチド;および例えば、上記のようにペプチドに共有結合した一つまたは複数のポリエチレングリコール成分の付加による修飾(例えば、PEG化ペプチド)、一つまたは複数の糖鎖の付加による修飾などの、一つまたは複数の修飾を持つ上記の任意のペプチドも使用に適している。
【0105】
レンチウイルス感染症の治療方法
本発明は、個人におけるレンチウイルス感染症の治療方法を提供する。いくつかの態様において、その方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、本物質をその個人においてレンチウイルス感染細胞のVif活性を阻害するために有効な量で投与する工程、およびそれによってレンチウイルス感染症を治療する工程を伴う。その他の態様において、方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、レンチウイルス感染に感受性の細胞における活性APOBEC3Gの量を増加させる物質の有効量を投与する工程を伴う。その他の態様において、方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、レンチウイルス感染に感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の有効量を投与する工程を伴う。
【0106】
いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる量および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0107】
いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞における活性APOBEC3Gタンパク質の量を増加させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる、および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0108】
いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる、および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0109】
いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量はCD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。ヒト血液の場合、正常範囲内であると考えられるCD4+-T細胞の数は、血液1mm3当たりCD4+-T細胞約600個から約1500個である。
【0110】
いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質の治療上有効な量は、CD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。
【0111】
いくつかの態様において、HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、CD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。
【0112】
レンチウイルス感染症の治療には、レンチウイルス感染を予防する工程、レンチウイルス感染の可能性を抑制する工程、感染細胞から感受性細胞へのレンチウイルスの拡散を抑制する工程、レンチウイルスに感染した個人におけるウイルス量を減少させる工程、レンチウイルスに感染した個人におけるウイルスにコードされるポリペプチドの量を減少させる工程、およびレンチウイルスに感染した個人におけるCD4 T細胞数を増加させる工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
投与される本物質の量はその薬剤の性状によって異なる。一つの非限定的な例として、本物質は約0.2mg/kg/日から約20mg/kg/日の範囲で投与することができる。投与量の決定は、動物モデル(例えば、非ヒト霊長類モデル)を用いて薬物動態学に基づいて、例えば種間スケーリングの等式予測を用いて用量を関連付けることによって決定することができる。通常は、最も低い有効量が用いられる。
【0114】
治療方法が有効かどうかを調べるために、任意の様々な方法を用いることができる。例えば、本発明の方法がレンチウイルス量の抑制、および/またはレンチウイルス感染症の治療に有効であるかどうかを調べる方法はレンチウイルス感染の徴候に関する任意の公知の試験であり、例えばレンチウイルスポリヌクレオチド配列に特異的なポリマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて例えば生物学的試料中のレンチウイルス量の測定による、ウイルス量を測定する工程;例えばそのポリペプチドに特異的な抗体を用いた酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)のような免疫学的アッセイを用いて、例えばp24、gp120、逆転写酵素などのレンチウイルスにコードされるポリペプチドを検出および/または測定する工程;ならびに個人におけるCD4+ T細胞数を測定する工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
レンチウイルス感染症(またはレンチウイルス感染症に関連する何らかの徴候)をアッセイする方法は当技術分野において公知であり、HIV Protocols(Methods in Molecular Medicine, 17)N.L. MichaelおよびJ. H. Kim, eds. (1999) Humana Pressのような多くの刊行物に述べられている。
【0116】
製剤、投与量、および投与経路
一般に、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は宿主への送達のために薬学的に許容される組成物として調製される。「活性物質」、「薬剤」、「物質」、「治療用物質」などの用語は、本明細書では互換的に用いられる。本物質との併用に好ましい薬学的に許容される担体は非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液の無菌水溶液を含んでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルである。水性担体は、水、アルコール溶液/水溶液、乳濁液または懸濁液、ならびに生理食塩液および緩衝媒質を含む微粒子を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム液、リンガーデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンガー油または不揮発性油を含む。静脈内注射用のヒビクルは、補液および栄養補充剤、(リンガーデキストロースを基剤とするもののような)電解質補充剤などを含む。本物質を含む組成物は、本発明に基づくその後の再溶解および使用に備えて、当技術分野において周知の方法を用いて凍結乾燥してよい。
【0117】
製剤
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、薬学的に許容される賦形剤を含む製剤として、それを必要とする個人に投与される。当技術分野では薬学的に許容される様々な賦形剤が公知であり、本明細書において詳細に考察する必要はない。 薬学的に許容される賦形剤は、例えば、A. Gennaro (2000) "Remington : The Science and Practice of Pharmacy", 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999) H. C. Ansel et al., eds 7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A. H. Kibbe et al., eds., 3rd ed. Amer. Pharmaceutical Assoc.を含む様々な刊行物において詳細に述べられている。
【0118】
本方法において、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、所望のVif活性の抑制および/または活性APOBEC3G量の増加を引き起こすことのできる、任意の慣例的方法を用いて宿主に投与され得る。従って、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、治療目的の投与のために様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は薬学的に許容される適切な担体または希釈剤と組み合わせることによって製剤化して薬学的組成物とすることができ、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入剤およびエアロゾルのような固体、半固体、液体またはガス剤の形で製剤化して調製剤としてもよい。
【0119】
薬学的投与剤形の場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は薬学的に許容される塩の形で投与してもよく、単独もしくはその他の薬学的に活性な化合物と適切に関連および併用してもよい。次の方法および賦形剤は単なる例証であって、決して限定的ではない。
【0120】
経口調製物の場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は単独、または、例えば、乳糖、マンニトール、コーンスターチまたは馬鈴薯デンプンのような通常の添加物;結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤;コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのような崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ならびに望ましいならば希釈剤、緩衝物質、保湿剤、保存剤、および香料を用いてタブレット、粉末、顆粒もしくはカプセルとするための適切な添加物と併用して使用することができる。
【0121】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、それらを植物油またはその他の同様の油、合成脂肪族系酸グリセリド、高級脂肪族系酸のエステルもしくはプロピレングリコールのような水性または非水性溶媒に、望ましいならば、溶解剤、等張物質、懸濁物質、乳化物質、安定剤、および保存剤のような通常の添加物を加えて溶解、懸濁、または乳化することによって注射用調製物に製剤化することができる。
【0122】
物質は、吸入により投与されるエアロゾル製剤として使用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧した許容される噴霧剤に製剤化されることができる。
【0123】
さらに、物質は、乳化基剤または水溶性基剤のような様々な基剤と混合することによって、坐剤とすることができる。活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、坐剤を介して直腸に投与することができる。坐剤には、体温では融解するが室温では固体のままであるココアバター、カーボワックス、およびポリエチレングリコールのようなビヒクルを加えることができる。
【0124】
シロップ、エリキシル、および懸濁剤のような経口または直腸投与用の単位投与剤形が提供されてよく、例えば、茶さじ1杯、テーブルスプーン1杯、タブレット、または坐剤の各投与単位は一つまたは複数の活性物質を含む組成物の予め定められた量を含む。同様に、注射または静脈投与用の単位投与剤形は、組成物中の活性物質を無菌水、生理食塩液、または別の薬学的に許容される担体中の溶液として含んでよい。
【0125】
本明細書で用いられるように「単位投与剤形」という用語は、ヒトおよび動物の被験体における一回投与として適切な物理的に分離した単位を示して、各単位は薬学的に許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと関連して、所望の効果を生じるために十分な量で算出された予め定められた量の活性物質を含む。所与の活性物質の内訳は、用いられる特定の化合物および達成されるべき効果、ならびに宿主において各化合物に関連する薬動力学に一部依存する。
【0126】
その他の投与モードも本発明において用いられる。例えば、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は坐剤として製剤化されてよく、いくつかの場合には、エアロゾルおよび鼻腔内組成物として製剤化され得る。坐剤の場合、ビヒクル組成物はポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドのような通常の結合剤および担体を含む。このような坐剤は、有効成分を約0.5%から約10%(w/w)、好ましくは約1%から約2%の範囲で含む混合物から作製することができる。
【0127】
鼻腔内製剤は、通常、鼻粘膜に対して刺激を惹起せず、また、繊毛の機能を著しく妨げることのないビヒクルを含む。水、水性生理食塩液、またはその他の公知の物質のような希釈剤を本発明と共に用いることができる。鼻腔用製剤には、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムのような保存剤を加えてよいが、これらに限定されるものではない。鼻粘膜による本タンパク質の吸収を促進するために、界面活性剤を加えてよい。
【0128】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、注射剤として投与することができる。典型的には、注射可能な組成物は溶液または懸濁液として調製される。注射前に液体ビヒクルへの溶解または懸濁に適した固形剤として調製してもよい。調製物は乳化されてもよく、有効成分はリポソームビヒクルに内包されてもよい。
【0129】
いくつかの態様において、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、腟内送達のために製剤化される。腟内投与のための本製剤は、腟内生体粘着性タブレット、腟内生体粘着性微粒子、腟内クリーム、腟内ローション、腟内泡沫剤、腟内軟膏、腟内ペースト、腟内液剤、または腟内ゲル剤として製剤化される。
【0130】
活性物質を含む本製剤は、賦形剤(例えば、庶糖、デンプン、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ブドウ糖、セルロース、タルク、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム)、結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、庶糖またはデンプン)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムまたはクエン酸カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルクまたはラウリル硫酸ナトリウム)、香料(例えば、クエン酸、メントール、グリシンまたはオレンジ粉末)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、またはプロピルパラベン)、安定剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、または酢酸)、懸濁剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはステアリン酸アルミニウム)、分散剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、希釈剤(例えば、水)、およびベースワックス(例えば、ココアバター、白色ワセリン、またはポリエチレングリコール)の一つまたは複数を含む。
【0131】
活性物質を含むタブレットは、適切なフィルム形成物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはエチルセルロースでコーティングしてよく、これに、例えばグリセロール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、または三酢酸グリセロールのような軟化剤;庶糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、または乳糖のような充填剤;水酸化チタンのような着色剤などの適切な賦形剤を加えてよい。
【0132】
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、望ましいならば、そのビヒクルに湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤のような少量の補助物質を加えることができる。このような投与剤形を調製する実際の方法は当業者に公知であるか、または明らかである。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 17th edition, 1985を参照されたい。いずれにしても、投与されるべき組成物または製剤は、治療を受ける被験体において所望の状態を達成するために十分な量の物質を含有する。
【0133】
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤のような薬学的に許容される賦形剤は容易に一般利用される。さらに、pH調整物質および緩衝物質、等張化調整物質、安定剤、湿潤剤などのような、薬学的に許容される補助物質も容易に一般利用される。
【0134】
投与量
用いられる用量は達成されるべき臨床目標に応じて異なるが、適切な用量範囲は約1μgから約100mgまで、例えば、約1μgから約25μg、約25μgから約50μg、約50μgから約100μg、約100μgから約250μg、約250μgから約500μg、約500μgから約1mg、約1mgから約25mg、約25mgから約50mg、または約50mgから約100mgの活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)が1回の投与で投与され得る用量である。あるいは、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)の目標投与量は、その物質の投与後最初の24〜48時間以内に採血される宿主血液の試料中でおおよそ約0.1〜1000μM、約0.5〜500μM、約1〜100μM、または約5〜50μMの範囲であると考えることができる。
【0135】
当業者は、服用レベルが具体的な化合物、症状の程度、および被験体の副作用に対する感受性の関数として変動し得ることを容易に認識する。所与の化合物の好ましい投与量について、当業者は様々な方法によって容易に求めることができる。
【0136】
いくつかの態様において、活性物質の一回用量が投与される。その他の態様において、活性物質の反復用量が投与される。期間を通して反復投与が行われる場合、活性物質は期間中、一日二回(qid)、毎日(qd)、一日おき(qod)、二日おき、週三回(tiw)、または週二回(biw)投与される。例えば、活性物質は、一日から約2年以上の期間を通してqid、qd、qod、tiwまたはbiwで投与される。例えば、活性物質は、様々な要因に応じて、1週間、2週間、1カ月、2カ月、6カ月、1年、または2年以上の期間にわたって上記のいずれかの頻度で投与される。
【0137】
一つの非限定的な例として、活性物質がAPOBEC3Gの量を増加させる場合、その物質はいくつかの態様においてオルソクローンOrthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3)のような抗CD3抗体である。これらの態様において、OKT3の適切な投与量は約5mg/日であり、約10日から約14日間の期間にわたって静脈内に単回ボーラス注入にて投与される。
【0138】
投与経路
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、全身および局所投与経路に加えて、インビボおよびエクスビボの方法を含む、薬剤送達に適した任意の実施可能な方法および経路を用いて個人に投与される。
【0139】
通常の薬学的に許容される投与経路には、鼻腔内投与、筋内投与、気管内投与、腫瘍内投与、経皮投与、皮下投与、皮内投与、局所適用、静脈内投与、腟内投与、経鼻投与、およびその他の非経口投与が含まれる。経口および直腸経路も適切な投与経路に含まれる。望ましいならば、投与経路はその物質および/または所望される効果に応じて組み合わせたり調節したりしてよい。その組成物は単回投与または反復投与として投与することができる。
【0140】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、全身または局所的な経路を含めて、通常の薬剤送達に適した任意の実施可能な通常の方法および経路を用いて宿主に投与することができる。一般に、本発明によって意図される投与経路には、経腸経路、非経口経路、または吸入経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0141】
吸入投与以外の非経口投与経路には、局所投与、腟内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、関節内投与、脊髄内投与、胸骨内投与、および静脈内投与、即ち、消化管を介さない任意の投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。物質の全身または局所送達を達成するために、非経口投与を実施することができる。全身送達が所望される場合、投与は一般に薬学的調製物の侵襲性または全身吸収性の局所または粘膜投与を伴う。
【0142】
物質は経腸投与によって被験体に送達することもできる。経腸投与経路には経口および直腸(例えば、坐剤を使用する)送達が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0143】
皮膚または粘膜を介して物質を投与する方法には、適切な薬学的調製物の局所適用、経皮的伝達、注入および表皮投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。経皮的伝達の場合、吸収促進剤またはイオン泳動が適切な方法である。イオン泳動による伝達は、それらの産物を無傷の皮膚から数日またはそれよりも長い期間にわたって電気的パルスを介して継続的に送達する市販の「パッチ」を用いて行うことができる。
【0144】
治療とは、宿主を苦しめる病理学的状態に関連する症状の少なくとも緩解を意味して、この場合、緩解は広義の意味で用いられ、単位血液当たりのウイルス粒子数のように少なくとも治療される病理学的状態に関連するパラメータ、例えば症状の規模の減少を示す。従って、治療には、病理学的状態または少なくともそれに関連する症状が、例えば発症が防止されるなど完全に阻害される、または例えば終了など停止して、宿主がもはやその病理学的状態もしくは少なくともその病理学的状態を特徴付ける症状に苦しまない状況が含まれる。
【0145】
様々な宿主(「宿主」という用語は、本明細書では「被験体」および「患者」という用語と互換的に用いられる)が本方法に従って治療可能である。一般に、このような宿主は「哺乳動物(mammals、mammalian)」であり、これらの用語は哺乳動物の分類に含まれる生物、およびレンチウイルス感染に対して感受性である霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を説明するために広く用いられる。多くの態様において、宿主はヒトである。
【0146】
併用療法
本物質は、少なくとも一つの二番目の治療用物質と組み合わせて(例えば、同一製剤として、または別々の製剤として)個人に投与することができる(「併用療法」)。本物質は二番目の治療用物質と混合して投与する、または別の製剤として投与することができる。別々の製剤として投与される場合、本物質および二番目の治療用物質は実質的に同時に(例えば、互いに約60分以内、約50分以内、約40分以内、約30分以内、約20分以内、約10分以内、約5分以内、または約1分以内)、または約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、または約72時間以上の間隔を空けて投与することができる。治療用物質の有効量は上記の通りである。
【0147】
抗ウイルス性感染症を治療するために、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗マイコバクテリア剤、抗生物質、殺アメーバ剤、殺トリコモナス剤、鎮痛剤、抗腫瘍剤、降圧剤、抗細菌剤、および/またはステロイド剤のような治療用物質を併用療法として投与することができる。いくつかの態様において、ウイルスまたは細菌感染症の見られる患者は一つまたは複数の本物質と次の一つまたは複数を組み合わせて投与される;βラクタム系抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、組換え型可溶性CD4(rsCD4)、抗受容体抗体(例えば、ライノウイルスに対する)、ネビラピン、シドフォビル(Vistide(商標))、ホスホノホルメート三ナトリウム(Foscarnet(商標))、ファムシクロビル、ペンシルクロビル、バラシクロビル、核酸/複製阻害剤、インターフェロン、ジドブジン(AZT、Retrovir(商標))、ジドブジン/ラミブジン(コンビビル)、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI、Videx(商標))、スタブジン(d4T、Zerit(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC、Hivid(商標))、ネビラピン(Viramune(商標))、ラミブジン(Epivir(商標)、3TC)、プロテアーゼ阻害剤、サキナビル(Invirase(商標)、Fortovase(商標))、リトナビル(Norvir(商標))、ネルフィナビル(Viracept(商標))、エファビレンツ(Sustiva(商標))、アバカビル(Ziagen(商標))、アンプレナビル(Agenerase(商標))、インディナビル(Crixivan(商標))、ガンシクロビル、AzDU、デラビルジン(Rescriptor(商標))、ロピナビル/リトナビル(カレトラ)、トリジビル、リファンピン、クラチロマイシン(clathiromycin)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(G-CSFおよびGM-CSF)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド阻害剤、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、アスパラギナーゼ、およびそれらの組み合わせ。抗HIV物質は、上記リストの内で、一つまたは複数のHIVタンパク質の機能を特に標的とする物質である。
【0148】
いくつかの態様において、本物質は二つ以上の抗HIV物質と共に併用療法として投与される。例えば、本物質は一つ、二つまたは三つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、コンビビル、Epivir、Hivid、Retrovir、Videx、Zerit、Ziagenなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、一つまたは二つの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、Rescriptor、Sustiva、Viramuneなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、一つまたは二つのプロテアーゼ阻害剤(例えば、Agenerase、Crixivan、Fortovase、Invirase、カレトラ、Norvir、Viraceptなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤およびヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤の一つまたは複数と対象阻害剤とのその他の組み合わせが企図される。
【0149】
キット、容器、装置、送達系
例えば、経口投与、腟内投与、直腸内投与、経皮投与、または注射可能投与(例えば、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射)の活性物質の単位用量を伴うキットが提供される。このようなキットには、単位用量入りの容器に加えて、その薬剤のHIV感染症の治療における用法および付随する恩典について説明する添付文書が添えられる。適切な活性物質および単位用量は、本明細書において前記に述べられる通りである。
【0150】
多くの態様において、本キットは、本方法の実施に関する説明書または同一内容を入手するための方法(例えば、ユーザーをその説明書が提供されるウェブページに誘導するウェブサイトのURL)をさらに含んで、これらの説明書は典型的には基体に印刷されて、その基体は添付文書、包装、製剤容器などの一つまたは複数であり得る。
【0151】
いくつかの態様において、本キットは、例えば、患者にその活性物質を適切な時刻または間隔で服用することを覚えさせるコンポーネントまたはシステムのような、患者の服薬遵守を向上させる一つまたは複数のコンポーネントまたは特徴を含む。このようなコンポーネントには、患者にその活性物質を適切な時刻または間隔で服用することを覚えさせるカレンダーシステムが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0152】
本発明は、Vif活性を阻害する活性物質、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質、またはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G(酵素的に活性な)複合体に転換させる活性物質を含む送達系を提供する。いくつかの態様において、その送達系は活性物質を含む製剤の皮下、静脈内、または筋肉内注射に備える送達系である。その他の態様において、その送達系は腟内送達系である。
【0153】
いくつかの態様において、活性物質は経口投与用に包装される。本発明は、活性物質の一日投与単位を含む包装単位を提供する。例えば、いくつかの態様において、その包装単位はタブレット、ピルなどを含む通常のブリスターパックまたはその他の任意の形である。そのブリスターパックは、厚紙、ボール紙、ホイル、またはプラスチックを裏材とする、密封されたブリスターパックに適切な数の単位投与剤形を含んで、適切な包装材で覆われている。各ブリスター容器には番号を振ることができ、例えば、一日目から始まるように別の方法で表示してもよい。
【0154】
いくつかの態様において、本送達系は注射器具を含む。例示的な非限定的薬剤送達装置は、ペン型注射器のような注射装置、および注射針/シリンジの装置を含む。いくつかの態様において、本発明は、Vif活性を阻害する活性物質、または細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる活性物質もしくはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる活性物質の有効量を含む製剤を予め充填した注射用送達装置を提供する。例えば、本送達装置は、Vif活性を阻害する活性物質、または細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる活性物質もしくはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる活性物質の単回用量を予め充填した注射装置を含む。本注射装置は再利用可能または使い捨て可能とすることができる。
【0155】
ペン型注射器は当技術分野において周知である。本発明の方法における用途に適合させることのできる例示的装置は、例えば、BD(商標)ペン、BD(商標)ペンII、BD(商標)オートインジェクターのようなBecton Dickinsonの様々な任意のペン型注射器;Innoject, Inc.のペン型注射器;米国特許第5,728,074号、第6,096,010号、第6,146,361号、第6,248,095号、第6,277,099号および第6,221,053号に開示される任意の医薬品送達用ペン型装置などである。医薬品送達用ペンは使い捨て可能、または再利用可能および再充填可能とすることができる。
【0156】
本発明は、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)の個人の腟内への腟内送達のための腟内送達系を提供する。その送達系は腟内に挿入するための装置を含む。いくつかの態様において、その送達系は、製剤を腟内に送達するためのアプリケーター、および活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を含む製剤を含む容器を提供する。これらの態様において、容器(例えば、チューブ)は製剤をそのアプリケーターに送達するために適用される。その他の態様において、送達系は腟内に挿入される装置を含み、その装置には活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)が含まれている。例えば、その装置はその活性物質を含む製剤でコーティングされる、その活性物質を含む製剤を含浸する、またはその活性物質を含む製剤をその他の方法で含む。
【0157】
いくつかの態様において、腟内送達系は本製剤を含むタンポンまたはタンポン様装置である。薬剤送達用タンポンは当技術分野で公知であり、このような任意のタンポンを本薬剤送達系と組み合わせて使用することができる。薬剤送達用タンポンは、例えば、米国特許第6,086,909号に述べられている。タンポンまたはタンポン様装置が用いられる場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)がその装置に組み込まれ得る多くの方法がある。例えば、薬剤をその装置の先端部にあるゲル様生体粘着性貯蔵部に組み込むことができる。あるいは、薬剤は粉末状物質の形でタンポンの先端部に位置付けることができる。薬剤は、例えば、その薬剤を薬学的に許容される担体に溶解して、その薬剤溶液をタンポン繊維に吸収させることによって、タンポンの先端部の繊維に吸着させることもできる。薬剤は、タンポンの先端部に適用されるコーティング材料に溶解することもできる。あるいは、その薬剤はタンポンの先端部に関連してセットされる挿入可能坐剤に含ませることができる。
【0158】
その他の態様において、その薬剤送達系は膣内リングである。腟内リングは、通常、送達されるべき活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を含むエラストマーのもう一つの層によってコーティングされる、不活性エラストマーリングから構成される。そのリングは、ユーザーによって容易に挿入されて、所望の期間(例えば、7日間まで)留めて、その後、回収することができる。そのリングは、薬剤を含まない第三の外側の速度制御エラストマー層を含んでもよい。任意で、その第三のリングは二重放出リングとして第二の薬剤を含むことができる。 その薬剤は、送達されるべき薬剤の貯蔵槽として機能するシリコン製エラストマーリングを介してポリエチレングリコールに取り込ませることができる。
【0159】
その他の態様において、本腟内送達系は腟内スポンジである。活性物質は、文献に述べられている通り、薬剤を含まない円柱状ポリウレタン腟内スポンジにコーティングしたシリコンマトリクスに組み込まれる。
【0160】
ペッサリー、タブレット、および坐剤は、本発明で用いることのできる薬剤送達系のその他の例である。これらの系は文献において詳細に説明されている。
【0161】
生体粘着性微粒子も、本発明での使用に適したもう一つの薬剤送達系を構成する。この系は、多くの坐剤製剤のように膣から流出しない多相性の液体または半固形の調製物である。その物質は膣の壁に密着して、一定期間を通して薬剤(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を放出する。これらの系の多くは鼻への使用のためにデザインされたが、膣内でも使用することができる(例えば、米国特許第4,756,907号)。その系は活性物質;およびその薬剤の取り込みを促進するための界面活性剤を含む微粒子を含んでよい。微粒子の直径は10〜100pmであり、デンプン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲンまたはデキストランから調製することができる。
【0162】
もう一つの系は、アプリケーターを用いて使用するために改変された本製剤を含む容器(例えば、チューブ)である。活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、アプリケーターを用いて膣に適用することのできるクリーム、ローション、泡沫剤、ペースト、軟膏、およびゲルに組み込まれる。医薬品をクリーム、ローション、泡沫剤、ペースト、軟膏、およびゲル状に調製するための過程は、文献全体を通して見出すことができる。適切な系の例は、商標JERGENS(商標)(Andrew Jergens Co., Cincinnati, Ohio)として販売されている製品のように、グリセロール、セラミド、鉱油、ワセリン、パラベン、香料、および水を含む標準的香料無添加の液剤である。本発明の組成物における使用に適した薬学的に許容される無毒の系は、医薬品製剤分野の業者には明らかであり、例はRemington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, A.R. Gennaro, ed., 1995に記載されている。適切な担体の選択は、例えば、活性成分がクリーム、ローション、泡沫剤、軟膏、ペースト、液剤、またはゲル剤に製剤されるか否かなどの望ましい特定の腟内投与剤形の正確な特徴、およびその活性成分の本質に依存する。その他の適切な送達装置は、米国特許第6,476,079号に記載された装置である。
【0163】
治療に適した被験体
本発明の方法は、レンチウイルスに感染した個人;レンチウイルスに感染する危険性のある個人;およびレンチウイルス感染症の治療を受けたが再発した個人の治療に適している。このような個人には、健常で免疫系は無傷であるが、HIVに感染する危険性のある個人(「危険にさらされている」個人)が含まれるが、これに限定されるものではない。危険にさらされている個人には、一般集団よりもHIVに感染する可能性が高い個人が含まれるが、これに限定されるものではない。HIVに感染する危険性のある個人には、HIVに感染した個人との性行為に起因するHIV感染の危険性のある個人;静脈内薬物使用者;HIVに感染した血液、血液製剤、またはその他のHIVで汚染された体液に暴露された可能性のある個人;およびHIVに感染した母親に育てられる乳児が含まれるが、これらに限定されるものではない。治療に適した個人には、HIV-1および/もしくはHIV-2、および/もしくはHIV-3もしくはそれらの任意の変異型に感染した個人、または感染する危険性のある個人が含まれる。
【0164】
本発明の方法を用いた治療に適した個人には、その他の抗ウイルス療法を用いた治療に対して不応性の、レンチウイルス感染症に感染した個人も含まれる。
【0165】
実施例
次の実施例は、当業者に本発明の作製および使用方法に関する詳細な開示および説明を提供するために記載するものであり、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定することは意図せず、また以下の実験が実施される実験のすべてまたは唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期すよう努力が払われているが、実験上の誤差および逸脱が考慮されるべきである。特記する場合を除いて、部分は重量に基づく部分であり、分子量は分子量の重量平均であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはこれに近いものである。例えば、bpは塩基対;kbはキロベース;plはピコリットル;sまたはsec.は秒;minは分;hまたはhrは時間など、標準的略号が用いられる場合がある。
【0166】
実施例1:HIV-1 VifによるAPOBEC3Gの抗ウイルス活性の遮断
実験手順
プラスミド
pNL4-3およびpNL4-3△Vif(別名:p-NLND)発現ベクターについては既に記載されている。Adachi et al.(1991). Arch Virol 117, 45-58;およびSakai et al. (1993) J Virol 67, 1663-1666. pcDNA3.1 APOBEC3G-HAおよびAPOBEC3G発現ベクターは、NG/C15レトロウイルスベクターに含まれるXhoI/EcoRI制限部位を用いてAPOBEC3G-HAカセットを切除して(Sheehy et al. (2002) Nature 418, 646-650)、続いて、その断片をpcDNA3.1の同一制限酵素部位にクローニングすることによって、製造された。pCMV4-HA-APOBEC3Gベクターを製造するために、APOBEC3G cDNAをH9 cDNAライブラリーからPCRによって増幅した後、pCMV4ベクターのHindIIIおよびXbaI部位に挿入した。GST-Vifは、pNL4-3ベクターに含まれるVifコード領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅して、続いてこの単位複製配列をpBCベクターのEcoRIおよびNheI部位に挿入して、調整した(Chatton et al. (1995) Biotechniques 18, 142-145)。PCRを用いて調整された各挿入部分の配列は、DNAシーケンシングによって確認した。
【0167】
細胞株、スピノキュレーション(spinoculation)、および高度精製ビリオンの調整
H9、Supt-1、Jurkatおよび293T細胞は標準的な組織培養技術を用いて維持された。新鮮ヒト末梢血リンパ球(PBL)は、IL-2(5ug/L)(Roche Diagnostics)を添加した完全RPMI培地(10%FBS)で維持された。PBLの一部をフィトヘマグルチニン(PHA)(5μg/ml)で使用前に24時間、活性化した。HIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifウイルスは、リン酸カルシウムに媒介されるVSV-GおよびpNL4-3またはpNL4-3 △Vifをコードする発現ベクターDNAの293T細胞への同時トランスフェクションによって、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)エンベロープでシュードタイプとした。48時間培養後に、ウイルスを含む上清を回収して、500×gにて5分間遠心分離して清澄化して、孔径0.2ミクロンのフィルターに通して濾過した。続いて、このウイルス含有上清を48穴プレートで0.4×106個/ウェルのH9細胞と共にインキュベートして、34℃にて低速で90分間、遠心分離した。次に、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄し、完全培地を用いて37℃にて40時間インキュベートした。その後、細胞を500×gにて5分間、遠心分離してペレット化し、PBSで洗い、イムノブロッティングおよび核-細胞質分画試験に備えて溶解した。既報の非連続工程イオジキサノールグラジエント精製法(DettenhoferおよびYu (1999) J Virol 73, 1460-1467)を用いて、高度精製ビリオンをウイルス含有上清から得た。次に、イオジキサノールグラジエントから得られた画分について4℃、90分間のさらに1回の超遠心分離を行い、ペレットはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)による分析前にLaemmli添加液30μlに再懸濁した。
【0168】
抗体、イムノブロッティング分析、細胞内抗p24免疫染色、およびFPLC
抗APOBEC3G抗体は、ウサギをヒトAPOBEC3GのC末端の16個のアミノ酸に相当する合成ペプチド
で免疫化およびブーストして作製した。42日後に血清を採取して、H9細胞溶解液を用いて免疫応答を調べた。負の対照として、同一のウサギから得られた免疫前の血清(抗体液)を用いて同一細胞溶解液の免疫応答を調べた。ポリクローナル抗Vif抗血清(Goncalves et al. (1994) J Virol 68, 704-712)。ウサギ抗Nef抗血清は既報の通りとした(Bresnahan et al., 1998)。マウスモノクローナル抗p24 Gag腹水はBeckman Coulterから寄贈された。用いられたその他の抗体には、ウサギ抗HA(Santa Cruz);マウス抗HA(12CA5, Roche);およびマウス抗ユビキチン(Santa Cruz)が含まれた。イムノブロッティングおよび高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)において用いられる溶解緩衝液は、(1)100〜400mM NaCl、50mM Hepes、0.2% NP40、0〜5mM EDTA、.1mM PMS、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)(緩衝液50ml当たり1タブレット)、または(2)50mM Hepes、pH 7.2、135mM NaCl、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸、10%グリセロール、1mM EDTA、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem)であった。FPLC泳動緩衝液の組成は、50mM Hepes、pH 7.4;250mM NaCl;0.1% NP40、1mM DTT;および10%グリセロールであった。H9細胞の細胞内抗24免疫染色は、既報の通り実施された(Eckstein et al. (2001) J Exp. Med. 194: 1407-1419)。FPLC分析のための細胞溶解液は、微量遠心管にて最高速度で10分、2回、遠心分離した後、較正されたSuperose 6 HR 10/30またはSuperose 12 HR 10/30充填済みゲル濾過カラム(AKTA, Amersham Pharmacia Biotech)に適用した。その後の分析に備えて、カラムから1ml試料を回収した。
【0169】
タンパク質発現アッセイ
293T細胞に、リン酸カルシウム法を用いて指示された量の発現ベクターDNAをトランスフェクトした。イムノブロッティングに使用した溶解緩衝液は、(1)100〜400mM NaCl、50mM Hepes、0.2% NP40、0〜5mM EDTA、0.1mM PMSF、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)(緩衝液50ml当たり1タブレット)、または(2)50mM Hepes、pH 7.2、135mM NaCl、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸、10%グリセロール、1mM EDTA、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem)であった。試料は、標準的なSDS-PAGE技術を用いて分析した。
【0170】
一時的にトランスフェクトした細胞におけるプロテアソーム阻害剤実験のため、293T細胞にAPOBEC3G-HA DNA 0.1μg、対照ベクターDNA 2μg、およびpcDNA3.1 Vif DNAベクターまたは対照ベクターDNAの追加の2μgのいずれか2μgを一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間に細胞を指定された阻害物質で処理し、15時間後に回収した。感染H9細胞を用いたプロテアソーム阻害剤実験のために、H9細胞に、上記の通りスピノキュレーションにより感染させた。感染44時間後に、細胞をジメチルスルホキシド(DMSO)(0.1%)または0.25μMエポキソミシンのいずれかで16時間処理した。すべての阻害剤(ALLN、MG132、エポキソミシン、カルパイン阻害剤III、およびクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン)はCalBiochemから購入して、DMSOに溶解した。
【0171】
H9細胞の細胞内抗24Gap免疫染色は、既述の通り実施された(Eckstein et al., 2001、前記)。簡単に述べると、H9細胞を回収して、洗浄し、PermeaFix(Ortho Diagnostic Systems, Raritan, NJ)中で室温にて30分間インキュベートすることによって透過処理した。さらに2回洗浄した後、細胞にFITCを抱合させた抗p24-Gap抗体(Coulter)を加えて室温にて30分間、インキュベートした。さらなる洗浄工程後、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。
【0172】
細胞内のAPOBEC3Gの分布を分析するために、H9またはトランスフェクトされた293T細胞を洗浄して、膨張用緩衝液(swelling buffer)(10mM HEPES pH 7.9、1.5mM MgCl2、lOmM KCL、プロテアーゼ阻害剤カクテルおよびPMSF)に懸濁した。細胞は、0.4% NP-40存在下でボルテックスにかける前に、氷上で10分間、膨張させた。溶解液を、膨張用緩衝液中1%ショ糖液1ml上に重層して、続いて、Beckman GS-6R遠心分離器で3150RPMにて遠心分離した。
【0173】
ノーザン分析
RNAは、Qiagen RNAeasy RNA抽出キットを用いて107個の感染または非感染のH9またはSupt-1細胞から抽出した。続いて、RNAを1%ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離して、ニトロセルロース膜に移して、32Pで標識したAPOBEC3G cDNAを用いて探査した。続いて、オートラジオグラフィーを用いて膜上のハイブリッドバンドを可視化した。
【0174】
パルス-チェイス実験およびパルス放射標識実験
HEK293細胞に、APOBEC3G-HA発現ベクター 1μg、およびVifまたは対照発現ベクターのいずれか8μgを同時トランスフェクトした。トランスフェクトしたHEK 293細胞を標識培地(メチオニンおよびシステインを含まないDMEM(Cellgro)に10%透析FBSを添加)中で1時間、プレインキュベートした。続いて各試料は、放射標識されたメチオニンおよびシステインを含む250μCi EasyTag(商標)EXPRESS 35S Protein Labeling Mix(PerkinElmer)を含む標識培地中で30分間、パルス標識した。初期パルス標識(t=0)試料を回収した。残りの放射標識試料は、追跡培地(4.02mMメチオニン(20×)および3mMシステイン(15×)を加えた10%FBS+DMEM)を用いてインキュベートして、異なる時点で回収した。パルス標識実験のために、各試料を15分間パルス標識し、その後直ちに回収した。
【0175】
回収した細胞ペレットを氷上で15分間、緩衝液A(50mM HEPES、135mM NaCl、1%Triton X-100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、10%グリセロール、1mM EDTA、(pH 7.2)、+プロテアーゼ阻害剤カクテルセットI(Calbiochem))で溶解した。細胞溶解物を4℃において14,000×gで10分間、清澄化した。タンパク質の定量はBCA Protein Assay Reagents(Pierce)を用いて実施した。免疫沈降(IP)は、抗HAモノクローナル抗体(262K Mab、Cell Signaling Technology)存在下で等しいタンパク質濃度/液量でセットし、氷上でインキュベートした。その後のすべての遠心/洗浄工程は4℃で実施した。IPを緩衝液Aで4回洗浄して、1×SDS-PAGE試料緩衝液で溶出した。試料はSDS-PAGEで分析して、ゲルはAmplify蛍光グラフィック試薬(Amersham Biosciences)での処理およびゲルの乾燥前に少なくとも1時間固定した。乾燥したゲルをオートラジオグラフィーに供して、スキャンした画像はScion画像ソフトウェア(バージョン1.62)を用いて定量した。
【0176】
インビトロでの翻訳
Vifまたは対照GSTタンパク質は、先ず、Promega TNT T-7結合網状赤血球溶解液システムを用いて製造業者の説明書に従って90分間、転写および翻訳させた。続いて、予め合成されたVifまたはGSTを、氷上でAPOBEC3G DNAでプログラムされた新しい転写/翻訳ミックスに加えた。次に、反応物を30℃の水槽に移して、15または30分間、反応させた。SDS-PAGEでタンパク質を分離し、ゲルをオートラジオグラフィーにより分析した。
【0177】
結果
固有のAPOBEC3Gタンパク質の非許容性T細胞中での選択的発現、および主として細胞質での局在
VifがどのようにしてAPOBEC3Gの抗ウイルス活性を克服するかという疑問に答えるために、ウサギポリクローナル抗体を開発して、〜46kDのAPOBEC3Gタンパク質の16個のC末端アミノ酸に方向付けた。先行試験からAPOBEC3G mRNAは非許容性細胞中では発現するが許容性細胞では発現しないことが示されていたが(Sheehy et al., 2002、前記)、APOBEC3Gタンパク質が非許容性細胞中で実際に発現するか否かは不明のままであった。従って、許容性および非許容性細胞タイプから得られた溶解物を抗APOBEC3G抗体を用いてイムノブロットすることによって、APOBEC3Gタンパク質の発現パターンを評価した。結果を図1Aに示す。
【0178】
ウサギ抗APOBEC3G抗体は、非許容性PHA刺激一次末梢血リンパ球(PBL)およびH9細胞に含まれる〜46kDのタンパク質と特異的に反応した(図1A、レーン2および3)。一方、この46kDのタンパク質は許容性Supt-1、Jurkat、または293T細胞から調製された溶解物中には検出されず(図1A、レーン4〜6)、同一ウサギ由来の免疫前血清を使用した場合は非許容性細胞タイプ中にも検出されなかった。α-チューブリン発現の程度は非許容性および許容性細胞の溶解物でほぼ等しく、負荷量がほぼ等しいことが確認された。注目すべきことに、PBLをPHAで刺激した結果(+の記号により表示)、内因性APOBEC3Gの発現が増加した(レーン1および2を比較)。これらの未刺激PBL溶解物中ではα-チューブリンの発現量は少量であったが、p56lckはPHA活性化PBL溶解物に対して非刺激溶解物中にほぼ等しく発現して、APOBEC3Gが一次PBLのマイトジェン活性化に反応して誘導的に発現することを示唆している。
【0179】
抗APOBEC3G抗体の特異性をさらに確認するために、対照ベクターDNA(偽)またはHA-APOBEC3G発現ベクターのいずれかをトランスフェクトした293T細胞由来の細胞溶解物についてイムノブロッティングを行った。抗APOBEC3G抗体はHA-APOBEC3Gをトランスフェクトした細胞由来の溶解物に含まれる〜50kDのタンパク質と反応したが、偽トランスフェクトした293T細胞由来の溶解物に同等なタンパク質バンドは認められなかった(図1A、レーン6および7)。総合すると、これらの所見は、ウサギ抗APOBEC3G抗体が内因性ヒトAPOBEC3Gと特異的に反応することを示して、内因性APOBEC3Gタンパク質が非許容性細胞中で発現することを確認し、APOBEC3Gタンパク質発現が一次PBLのPHA刺激によってアップレギュレートされることを明らかにする。
【0180】
次に、APOBEC3Gの細胞内局在化を、非許容性H9細胞および許容性SupT1細胞から単離された核および細胞質画分のイムノブロッティングによって分析した。結果を図1Bに示す。チューブリンおよびヒストンH3は、これらの細胞内画分の純度をモニターするために、それぞれ、細胞質マーカーおよび核マーカーとして用いられた。内因性APOBEC3Gタンパク質は、許容性SupT1細胞の核または細胞質のいずれにも検出可能な程度には発現しなかった。逆に、非許容性H9細胞では、APOBEC3Gが容易に検出されて、主に細胞質に局在化した。但し、少量のAPOBEC3Gが核に存在した。チューブリンおよびヒストンH3の発現は核および細胞質の画分が交差汚染していなかったことを示していることから、これらの所見からAPOBEC3Gタンパク質が実際に核の内外を移動し得る可能性が生じる。いずれにせよ、APOBEC3Gの大部分は細胞質コンパートメントで発現する。
【0181】
図1Aおよび1B。APOBEC3Gの発現および局在化の特徴付け。(A)非許容性および許容性細胞におけるAPOBEC3G発現のイムノブロット分析。指示された細胞タイプを溶解して、SDS-PAGEで分析した後、抗APOBEC3G抗血清、抗チューブリンおよび抗p56lckを用いてイムノブロッティングにより分析した。抗血清の特異性を確認するために、293T細胞にHA-APOBEC3G発現ベクターをトランスフェクトした。PBL、末梢血リンパ球。(B)APOBEC3Gの細胞内局在化。核および細胞質画分はH9(非許容性)またはSupt-1(許容性)細胞から調製して、APOBEC3Gに特異的な抗血清を用いてイムノブロッティングにより分析した。抗α-チューブリンおよび抗ヒストンH3を用いたイムノブロッティングにより、細胞質および核画分の完全性が確認された。APOBEC3Gの大部分は細胞質に局在化するが、このタンパク質の少量は核にも存在する点に留意されたい。
【0182】
Vifによる内因性APOBEC3Gタンパク質のビリオン内への組み込みの阻止
最近の研究から、APOBEC3Gがその後の標的細胞内での逆転写中に形成される新規合成のHIV-1 DNA転写物の過度の超変異を惹起することによって、非許容性細胞によって産生されるHIV-1 △Vifビリオンの感染性を阻害することを示している(Harris et al., 2003; Lecossier et al., 2003; Mangeat et al., 2003; Zhang et al., 2003)。これらの知見は、抗ウイルス因子が△Vifビリオン内に組み込まれて次の標的細胞に輸送されるという結論を裏付けるものである(Harris et al., 2003; Lecossier et al., 2003; Mangeat et al., 2003; Zhang et al., 2003、前記)。この点に関して、APOBEC3G-HAは、Vifが存在する場合および存在しない場合の双方において、トランスフェクトされた293T細胞によって産生されるビリオン内で検出されている(Sheehy et al., 2002、前記)。しかし、トランスフェクトされた293T細胞において不自然に多量のAPOBEC3Gタンパク質が発現すると仮定すると、この系は実際の生物学的事象を必ずしも忠実には再現しない可能性がある。Vifは内因性APOBEC3Gがビリオンに組み込まれることを阻止し得ると仮定して、この可能性をより生理学的に関連性のある細胞条件下において検証した。H9細胞に水疱性口内炎タンパク質-G(VSV-G)でシュードタイプとしたHIV-1NL4-3wtまたはVSV-G-HIV-1NL4-3-△Vifウイルスを感染させた。高度に精製されたビリオンを単離するために、感染H9細胞由来の上清を回収して非連続イオジキサノールグラジエントに適用した。これらのグラジエントから得られる連続画分を、HIV-1 wtおよび△vifビリオンのマーカーとしてp24Gagについて分析した。これらの画分を探査した結果、HIV-1△Vifビリオンに内因性APOBEC3Gが含まれることが明らかとなった(図2)。逆に、HIV-1 wtビリオンには、実際上、完全長APOBEC3Gタンパク質は含まれなかった。これらの知見は、プロデューサー細胞におけるVifの発現が新規に形成されるビリオンへのAPOBEC3Gタンパク質の組み込みを著しく障害することを示している。
【0183】
図2。Vifは完全長の内因性APOBEC3Gのビリオン内への組み込みを阻止する。HIV-1およびHIV-1 △Vifビリオンは、VSV-GでシュードタイプとしたHIV-1またはHIV-1 △Vifウイルスを用いたH9細胞のスピノキュレート感染によって調整された。感染48時間後に、ウイルスを含む上清を回収して、ビリオンを非連続段階のイオジキサノールグラジエントで精製した。ビリオンおよび抗APOBEC3G抗血清を同定してこの抗ウイルス因子のビリオンへの組み込みについて調べるために、抗p24 Gag抗体を用いてグラジエント画分をイムノブロットした。APOBEC3Gは、HIV-1 △Vifビリオンと比べて、HIV-1 wtビリオンにおいて著しく減少することに留意されたい。
【0184】
Vif発現とHIV-1感染H9 T細胞中の内因性APOBEC3Gタンパク質の消失との関連性
HIV-1 VifがAPOBEC3Gのビリオンへの組み込みを阻止するメカニズムをさらに解明するために、HIV-1 wtまたはHIV-1 △Vifウイルスの感染2日後にH9細胞における細胞内の内因性APOBEC3Gの量を分析した。これらの試験では、細胞内抗p24-Gag免疫染色(図3A、上段)により調べられたHIV-1感染レベル(76.4%対73.9%)と匹敵するレベル、および前方および側方光散乱特性(図3A、下段)により調べられた生存率と同等の生存率を示すH9細胞が用いられた。
【0185】
次に、細胞溶解物を、非感染H9細胞、または同様にHIV-1 wtもしくはHIV-1 △Vifに感染させたH9細胞から調製して、抗APOBEC3G抗体を用いたイムノブロッティングにより内因性APOBEC3Gタンパク質の発現を分析した(図3B)。HIV-1 wtに感染したH9細胞では、内因性APOBEC3Gタンパク質の発現に顕著な減少が認められた。逆に、HIV-1 △Vifに感染したH9細胞培養物では、APOBEC3G発現が容易に検出された。このレベルは非感染H9細胞で見られた値と非常に近く、HIV-1感染がAPOBEC3G発現を誘導しないことを示唆している。一方、α-チューブリン量は、非感染またはHIV-1 △Vifに感染した試料と比べて、HIV-1 wt感染試料で減少しなかった(図3B)。VifはHIV-1 wt感染試料において発現して、ウイルス感染した2つの試料ではほぼ等しい量のNefが検出された(図3B)。これらの知見は、Vifを発現するHIV-1が非許容性細胞に感染すると固有のAPOBEC3Gタンパク質発現が著しく減少することを示している。
【0186】
図3。HIV-1-wtに感染したH9細胞ではVifによって内因性APOBEC3Gのほぼ完全な消失が誘導されるが、HIV-1 △Vifに感染した細胞ではこの消失は誘導されない(A)。H9細胞の感染。H9細胞に、VSV-GでシュードタイプとしたHIV-1-wtまたはHIV-1 △Vifウイルスをスピノキュレーションにより感染させて、ウイルス感染の程度をモニターするために細胞内のGag発現を用いてフローサイトメトリーにより分析して、また生細胞を同定するために前方および側方散乱光(FSC/SSC)により分析した。HIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifに感染したH9細胞は同等に感染して、生細胞ゲート内の細胞数は等しかった点に留意されたい。(B)非感染H9細胞またはHIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifウイルスに感染したH9細胞における内因性APOBEC3G発現分析。これらの培養物から得られた細胞溶解物を、抗C末端APOBEC3G抗血清および抗α-チューブリン、抗Vif、または抗-Nef抗体を用いてイムノブロットした。HIV-1wtウイルスに感染した細胞では細胞内APOBEC3G量が急激に減少したことに留意されたい。
【0187】
APOBEC3G mRNAの量および完全性のHIV-1 Vif存在下での非変化
HIV-1 wtに感染したH9細胞におけるAPOBEC3Gタンパク質発現の見かけの消失の背後にあるメカニズムをさらに解明するために、VifがAPOBEC3G mRNAの発現または完全性を変化させる可能性について検討した。RNAおよびタンパク質を非感染および感染H9細胞から同時に調製して、APOBEC3G mRNAおよびタンパク質の量を調べた。予想通り、HIV-1 wtに感染したH9細胞ではAPOBEC3Gタンパク質の発現が減少した。しかし、3つの試料間で、APOBEC3G mRNAの発現量に見かけの差はなかった(図4)。これらの試料に等量のRNAが含まれることは、GAPDHに特異的なDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによって確認された(図4)。これらの知見は、VifがAPOBEC3G mRNAの産生または安定性に干渉することによってAPOBEC3Gタンパク質の発現を損なわないことを示している。
【0188】
図4。VifはAPOBEC3G mRNAの発現または完全性を変化させない。非感染またはVSV-GでシュードタイプとしたHIV-1またはHIV-1 △Vifウイルスに感染したH9細胞の溶解物から全RNAを抽出した後、Pで標識したAPOBEC3Gプローブを用いたノーザンブロット分析に供した。APOBEC3Gタンパク質の発現はHIV-1 wtに感染したH9細胞では減少するが、これらの同一細胞におけるAPOBEC3G mRNAの量はHIV-1 △Vifに感染した細胞に含まれる量と等しいことに留意されたい。mRNA負荷量の対照として、放射標識したGAPDHプローブを用いた。
【0189】
Vif単独での細胞内のAPOBEC3G量の十分な減少
Vif単独で、H9細胞がHIV-1タンパク質の完全な補体を含むウイルスに感染した際に認められた、内因性APOBEC3G量の減少を再現できるか否かという疑問について調べた。これらの試験のために、293T細胞に、一定量のVif発現ベクター存在下でタグ付けされていないAPOBEC3G発現プラスミドの漸増用量(0.1〜1.0ug)を一時的にトランスフェクトした(図5A)。Vif単独の発現によって細胞内のAPOBEC3Gタンパク質量が減少したが、この影響はAPOBEC3Gのインプットレベルが高いとそれに比例して減少した。Vif発現量はVif発現ベクターDNAをトランスフェクトした細胞に由来する各細胞溶解物において同等であっ。細胞溶解物はほぼ等量のα-チューブリンを含み、これは負荷量が同等であることを示している。また、全細胞融解物を分析した結果、同様のAPOBEC3Gの減少が認められたことから、Vifに誘導されるAPOBEC3G発現の減少はAPOBEC3Gの核への移動によって惹起されなかった。これらの結果は、Vifが、その他のウイルスコンポーネント不在下で細胞内のAPOBEC3Gタンパク質発現の減少を促進するように機能し得ることを示している。
【0190】
図5。Vifによる細胞内APOBEC3G枯渇はその他のウイルスタンパク質の関与を必要とせず、VifはAPOBEC3Gと物理的に相互作用する。(A)293T細胞内でのVifの発現によって、その他のHIV-1タンパク質不在下で細胞内APOBEC3G発現の減少が十分に促進される。一定量のVif発現ベクターの存在下または不在下において、293T細胞に段階的な量のAPOBEC3G発現ベクターDNAをトランスフェクトした。このタンパク質の細胞内レベルを調べるために、抗APOBEC3G抗血清を用いてこれらの培養物から得られた細胞溶解物をイムノブロットした。APOBEC3Gインプットの範囲を通してVif単独で十分にAPOBEC3G発現の減少を誘導するが、この影響はよりAPOBEC3G発現量が低いほど顕著である点に留意されたい。α-チューブリン発現に関するブロッティングによって、これらの細胞溶解物の等量が含まれていることが確認された。(B)APOBEC3GはGST-Vifと相互作用する。HA-APOBEC3G発現ベクターDNA、およびGSTまたはGST-Vif哺乳動物発現ベクターのいずれかをトランスフェクトした293T細胞の融解物をグルタチオン-セファロースビーズと共にインキュベートした。洗浄後、ビーズを試料緩衝液中で沸騰させて、SDS-PAGE、次いでイムノブロッティングにより分析した。GST-VifはHA-APOBEC3Gを結合させるが、GSTは結合させなかったことに留意されたい。(C)GST-Vifは生物学的に活性である。APOBEC3G-HA発現プラスミド、およびGSTまたはGST-Vif発現ベクターのいずれかを同時トランスフェクトした293T細胞に由来する溶解物のイムノブロッティング分析。GST-Vifの発現は細胞内APOBEC3G量の減少を誘導するが、GSTは誘導しなかった点に留意されたい。
【0191】
VifとAPOBEC3Gとの物理的集合
HIV-1 VifとAPOBEC3Gとの潜在的な物理的相互作用について、哺乳動物GST発現系を用いて評価した。HA-APOBEC3GおよびGST-Vifまたは対照GST発現プラスミドを293T細胞に同時トランスフェクトした(図5B)。細胞溶解物を調製して、グルタチオンセファロースビーズと共にインキュベートした。その後のイムノブロッティング分析の結果、HA-APOBEC3GはGST-Vifによって沈降するが、GST単独では沈降しないことが明らかとなった(図5B)。本発明者らは、GST-Vifの存在下および不在下でのAPOBEC3G-HAレベルをモニターすることによって、GST-Vifが生物学的活性を保持することを確認した。GST単独と比べて、GST-Vif存在下でははAPOBEC3G-HAレベルが減少した(図5C)。これらの知見は、Vifが直接的または間接的に生細胞中のAPOBEC3Gタンパク質と集合して、キメラのGST-Vifタンパク質はAPOBEC3G発現障害能を保持することを示している。
【0192】
APOBEC3Gを含む高分子量リボ核タンパク質複合体とVifとの同時分画
Vifによって用いられるメカニズムをさらに理解するために、本発明者らはAPOBEC3Gがより大きな複合体に存在するか否か、また、もしそうであるならば、Vifはこの複合体と集合し得るか否かについて調べた。先ず第一に、トランスフェクトした293T細胞の溶解物のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いて、APOBEC3G-HAが高分子量複合体(>700kD)に存在することが見出された(図6A)。興味深いことに、RNアーゼでの細胞溶解物の前処理によって、この高分子量APOBEC3G複合体の分解が促進された(図6A)。さらに、感染H9細胞溶解物のサイズ排除FPLC分析により、これらの細胞中で発現したVifの一部が内因性高分子量APOBEC3G複合体と共に同時分画されることが明らかとなった。これらの知見は、APOBEC3Gが細胞RNAを含む高分子量複合体へと集合し、そのRNAが複合体の完全性を維持することを示している。さらに、HIV-1 wtに感染したH9細胞中に存在するVifの一部は高分子量APOBEC3G複合体と共に同時分画されて(図6B)、このことはVifが直接または間接的にAPOBEC3Gに結合することを示した本発明者らの先の知見と一致する(図5B)。
【0193】
図6。APOBEC3GはRNアーゼ感受性高分子量複合体中に集合し、Vifの一部は感染H9細胞中でこのAPOBEC3G複合体と共に同時分画される。(A)APOBEC3Gは高分子量RNアーゼ感受性複合体中に集合する。APOBEC3G-HAをトランスフェクトした293T細胞から得られた溶解物を、氷上で希釈対照または0.01mg/mlのRNアーゼで30分間処理した。続いて、溶解物をSuperose 6カラムに適用して、FPLCサイズ排除分画化、次いでSDS-PAGEで分析して、抗HA抗体を用いてイムノブロッティングに供した。APOBEC3G-HAの大部分は>700kDの複合体に存在し、RNアーゼ処理によってAPOBEC3Gの大半が低分子量の複合体に変化したことに留意されたい。(B)感染H9細胞ではVifおよびAPOBEC3Gは同時分画される。H9細胞にVSV-GでシュードタイプとしたHIV-1 wtウイルスを感染させて、次に細胞溶解物を調製し、Superose 12 FPLCカラムで溶解物タンパク質を分析した。画分を回収して、抗APOBEC3Gまたは抗Vif抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。Vifの一部が固有のAPOBEC3Gと共に>700kDの複合体に同時分画されたことに留意されたい。
【0194】
Vifによるタンパク質分解性のAPOBEC3G分解誘導
次に、VifがAPOBEC3Gの分解を誘導するか否か、あるいは、単にウサギ抗APOBEC3G抗体との免疫応答性の消失を招くタンパク質分解性のAPOBEC3Gの切断を誘導するか否かを調べた。この抗体はAPOBEC3GのC末端と特異的に反応するので、N末端に向けられた抗体が用いられた場合にAPOBEC3G免疫応答性の同様の低下が生じるか否かについて調べた。これらの試験のために、HA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HA発現ベクターDNAのいずれかの段階的用量およびVif発現プラスミドDNAを293T細胞に同時にトランスフェクトして、抗HA抗体を用いてAPOBEC3Gの発現について細胞溶解物を試験した。Vifが存在する場合、N末端およびC末端をタグ付けされたAPOBEC3Gの双方の型が低下したレベルで発現した(図7A&B)。これらの知見は、VifがAPOBEC3Gの分解、またはタンパク質のN末端およびC末端の双方が関与するAPOBEC3Gの徹底したタンパク質分解を誘導するという結論を支持するものである。
【0195】
APOBEC3Gのポリユビキチン化、およびVifによる(Ub)n-APOBEC3Gの分解促進
Vifに誘導されるAPOBEC3G分解のメカニズムについてさらに詳しい洞察を得るために、APOBEC3Gがユビキチン化によって修飾されるか否かを調べた。APOBEC3GおよびHis-ユビキチン発現ベクター(Treier et al , 1994)をVif発現ベクターの存在下または不在下で293T細胞に同時トランスフェクトした。培養48時間後に、細胞溶解物を調製した。抗HA抗体を用いたこれらのタンパク質の後続のイムノブロッティングにより、ポリユビキチン化されたAPOBEC3G-HAの連続体が認められた(図7C、レーン2および4)。APOBEC3G-HA不在下において調製された融解物のイムノブロッティングにより、抗HA抗体がAPOBEC3Gの修飾型と選択的に反応することが確認された(図7C、レーン10)。Vifの同時発現は、これらのポリユビキチン化APOBEC3G種の完全消失、および非修飾型APOBEC3Gの発現の減少に関連した(図7C、レーン6および8)。26SプロテアソームがVifに誘導されるこれらのポリユビキチン化APOBEC3Gタンパク質種の分解を媒介するか否かについて調べるために、プロテアソーム阻害物質であるMG132の存在下で並行実験を実施した。このプロテアソーム阻害物質は、Vif依存性のポリユビキチン化APOBEC3Gの消失を遮断せず、非修飾型タンパク質の量を増加させもしなかった(図7C、レーン5および7)。しかし、MG132はこれらの細胞内において多くのポリユビキチン化タンパク質の蓄積増加を促進して、この阻害物質が生物学的に活性であることを示している。これらの知見は、Vifに誘導されるポリユビキチン化APOBEC3Gの分解が、26Sプロテアソームの機能に依存しないメカニズムによって起こることを示している。しかし、多くの実験において、Vif発現細胞内に出現する多くのAPOBEC3G分解産物の中の一つがMG132の添加後に増加することも観察された(図7C、レーン7および8を比較)。これらの知見から、Vifの作用が26Sプロテアソームによる分解に関してAPOBEC3Gの選択されたタンパク質分解性断片のターゲティングを含む複数の経路を伴う可能性が生じる。
【0196】
図7。HIV-1 Vifは、APOBEC3Gの分解を誘導し、ポリユビキチン化型のAPOBEC3Gは、Vifに誘導される分解の主要ターゲットを形成する。(AおよびB)VifはN-およびC末端双方の免疫応答性エピトープの消失によって示されるように、APOBEC3Gの分解または徹底したタンパク質分解を促進する。HA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HAをコードする発現ベクターDNAの段階的な量をVif発現ベクターDNAと共に、またVif発現ベクターDNA無しで293T細胞に同時トランスフェクトした。これらの培養物から調製した細胞溶解物は、抗HA抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。α-チューブリン発現に関するイムノブロッティングによって、これらの細胞溶解物の含有量が同等であることが確認された。HAエピトープがAPOBEC3GのN末端またはC末端に位置するかどうかに関わらず、Vif発現が抗HA免疫応答性の消失を誘導することに留意されたい。(C)APOBEC3Gはポリユビキチン化されており、Vifは見かけ上プロテアソーム非依存的なメカニズムによって(Ub)n-APOBEC3Gの分解を誘導する。293T細胞に、Vif発現ベクターの存在下または不在下においてAPOBEC3G-HAおよびヒス-ユビキチン発現ベクターを同時トランスフェクトした。48時間後に細胞溶解物を調製した。指示された通り、選択された培養物に対して、培養終了直前の6時間にプロテアソーム阻害物質であるMG132を添加した。溶解物を抗HA抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。Vifの同時発現によってポリユビキチン化されたAPOBEC3G-HAタンパク質が著しく減少して、これらの修飾型APOBEC3G-HAの消失は細胞培養物にプロテアソーム阻害物質のMG132を加えても遮断されなかったことに留意されたい。ポリユビキチン化型APOBEC3G-HAに加えて、Vifが発現する場合および発現しない場合の双方においてAPOBEC3G-HAの分解産物が認められた。Vif発現細胞に存在するAPOBEC3G-HAの複数の分解産物の一つは、MG132(*)存在下では量的に増加し、その分解はプロテアソームの作用を伴う可能性が高いことを示唆している。
【0197】
Vif誘導性のAPOBEC3Gの枯渇に伴うタンパク質全体の消失
Vif発現細胞におけるAPOBEC3Gの見かけの消失が、免疫検出において用いられるエピトープの消失に至るC末端のタンパク質分解性クリッピングによって説明できるか否かについて検討した。Vif発現プラスミドDNAの存在下または不在下において、293T細胞にHA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HA発現ベクターDNAの段階的用量を同時トランスフェクトすると、Vifの存在下では、N末端およびC末端がタグ付けされた双方の型のAPOBEC3G酵素が減少した。これらの知見は、VifがC末端のみのタンパク質分解を誘導するのではなく、排除のためにAPOBEC3Gタンパク質全体を標的とすることを示している。
【0198】
VifとAPOBEC3Gとの物理的結合
HIV-1 VifがAPOBEC3Gと物理的に相互作用するか否かを調べるために、293T細胞にHA-APOBEC3GおよびGST-Vifまたは対照GST発現プラスミドDNAを同時トランスフェクトした。細胞溶解物を調製して、グルタチオン-セファロースビーズと共にインキュベートした。これらのビーズに結合したタンパク質のイムノブロッティングにより、HA-APOBEC3GがGSTではなくGST-Vifによって回収されることが示された。GST-Vifタンパク質が生物学的活性を保持するか否かを調べるために、GST-Vifの存在下または不在下でHA-APOBEC3Gの量をモニターした結果、GST-Vifの存在下ではこの酵素の量が少ないことが確認された(図8D)。これらの知見は、Vifが生細胞内のAPOBEC3Gタンパク質と集合し得ること、およびキメラのGST-Vifタンパク質が細胞内APOBEC3G発現の障害能を保持することを示している。
【0199】
インビボでのVifによるAPOBEC3Gの半減期の短縮化
Vifが分解を加速させることによって細胞内のAPOBEC3G量を枯渇させるかどうかを調べるために、APOBEC3G-HAおよびHIV-1 Vifまたは対照発現ベクターDNAを同時トランスフェクトしたHEK 293細胞を用いて[35S]-メチオニン/システインパルス−チェイス放射標識試験を実施した。トランスフェクション36時間後に、細胞をメチオニンおよびシステイン除去培地で60分間インキュベートして、続いて35S-メチオニン/システインを用いて37℃で30分間パルス標識した。続いて、培養物を、過剰の未標識メチオニンおよびシステインを含む培地中で37℃にて12時間まで追跡した。次いで、異なる間隔で回収された細胞の溶解物から、APOBEC3G-HAを免疫沈降させた(図8A)。Vifの不在下で、放射標識APOBEC3Gタンパク質は約10時間のT1/2で崩壊した。しかし、Vifの存在下では放射標識APOBEC3Gはさらに速やかに消失して、約1.9時間のT1/2を示した(図8A)。これらの知見は、VifがAPOBEC3Gの半減期を短縮することを示している。
【0200】
プロテアソーム阻害物質によるVif媒介性のAPOBEC3Gの枯渇の部分的遮断
26SプロテアソームがVif誘導性のAPOBEC3Gの分解を媒介し得るかについて調べるために、H9細胞にHIV-1 wtを感染させるか、偽感染させた。感染44時間後に、細胞を、DMSO(0.1%)またはプロテアソームにおける3つのタンパク質分解活性を特異的に阻害する0.25μMエポキソミシンのいずれかで16時間処理した。続いて、細胞をLaemmli溶解緩衝液中で沸騰させて全細胞溶解物を調製し、その後、SDS-PAGEによりタンパク質を分離してイムノブロットした。予想通り、感染試料中では、非感染試料と比べてAPOBEC3Gレベルが大幅に低かった(図8B、レーン1および3)。しかし、エポキソミシンで処理した感染細胞では、DMSO処理した細胞と比べてAPOBEC3Gレベルが増加したが(図8B、レーン1および2)、エポキソミシンは非感染培養物ではAPOBEC3G量の同様の増加を惹起しないようであった(図8B、レーン3および4)。興味深いことに、エポキソミシンはVif量の増加も惹起した。
【0201】
この知見を異なる系で確認するために、APOBEC3G-HA発現ベクターおよびVif発現ベクターまたは対照ベクターを一時的にトランスフェクトした293T細胞を用いて同様の実験を実施した。トランスフェクション24時間後に、一連の異なるプロテアソーム阻害物質を用いて15時間にわたって細胞を処理した。幅広い作用を示すプロテアソーム阻害物質であるMG132(12.5μM)およびALLN(25μm)、ならびにより特異性の高いプロテアソーム阻害物質であるクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン(10μM、20μM)は希釈対照試料(0.1%DMSO)と比べて、Vif存在下ではAPOBEC3G-HAレベルを高めることが観察された(図8C、レーン7〜12)。これに対して、別のタンパク質分解経路を阻害するカルパイン阻害物質III(50μM)(図8C、レーン12)は、APOBEC3G量の増加を惹起しなかった。総合すると、本発明者らの結果は、VifのAPOBEC3Gに対する作用は少なくとも一部はプロテアソームによって媒介されることを示している。
【0202】
図8A〜C。VifはAPOBEC3Gの半減期を短縮し、プロテアソーム阻害物質はAPOBEC3G-HAの細胞内枯渇を部分的に遮断する。(A)パルス−チェイス放射標識試験。APOBEC3G-HAおよびVifまたは対照ベクターDNAを一時的にトランスフェクトしたHEK 293細胞を30分間パルス標識した。初期パルス標識(t=0)試料を回収して、残りの試料に追跡培地を加えて指示された期間、インキュベートした。抗HA抗体を用いた免疫沈降後、試料をSDS-PAGEによって分析し、ゲルをオートラジオグラフィーに供した。バンドの相対的強度を定量して、Vif(+)およびVif(-)試料を1として正規化し、グラフ化した(図8、右)。APOBEC3GのT1/2はVifの存在下では1.9時間であり、Vifの不在下では10時間であった。(B)感染H9細胞を用いたプロテアソーム阻害物質試験。偽感染またはHIV-1 wtに感染したH9細胞を、感染44時間後、幅広い活性を持つプロテアソーム阻害物質であるエポキソミシン(0.25μM)またはDMSO(0.1%)で処理した。処理16時間後に、細胞を回収した。細胞をLaemmli溶解緩衝液中で沸騰させて、全細胞溶解物を調製した。エポキソミシンが感染試料中の内因性APOBEC3G量の増加を惹起したことに留意されたい(レーン2をレーン1と比較)。(C)一時的にトランスフェクトした293T細胞を用いたプロテアソーム阻害物質試験。293T細胞に0.1μg APOBEC3Gおよび2μgのVifまたは対照ベクターDNAをトランスフェクトした24時間後に、細胞を指示された濃度の阻害物質で15時間処理した。APOBEC3G-HA量は、プロテアソーム阻害物質のMG132、ALLN、およびクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン存在下では上昇したが(レーン8〜11)、カルパイン阻害物質III存在下では増加しなかった(レーン12)。
【0203】
VifによるAPOBEC3G mRNAの翻訳障害
インビボパルス-チェイス放射標識実験において、Vifを発現していない細胞と比べて、Vifを発現している細胞では、パルス標識期間後に15〜40%少ない放射標識されたAPOBEC3Gが回収された。これらの結果から、VifはAPOBEC3G mRNAの翻訳を障害することによってAPOBEC3Gの発現を阻害する可能性が生じた。この可能性についてさらに詳しく調べるために、漸増用量のVif(0〜8μg)存在下でより短いパルス標識実験(15分)を実施した(図9A、左)。これらの試験より、VifがインビボにおけるAPOBEC3G-HAの35S-メチオニン/システイン放射標識を用量関連的に障害し、一貫してパルス標識期間中のAPOBEC3G翻訳における30〜50%の減少を惹起することが明らかとなった。同一試料のイムノブロッティング分析の結果、安定状態でのAPOBEC3G-HA量の80%減少が見出された(図9A、右)。翻訳の30〜50%の減少では、安定状態におけるAPOBEC3G-HAの80%減少は十分に説明されないことから、VifはAPOBEC3Gタンパク質合成の部分的遮断および翻訳後のAPOBEC3G分解誘導の双方の機能を果たすに違いない。
【0204】
VifのAPOBEC3G mRNA翻訳に対する影響についてさらに詳しく調べるために、インビトロ連結した転写・翻訳系を用いた。ウサギ網状赤血球溶解物を、予め翻訳したVifまたはGST対照タンパク質存在下でAPOBEC3G mRNAでプログラムした(図9B)。このインビトロの系において、VifはAPOBEC3Gの翻訳を約70〜75%障害した。これらの知見は、VifがAPOBEC3G mRNAのインビトロにおける翻訳を部分的に遮断することを示している。
【0205】
総合すると、これらの結果は、VifがAPOBEC3G mRNAの翻訳を阻害すること、およびプロテアソームに媒介されるAPOBEC3G酵素の分解を加速させることによって、細胞内のAPOBEC3Gを二峰性の様式で枯渇させることを示す。組み合わせると、これらの2つのメカニズムは感染T細胞においてAPOBEC3G酵素を効率的に排除する。
【0206】
図9Aおよび9B。VifはAPOBEC3G-HA mRNAの翻訳を障害する。(A)インビボパルス標識試験。APOBEC3G-HA発現ベクターDNA1μgおよびVif発現ベクターDNAの0〜8μgを一時的にトランスフェクトしたHEK 293細胞を放射標識したメチオニンおよびシステインを用いて15分間パルス標識した後、直ちに回収した。抗HA抗体を用いた免疫沈降後、これらの試料について(1)SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによる分析(左パネル)、または(2)SDS-PAGEおよびイムノブロッティングによる分析(右パネル)のいずれかを行った。高濃度のVifはインビボにおけるAPOBEC3G-HA翻訳の顕著(36%〜50%)な障害を惹起した(左パネル)。Vifは、安定状態のAPOBEC3G-HA量をさらに著しく(80%)減少させた(右パネル)。(B)インビトロにおける転写/翻訳試験。Vifまたは対照GSTタンパク質は先ず、Promega TNT T-7結合網状赤血球溶解システムを用いて製造業者の説明書に従って90分間、転写および翻訳させた。続いて、予め合成したVifまたはGSTを、APOBEC3G DNAでプログラムされた新しい転写/翻訳ミックスに氷上で加えた。続いて、反応物を30℃の水槽に移して、15または30分間、反応させた。次に、SDS-PAGEでタンパク質を分離して、ゲルをオートラジオグラフィーにより分析した。VifがインビトロにおけるAPOBEC3G合成の〜70〜75%の障害を生み出した点に留意されたい。
【0207】
実施例2:高分子量および低分子量APOBEC3G複合体の特徴付け
ヒト末梢血リンパ球(PBL)を血液から単離して、続いて、抗CD3抗体(α-CD3)、抗CD28抗体(α-CD28)、IL-9、IL-12、IL-13、IL-15、またはIFN-γを加えて48時間インキュベートした。細胞を溶解して、溶解物を清澄化し、溶解物のタンパク質濃度を定量した。溶解物中の等量のタンパク質をSDS-PAGEにより分離した。SDS-PAGEによりタンパク質を分離した後、タンパク質を膜に移して、APOBEC3Gに対する抗体を用いて膜上のAPOBEC3Gタンパク質を検出した。結果を図11〜13に示す。
【0208】
図11は、末梢血リンパ球中のAPOBEC3G量に対するPHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびIL-15の影響を示す。PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、またはIL-15で処理したPBLはAPOBEC3G酵素の発現増加を示す。刺激および未刺激末梢血リンパ球に由来する細胞溶解物のウェスタンブロット。PBLを血液から単離して、続いて、指示された刺激物質を加えて48時間インキュベートした。SDS-PAGEによりタンパク質を分離した後、APOBEC3Gに対する抗体を用いてAPOBEC3Gタンパク質を検出した。負荷対照として、抗β-アクチンを用いてβ-アクチンを検出した。
【0209】
図12はPBL中のAPOBEC3G量に対するIL-2の影響を示す。IL-2での処理によって、末梢血リンパ球のAPOBEC3G酵素がアップレギュレートされる。PBLを、指示されたサイトカインで処理し、次に、図11のように分析した。
【0210】
図13は、PBL中のAPOBEC3G量に対するPMA、PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびプロストラチンの影響を示す。PMA、PHA、抗CD3、抗CD28、およびプロストラチンはすべて、PBL中のAPOBEC3Gをアップレギュレートさせた。PBLを指示されたマイトジェンまたは抗体で処理して、図11および12のように分析した。
【0211】
APOBEC3Gの低分子量または高分子量複合体への集合を、様々な細胞において分析した。低分子量(LMW)APOBEC3G複合体および高分子量(HMW)APOBEC3G複合体の酵素活性を分析した。
【0212】
HA-APOBEC3G DNAを一時的にトランスフェクトしたH9細胞および293T細胞は、使用前に標準的条件で培養した。CD4+ T細胞をMACS(登録商標)マイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Inc.)ソーティングにより新鮮ヒト末梢血リンパ球(PBL)から単離して、完全RPMI培地(10%FBS)中で維持した。CD4+ T細胞の一部をフィトヘマグルチニン(PHA)(5μg/ml)で36時間活性化して、続いて、使用前にさらに24時間、IL-2(5μg/L)で活性化した。単球をバフィーコートの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。単球をGM-CSF(50ng/mL)およびIL-4(25ng/mL)を添加した完全RPMI培地で6日間インキュベートすることによって、未熟樹状細胞を得た。未熟樹状細胞をTNF-α(5ng/mL)およびPoly IC(25μg/mL)で24時間処理して成熟樹状細胞を得た。これらの細胞から、清澄化した溶解物を作製した。清澄化した溶解物中の総タンパク質を定量して、予めRNアーゼ処理を行って、または行わずに、FPLC分析に供した。各FPLC画分について、SDS-PAGEおよびイムノブロッティング分析を行った。高分子量および低分子量画分中のHA-APOBEC3Gを免疫沈降させて、インビトロにおけるシチジンデアミナーゼアッセイに供した。
【0213】
図14は、非許容性H9細胞において内因性APOBEC3GがHMW、RNアーゼ感受性複合体に集合することを示す結果を表す。
【0214】
図15は、HA-APOBEC3G DNAの許容性細胞へのトランスフェクションによってHMW APOBEC3G複合体が形成されることを示す結果を表している。このHMW分画は、HMW画分のRNアーゼ処理から得られるLMW APOBEC3G複合体と同じく、RNアーゼ感受性である。
【0215】
図16は、LMW APOBEC3G複合体はシチジンデアミナーゼ活性を持つがHMW APOBEC3G複合体は持たないことを示す結果を表す。従って、APOBEC3Gはシチジンデアミナーゼ活性を持たないHMWリボ核タンパク質複合体に補充される。HMW APOBEC3G複合体をRNアーゼで処理すると、高いシチジンデアミナーゼ活性を示すLMW APOBEC3G複合体が産生される。
【0216】
図17は休止PBL中のAPOBEC3GはLMW複合体に存在することを示す結果を表している。
【0217】
図18は、CD4+ PBLのPHA/IL-2刺激によってHMW APOBEC3G複合体の集合が促進されることを示す結果を表している。
【0218】
図19は、単球中のAPOBEC3GはLMW複合体に存在することを示す結果を表している。
【0219】
図20は、単球の分化がHMW APOBEC3G複合体の集合を促進することを示す結果を表している。
【0220】
要約すると、以下のことが示された:
1)APOBEC3Gはシチジンデアミナーゼ活性を持たないHMWリボ核タンパク質複合体に補充される;
2)HMW APOBEC3G複合体をRNアーゼで処理すると、高レベルのシチジンデアミナーゼ活性を示すLMW複合体が製造される。
3)休止期の末梢血T細胞および単球はLMW APOBEC3G複合体を示す。休止期の末梢血T細胞および単球の活性化および/または分化は、HMW APOBEC3G複合体の形成を促進する。
【0221】
実施例3:APOBEC3GのN末端断片のVif誘導性APOBEC3G分解に対する影響
HEK 293細胞にHA-APOBEC3G発現ベクターまたは漸増量(2μg〜4μg)のHA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクター;およびHIV-1 Vifまたは対照発現ベクターを同時トランスフェクトした。HA-APOBEC3G発現ベクターは、N末端のヘマグルチニン-エピトープタグに対してインフレームで融合した野生型(例えば、完全長)のAPOBEC3Gをコードする。HA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクターは、ヘマグルチニン-エピトープタグにインフレームで融合したAPOBEC3Gのアミノ酸1〜104をコードする。遠心分離によって細胞溶解物を清澄化して、等量のタンパク質をSDS-PAGEによって分離した。分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移して、膜上のHA-APOBEC3GおよびHA-(1〜104)APOBEC3Gを抗HA抗体で検出した。HA-APOBEC3G発現ベクターをトランスフェクトした(Vif発現ベクターの同時トランスフェクトは行っていない)細胞では、約50kDにて移動するHA-APOBEC3Gが産生された。Vif発現ベクターおよびHA-APOBEC3G発現ベクターを同時トランスフェクトした(HA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクターは同時トランスフェクトしていない)細胞では、大半のHA-APOBEC3Gが分解された。しかし、Vif発現ベクター、HA-APOBEC3G発現ベクター、およびHA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクター2μgまたは4μgのいずれかを同時トランスフェクトした細胞では、HA-(1〜104)APOBEC3Gタンパク質存在下では、〜50kDのHA-APOBEC3G融合タンパク質の安定的産生が著しく回復して、Vif同時発現がない場合に見られるレベルに達した。この結果は、HA-(1〜104)APOBEC3Gの過剰発現がHIV-1 Vifに媒介されるHA-APOBEC3Gの分解を阻害することを示す。
【0222】
実施例4:Vif/luc-APOBEC3G細胞株の構築
HIV-1 Vif作用の阻害物質に関する高処理アッセイの基盤として用いることのできるいくつかの細胞株が構築された。これらの細胞株は、Vif、および検出可能なシグナルを提供する異種タンパク質に融合したAPOBEC3Gを構成するAPOBEC3G融合タンパク質を産生する。このような細胞株の一つは次のように構築された。HeLa細胞にVif発現ベクター、およびウミシイタケ-ルシフェラーゼでタグ付けされたAPOBEC3G(luc-APOBEC3G)を発現するベクターを同時トランスフェクトして、Vif/luc-APOBEC3G細胞株を作製した。Vif発現ベクターは、ヒスチジノールに対する耐性を付与する選択可能マーカーを含む。luc-APOBEC3G発現ベクターは、トランスフェクトされた細胞をネオマイシンまたはG418から保護する選択可能マーカーを含む。
【0223】
Vif/luc-APOBEC3G細胞株をVif媒介性のAPOBEC3G分解遮断能力を持つ物質であるプロテアソーム阻害物質のMG132で処理した後、細胞を溶解した。細胞溶解物を清澄化して、通常のルシフェラーゼアッセイに供した。luc-APOBEC3Gの量は相対発光量(RLU)として表す。MG132で処理したVif/luc-APOBEC3G細胞の細胞溶解物試料から発せられたRLUは203333であった。しかし、プロテアソーム阻害物質の不在下では、Vif/luc-APOBEC3G細胞の細胞溶解物のRLUは10180であり、約1/20の減少に相当する。これらの結果から、細胞株中に存在するVifはluc-APOBEC3Gタンパク質の量を約1/20に減少させ、Vifのこの活性はMG132によって逆転すると結論づけられた。
【0224】
本発明はその具体的態様の参照を用いて説明されているが、当業者は様々な変更が可能であり、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく同等物と置き換えられ得ることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、重要な組成物、プロセス、プロセスの工程(step、steps)を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの修正が行われ得る。このようなすべての修正は、本資料に添付される特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】図1Aおよび1BはAPOBEC3Gの発現および局在化を示す。
【図2】図2は完全長の内因性APOBEC3Gのビリオンへの組み込みに対するVifの阻害作用を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、ヒトH9細胞の感染後にHIV野生型では誘導されるがHIV △Vifウイルスでは誘導されない、APOBEC3Gの細胞内枯渇を示す。
【図4】図4は、Vifが存在する場合のAPOBEC3G mRNA量を示す。
【図5】図5A〜5Cは、Vif単独に誘導されるAPOBEC3Gの細胞内枯渇を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、VifとAPOBEC3G/RNA高分子量複合体との結合を示す。
【図7】図7A〜CはHIV-1 VifによるAPOBEC3G分解の誘導を示す。
【図8】図8A〜Cは、APOBEC3Gの半減期に対するVifの影響、および細胞内APOBEC3G枯渇に対するプロテアソーム阻害物質の影響を示す。
【図9】図9A〜BはAPOBEC3G-HA mRNAに対するVifの影響を示す。
【図10】図10は、ウイルス産生細胞内での分解に関してVifがユビキチン化APOBEC3Gをどのようにターゲッティングして、それにより、APOBEC3Gのビリオンへの組み込みを遮断するか;およびウイルスDNA合成中のAPOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性の潜在的変異原性作用を示す模式図である。
【図11】図11は末梢血リンパ球(PBL)のAPOBEC3Gの量に対する、フィトヘマグルチニン(PHA)、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびIL-15の影響を示す。
【図12】図12は、PBL中のAPOBEC3G量に対するIL-2の影響を示す。
【図13】図13は、PBL中のAPOBEC3G量に対する、ホルボル-12-ミリスチン酸-13-酢酸(PMA)、PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびプロストラチンの影響を示す。
【図14】図14は、内因性APOBEC3Gのサイズ排除FPLC分析を示す。内因性APOBEC3Gは非許容性H9細胞において高分子量、RNアーゼ感受性複合体に組み込まれる。
【図15】図15は、HA-APOBEC3G DNAの許容性細胞へのトランスフェクトによってHMW APOBEC3G複合体が形成されることを示す結果を表す。
【図16】図16は、高分子量ではなく低分子量APOBEC3G複合体がシチジンデアミナーゼ活性を持つことを示す結果を表す。
【図17】図17は、休止PBL中のAPOBEC3GがLMW複合体に含まれることを示す結果を表す。
【図18】図18は、CD4+ PBLのPHA/IL-2刺激がHMW APOBEC3G複合体の構築を促進することを示す結果を表す。
【図19】図19は、単球のAPOBEC3GがLMW複合体に含まれることを示す結果を表す。
【図20】図20は、単球の分化がHMW APOBEC3G複合体の構築を促進することを示す結果を表す。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はレンチウイルス感染症、特に免疫不全ウイルス感染症の治療の分野に関する。
【0002】
相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み入れられる2003年6月10日に出願された米国特許仮出願第60/477,549号および2003年9月24日に出願された米国特許仮出願第60/505,738号の恩典を主張するものである。
【0003】
連邦政府資金援助研究に関する陳述
米国立衛生研究所により与えられた助成金番号P01 HD40543、R01 CA86814、および2P30 A127763-1に従って、米国政府は本発明における権利の一部を保有することができる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質である。HIV感染はCD4+ Tリンパ球の枯渇を招く。AIDSは、免疫機能不全、日和見感染症、神経学的機能異常および腫瘍増殖を含む様々な病理学的状態を特徴とする。
【0005】
HIV-1は、APOBEC3G(アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様3G、CEM15としても公知である)の生来の潜在的抗ウイルス機能を回避するため、HIV-1および多くの関連する霊長類レンチウイルスによってコードされるタンパク質であるVif(ビリオン感染因子)に依存する。APOBEC3Gは、ビリオンに組み込まれて、逆転写の過程で形成される新たに合成されるウイルスDNAに広範な超変異をもたらすDNAシチジンデアミナーゼである。
【0006】
AIDSの治療には、アジドブジン(azidovudine; AZT)、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI)、d4T、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC)、ネビラピン、ラミブジン(エピビル、3TC)、サキナビル(インビラーゼ)、リトナビル(ノルビル)、インジナビル(クリクシバン)、およびデラビルジン(レスクリプター)を含む複数の薬剤が承認されている。しかし、HIVと戦うために用いられる入手可能な薬剤の中に完全に有効なものはなく、治療によってしばしば薬剤耐性ウイルスが生じる。
【0007】
HIV感染症と戦うための多くの薬剤が入手可能であるにも関わらず、当技術分野ではHIVの複製を阻害して、かつ、HIVおよびその他のレンチウイルス感染症の治療に適したさらなる薬剤が必要である。本発明は、HIVのVifタンパク質を標的とする物質、およびAPOBEC3Gの生来の潜在的抗レンチウイルス特性を維持する方法でVifの作用に干渉する物質を特定するための方法を提供することによってこの必要に応える。
【0008】
文献
Fisher et al. (1987) Science 237,888-893; von Schwedler et al. (1993) J Virol 67, 4945- 4955; Desrosiers et al. (1998) J Virol 72, 1431-1437; Gabuzda et al. (1992) J Virol 66, 6489-6495; Sova and Volsky (1993) J Virol 67, 6322-6326; Harris et al.(2003) (2003) Cell 113: 803- 809; Harris et al. (2004) Cell 116: 629; Lecossier et al. (2003) Science 300: 1112; Mangeat et al. (2003) Nature 424: 99-103; Zhang et al. (2003) Nature 424: 94-98.
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、レンチウイルスVifタンパク質の活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法を提供する。本発明は、本スクリーニング方法によって特定される物質を提供して、レンチウイルス感染症を治療するための方法をさらに提供する。
【0010】
定義
本明細書で用いられるように、「治療(treatment)」、「治療する(treating)」などの用語は所望の薬学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は疾患またはその症状の完全または部分的阻止に関して予防的であってよく、さらに/または疾病および/もしくはその疾患に起因する有害な影響の部分的または完全治癒に関して治療的であってもよい。本明細書で用いられるように「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を網羅して、(a)その疾患に対する素因を持っている可能性はあるが、まだその疾患であると診断されたことはない被験者においてその疾患が発症することを防ぐこと;(b)その疾患を阻害する、即ち、その進行を阻止すること;および(c)例えばその疾患の症状を完全にまたは部分的に除去するなど、例えばその疾患の退行を惹起してその疾患を緩和することが含まれる。レンチウイルス感染の状況において、「治療」という用語はウイルスとの初回接触後の全身感染症の確立の予防、およびまだそのウイルスに感染していない個人の予防的治療を含む。
【0011】
本明細書で互換的に用いられる「個人」、「宿主」、「被験者」および「患者」という用語は、マウス、ネコ、サル、ヒト、家畜哺乳動物、競技用哺乳動物、およびペット哺乳動物を含む哺乳動物を意味するが、これらに限定されるものではない。この用語は、Vifをコードするレンチウイルスによる感染に対して感受性の哺乳動物を含む。多くの態様において、ヒトの治療が関心対象である。
【0012】
「遺伝的形質転換」という用語は、新しいDNA(即ち、その細胞に対して外因性のDNA)の取り込み後に細胞内で誘発される永続的または一過性の遺伝的変化を意味する。遺伝的変化は、その新しいDNAを宿主細胞のゲノムに組み込むことによって、または新しいDNAをエピソームエレメントとして一時的または安定的に維持することによって生じ得る。細胞が哺乳動物細胞である場合、永続的な遺伝的変化は一般にそのDNAがその細胞のゲノムに導入されることによって達成される。
【0013】
「生物学的試料」は個人から採取される様々な試料タイプを含んで、診断またはモニターアッセイに用いることができる。その定義は、生物由来の血液またはその他の液体試料、生検標本のような固体組織試料、または組織培養物もしくはそれから得られる細胞およびその子孫細胞を含む。その定義には、試薬での処理、洗浄、またはCD4+ Tリンパ球、グリア細胞、マクロファージ、腫瘍細胞、末梢血単核細胞(PBMC)などの一部の細胞集団の濃縮のように、採取後に任意の方法で操作された試料も含まれる。「生物学的試料」という用語には臨床試料が含まれ、培養物中の細胞、細胞上清、組織試料、臓器、骨髄なども含まれる。
【0014】
本明細書で用いられるように「レンチウイルス」という用語は、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1);ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2);サル免疫不全ウイルス(SIV);およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)を意味する。
【0015】
本発明についてさらに説明する前に、本発明が記載される特定の態様に限定されるものではなく、従って、当然、変更可能であることが理解されるべきである。本発明の範囲は添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書で用いられる用語は特定の態様のみを説明するためのものであって、限定的であることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0016】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限および下限の間にあって、文脈からそうでないことが明示される場合を除いて、下限値の十分の一の単位までの各介在値、および記載される範囲内にあるその他の任意の記載値または介在値は本発明に内包されると理解される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、それぞれにその狭い範囲に含まれる可能性があり、記載される範囲において何らかの具体的な除外限界値が示されれば、同じく本発明に含まれる。記載される範囲が一方または双方の限界値を含む場合、これらの含まれる限界値の一方または双方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0017】
別途定義される場合を除いて、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の業者によって広く理解されるものと同一の意味を持つ。本明細書に述べられるものと同等または相当するあらゆる方法および材料も本発明の実践または試験において用いることができるが、ここでは好ましい方法および材料について記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物の引用に関連してその方法および/または材料を開示および説明するために参照として本明細書に組み入れられる。
【0018】
本明細書および添付される特許請求の範囲で用いられるように、「一つの(a)」、「および(and)」、および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明示される場合を除いて、複数の指示物を含む。従って、例えば「一つのVifタンパク質」という言及はこのような多数のタンパク質を含み、「その物質」という言及は一つまたは複数の物質および当業者に公知であるその同等品などへの言及を含む。
【0019】
本明細書で論じる刊行物は、単にそれらの開示が本出願の出願日よりも前であるために示されるものである。本明細書は決して、先行発明という理由で本発明がこのような刊行物に先行する権利を与えられないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、示される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なる可能性があり、独自に確認される必要がある場合がある。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、レンチウイルスVifタンパク質の活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法、およびAPOBEC3Gの不活性型をAPOBEC3Gの活性型に転換する物質を特定する方法をさらに提供する。本発明は、本スクリーニング方法によって特定される物質を提供して、レンチウイルス感染症を治療するための方法をさらに提供する。
【0021】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)は、APOBEC3G(アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様G3、CEM15としても公知である)の生来の潜在的抗ウイルス機能を回避するために、HIV-1および多くの関連する霊長類レンチウイルスによってコードされるタンパク質であるVif(ビリオン感染因子)に依存する。APOBEC3Gは、ウイルス粒子に組み込まれて、逆転写の過程に形成される新たに合成されるウイルスDNAに広範な超変異をもたらすDNAシチジンデアミナーゼである。
【0022】
本発明は、次の観察所見に一部基づく:1)VifはVifをコードするレンチウイルスが感染した感染細胞内(例えば、T細胞、マクロファージ、グリア細胞などを含む)での分解に関して天然のAPOBEC3Gタンパク質をターゲティングすることによってそのビリオンへの組み込みを障害する;2)Vif単独で十分にAPOBEC3Gの消失を誘導して、Vifがその他のウイルスタンパク質の活性を必要としないことを示す;3)Vifは直接的または間接的にAPOBEC3Gと結合する;4)APOBEC3GおよびVifは感染したH9細胞内において>700kDの複合体として同時に分画化されて、この大きなAPOBEC3G複合体はRNアーゼでの処理によって分解する;5)APOBEC3Gはポリユビキチン化される;6)Vifは分解においてポリユビキチン化APOBEC3GのようなAPOBEC3Gタンパク質の修飾型を標的とする;7)VifはAPOBEC3G mRNAの翻訳を阻害する;8)APOBEC3GはHIV感染許容性細胞において高分子量(HMW)複合体として見出される;9)一部の因子は細胞内のAPOBEC3Gタンパク質の量を増加させることができる;10)低分子量(LMW)APOBEC3G複合体はシチジンデアミナーゼ活性を示すが、HMW APOBEC3G複合体はこの活性を示さない。
【0023】
スクリーニング方法
本発明はレンチウイルスのVif活性を阻害する物質を特定する方法を提供する。この方法は、一般的に、Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質を含む試料を被験物質と接触させる工程、およびもしあればその被験物質のVif活性に対する影響を測定する工程を伴う。Vif活性に影響を及ぼす被験物質はレンチウイルス感染症治療のための候補物質である。
【0024】
本発明は、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量を増加させる物質を特定する方法をさらに提供する。この方法は、一般に、細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。関心対象の被験物質は、増加が達成されるメカニズムに関わらず、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる。例えば、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質には、i)メカニズムに関わらず、細胞による活性APOBEC3Gの産生を亢進させる物質;ii)細胞内の不活性型APOBEC3Gの形成を抑制する物質;iii)細胞内において不活性型APOBEC3Gから活性型APOBEC3Gへの変化を誘導する物質などが含まれる。
【0025】
本発明は、細胞内において不活性型APOBEC3Gタンパク質を活性型APOBEC3Gタンパク質に転換させる物質を特定する方法を提供する。この方法は、一般に、細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、不活性型APOBEC3Gの活性型APOBEC3Gへの転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0026】
本明細書で用いられるように、「活性型APOBEC3G」という用語は酵素的に活性であってレンチウイルスゲノムに一つまたは複数の変異を誘導するAPOBEC3Gの型を意味する。APOBEC3Gの「活性」型はレンチウイルスのゲノムに変異を誘導することのできる型である。一般に、活性型APOBEC3Gは、例えば低分子量複合体に含まれる型のようなAPOBEC3Gの低分子量型である。いくつかの態様において、低分子量型APOBEC3Gは、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)により求められるように、約50kDから約100kDの範囲の分子量を持つ複合体に含まれるAPOBEC3Gの型である。APOBEC3Gの量を増加させる関心対象の物質は、多くの態様において、レンチウイルスゲノムに変異を誘導するAPOBEC3Gの量を増加させる物質であり、活性APOBEC3Gは、ウイルスの複製が阻害されて、また/または感染性ウイルスの産生が抑制されるほど十分に多くの変異を誘導する。
【0027】
本明細書で用いられるように、「不活性APOBEC3G」という用語は、例えば、細胞の細胞質においてレンチウイルスを機能不全とするような、レンチウイルスゲノムの変異を誘導しない型、例えば、感染性ウイルスの産生に有害な影響を及ぼすのに十分な数のレンチウイルスゲノムの変異を誘導しない型のように、相対的に不活性であるAPOBEC3Gの型;またはレンチウイルスのビリオンに組み込まれないAPOBEC3Gの型を意味する。いくつかの態様において、APOBEC3Gの不活性型は高分子量複合体に含まれる型である。いくつかの態様において、APOBEC3Gの高分子量型は、サイズ排除FPLCにより求められる通り、約700kDよりも大きい範囲の分子量を持つ複合体に含まれるAPOBEC3Gの型である。
【0028】
本明細書で用いられるように、「Vif活性」という用語には、APOBEC3GへのVifの結合;Vif介在性の、内因性APOBEC3Gタンパク質のビリオン内への組み込みの抑制;APOBEC3Gおよび細胞RNAを含む高分子複合体とのVifの結合;VifによるAPOBEC3G mRNAの翻訳の阻害;およびVifによるAPOBEC3G分解の誘導が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
Vif活性を阻害する物質を特定するための本アッセイは多くの方法でデザインすることができる。いくつかの態様において、アッセイは、Vifの存在下において細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を提供する。その他の態様において、アッセイはAPOBEC3GまたはAPOBEC3G高分子量複合体とのVifの結合に対する被験物質の影響を測定する工程を提供する。これらの態様は以下に詳細に述べられる。
【0030】
細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質レベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、多くの方法でデザインすることができる。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定するための本アッセイは、マイナス鎖DNAにおけるC→U変異を誘導し、その結果、ウイルスのプラス鎖DNAにおいてG→Aの変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、APOBEC3Gのレンチウイルス粒子へのパッケージングに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。
【0031】
細胞内において不活性型APOBEC3Gタンパク質を活性型APOBEC3Gタンパク質に転換させる物質を特定する方法は多くの方法でデザインすることができる。例えば、いくつかの態様において、不活性型APOBEC3Gを活性型APOBEC3Gに転換させる物質を特定する方法は細胞を被験物質と接触させる工程;およびAPOBEC3Gが細胞内で結合する複合体の分子量を測定する工程を伴う。一般に、関心対象の物質は高分子量APOBEC3G含有複合体を低分子量APOBEC3G含有複合体に転換させる被験物質である。その他の態様において、不活性型APOBEC3Gを活性型APOBEC3Gに転換させる物質を特定する方法は、細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、細胞に含まれるレンチウイルスゲノムのAPOBEC3G誘導性変異の数に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0032】
本スクリーニング方法はインビトロにおいて実施される。いくつかの態様において、その方法は細胞に基づいた方法である。その他の態様において、方法は細胞を用いない方法である。
【0033】
「候補物質」、「物質(agent)」、「物質(substance)」、「被験物質」および「化合物」という用語は本明細書において互換的に用いられる。候補物質には多くの化学的分類が含まれ、一般的には合成、半合成または天然の無機もしくは有機分子である。
【0034】
いくつかの態様において、候補物質は50ダルトンよりも大きくて約2,500ダルトンよりも小さな分子量を持つ小さな有機化合物である。
【0035】
候補物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含んでよく、少なくともアミン、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含んでよく、化学的官能基の少なくとも2つを含んでもよい。候補物質は、上記の官能基の一つまたは複数と置換された、環式炭素もしくは複素環式構造、および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含むことができる。候補物質は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子からも見出される。
【0036】
その他の態様において、候補物質は2,500ダルトンよりも大きな分子量を持つ。これらの態様において、候補物質はペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、炭水化物、多糖類、脂質、リポ多糖類、糖タンパク質、プロテオグリカン、リポタンパク質、またはその他の高分子であり得る。
【0037】
候補物質は、合成または天然化合物のライブラリを含む実に様々なソースから得られる。例えば、多くの方法を用いて、無作為化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、様々な有機化合物および生体分子の方向付けされた任意の合成を行うことができる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物性抽出物の形の天然化合物のライブラリが入手可能か、または容易に製造される。さらに、天然または合成により製造されるライブラリおよび化合物は、通常の化学的、物理的、および生化学的方法で容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリの製造に使用することができる。公知の薬学的物質は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような、方向付けされたまたは任意の化学的修飾に供して構造類似体を製造することができる。
【0038】
候補物質は、トリパンブルー色素排除、MTT([3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド])アッセイなどのような周知のアッセイ法を用いて、アッセイで用いられる細胞に対して発現する可能性のある細胞毒性活性について評価される。顕著な細胞毒性活性を示さない物質が候補物質と見なされる。
【0039】
本発明のアッセイは、通常、一つまたは複数の対照を含む。従って、被験試料は被験物質を含み、対照試料は被験物質を除く被験試料のすべての成分を有する。一般に、異なる濃度に対する示差的反応を得るために、多くのアッセイの組み合わせが異なる物質濃度を用いて同時に実施される。典型的には、これらの濃度の一つが負の対照(すなわち濃度0または検出限界よりも低い濃度)とされる。スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、一つまたは複数の分子は標識と結合でき、この場合、その標識は直接的または間接的に検出可能なシグナルを発することができる。様々な標識には、ラジオアイソトープ、蛍光物質、化学的発光物質、酵素、特異的結合分子、例えば磁性粒子のような粒子などが含まれる。特異的結合分子には、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよびアンチジゴキシンなどのようなペアが含まれる。特異的結合メンバーにおいて、相補的メンバーは通常、公知の方法に従って検出に備える分子で標識されるであろう。
【0040】
スクリーニングアッセイには、様々な試薬を含めることができる。これらには、塩、例えばアルブミンなどの中性タンパク質、至適なタンパク質-タンパク質結合の促進および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用の抑制に用いられる界面活性剤などのような試薬が含まれる。ヌクレアーゼ阻害物質、抗菌物質などのようなアッセイの効率を高める試薬を用いることができる。これらの成分は任意の順序で加えてよい。インキュベーションは、典型的には4℃から40℃の間の任意の適切な温度で実施される。インキュベーション期間は活性が至適となるように選択されるが、高速の大量処理スクリーニングを促進するために至適化してもよい。典型的には0.1から1時間の間で十分である。
【0041】
スクリーニング方法は多くの異なる方法でデザインすることができ、この場合、当技術分野において公知であるように、様々なアッセイの環境およびプロトコルを用いることができる。例えば、成分の一つを固体支持体と結合させて、残りの成分をその支持体に結合させた成分と接触させることができる。別の例として、いくつかの態様においては、活性をアッセイするタンパク質は内因性タンパク質(例えば、細胞によって通常産生されるタンパク質)であり、その他の態様においては、活性をアッセイするタンパク質は、細胞内で産生されるコードタンパク質のように、発現構築物にコードされて細胞内に導入される。この方法の上記の成分は、実質的に同時にまたは異なる時期に組み合わせることができる。
【0042】
アッセイが結合アッセイである場合、必ずしも必要という訳ではないが一般的には、本方法は接触およびインキュベーションの後に非結合成分を除去するための洗浄工程を含み、このような洗浄工程は、一般に、放射性または蛍光標識された非特異的結合成分のような、検出中にバックグラウンドシグナルを生じる標識を除去するために必要な場合に用いられる。任意の洗浄工程に続いて、結合複合体の存在が検出される。
【0043】
多くの態様において、安全性の理由から、本アッセイ法がウイルス感染性、ウイルス粒子におけるAPOBEC3Gのキャプシド形成などを調べる工程を伴う場合、感染性レンチウイルスを用いる代わりに、本アッセイはウイルス構造タンパク質(例えば、Gag)およびウイルス粒子のキャプシド形成に必要なその他のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物を用いる。但し、このように産生されるウイルス粒子は実験者に対する病原性はないであろう。従って、本出願において、「レンチウイルス感染細胞」という用語および同様の用語は、病原性ウイルスに感染した細胞、および(例えば、検査目的のために)ウイルス構築物をトランスフェクトされたがヒトに対して病原性であるウイルス粒子を産生しない細胞を含むことが理解される。
【0044】
さらに、レンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性変異数に対する被験物質の影響を測定する工程を含む本方法は、レンチウイルスゲノム全体を用いて実施される必要はない。その代わり、レンチウイルスゲノムの一部を用いてレンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性変異の数に対する被験物質の影響を測定することができる。従って、本明細書で用いられるように「レンチウイルス核酸」という用語はレンチウイルスゲノムのすべてまたは一部を含み、この場合、核酸は一本鎖または二本鎖であってよい。「レンチウイルス核酸」という用語は、レンチウイルスのヌクレオチド配列に加えて、異種性ヌクレオチド配列(例えば、検出可能マーカーをコードするヌクレオチド配列のような非レンチウイルス性ヌクレオチド配列;非レンチウイルス性対照エレメントなど)を含む核酸を含む。「レンチウイルス核酸」という用語は、天然のレンチウイルスヌクレオチド配列;レンチウイルスヌクレオチド配列の変異型;および合成レンチウイルスヌクレオチド配列を含む核酸を含む。「レンチウイルス核酸」という用語は、レンチウイルスのマイナス鎖DNAを含む核酸を含む。多くの態様において、レンチウイルスゲノムにおける変異の数を測定する工程、特にレンチウイルスゲノムにおけるAPOBEC3G誘導性の変異数を測定する工程を伴うアッセイでは、レンチウイルスマイナス鎖DNAを含むレンチウイルス核酸が用いられる。
【0045】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の対照におけるVif活性のレベルに比して、Vif活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上減少させる物質である。
【0046】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gレベルと比べて、細胞内の活性APOBEC3Gの量を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0047】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルス核酸の変異数と比べて、レンチウイルス核酸の変異(例えば、APOBEC3G誘導性変異)の数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0048】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の不活性APOBEC3Gレベルと比べて、真核細胞において酵素的に不活性型のAPOBEC3Gの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を酵素的に活性型のAPOBEC3Gに転換する物質である。
【0049】
APOBEC3Gレベル
いくつかの態様において、本スクリーニング法は、Vifタンパク質が存在する場合の細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。従って、いくつかの態様において、その方法は、VifおよびAPOBEC3Gを産生する細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0050】
これらの態様において、関心対象の被験物質は、Vifタンパク質が存在し、かつ、被験物質が添加されない場合のAPOBEC3Gレベルと比べて、Vifタンパク質が存在する場合のAPOBEC3Gレベルを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍以上増加させる。
【0051】
細胞によって産生されるAPOBEC3Gタンパク質は、GenBankアクセッション番号NP_068594において提供されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異型を持つ可能性がある。例えば、APOBEC3Gタンパク質はNP_068594において提供される配列のアミノ末端および/またはカルボキシル末端からの1〜50個のアミノ酸の切断を含むことができる。用いられるAPOBEC3Gタンパク質は、例えば、その配列が1個〜約20個のアミノ酸置換を含むことができるなど、NP_068594において提供される配列と1個〜約20個のアミノ酸が異なることができる。典型的には、用いられるAPOBEC3Gタンパク質は固有の天然のタンパク質のシチジンデアミナーゼ活性を保持する。適切なAPOBEC3Gタンパク質には、APOBEC3G、およびAPOBEC3Gタンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端にインフレームで融合した異種タンパク質(「融合パートナー」)を含む融合タンパク質も含まれる。適切な融合パートナーには、例えば6Hisなどの例えば(His)nの精製を容易にするペプチドおよびポリペプチド;例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン、
FLAG、
c-myc、
などのエピトープタグを提供するペプチドおよびポリペプチド;例えば、検出可能な産物(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)を産生する酵素のような検出可能なシグナルを発するペプチドおよびポリペプチド、または例えば蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)などのようにそれ自体が検出可能であるタンパク質が含まれる。いくつかの態様において、APOBEC3Gタンパク質はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0052】
細胞によって産生されるVifタンパク質は、任意の公知のレンチウイルスVifタンパク質のアミノ酸配列を有しても良い。例えば、HIV-1のVifタンパク質のアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AAP33677、AAN74526、AAN74517、AAP29646、AAD10945、AAD10937、AAD10929などにおいて提供される。
【0053】
多くの態様において、Vifが存在する場合のAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響は、VifおよびAPOBEC3Gのコード配列を含む発現ベクター(典型的には異なるベクター)をインビトロ培養において適切な真核細胞に導入して、VifおよびAPOBEC3Gタンパク質を産生する遺伝子改変細胞を製造する工程;遺伝子改変細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、遺伝子改変細胞によって産生されるAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程によって調べられる。
【0054】
Vifタンパク質のコード領域(細胞内でのVifタンパク質の産生のため)またはAPOBEC3Gのコード領域(細胞内でのAPOBEC3Gの産生のため)を含むように、真核細胞での発現に適した発現ベクターが構築される。VifまたはAPOBEC3Gコード領域を含む発現ベクターは、一般に、機能的に連結したVifまたはAPOBEC3Gをコードするポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼすために必要な調節配列(「制御配列」または「制御領域」)を含む。発現ベクターは、典型的には、転写開始領域、プロモーター領域、VifまたはAPOBEC3Gをコードするヌクレオチド配列、および転写終止領域を含む。適切なプロモーターは構成的プロモーターおよび誘導型プロモーターを含み、その多くは当技術分野において周知である。発現ベクターは、一般に、VifまたはAPOBEC3Gタンパク質をコードする核酸配列の挿入に備えるために、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を持っている。発現宿主において機能する選択マーカーが存在する場合もある。
【0055】
発現ベクターは、リン酸カルシウム沈降法;電気穿孔法;感染(発現ベクターがウイルス粒子にパッケージングされる場合);リポソーム介在性トランスフェクションなどを含む、任意の慣例的方法を用いて真核細胞に導入される。適切な細胞は真核細胞であり、典型的には、霊長類細胞を含む哺乳動物細胞、例えば、COS細胞、293T細胞、Jurkat細胞、H9細胞などを含む不死化細胞株などであるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
被験物質がVifに誘導されるAPOBEC3Gタンパク質レベルの減少を阻害するか否かについては、細胞内の特定のタンパク質レベルを測定するための、任意の公知の方法によって調べることができる。いくつかの態様において、アッセイは、APOBEC3G特異的抗体を用いた免疫学的アッセイである。そのような方法には、細胞抽出物からAPOBEC3Gを免疫沈降させる工程、およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)により免疫沈降したAPOBEC3Gを分析する工程;APOBEC3Gおよび検出可能なシグナルを発する融合パートナーを含む融合タンパク質を産生する細胞内の検出可能融合パートナーを検出する工程;APOBEC3Gを産生する細胞に由来するAPOBEC3Gの標準的SDS-PAGEおよび免疫ブロット(例えば、タンパク質をSDS-PAGE中に得られたゲルから膜に移して、その膜を検出可能なように標識した抗体で探査する工程)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
その他の態様において、アッセイはAPOBEC3G融合タンパク質の融合パートナーを検出するアッセイである。従って、例えばAPOBEC3Gが、APOBEC3Gおよび融合パートナーとして検出可能なシグナルを発するタンパク質を含む融合タンパク質の一部である場合、そのアッセイはその融合パートナーを検出する。融合パートナーには、緑色蛍光タンパク質(GFP);花虫類(Anthozoa)由来の蛍光タンパク質(例えば、Matz et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17: 969-973を参照されたい);ルシフェラーゼ;β-ガラクトシダーゼなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。APOBEC3G融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物が真核細胞に導入される。細胞内で産生されるAPOBEC3Gタンパク質の量はその融合パートナーを検出することによって測定される。融合パートナーが免疫学的タグである場合は、免疫学的アッセイ(タンパク質ブロッティング法、ELISAなど)が用いられる。融合パートナーが検出可能な産物を生成する酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)である場合は、酵素アッセイが用いられる。蛍光発生性の融合パートナーの検出には、蛍光定量アッセイが用いられる。発光性の産物を生じる融合パートナーの検出にはルミノメーターが用いられる。融合パートナーは、融合パートナーに適した任意の公知の方法によって検出される。融合パートナーは、細胞抽出物において、融合パートナーに適したアッセイ(例えば、酵素アッセイ、免疫学的アッセイなど)を用いて検出される;または例えばフローサイトメトリーを用いて、無傷細胞中の融合パートナーが検出される。例えば、融合パートナーが蛍光シグナルを発する場合は、いくつかの態様において、APOBEC3Gレベルはフローサイトメーターを用いて測定される。
【0058】
以下は、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定するための適切なアッセイの一つの非限定的な例である。細胞がルシフェラーゼ-APOBEC3G(luc-APOBEC3G)融合タンパク質を合成するように、哺乳動物細胞(例えば、不死化細胞株)にルシフェラーゼ-APOBEC3G融合タンパク質のコード配列を含む発現ベクターを安定的にトランスフェクトする。基質が細胞に侵入するようにルシフェラーゼの基質を細胞培養培地に加えて、発光性産物を生じるようにルシフェラーゼ-APOBEC3Gのルシフェラーゼ部分によって機能させる。細胞内のルシフェラーゼレベルはルミノメーターを用いて検出して、luc-APOBEC3Gの量は相対発光量として表す。Vif/luc-APOBEC3G細胞を得るために、細胞にVifのコード配列を含む発現ベクターをトランスフェクトする。Vifはluc-APOBEC3Gの分解を誘導するので、Vif/luc-APOBEC3G細胞中にVifタンパク質が存在すると、Vifが存在しない場合のluc-APOBEC3Gレベルと比べて、luc-APOBEC3Gレベルが減少する。Vif/luc-APOBEC3G細胞をVif誘導性APOBEC3G分解を抑制する被験物質に接触させると、luc-APOBEC3Gレベルが被験物質を添加しない場合のVif/luc-APOBEC3G細胞中のluc-APOBEC3Gレベルに対して増加する。
【0059】
従って、いくつかの態様において、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定する方法は、Vifおよび検出可能なシグナルを発するタンパク質に融合したAPOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質(および、必要ならば、検出可能なシグナルを発するタンパク質の基質)に接触させる工程;および、もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gレベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を抑制する物質を特定する方法は、VifおよびAPOBEC3G-ルシフェラーゼタンパク質を産生する細胞を被験物質およびルシフェラーゼの基質に接触させる工程;および、もしあれば、被験物質を添加しない場合の細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼレベルと比べて、細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼレベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。細胞内のAPOBEC3G-ルシフェラーゼタンパク質レベルを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍以上増加させる物質は、Vif誘導性のAPOBEC3G分解を阻害する物質である。
【0060】
細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定する方法
いくつかの態様において、本発明は細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定する方法を提供する。これらの態様において、本スクリーニング方法は細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。この方法は、一般に、APOBEC3Gを産生する細胞を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0061】
これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gレベルと比べて、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0062】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の活性APOBEC3Gの産生量と比べて、細胞内の活性APOBEC3Gの産生(例えば、合成)を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0063】
その他の態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルス核酸の変異数と比べて、レンチウイルス核酸の変異(例えば、APOBEC3G誘導性変異)数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0064】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合のレンチウイルスのマイナス鎖におけるC→U変異数と比べて、レンチウイルスのマイナス鎖におけるC→U変異数を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0065】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるキャプシド形成されたAPOBEC3Gを持つレンチウイルス粒子の割合と比べて、細胞によって産生されるキャプシド形成されたAPOBEC3Gを持つレンチウイルス粒子の割合を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる物質である。
【0066】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるウイルスの感染性と比べて、細胞によって産生されるレンチウイルスの感染性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上低下させる物質である。
【0067】
その他の態様において、関心対象の被験物質は活性な低分子量APOBEC3G複合体を得るために不活性高分子量APOBEC3G複合体の分解を促進する物質である。これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の不活性高分子量APOBEC3G複合体レベルと比べて、真核細胞において、不活性高分子量APOBEC3G複合体の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を、酵素的に活性な低分子量APOBEC3G複合体へと分解を促進する物質である。
【0068】
いくつかの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の細胞内の不活性APOBEC3Gレベルと比べて、真核細胞において酵素的に不活性型のAPOBEC3Gの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上を、酵素的に活性型のAPOBEC3Gに転換する物質である。
【0069】
いくつかの態様において、細胞は内因性APOBEC3Gを産生する細胞である。その他の態様において、細胞内の活性APOBEC3Gタンパク質の量に対する被験物質の影響は、APOBEC3Gコード配列を含む発現ベクターをインビトロ培養において適切な真核細胞に導入して、APOBEC3Gタンパク質を産生する遺伝子改変細胞を製造する工程;遺伝子改変細胞を被験物質と接触させる工程;および、もしあれば、遺伝子改変細胞によって産生される活性APOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程によって調べられる。
【0070】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルは様々な方法で測定することができる。いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gの産生を増加させる物質を特定するための本アッセイはAPOBEC3G産生レベルに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、マイナス鎖におけるC→U変異を誘導して、その結果、ウイルス逆転写においてG→A変異を誘導する、および/またはDNAコピーにおいてC→T変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、APOBEC3Gのレンチウイルス粒子へのパッケージングに対するその物質の影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイは、その物質のウイルス感染性に対する影響を測定する工程を伴う。その他の態様において、本アッセイは、不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。
【0071】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイが、細胞によるAPOBEC3G合成量に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、APOBEC3Gを産生する細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いたイムノブロッティングアッセイまたはAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いたELISAアッセイを用いてAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。細胞は通常、APOBEC3Gを放出するように溶解される。もう一つの例として、APOBEC3Gプロモーターの制御下においてAPOBEC3Gをコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物を含む細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いたイムノブロッティングアッセイまたはAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いたELISAアッセイを用いてAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。もう一つの非限定的な例として、APOBEC3Gプロモーターの制御下においてAPOBEC3Gのすべてまたは一部および検出可能なシグナルを発する検出可能な異種性タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、ヘマグルチニンなどのエピトープタグ)を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物を含む細胞を用いて、その細胞を被験物質に接触させて、また、その異種性タンパク質を当技術分野において周知の標準的アッセイを用いて検出することによってAPOBEC3Gタンパク質レベルを検出して、細胞によるAPOBEC3Gの合成を検出することができる。
【0072】
いくつかの態様において、細胞質のAPOBEC3Gレベルが検出される。いくつかの態様において、レンチウイルスに感染していない細胞の細胞質における活性APOBEC3Gレベルを増加させることが有利である。 このような細胞がレンチウイルスに感染すると、細胞の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルが増加して、その結果、APOBEC3G誘導性のレンチウイルスゲノムの変異の数が増加し、細胞によって産生される感染性ウイルスレベルが減少する。これらの態様において、関心対象の被験物質は、被験物質を添加しない場合の非感染細胞の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルと比べて、非感染細胞(例えば、レンチウイルスに感染していない細胞)の細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約25倍以上増加させる。被験物質が細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを増加させるか否かについては、任意の公知のアッセイ(例えば、シチジンデアミナーゼアッセイ)を用いて調べることができる。被験物質が細胞質中の活性APOBEC3Gレベルを増加させるか否かは、例えば、実施例に述べられるように、APOBEC3G特異的抗体を用いた核および細胞質画分のイムノブロッティングによって容易に調べられる。
【0073】
活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイが、レンチウイルスマイナス鎖におけるC→U変異を誘導して、その結果、ウイルス逆転写におけるG→A変異を誘導する、および/またはDNAコピーにおいてC→T変異を誘導するAPOBEC3Gタンパク質レベルに対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、レンチウイルスマイナス鎖に誘導されるC→U変異数は、被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーを鋳型とし、TaqポリメラーゼまたはPfuポリメラーゼを用いて増幅されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物を検出することによって測定することができる。Taqポリメラーゼはウラシルを含む鋳型を複製して、Pfuポリメラーゼはウラシルを含む鋳型は容易には複製しない。Taqポリメラーゼを用いて実施されるPCRでは(使用されるプライマーの位置に基づいて)予想されるサイズの産物が得られるが、Pfuポリメラーゼを用いて実施されるPCRではTaqで産生される産物よりも大幅に少ない量が産生される。もう一つの例として、Taqポリメラーゼおよび鋳型として被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーを用いて増幅されるPCR産物の配列が決定されて、G→A置換の存在が検出される。従って、例えばいくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルは被験物質を添加する場合または添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数を検出することによって測定される。被験物質が細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる場合、被験物質を添加する場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数は被験物質を添加しない場合に細胞によって産生されるレンチウイルスRNAのcDNAコピーにおけるG→A置換数よりも多いことが予測される。
【0074】
いくつかの態様において、APOBEC3G誘導性のレンチウイルス核酸における変異数は、インビトロにおけるシチジンデアミナーゼアッセイを用いて測定される。例えば、脱アミノ化のための放射標識されたオリゴヌクレオチド基質を、APOBEC3Gを含まないまたは含む被験試料と共にインキュベートする。適切な基質はAPOBEC3G作用のための標的であるデオキシシチジンを含む。APOBEC3Gはシトシン塩基を脱アミノ化してウラシルに変化させる。ウラシルはウラシルDNAグリコシラーゼ(UDGまたはUNG)の作用に対して感受性である。酵素反応にUDG/UNGを加えるとオリゴヌクレオチドからウラシル塩基が除去されて、シチジン脱アミノ部位に脱塩基部位が生じる。次いで、この脱塩基部位におけるオリゴヌクレオチドのリン酸-糖骨格はアルカリ加水分解に対して感受性である。従って、反応にNaOHを加えると、脱アミノ部位に開裂が生じる。開裂はアクリルアミド-尿素ゲルを用いた電気泳動法によってモニターされ、それによってAPOBEC3G活性は、より長い基質であるオリゴヌクレオチドから派生するより短い開裂産物の生成によってスコア化され、この場合、開裂は脱アミノ部位において特異的に生じる。
【0075】
活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を特定するための本アッセイが、APOBEC3Gタンパク質のウイルスキャプシド形成レベルを測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、レンチウイルス粒子を産生する被験細胞(例えば、HIVなどのレンチウイルスによる感染に対して感受性の細胞;例えば、細胞表面にCD4+、CCR5、およびCXCR4を発現する細胞)を被験物質と接触させて、細胞上清中のウイルス粒子についてAPOBEC3Gの存在を分析することによってウイルス粒子中のAPOBEC3Gレベルを測定する。例えば、細胞上清に含まれるウイルス粒子をウイルス構築物のトランスフェクション後24〜48時間に回収して、細胞破壊片を除去し(例えば、遠心分離によって)、ウイルス粒子を濃縮する。ウイルス粒子中のAPOBEC3Gは免疫学的アッセイを用いて検出する。例えば、APOBEC3Gは、ウイルス粒子が溶解され、タンパク質がゲル上で分離されてナイロン膜またはその他のタイプの膜のような固相支持体に移されて、APOBEC3Gに特異的な抗体を用いて膜上のAPOBEC3Gが検出されるイムノブロットアッセイにおいて検出される。
【0076】
細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質を特定するための本アッセイがレンチウイルス感染性のレベルを測定する工程を伴う場合、そのアッセイは多くの方法で実施することができる。例えば、CD4+細胞における1回力価測定アッセイを用いて被験物質を添加する場合および添加しない場合のウイルス力価を測定することによって調べることができる。適切なアッセイは、許容性被験細胞(例えば、HIVなどのレンチウイルスによる感染に対して感受性の細胞;例えば、細胞表面にCD4+、CCR5、およびCXCR4を発現する細胞)をレンチウイルス産生細胞(例えば、レンチウイルス構築物をトランスフェクトした細胞)から得られた上清に接触させる工程を伴ってもよく、その被験細胞は機能的に結合されたHIVの長い末端反復配列(LTR)の転写制御下において検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)など)のコード配列を含むために、細胞に感染性のHIVウイルス粒子が感染するとHIV LTRが活性化して検出可能なマーカーが産生される。被験細胞への感染にはウイルス粒子を含む細胞上清が用いられて、被験細胞の感染は検出可能マーカーのアッセイによって検出される。被験物質に接触させたレンチウイルス産生細胞の細胞上清を、被験物質に接触させていない同一細胞の細胞上清と比較する。感染した被験細胞の数が、細胞上清中のウイルス粒子の感染性の指標である。検出可能マーカーが緑色蛍光タンパク質である場合、感染性は蛍光標示式セルソーターを用いて判定することができる。検出可能マーカーがβ-ガラクトシダーゼである場合、感染性は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-β-D-ガラクトシダーゼ染色により判定することができる。例えば、Mangeat et al.((2003) Nature 424: 99-103を参照されたい。多量の活性APOBEC3Gを持つHIV感染細胞の上清におけるHIVウイルス粒子の感染性は、少量の活性APOBEC3Gを持つHIV感染細胞の上清におけるHIVウイルス粒子の感染性よりも低いことが予想される。
【0077】
本方法が不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う場合、細胞内の高分子量APOBEC3G複合体および低分子量APOBEC3G複合体の量は、例えば、被験物質に接触させておいた細胞の溶解、および溶解物のサイズ排除FPLCを行うことによって測定することができる。
【0078】
APOBEC3GへのVif結合を阻害する物質を特定する方法
いくつかの態様において、本発明はVifポリペプチドとAPOBEC3GまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法を提供する。その方法は、一般に、VifポリペプチドおよびAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体を被験物質と接触させる工程、および、もしあれば、VifとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用に対する被験物質の影響を測定する工程を伴う。いくつかの態様において、VifポリペプチドとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法は、細胞に基づいた方法である。その他の態様において、VifポリペプチドとAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との相互作用を阻害する物質を特定する方法は、細胞を用いない方法である。
【0079】
VifおよびAPOBEC3GポリペプチドまたはAPOBEC3G複合体との結合複合体形成は、任意の公知の方法を用いて検出され得る。適切な方法には、酵母二重ハイブリッド法;FRETアッセイ;BRETアッセイ;蛍光消光アッセイ;蛍光異方性(anisotropy)アッセイ;免疫学的アッセイ;および検出可能なように標識されたタンパク質の固定化したタンパク質(例えば、GST-Vif)への結合を伴うアッセイが含まれる。
【0080】
免疫学的アッセイ、および検出可能なように標識されたタンパク質の固定化したタンパク質への結合を伴うアッセイは、様々な方法で変更することができる。免疫沈降法によるアッセイをデザインすることができ、この場合、Vif/APOBEC3Gポリペプチド複合体は、Vif特異的な抗体、APOBEC3Gに特異的な抗体、またはVif融合タンパク質の融合パートナーに特異的な抗体および/またはAPOBEC3G融合ポリペプチドの融合パートナーに特異的な抗体で沈降させることによって検出される。いくつかの態様において、APOBEC3Gタンパク質またはVifタンパク質は、不溶性の支持体に直接固定される。その他の態様において、APOBEC3Gタンパク質またはVifタンパク質は、二番目のタンパク質に融合または結合されて、その二番目のタンパク質は不溶性の支持体に固定される。不溶性の支持体には、マルチウェルプレートのようなプラスチック表面(例えば、ポリスチレンなど);磁気ビーズ、プラスチックビーズなどを含むビーズ;膜(例えば、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースなど)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
その他の態様において、アッセイは、固定されたAPOBEC3GへのVifの結合を検出する、または固定されたVifタンパク質へのAPOBEC3Gの結合を検出する結合アッセイである。いくつかの態様において、Vifポリペプチドは検出可能な標識で標識され、固定されたAPOBEC3Gポリペプチドへの結合が検出される。その他の態様において、APOBEC3Gポリペプチドは検出可能な標識で標識され、固定されたVifポリペプチドへの結合が検出される。その他の態様において、Vifポリペプチドは固定され、VifポリペプチドへのAPOBEC3Gポリペプチドの結合がAPOBEC3Gポリペプチド特異的な抗体を用いて検出されて、その抗体が直接標識されるか、または標識された二次抗体が用いられる。その他の態様において、APOBEC3Gポリペプチドは固定され、そのAPOBEC3GポリペプチドへのVifポリペプチドの結合がVifポリペプチドに特異的な抗体を用いて検出されて、その抗体が直接標識されるか、または標識された二次抗体が使用される。
【0082】
VifポリペプチドとAPOBEC3Gポリペプチドとの結合複合体の形成は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、異方性測定法および蛍光消光測定法を用いて検出することもできる。
【0083】
FRETは、励起状態のドナー蛍光体から近位にある受容体蛍光体へのエネルギーの転移を伴う。この転移が起こるためには、ドナーおよび受容体の分子が近位(例えば、10ナノメーターの距離よりも近い、通常は10から100Åの距離)になければならず、かつ、ドナー発光体の発光スペクトルが受容体発光体の励起スペクトルと重複しなければならない。これらの態様において、蛍光標識されたVifタンパク質は、例えばMatz et al., Nature Biotechnology (October 1999) 17: 969 973に述べられる蛍光タンパク質のような二番目の蛍光タンパク質または色素;「ヒト化」GFPを含む緑色蛍光タンパク質(GFP);例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、および第5,874,304号に述べられる発光オワンクラゲ(Aequoria victoria)由来のGFP、またはその蛍光変異体;例えばWO 99/49019およびPeelle et al. (2001) J Protein Chem. 20: 507-519に記載されるウミシイタケ(Renilla reniformis)、ラニラムレリ(Renilla mulleri)またはチロサルクスゲルニ(Ptilosarcus guernyi)のような別の種に由来するGFP;「ヒト化」組換え型GFP(hrGFP)(Stratagene);例えばクマリン、および例えば7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリンのような誘導体、Bodipy FLのようなボディピー色素、カスケードブルー、フルオレセインおよび例えばフルオレセインイソチオシアネートのような誘導体、オレゴングリーン、例えばテキサスレッド、テトラメチルローダミンなどのローダミン色素、エオジンおよびエリスロシン、例えばCy3およびCy5などのシアニン色素、例えばカンタム(quantum)色素などのランタニドイオンの大環状キレート、例えばルシフェラーゼなどの化学発光色素などの、その他の蛍光色素と共同してドナーおよび/または受容体として機能する。
【0084】
BRETは、生物発光ドナーから蛍光受容体タンパク質へのエネルギー転移に基づくタンパク質-タンパク質相互作用アッセイである。BRETのシグナルは、ドナーから放出される光量に対する受容体から放出される光量によって求められる。二つのタンパク質が接近すると、これら二つの値の割合が増加する。BRETアッセイについては、文献に詳細に説明されている。例えば、米国特許第6,020,192号、第5,968,750号および第5,874,304号;ならびにXu et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 151-156を参照されたい。BRETアッセイは、生物発光ドナータンパク質と蛍光受容体タンパク質との間の転移を分析することによって行うことができる。ドナータンパク質と受容体タンパク質との間の相互作用は、生物発光および蛍光タンパク質より放出される光の割合の変化によってモニターすることができる。本出願において、Vifタンパク質はドナーおよび/または受容体タンパク質として機能する。
【0085】
蛍光Vifは、Vifおよび例えばMatz et al.((1999) Nature Biotechnology 17: 969-973)に記載されるような蛍光タンパク質のような蛍光融合パートナー、任意の種に由来する緑色蛍光タンパク質またはその誘導体;例えばWO 99/49019およびPeelle et al. (2001) J Protein Chem. 20: 507-519に述べられるようなウミシイタケ、ラニラムレリまたはチロサルクスゲルニのような別の種に由来するGFP;「ヒト化」組換え型GFP(hrGFP)(Stratagene);例えば米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、および第5,874,304に記載されるような、オワンクラゲ由来のGFPまたはその蛍光変異体を含む構築物を製造することによって産生され得る。このような構築物の製造およびVif/蛍光タンパク質の融合タンパク質の産生は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0086】
あるいは、結合は蛍光異方性アッセイにより測定することができる。蛍光異方性アッセイについては、文献に詳細に述べられている。例えば、JamesonおよびSawyer (1995) Methods Enzymol. 246: 283-300を参照されたい。
【0087】
いくつかの態様において、本方法は、APOBEC3Gおよび細胞RNAを含む高分子量複合体(>700kD)へのVif結合を検出する工程を伴う。これらの態様において、スクリーニング方法は典型的には細胞に基づく方法である。細胞は一般に、前記のように適切な真核細胞におけるVifおよびAPOBEC3Gの産生に備える発現ベクターによって遺伝子改変される。VifおよびAPOBEC3Gの産生のための時間経過後、細胞を溶解して、溶解物についてAPOBEC3G複合体中のVifの存在を調べる。APOBEC3G複合体とVifとの結合を検出するための任意の公知の方法が適切である。非限定的な例は、実施例1に述べる通り、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)である。
【0088】
活性物質
本発明は、Vifの活性を抑制または阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質;および不活性高分子量APOBEC3G複合体を活性低分子量APOBEC3G複合体に転換させる物質をさらに提供する。多くの態様において、本発明のスクリーニング方法を用いて特定される物質が、特に関心の対象である。本物質はレンチウイルスの複製阻害に有効であり、従って、レンチウイルス感染症の治療に有効である。
【0089】
多くの態様において、物質は小分子であり、例えば50ダルトンよりも大きくて約2,500ダルトンよりも小さな分子量の小さな有機または無機化合物である。物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含んでもよく、少なくともアミン、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含んでよく、化学的官能基の少なくとも2つを含んでよい。物質は、上記の官能基の一つまたは複数と置換された環式炭素もしくは複素環式構造、および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含んでよい。物質は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせを含む生体分子からも見出される。
【0090】
いくつかの態様において、活性物質はペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)である。適切なペプチドには、約3アミノ酸から約50アミノ酸、約5アミノ酸から約30アミノ酸、約10アミノ酸から約25アミノ酸、約25アミノ酸から約50アミノ酸、約50アミノ酸から約75アミノ酸、または約75アミノ酸から約100アミノ酸までの長さのペプチドを含む。いくつかの態様において、ペプチドは直鎖状であり、その他の態様において、ペプチドは環状である。いくつかの態様においてペプチドは修飾され、例えばそのペプチドに共有結合または非共有結合により結合した一つまたは複数の非ペプチド成分を含む。適切な非ペプチド成分には、ポリエチレングリコール(PEG)成分;炭水化物成分;脂質成分;脂肪酸成分;ポリサッカライド成分;リン酸基などが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、活性ペプチドは、例えばインビボにおいて安定性および滞留時間を高める異種性ペプチド;細胞膜の通過を容易にする異種性ペプチド;細胞表面受容体に結合する異種性ペプチド;二量体化に備える異種性ペプチド;エピトープタグを提供する異種性ペプチド;検出可能シグナルを発する異種性ペプチドなどに結合する。
【0091】
ペプチドは、天然および非天然に生じるアミノ酸を含むことができる。ペプチドは、D-アミノ酸、D-およびL-アミノ酸の組み合わせ、ならびにペプチドに特殊な性状を付与する様々な「デザイナー」アミノ酸(例えばβ-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、およびNα-メチルアミノ酸など)を含んでよい。さらに、ペプチドは環式ペプチドであってもよい。ペプチドは、特定の配座モチーフを導入するために非古典的アミノ酸を含んでよい。任意の公知の非古典的アミノ酸を使用することができる。非古典的アミノ酸には、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート;(2S,3S)-メチルフェニルアラニン、(2S,3R)-メチル-フェニルアラニン、(2R,3S)-メチル-フェニルアラニン、および(2R,3R)-メチル-フェニルアラニン;2-アミノテトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸;ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート;β-カルボリン(D体およびL体);HIC(ヒスチジンイソキノリンカルボン酸);およびHIC(ヒスチジン環状尿素)が含まれるが、これらに限定されるものではない。アミノ酸類似体およびペプチド模倣物は、LL-Acp(LL-3-アミノ-2-プロペニドン-6-カルボン酸)、β-ターンを誘導するジペプチド類似体;β-シート誘導類似体;βターン誘導類似体;α-ヘリックス誘導類似体;γ-ターン誘導類似体;Gly-Alaターン類似体;アミド結合した同配体;トレトラゾルなどを含むがこれらに限定的ではない特異的な二次構造を誘導またはこれに有利に作用するように、ペプチドに組み込むことができる。
【0092】
ペプチドはデプシペプチドであってもよく、これは直鎖状および環状デプシペプチドであってよい。Kuisle et al. (1999) Tet. Letters 40: 1203-1206。「デプシペプチド」は少なくとも2つのα-アミノ酸および少なくとも一つのα-ヒドロキシカルボン酸の配列を含む化合物であって、それらはヒドロキシカルボン酸から派生する少なくとも一つの通常のペプチド結合およびエステル結合によって結合し、「直鎖状デプシペプチド」はS-S架橋を介して、またはヒドロキシ-もしくはメルカプトアミノ酸のヒドロキシル基もしくはメルカプト基、および別のアミノ酸またはヒドロキシ酸のカルボキシル基を介して形成される環を含むことはできるが、ヒドロキシカルボン酸に由来するペプチドまたはエステル結合のみを介して形成される環は含まない。「環状デプシペプチド」は、ヒドロキシカルボン酸から派生するペプチドまたはエステル結合のみを介して形成される少なくとも一つの環を含むペプチドである。
【0093】
ペプチドは環式または二環式であり得る。例えば、カルボキシル基またはエステルの-OHまたはエステル(-OR)がそれぞれN末端のアミノ基で内部置換することによって環式ペプチドを形成するように、C末端カルボキシル基またはC末端エステルの環化を誘導することができる。例えば、合成および開裂によってペプチド酸を生じた後、遊離酸は、塩化メチレン(CH2Cl2)、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物等の溶液中のジシクロヘキシカルボジイミド(DCC)のような適切なカルボシキル基活性化物質によって活性化エステルに転換される。続いて、N末端アミンを用いた活性化エステルの内部置換によって、環式ペプチドが形成される。重合とは対照的に内部環化は、非常に薄い溶液を使用しても促進され得る。環式ペプチドを製造する方法は、当技術分野において周知である。
【0094】
「二環式」という用語は、閉環が二つ存在するペプチドを意味する。その閉環は、ペプチド内のアミノ酸同士の共有結合によって形成される。隣接していない二つのアミノ酸の共有結合は、共有ペプチド結合によって既に結合されている隣接アミノ酸ペアとの間の第二の共有結合として、閉環を構成する。閉環を形成する共有結合はアミド結合であってもよく、すなわち一つのアミノ酸の一つの遊離アミノと二番目のアミノ酸の遊離カルボキシルの間に形成される結合、またはペプチド内のアミノ酸の側鎖間もしくは「R」基間に形成される結合であってよい。従って、二環式ペプチドは「真」の二環式ペプチド、つまり、そのペプチドのN末端およびC末端の間のペプチド結合の形成によって環化されるペプチドであるか、「デプシ-二環式」ペプチド、すなわち末端アミノ酸がその側鎖分子を介して共有結合するペプチドであり得る。
【0095】
デスアミノまたはデスカルボキシ残基は、プロテアーゼに対する感受性を低下させるか、ペプチドの立体構造を制限するために、末端のアミノ基またはカルボキシル基がないようにペプチドの末端に組み込まれることができる。C末端の官能基には、アミド基、アミド低級アルキル基、アミドジ(低級アルキル)基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、およびカルボキシ基、ならびにその低級エステル誘導体、および薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。
【0096】
前記のN末端およびC末端の修飾に加えて、ペプチドまたはペプチド模倣物はそのペプチドの可溶性および循環半減期を亢進させるために、様々な親水性ポリマーの一つもしくはいくつかで修飾またはこれらに共有結合することができる。ペプチドへの結合に適した非タンパク性親水性ポリマーには、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールに例証されるようなポリアルキルエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキシアルケン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびセルロース誘導体、デキストランおよびデキストラン誘導体などが含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、このような親水性ポリマーは、約500から約100,000ダルトン、約2,000から約40,000ダルトン、または約5,000から約20,000ダルトンの範囲の平均分子量を持つ。ペプチドは、Zallipsky, S., Bioconjugate Chem., 6: 150-165 (1995); Monfardini, C, et al., Bioconjugate Chem., 6: 62-69 (1995);米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、第4,179,337号またはWO 95/34326に示される任意の方法を用いて、このようなポリマーを用いて誘導体形成されるか、またはこのようなポリマーに結合することができる。
【0097】
活性ペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)は、いくつかの態様において、タンパク質軽質導入による細胞質膜を介しての取り込みを可能とするために、アルギニン残基を含むデカペプチドに抱合される。このような修飾によって、ペプチドは高い効率で(例えば、細胞質膜を介して)細胞に侵入することができる。
【0098】
いくつかの態様において、活性ペプチド(例えば、Vif活性のペプチド阻害剤;活性APOBEC3Gの量を増加させるペプチド;不活性HMW型APOBEC3Gを活性LMW型APOBEC3Gに転換させるペプチドなど)はペプチドアプタマーである。ペプチドアプタマーは、タンパク質機能の優勢阻害剤として機能するペプチドまたは小さなポリペプチドである。ペプチドアプタマーは標的タンパク質に特異的に結合して、それらの機能能力を遮断する。KoloninおよびFinley (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 14266-14271。ペプチドアプタマーの選択性が高いために、特定のタンパク質のターゲッティングばかりでなく、所与のタンパク質の所与の機能(例えば、タンパク質結合機能)のターゲティングにも使用することができる。さらに、ペプチドアプタマーは時間的、空間的または誘導的方法で発現を調節するプロモーターを使用することによって、制御された形で発現させることができる。
【0099】
標的タンパク質に対して高い親和性および特異性を持って結合するペプチドアプタマーは、当技術分野において公知の様々な技術で単離することができる。ペプチドアプタマーは、酵母二重ハイブリッドスクリーニングによってランダムペプチドライブラリから単離することができる(Xu et al., (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 12473-12478)。それらは、ファージライブラリ(Hoogenboom et al., Immunotechnology (1998) 4: 1-20)または化学的に作出されたペプチド/ライブラリから単離することもできる。
【0100】
真核細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質には、高分子量複合体におけるAPOBEC3Gの含有を阻止または抑制する物質;高分子量APOBEC3G複合体の分解を媒介する物質;および細胞による活性APOBEC3Gタンパク質の産生を増加させる物質が含まれる。
【0101】
活性APOBEC3Gの産生を増加させる物質には、例えばCD3に対する抗体(例えば、Orthoclone OKTe(登録商標)ムロモナブ-CD3)など)のような抗体;例えばIL-2(例えば、Proleukin(登録商標)IL-2(アルデスロイキン))のようなサイトカイン;IL-15;例えばプロストラチン(12-デオキシホルボル-13-アセテート)、ホルボル-12-ミリステート-13-アセテートなどのホルボルエステル;例えばフィトヘマグルチニンのようなレクチン;マイトジェンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、活性APOBEC3Gの量を増加させるために、前記の物質の一つまたは複数の組み合わせが使用される。
【0102】
不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する物質には、タンパク質-タンパク質相互作用を崩壊させる物質;RNアーゼ;APOBEC3Gホモ二量体化を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;APOBEC3GとRNAとの結合を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;APOBEC3Gと高分子量APOBEC3G複合体に含まれるその他のポリペプチドとの結合を阻害するAPOBEC3Gのペプチド断片;HMW APOBEC3G複合体中のRNAをターゲッティングする低分子干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスRNA;HMW APOBEC3G複合体のタンパク質成分をコードするmRNAをターゲッティングするsiRNAまたはアンチセンスRNAなどが含まれる。
【0103】
APOBEC3Gホモ二量体化を阻害する、および/もしくはHMW APOBEC3G複合体の形成を阻害する、および/もしくは不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する、および/もしくはVif活性を阻害するペプチド物質には、APOBEC3Gのアミノ末端に対応するペプチド、およびAPOBEC3Gのカルボキシル末端に対応するペプチドが含まれるが、これらに限定されるものではない。使用に適した例示的な非限定的ペプチドには、APOBEC3Gのアミノ末端の40個のアミノ酸の、例えば、約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約30、または約30から約40個の隣接するアミノ酸を含むペプチドが含まれる。例えば、適切なペプチドは次のペプチド
およびその変異体の約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約30、または約30から約40個の隣接するアミノ酸を含む。その他の例示的ペプチドは、次のペプチド
の約5から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約25個の隣接するアミノ酸を含み、SEQ ID NO:6に示される配列を持つペプチドの完全長までのペプチド;ならびに前記の任意のペプチドの変異体(例えば、前記のペプチドとはアミノ酸配列が約1アミノ酸から約10アミノ酸だけ異なるペプチド)が含まれる。上記の任意の環化型ペプチド、および、例えば上記のようにペプチドに共有結合した一つまたは複数のポリエチレングリコール成分の付加による修飾(例えば、PEG化ペプチド)、一つまたは複数の糖鎖の付加による修飾などの、一つまたは複数の修飾を持つ上記の任意のペプチドも使用に適している。
【0104】
Vifに誘導されるAPOBEC3Gの分解を抑制するペプチド物質には、APOBEC3Gのアミノ末端部分の約5個から約100個の隣接するアミノ酸を含むペプチド、例えば、APOBEC3Gのアミノ末端部分の約5から約10、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、約70から約80、約80から約90、または約90から約100個の隣接するアミノ酸を含むペプチドが含まれる。例えば、Vifに誘導されるAPOBEC3Gの分解を抑制する適切なペプチド物質には、SEQ ID NO:7に示される配列を持つペプチドの約5から約10、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、約70から約80、約80から約90、または約90から約100個の隣接アミノ酸を含むペプチドが含まれる。前記の任意のペプチドの変異体(例えば、前記ペプチドとはアミノ酸配列が約1アミノ酸から約10アミノ酸だけ異なるペプチド)も使用に適している。上記の任意の環化型ペプチド;および例えば、上記のようにペプチドに共有結合した一つまたは複数のポリエチレングリコール成分の付加による修飾(例えば、PEG化ペプチド)、一つまたは複数の糖鎖の付加による修飾などの、一つまたは複数の修飾を持つ上記の任意のペプチドも使用に適している。
【0105】
レンチウイルス感染症の治療方法
本発明は、個人におけるレンチウイルス感染症の治療方法を提供する。いくつかの態様において、その方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、本物質をその個人においてレンチウイルス感染細胞のVif活性を阻害するために有効な量で投与する工程、およびそれによってレンチウイルス感染症を治療する工程を伴う。その他の態様において、方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、レンチウイルス感染に感受性の細胞における活性APOBEC3Gの量を増加させる物質の有効量を投与する工程を伴う。その他の態様において、方法は一般に、レンチウイルス感染症に罹患している個人またはレンチウイルス感染症に罹患する危険性のある個人に対して、レンチウイルス感染に感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の有効量を投与する工程を伴う。
【0106】
いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる量および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0107】
いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞における活性APOBEC3Gタンパク質の量を増加させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる、および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0108】
いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のレンチウイルス量またはレンチウイルス感染細胞のレンチウイルス複製と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%以上、個人におけるレンチウイルス量を減少させる、および/または個人におけるレンチウイルス感染細胞でのレンチウイルスの複製を抑制する量である。
【0109】
いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、Vif活性を阻害する物質の治療上有効な量はCD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。ヒト血液の場合、正常範囲内であると考えられるCD4+-T細胞の数は、血液1mm3当たりCD4+-T細胞約600個から約1500個である。
【0110】
いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質の治療上有効な量は、CD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。
【0111】
いくつかの態様において、HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、その物質を投与されていない個人のCD4+ T細胞数と比べて、個人のCD4+ T細胞数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍以上増加させる量である。いくつかの態様において、レンチウイルス感染に対して感受性の細胞においてHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質の治療上有効な量は、CD4+ T細胞数を正常範囲内に回復させる量である。
【0112】
レンチウイルス感染症の治療には、レンチウイルス感染を予防する工程、レンチウイルス感染の可能性を抑制する工程、感染細胞から感受性細胞へのレンチウイルスの拡散を抑制する工程、レンチウイルスに感染した個人におけるウイルス量を減少させる工程、レンチウイルスに感染した個人におけるウイルスにコードされるポリペプチドの量を減少させる工程、およびレンチウイルスに感染した個人におけるCD4 T細胞数を増加させる工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
投与される本物質の量はその薬剤の性状によって異なる。一つの非限定的な例として、本物質は約0.2mg/kg/日から約20mg/kg/日の範囲で投与することができる。投与量の決定は、動物モデル(例えば、非ヒト霊長類モデル)を用いて薬物動態学に基づいて、例えば種間スケーリングの等式予測を用いて用量を関連付けることによって決定することができる。通常は、最も低い有効量が用いられる。
【0114】
治療方法が有効かどうかを調べるために、任意の様々な方法を用いることができる。例えば、本発明の方法がレンチウイルス量の抑制、および/またはレンチウイルス感染症の治療に有効であるかどうかを調べる方法はレンチウイルス感染の徴候に関する任意の公知の試験であり、例えばレンチウイルスポリヌクレオチド配列に特異的なポリマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて例えば生物学的試料中のレンチウイルス量の測定による、ウイルス量を測定する工程;例えばそのポリペプチドに特異的な抗体を用いた酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)のような免疫学的アッセイを用いて、例えばp24、gp120、逆転写酵素などのレンチウイルスにコードされるポリペプチドを検出および/または測定する工程;ならびに個人におけるCD4+ T細胞数を測定する工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
レンチウイルス感染症(またはレンチウイルス感染症に関連する何らかの徴候)をアッセイする方法は当技術分野において公知であり、HIV Protocols(Methods in Molecular Medicine, 17)N.L. MichaelおよびJ. H. Kim, eds. (1999) Humana Pressのような多くの刊行物に述べられている。
【0116】
製剤、投与量、および投与経路
一般に、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は宿主への送達のために薬学的に許容される組成物として調製される。「活性物質」、「薬剤」、「物質」、「治療用物質」などの用語は、本明細書では互換的に用いられる。本物質との併用に好ましい薬学的に許容される担体は非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液の無菌水溶液を含んでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルである。水性担体は、水、アルコール溶液/水溶液、乳濁液または懸濁液、ならびに生理食塩液および緩衝媒質を含む微粒子を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム液、リンガーデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンガー油または不揮発性油を含む。静脈内注射用のヒビクルは、補液および栄養補充剤、(リンガーデキストロースを基剤とするもののような)電解質補充剤などを含む。本物質を含む組成物は、本発明に基づくその後の再溶解および使用に備えて、当技術分野において周知の方法を用いて凍結乾燥してよい。
【0117】
製剤
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gレベルを増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、薬学的に許容される賦形剤を含む製剤として、それを必要とする個人に投与される。当技術分野では薬学的に許容される様々な賦形剤が公知であり、本明細書において詳細に考察する必要はない。 薬学的に許容される賦形剤は、例えば、A. Gennaro (2000) "Remington : The Science and Practice of Pharmacy", 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999) H. C. Ansel et al., eds 7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A. H. Kibbe et al., eds., 3rd ed. Amer. Pharmaceutical Assoc.を含む様々な刊行物において詳細に述べられている。
【0118】
本方法において、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、所望のVif活性の抑制および/または活性APOBEC3G量の増加を引き起こすことのできる、任意の慣例的方法を用いて宿主に投与され得る。従って、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、治療目的の投与のために様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は薬学的に許容される適切な担体または希釈剤と組み合わせることによって製剤化して薬学的組成物とすることができ、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入剤およびエアロゾルのような固体、半固体、液体またはガス剤の形で製剤化して調製剤としてもよい。
【0119】
薬学的投与剤形の場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は薬学的に許容される塩の形で投与してもよく、単独もしくはその他の薬学的に活性な化合物と適切に関連および併用してもよい。次の方法および賦形剤は単なる例証であって、決して限定的ではない。
【0120】
経口調製物の場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は単独、または、例えば、乳糖、マンニトール、コーンスターチまたは馬鈴薯デンプンのような通常の添加物;結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤;コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのような崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ならびに望ましいならば希釈剤、緩衝物質、保湿剤、保存剤、および香料を用いてタブレット、粉末、顆粒もしくはカプセルとするための適切な添加物と併用して使用することができる。
【0121】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、それらを植物油またはその他の同様の油、合成脂肪族系酸グリセリド、高級脂肪族系酸のエステルもしくはプロピレングリコールのような水性または非水性溶媒に、望ましいならば、溶解剤、等張物質、懸濁物質、乳化物質、安定剤、および保存剤のような通常の添加物を加えて溶解、懸濁、または乳化することによって注射用調製物に製剤化することができる。
【0122】
物質は、吸入により投与されるエアロゾル製剤として使用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧した許容される噴霧剤に製剤化されることができる。
【0123】
さらに、物質は、乳化基剤または水溶性基剤のような様々な基剤と混合することによって、坐剤とすることができる。活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、坐剤を介して直腸に投与することができる。坐剤には、体温では融解するが室温では固体のままであるココアバター、カーボワックス、およびポリエチレングリコールのようなビヒクルを加えることができる。
【0124】
シロップ、エリキシル、および懸濁剤のような経口または直腸投与用の単位投与剤形が提供されてよく、例えば、茶さじ1杯、テーブルスプーン1杯、タブレット、または坐剤の各投与単位は一つまたは複数の活性物質を含む組成物の予め定められた量を含む。同様に、注射または静脈投与用の単位投与剤形は、組成物中の活性物質を無菌水、生理食塩液、または別の薬学的に許容される担体中の溶液として含んでよい。
【0125】
本明細書で用いられるように「単位投与剤形」という用語は、ヒトおよび動物の被験体における一回投与として適切な物理的に分離した単位を示して、各単位は薬学的に許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと関連して、所望の効果を生じるために十分な量で算出された予め定められた量の活性物質を含む。所与の活性物質の内訳は、用いられる特定の化合物および達成されるべき効果、ならびに宿主において各化合物に関連する薬動力学に一部依存する。
【0126】
その他の投与モードも本発明において用いられる。例えば、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は坐剤として製剤化されてよく、いくつかの場合には、エアロゾルおよび鼻腔内組成物として製剤化され得る。坐剤の場合、ビヒクル組成物はポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドのような通常の結合剤および担体を含む。このような坐剤は、有効成分を約0.5%から約10%(w/w)、好ましくは約1%から約2%の範囲で含む混合物から作製することができる。
【0127】
鼻腔内製剤は、通常、鼻粘膜に対して刺激を惹起せず、また、繊毛の機能を著しく妨げることのないビヒクルを含む。水、水性生理食塩液、またはその他の公知の物質のような希釈剤を本発明と共に用いることができる。鼻腔用製剤には、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムのような保存剤を加えてよいが、これらに限定されるものではない。鼻粘膜による本タンパク質の吸収を促進するために、界面活性剤を加えてよい。
【0128】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、注射剤として投与することができる。典型的には、注射可能な組成物は溶液または懸濁液として調製される。注射前に液体ビヒクルへの溶解または懸濁に適した固形剤として調製してもよい。調製物は乳化されてもよく、有効成分はリポソームビヒクルに内包されてもよい。
【0129】
いくつかの態様において、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、腟内送達のために製剤化される。腟内投与のための本製剤は、腟内生体粘着性タブレット、腟内生体粘着性微粒子、腟内クリーム、腟内ローション、腟内泡沫剤、腟内軟膏、腟内ペースト、腟内液剤、または腟内ゲル剤として製剤化される。
【0130】
活性物質を含む本製剤は、賦形剤(例えば、庶糖、デンプン、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ブドウ糖、セルロース、タルク、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム)、結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、庶糖またはデンプン)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムまたはクエン酸カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルクまたはラウリル硫酸ナトリウム)、香料(例えば、クエン酸、メントール、グリシンまたはオレンジ粉末)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、またはプロピルパラベン)、安定剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、または酢酸)、懸濁剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはステアリン酸アルミニウム)、分散剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、希釈剤(例えば、水)、およびベースワックス(例えば、ココアバター、白色ワセリン、またはポリエチレングリコール)の一つまたは複数を含む。
【0131】
活性物質を含むタブレットは、適切なフィルム形成物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはエチルセルロースでコーティングしてよく、これに、例えばグリセロール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、または三酢酸グリセロールのような軟化剤;庶糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、または乳糖のような充填剤;水酸化チタンのような着色剤などの適切な賦形剤を加えてよい。
【0132】
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、望ましいならば、そのビヒクルに湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤のような少量の補助物質を加えることができる。このような投与剤形を調製する実際の方法は当業者に公知であるか、または明らかである。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 17th edition, 1985を参照されたい。いずれにしても、投与されるべき組成物または製剤は、治療を受ける被験体において所望の状態を達成するために十分な量の物質を含有する。
【0133】
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤のような薬学的に許容される賦形剤は容易に一般利用される。さらに、pH調整物質および緩衝物質、等張化調整物質、安定剤、湿潤剤などのような、薬学的に許容される補助物質も容易に一般利用される。
【0134】
投与量
用いられる用量は達成されるべき臨床目標に応じて異なるが、適切な用量範囲は約1μgから約100mgまで、例えば、約1μgから約25μg、約25μgから約50μg、約50μgから約100μg、約100μgから約250μg、約250μgから約500μg、約500μgから約1mg、約1mgから約25mg、約25mgから約50mg、または約50mgから約100mgの活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)が1回の投与で投与され得る用量である。あるいは、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)の目標投与量は、その物質の投与後最初の24〜48時間以内に採血される宿主血液の試料中でおおよそ約0.1〜1000μM、約0.5〜500μM、約1〜100μM、または約5〜50μMの範囲であると考えることができる。
【0135】
当業者は、服用レベルが具体的な化合物、症状の程度、および被験体の副作用に対する感受性の関数として変動し得ることを容易に認識する。所与の化合物の好ましい投与量について、当業者は様々な方法によって容易に求めることができる。
【0136】
いくつかの態様において、活性物質の一回用量が投与される。その他の態様において、活性物質の反復用量が投与される。期間を通して反復投与が行われる場合、活性物質は期間中、一日二回(qid)、毎日(qd)、一日おき(qod)、二日おき、週三回(tiw)、または週二回(biw)投与される。例えば、活性物質は、一日から約2年以上の期間を通してqid、qd、qod、tiwまたはbiwで投与される。例えば、活性物質は、様々な要因に応じて、1週間、2週間、1カ月、2カ月、6カ月、1年、または2年以上の期間にわたって上記のいずれかの頻度で投与される。
【0137】
一つの非限定的な例として、活性物質がAPOBEC3Gの量を増加させる場合、その物質はいくつかの態様においてオルソクローンOrthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3)のような抗CD3抗体である。これらの態様において、OKT3の適切な投与量は約5mg/日であり、約10日から約14日間の期間にわたって静脈内に単回ボーラス注入にて投与される。
【0138】
投与経路
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、全身および局所投与経路に加えて、インビボおよびエクスビボの方法を含む、薬剤送達に適した任意の実施可能な方法および経路を用いて個人に投与される。
【0139】
通常の薬学的に許容される投与経路には、鼻腔内投与、筋内投与、気管内投与、腫瘍内投与、経皮投与、皮下投与、皮内投与、局所適用、静脈内投与、腟内投与、経鼻投与、およびその他の非経口投与が含まれる。経口および直腸経路も適切な投与経路に含まれる。望ましいならば、投与経路はその物質および/または所望される効果に応じて組み合わせたり調節したりしてよい。その組成物は単回投与または反復投与として投与することができる。
【0140】
活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、全身または局所的な経路を含めて、通常の薬剤送達に適した任意の実施可能な通常の方法および経路を用いて宿主に投与することができる。一般に、本発明によって意図される投与経路には、経腸経路、非経口経路、または吸入経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0141】
吸入投与以外の非経口投与経路には、局所投与、腟内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、関節内投与、脊髄内投与、胸骨内投与、および静脈内投与、即ち、消化管を介さない任意の投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。物質の全身または局所送達を達成するために、非経口投与を実施することができる。全身送達が所望される場合、投与は一般に薬学的調製物の侵襲性または全身吸収性の局所または粘膜投与を伴う。
【0142】
物質は経腸投与によって被験体に送達することもできる。経腸投与経路には経口および直腸(例えば、坐剤を使用する)送達が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0143】
皮膚または粘膜を介して物質を投与する方法には、適切な薬学的調製物の局所適用、経皮的伝達、注入および表皮投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。経皮的伝達の場合、吸収促進剤またはイオン泳動が適切な方法である。イオン泳動による伝達は、それらの産物を無傷の皮膚から数日またはそれよりも長い期間にわたって電気的パルスを介して継続的に送達する市販の「パッチ」を用いて行うことができる。
【0144】
治療とは、宿主を苦しめる病理学的状態に関連する症状の少なくとも緩解を意味して、この場合、緩解は広義の意味で用いられ、単位血液当たりのウイルス粒子数のように少なくとも治療される病理学的状態に関連するパラメータ、例えば症状の規模の減少を示す。従って、治療には、病理学的状態または少なくともそれに関連する症状が、例えば発症が防止されるなど完全に阻害される、または例えば終了など停止して、宿主がもはやその病理学的状態もしくは少なくともその病理学的状態を特徴付ける症状に苦しまない状況が含まれる。
【0145】
様々な宿主(「宿主」という用語は、本明細書では「被験体」および「患者」という用語と互換的に用いられる)が本方法に従って治療可能である。一般に、このような宿主は「哺乳動物(mammals、mammalian)」であり、これらの用語は哺乳動物の分類に含まれる生物、およびレンチウイルス感染に対して感受性である霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を説明するために広く用いられる。多くの態様において、宿主はヒトである。
【0146】
併用療法
本物質は、少なくとも一つの二番目の治療用物質と組み合わせて(例えば、同一製剤として、または別々の製剤として)個人に投与することができる(「併用療法」)。本物質は二番目の治療用物質と混合して投与する、または別の製剤として投与することができる。別々の製剤として投与される場合、本物質および二番目の治療用物質は実質的に同時に(例えば、互いに約60分以内、約50分以内、約40分以内、約30分以内、約20分以内、約10分以内、約5分以内、または約1分以内)、または約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、または約72時間以上の間隔を空けて投与することができる。治療用物質の有効量は上記の通りである。
【0147】
抗ウイルス性感染症を治療するために、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗マイコバクテリア剤、抗生物質、殺アメーバ剤、殺トリコモナス剤、鎮痛剤、抗腫瘍剤、降圧剤、抗細菌剤、および/またはステロイド剤のような治療用物質を併用療法として投与することができる。いくつかの態様において、ウイルスまたは細菌感染症の見られる患者は一つまたは複数の本物質と次の一つまたは複数を組み合わせて投与される;βラクタム系抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、組換え型可溶性CD4(rsCD4)、抗受容体抗体(例えば、ライノウイルスに対する)、ネビラピン、シドフォビル(Vistide(商標))、ホスホノホルメート三ナトリウム(Foscarnet(商標))、ファムシクロビル、ペンシルクロビル、バラシクロビル、核酸/複製阻害剤、インターフェロン、ジドブジン(AZT、Retrovir(商標))、ジドブジン/ラミブジン(コンビビル)、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI、Videx(商標))、スタブジン(d4T、Zerit(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC、Hivid(商標))、ネビラピン(Viramune(商標))、ラミブジン(Epivir(商標)、3TC)、プロテアーゼ阻害剤、サキナビル(Invirase(商標)、Fortovase(商標))、リトナビル(Norvir(商標))、ネルフィナビル(Viracept(商標))、エファビレンツ(Sustiva(商標))、アバカビル(Ziagen(商標))、アンプレナビル(Agenerase(商標))、インディナビル(Crixivan(商標))、ガンシクロビル、AzDU、デラビルジン(Rescriptor(商標))、ロピナビル/リトナビル(カレトラ)、トリジビル、リファンピン、クラチロマイシン(clathiromycin)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(G-CSFおよびGM-CSF)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド阻害剤、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、アスパラギナーゼ、およびそれらの組み合わせ。抗HIV物質は、上記リストの内で、一つまたは複数のHIVタンパク質の機能を特に標的とする物質である。
【0148】
いくつかの態様において、本物質は二つ以上の抗HIV物質と共に併用療法として投与される。例えば、本物質は一つ、二つまたは三つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、コンビビル、Epivir、Hivid、Retrovir、Videx、Zerit、Ziagenなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、一つまたは二つの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、Rescriptor、Sustiva、Viramuneなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、一つまたは二つのプロテアーゼ阻害剤(例えば、Agenerase、Crixivan、Fortovase、Invirase、カレトラ、Norvir、Viraceptなど)と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤およびヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。本物質は、プロテアーゼ阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と共に併用療法として投与することができる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤の一つまたは複数と対象阻害剤とのその他の組み合わせが企図される。
【0149】
キット、容器、装置、送達系
例えば、経口投与、腟内投与、直腸内投与、経皮投与、または注射可能投与(例えば、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射)の活性物質の単位用量を伴うキットが提供される。このようなキットには、単位用量入りの容器に加えて、その薬剤のHIV感染症の治療における用法および付随する恩典について説明する添付文書が添えられる。適切な活性物質および単位用量は、本明細書において前記に述べられる通りである。
【0150】
多くの態様において、本キットは、本方法の実施に関する説明書または同一内容を入手するための方法(例えば、ユーザーをその説明書が提供されるウェブページに誘導するウェブサイトのURL)をさらに含んで、これらの説明書は典型的には基体に印刷されて、その基体は添付文書、包装、製剤容器などの一つまたは複数であり得る。
【0151】
いくつかの態様において、本キットは、例えば、患者にその活性物質を適切な時刻または間隔で服用することを覚えさせるコンポーネントまたはシステムのような、患者の服薬遵守を向上させる一つまたは複数のコンポーネントまたは特徴を含む。このようなコンポーネントには、患者にその活性物質を適切な時刻または間隔で服用することを覚えさせるカレンダーシステムが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0152】
本発明は、Vif活性を阻害する活性物質、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質、またはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G(酵素的に活性な)複合体に転換させる活性物質を含む送達系を提供する。いくつかの態様において、その送達系は活性物質を含む製剤の皮下、静脈内、または筋肉内注射に備える送達系である。その他の態様において、その送達系は腟内送達系である。
【0153】
いくつかの態様において、活性物質は経口投与用に包装される。本発明は、活性物質の一日投与単位を含む包装単位を提供する。例えば、いくつかの態様において、その包装単位はタブレット、ピルなどを含む通常のブリスターパックまたはその他の任意の形である。そのブリスターパックは、厚紙、ボール紙、ホイル、またはプラスチックを裏材とする、密封されたブリスターパックに適切な数の単位投与剤形を含んで、適切な包装材で覆われている。各ブリスター容器には番号を振ることができ、例えば、一日目から始まるように別の方法で表示してもよい。
【0154】
いくつかの態様において、本送達系は注射器具を含む。例示的な非限定的薬剤送達装置は、ペン型注射器のような注射装置、および注射針/シリンジの装置を含む。いくつかの態様において、本発明は、Vif活性を阻害する活性物質、または細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる活性物質もしくはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる活性物質の有効量を含む製剤を予め充填した注射用送達装置を提供する。例えば、本送達装置は、Vif活性を阻害する活性物質、または細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる活性物質もしくはHMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる活性物質の単回用量を予め充填した注射装置を含む。本注射装置は再利用可能または使い捨て可能とすることができる。
【0155】
ペン型注射器は当技術分野において周知である。本発明の方法における用途に適合させることのできる例示的装置は、例えば、BD(商標)ペン、BD(商標)ペンII、BD(商標)オートインジェクターのようなBecton Dickinsonの様々な任意のペン型注射器;Innoject, Inc.のペン型注射器;米国特許第5,728,074号、第6,096,010号、第6,146,361号、第6,248,095号、第6,277,099号および第6,221,053号に開示される任意の医薬品送達用ペン型装置などである。医薬品送達用ペンは使い捨て可能、または再利用可能および再充填可能とすることができる。
【0156】
本発明は、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)の個人の腟内への腟内送達のための腟内送達系を提供する。その送達系は腟内に挿入するための装置を含む。いくつかの態様において、その送達系は、製剤を腟内に送達するためのアプリケーター、および活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を含む製剤を含む容器を提供する。これらの態様において、容器(例えば、チューブ)は製剤をそのアプリケーターに送達するために適用される。その他の態様において、送達系は腟内に挿入される装置を含み、その装置には活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)が含まれている。例えば、その装置はその活性物質を含む製剤でコーティングされる、その活性物質を含む製剤を含浸する、またはその活性物質を含む製剤をその他の方法で含む。
【0157】
いくつかの態様において、腟内送達系は本製剤を含むタンポンまたはタンポン様装置である。薬剤送達用タンポンは当技術分野で公知であり、このような任意のタンポンを本薬剤送達系と組み合わせて使用することができる。薬剤送達用タンポンは、例えば、米国特許第6,086,909号に述べられている。タンポンまたはタンポン様装置が用いられる場合、活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)がその装置に組み込まれ得る多くの方法がある。例えば、薬剤をその装置の先端部にあるゲル様生体粘着性貯蔵部に組み込むことができる。あるいは、薬剤は粉末状物質の形でタンポンの先端部に位置付けることができる。薬剤は、例えば、その薬剤を薬学的に許容される担体に溶解して、その薬剤溶液をタンポン繊維に吸収させることによって、タンポンの先端部の繊維に吸着させることもできる。薬剤は、タンポンの先端部に適用されるコーティング材料に溶解することもできる。あるいは、その薬剤はタンポンの先端部に関連してセットされる挿入可能坐剤に含ませることができる。
【0158】
その他の態様において、その薬剤送達系は膣内リングである。腟内リングは、通常、送達されるべき活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を含むエラストマーのもう一つの層によってコーティングされる、不活性エラストマーリングから構成される。そのリングは、ユーザーによって容易に挿入されて、所望の期間(例えば、7日間まで)留めて、その後、回収することができる。そのリングは、薬剤を含まない第三の外側の速度制御エラストマー層を含んでもよい。任意で、その第三のリングは二重放出リングとして第二の薬剤を含むことができる。 その薬剤は、送達されるべき薬剤の貯蔵槽として機能するシリコン製エラストマーリングを介してポリエチレングリコールに取り込ませることができる。
【0159】
その他の態様において、本腟内送達系は腟内スポンジである。活性物質は、文献に述べられている通り、薬剤を含まない円柱状ポリウレタン腟内スポンジにコーティングしたシリコンマトリクスに組み込まれる。
【0160】
ペッサリー、タブレット、および坐剤は、本発明で用いることのできる薬剤送達系のその他の例である。これらの系は文献において詳細に説明されている。
【0161】
生体粘着性微粒子も、本発明での使用に適したもう一つの薬剤送達系を構成する。この系は、多くの坐剤製剤のように膣から流出しない多相性の液体または半固形の調製物である。その物質は膣の壁に密着して、一定期間を通して薬剤(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)を放出する。これらの系の多くは鼻への使用のためにデザインされたが、膣内でも使用することができる(例えば、米国特許第4,756,907号)。その系は活性物質;およびその薬剤の取り込みを促進するための界面活性剤を含む微粒子を含んでよい。微粒子の直径は10〜100pmであり、デンプン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲンまたはデキストランから調製することができる。
【0162】
もう一つの系は、アプリケーターを用いて使用するために改変された本製剤を含む容器(例えば、チューブ)である。活性物質(例えば、Vif活性を阻害する物質;細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質;HMW APOBEC3G複合体をLMW APOBEC3G複合体に転換させる物質など)は、アプリケーターを用いて膣に適用することのできるクリーム、ローション、泡沫剤、ペースト、軟膏、およびゲルに組み込まれる。医薬品をクリーム、ローション、泡沫剤、ペースト、軟膏、およびゲル状に調製するための過程は、文献全体を通して見出すことができる。適切な系の例は、商標JERGENS(商標)(Andrew Jergens Co., Cincinnati, Ohio)として販売されている製品のように、グリセロール、セラミド、鉱油、ワセリン、パラベン、香料、および水を含む標準的香料無添加の液剤である。本発明の組成物における使用に適した薬学的に許容される無毒の系は、医薬品製剤分野の業者には明らかであり、例はRemington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, A.R. Gennaro, ed., 1995に記載されている。適切な担体の選択は、例えば、活性成分がクリーム、ローション、泡沫剤、軟膏、ペースト、液剤、またはゲル剤に製剤されるか否かなどの望ましい特定の腟内投与剤形の正確な特徴、およびその活性成分の本質に依存する。その他の適切な送達装置は、米国特許第6,476,079号に記載された装置である。
【0163】
治療に適した被験体
本発明の方法は、レンチウイルスに感染した個人;レンチウイルスに感染する危険性のある個人;およびレンチウイルス感染症の治療を受けたが再発した個人の治療に適している。このような個人には、健常で免疫系は無傷であるが、HIVに感染する危険性のある個人(「危険にさらされている」個人)が含まれるが、これに限定されるものではない。危険にさらされている個人には、一般集団よりもHIVに感染する可能性が高い個人が含まれるが、これに限定されるものではない。HIVに感染する危険性のある個人には、HIVに感染した個人との性行為に起因するHIV感染の危険性のある個人;静脈内薬物使用者;HIVに感染した血液、血液製剤、またはその他のHIVで汚染された体液に暴露された可能性のある個人;およびHIVに感染した母親に育てられる乳児が含まれるが、これらに限定されるものではない。治療に適した個人には、HIV-1および/もしくはHIV-2、および/もしくはHIV-3もしくはそれらの任意の変異型に感染した個人、または感染する危険性のある個人が含まれる。
【0164】
本発明の方法を用いた治療に適した個人には、その他の抗ウイルス療法を用いた治療に対して不応性の、レンチウイルス感染症に感染した個人も含まれる。
【0165】
実施例
次の実施例は、当業者に本発明の作製および使用方法に関する詳細な開示および説明を提供するために記載するものであり、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定することは意図せず、また以下の実験が実施される実験のすべてまたは唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期すよう努力が払われているが、実験上の誤差および逸脱が考慮されるべきである。特記する場合を除いて、部分は重量に基づく部分であり、分子量は分子量の重量平均であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはこれに近いものである。例えば、bpは塩基対;kbはキロベース;plはピコリットル;sまたはsec.は秒;minは分;hまたはhrは時間など、標準的略号が用いられる場合がある。
【0166】
実施例1:HIV-1 VifによるAPOBEC3Gの抗ウイルス活性の遮断
実験手順
プラスミド
pNL4-3およびpNL4-3△Vif(別名:p-NLND)発現ベクターについては既に記載されている。Adachi et al.(1991). Arch Virol 117, 45-58;およびSakai et al. (1993) J Virol 67, 1663-1666. pcDNA3.1 APOBEC3G-HAおよびAPOBEC3G発現ベクターは、NG/C15レトロウイルスベクターに含まれるXhoI/EcoRI制限部位を用いてAPOBEC3G-HAカセットを切除して(Sheehy et al. (2002) Nature 418, 646-650)、続いて、その断片をpcDNA3.1の同一制限酵素部位にクローニングすることによって、製造された。pCMV4-HA-APOBEC3Gベクターを製造するために、APOBEC3G cDNAをH9 cDNAライブラリーからPCRによって増幅した後、pCMV4ベクターのHindIIIおよびXbaI部位に挿入した。GST-Vifは、pNL4-3ベクターに含まれるVifコード領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅して、続いてこの単位複製配列をpBCベクターのEcoRIおよびNheI部位に挿入して、調整した(Chatton et al. (1995) Biotechniques 18, 142-145)。PCRを用いて調整された各挿入部分の配列は、DNAシーケンシングによって確認した。
【0167】
細胞株、スピノキュレーション(spinoculation)、および高度精製ビリオンの調整
H9、Supt-1、Jurkatおよび293T細胞は標準的な組織培養技術を用いて維持された。新鮮ヒト末梢血リンパ球(PBL)は、IL-2(5ug/L)(Roche Diagnostics)を添加した完全RPMI培地(10%FBS)で維持された。PBLの一部をフィトヘマグルチニン(PHA)(5μg/ml)で使用前に24時間、活性化した。HIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifウイルスは、リン酸カルシウムに媒介されるVSV-GおよびpNL4-3またはpNL4-3 △Vifをコードする発現ベクターDNAの293T細胞への同時トランスフェクションによって、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)エンベロープでシュードタイプとした。48時間培養後に、ウイルスを含む上清を回収して、500×gにて5分間遠心分離して清澄化して、孔径0.2ミクロンのフィルターに通して濾過した。続いて、このウイルス含有上清を48穴プレートで0.4×106個/ウェルのH9細胞と共にインキュベートして、34℃にて低速で90分間、遠心分離した。次に、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄し、完全培地を用いて37℃にて40時間インキュベートした。その後、細胞を500×gにて5分間、遠心分離してペレット化し、PBSで洗い、イムノブロッティングおよび核-細胞質分画試験に備えて溶解した。既報の非連続工程イオジキサノールグラジエント精製法(DettenhoferおよびYu (1999) J Virol 73, 1460-1467)を用いて、高度精製ビリオンをウイルス含有上清から得た。次に、イオジキサノールグラジエントから得られた画分について4℃、90分間のさらに1回の超遠心分離を行い、ペレットはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)による分析前にLaemmli添加液30μlに再懸濁した。
【0168】
抗体、イムノブロッティング分析、細胞内抗p24免疫染色、およびFPLC
抗APOBEC3G抗体は、ウサギをヒトAPOBEC3GのC末端の16個のアミノ酸に相当する合成ペプチド
で免疫化およびブーストして作製した。42日後に血清を採取して、H9細胞溶解液を用いて免疫応答を調べた。負の対照として、同一のウサギから得られた免疫前の血清(抗体液)を用いて同一細胞溶解液の免疫応答を調べた。ポリクローナル抗Vif抗血清(Goncalves et al. (1994) J Virol 68, 704-712)。ウサギ抗Nef抗血清は既報の通りとした(Bresnahan et al., 1998)。マウスモノクローナル抗p24 Gag腹水はBeckman Coulterから寄贈された。用いられたその他の抗体には、ウサギ抗HA(Santa Cruz);マウス抗HA(12CA5, Roche);およびマウス抗ユビキチン(Santa Cruz)が含まれた。イムノブロッティングおよび高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)において用いられる溶解緩衝液は、(1)100〜400mM NaCl、50mM Hepes、0.2% NP40、0〜5mM EDTA、.1mM PMS、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)(緩衝液50ml当たり1タブレット)、または(2)50mM Hepes、pH 7.2、135mM NaCl、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸、10%グリセロール、1mM EDTA、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem)であった。FPLC泳動緩衝液の組成は、50mM Hepes、pH 7.4;250mM NaCl;0.1% NP40、1mM DTT;および10%グリセロールであった。H9細胞の細胞内抗24免疫染色は、既報の通り実施された(Eckstein et al. (2001) J Exp. Med. 194: 1407-1419)。FPLC分析のための細胞溶解液は、微量遠心管にて最高速度で10分、2回、遠心分離した後、較正されたSuperose 6 HR 10/30またはSuperose 12 HR 10/30充填済みゲル濾過カラム(AKTA, Amersham Pharmacia Biotech)に適用した。その後の分析に備えて、カラムから1ml試料を回収した。
【0169】
タンパク質発現アッセイ
293T細胞に、リン酸カルシウム法を用いて指示された量の発現ベクターDNAをトランスフェクトした。イムノブロッティングに使用した溶解緩衝液は、(1)100〜400mM NaCl、50mM Hepes、0.2% NP40、0〜5mM EDTA、0.1mM PMSF、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)(緩衝液50ml当たり1タブレット)、または(2)50mM Hepes、pH 7.2、135mM NaCl、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸、10%グリセロール、1mM EDTA、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem)であった。試料は、標準的なSDS-PAGE技術を用いて分析した。
【0170】
一時的にトランスフェクトした細胞におけるプロテアソーム阻害剤実験のため、293T細胞にAPOBEC3G-HA DNA 0.1μg、対照ベクターDNA 2μg、およびpcDNA3.1 Vif DNAベクターまたは対照ベクターDNAの追加の2μgのいずれか2μgを一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間に細胞を指定された阻害物質で処理し、15時間後に回収した。感染H9細胞を用いたプロテアソーム阻害剤実験のために、H9細胞に、上記の通りスピノキュレーションにより感染させた。感染44時間後に、細胞をジメチルスルホキシド(DMSO)(0.1%)または0.25μMエポキソミシンのいずれかで16時間処理した。すべての阻害剤(ALLN、MG132、エポキソミシン、カルパイン阻害剤III、およびクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン)はCalBiochemから購入して、DMSOに溶解した。
【0171】
H9細胞の細胞内抗24Gap免疫染色は、既述の通り実施された(Eckstein et al., 2001、前記)。簡単に述べると、H9細胞を回収して、洗浄し、PermeaFix(Ortho Diagnostic Systems, Raritan, NJ)中で室温にて30分間インキュベートすることによって透過処理した。さらに2回洗浄した後、細胞にFITCを抱合させた抗p24-Gap抗体(Coulter)を加えて室温にて30分間、インキュベートした。さらなる洗浄工程後、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。
【0172】
細胞内のAPOBEC3Gの分布を分析するために、H9またはトランスフェクトされた293T細胞を洗浄して、膨張用緩衝液(swelling buffer)(10mM HEPES pH 7.9、1.5mM MgCl2、lOmM KCL、プロテアーゼ阻害剤カクテルおよびPMSF)に懸濁した。細胞は、0.4% NP-40存在下でボルテックスにかける前に、氷上で10分間、膨張させた。溶解液を、膨張用緩衝液中1%ショ糖液1ml上に重層して、続いて、Beckman GS-6R遠心分離器で3150RPMにて遠心分離した。
【0173】
ノーザン分析
RNAは、Qiagen RNAeasy RNA抽出キットを用いて107個の感染または非感染のH9またはSupt-1細胞から抽出した。続いて、RNAを1%ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離して、ニトロセルロース膜に移して、32Pで標識したAPOBEC3G cDNAを用いて探査した。続いて、オートラジオグラフィーを用いて膜上のハイブリッドバンドを可視化した。
【0174】
パルス-チェイス実験およびパルス放射標識実験
HEK293細胞に、APOBEC3G-HA発現ベクター 1μg、およびVifまたは対照発現ベクターのいずれか8μgを同時トランスフェクトした。トランスフェクトしたHEK 293細胞を標識培地(メチオニンおよびシステインを含まないDMEM(Cellgro)に10%透析FBSを添加)中で1時間、プレインキュベートした。続いて各試料は、放射標識されたメチオニンおよびシステインを含む250μCi EasyTag(商標)EXPRESS 35S Protein Labeling Mix(PerkinElmer)を含む標識培地中で30分間、パルス標識した。初期パルス標識(t=0)試料を回収した。残りの放射標識試料は、追跡培地(4.02mMメチオニン(20×)および3mMシステイン(15×)を加えた10%FBS+DMEM)を用いてインキュベートして、異なる時点で回収した。パルス標識実験のために、各試料を15分間パルス標識し、その後直ちに回収した。
【0175】
回収した細胞ペレットを氷上で15分間、緩衝液A(50mM HEPES、135mM NaCl、1%Triton X-100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、10%グリセロール、1mM EDTA、(pH 7.2)、+プロテアーゼ阻害剤カクテルセットI(Calbiochem))で溶解した。細胞溶解物を4℃において14,000×gで10分間、清澄化した。タンパク質の定量はBCA Protein Assay Reagents(Pierce)を用いて実施した。免疫沈降(IP)は、抗HAモノクローナル抗体(262K Mab、Cell Signaling Technology)存在下で等しいタンパク質濃度/液量でセットし、氷上でインキュベートした。その後のすべての遠心/洗浄工程は4℃で実施した。IPを緩衝液Aで4回洗浄して、1×SDS-PAGE試料緩衝液で溶出した。試料はSDS-PAGEで分析して、ゲルはAmplify蛍光グラフィック試薬(Amersham Biosciences)での処理およびゲルの乾燥前に少なくとも1時間固定した。乾燥したゲルをオートラジオグラフィーに供して、スキャンした画像はScion画像ソフトウェア(バージョン1.62)を用いて定量した。
【0176】
インビトロでの翻訳
Vifまたは対照GSTタンパク質は、先ず、Promega TNT T-7結合網状赤血球溶解液システムを用いて製造業者の説明書に従って90分間、転写および翻訳させた。続いて、予め合成されたVifまたはGSTを、氷上でAPOBEC3G DNAでプログラムされた新しい転写/翻訳ミックスに加えた。次に、反応物を30℃の水槽に移して、15または30分間、反応させた。SDS-PAGEでタンパク質を分離し、ゲルをオートラジオグラフィーにより分析した。
【0177】
結果
固有のAPOBEC3Gタンパク質の非許容性T細胞中での選択的発現、および主として細胞質での局在
VifがどのようにしてAPOBEC3Gの抗ウイルス活性を克服するかという疑問に答えるために、ウサギポリクローナル抗体を開発して、〜46kDのAPOBEC3Gタンパク質の16個のC末端アミノ酸に方向付けた。先行試験からAPOBEC3G mRNAは非許容性細胞中では発現するが許容性細胞では発現しないことが示されていたが(Sheehy et al., 2002、前記)、APOBEC3Gタンパク質が非許容性細胞中で実際に発現するか否かは不明のままであった。従って、許容性および非許容性細胞タイプから得られた溶解物を抗APOBEC3G抗体を用いてイムノブロットすることによって、APOBEC3Gタンパク質の発現パターンを評価した。結果を図1Aに示す。
【0178】
ウサギ抗APOBEC3G抗体は、非許容性PHA刺激一次末梢血リンパ球(PBL)およびH9細胞に含まれる〜46kDのタンパク質と特異的に反応した(図1A、レーン2および3)。一方、この46kDのタンパク質は許容性Supt-1、Jurkat、または293T細胞から調製された溶解物中には検出されず(図1A、レーン4〜6)、同一ウサギ由来の免疫前血清を使用した場合は非許容性細胞タイプ中にも検出されなかった。α-チューブリン発現の程度は非許容性および許容性細胞の溶解物でほぼ等しく、負荷量がほぼ等しいことが確認された。注目すべきことに、PBLをPHAで刺激した結果(+の記号により表示)、内因性APOBEC3Gの発現が増加した(レーン1および2を比較)。これらの未刺激PBL溶解物中ではα-チューブリンの発現量は少量であったが、p56lckはPHA活性化PBL溶解物に対して非刺激溶解物中にほぼ等しく発現して、APOBEC3Gが一次PBLのマイトジェン活性化に反応して誘導的に発現することを示唆している。
【0179】
抗APOBEC3G抗体の特異性をさらに確認するために、対照ベクターDNA(偽)またはHA-APOBEC3G発現ベクターのいずれかをトランスフェクトした293T細胞由来の細胞溶解物についてイムノブロッティングを行った。抗APOBEC3G抗体はHA-APOBEC3Gをトランスフェクトした細胞由来の溶解物に含まれる〜50kDのタンパク質と反応したが、偽トランスフェクトした293T細胞由来の溶解物に同等なタンパク質バンドは認められなかった(図1A、レーン6および7)。総合すると、これらの所見は、ウサギ抗APOBEC3G抗体が内因性ヒトAPOBEC3Gと特異的に反応することを示して、内因性APOBEC3Gタンパク質が非許容性細胞中で発現することを確認し、APOBEC3Gタンパク質発現が一次PBLのPHA刺激によってアップレギュレートされることを明らかにする。
【0180】
次に、APOBEC3Gの細胞内局在化を、非許容性H9細胞および許容性SupT1細胞から単離された核および細胞質画分のイムノブロッティングによって分析した。結果を図1Bに示す。チューブリンおよびヒストンH3は、これらの細胞内画分の純度をモニターするために、それぞれ、細胞質マーカーおよび核マーカーとして用いられた。内因性APOBEC3Gタンパク質は、許容性SupT1細胞の核または細胞質のいずれにも検出可能な程度には発現しなかった。逆に、非許容性H9細胞では、APOBEC3Gが容易に検出されて、主に細胞質に局在化した。但し、少量のAPOBEC3Gが核に存在した。チューブリンおよびヒストンH3の発現は核および細胞質の画分が交差汚染していなかったことを示していることから、これらの所見からAPOBEC3Gタンパク質が実際に核の内外を移動し得る可能性が生じる。いずれにせよ、APOBEC3Gの大部分は細胞質コンパートメントで発現する。
【0181】
図1Aおよび1B。APOBEC3Gの発現および局在化の特徴付け。(A)非許容性および許容性細胞におけるAPOBEC3G発現のイムノブロット分析。指示された細胞タイプを溶解して、SDS-PAGEで分析した後、抗APOBEC3G抗血清、抗チューブリンおよび抗p56lckを用いてイムノブロッティングにより分析した。抗血清の特異性を確認するために、293T細胞にHA-APOBEC3G発現ベクターをトランスフェクトした。PBL、末梢血リンパ球。(B)APOBEC3Gの細胞内局在化。核および細胞質画分はH9(非許容性)またはSupt-1(許容性)細胞から調製して、APOBEC3Gに特異的な抗血清を用いてイムノブロッティングにより分析した。抗α-チューブリンおよび抗ヒストンH3を用いたイムノブロッティングにより、細胞質および核画分の完全性が確認された。APOBEC3Gの大部分は細胞質に局在化するが、このタンパク質の少量は核にも存在する点に留意されたい。
【0182】
Vifによる内因性APOBEC3Gタンパク質のビリオン内への組み込みの阻止
最近の研究から、APOBEC3Gがその後の標的細胞内での逆転写中に形成される新規合成のHIV-1 DNA転写物の過度の超変異を惹起することによって、非許容性細胞によって産生されるHIV-1 △Vifビリオンの感染性を阻害することを示している(Harris et al., 2003; Lecossier et al., 2003; Mangeat et al., 2003; Zhang et al., 2003)。これらの知見は、抗ウイルス因子が△Vifビリオン内に組み込まれて次の標的細胞に輸送されるという結論を裏付けるものである(Harris et al., 2003; Lecossier et al., 2003; Mangeat et al., 2003; Zhang et al., 2003、前記)。この点に関して、APOBEC3G-HAは、Vifが存在する場合および存在しない場合の双方において、トランスフェクトされた293T細胞によって産生されるビリオン内で検出されている(Sheehy et al., 2002、前記)。しかし、トランスフェクトされた293T細胞において不自然に多量のAPOBEC3Gタンパク質が発現すると仮定すると、この系は実際の生物学的事象を必ずしも忠実には再現しない可能性がある。Vifは内因性APOBEC3Gがビリオンに組み込まれることを阻止し得ると仮定して、この可能性をより生理学的に関連性のある細胞条件下において検証した。H9細胞に水疱性口内炎タンパク質-G(VSV-G)でシュードタイプとしたHIV-1NL4-3wtまたはVSV-G-HIV-1NL4-3-△Vifウイルスを感染させた。高度に精製されたビリオンを単離するために、感染H9細胞由来の上清を回収して非連続イオジキサノールグラジエントに適用した。これらのグラジエントから得られる連続画分を、HIV-1 wtおよび△vifビリオンのマーカーとしてp24Gagについて分析した。これらの画分を探査した結果、HIV-1△Vifビリオンに内因性APOBEC3Gが含まれることが明らかとなった(図2)。逆に、HIV-1 wtビリオンには、実際上、完全長APOBEC3Gタンパク質は含まれなかった。これらの知見は、プロデューサー細胞におけるVifの発現が新規に形成されるビリオンへのAPOBEC3Gタンパク質の組み込みを著しく障害することを示している。
【0183】
図2。Vifは完全長の内因性APOBEC3Gのビリオン内への組み込みを阻止する。HIV-1およびHIV-1 △Vifビリオンは、VSV-GでシュードタイプとしたHIV-1またはHIV-1 △Vifウイルスを用いたH9細胞のスピノキュレート感染によって調整された。感染48時間後に、ウイルスを含む上清を回収して、ビリオンを非連続段階のイオジキサノールグラジエントで精製した。ビリオンおよび抗APOBEC3G抗血清を同定してこの抗ウイルス因子のビリオンへの組み込みについて調べるために、抗p24 Gag抗体を用いてグラジエント画分をイムノブロットした。APOBEC3Gは、HIV-1 △Vifビリオンと比べて、HIV-1 wtビリオンにおいて著しく減少することに留意されたい。
【0184】
Vif発現とHIV-1感染H9 T細胞中の内因性APOBEC3Gタンパク質の消失との関連性
HIV-1 VifがAPOBEC3Gのビリオンへの組み込みを阻止するメカニズムをさらに解明するために、HIV-1 wtまたはHIV-1 △Vifウイルスの感染2日後にH9細胞における細胞内の内因性APOBEC3Gの量を分析した。これらの試験では、細胞内抗p24-Gag免疫染色(図3A、上段)により調べられたHIV-1感染レベル(76.4%対73.9%)と匹敵するレベル、および前方および側方光散乱特性(図3A、下段)により調べられた生存率と同等の生存率を示すH9細胞が用いられた。
【0185】
次に、細胞溶解物を、非感染H9細胞、または同様にHIV-1 wtもしくはHIV-1 △Vifに感染させたH9細胞から調製して、抗APOBEC3G抗体を用いたイムノブロッティングにより内因性APOBEC3Gタンパク質の発現を分析した(図3B)。HIV-1 wtに感染したH9細胞では、内因性APOBEC3Gタンパク質の発現に顕著な減少が認められた。逆に、HIV-1 △Vifに感染したH9細胞培養物では、APOBEC3G発現が容易に検出された。このレベルは非感染H9細胞で見られた値と非常に近く、HIV-1感染がAPOBEC3G発現を誘導しないことを示唆している。一方、α-チューブリン量は、非感染またはHIV-1 △Vifに感染した試料と比べて、HIV-1 wt感染試料で減少しなかった(図3B)。VifはHIV-1 wt感染試料において発現して、ウイルス感染した2つの試料ではほぼ等しい量のNefが検出された(図3B)。これらの知見は、Vifを発現するHIV-1が非許容性細胞に感染すると固有のAPOBEC3Gタンパク質発現が著しく減少することを示している。
【0186】
図3。HIV-1-wtに感染したH9細胞ではVifによって内因性APOBEC3Gのほぼ完全な消失が誘導されるが、HIV-1 △Vifに感染した細胞ではこの消失は誘導されない(A)。H9細胞の感染。H9細胞に、VSV-GでシュードタイプとしたHIV-1-wtまたはHIV-1 △Vifウイルスをスピノキュレーションにより感染させて、ウイルス感染の程度をモニターするために細胞内のGag発現を用いてフローサイトメトリーにより分析して、また生細胞を同定するために前方および側方散乱光(FSC/SSC)により分析した。HIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifに感染したH9細胞は同等に感染して、生細胞ゲート内の細胞数は等しかった点に留意されたい。(B)非感染H9細胞またはHIV-1 wtおよびHIV-1 △Vifウイルスに感染したH9細胞における内因性APOBEC3G発現分析。これらの培養物から得られた細胞溶解物を、抗C末端APOBEC3G抗血清および抗α-チューブリン、抗Vif、または抗-Nef抗体を用いてイムノブロットした。HIV-1wtウイルスに感染した細胞では細胞内APOBEC3G量が急激に減少したことに留意されたい。
【0187】
APOBEC3G mRNAの量および完全性のHIV-1 Vif存在下での非変化
HIV-1 wtに感染したH9細胞におけるAPOBEC3Gタンパク質発現の見かけの消失の背後にあるメカニズムをさらに解明するために、VifがAPOBEC3G mRNAの発現または完全性を変化させる可能性について検討した。RNAおよびタンパク質を非感染および感染H9細胞から同時に調製して、APOBEC3G mRNAおよびタンパク質の量を調べた。予想通り、HIV-1 wtに感染したH9細胞ではAPOBEC3Gタンパク質の発現が減少した。しかし、3つの試料間で、APOBEC3G mRNAの発現量に見かけの差はなかった(図4)。これらの試料に等量のRNAが含まれることは、GAPDHに特異的なDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによって確認された(図4)。これらの知見は、VifがAPOBEC3G mRNAの産生または安定性に干渉することによってAPOBEC3Gタンパク質の発現を損なわないことを示している。
【0188】
図4。VifはAPOBEC3G mRNAの発現または完全性を変化させない。非感染またはVSV-GでシュードタイプとしたHIV-1またはHIV-1 △Vifウイルスに感染したH9細胞の溶解物から全RNAを抽出した後、Pで標識したAPOBEC3Gプローブを用いたノーザンブロット分析に供した。APOBEC3Gタンパク質の発現はHIV-1 wtに感染したH9細胞では減少するが、これらの同一細胞におけるAPOBEC3G mRNAの量はHIV-1 △Vifに感染した細胞に含まれる量と等しいことに留意されたい。mRNA負荷量の対照として、放射標識したGAPDHプローブを用いた。
【0189】
Vif単独での細胞内のAPOBEC3G量の十分な減少
Vif単独で、H9細胞がHIV-1タンパク質の完全な補体を含むウイルスに感染した際に認められた、内因性APOBEC3G量の減少を再現できるか否かという疑問について調べた。これらの試験のために、293T細胞に、一定量のVif発現ベクター存在下でタグ付けされていないAPOBEC3G発現プラスミドの漸増用量(0.1〜1.0ug)を一時的にトランスフェクトした(図5A)。Vif単独の発現によって細胞内のAPOBEC3Gタンパク質量が減少したが、この影響はAPOBEC3Gのインプットレベルが高いとそれに比例して減少した。Vif発現量はVif発現ベクターDNAをトランスフェクトした細胞に由来する各細胞溶解物において同等であっ。細胞溶解物はほぼ等量のα-チューブリンを含み、これは負荷量が同等であることを示している。また、全細胞融解物を分析した結果、同様のAPOBEC3Gの減少が認められたことから、Vifに誘導されるAPOBEC3G発現の減少はAPOBEC3Gの核への移動によって惹起されなかった。これらの結果は、Vifが、その他のウイルスコンポーネント不在下で細胞内のAPOBEC3Gタンパク質発現の減少を促進するように機能し得ることを示している。
【0190】
図5。Vifによる細胞内APOBEC3G枯渇はその他のウイルスタンパク質の関与を必要とせず、VifはAPOBEC3Gと物理的に相互作用する。(A)293T細胞内でのVifの発現によって、その他のHIV-1タンパク質不在下で細胞内APOBEC3G発現の減少が十分に促進される。一定量のVif発現ベクターの存在下または不在下において、293T細胞に段階的な量のAPOBEC3G発現ベクターDNAをトランスフェクトした。このタンパク質の細胞内レベルを調べるために、抗APOBEC3G抗血清を用いてこれらの培養物から得られた細胞溶解物をイムノブロットした。APOBEC3Gインプットの範囲を通してVif単独で十分にAPOBEC3G発現の減少を誘導するが、この影響はよりAPOBEC3G発現量が低いほど顕著である点に留意されたい。α-チューブリン発現に関するブロッティングによって、これらの細胞溶解物の等量が含まれていることが確認された。(B)APOBEC3GはGST-Vifと相互作用する。HA-APOBEC3G発現ベクターDNA、およびGSTまたはGST-Vif哺乳動物発現ベクターのいずれかをトランスフェクトした293T細胞の融解物をグルタチオン-セファロースビーズと共にインキュベートした。洗浄後、ビーズを試料緩衝液中で沸騰させて、SDS-PAGE、次いでイムノブロッティングにより分析した。GST-VifはHA-APOBEC3Gを結合させるが、GSTは結合させなかったことに留意されたい。(C)GST-Vifは生物学的に活性である。APOBEC3G-HA発現プラスミド、およびGSTまたはGST-Vif発現ベクターのいずれかを同時トランスフェクトした293T細胞に由来する溶解物のイムノブロッティング分析。GST-Vifの発現は細胞内APOBEC3G量の減少を誘導するが、GSTは誘導しなかった点に留意されたい。
【0191】
VifとAPOBEC3Gとの物理的集合
HIV-1 VifとAPOBEC3Gとの潜在的な物理的相互作用について、哺乳動物GST発現系を用いて評価した。HA-APOBEC3GおよびGST-Vifまたは対照GST発現プラスミドを293T細胞に同時トランスフェクトした(図5B)。細胞溶解物を調製して、グルタチオンセファロースビーズと共にインキュベートした。その後のイムノブロッティング分析の結果、HA-APOBEC3GはGST-Vifによって沈降するが、GST単独では沈降しないことが明らかとなった(図5B)。本発明者らは、GST-Vifの存在下および不在下でのAPOBEC3G-HAレベルをモニターすることによって、GST-Vifが生物学的活性を保持することを確認した。GST単独と比べて、GST-Vif存在下でははAPOBEC3G-HAレベルが減少した(図5C)。これらの知見は、Vifが直接的または間接的に生細胞中のAPOBEC3Gタンパク質と集合して、キメラのGST-Vifタンパク質はAPOBEC3G発現障害能を保持することを示している。
【0192】
APOBEC3Gを含む高分子量リボ核タンパク質複合体とVifとの同時分画
Vifによって用いられるメカニズムをさらに理解するために、本発明者らはAPOBEC3Gがより大きな複合体に存在するか否か、また、もしそうであるならば、Vifはこの複合体と集合し得るか否かについて調べた。先ず第一に、トランスフェクトした293T細胞の溶解物のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いて、APOBEC3G-HAが高分子量複合体(>700kD)に存在することが見出された(図6A)。興味深いことに、RNアーゼでの細胞溶解物の前処理によって、この高分子量APOBEC3G複合体の分解が促進された(図6A)。さらに、感染H9細胞溶解物のサイズ排除FPLC分析により、これらの細胞中で発現したVifの一部が内因性高分子量APOBEC3G複合体と共に同時分画されることが明らかとなった。これらの知見は、APOBEC3Gが細胞RNAを含む高分子量複合体へと集合し、そのRNAが複合体の完全性を維持することを示している。さらに、HIV-1 wtに感染したH9細胞中に存在するVifの一部は高分子量APOBEC3G複合体と共に同時分画されて(図6B)、このことはVifが直接または間接的にAPOBEC3Gに結合することを示した本発明者らの先の知見と一致する(図5B)。
【0193】
図6。APOBEC3GはRNアーゼ感受性高分子量複合体中に集合し、Vifの一部は感染H9細胞中でこのAPOBEC3G複合体と共に同時分画される。(A)APOBEC3Gは高分子量RNアーゼ感受性複合体中に集合する。APOBEC3G-HAをトランスフェクトした293T細胞から得られた溶解物を、氷上で希釈対照または0.01mg/mlのRNアーゼで30分間処理した。続いて、溶解物をSuperose 6カラムに適用して、FPLCサイズ排除分画化、次いでSDS-PAGEで分析して、抗HA抗体を用いてイムノブロッティングに供した。APOBEC3G-HAの大部分は>700kDの複合体に存在し、RNアーゼ処理によってAPOBEC3Gの大半が低分子量の複合体に変化したことに留意されたい。(B)感染H9細胞ではVifおよびAPOBEC3Gは同時分画される。H9細胞にVSV-GでシュードタイプとしたHIV-1 wtウイルスを感染させて、次に細胞溶解物を調製し、Superose 12 FPLCカラムで溶解物タンパク質を分析した。画分を回収して、抗APOBEC3Gまたは抗Vif抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。Vifの一部が固有のAPOBEC3Gと共に>700kDの複合体に同時分画されたことに留意されたい。
【0194】
Vifによるタンパク質分解性のAPOBEC3G分解誘導
次に、VifがAPOBEC3Gの分解を誘導するか否か、あるいは、単にウサギ抗APOBEC3G抗体との免疫応答性の消失を招くタンパク質分解性のAPOBEC3Gの切断を誘導するか否かを調べた。この抗体はAPOBEC3GのC末端と特異的に反応するので、N末端に向けられた抗体が用いられた場合にAPOBEC3G免疫応答性の同様の低下が生じるか否かについて調べた。これらの試験のために、HA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HA発現ベクターDNAのいずれかの段階的用量およびVif発現プラスミドDNAを293T細胞に同時にトランスフェクトして、抗HA抗体を用いてAPOBEC3Gの発現について細胞溶解物を試験した。Vifが存在する場合、N末端およびC末端をタグ付けされたAPOBEC3Gの双方の型が低下したレベルで発現した(図7A&B)。これらの知見は、VifがAPOBEC3Gの分解、またはタンパク質のN末端およびC末端の双方が関与するAPOBEC3Gの徹底したタンパク質分解を誘導するという結論を支持するものである。
【0195】
APOBEC3Gのポリユビキチン化、およびVifによる(Ub)n-APOBEC3Gの分解促進
Vifに誘導されるAPOBEC3G分解のメカニズムについてさらに詳しい洞察を得るために、APOBEC3Gがユビキチン化によって修飾されるか否かを調べた。APOBEC3GおよびHis-ユビキチン発現ベクター(Treier et al , 1994)をVif発現ベクターの存在下または不在下で293T細胞に同時トランスフェクトした。培養48時間後に、細胞溶解物を調製した。抗HA抗体を用いたこれらのタンパク質の後続のイムノブロッティングにより、ポリユビキチン化されたAPOBEC3G-HAの連続体が認められた(図7C、レーン2および4)。APOBEC3G-HA不在下において調製された融解物のイムノブロッティングにより、抗HA抗体がAPOBEC3Gの修飾型と選択的に反応することが確認された(図7C、レーン10)。Vifの同時発現は、これらのポリユビキチン化APOBEC3G種の完全消失、および非修飾型APOBEC3Gの発現の減少に関連した(図7C、レーン6および8)。26SプロテアソームがVifに誘導されるこれらのポリユビキチン化APOBEC3Gタンパク質種の分解を媒介するか否かについて調べるために、プロテアソーム阻害物質であるMG132の存在下で並行実験を実施した。このプロテアソーム阻害物質は、Vif依存性のポリユビキチン化APOBEC3Gの消失を遮断せず、非修飾型タンパク質の量を増加させもしなかった(図7C、レーン5および7)。しかし、MG132はこれらの細胞内において多くのポリユビキチン化タンパク質の蓄積増加を促進して、この阻害物質が生物学的に活性であることを示している。これらの知見は、Vifに誘導されるポリユビキチン化APOBEC3Gの分解が、26Sプロテアソームの機能に依存しないメカニズムによって起こることを示している。しかし、多くの実験において、Vif発現細胞内に出現する多くのAPOBEC3G分解産物の中の一つがMG132の添加後に増加することも観察された(図7C、レーン7および8を比較)。これらの知見から、Vifの作用が26Sプロテアソームによる分解に関してAPOBEC3Gの選択されたタンパク質分解性断片のターゲティングを含む複数の経路を伴う可能性が生じる。
【0196】
図7。HIV-1 Vifは、APOBEC3Gの分解を誘導し、ポリユビキチン化型のAPOBEC3Gは、Vifに誘導される分解の主要ターゲットを形成する。(AおよびB)VifはN-およびC末端双方の免疫応答性エピトープの消失によって示されるように、APOBEC3Gの分解または徹底したタンパク質分解を促進する。HA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HAをコードする発現ベクターDNAの段階的な量をVif発現ベクターDNAと共に、またVif発現ベクターDNA無しで293T細胞に同時トランスフェクトした。これらの培養物から調製した細胞溶解物は、抗HA抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。α-チューブリン発現に関するイムノブロッティングによって、これらの細胞溶解物の含有量が同等であることが確認された。HAエピトープがAPOBEC3GのN末端またはC末端に位置するかどうかに関わらず、Vif発現が抗HA免疫応答性の消失を誘導することに留意されたい。(C)APOBEC3Gはポリユビキチン化されており、Vifは見かけ上プロテアソーム非依存的なメカニズムによって(Ub)n-APOBEC3Gの分解を誘導する。293T細胞に、Vif発現ベクターの存在下または不在下においてAPOBEC3G-HAおよびヒス-ユビキチン発現ベクターを同時トランスフェクトした。48時間後に細胞溶解物を調製した。指示された通り、選択された培養物に対して、培養終了直前の6時間にプロテアソーム阻害物質であるMG132を添加した。溶解物を抗HA抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した。Vifの同時発現によってポリユビキチン化されたAPOBEC3G-HAタンパク質が著しく減少して、これらの修飾型APOBEC3G-HAの消失は細胞培養物にプロテアソーム阻害物質のMG132を加えても遮断されなかったことに留意されたい。ポリユビキチン化型APOBEC3G-HAに加えて、Vifが発現する場合および発現しない場合の双方においてAPOBEC3G-HAの分解産物が認められた。Vif発現細胞に存在するAPOBEC3G-HAの複数の分解産物の一つは、MG132(*)存在下では量的に増加し、その分解はプロテアソームの作用を伴う可能性が高いことを示唆している。
【0197】
Vif誘導性のAPOBEC3Gの枯渇に伴うタンパク質全体の消失
Vif発現細胞におけるAPOBEC3Gの見かけの消失が、免疫検出において用いられるエピトープの消失に至るC末端のタンパク質分解性クリッピングによって説明できるか否かについて検討した。Vif発現プラスミドDNAの存在下または不在下において、293T細胞にHA-APOBEC3GまたはAPOBEC3G-HA発現ベクターDNAの段階的用量を同時トランスフェクトすると、Vifの存在下では、N末端およびC末端がタグ付けされた双方の型のAPOBEC3G酵素が減少した。これらの知見は、VifがC末端のみのタンパク質分解を誘導するのではなく、排除のためにAPOBEC3Gタンパク質全体を標的とすることを示している。
【0198】
VifとAPOBEC3Gとの物理的結合
HIV-1 VifがAPOBEC3Gと物理的に相互作用するか否かを調べるために、293T細胞にHA-APOBEC3GおよびGST-Vifまたは対照GST発現プラスミドDNAを同時トランスフェクトした。細胞溶解物を調製して、グルタチオン-セファロースビーズと共にインキュベートした。これらのビーズに結合したタンパク質のイムノブロッティングにより、HA-APOBEC3GがGSTではなくGST-Vifによって回収されることが示された。GST-Vifタンパク質が生物学的活性を保持するか否かを調べるために、GST-Vifの存在下または不在下でHA-APOBEC3Gの量をモニターした結果、GST-Vifの存在下ではこの酵素の量が少ないことが確認された(図8D)。これらの知見は、Vifが生細胞内のAPOBEC3Gタンパク質と集合し得ること、およびキメラのGST-Vifタンパク質が細胞内APOBEC3G発現の障害能を保持することを示している。
【0199】
インビボでのVifによるAPOBEC3Gの半減期の短縮化
Vifが分解を加速させることによって細胞内のAPOBEC3G量を枯渇させるかどうかを調べるために、APOBEC3G-HAおよびHIV-1 Vifまたは対照発現ベクターDNAを同時トランスフェクトしたHEK 293細胞を用いて[35S]-メチオニン/システインパルス−チェイス放射標識試験を実施した。トランスフェクション36時間後に、細胞をメチオニンおよびシステイン除去培地で60分間インキュベートして、続いて35S-メチオニン/システインを用いて37℃で30分間パルス標識した。続いて、培養物を、過剰の未標識メチオニンおよびシステインを含む培地中で37℃にて12時間まで追跡した。次いで、異なる間隔で回収された細胞の溶解物から、APOBEC3G-HAを免疫沈降させた(図8A)。Vifの不在下で、放射標識APOBEC3Gタンパク質は約10時間のT1/2で崩壊した。しかし、Vifの存在下では放射標識APOBEC3Gはさらに速やかに消失して、約1.9時間のT1/2を示した(図8A)。これらの知見は、VifがAPOBEC3Gの半減期を短縮することを示している。
【0200】
プロテアソーム阻害物質によるVif媒介性のAPOBEC3Gの枯渇の部分的遮断
26SプロテアソームがVif誘導性のAPOBEC3Gの分解を媒介し得るかについて調べるために、H9細胞にHIV-1 wtを感染させるか、偽感染させた。感染44時間後に、細胞を、DMSO(0.1%)またはプロテアソームにおける3つのタンパク質分解活性を特異的に阻害する0.25μMエポキソミシンのいずれかで16時間処理した。続いて、細胞をLaemmli溶解緩衝液中で沸騰させて全細胞溶解物を調製し、その後、SDS-PAGEによりタンパク質を分離してイムノブロットした。予想通り、感染試料中では、非感染試料と比べてAPOBEC3Gレベルが大幅に低かった(図8B、レーン1および3)。しかし、エポキソミシンで処理した感染細胞では、DMSO処理した細胞と比べてAPOBEC3Gレベルが増加したが(図8B、レーン1および2)、エポキソミシンは非感染培養物ではAPOBEC3G量の同様の増加を惹起しないようであった(図8B、レーン3および4)。興味深いことに、エポキソミシンはVif量の増加も惹起した。
【0201】
この知見を異なる系で確認するために、APOBEC3G-HA発現ベクターおよびVif発現ベクターまたは対照ベクターを一時的にトランスフェクトした293T細胞を用いて同様の実験を実施した。トランスフェクション24時間後に、一連の異なるプロテアソーム阻害物質を用いて15時間にわたって細胞を処理した。幅広い作用を示すプロテアソーム阻害物質であるMG132(12.5μM)およびALLN(25μm)、ならびにより特異性の高いプロテアソーム阻害物質であるクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン(10μM、20μM)は希釈対照試料(0.1%DMSO)と比べて、Vif存在下ではAPOBEC3G-HAレベルを高めることが観察された(図8C、レーン7〜12)。これに対して、別のタンパク質分解経路を阻害するカルパイン阻害物質III(50μM)(図8C、レーン12)は、APOBEC3G量の増加を惹起しなかった。総合すると、本発明者らの結果は、VifのAPOBEC3Gに対する作用は少なくとも一部はプロテアソームによって媒介されることを示している。
【0202】
図8A〜C。VifはAPOBEC3Gの半減期を短縮し、プロテアソーム阻害物質はAPOBEC3G-HAの細胞内枯渇を部分的に遮断する。(A)パルス−チェイス放射標識試験。APOBEC3G-HAおよびVifまたは対照ベクターDNAを一時的にトランスフェクトしたHEK 293細胞を30分間パルス標識した。初期パルス標識(t=0)試料を回収して、残りの試料に追跡培地を加えて指示された期間、インキュベートした。抗HA抗体を用いた免疫沈降後、試料をSDS-PAGEによって分析し、ゲルをオートラジオグラフィーに供した。バンドの相対的強度を定量して、Vif(+)およびVif(-)試料を1として正規化し、グラフ化した(図8、右)。APOBEC3GのT1/2はVifの存在下では1.9時間であり、Vifの不在下では10時間であった。(B)感染H9細胞を用いたプロテアソーム阻害物質試験。偽感染またはHIV-1 wtに感染したH9細胞を、感染44時間後、幅広い活性を持つプロテアソーム阻害物質であるエポキソミシン(0.25μM)またはDMSO(0.1%)で処理した。処理16時間後に、細胞を回収した。細胞をLaemmli溶解緩衝液中で沸騰させて、全細胞溶解物を調製した。エポキソミシンが感染試料中の内因性APOBEC3G量の増加を惹起したことに留意されたい(レーン2をレーン1と比較)。(C)一時的にトランスフェクトした293T細胞を用いたプロテアソーム阻害物質試験。293T細胞に0.1μg APOBEC3Gおよび2μgのVifまたは対照ベクターDNAをトランスフェクトした24時間後に、細胞を指示された濃度の阻害物質で15時間処理した。APOBEC3G-HA量は、プロテアソーム阻害物質のMG132、ALLN、およびクラスト-ラクタシスチン-β-ラクトン存在下では上昇したが(レーン8〜11)、カルパイン阻害物質III存在下では増加しなかった(レーン12)。
【0203】
VifによるAPOBEC3G mRNAの翻訳障害
インビボパルス-チェイス放射標識実験において、Vifを発現していない細胞と比べて、Vifを発現している細胞では、パルス標識期間後に15〜40%少ない放射標識されたAPOBEC3Gが回収された。これらの結果から、VifはAPOBEC3G mRNAの翻訳を障害することによってAPOBEC3Gの発現を阻害する可能性が生じた。この可能性についてさらに詳しく調べるために、漸増用量のVif(0〜8μg)存在下でより短いパルス標識実験(15分)を実施した(図9A、左)。これらの試験より、VifがインビボにおけるAPOBEC3G-HAの35S-メチオニン/システイン放射標識を用量関連的に障害し、一貫してパルス標識期間中のAPOBEC3G翻訳における30〜50%の減少を惹起することが明らかとなった。同一試料のイムノブロッティング分析の結果、安定状態でのAPOBEC3G-HA量の80%減少が見出された(図9A、右)。翻訳の30〜50%の減少では、安定状態におけるAPOBEC3G-HAの80%減少は十分に説明されないことから、VifはAPOBEC3Gタンパク質合成の部分的遮断および翻訳後のAPOBEC3G分解誘導の双方の機能を果たすに違いない。
【0204】
VifのAPOBEC3G mRNA翻訳に対する影響についてさらに詳しく調べるために、インビトロ連結した転写・翻訳系を用いた。ウサギ網状赤血球溶解物を、予め翻訳したVifまたはGST対照タンパク質存在下でAPOBEC3G mRNAでプログラムした(図9B)。このインビトロの系において、VifはAPOBEC3Gの翻訳を約70〜75%障害した。これらの知見は、VifがAPOBEC3G mRNAのインビトロにおける翻訳を部分的に遮断することを示している。
【0205】
総合すると、これらの結果は、VifがAPOBEC3G mRNAの翻訳を阻害すること、およびプロテアソームに媒介されるAPOBEC3G酵素の分解を加速させることによって、細胞内のAPOBEC3Gを二峰性の様式で枯渇させることを示す。組み合わせると、これらの2つのメカニズムは感染T細胞においてAPOBEC3G酵素を効率的に排除する。
【0206】
図9Aおよび9B。VifはAPOBEC3G-HA mRNAの翻訳を障害する。(A)インビボパルス標識試験。APOBEC3G-HA発現ベクターDNA1μgおよびVif発現ベクターDNAの0〜8μgを一時的にトランスフェクトしたHEK 293細胞を放射標識したメチオニンおよびシステインを用いて15分間パルス標識した後、直ちに回収した。抗HA抗体を用いた免疫沈降後、これらの試料について(1)SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによる分析(左パネル)、または(2)SDS-PAGEおよびイムノブロッティングによる分析(右パネル)のいずれかを行った。高濃度のVifはインビボにおけるAPOBEC3G-HA翻訳の顕著(36%〜50%)な障害を惹起した(左パネル)。Vifは、安定状態のAPOBEC3G-HA量をさらに著しく(80%)減少させた(右パネル)。(B)インビトロにおける転写/翻訳試験。Vifまたは対照GSTタンパク質は先ず、Promega TNT T-7結合網状赤血球溶解システムを用いて製造業者の説明書に従って90分間、転写および翻訳させた。続いて、予め合成したVifまたはGSTを、APOBEC3G DNAでプログラムされた新しい転写/翻訳ミックスに氷上で加えた。続いて、反応物を30℃の水槽に移して、15または30分間、反応させた。次に、SDS-PAGEでタンパク質を分離して、ゲルをオートラジオグラフィーにより分析した。VifがインビトロにおけるAPOBEC3G合成の〜70〜75%の障害を生み出した点に留意されたい。
【0207】
実施例2:高分子量および低分子量APOBEC3G複合体の特徴付け
ヒト末梢血リンパ球(PBL)を血液から単離して、続いて、抗CD3抗体(α-CD3)、抗CD28抗体(α-CD28)、IL-9、IL-12、IL-13、IL-15、またはIFN-γを加えて48時間インキュベートした。細胞を溶解して、溶解物を清澄化し、溶解物のタンパク質濃度を定量した。溶解物中の等量のタンパク質をSDS-PAGEにより分離した。SDS-PAGEによりタンパク質を分離した後、タンパク質を膜に移して、APOBEC3Gに対する抗体を用いて膜上のAPOBEC3Gタンパク質を検出した。結果を図11〜13に示す。
【0208】
図11は、末梢血リンパ球中のAPOBEC3G量に対するPHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびIL-15の影響を示す。PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、またはIL-15で処理したPBLはAPOBEC3G酵素の発現増加を示す。刺激および未刺激末梢血リンパ球に由来する細胞溶解物のウェスタンブロット。PBLを血液から単離して、続いて、指示された刺激物質を加えて48時間インキュベートした。SDS-PAGEによりタンパク質を分離した後、APOBEC3Gに対する抗体を用いてAPOBEC3Gタンパク質を検出した。負荷対照として、抗β-アクチンを用いてβ-アクチンを検出した。
【0209】
図12はPBL中のAPOBEC3G量に対するIL-2の影響を示す。IL-2での処理によって、末梢血リンパ球のAPOBEC3G酵素がアップレギュレートされる。PBLを、指示されたサイトカインで処理し、次に、図11のように分析した。
【0210】
図13は、PBL中のAPOBEC3G量に対するPMA、PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびプロストラチンの影響を示す。PMA、PHA、抗CD3、抗CD28、およびプロストラチンはすべて、PBL中のAPOBEC3Gをアップレギュレートさせた。PBLを指示されたマイトジェンまたは抗体で処理して、図11および12のように分析した。
【0211】
APOBEC3Gの低分子量または高分子量複合体への集合を、様々な細胞において分析した。低分子量(LMW)APOBEC3G複合体および高分子量(HMW)APOBEC3G複合体の酵素活性を分析した。
【0212】
HA-APOBEC3G DNAを一時的にトランスフェクトしたH9細胞および293T細胞は、使用前に標準的条件で培養した。CD4+ T細胞をMACS(登録商標)マイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Inc.)ソーティングにより新鮮ヒト末梢血リンパ球(PBL)から単離して、完全RPMI培地(10%FBS)中で維持した。CD4+ T細胞の一部をフィトヘマグルチニン(PHA)(5μg/ml)で36時間活性化して、続いて、使用前にさらに24時間、IL-2(5μg/L)で活性化した。単球をバフィーコートの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。単球をGM-CSF(50ng/mL)およびIL-4(25ng/mL)を添加した完全RPMI培地で6日間インキュベートすることによって、未熟樹状細胞を得た。未熟樹状細胞をTNF-α(5ng/mL)およびPoly IC(25μg/mL)で24時間処理して成熟樹状細胞を得た。これらの細胞から、清澄化した溶解物を作製した。清澄化した溶解物中の総タンパク質を定量して、予めRNアーゼ処理を行って、または行わずに、FPLC分析に供した。各FPLC画分について、SDS-PAGEおよびイムノブロッティング分析を行った。高分子量および低分子量画分中のHA-APOBEC3Gを免疫沈降させて、インビトロにおけるシチジンデアミナーゼアッセイに供した。
【0213】
図14は、非許容性H9細胞において内因性APOBEC3GがHMW、RNアーゼ感受性複合体に集合することを示す結果を表す。
【0214】
図15は、HA-APOBEC3G DNAの許容性細胞へのトランスフェクションによってHMW APOBEC3G複合体が形成されることを示す結果を表している。このHMW分画は、HMW画分のRNアーゼ処理から得られるLMW APOBEC3G複合体と同じく、RNアーゼ感受性である。
【0215】
図16は、LMW APOBEC3G複合体はシチジンデアミナーゼ活性を持つがHMW APOBEC3G複合体は持たないことを示す結果を表す。従って、APOBEC3Gはシチジンデアミナーゼ活性を持たないHMWリボ核タンパク質複合体に補充される。HMW APOBEC3G複合体をRNアーゼで処理すると、高いシチジンデアミナーゼ活性を示すLMW APOBEC3G複合体が産生される。
【0216】
図17は休止PBL中のAPOBEC3GはLMW複合体に存在することを示す結果を表している。
【0217】
図18は、CD4+ PBLのPHA/IL-2刺激によってHMW APOBEC3G複合体の集合が促進されることを示す結果を表している。
【0218】
図19は、単球中のAPOBEC3GはLMW複合体に存在することを示す結果を表している。
【0219】
図20は、単球の分化がHMW APOBEC3G複合体の集合を促進することを示す結果を表している。
【0220】
要約すると、以下のことが示された:
1)APOBEC3Gはシチジンデアミナーゼ活性を持たないHMWリボ核タンパク質複合体に補充される;
2)HMW APOBEC3G複合体をRNアーゼで処理すると、高レベルのシチジンデアミナーゼ活性を示すLMW複合体が製造される。
3)休止期の末梢血T細胞および単球はLMW APOBEC3G複合体を示す。休止期の末梢血T細胞および単球の活性化および/または分化は、HMW APOBEC3G複合体の形成を促進する。
【0221】
実施例3:APOBEC3GのN末端断片のVif誘導性APOBEC3G分解に対する影響
HEK 293細胞にHA-APOBEC3G発現ベクターまたは漸増量(2μg〜4μg)のHA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクター;およびHIV-1 Vifまたは対照発現ベクターを同時トランスフェクトした。HA-APOBEC3G発現ベクターは、N末端のヘマグルチニン-エピトープタグに対してインフレームで融合した野生型(例えば、完全長)のAPOBEC3Gをコードする。HA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクターは、ヘマグルチニン-エピトープタグにインフレームで融合したAPOBEC3Gのアミノ酸1〜104をコードする。遠心分離によって細胞溶解物を清澄化して、等量のタンパク質をSDS-PAGEによって分離した。分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移して、膜上のHA-APOBEC3GおよびHA-(1〜104)APOBEC3Gを抗HA抗体で検出した。HA-APOBEC3G発現ベクターをトランスフェクトした(Vif発現ベクターの同時トランスフェクトは行っていない)細胞では、約50kDにて移動するHA-APOBEC3Gが産生された。Vif発現ベクターおよびHA-APOBEC3G発現ベクターを同時トランスフェクトした(HA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクターは同時トランスフェクトしていない)細胞では、大半のHA-APOBEC3Gが分解された。しかし、Vif発現ベクター、HA-APOBEC3G発現ベクター、およびHA-(1〜104)APOBEC3G発現ベクター2μgまたは4μgのいずれかを同時トランスフェクトした細胞では、HA-(1〜104)APOBEC3Gタンパク質存在下では、〜50kDのHA-APOBEC3G融合タンパク質の安定的産生が著しく回復して、Vif同時発現がない場合に見られるレベルに達した。この結果は、HA-(1〜104)APOBEC3Gの過剰発現がHIV-1 Vifに媒介されるHA-APOBEC3Gの分解を阻害することを示す。
【0222】
実施例4:Vif/luc-APOBEC3G細胞株の構築
HIV-1 Vif作用の阻害物質に関する高処理アッセイの基盤として用いることのできるいくつかの細胞株が構築された。これらの細胞株は、Vif、および検出可能なシグナルを提供する異種タンパク質に融合したAPOBEC3Gを構成するAPOBEC3G融合タンパク質を産生する。このような細胞株の一つは次のように構築された。HeLa細胞にVif発現ベクター、およびウミシイタケ-ルシフェラーゼでタグ付けされたAPOBEC3G(luc-APOBEC3G)を発現するベクターを同時トランスフェクトして、Vif/luc-APOBEC3G細胞株を作製した。Vif発現ベクターは、ヒスチジノールに対する耐性を付与する選択可能マーカーを含む。luc-APOBEC3G発現ベクターは、トランスフェクトされた細胞をネオマイシンまたはG418から保護する選択可能マーカーを含む。
【0223】
Vif/luc-APOBEC3G細胞株をVif媒介性のAPOBEC3G分解遮断能力を持つ物質であるプロテアソーム阻害物質のMG132で処理した後、細胞を溶解した。細胞溶解物を清澄化して、通常のルシフェラーゼアッセイに供した。luc-APOBEC3Gの量は相対発光量(RLU)として表す。MG132で処理したVif/luc-APOBEC3G細胞の細胞溶解物試料から発せられたRLUは203333であった。しかし、プロテアソーム阻害物質の不在下では、Vif/luc-APOBEC3G細胞の細胞溶解物のRLUは10180であり、約1/20の減少に相当する。これらの結果から、細胞株中に存在するVifはluc-APOBEC3Gタンパク質の量を約1/20に減少させ、Vifのこの活性はMG132によって逆転すると結論づけられた。
【0224】
本発明はその具体的態様の参照を用いて説明されているが、当業者は様々な変更が可能であり、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく同等物と置き換えられ得ることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、重要な組成物、プロセス、プロセスの工程(step、steps)を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの修正が行われ得る。このようなすべての修正は、本資料に添付される特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】図1Aおよび1BはAPOBEC3Gの発現および局在化を示す。
【図2】図2は完全長の内因性APOBEC3Gのビリオンへの組み込みに対するVifの阻害作用を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、ヒトH9細胞の感染後にHIV野生型では誘導されるがHIV △Vifウイルスでは誘導されない、APOBEC3Gの細胞内枯渇を示す。
【図4】図4は、Vifが存在する場合のAPOBEC3G mRNA量を示す。
【図5】図5A〜5Cは、Vif単独に誘導されるAPOBEC3Gの細胞内枯渇を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、VifとAPOBEC3G/RNA高分子量複合体との結合を示す。
【図7】図7A〜CはHIV-1 VifによるAPOBEC3G分解の誘導を示す。
【図8】図8A〜Cは、APOBEC3Gの半減期に対するVifの影響、および細胞内APOBEC3G枯渇に対するプロテアソーム阻害物質の影響を示す。
【図9】図9A〜BはAPOBEC3G-HA mRNAに対するVifの影響を示す。
【図10】図10は、ウイルス産生細胞内での分解に関してVifがユビキチン化APOBEC3Gをどのようにターゲッティングして、それにより、APOBEC3Gのビリオンへの組み込みを遮断するか;およびウイルスDNA合成中のAPOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性の潜在的変異原性作用を示す模式図である。
【図11】図11は末梢血リンパ球(PBL)のAPOBEC3Gの量に対する、フィトヘマグルチニン(PHA)、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびIL-15の影響を示す。
【図12】図12は、PBL中のAPOBEC3G量に対するIL-2の影響を示す。
【図13】図13は、PBL中のAPOBEC3G量に対する、ホルボル-12-ミリスチン酸-13-酢酸(PMA)、PHA、抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびプロストラチンの影響を示す。
【図14】図14は、内因性APOBEC3Gのサイズ排除FPLC分析を示す。内因性APOBEC3Gは非許容性H9細胞において高分子量、RNアーゼ感受性複合体に組み込まれる。
【図15】図15は、HA-APOBEC3G DNAの許容性細胞へのトランスフェクトによってHMW APOBEC3G複合体が形成されることを示す結果を表す。
【図16】図16は、高分子量ではなく低分子量APOBEC3G複合体がシチジンデアミナーゼ活性を持つことを示す結果を表す。
【図17】図17は、休止PBL中のAPOBEC3GがLMW複合体に含まれることを示す結果を表す。
【図18】図18は、CD4+ PBLのPHA/IL-2刺激がHMW APOBEC3G複合体の構築を促進することを示す結果を表す。
【図19】図19は、単球のAPOBEC3GがLMW複合体に含まれることを示す結果を表す。
【図20】図20は、単球の分化がHMW APOBEC3G複合体の構築を促進することを示す結果を表す。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、Vif活性を阻害する物質を同定するインビトロにおける方法:
Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gの量に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項2】
APOBEC3Gタンパク質が、APOBEC3Gおよび検出可能なシグナルを提供する融合パートナーを含む融合タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
融合パートナーが、蛍光タンパク質、酵素、および免疫学的タグから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
測定工程がAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いる免疫学的アッセイである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
以下の工程を含む、Vif活性を阻害する物質を同定するインビトロにおける方法:
Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質またはAPOBEC3G/RNA複合体を含む試料を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、試料中のAPOBEC3Gタンパク質またはAPOBEC3G/RNA複合体へのVifの結合に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項6】
Vifタンパク質が、Vifおよび免疫学的に検出可能な融合パートナーを含む融合タンパク質であって、APOBEC3Gタンパク質がAPOBEC3Gおよび免疫学的に検出可能な融合パートナーを含む融合タンパク質である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Vifが不溶性支持体に固定化される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
APOBEC3Gが不溶性支持体に固定化される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
APOBEC3G/RNA複合体に対するVifの結合が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーを用いて検出される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を同定するインビトロにおける方法:
APOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、細胞内の活性APOBEC3Gの量に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項11】
測定工程が、細胞に含まれるレンチウイルスのマイナス鎖に誘導されるC→U変異の数を測定する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
測定工程が、ウイルス粒子にパッケージングされたAPOBEC3Gタンパク質を含む細胞によって産生されるレンチウイルス粒子の数を測定する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、真核細胞において不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する物質を同定するためのインビトロにおける方法:
細胞を被験物質に接触させる工程;および、
もしあれば、不活性高分子量APOBEC3G複合体の少なくとも約5%を活性低分子量APOBEC3G複合体に転換する関心対象の被験物質の、細胞内の不活性高分子量APOBEC3G複合体の量に対する影響を測定する工程。
【請求項14】
測定工程が、細胞融解物をサイズ排除高速液体クロマトグラフィーで分析する工程を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1、5、10、および13のいずれか一項記載の方法によって同定される物質。
【請求項16】
以下の物質を含む薬学的組成物:
a)請求項15記載の物質;および
b)薬学的に許容される賦形剤。
【請求項17】
第二の抗HIV治療物質をさらに含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
細胞を請求項15記載の物質に接触させる工程を含む、レンチウイルスに感染した細胞におけるVif活性を阻害する方法。
【請求項19】
Vif活性を阻害する請求項15記載の物質の有効量を個人に投与して、Vif活性が阻害され、レンチウイルス感染が治療される工程を含む、個人におけるレンチウイルス感染を治療する方法。
【請求項20】
ウイルス量が減少する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
活性APOBEC3Gの量を増加させる請求項15記載の物質の有効量を個人に投与して、ウイルス複製が阻害されるようにレンチウイルスが変異し、レンチウイルス感染が治療される工程を含む、個人におけるレンチウイルス感染を治療する方法。
【請求項22】
ウイルス量が減少する、請求項21記載の方法。
【請求項1】
以下の工程を含む、Vif活性を阻害する物質を同定するインビトロにおける方法:
Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、細胞内のAPOBEC3Gの量に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項2】
APOBEC3Gタンパク質が、APOBEC3Gおよび検出可能なシグナルを提供する融合パートナーを含む融合タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
融合パートナーが、蛍光タンパク質、酵素、および免疫学的タグから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
測定工程がAPOBEC3Gに特異的な抗体を用いる免疫学的アッセイである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
以下の工程を含む、Vif活性を阻害する物質を同定するインビトロにおける方法:
Vifタンパク質およびAPOBEC3Gタンパク質またはAPOBEC3G/RNA複合体を含む試料を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、試料中のAPOBEC3Gタンパク質またはAPOBEC3G/RNA複合体へのVifの結合に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項6】
Vifタンパク質が、Vifおよび免疫学的に検出可能な融合パートナーを含む融合タンパク質であって、APOBEC3Gタンパク質がAPOBEC3Gおよび免疫学的に検出可能な融合パートナーを含む融合タンパク質である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Vifが不溶性支持体に固定化される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
APOBEC3Gが不溶性支持体に固定化される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
APOBEC3G/RNA複合体に対するVifの結合が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーを用いて検出される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、細胞内の活性APOBEC3Gの量を増加させる物質を同定するインビトロにおける方法:
APOBEC3Gタンパク質を産生する細胞を被験物質と接触させる工程;および、
もしあれば、細胞内の活性APOBEC3Gの量に対する被験物質の影響を測定する工程。
【請求項11】
測定工程が、細胞に含まれるレンチウイルスのマイナス鎖に誘導されるC→U変異の数を測定する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
測定工程が、ウイルス粒子にパッケージングされたAPOBEC3Gタンパク質を含む細胞によって産生されるレンチウイルス粒子の数を測定する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、真核細胞において不活性高分子量APOBEC3G複合体の活性低分子量APOBEC3G複合体への転換を促進する物質を同定するためのインビトロにおける方法:
細胞を被験物質に接触させる工程;および、
もしあれば、不活性高分子量APOBEC3G複合体の少なくとも約5%を活性低分子量APOBEC3G複合体に転換する関心対象の被験物質の、細胞内の不活性高分子量APOBEC3G複合体の量に対する影響を測定する工程。
【請求項14】
測定工程が、細胞融解物をサイズ排除高速液体クロマトグラフィーで分析する工程を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1、5、10、および13のいずれか一項記載の方法によって同定される物質。
【請求項16】
以下の物質を含む薬学的組成物:
a)請求項15記載の物質;および
b)薬学的に許容される賦形剤。
【請求項17】
第二の抗HIV治療物質をさらに含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
細胞を請求項15記載の物質に接触させる工程を含む、レンチウイルスに感染した細胞におけるVif活性を阻害する方法。
【請求項19】
Vif活性を阻害する請求項15記載の物質の有効量を個人に投与して、Vif活性が阻害され、レンチウイルス感染が治療される工程を含む、個人におけるレンチウイルス感染を治療する方法。
【請求項20】
ウイルス量が減少する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
活性APOBEC3Gの量を増加させる請求項15記載の物質の有効量を個人に投与して、ウイルス複製が阻害されるようにレンチウイルスが変異し、レンチウイルス感染が治療される工程を含む、個人におけるレンチウイルス感染を治療する方法。
【請求項22】
ウイルス量が減少する、請求項21記載の方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−502624(P2007−502624A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533688(P2006−533688)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018474
【国際公開番号】WO2005/004798
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505458304)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018474
【国際公開番号】WO2005/004798
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505458304)
【Fターム(参考)】
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