説明

レーザダイオードの制御方法

【課題】高速動作を行う場合であっても低温時で良好な制御が行えるレーザダイオードの制御方法を提供する。
【解決手段】制御部5は、モニタPD3によって検出される複数の温度においてバイアス電流(Ib)を変化させて予め設定された消光比を与える変調電流(Im)を測定し、当該Ibに対するImの線形関係を与える一次係数α1及びゼロ次係数β1を上記複数の温度のそれぞれに対し算出してメモリ51に保持し(ステップS1)、次に、LD2の現在温度を測定し、APCによってIbを決定し、現在温度に対する一次係数α1及びゼロ次係数β1を取得し、この取得した一次係数α1及びゼロ次係数β1を用いて、決定したIbに対し、所望の消光比を与えるImを算出する(ステップS2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザダイオードの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザダイオード(LD)の経時劣化に対して光出力および消光比を一定に制御するためのLD駆動回路および方法が記載されている。特許文献1に記載の方法は、LDの発光しきい電流値付近であるバイアス電流と発光させるためのパルス電流とを重畳した電流でLDを駆動し、バイアス電流とパルス電流とを周囲温度に応じて調整し、光出力および消光比を一定に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−135871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LDの発光強度(例えば、平均発光出力Pav)は、印加するバイアス電流(Ib)と変調電流(Imod、以下Im)に依存する。一般に、LDの駆動電流は、LDの閾値電流(Ith)よりも僅かに大きな値(Ithよりも小さくするとその変調特性が劣化する)のIbに、消光比(ER)に対応したImが重畳されたものである(図3のグラフL1を参照)。
【0005】
一方、図3に示すように、LDの温度特性が大きい(半導体電子デバイスやPDに比較して)ことも知られている。高温時には発光効率が劣化し、図3のグラフHTに示すように、Ib,Imともに大きな値に設定しないと、常温時の発光特性は得られない。すなわち、高温時にはIthが大きくなり、そのスロープ効率SEも低下する。これに対し、低温時には、発光効率が改善され、図3のグラフLTに示すように、Ib,Imともに高温時に比較して低く設定される。
【0006】
一般に、このような温度特性を補償する方法としてAPC(Auto Power Control)が知られている。LDの発光の一部をPDによりモニタし(通常はLDの背面光をモニタする)、そのモニタ値を一定にする様にIb,Imを変化させる。APCの制御アルゴリズムについて、例えば、以下の方法(1)〜(3)が知られている。
(1)発光の最大値(P1)及び最小値(P0)を個別にモニタし、それぞれの値を維持する様にIb,Imに帰還制御を施す方法。
(2)発光の平均値(Pav)及びERをモニタし、それぞれの値を維持する様にIb,Imに帰還制御を施す方法。
(3)Pavをモニタし、これが一定になる様にIbを制御し(APCによる)、Imについては、Ib,Imの関係を予め測定しておき、APCにより決定されたImを一義的にLDに供給する方法。
【0007】
方法(1)及び(2)は、二つのパラメータ(Ib,Im)をモニタし、それぞれを制御する方法であるので、制御精度、帰還ループの安定性、等は高い。しかし、モニタに用いるPDのバンド幅が高速信号に対応していないためにPDの応答性が高速動作に対応できない場合があり、よって、高速動作時にPDの特性がLD制御に少なからず影響を与える可能性がある。
【0008】
また、方法(3)においては、IbとImとの間の変換テーブル(ルックアップルテーブル:LUT)をIb及びImの測定値によって温度ごとに作成してメモリに保持しておく必要があり、現在のImは現在の温度に対応するLUTの値の内挿/外挿によって決定される。方法(3)のアルゴリズムでは、モニタ値が一種(Ib)で賄える半面、予めLUTを作成しておく必要があり、更に、ERに応じてLUTを用意しなければならないので、融通性及び煩雑性の点で改善が望まれる。LDをデジタル的に駆動することが現在では一般的であるが、APCによりIbを決定するに、そのパラメータを予め設定されたIb(アナログ値)を与えるD/A−Cの設定デジタル値(D−Ib)として管理し(IbとD−Ibとは一対一に対応する)、当該D−Ibに対して予め設定されたIm(アナログ)与えるD/A−Cの設定デジタル値D−ImのLUT(D−IbとD−Imとの対応を与えるLUT)を作成することができる(この場合、LD動作中にIb,ImからD/A−Cへの設定値を算出する必要がない)。このようなLUTを用いる場合、ある温度においてIbに対しImが一義的に特定されるので、“Imを与えることによりPavが変化し、Pavの当該変化に対して新たなIb,Imの設定が必要となり、この設定に伴ってPavがさらに変化する”等の繰り返しが生じ、帰還ループが収束しない場合もある。
【0009】
更に、LDを比較的広い温度範囲(例えば、−40℃以上85℃以下)で、かつ高速で駆動させる必要がある場合に、この様な条件で動作可能なLD−Driverの種類は限られる。低温(例えば−40℃)においては、通常の半導体デバイスは利得等の性能が向上するところ、このLD−Driverのような(超)高速用途の回路や回路素子では、逆に低温時に諸特性が劣化する場合がある。図4に、低温時に特性の劣化が生じた場合のD−Ib及びD−Imの相関関係を示す。動作速度は10Gbpsである。図4に示すように、予め設定されたPav,ERに対して方法(3)のアルゴリズムに基づいてLDを制御する場合、LDの特性が低温では改善しているにもかかわらず、LD−Driverの特性に劣化が生じているために、D−Imの設定値を増加させなければならない(図4の“Open-loop mode adjust”に示す部分を参照)。
【0010】
図5は、図4に示す低温時の特性劣化の様子を他の視点から示したものである。図5には、Pavを−3dBmに保ちつつ、複数の温度(−40℃,−5℃,35℃,75℃,85℃)でD−ImとERの相関を測定した結果が示されている。図5は、D−Imを、例えば“2000”で固定した場合に得られるERが低温(例えば−40℃)で小さくなる様子を示している。
【0011】
図6は、図4に示す低温時の特性劣化の様子を、更に他の視点から示したものである。図6には、ERを予め設定された値に保ちつつ、複数のPav(−5dBm,−4dBm,−3dBm,−2dBm,−1dBm)及び複数の温度(−40℃,−5℃,35℃,75℃,85℃)でD−IbとD−Imの相関を測定した結果が示されている。
【0012】
測定結果P31〜測定結果P35は、Pavを−1dBmに保ちつつ、複数の温度で得られた結果であり、グラフL3上にある。測定結果P31は−40℃の場合の結果であり、測定結果P32は−5℃の場合の結果であり、測定結果P33は35℃の場合の結果であり、測定結果P34は75℃の場合の結果であり、測定結果P35は85℃の場合の結果である。測定結果P41〜測定結果P45は、Pavを−2dBmに保ちつつ、複数の温度で得られた結果であり、グラフL4上にある。測定結果P41は−40℃の場合の結果であり、測定結果P42は−5℃の場合の結果であり、測定結果P43は35℃の場合の結果であり、測定結果P44は75℃の場合の結果であり、測定結果P45は85℃の場合の結果である。測定結果P51〜測定結果P55は、Pavを−3dBmに保ちつつ、複数の温度で得られた結果であり、グラフL5上にある。測定結果P51は−40℃の場合の結果であり、測定結果P52は−5℃の場合の結果であり、測定結果P53は35℃の場合の結果であり、測定結果P54は75℃の場合の結果であり、測定結果P55は85℃の場合の結果である。
【0013】
測定結果P61〜測定結果P65は、Pavを−4dBmに保ちつつ、複数の温度で得られた結果であり、グラフL6上にある。測定結果P61は−40℃の場合の結果であり、測定結果P62は−5℃の場合の結果であり、測定結果P63は35℃の場合の結果であり、測定結果P64は75℃の場合の結果であり、測定結果P65は85℃の場合の結果である。測定結果P71〜測定結果P75は、Pavを−5dBmに保ちつつ、複数の温度で得られた結果であり、グラフL7上にある。測定結果P71は−40℃の場合の結果であり、測定結果P72は−5℃の場合の結果であり、測定結果P73は35℃の場合の結果であり、測定結果P74は75℃の場合の結果であり、測定結果P75は85℃の場合の結果である。
【0014】
図6に示すように、Pavを変化させても、低温(例えば−40℃)でのD−Imは比較的大きい(測定結果P31,P41,P51,P61,P71等を参照)。従って、従来の方法(3)のように、APCでD−Ibを決定し、LUTを参照して対応するD−Imを設定しようとすると、例えば、Pavを−1dBmに維持する場合に、低温下(例えば−40℃)でオーバーフローするか、或いは、オーバーフローまでには至らずとも、アラーム設定値を越えてしまう場合も生ずる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記の事項を鑑みてなされたものであり、高速動作を行う場合であっても低温時で良好な制御が行えるレーザダイオードの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るレーザダイオードの制御方法は、 複数の温度においてバイアス電流を変化させて予め設定された消光比を与える変調電流を測定し、当該バイアス電流に対する変調電流の線形関係を与える第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を前記複数の温度のそれぞれに対し算出して保持する第1のステップと、前記レーザダイオードの現在温度を測定し、前記レーザダイオードに対するAPCによってバイアス電流の値を決定し、前記現在温度に対する第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を取得し、前記取得された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、前記決定されたバイアス電流に対し前記消光比を与える変調電流の値を算出する第2のステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
従来、変調電流の設定精度を高めるには、バイアス電流及び変調電流の関係を同一温度でも細かく(変調電流の値を細かく)用意する必要がある。これに対し、本発明に係る方法では、同一温度について単に二つのパラメータ、すなわち、第1の一次係数及び第1のゼロ次係数の値を用意しておくだけで良い。従って、例えば、高速動作が低温時で行われる場合であっても、当該低温時に対応する第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いれば、APCで決定されたバイアス電流に対応し当該温度において所望とする消光比が与えられる好適な変調電流を得ることが可能となる。
【0018】
本発明では、前記第1のステップにおいて保持された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、温度に対する第1の一次係数の線形関係を与える第2の一次係数及び第2のゼロ次係数と、温度に対する第1のゼロ次係数の線形関係を与える第3の一次係数及び第3のゼロ次係数とを算出して保持する第3のステップを更に備え、前記第2のステップは、前記第3のステップにおいて保持された第2及び第3の一次係数と第2及び第3のゼロ次係数とを用いて前記現在温度に対する第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を算出し、前記算出された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、前記決定されたバイアス電流に対し前記消光比を与える変調電流の値を算出する、ことが好ましい。
【0019】
従って、少なくとも二つの温度点において、バイアス電流及び変調電流の関係を、予め設定された消光比が得られる条件で予め測定することにより、全ての温度範囲において、予め設定された消光比についてバイアス電流及び変調電流の関係を予測できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高速動作を行う場合であっても低温時で良好な制御が行えるレーザダイオードの制御方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るLD駆動装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るLDの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】LDの温度特性を説明するための図である。
【図4】LD駆動装置の低温時の特性を説明するための図である。
【図5】LD駆動装置の低温時の特性を説明するための図である。
【図6】LD駆動装置の低温時の特性を説明するための図である。
【図7】実施形態に係るLDの制御方法を説明するためのグラフを示す図である。
【図8】実施形態に係るLDの制御方法を説明するためのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態であるレーザダイオード(LD)の制御方法について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。まず、上記図6に示す測定結果に対し本発明者が行った考察について説明する。図6では、同一のPavについて、D−Ib及びD−Imの相関が測定結果としてプロットされ、グラフL3〜グラフL7が得られた。例えば、−1dBmのPavにおいて測定結果P31〜P35がプロットされてグラフL3が得られ、−2dBmのPavにおいて測定結果P41〜測定結果P45がプロットされてグラフL4が得られた、等である。
【0023】
そこで、本発明者は、図6に示す測定結果P31〜測定結果P75を等温度で結び、図7に示すグラフL8〜グラフL12を得た。−40℃での測定結果P31〜測定結果P71がグラフL8を構成し、−5℃での測定結果P32〜P72がグラフL9を構成し、35℃での測定結果P33〜測定結果P73がグラフL10を構成し、75℃での測定結果P34〜測定結果P74がグラフL11を構成し、85℃での測定結果P35〜測定結果P75がグラフL12を構成する。図7に示すように、グラフL8〜グラフL12は略直線であり、よって、D−Ibに対するD−Imの関係は等温度において略線形であることがわかる。等温度におけるD−Ibに対するD−Imの線形関係を与える一次係数をα1とし、ゼロ次係数をβ1とする。温度が異なれば、一次係数α1及びゼロ次係数β1も異なる。この場合、(D−Im)=α1×(D−Ib)+β1、となる。
【0024】
図7のグラフL8の場合、概ね、α1=2.735,β1=-807.0であり、グラフL9の場合、概ね、α1=1.674,β1=-301.7であり、グラフL10の場合、概ね、α1=1.591,β1=-592.0であり、グラフL11の場合、概ね、α1=1.200,β1=-684.7であり、グラフL12の場合、概ね、α1=1.034,β1=-733.6である。
【0025】
以上説明したように、従来のIb及びImの関係を規定するLUTに代えて、各温度での(α1,β1)を規定するLUTを用意することで、LUTのサイズを格段に縮小することができる。従来、Imの設定精度を高めるには、D−Ib及びD−Imの関係を同一温度でも細かく(D−Ibの値を細かく)用意する必要がある。これに対し、実施形態に係るLDの制御方法では、同一温度について単に二つのパラメータ(α1,β1)の値をLUTとして用意しておくだけで良い。従って、例えば、高速動作が低温時で行われる場合であっても、当該低温時に対応する一次係数α1及びゼロ次係数β1を用いれば、APCで決定されたD−Ibに対応し当該温度において所望とする消光比(ER)が与えられる好適なD−Imを得ることが可能となる。また、APCにおけるLDからの発光のモニタはPavに対し行われるだけなので、モニタ用のPDの応答性が10Gbps等の高速動作時に劣化する場合であっても、このようなPDの特性の影響がLD制御に及ぼす影響を低減できる。また、その手続きについても、温度一定条件下で設定Pavに対するIm、Ibの値を決定することであり、方法(3)で用いるような従来のLUTを作る作業と何らの変更も要しない。すなわち、実施形態に係るLDの制御方法は、単にメモリに保持する値の数(予め用意しておくパラメータの種類)が効率的に減少するだけである。
【0026】
図8は、図7において算出された一次係数α1とゼロ次係数β1の値を温度に対する関係として表したものである。グラフL13は、図7に示す測定結果から得られる温度と一次係数α1の相関を示すグラフであり、グラフL14は、図7に示す測定結果から得られる温度とゼロ次係数β1の相関を示すグラフである。一次係数α1については十分な精度で直線近似することが可能である。この場合、温度(℃)をTとし、Tに対する一次係数α1の線形関係を与える一次係数をα2とし、ゼロ次係数をβ2、とすると、α1=α2×T+β2、となる(以下、式1という)。図6及び図7に示す具体例では、概ね、α2=-0.0117,β2=1.9983、である。この場合、式1は、図8のグラフL13aに対応する。ゼロ次係数β1についても、T=−40℃での異常点(図7のグラフL8に示すデータであって図8に示すポイントK1)を除けば、直線近似が可能である。この場合、Tに対するゼロ次係数β1の線形関係を与える一次係数をα3とし、ゼロ次係数をβ3、とすると、β1=α3×T+β3、となる(以下、式2という)。図6及び図7に示す具体例では、概ね、α3=-4.559,β3=-361.27、である。この場合、式2は、図8のグラフL14aに対応する。
【0027】
従って、実施形態に係るLDの制御方法では、少なくとも二つの温度点において、Ib−Imの関係(即ち、D−Ib及びD−Imの関係)を、Pavを変えつつ予め設定されたERが得られる条件で予め測定することにより、全ての温度範囲において、予め設定されたERについてIb−Imの関係を予測できる。
【0028】
従来の上記方法(3)を用いてImを得る従来のLDの制御方法では、LDの事前測定(Ib−Imの関係を調べる測定)において、複数の温度点(例えば、高、室温、低の三つの温度点)を選び、各温度下にて予め設定されたPav,ERが得られるIb,Imを測定する。これに対し、実施形態に係るLDの制御方法によれば、少なくとも二つの温度点において、Ib,Imの関係を測定して一次係数α1及びゼロ次係数β1の値を決定し、この決定した一次係数α1及びゼロ次係数β1を上記の線形の関係(式1及び式2)に当てはめて、温度に対する一次係数α1の一次係数α2及びゼロ次係数β2と、温度に対するゼロ次係数β1の一次係数α3及びゼロ次係数β3とを算出してメモリに保持しておくことにより、LDを従前と同様の精度で制御できることになる。さらに、上記した実施形態に係るLDの制御方法のアルゴリズムにより得られるIb−Imに対しても、それぞれ限界値を設定することでLDの安全動作を維持することに何らの変動もない。
【0029】
上記した実施形態に係るLDの制御方法は、例えば、図1に示すようなLD駆動装置等に適用できる。図1は、実施形態に係るLD駆動装置1の構成を示す図である。LD駆動装置1は、LD2、モニタPD3、温度センサ4、制御部5及び6を備える。
【0030】
LD2は、駆動回路6から供給されるバイアス電流及び変調電流に応じて発光する。モニタPD3は、フォトダイオード等の光検出素子を有しており、LD2の出力光をモニタする。モニタPD3は、このモニタ結果を示すモニタ信号を制御部5に出力する。温度センサ4は、温度センサ4の近傍の温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子を有する。温度センサ4は、LD2に密着して配置されているので、温度センサ4によって検出される温度はLD2の温度と略同一である。
【0031】
制御部5は、物理的にはCPU、ROM及びRAM等を有している。制御部5は、メモリ51を有する。メモリ51は、ROM等(又は着脱自在な記録媒体等)である。メモリ51に格納されたコンピュータプログラム(例えば、APCを行うためのコンピュータプログラムや、図2に示すフローチャートの処理を実行するためのコンピュータプログラム等)は、制御部5のCPUによって実行される。制御部5は、LD2に供給するバイアス電流を制御するためのバイアス電流制御信号を生成し、このバイアス電流制御信号を駆動回路6に出力する。制御部5は、LD2に供給する変調電流を制御するための変調電流制御信号を生成し、この変調電流制御信号を駆動回路6に出力する。制御部5は、モニタPD3から送信されるモニタ信号を用いてLD2に対しAPCを行う。制御部5は、APC制御を行うことによって、好適なIbを決定する。
【0032】
駆動回路6は、制御部5から入力されるバイアス電流制御信号及び変調電流制御信号に基づいて、変調電流をバイアス電流に重畳して得られる駆動電流を、LD2に供給する。
【0033】
次に、図2を参照して、LD駆動装置1に適用される実施形態に係るLDの駆動方法を説明する。まず、制御部5は、モニタPD3によって検出される複数の温度においてIb(すなわち、デジタル値のD−Ib)を変化させて予め設定されたERを与えるIm(すなわち、デジタル値のD−Im)を測定し、当該D−Ibに対するD−Imの線形関係を与える一次係数α1(第1の一次係数)及びゼロ次係数β1(第1のゼロ次係数)を上記複数の温度のそれぞれに対し算出してメモリ51に保持する(ステップS1;第1のステップ)。
【0034】
次に、制御部5は、モニタPD3による検出結果に基づいてLD2の現在温度を測定し、LD2に対するAPCによってD−Ibを決定し、この現在温度に対する一次係数α1及びゼロ次係数β1を取得し、この取得した一次係数α1及びゼロ次係数β1を用いて、上記のAPCによって決定されたD−Ibに対し、所望のERを与えるD−Imを算出する(ステップS2;第2のステップ)。
【0035】
なお、上記のステップS1及びステップS2に対し、図2に示すステップS3(第3のステップ)及びステップS4を加えてもよい。まず、ステップS1の後、制御部5は、ステップS1においてメモリ51に保持した一次係数α1及びゼロ次係数β1を用いて、温度に対する一次係数α1の線形関係を与える一次係数α2(第2の一次係数)及びゼロ次係数β2(第2のゼロ次係数)と、温度に対するゼロ次係数β1の線形関係を与える一次係数α3(第3の一次係数)及びゼロ次係数β3(第3のゼロ次係数)とを算出してメモリ51に保持する(ステップS3)。
【0036】
そして、ステップS2において、制御部5は、ステップS3においてメモリ51に保持された一次係数α2及び一次係数α3とゼロ次係数β2及びゼロ次係数β3とを用いて、LD2の現在温度に対する一次係数α1及びゼロ次係数β1を算出し、この算出した一次係数α1及びゼロ次係数β1を用いて、上記のAPCによって決定されたD−Ibに対し、所望のERを与えるD−Imを算出する。
【0037】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0038】
LD駆動装置…1、LD…2、モニタPD…3、温度センサ…4、制御部…5、駆動回路…6、メモリ…51。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードの制御方法であって、
複数の温度においてバイアス電流を変化させて予め設定された消光比を与える変調電流を測定し、当該バイアス電流に対する変調電流の線形関係を与える第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を前記複数の温度のそれぞれに対し算出して保持する第1のステップと、
前記レーザダイオードの現在温度を測定し、前記レーザダイオードに対するAPCによってバイアス電流の値を決定し、前記現在温度に対する第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を取得し、前記取得された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、前記決定されたバイアス電流に対し前記消光比を与える変調電流の値を算出する第2のステップと、
を備えることを特徴とするレーザダイオードの制御方法。
【請求項2】
前記第1のステップにおいて保持された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、温度に対する第1の一次係数の線形関係を与える第2の一次係数及び第2のゼロ次係数と、温度に対する第1のゼロ次係数の線形関係を与える第3の一次係数及び第3のゼロ次係数とを算出して保持する第3のステップを更に備え、
前記第2のステップは、前記第3のステップにおいて保持された第2及び第3の一次係数と第2及び第3のゼロ次係数とを用いて前記現在温度に対する第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を算出し、前記算出された第1の一次係数及び第1のゼロ次係数を用いて、前記決定されたバイアス電流に対し前記消光比を与える変調電流の値を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザダイオードの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−142417(P2012−142417A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293791(P2010−293791)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】