レーザビーム装置
【課題】簡単な構成とすることができ、しかも光ファイバへの導光の効率を向上させることができるレーザビーム装置を得る。
【解決手段】速軸方向コリメータ5は、長径及び短径を持つ発光部から照射されたレーザビームを速軸方向についてコリメートする。速軸方向コリメータ5の後段には分割用光学素子8が配置され、分割用光学素子8の後段にはシフト用光学素子9が配置されている。長径方向についてレーザビームの一部のみが第1の分割ビーム11として分割用光学素子8内を進行し、残りのレーザビームが第2の分割ビーム12として分割用光学素子8外を進行する。これにより、レーザビームが第1及び第2の分割ビームに分割される。シフト用光学素子9は、第1及び第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、第1及び第2の分割ビームの短径方向についての位置を互いに重なる位置とする。
【解決手段】速軸方向コリメータ5は、長径及び短径を持つ発光部から照射されたレーザビームを速軸方向についてコリメートする。速軸方向コリメータ5の後段には分割用光学素子8が配置され、分割用光学素子8の後段にはシフト用光学素子9が配置されている。長径方向についてレーザビームの一部のみが第1の分割ビーム11として分割用光学素子8内を進行し、残りのレーザビームが第2の分割ビーム12として分割用光学素子8外を進行する。これにより、レーザビームが第1及び第2の分割ビームに分割される。シフト用光学素子9は、第1及び第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、第1及び第2の分割ビームの短径方向についての位置を互いに重なる位置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザダイオード素子から照射されたレーザビームを集光するレーザビーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横長の発光面から照射されるレーザビームを集光して光ファイバに導光するために、レーザビームの断面形状を小径の円形に近づける補正を行うレーザビームの補正装置が提案されている。レーザビームの補正は、レーザビームを発光面の短手方向についてコリメートした後、光路分割素子によってレーザビームを発光面の長手方向について複数の分割ビームに分割し、光路変更素子によって発光面の短手方向について重なる位置に各分割ビームを変位させることにより、行われる。光路分割素子は、複数の導光板を互いに重ね合わせて構成されている。光路変更素子も、複数の導光板を互いに重ね合わせて構成されている。レーザビームは、光路分割素子の各導光板に部分的に通されることにより複数の分割ビームに分割される。各分割ビームは、光路変更素子の各導光板に個別に通されることにより、発光面の短手方向について互いに重なる位置へそれぞれ変位される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3098200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のレーザビームの補正装置では、光路分割素子や光路変更素子が複数枚の導光板によりそれぞれ構成されているので、構成が複雑になり、コストが増大してしまう。
【0005】
また、レーザビームが光路分割素子の各導光板に部分的に通されることにより分割され、各分割ビームが光路変更素子の各導光板に個別に通されることによりそれぞれ変位されるので、光路分割素子によるレーザビームの分割比率の調整や、光路変更素子による各分割ビームのそれぞれの変位量の調整がしにくくなる。従って、例えばレーザビームが設計値に対してずれている場合には、集光径が大きくなり光ファイバへの導光の効率が低下してしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成とすることができ、しかも光ファイバへの導光の効率を向上させることができるレーザビーム装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーザビーム装置は、長径及び短径を持つ発光部を有し、発光部からレーザビームを照射するレーザダイオード素子、レーザビームを速軸方向についてコリメートする速軸方向コリメータ、速軸方向コリメータの後段に配置され、発光部の長径方向についてレーザビームの一部のみが第1の分割ビームとして内部を進行するとともに、残りのレーザビームが第2の分割ビームとして外部を進行し、第1の分割ビームの光路を変更することにより、レーザビームを第1の分割ビーム及び第2の分割ビームに分割する分割用光学素子、及び分割用光学素子の後段に配置され、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームの発光部の短径方向についての位置を互いに重なる位置とするシフト用光学素子を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るレーザビーム装置では、レーザビームの一部のみが分割用光学素子内を進行することにより、レーザビームが第1の分割ビームと第2の分割ビームとに分割され、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのいずれか一方がシフト用光学素子内を進行することにより、第1の分割ビームと第2の分割ビームとが短径方向について互いに重なるので、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの構成を、複数の導光板を用いない簡単な構成とすることができる。これにより、コストの低減を図ることができる。また、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの位置や角度を調整することにより、レーザビームの分割比率や第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのシフト量を調整することができる。従って、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの位置や角度の調整により、レーザビームの特性を向上させることができ、光ファイバへの導光の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーザビーム装置を示す上面図である。
【図2】図1のレーザビーム装置を示す側面図である。
【図3】図1のLDチップの光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図である。
【図4】図1のシフト用光学素子を通過した直後のレーザビームの特性を示す模式図である。
【図5】図1の補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバの集光性能の限界とを比較するグラフである。
【図6】図1の分割用光学素子及びシフト用光学素子を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバの集光性能の限界とを比較するグラフである。
【図7】この発明の実施の形態2によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。
【図8】図7のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。
【図10】図9のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるレーザビーム装置を示す上面図である。
【図12】図11のレーザビーム装置を示す側面図である。
【図13】図11のLDチップの光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーザビーム装置を示す上面図である。また、図2は、図1のレーザビーム装置を示す側面図である。図において、LDチップ(光源)1は、互いに垂直な速軸及び遅軸を持つレーザダイオード素子である。また、LDチップ1は、レーザビームを照射する発光部を有している。LDチップ1の発光部から照射されるレーザビームの光軸方向は、速軸方向及び遅軸方向のいずれにも垂直な方向とされている。LDチップ1の発光部から照射されるレーザビームは、速軸方向成分の特性と遅軸方向成分の特性とが互いに異なるレーザビーム、即ち集光性に異方性を持つレーザビームとなっている。LDチップ1の発光部は、図示しない給電装置からLDチップ1への給電によりレーザビームを照射する。
【0011】
LDチップ1の発光部は、LDチップ1の遅軸方向へ並べられた複数(この例では、19個)の発光点により構成されている。即ち、LDチップ1は、LDチップ1の遅軸方向に沿った直線上に各発光点が並んだアレイ型(バー型)の光源とされている。従って、LDチップ1の発光部の形状は、各発光点が並べられた方向(遅軸方向)について長径を持ち、遅軸方向及び光軸方向のいずれに対しても垂直な方向について短径(長径よりも短い径)を持つ横長の形状とされている。即ち、LDチップ1の発光部の長径方向はLDチップ1の遅軸方向と一致し、LDチップ1の発光部の短径方向はLDチップ1の速軸方向と一致している。
【0012】
この例では、LDチップ1の発光部の長径方向が水平方向(x軸方向)と一致しLDチップ1の発光部の短径方向が鉛直方向(y軸方向)と一致するようにLDチップ1が配置されている。また、LDチップ1の発光部は、各発光点からの複数の出射ビームをレーザビームとして照射する。
【0013】
LDチップ1は、ヒートシンク2に取り付けられている。ヒートシンク2は、図示しない冷却装置に取り付けられている。冷却装置としては、例えば水冷式や空冷式の冷却装置等が用いられている。レーザビームの照射に伴ってLDチップ1に発生する熱は、ヒートシンク2を介して冷却装置へ伝達される。これにより、LDチップ1の温度上昇が抑制される。
【0014】
LDチップ1の発光部から照射されたレーザビームは、補正装置3によって補正されて集光された後、光ファイバ4へ導光される。なお、レーザビーム装置は、LDチップ1及び補正装置3を有している。
【0015】
補正装置3は、速軸方向コリメータ(FAC:Fast Axis Collimator)5、ビーム変換素子6、遅軸方向コリメータ(SAC:Slow Axis Collimator)7、分割用光学素子8、シフト用光学素子9及び集光装置10を有している。LDチップ1の発光部からのレーザビームは、光軸方向について、速軸方向コリメータ5、ビーム変換素子6、遅軸方向コリメータ7、分割用光学素子8、シフト用光学素子9及び集光装置10の順に進行し、光ファイバ4に至る。
【0016】
図3は、図1のLDチップ1の光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図であり、図3(a)は速軸方向コリメータ5を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(b)はビーム変換素子6を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(c)は分割用光学素子8を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(d)はシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す図である。
【0017】
各発光点からの出射ビームは、図3(a)に示すように、LDチップ1の発光部の長径方向(以下、単に「長径方向」という)に沿って並んでいる。また、各発光点からの出射ビームのそれぞれの断面形状は、図3(a)に示すように、LDチップ1の遅軸方向(長径方向)に沿った横長の形状となっている。
【0018】
速軸方向コリメータ5は、LDチップ1の発光部からのレーザビームの速軸方向成分をコリメート(平行化)する。従って、各発光点からの出射ビームは、速軸方向コリメータ5内を通過することにより、LDチップ1の発光部の短径方向(以下、単に「短径方向」という)についてそれぞれコリメートされる。
【0019】
ビーム変換素子6は、図1及び図2に示すように、速軸方向コリメータ5の後段(即ち、光軸方向について、速軸方向コリメータ5よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、ビーム変換素子6は、各発光点から速軸方向コリメータ5を通過した出射ビームの径(ビーム径)及び拡がり角(ビーム拡がり角)のそれぞれについて、光軸に垂直でかつ互いに垂直な2つの方向の成分を入れ替える。従って、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することにより、各発光点からの出射ビームのビーム径の長径方向(x軸方向)の値と短径方向(y軸方向)の値とが入れ替わるとともに、各発光点からの出射ビームのビーム拡がり角の長径方向(x軸方向)の値と短径方向(y軸方向)の値とが入れ替わる。
【0020】
即ち、各発光点からの出射ビームがビーム変換素子6に入射する前において、x軸方向のビーム径の値をwx、y軸方向のビーム径の値をwyとし、x軸方向のビーム拡がり角の値をθx、y軸方向のビーム拡がり角の値をθyとすると、各出射ビームがビーム変換素子6から出射された後には、x軸方向のビーム径の値がwy、y軸方向のビーム径の値がwxとなり、x軸方向のビーム拡がり角の値がθy、y軸方向のビーム拡がり角の値がθxとなる。
【0021】
各発光点からの出射ビームの状態は、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することによって各出射ビームの長径方向成分(遅軸方向成分)と短径方向成分(速軸方向成分)とが入れ替わり、図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態に変換される。従って、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することにより、各発光点からの出射ビームのそれぞれの断面形状が、図3(b)に示すように、LDチップ1の速軸方向(短径方向)に沿った縦長の形状となる。ビーム変換素子6としては、例えば、独国LIMO社製の光学素子「BTS」や独国INGENERIC社製の光学素子「Vステップ素子」等が用いられる。
【0022】
遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6の後段(即ち、光軸方向について、ビーム変換素子6よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6内を通過したレーザビームの遅軸方向成分をコリメートする。即ち、遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6内を通過した各発光点からの出射ビームのそれぞれの遅軸方向成分をコリメートする。
【0023】
ここで、ビーム変換素子6内を通過したレーザビームは、速軸方向成分と遅軸方向成分とが入れ替わった状態になっている。従って、遅軸方向コリメータ7に達する各出射ビームの遅軸方向は、短径方向と一致している。このことから、レーザビームは、遅軸方向コリメータ7内を通過することにより短径方向についてコリメートされる。
【0024】
分割用光学素子8は、遅軸方向コリメータ7の後段(即ち、光軸方向について、遅軸方向コリメータ7よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、分割用光学素子8には、図2に示すように、互いに平行な一対の平面である分割素子ビーム通過面8a,8bと、各分割素子ビーム通過面8a,8bのいずれにも垂直な一対の分割素子側面8c,8dとが設けられている。即ち、分割用光学素子8は、長方形断面を持つ平行平面基板とされている。
【0025】
一方の分割素子ビーム通過面8aはレーザビームが分割用光学素子8内に入射する入射面とされ、他方の分割素子ビーム通過面8bはレーザビームが分割用光学素子8外へ出射する出射面とされている。また、各分割素子ビーム通過面8a,8bは、短径方向に垂直な平面(この例では、水平面)に対して傾斜し、かつ長径方向に垂直な平面(この例では、光軸に沿った鉛直面)に対して垂直になっている。
【0026】
レーザビームの進行方向は、分割用光学素子8内にレーザビームが入射すると、分割用光学素子8の内外屈折率の違いとレーザビームの進行方向に対する一方の分割素子ビーム通過面(入射面)8aの傾きとにより、短径方向(上下方向)について所定の角度だけ変更される。また、レーザビームの進行方向は、分割用光学素子8内から外部へレーザビームが出射すると、分割用光学素子8の内外屈折率の違いとレーザビームの進行方向に対する他方の分割素子ビーム通過面(出射面)8bの傾きとにより、短径方向(上下方向)についてビーム入射時の変更角度を打ち消す角度だけ変更される。この例では、分割用光学素子8内へのレーザビームの入射によりレーザビームの進行方向が下方へ変わり、分割用光学素子8内から外部へのレーザビームの出射によりレーザビームの進行方向がもとの方向へ戻る。
【0027】
また、分割用光学素子8は、レーザビームの照射範囲の一部にのみ重なるように長径方向へずらして配置されている。これにより、遅軸方向コリメータ7内を通過したレーザビームの長径方向についての一部のみ(即ち、各発光点からの出射ビームのうち、一部の出射ビームのみ)が分割用光学素子8内を第1の分割ビーム11として進行し、分割用光学素子8の範囲から外れた残りのレーザビーム(即ち、各発光点からの出射ビームのうち、残りの出射ビーム)が分割用光学素子8外を第2の分割ビーム12として進行する。
【0028】
第1の分割ビーム11は、分割用光学素子8内への入射により進行方向が変更された状態で分割用光学素子8内を進行しながら短径方向(上下方向)について(この例では、下方へ)シフト(変位)される。一方、第2の分割ビーム12は、進行方向が変更されずにそのまま維持されながら、分割用光学素子8外を進行する。第1の分割ビーム11の進行方向は、第1の分割ビーム11が下方へシフトされた後に分割用光学素子8内から出射されることにより、第2の分割ビーム12の進行方向と同一となる。これにより、レーザビームは、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とに上下に分割される。
【0029】
即ち、分割用光学素子8は、レーザビームの一部である第1の分割ビーム11の光路を変更し、分割用光学素子8外を進行する残りのレーザビームである第2の分割ビーム12の光路から第1の分割ビーム11の光路を分離することにより、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とにレーザビームを分割する。
【0030】
分割用光学素子8の後段を進行するレーザビームの状態は、図3(c)に示すように、各発光点からの出射ビームのうち、第1の分割ビーム11に含まれる出射ビームのみが下方(図3(c)の矢印Pの方向)へシフトされた状態となっている。レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図3(b)に示す状態から図3(c)に示す状態となる。
【0031】
分割用光学素子8は、長径方向に沿った方向(左右位置調整方向)A(図1)へ変位可能になっている。また、分割用光学素子8は、短径方向に垂直な平面(水平面)に対する分割素子ビーム通過面8a,8bの傾斜角度が変化する方向(上下シフト量調整方向)B(図2)へ回動可能になっている。従って、左右位置調整方向Aに沿った分割用光学素子8の変位により、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との比率が調整され、上下シフト量調整方向Bに沿った分割用光学素子8の回動により、第1の分割ビーム11の下方へのシフト量が調整される。
【0032】
シフト用光学素子9は、分割用光学素子8の後段(即ち、光軸方向について、分割用光学素子8よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、シフト用光学素子9には、図1に示すように、互いに平行な一対の平面であるシフト素子ビーム通過面9a,9bと、各シフト素子ビーム通過面9a,9bのいずれにも垂直な一対のシフト素子側面9c,9dとが設けられている。即ち、シフト用光学素子9は、長方形断面を持つ平行平面基板とされている。
【0033】
一方のシフト素子ビーム通過面9aはレーザビームがシフト用光学素子9内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面9bはレーザビームがシフト用光学素子9外へ出射する出射面とされている。また、各シフト素子ビーム通過面9a,9bは、光軸方向に垂直な平面(この例では、鉛直面)に対して傾斜し、かつ短径方向に垂直な平面(この例では、水平面)に対して垂直になっている。
【0034】
レーザビームの進行方向は、シフト用光学素子9内にレーザビームが入射すると、分割用光学素子8の原理と同様に、長径方向(左右方向)について所定の角度だけ変更される。また、レーザビームの進行方向は、シフト用光学素子9内から外部へレーザビームが出射すると、分割用光学素子8の原理と同様に、長径方向(左右方向)についてビーム入射時の変更角度を打ち消す角度だけ変更される。
【0035】
また、シフト用光学素子9は、第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のうち、第2の分割ビーム11のみがシフト用光学素子9に入射するように短径方向(上下方向)へずらして配置されている。これにより、分割用光学素子8によって生じた第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のうち、第2の分割ビーム11のみがシフト用光学素子9内を進行し、第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9外を進行する。
【0036】
第2の分割ビーム12は、シフト用光学素子9内への入射により進行方向が変更された状態でシフト用光学素子9内を進行しながら長径方向(左右方向)についてシフト(変位)される。一方、第1の分割ビーム11は、進行方向が変更されずにそのまま維持されながら、シフト用光学素子9外を進行する。第2の分割ビーム12の進行方向は、第2の分割ビーム12が長径方向へシフトされた後にシフト用光学素子9内から出射されることにより、第1の分割ビーム11の進行方向と同一となる。第2の分割ビーム12は、シフト用光学素子9内を通過することにより、短径方向(上下方向)について第1の分割ビーム11と重なる位置へシフトされる。
【0037】
即ち、シフト用光学素子9は、第2の分割ビーム12の光路のみを変更することにより、第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12の短径方向(上下方向)についての位置を互いに重なる位置とする。
【0038】
シフト用光学素子9の後段を進行するレーザビームの状態は、図3(d)に示すように、各発光点からの出射ビームのうち、第2の分割ビーム12に含まれる出射ビームのみが長径方向(図3(d)の矢印Qの方向)へシフトされることにより、短径方向(上下方向)について第2の分割ビーム12が第1の分割ビーム11と重なった状態となっている。レーザビームの状態は、レーザビームがシフト用光学素子9の位置を通過することにより、図3(c)に示す状態から図3(d)に示す状態となる。
【0039】
シフト用光学素子9は、短径方向(上下方向)に沿った方向(上下位置調整方向)C(図2)へ変位可能になっている。また、シフト用光学素子9は、長径方向に垂直な平面(光軸に沿った鉛直面)に対するシフト素子ビーム通過面9a,9bの傾斜角度が変化する方向(左右シフト量調整方向)D(図1)へ回動可能になっている。従って、上下位置調整方向Cに沿ったシフト用光学素子9の変位により、シフトさせる第2の分割ビームの量が調整され、左右シフト量調整方向Dに沿ったシフト用光学素子9の回動により、第2の分割ビームの長径方向へのシフト量が調整される。
【0040】
集光装置10は、シフト用光学素子9の後段(即ち、光軸方向について、シフト用光学素子9よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、集光装置10は、シフト用光学素子9からのレーザビームを長径方向(左右方向)について集光する第1の集光レンズ(第1の集光光学素子)13と、シフト用光学素子9からのレーザビームを短径方向(上下方向)について集光する第2の集光レンズ(第2の集光光学素子)14とを有している。第2の集光レンズ14は、第1の集光レンズ13の後段に配置されている。この例では、第1の集光レンズ13及び第2の集光レンズ14のそれぞれがシリンドリカルレンズとされている。
【0041】
シフト用光学素子9からのレーザビームは、集光装置10を通過することにより集光され、光ファイバ4へ導光される。
【0042】
図4は、図1のシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す模式図である。レーザビームの長径方向(x軸方向)及び短径方向(y軸方向)のそれぞれの拡がり角が十分小さい場合には、y軸方向についての第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との間隔Δyと、x軸方向についての第1及び第2の分割ビーム11,12の横幅Δxとがそれぞれ小さいほど、レーザビームの特性が向上し、光ファイバ4への導光の効率が向上する。従って、横幅Δx及び間隔Δyのそれぞれが小さくなるように、左右位置調整方向A及び上下シフト量調整方向Bのそれぞれへの分割用光学素子8の位置及び角度の調整と、上下位置調整方向C及び左右シフト量調整方向Dのそれぞれへのシフト用光学素子9の位置及び角度の調整とを行うことにより、レーザビームの特性が向上する。
【0043】
図5は、図1の補正装置3によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバ4の集光性能の限界とを比較するグラフである。また、図6は、図1の分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバ4の集光性能の限界とを比較するグラフである。なお、図5及び図6では、レーザビームの特性を破線で示し、光ファイバ4の集光性能の限界を実線で示している。
【0044】
レーザビームの特性(ビーム品質)は、集光径wと拡がり角θとの積(w×θ)に基づいて求められる。また、光ファイバ4の集光性能の限界は、光ファイバ4の許容開口数NA(Numerical Aperture)と光ファイバ4のコア径dとの積(NA×d)に基づいて求められる。
【0045】
補正装置3によって補正されたレーザビームの特性は、図5に示すように、x軸方向(長径方向)及びy軸方向(短径方向)のいずれの方向についても光ファイバ4の集光性能の限界の範囲内に収まっている。これに対して、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性は、図6に示すように、y軸方向(短径方向)については光ファイバ4の集光性能の限界の範囲内に収まっているが、x軸方向(長径方向)については一部が光ファイバ4の集光性能の限界の範囲から外れている。
【0046】
従って、レーザビームの光ファイバ4への導光の効率は、補正装置3によって補正されたレーザビームのほうが、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームよりも良いことが分かる。
【0047】
このようなレーザビーム装置では、レーザビームの一部のみが分割用光学素子8内を進行することにより、レーザビームが第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とに分割され、第2の分割ビームのみがシフト用光学素子9内を進行することにより、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とが短径方向について互いに重なるので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの構成を、複数の導光板を用いない簡単な構成とすることができる。これにより、コストの低減を図ることができる。また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を調整することにより、レーザビームの分割比率や第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のシフト量を調整することができる。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整により、レーザビームの特性を向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率を向上させることができる。
【0048】
また、レーザビームの遅軸方向成分をコリメートする遅軸方向コリメータ7が分割用光学素子8の前段に配置されているので、レーザビームが分割用光学素子8に入射する前にレーザビームの拡がり角を小さくすることができ、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との光路差によるビームの拡がりの差を小さくすることができる。これにより、レーザビームの特性をさらに向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率をさらに向上させることができる。
【0049】
また、レーザビームの径及び拡がり角のそれぞれについて、長径方向成分と短径方向成分とを入れ替えるビーム変換素子6が分割用光学素子の前段に配置されているので、互いに異なる発光点からの出射ビームの重畳を容易に避けることができ、レーザビームの特性をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、上記の例では、分割用光学素子8内を通過した第1の分割ビーム11がシフト用光学素子9外を進行し、分割用光学素子8外を通過した第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9内を進行するようになっているが、分割用光学素子8内を通過した第1の分割ビーム11がシフト用光学素子9内を進行し、分割用光学素子8外を通過した第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9外を進行するように、シフト用光学素子9を配置してもよい。この場合、第1の分割ビーム11の光路がシフト用光学素子9で変更される。
【0051】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。また、図8は、図7のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。分割用光学素子8に設けられた一対の分割素子側面8c,8dは、図8に示すように、各分割素子ビーム通過面8a,8bのそれぞれに対して傾斜している。従って、分割用光学素子8は、平行四辺形の断面を持つ平行平面基板とされている。分割用光学素子8は、各分割素子側面8c,8dがレーザビームの光軸と平行になるように配置されている。
【0052】
シフト用光学素子9に設けられた一対のシフト素子側面9c,9dは、図7に示すように、各シフト素子ビーム通過面9a,9bのそれぞれに対して傾斜している。従って、シフト用光学素子9は、平行四辺形の断面を持つ平行平面基板とされている。シフト用光学素子9は、各シフト素子側面9c,9dがレーザビームの光軸と平行になるように配置されている。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0053】
このようなレーザビーム装置では、一対の分割素子側面8c,8dが各分割素子ビーム通過面8a,8bのそれぞれに対して傾斜し、一対のシフト素子側面9c,9dが各シフト素子ビーム通過面9a,9bのそれぞれに対して傾斜しているので、レーザビームの光軸に各分割素子側面8c,8dを合わせながら分割用光学素子8を配置することができ、レーザビームの光軸に各シフト素子側面9c,9dを合わせながらシフト用光学素子9を配置することができる。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を容易に調整することができる。また、レーザビームの光軸に垂直な方向についての分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの寸法を小さくすることができ、レーザビーム装置全体の小形化を図ることができる。
【0054】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。また、図10は、図9のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。図において、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9は、共通のガラス板(支持台)21に固定されている。即ち、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9は、ガラス板21を介して互いに固定されている。
【0055】
本実施の形態では、左右位置調整方向A及び上下位置調整方向Cのそれぞれの方向(図1)についてガラス板21の位置が調整されることにより、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置が調整される。ただし、本実施の形態では、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9が一体として移動されるため、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの角度の大幅な調整は独立して行うことはできない。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0056】
このようなレーザビーム装置では、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9がガラス板21を介して互いに固定されているので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を一体として扱うことができ、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置の調整を容易にすることができる。
【0057】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4によるレーザビーム装置を示す上面図である。また、図12は、図11のレーザビーム装置を示す側面図である。さらに、図13は、図11のLDチップ1の光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図であり、図13(a)は速軸方向コリメータ5を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(b)はビーム変換素子6を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(c)は分割用光学素子8を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(d)はシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す図である。
【0058】
分割用光学素子8は、長径方向(x軸方向)についてレーザビームの照射範囲の中間部分にのみ配置されている。従って、各発光点のうち、発光部の中間部分に配置された発光点からの出射ビームのみが分割用光学素子8内を第1分割ビーム11として進行し、発光部の両端部分に配置された残りの発光点からの出射ビームが分割用光学素子8外を第2の分割ビーム12として分割用光学素子8の左右両側(長径方向両側)に分かれて進行する。
【0059】
分割用光学素子8に達するまでのレーザビームの状態は、実施の形態1と同様である(図13(a)及び図13(b))。レーザビームは、第1の分割ビーム11の光路のみが分割用光学素子8によって下方(図13(c)の矢印Pの方向)へ変更されることにより、第1の分割ビーム11と一対の第2の分割ビーム12とに上下に分割される。即ち、レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図13(b)に示す状態から図3(c)に示す状態となる。
【0060】
シフト用光学素子9は、左右両側に分かれた一対の第2の分割ビーム12のうち、一方の第2の分割ビーム12の光路を変更する第1シフト部31と、他方の第2の分割ビーム12の光路を変更する第2シフト部32とを有している。第1シフト部31及び第2シフト部32は、互いに結合されている。
【0061】
第1シフト部31には、互いに平行な平面であるシフト素子ビーム通過面31a,31bが設けられている。一方のシフト素子ビーム通過面31aは一方の第2の分割ビーム12が第1シフト部31内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面31bは一方の第2の分割ビーム12が第1シフト部31外へ出射する出射面とされている。
【0062】
第2シフト部32には、互いに平行な平面であるシフト素子ビーム通過面32a,32bが設けられている。一方のシフト素子ビーム通過面32aは他方の第2の分割ビーム12が第2シフト部32内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面32bは他方の第2の分割ビーム12が第2シフト部32外へ出射する出射面とされている。
【0063】
各シフト素子ビーム通過面31a,31bと、各シフト素子ビーム通過面32a,32bとは、光軸方向に垂直な平面(この例では、鉛直面)に対して互いに逆方向へ傾斜している。また、各シフト素子ビーム通過面31a,31b及び各シフト素子ビーム通過面32a,32bのそれぞれは、短径方向(y軸方向)に垂直な平面(この例では、水平面)に対して垂直になっている。
【0064】
第1の分割ビーム11は、シフト用光学素子9外を進行する。一方の第2の分割ビーム12及び他方の第2の分割ビーム12は、第1シフト部31内及び第2シフト部32内を個別に通過することにより、短径方向(上下方向)について第1の分割ビーム11と重なる位置へそれぞれシフトされる。即ち、一方の第2の分割ビーム12は第1シフト部31内を通過することにより図13(d)の矢印Q1の方向へシフトされ、他方の第2の分割ビーム12は第2シフト部32内を通過することにより図13(d)の矢印Q2の方向へシフトされる。レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図13(c)に示す状態から図3(d)に示す状態となる。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0065】
このようなレーザビーム装置では、第1の分割ビーム11と、長径方向の両側に分かれて生じる一対の第2の分割ビーム12とにレーザビームが分割用光学素子8によって分割され、短径方向について第1の分割ビーム11と重なる位置へシフト用光学素子9によって各第2の分割ビーム12がそれぞれシフトされるので、第2の分割ビーム12をシフトさせる量を実施の形態1に比べて小さくすることができる。従って、シフト用光学素子9の位置や角度の調整をさらに容易にすることができる。また、LDチップ1の歪に伴う、各発光点からの出射ビームの光軸と速軸方向コリメータ5の位置や角度とのずれは、長径方向(x軸方向)について左右対称に生じやすい。従って、レーザビームの長径方向両側の部分を一対の第2の分割ビーム12とすることにより、レーザビームの光軸ずれや歪の大きさが比較的近い部分同士を第2の分割ビーム12としてシフトすることができる。これにより、レーザビームの特性をさらに向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率をさらに向上させることができる。
【0066】
なお、各上記実施の形態では、ビーム変換素子6が用いられているが、ビーム変換素子6はなくてもよい。ただし、通常のLDチップ1では、各発光点の間隔が数百μmであり、出射ビームの遅軸方向の拡がり角が半角で5度から10度の範囲であることから、各発光点からの出射ビームが数mmの伝搬で重なってしまう。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9で各発光点からの出射ビームを分離するための位置調整が難しくなる。また、ビーム変換素子6がないと、各出射ビームをシフトさせる量も極めて小さくなるので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれ角度変化に対しても敏感となり、レーザビームを効率良く集光させるための調整も難しくなる。このことから、分割用光学素子8の前段にビーム変換素子6を配置するのが望ましい。
【0067】
また、各上記実施の形態では、複数の発光点が一直線上に並べられたアレイ型のLDチップがLDチップ1として用いられているが、集光性に異方性を持つレーザビームを照射する光源であればよく、例えば、数個の発光点が並んだミニバーと呼ばれるLDチップや、1個の発光点を有するシングルチップLD、LDスタック等をLDチップ1として用いてもよい。
【0068】
また、各上記実施の形態では、第1の集光レンズ13及び第2の集光レンズ14(2つのシリンドリカルレンズ)によってレーザビームが集光されているが、光軸に対して回転対称な形状とされ長径方向及び短径方向のいずれの方向についても集光可能な1つの集光レンズによってレーザビームを集光するようにしてもよい。
【0069】
また、各上記実施の形態では、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bに対する特別な処理は行われていないが、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bにARコート(Anti Reflection Coating)の処理を行ってもよい。このようにすれば、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を通過するときのレーザビームの損失を小さくすることができる。また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9の全表面にARコートや研磨の処理を行うのではなく、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bのみにARコートや研磨の処理を行うようにすれば、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9の製造コストを低減することができる。
【0070】
また、応力緩衝材を介してLDチップ1をヒートシンク2に取り付けてもよい。このようにすれば、LDチップ1及びヒートシンク2のそれぞれの熱膨張率の違いによって生じる応力(熱応力)を緩和することができ、LDチップ1の破損の防止を図ることができる。
【0071】
また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整は、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を例えばステージやゴニオメータ等に個別に固定して行ってもよい。さらに、ビームパターンや光ファイバ4に対する結合出力等をモニタしながら、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を個別に動かして、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を調整してもよい。分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整後の固定は、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9と支持台との間に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、塗布した接着剤に紫外線をあてて硬化させることにより、行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 LDチップ(レーザダイオード素子)、3 補正装置、5 速軸方向コリメータ、6 ビーム変換素子、7 遅軸方向コリメータ、8 分割用光学素子、9 シフト用光学素子。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザダイオード素子から照射されたレーザビームを集光するレーザビーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横長の発光面から照射されるレーザビームを集光して光ファイバに導光するために、レーザビームの断面形状を小径の円形に近づける補正を行うレーザビームの補正装置が提案されている。レーザビームの補正は、レーザビームを発光面の短手方向についてコリメートした後、光路分割素子によってレーザビームを発光面の長手方向について複数の分割ビームに分割し、光路変更素子によって発光面の短手方向について重なる位置に各分割ビームを変位させることにより、行われる。光路分割素子は、複数の導光板を互いに重ね合わせて構成されている。光路変更素子も、複数の導光板を互いに重ね合わせて構成されている。レーザビームは、光路分割素子の各導光板に部分的に通されることにより複数の分割ビームに分割される。各分割ビームは、光路変更素子の各導光板に個別に通されることにより、発光面の短手方向について互いに重なる位置へそれぞれ変位される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3098200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のレーザビームの補正装置では、光路分割素子や光路変更素子が複数枚の導光板によりそれぞれ構成されているので、構成が複雑になり、コストが増大してしまう。
【0005】
また、レーザビームが光路分割素子の各導光板に部分的に通されることにより分割され、各分割ビームが光路変更素子の各導光板に個別に通されることによりそれぞれ変位されるので、光路分割素子によるレーザビームの分割比率の調整や、光路変更素子による各分割ビームのそれぞれの変位量の調整がしにくくなる。従って、例えばレーザビームが設計値に対してずれている場合には、集光径が大きくなり光ファイバへの導光の効率が低下してしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成とすることができ、しかも光ファイバへの導光の効率を向上させることができるレーザビーム装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーザビーム装置は、長径及び短径を持つ発光部を有し、発光部からレーザビームを照射するレーザダイオード素子、レーザビームを速軸方向についてコリメートする速軸方向コリメータ、速軸方向コリメータの後段に配置され、発光部の長径方向についてレーザビームの一部のみが第1の分割ビームとして内部を進行するとともに、残りのレーザビームが第2の分割ビームとして外部を進行し、第1の分割ビームの光路を変更することにより、レーザビームを第1の分割ビーム及び第2の分割ビームに分割する分割用光学素子、及び分割用光学素子の後段に配置され、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームの発光部の短径方向についての位置を互いに重なる位置とするシフト用光学素子を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るレーザビーム装置では、レーザビームの一部のみが分割用光学素子内を進行することにより、レーザビームが第1の分割ビームと第2の分割ビームとに分割され、第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのいずれか一方がシフト用光学素子内を進行することにより、第1の分割ビームと第2の分割ビームとが短径方向について互いに重なるので、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの構成を、複数の導光板を用いない簡単な構成とすることができる。これにより、コストの低減を図ることができる。また、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの位置や角度を調整することにより、レーザビームの分割比率や第1の分割ビーム及び第2の分割ビームのシフト量を調整することができる。従って、分割用光学素子及びシフト用光学素子のそれぞれの位置や角度の調整により、レーザビームの特性を向上させることができ、光ファイバへの導光の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーザビーム装置を示す上面図である。
【図2】図1のレーザビーム装置を示す側面図である。
【図3】図1のLDチップの光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図である。
【図4】図1のシフト用光学素子を通過した直後のレーザビームの特性を示す模式図である。
【図5】図1の補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバの集光性能の限界とを比較するグラフである。
【図6】図1の分割用光学素子及びシフト用光学素子を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバの集光性能の限界とを比較するグラフである。
【図7】この発明の実施の形態2によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。
【図8】図7のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。
【図10】図9のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるレーザビーム装置を示す上面図である。
【図12】図11のレーザビーム装置を示す側面図である。
【図13】図11のLDチップの光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーザビーム装置を示す上面図である。また、図2は、図1のレーザビーム装置を示す側面図である。図において、LDチップ(光源)1は、互いに垂直な速軸及び遅軸を持つレーザダイオード素子である。また、LDチップ1は、レーザビームを照射する発光部を有している。LDチップ1の発光部から照射されるレーザビームの光軸方向は、速軸方向及び遅軸方向のいずれにも垂直な方向とされている。LDチップ1の発光部から照射されるレーザビームは、速軸方向成分の特性と遅軸方向成分の特性とが互いに異なるレーザビーム、即ち集光性に異方性を持つレーザビームとなっている。LDチップ1の発光部は、図示しない給電装置からLDチップ1への給電によりレーザビームを照射する。
【0011】
LDチップ1の発光部は、LDチップ1の遅軸方向へ並べられた複数(この例では、19個)の発光点により構成されている。即ち、LDチップ1は、LDチップ1の遅軸方向に沿った直線上に各発光点が並んだアレイ型(バー型)の光源とされている。従って、LDチップ1の発光部の形状は、各発光点が並べられた方向(遅軸方向)について長径を持ち、遅軸方向及び光軸方向のいずれに対しても垂直な方向について短径(長径よりも短い径)を持つ横長の形状とされている。即ち、LDチップ1の発光部の長径方向はLDチップ1の遅軸方向と一致し、LDチップ1の発光部の短径方向はLDチップ1の速軸方向と一致している。
【0012】
この例では、LDチップ1の発光部の長径方向が水平方向(x軸方向)と一致しLDチップ1の発光部の短径方向が鉛直方向(y軸方向)と一致するようにLDチップ1が配置されている。また、LDチップ1の発光部は、各発光点からの複数の出射ビームをレーザビームとして照射する。
【0013】
LDチップ1は、ヒートシンク2に取り付けられている。ヒートシンク2は、図示しない冷却装置に取り付けられている。冷却装置としては、例えば水冷式や空冷式の冷却装置等が用いられている。レーザビームの照射に伴ってLDチップ1に発生する熱は、ヒートシンク2を介して冷却装置へ伝達される。これにより、LDチップ1の温度上昇が抑制される。
【0014】
LDチップ1の発光部から照射されたレーザビームは、補正装置3によって補正されて集光された後、光ファイバ4へ導光される。なお、レーザビーム装置は、LDチップ1及び補正装置3を有している。
【0015】
補正装置3は、速軸方向コリメータ(FAC:Fast Axis Collimator)5、ビーム変換素子6、遅軸方向コリメータ(SAC:Slow Axis Collimator)7、分割用光学素子8、シフト用光学素子9及び集光装置10を有している。LDチップ1の発光部からのレーザビームは、光軸方向について、速軸方向コリメータ5、ビーム変換素子6、遅軸方向コリメータ7、分割用光学素子8、シフト用光学素子9及び集光装置10の順に進行し、光ファイバ4に至る。
【0016】
図3は、図1のLDチップ1の光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図であり、図3(a)は速軸方向コリメータ5を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(b)はビーム変換素子6を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(c)は分割用光学素子8を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図3(d)はシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す図である。
【0017】
各発光点からの出射ビームは、図3(a)に示すように、LDチップ1の発光部の長径方向(以下、単に「長径方向」という)に沿って並んでいる。また、各発光点からの出射ビームのそれぞれの断面形状は、図3(a)に示すように、LDチップ1の遅軸方向(長径方向)に沿った横長の形状となっている。
【0018】
速軸方向コリメータ5は、LDチップ1の発光部からのレーザビームの速軸方向成分をコリメート(平行化)する。従って、各発光点からの出射ビームは、速軸方向コリメータ5内を通過することにより、LDチップ1の発光部の短径方向(以下、単に「短径方向」という)についてそれぞれコリメートされる。
【0019】
ビーム変換素子6は、図1及び図2に示すように、速軸方向コリメータ5の後段(即ち、光軸方向について、速軸方向コリメータ5よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、ビーム変換素子6は、各発光点から速軸方向コリメータ5を通過した出射ビームの径(ビーム径)及び拡がり角(ビーム拡がり角)のそれぞれについて、光軸に垂直でかつ互いに垂直な2つの方向の成分を入れ替える。従って、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することにより、各発光点からの出射ビームのビーム径の長径方向(x軸方向)の値と短径方向(y軸方向)の値とが入れ替わるとともに、各発光点からの出射ビームのビーム拡がり角の長径方向(x軸方向)の値と短径方向(y軸方向)の値とが入れ替わる。
【0020】
即ち、各発光点からの出射ビームがビーム変換素子6に入射する前において、x軸方向のビーム径の値をwx、y軸方向のビーム径の値をwyとし、x軸方向のビーム拡がり角の値をθx、y軸方向のビーム拡がり角の値をθyとすると、各出射ビームがビーム変換素子6から出射された後には、x軸方向のビーム径の値がwy、y軸方向のビーム径の値がwxとなり、x軸方向のビーム拡がり角の値がθy、y軸方向のビーム拡がり角の値がθxとなる。
【0021】
各発光点からの出射ビームの状態は、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することによって各出射ビームの長径方向成分(遅軸方向成分)と短径方向成分(速軸方向成分)とが入れ替わり、図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態に変換される。従って、レーザビームがビーム変換素子6内を通過することにより、各発光点からの出射ビームのそれぞれの断面形状が、図3(b)に示すように、LDチップ1の速軸方向(短径方向)に沿った縦長の形状となる。ビーム変換素子6としては、例えば、独国LIMO社製の光学素子「BTS」や独国INGENERIC社製の光学素子「Vステップ素子」等が用いられる。
【0022】
遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6の後段(即ち、光軸方向について、ビーム変換素子6よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6内を通過したレーザビームの遅軸方向成分をコリメートする。即ち、遅軸方向コリメータ7は、ビーム変換素子6内を通過した各発光点からの出射ビームのそれぞれの遅軸方向成分をコリメートする。
【0023】
ここで、ビーム変換素子6内を通過したレーザビームは、速軸方向成分と遅軸方向成分とが入れ替わった状態になっている。従って、遅軸方向コリメータ7に達する各出射ビームの遅軸方向は、短径方向と一致している。このことから、レーザビームは、遅軸方向コリメータ7内を通過することにより短径方向についてコリメートされる。
【0024】
分割用光学素子8は、遅軸方向コリメータ7の後段(即ち、光軸方向について、遅軸方向コリメータ7よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、分割用光学素子8には、図2に示すように、互いに平行な一対の平面である分割素子ビーム通過面8a,8bと、各分割素子ビーム通過面8a,8bのいずれにも垂直な一対の分割素子側面8c,8dとが設けられている。即ち、分割用光学素子8は、長方形断面を持つ平行平面基板とされている。
【0025】
一方の分割素子ビーム通過面8aはレーザビームが分割用光学素子8内に入射する入射面とされ、他方の分割素子ビーム通過面8bはレーザビームが分割用光学素子8外へ出射する出射面とされている。また、各分割素子ビーム通過面8a,8bは、短径方向に垂直な平面(この例では、水平面)に対して傾斜し、かつ長径方向に垂直な平面(この例では、光軸に沿った鉛直面)に対して垂直になっている。
【0026】
レーザビームの進行方向は、分割用光学素子8内にレーザビームが入射すると、分割用光学素子8の内外屈折率の違いとレーザビームの進行方向に対する一方の分割素子ビーム通過面(入射面)8aの傾きとにより、短径方向(上下方向)について所定の角度だけ変更される。また、レーザビームの進行方向は、分割用光学素子8内から外部へレーザビームが出射すると、分割用光学素子8の内外屈折率の違いとレーザビームの進行方向に対する他方の分割素子ビーム通過面(出射面)8bの傾きとにより、短径方向(上下方向)についてビーム入射時の変更角度を打ち消す角度だけ変更される。この例では、分割用光学素子8内へのレーザビームの入射によりレーザビームの進行方向が下方へ変わり、分割用光学素子8内から外部へのレーザビームの出射によりレーザビームの進行方向がもとの方向へ戻る。
【0027】
また、分割用光学素子8は、レーザビームの照射範囲の一部にのみ重なるように長径方向へずらして配置されている。これにより、遅軸方向コリメータ7内を通過したレーザビームの長径方向についての一部のみ(即ち、各発光点からの出射ビームのうち、一部の出射ビームのみ)が分割用光学素子8内を第1の分割ビーム11として進行し、分割用光学素子8の範囲から外れた残りのレーザビーム(即ち、各発光点からの出射ビームのうち、残りの出射ビーム)が分割用光学素子8外を第2の分割ビーム12として進行する。
【0028】
第1の分割ビーム11は、分割用光学素子8内への入射により進行方向が変更された状態で分割用光学素子8内を進行しながら短径方向(上下方向)について(この例では、下方へ)シフト(変位)される。一方、第2の分割ビーム12は、進行方向が変更されずにそのまま維持されながら、分割用光学素子8外を進行する。第1の分割ビーム11の進行方向は、第1の分割ビーム11が下方へシフトされた後に分割用光学素子8内から出射されることにより、第2の分割ビーム12の進行方向と同一となる。これにより、レーザビームは、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とに上下に分割される。
【0029】
即ち、分割用光学素子8は、レーザビームの一部である第1の分割ビーム11の光路を変更し、分割用光学素子8外を進行する残りのレーザビームである第2の分割ビーム12の光路から第1の分割ビーム11の光路を分離することにより、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とにレーザビームを分割する。
【0030】
分割用光学素子8の後段を進行するレーザビームの状態は、図3(c)に示すように、各発光点からの出射ビームのうち、第1の分割ビーム11に含まれる出射ビームのみが下方(図3(c)の矢印Pの方向)へシフトされた状態となっている。レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図3(b)に示す状態から図3(c)に示す状態となる。
【0031】
分割用光学素子8は、長径方向に沿った方向(左右位置調整方向)A(図1)へ変位可能になっている。また、分割用光学素子8は、短径方向に垂直な平面(水平面)に対する分割素子ビーム通過面8a,8bの傾斜角度が変化する方向(上下シフト量調整方向)B(図2)へ回動可能になっている。従って、左右位置調整方向Aに沿った分割用光学素子8の変位により、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との比率が調整され、上下シフト量調整方向Bに沿った分割用光学素子8の回動により、第1の分割ビーム11の下方へのシフト量が調整される。
【0032】
シフト用光学素子9は、分割用光学素子8の後段(即ち、光軸方向について、分割用光学素子8よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、シフト用光学素子9には、図1に示すように、互いに平行な一対の平面であるシフト素子ビーム通過面9a,9bと、各シフト素子ビーム通過面9a,9bのいずれにも垂直な一対のシフト素子側面9c,9dとが設けられている。即ち、シフト用光学素子9は、長方形断面を持つ平行平面基板とされている。
【0033】
一方のシフト素子ビーム通過面9aはレーザビームがシフト用光学素子9内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面9bはレーザビームがシフト用光学素子9外へ出射する出射面とされている。また、各シフト素子ビーム通過面9a,9bは、光軸方向に垂直な平面(この例では、鉛直面)に対して傾斜し、かつ短径方向に垂直な平面(この例では、水平面)に対して垂直になっている。
【0034】
レーザビームの進行方向は、シフト用光学素子9内にレーザビームが入射すると、分割用光学素子8の原理と同様に、長径方向(左右方向)について所定の角度だけ変更される。また、レーザビームの進行方向は、シフト用光学素子9内から外部へレーザビームが出射すると、分割用光学素子8の原理と同様に、長径方向(左右方向)についてビーム入射時の変更角度を打ち消す角度だけ変更される。
【0035】
また、シフト用光学素子9は、第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のうち、第2の分割ビーム11のみがシフト用光学素子9に入射するように短径方向(上下方向)へずらして配置されている。これにより、分割用光学素子8によって生じた第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のうち、第2の分割ビーム11のみがシフト用光学素子9内を進行し、第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9外を進行する。
【0036】
第2の分割ビーム12は、シフト用光学素子9内への入射により進行方向が変更された状態でシフト用光学素子9内を進行しながら長径方向(左右方向)についてシフト(変位)される。一方、第1の分割ビーム11は、進行方向が変更されずにそのまま維持されながら、シフト用光学素子9外を進行する。第2の分割ビーム12の進行方向は、第2の分割ビーム12が長径方向へシフトされた後にシフト用光学素子9内から出射されることにより、第1の分割ビーム11の進行方向と同一となる。第2の分割ビーム12は、シフト用光学素子9内を通過することにより、短径方向(上下方向)について第1の分割ビーム11と重なる位置へシフトされる。
【0037】
即ち、シフト用光学素子9は、第2の分割ビーム12の光路のみを変更することにより、第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12の短径方向(上下方向)についての位置を互いに重なる位置とする。
【0038】
シフト用光学素子9の後段を進行するレーザビームの状態は、図3(d)に示すように、各発光点からの出射ビームのうち、第2の分割ビーム12に含まれる出射ビームのみが長径方向(図3(d)の矢印Qの方向)へシフトされることにより、短径方向(上下方向)について第2の分割ビーム12が第1の分割ビーム11と重なった状態となっている。レーザビームの状態は、レーザビームがシフト用光学素子9の位置を通過することにより、図3(c)に示す状態から図3(d)に示す状態となる。
【0039】
シフト用光学素子9は、短径方向(上下方向)に沿った方向(上下位置調整方向)C(図2)へ変位可能になっている。また、シフト用光学素子9は、長径方向に垂直な平面(光軸に沿った鉛直面)に対するシフト素子ビーム通過面9a,9bの傾斜角度が変化する方向(左右シフト量調整方向)D(図1)へ回動可能になっている。従って、上下位置調整方向Cに沿ったシフト用光学素子9の変位により、シフトさせる第2の分割ビームの量が調整され、左右シフト量調整方向Dに沿ったシフト用光学素子9の回動により、第2の分割ビームの長径方向へのシフト量が調整される。
【0040】
集光装置10は、シフト用光学素子9の後段(即ち、光軸方向について、シフト用光学素子9よりもLDチップ1から離れた位置)に配置されている。また、集光装置10は、シフト用光学素子9からのレーザビームを長径方向(左右方向)について集光する第1の集光レンズ(第1の集光光学素子)13と、シフト用光学素子9からのレーザビームを短径方向(上下方向)について集光する第2の集光レンズ(第2の集光光学素子)14とを有している。第2の集光レンズ14は、第1の集光レンズ13の後段に配置されている。この例では、第1の集光レンズ13及び第2の集光レンズ14のそれぞれがシリンドリカルレンズとされている。
【0041】
シフト用光学素子9からのレーザビームは、集光装置10を通過することにより集光され、光ファイバ4へ導光される。
【0042】
図4は、図1のシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す模式図である。レーザビームの長径方向(x軸方向)及び短径方向(y軸方向)のそれぞれの拡がり角が十分小さい場合には、y軸方向についての第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との間隔Δyと、x軸方向についての第1及び第2の分割ビーム11,12の横幅Δxとがそれぞれ小さいほど、レーザビームの特性が向上し、光ファイバ4への導光の効率が向上する。従って、横幅Δx及び間隔Δyのそれぞれが小さくなるように、左右位置調整方向A及び上下シフト量調整方向Bのそれぞれへの分割用光学素子8の位置及び角度の調整と、上下位置調整方向C及び左右シフト量調整方向Dのそれぞれへのシフト用光学素子9の位置及び角度の調整とを行うことにより、レーザビームの特性が向上する。
【0043】
図5は、図1の補正装置3によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバ4の集光性能の限界とを比較するグラフである。また、図6は、図1の分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性と光ファイバ4の集光性能の限界とを比較するグラフである。なお、図5及び図6では、レーザビームの特性を破線で示し、光ファイバ4の集光性能の限界を実線で示している。
【0044】
レーザビームの特性(ビーム品質)は、集光径wと拡がり角θとの積(w×θ)に基づいて求められる。また、光ファイバ4の集光性能の限界は、光ファイバ4の許容開口数NA(Numerical Aperture)と光ファイバ4のコア径dとの積(NA×d)に基づいて求められる。
【0045】
補正装置3によって補正されたレーザビームの特性は、図5に示すように、x軸方向(長径方向)及びy軸方向(短径方向)のいずれの方向についても光ファイバ4の集光性能の限界の範囲内に収まっている。これに対して、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームの特性は、図6に示すように、y軸方向(短径方向)については光ファイバ4の集光性能の限界の範囲内に収まっているが、x軸方向(長径方向)については一部が光ファイバ4の集光性能の限界の範囲から外れている。
【0046】
従って、レーザビームの光ファイバ4への導光の効率は、補正装置3によって補正されたレーザビームのほうが、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を除いた補正装置によって補正されたレーザビームよりも良いことが分かる。
【0047】
このようなレーザビーム装置では、レーザビームの一部のみが分割用光学素子8内を進行することにより、レーザビームが第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とに分割され、第2の分割ビームのみがシフト用光学素子9内を進行することにより、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12とが短径方向について互いに重なるので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの構成を、複数の導光板を用いない簡単な構成とすることができる。これにより、コストの低減を図ることができる。また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を調整することにより、レーザビームの分割比率や第1の分割ビーム11及び第2の分割ビーム12のシフト量を調整することができる。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整により、レーザビームの特性を向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率を向上させることができる。
【0048】
また、レーザビームの遅軸方向成分をコリメートする遅軸方向コリメータ7が分割用光学素子8の前段に配置されているので、レーザビームが分割用光学素子8に入射する前にレーザビームの拡がり角を小さくすることができ、第1の分割ビーム11と第2の分割ビーム12との光路差によるビームの拡がりの差を小さくすることができる。これにより、レーザビームの特性をさらに向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率をさらに向上させることができる。
【0049】
また、レーザビームの径及び拡がり角のそれぞれについて、長径方向成分と短径方向成分とを入れ替えるビーム変換素子6が分割用光学素子の前段に配置されているので、互いに異なる発光点からの出射ビームの重畳を容易に避けることができ、レーザビームの特性をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、上記の例では、分割用光学素子8内を通過した第1の分割ビーム11がシフト用光学素子9外を進行し、分割用光学素子8外を通過した第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9内を進行するようになっているが、分割用光学素子8内を通過した第1の分割ビーム11がシフト用光学素子9内を進行し、分割用光学素子8外を通過した第2の分割ビーム12がシフト用光学素子9外を進行するように、シフト用光学素子9を配置してもよい。この場合、第1の分割ビーム11の光路がシフト用光学素子9で変更される。
【0051】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。また、図8は、図7のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。分割用光学素子8に設けられた一対の分割素子側面8c,8dは、図8に示すように、各分割素子ビーム通過面8a,8bのそれぞれに対して傾斜している。従って、分割用光学素子8は、平行四辺形の断面を持つ平行平面基板とされている。分割用光学素子8は、各分割素子側面8c,8dがレーザビームの光軸と平行になるように配置されている。
【0052】
シフト用光学素子9に設けられた一対のシフト素子側面9c,9dは、図7に示すように、各シフト素子ビーム通過面9a,9bのそれぞれに対して傾斜している。従って、シフト用光学素子9は、平行四辺形の断面を持つ平行平面基板とされている。シフト用光学素子9は、各シフト素子側面9c,9dがレーザビームの光軸と平行になるように配置されている。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0053】
このようなレーザビーム装置では、一対の分割素子側面8c,8dが各分割素子ビーム通過面8a,8bのそれぞれに対して傾斜し、一対のシフト素子側面9c,9dが各シフト素子ビーム通過面9a,9bのそれぞれに対して傾斜しているので、レーザビームの光軸に各分割素子側面8c,8dを合わせながら分割用光学素子8を配置することができ、レーザビームの光軸に各シフト素子側面9c,9dを合わせながらシフト用光学素子9を配置することができる。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を容易に調整することができる。また、レーザビームの光軸に垂直な方向についての分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの寸法を小さくすることができ、レーザビーム装置全体の小形化を図ることができる。
【0054】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3によるレーザビーム装置の要部を示す上面図である。また、図10は、図9のレーザビーム装置の要部を示す側面図である。図において、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9は、共通のガラス板(支持台)21に固定されている。即ち、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9は、ガラス板21を介して互いに固定されている。
【0055】
本実施の形態では、左右位置調整方向A及び上下位置調整方向Cのそれぞれの方向(図1)についてガラス板21の位置が調整されることにより、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置が調整される。ただし、本実施の形態では、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9が一体として移動されるため、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの角度の大幅な調整は独立して行うことはできない。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0056】
このようなレーザビーム装置では、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9がガラス板21を介して互いに固定されているので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を一体として扱うことができ、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置の調整を容易にすることができる。
【0057】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4によるレーザビーム装置を示す上面図である。また、図12は、図11のレーザビーム装置を示す側面図である。さらに、図13は、図11のLDチップ1の光軸に垂直な断面におけるレーザビームの特性を示す模式図であり、図13(a)は速軸方向コリメータ5を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(b)はビーム変換素子6を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(c)は分割用光学素子8を通過した直後のレーザビームの特性を示す図、図13(d)はシフト用光学素子9を通過した直後のレーザビームの特性を示す図である。
【0058】
分割用光学素子8は、長径方向(x軸方向)についてレーザビームの照射範囲の中間部分にのみ配置されている。従って、各発光点のうち、発光部の中間部分に配置された発光点からの出射ビームのみが分割用光学素子8内を第1分割ビーム11として進行し、発光部の両端部分に配置された残りの発光点からの出射ビームが分割用光学素子8外を第2の分割ビーム12として分割用光学素子8の左右両側(長径方向両側)に分かれて進行する。
【0059】
分割用光学素子8に達するまでのレーザビームの状態は、実施の形態1と同様である(図13(a)及び図13(b))。レーザビームは、第1の分割ビーム11の光路のみが分割用光学素子8によって下方(図13(c)の矢印Pの方向)へ変更されることにより、第1の分割ビーム11と一対の第2の分割ビーム12とに上下に分割される。即ち、レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図13(b)に示す状態から図3(c)に示す状態となる。
【0060】
シフト用光学素子9は、左右両側に分かれた一対の第2の分割ビーム12のうち、一方の第2の分割ビーム12の光路を変更する第1シフト部31と、他方の第2の分割ビーム12の光路を変更する第2シフト部32とを有している。第1シフト部31及び第2シフト部32は、互いに結合されている。
【0061】
第1シフト部31には、互いに平行な平面であるシフト素子ビーム通過面31a,31bが設けられている。一方のシフト素子ビーム通過面31aは一方の第2の分割ビーム12が第1シフト部31内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面31bは一方の第2の分割ビーム12が第1シフト部31外へ出射する出射面とされている。
【0062】
第2シフト部32には、互いに平行な平面であるシフト素子ビーム通過面32a,32bが設けられている。一方のシフト素子ビーム通過面32aは他方の第2の分割ビーム12が第2シフト部32内に入射する入射面とされ、他方のシフト素子ビーム通過面32bは他方の第2の分割ビーム12が第2シフト部32外へ出射する出射面とされている。
【0063】
各シフト素子ビーム通過面31a,31bと、各シフト素子ビーム通過面32a,32bとは、光軸方向に垂直な平面(この例では、鉛直面)に対して互いに逆方向へ傾斜している。また、各シフト素子ビーム通過面31a,31b及び各シフト素子ビーム通過面32a,32bのそれぞれは、短径方向(y軸方向)に垂直な平面(この例では、水平面)に対して垂直になっている。
【0064】
第1の分割ビーム11は、シフト用光学素子9外を進行する。一方の第2の分割ビーム12及び他方の第2の分割ビーム12は、第1シフト部31内及び第2シフト部32内を個別に通過することにより、短径方向(上下方向)について第1の分割ビーム11と重なる位置へそれぞれシフトされる。即ち、一方の第2の分割ビーム12は第1シフト部31内を通過することにより図13(d)の矢印Q1の方向へシフトされ、他方の第2の分割ビーム12は第2シフト部32内を通過することにより図13(d)の矢印Q2の方向へシフトされる。レーザビームの状態は、レーザビームが分割用光学素子8の位置を通過することにより、図13(c)に示す状態から図3(d)に示す状態となる。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0065】
このようなレーザビーム装置では、第1の分割ビーム11と、長径方向の両側に分かれて生じる一対の第2の分割ビーム12とにレーザビームが分割用光学素子8によって分割され、短径方向について第1の分割ビーム11と重なる位置へシフト用光学素子9によって各第2の分割ビーム12がそれぞれシフトされるので、第2の分割ビーム12をシフトさせる量を実施の形態1に比べて小さくすることができる。従って、シフト用光学素子9の位置や角度の調整をさらに容易にすることができる。また、LDチップ1の歪に伴う、各発光点からの出射ビームの光軸と速軸方向コリメータ5の位置や角度とのずれは、長径方向(x軸方向)について左右対称に生じやすい。従って、レーザビームの長径方向両側の部分を一対の第2の分割ビーム12とすることにより、レーザビームの光軸ずれや歪の大きさが比較的近い部分同士を第2の分割ビーム12としてシフトすることができる。これにより、レーザビームの特性をさらに向上させることができ、光ファイバ4への導光の効率をさらに向上させることができる。
【0066】
なお、各上記実施の形態では、ビーム変換素子6が用いられているが、ビーム変換素子6はなくてもよい。ただし、通常のLDチップ1では、各発光点の間隔が数百μmであり、出射ビームの遅軸方向の拡がり角が半角で5度から10度の範囲であることから、各発光点からの出射ビームが数mmの伝搬で重なってしまう。従って、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9で各発光点からの出射ビームを分離するための位置調整が難しくなる。また、ビーム変換素子6がないと、各出射ビームをシフトさせる量も極めて小さくなるので、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれ角度変化に対しても敏感となり、レーザビームを効率良く集光させるための調整も難しくなる。このことから、分割用光学素子8の前段にビーム変換素子6を配置するのが望ましい。
【0067】
また、各上記実施の形態では、複数の発光点が一直線上に並べられたアレイ型のLDチップがLDチップ1として用いられているが、集光性に異方性を持つレーザビームを照射する光源であればよく、例えば、数個の発光点が並んだミニバーと呼ばれるLDチップや、1個の発光点を有するシングルチップLD、LDスタック等をLDチップ1として用いてもよい。
【0068】
また、各上記実施の形態では、第1の集光レンズ13及び第2の集光レンズ14(2つのシリンドリカルレンズ)によってレーザビームが集光されているが、光軸に対して回転対称な形状とされ長径方向及び短径方向のいずれの方向についても集光可能な1つの集光レンズによってレーザビームを集光するようにしてもよい。
【0069】
また、各上記実施の形態では、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bに対する特別な処理は行われていないが、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bにARコート(Anti Reflection Coating)の処理を行ってもよい。このようにすれば、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を通過するときのレーザビームの損失を小さくすることができる。また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9の全表面にARコートや研磨の処理を行うのではなく、分割素子ビーム通過面8a,8b及びシフト素子ビーム通過面9a,9b,31a,31b,32a,32bのみにARコートや研磨の処理を行うようにすれば、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9の製造コストを低減することができる。
【0070】
また、応力緩衝材を介してLDチップ1をヒートシンク2に取り付けてもよい。このようにすれば、LDチップ1及びヒートシンク2のそれぞれの熱膨張率の違いによって生じる応力(熱応力)を緩和することができ、LDチップ1の破損の防止を図ることができる。
【0071】
また、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整は、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を例えばステージやゴニオメータ等に個別に固定して行ってもよい。さらに、ビームパターンや光ファイバ4に対する結合出力等をモニタしながら、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9を個別に動かして、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度を調整してもよい。分割用光学素子8及びシフト用光学素子9のそれぞれの位置や角度の調整後の固定は、分割用光学素子8及びシフト用光学素子9と支持台との間に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、塗布した接着剤に紫外線をあてて硬化させることにより、行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 LDチップ(レーザダイオード素子)、3 補正装置、5 速軸方向コリメータ、6 ビーム変換素子、7 遅軸方向コリメータ、8 分割用光学素子、9 シフト用光学素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長径及び短径を持つ発光部を有し、上記発光部からレーザビームを照射するレーザダイオード素子、
上記レーザビームを速軸方向についてコリメートする速軸方向コリメータ、
上記速軸方向コリメータの後段に配置され、上記発光部の長径方向について上記レーザビームの一部のみが第1の分割ビームとして内部を進行するとともに、残りの上記レーザビームが第2の分割ビームとして外部を進行し、上記第1の分割ビームの光路を変更することにより、上記レーザビームを上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームに分割する分割用光学素子、及び
上記分割用光学素子の後段に配置され、上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームの上記発光部の短径方向についての位置を互いに重なる位置とするシフト用光学素子
を備えていることを特徴とするレーザビーム装置。
【請求項2】
上記分割用光学素子の前段に配置され、上記レーザビームを遅軸方向についてコリメートする遅軸方向コリメータ
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム装置。
【請求項3】
上記分割用光学素子の前段に配置され、上記レーザビームの径及び拡がり角のそれぞれについて、上記発光部の長径方向についての成分と上記発光部の短径方向についての成分とを入れ替えるビーム変換素子
をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザビーム装置。
【請求項4】
上記分割用光学素子及び上記シフト用光学素子は、互いに固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレーザビーム装置。
【請求項1】
長径及び短径を持つ発光部を有し、上記発光部からレーザビームを照射するレーザダイオード素子、
上記レーザビームを速軸方向についてコリメートする速軸方向コリメータ、
上記速軸方向コリメータの後段に配置され、上記発光部の長径方向について上記レーザビームの一部のみが第1の分割ビームとして内部を進行するとともに、残りの上記レーザビームが第2の分割ビームとして外部を進行し、上記第1の分割ビームの光路を変更することにより、上記レーザビームを上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームに分割する分割用光学素子、及び
上記分割用光学素子の後段に配置され、上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームのいずれか一方の光路を変更することにより、上記第1の分割ビーム及び上記第2の分割ビームの上記発光部の短径方向についての位置を互いに重なる位置とするシフト用光学素子
を備えていることを特徴とするレーザビーム装置。
【請求項2】
上記分割用光学素子の前段に配置され、上記レーザビームを遅軸方向についてコリメートする遅軸方向コリメータ
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム装置。
【請求項3】
上記分割用光学素子の前段に配置され、上記レーザビームの径及び拡がり角のそれぞれについて、上記発光部の長径方向についての成分と上記発光部の短径方向についての成分とを入れ替えるビーム変換素子
をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザビーム装置。
【請求項4】
上記分割用光学素子及び上記シフト用光学素子は、互いに固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレーザビーム装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−169969(P2011−169969A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31390(P2010−31390)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 省エネルギーレーザ加工のための高効率ファイバ結合型レーザ光源の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 省エネルギーレーザ加工のための高効率ファイバ結合型レーザ光源の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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