レーザレーダ装置
【課題】検出物体の検出精度を高め得るレーザレーダ装置を提供する。
【解決手段】所定の回動角度において検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、この受光波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する、2つの波形が検出されるとき、この遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の回動方向長さが演算されて測定される。
【解決手段】所定の回動角度において検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、この受光波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する、2つの波形が検出されるとき、この遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の回動方向長さが演算されて測定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を用いて検出物体までの距離や方位を検出するレーザレーダ装置に関する技術として、下記特許文献1に示すレーザレーダ走査装置が知られている。このレーザレーダ走査装置では、レーザダイオードからレーザ光が出力されると、スリットを通過し光アイソレータを透過したレーザ光が凹面鏡によって略平行光線に変換され、空間に向けて照射される。このレーザ光が検出物体によって反射されてその反射光の一部が再び凹面鏡に入射されると、この反射光は、凹面鏡にて光アイソレータへ向けて集光するように反射されて、当該光アイソレータにてフォトダイオードへ向けて反射される。これにより、フォトダイオードが入力されたレーザ光に応じた電気信号を出力することで、レーザ光を出力してからその反射光を検出するまでの時間を測定することによって、検出物体までの距離を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置内から外方の空間に向けて照射されるレーザ光は、略平行光に変換されてはいるものの、その光軸に直交する断面の径(以下、レーザスポット径ともいう)が遠距離ほど徐々に大きくなるように広がってしまう。そのため、レーザの発光面が極小に設定されていても、例えば、30m先では20〜30cmほどのレーザスポット径になってしまう場合がある。
【0005】
レーザレーダ装置では、検出物体からの反射光の光量しか検出しないため、例えば、第1の検出物体と、この第1の検出物体よりも大きさが大きく反射率が低い第2の検出物体とからの反射光量が等しい場合には、双方の大きさの違いを認識することが困難である。このため、本来検出不要な大きさの物体、例えば、小鳥や落ち葉であっても検出してしまう可能性があり、レーザスポット径が大きくなる遠方の検出物体では、この現象がさらに顕著になる。
【0006】
また、レーザ光の出射方向を変化させて周囲の検出物体からの反射光を検出する場合、遠方の検出物体に対してはレーザ走査間隔が大きくなる。そのため、例えば、レーザ光の発光タイミングを0.25°毎で変化させる場合、30m先ではレーザ走査間隔が約13cmになることから、小さな検出物体であっても出射方向変化前後にて同距離での反射光が検出されると当該検出物体の大きさが約26cmとして認識されてしまう。このように、発光タイミングによる誤差(角度分解能による誤差)やレーザスポット径の広がりによる誤差のために、本来検出不要な大きさの物体を検出してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、検出物体の検出精度を高め得るレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のレーザレーダ装置では、レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を波形として検出する光検出手段と、所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、かつ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、を備えたレーザレーダ装置であって、所定の回動角度において前記光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合にこの波形をその回動角度の背景波形として設定する設定手段と、遠距離側の波形の前記検出時間がその回動角度における前記背景波形の前記検出時間に相当する、2つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と前記背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定する測定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記遠距離側の波形の振幅値と前記背景波形の振幅値との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と前記背景波形が前記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段により測定された前記検出物体の大きさが検出対象外である場合にこの検出物体の検出を無効にする無効手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載のレーザレーダ装置において、前記検出対象となる前記検出物体の大きさは、前記距離測定手段により測定される距離に応じて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記距離測定手段による前記検出物体までの測定距離での前記レーザ光の断面寸法を演算する断面寸法演算手段を備え、前記検出物体の一部により第1の回動角度にて前記2つの波形が前記光検出手段により検出され、この検出物体の残部により前記第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、前記1つの波形が検出される回動角度の数と、前記2つの波形の前記比率と、前記断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さを測定することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載のレーザレーダ装置において、前記断面寸法演算手段は、前記レーザ光の広がりに応じて前記測定距離での前記断面寸法を演算することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、前記測定手段は、前記複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と前記遠距離側の波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、前記2つ以上の閾値と前記背景波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、前記第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8または9に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、前記第1遠距離側面積および前記第1背景側面積を演算することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項10に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、前記第1遠距離側面積を、当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する前記判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算することを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、前記測定手段は、前記複数の閾値のうちの2つの閾値と前記遠距離側の波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、前記2つの閾値と前記背景波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項12に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、前記第2遠距離側面積および前記第2背景側面積を演算することを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明は、請求項13に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、前記第2遠距離側面積を、当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する前記判定用距離を全長とし前記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明では、所定の回動角度において光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、設定手段により、この波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の波形の検出時間がその回動角度における背景波形の検出時間に相当する、2つの波形が光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と背景波形との比率に基づいて、測定手段により、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0023】
所定の回動角度において光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出されると、この波形は、常にその場所に位置する壁などの物体(以下、単に背景ともいう)からの反射光によるものと推定できる。また、2つの波形が検出される場合とは、出射されたレーザ光の一部が検出物体にて反射されて近距離側の波形として検出された後に、そのレーザ光の残部が出射方向後方の物体にて反射されて遠距離側の波形として検出される場合である。
【0024】
そのため、2つの波形が検出されるときに遠距離側の波形の検出時間がその回動角度における背景波形の検出時間に相当する場合には、出射されたレーザ光は、その一部が検出物体にて反射され、その残部が検出物体よりも遠距離にある背景にて反射されたことが推定される。この場合、近距離側である検出物体がレーザ光の光軸に直交する断面(以下、スポット断面ともいう)に占める面積が小さくなるほど、すなわち検出物体が小さいほど、遠距離側の波形は、背景波形に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさを測定することができる。
したがって、スポット断面よりも小さな検出物体の大きさを測定することができるので、検出物体の検出精度を高めることができる。
【0025】
請求項2の発明では、測定手段により、遠距離側の波形の振幅値と背景波形の振幅値との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。このように両波形の振幅値の比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を演算することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0026】
請求項3の発明では、測定手段により、遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0027】
検出物体がスポット断面に占める面積が小さくなるほど、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間は、背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を演算することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0028】
請求項4の発明では、測定手段により測定された検出物体の大きさが検出対象外である場合に、この検出物体の検出が無効手段により無効となるので、検出不要な大きさの物体の検出を防止することができる。
【0029】
請求項5の発明では、検出対象となる検出物体の大きさは、距離測定手段により測定される距離に応じて設定されるため、例えば、遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きく設定することで、所望の大きさの検出物体を検出するとともに、検出不要な大きさの物体の検出を確実に防止することができる。
【0030】
請求項6の発明では、検出物体の一部により第1の回動角度にて2つの波形が検出され、この検出物体の残部により第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が検出されるとき、1つの波形が検出される回動角度の数と、2つの波形の比率と、レーザ光の断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さ(以下、回動方向長さともいう)が測定される。
【0031】
検出物体の回動方向長さがスポット断面の回動方向長さよりも十分に長い場合、検出物体の回動方向中央部(以下、全照射部ともいう)では、その回動角度におけるスポット断面の全てが照射される。また、検出物体の回動方向端部(以下、一部照射部ともいう)では、スポット断面の全てが照射される場合を除き、その回動角度におけるスポット断面の一部が照射されてその残部が背景等に照射される。そのため、全照射部に対応する回動角度では、背景波形が検出されることなく1つの波形が略同一の検出時間にてそれぞれ検出され、一部照射部位に対応する回動角度では、上述のように2つの波形が検出されることとなる。
【0032】
このため、1つの波形が検出される回動角度の数(全照射部の数)により、検出物体のうち全照射部が占める回動方向長さが求められる。また、2つの波形の比率から算出される一部照射部がスポット断面に占める面積比と、このスポット断面の断面寸法とにより、検出物体のうち一部照射部が占める回動方向長さが求められる。その結果、これら全照射部が占める回動方向長さと一部照射部が占める回動方向長さとにより、検出物体の回動方向長さを正確に測定することができる。
【0033】
請求項7の発明では、断面寸法演算手段により、レーザ光の広がりに応じて測定距離でのスポット断面の断面寸法が演算されるので、予めレーザ光の広がりを把握することでその測定距離でのスポット断面の断面寸法を容易に演算することができる。
【0034】
請求項8の発明では、測定手段により、複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と遠距離側の波形とが交わる複数の面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、上記2つ以上の閾値と背景波形とが交わる複数の面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0035】
上述のような各面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、面積演算用交点の数が多いほど、すなわち、閾値の数が多いほど、対応する波形の形状が上記領域として反映されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第1遠距離側面積および第1背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0036】
請求項9の発明では、測定手段により、第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0037】
請求項8の発明に対して、最小の閾値での2つの面積演算用交点と上記垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積をさらに加えた合計面積の比率を用いるので、上記多角形状の領域に上記四角形状の領域を加えた領域は、上記多角形状の領域のみと比較して、対応する波形の形状をより反映した領域となる。このため、それぞれの合計面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率をより精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度をより向上させることができる。
【0038】
請求項10の発明では、測定手段にて、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算される。
【0039】
通常の受光波形であれば、その受光波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離が、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離との距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点は、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点である可能性が高いことが想定される。このため、上述のような面積演算用交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積を演算することで、遠距離側の波形と背景波形との比率をさらに精度良く算出して、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0040】
請求項11の発明では、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、測定手段により、第1遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算される。
【0041】
ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れると、複数の閾値を設定している場合でも、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つだけであり、他の閾値では判定用距離との距離差が大きくなる場合がある。この場合、2つの面積演算用交点だけでは、遠距離側の波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0042】
そこで、判定用距離と一致するとみなされる1つの閾値での交点間距離を基準として、他の閾値に対応する判定用距離からこの他の閾値での交点間距離を推定する。そして、このように推定した交点間距離を全長とする線分と、基準となる当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積を演算する。このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れた場合であっても、第1遠距離側面積を演算することができる。
【0043】
請求項12の発明では、測定手段により、複数の閾値のうちの2つの閾値と遠距離側の波形とが交わる4つの面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、2つの閾値と背景波形とが交わる4つの面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0044】
上述のような三角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、少なくとも2つの閾値を設定するだけで、対応する波形の形状を反映した領域が区画されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第2遠距離側面積および第2背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0045】
請求項13の発明では、測定手段にて、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第2遠距離側面積および第2背景側面積が演算される。
【0046】
通常の受光波形であれば、その波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離が、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離との距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点は、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点である可能性が高いことが想定される。このため、上述のような面積演算用交点を除いて第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算することで、遠距離側の波形と背景波形との比率をさらに精度良く算出して、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0047】
請求項14の発明では、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、測定手段により、第2遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算される。
【0048】
ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れると、複数の閾値を設定している場合でも、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つだけであり、他の閾値では判定用距離との距離差が大きくなる場合がある。この場合、2つの面積演算用交点だけでは、遠距離側の波形の形状が反映される三角形状の領域を想定することができない。
【0049】
そこで、判定用距離と一致するとみなされる1つの閾値での交点間距離を基準として、他の閾値に対応する判定用距離からこの他の閾値での交点間距離を推定する。このとき、上記第1の線分と第2の線分の双方の端点を通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域は、対応する波形の形状を反映した領域となるので、この領域の面積に基づいて第2遠距離側面積を演算する。このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れた場合であっても、第2遠距離側面積を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本第1実施形態に係るレーザレーダ装置を概略的に例示する断面図である。
【図2】2つの受光波形が検出される状況を説明するための説明図である。
【図3】図3(A)は、検出物体および背景が検出される状態を例示する波形図であり、図3(B)は、背景のみが検出される状態を例示する波形図である。
【図4】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図5】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図6】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図7】図7(A)〜(D)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図8】図8(A)〜(C)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図9】図9(A),(B)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図10】第2実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図11】第1遠距離側面積および第1背景側面積を説明するための説明図である。
【図12】光量と判定用距離との関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップの一例を示す説明図である。
【図13】ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる面積演算用交点を示す説明図である。
【図14】他の波形が重なった波形と閾値とが交わる面積演算用交点を示す説明図である。
【図15】交点間距離と判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【図16】交点間距離と判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【図17】第3実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図18】第2遠距離側面積および第2背景側面積を説明するための説明図である。
【図19】ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる状態での第1の線分および第2の線分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第1実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L3を受光するフォトダイオード20と、レーザダイオード10およびフォトダイオード20を制御する制御回路70とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により図略のレーザ駆動回路からパルス電流を供給されてパルスレーザ光(レーザ光L0)を投光するものである。
【0052】
フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当するものであり、レーザダイオード10からレーザ光L0が発生したときに、このレーザ光L0が検出物体によって反射した反射光L3等を検出し受光信号に変換して制御回路70に出力する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが取り込まれる構成となっており、図1の例では、符号L3で示す2つのライン間の領域の反射光が取り込まれるようになっている。
【0053】
また、レーザ光L0の光軸上にはレンズ60及びミラー30が設けられている。レンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L0を略平行光に変換する。
【0054】
ミラー30は、レーザダイオード10からのレーザ光L0の透過と、検出物体側からの反射光L3の反射を実現するものである。具体的には、レーザ光L0の光軸に対し所定角度で傾斜してなる反射面31を有するとともに、反射面31と交差する方向の貫通路32を備えている。本構成では、レーザ光L0の光軸と反射光L3の光軸とを一致させる構成としており、ミラー30は、共通の光軸上に配されて貫通路32を介してレーザ光L0を通過させる一方、反射面31により反射光L3をフォトダイオード20に向けて反射する構成をなしている。
【0055】
なお、上述したように、レーザダイオード10から貫通路32までのレーザ光L0の光路上に、レーザ光L0を略平行光に変換するレンズ60が設けられているが、このレンズ60は、貫通路32においてほぼすべての光を通過させる略平行光を発生させる形態とすると良い。逆に、貫通路32に着目した場合、当該貫通路32は、レンズ60によって略平行光とされたレーザ光L0のほぼすべての光を通過させるサイズとすると良い。
【0056】
また、ミラー30を通過するレーザ光L0の光軸上には、回動偏向機構40が設けられている。この回動偏向機構40は、レーザ光L0の光軸方向に延びる中心軸を中心として回動可能に配設されるとともに、この中心軸上に焦点位置が設定される凹面鏡41によってレーザ光L0を空間に向けて反射させ且つ反射光L3をミラーに向けて偏向させている。なお、回動偏向機構40および凹面鏡41は、特許請求の範囲に記載の「回動偏向手段」および「偏向手段」の一例に相当する。
【0057】
さらに、回動偏向機構40を回転駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸42を回転させることで、軸42と連結された回動可能な凹面鏡41を回転駆動する構成となっている。モータ50は、ここではステップモータによって構成されている。ステップモータは、種々のものを利用でき、1ステップ毎の角度が小さいものを使用すれば、緻密な回動が可能となる。また、モータ50としてステップモータ以外の駆動手段を用いてもよい。例えばサーボモータ等を用いても良いし、定常回転するモータを用い、凹面鏡41が測距したい方向を向くタイミングに同期させてパルスレーザ光を出力することで、所望の方向の検出を可能としてもよい。なお、本第1実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸42の回転角度、即ち凹面鏡41の回転角度を検出する回転角度センサ52が設けられており、この回転角度センサ52は、凹面鏡41の回転角度に対応する角度信号、すなわち、レーザ光の出射方向に対応する角度信号を制御回路70に出力する。当該回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸42の回転角度を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用でき、また、検出対象となるモータ50の種類も特に限定されず、様々な種類のものに適用できる。
【0058】
また、本第1実施形態では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動偏向機構40、モータ50や制御回路70等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3における凹面鏡41の周囲には、当該凹面鏡41を取り囲むようにレーザ光L0及び反射光L3の通過を可能とする導光部4が形成されている。導光部4は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部4を閉塞する形態でレーザ光が透過可能なガラス板等からなる窓部5が配され、防塵が図られている。
【0059】
窓部5は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸と直交する仮想平面に対し全周にわたり傾斜した構成となっている。即ち、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0に対して板面が傾斜した構成をなしている。従って、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0が窓部5にて反射してもノイズ光となりにくくなっている。
【0060】
制御回路70は、例えば、マイコンやメモリ(ROM、RAM、EEPROM等)等から構成されており、上述したレーザダイオード10およびフォトダイオード20等を制御することで、検出物体までの距離や方向を検出する検出処理を所定のコンピュータプログラムにより実行する機能を有するものである。
【0061】
次に、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1の制御回路70における検出処理について説明する。この検出処理では、検出すべき大きさの検出物体を検出するために、フォトダイオード20から入力される受光信号に基づいて、検出物体の回動方向に沿う長さ(以下、回動方向長さともいう)が測定される。まず、この測定方法について、図2および図3を用いて説明する。
【0062】
検出物体までの距離や方向を検出するため、モータ50の回転駆動により凹面鏡41が所定角度回動してレーザ光の出射方向が所定角度変化する際に、回転角度センサ52からの角度信号に応じて演算される凹面鏡41の回動角度(以下、単に回動角度ともいう)毎に、フォトダイオード20から受光信号が制御回路70に入力される。ここで、所定の回動角度において入力される受光信号により検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出されると、この受光波形(以下、背景波形ともいう)は、常にその場所に位置する壁などの物体(以下、背景ともいう)からの反射光によるものと推定できる。
【0063】
また、図2に例示するように、出射されたレーザ光の一部L0aが検出物体Saにて反射され、そのレーザ光の残部L0bが出射方向後方の背景Sbにて反射される場合には、図3(A)に例示するように、受光信号に2つの受光波形が含まれることとなる。そのため、図3(A),(B)に例示するように、2つの受光波形が検出されるときに遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する場合には、出射されたレーザ光は、その一部が検出物体にて反射され、その残部が検出物体よりも遠距離にある背景にて反射されたことが推定される。この場合、近距離側である検出物体(検出時間Tn)がレーザ光の光軸に直交する断面(以下、スポット断面ともいう)に占める面積が小さくなるほど、すなわち検出物体が小さくなるほど、遠距離側の受光波形は、背景波形に近づくように変化する。このため、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の大きさ(回動方向長さ)を測定することができる。なお、図2では、説明の便宜上、レーザ光L0a,L0b等を拡大して図示している。
【0064】
以下、検出処理の具体的な流れについて図4〜図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、図4のステップS101において、レーザ発光処理がなされる。この処理では、タイミング信号発生部にて生成された発光トリガに応じた所定のパルス幅の発光信号がレーザ駆動回路に出力される。これにより、レーザ駆動回路に駆動制御されて、レーザダイオード10から上記所定のパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L0)が出力される。このレーザ光L0は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ60を通過することで略平行光に変換される。レンズ60を通過したレーザ光L0は、ミラー30に形成された貫通路32を通過して凹面鏡41に入射し、この凹面鏡41にて略平行光として反射され空間に向けて照射される。
【0065】
次に、ステップS103において、レーザ受光処理がなされる。レーザ光L0が検出物体等によって反射光として反射された場合には、この反射光は、凹面鏡41にて集光されてミラー30を介してフォトダイオード20へ向けて反射される。これにより、上記レーザ受光処理では、フォトダイオード20から反射光の受光に応じた受光信号が制御回路70に入力される。
【0066】
続いて、ステップS105にて記憶処理がなされて、フォトダイオード20からの受光信号がその回動角度とともにメモリ等に記憶される。そして、ステップS107にて回転角度センサ52から入力される角度信号に基づいてレーザ光の出射方向が一周したか否かについて判定される。ここで、レーザ光の出射方向が一周していなければ(S107でNo)、ステップS109にて回動処理がなされて、モータ50が1ステップ分だけ回転駆動する。これにより、凹面鏡41が単位角度回動してレーザ光の出射方向が単位角度変化する。そして、レーザ光の出射方向が一周するまで、上記ステップS101からの処理が繰り返される。
【0067】
そして、レーザ光の出射方向が一周して、この一周分における各受光信号がメモリ等に記憶されると(S107でYes)、ステップS111において、受光信号抽出処理がなされる。この処理では、基準となる回動角度から一周する回動角度までの各受光信号が当該処理を実施するごとに順に1つずつ抽出される。
【0068】
次に、ステップS113にて、抽出された回動角度での受光信号に受光波形が含まれるか否かについて判定される。ここで、受光信号が所定の閾値を超えない場合には受光波形が含まれないとして(S113でNo)、ステップS115にて、現段階で抽出された回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度(以下、前抽出回動角度ともいう)での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれたか否かについて判定される。そして、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていなければ(S115でNo)、ステップS117にて一周全ての受光信号が抽出されたか否かについて判定され、一周全ての受光信号が抽出されるまで、Noと判定されて上記ステップS111からの処理が繰り返される。
【0069】
ここで、ステップS113において、抽出された回動角度での受光信号が所定の閾値以上になることから受光信号に受光波形が含まれると判定されると(S113でYes)、図5のステップS119にて受光信号に含まれる受光波形が1つのみか否かについて判定される。そして、検出物体または背景からの反射光のみを受光したことから受光信号に含まれる受光波形が1つのみの場合には、S119にてYesと判定される。
【0070】
続いて、ステップS121にてこの受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされるか否かについて判定される。ここで、受光波形の検出時間や振幅値が前回のものと異なることから両波形が一致するとみなされない場合には、検出物体からの反射光を検出したとして、ステップS121にてNoと判定される。そして、ステップS123にて検出時間記憶処理がなされて、上記受光波形の検出時間がその回動角度とともにメモリに記憶されると、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0071】
一方、ステップS121において、受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされる場合には(S121でYes)、ステップS125にてこの受光波形が背景波形であるか否かについて判定される。ここで、抽出された受光波形が、その回動角度において前回検出された受光波形に一致するとみなされる状態が継続する場合には、背景波形であるとしてステップS125にてYesと判定される。そして、ステップS127にて背景波形設定処理がなされ、抽出された受光波形が背景波形として設定されてメモリに記憶される。このように背景波形が設定されるか、ステップS125にてNoと判定されると、上記ステップS115における判定処理がなされる。なお、上記背景波形設定処理では、現段階における波形が新たな背景波形として設定されるが、これに限らず、例えば、現段階における波形と前回以前での背景波形とを平均化することで新たな背景波形が設定されてもよい。また、ステップS127を実行する制御回路70は、特許請求の範囲に記載の「設定手段」の一例に相当し得る。
【0072】
また、上述したステップS119において、受光信号に含まれる受光波形が2つの場合には、図2に例示したように出射されたレーザ光の一部が検出物体にて反射されその残部が出射方向後方の物体にて反射される場合が推定されて、Noと判定される。そして、ステップS129において、各受光波形のうち遠距離側の受光波形が背景波形であるか否かについて判定される。ここで、図3(A)に例示するように、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する場合には(S129でYes)、上述したように、近距離側の受光波形は検出物体からの反射光によるものと推定できる。この場合、ステップS131にて検出時間記憶処理がなされて、上記受光波形における近距離側の検出時間Tnがその回動角度とともにメモリに記憶されると、上記ステップS117における判定処理がなされる。一方、受光信号に含まれる2つの受光波形のうち遠距離側が背景波形と推定されない場合には、ステップS129にてNoと判定されて、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0073】
このように、一周全ての受光信号が抽出されるまでに、検出物体からの反射光を受光する場合には、ステップS123またはステップS131にて、この反射光の受光に応じた受光波形の検出時間がその回動角度とともにメモリに記憶されることとなる。
【0074】
また、上述したステップS115にて前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれている場合には、前抽出回動角度のみ、または前抽出回動角度から逆回動方向に所定角度回動した角度範囲において、検出物体からの反射光を受光していることが推定される。この場合にはステップS115にてYesと判定されて、図6のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。ここで、波形検出回動角度範囲は、前抽出回動角度から逆回動方向に所定角度回動した間の全ての回動角度にて略同一の検出時間の受光波形が検出される回動角度の範囲として設定されている。
【0075】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS135における第1回動方向長さ測定処理により、以下のように検出物体の回動方向長さXが演算されて測定される。なお、ステップS135および後述するステップS141を実行する制御回路70は、特許請求の範囲に記載の「距離測定手段」,「測定手段」および「断面寸法演算手段」の一例に相当し得る。
【0076】
ここで、図7および図8を用いて、検出物体の回動方向長さXの演算方法について説明する。図7,8および後述する図9では、レーザ光のスポット断面を回動角度毎に正方形状の領域で例示するとともに、この正方形状の領域のうち斜線領域は、スポット断面のうち検出物体にてレーザ光が反射される領域を例示し、斜線無領域は、背景にてレーザ光が反射される領域を例示している。なお、この斜線無領域には、2つの受光波形が検出される場合を除き、何も反射されない領域も含まれるものとする。また、図7〜図9では、現時点における回動角度でのスポット断面をLnにて示し、前抽出回動角度でのスポット断面をLn−1、前抽出回動角度よりも逆回動方向の単位回動角度でのスポット断面を順にLn−2,Ln−3・・・Ln−k・・・にて示している。
【0077】
まず、検出物体の大きさがスポット断面よりも小さいことから、図7(A)に例示するようにスポット断面Ln−1の一部のみが検出物体により反射される場合には、前抽出回動角度にて2つの受光波形が検出され、前抽出回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度では検出物体による受光波形が検出されないこととなる。
【0078】
この場合には、ステップS135では、前抽出回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1に占める面積比が演算される(図3参照)。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離が演算される。続いて、この演算距離でのスポット断面の寸法(レーザスポット径)が演算される。この断面寸法の演算は、レーザ光の広がりを考慮して予め演算距離と断面寸法との関係が予め設定されたマップなどを利用して上記演算距離に基づいて実施される。このように演算された断面寸法と面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形の振幅値Hoに対して40%であると、検出物体の回動方向長さはX=8cmとして演算される。
【0079】
また、検出物体の大きさとスポット断面の大きさとの差が小さいことから、図7(B)に例示するようにスポット断面Ln−1,Ln−2の一部のみが検出物体によりそれぞれ反射される場合には、前抽出回動角度とこの前抽出回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度にて2つの受光波形がそれぞれ検出され、前抽出回動角度よりもモータ50の2ステップ分だけ逆回動方向の回動角度では検出物体による受光波形が検出されないこととなる。
【0080】
この場合には、ステップS135では、上記両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1,Ln−2に占める面積比がそれぞれ演算される。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離と、この演算距離でのスポット断面の寸法が演算される。このように演算された断面寸法と面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、上記両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値が背景波形の振幅値に対して60%および30%であると、検出物体の回動方向長さはX=12+6=18cmとして演算される。
【0081】
また、検出物体の大きさがスポット断面よりも十分に大きい場合には、図7(C)に例示するようにスポット断面Ln−1,Ln−kの一部が検出物体の回動方向端部(以下、一部照射部ともいう)により反射され、スポット断面Ln−2,・・・Ln−k+1での全てが検出物体の回動方向中央部(以下、全照射部ともいう)により反射される。このため、一部照射部に対応する両回動角度では2つの受光波形がそれぞれ検出され、全照射部に対応する回動角度では背景波形が検出されることなく1つの波形がそれぞれ検出されることとなる。
【0082】
この場合には、ステップS135では、一部照射部に対応する両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1,Ln−kに占める面積比がそれぞれ演算される。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離と、この演算距離でのスポット断面の寸法が演算される。このように演算された断面寸法および面積比と全照射部に対応する回動角度の数とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、一部照射部に対応する両回動角度にて遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形の振幅値Hoに対して60%および30%であり、全照射部に対応する回動角度の数が2つ(k=4)であると、検出物体の回動方向長さはX=12+20+20+6=58cmとして演算される。
【0083】
上述のようにステップS135にて検出物体の回動方向長さXが演算されると、ステップS137にてこの回動方向長さXが所定の閾値Xo以上であるか否かについて判定される。なお、所定の閾値Xoは、検出すべき物体の最小の回動方向長さであって、測定される距離に応じて、例えば、遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きくするように設定されており、具体的には、検出物体までの距離が30mでは10cmに設定されている。
【0084】
ここで、検出物体の回動方向長さXが、例えば、図7(B)に例示するように18cmとして演算される場合には、ステップS137にてYesと判定されて、ステップS139にて出力処理がなされて、当該検出物体に関する距離、回動角度(出射方向)や回動方向長さX等が所定の外部装置等に出力される。そして、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0085】
一方、検出物体の回動方向長さXが、例えば、図7(A)に例示するように8cmとして演算される場合には、ステップS137にてNoと判定されて、ステップS139の出力処理がなされることなく、上記ステップS117における判定処理がなされる。すなわち、回動方向長さXが所定の閾値Xo未満である検出物体は、検出不要な大きさの物体であるとして、その検出が無効となる。
【0086】
このように、本第1実施形態では、スポット断面よりも小さな検出物体の回動方向長さXを測定することができる。従来では、スポット断面毎の反射光の有無により検出物体の大きさ(回動方向長さ)を測定していた。すなわち、検出物体の回動方向長さXは、図7(A)の例では、1つの回動角度での反射光の受光のみをもってその測定距離でのスポット断面の寸法に基づいて20cmと測定され、図7(B)の例では、2つの回動角度での反射光の受光のみをもって40cmと測定していた。このため、本第1実施形態では、従来技術では測定不可能であった、スポット断面よりも小さな検出物体の回動方向長さXを高精度に測定することができる。
【0087】
また、図7(D)に例示するように、図7(C)に対してスポット断面Ln−1の一部が落ち葉のように検出不要な大きさの検出不要物により反射され残部が背景により反射される場合、従来では、このスポット断面からの反射光を受光することで、当該スポット断面の寸法分が検出物体の大きさ(回動方向長さ)に加算されてしまっていた。本第1実施形態では、検出不要物がスポット断面に占める面積比のみが検出物体の大きさ(回動方向長さ)に加算されることとなるので、従来よりも、検出物体の回動方向長さXの演算に関する誤差を小さくすることができる。
【0088】
上述したステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、例えば、図8(A)〜(C)のいずれかに例示するように、両回動方向端部のスポット断面Ln−1,Ln−5に加えてスポット断面Ln−3にて2つの受光波形が検出される場合が複数パターン想定される状態にて、回動方向長さXが測定される。
【0089】
上述のようにスポット断面Ln−3で2つの受光波形が検出される場合では、図8(A)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体の一部照射部によりそれぞれ反射される状態と、図8(B)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体のいずれかの一部照射部のみにより反射される状態と、図8(C)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体の間に存在する検出物体により反射される状態と、のいずれの状態か判別することができない。
【0090】
そこで、本第1実施形態では、上記検出状態の場合、2つの検出物体を検出しているとして、それぞれの検出物体の回動方向長さXが演算される。具体的には、スポット断面Ln−3での上記面積比から求められる回動方向長さの半分を、スポット断面Ln−1,Ln−2に相当する回動方向長さと、スポット断面Ln−4,Ln−5により相当する回動方向長さと、にそれぞれ加算することで、2つの検出物体の回動方向長さXがそれぞれ演算される。そして、このように演算された回動方向長さXが所定の閾値Xo以上である場合には(S137でYes)、ステップS139にてその回動方向長さXに対応する検出物体に関する距離、回動角度(出射方向)や回動方向長さX等が上記外部装置等に出力される。
【0091】
以上説明したように、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の回動角度において検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、この受光波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する、2つの波形が検出されるとき、この遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の回動方向長さ(大きさ)が演算されて測定される。
【0092】
このように、遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定されるため、スポット断面よりも小さな検出物体の大きさを測定することができるので、検出物体の検出精度を高めることができる。
【0093】
また、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。このように遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を算出することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0094】
さらに、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、測定された検出物体の大きさが検出対象外である場合に、この検出物体の検出が無効となるので、検出不要な大きさの物体の検出を防止することができる。
【0095】
さらにまた、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、検出対象となる検出物体の大きさは、測定される距離に応じて設定されるため、上述したように遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きく設定することで、所望の大きさの検出物体を検出するとともに、検出不要な大きさの物体の検出を確実に防止することができる。
【0096】
また、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、検出物体の一部照射部により2つの波形が検出され、全照射部により前抽出回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が検出されるとき、1つの波形が検出される回動角度の数と、2つの波形の比率と、レーザ光の断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向長さXが測定される。このように、検出物体のうち全照射部の回動方向長さと一部照射部の回動方向長さとをそれぞれ演算することで、検出物体の回動方向長さXを正確に測定することができる。
【0097】
さらに、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、レーザ光の広がりに応じて測定距離でのスポット断面の断面寸法が演算されるので、予めレーザ光の広がりを把握することでその測定距離でのスポット断面の断面寸法を容易に演算することができる。
【0098】
[第2実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第2実施形態について図を参照して説明する。図10は、第2実施形態に係る制御回路70における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。図11は、第1遠距離側面積および第1背景側面積を説明するための説明図である。図12は、光量と判定用距離Yとの関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップの一例を示す説明図である。図13は、ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる面積演算用交点Pを示す説明図である。図14は、他の波形が重なった波形と閾値とが交わる面積演算用交点Pを示す説明図である。図15および図16は、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【0099】
本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、上述した検出物体の回動方向長さXの演算方法を変更するために、図6に示すフローチャートに代えて図10に示すフローチャートを採用する点が、上記第1実施形態に係るレーザレーダ装置と異なる。したがって、上述した第1実施形態のレーザレーダ装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0100】
本第2実施形態では、検出物体の回動方向長さXを、遠距離側の受光波形の形状と背景波形の形状との比較に基づいて演算する。この演算方法について、以下に説明する。
まず、図11に示すように、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、検出波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための3つの閾値(値の小さな閾値からLth1,Lth2,Lth3)を予め設定する。
【0101】
そして、検出物体の回動方向長さXの演算時(上記ステップS135またはステップS141に相当する処理時)には、まず、上記座標において、1つの閾値が検出波形と交わる交点を面積演算用交点Pとし、これら複数の面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第1遠距離側面積として演算するとともに、背景波形W2に関して第1背景側面積として演算する。次に、最小の閾値Lth1での2つの面積演算用交点P1a,P1bとこれら両面積演算用交点P1a,P1bから横軸にそれぞれ下ろした垂線の足P0a,P0bとにより囲まれる四角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して遠距離側矩形面積として演算するとともに、背景波形W2に関して背景側矩形面積として演算する。
【0102】
続いて、遠距離側矩形面積を第1遠距離側面積に加えた合計面積(図11にてクロスハッチング領域S1にて示す)と、背景側矩形面積を第1背景側面積に加えた合計面積(図11にてクロスハッチング領域S1とハッチング領域S2とにて示す)とを演算する。これら2つの合計面積の比率は、それぞれ、遠距離側の受光波形W1の形状を反映した領域の面積と、背景波形W2の形状を反映した領域の面積との比率となるので、この比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を求めることができる。そして、この面積比と当該スポット断面の断面寸法とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0103】
ここで、上記座標では、閾値Lth1と検出波形が交わる面積演算用交点P1a,P1bとし、閾値Lth2と検出波形が交わる面積演算用交点P2a,P2bとし、閾値Lth3と検出波形が交わる面積演算用交点P3a,P3bとする。なお、例えば、遠距離側の受光波形W1において、閾値Lth3との交点がない場合には、第1遠距離側面積は、面積演算用交点P1a,P1b,P2a,P2bの4点により囲まれる台形状の領域の面積として演算される。また、第1背景側面積および背景側矩形面積は、上述のように都度演算することなく、背景波形として記録する際に、予め演算するようにしてもよい。
【0104】
また、本第2実施形態では、上記座標において、フォトダイオード20による検出が想定される光量の波形と各閾値Lth1,Lth2,Lth3とがそれぞれ交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離Yとして予めそれぞれ測定されて記憶されている。この測定では、所定の基準物体に対してレーザダイオード10からのレーザ光を照射することで、フォトダイオード20にて検出される受光波形が閾値を超える状態の時間が、上記座標における交点間の距離(判定用距離Y)として、3つの閾値にてそれぞれ測定される。そして、基準物体の位置を変えるなどして、光量毎に各閾値での判定用距離Yが測定される。この測定結果は、図12に例示するように、光量と判定用距離Yとの関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップとして制御回路70のメモリ等に予め記憶されている。
【0105】
通常の受光波形であれば、その受光波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離は、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離Yとの距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点Pは、受光波形に含まれる異常な成分との交点である可能性が高いことが想定される。このため、本第2実施形態では、判定用距離Yを判定基準として、上述のような異常な成分での面積演算用交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積を演算する処理がなされる。
【0106】
また、図13に例示するように、ノイズ等の影響により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図13のY2参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図13のY’1参照)。なお、図13に例示する場合では、閾値Lth3と遠距離側の受光波形との交点が存在しないものとする。この場合、距離差が大きくなる面積演算用交点P1a,P1bを除くと、2つの面積演算用交点P2a,P2bだけでは、遠距離側の受光波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0107】
また、図14に例示するように、2つの波形が重なること等により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図14のY3α,Y3β参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図14のY’1,Y’2参照)。この場合、距離差が大きくなる面積演算用交点P1a,P1b,P2a,P2bを除くと、2つの面積演算用交点P3aα,P3bα、または、2つの面積演算用交点P3aβ,P3bβだけでは、遠距離側の受光波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0108】
そこで、本第2実施形態では、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離(例えば、図13のY1参照)を推定する。そして、このように推定した交点間距離を全長とする線分と、基準となる交点間距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積を演算する処理がなされる。
【0109】
以下、本第2実施形態に係る検出処理の具体的な流れについて図10のフローチャート等を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていることから、図4のステップS115にてYesと判定されると、図10のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。
【0110】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS201にて交点間距離演算処理がなされる。この処理では、各閾値Lth1,Lth2,Lth3毎に、受光波形が閾値を超える状態の時間、すなわち、上記座標における面積演算用交点間での交点間距離がそれぞれ算出される。
【0111】
次に、ステップS203において、各交点間距離とその光量での判定用距離Yとがほぼ一致するか否かについて判定される。ここで、遠距離側の受光波形にノイズ等が含まれないために、各交点間距離と、その光量および閾値から上記光量−判定用距離マップ(図12参照)に基づいて求められる判定用距離Yとがほぼ一致する場合には、ステップS203にてYesと判定される。
【0112】
そして、ステップS205において、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、遠距離側の受光波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、遠距離側矩形面積とが上述のようにして演算される(図11参照)。また、上記座標において、背景波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、背景側矩形面積とが上述のようにして演算される(図11参照)。
【0113】
次に、ステップS207において、回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、第1遠距離側面積および遠距離側矩形面積の合計面積と、第1背景側面積および背景側矩形面積の合計面積との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比が演算される。続いて、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離に基づいてスポット断面の断面寸法が演算され、この断面寸法と上記面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。そして、上記第1実施形態と同様にステップS137以降の処理がなされる。
【0114】
一方、3つの閾値での交点間距離のうち少なくともいずれか1つにおいて、対応する判定用距離Yとの距離差が、他の閾値での上記距離差よりも大きくなる場合には、ステップS203にてNoと判定される。そして、ステップS209にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つか否かについて判定される。
【0115】
ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つである場合には(S209でYes)、ステップS211にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上記距離差が大きくなる面積演算用交点を除き、遠距離側の受光波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、遠距離側矩形面積とが上述のようにして演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第1背景側面積および背景側矩形面積は、ステップS205と同様にして演算される。このように第1遠距離側面積等が演算されると、ステップS207にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0116】
また、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つでない場合には(S209でNo)、ステップS213にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つか否かについて判定される。ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つである場合には、ステップS213にてYesと判定されて、ステップS215にて交点間距離推定処理がなされる。この処理では、上述したように、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離が推定される(図13および図14参照)。
【0117】
そして、ステップS217にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上述のように推定された交点間距離を全長とする線分(例えば図13のY1)と、基準となる交点間距離を全長とする線分(例えば図13のY2)と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積が演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第1背景側面積および背景側矩形面積は、ステップS205と同様にして演算される。このように第1遠距離側面積等が演算されると、ステップS207にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0118】
一方、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない場合には、ステップS213にてNoと判定されて、回動方向長さXを測定することなく、図4のステップS117以降の処理がなされる。ここで、ステップS213にてNoと判定される場合とは、例えば、図15に例示するように、閾値Lth2と受光波形との交点間距離Y2が、上記光量−判定用距離マップにおいて閾値Lth3が存在しない場合に、閾値Lth2に対応して出現可能な最大の判定用距離Yよりも大きい場合があげられる。また、図16に例示するように、各閾値での交点間距離Y1,Y2,Y3が対応する判定用距離Yとの間で対応が取れていない場合があげられる。
【0119】
上述した図10のステップS133にて、波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、上記第1実施形態と同様に、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。なお、この処理では、上述したステップS201以降の処理と同様に、第1遠距離側面積および遠距離側矩形面積の合計面積と、第1背景側面積および背景側矩形面積の合計面積との比率に基づいて、スポット断面に占める面積比を演算してもよい。
【0120】
以上説明したように、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、遠距離側矩形面積を第1遠距離側面積に加えた合計面積と、背景側矩形面積を第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0121】
上述のような各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。このため、それぞれ領域の面積を第1遠距離側面積および第1背景側面積として算出しこれら両面積を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。特に、最小の閾値Lth1での2つの面積演算用交点P1a,P1bと上記垂線の足P0a,P0bとにより囲まれる四角形状の領域の面積をさらに加えた合計面積の比率を用いるので、上記多角形状の領域に上記四角形状の領域を加えた領域は、上記多角形状の領域のみと比較して、対応する波形の形状をより反映した領域となる。このため、それぞれの合計面積の比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率をより精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度をより向上させることができる。
【0122】
また、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算される。
【0123】
これにより、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算されるので、遠距離側の受光波形と背景波形との比率がさらに精度良く算出されて、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0124】
さらに、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、第1遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算される。
【0125】
このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の受光波形が乱れた場合であっても、第1遠距離側面積を演算することができる。
【0126】
上記第2実施形態の第1変形例として、閾値を4つ以上採用してもよい。これにより、面積演算用交点Pの数が多いほど、すなわち、閾値の数が多いほど、対応する波形の形状が上記領域として反映されることとなるので、遠距離側の受光波形と背景波形との比率をより精度良く算出することができる。なお、使用環境によっては、閾値を2つ採用するようにしてもよい。
【0127】
上記第2実施形態の第2変形例として、閾値Lth1が他の閾値に対して十分に小さい等の場合には、遠距離側矩形面積および背景側矩形面積を考慮することなく、第1遠距離側面積および第1背景側面積のみの比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を算出してもよい。これにより、上記検出処理における制御回路70の演算負荷を低減することができる。
【0128】
[第3実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第3実施形態について図を参照して説明する。図17は、第3実施形態に係る制御回路70における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。図18は、第2遠距離側面積および第2背景側面積を説明するための説明図である。図19は、ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる状態での第1の線分および第2の線分を示す説明図である。
【0129】
本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、上述した検出物体の回動方向長さXの演算方法を変更するために、図6に示すフローチャートに代えて図17に示すフローチャートを採用する点が、上記第1実施形態に係るレーザレーダ装置と異なる。したがって、上述した第1実施形態のレーザレーダ装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0130】
本第3実施形態では、検出物体の回動方向長さXを、遠距離側の受光波形の形状を反映した三角形状の領域の面積と背景波形の形状を反映した三角形状の領域の面積との比較に基づいて演算する。この演算方法について、以下に説明する。
検出物体の回動方向長さXの演算時(上記ステップS135またはステップS141に相当する処理時)には、図18に示すように、上記第2実施形態にて述べた光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、2つの閾値Lth1,Lth2と受光波形とが交わる4つの面積演算用交点Pのうち近距離側の2つ(P1a,P2a)を結ぶ直線と遠距離側の2つ(P1b,P2b)を結ぶ直線の2つの直線とを求める。そしてこれら2つの直線と横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第2遠距離側面積(図18にてクロスハッチング領域S3にて示す)として演算するとともに、背景波形W2に関して第2背景側面積(図18にてクロスハッチング領域S3とハッチング領域S4とにて示す)として演算する。これら2つの面積の比率は、それぞれ、遠距離側の受光波形W1の形状を反映した領域の面積と、背景波形W2の形状を反映した領域の面積との比率となるので、この比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を求めることができる。そして、この面積比と当該スポット断面の断面寸法とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。なお、第2背景側面積は、上述のように都度演算することなく、背景波形として記録する際に、予め演算するようにしてもよい。
【0131】
また、本第3実施形態では、上記第2実施形態と同様に、想定される受光波形と各閾値Lth1,Lth2との交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離Yとして予めそれぞれ測定されて上記光量−判定用距離マップとして制御回路70のメモリ等に記憶されている。
【0132】
また、上記第2実施形態にて述べたように、ノイズ等の影響により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図19のY2参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図19のY’1参照)。
【0133】
この場合、本第3実施形態では、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間を結ぶ線分を第1の線分とし、この交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離を推定する。そして、このように推定された判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分(図19のY1参照)と、上記第1の線分(図19のY2参照)と、の双方の端点を通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域に基づいて、第2遠距離側面積を演算する処理がなされる。
【0134】
以下、本第3実施形態に係る検出処理の具体的な流れについて図17のフローチャート等を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていることから、図4のステップS115にてYesと判定されると、図17のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。
【0135】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS301にて交点間距離演算処理がなされる。この処理では、各閾値Lth1,Lth2毎に、受光波形が閾値を超える状態の時間、すなわち、上記座標における面積演算用交点間での交点間距離がそれぞれ算出される。
【0136】
次に、ステップS303において、各交点間距離とその光量での判定用距離Yとがほぼ一致するか否かについて判定され、各交点間距離とその光量および閾値から上記光量−判定用距離マップに基づいて求められる判定用距離Yとがほぼ一致する場合には、ステップS303にてYesと判定される。
【0137】
そして、ステップS305において、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、近距離側の2つの面積演算用交点(P1a,P2a)を結ぶ直線と、遠距離側の2つの面積演算用交点(P1b,P2b)を結ぶ直線とを求める。そして、これら両直線と横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第2遠距離側面積として演算するとともに、背景波形W2に関して第2背景側面積として演算する(図18参照)。
【0138】
次に、ステップS307において、回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、第2遠距離側面積と第2背景側面積との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比が演算される。続いて、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離に基づいてスポット断面の断面寸法が演算され、この断面寸法と上記面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。そして、上記第1実施形態と同様にステップS137以降の処理がなされる。
【0139】
一方、2つの閾値での交点間距離のうち少なくともいずれか1つにおいて、対応する判定用距離Yとの距離差が、他の閾値での上記距離差よりも大きくなる場合には、ステップS303にてNoと判定される。そして、ステップS309にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つか否かについて判定される。
【0140】
ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つある場合には(S309でYes)、ステップS311にて交点間距離推定処理がなされる。この処理では、上述したように、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離が推定される(図19参照)。
【0141】
そして、ステップS313にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上述のように判定用距離Yと一致するとみなされる交点間を結ぶ線分を第1の線分(例えば図19のY2)と、上述のように推定された判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分(例えば図19のY1)とを求める。そして、これら両線分の端点をそれぞれ通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域に基づいて、第2遠距離側面積が演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第2背景側面積は、ステップS305と同様にして演算される。このように第2遠距離側面積が演算されると、ステップS307にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0142】
一方、上記第2実施形態にて述べたように、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない場合には、ステップS309にてNoと判定されて、回動方向長さXを測定することなく、図4のステップS117以降の処理がなされる。
【0143】
上述した図17のステップS133にて、波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、上記第1実施形態と同様に、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。なお、この処理では、上述したステップS301以降の処理と同様に、第2遠距離側面積と第2背景側面積との比率に基づいて、スポット断面に占める面積比を演算してもよい。
【0144】
以上説明したように、本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、第2遠距離側面積と、第2背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0145】
上述のような三角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、少なくとも2つの閾値を設定するだけで、対応する波形の形状を反映した領域が区画されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第2遠距離側面積および第2背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0146】
また、本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、第2遠距離側面積は、第1の線分および第2の線分の双方の端点を通過し上記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算される。
【0147】
このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の受光波形が乱れた場合であっても、第2遠距離側面積を演算することができる。
【0148】
上記第3実施形態の第1変形例として、閾値を3つ以上採用してもよい。この場合、判定用距離Yにより一致するとみなされる4つの面積演算用交点Pに基づいて、第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算してもよい。また、上記第2実施形態と同様に、判定用距離Yとの距離差が大きくなる異常な成分での面積演算用交点を除いて第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算することができる。
【0149】
上記第3実施形態の第2変形例として、上述のように第2遠距離側面積および第2背景側面積に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算するとともに、上記第2実施形態にて述べたように第1遠距離側面積および第1背景側面積等に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算してもよい。この場合、それぞれ演算された回動方向長さXを比較することで、より精度の高い回動方向長さXを演算することができる。また、それぞれの測定精度を有効に活用するために、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が3つ以上の場合には、第1遠距離側面積および第1背景側面積等に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算し、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が2つの場合には、第2遠距離側面積および第2背景側面積に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算してもよい。
【0150】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記回動方向長さ測定処理では、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて演算することに限らず、例えば、遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて演算してもよい。検出物体がスポット断面に占める面積が小さくなるほど、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間は、背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比が演算でき、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0151】
(2)ステップS107,S117では、基準となる回動角度から一周するまでを判定基準とすることに限らず、例えば、半周するまでを判定基準としてもよいし、複数周するまでを判定基準としてもよい。
【0152】
(3)ステップS141の第2回動方向長さ測定処理では、両回動方向端部以外で2つの受光波形が検出されるスポット断面での上記面積比が1に近い場合、すなわち、このスポット断面での遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形に対して十分に小さい場合には、このスポット断面での受光波形が1つであるとして、第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算してもよい。
【0153】
また、第2回動方向長さ測定処理では、高いセキュリティ性が求められる使用環境であれば、上記面積比に関わらず第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算して検出物体の回動方向長さXが大きくなるように演算することで、検出物体の検出頻度を高めてもよい。
【0154】
また、両回動方向端部以外で2つの受光波形が検出されるスポット断面が連続する場合では、図9(A)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体のうちの一方の一部照射部により反射され、スポット断面Ln−4の一部が2つの検出物体のうちの他方の一部照射部により反射される状態と、図9(B)に例示するようにスポット断面Ln−3,Ln−4の一部が2つの検出物体の間に存在する検出物体により反射される状態と、のいずれの状態か判別することができない。
【0155】
そこで、このような場合、第2回動方向長さ測定処理では、要求されるセキュリティ性等に応じて処理を変更してもよい。具体的には、例えば、高いセキュリティ性が求められる使用環境であれば、上記面積比に関わらず第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算して検出物体の回動方向長さXが大きくなるように演算することで、検出物体の検出頻度を高めてもよい。また、高いセキュリティ性が求められない使用環境であれば、上記面積比等に応じて複数の検出物体を検出しているものとして各検出物体の回動方向長さXを演算することで、検出不要な大きさの検出物体の検出を確実に防止するようにしてもよい。
【0156】
(4)ステップS135,S141における回動方向長さ測定処理では、レーザ光の出射方向の単位角度変化(レーザ走査間隔)の設定値に応じて、現段階の回動角度におけるスポット断面が同一距離での前抽出回動角度におけるスポット断面と一部重なる場合には、その重なり分を、演算された回動方向長さXから減算するようにしてもよい。これにより、検出物体の回動方向長さXをより正確に演算して測定することができる。
【符号の説明】
【0157】
1…レーザレーダ装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
40…回動偏向機構(回動偏向手段)
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(距離測定手段,設定手段,測定手段,断面寸法演算手段)
L…スポット断面
Hf,Ho…振幅値
Tf,Tn,To…検出時間
X…回動方向長さ
P…面積演算用交点
Y…判定用距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を用いて検出物体までの距離や方位を検出するレーザレーダ装置に関する技術として、下記特許文献1に示すレーザレーダ走査装置が知られている。このレーザレーダ走査装置では、レーザダイオードからレーザ光が出力されると、スリットを通過し光アイソレータを透過したレーザ光が凹面鏡によって略平行光線に変換され、空間に向けて照射される。このレーザ光が検出物体によって反射されてその反射光の一部が再び凹面鏡に入射されると、この反射光は、凹面鏡にて光アイソレータへ向けて集光するように反射されて、当該光アイソレータにてフォトダイオードへ向けて反射される。これにより、フォトダイオードが入力されたレーザ光に応じた電気信号を出力することで、レーザ光を出力してからその反射光を検出するまでの時間を測定することによって、検出物体までの距離を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置内から外方の空間に向けて照射されるレーザ光は、略平行光に変換されてはいるものの、その光軸に直交する断面の径(以下、レーザスポット径ともいう)が遠距離ほど徐々に大きくなるように広がってしまう。そのため、レーザの発光面が極小に設定されていても、例えば、30m先では20〜30cmほどのレーザスポット径になってしまう場合がある。
【0005】
レーザレーダ装置では、検出物体からの反射光の光量しか検出しないため、例えば、第1の検出物体と、この第1の検出物体よりも大きさが大きく反射率が低い第2の検出物体とからの反射光量が等しい場合には、双方の大きさの違いを認識することが困難である。このため、本来検出不要な大きさの物体、例えば、小鳥や落ち葉であっても検出してしまう可能性があり、レーザスポット径が大きくなる遠方の検出物体では、この現象がさらに顕著になる。
【0006】
また、レーザ光の出射方向を変化させて周囲の検出物体からの反射光を検出する場合、遠方の検出物体に対してはレーザ走査間隔が大きくなる。そのため、例えば、レーザ光の発光タイミングを0.25°毎で変化させる場合、30m先ではレーザ走査間隔が約13cmになることから、小さな検出物体であっても出射方向変化前後にて同距離での反射光が検出されると当該検出物体の大きさが約26cmとして認識されてしまう。このように、発光タイミングによる誤差(角度分解能による誤差)やレーザスポット径の広がりによる誤差のために、本来検出不要な大きさの物体を検出してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、検出物体の検出精度を高め得るレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のレーザレーダ装置では、レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を波形として検出する光検出手段と、所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、かつ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、を備えたレーザレーダ装置であって、所定の回動角度において前記光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合にこの波形をその回動角度の背景波形として設定する設定手段と、遠距離側の波形の前記検出時間がその回動角度における前記背景波形の前記検出時間に相当する、2つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と前記背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定する測定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記遠距離側の波形の振幅値と前記背景波形の振幅値との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と前記背景波形が前記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段により測定された前記検出物体の大きさが検出対象外である場合にこの検出物体の検出を無効にする無効手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載のレーザレーダ装置において、前記検出対象となる前記検出物体の大きさは、前記距離測定手段により測定される距離に応じて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記距離測定手段による前記検出物体までの測定距離での前記レーザ光の断面寸法を演算する断面寸法演算手段を備え、前記検出物体の一部により第1の回動角度にて前記2つの波形が前記光検出手段により検出され、この検出物体の残部により前記第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、前記1つの波形が検出される回動角度の数と、前記2つの波形の前記比率と、前記断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さを測定することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載のレーザレーダ装置において、前記断面寸法演算手段は、前記レーザ光の広がりに応じて前記測定距離での前記断面寸法を演算することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、前記測定手段は、前記複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と前記遠距離側の波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、前記2つ以上の閾値と前記背景波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、前記第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、前記第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8または9に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、前記第1遠距離側面積および前記第1背景側面積を演算することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項10に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、前記第1遠距離側面積を、当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する前記判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算することを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、前記測定手段は、前記複数の閾値のうちの2つの閾値と前記遠距離側の波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、前記2つの閾値と前記背景波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項12に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、前記第2遠距離側面積および前記第2背景側面積を演算することを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明は、請求項13に記載のレーザレーダ装置において、前記測定手段は、所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、前記第2遠距離側面積を、当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する前記判定用距離を全長とし前記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明では、所定の回動角度において光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、設定手段により、この波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の波形の検出時間がその回動角度における背景波形の検出時間に相当する、2つの波形が光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と背景波形との比率に基づいて、測定手段により、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0023】
所定の回動角度において光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出されると、この波形は、常にその場所に位置する壁などの物体(以下、単に背景ともいう)からの反射光によるものと推定できる。また、2つの波形が検出される場合とは、出射されたレーザ光の一部が検出物体にて反射されて近距離側の波形として検出された後に、そのレーザ光の残部が出射方向後方の物体にて反射されて遠距離側の波形として検出される場合である。
【0024】
そのため、2つの波形が検出されるときに遠距離側の波形の検出時間がその回動角度における背景波形の検出時間に相当する場合には、出射されたレーザ光は、その一部が検出物体にて反射され、その残部が検出物体よりも遠距離にある背景にて反射されたことが推定される。この場合、近距離側である検出物体がレーザ光の光軸に直交する断面(以下、スポット断面ともいう)に占める面積が小さくなるほど、すなわち検出物体が小さいほど、遠距離側の波形は、背景波形に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさを測定することができる。
したがって、スポット断面よりも小さな検出物体の大きさを測定することができるので、検出物体の検出精度を高めることができる。
【0025】
請求項2の発明では、測定手段により、遠距離側の波形の振幅値と背景波形の振幅値との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。このように両波形の振幅値の比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を演算することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0026】
請求項3の発明では、測定手段により、遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0027】
検出物体がスポット断面に占める面積が小さくなるほど、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間は、背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を演算することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0028】
請求項4の発明では、測定手段により測定された検出物体の大きさが検出対象外である場合に、この検出物体の検出が無効手段により無効となるので、検出不要な大きさの物体の検出を防止することができる。
【0029】
請求項5の発明では、検出対象となる検出物体の大きさは、距離測定手段により測定される距離に応じて設定されるため、例えば、遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きく設定することで、所望の大きさの検出物体を検出するとともに、検出不要な大きさの物体の検出を確実に防止することができる。
【0030】
請求項6の発明では、検出物体の一部により第1の回動角度にて2つの波形が検出され、この検出物体の残部により第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が検出されるとき、1つの波形が検出される回動角度の数と、2つの波形の比率と、レーザ光の断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さ(以下、回動方向長さともいう)が測定される。
【0031】
検出物体の回動方向長さがスポット断面の回動方向長さよりも十分に長い場合、検出物体の回動方向中央部(以下、全照射部ともいう)では、その回動角度におけるスポット断面の全てが照射される。また、検出物体の回動方向端部(以下、一部照射部ともいう)では、スポット断面の全てが照射される場合を除き、その回動角度におけるスポット断面の一部が照射されてその残部が背景等に照射される。そのため、全照射部に対応する回動角度では、背景波形が検出されることなく1つの波形が略同一の検出時間にてそれぞれ検出され、一部照射部位に対応する回動角度では、上述のように2つの波形が検出されることとなる。
【0032】
このため、1つの波形が検出される回動角度の数(全照射部の数)により、検出物体のうち全照射部が占める回動方向長さが求められる。また、2つの波形の比率から算出される一部照射部がスポット断面に占める面積比と、このスポット断面の断面寸法とにより、検出物体のうち一部照射部が占める回動方向長さが求められる。その結果、これら全照射部が占める回動方向長さと一部照射部が占める回動方向長さとにより、検出物体の回動方向長さを正確に測定することができる。
【0033】
請求項7の発明では、断面寸法演算手段により、レーザ光の広がりに応じて測定距離でのスポット断面の断面寸法が演算されるので、予めレーザ光の広がりを把握することでその測定距離でのスポット断面の断面寸法を容易に演算することができる。
【0034】
請求項8の発明では、測定手段により、複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と遠距離側の波形とが交わる複数の面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、上記2つ以上の閾値と背景波形とが交わる複数の面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0035】
上述のような各面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、面積演算用交点の数が多いほど、すなわち、閾値の数が多いほど、対応する波形の形状が上記領域として反映されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第1遠距離側面積および第1背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0036】
請求項9の発明では、測定手段により、第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0037】
請求項8の発明に対して、最小の閾値での2つの面積演算用交点と上記垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積をさらに加えた合計面積の比率を用いるので、上記多角形状の領域に上記四角形状の領域を加えた領域は、上記多角形状の領域のみと比較して、対応する波形の形状をより反映した領域となる。このため、それぞれの合計面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率をより精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度をより向上させることができる。
【0038】
請求項10の発明では、測定手段にて、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算される。
【0039】
通常の受光波形であれば、その受光波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離が、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離との距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点は、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点である可能性が高いことが想定される。このため、上述のような面積演算用交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積を演算することで、遠距離側の波形と背景波形との比率をさらに精度良く算出して、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0040】
請求項11の発明では、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、測定手段により、第1遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算される。
【0041】
ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れると、複数の閾値を設定している場合でも、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つだけであり、他の閾値では判定用距離との距離差が大きくなる場合がある。この場合、2つの面積演算用交点だけでは、遠距離側の波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0042】
そこで、判定用距離と一致するとみなされる1つの閾値での交点間距離を基準として、他の閾値に対応する判定用距離からこの他の閾値での交点間距離を推定する。そして、このように推定した交点間距離を全長とする線分と、基準となる当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積を演算する。このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れた場合であっても、第1遠距離側面積を演算することができる。
【0043】
請求項12の発明では、測定手段により、複数の閾値のうちの2つの閾値と遠距離側の波形とが交わる4つの面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、2つの閾値と背景波形とが交わる4つの面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0044】
上述のような三角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、少なくとも2つの閾値を設定するだけで、対応する波形の形状を反映した領域が区画されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第2遠距離側面積および第2背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0045】
請求項13の発明では、測定手段にて、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第2遠距離側面積および第2背景側面積が演算される。
【0046】
通常の受光波形であれば、その波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離が、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離との距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点は、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点である可能性が高いことが想定される。このため、上述のような面積演算用交点を除いて第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算することで、遠距離側の波形と背景波形との比率をさらに精度良く算出して、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0047】
請求項14の発明では、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、測定手段により、第2遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算される。
【0048】
ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れると、複数の閾値を設定している場合でも、所定の閾値が遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つだけであり、他の閾値では判定用距離との距離差が大きくなる場合がある。この場合、2つの面積演算用交点だけでは、遠距離側の波形の形状が反映される三角形状の領域を想定することができない。
【0049】
そこで、判定用距離と一致するとみなされる1つの閾値での交点間距離を基準として、他の閾値に対応する判定用距離からこの他の閾値での交点間距離を推定する。このとき、上記第1の線分と第2の線分の双方の端点を通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域は、対応する波形の形状を反映した領域となるので、この領域の面積に基づいて第2遠距離側面積を演算する。このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の波形が乱れた場合であっても、第2遠距離側面積を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本第1実施形態に係るレーザレーダ装置を概略的に例示する断面図である。
【図2】2つの受光波形が検出される状況を説明するための説明図である。
【図3】図3(A)は、検出物体および背景が検出される状態を例示する波形図であり、図3(B)は、背景のみが検出される状態を例示する波形図である。
【図4】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図5】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図6】第1実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図7】図7(A)〜(D)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図8】図8(A)〜(C)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図9】図9(A),(B)は、各スポット断面において検出物体にてレーザ光が反射される領域と背景にてレーザ光が反射される領域とを例示する説明図である。
【図10】第2実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図11】第1遠距離側面積および第1背景側面積を説明するための説明図である。
【図12】光量と判定用距離との関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップの一例を示す説明図である。
【図13】ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる面積演算用交点を示す説明図である。
【図14】他の波形が重なった波形と閾値とが交わる面積演算用交点を示す説明図である。
【図15】交点間距離と判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【図16】交点間距離と判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【図17】第3実施形態に係る制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図18】第2遠距離側面積および第2背景側面積を説明するための説明図である。
【図19】ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる状態での第1の線分および第2の線分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第1実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L3を受光するフォトダイオード20と、レーザダイオード10およびフォトダイオード20を制御する制御回路70とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により図略のレーザ駆動回路からパルス電流を供給されてパルスレーザ光(レーザ光L0)を投光するものである。
【0052】
フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当するものであり、レーザダイオード10からレーザ光L0が発生したときに、このレーザ光L0が検出物体によって反射した反射光L3等を検出し受光信号に変換して制御回路70に出力する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが取り込まれる構成となっており、図1の例では、符号L3で示す2つのライン間の領域の反射光が取り込まれるようになっている。
【0053】
また、レーザ光L0の光軸上にはレンズ60及びミラー30が設けられている。レンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L0を略平行光に変換する。
【0054】
ミラー30は、レーザダイオード10からのレーザ光L0の透過と、検出物体側からの反射光L3の反射を実現するものである。具体的には、レーザ光L0の光軸に対し所定角度で傾斜してなる反射面31を有するとともに、反射面31と交差する方向の貫通路32を備えている。本構成では、レーザ光L0の光軸と反射光L3の光軸とを一致させる構成としており、ミラー30は、共通の光軸上に配されて貫通路32を介してレーザ光L0を通過させる一方、反射面31により反射光L3をフォトダイオード20に向けて反射する構成をなしている。
【0055】
なお、上述したように、レーザダイオード10から貫通路32までのレーザ光L0の光路上に、レーザ光L0を略平行光に変換するレンズ60が設けられているが、このレンズ60は、貫通路32においてほぼすべての光を通過させる略平行光を発生させる形態とすると良い。逆に、貫通路32に着目した場合、当該貫通路32は、レンズ60によって略平行光とされたレーザ光L0のほぼすべての光を通過させるサイズとすると良い。
【0056】
また、ミラー30を通過するレーザ光L0の光軸上には、回動偏向機構40が設けられている。この回動偏向機構40は、レーザ光L0の光軸方向に延びる中心軸を中心として回動可能に配設されるとともに、この中心軸上に焦点位置が設定される凹面鏡41によってレーザ光L0を空間に向けて反射させ且つ反射光L3をミラーに向けて偏向させている。なお、回動偏向機構40および凹面鏡41は、特許請求の範囲に記載の「回動偏向手段」および「偏向手段」の一例に相当する。
【0057】
さらに、回動偏向機構40を回転駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸42を回転させることで、軸42と連結された回動可能な凹面鏡41を回転駆動する構成となっている。モータ50は、ここではステップモータによって構成されている。ステップモータは、種々のものを利用でき、1ステップ毎の角度が小さいものを使用すれば、緻密な回動が可能となる。また、モータ50としてステップモータ以外の駆動手段を用いてもよい。例えばサーボモータ等を用いても良いし、定常回転するモータを用い、凹面鏡41が測距したい方向を向くタイミングに同期させてパルスレーザ光を出力することで、所望の方向の検出を可能としてもよい。なお、本第1実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸42の回転角度、即ち凹面鏡41の回転角度を検出する回転角度センサ52が設けられており、この回転角度センサ52は、凹面鏡41の回転角度に対応する角度信号、すなわち、レーザ光の出射方向に対応する角度信号を制御回路70に出力する。当該回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸42の回転角度を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用でき、また、検出対象となるモータ50の種類も特に限定されず、様々な種類のものに適用できる。
【0058】
また、本第1実施形態では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動偏向機構40、モータ50や制御回路70等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3における凹面鏡41の周囲には、当該凹面鏡41を取り囲むようにレーザ光L0及び反射光L3の通過を可能とする導光部4が形成されている。導光部4は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部4を閉塞する形態でレーザ光が透過可能なガラス板等からなる窓部5が配され、防塵が図られている。
【0059】
窓部5は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸と直交する仮想平面に対し全周にわたり傾斜した構成となっている。即ち、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0に対して板面が傾斜した構成をなしている。従って、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0が窓部5にて反射してもノイズ光となりにくくなっている。
【0060】
制御回路70は、例えば、マイコンやメモリ(ROM、RAM、EEPROM等)等から構成されており、上述したレーザダイオード10およびフォトダイオード20等を制御することで、検出物体までの距離や方向を検出する検出処理を所定のコンピュータプログラムにより実行する機能を有するものである。
【0061】
次に、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1の制御回路70における検出処理について説明する。この検出処理では、検出すべき大きさの検出物体を検出するために、フォトダイオード20から入力される受光信号に基づいて、検出物体の回動方向に沿う長さ(以下、回動方向長さともいう)が測定される。まず、この測定方法について、図2および図3を用いて説明する。
【0062】
検出物体までの距離や方向を検出するため、モータ50の回転駆動により凹面鏡41が所定角度回動してレーザ光の出射方向が所定角度変化する際に、回転角度センサ52からの角度信号に応じて演算される凹面鏡41の回動角度(以下、単に回動角度ともいう)毎に、フォトダイオード20から受光信号が制御回路70に入力される。ここで、所定の回動角度において入力される受光信号により検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出されると、この受光波形(以下、背景波形ともいう)は、常にその場所に位置する壁などの物体(以下、背景ともいう)からの反射光によるものと推定できる。
【0063】
また、図2に例示するように、出射されたレーザ光の一部L0aが検出物体Saにて反射され、そのレーザ光の残部L0bが出射方向後方の背景Sbにて反射される場合には、図3(A)に例示するように、受光信号に2つの受光波形が含まれることとなる。そのため、図3(A),(B)に例示するように、2つの受光波形が検出されるときに遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する場合には、出射されたレーザ光は、その一部が検出物体にて反射され、その残部が検出物体よりも遠距離にある背景にて反射されたことが推定される。この場合、近距離側である検出物体(検出時間Tn)がレーザ光の光軸に直交する断面(以下、スポット断面ともいう)に占める面積が小さくなるほど、すなわち検出物体が小さくなるほど、遠距離側の受光波形は、背景波形に近づくように変化する。このため、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の大きさ(回動方向長さ)を測定することができる。なお、図2では、説明の便宜上、レーザ光L0a,L0b等を拡大して図示している。
【0064】
以下、検出処理の具体的な流れについて図4〜図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、図4のステップS101において、レーザ発光処理がなされる。この処理では、タイミング信号発生部にて生成された発光トリガに応じた所定のパルス幅の発光信号がレーザ駆動回路に出力される。これにより、レーザ駆動回路に駆動制御されて、レーザダイオード10から上記所定のパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L0)が出力される。このレーザ光L0は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ60を通過することで略平行光に変換される。レンズ60を通過したレーザ光L0は、ミラー30に形成された貫通路32を通過して凹面鏡41に入射し、この凹面鏡41にて略平行光として反射され空間に向けて照射される。
【0065】
次に、ステップS103において、レーザ受光処理がなされる。レーザ光L0が検出物体等によって反射光として反射された場合には、この反射光は、凹面鏡41にて集光されてミラー30を介してフォトダイオード20へ向けて反射される。これにより、上記レーザ受光処理では、フォトダイオード20から反射光の受光に応じた受光信号が制御回路70に入力される。
【0066】
続いて、ステップS105にて記憶処理がなされて、フォトダイオード20からの受光信号がその回動角度とともにメモリ等に記憶される。そして、ステップS107にて回転角度センサ52から入力される角度信号に基づいてレーザ光の出射方向が一周したか否かについて判定される。ここで、レーザ光の出射方向が一周していなければ(S107でNo)、ステップS109にて回動処理がなされて、モータ50が1ステップ分だけ回転駆動する。これにより、凹面鏡41が単位角度回動してレーザ光の出射方向が単位角度変化する。そして、レーザ光の出射方向が一周するまで、上記ステップS101からの処理が繰り返される。
【0067】
そして、レーザ光の出射方向が一周して、この一周分における各受光信号がメモリ等に記憶されると(S107でYes)、ステップS111において、受光信号抽出処理がなされる。この処理では、基準となる回動角度から一周する回動角度までの各受光信号が当該処理を実施するごとに順に1つずつ抽出される。
【0068】
次に、ステップS113にて、抽出された回動角度での受光信号に受光波形が含まれるか否かについて判定される。ここで、受光信号が所定の閾値を超えない場合には受光波形が含まれないとして(S113でNo)、ステップS115にて、現段階で抽出された回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度(以下、前抽出回動角度ともいう)での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれたか否かについて判定される。そして、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていなければ(S115でNo)、ステップS117にて一周全ての受光信号が抽出されたか否かについて判定され、一周全ての受光信号が抽出されるまで、Noと判定されて上記ステップS111からの処理が繰り返される。
【0069】
ここで、ステップS113において、抽出された回動角度での受光信号が所定の閾値以上になることから受光信号に受光波形が含まれると判定されると(S113でYes)、図5のステップS119にて受光信号に含まれる受光波形が1つのみか否かについて判定される。そして、検出物体または背景からの反射光のみを受光したことから受光信号に含まれる受光波形が1つのみの場合には、S119にてYesと判定される。
【0070】
続いて、ステップS121にてこの受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされるか否かについて判定される。ここで、受光波形の検出時間や振幅値が前回のものと異なることから両波形が一致するとみなされない場合には、検出物体からの反射光を検出したとして、ステップS121にてNoと判定される。そして、ステップS123にて検出時間記憶処理がなされて、上記受光波形の検出時間がその回動角度とともにメモリに記憶されると、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0071】
一方、ステップS121において、受光波形が前回の同一回動角度において検出された受光波形に一致するとみなされる場合には(S121でYes)、ステップS125にてこの受光波形が背景波形であるか否かについて判定される。ここで、抽出された受光波形が、その回動角度において前回検出された受光波形に一致するとみなされる状態が継続する場合には、背景波形であるとしてステップS125にてYesと判定される。そして、ステップS127にて背景波形設定処理がなされ、抽出された受光波形が背景波形として設定されてメモリに記憶される。このように背景波形が設定されるか、ステップS125にてNoと判定されると、上記ステップS115における判定処理がなされる。なお、上記背景波形設定処理では、現段階における波形が新たな背景波形として設定されるが、これに限らず、例えば、現段階における波形と前回以前での背景波形とを平均化することで新たな背景波形が設定されてもよい。また、ステップS127を実行する制御回路70は、特許請求の範囲に記載の「設定手段」の一例に相当し得る。
【0072】
また、上述したステップS119において、受光信号に含まれる受光波形が2つの場合には、図2に例示したように出射されたレーザ光の一部が検出物体にて反射されその残部が出射方向後方の物体にて反射される場合が推定されて、Noと判定される。そして、ステップS129において、各受光波形のうち遠距離側の受光波形が背景波形であるか否かについて判定される。ここで、図3(A)に例示するように、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する場合には(S129でYes)、上述したように、近距離側の受光波形は検出物体からの反射光によるものと推定できる。この場合、ステップS131にて検出時間記憶処理がなされて、上記受光波形における近距離側の検出時間Tnがその回動角度とともにメモリに記憶されると、上記ステップS117における判定処理がなされる。一方、受光信号に含まれる2つの受光波形のうち遠距離側が背景波形と推定されない場合には、ステップS129にてNoと判定されて、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0073】
このように、一周全ての受光信号が抽出されるまでに、検出物体からの反射光を受光する場合には、ステップS123またはステップS131にて、この反射光の受光に応じた受光波形の検出時間がその回動角度とともにメモリに記憶されることとなる。
【0074】
また、上述したステップS115にて前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれている場合には、前抽出回動角度のみ、または前抽出回動角度から逆回動方向に所定角度回動した角度範囲において、検出物体からの反射光を受光していることが推定される。この場合にはステップS115にてYesと判定されて、図6のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。ここで、波形検出回動角度範囲は、前抽出回動角度から逆回動方向に所定角度回動した間の全ての回動角度にて略同一の検出時間の受光波形が検出される回動角度の範囲として設定されている。
【0075】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS135における第1回動方向長さ測定処理により、以下のように検出物体の回動方向長さXが演算されて測定される。なお、ステップS135および後述するステップS141を実行する制御回路70は、特許請求の範囲に記載の「距離測定手段」,「測定手段」および「断面寸法演算手段」の一例に相当し得る。
【0076】
ここで、図7および図8を用いて、検出物体の回動方向長さXの演算方法について説明する。図7,8および後述する図9では、レーザ光のスポット断面を回動角度毎に正方形状の領域で例示するとともに、この正方形状の領域のうち斜線領域は、スポット断面のうち検出物体にてレーザ光が反射される領域を例示し、斜線無領域は、背景にてレーザ光が反射される領域を例示している。なお、この斜線無領域には、2つの受光波形が検出される場合を除き、何も反射されない領域も含まれるものとする。また、図7〜図9では、現時点における回動角度でのスポット断面をLnにて示し、前抽出回動角度でのスポット断面をLn−1、前抽出回動角度よりも逆回動方向の単位回動角度でのスポット断面を順にLn−2,Ln−3・・・Ln−k・・・にて示している。
【0077】
まず、検出物体の大きさがスポット断面よりも小さいことから、図7(A)に例示するようにスポット断面Ln−1の一部のみが検出物体により反射される場合には、前抽出回動角度にて2つの受光波形が検出され、前抽出回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度では検出物体による受光波形が検出されないこととなる。
【0078】
この場合には、ステップS135では、前抽出回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1に占める面積比が演算される(図3参照)。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離が演算される。続いて、この演算距離でのスポット断面の寸法(レーザスポット径)が演算される。この断面寸法の演算は、レーザ光の広がりを考慮して予め演算距離と断面寸法との関係が予め設定されたマップなどを利用して上記演算距離に基づいて実施される。このように演算された断面寸法と面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形の振幅値Hoに対して40%であると、検出物体の回動方向長さはX=8cmとして演算される。
【0079】
また、検出物体の大きさとスポット断面の大きさとの差が小さいことから、図7(B)に例示するようにスポット断面Ln−1,Ln−2の一部のみが検出物体によりそれぞれ反射される場合には、前抽出回動角度とこの前抽出回動角度よりもモータ50の1ステップ分だけ逆回動方向の回動角度にて2つの受光波形がそれぞれ検出され、前抽出回動角度よりもモータ50の2ステップ分だけ逆回動方向の回動角度では検出物体による受光波形が検出されないこととなる。
【0080】
この場合には、ステップS135では、上記両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1,Ln−2に占める面積比がそれぞれ演算される。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離と、この演算距離でのスポット断面の寸法が演算される。このように演算された断面寸法と面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、上記両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値が背景波形の振幅値に対して60%および30%であると、検出物体の回動方向長さはX=12+6=18cmとして演算される。
【0081】
また、検出物体の大きさがスポット断面よりも十分に大きい場合には、図7(C)に例示するようにスポット断面Ln−1,Ln−kの一部が検出物体の回動方向端部(以下、一部照射部ともいう)により反射され、スポット断面Ln−2,・・・Ln−k+1での全てが検出物体の回動方向中央部(以下、全照射部ともいう)により反射される。このため、一部照射部に対応する両回動角度では2つの受光波形がそれぞれ検出され、全照射部に対応する回動角度では背景波形が検出されることなく1つの波形がそれぞれ検出されることとなる。
【0082】
この場合には、ステップS135では、一部照射部に対応する両回動角度において、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面Ln−1,Ln−kに占める面積比がそれぞれ演算される。次に、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離と、この演算距離でのスポット断面の寸法が演算される。このように演算された断面寸法および面積比と全照射部に対応する回動角度の数とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。例えば、検出時間Tnにより検出物体までの距離が30mと演算され上記マップによりこの距離でのスポット断面の寸法が20cm×20cmであると演算される場合に、一部照射部に対応する両回動角度にて遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形の振幅値Hoに対して60%および30%であり、全照射部に対応する回動角度の数が2つ(k=4)であると、検出物体の回動方向長さはX=12+20+20+6=58cmとして演算される。
【0083】
上述のようにステップS135にて検出物体の回動方向長さXが演算されると、ステップS137にてこの回動方向長さXが所定の閾値Xo以上であるか否かについて判定される。なお、所定の閾値Xoは、検出すべき物体の最小の回動方向長さであって、測定される距離に応じて、例えば、遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きくするように設定されており、具体的には、検出物体までの距離が30mでは10cmに設定されている。
【0084】
ここで、検出物体の回動方向長さXが、例えば、図7(B)に例示するように18cmとして演算される場合には、ステップS137にてYesと判定されて、ステップS139にて出力処理がなされて、当該検出物体に関する距離、回動角度(出射方向)や回動方向長さX等が所定の外部装置等に出力される。そして、上記ステップS117における判定処理がなされる。
【0085】
一方、検出物体の回動方向長さXが、例えば、図7(A)に例示するように8cmとして演算される場合には、ステップS137にてNoと判定されて、ステップS139の出力処理がなされることなく、上記ステップS117における判定処理がなされる。すなわち、回動方向長さXが所定の閾値Xo未満である検出物体は、検出不要な大きさの物体であるとして、その検出が無効となる。
【0086】
このように、本第1実施形態では、スポット断面よりも小さな検出物体の回動方向長さXを測定することができる。従来では、スポット断面毎の反射光の有無により検出物体の大きさ(回動方向長さ)を測定していた。すなわち、検出物体の回動方向長さXは、図7(A)の例では、1つの回動角度での反射光の受光のみをもってその測定距離でのスポット断面の寸法に基づいて20cmと測定され、図7(B)の例では、2つの回動角度での反射光の受光のみをもって40cmと測定していた。このため、本第1実施形態では、従来技術では測定不可能であった、スポット断面よりも小さな検出物体の回動方向長さXを高精度に測定することができる。
【0087】
また、図7(D)に例示するように、図7(C)に対してスポット断面Ln−1の一部が落ち葉のように検出不要な大きさの検出不要物により反射され残部が背景により反射される場合、従来では、このスポット断面からの反射光を受光することで、当該スポット断面の寸法分が検出物体の大きさ(回動方向長さ)に加算されてしまっていた。本第1実施形態では、検出不要物がスポット断面に占める面積比のみが検出物体の大きさ(回動方向長さ)に加算されることとなるので、従来よりも、検出物体の回動方向長さXの演算に関する誤差を小さくすることができる。
【0088】
上述したステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、例えば、図8(A)〜(C)のいずれかに例示するように、両回動方向端部のスポット断面Ln−1,Ln−5に加えてスポット断面Ln−3にて2つの受光波形が検出される場合が複数パターン想定される状態にて、回動方向長さXが測定される。
【0089】
上述のようにスポット断面Ln−3で2つの受光波形が検出される場合では、図8(A)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体の一部照射部によりそれぞれ反射される状態と、図8(B)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体のいずれかの一部照射部のみにより反射される状態と、図8(C)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体の間に存在する検出物体により反射される状態と、のいずれの状態か判別することができない。
【0090】
そこで、本第1実施形態では、上記検出状態の場合、2つの検出物体を検出しているとして、それぞれの検出物体の回動方向長さXが演算される。具体的には、スポット断面Ln−3での上記面積比から求められる回動方向長さの半分を、スポット断面Ln−1,Ln−2に相当する回動方向長さと、スポット断面Ln−4,Ln−5により相当する回動方向長さと、にそれぞれ加算することで、2つの検出物体の回動方向長さXがそれぞれ演算される。そして、このように演算された回動方向長さXが所定の閾値Xo以上である場合には(S137でYes)、ステップS139にてその回動方向長さXに対応する検出物体に関する距離、回動角度(出射方向)や回動方向長さX等が上記外部装置等に出力される。
【0091】
以上説明したように、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の回動角度において検出される受光波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合に、この受光波形がその回動角度の背景波形として設定される。そして、遠距離側の受光波形の検出時間Tfがその回動角度における背景波形の検出時間Toに相当する、2つの波形が検出されるとき、この遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体の回動方向長さ(大きさ)が演算されて測定される。
【0092】
このように、遠距離側の受光波形と背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定されるため、スポット断面よりも小さな検出物体の大きさを測定することができるので、検出物体の検出精度を高めることができる。
【0093】
また、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。このように遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比を算出することで、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0094】
さらに、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、測定された検出物体の大きさが検出対象外である場合に、この検出物体の検出が無効となるので、検出不要な大きさの物体の検出を防止することができる。
【0095】
さらにまた、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、検出対象となる検出物体の大きさは、測定される距離に応じて設定されるため、上述したように遠距離での検出対象の大きさを近距離よりも大きく設定することで、所望の大きさの検出物体を検出するとともに、検出不要な大きさの物体の検出を確実に防止することができる。
【0096】
また、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、検出物体の一部照射部により2つの波形が検出され、全照射部により前抽出回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が検出されるとき、1つの波形が検出される回動角度の数と、2つの波形の比率と、レーザ光の断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向長さXが測定される。このように、検出物体のうち全照射部の回動方向長さと一部照射部の回動方向長さとをそれぞれ演算することで、検出物体の回動方向長さXを正確に測定することができる。
【0097】
さらに、本第1実施形態に係るレーザレーダ装置1では、レーザ光の広がりに応じて測定距離でのスポット断面の断面寸法が演算されるので、予めレーザ光の広がりを把握することでその測定距離でのスポット断面の断面寸法を容易に演算することができる。
【0098】
[第2実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第2実施形態について図を参照して説明する。図10は、第2実施形態に係る制御回路70における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。図11は、第1遠距離側面積および第1背景側面積を説明するための説明図である。図12は、光量と判定用距離Yとの関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップの一例を示す説明図である。図13は、ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる面積演算用交点Pを示す説明図である。図14は、他の波形が重なった波形と閾値とが交わる面積演算用交点Pを示す説明図である。図15および図16は、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない波形を例示する説明図である。
【0099】
本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、上述した検出物体の回動方向長さXの演算方法を変更するために、図6に示すフローチャートに代えて図10に示すフローチャートを採用する点が、上記第1実施形態に係るレーザレーダ装置と異なる。したがって、上述した第1実施形態のレーザレーダ装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0100】
本第2実施形態では、検出物体の回動方向長さXを、遠距離側の受光波形の形状と背景波形の形状との比較に基づいて演算する。この演算方法について、以下に説明する。
まず、図11に示すように、光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、検出波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための3つの閾値(値の小さな閾値からLth1,Lth2,Lth3)を予め設定する。
【0101】
そして、検出物体の回動方向長さXの演算時(上記ステップS135またはステップS141に相当する処理時)には、まず、上記座標において、1つの閾値が検出波形と交わる交点を面積演算用交点Pとし、これら複数の面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第1遠距離側面積として演算するとともに、背景波形W2に関して第1背景側面積として演算する。次に、最小の閾値Lth1での2つの面積演算用交点P1a,P1bとこれら両面積演算用交点P1a,P1bから横軸にそれぞれ下ろした垂線の足P0a,P0bとにより囲まれる四角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して遠距離側矩形面積として演算するとともに、背景波形W2に関して背景側矩形面積として演算する。
【0102】
続いて、遠距離側矩形面積を第1遠距離側面積に加えた合計面積(図11にてクロスハッチング領域S1にて示す)と、背景側矩形面積を第1背景側面積に加えた合計面積(図11にてクロスハッチング領域S1とハッチング領域S2とにて示す)とを演算する。これら2つの合計面積の比率は、それぞれ、遠距離側の受光波形W1の形状を反映した領域の面積と、背景波形W2の形状を反映した領域の面積との比率となるので、この比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を求めることができる。そして、この面積比と当該スポット断面の断面寸法とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0103】
ここで、上記座標では、閾値Lth1と検出波形が交わる面積演算用交点P1a,P1bとし、閾値Lth2と検出波形が交わる面積演算用交点P2a,P2bとし、閾値Lth3と検出波形が交わる面積演算用交点P3a,P3bとする。なお、例えば、遠距離側の受光波形W1において、閾値Lth3との交点がない場合には、第1遠距離側面積は、面積演算用交点P1a,P1b,P2a,P2bの4点により囲まれる台形状の領域の面積として演算される。また、第1背景側面積および背景側矩形面積は、上述のように都度演算することなく、背景波形として記録する際に、予め演算するようにしてもよい。
【0104】
また、本第2実施形態では、上記座標において、フォトダイオード20による検出が想定される光量の波形と各閾値Lth1,Lth2,Lth3とがそれぞれ交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離Yとして予めそれぞれ測定されて記憶されている。この測定では、所定の基準物体に対してレーザダイオード10からのレーザ光を照射することで、フォトダイオード20にて検出される受光波形が閾値を超える状態の時間が、上記座標における交点間の距離(判定用距離Y)として、3つの閾値にてそれぞれ測定される。そして、基準物体の位置を変えるなどして、光量毎に各閾値での判定用距離Yが測定される。この測定結果は、図12に例示するように、光量と判定用距離Yとの関係を閾値毎に示す光量−判定用距離マップとして制御回路70のメモリ等に予め記憶されている。
【0105】
通常の受光波形であれば、その受光波形と所定の閾値とが交わる2つの交点間の距離は、同じ閾値および光量でほぼ一定となることが想定される。すなわち、判定用距離Yとの距離差が他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点Pは、受光波形に含まれる異常な成分との交点である可能性が高いことが想定される。このため、本第2実施形態では、判定用距離Yを判定基準として、上述のような異常な成分での面積演算用交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積を演算する処理がなされる。
【0106】
また、図13に例示するように、ノイズ等の影響により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図13のY2参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図13のY’1参照)。なお、図13に例示する場合では、閾値Lth3と遠距離側の受光波形との交点が存在しないものとする。この場合、距離差が大きくなる面積演算用交点P1a,P1bを除くと、2つの面積演算用交点P2a,P2bだけでは、遠距離側の受光波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0107】
また、図14に例示するように、2つの波形が重なること等により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図14のY3α,Y3β参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図14のY’1,Y’2参照)。この場合、距離差が大きくなる面積演算用交点P1a,P1b,P2a,P2bを除くと、2つの面積演算用交点P3aα,P3bα、または、2つの面積演算用交点P3aβ,P3bβだけでは、遠距離側の受光波形の形状が反映される多角形状の領域を想定することができない。
【0108】
そこで、本第2実施形態では、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離(例えば、図13のY1参照)を推定する。そして、このように推定した交点間距離を全長とする線分と、基準となる交点間距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積を演算する処理がなされる。
【0109】
以下、本第2実施形態に係る検出処理の具体的な流れについて図10のフローチャート等を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていることから、図4のステップS115にてYesと判定されると、図10のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。
【0110】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS201にて交点間距離演算処理がなされる。この処理では、各閾値Lth1,Lth2,Lth3毎に、受光波形が閾値を超える状態の時間、すなわち、上記座標における面積演算用交点間での交点間距離がそれぞれ算出される。
【0111】
次に、ステップS203において、各交点間距離とその光量での判定用距離Yとがほぼ一致するか否かについて判定される。ここで、遠距離側の受光波形にノイズ等が含まれないために、各交点間距離と、その光量および閾値から上記光量−判定用距離マップ(図12参照)に基づいて求められる判定用距離Yとがほぼ一致する場合には、ステップS203にてYesと判定される。
【0112】
そして、ステップS205において、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、遠距離側の受光波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、遠距離側矩形面積とが上述のようにして演算される(図11参照)。また、上記座標において、背景波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、背景側矩形面積とが上述のようにして演算される(図11参照)。
【0113】
次に、ステップS207において、回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、第1遠距離側面積および遠距離側矩形面積の合計面積と、第1背景側面積および背景側矩形面積の合計面積との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比が演算される。続いて、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離に基づいてスポット断面の断面寸法が演算され、この断面寸法と上記面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。そして、上記第1実施形態と同様にステップS137以降の処理がなされる。
【0114】
一方、3つの閾値での交点間距離のうち少なくともいずれか1つにおいて、対応する判定用距離Yとの距離差が、他の閾値での上記距離差よりも大きくなる場合には、ステップS203にてNoと判定される。そして、ステップS209にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つか否かについて判定される。
【0115】
ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つである場合には(S209でYes)、ステップS211にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上記距離差が大きくなる面積演算用交点を除き、遠距離側の受光波形での各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、遠距離側矩形面積とが上述のようにして演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第1背景側面積および背景側矩形面積は、ステップS205と同様にして演算される。このように第1遠距離側面積等が演算されると、ステップS207にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0116】
また、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が2つでない場合には(S209でNo)、ステップS213にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つか否かについて判定される。ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つである場合には、ステップS213にてYesと判定されて、ステップS215にて交点間距離推定処理がなされる。この処理では、上述したように、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離が推定される(図13および図14参照)。
【0117】
そして、ステップS217にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上述のように推定された交点間距離を全長とする線分(例えば図13のY1)と、基準となる交点間距離を全長とする線分(例えば図13のY2)と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域に基づいて、第1遠距離側面積が演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第1背景側面積および背景側矩形面積は、ステップS205と同様にして演算される。このように第1遠距離側面積等が演算されると、ステップS207にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0118】
一方、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない場合には、ステップS213にてNoと判定されて、回動方向長さXを測定することなく、図4のステップS117以降の処理がなされる。ここで、ステップS213にてNoと判定される場合とは、例えば、図15に例示するように、閾値Lth2と受光波形との交点間距離Y2が、上記光量−判定用距離マップにおいて閾値Lth3が存在しない場合に、閾値Lth2に対応して出現可能な最大の判定用距離Yよりも大きい場合があげられる。また、図16に例示するように、各閾値での交点間距離Y1,Y2,Y3が対応する判定用距離Yとの間で対応が取れていない場合があげられる。
【0119】
上述した図10のステップS133にて、波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、上記第1実施形態と同様に、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。なお、この処理では、上述したステップS201以降の処理と同様に、第1遠距離側面積および遠距離側矩形面積の合計面積と、第1背景側面積および背景側矩形面積の合計面積との比率に基づいて、スポット断面に占める面積比を演算してもよい。
【0120】
以上説明したように、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、遠距離側矩形面積を第1遠距離側面積に加えた合計面積と、背景側矩形面積を第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0121】
上述のような各面積演算用交点Pにより囲まれる多角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。このため、それぞれ領域の面積を第1遠距離側面積および第1背景側面積として算出しこれら両面積を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。特に、最小の閾値Lth1での2つの面積演算用交点P1a,P1bと上記垂線の足P0a,P0bとにより囲まれる四角形状の領域の面積をさらに加えた合計面積の比率を用いるので、上記多角形状の領域に上記四角形状の領域を加えた領域は、上記多角形状の領域のみと比較して、対応する波形の形状をより反映した領域となる。このため、それぞれの合計面積の比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率をより精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度をより向上させることができる。
【0122】
また、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離との距離差が、他の閾値での距離差よりも大きくなる面積演算用交点を除いて、第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算される。
【0123】
これにより、受光波形に含まれる異常な成分と閾値との交点を除いて第1遠距離側面積および第1背景側面積が演算されるので、遠距離側の受光波形と背景波形との比率がさらに精度良く算出されて、検出物体の大きさの測定精度を確実に向上させることができる。
【0124】
さらに、本第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、第1遠距離側面積は、当該1つの閾値での交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算される。
【0125】
このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の受光波形が乱れた場合であっても、第1遠距離側面積を演算することができる。
【0126】
上記第2実施形態の第1変形例として、閾値を4つ以上採用してもよい。これにより、面積演算用交点Pの数が多いほど、すなわち、閾値の数が多いほど、対応する波形の形状が上記領域として反映されることとなるので、遠距離側の受光波形と背景波形との比率をより精度良く算出することができる。なお、使用環境によっては、閾値を2つ採用するようにしてもよい。
【0127】
上記第2実施形態の第2変形例として、閾値Lth1が他の閾値に対して十分に小さい等の場合には、遠距離側矩形面積および背景側矩形面積を考慮することなく、第1遠距離側面積および第1背景側面積のみの比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を算出してもよい。これにより、上記検出処理における制御回路70の演算負荷を低減することができる。
【0128】
[第3実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第3実施形態について図を参照して説明する。図17は、第3実施形態に係る制御回路70における検出処理の流れを例示するフローチャートの一部である。図18は、第2遠距離側面積および第2背景側面積を説明するための説明図である。図19は、ノイズ等が含まれる波形と閾値とが交わる状態での第1の線分および第2の線分を示す説明図である。
【0129】
本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、上述した検出物体の回動方向長さXの演算方法を変更するために、図6に示すフローチャートに代えて図17に示すフローチャートを採用する点が、上記第1実施形態に係るレーザレーダ装置と異なる。したがって、上述した第1実施形態のレーザレーダ装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0130】
本第3実施形態では、検出物体の回動方向長さXを、遠距離側の受光波形の形状を反映した三角形状の領域の面積と背景波形の形状を反映した三角形状の領域の面積との比較に基づいて演算する。この演算方法について、以下に説明する。
検出物体の回動方向長さXの演算時(上記ステップS135またはステップS141に相当する処理時)には、図18に示すように、上記第2実施形態にて述べた光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、2つの閾値Lth1,Lth2と受光波形とが交わる4つの面積演算用交点Pのうち近距離側の2つ(P1a,P2a)を結ぶ直線と遠距離側の2つ(P1b,P2b)を結ぶ直線の2つの直線とを求める。そしてこれら2つの直線と横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第2遠距離側面積(図18にてクロスハッチング領域S3にて示す)として演算するとともに、背景波形W2に関して第2背景側面積(図18にてクロスハッチング領域S3とハッチング領域S4とにて示す)として演算する。これら2つの面積の比率は、それぞれ、遠距離側の受光波形W1の形状を反映した領域の面積と、背景波形W2の形状を反映した領域の面積との比率となるので、この比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を求めることができる。そして、この面積比と当該スポット断面の断面寸法とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。なお、第2背景側面積は、上述のように都度演算することなく、背景波形として記録する際に、予め演算するようにしてもよい。
【0131】
また、本第3実施形態では、上記第2実施形態と同様に、想定される受光波形と各閾値Lth1,Lth2との交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離Yとして予めそれぞれ測定されて上記光量−判定用距離マップとして制御回路70のメモリ等に記憶されている。
【0132】
また、上記第2実施形態にて述べたように、ノイズ等の影響により、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つだけであり(図19のY2参照)、他の閾値では判定用距離Yとの距離差が大きくなる場合がある(図19のY’1参照)。
【0133】
この場合、本第3実施形態では、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間を結ぶ線分を第1の線分とし、この交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離を推定する。そして、このように推定された判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分(図19のY1参照)と、上記第1の線分(図19のY2参照)と、の双方の端点を通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域に基づいて、第2遠距離側面積を演算する処理がなされる。
【0134】
以下、本第3実施形態に係る検出処理の具体的な流れについて図17のフローチャート等を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、前抽出回動角度での受光信号に背景波形と異なる受光波形が含まれていることから、図4のステップS115にてYesと判定されると、図17のステップS133にて波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度があるか否かについて判定される。
【0135】
この波形検出回動角度において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がない場合には(S133でNo)、1つの検出物体からの反射光を受光したとして、ステップS301にて交点間距離演算処理がなされる。この処理では、各閾値Lth1,Lth2毎に、受光波形が閾値を超える状態の時間、すなわち、上記座標における面積演算用交点間での交点間距離がそれぞれ算出される。
【0136】
次に、ステップS303において、各交点間距離とその光量での判定用距離Yとがほぼ一致するか否かについて判定され、各交点間距離とその光量および閾値から上記光量−判定用距離マップに基づいて求められる判定用距離Yとがほぼ一致する場合には、ステップS303にてYesと判定される。
【0137】
そして、ステップS305において、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、近距離側の2つの面積演算用交点(P1a,P2a)を結ぶ直線と、遠距離側の2つの面積演算用交点(P1b,P2b)を結ぶ直線とを求める。そして、これら両直線と横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積を、遠距離側の受光波形W1に関して第2遠距離側面積として演算するとともに、背景波形W2に関して第2背景側面積として演算する(図18参照)。
【0138】
次に、ステップS307において、回動方向長さ測定処理がなされる。この処理では、第2遠距離側面積と第2背景側面積との比率に基づいて、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比が演算される。続いて、この近距離側の受光波形の検出時間Tnにより検出物体までの距離に基づいてスポット断面の断面寸法が演算され、この断面寸法と上記面積比とにより、検出物体の回動方向長さXが演算される。そして、上記第1実施形態と同様にステップS137以降の処理がなされる。
【0139】
一方、2つの閾値での交点間距離のうち少なくともいずれか1つにおいて、対応する判定用距離Yとの距離差が、他の閾値での上記距離差よりも大きくなる場合には、ステップS303にてNoと判定される。そして、ステップS309にて、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つか否かについて判定される。
【0140】
ここで、交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つある場合には(S309でYes)、ステップS311にて交点間距離推定処理がなされる。この処理では、上述したように、判定用距離Yと一致するとみなされる交点間距離等を基準として、上記光量−判定用距離マップから他の閾値での交点間距離が推定される(図19参照)。
【0141】
そして、ステップS313にて、面積演算処理がなされる。この処理では、上記座標において、上述のように判定用距離Yと一致するとみなされる交点間を結ぶ線分を第1の線分(例えば図19のY2)と、上述のように推定された判定用距離を全長とし上記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分(例えば図19のY1)とを求める。そして、これら両線分の端点をそれぞれ通過し横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域に基づいて、第2遠距離側面積が演算される。なお、ノイズ等が含まれない背景波形を採用することで、第2背景側面積は、ステップS305と同様にして演算される。このように第2遠距離側面積が演算されると、ステップS307にて上述のように検出物体の回動方向長さXが演算される。
【0142】
一方、上記第2実施形態にて述べたように、その光量において交点間距離と判定用距離Yとが一致するとみなされる閾値が1つもない場合には、ステップS309にてNoと判定されて、回動方向長さXを測定することなく、図4のステップS117以降の処理がなされる。
【0143】
上述した図17のステップS133にて、波形検出回動角度範囲において両回動方向端部以外で受光信号に2つの受光波形が含まれる回動角度がある場合には(S133でYes)、上記第1実施形態と同様に、ステップS141にて第2回動方向長さ測定処理がなされる。なお、この処理では、上述したステップS301以降の処理と同様に、第2遠距離側面積と第2背景側面積との比率に基づいて、スポット断面に占める面積比を演算してもよい。
【0144】
以上説明したように、本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、第2遠距離側面積と、第2背景側面積と、の比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される検出物体の大きさが測定される。
【0145】
上述のような三角形状の領域は、対応する波形の形状を反映した領域となる。特に、少なくとも2つの閾値を設定するだけで、対応する波形の形状を反映した領域が区画されることとなる。このため、それぞれ領域の面積を第2遠距離側面積および第2背景側面積として算出しこれら両面積の比率を用いることで、遠距離側の受光波形と背景波形との比率を精度良く算出でき、検出物体の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0146】
また、本第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の閾値が遠距離側の受光波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、第2遠距離側面積は、第1の線分および第2の線分の双方の端点を通過し上記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算される。
【0147】
このように他の閾値での交点間距離を推定することで、ノイズなどの影響により遠距離側の受光波形が乱れた場合であっても、第2遠距離側面積を演算することができる。
【0148】
上記第3実施形態の第1変形例として、閾値を3つ以上採用してもよい。この場合、判定用距離Yにより一致するとみなされる4つの面積演算用交点Pに基づいて、第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算してもよい。また、上記第2実施形態と同様に、判定用距離Yとの距離差が大きくなる異常な成分での面積演算用交点を除いて第2遠距離側面積および第2背景側面積を演算することができる。
【0149】
上記第3実施形態の第2変形例として、上述のように第2遠距離側面積および第2背景側面積に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算するとともに、上記第2実施形態にて述べたように第1遠距離側面積および第1背景側面積等に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算してもよい。この場合、それぞれ演算された回動方向長さXを比較することで、より精度の高い回動方向長さXを演算することができる。また、それぞれの測定精度を有効に活用するために、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が3つ以上の場合には、第1遠距離側面積および第1背景側面積等に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算し、同じ閾値および光量での判定用距離とが一致するとみなされる閾値が2つの場合には、第2遠距離側面積および第2背景側面積に基づいて検出物体の回動方向長さXを演算してもよい。
【0150】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記回動方向長さ測定処理では、近距離側の受光波形に応じて検出される検出物体がスポット断面に占める面積比を、遠距離側の受光波形の振幅値Hfと背景波形の振幅値Hoとの比率に基づいて演算することに限らず、例えば、遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて演算してもよい。検出物体がスポット断面に占める面積が小さくなるほど、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間は、背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間に近づくように変化する。このため、遠距離側の波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間と背景波形が上記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて検出物体がスポット断面に占める面積比が演算でき、検出物体の大きさを容易に測定することができる。
【0151】
(2)ステップS107,S117では、基準となる回動角度から一周するまでを判定基準とすることに限らず、例えば、半周するまでを判定基準としてもよいし、複数周するまでを判定基準としてもよい。
【0152】
(3)ステップS141の第2回動方向長さ測定処理では、両回動方向端部以外で2つの受光波形が検出されるスポット断面での上記面積比が1に近い場合、すなわち、このスポット断面での遠距離側の受光波形の振幅値Hfが背景波形に対して十分に小さい場合には、このスポット断面での受光波形が1つであるとして、第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算してもよい。
【0153】
また、第2回動方向長さ測定処理では、高いセキュリティ性が求められる使用環境であれば、上記面積比に関わらず第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算して検出物体の回動方向長さXが大きくなるように演算することで、検出物体の検出頻度を高めてもよい。
【0154】
また、両回動方向端部以外で2つの受光波形が検出されるスポット断面が連続する場合では、図9(A)に例示するようにスポット断面Ln−3の一部が2つの検出物体のうちの一方の一部照射部により反射され、スポット断面Ln−4の一部が2つの検出物体のうちの他方の一部照射部により反射される状態と、図9(B)に例示するようにスポット断面Ln−3,Ln−4の一部が2つの検出物体の間に存在する検出物体により反射される状態と、のいずれの状態か判別することができない。
【0155】
そこで、このような場合、第2回動方向長さ測定処理では、要求されるセキュリティ性等に応じて処理を変更してもよい。具体的には、例えば、高いセキュリティ性が求められる使用環境であれば、上記面積比に関わらず第1回動方向長さ測定処理と同様にして回動方向長さXを演算して検出物体の回動方向長さXが大きくなるように演算することで、検出物体の検出頻度を高めてもよい。また、高いセキュリティ性が求められない使用環境であれば、上記面積比等に応じて複数の検出物体を検出しているものとして各検出物体の回動方向長さXを演算することで、検出不要な大きさの検出物体の検出を確実に防止するようにしてもよい。
【0156】
(4)ステップS135,S141における回動方向長さ測定処理では、レーザ光の出射方向の単位角度変化(レーザ走査間隔)の設定値に応じて、現段階の回動角度におけるスポット断面が同一距離での前抽出回動角度におけるスポット断面と一部重なる場合には、その重なり分を、演算された回動方向長さXから減算するようにしてもよい。これにより、検出物体の回動方向長さXをより正確に演算して測定することができる。
【符号の説明】
【0157】
1…レーザレーダ装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
40…回動偏向機構(回動偏向手段)
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(距離測定手段,設定手段,測定手段,断面寸法演算手段)
L…スポット断面
Hf,Ho…振幅値
Tf,Tn,To…検出時間
X…回動方向長さ
P…面積演算用交点
Y…判定用距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を波形として検出する光検出手段と、
所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、かつ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、
前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、
を備えたレーザレーダ装置であって、
所定の回動角度において前記光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合にこの波形をその回動角度の背景波形として設定する設定手段と、
遠距離側の波形の前記検出時間がその回動角度における前記背景波形の前記検出時間に相当する、2つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と前記背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定する測定手段と、
を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記遠距離側の波形の振幅値と前記背景波形の振幅値との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と前記背景波形が前記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記測定手段により測定された前記検出物体の大きさが検出対象外である場合にこの検出物体の検出を無効にする無効手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記検出対象となる前記検出物体の大きさは、前記距離測定手段により測定される距離に応じて設定されることを特徴とする請求項4に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記距離測定手段による前記検出物体までの測定距離での前記レーザ光の断面寸法を演算する断面寸法演算手段を備え、
前記検出物体の一部により第1の回動角度にて前記2つの波形が前記光検出手段により検出され、この検出物体の残部により前記第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、
前記1つの波形が検出される回動角度の数と、前記2つの波形の前記比率と、前記断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さを測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項7】
前記断面寸法演算手段は、前記レーザ光の広がりに応じて前記測定距離での前記断面寸法を演算することを特徴とする請求項6に記載のレーザレーダ装置。
【請求項8】
前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、
光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、
前記測定手段は、
前記複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と前記遠距離側の波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、
前記2つ以上の閾値と前記背景波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項9】
前記測定手段は、
前記第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、
前記第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項8に記載のレーザレーダ装置。
【請求項10】
前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、
前記第1遠距離側面積および前記第1背景側面積を演算することを特徴とする請求項8または9に記載のレーザレーダ装置。
【請求項11】
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、
前記第1遠距離側面積を、
当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する前記判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算することを特徴とする請求項10に記載のレーザレーダ装置。
【請求項12】
前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、
光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、
前記測定手段は、
前記複数の閾値のうちの2つの閾値と前記遠距離側の波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、
前記2つの閾値と前記背景波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項13】
前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、
前記第2遠距離側面積および前記第2背景側面積を演算することを特徴とする請求項12に記載のレーザレーダ装置。
【請求項14】
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、
前記第2遠距離側面積を、
当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する前記判定用距離を全長とし前記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算することを特徴とする請求項13に記載のレーザレーダ装置。
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を波形として検出する光検出手段と、
所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、かつ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、
前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、
を備えたレーザレーダ装置であって、
所定の回動角度において前記光検出手段により検出される波形が前回の同一回動角度において検出された波形に一致するとみなされる検出状態が継続して検出される場合にこの波形をその回動角度の背景波形として設定する設定手段と、
遠距離側の波形の前記検出時間がその回動角度における前記背景波形の前記検出時間に相当する、2つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、この遠距離側の波形と前記背景波形との比率に基づいて、近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定する測定手段と、
を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記遠距離側の波形の振幅値と前記背景波形の振幅値との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記遠距離側の波形が所定の閾値以上となる状態の時間と前記背景波形が前記所定の閾値以上となる状態の時間との比率に基づいて、前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記測定手段により測定された前記検出物体の大きさが検出対象外である場合にこの検出物体の検出を無効にする無効手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記検出対象となる前記検出物体の大きさは、前記距離測定手段により測定される距離に応じて設定されることを特徴とする請求項4に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記距離測定手段による前記検出物体までの測定距離での前記レーザ光の断面寸法を演算する断面寸法演算手段を備え、
前記検出物体の一部により第1の回動角度にて前記2つの波形が前記光検出手段により検出され、この検出物体の残部により前記第1の回動角度から所定角度回動した間の全ての回動角度にて1つの波形が前記光検出手段により検出されるとき、
前記1つの波形が検出される回動角度の数と、前記2つの波形の前記比率と、前記断面寸法とに基づいて、当該検出物体の回動方向に沿う長さを測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項7】
前記断面寸法演算手段は、前記レーザ光の広がりに応じて前記測定距離での前記断面寸法を演算することを特徴とする請求項6に記載のレーザレーダ装置。
【請求項8】
前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、
光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、
前記測定手段は、
前記複数の閾値のうちの2つ以上の閾値と前記遠距離側の波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1遠距離側面積と、
前記2つ以上の閾値と前記背景波形とが交わる複数の前記面積演算用交点により囲まれる多角形状の領域の面積である第1背景側面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項9】
前記測定手段は、
前記第1遠距離側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1遠距離側面積に加えた合計面積と、
前記第1背景側面積を構成する最小の閾値での2つの前記面積演算用交点とこれら両面積演算用交点から前記横軸にそれぞれ下ろした垂線の足とにより囲まれる四角形状の領域の面積を当該第1背景側面積に加えた合計面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項8に記載のレーザレーダ装置。
【請求項10】
前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、
前記第1遠距離側面積および前記第1背景側面積を演算することを特徴とする請求項8または9に記載のレーザレーダ装置。
【請求項11】
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、
前記第1遠距離側面積を、
当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の閾値に対応する前記判定用距離を全長とする線分と、の2つの線分の一方を上底とし他方を下底とする台形状の領域の面積に基づいて演算することを特徴とする請求項10に記載のレーザレーダ装置。
【請求項12】
前記光検出手段により検出される波形が所定の光量を超えているか否かを判定するための閾値が複数設定されており、
光量を縦軸とし時間を横軸とする座標において、1つの前記閾値が前記光検出手段により検出される波形と交わる交点を面積演算用交点とするとき、
前記測定手段は、
前記複数の閾値のうちの2つの閾値と前記遠距離側の波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2遠距離側面積と、
前記2つの閾値と前記背景波形とが交わる4つの前記面積演算用交点のうち近距離側の2つを結ぶ直線および遠距離側の2つを結ぶ直線の2つの直線と、前記横軸とにより囲まれる三角形状の領域の面積である第2背景側面積と、の比率に基づいて、
前記近距離側の波形に応じて検出される前記検出物体の大きさを測定することを特徴とする請求項1、4〜7のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項13】
前記光検出手段による検出が想定される光量の波形と前記閾値とが交わる2つの交点間の距離が、光量毎に閾値に応じて判定用距離として予めそれぞれ測定されて記憶され、
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と同じ閾値および光量での前記判定用距離との距離差が、他の閾値での前記距離差よりも大きくなる前記面積演算用交点を除いて、
前記第2遠距離側面積および前記第2背景側面積を演算することを特徴とする請求項12に記載のレーザレーダ装置。
【請求項14】
前記測定手段は、
所定の前記閾値が前記遠距離側の波形と交わる2つの交点間の距離と、同じ閾値および光量での前記判定用距離とが一致するとみなされる閾値が1つのみの場合には、
前記第2遠距離側面積を、
当該1つの閾値での前記交点間を結ぶ第1の線分と、この1つの閾値での光量と同じ光量であって他の1つの閾値に対応する前記判定用距離を全長とし前記第1の線分と垂直二等分線が一致する第2の線分と、の双方の端点を通過し前記横軸を底辺とする二等辺三角形からなる領域の面積に基づいて演算することを特徴とする請求項13に記載のレーザレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−164082(P2011−164082A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125833(P2010−125833)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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