レーザープロジェクタ
【課題】レーザプロジェクタのスペックルノイズを低減する。
【解決手段】コヒーレント光を光源とするプロジェクタは、コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源10,11,12と、前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段50と、前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置40とを備えるようにし、前記ビーム分割装置は、一対の透明基板と、前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、前記透明基板間に封入された液晶と、を備えた構成とし、前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じるようにした。
【解決手段】コヒーレント光を光源とするプロジェクタは、コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源10,11,12と、前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段50と、前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置40とを備えるようにし、前記ビーム分割装置は、一対の透明基板と、前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、前記透明基板間に封入された液晶と、を備えた構成とし、前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源等のコヒーレント光源からの光束を、映像信号に応じて変調走査させることで映像を表示する表示装置に関し、表示時のスペックル・ノイズを低減させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3色のレーザ光を稼動するミラーに当てて反射させ、スクリーン上に映像を表示するレーザ表示装置が例えば特許文献1で提案されている。このようなレーザ表示装置では、コヒーレント性の高いレーザ光を用いる事で、ランダムな斑模様が発生するスペックル現象が発生し、ディスプレイとしての表示品位が問題となっている。
【0003】
かかるスペックル現象を低減する為、例えば特許文献2に示されているように、光路を機械的に振動させる方法が挙げられるが、スペックルを十分に低減する為には周波数が不足して効果が小さいという問題がある。
【0004】
他のレーザ光を用いた表示装置としては、特許文献3に示されているように、画像情報に応じて光変調素子によって変調された画像を拡大投影する方法も提案されている。この方法でも同じようにスペックルが課題となるが、こちらに関しては特許文献4では、一対の透明基板の間に液晶を密封したスペックル・キャンセラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−021800号公報
【特許文献2】特許04144713号公報
【特許文献3】特開平6−208089号公報
【特許文献4】特開2007−163702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に、特許文献2と同様にレーザ・ビーム全体を揺動させた場合のレーザ・ビームとスクリーンの関係を示す。特許文献1と類似のレーザを走査する表示装置の場合、1つのビーム90がスクリーン100に投影された範囲内のスクリーンの凹凸を反映してスペックルが発生する。揺動前のビーム90と揺動後のビーム91とはスクリーン100上の投影範囲がずれ、長さaだけ重なっているとすると、aの範囲では凹凸の形状は変わらず、従ってスペックルも変化しない。すなわち、特許文献2による方法では、揺動の振幅が大きく、揺動前後のビームの重なりが少ないほどスペックル低減効果が大きくなる。しかし、同時に副作用として画像のぶれが大きいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、レーザー光のスペックルを低減するととも高精細なレーザー表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のコヒーレント光を光源とするプロジェクタは、コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源と、前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段と、前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置とを備えるようにした。
【0009】
ここで、前記ビーム分割装置は、一対の透明基板と、前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、前記透明基板間に封入された液晶と、を備えた構成とし、前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、見かけ上のレーザ光のスペックルを低下できるので、スペックルによる画質低下を抑制した高精細なレーザープロジェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例における表示装置の全体構成である。
【図2】レーザビーム分割を説明する図である。
【図3】ビーム全体を揺動させた場合の説明図である。
【図4】ビームを分割して揺動させた場合の説明図である。
【図5】分割ビームの位相関係をしめす図である。
【図6】ビーム分割装置の構成図である。
【図7(a)】表示フレームnでの各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図7(b)】表示フレームn+1での各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図8】第1実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図9(a)】第2実施例の表示フレームnでの各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図9(b)】第2実施例の表示フレームn+1での各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図10】第3実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図11】第4実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図12】第5実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図13】第6実施例における各電極の形状をしめす図である。
【図14】第7実施例における各電極の形状をしめす図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、投射されるレーザ・ビーム92を、図2に示すように、ビーム断面で複数のビーム領域に分割し、分割した各ビームの光位相を異ならせ、さらに、位相状態を動的に変化させるようにする。これにより、発生するスペックルを散乱させるとともに、時間平均してスペックルを軽減する。
【0013】
例えば、図4に示すように、ビーム93はa,b,c,d,e,fの5つ部分に分割され、図5に示すように、ある表示フレームnでの5つの箇所の位相関係が別の表示フレームn+1での位相関係と異なる。このためnでのスペックル・パターンとn+1でのスペックル・パターンが異なる為、人間の認識上、これらは時間平均されることでスペックルが軽減して見える。
【0014】
この例では、フレーム単位で位相状態を変化させているため、動く物体のある映像の場合には、時間平均できないため、スペックル低減効果が小さい。理想的には1つのドットをビームがスキャンしている間に位相関係が変化させた方が動画時のスペックル低減効果が大きい。この例では1ビームを5つに分割しているが、分割数は多いほど効果が大きい。
【0015】
ビームを分割して光の位相を変化させる手段については、図6に示す液晶セルを用いる方法でも良いし、MEMS(Mechanical Electro Micro Systems)を応用した装置や電気光学結晶を用いた装置でも良い。また、図14に示す凹凸の在るガラス板を用いても良い。
以下、より具体的な構成を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、第1の実施例の表示装置の全体構成を示す図である。第1の実施例の表示装置は、映像信号で変調した赤色・青色・緑色の半導体レーザのレーザ光を合成し、RGB合成したレーザービームをMEMSミラー50によりスクリーン100にビーム走査して映像表示をおこなう。詳しくは、緑色レーザ10から発したビームはコリメート・レンズ20によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30およびダイクロイック・プリズム31を透過して、ビーム分割装置40に入射され、MEMSミラー50によりスクリーン100にビーム走査する。
【0017】
同様に、赤色レーザ11から発したビームはコリメート・レンズ21によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30で反射し、ダイクロイック・プリズム31を透過して、ビーム分割装置40に入射する。そして、青色レーザ12から発したビームはコリメート・レンズ22によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム31で反射し、ビーム分割装置40に入射する。
【0018】
つぎに、ビーム分割装置40について説明する。ビーム分割装置40は、図2に示すように、入射した緑、赤、青の混合レーザ・ビームは、401から425の5×5のセグメントに分割される。そして、各セグメントを透過したビームはそれぞれ個別の位相を持つようにする。例えば、各色のビームサイズはビーム分割装置40上で直径が1.0 mmであり、各セグメントは0.2 mmずつのピッチで分割されている。
【0019】
図6に、ビーム分割装置40の構成図を示す。ビーム分割装置40は、一対の基板430、431の間に液晶432が充填されている。430には電極446―450が、431には電極441―445が直交する方向に形成されている。上下の電極で挟まれた領域が、図2に401から425の5×5のセグメントに対応する。
【0020】
液晶432は、位相変調デバイスとして作用しており、上下の電極から印加される電圧により、液晶の上下に電位差が生じ、この電位差により液晶を透過するレーザービームの位相が制御されている。
【0021】
図7(a)(b)に表示フレームnと表示フレームn+1の各電極に印加する電圧と各セグメントにおける上下基板の電極電位差の一例を示す。便宜上ON状態を1、OFF状態を0と示しているが、実際の電圧は5―20V程度である。各電極の電圧をランダムに設定することで、各セグメントでの電位差もランダムに設定される。また、表示フレームnとn+1とで各電極の電圧をランダムに設定することで、各セグメントでの電位差もランダムに設定される。各セグメントの電位差がある場合とない場合で充填された液晶の向きが変化し、それに伴って屈折率が変化する為、光が透過するときの位相が変化する。
【0022】
図8に示すように、電極電位とセグメントの電位差はn+2フレーム以降もランダムに変化し続ける。図8は、各電極に印加する電圧波形のタイミングを示しており、フレーム毎に全ての電極の電圧波形を切り替える。また、1フレームの表示時間内においては1つの電極の電圧は変化させない。
【0023】
このように、隣あうセグメントを透過するレーザビームの位相が空間的また時間的にランダムに変化することにより、表示フレーム単位で異なるスペックル・パターンが現れる為、スペックルが拡散されて、人間の視覚上で軽減される。
【実施例2】
【0024】
つぎに、図9(a)(b)により、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、ビーム分割装置40のレーザビーム位相制御を第1の実施形態と異なるようにした例である。適用される表示装置の構成は、第1の実施形態と同様であり説明は省略する。
【0025】
図9(a)(b)に表示フレームnと表示フレームn+1の各電極に印加する電圧と各セグメントにおける上下基板の電極電位差の一例を示す。第2の実施例では、各電極に多値の電圧を印加するようにしたことが、第1の実施例と異なる。図9(a)(b)では、各電極の電圧に0-3までの4値を用いれば、各セグメントの電位差を多値に制御することができ、第1の実施例よりもレーザビームを位相を細かく制御することができる。また、第2の実施例では、第1の実施例と同様に上記のレーザビームのビーム分割と位相制御をフレーム単位におこなう。
【実施例3】
【0026】
第1の実施例や第2の実施例では、フレーム単位にレーザビームのビーム分割と位相制御をおこなう例を説明したが、ビーム分割装置40の液晶432に強誘電液晶を用いることで位相制御単位をより細分化することができる。これにより、スペックルノイズを時間軸的にさらに拡散できるので、スペックルノイズの低減に効果がある。
【0027】
図10は、ビーム分割装置に強誘電液晶を用いて変調周波数を上げ、波形を10μ秒毎に変化させる場合の各電極の印加電圧波形を示している。フレーム毎に変化させる場合には、複数フレームの時間積分によってスペックルを変化させるため、動きのある映像では効果が小さかったが、1フレーム内に複数回変化させることで、動きのある映像の場合のスペックル低減効果を高めることが出来る。
【実施例4】
【0028】
実施例3では、各電極に同時に電圧印加をおこなっていたが、図11に示すように、電極ごとに電圧印加タイミングをずらしてもよい、電極に印加される電圧波形の位相がずれることで、1フレーム内に発生するスペックルのバリエーションがさらに増加し、動きのある映像の場合でもスペックル低減効果を第3の実施例より高めることが出来る。
【実施例5】
【0029】
実施例1乃至4では、各電極に印加する電圧波形は方形波の例を示したが、図12に示すように、各電極毎に位相のずれたサイン波を用いても良い。この場合、ビーム分割装置40の液晶432の向きは滑らかに変化するため、分割数以上の数でレーザビームの位相をずらしたのと同じ効果を得ることが出来る。なお、図12では行又は列の順番に徐々に位相をずらしているが、位相のずれ量は一定でなくても良い。
【実施例6】
【0030】
実施例1乃至5では、図6に示したビーム分割装置40の例を示したが、図13に示すように電極を片側だけに形成しても良い。この場合、電極の方向はレーザビームをスキャンする方向と略直交するのが望ましい。スクリーン100上の一点から観測すると、電圧波形によって位相が変化した分割されたビームが次々と照射されるためである。
【実施例7】
【0031】
実施例1乃至6では、電極を持ったビーム分割装置40の例を示したが、図14に示すように電極を持たず、凹凸の在るガラス板を用いても良い。本実施例では、ガラスをビームが透過する際に厚みに差があると位相が変化する効果を利用する。凹凸の差は透過させるビームの最大波長の2分の1以上あることが望ましい。図では縦方向に縞状に凹凸を持っているが、形には限定が無く、マトリックス状に凹凸を持っても良い。縞状に凹凸を持つ場合、凹凸の方向はレーザビームをスキャンする方向と略直交するのが望ましい。スクリーン100上の一点から観測すると、電圧波形によって位相が変化した分割されたビームが次々と照射されるためである。また、ガラスを用いずに同様の形状のミラーを用い、反射させて利用する方法を用いても良い。
【符号の説明】
【0032】
10:緑色レーザー、11:赤色レーザー、12:青色レーザー、20-22:コリメートレンズ、
30-31:ダイクロイック・プリズム、40:ビーム分割装置、50:MEMSミラー、
90-92:レーザ・ビーム、100:スクリーン、401-425:分割するセグメント、
430-431:ビーム分割装置の透明基板、432:液晶、441-450:電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源等のコヒーレント光源からの光束を、映像信号に応じて変調走査させることで映像を表示する表示装置に関し、表示時のスペックル・ノイズを低減させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3色のレーザ光を稼動するミラーに当てて反射させ、スクリーン上に映像を表示するレーザ表示装置が例えば特許文献1で提案されている。このようなレーザ表示装置では、コヒーレント性の高いレーザ光を用いる事で、ランダムな斑模様が発生するスペックル現象が発生し、ディスプレイとしての表示品位が問題となっている。
【0003】
かかるスペックル現象を低減する為、例えば特許文献2に示されているように、光路を機械的に振動させる方法が挙げられるが、スペックルを十分に低減する為には周波数が不足して効果が小さいという問題がある。
【0004】
他のレーザ光を用いた表示装置としては、特許文献3に示されているように、画像情報に応じて光変調素子によって変調された画像を拡大投影する方法も提案されている。この方法でも同じようにスペックルが課題となるが、こちらに関しては特許文献4では、一対の透明基板の間に液晶を密封したスペックル・キャンセラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−021800号公報
【特許文献2】特許04144713号公報
【特許文献3】特開平6−208089号公報
【特許文献4】特開2007−163702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に、特許文献2と同様にレーザ・ビーム全体を揺動させた場合のレーザ・ビームとスクリーンの関係を示す。特許文献1と類似のレーザを走査する表示装置の場合、1つのビーム90がスクリーン100に投影された範囲内のスクリーンの凹凸を反映してスペックルが発生する。揺動前のビーム90と揺動後のビーム91とはスクリーン100上の投影範囲がずれ、長さaだけ重なっているとすると、aの範囲では凹凸の形状は変わらず、従ってスペックルも変化しない。すなわち、特許文献2による方法では、揺動の振幅が大きく、揺動前後のビームの重なりが少ないほどスペックル低減効果が大きくなる。しかし、同時に副作用として画像のぶれが大きいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、レーザー光のスペックルを低減するととも高精細なレーザー表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のコヒーレント光を光源とするプロジェクタは、コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源と、前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段と、前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置とを備えるようにした。
【0009】
ここで、前記ビーム分割装置は、一対の透明基板と、前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、前記透明基板間に封入された液晶と、を備えた構成とし、前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、見かけ上のレーザ光のスペックルを低下できるので、スペックルによる画質低下を抑制した高精細なレーザープロジェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例における表示装置の全体構成である。
【図2】レーザビーム分割を説明する図である。
【図3】ビーム全体を揺動させた場合の説明図である。
【図4】ビームを分割して揺動させた場合の説明図である。
【図5】分割ビームの位相関係をしめす図である。
【図6】ビーム分割装置の構成図である。
【図7(a)】表示フレームnでの各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図7(b)】表示フレームn+1での各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図8】第1実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図9(a)】第2実施例の表示フレームnでの各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図9(b)】第2実施例の表示フレームn+1での各電極電位と各セル電位差を示す図である。
【図10】第3実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図11】第4実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図12】第5実施例における各電極に印加する電圧波形図である。
【図13】第6実施例における各電極の形状をしめす図である。
【図14】第7実施例における各電極の形状をしめす図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、投射されるレーザ・ビーム92を、図2に示すように、ビーム断面で複数のビーム領域に分割し、分割した各ビームの光位相を異ならせ、さらに、位相状態を動的に変化させるようにする。これにより、発生するスペックルを散乱させるとともに、時間平均してスペックルを軽減する。
【0013】
例えば、図4に示すように、ビーム93はa,b,c,d,e,fの5つ部分に分割され、図5に示すように、ある表示フレームnでの5つの箇所の位相関係が別の表示フレームn+1での位相関係と異なる。このためnでのスペックル・パターンとn+1でのスペックル・パターンが異なる為、人間の認識上、これらは時間平均されることでスペックルが軽減して見える。
【0014】
この例では、フレーム単位で位相状態を変化させているため、動く物体のある映像の場合には、時間平均できないため、スペックル低減効果が小さい。理想的には1つのドットをビームがスキャンしている間に位相関係が変化させた方が動画時のスペックル低減効果が大きい。この例では1ビームを5つに分割しているが、分割数は多いほど効果が大きい。
【0015】
ビームを分割して光の位相を変化させる手段については、図6に示す液晶セルを用いる方法でも良いし、MEMS(Mechanical Electro Micro Systems)を応用した装置や電気光学結晶を用いた装置でも良い。また、図14に示す凹凸の在るガラス板を用いても良い。
以下、より具体的な構成を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、第1の実施例の表示装置の全体構成を示す図である。第1の実施例の表示装置は、映像信号で変調した赤色・青色・緑色の半導体レーザのレーザ光を合成し、RGB合成したレーザービームをMEMSミラー50によりスクリーン100にビーム走査して映像表示をおこなう。詳しくは、緑色レーザ10から発したビームはコリメート・レンズ20によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30およびダイクロイック・プリズム31を透過して、ビーム分割装置40に入射され、MEMSミラー50によりスクリーン100にビーム走査する。
【0017】
同様に、赤色レーザ11から発したビームはコリメート・レンズ21によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム30で反射し、ダイクロイック・プリズム31を透過して、ビーム分割装置40に入射する。そして、青色レーザ12から発したビームはコリメート・レンズ22によって略平行ビームに整形され、ダイクロイック・プリズム31で反射し、ビーム分割装置40に入射する。
【0018】
つぎに、ビーム分割装置40について説明する。ビーム分割装置40は、図2に示すように、入射した緑、赤、青の混合レーザ・ビームは、401から425の5×5のセグメントに分割される。そして、各セグメントを透過したビームはそれぞれ個別の位相を持つようにする。例えば、各色のビームサイズはビーム分割装置40上で直径が1.0 mmであり、各セグメントは0.2 mmずつのピッチで分割されている。
【0019】
図6に、ビーム分割装置40の構成図を示す。ビーム分割装置40は、一対の基板430、431の間に液晶432が充填されている。430には電極446―450が、431には電極441―445が直交する方向に形成されている。上下の電極で挟まれた領域が、図2に401から425の5×5のセグメントに対応する。
【0020】
液晶432は、位相変調デバイスとして作用しており、上下の電極から印加される電圧により、液晶の上下に電位差が生じ、この電位差により液晶を透過するレーザービームの位相が制御されている。
【0021】
図7(a)(b)に表示フレームnと表示フレームn+1の各電極に印加する電圧と各セグメントにおける上下基板の電極電位差の一例を示す。便宜上ON状態を1、OFF状態を0と示しているが、実際の電圧は5―20V程度である。各電極の電圧をランダムに設定することで、各セグメントでの電位差もランダムに設定される。また、表示フレームnとn+1とで各電極の電圧をランダムに設定することで、各セグメントでの電位差もランダムに設定される。各セグメントの電位差がある場合とない場合で充填された液晶の向きが変化し、それに伴って屈折率が変化する為、光が透過するときの位相が変化する。
【0022】
図8に示すように、電極電位とセグメントの電位差はn+2フレーム以降もランダムに変化し続ける。図8は、各電極に印加する電圧波形のタイミングを示しており、フレーム毎に全ての電極の電圧波形を切り替える。また、1フレームの表示時間内においては1つの電極の電圧は変化させない。
【0023】
このように、隣あうセグメントを透過するレーザビームの位相が空間的また時間的にランダムに変化することにより、表示フレーム単位で異なるスペックル・パターンが現れる為、スペックルが拡散されて、人間の視覚上で軽減される。
【実施例2】
【0024】
つぎに、図9(a)(b)により、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、ビーム分割装置40のレーザビーム位相制御を第1の実施形態と異なるようにした例である。適用される表示装置の構成は、第1の実施形態と同様であり説明は省略する。
【0025】
図9(a)(b)に表示フレームnと表示フレームn+1の各電極に印加する電圧と各セグメントにおける上下基板の電極電位差の一例を示す。第2の実施例では、各電極に多値の電圧を印加するようにしたことが、第1の実施例と異なる。図9(a)(b)では、各電極の電圧に0-3までの4値を用いれば、各セグメントの電位差を多値に制御することができ、第1の実施例よりもレーザビームを位相を細かく制御することができる。また、第2の実施例では、第1の実施例と同様に上記のレーザビームのビーム分割と位相制御をフレーム単位におこなう。
【実施例3】
【0026】
第1の実施例や第2の実施例では、フレーム単位にレーザビームのビーム分割と位相制御をおこなう例を説明したが、ビーム分割装置40の液晶432に強誘電液晶を用いることで位相制御単位をより細分化することができる。これにより、スペックルノイズを時間軸的にさらに拡散できるので、スペックルノイズの低減に効果がある。
【0027】
図10は、ビーム分割装置に強誘電液晶を用いて変調周波数を上げ、波形を10μ秒毎に変化させる場合の各電極の印加電圧波形を示している。フレーム毎に変化させる場合には、複数フレームの時間積分によってスペックルを変化させるため、動きのある映像では効果が小さかったが、1フレーム内に複数回変化させることで、動きのある映像の場合のスペックル低減効果を高めることが出来る。
【実施例4】
【0028】
実施例3では、各電極に同時に電圧印加をおこなっていたが、図11に示すように、電極ごとに電圧印加タイミングをずらしてもよい、電極に印加される電圧波形の位相がずれることで、1フレーム内に発生するスペックルのバリエーションがさらに増加し、動きのある映像の場合でもスペックル低減効果を第3の実施例より高めることが出来る。
【実施例5】
【0029】
実施例1乃至4では、各電極に印加する電圧波形は方形波の例を示したが、図12に示すように、各電極毎に位相のずれたサイン波を用いても良い。この場合、ビーム分割装置40の液晶432の向きは滑らかに変化するため、分割数以上の数でレーザビームの位相をずらしたのと同じ効果を得ることが出来る。なお、図12では行又は列の順番に徐々に位相をずらしているが、位相のずれ量は一定でなくても良い。
【実施例6】
【0030】
実施例1乃至5では、図6に示したビーム分割装置40の例を示したが、図13に示すように電極を片側だけに形成しても良い。この場合、電極の方向はレーザビームをスキャンする方向と略直交するのが望ましい。スクリーン100上の一点から観測すると、電圧波形によって位相が変化した分割されたビームが次々と照射されるためである。
【実施例7】
【0031】
実施例1乃至6では、電極を持ったビーム分割装置40の例を示したが、図14に示すように電極を持たず、凹凸の在るガラス板を用いても良い。本実施例では、ガラスをビームが透過する際に厚みに差があると位相が変化する効果を利用する。凹凸の差は透過させるビームの最大波長の2分の1以上あることが望ましい。図では縦方向に縞状に凹凸を持っているが、形には限定が無く、マトリックス状に凹凸を持っても良い。縞状に凹凸を持つ場合、凹凸の方向はレーザビームをスキャンする方向と略直交するのが望ましい。スクリーン100上の一点から観測すると、電圧波形によって位相が変化した分割されたビームが次々と照射されるためである。また、ガラスを用いずに同様の形状のミラーを用い、反射させて利用する方法を用いても良い。
【符号の説明】
【0032】
10:緑色レーザー、11:赤色レーザー、12:青色レーザー、20-22:コリメートレンズ、
30-31:ダイクロイック・プリズム、40:ビーム分割装置、50:MEMSミラー、
90-92:レーザ・ビーム、100:スクリーン、401-425:分割するセグメント、
430-431:ビーム分割装置の透明基板、432:液晶、441-450:電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を光源とするプロジェクタにおいて、
コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段と、
前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、前記ビーム分割装置は、
一対の透明基板と、
前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、
前記透明基板間に封入された液晶と、を備え、
前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記電極にはフレーム時間ごとに電圧印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記電極に印加される電圧は、3値以上の電圧が印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記ビーム分割装置の液晶は、強誘電性液晶であって、前記電極にはフレーム時間より短いタイミングで電圧印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記ビーム分割装置の液晶は、強誘電性液晶であって、前記電極のそれぞれの印加電圧タイミングは、電圧印加周期より短いタイミングの時間ずれをもつことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
コヒーレント光を光源とするプロジェクタにおいて、
コヒーレント光を出射する1つ以上のコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から得られるビームの方向を変化させるビーム走査手段と、
前記ビーム走査手段と前記コヒーレント光源の光路間に、前記ビームを複数に分割し、分割された各セグメントの光の位相を変化させるビーム分割装置とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、前記ビーム分割装置は、
一対の透明基板と、
前記透明基板のそれぞれに基板上に直交する向きに配置された複数の平行電極と、
前記透明基板間に封入された液晶と、を備え、
前記電極には所定の時間間隔で個別に電圧印加され、前記透明基板に挟まれた液晶に異なる電位が生じることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記電極にはフレーム時間ごとに電圧印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記電極に印加される電圧は、3値以上の電圧が印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記ビーム分割装置の液晶は、強誘電性液晶であって、前記電極にはフレーム時間より短いタイミングで電圧印加されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記ビーム分割装置の液晶は、強誘電性液晶であって、前記電極のそれぞれの印加電圧タイミングは、電圧印加周期より短いタイミングの時間ずれをもつことを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−215172(P2011−215172A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80103(P2010−80103)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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