説明

レーザー加工方法及びその加工方法を用いた半導体装置

【課題】従来のレーザー加工方法では、走査線の本数が多く、印字時間が短縮され難いという問題があった。
【解決手段】本発明のレーザー加工方法では、例えば、英文字の「A」の外側輪郭に合わせて1回目のレーザー加工を行った後、その内側領域に対し、外側輪郭に沿った2回目以降のレーザー加工を行う。このとき、2回目以降のレーザー加工では、加工領域の長手方向に向かって加工ライン(走査線)が設定されることで、加工ラインの本数が大幅に低減される。その結果、印字時間が大幅に短縮され、レーザー印字の作業性が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物に対してレーザー光を照射することで、当該加工対象物表面に印字等を行うレーザー加工方法及びその加工方法を用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザー光を用いた印字方法の一実施例として、下記のレーザー加工方法が知られている。
【0003】
図6(A)に示すように、例えば、英文字の「A」を印字する場合について説明する。印字装置の情報変換部は、印字情報入力部に入力された種々のデータを演算し、印字されるデータへと変換する。具体的には、符番41にて示す印字データ(面データ)を符番42にて示すように、細かい複数の横線データ(紙面横方向の走査線データ)に変換する。
【0004】
図6(B)では、横線データ(紙面横方向の走査線データ)の一部を図示している。符番43〜46にて示す横線データ(紙面横方向の走査線データ)では、例えば、白い領域ではレーザー光を消灯し、黒い領域ではレーザー光を点灯するというデータである。そして、印字装置では、レーザー光源部等を制御し、紙面上方部から下方部までの全ての横線データ(紙面横方向の走査線データ)に基づきレーザー加工を行い、加工対象物の表面には英文字の「A」が印字される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、半導体集積回路が収納されたプラスチック、セラミックや樹脂等から成るパッケージ表面にレーザーにより印字する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−162441号公報(第2−3頁、第1、3図)
【特許文献2】特開平9−220686号公報(第2−4頁、第1、7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来のレーザー加工方法では、複数の横線データ(紙面横方向の走査線データ)を組み合わせて、例えば、英文字の「A」が印字されるため、横線データの数が多くなる。特に、英文字や数字等の印字文字等は、通常、縦長にデザインされる。そのため、従来のレーザー加工方法では、横線データの数が多く成らざるを得ず、印字時間を短縮し難く、レーザー印字の作業性が悪いという問題がある。
【0008】
また、従来のレーザー加工は、1本の横線データ(紙面横方向の走査線データ)の左端部から右端部へと向けて行われる。そして、1本の横線データに基づいてレーザー加工を終えた後には、同様に、下方に位置する次の横線データの左端部から右端部へと向けて、レーザー加工が行われる。つまり、従来のレーザー加工方法では、横線データ間における非印字時のレーザー光源部の移動距離が長くなる。このレーザー加工方法からも印字時間を短縮し難いという問題がある。
【0009】
また、図6(B)に示すように、符番43〜46にて示す横線データ(紙面横方向の走査線データ)では、黒い領域がレーザー光を点灯するというデータであり、白い領域がレーザー光を消灯するというデータである。図示したように、英文字「A」の「逆Vの字」の領域では、横線データの大部分の領域が白い領域であり、非印字時間が多いことが分る。このレーザー加工方法からも印字時間を短縮し難いという問題がある。
【0010】
また、図6(C)は、図6(A)の丸印47にて示す領域におけるレーザー加工状況を示す。前述したように、英文字「A」は、複数の横線データ(紙面横方向の走査線データ)に基づくレーザー加工の組み合わせにより印字される。そのため、英文字「A」の「逆Vの字」の領域では、図6(B)に示すように、レーザー加工の開始箇所が段々と外側へとずれていくため、英文字「A」の輪郭は、階段形状にレーザー加工される。そして、英文字「A」の輪郭が、滑らかな形状とならないことで、その視認性が悪化するという問題がある。また、その印字された文字等が、パターン認識に用いる場合には、その輪郭形状により、文字認識精度が悪化する場合もある。特に、印字される文字の輪郭に曲線を有する場合には、その曲線を滑らかな形状に形成し難いという問題がある。
【0011】
また、半導体集積回路が収納されたパッケージは、携帯電話機、デジタルカメラ等の携帯電子機器内に実装される。そして、昨今の携帯電子機器等の薄型化により、実装されるパッケージ自体の薄型化が求められる。そして、既に、パッケージの厚み自体に余裕が無く、パッケージ表面へのレーザー加工による加工深さが深くなり過ぎると、印字箇所から金属細線が露出したり、透けて見えるようになり、そのパッケージが不良品として取り扱われるという問題がある。
【0012】
更に、パッケージ表面には、会社のロゴマークや製品番号等が印字されるため、印字される文字等は、数種類の線幅を有してデザインされている。そのため、一定幅のレーザー光による一筆書き方式では、前述した会社のロゴマークや製品番号等を1回のレーザー加工により印字することは出来ない。そのため、前述した会社のロゴマークや製品番号等を印字するためには、複数回のレーザー加工を行う必要がある。このとき、レーザー加工ライン同士が交差する場合には、その交差領域の加工深さが深くなり過ぎ、前述したパッケージ不良が発生するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明のレーザー加工方法では、レーザー光を加工対象物に照射し、前記加工対象物に少なくとも文字または数字を印字するレーザー加工方法において、前記印字される文字または数字の加工領域には、複数の加工ラインが設定され、前記加工ラインは、前記印字される文字または数字の外側輪郭の加工ラインに沿った方向であり、前記加工領域の長手方向に向かって設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、印字される文字や数字の外側輪郭に沿って、印字領域の長手方向に向かってレーザー加工ラインが設定されることで、レーザー加工ライン数が低減し、印字時間が短縮され、レーザー印字の作業性が向上される。
【0015】
また、本発明では、レーザー加工における非印字時のレーザーヘッドの移動距離が短くなり、印字時間が短縮される。
【0016】
また、本発明では、レーザー加工ライン同士の交差を無くすことで、加工対象物を掘り込み過ぎることが防止され、加工対象物の品質性が向上される。
【0017】
また、本発明では、英文字「O」のように同一の線幅から構成される文字等では、レーザーヘッドの移動距離が大幅に低減され、印字時間も大幅に短縮される。
【0018】
また、本発明では、印字される文字等の外側輪郭では、一筆書きによるレーザー加工が施されることで、印字された文字等の輪郭が滑らかな形状となり、印字された文字等の視認性が向上される。
【0019】
また、本発明では、前述したレーザー加工方法によりパッケージ表面に印字が成されることで、パッケージの掘り込み過ぎが防止され、パッケージの薄型化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態におけるレーザー加工方法に用いるレーザー印字装置を説明する(A)ブロック図、(B)概略図、(C)概略図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるレーザー加工方法を説明する(A)概略図、(B)概略図、(C)概略図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるレーザー加工方法を説明する(A)概略図、(B)概略図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるレーザー加工方法を説明する(A)概略図、(B)概略図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置を説明する断面図である。
【図6】従来の実施の形態におけるレーザー加工方法を説明する(A)概略図、(B)概略図、(C)概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の第1の実施の形態であるレーザー加工方法について説明する。図1(A)は、レーザー印字装置を説明するブロック図である。図1(B)及び(C)は、レーザー印字装置を説明する概略図である。図2から図4は、レーザー加工方法を説明する概略図である。
【0022】
図1(A)に示す如く、レーザー印字装置1は、炭酸ガスレーザーまたはYAGレーザーから照射されたレーザー光を用いて樹脂パッケージ、金属等の加工対象物の表面に文字、記号、図形等を印字する。そして、レーザー印字装置1は、主に、コントローラ部2と、レーザーヘッド部3から構成される。更に、コントローラ部2は、主に、入力部4と、制御部5と、メモリ部6とから構成される。
【0023】
先ず、入力部4は、例えば、タッチパネルやキー入力装置等、作業員が、印字データ等を入力するための機構である。尚、入力部4は、パソコンにより構成される場合でも良い。そして、作業員は、前述したタッチパネル等を利用し、印字する製品番号等の文字や数字、印字文字の大きさ、レーザー印字速度、印字するレーザーのスポット幅、印字開始点、終点等、印字するために必要なデータをコントローラ部2へと入力する。
【0024】
次に、制御部5は、例えば、CPUやメモリ等で構成され、レーザー印字装置1を構成する各部位の動作を制御する。具体的には、制御部5は、入力部4から入力された印字文字等の入力データに対して様々な演算処理を行い、その演算処理結果に応じてレーザーヘッド部3を制御する。
【0025】
次に、記憶部6は、例えば、フラッシュメモリ、SRAMやROM等の不揮発性メモリにて構成される領域と、DRAM等の揮発性メモリにて構成される領域とを有する。不揮発性メモリにて構成される領域では、印字される基本文字や基本記号等の種類、大きさ、加工ライン等の印字データを記憶する。一方、揮発性メモリにて構成される領域では、実際に印字される文字や記号等の加工ライン、印字開始点、終点、スポット幅等の印字データを一時的に記憶する。
【0026】
次に、レーザーヘッド部3は、例えば、レーザー発振機7と、レーザー偏光装置8と、fθレンズ9等から構成される。レーザー発振機7は、レーザー光を照射する機構であり、制御部5から発振信号に制御され、所定のタイミングにてオン動作とオフ動作とを繰り返す。そして、レーザー発振機7から照射されたレーザー光は、シャッター、出力反射鏡、光軸調整ミラー等を経由し、ビームエキスパンダーに入射し、平行光へと変換される。次に、ビームエキスパンダーから出射されたレーザー光は、X軸ガルバノミラー及びY軸ガルバノミラーにて、順次、反射され、fθレンズに入射する。つまり、制御部5が、レーザー発振機7やX軸及びY軸ガルバノミラー等を制御し、レーザー光のスポットをレーザー加工ライン上を移動させ、その移動に合わせて、適宜、レーザー発振機7をオン動作及びオフ動作させる。
【0027】
図1(B)に示す如く、fθレンズに入射したレーザー光は、fθレンズによって収束され、スポット光として加工対象物10の表面へと照射される。加工対象物10の表面は、レーザー光が照射されることで急激に温度上昇し、溶融蒸発し、その表面に凹部11が形成される。そして、その凹部11の組み合わせにより、加工対象物10の表面には、文字、図形等が印字される。
【0028】
図1(C)に示す如く、レーザー光のスポット12は、その中心部程エネルギーが強く、凹部11は深く掘り込まれ、その周辺部程エネルギーが弱まり、凹部11は浅く掘り込まれる。以下に説明するレーザー加工方法では、紙面左側に示すように、スポット12の周辺部が重なり合うように設定し、凹部11の掘り込み深さが均一に近づくようにする。そして、×印13は、スポット12の中心部における凹部11の掘り込み深さを示すが、スポット12が重なり合う領域でも、×印13よりも深く掘り込まれる領域が形成されないように、隣り合うレーザー加工ライン間の幅が設定される。そのため、隣り合うレーザー加工ラインの中心間の離間距離L1は、レーザー光のスポット幅よりも、若干、狭い幅に設定される。
【0029】
一方、紙面右側に示すように、隣り合うレーザー光のスポット12が、その中心部にて近接するように重なり合ったり、あるいは、スポット12の中心部が交差する場合には、丸印14にて示すように、×印13(紙面左側)よりも深く掘り込まれる領域が形成される。この場合には、加工対象物10が掘り込まれ過ぎることで、掘り込み深さの均一性が維持されず認識精度が劣化し、また、加工対象物10の耐湿性が劣化する等の問題が発生する。また、加工対象物10が、半導体装置の薄型パッケージの場合では、その掘り込まれ過ぎ領域では、金属細線上方のパッケージ厚みが確保されず、不良品として取り扱われてしまう。
【0030】
そのため、以下に説明するレーザー加工方法では、レーザー加工ライン(走査線)の寄り過ぎや交差が発生しないように、前述した隣り合うスポット12同士の重なり合う領域の堀り込み量が考慮され、レーザー加工ライン(走査線)が設定される。そして、加工ラインが、印字文字等の外側輪郭に沿って配置されるが、前述したように重なり合う領域の掘り込み量が、スポット中心の掘り込み量よりも浅くなるように配置されれば良く、必ずしも加工ライン同士が平行に配置されるものではない。
【0031】
図2(A)に示す如く、レーザー印字装置1を用いて、例えば、英文字と数字の組み合わせである「SANYO18」を樹脂パッケージ表面に印字するレーザー加工方法を説明する。先ず、前述したように、作業員は、タッチパネル等の入力部4を利用し、「SANYO18」を入力し、印字文字の大きさ、印字文字間の間隔、レーザー印字速度、レーザーのスポット幅、印字開始点、終点等の必要なデータをコントローラ部2へと入力する。次に、入力データに従い、レーザー発振機7やX軸及びY軸ガルバノミラー等が制御部5により制御され、加工対象物10の表面に対して紙面左側に位置する英文字の「S」から印字が開始される。そして、紙面左側から紙面右側に向けて、順次、印字が行われ、最後に紙面右側に位置する数字の「8」が印字される。詳細は後述するが、印字される英文字や数字の上方に×印にて示すように、印字される英文字や数字の輪郭の上方から印字が開始されることで、レーザーヘッド部3が、印字文字間を移動する際にその移動距離を短くし、レーザー印字時間の短縮が実現される。
【0032】
次に、図2(B)及び(C)では、例えば、英文字の「A」を印字する際のレーザー加工方法について説明する。
【0033】
先ず、図2(B)に示す如く、樹脂パッケージ等に印字される製品番号、商品名や会社のロゴマーク等に使用される英文字、数字や図形等は、認識し易い形状にデザイン化されることが多い。また、製品番号に使用される数字や英文字では、デザイン化されていない場合でも、例えば、数字の「0」と英文字の「O」との区別を明確にするように、1つの数字の中でも数種類の線幅を有することが多い。そのため、同一のスポット幅の一筆書き方式による1回のレーザー加工にて、複数の線幅から構成される製品番号、商品名や会社のロゴマーク等を印字することは困難である。
【0034】
具体的には、英文字の「A」では、実質、3種類の線幅により構成され、英文字「A」の「逆Vの字」の傾斜領域の線幅はW1であり、上側の紙面横方向の「−」の線幅はW2であり、下側の紙面横方向の「−」の線幅はW3である。そして、線幅は、W3<W1<W2の関係となる。そのため、線幅W2の領域に合わせて、複数回の一筆書き方式によるレーザー加工を行うと、その他の線幅W1、W3の領域では、重複してレーザー加工される領域が発生し、加工深さが深くなってしまう。尚、線幅W1とW3とは、ほぼ同等の線幅であるか、若干、W1の方が幅広に構成される。以下の説明では、線幅W1、W3は、3つのスポット幅によりレーザー加工される幅であり、線幅W2は、5つのスポット幅によりレーザー加工される幅である。
【0035】
そこで、図2(C)に示す如く、レーザーヘッド部3から照射されるレーザー光のスポットを英文字の「A」の外側輪郭の×印(1)の箇所に設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字の「A」の外側輪郭に設定された加工ライン上をレーザー加工する。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、×印(1)の箇所から反時計周りに一環状にレーザー加工を行う。スポットが、×印(1)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、1回目のレーザー加工が終了する。
【0036】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを1回目のレーザー加工ラインの×印(1)から2回目のレーザー加工ラインの×印(2)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の「逆Vの字」の紙面左側の傾斜領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(2´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、2回目のレーザー加工が終了する。
【0037】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを2回目のレーザー加工ラインの×印(2´)から3回目のレーザー加工ラインの×印(3)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の下側の紙面横方向の「−」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(3´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、3回目のレーザー加工が終了する。
【0038】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを3回目のレーザー加工ラインの×印(3´)から4回目のレーザー加工ラインの×印(4)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の「逆Vの字」の紙面右側の傾斜領域及び上側の紙面横方向の「−」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(2)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、4回目のレーザー加工が終了する。
【0039】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを4回目のレーザー加工ラインの×印(2)から5回目のレーザー加工ラインの×印(5)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の内側輪郭に沿ってレーザー加工を行う。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、スポットが、×印(5)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、5回目のレーザー加工が終了する。
【0040】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを5回目のレーザー加工ラインの×印(5)から6回目のレーザー加工ラインの×印(6)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の上側の紙面横方向の「−」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(6´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、6回目のレーザー加工が終了する。
【0041】
最後に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを6回目のレーザー加工ラインの×印(6´)から7回目のレーザー加工ラインの×印(7)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字「A」の上側の紙面横方向の「−」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(7´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、7回目のレーザー加工が終了する。そして、英文字の「A」の全ての領域のレーザー加工が終了する。
【0042】
前述したように、レーザー加工領域の幅W1〜W3方向ではなく、英文字の「A」の輪郭に沿い、加工領域の長手方向にレーザー加工が行われる。このレーザー加工方法により、従来のレーザー加工方法のように線幅W1方向のレーザー加工を複数回繰り返すことはなく、レーザー加工ライン(走査線)の数が大幅に低減される。そして、印字時間も大幅に短縮され、レーザー印字の作業性が大幅に向上される。尚、6、7回目での隙間のレーザー加工においても、輪郭に沿い、加工領域の長手方向にレーザー加工が行われる。
【0043】
また、各レーザー加工ライン間の非印字時のスポットの移動は、最短箇所への移動と設定される。例えば、×印(2´)からは、×印(4)ではなく、×印(3)へとスポットは移動する。また、×印(5)からは、×印(7)ではなく、×印(6)へとスポットは移動する。このスポット移動方法により、非印字時間の移動距離が短くなり、1つの文字全体の印字時間の短縮が実現される。
【0044】
次に、図3(A)及び(B)では、例えば、数字の「8」を印字する際のレーザー加工方法について説明する。
【0045】
図3(A)に示す如く、数字の「8」では、3種類の線幅により構成され、主に、数字「8」の紙面上側の「0」は線幅はW4から構成され、紙面下側の「0」は線幅W4、W5とから構成され、丸印15、16にて示す紙面上下側の「0」の交差領域は線幅W6から構成される。そして、線幅は、W6<W4<W5の関係となり、以下の説明では、線幅W4は、3つのスポット幅によりレーザー加工される幅であり、線幅W5は、4つのスポット幅によりレーザー加工される幅であり、線幅W6は、2つのスポット幅によりレーザー加工される幅である。
【0046】
図3(B)に示す如く、スポットを数字の「8」の外側輪郭の×印(1)の箇所に設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字の「8」の外側輪郭に設定された加工ライン上をレーザー加工する。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、×印(1)の箇所から反時計周りに一環状にレーザー加工を行う。そして、スポットが、×印(1)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、1回目のレーザー加工が終了する。
【0047】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを1回目のレーザー加工ラインの×印(1)から2回目のレーザー加工ラインの×印(2)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面上側の「0」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(2´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、2回目のレーザー加工が終了する。図示したように、丸印15、16(図3(A)参照)にて示す領域は、その線幅W6は狭く、数字の「8」の外側輪郭及び内側輪郭の2回のレーザー加工で十分だからである。
【0048】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを2回目のレーザー加工ラインの×印(2´)から3回目のレーザー加工ラインの×印(3)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面下側の「0」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(3´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、3回目のレーザー加工が終了する。
【0049】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを3回目のレーザー加工ラインの×印(3´)から4回目のレーザー加工ラインの×印(4)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面上下側の「0」の交差領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(4´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、4回目のレーザー加工が終了する。
【0050】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを4回目のレーザー加工ラインの×印(4´)から5回目のレーザー加工ラインの×印(5)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面上側の「0」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(2)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、5回目のレーザー加工が終了する。
【0051】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを5回目のレーザー加工ラインの×印(2)から6回目のレーザー加工ラインの×印(6)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面上側の「0」の内側輪郭に沿ってレーザー加工を行う。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、スポットが、×印(6)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、6回目のレーザー加工が終了する。
【0052】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを6回目のレーザー加工ラインの×印(6)から7回目のレーザー加工ラインの×印(7)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面下側の「0」の内側輪郭に沿ってレーザー加工を行う。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、スポットが、×印(7)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、7回目のレーザー加工が終了する。
【0053】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを7回目のレーザー加工ラインの×印(7)から8回目のレーザー加工ラインの×印(8)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面下側の「0」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(8´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、8回目のレーザー加工が終了する。
【0054】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを8回目のレーザー加工ラインの×印(8´)から9回目のレーザー加工ラインの×印(9)の箇所へスポットを設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、数字「8」の紙面下側の「0」の領域のレーザー加工を行う。スポットが、×印(9´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、9回目のレーザー加工が終了する。そして、数字の「8」の全ての領域のレーザー加工が終了する。
【0055】
前述したように、丸印15、16にて示す領域では、線幅W6が最も狭くなるため、適宜、非印字状態(オフ動作)を用いスポットを移動させる。そして、レーザー加工ラインが交差する領域や線幅が狭くなる領域では、スポットの中心領域によるレーザー加工領域が交差することを防止し、加工対象物の表面が深く掘り込まれることが防止される。
【0056】
また、1回目のレーザー加工ラインが、数字の「8」の外側輪郭に沿って行われることで、印字された文字の輪郭が滑らかな形状となり、印字された文字の視認性が向上される。特に、数字の「8」等にように、印字された文字の輪郭に曲線を有する場合には、その外観形状が良好に形成される。そして、印字された文字等がパターン認識に用いられる場合には、その外観形状の良さにより、認識精度も向上される。
【0057】
また、英文字「A」の場合と同様に、レーザー加工ラインが、幅W4〜W6方向でなく、輪郭に沿った長手方向に設定されることで、レーザー加工ライン(走査線)の数が大幅に低減され、印字時間も大幅に短縮され、レーザー印字の作業性が大幅に向上される。
【0058】
また、各レーザー加工ライン間の非印字時のスポットの移動は、最短箇所への移動と設定されることで、非印字時間の移動距離が短くなり、1つの文字全体の印字時間の短縮が実現される。
【0059】
次に、図4(A)では、例えば、英文字の「S」を印字する際のレーザー加工方法について説明する。
【0060】
図示の如く、英文字の「S」は、1種類の線幅W7により構成される。そして、線幅W7は、3つのスポット幅によりレーザー加工される幅である。
【0061】
先ず、スポットを英文字の「S」の外側輪郭の×印(1)の箇所に設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字の「S」の外側輪郭に設定された加工ライン上をレーザー加工する。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、×印(1)の箇所から反時計周りに一環状にレーザー加工を行う。そして、スポットが、×印(1)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、1回目のレーザー加工が終了する。
【0062】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを1回目のレーザー加工ラインの×印(1)から2回目のレーザー加工ラインの×印(2)の箇所へと移動させる。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字の「S」の形状通り(外観輪郭に沿って)スポットを移動させ、スポットが、×印(2´)のところに到達したところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、2回目のレーザー加工が終了し、英文字の「S」の全ての領域のレーザー加工が終了する。尚、その他、英文字の「C」、「I」、「J」、「L」、「U」等も同様なレーザー加工方法により実施される。
【0063】
前述したように、同一の線幅W7から成る英文字等においても、レーザー加工ラインが、幅方向でなく、輪郭に沿った長手方向に設定されることで、レーザー加工ライン(走査線)の数が大幅に低減され、印字時間も大幅に短縮され、レーザー印字の作業性が大幅に向上される。
【0064】
また、各レーザー加工ライン間のスポットの移動は、例えば、スポット径よりも短く、最短箇所への移動となるように設定されることで、非印字時間の移動距離が短くなり、1つの文字全体の印字時間の短縮が実現される。
【0065】
次に、図4(B)では、例えば、英文字の「O」を印字する際のレーザー加工方法について説明する。
【0066】
先ず、スポットを英文字の「O」の外側輪郭の×印(1)の箇所に設定する。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、英文字の「O」の外側輪郭に設定された加工ライン上をレーザー加工する。このとき、一筆書き方式による連続線にてレーザー加工を行い、×印(1)の箇所から反時計周りに一環状にレーザー加工を行う。そして、スポットが、×印(1)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、1回目のレーザー加工が終了する。
【0067】
次に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを1回目のレーザー加工ラインの×印(1)から2回目のレーザー加工ラインの×印(2)の箇所へと移動させる。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、一筆書き方式による連続線にて英文字の「O」の外側輪郭に沿ってレーザー加工を行う。そして、スポットが、×印(2)のところに戻ったところで、レーザー発振機7をオフ動作させ、2回目のレーザー加工が終了する。
【0068】
最後に、レーザー発振機7をオフ動作させた状態にて、スポットを2回目のレーザー加工ラインの×印(2)から3回目のレーザー加工ラインの×印(3)の箇所へと移動させる。そして、レーザー発振機7をオン動作させ、一筆書き方式による連続線にて英文字の「O」の内側輪郭に沿ってレーザー加工を行い、英文字の「O」の全ての領域のレーザー加工が終了する。尚、その他、数字の「0」等も同様なレーザー加工方法により実施される。
【0069】
前述したように、英文字の「O」ように、同一の線幅W8であり、輪郭に沿った3回の一筆書き方式によるレーザー加工により印字を行う場合においても、レーザー加工ラインが、幅方向でなく、輪郭に沿った長手方向に設定されることで、レーザー加工ライン(走査線)の数が大幅に低減され、印字時間も大幅に短縮され、レーザー印字の作業性が大幅に向上される。
【0070】
また、各レーザー加工ライン間のスポットの移動は、例えば、スポット径よりも短く、最短箇所への移動となるように設定されることで、非印字時間の移動距離が短くなり、1つの文字全体の印字時間の短縮が実現される。
【0071】
尚、本実施の形態では、加工対象物10の表面に英文字や数字をレーザー加工にて印字する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。加工対象物10の表面に、例えば、片仮名文字、ローマ字や図形等をレーザー加工にて印字する際も、前述したように輪郭に沿い、加工領域の長手方向にレーザー加工ラインを設定することで、同様な効果を得ることができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0072】
次に、本発明の第2の実施の形態であり、前述した第1の実施の形態のレーザー加工方法を用いて印字が行われる半導体装置について説明する。図5は、半導体装置を説明する断面図である。
【0073】
図5に示す如く、半導体装置21の樹脂パッケージ22の側面からは、複数のリード23が導出し、導出したリード22はガルウィング形状に折り曲げ加工される。樹脂パッケージ22内のアイランド24上面には、例えば、Agペースト、半田等の導電性接着材25により半導体素子26が固着される。半導体素子26上面には複数の電極パッド(図示せず)が形成され、電極パッドとリード23とは金属細線27により接続される。そして、半導体素子26上面には、エポキシ樹脂等の絶縁性接着材28を用いて半導体素子29が固着される。同様に、半導体素子29の電極パッド(図示せず)とリード23とは金属細線30により接続される。尚、金属細線27、30としては、金線や銅線が用いられる。
【0074】
図示したように、樹脂パッケージ22の表面側に製品番号、商品名や会社のロゴマーク等がレーザー印字され、その印字領域には凹部31、32、33、34が形成される。
【0075】
ここで、金属細線30が、樹脂パッケージ22から露出し、あるいは、樹脂パッケージ22から透けて見える程度に樹脂厚みが薄い場合には、電気的にショートする問題があり、その半導体装置は不良品として取り扱われる。そのため、樹脂パッケージ22では、前述したショートの問題に対応するため、金属細線30の頂部から樹脂パッケージ22の表面までの厚みT1が、パッケージ内の組み立て誤差等を考慮し、設計される。例えば、導電性接着材25及び絶縁性接着材28の厚み誤差は、それぞれ5μmであり、半導体素子26、29の厚みは、それぞれ20μmであり、この構造の場合には、組み立て側の誤差としては50μmが考慮される。一方、1回のレーザー加工により、凹部31〜34は、樹脂パッケージ22の表面から10〜15μm掘り込まれるため、掘り込み深さT2として15μmが考慮される。その結果、金属細線30の頂部から樹脂パッケージ22の表面までの厚みT1は、65μmとして設計される。
【0076】
そして、図1(C)にて前述したように、レーザー加工ラインが交差したり、スポット中心が接近することで、凹部31〜34の掘り込み深さT2が深くなる場合には、掘り込み深さT2として30μm考慮しなければならない。その結果、金属細線30の頂部から樹脂パッケージ22の表面までの厚みT1が厚くなり、樹脂パッケージ22の薄型化に対応し難い構造となってしまう。
【0077】
つまり、半導体装置21では、図1〜図4を用いて説明したレーザー加工方法を用い、凹部31〜34の掘り込み深さT2を1回のレーザー加工による10〜15μmとすることで、樹脂パッケージ22の薄型化に対応可能な構造が実現される。そして、前述したレーザー加工方法を用いることで、印字文字等の視認性が向上される。
【0078】
尚、本実施の形態の半導体装置21では、2つの半導体素子26、29が積層され、樹脂パッケージ22により被覆される構造の場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、半導体素子が積層されない構造や3つ以上の半導体素子が積層される場合やセラミックパッケージやプラスチックパッケージの場合でも、前述したレーザー加工方法を用いることで、パッケージの薄型化等、同様な効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 レーザー印字装置
2 コントローラ部
3 レーザーヘッド部
7 レーザー発振機
9 fθレンズ
10 加工対象物
11 凹部
21 半導体装置
22 樹脂パッケージ
24 アイランド
26、29 半導体素子
27、30 金属細線
31 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を加工対象物に照射し、前記加工対象物に少なくとも文字または数字を印字するレーザー加工方法において、
前記印字される文字または数字の加工領域には、複数の加工ラインが設定され、前記加工ラインは、前記印字される文字または数字の外側輪郭の加工ラインに沿った方向であり、前記加工領域の長手方向に向かって設定されることを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記外側輪郭の加工ライン上をレーザー加工した後、前記外側輪郭の加工ライン内側の加工領域に対してレーザー加工を行い、前記レーザー加工の重なる領域の掘り込み深さは、前記レーザー光のスポット中心の掘り込み深さよりも浅くなることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記印字される文字または数字は、複数の線幅から構成され、前記加工領域には複数本の前記加工ラインが設定され、前記加工ライン同士は交差しないことを特徴とする請求項2に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
前記印字される文字または数字は、同一の線幅から構成され、前記文字または数字には複数の加工ラインが設定され、前記レーザー加工の非加工時の移動距離は、前記レーザー光のスポット径よりも短いことを特徴とする請求項2に記載のレーザー加工方法。
【請求項5】
前記外側輪郭の加工ライン上のレーザー加工は、一筆書き方式により行われることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項6】
少なくとも請求項1から請求項5のいずれか1項に記載されたレーザー加工方法によりパッケージ表面に印字が施されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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