レーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法
【課題】本発明は、前記課題を解決するもので、レーザー加工により得られる加工形状を自在に変化させて、輝度ムラの生じないスクリーンの転写型を作成するーザー加工方法を目的とする。
【解決手段】レーザービームを、所定の開口部が複数形成されたマスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、ワーク6が第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワーク6の位置に応じて前記マスク3の回動の角度を変化させてワーク6へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【解決手段】レーザービームを、所定の開口部が複数形成されたマスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、ワーク6が第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワーク6の位置に応じて前記マスク3の回動の角度を変化させてワーク6へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法に関し、特にリアプロジェクションテレビ用スクリーンのマイクロレンズアレイ型に好適なレーザー加工方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、リアプロジェクションテレビのスクリーンにおけるマイクロレンズアレイ型の作成方法には、次の作成方法が行われていた。すなわち、型となる基板上にレジストを塗布し、レジスト膜のレンズ中心に対応する位置にレーザーなどを用い微小スポットの穴を開ける。その後、その穴を利用してエッチングを行い基板上にマイクロレンズのための半球状の凹部を形成することで、リアプロジェクションテレビのスクリーン用のマイクロレンズアレイ型を形成していた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−47562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、リアプロジェクション用のスクリーンが大型化するに伴い、スクリーンの四隅の輝度ムラが大きくなるという問題が生じてきた。これは、スクリーンを構成する全てのマイクロレンズの配列が同一であるために起こる。そのため、この輝度ムラを解消するためには、スクリーン位置に応じて個々のマイクロレンズの傾きを変える必要があるが、前記従来の技術でスクリーン用のマイクロレンズアレイ型を作成すると、マイクロレンズを構成するための凹部が、全ての領域で同じ形状になってしまうので、この輝度ムラの解決を行うことが出来なかった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するもので、凹部の形状を自在に変化させて、大画面化しても輝度ムラの生じないスクリーンを作るための、レーザー加工方法及びマイクロレンズアレイ型を作成する加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の課題を解決する為に、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射することを特徴とする。
【0006】
また、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じてレーザービームの照射タイミングを変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明のレーザー加工方法によれば、全ての領域において形状の異なる加工が可能である。リアプロジェクションテレビ用大画面スクリーンの四隅の輝度ムラを解消できるマイクロレンズアレイ型を容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明のレーザー加工方法において用いるレーザー加工機の一例として、樹脂系材料の加工において好適なエキシマレーザー加工機の全体構成の一例を示す。図1のエキシマレーザー加工機は、レーザー発信器1、アッテネータやホモジェナイザー等から構成される照射光学系2、マスク3、マスク用XYθステージ4、投射レンズ5、ワーク6、ワーク用XYステージ7、マスク用ステージ制御部8、ワーク用ステージ制御部9、レーザー発信器制御部10、コントローラ11より構成される。
【0009】
上記構成要素を持つレーザーエキシマ加工装置において、レーザー発信器1はコントローラ11に制御されたレーザー発信器制御部10より送られるパルス信号に基づき、所定周波数にて波長248nmのレーザービーム12を出射する。出射されたエキシマレーザービーム12は、レーザービームを加工に適したエネルギー密度にコントロールするアッテネータや、レーザービームのエネルギー分布を均一化するホモジェナイザーや各種ミラー等から構成される照射光学系2を通り、所定の形状とエネルギー密度に整えられたレーザービーム13となる。
【0010】
加工において最適化されたレーザービーム13は、ガラス基板上に金属膜や誘電体多層膜にて所定の開口部が複数形成されたマスク3に照射される。マスク3は、位置を微調整できるようXYステージと、レーザービーム13の光軸周りにマスク3を回動できるようθステージから構成さるマスク用XYθステージ4に取り付けられ、ワーク用XYステージ7との位置関係によりマスク用ステージ制御部8を通しコントローラ11により回動させることができる。
【0011】
レーザービーム13は上記マスク3を通過し、マスク3の複数の開口部を通り、形状を整えられたレーザービーム14の状態となる。レーザービーム14は投射レンズ5により所定の縮小倍率Mに縮小され、ワーク6に照射され、ワーク6を加工する。ワーク6は互いに直行するXY方向への移動が可能なワーク用XYステージ7に真空吸着などの方法により取り付けられる。ワーク用XYステージは、ワーク用ステージ制御部9を通しコントローラ11により制御され、ワーク6の位置や送り速度を制御する。なお、ここで用いるワーク6として好適な例としては、ポリイミドやポリカーボネート等高分子系材料が挙げられる。
【0012】
本発明において用いる事の出来るマスクの一例としてマスク3aを図2に示す。マスク3aは図中右から左に順次開口径が小さくなる円形形状のパターンD1〜D4を直線上に等ピッチPにて配置したものである。なお、実際の加工において用いられるマスク上のパターン数は数百程度のパターンを用いる例が一般的であるが、ここでは説明の便宜上4つのパターンとする。
【0013】
図2に示すマスク3aを用いた加工例について<基本加工事例>に一般的な加工例を、<加工事例1>にワーク6の速度を変化させる加工例を、<加工事例2>においてマスク3を回動させる加工例を説明する。
【0014】
<基本加工事例>
マスク3aのパターンD1、D2、D3、D4の各中心を結ぶ中心線L1とワーク6の移動する第1の方向L2が一致するよう前記マスク用XYθステージ4に取り付ける。
【0015】
マスク3aを用いた加工における第1の方向L2へのワーク送り速度をF、レーザー照射の周波数をf、縮小倍率をMとし、式(1)の加工条件を満たすよう設定する。
【0016】
P・M=F/f・・・・(1)
式(1)の左辺は、レーザービームを照射したときワーク6上に形成されるマスクパターンのピッチを表し、右辺はレーザー照射間におけるワーク6の第1の方向L2への移動距離を表す。すなわち式(1)はワーク6上のマスクパターンのピッチとレーザーの照射間の移動距離が等しい事を示し、マスクピッチとレーザー照射の同期が取れている状態を表している。
【0017】
次に、図2に示すマスク3aを用い、式(1)の加工条件による加工事例を図3(a)〜(d)に示す。ここでは投射レンズを省略した形とし、すなわち縮小率Mが1の場合を示し、条件式(1)は左辺P・M=Pとし、式(2)のように表すことが出来る。
【0018】
P=F/f・・・・(2)
したがって、ここでは、マスクピッチPとレーザー照射間におけるワーク6の第1の方向L2への移動距離が等しい例を示す。
【0019】
図3(a)は、1発目のレーザー照射状態の加工断面図を示すものであり、ワーク6上に、マスク3a上に形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41が夫々ピッチPにて加工されたものである。(2)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6がマスクのパターンピッチP分だけ第1の方向L2に移動したときに行われる。その状態を図3(b)に示す。図3(a)の状態からワーク6がマスクのパターンピッチP移動したとき、先に形成されたパターンD11はマスクパターンD2の垂直下に一致する。そのタイミングにてレーザーが照射されD22を形成する。以降同様にワーク6がピッチP分移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図3(c)、図3(d)に示す様にD33、D44を形成し、各パターンの中心位置が同心円状にある加工形状を得ることが出来る。さらに継続しワークを送ることにより図4に示す様、連続した形状形成が可能である。図4(a)に加工物上部正面図を、図4(b)に図4(a)中A−A断面図を示す。
【0020】
<加工事例1:ワーク送り速度変化>
次に、式(2)の状態より、ワークの送り速度をΔF早くした場合について説明する。
【0021】
ワークの送り速度をΔF早くすることにより、マスクピッチPとレーザー照射間におけるワーク6の移動距離の関係式(2)は式(3)の状態となる。
【0022】
P<(F+ΔF)/f・・・・(3)
左辺のワーク6上のマスクパターンピッチより、右辺のレーザー照射間におけるワーク6の移動距離が大きくなる状態を表している。このときの加工事例を図5(a)〜(d)を用いて説明する。
【0023】
図5(a)は、1発目のレーザー照射状態加工断面図を示すものであり、ワーク6上にマスク3aに形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41が夫々ピッチPにて加工される。(3)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6が(F+ΔF)/f(マスクパターンピッチP以上)移動したときに行われる。その状態を図5(b)に示す。図5(a)の状態からワーク6が、(F+ΔF)/f移動したとき、先に形成されたパターンD11はその中心位置がマスクパターンD2の中心位置の垂直下より左に移動した状態にある。そのタイミングにてレーザーが照射されD22が形成される。以降同様にワーク6が(F+ΔF)/f移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図5(c)、図5(d)に示す様にD33、D44が形成され、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向L2の逆方向に偏心した形状を得ることが出来る。さらに継続しワーク6を送ることにより図6に示す連続した形状成形も可能である。図6(a)に加工物上部正面図を、図6(b)に図6(a)中A−A断面図を示す。
【0024】
ここではワークの送り速度をΔF早くすることによりワーク上のマスクピッチよりレーザー照射間におけるワーク6の移動距離を大きくした状態について説明したが、反対にワークの送り速度をΔF遅く設定することによりワーク上のマスクピッチよりワークの移動距離を小さくすれば、図7に示す様に各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向(図中左側)に偏心した形状を得ることが出来る。(図7(a)に加工物上部正面図を、図7(b)に図7(a)中A−A断面図を示す。
【0025】
ワーク6のL2方向への移動時、ワーク用XYステージ7をワーク用ステージ制御部9を通しコントローラ11により制御することにより、ワーク送り速度を変化させながら加工を行う事を可能とし、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向L2において偏心した形状を得ることが出来る。
【0026】
<加工事例2:マスク回動>
<基本加工事例>において、マスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1と、ワーク6の移動する第1の方向L2を一致させる加工例を示した。ここでは、マスク3aを回動させマスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1を、ワーク6の移動する第1の方向L2に対して角度を持たせ加工を行う例を示す。なお、マスク3aの回動制御については、装置構成の説明にて示したマスク用XYθステージ4をマスク用ステージ制御部8を通しコントローラ11により制御する。
【0027】
ここでは、図8に示すよう、マスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1がワーク6の移動する第1の方向L2に対し反時計回りに角度α回動した状態での加工事例を示す。マスク3aのパターンピッチをP、マスク3aのパターンの第1の方向L2におけるピッチをP´、ワーク送り速度をF、レーザーの周波数をf、縮小倍率をMとすると、ピッチP´とレーザーの照射タイミングの同期が取れている状態は式(4)で表すことが出来る。
【0028】
P´・M=F/f・・・・(4)
式(4)を満たす状態での加工事例を図9(a)〜(d)に示す。ここでは投射レンズを省略した形とし、縮小率Mが1の場合を示し、左辺P´・M=Pとし、式(4)は式(5)のように表すことが出来る。
【0029】
P´=F/f・・・・(5)
図9(a)〜図9(d)は加工時のワーク6をマスク3a側からみた図を示す。
【0030】
図9(a)は、1発目のレーザー照射時の加工状態を示すものであり、ワーク6上にマスク3a上に形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41がワーク送り方向L2においてピッチP´にて加工される。(5)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6がピッチP´分だけ移動したときに行われる。その状態を図9(b)に示す。図9(a)の状態からワーク6がピッチP´移動したとき、先に形成されたパターンD11は、マスクパターンD2垂直下において中心位置が水平方向に一致する。そのタイミングにてレーザーが照射され図9(b)に示すよう、先に形成されているD11に対し上下方向において中心位置がずれた状態にてD22が形成される。以降同様にワーク6がピッチP´分移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図9(c)、図9(d)に示す様にD33、D44が形成され、各パターンの中心位置が下方向に偏心した形状を得ることが出来る。さらに継続しワークを送ることにより図10に示す連続した形状成形が可能である。図10(a)に加工物上部正面図を、図10(b)に図10(a)中A−A断面図を示す。
【0031】
ここでは、マスク角度を反時計回りにα回動させた状態の例を示したが、反対方向、すなわち時計回りにα回転させた状態にて加工を行うことにより、図10とは逆に、各パターンの中心位置が上方向に偏した図11に示す形状を得ることが出来る。図11(a)に加工物正面図、図11(b)に図11(a)中A−A断面図を示す。
【0032】
以上のように、マスクを偏心させて加工することにより、ワーク6の移動する第1の方向L2に対する垂直方向の形状を任意に変化させる事を可能とする。
【0033】
<加工事例1>、<加工事例2>を組み合わせ、ワーク速度とマスク角度をともに制御することにより様々な形状を作製する事も可能である。
【0034】
なお、ここでの説明においては、マスクパターンを4個とし、段差が発生している例で説明したが、実際は数十から数百のパターンを用い、レーザー1ショット当たりの加工レートを適宜選択することにより、滑らかな側壁面形状を得ることも可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態においても図2に示すマスク3aを用いる。マスク3aは図中右から左に順次開口径が小さくなる円形形状のパターンD1〜D4を直線上に等ピッチPにて配置したものである。なお、通常実際の加工において用いられるマスク上のパターン数は数百程度のパターンを用いる例が一般的であるが、ここでは説明の便宜上4つのパターンとする。
【0035】
図2に示すマスク3aを用いた加工例について<加工事例3>においてレーザービームの照射タイミングを変化させることによる効果を説明する。
【0036】
<加工事例3>
実施の形態1に示す<基本加工事例>記載の式(2)の状態より、レーザー照射の周波数をΔf低く設定した場合について説明する。
【0037】
レーザー照射の周波数を低くすることにより、マスクピッチとレーザー照射間におけるワーク6の移動距離の関係式(2)は式(3)の状態となる。
【0038】
P<F/(f−Δf)・・・・(6)
これは、左辺のワーク6上のマスクパターンピッチより、右辺のレーザー照射間におけるワーク6の移動距離が大きくなる状態を表している。すなわち<加工事例1>と同じことをあらわしており、結果として図5に示す加工例と同じ加工結果を得ることができ、図6の加工形状を得ることが可能となる。
【0039】
ここではレーザー照射の周波数をΔf低くすることによりワーク上のマスクピッチよりレーザー照射間におけるワーク6の移動距離を大きくした状態について説明したが、反対にレーザー照射の周波数をΔf高く設定することによりワーク上のマスクピッチよりワークの移動距離を小さくすれば、図7に示す様に各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向(図中左側)に偏心した形状を得ることが出来る。(図7(a)に加工物上部正面図を、図7(b)に図7(a)中A−A断面図を示す。
【0040】
レーザー照射の周波数を変化させながら加工することにより、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向において偏心した形状を得ることが出来る。
【0041】
<加工事例2>、<加工事例3>を組み合わせ、ワーク速度とマスク角度をともに制御することにより様々な形状を作製する事も可能である。
【0042】
なお、ここでの説明においては、マスクパターンを4個とし、段差が発生している例で説明したが、実際は数十から数百のパターンを用い、レーザー1ショット当たりの加工レートを適宜選択することにより、滑らかな側壁面形状を得ることも可能である。
【0043】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態1と実施の形態2で説明した加工方法の好適な適用例として、マイクロレンズアレイ型の作成がある。これについて以下、詳細に説明する。
【0044】
加工にいて用いるマスク3bを図12に示す。マスク3bのパターンは円形形状のパターンはD1からDnまでがn個形成されたマスクとし、各パターンピッチPは全て等しいものとする。(実施の形態1)における<基本加工例>の条件にて加工を行った場合の形状を図13に示す。図13(a)は上部正面図であり、図13(b)は図13(a)中のA−A断面を示す。図13(a)中S1はマスク上のパターンD1により形成された上部開口部を示し、SnはDnにより形成された底部を示す。図13(b)に示す側壁面16の状態は、マスクパターンを多数用いるため、段差が形成されず滑らかな状態を得ることができる。
【0045】
次に加工開始状態を図14に示す。マスク3bは傾いた状態に制御される。ワーク6は第一の方向L2に移動し、図中AからBの方向に順次加工が行われる。Bまで加工を行った後、ワーク6は加工しない状態で再び元の位置に戻り所定の移動量だけ第二の方向L3に移動する。再びその位置からにワーク6は第一の方向L2に移動を開始するとともに加工を開始する。以上の動作を繰り返し、ワーク全面に加工を行う。
【0046】
第一の方向L2の加工においては、ワークの移動速度又はレーザー照射の周波数を変化させ第一の方向L2における断面形状が変化するよう加工を行う。さらに第二の方向L3の加工においては、マスクを回動させ第二の方向L3において断面形状が変化するようマスク3の角度を制御する。これらの加工方法を組み合わせて用いることにより、図15に示すような反射型マイクロレンズアレイ型を作成することができる。図15はマイクロレンズアレイ型と各領域の拡大図である。各領域においてマイクロレンズ型の形状は異なるが、その構成は全て同じであり、代表的な形状としては領域Eの形状であり、その断面A−A図は図13(b)と同様の形状である。S1はマスクパターンD1により形成されたもので型における上部の開口部にあたり、転写成形されたレンズにおいては光の入光部となる、SnはマスクパターンDnにより形成されたもので、型における底部であり、転写されたレンズにおいては光の出射部となる。側壁面16は転写されたレンズにおいては、光を全反射するための反射面となり、その角度が反射角度に大きな影響を与える。本発明の方法を用いることにより、各領域において形状を制御したマイクロレンズアレイ型を作成することが可能である。
【0047】
さらにこのようなマイクロレンズアレイ型を用いるに際し、最も好適な例としてはリアプロジェクションテレビ用スクリーンがあげられる。例えば、図15のように形成された凹部形状部から転写される形状を、高屈折材料で形成されるレンズ部とする反射型マイクロレンズアレイを用いたスクリーンの型として用いることが出来、スクリーン上に形成される反射型マイクロレンズアレイの視野角特性を中央向きにふる形を得ることができ、従来のスクリーンに比較し、スクリーン四隅における輝度ムラを小さく押さえられるといった利点を有する。
【0048】
本事例においては、反射型のマイクロレンズアレイ型およびそれを用いたリアプロジェクションテレビ用スクリーンの作成方法について述べたが、本特許は反射型に限定されるものでなく、凸型のマイクロレンズアレイを作製する事も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかるレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザーを用いて被加工物の凹部の形状を自由に作成できるので、リアプロジェクションテレビ用スクリーンのマイクロレンズアレイ型の作成に留まらず、複雑精密な金型加工全般に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のレーザー加工方法において用いるレーザー加工機の一例を示す図
【図2】本発明のレーザー加工方法において用いるマスクの一例を示す図
【図3】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工時の断面図
【図4】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工形状及び断面図の一例を示す図
【図5】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工時の断面図の一例を示す図
【図6】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工形状及び断面図の一例を示す図
【図7】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工形状及び断面図の一例を示す図
【図8】本発明におけるマスク設置例を示す図
【図9】マスクを回動させた加工時の断面図
【図10】マスクを回動させた加工形状及び断面図一例を示す図
【図11】マスクを回動させた加工形状及び断面図一例を示す図
【図12】本発明のレーザー加工方法において用いるマスクの一例を示す図
【図13】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工形状及 び断面図の一例を示す図
【図14】加工状態を示す図
【図15】反射型マイクロレンズアレイ型の図
【符号の説明】
【0051】
1 レーザー発信器
2 照射光学系
3 マスク
4 マスク用XYθステージ
5 投射レンズ
6 ワーク
7 ワーク用XYステージ
8 マスク用ステージ制御部
9 ワーク用ステージ制御部
10 レーザー発信器制御部
11 コントローラ
12、13,14 エキシマレーザービーム
15 側壁面
D1、D2、D3、D4、Dn−3、Dn−2、Dn−1、Dn マスクパターン
D11、D21、D31、D41、D22、D33、D44 加工パターン
P マスクピッチ
P´ 第一の方向におけるマスクピッチ
L1 マスクパターンの中心を結ぶ直線
L2 第1の方向
L3 第2の方向
α 第1の方向に対するマスクの傾き
S1 形状パターンの上部開口部形状
Sn 形状パターンの底部形状
A、B、C、D、E 領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法に関し、特にリアプロジェクションテレビ用スクリーンのマイクロレンズアレイ型に好適なレーザー加工方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、リアプロジェクションテレビのスクリーンにおけるマイクロレンズアレイ型の作成方法には、次の作成方法が行われていた。すなわち、型となる基板上にレジストを塗布し、レジスト膜のレンズ中心に対応する位置にレーザーなどを用い微小スポットの穴を開ける。その後、その穴を利用してエッチングを行い基板上にマイクロレンズのための半球状の凹部を形成することで、リアプロジェクションテレビのスクリーン用のマイクロレンズアレイ型を形成していた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−47562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、リアプロジェクション用のスクリーンが大型化するに伴い、スクリーンの四隅の輝度ムラが大きくなるという問題が生じてきた。これは、スクリーンを構成する全てのマイクロレンズの配列が同一であるために起こる。そのため、この輝度ムラを解消するためには、スクリーン位置に応じて個々のマイクロレンズの傾きを変える必要があるが、前記従来の技術でスクリーン用のマイクロレンズアレイ型を作成すると、マイクロレンズを構成するための凹部が、全ての領域で同じ形状になってしまうので、この輝度ムラの解決を行うことが出来なかった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するもので、凹部の形状を自在に変化させて、大画面化しても輝度ムラの生じないスクリーンを作るための、レーザー加工方法及びマイクロレンズアレイ型を作成する加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の課題を解決する為に、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射することを特徴とする。
【0006】
また、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じてレーザービームの照射タイミングを変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明のレーザー加工方法によれば、全ての領域において形状の異なる加工が可能である。リアプロジェクションテレビ用大画面スクリーンの四隅の輝度ムラを解消できるマイクロレンズアレイ型を容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明のレーザー加工方法において用いるレーザー加工機の一例として、樹脂系材料の加工において好適なエキシマレーザー加工機の全体構成の一例を示す。図1のエキシマレーザー加工機は、レーザー発信器1、アッテネータやホモジェナイザー等から構成される照射光学系2、マスク3、マスク用XYθステージ4、投射レンズ5、ワーク6、ワーク用XYステージ7、マスク用ステージ制御部8、ワーク用ステージ制御部9、レーザー発信器制御部10、コントローラ11より構成される。
【0009】
上記構成要素を持つレーザーエキシマ加工装置において、レーザー発信器1はコントローラ11に制御されたレーザー発信器制御部10より送られるパルス信号に基づき、所定周波数にて波長248nmのレーザービーム12を出射する。出射されたエキシマレーザービーム12は、レーザービームを加工に適したエネルギー密度にコントロールするアッテネータや、レーザービームのエネルギー分布を均一化するホモジェナイザーや各種ミラー等から構成される照射光学系2を通り、所定の形状とエネルギー密度に整えられたレーザービーム13となる。
【0010】
加工において最適化されたレーザービーム13は、ガラス基板上に金属膜や誘電体多層膜にて所定の開口部が複数形成されたマスク3に照射される。マスク3は、位置を微調整できるようXYステージと、レーザービーム13の光軸周りにマスク3を回動できるようθステージから構成さるマスク用XYθステージ4に取り付けられ、ワーク用XYステージ7との位置関係によりマスク用ステージ制御部8を通しコントローラ11により回動させることができる。
【0011】
レーザービーム13は上記マスク3を通過し、マスク3の複数の開口部を通り、形状を整えられたレーザービーム14の状態となる。レーザービーム14は投射レンズ5により所定の縮小倍率Mに縮小され、ワーク6に照射され、ワーク6を加工する。ワーク6は互いに直行するXY方向への移動が可能なワーク用XYステージ7に真空吸着などの方法により取り付けられる。ワーク用XYステージは、ワーク用ステージ制御部9を通しコントローラ11により制御され、ワーク6の位置や送り速度を制御する。なお、ここで用いるワーク6として好適な例としては、ポリイミドやポリカーボネート等高分子系材料が挙げられる。
【0012】
本発明において用いる事の出来るマスクの一例としてマスク3aを図2に示す。マスク3aは図中右から左に順次開口径が小さくなる円形形状のパターンD1〜D4を直線上に等ピッチPにて配置したものである。なお、実際の加工において用いられるマスク上のパターン数は数百程度のパターンを用いる例が一般的であるが、ここでは説明の便宜上4つのパターンとする。
【0013】
図2に示すマスク3aを用いた加工例について<基本加工事例>に一般的な加工例を、<加工事例1>にワーク6の速度を変化させる加工例を、<加工事例2>においてマスク3を回動させる加工例を説明する。
【0014】
<基本加工事例>
マスク3aのパターンD1、D2、D3、D4の各中心を結ぶ中心線L1とワーク6の移動する第1の方向L2が一致するよう前記マスク用XYθステージ4に取り付ける。
【0015】
マスク3aを用いた加工における第1の方向L2へのワーク送り速度をF、レーザー照射の周波数をf、縮小倍率をMとし、式(1)の加工条件を満たすよう設定する。
【0016】
P・M=F/f・・・・(1)
式(1)の左辺は、レーザービームを照射したときワーク6上に形成されるマスクパターンのピッチを表し、右辺はレーザー照射間におけるワーク6の第1の方向L2への移動距離を表す。すなわち式(1)はワーク6上のマスクパターンのピッチとレーザーの照射間の移動距離が等しい事を示し、マスクピッチとレーザー照射の同期が取れている状態を表している。
【0017】
次に、図2に示すマスク3aを用い、式(1)の加工条件による加工事例を図3(a)〜(d)に示す。ここでは投射レンズを省略した形とし、すなわち縮小率Mが1の場合を示し、条件式(1)は左辺P・M=Pとし、式(2)のように表すことが出来る。
【0018】
P=F/f・・・・(2)
したがって、ここでは、マスクピッチPとレーザー照射間におけるワーク6の第1の方向L2への移動距離が等しい例を示す。
【0019】
図3(a)は、1発目のレーザー照射状態の加工断面図を示すものであり、ワーク6上に、マスク3a上に形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41が夫々ピッチPにて加工されたものである。(2)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6がマスクのパターンピッチP分だけ第1の方向L2に移動したときに行われる。その状態を図3(b)に示す。図3(a)の状態からワーク6がマスクのパターンピッチP移動したとき、先に形成されたパターンD11はマスクパターンD2の垂直下に一致する。そのタイミングにてレーザーが照射されD22を形成する。以降同様にワーク6がピッチP分移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図3(c)、図3(d)に示す様にD33、D44を形成し、各パターンの中心位置が同心円状にある加工形状を得ることが出来る。さらに継続しワークを送ることにより図4に示す様、連続した形状形成が可能である。図4(a)に加工物上部正面図を、図4(b)に図4(a)中A−A断面図を示す。
【0020】
<加工事例1:ワーク送り速度変化>
次に、式(2)の状態より、ワークの送り速度をΔF早くした場合について説明する。
【0021】
ワークの送り速度をΔF早くすることにより、マスクピッチPとレーザー照射間におけるワーク6の移動距離の関係式(2)は式(3)の状態となる。
【0022】
P<(F+ΔF)/f・・・・(3)
左辺のワーク6上のマスクパターンピッチより、右辺のレーザー照射間におけるワーク6の移動距離が大きくなる状態を表している。このときの加工事例を図5(a)〜(d)を用いて説明する。
【0023】
図5(a)は、1発目のレーザー照射状態加工断面図を示すものであり、ワーク6上にマスク3aに形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41が夫々ピッチPにて加工される。(3)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6が(F+ΔF)/f(マスクパターンピッチP以上)移動したときに行われる。その状態を図5(b)に示す。図5(a)の状態からワーク6が、(F+ΔF)/f移動したとき、先に形成されたパターンD11はその中心位置がマスクパターンD2の中心位置の垂直下より左に移動した状態にある。そのタイミングにてレーザーが照射されD22が形成される。以降同様にワーク6が(F+ΔF)/f移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図5(c)、図5(d)に示す様にD33、D44が形成され、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向L2の逆方向に偏心した形状を得ることが出来る。さらに継続しワーク6を送ることにより図6に示す連続した形状成形も可能である。図6(a)に加工物上部正面図を、図6(b)に図6(a)中A−A断面図を示す。
【0024】
ここではワークの送り速度をΔF早くすることによりワーク上のマスクピッチよりレーザー照射間におけるワーク6の移動距離を大きくした状態について説明したが、反対にワークの送り速度をΔF遅く設定することによりワーク上のマスクピッチよりワークの移動距離を小さくすれば、図7に示す様に各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向(図中左側)に偏心した形状を得ることが出来る。(図7(a)に加工物上部正面図を、図7(b)に図7(a)中A−A断面図を示す。
【0025】
ワーク6のL2方向への移動時、ワーク用XYステージ7をワーク用ステージ制御部9を通しコントローラ11により制御することにより、ワーク送り速度を変化させながら加工を行う事を可能とし、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向L2において偏心した形状を得ることが出来る。
【0026】
<加工事例2:マスク回動>
<基本加工事例>において、マスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1と、ワーク6の移動する第1の方向L2を一致させる加工例を示した。ここでは、マスク3aを回動させマスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1を、ワーク6の移動する第1の方向L2に対して角度を持たせ加工を行う例を示す。なお、マスク3aの回動制御については、装置構成の説明にて示したマスク用XYθステージ4をマスク用ステージ制御部8を通しコントローラ11により制御する。
【0027】
ここでは、図8に示すよう、マスクの各パターンの中心点を結ぶ直線L1がワーク6の移動する第1の方向L2に対し反時計回りに角度α回動した状態での加工事例を示す。マスク3aのパターンピッチをP、マスク3aのパターンの第1の方向L2におけるピッチをP´、ワーク送り速度をF、レーザーの周波数をf、縮小倍率をMとすると、ピッチP´とレーザーの照射タイミングの同期が取れている状態は式(4)で表すことが出来る。
【0028】
P´・M=F/f・・・・(4)
式(4)を満たす状態での加工事例を図9(a)〜(d)に示す。ここでは投射レンズを省略した形とし、縮小率Mが1の場合を示し、左辺P´・M=Pとし、式(4)は式(5)のように表すことが出来る。
【0029】
P´=F/f・・・・(5)
図9(a)〜図9(d)は加工時のワーク6をマスク3a側からみた図を示す。
【0030】
図9(a)は、1発目のレーザー照射時の加工状態を示すものであり、ワーク6上にマスク3a上に形成されたマスクパターンD1からD4による加工部D11、D21、D31、D41がワーク送り方向L2においてピッチP´にて加工される。(5)式より、第2発目のレーザー照射による加工は、ワーク6がピッチP´分だけ移動したときに行われる。その状態を図9(b)に示す。図9(a)の状態からワーク6がピッチP´移動したとき、先に形成されたパターンD11は、マスクパターンD2垂直下において中心位置が水平方向に一致する。そのタイミングにてレーザーが照射され図9(b)に示すよう、先に形成されているD11に対し上下方向において中心位置がずれた状態にてD22が形成される。以降同様にワーク6がピッチP´分移動したタイミングでレーザーが照射され、順次図9(c)、図9(d)に示す様にD33、D44が形成され、各パターンの中心位置が下方向に偏心した形状を得ることが出来る。さらに継続しワークを送ることにより図10に示す連続した形状成形が可能である。図10(a)に加工物上部正面図を、図10(b)に図10(a)中A−A断面図を示す。
【0031】
ここでは、マスク角度を反時計回りにα回動させた状態の例を示したが、反対方向、すなわち時計回りにα回転させた状態にて加工を行うことにより、図10とは逆に、各パターンの中心位置が上方向に偏した図11に示す形状を得ることが出来る。図11(a)に加工物正面図、図11(b)に図11(a)中A−A断面図を示す。
【0032】
以上のように、マスクを偏心させて加工することにより、ワーク6の移動する第1の方向L2に対する垂直方向の形状を任意に変化させる事を可能とする。
【0033】
<加工事例1>、<加工事例2>を組み合わせ、ワーク速度とマスク角度をともに制御することにより様々な形状を作製する事も可能である。
【0034】
なお、ここでの説明においては、マスクパターンを4個とし、段差が発生している例で説明したが、実際は数十から数百のパターンを用い、レーザー1ショット当たりの加工レートを適宜選択することにより、滑らかな側壁面形状を得ることも可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態においても図2に示すマスク3aを用いる。マスク3aは図中右から左に順次開口径が小さくなる円形形状のパターンD1〜D4を直線上に等ピッチPにて配置したものである。なお、通常実際の加工において用いられるマスク上のパターン数は数百程度のパターンを用いる例が一般的であるが、ここでは説明の便宜上4つのパターンとする。
【0035】
図2に示すマスク3aを用いた加工例について<加工事例3>においてレーザービームの照射タイミングを変化させることによる効果を説明する。
【0036】
<加工事例3>
実施の形態1に示す<基本加工事例>記載の式(2)の状態より、レーザー照射の周波数をΔf低く設定した場合について説明する。
【0037】
レーザー照射の周波数を低くすることにより、マスクピッチとレーザー照射間におけるワーク6の移動距離の関係式(2)は式(3)の状態となる。
【0038】
P<F/(f−Δf)・・・・(6)
これは、左辺のワーク6上のマスクパターンピッチより、右辺のレーザー照射間におけるワーク6の移動距離が大きくなる状態を表している。すなわち<加工事例1>と同じことをあらわしており、結果として図5に示す加工例と同じ加工結果を得ることができ、図6の加工形状を得ることが可能となる。
【0039】
ここではレーザー照射の周波数をΔf低くすることによりワーク上のマスクピッチよりレーザー照射間におけるワーク6の移動距離を大きくした状態について説明したが、反対にレーザー照射の周波数をΔf高く設定することによりワーク上のマスクピッチよりワークの移動距離を小さくすれば、図7に示す様に各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向(図中左側)に偏心した形状を得ることが出来る。(図7(a)に加工物上部正面図を、図7(b)に図7(a)中A−A断面図を示す。
【0040】
レーザー照射の周波数を変化させながら加工することにより、各パターンの中心位置がワークの移動する第1の方向において偏心した形状を得ることが出来る。
【0041】
<加工事例2>、<加工事例3>を組み合わせ、ワーク速度とマスク角度をともに制御することにより様々な形状を作製する事も可能である。
【0042】
なお、ここでの説明においては、マスクパターンを4個とし、段差が発生している例で説明したが、実際は数十から数百のパターンを用い、レーザー1ショット当たりの加工レートを適宜選択することにより、滑らかな側壁面形状を得ることも可能である。
【0043】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態1と実施の形態2で説明した加工方法の好適な適用例として、マイクロレンズアレイ型の作成がある。これについて以下、詳細に説明する。
【0044】
加工にいて用いるマスク3bを図12に示す。マスク3bのパターンは円形形状のパターンはD1からDnまでがn個形成されたマスクとし、各パターンピッチPは全て等しいものとする。(実施の形態1)における<基本加工例>の条件にて加工を行った場合の形状を図13に示す。図13(a)は上部正面図であり、図13(b)は図13(a)中のA−A断面を示す。図13(a)中S1はマスク上のパターンD1により形成された上部開口部を示し、SnはDnにより形成された底部を示す。図13(b)に示す側壁面16の状態は、マスクパターンを多数用いるため、段差が形成されず滑らかな状態を得ることができる。
【0045】
次に加工開始状態を図14に示す。マスク3bは傾いた状態に制御される。ワーク6は第一の方向L2に移動し、図中AからBの方向に順次加工が行われる。Bまで加工を行った後、ワーク6は加工しない状態で再び元の位置に戻り所定の移動量だけ第二の方向L3に移動する。再びその位置からにワーク6は第一の方向L2に移動を開始するとともに加工を開始する。以上の動作を繰り返し、ワーク全面に加工を行う。
【0046】
第一の方向L2の加工においては、ワークの移動速度又はレーザー照射の周波数を変化させ第一の方向L2における断面形状が変化するよう加工を行う。さらに第二の方向L3の加工においては、マスクを回動させ第二の方向L3において断面形状が変化するようマスク3の角度を制御する。これらの加工方法を組み合わせて用いることにより、図15に示すような反射型マイクロレンズアレイ型を作成することができる。図15はマイクロレンズアレイ型と各領域の拡大図である。各領域においてマイクロレンズ型の形状は異なるが、その構成は全て同じであり、代表的な形状としては領域Eの形状であり、その断面A−A図は図13(b)と同様の形状である。S1はマスクパターンD1により形成されたもので型における上部の開口部にあたり、転写成形されたレンズにおいては光の入光部となる、SnはマスクパターンDnにより形成されたもので、型における底部であり、転写されたレンズにおいては光の出射部となる。側壁面16は転写されたレンズにおいては、光を全反射するための反射面となり、その角度が反射角度に大きな影響を与える。本発明の方法を用いることにより、各領域において形状を制御したマイクロレンズアレイ型を作成することが可能である。
【0047】
さらにこのようなマイクロレンズアレイ型を用いるに際し、最も好適な例としてはリアプロジェクションテレビ用スクリーンがあげられる。例えば、図15のように形成された凹部形状部から転写される形状を、高屈折材料で形成されるレンズ部とする反射型マイクロレンズアレイを用いたスクリーンの型として用いることが出来、スクリーン上に形成される反射型マイクロレンズアレイの視野角特性を中央向きにふる形を得ることができ、従来のスクリーンに比較し、スクリーン四隅における輝度ムラを小さく押さえられるといった利点を有する。
【0048】
本事例においては、反射型のマイクロレンズアレイ型およびそれを用いたリアプロジェクションテレビ用スクリーンの作成方法について述べたが、本特許は反射型に限定されるものでなく、凸型のマイクロレンズアレイを作製する事も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかるレーザー加工方法及びそれを用いたマイクロレンズアレイ型の作成方法は、レーザーを用いて被加工物の凹部の形状を自由に作成できるので、リアプロジェクションテレビ用スクリーンのマイクロレンズアレイ型の作成に留まらず、複雑精密な金型加工全般に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のレーザー加工方法において用いるレーザー加工機の一例を示す図
【図2】本発明のレーザー加工方法において用いるマスクの一例を示す図
【図3】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工時の断面図
【図4】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工形状及び断面図の一例を示す図
【図5】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工時の断面図の一例を示す図
【図6】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工形状及び断面図の一例を示す図
【図7】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離をずらした加工形状及び断面図の一例を示す図
【図8】本発明におけるマスク設置例を示す図
【図9】マスクを回動させた加工時の断面図
【図10】マスクを回動させた加工形状及び断面図一例を示す図
【図11】マスクを回動させた加工形状及び断面図一例を示す図
【図12】本発明のレーザー加工方法において用いるマスクの一例を示す図
【図13】ワーク上のマスクピッチとレーザー照射間の移動距離を合わせた加工形状及 び断面図の一例を示す図
【図14】加工状態を示す図
【図15】反射型マイクロレンズアレイ型の図
【符号の説明】
【0051】
1 レーザー発信器
2 照射光学系
3 マスク
4 マスク用XYθステージ
5 投射レンズ
6 ワーク
7 ワーク用XYステージ
8 マスク用ステージ制御部
9 ワーク用ステージ制御部
10 レーザー発信器制御部
11 コントローラ
12、13,14 エキシマレーザービーム
15 側壁面
D1、D2、D3、D4、Dn−3、Dn−2、Dn−1、Dn マスクパターン
D11、D21、D31、D41、D22、D33、D44 加工パターン
P マスクピッチ
P´ 第一の方向におけるマスクピッチ
L1 マスクパターンの中心を結ぶ直線
L2 第1の方向
L3 第2の方向
α 第1の方向に対するマスクの傾き
S1 形状パターンの上部開口部形状
Sn 形状パターンの底部形状
A、B、C、D、E 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、
前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【請求項2】
レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、
前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じてレーザービームの照射タイミングを変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【請求項3】
請求項1及び2のレーザー加工方法を用いて、前記加工マスクを交換することなく、偏心量の異なるマイクロレンズが混在するマイクロレンズアレイ型の加工方法。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロレンズアレイ型を用いて作製された事を特徴とするリアプロジェクションテレビ用スクリーン。
【請求項1】
レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、
前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記ワーク速度を変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【請求項2】
レーザービームを、所定の大きさの孔が複数形成された加工マスクを介してワーク表面に略垂直に照射してワーク上に戴置された被加工物に加工を行うレーザー加工方法において、
前記ワークは、互いに垂直な関係にある第一の方向と第二の方向に自在に動くものとし、前記第一の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じてレーザービームの照射タイミングを変化させ、前記第二の方向に動く場合には前記ワークの位置に応じて前記加工マスクの回動の角度を変化させて被加工物へレーザーを照射するレーザー加工方法。
【請求項3】
請求項1及び2のレーザー加工方法を用いて、前記加工マスクを交換することなく、偏心量の異なるマイクロレンズが混在するマイクロレンズアレイ型の加工方法。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロレンズアレイ型を用いて作製された事を特徴とするリアプロジェクションテレビ用スクリーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−207240(P2008−207240A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48754(P2007−48754)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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